(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】液量センサおよび液処理システムを備えたピペット装置
(51)【国際特許分類】
B01L 3/02 20060101AFI20220107BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20220107BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20220107BHJP
G01F 23/26 20220101ALI20220107BHJP
【FI】
B01L3/02 D
G01N35/10 D
G01N27/22 B
G01F23/26 A
(21)【出願番号】P 2018568420
(86)(22)【出願日】2017-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2017068203
(87)【国際公開番号】W WO2018015421
(87)【国際公開日】2018-01-25
【審査請求日】2020-04-14
(32)【優先日】2016-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】501442699
【氏名又は名称】テカン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TECAN Trading AG
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・オット
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-311840(JP,A)
【文献】特開平11-271320(JP,A)
【文献】特開2006-003365(JP,A)
【文献】特開2005-283150(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0205893(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0305202(US,A1)
【文献】米国特許第05315872(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01L 1/00-99/00
G01N 35/00-37/00
G01N 27/00-27/10
G01N 27/14-27/24
G01F 23/00
23/14-23/296
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に試料液(4)を吸引または分注するための開口部(3)を有し、他端で圧力発生手段に作動的に接続可能なチューブ(1)を備えたピペット装置であって、前記ピペット装置の上に第1の電極(5)が形成されており、前記第1の電極は、第2の電極(4’)と共に測定用コンデンサを形成し、前記第2の電極は、前記チューブ(1)内に受容可能な試料液(4’)の少なくとも一部によって形成され、前記測定用コンデンサは、測定ユニット(9)と作動可能に接続され、前記測定ユニット(9)は、前記測定用コンデンサの静電容量の関数として、吸引または分注された試料液(4)の量を決定するように設計されている、ピペット装置
であって、
前記第1の電極(5)から電気的に絶縁されており、前記試料液(4)の吸引または分注中に前記試料液(4)との電気的接続を確立することができるように形成されている、電気接点(6)を備え、前記チューブ(1)内に位置する試料液(4’)の少なくとも一部は、前記測定用コンデンサの前記第2の電極(4’)を形成し、前記第1の電極と、前記第2の電極のための電気接点(4’)とは測定ユニット(9)に電気的に接続されている、ピペット装置と、
圧力発生手段と、
を備え、
前記圧力発生手段は、コントローラに接続され、前記コントローラは、前記測定ユニット(9)によって決定された吸引または分注された試料液(4’)の体積、及び、吸引または分注された試料液(4’)の予め定められた目標体積に基づいて、閉制御ループにおいて試料液(4)を吸引または分注するための圧力を生成するように設計されていると共に、
前記圧力発生手段から前記チューブ(1)内へ延びる流体路は、基準電位にある作動液(7)で満たされ、特に接地されている、液体処理システム。
【請求項2】
前記試料液(4)を吸引または分注するための開口部(3)を有する端部は、ピペットチップ(2)として具体化されており、これは、前記チューブ(1)と一体的に形成されるか、または前記チューブ(1)に取り外し可能に接続されており、前記ピペットチップ(2)は、特に前記開口部(3)に向かって先細になっているか、または円錐形状を有する、請求項
1に記載の
液体処理システム。
【請求項3】
前記第1の電極(5)は、前記チューブ(1)、特に前記ピペットチップ(2)を部分的にまたは完全に覆っている、請求項
1又は2に記載の
液体処理システム。
【請求項4】
前記第1の電極(5)は、前記チューブ(1)に沿って長手方向に、特に前記開口部(3)または前記ピペットチップ(2)の領域に配置されたワイヤによって形成されている、請求項1から
3のいずれか一項に記載の
液体処理システム。
【請求項5】
前記ピペットチップ(2)は、導電性材料からなり、電気接点(6)を形成するか、あるいは前記測定用コンデンサの誘電材料として使用される非導電性材料からなる、請求項
1から
4のいずれか一項に記載の
液体処理システム。
【請求項6】
前記電気接点(6)は、前記ピペットチップ(2)の前記開口部(3)に配置されている、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の
液体処理システム。
【請求項7】
前記電気接点(6)は、試料容器(10)内に配置されている前記試料液(4)を介した容量結合を介して確立することができ、前記試料液(4)は、前記試料容器(10)から吸引されるか、又は、前記試料液(4)は、前記試料容器(10)に分注される、請求項
1から
5のいずれか一項に記載の
液体処理システム。
【請求項8】
前記電気接点(6)は、前記チューブ(1)の流路壁の上に配置され、特にそれは前記流路壁によって形成され、前記流路壁は、少なくとも部分的に導電性材料で被覆されているか、または導電性材料からなる、請求項
1から
7のいずれか一項に記載の
液体処理システム。
【請求項9】
前記第1の電極(5)は、絶縁体、特に電気絶縁層で覆われている、請求項1から
8のいずれか一項に記載の
液体処理システム。
【請求項10】
前記ピペット装置が配置されている電動搬送ユニット、例えばロボットアームをさらに備え、特に、前記試料液(4)を満たした液体容器(10)、例えば試料チューブ(10)またはマイクロプレート内に、前記ピペットチップ(2)の開口部(3)を正確に位置決めすることができるように、前記ピペット装置の前記ピペットチップ(2)を移動させるために、前記コントローラは、信号を搬送ユニットに送信する目的で設計されている、請求項
1から9のいずれか一項に記載の液体処理システム。
【請求項11】
前記第1の電極(5)は基準電位にあり、特に接地されている、請求項
1から10のいずれか一項に記載の液体処理システム。
【請求項12】
前記第2の電極(4’)は、基準電位であり、特に、前記第2の電極(4’)は、例えば、前記試料容器(10)に配置されている前記試料液(4)を介して接地に容量結合されており、前記試料液(4)は、前記試料容器(10)から吸引されるか、又は、前記試料容器(10)に分注される、請求項
1から9のいずれか一項に記載の液体処理システム。
【請求項13】
請求項1から
12のいずれか一項に記載の前記
液体処理システムにおける前記ピペット装置を用いたピペッティング中の処理液量の測定方法であって、
前記ピペット装置にある試料液(4’)の第1の体積を前記第1及び第2の電極(4’、5)を有する前記測定用コンデンサの容量の関数として測定するステップであって、前記第2の電極(4’)は、前記ピペットチップ(2)及び/又はチューブ(3)内にある前記試料液(4’)の一部によって構成されている、ステップと、
前記チューブ(1)内に圧力を発生させて試料液(4’)を吸引又は分注するステップと、
第2の時点で前記ピペット装置内にある前記試料液(4’)の第2の体積を前記第1及び第2の電極(4’、5)を有する前記測定用コンデンサの容量の関数として測定するステップであって、前記第2の電極(4’)は、前記第2の時点で前記ピペットチップ(2)及び/又はチューブ(3)内にある前記試料液(4’)の一部によって構成されている、ステップと、
前記第1の体積と前記第2の体積との間の差として、前記第1の時点と前記第2の時点との間に処理された液体容量、すなわち試料液(4’)の吸引容量または分注容量を測定するステップと、
を含む、ピペッティング中の処理液量の測定方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の方法を用いて、測定された静電容量の関数として、前記チューブ(1)内の作動液(7)と試料液(4’)との間に完全な空隙(8)が存在するかどうかを確認する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体処理システムの技術分野に関し、特に、例えば、自動実験装置または実験システムのための、液体サンプルの液量を吸引(または受容)および分注(または供給)するためのピペット装置に関する。さらに、ピペット操作中の処理済み(すなわち、吸引または分注された)液量の測定方法が提案され、この方法の使用が記載されている。
【背景技術】
【0002】
医療現場、化学、分析または製薬ラボで大量の検体を検査する必要がある場合、今日、自動化された実験室システムまたは設備は、通常、個々のサンプルの迅速で信頼できる処理を可能にするために使用されている。そのような実験室システムは、しばしば液体容量を取り扱うための液体処理システムとして設計されており、これらのサンプルで特定の操作、光学測定、ピペッティング、洗浄、遠心分離、インキュベーション、およびフィルタリング等を実行するのに適している。この場合、そのような実験室システムの完全自動操作のために、典型的には1つ以上のロボット(アーム)が使用される。これらのロボットは、液体サンプルが配置されている液体容器、例えば試料チューブまたはマイクロプレートを取り扱うことを特に専門としている。そのような液体処理システムは、特に、液体を吸引し、そして分注するためのピペッター、又は液体を分注するためのディスペンサーを含む。
【0003】
大部分の実験室用途は、満足できる分析精度を得るために非常に正確なピペッティング操作を必要とする。処理されたサンプルの量または液体の量に関する正確な知見は、このように決定的に重要である。これまでに知られているシステムでは、通常、例えば特定の時間中に既知の吸引力を用いてサンプルを受け取ることによって間接的に決定されていた。この間接的な容量決定方法の問題点は、ピペットチップが詰まるので、例えば、試料液の代わりに空気が(部分的に)吸引されるか、または液体が全く受け取られないため、所望のサンプル量が実際に受け取られた(またはそれぞれ分注された)ことを保証できないことである。
【0004】
有効受入量はまた、サンプルの粘度および表面張力にも依存する。さらなるパラメータ、例えば使い捨てピペットチップの開口部の直径の変動もまた、有効な受け取りサンプル容量に影響を与える。
【0005】
試料液中への浸漬と試料液からの抜き出しとの間の液面高さの差を決定する目的で、公知の容量性液面検出(cLLD)法を使用することができる。受け取ったまたは分注した量は、高さの差とチューブの断面積とから計算することができる。しかし、これらの方法は、小容積および大きな断面積については過度に不正確である。したがって、それらは大容量にのみ適している。さらに、静電容量センサの高さ送りの機械的公差は、高低差の測定を悪化させる。
【0006】
さらに、吸引または分注中に作動流体(液体または気体、通常は空気)の圧力または流速を監視する方法もある。しかし、これらは非常に複雑な方法であり、さらに測定は動的にしか実行できず、すなわち、処理されたサンプル体積は、圧力曲線または流速の曲線からそれぞれ確認される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それ故、自動液体処理システムにおいて処理されたサンプル量又は液体容量の簡単な(そしてそれ故に費用効果的な)そしてまた正確な決定を可能にし、したがって、実行される検査または操作の高い分析精度を確実にする手段についての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、処理されたサンプル量または液体容量の正確な決定を可能にするピペット装置を提供することである。この目的は、本発明によれば、請求項1に記載のピペット装置によって達成される。
【0009】
さらに、本発明の目的は、実験システムまたは施設に適した装置を提供するために、提案されたピペット装置を液体処理システムに装備することである。この目的は、本発明によれば請求項11に記載の液体処理システムによって達成される。
【0010】
本発明のさらなる目的は、ピペッティング中に処理された(すなわち、吸引または分注された)液体容量を正確に決定することを可能にする方法を提供することである。この目的は、請求項16に提案された方法によって本発明に従って達成される。
【0011】
さらに本発明の目的は、提案された方法の用途を特定することである。本発明によるこのような用途は請求項17および18に記載されている。
【0012】
本発明による特定の実施形態は、従属請求項に明記されている。
【0013】
本発明に係るピペット装置は、一端に試料液を吸引または分注するための開口部(以下、ピペット開口部とも呼ぶ)を有し、他端は圧力発生手段、例えば、蓄圧器、ポンプ、ピストン、またはプランジャ、に作動的に接続可能であるチューブ(管)を含み、第1の電極がピペット装置上に形成され、前記第1の電極は、第2の電極とともに測定用コンデンサを形成し、前記第2の電極は、前記チューブ内に受容可能な試料液の少なくとも一部によって形成され、前記測定用コンデンサは、測定ユニットと作動可能に接続され、前記測定ユニットは、前記測定用コンデンサの静電容量の関数として、吸引又は分注された試料液の量を決定するように設計されている。
【0014】
したがって、本発明の核となる概念は、試料液を測定用コンデンサの2つの電極のうちの一方として使用すること、すなわち試料液が「液体電極」として作用することである。ピペット装置によってそれぞれ吸引または分注された試料液の量に応じて、この測定用コンデンサの静電容量は変化し(すなわち、それはそれぞれより大きくまたはより小さくなる)、そのため、吸引または分注された試料液の量は、それぞれ測定ユニットによって直接正確に決定することができる。しかしながら、この目的のために、試料液は一定の導電率を有しなければならない。この場合、チューブは2つの電極間の誘電材料として作用する。例えばその外面に第1の電極が配置されるチューブの、その内部に試料電極が第2の電極として配置される対応する設計によって、非常に微少な体積でさえも高精度で決定することができる。この場合、測定用コンデンサの2つの電極は任意の形状を有することができる。ただ、試料体積の関数としての測定用コンデンサの静電容量間の正確な関係は、事前に確かめられなければならない。
【0015】
試料体積という用語は、液体分析試料の体積としてだけでなく、むしろ試薬の体積、緩衝溶液のような希釈溶液、溶媒、または粒子もしくは細胞を有する懸濁液としても理解される。
【0016】
測定ユニットには、例えば、容量-デジタル変換器(CDC)を使用することができる。CDCは、静電容量を電圧に変換する変換器であり、シグマデルタ変換器の方法に基づいている。CDC法では、未知の静電容量について、その大きさはデジタル値としてファラッドで決定される。市販のCDCモジュールの例は、Texas Instruments製のFDC10004およびAnalog Devices製のAD7745である。
【0017】
一実施形態では、ピペット装置は、圧力発生手段、例えばポンプ、ピストン、またはプランジャを含む。
【0018】
さらなる実施形態では、ピペット装置は、圧力発生手段としての圧力リザーバを含み、それはバルブを介してチューブに流体的に接続されている。
【0019】
さらなる実施形態では、ピペット装置は、圧力発生手段として過圧貯留部および部分真空貯留部を含み、これらはそれぞれ弁を介してチューブに流体接続されている。
【0020】
さらなる実施形態では、ピペット装置は、第1の電極から電気的に絶縁され、試料液の吸引または分注中に試料液への電気的接続を確立できるように設計された電気接点を有し、それによって、チューブ内に位置する試料液の少なくとも一部は、測定用コンデンサの第2の電極を形成し、第1の電極および第2の電極用の電気接点は、測定ユニットに電気的に接続されている。
【0021】
ピペット装置のさらなる実施形態では、試料液を吸引または分注するための開口部を有する端部は、ピペットチップとして具体化されており、それはチューブと一体的に形成されるか、またはチューブに取り外し可能に接続されるかまたは接続可能であり、ピペットチップは、特に開口部に向かって先細になっているか、または円錐形状を有する。ピペットチップは、例えば繰り返し使用に適した鉄針またはカニューレとすることができ、あるいは一回限りの使用のためにのみ考えられており、例えばプラスチックからなる使い捨てチップとして具体化することができる。
【0022】
ピペット装置のさらなる実施形態において、第1の電極は、チューブ、特にピペットチップを部分的にまたは完全に覆う。
【0023】
ピペット装置のさらなる実施形態では、第1の電極は、長手方向にチューブに沿って、特に開口部またはピペットチップの領域に配置されたワイヤによって形成される。
【0024】
ピペット装置のさらなる実施形態では、ピペットチップは、測定用コンデンサの誘電材料として使用される非導電性材料からなる。
【0025】
ピペット装置のさらなる実施形態では、ピペットチップは導電性材料からなり、電気接点を形成する。
【0026】
ピペット装置のさらなる実施形態では、電気接点はピペットチップの開口部に配置されている。
【0027】
ピペット装置のさらなる実施形態では、電気接点は、そこから試料液が吸引されるかまたはそこへ試料液が分注される試料容器内に配置される試料液を介した容量結合を介して確立され得る。
【0028】
ピペット装置のさらなる実施形態では、電気接点はチューブの流路壁上に配置され、特に、それは流路壁によって形成され、流路壁は、少なくとも部分的に導電性材料で被覆されるか、または導電性材料からなる。
【0029】
ピペット装置のさらなる実施形態では、第1の電極は、絶縁体、特に電気絶縁層を使用して覆われている。
【0030】
本発明のさらなる態様によれば、液体処理システムは、圧力発生手段、例えば圧力容器、ポンプ、ピストン、またはプランジャを有する提案されたピペット装置を含み、圧力発生手段はコントローラに接続されており、このコントローラは、吸引または分注された試料液の測定ユニットを使用して決定された体積および吸引または分注された試料液の所定の目標体積に基づいて、閉制御ループにおいて試料液の吸引または分注のための圧力を生成するように設計されている。
【0031】
一実施形態では、液体処理システムは、圧力発生手段として圧力容器を含み、圧力容器は弁を介してチューブに流体的に接続され、弁はコントローラに接続されている。
【0032】
一実施形態では、液体処理システムは、液体容器、例えば試料チューブまたはマイクロプレートを配置するための作業台をさらに含む。
【0033】
一実施形態では、液体処理システムはさらに、ピペット装置が配置されている電動搬送ユニット、例えばロボットアームを含み、コントローラは、ピペットチップの開口部が特に試料液で満たされた液体容器、例えば試料チューブ又はマイクロプレート内に正確に位置決めされるようにピペット装置を移動させるために、搬送ユニットに信号を送信する目的でさらに設計されている。
【0034】
さらなる形態において、液体処理システムは、圧力発生手段からチューブ内に延在し、基準電位にある、特に接地されているシステム液または作動液で満たされている流体チャンバを備える。システム液または作動液は、圧力発生手段からチューブへの圧力伝達(「液体配置ピペッティング」-エアクッションピペッティング「空気置換ピペッティング」とは対照的である)のために使用される。
【0035】
液体処理システムのさらなる形態において、前記第1の電極は基準電位にあり、特に接地されている。この形態において、また、システム液又は作動液は、圧力伝達用に用いられる。
【0036】
液体処理システムのさらなる形態において、前記第2の電極は、基準電位であり、特に、前記第2の電極は、例えば、前記試料容器に配置されている前記試料液を介して接地に容量結合されており、前記試料液は、前記試料容器から吸引されるか、又は、前記試料容器に分注される。
【0037】
さらに、本発明のさらなる態様によれば、
前記ピペット装置にある試料液(4’)の第1の体積を前記第1及び第2の電極(4’、5)を有する前記測定用コンデンサの容量の関数として測定するステップであって、前記第2の電極(4’)は、前記ピペットチップ(2)及び/又はチューブ(3)内にある前記試料液(4’)の一部によって構成されており、前記第1の体積はゼロにできる、ステップと、
前記チューブ(1)内にそれぞれ部分真空又は過剰圧力を発生させて試料液(4’)を吸引又は分注するステップと、
第2の時点で前記ピペット装置内にある前記試料液(4’)の第2の体積を前記第1及び第2の電極(4’、5)を有する前記測定用コンデンサの容量の関数として測定するステップであって、前記第2の電極(4’)は、前記第2の時点で前記ピペットチップ(2)及び/又はチューブ(3)内にある前記試料液(4’)の一部によって構成されており、前記第2の体積はゼロにできる、ステップと、
前記第1の体積と前記第2の体積との間の差として、前記第1の時点と前記第2の時点との間に処理された液体容量、すなわち試料液(4’)の吸引容量または分注容量を測定するステップと、
を含む、ピペッティング中の処理液量の測定方法が提供される。
【0038】
さらに、本発明のさらなる態様によれば、測定された静電容量に応じた時間曲線と発生圧力の時間曲線とに基づいて、以下の実質的事項の少なくとも1つを決定する方法であって、前記実質的事項は、
前記ピペットチップの開口部が少なくとも部分的に詰まっているかどうか、
前記試料液には気体の泡、特に気泡が含まれているかどうか、特に、吸引または分注された前記試料液が泡状であるかどうか、
前記試料液の代わりに空気が少なくとも部分的に吸引されたかどうか、
である、提案された方法の用途が提供される。
【0039】
さらに、本発明によれば、測定された静電容量の関数として、前記チューブ内の作動液と試料液との間に完全な空隙が存在するかどうかを確認するための提案された方法の用途が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明に係るピペット装置の例示的な実施形態の概略図を示す。
【
図2】本発明に係る、作動液を用いて作動されるピペット装置のさらなる例示的な実施形態の斜視図を示す。
【
図3】
図2による本発明に係るピペット装置の例示的な実施形態のさらなる概略図を示す。
【
図4】(a)は、本発明に係るよるピペット装置のさらなる例示的な実施形態の斜視図を示し、(b)は、(a)による本発明に係るピペット装置の例示的な実施形態の詳細図を示す。
【
図5】本発明に係るピペット装置の例示的な実施形態のピペットチップの斜視図を示す。
【
図6】本発明に係るピペット装置の更なる例示的な実施形態のピペットチップの斜視図を示す。
【
図7】
図6による本発明に係るピペット装置を用いて3回の試料液の吸引および分注中の測定用コンデンサの測定された静電容量の時間曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施形態の非限定的な例は、図面を参照することによって以下により詳細に説明される。図面において、同一の参照番号は同一の要素を表す。
【0042】
図1は、本発明の中心概念を説明するための、本発明に係るピペット装置の例示的な実施形態の非常に単純化された概略図を示す。ピペット装置は、例えばガラスまたはプラスチックからなるチューブ1からなる。試料容器からの試料液4’は、例えば、チューブ1の他端に流体的に接続されているポンプ、ピストン、またはプランジャによってチューブ1内の圧力が低下又は増加することによって、それぞれ、チューブ1の一端にある開口部3を通してチューブ1内に吸引されるかまたはそこから分注される。第1の電極5は、チューブ1の周りに配置されて、チューブ1を全体的にまたは部分的に完全に包囲する。この第1の電極5は、例えば、チューブ1上に蒸着された銅層、またはチューブ1上に接着結合された銅箔からなることができる。この第1の電極5は、特定の基準電位に設定されており、例えば接地されている。試料液4’が電圧源による電気接点を介して他の電位に設定されている場合、第1の電極5と対向電極(=第2の電極)としての試料液4’とは一緒に(測定用)コンデンサを形成し、これは、チューブ1内に現在配置されている試料液4’の体積に応じて異なる大きさの静電容量を有する。したがって、この測定用コンデンサの静電容量とチューブ1内に位置する試料液4’の体積との間に直接的な関係が存在し、すなわち、試料液を吸引すると静電容量は増加し、試料液を分注すると静電容量は減少する。例えば、静電容量-デジタル変換器(いわゆるCDC)を含む適切な測定ユニットによって測定用コンデンサの静電容量を決定することによって、チューブ1内に配置された試料液4’の体積は、したがって、直接確認できる。
【0043】
図2は、作動液7(システム液とも呼ばれる)が圧力伝達に使用される場合を示している。この場合、チューブ1は、部分的に作動液7で満たされ、そして部分的に試料液4’で満たされ、作動液7が試料液4と接触するのを防ぐ空隙8が両者の間に位置する。この場合、作動液7も第1電極5の基準電位に設定され、例えば接地される。
図1および
図2による2つの実施形態では、試料液4’のための電気接点は、例えばチューブ1の流路壁に形成することができる。
【0044】
図3は、ピペットチップ2がチューブ1に取り付けられ、第1の電極5がさらにチューブ1を覆い、電気接点6が、例えば金属または導電性プラスチックからなるピペットチップ2によって形成される配置を示す。この場合、ピペットチップ2は、例えばカニューレとして具体化することができる。ピペット装置のこの実施形態では、測定用コンデンサの静電容量、ひいてはチューブ1内の試料液4’の体積を確認するための測定ユニット9が、チューブ1とピペットチップ2との間に配置されており、このユニットは、ピペット装置に直接組み込まれている。
図3による実施形態では、(
図2に示すように)作動液7を使用するのが好ましい。
【0045】
図4(a)および(b)は、本発明の実用的な機能性を検証するために使用される、
図3によるピペット装置の実験装置を表すものである。
【0046】
図5は、本発明によるピペット装置の更なる実施形態を示しており、ここで一端はチューブ1上のピペットチップ2として形成されている。この種のピペットチップ2は、通常プラスチックから製造されており、使い捨て用に提供されており、すなわち使い捨てチップとして具体化されている。この場合、第1電極5として、チューブ1に沿って長手方向に沿って配置された絶縁銅線を用いる。銅線の絶縁によって、ピペットチップ2を試料液4に浸したときに、試料液4との電気的接続が確立されないことを確実にする。この実施形態では、接地は、試料液4が配置されている試料容器の底部を介して試料液4に容量結合されていることが好ましい。サンプルホルダーがサンプルホルダーキャリア内に配置されている作業台は、この目的のために基準電位として接地されている。この場合、直列に接続された結合容量は測定容量よりはるかに大きくなる。あるいは、第2の電極4’を形成する試料液4’は、例えば電気接点として使用される非絶縁の第2の銅線によって測定ユニットに接続することができ、又は、ピペットチップ2は、導電性のプラスチックから成り、電気接点を形作ることができる。ワイヤの代わりに、第1の電極5は、ピペットチップ2の適切なコーティングまたはエンベロープによって形成され得る。したがって、第1の電極5は、ピペットチップ2の外面の導電性コーティングによって、または接着接合された導電箔によって形成することができる。その場合、第1の電極5のためのコーティングまたは箔は、試料液4に浸されていないピペットチップ2の領域に限定されなければならないか、またはこのコーティングはこの領域において追加の絶縁層で覆われなければならない。
【0047】
図6はピペット装置の更なる実施形態を示しており、ここでは被覆銅箔がピペットチップ2上の第1の電極5として使用されている。試料液4は、試料容器としての試料チューブ10内に配置されており、試料容器は、試料台12の上に立つ試料容器キャリア11内のさらなる試料チューブ10と一緒に配置されている。導電性作業台表面は、接地されており、作業台12に容量結合されている試料液4も接地されている。
【0048】
図7は、
図6によるピペット装置を用いて3回の試料液の吸引および分注中の測定用コンデンサの測定された静電容量の時間曲線を示す。2つの容量のジャンプは、初めにピペットチップを試料液に浸したときと、最後に引き出したときにはっきりとわかる。その間に3サイクルがあり、その間に試料液としての塩溶液55μLが吸引されそして再び5μL/sの一定速度で分注される。吸引および分注中の曲線形状は、ピペットチップの円錐形状に起因する。
【符号の説明】
【0049】
1 チューブ
2 ピペットチップ
3 ピペットチップの開口部、ピペッティング開口部
4 試料容器内の試料液
4’ チューブ内の試料液、測定用コンデンサの第2の可変電極(液体電極)
5 測定用コンデンサの第1の固定電極
6 測定用コンデンサの第2の電極用の電気接点
7 作動液又はシステム液
8 空隙
9 測定ユニット
10 試料容器、例えば、試料チューブ
11 試料容器キャリア
12 作業台