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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】電力変換器
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20220106BHJP
【FI】
H02M7/48 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018113646
(22)【出願日】2018-06-14
(65)【公開番号】P2019216571
(43)【公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-04-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】八木原 茂俊
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0226787(US,A1)
【文献】特開平07-234162(JP,A)
【文献】国際公開第2007/034544(WO,A1)
【文献】特開2006-050711(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0200590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体スイッチング素子を使用する電力変換器であって、
前記半導体スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記半導体スイッチング素子の飽和電圧と順方向電圧を検出する電圧検出部と、
前記飽和電圧と前記順方向電圧と前記電流から前記半導体スイッチング素子のジャンクション温度を推定する制御部を有し、
前記半導体スイッチング素子はIGBTとダイオードであり、
前記電圧検出部は前記IGBTの飽和電圧と前記ダイオードの順方向電圧を検出し、
マイナス電位側に接続された下アームの半導体スイッチング素子とプラス電位側に接続された上アームの半導体スイッチング素子で1相分のスイッチングを行い、
前記制御部は、前記半導体スイッチング素子をオン・オフさせるためのゲート信号を生成し、前記電流検出部で検出した電流が前記半導体スイッチング素子への流入時には、前記下アームの半導体スイッチング素子の前記ゲート信号がターンオンしてから、前記ゲート信号が前記制御部から出力されてから前記電圧検出部で検出した電圧が前記制御部に入力されるまでの遅れ時間の経過後に検出した前記飽和電圧を使用し、また、前記電流検出部で検出した電流が前記半導体スイッチング素子からの流出時には、前記上アームの前記ゲート信号がターンオフしてから、前記ゲート信号が前記制御部から出力されてから前記電圧検出部で検出した電圧が前記制御部に入力されるまでの遅れ時間の経過後に検出した前記順方向電圧を使用し、前記半導体スイッチング素子のジャンクション温度を推定することを特徴とする電力変換器。
【請求項2】
半導体スイッチング素子を使用する電力変換器であって、
前記半導体スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記半導体スイッチング素子の飽和電圧を検出する電圧検出部と、
前記飽和電圧と前記電流から前記半導体スイッチング素子のジャンクション温度を推定する制御部を有し、
前記半導体スイッチング素子はIGBTとダイオードであり、
前記電圧検出部は前記IGBTの飽和電圧を検出し、
前記制御部は、前記半導体スイッチング素子をオン・オフさせるためのゲート信号を生成し、前記半導体スイッチング素子の前記ゲート信号がターンオンしてから、前記ゲート信号が前記制御部から出力されてから前記電圧検出部で検出した電圧が前記制御部に入力されるまでの遅れ時間の経過後に検出した前記飽和電圧を使用し前記半導体スイッチング素子のジャンクション温度を推定することを特徴とする電力変換器。
【請求項3】
半導体スイッチング素子を使用する電力変換器であって、
前記半導体スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、
前記半導体スイッチング素子の順方向電圧を検出する電圧検出部と、
前記順方向電圧と前記電流から前記半導体スイッチング素子のジャンクション温度を推定する制御部を有し、
前記半導体スイッチング素子はIGBTとダイオードであり、
前記電圧検出部は前記ダイオードの順方向電圧を検出し、
前記制御部は、前記半導体スイッチング素子をオン・オフさせるためのゲート信号を生成し、前記半導体スイッチング素子の前記ゲート信号がターンオフしてから、前記ゲート信号が前記制御部から出力されてから前記電圧検出部で検出した電圧が前記制御部に入力されるまでの遅れ時間の経過後に検出した前記順方向電圧を使用し前記半導体スイッチング素子のジャンクション温度を推定することを特徴とする電力変換器。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の電力変換器であって
前記遅れ時間は、前記IGBTが実際に動作するまでの動作遅れ時間と前記IGBTの相電圧を検出する前記電圧検出部の遅れ時間であることを特徴とする電力変換器。
【請求項5】
請求項1から3の何れか1項に記載の電力変換器であって
前記電圧検出部は、前記検出した電圧が所定電圧以上の場合には該所定電圧にクランプして前記制御部に出力することを特徴とする電力変換器。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の電力変換器であって
前記ジャンクション温度の推定は、前記半導体スイッチング素子の特性を用いて推定することを特徴とする電力変換器。
【請求項7】
請求項1から6の何れか1項に記載の電力変換器であって
前記制御部は、前記推定したジャンクション温度が所定値以上の場合、前記半導体スイッチング素子のスイッチングを停止することを特徴とする電力変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、低炭素社会を実現するため、インバータ等の電力変換器がさまざま産業用途に用いられている。また、省スペース化・高制御性能・連続運転(トリップレス)のニーズから、電力変換器の容量体積比は年々小さくなっているのに対し、高キャリア周波数での連続運転が求められている。その中でスイッチング素子の故障保護のため、サーミスタ等の素子を使用して温度検出を行う方法が知られている。しかしこの方法は、スイッチング素子のジャンクション温度を直接測定することは出来ず、電力変換器の容量が大きくなるにつれスイッチング素子が大きくなり、サーミスタを取り付ける場所の制約により急峻な温度上昇に追従するのは困難でスイッチング素子が破壊してしまうという課題があった。
【0003】
本技術分野の背景技術として特許文献1がある。特許文献1では、電力変換装置の内部損失をあらかじめ記憶部に記憶させておき、直流中間回路の直流電圧と回生電力と逆潮流電力と電力変換装置の内部損失に基づいて、制動パワー素子のスイッチング周波数とデューティ比を計算し、計算した制動パワー素子のスイッチング周波数とデューティ比を用いて、制動パワー素子の合計損失を計算し、その合計損失により制動パワー素子の温度保護を行う点が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-171677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、スイッチング素子の急峻な温度上昇に追従するのは困難であり、そのためには実際のスイッチング素子のジャンクション温度を検出する必要がある。
【0006】
本発明の目的は、上述した課題を解決し、急峻な温度上昇に追従するスイッチング素子のジャンクション温度を高精度に推定し、スイッチング素子の温度保護を行うことが可能な電力変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記背景技術及び課題に鑑み、その一例を挙げるならば、半導体スイッチング素子を使用する電力変換器であって、半導体スイッチング素子に流れる電流を検出する電流検出部と、半導体スイッチング素子の飽和電圧と順方向電圧を検出する電圧検出部と、飽和電圧と順方向電圧と電流から半導体スイッチング素子のジャンクション温度を推定する制御部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スイッチング素子のジャンクション温度を推定し検出することができる。これにより、急峻な温度上昇によるスイッチング素子の破壊を防ぐことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例における電力変換器の構成図である。
図2】実施例における1相分下アームの電圧検出の構成図である。
図3】実施例における単純な分圧回路にて検出した飽和電圧または順方向電圧の検出値の説明図である。
図4】実施例におけるクランプ回路を用いた1相分下アームの飽和電圧検出部の構成図である。
図5】実施例におけるクランプ回路を用いて検出した飽和電圧または順方向電圧の検出値の説明図である。
図6】コレクタ電流一定値の状態にて、ジャンクション温度が変化した場合の飽和電圧または順方向電圧の検出値の説明図である。
図7】実施例における処理フローチャートである。
図8】実施例におけるジャンクション温度における飽和電圧及び順方向電圧と電流の関係を示す図である。
図9】実施例におけるゲート信号と相電圧と検出電圧のタイミングチャートである。
図10図9とゲート信号のパルス幅が異なる場合のゲート信号と相電圧と検出電圧のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例につき、図面を用いて説明する。
【実施例
【0011】
図1は、本実施例における直流電圧または交流電圧を任意の電圧に変換する電力変換器の構成図の一例であり、例えば電源51に交流電源を入力とする。交流電源には電力会社から供給される三相交流電圧や発電機等から供給される電源が上げられる。この交流電源を直流変換回路52と平滑コンデンサ53からなる直流変換部54に入力することで交流電源を直流電圧VPNに変換する。直流変換回路52には図1のようにダイオードで構成された整流回路を用いることが多いが、IGBTとフライホイールダイオードを用いた回路でもよい。これにより生成された直流電圧を交流変換部55へ入力することにより、任意の交流電力に変換し、電動機等の負荷56に出力する。交流変換部55の例としては、図1ではIGBTとフライホイールダイオードを用いたものを示しているが、MOSFET等のスイッチング素子で構成してもよい。
【0012】
また、図1に示した構成例には、電流検出部2、電圧検出部3、及び、制御部1を設けている。制御部1は、交流変換部55のスイッチング素子のゲート信号生成に加え、後述する温度演算を行う。
【0013】
電流検出部2は、図1の電力変換器に流れる、電流値および向きを検出する。電流値は温度の判定に使用し、向きは飽和電圧もしくは順方向電圧の判断のために使用するが、これについては詳しく後述する。ただし、本実施例では電流検出部2は電力変換器の出力電流の2相のみ検出しているが、3相検出してもよい。
【0014】
電圧検出部3は、本実施例のようにIGBTを使用している場合は、コレクタ・エミッタ間電圧VCEを検出することによりIGBTの飽和電圧VCE(sat)及びフライホイールダイオードの順方向電圧Vを検出することが可能である。
【0015】
図2は、本実施例における1相分のスイッチング素子の構成図である。図2において、直流変換部54にて生成された直流電圧VPNのマイナス電位側に接続された下アームの半導体スイッチング素子とプラス電位側に接続された上アームの半導体スイッチング素子で1相分のスイッチングを行なう。
【0016】
IGBTの飽和電圧VCE(sat)の場合は、IGBTに電流が流れることによって生じる電圧だが、フライホイールダイオードの順方向電圧Vはダイオードに電流が流れることによって生じる電圧であるため、1相分の下アームの電圧検出は図2に示すような構成となる。
【0017】
なお、本実施例では、下アーム相電圧VCEを検出するために電圧検出部3を設けているが、上アーム相電圧VCEを検出してもよく、さらには上アームと下アーム両方の相電圧VCEを検出してもよい。
【0018】
ここで、IGBTに流れる電流をiとし、直流変換部54にて生成された直流電圧をVPN、相電圧をVCEとすると図3(a)に示すようなスイッチング波形となる。すなわち、スイッチングON時には、IGBTの飽和電圧VCE(sat)或いはフライホイールダイオードの順方向電圧Vとなり、スイッチングOFF時は、直流電圧VPNとなる。制御部1に入力できる電圧は直流電圧VPNに対して小さな電圧であることから、電圧検出部3にて制御部1に入力可能な電圧に変換しなければならない。電圧検出部3の構成を、単純な分圧回路とした場合、分圧比をαとし、制御部1に入力される検出電圧をVとすると、図3(b)に示すように、検出電圧Vは、分圧回路により相電圧VCEにα倍した値となる。すなわち、スイッチングON時にはIGBTの飽和電圧VCE(sat)或いはフライホイールダイオードの順方向電圧Vをα倍した値となり、直流電圧値VPNに対して小さな電圧となり、単純な分圧回路で分圧してしまうと正確な値を検出することが困難である。
【0019】
そこで電圧検出部3は図4に示すようなクランプ回路4を使用し、高電圧はクランプし制御部1へ入力可能な電圧に変換し、IGBTの飽和電圧VCE(sat)及びフライホイールダイオードの順方向電圧Vのように小さな電圧には影響を及ぼさない検出回路を構成する。このような回路構成にすることにより、クランプ電圧をVCMPとすると図5(b)に示すようにスイッチングON時のIGBTの飽和電圧VCE(sat)及びフライホイールダイオードの順方向電圧Vは小さくならず正確に検出できる。これにより制御部1に入力される波形は、コレクタ電流がある一定値の状態において、ジャンクション温度が変化した場合、図6のような検出波形となる。
【0020】
以上の構成において、スイッチング素子の飽和電圧及び順方向電圧を高精度に検出するためのフローチャートを図7に示す。なお、このフローチャートに基づき以下に処理の流れを示すが、様々な形態に変形が可能であるため、本実施例に示す形態に限定するものではない。
【0021】
図7において、まずステップS1にて電流検出部2及び電圧検出部3より、出力電流及び下アームのIGBTの飽和電圧VCE(sat)及びフライホイールダイオードの順方向電圧Vの検出を行う。ここで問題になるのが、IGBTの飽和電圧及びフライホイールダイオードの順方向電圧は電流と温度によって定まり、図8に示すような特徴を持っているが、さらに、IGBTの飽和電圧とフライホイールダイオードの順方向電圧では特性が異なってくる。そのため、IGBTの飽和電圧及びフライホイールダイオードの順方向電圧どちらを検出しているのか判断しなければならない。
【0022】
その判断方法の一つの例として、制御部にて生成されるIGBTをオン・オフさせるためのゲート信号、及び、電流検出部及び電圧検出部にて検出した値から、電圧検出部にて検出した電圧が、IGBTの飽和電圧もしくはフライホイールダイオードの順方向電圧なのかを判断する方法を述べる。ただしこの方法に限定するものではない。
【0023】
電圧検出部3によって検出される電圧は、IGBTの飽和電圧VCE(sat)、フライホイールダイオードの順方向電圧V、及び図1の直流変換部54にて生成された直流電圧VPNが挙げられる。検出される直流電圧に関しては、本実施例のように下アームを検出する場合は、電流の向きにより上アームのIGBT飽和電圧及びフライホイールダイオード順方向電圧が減少した値となるが、図4に示すような高電圧をクランプする構成としているため、減少を無視して論述する。
【0024】
まず、IGBT飽和電圧かフライホイールダイオード順方向電圧の判断のため、図7のフローチャートにおけるステップS2およびS3、S4の処理を行う。電力変換器に電流が流れ込む状態を流入時とし流れ出る方向を流出時とし、制御部1より出力されるゲート信号がHighのときにIGBTがオンすると定義する。ステップS2において、Yesが流入時、Noが流出時となる。流入時においては、下アームのIGBTのゲート信号をGXとすると、GXがHighレベルのときに下アームのIGBTがオンし、検出電圧Vは下アームのIGBTの飽和電圧VCE(sat)となる。一方、ゲート信号GXがLowレベルのときに下アームのIGBTがオフし、検出電圧Vは直流電圧VPNとなる。よって、ステップS3において、下アームがオンかを判断し、オンの時にステップS7で飽和電圧による温度検出を行なう。その詳細及びステップS5については後述する。また、流出時においては、上アームのゲート信号をGUとすると、IGBTゲート信号GUがHighレベルのときに上アームのIGBTがオンし、検出電圧Vは直流電圧VPNとなる。一方、GUがLowレベルのときに上アームのIGBTがオフし、検出電圧は下アームのフライホイールダイオードの順方向電圧Vとなる。よって、ステップS4において、上アームがオフかを判断し、オフの時にステップS8で順方向電圧による温度検出を行なう。その詳細及びステップS6については後述する。これによりIGBTの飽和電圧及びフライホイールダイオードの順方向電圧を区別し、検出することが出来る。
【0025】
ここで、図9にゲート信号GU、GXと相電圧VCEと検出電圧Vのタイミングチャートを示す。図9において、(a)は流入時、(b)は流出時を示しており、検出電圧Vには、ゲート信号が制御部1から出力され、IGBTが実際に動作するまでの動作遅れTD1とIGBTの相電圧を検出する電圧検出部3の遅れTD2が生じている。すなわち、ゲート信号が制御部1から出力されてから検出電圧が制御部1に入力されるまでの総遅れをTとすると総遅れTはTD1+TD2となる。
【0026】
このため、図9(a)に示すように、流入時に下アームのゲート信号GXがターンオン(LowレベルからHighレベルに切り替わること)してからT時間内は、制御部1に入力される検出電圧は直流電圧をクランプした値となり、IGBTの飽和電圧を誤検出してしまう。同様に図9(b)に示すように、流出時に上アームのゲート信号GUがターンオフ(HighレベルからLowレベルに切り替わること)してからT時間内は、制御部1に入力される検出電圧は直流電圧をクランプした値となり、フライホイールダイオードの順方向電圧を誤検出してしまう。そこで、誤検出とならないような処理が必要となる。
【0027】
図10は、図9と同様に、ゲート信号GU、GXと相電圧VCEと検出電圧Vのタイミングチャートであるが、図9に比べて、ゲート信号GU、GXのパルス幅が異なる場合の例である。図9と同様に、(a)は流入時、(b)は流出時を示している。
【0028】
図10においては、(a)に示すように、流入時には、下アームのゲート信号GXがHigh状態にて検出電圧Vの立下りエッジを検出したらIGBTの飽和電圧として扱い、(b)に示すように、流出時には、上アームのゲート信号GUがLow状態にて検出電圧Vの立下りエッジを検出したらフライホイールダイオードの順方向電圧として使用するといった方法が考えられる。ただし、ジャンクション温度が高く、IGBTの飽和電圧及びフライホイールダイオードの順方向電圧が高い場合にはエッジが検出できないといった誤動作が予測される。
【0029】
そのため、本実施例の場合は図7に示したステップS5、S6の処理を行う。すなわち、流入時には、ステップS5のように、下アームのゲート信号GXがターンオンしてからT時間内に検出した値は使用せず、また、流出時には、ステップS6のように、上アームのゲート信号GUがターンオフしてからT時間内に検出した値は使用しない処理を行う。
【0030】
以上で電流検出及び、飽和電圧もしくは順方向電圧を検出することが出来る。ここで先にも述べたが、スイッチング素子の特徴である、図8に示したジャンクション温度と電流によって定まる飽和電圧及び順方向電圧の関係の特性を利用し、ジャンクション温度を算出する。すなわち、検出した飽和電圧及び順方向電圧と電流の検出値を利用し、スイッチング素子の特性からジャンクション温度を求めることが可能である。
【0031】
よって図7に示したステップS7、S8の処理を行い、ジャンクション温度を算出する。IGBT側のジャンクション温度をTj(IGBT)とし、ジャンクション温度を求めるための係数をK(IGBT)、飽和電圧をVCE(sat)、電流をiとすると、飽和電圧VCE(sat)は電流iが流れているときに発生するため、オン抵抗をR(IGBT)とすると、オン抵抗R(IGBT)は式(1)のようになる。
(IGBT)= VCE(sat)/ i …(1)
この結果から、IGBT側のジャンクション温度Tj(IGBT)は式(2)のようになる。
j(IGBT)= K(IGBT)×R(IGBT) …(2)
【0032】
ジャンクション温度Tj(IGBT)を求めるための係数K(IGBT)に関してはIGBTによって異なるため、図8に示したような特性から読み取り、制御部1にて定数を保有する必要がある。これにより、IGBT側のジャンクション温度Tj(IGBT)を算出することが可能となる。
【0033】
IGBTの破壊という課題の解決方法として、図7に示したステップS9にて、ジャンクション温度Tj(IGBT)に判定値を持つことにより、判定値以下であれば最初に戻り再度検出を行ない、判定値以上であればステップS10にて、電力変換器のスイッチングを停止し出力遮断(開放)することにより、保護することが可能である。このほかにも、式(1)の結果を使用し、この結果を制御部1であらかじめ定めた閾値と比較し出力遮断(開放)するといった解決方法も実現可能である。
【0034】
次に、ダイオード側については、IGBT側の算出方法と同様に求めることが可能である。ダイオード側のジャンクション温度をTj(Diode)とし、ジャンクション温度を求めるための係数をK(Diode)、順方向電圧をV、電流をiとすると、順方向電圧Vは電流iが流れているときに発生するため、オン抵抗をR(Diode)とすると、オン抵抗R(Diode) は式(3)のようになる。
(Diode)= V/ i …(3)
この結果から、ダイオード側のジャンクション温度Tj(Diode)は式(4)のようになる。
j(Diode)= K(Diode)×R(Diode) …(4)
【0035】
ジャンクション温度Tj(Diode)を求めるための係数K(Diode)に関してはダイオードによって異なるため、図8に示したような特性から読み取り、制御部1にて定数を保有する必要がある。これにより、ダイオード側のジャンクション温度Tj(Diode)を算出することが可能となる。
【0036】
ダイオードの破壊という課題の解決方法として、図7に示したステップS9にて、ジャンクション温度Tj(Diode) に判定値を持つことにより、判定値以下であれば最初に戻り再度検出を行ない、判定値以上であればステップS10にて、電力変換器のスイッチングを停止し出力遮断(開放)することにより、保護することが可能である。このほかにも、式(3)の結果を使用し、この結果を制御部1であらかじめ定めた閾値と比較し出力遮断(開放)するといった解決方法も実現可能である。
【0037】
以上実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0038】
1:制御部、2:電流検出部、3:電圧検出部、4:クランプ回路、51:電源、52:直流変換回路、53:平滑コンデンサ、54:直流変換部、55:交流変換部、56:負荷
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10