(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/26 20060101AFI20220106BHJP
【FI】
E03D1/26
(21)【出願番号】P 2018087445
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】樋口 健
(72)【発明者】
【氏名】張岳 和彦
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-237926(JP,A)
【文献】特開平08-013581(JP,A)
【文献】国際公開第2016/105292(WO,A2)
【文献】中国実用新案第2769386(CN,Y)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、前記便器本体に固定される便器洗浄タンクと、前記便器洗浄タンクを覆うタンクカバーと、を有する便器装置であって、
前記タンクカバーは、
前記便器洗浄タンクの前方を覆う前カバーと、前記便器洗浄タンクの側方及び後方を覆う後カバーと、に前後方向に分割され、
前記便器洗浄タンクは、洗浄水を貯留するタンク本体と、前記タンク本体の両側面にそれぞれ配置される側面支持部材と、を有し、
前記後カバーは、前記側面支持部材に固定され、前記前カバーは、前記後カバー及び前記側面支持部材のいずれか一方に固定されている、便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器装置に関し、詳しくは、便器洗浄タンクが複数のカバー体で構成されるタンクカバーによって覆われている便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄タンクが複数のカバー体で構成されるタンクカバーによって覆われている便器装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
便器洗浄タンクがタンクカバーにより覆われる便器装置では、例えば使用者がタンクカバーに凭れ掛かることによりタンクカバーに荷重が掛かった場合に、タンクカバーにずれが生じないようにすることが望まれる。
【0005】
本発明は、タンクカバーを構成する複数のカバー体同士のずれを抑制できる便器装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る便器装置は、便器本体(例えば、後述の便器本体21)と、前記便器本体に固定される便器洗浄タンク(例えば、後述の便器洗浄タンク4)と、前記便器洗浄タンクを覆うタンクカバー(例えば、後述のタンクカバー5)と、を有する便器装置(例えば、後述の便器装置1)であって、前記タンクカバーは、複数のカバー体(例えば、後述の前カバー51、後カバー52、上カバー53)に分割され、前記複数のカバー体のうちの少なくとも1つが、前記便器洗浄タンクを介して間接的に又は直接的に前記便器本体に固定され、前記複数のカバー体のうちのその他のカバー体の少なくとも1つが、前記便器洗浄タンクを介して間接的に又は直接的に前記便器本体に固定されている前記カバー体に対して固定されている。
【0007】
(2) (1)に記載の便器装置において、前記タンクカバーは、前記便器洗浄タンクの前方を覆う前カバー(例えば、後述の前カバー51)と、前記便器洗浄タンクの側方及び後方を覆う後カバー(例えば、後述の後カバー52)と、に前後方向に分割されていることが好ましい。
【0008】
(3) (2)に記載の便器装置において、前記便器洗浄タンクは、洗浄水を貯留するタンク本体(例えば、後述のタンク本体41)と、前記タンク本体の両側面にそれぞれ配置される側面支持部材(例えば、後述の側面フレーム部材451)と、を有し、前記後カバーは、前記側面支持部材に固定され、前記前カバーは、前記後カバーに固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タンクカバーを構成する複数のカバー体同士のずれを抑制できる便器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明に係る便器装置の便器洗浄タンクの内部を示す平面図である。
【
図3】本発明に係る便器装置のタンクカバーを分解した様子を後方側から見た斜視図である。
【
図4】本発明に係る便器装置の便器洗浄タンクを前方側から見た一部を分解して示す斜視図である。
【
図5】便器洗浄タンクの下部構造の要部を拡大して示す断面図である。
【
図6】側面フレーム部材を拡大して示す側面図である。
【
図7】後カバーの要部を拡大して示す斜視図である。
【
図8】前カバーの要部を拡大して示す斜視図である。
【
図9】
図7中のA-A線に沿う部位の前カバーと後カバーとの係合構造を拡大して示す断面図である。
【
図10】タンクカバーの前カバーと後カバーとを組み付けた状態を後方側から見た便器洗浄タンクの斜視図である。
【
図11】前カバーと上カバーとの取付け構造を示す要部断面図である。
【
図12】後カバーの突出部を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に示す便器装置1は、
図1に示すように、便器2が床面f1に設置される床置きタイプの便器装置を示している。便器装置1は、便器2と、便器洗浄装置3と、を備えている。なお、以下の説明において、便器2に着座した使用者から見た場合の前後の向きを前後方向とする。また、便器2に着座した使用者から見た場合の左右の向きを幅方向とする。更に、便器2が設置される床面に対する鉛直方向に沿う上下の向きを上下方向とする。
【0012】
便器2は、立壁面f2に近接した床面f1上に設置されている。便器2は、便器本体21の上部に回動可能に取り付けられた便座22及び便蓋23と、これら便座22及び便蓋23の後方に配置される便座装置の機能部24と、を有している。便器本体21の後部の両側面には、それぞれサイドカバー211が面ファスナー等によって着脱可能に取り付けられ、便器本体21の後部を遮蔽している。
【0013】
便器洗浄装置3は、便器本体21の後方に配置されている。便器洗浄装置3は、便器洗浄タンク4と、便器洗浄タンク4の外装体であるタンクカバー5と、を含んで構成される。
便器洗浄タンク4は、
図4に示すように、タンク本体41と、内蓋42と、ベースプレート43と、防露材44と、補強フレーム45と、を備えている。
【0014】
タンク本体41は、ブロー成形品からなる。ブロー成形されたタンク本体41の上面開口部411(
図2参照)は、ブロー成形品の上部を略水平方向に切断することによって形成される。このため、ブロー成形品は、前後方向に離型することによって成形でき、射出成形品のような離型のための抜き勾配を上下方向に設ける必要がない。その結果、タンク本体41の外周面は、上下方向に沿って真っ直ぐな面となり、床面に対して垂直に延びた側壁面を構成することができる。このため、タンク本体41は、抜き勾配に起因するタンク容積の減少が少なく、奥行き寸法を小さくして薄型化しても、射出成形品に比べてタンク容積を大きく確保することが可能である。その結果、このタンク本体41を有する便器洗浄タンク4を備えた便器装置1は、便鉢21bの大きさを変更することなく、前後方向の寸法(前出寸法)を縮小化することが可能である。
【0015】
タンク本体41の内部には、洗浄水が貯留されると共に、
図2に示すように、便器洗浄用の内部部品が収容されている。具体的には、タンク本体41内には、給水を行うボールタップ4a、ボールタップ4aの止水を行うためのフロート4b、洗浄水の水位を制限すると共に便器本体21に補給水を供給するためのオーバーフロー管4c、排水口を開閉するフラッパー弁4d、フラッパー弁4dを引き上げる玉鎖4e、玉鎖4eを引き上げ操作するための引上げアーム4f等が収容されている。引上げアーム4fには、タンクカバー5の外側に取り付けられるレバーハンドル4gのスピンドル4hが連結されている。
【0016】
内蓋42は、タンク本体41の上面開口部411を被蓋するように設けられている。内蓋42は、内蓋本体421と、点検蓋422とで構成される。内蓋本体421は、上面開口部411の全周に沿って装着され、タンク本体41に対してねじ止めされている。一方、点検蓋422は、タンク本体41に対してねじ止めされておらず、内蓋本体421に対して着脱可能に取り付けられている。このため、内蓋42は、内蓋本体421から点検蓋422を取り外すことにより、ねじ止めされている内蓋本体421を取り外すことなく、タンク本体41の内部に対してアクセス可能である。
【0017】
ベースプレート43は、タンク本体41の下部に取り付けられている。本実施形態に示すベースプレート43は、タンク本体41よりも硬質な樹脂によって形成され、タンク本体41の底面形状と略等しい平面形状を有している。ベースプレート43は、タンク本体41の下面を支持すると共に、ベースプレート43の底部から突出する一対の緊締ボルト431(
図4参照)によって、便器本体21の後部側の上面21aに固定されることにより、タンク本体41を便器本体21に固定する機能を有する。
【0018】
タンク本体41とベースプレート43との取付け構造を
図5に示す。タンク本体41の底面412に、円形の下面開口部413が形成されている。この下面開口部413には、略円筒状の弁座シート46が装着されている。弁座シート46は、タンク本体41の内部部品の一つであるフラッパー弁4d(
図5において図示せず)の弁座を構成する部品であり、下面開口部413よりも大径なフランジ部461を有している。弁座シート46は、フランジ部461とタンク本体41との間にパッキン46aを挟んで、タンク本体41の内側から装着されている。
【0019】
弁座シート46は、フランジ部461よりも下方側に、外周面に雄ねじを有する円筒部462を一体に有し、この円筒部462が下面開口部413から下方に突出している。弁座シート46は、下面開口部413から突出する円筒部462に、タンク本体41の外側から締付けナット46bが螺合することにより、タンク本体41に取り付けられている。
【0020】
一方、ベースプレート43の中央部には、円形の開口部432が設けられ、この開口部432に、タンク本体41の下面から突出する弁座シート46の円筒部462が貫挿されている。そして、この開口部432から下方に突出する円筒部462に締付けナット46cが螺合することにより、ベースプレート43が締付けナット46cとタンク本体41との間で挟着されている。これにより、タンク本体41の下部にベースプレート43が固定される。
【0021】
タンク本体41に固定されたベースプレート43は、下面に突設される一対の緊締ボルト431を、便器本体21の設けられるタンク取付け穴(図示せず)に挿入させて固定される。これにより、タンク本体41がベースプレート43を介して便器本体21に固定される。便器本体21に固定されたタンク本体41の円筒部462は、便器本体21の洗浄水流入口(図示せず)と連通し、タンク本体41内の洗浄水を便器本体21に供給可能とされる。
【0022】
防露材44は、発泡スチロール樹脂等により、タンク本体41の外周面に沿った形状に成形されている。本実施形態に示す防露材44は、前側防露材441と後側防露材442とに2分割され、タンク本体41を前後方向から挟むようにタンク本体41の外周面に装着されている。防露材44は、少なくともタンク本体41内に貯留される洗浄水の水位に対応する高さを有する。
【0023】
この防露材44は、前側防露材441と後側防露材442とに前後方向に2分割されているため、成形型から離型するための抜き勾配が前後方向に設けられ、上下方向には抜き勾配は設けられない。これにより、前側防露材441と後側防露材442とが組み合わされて構成される防露材44は、便器洗浄タンク4の前面側及び後面側において上下方向に沿って垂直に延びる面を形成することができる。その結果、便器洗浄タンク4を薄型化しても、防露材の抜き勾配に起因する便器洗浄タンク4のタンク容積の減少を招くおそれはない。しかも、本実施形態に示すタンク本体41にも上下方向の抜き勾配が設けられていないことと相俟って、便器洗浄タンク4の更なる薄型化を図ることが可能となり、便器装置1の前後方向の寸法(前出寸法)を更に縮小化することが可能である。
【0024】
本実施形態に示す補強フレーム45は、
図4に示すように、便器洗浄タンク4の両側面に配置される金属製の側面フレーム部材451と、便器洗浄タンク4の前面側に幅方向に延びるように配置される金属製の補強ステー452と、を有している。なお、
図4では、便器本体21を破線で示し、便器本体21上の便座22、便蓋23、便器装置の機能部24及びタンクカバー5の図示を省略している。
【0025】
側面フレーム部材451は、本発明における側面支持部材に対応する。側面フレーム部材451は、ベースプレート43の幅方向の両端面43aに、それぞれ固定ねじ45aによって固定されている。側面フレーム部材451は、ベースプレート43からタンク本体41の略1/2の高さに亘る範囲の便器洗浄タンク4の側面を覆うように配置されている。側面フレーム部材451は、平面視コ字型に形成されており、ベースプレート43に取り付けられることによって、前側防露材441と後側防露材442とが前後に開かないように、2分割されている防露材44を前後方向から挟持している。
【0026】
側面フレーム部材451の下端部には、
図6に示すように、固定ねじ45aを挟んでベースプレート43の端面43aの前後端部にそれぞれ設けられた凸部433に係合する凹部451aをそれぞれ有している。側面フレーム部材451は、これに凹部451aがベースプレート43の凸部433に係合することにより、固定ねじ45aを中心として回動することが阻止され、ベースプレート43に対して強固に固定される。
【0027】
なお、ベースプレート43よりも下方にはみ出した側面フレーム部材451の下端部は、後述する下カバー54の取り付け部となっている。ここには、2つのねじ穴451bと、その間に1つのボス穴451cとが形成されている。下カバー54は、下カバー54に設けられたボス(図示せず)をボス穴451cに係合させた状態で、各ねじ穴451bを利用してねじ固定される。
【0028】
補強ステー452の両端部は、左右の側面フレーム部材451に固定ねじ45bによってそれぞれ固定されている。これにより、左右の側面フレーム部材451同士が補強ステー452によって連結され、側面フレーム部材451に生じるスプリングバック等によって側面フレーム部材451が左右方向に広がることを防止している。
【0029】
補強フレーム45は、使用者がタンクカバー5に凭れ掛かった際に、その荷重を受けてタンク本体41に荷重を直接作用させないように機能する。補強ステー452に作用する荷重は、補強ステー452の両端部から各側面フレーム部材451に伝達される。側面フレーム部材451は、タンク本体41よりも堅牢なベースプレート43に固定されているため、補強ステー452から伝達される荷重を効果的に受け止め、ベースプレート43を介して便器本体21に逃がすことができる。
【0030】
なお、前後方向に分割された防露材44は、抜き勾配も前後方向に設けられるため、
図4に示すように、前側防露材441の前面には、補強フレーム45の補強ステー452を収容する凹部44aと側面フレーム部材451を収容する凹部44bとを有することができる。この凹部44a、44bにより、補強フレーム45の前方への突出量を抑えることができるため、補強フレーム45を設けてもタンク本体41のタンク容積の減少を招くことなく、便器洗浄タンク4を薄型化することができる。
【0031】
タンクカバー5は、
図1~
図3に示すように、便器洗浄タンク4の前方を覆う前カバー51と、便器洗浄タンク4の側方及び後方を覆う後カバー52と、便器洗浄タンク4の上方を覆う上カバー53と、を有している。これら前カバー51、後カバー53及び上カバー53は、本発明のカバー体に対応する。これにより、便器洗浄タンク4の全体がタンクカバー5によって遮蔽され、見栄えが良好となり、意匠性が向上する。
【0032】
後カバー52は、便器洗浄タンク4の両側方にそれぞれ設けられた側面フレーム部材451に対して、固定ねじ52aによってねじ止めされる。このため、後カバー52の固定基準は側面フレーム部材451となる。側面フレーム部材451は、ベースプレート43に固定され、ベースプレート43は便器本体21に固定されているため、後カバー52は、便器洗浄タンク4の側面フレーム部材451及びベースプレート43を介して間接的に便器本体21に固定される。
【0033】
一方、前カバー51は、後カバー52に対して前後方向に分割されている。また、上カバー53は、後カバー52に対して上下方向に分割されている。前カバー51及び上カバー53は、後カバー52に対して取り外し可能に設けられている。
【0034】
前カバー51及び上カバー53は、後カバー52に取り付けられるため、これらの固定基準は、いずれも同じ後カバー52となり、前カバー51、後カバー52及び上カバー53の間のずれの発生は抑制される。しかも、使用者が前カバー51に凭れ掛かる等することによって前カバー51に荷重が掛かった際は、その荷重を後カバー52、側面フレーム部材451及びベースプレート43を介して、便器本体21に逃がすことができる。
【0035】
便器洗浄タンク4の下方且つ便器2の後方は、側面フレーム部材451の下端部に取り付けられた下カバー54によって覆われている。これにより、便器2の後方に配置される配管部品(図示せず)等が目隠しされると共に、便器2の後方側が、便器洗浄装置3から下方向に延びる薄型の略直方形状に統一され、意匠性が更に向上する。
【0036】
タンクカバー5の前カバー51は、
図2及び
図12に示すように、便器装置1を側面視した場合に垂直となるように配置されていると共に、前方に向けて凸となるように幅方向に湾曲している。上記したように、タンク本体41は上下方向の抜き勾配を有しておらず、床面に対して垂直に延びた側壁面を有するため、前カバー51をタンク本体41に可及的に近接させることができる。また、前カバー51は前方に向けて幅方向に湾曲しているため、前カバー51が平坦面である場合に比べて、前方へ湾曲している分だけタンク本体41を大きくすることができる。これにより、タンク本体41のタンク容積を確保することが可能である。しかも、前カバー51は側面視垂直であるため、便座22や便蓋23を上方に回動させた際に、前カバー51と接触しにくくなり、タンクカバー5と便座22や便蓋23との距離を可及的に近接させることができる。
【0037】
タンクカバー5の前カバー51は、後カバー52に対して分割されており、取り外し可能であるため、便器洗浄タンク4のメンテナンスの際は、前カバー51を取り外すことにより、便器洗浄タンク4に容易にアクセス可能である。このとき、便器洗浄タンク4自体を便器本体21から取り外す必要はないため、メンテナンス作業も容易に行うことができる。
【0038】
本実施形態に示す前カバー51は、後カバー52の前方から取り付け及び取り外し可能に取り付けられてもよいが、後カバー52に対して上方に向けて取り外し可能であることが好ましい。これにより、タンクカバー5の下部前方に配置される便座22、便蓋23及び便座装置の機能部24を便器本体21に取り付けた状態のまま、前カバー51を取り外して便器洗浄タンク4に対してアクセスすることが可能となり、便器洗浄タンク4のメンテナンス性を更に向上させることができる。
【0039】
ここで、本実施形態に示すタンクカバー5の前カバー51と後カバー52との取付け構造について、
図7~
図9を用いて説明する。
先ず、
図7に示すように、後カバー52の前端部521の外側に、上下方向に沿う前側突条部522及び後側突条部523が設けられている。前側突条部522と後側突条部523とは平行である。このうちの後側突条部523は、後カバー52の上下方向の略全長に亘って形成されているのに対し、前側突条部522は、後カバー52の上下方向に一定の間隔を置いて複数に分割されている。これにより、後カバー52の前端部の外側には、前側突条部522が設けられている部位のみに、前側突条部522と後側突条部523との間に溝524が形成される。
【0040】
一方、
図2に示すように、前カバー51は、後カバー52よりも僅かに幅広に形成されることにより、後カバー52の両側方にそれぞれ張り出すオーバーハング形状を有する。これにより、便器装置1を正面視(前方側から観察)した場合、後カバー52が前カバー51に覆い隠され、前カバー51の両側からはみ出さず、見栄えが良くなる。しかも、
図1に示すように、前カバー51の上部も、後カバー52よりも僅かに上方に張り出すように形成され、後カバー52の高さ方向も覆い隠している。このため、後カバー52の全体が前カバー51の背面に覆い隠されるので、便器装置1の意匠性が更に向上する。
【0041】
前カバー51には、幅方向の両端縁から上端縁に亘って、外周リブ511が形成されている。外周リブ511は、後カバー52の前端部521の溝524を覆うことができるように、後方に向けて突出している。このうち、前カバー51の幅方向の両端に配置される外周リブ511aの内側には、後カバー52の溝524と係合可能な係合突起512が、上下方向に間隔をおいて複数形成されている。1つの係合突起512の上下方向の長さは、後カバー52の上下に隣接する前側突条部522の間隔よりも僅かに短く形成されている。
【0042】
前カバー51を後カバー52に取り付ける場合は、上下に隣接する前側突条部522の間を通って係合突起512を後側突条部523に当接させた後、後側突条部523に沿って下方にスライド移動させることにより、
図9に示すように、前カバー51の係合突起512を、前側突条部522と後側突条部523との間の溝524に係合させる。これにより、前カバー51は、後カバー52に対して上方向にスライド移動可能に取り付けられる。前カバー51の取り付け及び取り外しは、前カバー51の係合突起512を上下に隣接する前側突条部522の間を通すことによって行うことができるため、前カバー51の取り付け及び取り外しのための移動ストロークを短くすることができる。
【0043】
前カバー51の係合突起512は、外周リブ511aの内側に設けられているため、前カバー51の前面に、係合突起512を設けることに起因するヒケが形成されず、前カバー51の外観も良好となる。更に、前カバー51の外周リブ511aによって、前カバー51と後カバー52との係合部分を覆い隠すことができるため、便器装置1の側方からの見栄えも良好となる。
【0044】
後カバー52に取り付けられた前カバー51は、
図8、
図10及び
図11に示すように、前カバー51の裏面に設けられた一対の取付け片513を利用して、後カバー52の上端部に設けられた前カバー取付け部525に対して、上方から固定ねじ51aによって固定される。このため、便器洗浄タンク4を便器本体21に固定した状態のまま、前カバー51の取り外しが可能である。これにより、前カバー51の交換や意匠替えを容易に行うことができる。
【0045】
上カバー53は、前カバー51が後カバー52に固定された後に、後カバー52の上部に取り付けられる。
図10及び
図11に示すように、上カバー53の前端中央部には、上方に向けて突出する突起部531を有している。一方、前カバー51の上端側の外周リブ511bの中央部には、
図7及び
図9に示すように、外周リブ511bの内端側が下方に向けて更に屈曲されることにより、上カバー53の突起部531を収容する収容溝515が形成されている。
【0046】
上カバー53は、突起部531を前カバー51の収容溝515に収容することにより、後カバー52の上部に装着される。その後、上カバー53は、固定ねじ53aによって、後カバー52の前端部521の上端に設けられたねじ穴526に固定される。これにより、前カバー51の上端部は、上カバー53と係合するため、前カバー51の前方への抜け外れが防止される。なお、上カバー53の上面は、
図10及び
図11に示すように、後方に向けて下り傾斜している。前カバー51の上端部は、この上カバー53も背面に覆い隠すように延びているため、便器装置1の正面側から上カバー53も見えにくくなっている。
【0047】
なお、
図7、
図10及び
図12に示すように、後カバー52の上部には、中央部よりもやや幅方向の一方側に寄った位置に、背面側から前方に向けて大きく凹むことにより、タンクカバー5の内側に配置される突出部527が形成されている。この突出部527は、便器洗浄タンク4が操作スイッチの操作により自動洗浄される自動洗浄タイプとする場合に、タンクカバー5内に、自動洗浄のためのギヤボックス等の駆動ユニットを載置する載置部とすることができる。
【0048】
以上の実施形態では、前カバー51は、後カバー52に対してねじ固定されるが、側面フレーム部材451に対してねじ固定されてもよい。また、前カバー51及び/又は後カバー52は、便器本体21に対して直接固定されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 便器装置
21 便器本体
4 便器洗浄タンク
41 タンク本体
451 側面フレーム部材
5 タンクカバー
51 前カバー(カバー体)
52 後カバー(カバー体)
53 上カバー(カバー体)