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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】繊維強化材料片の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/54 20060101AFI20220106BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20220106BHJP
   B29C 65/02 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B29C70/54
C08J5/24 CES
B29C65/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018095073
(22)【出願日】2018-05-17
(65)【公開番号】P2019199030
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】西村 勲
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-217540(JP,A)
【文献】特開2011-104906(JP,A)
【文献】特開2004-17370(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 70/54
C08J 5/24
B29C 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維基材が積層されて形成された繊維強化材料から成る繊維強化材料片を製造する製造装置であって、強化繊維基材の積層が行われる積層台と、積層ヘッドを備えると共に該積層ヘッドを前記積層台上の固定の積層領域上に移動させることによって前記強化繊維基材を該積層領域に積層する積層機構と、トリムヘッドを備えると共に該トリムヘッドを前記積層領域上で移動させることによって前記積層機構によって形成された前記繊維強化材料に対しトリミング加工を施すトリム機構とを含み、前記積層機構で前記強化繊維基材を積層して前記繊維強化材料を形成する積層工程と前記トリム機構で前記繊維強化材料を予め定められた形状に裁断するトリム工程とによって前記繊維強化材料片を製造する繊維強化材料片の製造装置において、
前記積層ヘッド及び前記トリムヘッドを支持する支持構造と、該支持構造に対応して設けられると共に前記積層台に沿って移動可能であるように前記支持構造を支持する案内部材と、前記支持構造を前記案内部材上で移動させる駆動機構とを含み、
前記支持構造は、前記積層工程では前記支持構造に支持された状態の前記トリムヘッドを前記積層ヘッドに干渉しないトリムヘッド用の退避位置へ配置可能であると共に、前記トリム工程では前記支持構造に支持された状態の前記積層ヘッドを前記トリムヘッドに干渉しない積層ヘッド用の退避位置に配置可能であるように構成される
ことを特徴とする繊維強化材料片の製造装置。
【請求項2】
前記支持構造は、前記積層ヘッドを支持する第1の支持部と、前記トリムヘッドを支持する第2の支持部とを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化材料片の製造装置。
【請求項3】
前記支持構造は、前記第1の支持部を含む第1の構造体と、前記第2の支持部を含む第2の構造体とで構成されており、
前記駆動機構は、前記第1の構造体に対応して設けられると共に前記第1の構造体を前記案内部材上で移動させる第1の駆動部と、前記第2の構造体に対応して設けられると共に前記第2の構造体を前記案内部材上で移動させる第2の駆動部とを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の繊維強化材料片の製造装置。
【請求項4】
各前記退避位置が、前記案内部材の長手方向において前記積層領域と重複しない位置である領域外退避位置に設定されており、
前記案内部材は、前記領域外退避位置まで延在するように構成されている
ことを特徴とする請求項3に記載の繊維強化材料片の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強化繊維基材が積層されて形成された繊維強化材料から成る繊維強化材料片を製造する製造装置であって、強化繊維基材の積層が行われる積層台と、積層ヘッドを備えると共に該積層ヘッドを積層台上の固定の積層領域上に移動させることによって強化繊維基材を該積層領域に積層する積層機構と、トリムヘッドを備えると共に該トリムヘッドを積層領域上で移動させることによって積層機構によって形成された繊維強化材料に対しトリミング加工を施すトリム機構とを含み、積層機構で強化繊維基材を積層して繊維強化材料を形成する積層工程とトリム機構で繊維強化材料を予め定められた形状に裁断するトリム工程とによって繊維強化材料片を製造する繊維強化材料片の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、航空機関連部品、自動車関連部品及びスポーツ・レジャー用品などを繊維強化複合材料によって形成することが行われている。なお、その繊維強化複合材料は、強化繊維基材(例えば、強化繊維(炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維等)を樹脂材料等と組み合わせて成る基材)が積層されて形成された繊維強化材料を加圧・加熱して成形することで製造される。
【0003】
因みに、その強化繊維基材の1つとして、所謂プリプレグがある。また、そのプリプレグとしては、強化繊維を経糸及び緯糸として形成された織物にマトリックス樹脂を含浸させた織物材や、強化繊維を一方向に引き揃えた状態でマトリックス樹脂を含浸させて収束させた所謂UD材がある。さらに、強化繊維基材としては、そのようなプリプレグの他に、強化繊維の収束性を維持する程度にマトリックス樹脂や接合材(バインダ)等を添着させた所謂セミプレグも含まれる。
【0004】
ところで、前記した繊維強化材料は、例えば、テーブル等の積層台上における積層領域に強化繊維基材を配置すると共に、その配置された強化繊維基材上に強化繊維基材を積層するといった積層工程により形成される。また、繊維強化複合材料を製造するにあたり、前記した加圧・加熱による成形の前段階において、成形される繊維強化複合材料の形状等に応じて前記のように形成された繊維強化材料を裁断する(トリミング加工を施す)トリム工程が行われる場合がある。なお、そのトリム工程は、トリムヘッドを有する裁断機を用い、そのトリムヘッドを繊維強化材料上で移動させるかたちで行われる。そして、そのトリム工程(裁断)により、繊維強化材料から切り出された繊維強化材料片が形成される。
【0005】
なお、従来において一般的には、その積層工程とトリム工程とは、工場内における別の場所で行われている。したがって、その場合には、その繊維強化材料片を形成するための各工程においてその工程を積層工程からトリム工程へ移行するにあたり、積層工程で形成された繊維強化材料をトリミング加工が行われる場所へと搬送する搬送工程が積層工程とトリム工程との間に行われることとなる。
【0006】
しかし、その搬送工程は、作業者にとって手間の掛かる作業を伴うため、従来における繊維強化材料片を形成する作業は、作業効率が非常に悪いものとなっていた。そこで、その搬送工程を省略して作業効率を改善すべく、そのような搬送工程を必要としない繊維強化材料片(プリプレグ積層材)の製造装置が特許文献1に開示されている。
【0007】
その特許文献1に開示された装置(以下、「従来装置」と言う。)は、積層工程とトリム工程とが同一の作業テーブル上で行われるように構成されている。具体的には、従来装置は、作業テーブル上で移動可能な着脱ヘッドを有すると共に、その着脱ヘッドに着脱可能な積層アタッチメント及びトリムアタッチメントを有している。その上で、その従来装置では、積層工程が行われる際には積層アタッチメントが着脱ヘッドに装着され、トリム工程が行われる際にはトリムアタッチメントが着脱ヘッドに取り付けられる。すなわち、従来装置では、着脱ヘッドに対しアタッチメントの付け替え作業を行うことによって、積層工程とトリム工程とを同一の作業テーブル上で行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公平7-110499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、その従来装置では、前記したような工程を積層工程からトリム工程へ移行する度に、着脱ヘッドに対し装着されるアタッチメントを付け替える作業が必要となる。そのため、従来装置では、そのアタッチメントの付け替え作業に時間を要してしまい、それに伴って、繊維強化材料片を形成する作業は、依然として作業効率が悪いものとなってしまっていた。
【0010】
そこで、本発明は、積層機構で強化繊維基材を積層して繊維強化材料を形成する積層工程とトリム機構で繊維強化材料を予め定められた形状に裁断するトリム工程とによって繊維強化材料片を製造する繊維強化材料片の製造装置において、繊維強化材料片を製造する作業を効率良く行うことができる構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような繊維強化材料片の製造装置において、積層ヘッド及びトリムヘッドを支持する支持構造と、該支持構造に対応して設けられると共に積層台に沿って移動可能であるように支持構造を支持する案内部材と、支持構造を案内部材上で移動させる駆動機構とを含む。その上で、その繊維強化材料片の製造装置は、支持構造が、積層工程では支持構造に支持された状態のトリムヘッドを積層ヘッドに干渉しないトリムヘッド用の退避位置へ配置可能であると共に、トリム工程では支持構造に支持された状態の積層ヘッドをトリムヘッドに干渉しない積層ヘッド用の退避位置に配置可能であるように構成される、ことを特徴とする。
【0012】
また、そのような本発明による繊維強化材料片の製造装置において、支持構造は、積層ヘッドを支持する第1の支持部と、トリムヘッドを支持する第2の支持部とを含むように構成されていても良い。
【0013】
さらに、支持構造は、第1の支持部を含む第1の構造体と、第2の支持部を含む第2の構造体とで構成されていても良い。その上で、駆動機構は、第1の構造体に対応して設けられると共に第1の構造体を案内部材上で移動させる第1の駆動部と、第2の構造体に対応して設けられると共に第2の構造体を案内部材上で移動させる第2の駆動部とを含むように構成されていても良い。また、各退避位置が、案内部材の長手方向において積層領域と重複しない位置である領域外退避位置に設定されていても良く、その上で、案内部材は、領域外退避位置まで延在するように構成されていても良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明による繊維強化材料片の製造装置によれば、積層ヘッド及びトリムヘッドが支持構造に支持されたままの状態で、積層工程ではトリムヘッドをトリムヘッド用の退避位置へ配置可能であると共に、トリム工程では積層ヘッドを積層ヘッド用の退避位置へ配置可能であることから、積層工程、トリム工程の各工程において、トリムヘッド又は積層ヘッドを支持構造から取り外すことなくその工程を実行することが可能である。したがって、そのような本発明によれば、積層工程からトリム工程へ移行する際や再び積層工程を行う際に、前記した従来装置のようにヘッド(アタッチメント)を交換する作業を行わなくても良いため、繊維強化材料片を製造する作業を効率的に行うことができる。
【0015】
また、そのような本発明による繊維強化材料片の製造装置において、支持構造が第1の支持部と第2の支持部とを含むように構成されるものとすれば、前記した各工程において、その工程に対応するヘッドのみを積層領域上で移動させることが可能となるため、繊維強化材料片を製造する作業をさらに効率的に行うことができる。
【0016】
さらに、支持構造を前記した第1の支持部を含む第1の構造体及び第2の支持部を含む第2の構造体の2つの構造体を含むように構成し、その上で、駆動機構が第1の構造体に対応する第1の駆動部と第2の構造体に対応する第2の駆動部とを含むように構成されるものとすれば、各ヘッドを移動させるために用いるモータ等の駆動源を小型化することができる。それにより、繊維強化材料片の製造装置のコストを抑えることができる。
【0017】
詳しくは、積層ヘッド及びトリムヘッドを支持する支持構造が単一の構造体で構成されている場合は、その支持構造は、両方のヘッドを支持するための強度が必要となるため、そのような強度が十分に確保されるように構成されなければならなくなる。そして、そのように構成した結果として、支持構造の重量が重くなってしまうため、それに伴い、その支持構造を移動させるための駆動機構における駆動源としてのモータ等も必然的に出力が大きいものを採用しなければならなくなる。そのため、その構成の場合には、繊維強化材料片の製造装置のコストが高くなってしまう。
【0018】
それに対し、支持構造を、前記のように対応するヘッドを支持する2つの構造体(第1の構造体、第2の構造体)で構成されるものとすれば、各構造体に求められる強度はそれぞれに対応するヘッドに応じたものであれば良いため、その各構造体の強度は、前記した構成と比べて低くても良いこととなる。なお、支持構造を2つの構造体で構成する場合には、駆動機構は、各構造体に対応させて設けられた2つの駆動部(第1の駆動部、第2の駆動部)で構成されることとなる。その上で、各構造体が前記のような低い強度のものとして構成されていれば、その各構造体の重量が軽くなるため、各駆動部における駆動源としてのモータ等も出力が小さいものを採用することが可能となる。しかも、各構造体の強度や大きさをそれぞれに対応するヘッドの大きさ(重量)に応じたものとすることができるため、2つのヘッドのうちの一方(特に積層ヘッド)が大型のものである場合、他方のヘッドを支持する構造体を、前記一方のヘッドに合わせることなく、小型化することができる。したがって、それらにより、繊維強化材料片の製造装置のコストを更に抑えることができる。
【0019】
また、前記のように支持構造が2つの構造体を含むように構成されている場合において、積層ヘッド用及びトリムヘッド用の各退避位置が前記した領域外退避位置に設定されると共に、案内部材がその領域外退避位置まで延在するように構成されるものとすれば、その各ヘッドの退避位置への移動が、対応する構造体を領域外退避位置まで移動させることで達成されることとなる。それにより、支持構造における支持部の範囲内に退避位置が設定されるような場合と比べ、支持構造の強度を高いものとしなくて良いこととなる。そして、その結果として、その繊維強化材料片の製造装置のコストを抑えることができる。
【0020】
詳しくは、本発明の繊維強化材料片の製造装置においては、水平方向に関し案内部材の長手方向と直交する方向(以下、「幅方向」と言う。)に支持部が延在するように支持構造を構成した場合において、その退避位置を支持部の範囲内に設定することも可能である。しかし、その場合には、その支持構造における支持部を幅方向に関しその退避位置を含むような長さとしなければならないため、その分だけ支持部が長尺となり、それに伴って支持部自体の強度やそれを支持する部分等の強度を高める必要がある。したがって、その場合には、繊維強化材料片の製造装置のコストが高くなってしまう。それに対し、本発明を前記のように構成した場合には、前記のように支持部自体を退避位置が含まれるような長尺の構成とする必要がない。したがって、その場合には、支持構造の強度を高いものとしなくて良いこととなるため、繊維強化材料片の製造装置のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明が適用された繊維強化材料片の製造装置の全体構成図である。
図2図1に示す製造装置の全体平面図である。
図3図1に示す製造装置における積層ヘッドの内部構成を概略的に示した側面図である。
図4図1に示す製造装置におけるトリムヘッドを概略的に示した側面図である。
図5】本発明が適用された別の実施形態の製造装置の全体平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、図1~4に基づき、本発明が適用された繊維強化材料片の製造装置の一実施形態(実施例)について説明する。なお、本発明で言う繊維強化材料片とは、前述のように積層台上に強化繊維基材を積層することによって形成された繊維強化材料から切り出されたものであるが、本実施例では、その繊維強化材料(片)の基となる強化繊維基材は、強化繊維としての炭素繊維にマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)を含浸させた熱硬化性のプリプレグであるものとする。
【0023】
図1~4に示すように、製造装置1は、プリプレグPが積層される積層台としてのテーブル40と、そのテーブル40上にプリプレグPを積層するための積層機構10とを備えている。また、製造装置1は、その積層されたプリプレグPから成る繊維強化材料としてのプリプレグ積層材PSから繊維強化材料片としてのプリプレグ積層材片を切り出すべく、プリプレグ積層材PSに対しトリミング加工を施すためのトリム機構60も備えている。
【0024】
その製造装置1に備えられた各構成要素について、テーブル40は、平面視において矩形状を為す天板40aと、天板40aを支持する支持台40bとで構成されている。なお、前記したプリプレグPの積層はそのテーブル40の天板40a上で行われるが、その積層は、その天板40a内に定められた積層領域40cにおいて行われる。
【0025】
また、積層機構10は、プリプレグPを積層するための積層ヘッド20と、積層ヘッド20を吊り下げるかたちで支持する門型の支持構造体(第1の構造体に相当)50と、支持構造体50を支持する一対のサイドレール51、51とを含んでいる。
【0026】
それらについて、一対のサイドレール51、51は、長尺角柱状の基部51aを主体として構成されている。その上で、その一対のサイドレール51、51は、その長手方向がテーブル40における天板40aの長手方向と平行を為す向きで、テーブル40に対し、天板40aの短辺方向における両側において床面上に設置されている。なお、以下では、前記したテーブル40の天板40aの長手方向及びそれと平行な方向を「前後方向」と称して説明する。
【0027】
また、支持構造体50は、各サイドレール51に対応させて設けられた一対のコラム53、53と、両コラム53、53間に架設されたクロスビーム55(第1の支持部に相当)と、クロスビーム55上に設けられて積層ヘッド20を支持するサドル部57とを備えている。各コラム53は、台座部53aとその台座部53a上に立設された支柱53bとで構成されている。そして、各コラム53は、その台座部53aにおいて、対応するサイドレール51における基部51a上に載置された状態で設けられている。
【0028】
また、クロスビーム55は、長尺角柱状の梁部材であって、その両端部のそれぞれが両コラム53、53における各支柱53bの上端に取り付けられるかたちで、一対のコラム53、53間に架設されている。但し、そのようにクロスビーム55が架設された状態で、両コラム53、53は、前記前後方向における位置が一致する状態となっており、それにより、クロスビーム55は、その長手方向が前記前後方向と直交する方向(テーブル40の天板40aの短辺方向)に一致する状態となっている。また、以下では、前記したテーブル40の天板40aの短辺方向及びそれと平行な方向を「幅方向」と称して説明する。
【0029】
サドル部57は、積層ヘッド20を支持構造体50に対し支持された状態とするための機構であり、クロスビーム55上に設けられている。そして、そのサドル部57は、クロスビーム55上に載置される板状のサドルベース57aを主体として構成されている。また、そのサドル部57は、サドルベース57aにおけるクロスビーム55側の面から下方へ向けて突出するようなかたちで、サドルベース57aに対し回転自在に支持された支持シャフト57bを有している。そのため、クロスビーム55には、その支持シャフト57bの配置を許容するために、クロスビーム55を鉛直方向に貫通すると共に前記幅方向に延在する孔55aが形成されている。そして、サドル部57における支持シャフト57bは、その孔55aに挿通され、クロスビーム55の下方まで延びている。
【0030】
また、サドル部57は、サドルベース57a上に設けられたヘッド回動部を有している。そのヘッド回動部は、支持シャフト57bを回動させるための部分であり、駆動モータ57c及び駆動モータ57cと支持シャフト57bとを連結して駆動モータ57cの出力軸の回転を支持シャフト57bに伝達する駆動伝達機構57dを備えている。それにより、サドル部57は、その支持シャフト57bが、鉛直方向に延びる自身の軸心を回転中心として、そのヘッド回動部によって回動される構成となっている。
【0031】
さらに、積層機構10において、そのサドル部57とクロスビーム55との間には、サドル部57を前記幅方向に移動させるためのヘッド移動部59が設けられている。そのヘッド移動部59は、サドル部57におけるサドルベース57aの側面に対し出力軸の軸心を鉛直方向に向けて取り付けられた駆動モータ59aと、クロスビーム55の側面に取り付けられたラック59bと、駆動モータ59aの出力軸に取り付けられると共にラック59bと噛合するピニオンギア59cで構成されている。また、前記したようにクロスビーム55には、前記幅方向に延在する孔55aが形成されている。したがって、積層機構10は、そのサドル部57がクロスビーム55上においてヘッド移動部59により前記幅方向に移動するように駆動される構成となっている。
【0032】
また、積層機構10において、各サイドレール51の基部51aとその基部51a上に載置されるコラム53との間には、積層ヘッド20を前記前後方向に移動させるためのヘッド移動部(第1の駆動部に相当)58がそれぞれ設けられている。その各ヘッド移動部58は、コラム53に対し出力軸の軸心を鉛直方向に向けて取り付けられた駆動モータ58aと、サイドレール51の基部51aの側面に対し前記前後方向に延在するように取り付けられたラック58bと、駆動モータ58aの出力軸に取り付けられると共にラック58bと噛合するピニオンギア58cとで構成されている。それにより、その積層機構10は、サイドレール51(基部51a)上において両コラム53、53が前記前後方向に移動するように駆動される構成となっている。そして、そのように両コラム53、53が移動されることに伴い、支持構造体50が全体として前記前後方向に移動する。
【0033】
また、積層機構10においては、その支持構造体50におけるクロスビーム55上に設けられたサドル部57に対し積層ヘッド20が取り付けられている。具体的には、積層ヘッド20は、サドル部57の支持シャフト57bに取り付けられることで、支持構造体50におけるクロスビーム55に吊り下げられた状態で設けられている。したがって、積層機構10は、前記のようにヘッド移動部58によって支持構造体50が前記前後方向に移動されるのに伴い、積層ヘッド20が前記前後方向に移動されるように構成されている。
【0034】
その積層ヘッド20は、一対の支持板23、23を含む支持フレームを主体としており、その支持板23、23間で、シート状に形成されたプリプレグPがリール(巻枠)に巻回されるかたちで構成された原反ロール21を支持している。なお、その原反ロール21は、支持板23、23間に架設されるかたちで回転可能に設けられた支持軸21aに対しそのリールが相対回転不能に嵌装されることで、支持フレームに対し回転可能に支持されている。
【0035】
ここで、本実施例におけるプリプレグPは、前述のように熱硬化性樹脂をマトリックス樹脂としており、粘着性を有している。そのため、リール上で巻回されて巻層を為すプリプレグPが互いにくっつかないように、プリプレグPの一方の面には、剥離紙RPが貼着されている。そして、プリプレグPは、リール上において、その剥離紙RP側の面を半径方向における内側にして巻回されている。
【0036】
その上で、積層機構10においては、その積層ヘッド20における原反ロール21からプリプレグPが引き出されると共に、そのプリプレグPから切り出されたプリプレグ片P'がテーブル40上の積層領域40cにおいて順次積層される。そのため、積層ヘッド20は、そのようなプリプレグ片P'の積層領域40cへの積層を実現するための各構成を支持フレームの内部(支持板23、23間)に備えている。
【0037】
図3は、そのような積層ヘッド20における支持フレーム内の構成を概略的に示した図である。図3に示すように、積層ヘッド20においては、原反ロール21から引き出されたプリプレグPは、ガイドロールに巻き掛けられることによって転向され、その積層を実行する積層部側へ向けて送り出されている。
【0038】
また、積層ヘッド20は、プリプレグPが予め定められた長さのプリプレグ片P'として積層されるように、プリプレグPからプリプレグ片P'を切り出すためのカッタ部30を備えている。そのカッタ部30は、積層ヘッド20内のプリプレグPの経路中における第1のガイドロール22と第2のガイドロール24との間に設けられている。なお、前記のようにプリプレグPには、その一方の面に対し剥離紙RPが貼着されている。そして、カッタ部30は、プリプレグPのみを切断し、剥離紙RPを切断しないように構成されている。
【0039】
また、前記した積層部は、テーブル40上の積層領域40cにおいてプリプレグ片P'を敷置するための敷置機構26と、その敷置されたプリプレグ片P'をテーブル40上で圧接するための圧接機構28とを備えている。それらの構成について、敷置機構26は、テーブル40上でプリプレグPを案内するための敷置ガイド26aを備えている。また、敷置機構26は、その敷置ガイド26aがボールねじ機構によって支持されて上下方向に変位するように駆動される構成となっている。より詳しくは、敷置機構26は、駆動モータ26bと、駆動モータ26bの出力軸に連結されたねじ軸26cと、ねじ軸26cに螺合されたナット26dとから成るボールねじ機構を含み、敷置ガイド26aがブラケット26eを介してボールねじ機構におけるナット26dに支持された構成となっている。但し、そのボールねじ機構は、ねじ軸26cが鉛直方向の下方へ向けて延びるような向きで、支持フレーム内に設けられている。
【0040】
また、その敷置機構26は、ねじ軸26cの回転に対するナット26d及びブラケット26eの共周りを阻止すると共にブラケット26e及び敷置ガイド26aの上下方向の移動を案内するガイド(図示略)を備えている。その構成により、敷置機構26においては、駆動モータ26bによるねじ軸26cの回転駆動に伴い、その回転方向によってナット26d及びブラケット26eが上方又は下方へ向けて変位し、それに従って敷置ガイド26aが上下方向に変位する。そして、その敷置機構26は、敷置ガイド26aの上下方向における位置に関し、プリプレグPを敷置する際の位置であってテーブル40の天板40a上の積層領域40cに近接した位置である作動位置、及びテーブル40の天板40aに対し上方へ離間した位置である非作動位置の2位置間で敷置ガイド26aが変位するように、駆動モータ26bの駆動が制御される。
【0041】
圧接機構28は、積層領域40cにおいて敷置されたプリプレグPをテーブル40上で圧接する圧接ローラ28aを備えている。そして、圧接機構28は、その圧接ローラ28aがエアシリンダ等の流体圧シリンダ28bによって支持された構成となっている。すなわち、圧接機構28は、圧接ローラ28a及び流体圧シリンダ28bを含み、圧接ローラ28aが流体圧シリンダ28bのロッドに対しブラケット28cを介して回転可能に支持された構成となっている。そして、その流体圧シリンダ28bは、敷置機構26に対し、プリプレグPの引き出し方向における下流側において、ロッドが鉛直方向の下方へ向けて延びるような向きで、支持フレーム内に設けられている。なお、敷置機構26と圧接機構28とは、積層ヘッド20の幅方向(プリプレグPの幅方向)に関し、敷置ガイド26a及び圧接ローラ28aの両者の中心が一致する配置で設けられている。
【0042】
因みに、その圧接機構28について、流体圧シリンダ28bは、例えば単動式のエアシリンダであり、ロッドを後退方向(上方)へ付勢するバネ等の付勢手段を内蔵している。そして、その圧接機構28においては、流体圧シリンダ28bに対し圧縮空気が供給されることにより、その流体圧シリンダ28bのロッドが下方へ向けて前進し、圧接ローラ28aが積層領域40cにおいて敷置されたプリプレグPに対し押接された状態となる。その上で、積層ヘッド20が積層方向に移動することにより、その圧接機構28における圧接ローラ28aが、プリプレグPに対し押接された状態で、回転しつつ既に敷置されたプリプレグP上をなぞるかたちで移動する。その結果として、敷置されたプリプレグPは、テーブル40上で圧着された状態となる。なお、プリプレグPの積層時以外の積層ヘッド20の移動時には、その流体圧シリンダ28bに対する圧縮空気の供給が停止され、それによるロッドの後退に伴い、圧接ローラ28aは、テーブル40に対し上方へ離間した配置とされる。
【0043】
また、積層ヘッド20は、積層されたプリプレグPから剥離された剥離紙RPを巻き取って回収する回収部を備えている。すなわち、積層ヘッド20は、前記のようにカッタ部30がプリプレグPのみを切断するように構成されていることによって連続的な長尺の状態が維持されている剥離紙RPを巻き取るための巻取リール25を含む回収部を備えている。なお、その回収部における巻取リール25は、支持フレームにおける一対の支持板23、23間に架設されるかたちで回転可能に設けられた支持軸25aに対し、相対回転不能に嵌装されるかたちで支持されている。
【0044】
また、その回収部は、剥離紙RPの経路を案内するためのガイドロール27を含んでいる。但し、そのガイドロール27は、敷置ガイド26aよりも上方に配置され、剥離紙RPを敷置機構26における敷置ガイド26aの先端から上方へ向けて案内するように設けられている。また、そのガイドロール27は、敷置ガイド26aからガイドロール27に至る剥離紙RPの経路が、前記のように前記下流側に配置された圧接機構28に干渉しないように配置されている。その上で、巻取リール25(支持軸25a)は、そのように配置されたガイドロール27によって案内された剥離紙RPを巻き取ることが可能な位置に配置されている。
【0045】
なお、回収部は、巻取リール25を回転駆動するための駆動モータ25bであって、巻取リール25を支持する支持軸25aに連結された駆動モータ25bを含んでいる。また、前記した原反ロール21を含むプリプレグPの供給部は、原反ロール21を回転駆動するための駆動モータ21bであって、原反ロール21を支持する支持軸21aに連結された駆動モータ21bを含んでいる。
【0046】
因みに、その供給部における駆動モータ21b及び回収部における駆動モータ25bについて、プリプレグPは、敷置機構26における敷置ガイド26aによって積層領域40cにおいて敷置されると共に圧接機構28における圧接ローラ28aによってテーブル40上で圧接された状態で、積層ヘッド20が積層方向に移動することにより、原反ロール21から引き出されることとなる。そのような積層ヘッド20の移動に伴う原反ロール21からのプリプレグPの引き出しにおいて、原反ロール21を支持する支持軸21aに連結された駆動モータ21bは、原反ロール21から敷置ガイド26aの下端に至るプリプレグPが所望の張力で弛みや捩れ等が発生しない状態となるように、原反ロール21を回転駆動するその駆動が制御される。また、巻取リール25を支持する支持軸25aに連結された駆動モータ25bは、積層時における積層ヘッド20の移動に伴ってプリプレグPから順次剥離される剥離紙RPが弛み等を生じることなく適切に巻取リール25に巻き取られるように、巻取リール25を回転駆動するその駆動が制御される。
【0047】
また、トリム機構60は、プリプレグPから成るプリプレグ積層材PSを裁断するためのトリムヘッド70と、トリムヘッド70を支持する門型の支持構造体(第2の構造体に相当)80と、支持構造体80を支持する一対のサイドレール81、81とを含んでいる。
【0048】
それらのうち、一対のサイドレール81、81は、長尺角柱状の基部81aを主体として構成されている。なお、各サイドレール81は、床面上で立設されて互いに離間して設けられた一対の支持部81b、81bであって、その間で基部81aを支持する一対の支持部81b、81bを含んでいる。したがって、各サイドレール81は、その基部81aが、床面上に設置された積層機構10におけるサイドレール51よりも上方に位置する(上下方向に関しテーブル40の天板40aに近い位置に位置する)ような構成となっている。その上で、一対のサイドレール81、81は、その長手方向が前記前後方向と平行を為す向きで、前記幅方向におけるテーブル40の両側に位置するように設置されている。但し、その一対のサイドレール81、81は、積層機構10における一対のサイドレール51、51に対し、前記幅方向における内側に位置するように配置されている。
【0049】
また、支持構造体80は、各サイドレール81に対応させて設けられた一対のコラム83、83と、両コラム83、83間に架設されたクロスビーム(第2の支持部に相当)85とを備えている。各コラム83は、台座部83aとその台座部83a上に立設された支柱83bとで構成されている。そして、各コラム83は、その台座部83aにおいて、対応するサイドレール81における基部81a上に載置された状態で設けられている。
【0050】
また、クロスビーム85は、長尺角柱状の梁部材であって、その両端部のそれぞれが両コラム83、83の支柱83b、83bに支持されるようなかたちで、一対のコラム83、83間に架設されている。但し、そのようにクロスビーム85が架設された状態で、両コラム83、83は、前記前後方向における位置が一致する状態となっており、それにより、クロスビーム85は、その長手方向が前記幅方向に一致する状態となっている。
【0051】
なお、その支持構造体80において、両コラム83、83は、その一対のコラム83、83間に架設されるクロスビーム85の高さ位置、更には後述のようにそのクロスビーム85上に載置されるトリムヘッド70の高さ位置が、支持構造体50におけるクロスビーム55よりも下方となるような高さ寸法を有している。したがって、サイドレール81が積層機構10におけるサイドレール51に対し前記のように配置されることに伴い、支持構造体80は、前記前後方向に見て、支持構造体50における一対のコラム53、53とクロスビーム55とで囲まれた空間内に位置しており、更には、その支持構造体80に支持されるトリムヘッド70もその空間内に位置している。
【0052】
トリムヘッド70は、プリプレグ積層材PSを裁断するためのカッタ刃71と、そのカッタ刃71を支持する支持軸73と、支持軸73を支持すると共にカッタ刃71による所望の裁断が行われるように支持軸73に対してその裁断のための動作を与える裁断機構(図示略)が内装された本体部75とを備えている。そして、トリムヘッド70は、その本体部75においてクロスビーム85に対し支持されている。但し、トリムヘッド70は、積層ヘッド20が支持構造体50に対し吊り下げられるかたちで支持されているのに対し、その本体部75がクロスビーム85上に載置されるかたちで支持されている。
【0053】
そのトリムヘッド70の各構成について、本体部75は、内部の前記裁断機構を支持すると共にクロスビーム85に支持される基部(図示略)を基体とし、前記裁断機構及び前記基部を覆うケース体75aにより、全体として筐形に構成されている。なお、本体部75は、前記基部においてクロスビーム85に支持された状態で、前記前後方向における一方の側に突出すると共に、その突出する部分(突出部)が上下方向においてクロスビーム85側へ延びるように形成されており、前記幅方向に見てL字型を為すように形成されている。その上で、前記裁断機構は、主にその突出部内に位置するような配置で前記基部に取り付けられている。
【0054】
そして、支持軸73は、前記のように本体部75に内装された前記裁断機構に対し取り付けられることで、本体部75(前記裁断機構)によって支持されている。但し、支持軸73は、その軸線の向きが上下方向と平行となるような向きで前記裁断機構に対し取り付けられている。その上で、支持軸73は、前記のように支持された状態で本体部75の前記突出部から突出するような長さ寸法を有しており、その下端部が前記突出部から突出して前記突出部の下方に位置するように設けられている。
【0055】
また、支持軸73は、前記のように本体部75(前記突出部)から突出する下端部に、カッタ刃71を取り付けるためのカッタホルダ73aを有している。そして、カッタ刃71は、その刃面71aが下方を向くような向きで、そのカッタホルダ73aに対して取り付けられている。
【0056】
因みに、前記裁断機構は、プリプレグ積層材PSの裁断のためにカッタ刃71に対し支持軸73を介して上下方向の振動を与える機構、及びプリプレグ積層材PSを所望の形状に裁断するためにカッタ刃71の刃面71aを任意の方向に向けるべく支持軸73をその軸線周りに回動させる機構を含んでいる。さらに、本体部75は、上下方向に関し、裁断時にカッタ刃71をプリプレグ積層材PSに接近させると共に非裁断時にカッタ刃71をプリプレグ積層材PSから離間させるために、カッタ刃71を上下方向に変位させる変位機構(図示略)もケース体75a内に備えている。
【0057】
また、そのトリム機構60において、トリムヘッド70とクロスビーム85との間には、トリムヘッド70を前記幅方向に移動させるためのヘッド移動部77が設けられている。そのヘッド移動部77は、トリムヘッド70における本体部75に対し出力軸の軸心を鉛直方向に向けて取り付けられた駆動モータ77aと、クロスビーム85の側面に取り付けられたラック77bと、駆動モータ77aの出力軸に取り付けられると共にラック77bと噛合するピニオンギア77cとで構成されている。したがって、トリム機構60は、そのヘッド移動部77により、トリムヘッド70がクロスビーム85上において前記幅方向に移動するように駆動される構成となっている。
【0058】
また、トリム機構60において、各サイドレール81の基部81aとその基部81a上に載置されるコラム83との間には、トリムヘッド70を前記前後方向に移動させるためのヘッド移動部(第2の駆動部に相当)78がそれぞれ設けられている。その各ヘッド移動部78は、コラム83に対し出力軸の軸心を鉛直方向に向けて取り付けられた駆動モータ78aと、サイドレール81の基部81aの側面に対し前記前後方向に延在するように取り付けられたラック78bと、駆動モータ78aの出力軸に取り付けられると共にラック78bと噛合するピニオンギア78cとで構成されている。それにより、そのトリム機構60は、サイドレール81(基部81a)上において両コラム83、83が前記前後方向に移動するように駆動される構成となっている。そして、そのように両コラム83、83が移動されるのに伴い、支持構造体80が全体として前記前後方向に(テーブル40に沿って)移動する。したがって、トリム機構60は、そのヘッド移動部78によって支持構造体80が前記前記前後方向に移動されるのに伴い、トリムヘッド70が前記前後方向に移動されるように構成されている。
【0059】
なお、以上で説明した通り、本実施例の製造装置1では、積層機構10においてはクロスビーム55及び一対のコラム53、53を主体とする支持構造体50によって積層ヘッド20が支持されると共に、トリム機構60においてはクロスビーム85及び一対のコラム83、83から成る支持構造体80によってトリムヘッド70が支持されている。すなわち、製造装置1においては、積層ヘッド20及びトリムヘッド70は、その支持構造体50と支持構造体80とによって支持されている。したがって、その製造装置1においては、支持構造体50と支持構造体80との組み合わせが、本発明で言う支持構造に相当する。
【0060】
さらに、製造装置1においては、その支持構造の一部である支持構造体50が一対のサイドレール51、51によって前記前後方向に移動可能に支持されると共に、支持構造体80が一対のサイドレール81、81によって前記前後方向に移動可能に支持されている。すなわち、支持構造は、一対のサイドレール51、51と一対のサイドレール81、81とにより、テーブル40に沿って前記前後方向に移動可能であるように支持されている。したがって、その製造装置1における一対のサイドレール51、51と一対のサイドレール81、81との組み合わせが、本発明で言う案内部材に相当する。
【0061】
また、製造装置1においては、一対のサイドレール51、51上での支持構造体50の移動がヘッド移動部58によって行われると共に、一対のサイドレール81、81上での支持構造体80の移動がヘッド移動部78によって行われるものとなっている。すなわち、製造装置1においては、案内部材上での支持構造の移動が、ヘッド移動部58とヘッド移動部78とによって行われるものとなっている。したがって、その製造装置1におけるヘッド移動部58とヘッド移動部78との組み合わせが、本発明で言う駆動機構に相当する。
【0062】
そして、以上で説明した各構成要素を備えた製造装置1により繊維強化材料片としてのプリプレグ積層材片を製造するにあたっては、先ずは、積層機構10によりテーブル40上の積層領域40cにおいてプリプレグPを積層する積層工程が行われる。その積層機構10による積層工程では、先ず始めに、支持構造体50の動作によって積層ヘッド20が積層領域40cにおける積層開始位置へ向けて移動され、その積層ヘッド20における敷置機構26の敷置ガイド26aが前記積層開始位置の上方に位置した状態とされる。そして、敷置機構26において敷置ガイド26aを前記作動位置へ下降させる動作が行われ、それにより、原反ロール21に連なるプリプレグPが敷置ガイド26aによってテーブル40上でテーブル40側へ押し付けられた状態となる。
【0063】
その上で、積層ヘッド20が前記のようにして支持構造体50によって積層方向に移動されることにより、プリプレグPが原反ロール21から引き出されつつテーブル40上の積層領域40cにおいて敷置される。なお、そのようにプリプレグPが敷置される過程において、原反ロール21から引き出されているプリプレグPは、その引き出し長さが予め定められた敷置長さに達した時点で、プリプレグPの経路における敷置ガイド26aよりも上流側に設けられたカッタ部30によって切断される。それにより、テーブル40上で敷置されるプリプレグPは、原反ロール21に連なるプリプレグPとは分離されてプリプレグ片P'とされる。但し、その切断は、前述のようにプリプレグPに貼着された剥離紙RPは切断されず、プリプレグPのみが切断されるように行われる。
【0064】
そして、前記した敷置のための積層ヘッド20の移動に伴い、プリプレグ片P'の切断端が敷置ガイド26aの位置に達した時点で、敷置機構26において駆動モータ26bが駆動され、敷置ガイド26aが前記非作動位置へ向けて変位される。それにより、予め定められた敷置長さのプリプレグ片P'が敷置された状態となる。そして、以上の動作が繰り返されることにより、プリプレグ片P'がテーブル40上、又は既に敷置されたプリプレグ片P'上に敷置(積層)された状態となる。但し、プリプレグ片P'はそのように敷置された状態となるが、剥離紙RPは前記したように切断されていないため、前記した敷置に伴ってプリプレグ片P'が剥離された剥離紙RPは、巻取リール25に対し巻き取られる。
【0065】
なお、積層ヘッド20は、前述のように敷置機構26の前記下流側に設けられた圧接機構28を備えている。そして、前記のようにプリプレグP(プリプレグ片P')を敷置する過程においては、その圧接機構28は、流体圧シリンダ28bに対し圧縮空気が供給されて圧接ローラ28aが下方へ向けて付勢された状態とされる。それにより、前記のようにテーブル40上又はプリプレグ片P'上に敷置されたプリプレグP(プリプレグ片P')は、その圧接ローラ28aによってテーブル40側へ圧接され、テーブル40又はプリプレグ片P'に対し圧着された状態となる。また、その圧接機構28においては、各敷置の過程で圧接ローラ28aがプリプレグ片P'の切断端に達した時点で、流体圧シリンダ28bに対する圧縮空気の供給が停止され、圧接ローラ28aが上方へ変位した状態とされる。
【0066】
そして、以上のような積層工程によってテーブル40上の積層領域40cにおいてプリプレグPが積層されることにより、積層された複数のプリプレグP(プリプレグ片P')から成るプリプレグ積層材PSが形成される。
【0067】
その上で、製造装置1においては、そのように形成されたプリプレグ積層材PSから予め定められた形状のプリプレグ積層材片を切り出すトリム工程が、そのトリム機構60によって行われる。
【0068】
そのトリム工程では、先ず、カッタ刃71が裁断開始位置の上方に位置した状態となるように、トリムヘッド70が支持構造体80の動作によって移動される。そして、そのトリムヘッド70において、前記変位機構が駆動されてカッタ刃71がプリプレグ積層材PSを切断する位置にまで下降される。それにより、カッタ刃71の先端部分がプリプレグ積層材PSに対して差し入れられた状態となる。
【0069】
その上で、予め定められた形状のプリプレグ積層材片を切り出すために設定された移動態様に従ってトリムヘッド70が移動する(支持構造体80が動作する)ことにより、そのカッタ刃71によってプリプレグ積層材PSが順次裁断される。なお、その裁断の過程においては、前記したように本体部75の前記裁断機構によってカッタ刃71に対し上下方向の振動が与えられるため、その裁断がスムーズに行われる。また、そのトリムヘッド70の移動は、支持構造体80による前記前後方向及び/又は前記幅方向の移動として行われるが、切り出されるプリプレグ積層材片の形状によっては、その移動の過程において前記裁断機構により支持軸73の軸線周りにカッタ刃71を回動させる動作が加えられる。そして、そのようなトリムヘッド70の一連の動作が完了することで、プリプレグ積層材PSから予め定められた形状のプリプレグ積層材片が切り出された状態となる。
【0070】
以上で説明した製造装置1において、本発明では、トリム機構60が、積層工程時においてトリムヘッド70を積層ヘッド20に対し干渉しない位置(退避位置)に配置することができるように構成されており、且つ、積層機構10が、トリム工程時において積層ヘッド20をトリムヘッド70に対し干渉しない位置(退避位置)に配置することができるように構成されている。その上で、本実施例では、そのトリムヘッド70用の退避位置及び積層ヘッド20用の退避位置は、前記前後方向においてテーブル40上の積層領域40cと重複しない位置に設定される。その構成について、詳しくは以下の通りである。但し、以下の説明では、前記前後方向において、図1に示す配置状態においてトリムヘッド70に対する積層ヘッド20の側を「前(前側、前方)」とし、その反対の側を「後(後側、後方)」とする。
【0071】
先ず、トリム機構60について、その各サイドレール81の基部81aは、その前記前後方向における寸法がテーブル40の天板40aの長手方向における寸法よりも大きいものとされている。そして、各サイドレール81は、前記前後方向において、基部81aの前端(基部81aにおける前側の端)の位置をテーブル40の前端縁(天板40aの前側の端縁)の位置に略一致させるような配置で設けられている。
【0072】
それにより、各サイドレール81は、前記前後方向に関し、その基部81aがテーブル40の後端縁(天板40aの後側の端縁)よりも後方に延在するようなかたちで設けられている。なお、製造装置1において、積層領域40cは、前述のようにテーブル40の天板40a内に定められている。したがって、各サイドレール81における基部81aにおいて、テーブル40の後端縁よりも後方に延在する部分(後端部分)は、当然ながら積層領域40cよりも後方に位置している。その上で、各サイドレール81における基部81aは、その各基部81aにおける最も後側の部分(最後端部)上にコラム83が位置する支持構造体80の配置において、前記前後方向においてトリムヘッド70とテーブル40とが重複しないような長さ寸法を前記後端部分が有するように構成されている。
【0073】
また、積層機構10について、その各サイドレール51の基部51aは、その前記前後方向における寸法がテーブル40の天板40aの長手方向における寸法よりも大きいものとされている。そして、各サイドレール51は、前記前後方向において、基部51aの後端(基部51aにおける後側の端)の位置をテーブル40の後端縁(天板40aの後側の端縁)の位置に略一致させるような配置で設けられている。
【0074】
それにより、各サイドレール51は、前記前後方向に関し、その基部51aが前記したテーブル40の前端縁よりも前方に延在するようなかたちで設けられている。したがって、各サイドレール51における基部51aにおいて、テーブル40の前端縁よりも前方に延在する部分(前端部分)は、前記したようにテーブル40の天板40a内に定められる積層領域40cよりも前方に位置している。その上で、各サイドレール51における基部51aは、その各基部51aにおける最も前側の部分(最前端部)上にコラム53が位置する支持構造体50の配置において、前記前後方向において積層ヘッド20とテーブル40とが重複しないような長さ寸法を前記前端部分が有するように構成されている。
【0075】
以上のように本実施例の製造装置1においては、積層機構10における各サイドレール51とトリム機構60における各サイドレール81とが、テーブル40に対し、前記前後方向においてその存在範囲が重複するように設けられている。すなわち、製造装置1は、前記した積層機構10による積層工程を行うと共にトリム機構60によるトリム工程をその同じテーブル40上で行うことが可能なように構成されている。その上で、製造装置1においては、積層機構10における支持構造体50が前記した積層ヘッド20用の退避位置に積層ヘッド20を配置可能であるように構成されると共に、トリム機構60における支持構造体80が前記したトリムヘッド70用の退避位置にトリムヘッド70を配置可能であるように構成されている。したがって、その製造装置1によれば、積層工程とトリム工程とを共通のテーブル40上で行うことが可能となる。
【0076】
詳しくは、製造装置1においてプリプレグ積層材片を製造するにあたっては、先ずは前述のように積層機構10による積層工程が行われる。但し、その積層工程のために積層領域40cへ向けた支持構造体50による積層ヘッド20の移動を開始するのに先立ち、トリム機構60における支持構造体80は、各サイドレール81における基部81aの最後端部上にコラム83が位置する状態とされる。それにより、製造装置1は、トリムヘッド70が前記したトリムヘッド70用の退避位置に配置された状態となる。その結果として、製造装置1においては、前記のようにして行われる積層工程のためのテーブル40上(積層領域40c上)での積層ヘッド20の移動が、その同じテーブル40上でトリム工程を行うように設けられたトリム機構60におけるトリムヘッド70に干渉することなく行われることとなる。
【0077】
また、製造装置1においては、その積層工程に続いてテーブル40上のプリプレグ積層材PSからプリプレグ積層材片を切り出すトリム工程が、前述のようにトリム機構60によって行われる。そこで、積層工程の完了後、そのトリム工程のために積層領域40cへ向けた支持構造体80によるトリムヘッド70の移動が開始されるが、その移動に先立ち、テーブル40上に位置している積層ヘッド20を積層ヘッド20用の退避位置へ向けて移動させるように支持構造体50が駆動される。それにより、製造装置1は、積層ヘッド20が前記した積層ヘッド20用の退避位置に位置した状態となる。その結果として、製造装置1においては、前記のようにして行われるトリム工程のためのテーブル40上でのトリムヘッド70の移動が、前記のように同じテーブル40上で積層工程を行うように設けられた積層機構10における積層ヘッド20に干渉することなく行われることとなる。
【0078】
そのような本実施例の製造装置1によれば、積層工程を行うための積層ヘッド20及びトリム工程を行うためのトリムヘッド70が共に支持構造によって支持されるかたちで備えられているため、各工程が、ヘッドの交換作業を行うことなく可能となる。しかも、その製造装置1は、その積層ヘッド20を含む積層機構10及びトリムヘッド70を含むトリム機構60が同じテーブル40上でその工程を行うように配置されている構成でありながらも、前述のように積層工程及びトリム工程の一方の工程におけるヘッドの移動が他方の工程のためのヘッドに干渉することなく行えるように構成されている。したがって、その構成によれば、共通のテーブル40上で両工程を行うことが可能となるため、前述のように積層工程とトリム工程とが別の場所で行われる場合に必要となる搬送工程が不要となる。そして、それらの結果として、製造装置1は、前述のような従来の製造装置に比べ、効率良く繊維強化材料片の製造作業を行うことができる。
【0079】
以上では、本発明による繊維強化材料片の製造装置の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は前記実施例において説明したものに限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0080】
(1)支持構造を支持する案内部材について、前記実施例では、製造装置1は、支持構造としての第1の構造体(支持構造体50)及び第2の構造体(支持構造体80)を支持するために、その案内部材として、一対のサイドレール(以下、「サイドレール対」と言う。)を2組(サイドレール対51、51及びサイドレール対81、81)備えるように構成されている。すなわち、製造装置1は、2組のサイドレール対のうちの一方で第1の構造体を支持すると共に、他方で第2の構造体を支持するように構成されている。
【0081】
しかし、本発明の製造装置は、支持構造が前記実施例のように2つの構造体から成る場合であっても、サイドレール対を1組のみ備えるように構成されていても良い。そして、その場合は、その1組のサイドレール対が本発明で言う案内部材に相当することとなり、その1組のサイドレール対によって両構造体が支持される(1組のサイドレール対が両構造体に対し共通とされる)こととなる。
【0082】
なお、前記実施例の製造装置1では、図示されている構成から明らかなように、積層ヘッド20がトリム機構60側のクロスビーム85と干渉し得る構成であるため、積層機構10側の支持構造体50とトリム機構60側の支持構造体80とは、前記前後方向においてその配置を重複させることができない。そして、前記のように1組のサイドレール対を両構造体に共通させた場合にも、両構造体は前記前後方向においてその配置を重複させることができない。したがって、その場合の積層ヘッド用の退避位置及びトリムヘッド用の退避位置も、前記実施例と同様の位置に設定されることとなる。そして、その場合には、各サイドレールにおける基部は、その各退避位置に対応した、前記前後方向においてテーブル40よりも前方に延在する前端部分及び後方に延在する後端部分を有するように構成される。
【0083】
(2)前記実施例の製造装置1では、前記のように2つの構造体が前記前後方向においてその配置を重複させることができないように構成されている。しかし、本発明の製造装置においては、製造装置が前記実施例と同様に2つの構造体及び2組のサイドレール対を備えるように構成されている場合において、両構造体を、前記前後方向においてその配置を重複させることができるように(前記前後方向において位置を入れ替えられるように)構成することも可能である。
【0084】
具体的には、前記実施例のように前記前後方向に見て積層機構側の構造体で囲まれた空間内にトリム機構側の構造体が存在する場合において、その積層機構側の構造体を、トリム機構側の構造体の外側に積層ヘッドを配置できるように構成すれば良い。
【0085】
そのような積層ヘッドの配置を可能とするための積層機構側の構造体の構成としては、例えば、その構造体におけるクロスビームを前記実施例におけるクロスビーム55よりも長尺に形成し、その上で、前記実施例のクロスビーム55と比べて延長された部分(延長部分)が前記幅方向においてトリム機構側の構造体(一対のコラムのうちの一方のコラム)の外側に位置するように積層機構側の構造体を構成することが考えられる。但し、そのクロスビームにおける延長部分の長さ寸法は、その存在範囲内に積層ヘッドを配置し得るような大きさとされる。それにより、トリム機構側の一方のコラムよりも前記幅方向における外側に積層ヘッドを配置することが可能となり、その配置により、両構造体が前記前後方向においてその配置を重複させることが可能となる。
【0086】
また、それとは別の構成としては、構造体における両コラムを前記実施例における両コラム53、53よりも長尺に形成することが考えられる。但し、その場合の両コラムの高さ寸法(上下方向の寸法)は、トリム機構側の構造体(クロスビーム)及びトリムヘッドよりも上方に積層ヘッドを配置できるような大きさとされる。それにより、トリム機構側のクロスビーム及びトリムヘッドよりも上方に積層ヘッドを配置することが可能となり、その配置により、両構造体が前記前後方向においてその配置を重複させることが可能となる。
【0087】
(3)トリムヘッド用の退避位置及び積層ヘッド用の退避位置について、前記実施例では、積層ヘッド20用の退避位置がテーブル40よりも前方の位置に設定され、トリムヘッド70用の退避位置がテーブル40よりも後方の位置に設定されるものとなっている。すなわち、前記前後方向に関し積層領域40cに対する前方及び後方のうちの一方に積層ヘッド20用の退避位置が設定されると共に、他方にトリムヘッド70用の退避位置が設定されている。しかし、本発明の製造装置において、両構造体が前記のように前記前後方向においてその配置を重複できるように構成された場合には、両退避位置は、前記のように設定されるものに限らない。
【0088】
すなわち、その場合においては、トリムヘッド用の退避位置を前記前後方向に関し積層領域に対する前方及び後方の一方に設定した上で、積層ヘッド用の退避位置を任意の位置に設定しても良い。詳しくは、両構造体は前記前後方向においてその配置を重複させることができるため、積層ヘッド用の退避位置を、前記実施例のようにトリムヘッド用の退避位置とは反対側に設定するものに限らず、トリムヘッド用の退避位置と同じ側に設定するものとしても良い。さらには、そのように前記前後方向における積層領域の前方又は後方に積層ヘッド用の退避位置を設定するものに限らず、平面視において積層領域の範囲内に設定するものとしても良い。
【0089】
(4)前記実施例の製造装置1では、2組のサイドレール対(サイドレール対51、51及びサイドレール対81、81)が、前記幅方向におけるテーブル40の両側において、その長手方向が前記前後方向と平行を為すように、すなわち、前記前後方向を向くように設けられている。しかし、本発明の製造装置では、製造装置が前記実施例のように2つの構造体及び2組のサイドレール対を備えるように構成されている場合であっても、その2組のサイドレール対は、その両方が前記前後方向を向くように設けられていなくても良い。
【0090】
例えば、図5に示すように、トリム機構60側のサイドレール対81、81を前記実施例と同じかたちで設けた上で、積層機構10'側のサイドレール対51'、51'を、前記前後方向におけるテーブル40の両側において前記幅方向を向くように設けても良い。
【0091】
なお、その場合には、積層機構10'側のサイドレール対51'、51'は、前記前後方向においてサイドレール対81、81の両側に配置される。そして、そのサイドレール対51'、51'は、図示のように、その長さ寸法がトリム機構60側のサイドレール対81、81の前記幅方向における間隔よりも大きく、且つ、一方のサイドレール81の外側に積層ヘッド20用の退避位置を設定可能なものとされる。
【0092】
したがって、その場合、積層工程時には、トリムヘッド70が前記実施例と同じ退避位置に置かれ、トリム工程時には、積層ヘッド20が前記のように一方のサイドレール81の外側に設定された退避位置に置かれる。但し、積層工程時において積層機構10'側の構造体50'がトリム機構60側の構造体80を跨ぐかたちとなるため、その構造体50'は、前記実施例と同様に、クロスビーム55'が構造体80(クロスビーム85)及びトリムヘッド70よりも上方に位置するように構成される。
【0093】
(5)積層ヘッド及びトリムヘッドを支持する支持構造について、前記実施例の製造装置1は、その支持構造として2つの構造体(支持構造体50及び支持構造体80)を備えている。すなわち、製造装置1は、その2つの構造体のうちの一方で積層ヘッドを支持すると共に、他方でトリムヘッドを支持するように構成されている。しかし、本発明の製造装置は、単一の構造体で積層ヘッド及びトリムヘッドが支持される(単一の構造体が両ヘッドに対し共通とされる)ように構成されていても良い。そして、その場合は、その単一の構造体が本発明で言う支持構造に相当する。
【0094】
具体的には、その単一の構造体が前記実施例と同様に1つのクロスビームを備えるように構成されている場合には、製造装置を、両ヘッドがその1つのクロスビームにおいて前記幅方向に位置を異ならせて支持されるような構成とすれば良い。なお、製造装置がそのように構成されている場合には、共通のクロスビームに対して両ヘッドが支持されることから、その両退避位置は、その一方が前記幅方向におけるクロスビームの一端側に設定され、他方がその他端側に設定されることとなる。したがって、そのクロスビームの長さ寸法は、その一端側において積層領域外に積層ヘッドを配置することが可能であると共に、他端側において積層領域外にトリムヘッドを配置することが可能であるような大きさとされる。
【0095】
また、前記のように支持構造が単一の構造体で構成される場合において、その構造体は、以上で説明したような1つのクロスビームのみを備えるものに限らず、各ヘッドに対応させた2つのクロスビームを備えるものであっても良い。具体的には、その単一の構造体を、前記前後方向において位置を異ならせて一対のコラム間に架設されるように設けられる2つのクロスビームを備えるように構成し、その2つのクロスビームのうちの一方で積層ヘッドを支持すると共に、他方でトリムヘッドを支持するようにその単一の構造体を構成しても良い。
【0096】
なお、単一の構造体がそのように2つのクロスビームを含む場合において、その両クロスビームの前記前後方向における位置関係が、それぞれに支持された積層ヘッド及びトリムヘッドや各ヘッドをクロスビームに対し支持する部分の存在範囲の関係で、両ヘッドを前記幅方向において重複して配置することができないようなものである場合には、前記した1つのクロスビームで2つのヘッドが支持されるように構成されている場合と同様に、両退避位置は、一方のクロスビームの一端側及び他方のクロスビームの他端側に設定される。
【0097】
また、前記位置関係が、両ヘッドを前記幅方向において重複して配置することができるものである場合には、両退避位置を、それぞれのクロスビームにおいて同じ側にも設定可能である。さらに、その場合には、例えば、トリム機構側のクロスビームの高さ位置を積層機構側のクロスビームの高さ位置よりも低い位置(テーブルに近い位置)に設定することも可能である。
【0098】
なお、本発明の製造装置では、その製造装置が、前記実施例のように2つの構造体及び2組のサイドレール対を備えるように構成されているのが好ましく、さらには、その両構造体が前記前後方向においてその配置を重複させることができないように構成されているのがより好ましい。詳しくは、支持構造を構成する構造体、特に、積層ヘッドを支持する構造体は、積層ヘッドがかなりの重量物であることから、それに応じた剛性を有している必要がある。その上で、前記実施例における積層機構側の構造体は、その構造体で囲まれた空間内に退避位置が設定されない構成であることから、前記したようにクロスビームや一対のコラムが長尺に形成される場合と比べ、その各部に強度が低いものを用いても、前記剛性を得ることができる。それにより、構造体自体の重量を抑えると共にコストを抑えることができるため、前記したようにより効率良く繊維強化材料片の製造作業を行うことができると共に、製造装置自体のコストも低減できる。
【0099】
(6)前記実施例では、各構造体は、ヘッドを支持する支持部であるクロスビーム55(クロスビーム85)がその両端において支柱としての一対のコラム53、53(一対のコラム83、83)に支持された門型のものとして構成されている。しかし、本発明の製造装置では、構造体は、そのような門型に構成されたものに限らず、支持部がその一端側のみで支柱に支持される片持ち型のものとして構成されても良い。また、構造体が前記のような片持ち型のものとして構成されている場合には、その構造体における支持部は、前記実施例のクロスビームのような梁部材に限らず、多軸関節を有して成るロボットアームであっても良い。
【0100】
また、構造体を前記した片持ち型とする場合には、その構造体を、支柱に対し支持部が(例えば水平方向に)回動するように構成することも可能である。そして、その場合には、ヘッドの退避位置への移動を、前述のような構造体全体を移動させる又は構造体内でヘッドを移動させるようにして為すものに限らず、支柱に対し支持部を水平方向に回動させるようにして為すものとしても良い。
【0101】
(7)前記実施例では、積層機構10を、強化繊維基材であるプリプレグPが巻回されるかたちで構成された原反ロール21が積層ヘッド20に支持され、積層ヘッド20と共に原反ロール21が移動しつつテーブル40上(積層領域40c)に強化繊維基材の積層を行う形式のものとした。しかし、本発明の製造装置における積層機構は、そのような形式のものに限らず、積層ヘッドとは別に、積層台に隣接させて固定的に設けられた供給機構において原反ロールが支持され、その原反ロールから強化繊維基材を積層ヘッドで引き出して積層台上の積層領域に積層を行う形式のものでも良い。また、積層機構は、前記のような原反ロールのかたちでは無く、所定長さのシート状に形成された強化繊維基材を積層台の近傍に設けられた供給部に予め準備しておき、そのシート状の強化繊維基材を積層ヘッドで積層台上の積層領域に搬送して積層を行う形式のものでも良い。
【0102】
(8)前記実施例の製造装置1では、単一のテーブル40が本発明で言う積層台に相当し、そのテーブル40上に1つの積層領域40cが設定されている。すなわち、製造装置1は、単一のテーブルから成る積層台が1つの積層領域を有するように構成されている。しかし、本発明の製造装置における積層台は、そのように積層領域を1つのみ有するものや単一のテーブルで構成されるものに限らない。例えば、積層台は、単一のテーブルであって、2つの積層領域を設定可能なテーブルで構成されたものであっても良い。あるいは、積層台は、それぞれに1つの積層領域が設定される2つのテーブルを組み合わせて構成されたものであっても良い。いずれの場合も、その積層台は、2つの積層領域を有するものとなる。
【0103】
なお、積層台がそのように2つの積層領域を有する場合であって、支持構造が2つの構造体で構成されている場合には、一方の積層領域においてトリム工程を行うのと同時に、他方の積層領域において積層工程を行うことが可能となる。なお、前記実施例のように両構造体が前記前後方向において配置を重複させることができない場合には、一方の積層領域において積層工程が行われた後、その一方の積層領域においてトリム工程を行いつつ、他方の積層領域において積層工程が同時に行われることとなる。一方、両構造体が前記前後方向において配置を重複させることができる、すなわち、両構造体が前記前後方向において配置を入れ替えることができる場合には、常に両工程を同時に行うことが可能となる。いずれにしても、積層台が1つの積層領域しか有していない場合と比べ、作業効率を高めることができ、後者の場合であれば、さらに高い作業効率を得ることができる。
【0104】
(9)前記実施例では、繊維強化材料(プリプレグ積層材PS)の基となる強化繊維基材(プリプレグP)を、強化繊維としての炭素繊維にマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂等)を含浸させた熱硬化性のプリプレグとした。しかし、本発明の製造装置に用いられる強化繊維基材は、それには限定されず、例えば、強化繊維としてガラス繊維やアラミド繊維が用いられたプリプレグであっても良いし、マトリックス樹脂として熱可塑性樹脂が用いられた熱可塑性のプリプレグであっても良い。さらに、その強化繊維基材は、そのようなプリプレグに限らず、強化繊維の収束性を維持する程度にマトリックス樹脂や接合材(バインダ)等を添着させた所謂セミプレグであっても良い。
【0105】
(10)また、本発明は、以上で説明したいずれの実施形態にも限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0106】
1 製造装置
10 積層機構
20 積層ヘッド
21 原反ロール
40 テーブル
40a 天板
40c 積層領域
50 支持構造体
51 サイドレール
51a 基部
53 コラム
55 クロスビーム
57 サドル部
58 ヘッド移動部
59 ヘッド移動部
60 トリム機構
70 トリムヘッド
77 ヘッド移動部
78 ヘッド移動部
80 支持構造体
81 サイドレール
81a 基部
83 コラム
85 クロスビーム
P プリプレグ
P' プリプレグ片
PS プリプレグ積層材
図1
図2
図3
図4
図5