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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】塗布方法及び塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20220106BHJP
   B05B 12/04 20060101ALI20220106BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20220106BHJP
【FI】
B05D1/02 A
B05B12/04
B05B13/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018164684
(22)【出願日】2018-09-03
(65)【公開番号】P2020037064
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】514012937
【氏名又は名称】株式会社アピロス
(74)【代理人】
【識別番号】100092691
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 勇治
(74)【代理人】
【識別番号】100199543
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】小林 敬
【審査官】團野 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-237651(JP,A)
【文献】特開平2-172565(JP,A)
【文献】特開2003-224060(JP,A)
【文献】特開平6-121944(JP,A)
【文献】特開2003-135998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B05B12/00-12/14
13/00-13/06
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗布物の塗布面にノズルヘッドに配置された噴霧ノズルから塗布液を噴霧し、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向及び該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に複合動作をさせ、該複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動、該他方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動、及び、該一方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する方法において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布方法。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、PsはノズルヘッドのY軸方向の移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【請求項2】
上記被塗布物の静止状態で上記走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を枚葉塗布する方法において、上記複数個の噴霧ノズルの配置ピッチが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)のすべてを満たすことを特徴とする請求項1記載の塗布方法。
【請求項3】
上記被塗布物の移送状態で上記走査サイクルの繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を連続塗布する方法において、上記ノズルヘッドを上記被塗布物の幅方向に8の字走査サイクルからなる8の字軌跡運動をさせ、上記被塗布物の移送速度Vrが下記式(5)を満たし、上記被塗布物の移送及び該8の字軌跡運動により上記被塗布物に対して上記噴霧ノズルの走査サイクルを相対的に行い、該複数個の該噴霧ノズルの配置ピッチPzが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする請求項1記載の塗布方法。
式(5):Vr=Vn×sinθ
(ここに、Vrは被塗布物の移送速度[mm/sec]、Vnは噴霧ノズルの走査速度[mm/sec]、θは噴霧ノズルの被塗布物の移送方向へ先上がり傾斜した走査方向とX軸方向とのなす走査傾斜角[°]を示す。)
【請求項4】
被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向に往復動作をさせると共に該被塗布物を該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に間欠移送をさせ、該ノズルヘッドのX軸方向の往復動作及び被塗布物のY軸方向の間欠移送の複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動・停止、他方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動・停止、及び、該一方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する方法において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布方法。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、Psは被塗布物の移送ピッチ、いいかえると、ノズルヘッドのY軸方向の被塗布物に対する相対的な移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【請求項5】
被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向及び該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に複合動作をさせる複合動作機構が備えられ、該複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動、他方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動、及び、該一方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する装置において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布装置。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、PsはノズルヘッドのY軸方向の移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【請求項6】
上記被塗布物の静止状態で上記走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を枚葉塗布する装置において、上記複数個の噴霧ノズルの配置ピッチが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)のすべてを満たすことを特徴とする請求項4記載の塗布装置。
【請求項7】
上記被塗布物の移送状態で上記走査サイクルの繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を連続塗布する装置において、上記ノズルヘッドを上記複合動作機構により上記被塗布物の幅方向に8の字走査サイクルからなる8の字軌跡運動をさせ、上記被塗布物の移送速度Vrが下記式(5)を満たし、上記被塗布物の移送及び該8の字軌跡運動により上記被塗布物に対して上記噴霧ノズルの走査サイクルを相対的に行い、該複数個の該噴霧ノズルの配置ピッチPzが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする請求項4記載の塗布装置。
式(5):Vr=Vn×sinθ
(ここに、Vrは被塗布物の移送速度[mm/sec]、Vnは噴霧ノズルの走査速度[mm/sec]、θは噴霧ノズルの被塗布物の移送方向へ先上がり傾斜した走査方向とX軸方向とのなす走査傾斜角[°]を示す。)
【請求項8】
被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向に往復動作をさせる往復動機構及び該被塗布物を該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に間欠移送をさせる間欠移送機構が備えられ、該ノズルヘッドのX軸方向の往復動作及び被塗布物のY軸方向の間欠移送の複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動・停止、他方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動・停止、及び、該一方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する装置において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布装置。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、Psは被塗布物の移送ピッチ、いいかえると、ノズルヘッドのY軸方向の被塗布物に対する相対的な移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工業製品の外装塗装やディスプレー、タッチパネル、燃料電池等の成膜技術として用いられる塗布方法及び塗布装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗布方法及び塗布装置として、被塗布物の塗布面にノズルヘッドに配置された噴霧ノズルから塗布液を噴霧し、ノズルヘッドを被塗布物の幅方向としてのX軸方向及び幅方向に直交する方向としてのY軸方向に複合動作をさせ、複合動作によりノズルヘッドは噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動、他方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動、及び、一方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布する塗布方法及び塗布装置が知られている。
【0003】
又、他の塗布方法及び塗布装置として、上記被塗布物の移送状態で上記走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を連続塗布するに際し、上記ノズルヘッドを上記被塗布物の幅方向に8の字走査サイクルからなる8の字軌跡運動をさせ、上記被塗布物の移送速度VrをVr=Vn×sinθ(ここに、Vrは被塗布物の移送速度[mm/sec]、Vnは噴霧ノズルの走査速度[mm/sec]、θは噴霧ノズルの走査傾斜角[°]を示す。)に設定し、被塗布物の移送及び8の字軌跡運動により被塗布物に対して上記噴霧ノズルの走査サイクルを相対的に行い、被塗布物に対する相対的となる走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布する塗布方法及び塗布装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭62-149388号公報
【文献】特公平6-71574号公報
【文献】特開昭62-23467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらこれら従来構造の場合、上記噴霧ノズルの上記走査サイクルをY軸方向に順次繰り返す動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布することになるため、上記走査サイクルのうちの上記噴霧ノズルの移動ピッチは5mm~20mm程度とされ、塗布処理速度の向上に対して限界が生ずることがある。
【0006】
この処理速度を向上させる手段として、噴霧ノズルの数を増やすことが有効ではあるが、上記噴霧ノズルの構造上、形状の小型化に限界があり、噴霧ノズルの配置ピッチに限界があり、しかも、隣り合う噴霧ノズルからの塗布液の干渉を回避するため、噴霧ノズルを千鳥状に配置して配置ピッチを広げる必要があり、複数の噴霧ノズルで交互に塗布を行うには、単一の噴霧ノズルのときよりも噴霧ノズルの走査サイクルの移動ピッチ分を大きくする必要があり、被塗布物の無駄な消費による材料効率の悪化、移動ピッチ分の拡大による装置の大型化等の問題が生ずることがある。
【0007】
又、他の従来構造として、被塗布物の塗布面を噴霧ノズルの数で分割し、各分割領域を単一の噴霧ノズルで塗布するという方法もあるが、隣り合う噴霧ノズルの境界部で、塗り重ねの際に乾燥状態が著しく異なるため塗布品質において問題が生ずることがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうち、請求項1記載の方法の発明は、被塗布物の塗布面にノズルヘッドに配置された噴霧ノズルから塗布液を噴霧し、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向及び該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に複合動作をさせ、該複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動、他方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動、及び、該一方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する方法において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布方法にある。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、PsはノズルヘッドのY軸方向の移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【0009】
又、請求項2記載の方法の発明は、上記被塗布物の静止状態で上記走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を枚葉塗布する方法において、上記複数個の噴霧ノズルの配置ピッチが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)のすべてを満たすことを特徴とするものである。
【0010】
又、請求項3記載の方法の発明は、上記被塗布物の移送状態で上記走査サイクルの繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を連続塗布する方法において、上記ノズルヘッドを上記被塗布物の幅方向に8の字走査サイクルからなる8の字軌跡運動をさせ、上記被塗布物の移送速度Vrが下記式(5)を満たし、上記被塗布物の移送及び該8の字軌跡運動により上記被塗布物に対して上記噴霧ノズルの走査サイクルを相対的に行い、該複数個の該噴霧ノズルの配置ピッチPzが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とするものである。
式(5):Vr=Vn×sinθ
(ここに、Vrは被塗布物の移送速度[mm/sec]、Vnは噴霧ノズルの走査速度[mm/sec]、θは噴霧ノズルの被塗布物の移送方向へ先上がり傾斜した走査方向とX軸方向とのなす走査傾斜角[°]を示す。)
【0011】
又、請求項4記載の方法の発明は、被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向に往復動作をさせると共に該被塗布物を該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に間欠移送をさせ、該ノズルヘッドのX軸方向の往復動作及び被塗布物のY軸方向の間欠移送の複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動・停止、他方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動・停止、及び、該一方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する方法において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布方法。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、Psは被塗布物の移送ピッチ、いいかえると、ノズルヘッドのY軸方向の被塗布物に対する相対的な移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【0012】
又、請求項5記載の装置の発明は、被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向及び該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に複合動作をさせる複合動作機構が備えられ、該複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動、他方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動、及び、該一方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する装置において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布装置にある。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、PsはノズルヘッドのY軸方向の移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【0013】
又、請求項6記載の装置の発明は、上記被塗布物の静止状態で上記走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を枚葉塗布する装置において、上記複数個の噴霧ノズルの配置ピッチが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)のすべてを満たすことを特徴とするものである。
【0014】
又、請求項7記載の装置の発明は、上記被塗布物の移送状態で上記走査サイクルの繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に上記塗布液を連続塗布する装置において、上記ノズルヘッドを上記複合動作機構により上記被塗布物の幅方向に8の字走査サイクルからなる8の字軌跡運動をさせ、上記被塗布物の移送速度Vrが下記式(5)を満たし、上記被塗布物の移送及び該8の字軌跡運動により上記被塗布物に対して上記噴霧ノズルの走査サイクルを相対的に行い、該複数個の該噴霧ノズルの配置ピッチPzが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とするものである。
式(5):Vr=Vn×sinθ
(ここに、Vrは被塗布物の移送速度[mm/sec]、Vnは噴霧ノズルの走査速度[mm/sec]、θは噴霧ノズルの被塗布物の移送方向へ先上がり傾斜した走査方向とX軸方向とのなす走査傾斜角[°]を示す。)
【0015】
又、請求項8記載の装置の発明は、被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、該ノズルヘッドを該被塗布物の幅方向としてのX軸方向に往復動作をさせる往復動機構及び該被塗布物を該幅方向に直交する方向としてのY軸方向に間欠移送をさせる間欠移送機構が備えられ、該ノズルヘッドのX軸方向の往復動作及び被塗布物のY軸方向の間欠移送の複合動作により該ノズルヘッドは該噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動・停止、他方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での該噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動・停止、及び、該一方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、該走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により該被塗布物の塗布面に該塗布液を塗布する装置において、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、該複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、該噴霧ノズルの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすことを特徴とする塗布装置。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
(ここに、Psは被塗布物の移送ピッチ、いいかえると、ノズルヘッドのY軸方向の被塗布物に対する相対的な移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルの外幅寸法[mm]、Bは塗布面上の塗布幅[mm]を示す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述の如く、請求項1及び請求項5記載の発明にあっては、被塗布物に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、ノズルヘッドを被塗布物の幅方向としてのX軸方向及び幅方向に直交する方向としてのY軸方向に複合動作をさせる複合動作機構が備えられ、複合動作によりノズルヘッドは噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動、他方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動、及び、一方側部での噴霧ノズルのY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布するに際し、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、噴霧ノズルの配置ピッチPzが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすから、複数個の噴霧ノズルの走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルの移動軌跡及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡により塗布液を塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個の噴霧ノズルにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物の無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0017】
又、請求項2及び請求項6記載の発明にあっては、上記被塗布物の静止状態で上記走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に上記塗布液を枚葉塗布するに際し、上記複数個の噴霧ノズルの配置ピッチが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)のすべてを満たすから、上記被塗布物の静止状態で上記走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に複数個の噴霧ノズルで塗布液を枚葉塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルの移動軌跡及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡により塗布液を塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個の噴霧ノズルにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物の無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0018】
又、請求項3及び請求項7記載の発明にあっては、被塗布物の連続的な移送状態で噴霧ノズルの8の字走査サイクルからなる8の字軌跡運動の協動により被塗布物の塗布面に対する上記相対的な走査サイクルを行い、複数個の噴霧ノズルの相対的な走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルの移動軌跡及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡により塗布液を塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個の噴霧ノズルにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物の無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0019】
又、請求項4及び請求項8記載の発明にあっては、被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する噴霧ノズルがノズルヘッドに配置され、ノズルヘッドを被塗布物の幅方向としてのX軸方向に往復動作をさせる往復動機構及び被塗布物を幅方向に直交する方向としてのY軸方向に間欠移送をさせる間欠移送機構が備えられ、ノズルヘッドのX軸方向の往復動作及び被塗布物のY軸方向の間欠移送の複合動作によりノズルヘッドは噴霧ノズルの被塗布物の一方側部から他方側部へのX軸方向の移動・停止、他方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動、他方側部での噴霧ノズルの被塗布物の他方側部から一方側部へのX軸方向の移動・停止、及び、一方側部での被塗布物のY軸方向の移動ピッチ分の移動からなる走査サイクルを行い、走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布するに際し、上記噴霧ノズルは上記ノズルヘッドに複数個配置され、複数個の噴霧ノズルは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、噴霧ノズルの配置ピッチPzが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすから、複数個の噴霧ノズルのX軸方向の往復動作及び被塗布物のY軸方向の間欠移送による走査サイクルのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物の塗布面に塗布液を塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルの移動軌跡及び被塗布物の移送ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡により塗布液を塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個の噴霧ノズルにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物の無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の第一形態例の説明斜視図である。
図2】本発明の実施の第一形態例の説明平面図である。
図3】本発明の実施の第一形態例の実施例1の噴霧ノズルの移動軌跡説明図である。
図3-1】本発明の実施の第一形態例の実施例1の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図3-2】本発明の実施の第一形態例の実施例1の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図4】本発明の実施の第一形態例の実施例2の噴霧ノズルの移動軌跡説明図である。
図4-1】本発明の実施の第一形態例の実施例2の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図4-2】本発明の実施の第一形態例の実施例2の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図5】本発明の実施の第一形態例の実施例3の噴霧ノズルの移動軌跡説明図である。
図5-1】本発明の実施の第一形態例の実施例3の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図5-2】本発明の実施の第一形態例の実施例3の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図6】本発明の実施の第一形態例の実施例4の噴霧ノズルの移動軌跡説明図である。
図6-1】本発明の実施の第一形態例の実施例4の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図6-2】本発明の実施の第一形態例の実施例4の噴霧ノズルの移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図7】本発明の実施の第二形態例の説明斜視図である。
図8】本発明の実施の第二形態例の実施例1の噴霧ノズルの相対的移動軌跡説明図である。
図9】本発明の実施の第二形態例の実施例1の噴霧ノズルの相対的移動軌跡説明図である。
図9-1】本発明の実施の第二形態例の実施例1の噴霧ノズルの相対的移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図9-2】本発明の実施の第二形態例の実施例1の噴霧ノズルの相対的移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図10】本発明の実施の第二形態例の実施例2の噴霧ノズルの相対的移動軌跡説明図である。
図11】本発明の実施の第二形態例の実施例2の噴霧ノズルの相対的移動軌跡説明図である。
図11-1】本発明の実施の第二形態例の実施例2の噴霧ノズルの相対的移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図11-2】本発明の実施の第二形態例の実施例2の噴霧ノズルの相対的移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図12】本発明の実施の第三形態例の説明斜視図である。
図13】本発明の実施の第三形態例の説明平面図である。
図14】本発明の実施の第三形態例の噴霧ノズルの相対的移動軌跡説明図である。
図14-1】本発明の実施の第三形態例の噴霧ノズルの相対的移動軌跡及び塗布断面説明図である。
図15】本発明の実施の第四形態例の説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1乃至図15は本発明の実施の形態例であって、図1乃至図6-2の第一形態例は、上記請求項1、請求項2及び請求項5、請求項6記載の発明に対応するものであり、図7乃至図11-2の第二形態例は、上記請求項3及び請求項7記載の発明に対応するものであり、図12乃至図14-1の第三形態例及び図15の第四形態例は、上記請求項4及び請求項8記載の発明に対応するものである。
【0022】
図1乃至図6-2の第一形態例において、Qは噴霧ノズルであって、図1図2の如く、被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを噴霧する複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・QがノズルヘッドDに配置され、ノズルヘッドDは複合動作機構Mにより被塗布物Wの幅方向としてのX軸方向及び幅方向に直交する方向としてのY軸方向に複合動作をされることになる。
【0023】
この複合動作機構MによるノズルヘッドDの複合動作により、図3の如く、ノズルヘッドDは、噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの一方側部から他方側部へのX軸方向の移動X、他方側部での噴霧ノズルQ・QのY軸方向の移動ピッチPs分の移動Y、他方側部での噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの他方側部から一方側部へのX軸方向の移動X、及び、一方側部での噴霧ノズルQ・QのY軸方向の移動ピッチPs分の移動Yの4つの移動X・Y・X・Yからなる走査サイクルC(X→Y→X→Y)を行い、走査サイクルCのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布するように構成している。この場合、上記複合動作機構Mは、上記ノズルヘッドDを被塗布物Wの塗布面Wに対して上下方向としてのZ軸方向に移動自在とする構造に構成されている。
【0024】
なお、上記噴霧ノズルQ・QのY軸方向の移動軌跡Y・Yでは移動ピッチPs分の送り動作及び一方側部から他方側部、又は、他方側部から一方側部への反転動作時においては、噴霧ノズルQ・Qの移動速度が一定ではないため塗布対象範囲外で行う必要がある。すなわち、塗布液Eの塗布を行う範囲は、これら送り動作及び反転動作を行う範囲を除く、X軸方向の有効塗布範囲L内で行うことになる。
【0025】
Sは保持台であって、図1図2の如く、上記被塗布物Wが載置可能に配設され、被塗布物Wは保持台Sに一枚宛、人為的又は自動的に供給取出自在に設けられ、所謂、枚葉式の塗布方法及び装置が採用されている。
【0026】
この際、図3の如く、上記複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Qは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすように配置している。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
ここに、上記PsはノズルヘッドDのY軸方向の移動ピッチ[mm]、上記Nは噴霧ノズルQの数[個]、上記Pcは塗り重ねピッチ[mm]、上記Pzは噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチ[mm]、上記nは係数(噴霧ノズルQの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、上記Nbは噴霧ノズルQの外幅寸法[mm]、上記Bは塗布面W上の塗布幅[mm]を示している。ここに、自然数とは正の整数をいい、0(ゼロ)や負の数は含まない。
【0027】
表1は噴霧ノズルQの数Nと係数nとの関係において、噴霧ノズルQの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数という条件が成立する係数nには○、不成立となる係数nには×とした表である。
【0028】
【表1】
【0029】
すなわち、表1中、ノズルの数Nが2のとき、成立する係数nは3、5、7、(9、11・・)、不成立となる係数nは2、4、6、8、(10、12・・)となり、ノズルの数Nが3のとき、成立する係数nは2、4、5、7、8、(10、11・・)、不成立となる係数nは3、6、(9、12・・)となる。
【0030】
なお、上記式(3):Pz≧Nbは、対向する2個の噴霧ノズルQ・Qが互いに衝接せずに並列配置が可能となるための条件であり、式(4):Pz≧Bは、2個の噴霧ノズルQ・Qからの塗布液Eの噴霧が互いに干渉しないとするための条件である。
【0031】
なお、上記配置ピッチPzは、噴霧ノズルQ・Qのサイズ、及び、互いの噴霧が影響しない範囲でなるべく小さい方が望ましい。これは装置が無駄に大きくならず、かつ、塗布開始と終了時の無駄になる塗布範囲が小さくなるためである。
【0032】
これらの一般的な具体的数値を示すと、上記噴霧ノズルQの外幅寸法Nbは約50mm、上記塗布面W上の塗布幅Bは約30mm、移動ピッチPs(Y・Y、Y=Y)は約5mm~約20mmとされる。
【0033】
ここに、上記式(1)を満たすという成立条件は、もともと、噴霧ノズルQ1個による塗布の場合、同じピッチで塗り重ねていくこと(Ps=Pc)が精密成膜の基本であり、噴霧ノズルQを複数個配置する場合、それぞれの噴霧ノズルQ・Qからの噴霧が交互に同じピッチで塗り重ねられることが条件となり、このため、複数個の噴霧ノズルQ・・を配置した場合、各々の噴霧ノズルQ・・による塗布が繰り返され、全ての噴霧ノズルQ・・が一度ずつ塗布を重ねた後に再び最初の噴霧ノズルQの塗布が行われることになるという条件を定めたものである。この場合、噴霧ノズルQの配置順と塗り重ねの順番は必ずしも一致はせず噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPzによりその順番が入れ替わる。このため、噴霧ノズルQ・Qの移動ピッチPsは噴霧ノズルQの数Nと塗り重ねピッチPcの積にする必要があり、例えば2個の噴霧ノズルQ・Qの場合、塗り重ねピッチPcの2倍の移動ピッチPsで動作させる必要があり、また、例えば3個の噴霧ノズルQ・Q・Qの場合、3倍の移動ピッチPsで動作させる必要があり、4個の噴霧ノズルQ・Q・Q・Qの場合、以降も同様となる。
【0034】
又、上記式(2)、式(3)及び式(4)を満たすという成立条件については、噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPzに関しては、小さすぎると噴霧ノズルQのサイズから物理的に配置できないし、さらに、近すぎると隣り合う噴霧が互いに干渉し合い、正常な塗布ができないことから定められている。このため、この場合、配置ピッチPzを約50mm以上にする必要があり、又、噴霧ノズルQを複数個配置する場合、それぞれの噴霧ノズルQ・Qからの噴霧が交互に同じピッチで塗り重ねられることが条件となり、このため、噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPzは塗り重ねピッチPcの倍数になっている必要があり、言い換えると、塗り重ねピッチPcの倍数でないときは均一ピッチにならず、よって、nは自然数である必要がある。
【0035】
又、上記係数nの条件については、複数個の噴霧ノズルQ・・の場合、1番目の噴霧ノズルQの通過点と2番目以降の噴霧ノズルQの配置が一致する場合、塗り重ねピッチPcが0(ゼロ)になる箇所が存在し、正しい塗布が行えないことになり、言い換えると、噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPz及びその倍数と移動ピッチPs並びにその倍数が一致する場合を除外する必要がある。よって、係数nは噴霧ノズルQの数Nの約数、及びその倍数以外の自然数という排除条件が必要となる。
【0036】
この実施の第一形態例は上記構成であるから、例えば、(実施例1)表1中、噴霧ノズルQの数Nが2、係数nが3の場合、噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡は図3図3-1、図3-2において、先ず、図3-1中、(1)の如く、2個の噴霧ノズルQ・Qにより被塗布物Wの塗布面Wに走査サイクルCのうちの移動Xにより2個の塗膜Q11・Q21が形成され、移動Yを経由した後、図3-1中、(2)の如く、移動Xにより2個の塗膜Q12・Q22が形成され、塗り重ねピッチPcが形成され、移動Yを経て一回目の走査サイクルCがなされ、引き続き、図3-2中、(1)の如く、二回目の走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、2個の塗膜Q13・Q23が形成され、塗り重ねピッチPc・Pcが形成され、次いで、図3-2中、(2)の如く、2個の塗膜Q14・Q24が形成され、塗り重ねピッチPcが形成され、これら走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、走査サイクルCの繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができる。
【0037】
又、例えば、(実施例2)表1中、噴霧ノズルQの数Nが2、不成立となる係数nが4の場合、すなわち、噴霧ノズルQの数Nが2の場合、上記係数nの条件(噴霧ノズルQの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)を満たさない場合、噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡は図4図4-1、図4-2において、先ず、図4-1中、(1)の如く、2個の噴霧ノズルQ・Qにより被塗布物Wの塗布面Wに走査サイクルCのうちの移動Xにより2個の塗膜Q11・Q21が形成され、移動Yを経由した後、図4-1中、(2)の如く、移動Xにより2個の塗膜Q12・Q22が形成され、移動Yを経て一回目の走査サイクルCがなされ、引き続き、図4-2中、(1)の如く、二回目の走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、2個の塗膜Q13・Q23が形成され、塗膜Q13は上記塗膜Q21上に形成され、塗り重ねピッチPcは形成されず、次いで、図4-2中、(2)の如く、2個の塗膜Q14・Q24が形成され、塗膜Q14は上記塗膜Q22上に形成され、塗り重ねピッチPcは形成されず、したがって、噴霧ノズルQと噴霧ノズルQとの移動軌跡が一致して塗り重ねピッチPcは形成されず、係数nの条件を満たさない場合、すなわち、不成立の場合の噴霧ノズルQの移動軌跡の状態が理解される。
【0038】
なお、図示省略しているが、係数nの条件を満たさない、係数nが自然数でない(整数でもない)小数・分数の場合、例えば、n=1.2の小数の場合、塗り重ねピッチPcが不均一となり、噴霧ノズルQの塗り重ねが行われず、移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができない状態が理解される。
【0039】
又、例えば、(実施例3)表1中、噴霧ノズルQの数Nが2、係数nが5の場合、噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡は、図5図5-1、図5-2において、先ず、図5-1中、(1)の如く、2個の噴霧ノズルQ・Qにより被塗布物Wの塗布面Wに走査サイクルCのうちの移動Xにより2個の塗膜Q11・Q21が形成され、移動Yを経由した後、図5-1中、(2)の如く、移動Xにより2個の塗膜Q12・Q22が形成され、移動Yを経て一回目の走査サイクルCがなされ、引き続き、図5-2中、(1)の如く、二回目の走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、2個の塗膜Q13・Q23が形成され、塗り重ねピッチPcが形成され、次いで、図5-2中、(2)の如く、2個の塗膜Q14・Q24が形成され、塗り重ねピッチPc・Pcが形成され、これら走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、走査サイクルCの繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができる。
【0040】
又、例えば、(実施例4)表1中、噴霧ノズルQの数Nが3、係数nが2の場合、噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡は、図6図6-1、図6-2において、先ず、図6-1中、(1)の如く、3個の噴霧ノズルQ・Q・Qにより被塗布物Wの塗布面Wに走査サイクルCのうちの移動Xにより3個の塗膜Q11・Q21・Q31が形成され、移動Yを経由した後、図6-1中、(2)の如く、移動Xにより3個の塗膜Q12・Q22・Q32が形成され、塗り重ねピッチPc・Pc・Pcが形成され、移動Yを経て一回目の走査サイクルCがなされ、引き続き、図6-2中、(1)の如く、二回目の走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、3個の塗膜Q13・Q23・Q33が形成され、塗り重ねピッチPc・Pc・Pcが形成され、次いで、図6-2中、(2)の如く、3個の塗膜Q14・Q24・Q34が形成され、塗り重ねピッチPc・Pc・Pcが形成され、これら走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、走査サイクルCの繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Q・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができる。
【0041】
したがって、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Q或いは3個の噴霧ノズルQ・Q・Qの走査サイクルC(X→Y→X→Y)のY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の2個の噴霧ノズルQ・Q或いは3個の噴霧ノズルQ・Q・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Q又は3個の噴霧ノズルQ・Q・Qにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物Wの無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0042】
又、この場合、上記被塗布物Wの静止状態で上記走査サイクルCのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Q又は3個の噴霧ノズルQ・Q・Qにより塗布液Eを枚葉塗布することができ、互いに平行なX軸方向の2個の噴霧ノズルQ・Q又は3個の噴霧ノズルQ・Q・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Q又は3個の噴霧ノズルQ・Q・Qにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物Wの無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0043】
図7乃至図11-2の第二形態例にあっては、シート状の被塗布物Wを巻出ロールRdから巻取ロールRmに保持台S上を介して連続移送し、所謂、ロール・to・ロール(roll to roll)の連続塗布式の塗布方法及び装置が採用され、上記保持台Sの上方に上記複合動作機構MのノズルヘッドDを配設した構造となっている。なお、上記第一形態例と同一態様部分には同符号を付して説明を省略する。
【0044】
この場合、上記ノズルヘッドDを上記複合動作機構Mにより上記被塗布物Wの幅方向に8の字走査サイクルHからなる8の字軌跡運動をさせ、被塗布物Wの移送速度Vrが下記式(5)を満たし、被塗布物Wの移送及び8の字軌跡運動の協動により、上記被塗布物Wに対して上記噴霧ノズルQの走査サイクルCを相対的に行い、複数個の噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPzが上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすこととしている。
式(5):Vr=Vn×sinθ
(ここに、Vrは被塗布物Wの移送速度[mm/sec]、Vnは噴霧ノズルQの走査速度[mm/sec]、θは噴霧ノズルQの被塗布物Wの移送方向へ先上がり傾斜した走査方向とX軸方向とのなす走査傾斜角[°]を示す。)
【0045】
ここに、噴霧ノズルQの走査速度VnのY軸方向の走査速度成分Vn×sinθを被塗布物Wの移送速度Vrに合わせることにより連続移送される被塗布物Wにおいても、枚葉式と同様に塗布を行えるようにしたものである。
【0046】
すなわち、上記複合動作機構MによるノズルヘッドDの複合動作により、図8の如く、ノズルヘッドDは噴霧ノズルQ・Qの戻移動dを介して被塗布物Wの一方側部から他方側部への被塗布物Wの移送方向へ先上がり傾斜した走査方向とX軸方向とのなす走査傾斜角θをもっての移動a、他方側部における被塗布物Wの移送方向と反対向きの戻移動b、噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの他方側部から一方側部への被塗布物Wの移送方向へ先上がり傾斜した走査方向とX軸方向とのなす走査傾斜角θをもっての移動c及び一方側部における被塗布物Wの移送方向と反対向きの上記戻移動bと同距離の戻移動dの4つの移動a・b・c・dからなる8の字走査サイクルH(a→b→c→d)を繰り返し、被塗布物Wの移送及び8の字軌跡運動の協動により被塗布物Wに対して上記噴霧ノズルQ・Q・・の走査サイクルC(X→Y→X→Y)を相対的に行い、相対的な走査サイクルCの繰り返しにより被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布するように構成している。
【0047】
この実施の第二形態例は上記構成であるから、例えば、(実施例1)表1中、噴霧ノズルQの数Nが2、係数nが3の場合、噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPzを上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすこととし、かつ、図8の如く、上記ノズルヘッドDを上記複合動作機構Mにより上記被塗布物Wの幅方向に8の字走査サイクルHからなる8の字軌跡運動をさせ、被塗布物Wの移送速度Vrが上記式(5)を満たすことにより、噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの塗布面Wに対する相対的な移動軌跡は図9図9-1、図9-2となり、すなわち、上記図3図3-1、図3-2と同じ相対的な軌跡となり、先ず、図9-1中、(1)の如く、2個の噴霧ノズルQ・Qにより被塗布物Wの塗布面Wに相対的な走査サイクルCのうちの移動Xにより2個の塗膜Q11・Q21が形成され、移動Yを経由した後、図9-1中、(2)の如く、移動Xにより2個の塗膜Q12・Q22が形成され、塗り重ねピッチPcが形成され、移動Yを経て一回目の相対的な走査サイクルCがなされ、引き続き、図9-2中、(1)の如く、二回目の相対的な走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、2個の塗膜Q13・Q23が形成され、塗り重ねピッチPc・Pcが形成され、次いで、図9-2中、(2)の如く、2個の塗膜Q14・Q24が形成され、塗り重ねピッチPc・Pcが形成され、これら相対的な走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、被塗布物Wの移送及び8の字軌跡運動の協動による相対的な走査サイクルCの繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができる。
【0048】
又、例えば、(実施例2)表1中、噴霧ノズルQの数Nが3、係数nが2の場合、噴霧ノズルQ・Q・Qの配置ピッチPzを上記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすこととし、かつ、図10の如く、上記ノズルヘッドDを上記複合動作機構Mにより上記被塗布物Wの幅方向に8の字走査サイクルHからなる8の字軌跡運動をさせ、被塗布物Wの移送速度Vrが上記式(5)を満たすことにより、噴霧ノズルQ・Q・Qの被塗布物Wの塗布面Wに対する相対的な移動軌跡は図11図11-1、図11-2となり、すなわち、3個の噴霧ノズルQ・Q・Qの移動軌跡は、図11図11-1、図11-2において、先ず、図11-1中、(1)の如く、3個の噴霧ノズルQ・Q・Qにより被塗布物Wの塗布面Wに走査サイクルCのうちの移動Xにより3個の塗膜Q11・Q21・Q31が形成され、移動Yを経由した後、図11-1中、(2)の如く、移動Xにより3個の塗膜Q12・Q22・Q32が形成され、塗り重ねピッチPc・Pc・Pcが形成され、移動Yを経て一回目の走査サイクルCがなされ、引き続き、図11-2中、(1)の如く、二回目の走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、3個の塗膜Q13・Q23・Q33が形成され、塗り重ねピッチPc・Pc・Pcが形成され、次いで、図11-2中、(2)の如く、3個の塗膜Q14・Q24・Q34が形成され、塗り重ねピッチPc・Pc・Pcが形成され、これら走査サイクルCが相対的にY軸方向に繰り返され、被塗布物Wの移送及び8の字軌跡運動の協動による相対的な走査サイクルCの繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Q・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができる。
【0049】
したがって、被塗布物Wの連続的な移送状態で噴霧ノズルQの8の字走査サイクルHからなる8の字軌跡運動の協動により被塗布物Wの塗布面Wに対する上記相対的な走査サイクルCを行い、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Q或いは3個の噴霧ノズルQ・Q・Qの相対的な走査サイクルC(X→Y→X→Y)のY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の2個の噴霧ノズルQ・Q或いは3個の噴霧ノズルQ・Q・Qの移動軌跡X・X及び移動ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個の噴霧ノズルQ・・により塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物Wの無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0050】
図12乃至図14-1の第三形態例にあっては、図12図13の如く、被塗布物の塗布面に塗布液を噴霧する複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・QがノズルヘッドDに配置され、ノズルヘッドDを被塗布物Wの幅方向としてのX軸方向に往復動作をさせる往復動機構T及び被塗布物Wを被塗布物Wの幅方向に直交する方向としてのY軸方向に間欠移送をさせる間欠移送機構Fが備えられている。尚、上記第一形態例と同一態様部分には同符号を付して説明を省略する。
【0051】
この往復動機構T及び間欠移送機構Fにより、図14図14-1の如く、ノズルヘッドDは、噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの一方側部から他方側部へのX軸方向の移動X・停止、他方側部での被塗布物WのY軸方向の移動ピッチPs分の移動Y、他方側部での噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの他方側部から一方側部へのX軸方向の移動X・停止、及び、一方側部での被塗布物WのY軸方向の移動ピッチPs分の移動Yの4つの移動X・Y・X・Yからなる走査サイクルC(X→Y→X→Y)を行い、ノズルヘッドDのX軸方向の往復動作及び被塗布物WのY軸方向の間欠移送による走査サイクルCのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布するように構成している。
【0052】
Sは保持台であって、図12図13の如く、上記被塗布物Wが載置可能に配設され、被塗布物Wは保持台Sに一枚宛、人為的又は自動的に供給取出自在に設けられ、所謂、枚葉式の塗布方法及び装置が採用されている。
【0053】
この際、図12図13の如く、上記複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Qは上記Y軸方向に所定の配置ピッチPzで並列配置され、噴霧ノズルQ・Qの配置ピッチPzが下記式(1)、式(2)、式(3)及び式(4)の全てを満たすように配置している。
式(1):Ps=N×Pc
式(2):Pz=n×Pc
式(3):Pz≧Nb
式(4):Pz≧B
ここに、Psは被塗布物Wの移送ピッチ、いいかえると、ノズルヘッドDのY軸方向の被塗布物Wに対する相対的な移動ピッチ[mm]、Nは噴霧ノズルQの数[個]、Pcは塗り重ねピッチ[mm]、Pzは噴霧ノズルQの配置ピッチ[mm]、nは係数(噴霧ノズルQの数Nの1以外の約数、及びその倍数以外の自然数)、Nbは噴霧ノズルQの外幅寸法[mm]、Bは塗布面W上の塗布幅[mm]を示している。)
【0054】
この実施の第三形態例は上記構成であるから、例えば、表1中、噴霧ノズルQの数Nが2、係数nが3の場合、噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡は図14図14-1において、先ず、図14-1中、(1)の如く、2個の噴霧ノズルQ・Qにより被塗布物Wの塗布面Wに走査サイクルCのうちの移動Xにより2個の塗膜Q11・Q21が形成され、移動X後、2個の噴霧ノズルQ・Qは一旦停止し、次いで、図14-1中、(2)の如く、被塗布物Wは移動ピッチPs分移動Yし、その後、2個の噴霧ノズルQ・Qは移動Xして2個の塗膜Q12・Q22が形成され、塗り重ねピッチPcが形成され、移動X後、2個の噴霧ノズルQ・Qは一旦停止し、被塗布物Wの移送ピッチPs分の移動Yを経て一回目の走査サイクルCがなされ、これら走査サイクルCがY軸方向に繰り返され、走査サイクルCの繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡X・X及び被塗布物WのY軸方向の間欠移送による移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができる。
【0055】
したがって、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・QのX軸方向の往復動作及び被塗布物WのY軸方向の間欠移送による走査サイクルC(X→Y→X→Y)のY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡X・X及び被塗布物Wの移送ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Qにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物Wの無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0056】
図15の第四形態例は上記第三形態例の別例構造であって、この場合、シート状の被塗布物Wを巻出ロールRdから巻取ロールRmに保持台S上を介して間欠移送し、所謂、ロール・to・ロールの連続塗布式の塗布方法及び装置が採用され、上記保持台Sの上方にノズルヘッドDを往復動機構Tにより被塗布物Wの幅方向としてのX軸方向に往復動作をさせると共に被塗布物Wを間欠移送機構Fにより被塗布物Wの幅方向に直交する方向としてのY軸方向に間欠移送並びに連続移送をさせる構造となっている。なお、上記第三形態例と同一態様部分には同符号を付して説明を省略する。
【0057】
しかして、上記第三形態例と同様に、上記往復動機構T及び間欠移送機構Fにより、図15の如く、ノズルヘッドDは、噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの一方側部から他方側部へのX軸方向の移動X・停止、他方側部での被塗布物WのY軸方向の移動ピッチPs分の移動Y、他方側部での噴霧ノズルQ・Qの被塗布物Wの他方側部から一方側部へのX軸方向の移動X・停止、及び、一方側部での被塗布物WのY軸方向の移動ピッチPs分の移動Yの4つの移動X・Y・X・Yからなる走査サイクルC(X→Y→X→Y)を行い、ノズルヘッドDのX軸方向の往復動作及び被塗布物WのY軸方向の間欠移送による走査サイクルCのY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布するように構成している。
【0058】
したがって、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・QのX軸方向の往復動作及び被塗布物WのY軸方向の間欠移送による走査サイクルC(X→Y→X→Y)のY軸方向の繰り返し動作により被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することができ、互いに平行なX軸方向の噴霧ノズルQ・Qの移動軌跡X・X及び被塗布物Wの移送ピッチPs分のY軸方向の移動軌跡Y・Yにより塗布液Eを塗り重ねて均一な成膜を行うことができ、複数個、この場合、2個の噴霧ノズルQ・Qにより塗布の処理速度を向上することができ、被塗布物Wの無駄な消費を抑制することができ、装置の小型化を図ることができる。
【0059】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、例えば、噴霧ノズルQの数、係数n、ノズルヘッドDや複合動作機構Mの形状や構造等は適宜変更して設計される。
【0060】
又、上記第二形態例はロール・to・ロールの連続塗布式の塗布方法及び装置であり、ロール・to・ロールの連続塗布式に代えて搬送コンベヤにより被塗布物Wを搬送する連続塗布式の塗布方法及び装置とし、被塗布物Wの移送及び8の字走査サイクルHからなる8の字軌跡運動の協動による相対的な走査サイクルCの繰り返し動作により複数個の噴霧ノズルQ・・で被塗布物Wの塗布面Wに塗布液Eを塗布することも可能である。
【0061】
又、上記第四形態例はロール・to・ロールの連続塗布式の塗布方法及び装置であり、ロール・to・ロールの連続塗布式に代えて搬送コンベヤにより被塗布物Wを搬送する連続塗布式の塗布方法及び装置とすることもできる。
【0062】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【符号の説明】
【0063】
W 被塗布物
塗布面
E 塗布液
D ノズルヘッド
Q 噴霧ノズル
噴霧ノズル
噴霧ノズル
噴霧ノズル
M 複合動作機構
T 往復動機構
F 間欠移送機構
C 走査サイクル
移動
移動
移動
移動
Ps 移動ピッチ
Pc 塗り重ねピッチ
Pz 噴霧ノズルの配置ピッチ
N 噴霧ノズルの数
n 係数
Vr 被塗布物の移送速度
Vn 噴霧ノズルの走査速度
θ 走査傾斜角
H 8の字走査サイクル
Nb 噴霧ノズルの外幅寸法
B 塗布面上の塗布幅
図1
図2
図3
図3-1】
図3-2】
図4
図4-1】
図4-2】
図5
図5-1】
図5-2】
図6
図6-1】
図6-2】
図7
図8
図9
図9-1】
図9-2】
図10
図11
図11-1】
図11-2】
図12
図13
図14
図14-1】
図15