(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】高過酸化水素廃棄物ストリームの処理
(51)【国際特許分類】
C02F 1/70 20060101AFI20220107BHJP
C02F 1/64 20060101ALI20220107BHJP
C02F 1/44 20060101ALI20220107BHJP
B01D 61/14 20060101ALI20220107BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C02F1/70 Z
C02F1/64
C02F1/44 E
B01D61/14 500
B01D61/58
(21)【出願番号】P 2018562981
(86)(22)【出願日】2017-05-25
(86)【国際出願番号】 US2017034588
(87)【国際公開番号】W WO2017210094
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-02-18
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513180152
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Evoqua Water Technologies LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】フランク エル ジュニア ササマン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド エル バーガー
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー アール カーズ
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-078487(JP,A)
【文献】特開昭59-162994(JP,A)
【文献】特表平07-506758(JP,A)
【文献】特開2000-135492(JP,A)
【文献】特開2004-337651(JP,A)
【文献】特開平10-277568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/70 - 1/78
C02F 1/58 - 1/64
C02F 1/44
B01D 61/00 - 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水中の過酸化水素の濃度を低下させる方法であって、
前記廃水を希釈した希釈済廃水を調製し、かつ前記廃水を希釈することは、前記希釈済廃水を第1反応槽に導入する前に、前記廃水中の過酸化水素の濃度を2.2wt%未満に希釈することを含む段階と、
酸性pH1~3の間で前記希釈済廃水と溶解性鉄の化合物とを前記第1反応槽内で接触させて、前記希釈済廃水よりも低濃度の過酸化水素を有する一部処理済の廃水を形成し、かつ前記溶解性鉄の化合物の濃度は、2g/L~6g/Lの間で調整及び維持される段階と、及び
中和した一部処理済の廃水を形成するために、pH6~8の範囲内にpHを上昇させ、かつ固体分離によって前記一部処理済の廃水から鉄含有化合物を沈殿させる中和工程及び固体分離工程を第2反応槽内で行う段階と、を含み、
前記中和した一部処理済の廃水を触媒活性炭で処理して処理水を形成することにより、前記中和した一部処理済の廃水から残留過酸化水素を除去することと、前記中和した一部処理済の廃水を前記触媒活性炭で処理する前に、前記中和した一部処理済の廃水を前記処理水の一部で0.1wt%未満の過酸化水素の濃度に希釈することと、をさらに含む、方法。
【請求項2】
前記一部処理済の廃水から沈殿した鉄含有化合物の少なくとも一部を、前記溶解性鉄の化合物の供給源として利用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記沈殿した鉄含有化合物を前記第2反応槽から前記第1反応槽にリサイクルすることをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2反応槽由来の固体の希薄流出物で
前記中和した一部処理済の廃水を希釈することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記処理水の一部で前記廃水を希釈することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2反応槽中の前記固体分離工程は、溶解空気浮上、濾過、精密ろ過、又は清澄化からなる群から選択される固体分離ユニットによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記一部処理済の廃水を精密濾過濃縮槽に導入する段階、及び
前記一部処理済の廃水の一部を前記精密濾過濃縮槽からマイクロフィルターを通して定期的に濾過することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロフィルターによって前記一部処理済の廃水から分離されたマイクロフィルター濃縮物を前記精密濾過濃縮槽にリサイクルする段階をさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクロフィルター内の前記一部処理済の廃水から生成された濾過液の一部で前記廃水を希釈することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
廃水から過酸化水素を除去するためのシステムであって、
前記廃水の供給源に流体的に接続可能な入口を有する第1反応槽と、
前記第1反応槽の入口と流体接続する前記廃水よりも低濃度の過酸化水素を有する希釈水の供給源と、
前記第1反応槽と流体接続する第一鉄塩の供給源と、
前記第1反応槽と流体接続する酸の供給源と、
前記第1反応槽の出口と流体接続する入口を有する第2反応槽と、
前記第2反応槽と流体接続する塩基の供給源と、
前記第2反応槽の出口と流体接続する触媒活性炭を含む容器と、
請求項1に記載の廃水中の過酸化水素の濃度を低下させる方法を前記システムに実施させるよう構成されたコントローラと、を含む、システム。
【請求項11】
前記第2反応槽から前記第1反応槽へ鉄含有化合物をリサイクルするように構成されたリサイクルシステムをさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1反応槽への前記第一鉄の添加及び鉄含有化合物のリサイクルを調節して、2g/l~6g/lの間の溶解性鉄の濃度を前記第1反応槽内で維持するように構成された制御システムをさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記制御システムは、前記第1反応槽への前記酸の添加を調節して、前記第1反応槽内のpHを1~3の間に維持するようにさらに構成される、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御システムは、前記第2反応槽への前記塩基の添加を調節して、前記第2反応槽内のpHを6~8の間に維持するようにさらに構成される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2反応槽からの固体の希薄流出物を前記第2反応槽から前記第1反応槽の入口にリサイクルさせるように構成された水リサイクルシステムをさらに備え、前記固体の希薄流出物は、前記希釈水の少なくとも一部を形成する、請求項10に記載のシステム。
【請求項16】
前記第2反応槽の出口と流体接続する入口を有する精密濾過濃縮槽をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項17】
前記精密濾過濃縮槽の出口と流体接続する入口を有する固体/液体分離ユニットをさらに含む、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記固体/液体分離ユニット内の中和された一部処理済の廃水から分離された固体物を、前記精密濾過濃縮槽にリサイクルするように構成された濃縮物リサイクルシステムをさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記固体/液体分離ユニット内の中和された一部処理済の廃水から形成された濾過液を、前記第1反応槽の入口にリサイクルするように構成された濾過液リサイクルシステムをさらに含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記固体/液体分離ユニットと前記第1反応槽の入口との間に流体接続する濾過液保持槽をさらに備え、
前記濾過液保持槽は、前記第1反応槽と流体接続する第1の出口及び前記システムから液体を排出する排出ストリームと流体接続する第2の出口を有する、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記第2反応槽の出口と流体接続する入口を有する、触媒活性炭を含む容器をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項22】
前記触媒活性炭を含む容器の入口と前記第2反応槽の出口との間に流体的に配置され、一部処理済の廃水から、希釈された一部処理済の廃水を形成する希釈容器をさらに備える、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記触媒活性炭を含む容器内の前記希釈された一部処理済の廃水から形成される処理水の少なくとも一部を前記希釈容器にリサイクルするように構成された水リサイクルラインをさらに備える、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記第1反応槽への前記処理水の一部のリサイクルを調節して、0.1wt%未満の過酸化水素の濃度を有する前記希釈された一部処理済の廃水を形成するように構成された制御システムをさらに含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記触媒活性炭を含む容器内の前記希釈された一部処理済の廃水から形成した処理水の少なくとも一部を、前記第1反応槽の入口にリサイクルするように構成された水リサイクルラインをさらに備える、請求項21に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される態様及び実施形態は、廃水中の過酸化水素及び必要に応じて有機汚染物の濃度を低下させるシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
概要
一態様によれば、廃水中の過酸化水素の濃度を低下させる方法を提供する。前記方法は、前記廃水を希釈して希釈済廃水を生成する段階と、前記希釈済廃水を酸性pHで溶解した鉄化合物と接触させて、前記希釈済廃水より低濃度の過酸化水素を有する一部処理済の廃水を調製する段階と、前記一部処理済の廃水のpHを上昇させることにより鉄含有化合物を前記一部処理済の廃水から沈殿させて、中和された一部処理済の廃水を生成する段階を備える。
【0003】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記一部処理済の廃水から沈殿した鉄含有化合物の少なくとも一部を、溶解性鉄の化合物の供給源として利用することをさらに含む。前記方法は、第1反応槽内において酸性pHで前記希釈済廃水を前記溶解性鉄の化合物と接触させるステップと、第2反応槽内において前記一部処理済の廃水から前記鉄含有化合物を沈殿させるステップと、沈殿した前記鉄含有化合物を第2反応槽から第1反応槽にリサイクルするステップとをさらに含んでもよい。
【0004】
いくつかの実施形態において、前記廃水を希釈する段階は、前記希釈済廃水を第1反応槽に導入する前に、廃水中の過酸化水素の濃度を約2.2wt%未満に希釈するステップを含む。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記方法は、第1反応槽内において酸性pHで前記希釈済廃水を前記溶解した鉄化合物と接触させ、第2反応槽内において前記一部処理済の廃水から前記鉄含有化合物を沈殿させ、前記第2反応槽からのソリッドリーン流出物(solids lean effluent)で前記希釈済廃水を希釈するステップをさらに備えてもよい。前記廃水を希釈することは、前記希釈済廃水を前記第1反応槽に導入する前に、廃水中の過酸化水素の濃度を約2.2wt%未満に希釈することを含み得る。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記一部処理済の廃水を触媒活性炭で処理することにより、前記一部処理済の廃水から残留過酸化水素を除去して処理水を調製することをさらに含む。前記方法は、前記一部処理済の廃水を前記触媒活性炭で処理する前に、前記一部処理済の廃水を前記処理水の一部で希釈することをさらに含んでも良い。前記一部処理済の廃水を希釈することは、前記一部処理済の廃水を前記触媒活性炭で処理する前に、前記一部処理済の廃水を約0.1wt%未満の過酸化水素の濃度に希釈することを含んでもよい。前記方法は、前記処理水の一部で前記廃水を希釈することを含んでもよい。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記方法は、前記一部処理済の廃水を精密濾過濃縮槽内に導入し、マイクロフィルターを介して前記精密濾過濃縮槽から前記一部処理済の廃水の一部を定期的に濾過することをさらに含む。前記方法は、前記マイクロフィルターによって前記一部処理済の廃水から分離されたマイクロフィルター濃縮物を、前記精密濾過濃縮槽にリサイクルすることをさらに含んでも良い。前記方法は、前記マイクロフィルター内の前記一部処理済の廃水から生成された濾過液の一部で前記廃水を希釈することをさらに含んでも良い。
【0008】
別の態様によれば、廃水から過酸化水素を除去するためのシステムが提供される。前記システムは、廃水の供給源に流体接続可能な入口を有する第1反応槽と、
前記第1反応槽の前記入口と流体接続している前記廃水よりも低濃度の過酸化水素を有する希釈水の供給源と、
前記第1反応槽と流体接続する第一鉄塩の供給原と、
前記第1反応槽と流体接続する酸の供給源と、
前記第1反応槽の出口と流体接続する入口を有する第2反応槽と、
前記第2反応槽と流体接続する塩基の供給源と、を含む。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記システムは、前記第2反応槽から前記第1反応槽に鉄含有化合物をリサイクルするように構成されたリサイクルシステムをさらに含む。前記システムは、第一鉄塩の添加及び鉄含有化合物の第1反応槽へのリサイクルを制御して前記第1反応槽内における溶解鉄の濃度を約2g/l~約6g/lの間に維持するように構成された制御システムをさらに含む。前記制御システムはさらに、前記第1反応槽への酸の添加を調節して、第1反応槽内のpHを約1と約3との間に維持するように構成してもよい。前記制御システムは、前記第2反応槽への塩基の添加を調節して、前記第2反応槽内のpHを約6~約8の間に維持するようにさらに構成されてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記システムは、前記第2反応槽から前記第1反応槽の入口にソリッドリーン流出物をリサイクルするように構成された水リサイクルシステムをさらに備え、前記ソリッドリーン流出物は、前記希釈水の少なくとも一部を形成する。
【0011】
いくつかの実施形態において、前記システムは、前記第2反応槽の出口と流体接続する入口を有する精密濾過濃縮槽をさらに含む。前記システムは、前記精密濾過濃縮槽の出口と流体接続する入口を有する固体/液体分離ユニットをさらに備えていてもよい。前記システムは、前記固体/液体分離ユニット内の前記中和された一部処理済の廃水から分離された固体物を、前記精密濾過濃縮槽にリサイクルするよう構成された濃縮物リサイクルシステムをさらに含んでもよい。
【0012】
いくつかの実施形態において、前記システムは、前記固体/液体分離ユニット内の前記中和された一部処理済の廃水から調製された濾過液を前記第1反応槽の入口にリサイクルするように構成された濾過液リサイクルシステムをさらに含む。前記システムは、前記固体/液体分離ユニットと前記第1反応槽の入口との間と流体接続する濾過液保持槽と、前記第1反応槽と流体接続する第1の出口及び前記システムから液体を排出する排出ストリームと流体接続する第2の出口を含む前記濾過液保持槽と、をさらに備える。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記システムは、前記第2反応槽の出口と流体接続する入口を有する触媒活性炭を含む容器をさらに有する。前記システムは、前記一部処理済の廃水から希釈された一部処理済の廃水を調製するために、前記触媒活性炭を含む前記容器の前記入口と前記第2反応槽の前記出口との間に流体的に配置された希釈容器をさらに有してもよい。前記システムは、前記触媒活性炭を含む前記容器内の前記希釈された一部処理済の廃水から調製された処理水の少なくとも一部を、前記希釈容器にリサイクルするように構成された水リサイクルラインをさらに備えてもよい。
【0014】
前記システムは、約0.1wt%未満の過酸化水素の濃度を有する前記希釈された一部処理済の廃水を調製するために、処理された水の一部の反応槽へのリサイクルを調節するように構成された制御システムをさらに含んでもよい。前記システムは、前記触媒活性炭を含む前記容器内の前記希釈された一部処理済の廃水から調製された処理水の少なくとも一部を、第1反応槽の入口にリサイクルするように構成された水リサイクルラインをさらに含むことができる。
【0015】
添付図面は、一定の縮尺で描かれているものではない。図面において、様々な図に示されている同一又は実質同一の構成要素は、同様の番号で表されている。明確にする目的で、各図面には全構成要素にラベルを付していない。前記図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、廃水から過酸化水素を除去するためのシステムの一実施形態の概略図である。
【
図2】
図2は、過酸化水素及び必要に応じて有機汚染物を廃水から除去するためのシステムの実施形態の概略図である。
【
図3】
図3は、過酸化水素、及び場合によっては廃水から有機汚染物を除去するためのシステムの別の実施形態の概略図である。
【
図4】反応容器内での処理後の過酸化水素の濃度対鉄濃度を示す水から過酸化水素を除去する方法の試験結果のグラフである。
【
図5】
図5は、反応容器中の過酸化水素の濃度対反応時間を示す水から過酸化水素を除去する別の方法の試験結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
様々な工業プロセスは、高濃度の過酸化水素(H2O2)を含み、場合によっては1種以上の有機汚染物を伴う廃水を生成する。廃水中の許容される汚染物質レベルに関する規制がますます厳格になってきているため、工業廃水からH2O2及び他の汚染物質を除去するためのプロセスの実施が益々重要になってきている。
【0018】
1つの特定の例として、半導体製造業界で使用される化学的機械研磨(CMP)の平坦化プロセスでは、酸化剤、研磨剤、錯化剤、及び他の添加剤から構成される研磨スラリーを研磨パッドと共に使用して、製造プロセス中に半導体ウェハを除去、及び/又はエッチングして、例えば、前記ウェハから余分な銅を除去する。ケイ素、銅及び種々の微量金属は、研磨スラリーを介してシリコン構造体から除去される。化学的/機械的スラリーは、研磨パッドと共に平坦化テーブル上のシリコンウェハに導入される。酸化剤及びエッチング溶液は、材料除去を制御するために導入される。脱イオン水リンスは、ウェハからゴミを除去するために使用されることが多い。逆浸透(RO)及び脱塩水からの超純水(UPW)もまた、半導体製造施設ツールでシリコンウェハをリンスするために使用することができる。
【0019】
過酸化水素(H2O2)のような酸化剤は、典型的には、半導体ウェハからの銅の溶解を助けるために使用される。したがって、約300ppm(0.03wt%)以上の過酸化水素が研磨スラリー廃水中に存在することができる。
【0020】
過酸化水素を含む廃水は、排出前に処理しなければならない。過酸化水素の濃度が、約1,000mg/l(0.1wt%)未満であれば、触媒炭素を使用して廃水から過酸化水素を除去してもよい。しかし、廃水中の過酸化水素の濃度が、約1,500mg/l(0.15wt%)又は約2,000mg/l(0.2wt%)を超える場合、潜在的な暴走反応を引き起こしうる大量の酸素を発生する可能性があるため、触媒炭素を通常使用することなく過酸化水素を除去する。また、大量の酸素を排出することも問題となり得る。
【0021】
場合によっては、半導体製造プラント又は他の産業源由来の廃水は、高レベルの過酸化水素、例えば約/lwt%~約22wt%の過酸化水素を含み、当該廃水は、排出前に処理されるべきである、有機化合物、例えば、アルコール及び/又はアンモニウム塩をも含みうる。これらの有機化合物は、約0.01wt%から最大約/lwt%のレベルで廃水中に存在し得る。
【0022】
一実施形態において、
図1で説明され、一般に100で示されているシステムは、高レベルの過酸化水素を含む廃水を処理するために使用され得る。この例において、廃水源105は、毎分3ガロン(gpm)で(at thee gallons per minute)22wt%の過酸化水素を含む廃水供給物を生成する。低濃度(例えば、約20g/l(0.002wt%)以下)の過酸化水素を含む約660gpmの処理済水を、3gpmの廃水、例えば混合槽110内に添加し、そして約1,000mg/l(0.1wt%)に過酸化水素を希釈する。この希釈された過酸化水素溶液は、その後、約20mg/l(0.002wt%)以下まで過酸化水素を除去しうる触媒炭素カラム115に供給される。触媒炭素カラム内の廃水の滞留時間は、約10分~約30分間、例えば約15分とすることができる。触媒炭素カラム115からの排液は、2つの留分液に分割されうる。大部分(例えば、約660gpm)は、リサイクルライン120を通って送られ、高濃度の過酸化水素を含む追加の廃水を希釈するのに使用され、残り(例えば、3gpm)は排出ライン125を介して廃棄又は排出される。
【0023】
このシステム100は、過酸化水素で汚染された廃水を処理するために使用することができ、当該廃水中に存在する有機化合物がほとんどなく、言い換えると、廃水中に存在する有機化合物の濃度は許容排出限界以下である。種々のポンプP及びバルブV1、V2(ボールバルブ、三方バルブ等)を利用して、システム構成要素を通る液体の流れを制御することができる。
【0024】
いくつかの実施形態において、過酸化水素の濃度は監視され、例えば、定期的なサンプルを採取して滴定あるいは他の方法での分析、又は、混合槽110内に配置される過酸化水素センサS、触媒炭素115の下流に配置される過酸化水素センサS、若しくはシステム100の配管内あるいは前記配管に接続される過酸化水素センサSのいずれかを用いて監視される。廃水の希釈に使用される流出液の量は、コントローラ130、例えば、適切な制御プログラミング、特定用途向け集積回路(ASIC)又は当技術分野で知られている他の形式のコントローラを有する標準コンピュータによって調整することができる。コントローラ130は、単一ユニットであってもよいし又は互いに通信可能な複数の分散型制御ユニットコンポーネントを含んでもよい。
【0025】
廃水の希釈に使用される流出液の量は、約1000mg/l(0./lwt%)以下で触媒炭素カラム115に流入する希釈済廃水中の過酸化水素の濃度を、維持するように調節されてもよい。リサイクルループが空である場合の始動中に、混合槽110又は当該混合槽110、触媒炭素カラム115及び関連する配管を含むリサイクルループの他の部分に、外部供給源からの希釈水を添加してもよい。
【0026】
別の実施形態において、
図2に200で全体的に示されており、高濃度の過酸化水素に加えて、廃水は有機汚染物を含む。前記廃水は、約0.01wt%~約2wt%、又は約1wt%の種々の有機化合物を含みうる。一例としては、廃液ストリームは、3gpmの流速で廃水源105からシステムに供給される。反応槽135に流入する前又は流入した後に、流速約33gpm又は約22g/l(2.2wt%)未満の過酸化水素の濃度を含むような流速に達するよう、前記流入液の廃水よりも低濃度の過酸化水素を有する希釈水を用いて前記廃水を希釈する。前記希釈水は、流入液であってもよく、又は下流のユニット操作、例えば、触媒炭素カラム115及び/又は固体/液体分離ユニット150(後述する)由来の処理済の廃水であってもよい。
【0027】
前記反応槽135において、第一鉄塩源140及び酸源145から第一鉄塩及び酸をそれぞれ添加して、反応槽135内のヒドロキシルイオンの形成をサポートする条件を整える。前記反応槽135内のpHは、酸の添加によってpHが約1~約3の間又は約2になるよう調整又は維持することができる。前記反応槽135内の溶解性鉄の濃度は、以下に述べる下流の固体分離ユニットからの第一鉄塩の添加及び/又は水酸化第二鉄のリサイクルによって、約2g/l~約6g/l又は約3g/l以上に調整されるか又は維持されうる。反応槽135内の希釈済廃水の滞留時間は、約30分~約4時間又は約2時間とすることができる。前記第一鉄塩は、例えば硫酸第一鉄を含む又はそれのみから構成されうる。前記酸は、例えば、硫酸を含む又はそれのみから構成されうる。大部分の有機化合物は、反応槽135又は反応器内で分解されうる。
【0028】
前記有機化合物の分解は、フェントン反応を介して達成されうる。前記反応槽135内の有機化合物の分解に使用されるフェントン試薬は、約0.3部の有機化合物につき約1部の鉄(例えば、硫酸第一鉄)に約10部の過酸化物を添加することによって形成することができる。フェントンの反応により、反応槽135内の希釈済廃水中の過酸化水素の少なくとも一部を分解することもできる。当該フェントンの反応は、化学式に従って進行しうる:
【0029】
【化1】
ヒドロキシル及びヒドロペルオキシルラジカルは、前記希釈された廃水中で前記有機汚染物と反応し、かつ前記有機汚染物を分解して主に二酸化炭素と水になる。
【0030】
反応槽135内での有機化合物の分解中に、過剰の溶解性鉄を含む副生成物が形成される。前記鉄を除去するためには、反応槽135からの流出液に対して中和ステップ及び固体分離(例えば、沈降又は静置)ステップが行われる。前記固体分離は、溶解空気浮上(DAF)、濾過、精密ろ過、又は固体分離ユニット150による清澄化によって達成される。塩基、例えば塩基源155からの水酸化ナトリウムの添加により、前記固体分離ユニット150中のpHは、約6~約8又は約6.8のpHに調節又は維持することができる。コントローラ130は、固体分離ユニット内のpHを示す信号をセンサSから受信し、固体分離ユニット内で所望のpHを達成するために塩基の添加を制御することができる。固体分離ユニット150内の一部処理済の廃水中にまだ固体分が残っている場合、pHが高ければ追加の過酸化物を減らしてもよい。
【0031】
前記固体分離の後、前記固体分離ユニット150の外部に向かうソリッドリーン流出物(固体の希薄流出物)の例えば流速約33gpmの流れは、
図1に示す実施形態で示すように、前記混合槽110内の前記触媒炭素カラム115を用いた前記過酸化水素処理システムからリサイクルされた、流速約570gpmの水と混ぜ合わせられる。前記ソリッドリーン流出物を希釈するために使用されるリサイクルの水量又は流速は、混合槽110内で約1,000mg/l(0.1wt%)未満の過酸化水素の濃度を満たすようコントローラ130によって制御されうる。一例では、600gpmの場合は、リサイクルライン160を介した触媒炭素カラム115の排液からリサイクルされうる。30gpmの処理済の水は、リサイクルライン165を介して有機廃棄物反応槽135にリサイクルされ、570gpmの処理済の水は、触媒炭素カラム115の上流側に、例えばリサイクルライン170を介して混合槽110内にリサイクルされうる。
【0032】
リサイクルループが空である始動中に、外部源からの希釈水を、混合槽110又は反応槽l35、固体分離ユニットl50、混合槽110、触媒炭素カラム115、及び関連する配管などを含むリサイクルループの他の部分に加えてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、固体分離ユニット150内の一部処理済の廃水から分離された水酸化第二鉄の少なくとも一部が、コントローラ130の制御下にある関連するポンプ(図示せず)を用いてリサイクルライン175を介して反応槽135に戻されリサイクルされる。この水酸化第二鉄リサイクルは、第一鉄塩源140から反応槽135に別の方法で導入される新たな第一鉄塩の量を減少させて、反応槽135内における溶解性鉄の濃度を所望の濃度に維持してもよい。水酸化第一鉄が固体分離ユニット150から反応槽135へ3~4回以上リサイクルされた後、反応槽135でのフェントンの反応をサポートする効果が失われ始めることを実験的に観察していた。特定の理論に縛られることはないが、水酸化第二鉄は、経時的に反応して、容易に溶解性鉄を含まない酸化鉄又は他の鉄化合物の1種以上の形態を形成し得る。従って、固体分離装置150から反応槽135へリサイクルされる水酸化第二鉄の量は、第一鉄塩源140からの新たな第一鉄塩の添加速度と釣り合わなければならず、反応槽における反応のキネティクスを所望のレベルに維持する、及び/又は、反応槽135内の溶解性鉄の濃度を、例えば約2g/l~約6g/lの間、若しくは約3g/l以上の所望の範囲内に維持することができる。
【0034】
いくつかの実施形態において、固体分離ユニット150内で生成された水酸化第二鉄の約50%~約100%は、又は、約10g/l~30g/l若しくは約15g/l~約25g/lの水酸化第二鉄は、約3gpm~約7gpmの流速で、固体分離ユニット150内の一部処理済の廃水から分離された固体物の残留物と共に、前記反応槽135でリサイクルされ、当該固体物の残留物は、排出ライン180を介した廃棄用又はさらなる処理用システム200から排出された。
【0035】
いくつかの実施形態では、固形物分離ユニット150からのソリッドリーン流出物の少なくとも一部は、関連するポンプ(図示せず)を使用してリサイクルライン185を介して、処理水に加えて、又は処理水の代わりに希釈水として反応槽135触媒炭素カラム115から排出される。例えば22,000ppm(2.2wt%)以下の所望レベルの過酸化物濃度まで前記反応槽135に流入する廃水を希釈するのに十分な低濃度過酸化水素を有する、ソリッドリーン流出物(例えば30gpm)が、固体分離ユニット150から十分得られるのであれば、固体分離ユニット150の代わりに触媒炭素カラム115から反応槽135に希釈水を供給する必要はない。固体分離ユニット150からのソリッドリーン流出物が、外部への排出に許容されうる十分低い過酸化水素及び有機汚染物の濃度を示す場合、前記反応タンク135にリサイクルされない前記固体分離ユニット150からの前記ソリッドリーン流出物、例えば約3gpmの前記ソリッドリーン流出物は、排出ライン190を通って外部に排出されてもよい。
【0036】
反応器135に関して連続バッチ反応器(SBR)又はバッチ処理槽を使用する場合、処理済の廃水をデカントした際に、反応器135内のpHを約6~約8まで上げて、鉄を析出させ、鉄スラッジを反応器135に残してもよい。次いで、pHを約1~約3又は約2に下げて、次のバッチを処理する前に鉄を再溶解させる。
【0037】
上述したように、コンピュータ化されたコントローラ130は、本明細書に開示されている様々なシステム100,200,300内の様々なポンプP及びバルブV1、V2を制御して、様々なシステム構成要素における流速、pH、及び化学物質濃度を制御又は維持するために利用されてもよい(各ポンプ及びバルブ並びにコントローラ130への各接続は、図示では省略しており
図2に示していない)。コントローラ130は、例えば、適切な制御プログラミング、特定用途向け集積回路(ASIC)又は当技術分野で知られている他の形式のコントローラを備えた標準コンピュータであってもよい。コントローラ130は、単一のコンポーネントであってもよいし、お互い又は外部システムと通信し得る複数の分散コンポーネントを含んでもよい。
【0038】
いくつかの実施形態において、システム200の種々に部分における、pH、過酸化水素の濃度、及び/又は溶解性鉄の濃度の測定は、例えば、滴定あるいはその他の方法による定期的なサンプルの採取及び分析を用いることにより評価されるか、又は、反応槽135、混合槽110、固体分離ユニット150、若しくは配管若しくはシステム200の他の部分に設置された、1種以上のpH、過酸化水素、及び/若しくは溶解性鉄のセンサSを用いることにより評価されるかのいずれかによって、コントローラ130へのインプットとして提供されて行われる。
【0039】
別の実施形態において、触媒炭素カラム115を使用して一部処理済の廃水から過酸化水素を除去する代わりに、廃水源105から流入する廃水中の過酸化水素の濃度を、反応槽135における化学反応によって所望の排出レベルに低下させる。
図3において示された例を参照すると、廃水源105からの廃水は、220g/l(2.2wt%)のH
2O
2と、1wt%の有機汚染物、例えば、アルコール及び/又はアンモニウム塩とを含み、3gpmの流速でシステムに流入する。前記廃水は、廃水源105からの廃水よりも低濃度の過酸化水素及び/又は有機成分を有する処理済の水を用いて希釈されることにより、希釈済廃水ストリームを形成する。前記処理水は、以下に説明する下流のマイクロフィルターからの濾過液であってもよい。前記反応槽135では、
図2の実施形態に関する上記で開示したフェントン反応を利用して、前記希釈済廃水を処理する。
【0040】
第一鉄塩及び酸は、第一鉄塩源140及び酸源145から反応槽135にそれぞれ添加され、反応槽135内のヒドロキシフリーラジカルの形成をサポートするような条件を整える。前記反応槽135内のpHは、酸の添加によってpHを約1~約3又は約2の間に調整又は維持されてもよい。前記反応槽135内の溶解性鉄の濃度は、第一鉄塩の添加及び/又は以下に述べる下流の固体分離ユニットからの水酸化第二鉄のリサイクルによって、約2g/l~約6g/l又は約3g/l以上に調整されるか又は維持されうる。前記反応槽135内の希釈済廃水の滞留時間は、約30分~約4時間又は約2時間としてもよい。前記第一鉄塩は、例えば硫酸第一鉄を含む、又はそれのみから構成してもよい。酸は、例えば、硫酸を含む、又はそれのみから構成してもよい。一部処理済の廃水は、前記反応槽135から汲み出されるか又はオーバーフローしてpH調節槽205に入る。前記pH調整槽205内のpHは、約5~約8の間、又は約6.5まで上がり、このpH条件によって前記一部処理済の廃水から鉄を沈殿させる。前記pH調整槽205内の一部処理済の廃水中にまだ残渣が残っている場合、高pHにすることで追加の過酸化物を減らすこともできる。前記pH調整槽205内の液体の滞留時間は、約30分から2時間の間又は約1時間とすることができる。pH調整された又は中和された一部処理済の廃水は、前記pH調整槽205から精密濾過濃縮槽内210に送られる又はオーバーフローされ、下流マイクロフィルター215を介した濾過処理をあとに控えるようになる。
【0041】
前記精密濾過濃縮槽210内のpH調整された一部処理済の廃水は、例えば、約15g/l~約25g/lの沈殿した鉄と、約3wt%~約5wt%の全固体物とを含んでもよい。前記精密濾過濃縮槽210に存在する水酸化第二鉄は、前記精密濾過濃縮槽210からリサイクルライン215を介して前記反応槽135にリサイクルされてもよい。前記精密濾過濃縮槽210から前記反応槽135へリサイクルされる水酸化第二鉄の量は、前記第一鉄塩源140からの新たな第一鉄塩の添加速度と釣り合うことによって、前記反応槽内の反応キネティクスを望ましいレベルで維持すべきであり、及び/又は前記反応槽135内の溶解性鉄の濃度を、所望の範囲内、例えば約2g/l~約6g/l又は約3g/l以上に維持すべきである。
【0042】
いくつかの実施形態では、前記固体分離ユニット150内で生成した水酸化第二鉄の約50%~約100%、又は約10g/l~30g/l若しくは約15g/l~約25g/lの水酸化第二鉄は、約3gpm~約7gpmの流速で、前記精密濾過濃縮槽210内に沈殿した固体物の残留物と共に前記反応槽135にリサイクルされ、当該固体物の残留物は、排出ライン220を介して廃棄又はさらなる処理用システム300から排出される。
リサイクルされた鉄の少なくとも一部は、前記反応槽135に再溶解させて、過酸化物の分解に使用できる。前記精密濾過濃縮槽210内のpH調整された又は中和された一部処理済の廃水の滞留時間は、約30分~2時間又は約1時間であってもよい。
【0043】
前記精密濾過濃縮槽210からの流出液(前記精密濾過濃縮槽210内で固体物を分離して、かつ中和された一部処理済の廃水の固体物の希薄部(ソリッドリーン部the solids lean portion))は、前記マイクロフィルター225を介して処理加工される。マイクロフィルター225は、膜フィルター、中空糸膜フィルター、デッドエンドフィルター、クロスフローフィルター、又は当該技術分野で知られている他の任意のタイプのフィルターであってもよい。前記精密濾過濃縮槽210由来の前記流出液から前記マイクロフィルター225により分離された固体物を含む、マイクロフィルター濃縮物は、ライン230を介して前記精密濾過濃縮槽210に戻してリサイクルしてもよい。前記マイクロフィルター濃縮物よりも低い汚染物質を有する濾過液は、前記マイクロフィルターの濾過液出口からライン240を介して濾過液保持槽235に誘導される。前記マイクロフィルター225からの濾過液は、約10mg/l(0.001wt%)未満の過酸化水素を含んでもよく、約33gpmの流速でマイクロフィルター225から排出されてもよい。前記反応槽135に流入する過酸化水素の濃度を、例えば22,000ppm(2.2wt%)以下の所望のレベルに維持する必要がある場合、前記マイクロフィルターの濾過液の一部は、例えば約30gpmの流速で前記濾過液保持槽235からリサイクルされ、前記反応槽135内の希釈水として戻って作用する。
【0044】
前記濾過液の残渣は、例えば、約3gpmの流速で、排出ライン250を介して外部に排出することができる。前記精密濾過濃縮槽210及び前記濾過液保持槽235の供給は、連続的ではなく定期的にのみマイクロフィルター225が作動するようにしてもよい。
例えば、前記精密濾過濃縮槽210が所定レベル以上充填された場合、及び/又は前記濾過液保持槽235が所定のレベル以下まで流出させる場合、前記マイクロフィルター225を制御してもよい。
【0045】
いくつかの実施形態において、浄水は、前記システムの始動時、前記濾過液保持槽235又は前記システム300の他の部分に直接添加され、流入する廃水を希釈するために使用されてもよい。
【0046】
コンピュータ化されたコントローラ130を利用して、システム300内の様々なポンプP及びバルブVI、V2を制御することができ(図示を簡単にするために、ポンプ及びバルブのそれぞれ、並びにコントローラ130への各接続は
図3に示さず)、種々のシステム構成要素における流速、pH、及び化学物質濃度を維持することができる。コントローラ130は、例えば、適切な制御プログラミング、特定用途向け集積回路(ASIC)又は当技術分野で知られている他の形式のコントローラを備えた標準コンピュータであってもよい。
【0047】
いくつかの実施形態において、pH、過酸化水素の濃度及び/又は溶解性鉄の濃度の測定は、例えば、定期的なサンプルの採取及び滴定若しくは他の方法での分析を用いるか、又は、反応槽135、pH調整槽205、精密濾過槽210、濾過液保持槽235、若しくは配管あるいはシステム300の他の部分に設置された、1種以上のpH、過酸化水素及び/若しくは溶解性鉄のセンサSを用いるかのいずれかによって、コントローラ130にインプットとして提供されて行われる。
【0048】
上記の実施形態に記載された様々な流速及び化学濃度は、単なる一例であり、当該流速及び化学濃度は、所望の様々な要因、例えば処理されるべき廃水の組成、種々の槽及び器の大きさ、及び開示されたシステムの実施形態から排出されるべき水中の過酸化物又は他の汚染物の所望の濃度に依存する。
【実施例】
【0049】
先見的実施例
例1
総有機化合物(TOC)含有量7,500mg/l及び過酸化物濃度22wt%を含む廃水を処理した。第一ステップでは、暴走反応の発生を抑制するために、前記廃水サンプルを10倍に希釈(2.2wt%の過酸化物濃度まで)した。当該希釈済廃水サンプルに第一鉄を加え、pHを2.1に調整した。溶解した第一鉄濃度l000mg/l及びpH2.1において、汚染物質の滅失反応が徐々に開始し、その後、約2時間比較的安定した速度で当該反応が継続した。2時間が経つと、TOCが約150mg/lまで低下し、かつ過酸化物濃度は約l0mg/l(0.00lwt%)未満にまで減少した。この反応によって、希釈された廃水サンプルの温度が約5~6℃上昇した。前記希釈済廃水での穏やかな発泡が観察された。反応を終了させるために、pHを6.5まで上げて水酸化第二鉄を沈殿させた。
【0050】
溶液のpHが6.5に上昇すると、鉄は水酸化第二鉄の形態で沈殿した。当該沈殿物を反応槽に戻してリサイクルすることにより、追加の過酸化物の減失が起きるように用いることができた。再利用は、清澄器又はマイクロフィルターを使用して鉄を分離する連続式で行うことができた。当該再利用は、シーケンシングバッチ式反応器(SBR)を用いるバッチ式で行うこともできうる。
【0051】
例2
バックグラウンド:
高濃度の過酸化水素を含有する廃水の処理方法を評価した。以下は、流入液の特性評価と排液の対象を示すものである。
【0052】
廃水の特性評価
・温度 l22°F
・pH 7~9
・アンモニウム塩 l,000mg/l
・遷移金属 <4mg/l
・過酸化水素 22wt%
・アルコール 0.73wt%
・その他の有機物 0.73%wt%
最終排液の品質目標
・アルコール 7.3mg/l(0.00073wt%)
・他の有機物 7.3mg/l(0.00073wt%)
・過酸化水素 2.2g/l(0.22wt%)
フェントン反応を利用した処理:
フェントン試薬を用いた前記有機物を酸化し、その後pH調整及び残留鉄を除去するための清澄器又はマイクロフィルターのいずれかを用いた固体分離を経由して、評価を行った。固体分離後、過酸化水素は炭素カラムによって除去することができた。カラム流出液の一部は3つの方法により分けられた。1つ目の部分は前記システムの前面に送られ、原廃水の過酸化水素の濃度をフェントン試薬に供する安全レベルまで希釈した。2つ目の部分は、炭素カラムに供給するのに安全レベルとされる、1g/l(0.lwt%)未満まで過酸化水素を希釈するために、炭素カラムの前面に直接送られた。3つ目の部分は排出された。
【0053】
処理可能性テストの初期段階において、有機物の処理に加えて、過酸化物の全てではないにしても過酸化物の大部分は、フェントン試薬を用いて順調に処理できうることが分かった。従って、炭素カラムの使用を処理可能性テストから無くした。
【0054】
大部分のジャーテストは合成廃水で行われた。ジャーテストの後期段階では、半導体メーカーが提供する有機物含有廃水を使用した。処理可能性テストは、反応pH、反応時間、及びフェントン試薬を用いる硫酸第一鉄の投与量を評価することから始めた。フェントン試薬の条件が最適化されると、酸化鉄廃棄物の固体物をリサイクルする実験を行って、硫酸第一鉄の使用量を最小限に抑えた。
【0055】
提案された処理システムの設計要素は、未精製の有機物含有廃水を処理済の廃水で希釈して、フェントン反応器内における過酸化水素を最大約2wt%に制限することである。過酸化水素の濃度を制限することは、制御されたフェントン反応を維持し、かつ反応温度の急激な上昇を抑制する上で重要である。
【0056】
合成フェントン反応器の流入液は、2wt%の過酸化物を含有するように調製された。原廃水の設計仕様が22wt%の過酸化物であるため、原材料のレベル全てをl0倍に希釈して、ジャーテスト用のフェントン反応器の流入液をシミュレートする必要があった。脱イオン水中の化学物質は実験室レベルのものを使用し、テスト用のサンプルを調製した。以下の表1は、未精製の有機物含有廃水及び合成フェントン反応器の流入液の化学組成を比較している。
【0057】
【表1】
有機組成の分析:
有機化合物の分析には難題があった。それはアルコールの分析が可能な実験所を見いだせなかったことである。他の有機物は外部の試験ラボで分析されたが、標準的な分析結果のターンアラウンドは2週間であり、分析結果を待つ間にテストに大幅な遅延が生じることになった。前記取り扱い可能なラボは、施設内で全有機物含有量(TOC)の分析を行うことができ、そのため迅速なターンアラウンドを提供できうるので、TOCを有機物分析の代替として使用した。必要に応じて、有機化合物の分析のために定期的サンプルを発送して、結果を確認した。
【0058】
合成フェントン反応器の流入液は、分析により750mg/lのTOCを含んでいることが確認された。理論的TOC含有量は、719mg/lであり、アルコールの寄与分は333mg/l、その他の有機物の寄与分は386mg/lであった。前記TOC分析結果が、理論的TOC含有量のl04%をリカバーしたので、有機化合物の良い代替物であることが判明した。唯一の限界は、TOCでは有機化合物を区別できないことであった。
【0059】
硫酸第一鉄を用いたフェントン処理:
以下のステップを用いてフェントン試薬で最初の処理を行う前に、硫酸第一鉄及び過酸化水素の投与量を計算した:
1.未処理サンプル中の化学的酸素要求量(COD)含有量を分析する
2.過酸化水素の投与量を計算する
3.鉄の投与量を計算する
4.反応pHを選択する
当該COD含有量は、サンプルの有機物含有量の測定値として従来から使用されている。あいにく過酸化水素は、ハックCOD法に対して干渉することが既知である。サンプルは22g/LのH2O2を含有していたので、正確なCOD分析結果を得るためには過酸化物を含まない別個の試料を調製する必要があった。
【0060】
通常の過酸化物の投与量は、前記COD含有量の3倍である。サンプル中のCODは、2.2g/Lであり、これは6.6g/l(0.66wt%)H2O2の過酸化物用量に換算される。前記サンプルには既に22g/l(2.2wt%)のH2O2が含まれていたため、このレポートに記載されているジャーテストのいずれにおいても追加の過酸化物は必要なかった。
【0061】
鉄の投与量は、5~25部のH2O2に対して1部の鉄の範囲とすることができる。初回のジャーテスト用に、10部のH2O2に対して1部の鉄の比率を選択し、過酸化物の使用量6.6g/lを用いて0.66g/lのFeに変換した。硫酸第一鉄ストック溶液を使用して必要な鉄の用量を供給した。
【0062】
ある文献によれば、フェントン試薬に最適なpHは、pH3からpH6の範囲でありうるが、他の文献ではpH3から4の狭い範囲が挙げられていた。そのため、様々なpHターゲットで評価した。
【0063】
合成フェントンの反応器の流入液のサンプルを以下のように処理した:
1.処理中パドルミキサー上でサンプルを撹拌したこと
2.pHが4になるまで硫酸を加えたこと(投与量356mg/l H2SO4)
3.硫酸第一鉄ストック溶液を用いて660mg/lのFeに投与したこと。
4.フェントン反応(pHは2.3に低下)のため80分間攪拌したこと
5.pHが6.1になるまで水酸化ナトリウムを添加したこと(用量1,330mg/l NaOH)
6.8分間撹拌した後、全浮遊固形分(TSS)(沈降前のTSS=1.5g/L)を分析したこと
7.40分静置したこと
8.1.3ミクロンフィルターを介して上清を濾過したこと
9.H2O2について濾過液を分析したこと
10.濾過液に若干過剰のメタ重亜硫酸ナトリウム(用量 2.3g/l)を加えて濾過により残留過酸化物を除去したこと
11.TOC、COD、及び有機汚染物の分析したこと
濾過液の分析から得られた以下の分析結果によって示されるように、本処理は良好に機能した:
H2O2 820mg/L(0.082wt%)
TOC 144mg/L
COD 144mg/L
有機物 <0.89mg/L
この処理により、TOCの81%及び過酸化物の96%が除去された。
【0064】
吸着/推定される処理試薬(Sorption / Presumed Treatment Chemistry:)よりもむしろ有機物の減失を確認すること:
次工程を行う前に、得られた水酸化鉄のスラッジ上に有機汚染物が吸着されるのではなく、有機汚染物が酸化されているかどうかを判定するためにテストを行った。フェントン試薬を利用して生成されたヒドロキシルフリーラジカルによる有機汚染物の完全な酸化によって、副生成物として硝酸塩、二酸化炭素、及び水が生じる。二酸化炭素の排ガスを介する炭素損失は、有機汚染物の除去の一つの説明となる。
【0065】
フェントンのpH調整後に生成された鉄固形物への有機汚染物の吸着は、当該有機汚染物の除去の理由も説明されうる。ジャーテストは、処理化学の重要な要素をシミュレートすることによってこのメカニズムを試験するために実施された。
【0066】
ジャーテストの手順は、以下のように行った:
1. 脱イオン水中に730mg/lの有機汚染物の合成溶液を調製したこと
2. TOC(TOC=409mg/L)を分析したこと
3. 塩化第二鉄ストック溶液を用いて3g/lのFeに投与したこと
4. pH2になるまで硫酸を加えたこと
5. l5分間攪拌したこと
6. pH6.5になるまで水酸化ナトリウムを加えて鉄固形物を沈殿させたこと(TSS=l.8g/L)
7. 2時間攪拌したこと
8. 濾過液のTOC(TOC=412mg/L)を分析したこと
【0067】
鉄固形物上への有機汚染物の吸着により、可溶性TOCの損失をもたらしうる。可溶性TOCに変化が無く、そのため、有機汚染物は鉄固形物上に吸着されなかった。発生する正確な反応は以下のように考えられるが、これらの前提を検証するための分析は行っていない。
【0068】
【表2】
鉄の投与量とpHの影響:
pH3.0で種々の鉄濃度において一連の3回のジャーテストを行い、鉄の投与量を最適化した。4回目のジャーテストはpH5で行った。当該手順のステップは、フェントンの反応時間が60分であり、静置を補助するためにこれらの試験に凝集剤を使用したことを除いて、前述のテストから変更しなかった。
【0069】
【表3】
(1)-アルマフロック(Alumafloc)I アニオン性ポリマー
結論:
1)500mg/Lの鉄の投与量によって、pH3.0及び5.0の両方で有機汚染物を0.5mg/L未満まで除去した
2)残留過酸化物の含有量は、鉄の投与量に反比例する
残留過酸化物と鉄の投与量との間の関係を
図4に示す。
【0070】
過酸化水素の除去条件:
残留過酸化物の含有量に影響を与える鉄の投与量と反応pHとの間の重要な関係が、ジャーテストにより明らかとなった。フェントン試薬を扱うことによって、処理工程から炭素カラムを省略できると考えられた。その結果、長時間の反応時間、高濃度の鉄の投与量、及び低いpHが、残留過酸化物の含量に及ぼす影響を評価するためのジャーテストを案出した。
【0071】
ジャーテストでは、硫酸第一鉄の投与量を1,000mg/lのFe及び反応pHを2.1の条件が用いられた。残留過酸化物濃度は、60,90及び120分の反応時間後に測定した。その結果を以下に示す。
【0072】
【表4】
低pHで長時間の反応時間における高濃度の鉄の投与量が、有機汚染物だけでなく過酸化水素をも処理できることを、上記結果は示している。残留過酸化物の経時的な投与量を
図5に示す。フェントン試薬によって適切な条件が適用される場合、過酸化物処理のためには炭素カラムは必要でないことが、この結果から示される。
【0073】
低濃度の鉄の影響:
テスト結果から、660mg/lのFe、pH5.0、及び60分間の反応時間で有機汚染物を順調に処理できることが示された。一連のジャーテストを、pH4.5~5.0及び60分の反応時間において、l00,300,500mg/lのFeで行った。この一連のテストではポリマーを使用しなかった。前記テスト結果を、上記テスト54Dの結果と共に表4に示す。
【0074】
【表5】
660mg/lの鉄の投与量の場合のみが、pH4.5~5.0で60分の反応時間内に処理目標以下の有機汚染物を除去した。TOC及び有機汚染物の結果はいずれも、鉄の投与量が減少するに従って、不十分な処理という同様の傾向を示す。4回のすべてのジャーテストでは、残存する過酸化物の濃度が高い。
【0075】
フェントン処理用の鉄源としてのスラッジの使用:
この時点まで、硫酸第一鉄由来の溶解性鉄をフェントン処理用の鉄源として使用した。フェントン処理の後、水酸化ナトリウムの添加によりpH6.5にすることで溶解性鉄を沈殿させ、次いで鉄含有固体物を濾過により除去した。これらの鉄含有固体物は、フェントン反応における硫酸第一鉄の代替として使用してもよいと考えられた。それにより、化学的コスト及び沈殿処理コストが大幅に低減される。
【0076】
回収されたFe固体物による処理に関する処理手順:
1. 処理中、パドルミキサーで廃水を攪拌したこと
2. 標的pHまで硫酸を添加したこと
3. 鉄源としてリサイクルされた固体スラリーを添加したこと
4. 必要に応じて追加の酸を加えて、標的pHに維持したこと
5. フェントン反応のために60分間撹拌したこと
6. pH6.5になるまで水酸化ナトリウムを加えたこと
7. 数分間攪拌したこと
8. 1.3ミクロンフィルターを介して上清を濾過したこと
9. H2O2及びTOC用の濾過液を分析したこと
【0077】
硫酸第一鉄を使用した先述のフェントン処理から鉄固体物のスラリーを生成した。当該鉄固体物を、一般に一晩静置してから上清をデカントした。残りの固体物は、将来のテスト用として残した。
【0078】
スラッジ由来の1.0g/lのFeを用いたテストを2回行い、そのうち1回目のテストは、pH2.1で行い、もう1回のテストはpH3.0で行った。両方のテストにおけるフェントン反応時間は2時間であり、フェントン反応後に水酸化ナトリウムを用いてpHをpH6.5に調整した。
【0079】
【表6】
(1)pH6.5になるまでNaOHを添加して数分以内にH
2O
2及びTOCを分析した。
【0080】
先述の2回のテストにおいて、処理済のサンプルをpH6.5で約1時間分析前に攪拌するようにした。これらの2つのテストでは、目的が主に初期スクリーニングであるため、分析を行う前に前記撹拌をpH6.5で数分行うよう決められた。一晩放置した後、pH2.1における過酸化物テストも分析したところ、H2O2が4,900mg/Lから540mg/lに低下していた。
【0081】
フェントン反応におけるpHが2.1の場合、pH3.0での処理した場合よりも低い残留過酸化物及び低いTOC濃度という両方の結果をもたらした。しかし、期待されていたように、硫酸及び水酸化ナトリウムの化学的投与量は、pH2.1のテストより高かった。
【0082】
投与前のスラッジの酸性化:
スラッジスラリーをpH2.0にして予め酸性化することにより、フェントン反応に利用可能な溶解性鉄の量が増加するかどうかを決定するため、テストを行った。フェントン反応もpH2.0で行った。有機物の処理及び過酸化物の触媒分解に関するフェントン反応に供する目的のためには、鉄は溶解性の形態でなければならない。
【0083】
事前に酸性化された回収Fe(Pre-Acidified Recovered Fe)を用いた処理:
1. 硫酸を用いて固体スラリーのpHを2.0に調整すること(投与量4.27g/l H2SO4)
2. パドルミキサーで2時間撹拌すること
3. 酸性化スラリーを合成廃水に添加したこと
4. pH2.1に硫酸を加えたこと(投与量1.09g/l H2SO4)
5. フェントン反応のために2時間攪拌したこと
6. 溶解性鉄、TOC及びH2O2分析用に30分毎にサンプルを採取したこと
7. 水酸化ナトリウムをpH6.5に加えたこと
8. 数分間攪拌したこと
9. 一晩で静置したこと
l0. l.3ミクロンフィルターを通して上清を濾過したこと
11. 有機汚染物用の濾過液を分析したこと
結果:
前記廃水を投与する前に鉄スラッジを2時間撹拌したが、2時間のフェントン反応期間中に溶解性鉄は増加し続けた。処理された過酸化物のレベルは、前の実験に基づいて予想されるより約2倍高かったが、TOC及び有機汚染物は良好に処理された。
【0084】
【表7】
pH2.0での鉄の増加(リサイクルされた固体物から):
過酸化物処理を改善する試みとして、3.0g/lの鉄用量を用いてpH2.0でジャーテストを行った。硫酸第一鉄を使用した先述のフェントン処理から、鉄固体物のスラリーを生成した。優れたTOC除去と共に過酸化物除去を大幅に改善したことが、実験結果から示された。
【0085】
2時間の反応時間後に酸性溶液(pH2.0)を濾過することにより、溶解性鉄を測定したところ、わずか1,320mg/lのFeであることが確認された。仮に鉄スラッジが完全に溶解したとすると、3,000mg/lの溶解性鉄を当該鉄スラッジの投与量として供給したことになることから、利用可能な鉄の全量のうち、たった44%だけが溶解性形態として存在していることが判明した。
【0086】
【表8】
不安定な過酸化物を用いたフェントン試薬:
すべての前の実験では、安定な過酸化物で調製された合成廃水を用いて行われている。不安定な過酸化物を用いて調製したサンプルでフェントンのジャーテストを行って、処理への影響を評価した。テストはpH2.0で行った。鉄の用量としては3g/lを使用した。前記鉄は、不安定な過酸化物で調製された合成廃水のバッチを処理し、次いでフェントン処理されたサンプルを水酸化ナトリウムで中和することによって「生成」された。反応時間は、pH2で2時間、pH6.5で1時間であった。
【0087】
以下の表の結果は、過酸化物及びTOC除去に関して、不安定な過酸化物も安定な過酸化物と同様に処理されたことを示している。過酸化物の分解についてはわずかに速かった。2時間の反応時間後の溶解性鉄は2000mg/Lであったが、これは、スラッジ由来の全鉄量の67%を占めことを示す。このレベルは、不安定な過酸化物サンプルよりも高い結果であったことに留意すべきである。
【0088】
【表9】
合成廃水を用いた複数のスラッジ投与循環(サイクル):
一連のテストを行って、3回の連続処理を介するスラッジリサイクルを評価した。処理の化学条件は、上記で使用したものと同じである(pH2,3g/lのFe,pH6.5)。各循環で生成されたスラッジは、後に続く循環の鉄源として用いられた。
【0089】
各連続処理では、TOC及び過酸化物の除去は、溶解性鉄濃度が減少するにつれて、あまり効果的ではなくなる。詳細については下の表を参照する。
【0090】
【表10】
処理の有効性の低下について可能性のある説明の一つは、フェントン反応における耐火性酸化鉄の形成である。鉄スラッジのリサイクルは、これら耐火性酸化鉄の連続的な蓄積をもたらすことになる。これらの化合物は、有機物を酸化するが、過酸化物を分解しないヒドロキシルフリーラジカルの生成には関与しない。
【0091】
実際の有機物含有廃水サンプルの処理
5ガロンサンプルの有機物含有廃水を2つ半導体製造業者から受け取った。前記有機物含有廃水から調製されたフェントン反応器流入液(希釈したサンプル)について、スラッジリサイクルのジャーテストを行い、完全合成サンプルにおける作業から開発された処理プロセスを検証した。
【0092】
表9は、2つの希釈されていない廃水(合成 対 実際)及びジャーテストに使用された希釈したサンプルの分析結果を示すものである。原廃水の過酸化水素含有量から、フェントン反応器より前に必要とされる希釈率を決定した。先述のテストでは、最大22g/lまでの過酸化物の処理の安全性が実証されたため、このレベルでの過酸化物濃度を得るためにサンプルを希釈した。より高濃度の過酸化物を安全に処理する可能性はあるが、より高いレベルでのテストは行わなかった。ジャーテストでは、水を希釈するために脱イオン水を使用したが、フルスケールシステムでは、希釈水として処理済の濾過液を使用しうる。
【0093】
【表11】
アルコールの分析に関する施設を提供する研究所は見つからなかったため、アルコールに関して分析した結果は得られていない。
【0094】
有機物含有廃水を使用した複数のスラッジを投与する循環(サイクル):
スラッジの再利用を繰り返すことによる処理効率の低下をさらに調査するために、実際の有機物含有廃水を用いた一連の試験を実施した。最初のフェントンの処理を、pH2.0、3.0g/lのFe(硫酸第一鉄を使用)で行った。2時間の反応時間後、サンプルを水酸化ナトリウムで中和し、1時間混合し、固体を沈殿させた。この処理は、(硫酸第一鉄の代わりに)鉄源として先述のテスト由来のスラッジを用いて5回繰り返した。
【0095】
以下の表は、水酸化ナトリウム添加前における2時間のフェントン反応後の分析結果を示すものである。TOC及び過酸化物の除去効果は、完全合成廃水を用いた先述のテストと同様に、各循環後に低下した。
【0096】
前記表はまた、溶解性鉄が各循環で減少することを示している。サンプルをスラッジに投与した直後に各循環に関する全鉄量の分析を行った。「Re-sol.Fe」と付けられた列は、2時間の反応期間の終点に行われた溶解性鉄の分析によって示されるように溶解した有効鉄全量のパーセンテージを示すものである。
【0097】
【表12】
5回の循環にわたる処理効率の低下傾向を示したにもかかわらず、過酸化物及び有機汚染物が5回目の循環で順調に処理されたことを以下の表は示している。
【0098】
【表13】
さらなるテストのための処理済の廃水サンプル:
半導体製造業者は、有機物含有廃水の処理由来の最終排液1リットルサンプルを、テスト目的のために要求した。当該サンプルは、提案されたフルスケール処理システムから生成された最終排液を代表するものであった。この目的のために、10ガロンの有機物含有廃水が前記半導体製造業者によって提供された。
【0099】
処理手順の概要:
・ステージ1-フェントン処理にとって安全なレベルまで、未精製の有機物含有廃水中の過酸化物を分解する。
・ステージ2-ステップ1からのサンプルを処理して処理済の濾過液を生成する。
・ステージ3-処理済の濾過液で未精製の有機物含有廃水を希釈する。
・ステージ4-希釈した有機物含有廃水を処理して最終排液サンプルを製造する。
ステージ1:フェントン処理にとって安全なレベルまで、未精製の有機物含有廃水中の過酸化物を分解する。
前記有機物含有廃水は90g/LのH2O2を含んでおり、当該H2O2が非常に高濃度であるためフェントン試薬で安全に処理できなかった。サンプルマトリックス中の他の全ての成分が変更されないような制御された条件下で、H2O2濃度を25g/Lまで低下させた。このプロセスに約3時間費やした。
【0100】
手順:
1. 温水浴内で3リットルの有機物含有廃水を84°Fに温める
2. 磁気撹拌子で激しく攪拌する
3. pH9.5になるまでNaOHを添加する(NaOH投与量2,600mg/L)
4. 規則的な間隔毎にH2O2を定期的に分析しながら激しく攪拌し続ける
5. H2O2濃度が20~25g/Lの間まで下がると、pH6.5になるまでH2SO4を添加する(H2SO4の投与量 1,840mg/L)
6. 氷浴を用いて温度を外界温度まで下げる
【0101】
ステージ2:ステップ1からのサンプルを処理して処理済の濾過液を生成する。
ステージ1で生成されたサンプルを、フェントン試薬を用いて処理した。前記フルスケールシステムに対して指定されているように、2時間の反応時間、3g/LのFe用量(硫酸第二鉄ストック溶液から)及び反応pH2.0の条件を用いた。リサイクル中に発生しうるスラッジにより模倣するため、(第一鉄の代わりに)硫酸第二鉄を用いた点に留意されたい。
【0102】
手順:
1. ステージ1由来の有機物含有廃水3000mL
2. ウォーターバス内にビーカーを配して温度上昇を緩和する
3. pH4.0になるまでH2SO4を添加した(652mg/L用量)
4. Fe2(SO4)3ストック溶液を用いて、3.0g/LのFe3+になるまで投与した - pHが<2(2未満)に低下した
5. pH2.0を維持しながら80分間攪拌した(NaOHを1,020mg/L用量必要とした)
6. NaOHをpH7.1(5,300mg/L用量)になるまで添加し、20分間撹拌し、TSS解析を行った
7. 60分を静置した
8. 上清をデカントし、1.3ミクロンのフィルターを介して濾過した
【0103】
ステージ3:処理済の濾過液を用いて原廃水を希釈する
フェントン反応器への流入液をシミュレートするために、488mLの未精製の有機物含有廃水と1024mLの処理済の濾過液とを混ぜた。488mLのスラッジスラリーをステージ4で添加した後、未精製の有機物含有廃水の有効希釈率は4.1xであった。これは、~2.2%(2.2%以下)の過酸化物を含有するフェントン反応器への供給物を生成するものであった。
【0104】
ステージ4:希釈された有機物含有廃水を処理して最終排液サンプルを生成する
手順:
1. H2SO4を用いてステージ3由来の希釈した有機物含有廃水を、pH2.0にpH調整した
2. H2SO4を添加してpH2.0に維持しながら488mLのスラッジスラリーを添加した
3. pH2.0を維持しながら約90分間攪拌した
4. NaOHをpH7.1になるまで添加した
5. 45分間攪拌した
6. 一晩(約16時間)静置した
7. 1.3ミクロンフィルターを通して上清を濾過した
【0105】
【表14】
結論:
フェントン反応(硫酸第一鉄及び過酸化物)を用いることで過酸化物及び有機化合物の順調な処理を達成することができる。ワンスルー的処理(スラッジリサイクルなし)によって2mg/l未満の最終過酸化物濃度及び0.5mg/l未満の有機汚染物濃度が達成された。
【0106】
安全上の理由から、サンプルは処理前に約2.0~2.2g/Lの過酸化物まで希釈すべきであった。さらに高濃度での処理を行うことができるかもしれないが、テストは行わなかった。処理済の排液は、希釈用として使用できる。
【0107】
不安定な過酸化物、安定な過酸化物、及び実際の有機物含有廃水サンプルを含む試料についてテストが行われた。実際の有機物含有廃水サンプル及び不安定な過酸化物を含むサンプルは、若干速く反応し、わずかに熱が発生した。実施されたテストのいずれかにおいて見られた最高の温度上昇は、28.4°F(70~98.4)であった。これは、鉄源として硫酸第一鉄を使用している実際の有機物含有廃水の最初の処理中に確認された。このサンプルの後処理でも、11.5~3.7°Fの範囲の温度上昇をもたらした。
【0108】
処理中に発生する水酸化鉄スラッジをリサイクルすることによって、処理に必要な化学物質の量及びスラッジの発生量を低減できることが分かった。しかしながら、リサイクルされたスラッジの有効性が、循環(サイクル)ごとに徐々に減少することも分かった。フルスケールシステムでは、3~4サイクルごとにスラッジを除去する必要があり、新たな硫酸第一鉄を添加する必要があると推定される。
【0109】
硫酸第一鉄を使用した場合、最適なフェントン処理条件はpH約2.0及び1000mg/lの鉄の用量で得られた。リサイクルスラッジを使用する場合は、およそ3,000mg/lの鉄が必要となる。フェントン処理後の中和にはpH6.5が用いられる。フェントン反応器では2時間の反応時間が最適であり、中和反応器では1時間の反応時間が最適であった。
【0110】
本明細書で使用される表現及び用語は、説明を目的としたものであり、限定的であると見なされるべきではない。本明細書で使用される場合、用語「複数」は、2つ以上の部品又は構成要素を指す。用語「備える」、「含む」、「運ぶ」、「有する」、「含有する」、及び「包含する」は、記載された説明又はクレームなどのいずれにおいても、制限なしの用語であり、すなわち「~含むがこれに限定されない」ことを表わしている。従って、こうした用語の使用は、その後に挙げる部品及びその等価物並びに追加部品を包含することを意味する。「~から構成される」及び「本質的には~から構成される」という移行句だけが、それぞれ、請求項に関する限定的な又は半限定的な移行句である。請求項における「第1の」、「第2の」、「第3の」等のような序数用語を使用して、1つの請求項の構成要素を改変することは、1つの請求項要素のもう1つの請求項要素に対する優先度、順位若しくは順番、又は、ある方法のステップが実施される時間的順序を単独で暗示するものではなく、ただ単に、ある名称を有する請求項要素の1つを同じ名称(順序を示す用語の使用がなければ)を有するもう1つの要素から区別して、請求項要素の見分けがつくようにするためのラベルとして用いられているだけである。
【0111】
当業者であれば、本明細書に記載されたパラメータ及び構成は例示であり、実際のパラメータ及び/又は構成は、開示された方法及び材料が使用される特定の用途に依存することを理解すべきである。当業者であれば、日常的な実験を用いて、開示された特定の実施形態と同等のものを認識するか、又は確認することができなければならない。例えば、当業者であれば、本開示による方法及びその構成要素は、ネットワーク又はシステムをさらに含むことができ、又は、水中での過酸化水素及び/又は有機成分の濃度を低減するためのシステムの構成要素であり得ることを認識することができる。したがって、本明細書に記載された実施形態は、単なる例示として提示されたものにすぎず、添付の特許請求の範囲及びそれと均等の範囲内で、開示された実施形態は、具体的に記載されたものとは別の方法で実施することもできる。本システム及び方法は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、又は方法のそれぞれに向けられたものである。さらに、そのような特徴、システム、又は方法が相互に矛盾しない場合、当該特徴、当該システム、又は当該方法の2以上の任意の組合せは、本開示の範囲内に含まれる。本明細書で開示された方法のステップは、図示された順序、若しくは交互の順序で実施されてもよく、前記方法は追加の又は代替の動作を含んでもよく、又は図示された動作の1以上を省略して実行されてもよい。
【0112】
さらには、当業者であれば種々の代替的な実施の形態、修正形態及び改善形態に容易に想到できることが分かる。そのような代替的な実施の形態、修正形態及び改善形態は本発明の一部であることを想定しており、また本発明の思想及び範囲内にあるものであることを想定している。例えば、本発明の一つ又は複数の態様のいずれかを利用するために、又は、取り入れるために、既存の機能を修正することができる。したがって、場合によっては、本システムは、水から溶解したセレンを除去することを含んでもよい。つまり、上記の説明及び図面に示されたものは単なる例示に過ぎない。さらには、図面に図示されたものは、本発明を特定の図示された表現に制限するものではない。
【0113】
例示的な実施形態が本明細書に開示されているが、添付の特許請求の範囲に記載される本発明の態様及び本発明の等価物の思想及び範囲から逸脱することなく、多くの修正、追加及び削除を行うことができる。