IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社みやびコスメティックスの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】キシログルカン含有ゲル状組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20220107BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220107BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20220107BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20220107BHJP
   A61Q 5/02 20060101ALI20220107BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220107BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/81
A61Q1/14
A61Q5/02
A61Q19/00
A61Q19/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019031243
(22)【出願日】2019-02-25
(62)【分割の表示】P 2017075144の分割
【原出願日】2012-08-31
(65)【公開番号】P2019073562
(43)【公開日】2019-05-16
【審査請求日】2019-03-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】713001659
【氏名又は名称】株式会社みやびコスメティックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上路 拓子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅幸
(72)【発明者】
【氏名】白川 真由美
(72)【発明者】
【氏名】北條 沙苗
【合議体】
【審判長】岡崎 美穂
【審判官】森井 隆信
【審判官】齋藤 恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-226103(JP,A)
【文献】特開2001-38740(JP,A)
【文献】特開2007-238538(JP,A)
【文献】特開2006-262897(JP,A)
【文献】特開平11-152207(JP,A)
【文献】特開2013-100305(JP,A)
【文献】特許第5020415(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
B29C33/00-33/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシログルカン含有ゲル状組成物の成型方法であって、
前記キシログルカンゲル状組成物は、水と、キシログルカンと、糖類またはアルコール類のうち少なくとも1つと、水溶性高分子(但し、キシログルカンを除く)とを含有し、
前記キシログルカン含有ゲル状組成物を、成形型を使用することにより成型することを含み、
前記キシログルカン含有ゲル状組成物は、洗顔料、メイク落とし、シャンプー、ボディー用マッサージ剤、石けん、身体洗浄料、及び入浴剤から選ばれる外用剤であり、
前記成形型は、ゴム容器又はゴム状包装体であり、
前記キシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性を有し、所望の形状を有する成形物と成る、成型方法。
【請求項2】
前記成型することは、前記キシログルカン含有ゲル状組成物の原料を水に分散させた後加熱することを含む、請求項1に記載の成型方法。
【請求項3】
前記成型することは、前記キシログルカン含有ゲル状組成物の原料の均一な溶液を調製することを含む、請求項1又は2に記載の成型方法。
【請求項4】
前記成型することは、前記キシログルカン含有ゲル状組成物の原料を型に流し込み成型することを含む、請求項13のいずれかに記載の成型方法。
【請求項5】
前記成型することは、前記キシログルカン含有ゲル状組成物の原料を水に分散させた後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することを含む、請求項14のいずれかに記載の成型方法。
【請求項6】
前記成型方法により成型された前記キシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性を有し、楕円、球体、多角形、ハート型、動植物、食べ物、建物、文字、又はロゴマークを模した形状を有する成形物である、請求項15のいずれかに記載の成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キシログルカン含有ゲル状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多糖類の1つとして、キシログルカンが知られている。かかるキシログルカンが水に溶解されると、ニュートン流体の溶液となる。得られたキシログルカン含有組成物は、食品、化粧料等、種々の分野に利用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のゲル状組成物は、保型性が十分でない場合や、離水が多い場合があった。このため、所望の形状を有するように成形されることが困難であり、長期間の保存に適していないため、該組成物の用途や包装形態が制限されるという問題があった。また、商品販売期間中等に離水が多くなる(例えば20重量%以上)と、ゲル状組成物から離水した溶液が容器内で泡立ち、製品の外観が損なわれるため、化粧品のような高価で外観が重視されるような用途において使用されることは、困難であった。キシログルカンは単独ではゲル化しないため、保型性、離水の抑制(保水性)が高められたキシログルカン含有ゲル状組成物が要望されている。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み、使用時及び保管時に型崩れのない程度の保型性を有し、一般的な消費期限内の経時的な離水が抑制されたキシログルカン含有ゲル状組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題について検討を行ったところ、水と、キシログルカンと、糖類またはアルコール類のうち少なくとも1つとを含有させることにより保型性を有し、離水が抑制された所望のキシログルカンゲル状組成物を提供し得ることを見出した。また、前記キシログルカン含有ゲル状組成物は、さらに、水溶性高分子を含有することにより保型性が向上し、ゲル状組成物からの経時的な離水を大幅に抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、以下のキシログルカンゲル状組成物を提供するものである。
項1.水と、キシログルカンと、アルコール類と、水溶性高分子とを含有しているキシログルカン含有ゲル状組成物であって、
前記アルコール類は、2価アルコール、3価アルコール、4価アルコール、5価の糖アルコールまたは6価の糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1種または2種以上であり、
全量に対して、前記アルコール類の総量が10重量%~50重量%であり、
前記水溶性高分子が、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、または、カチオン化セルロースであり、
全量に対して、前記キシログルカンが0.1重量%~15重量%であり、
前記キシログルカンと前記水溶性高分子との重量比が、キシログルカン:水溶性高分子=1:2~20:1であり、
前記組成物は、所望の形状に成形された成形物であり、保型性を有し、且つ、外用剤である、キシログルカン含有ゲル状組成物(ただし、酸性染料を含む酸性染毛剤であるキシログルカン含有ゲル状組成物を除く)。
かかる項1によれば、キシログルカン含有ゲル状組成物が、水と、キシログルカンと、糖類またはアルコール類のうち少なくとも1つとを含有していることによって、上記保型性が高められつつ、さらに、離水が低減される。
項2.全量に対して、前記キシログルカンの配合量が0.5~10重量%である、前記項1に記載のキシログルカン含有ゲル状組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使用時及び保管時に型崩れのない程度の保型性を有し、一般的な消費期限内の経時的な離水が抑制されたキシログルカン含有ゲル状組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物は、水と、キシログルカンと、糖類またはアルコール類のうち少なくとも1つ(以下、糖類及び/またはアルコール類という場合がある。)とを含有している。このように、キシログルカンに糖類及び/またはアルコール類を配合することで、使用時及び保管時に型崩れのない保型性が付与される。
ここで、「保型性」とは、ゲルを成型する器などゲルの型を保持するための支持材(または担持材)を必要とせず、ゲル単独で形成型を維持する性能を意味する。
【0009】
前記キシログルカンは、グルコース及びキシロースを構成糖とする非イオン系の多糖類であり、グルコースがβ-1,4結合した主鎖に、側鎖としてキシロースが結合した基本構成を有している。また、本明細書において、用語「キシログルカン」は、高分子(天然)キシログルカン及び低分子キシログルカンの両方を意味する。
【0010】
高分子キシログルカンは、天然物由来のキシログルカンであり、その分子量が、5万~100万程度である。かかる高分子キシログルカンは、例えば、エンドウ、ダイズ、ポプラ、イネ、タケノコといった高等植物の細胞壁や、タマリンド種子等から抽出することによって得ることができる。また、高分子キシログルカンは、植物組織から水を用いて抽出したり、水で抽出困難な場合にはアルカリ水溶液を用いて抽出することができるが、より容易に抽出することができるという観点から、水で抽出可能か否かによらず、アルカリ水溶液を用いて抽出することが好ましい。
【0011】
かかる抽出によって得られた高分子キシログルカンは、必要に応じて、アルコール沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性の差やアフィニテイーの差等を利用した各種のクロマトグラフィー、等により、さらに精製してもよい。
【0012】
このようなタマリンド種子由来のキシログルカン(タマリンド種子キシログルカン)は、市販品(例えば、DSP五協フード&ケミカル株式会社製:グリロイド、グリエイト)として入手したものを用いることもでき、かかる市販品を水に溶解し、この水溶液にエタノール等を混合してキシログルカンを分別沈殿させた後、さらに精製して用いることもできる。
【0013】
さらに、高分子キシログルカンを、利用し易くするために部分分解して低分子化してもよい。
【0014】
低分子化キシログルカンは、このように高分子キシログルカンの低分子化によって得られたキシログルカンである。かかる低分子キシログルカンは、物理的方法(例えばホモジナイザーによる低分子化等)、化学的方法(例えば酸加水分解などによる低分子化等)、酵素分解等、あるいは植物中から単離・抽出したり、化学的合成したりする等、公知の方法によって、得ることができる。
【0015】
例えば、タマリンド種子キシログルカンから酵素分解によって低分子キシログルカンを得る場合には、β-1,4-グルカナーゼ活性を有する植物組織崩壊酵素を用い、かかる酵素の特性に応じた添加量、pH、温度、時間を適宜設定して酵素分解反応をさせることができる。
【0016】
また、かかる植物組織崩壊酵素としてセルラーゼを用いる場合には、例えば、水に、タマリンド種子キシログルカンと、該タマリンド種子キシログルカン100重量部に対して0.01~2.0重量部のセルラーゼとを添加し、pH3~7、温度35~60℃で3~96時間、酵素分解反応させる。そして、反応終了後、セルラーゼを失活させ、クロマトグラフィー等の方法で反応生成物を精製することによって、分子量が5000以下の低分子キシログルカンを得ることができる。また、側鎖を部分的に分解することもでき、その方法(部分分解法)としては、酵素的もしくは化学的な方法が挙げられる。
【0017】
また、前記キシログルカンは、高分子キシログルカンまたは低分子キシログルカンのいずれかであっても、両者の混合物であってもよく、また、複数種類の植物に由来するキシログルカンの、混合物であってもよい。
【0018】
前記キシログルカンの配合量は、前記キシログルカン含有ゲル状組成物全量に対して通常0.1重量%~15重量%の範囲であり、好ましくは0.5重量%~10重量%であり、より好ましくは0.5重量%~5重量%であり、より一層好ましくは0.8重量%~3重量%である。
この配合量が、前記キシログルカン含有ゲル状組成物全量に対して0.1重量%未満であると、ゲル強度が低く、保型性を有することが困難となる傾向にあり、一方、15重量%を超えると、キシログルカンを水に溶解した後ゲル化する前において水溶液の粘度が高くなり過ぎて、所望の形状に成形することが困難となる傾向にある。
これに対し、前記キシログルカンの配合量が、0.1重量%以上であることによって、ゲル強度が十分に高くなり、15重量%以下であることによって、前記水溶液の粘度が高くなり過ぎることを抑制して、所望の形状に成形し易くすることができる。
【0019】
前記糖類は、キシログルカン水溶液のゲル化能を高め得るものである。かかる糖類は、このように上記ゲル化能を高めることが可能であれば、特に限定されない。前記糖類としては、例えば、トリオース(三炭糖。例えば、グリセリルアルデヒド、ジヒドロキシアセトン等)、テトロース(四炭糖。例えば、エリトロース、トレオース、エリトルロース等)、ペントース(五炭糖。例えば、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アビオース、リブロース、キシルロース等)、ヘキソース(六炭糖。例えば、グルコース(ブドウ糖)、マンノース、ガラクトース、イドース、フルクトース(果糖)、ソブボース等)、ヘプトース(七炭糖。セドヘプツロース、コリオース等)等のアルドース型、ケトース型の単糖類、ショ糖、マルトース、トレハロース、セロビオース等の二糖類、マルトトリオース等の三糖類、ガラクトオリゴ糖等のオリゴ糖類、デキストリン等の水溶性高分子の分解物、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、エリスリトール等の糖アルコール類が挙げられる。また、前記糖は、これらから選択された1種類でも、2種類以上の混合物でもよい。
これらのうち、前記糖類が、単糖及びオリゴ糖からなる群から選択される少なくとも1種または2種を含有することが好ましい。
【0020】
前記アルコール類は、キシログルカン水溶液のゲル化能を高め得るものである。かかるアルコール類には、アルコール及びアルコール誘導体が含まれる。かかるアルコール類は、上記ゲル可能を高めることが可能であれば、特に限定されるものではない。
前記アルコール類としては、1価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等)、2価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンタンジオール等、)、3価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン等)、4価アルコール(例えば、ジグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール等のペンタエリスリトール等)、多価アルコール重合体(例えば、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン等)、多価アルコールの誘導体等が挙げられる。また、前記アルコール類は、これらから選択された1種類でも、2種類以上の混合物でもよい。
前記多価アルコール誘導体としては、2~4価アルコールのアルキレンオキシド付加重合体が好適例として挙げられる。付加重合するアルキレンオキシドとしてはエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)、ブチレンオキシド(BO)等が挙げられる。
具体的には例えば、前記2~4価アルコールのアルキレンオキシド付加重合体としては、PPG-40ブチル〔すなわち、POP(40)ブチルエーテル〕(市販品として「ユニルーブMB-370」等)、PPG-30ブテス-30〔すなわち、POE(30)・POP(30)ブチルエーテル〕(市販品として「ユニルーブ50MB-72」等)、PPG-16グリセリルエーテル(市販品として「ユニオールTG-1000」等)、PPG-24グリセリル-24(市販品として「ユニルーブ50TG-32」等)、PPG-25-ポリエチレングリコール-25トリメチロールプロパン(市販品として「ユニルーブ43TT-2500」等)、PPG-14ジグリセリル(「ユニルーブDGP-950」等)、PEG-5-PPG-65ペンタエリスリチル(「ユニルーブ5TP-300KB」等)(以上、いずれも日油(株)製)等が挙げられる。
ここで、PPGはポリプロピレングリコール、POPはポリオキシプロピレン、POEはポリオキシエチレン、PEGは、ポリエチレングリコールを表す。
多価アルコールの一種である糖アルコール類は、前記糖類としても機能するが、一方でアルコール類としても機能し、ソルビトール、マンニトール等の5~6価アルコールが好適例として挙げられる。これら糖アルコールの誘導体としては、糖アルコールのアルキレンオキシド付加重合体が好適例として挙げられる。付加重合するアルキレンオキシドとしてはEO、PO、BO等が挙げられる。
具体的には、POPソルビット(市販品として「ユニオールHS-1600D」(日油(株)製)等)、POE(10)メチルグルコシド(市販品として「グルカムE-10」(日本ルーブリゾール(株)製)等)、POP(20)メチルグルコシド(市販品として「グルカムP-20」(日本ルーブリゾール(株)製)等)等が挙げられる。
このような糖アルコール類は、前記糖類としても機能するが、本明細書においては、前記アルコール類に含まれることとする。
【0021】
上記のうち、前記アルコール類は、低級アルコール、多価アルコール、糖アルコールからなる群から選択される少なくとも1種または2種以上を含有することが好ましい。また、前記アルコール類は、ブチレングリコール、グリセリン、各種メチルグルコシドが好ましい。
【0022】
前記糖類またはアルコール類のうち少なくとも1つの配合量は、特に限定されものではなく、併用される糖類、アルコール類、後述する水溶性高分子、洗浄成分、その他保湿剤等の種類や配合量、キシログルカンが含有組成物のゲル化の程度等を考慮に応じて適宜設定されることができる。
例えば、前記配合量については、キシログルカン含有ゲル状組成物全量に対して、糖類またはアルコール類のうち少なくとも1つの総量が好ましくは5重量%~70重量%であり、より好ましくは10重量%~60重量%であり、さらに好ましくは、10重量%~50重量%であるように設定され得る。
前記配合量が、前記キシログルカン含有ゲル状組成物全量に対して5重量%未満であると、ゲル強度が低く、保型性を有することが困難となる傾向にあり、一方、70重量量%を超えると、キシログルカンの水に対する溶解性が大幅に低下することにより、キシログルカンが析出し、均一なゲル状組成物が得られ難くなる傾向にある。
これに対し、前記配合量が5重量%以上であることによって、保型性が高いという利点があり、70重量%以下であることによって、経時的な離水が少なくなる。
【0023】
前記水の重量%は、キシログルカン、糖類及び/またはアルコール類、及び必要に応じて含まれる他の成分の総量を100%から引いた残量分であり、特に限定されるものではない。かかる水の重量%は、例えば、これら成分に応じて適宜設定され、例えば、15~95重量%と設定することができ、好ましくは20~90重量%である。
【0024】
前記キシログルカン含有ゲル状組成物は、上記に加えて、さらに、水溶性高分子を配合することにより、ゲル状組成物の保型性を高めることができ、またゲル状組成物から経時的に離水する溶液の量を大幅に抑制することができる。
【0025】
水溶性高分子は、糖類やアミノ酸、アクリル酸等が重合したものまたはその誘導体等の有機物系高分子や、コロイド性含水ケイ酸アルミニウムなど無機物系高分子で水に水和するものをいい、このように水に水和することが可能なものであれば特に限定されるものではない。前記水溶性高分子としては、例えば、植物系高分子、微生物系高分子、動物性高分子、合成/半合成高分子等が挙げられる。
前記植物系高分子としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グルコマンナン等が挙げられる。
微生物系高分子としては、例えば、キサンタンガム、ジェランガム、カードラン、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン、ポリグルタミン酸ナトリウム等が挙げられる。
動物性高分子としては、ゼラチン、ヒアルロン酸等が挙げられる。
前記半合成の水溶性高分子としては、例えば、デンプン系高分子(例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等)、セルロース系高分子(メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カチオン化セルロース、結晶セルロース、セルロース末等)、アルギン酸系高分子(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等)等が挙げられる。
合成の水溶性高分子としては、例えば、ビニル系高分子(例えば、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン等)、ポリオキシエチレン系高分子(例えば、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000のポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体等)、アクリル系高分子(例えば、ポリアクリル酸、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等)、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。
前記水溶性高分子の配合量は、キシログルカン濃度(配合量)や、併用する糖類、多価アルコール類の種類や濃度、その他、洗浄成分や保湿剤といった任意成分の種類や濃度等に応じて適宜設定することができ、特に限定されるものではない。例えば、前記配合量は、キシログルカンと水溶性高分子の重量比が、キシログルカン:水溶性高分子=1:10~50:1であることが好ましい。
前記重量比を外れると、キシログルカン含有ゲル状組成物の保型性を高める効果及びゲル状組成物からの経時的な離水を抑制する効果が発揮され難くなる傾向や、水溶液の粘度が高くなり過ぎて、所望の形状に成形することが困難となる傾向にある。
一方、前記重量比がキシログルカン:水溶性高分子=1:10~50:1であると、キシログルカン含有ゲル状組成物の保型性を高める効果及びゲル状組成物からの経時的な離水を抑制する効果が発揮され易くなり、水溶液の粘度が高くなり過ぎず、所望の形状に成形し易くなる。
これら観点を考慮して、さらに好ましい範囲は、キシログルカン:水溶性高分子=1:2~20:1である。
好ましい水溶性高分子としては、比較的水に溶解しやすい成分である、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、カチオン化セルロースが挙げられる。
【0026】
また、本発明のキシログルカン含有ゲル状組成物には、上記成分の他に通常食品や化粧料で使用される任意成分を含有することができる。
かかる任意成分としては、スクワラン、流動パラフィン、ワセリン等の炭化水素、オリーブ油、マカデミアナッツ油、ヒマシ油等の液体油脂、ヤシ油、パーム油、シア脂等の固体油脂、ミツロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール、オクタン酸セチル、パルミチン酸イソプロピル、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル等のエステル油、ジメチルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、シリコーン樹脂、アミノ変性ポリシロキサン等のシリコーン油及びその誘導体、モノステアリン酸グリセリン、モノステアリン酸プロピレングリコール、ソルビタンモノステアレート等の親油性非イオン界面活性剤、モノステアリン酸デカグリセリル、POE-グリセリンモノイソステアレート、POE-ソルビタンテトラオレエート、POE-ベヘニルエーテル、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等の親水性非イオン界面活性剤、ステアリン酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウム、POE-オレイルエーテルリン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等の陰イオン界面活性剤、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、塩化ベンザルコニウム等の陽イオン界面活性剤、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の両性界面活性剤、エデト酸二ナトリウム、エチドロン酸4ナトリウム等の金属イオン封鎖剤、その他の粉末成分、スクラブ剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、中和剤、pH調整剤(クエン酸、クエン酸ナトリウム、アルギニン等)、有機アミン、防腐剤(フェノキシエタノール、グリセリンエチルヘキシルエーテル、メチルパラベン等)、殺菌剤、消炎剤、収れん剤、美白剤(アスコルビン酸ナトリウム等)、ビタミン類、アミノ酸、血行促進剤、賦活剤、賦形剤、清涼剤、消臭剤、各種抽出物、香料、色素、顔料、その他、グリチルリチン酸カリウム、オウレンエキス、プラセンタエキス等の有効成分等が挙げられる。しかし、本発明はもちろんこれらの例に限定されるものではない。
【0027】
また、本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物は、経時的に離水する溶液の重量が、調製直後の重量に対して20重量%未満であることが好ましい。ここで、「経時的」とは、製造後商品販売期間を含む期間をいい、通常、室温で6ヵ月の期間を意味する。
前記重量が20%未満であることによって、包装内での泡立ち等の不具合を生じる可能性があるのに対し、20%未満であると、これら不具合をより解消し、見た目もよく商品価値の高いものになり得るという利点がある。さらに、経時的に離水する溶液の重量が、調製直後の重量に対して10重量%未満であると、商品価値がより高いものとなる。
【0028】
本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物の態様としては、本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物が、1剤として使用されるような態様が挙げられる。例えば、1剤の中に水、キシログルカン、及び、糖類及び/またはアルコール類が含まれる態様や、1剤の中に水、キシログルカン、糖類及び/またはアルコール類、さらに水溶性高分子が含まれる態様等が挙げられる。なお、上記態様には、その他の前記任意成分が含まれていても良い。
また、本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物の態様としては、2剤に分離し使用時に混合することでゲル化させて使用されるような態様が挙げられる。例えば、使用前には、水、キシログルカン、及び、糖類及び/またはアルコール類が、これらの少なくとも1つをそれぞれ含むA剤と、B剤とに分離されており、該A剤とB剤とを使用時に混合し、ゲル化させることによって形成されるような態様も挙げられる。この場合、前記A剤と前記B剤は、混合後に保型性を有するのであれば、その形態は特に限定されず、例えば、ゲル状、液状、粒状(粉状)等であってもよい。なお、水溶性高分子やその他の前記任意成分が含有される場合、これらは、A剤及び/またはB剤に含有されていても良い。
【0029】
本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物の調製方法は、特に限定されるものではない。
該調製方法としては、例えば、水に、キシログルカン、糖類またはアルコール類の少なくとも1つ、さらに、上記水溶性高分子を溶解させ、さらに、上記任意成分を溶解または分散させて、適宜加熱、撹拌等する方法が挙げられる。
また、例えば、水と、キシログルカンと、糖類またはアルコール類のうち少なくともいずれか1つとを用いて、前記水と前記キシログルカンとを含有しているA剤と、前記糖類またはアルコール類を含有しているB剤とを作製し、前記A剤とB剤とを使用時に混合させる方法も挙げられる。
【0030】
本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物の使用方法は、特に限定されるものはないが、例えば、水とキシログルカンとを含有しているA剤と、糖類またはアルコール類を含有しているB剤とを用い、前記A剤と前記B剤とを混合させて使用することが好ましい。また、キシログルカン含有ゲル状組成物の使用方法としては、例えば、後述するパック剤として使用することが好ましい。
【0031】
本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物の用途は、特に限定されるものではないが、前記キシログルカン含有ゲル状組成物が外用剤であることが好適である。外用剤とは、口腔等の粘膜を含む外皮に適用されるものである。かかる外用剤は、上記外皮に適用されるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、前記外用剤としては、化粧料、外用医薬品製剤(貼付剤等)が挙げられる。
前記外用剤としては、美容ゲル、パック、シートマスク、洗顔料、メイク落とし(クレンジング剤を含む)等のスキンケア剤、ファンデーション、アイシャドウ、口紅等のメイクアップ剤、毛髪手入れ用製剤、シャンプー、育毛剤等のヘアケア剤、リップクリーム、サンスクリーン剤、ボディー用ジェル、ボディー用マッサージ剤、抑汗剤、防臭剤、石けん(石鹸)、身体洗浄料、除毛剤、角質除去剤等のボディーケア剤、マネキュア、ネイルリムーバー等のネイルケア剤、歯磨き粉、入浴剤、防護剤等が挙げられる。
また、かかる外用剤の外観は、透明、半透明、白濁、2相以上の多層等いかなる外観であっても構わないが、美観的には透明のものが好適である。さらに、その剤型(形状)は、保型性を保つ程度にゲル化された剤型であればよく、楕円、球体、多角形、ハート型、動植物、食べ物、建物、文字、ロゴマーク等を模した形状、シート状、フィルム状等任意の成形型を使用することにより自由に成型できる。成形型としては、例えば、プラスチック容器、シリコン容器、ゴム容器、ゴム状包装体、ガラス容器、樹脂容器、パウチ袋、丸型もしくは角型筒、陶器、不織布への含浸等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。成形されたゲル状組成物は、前述の容器、包装体等から所望の操作により取り外すことによって、所望の形状及び外観を有する成形物を得ることができる。また、ゲル化していない溶液状の2剤に分かれた用時調製型のパック剤としても利用できる。用時調製型パック剤は、具体的には、例えば、いずれか一方又は両方に単独の剤ではゲル化しない程度のキシログルカン及びその他の成分が含まれており、好ましくは一方の剤のみにキシログルカンが含まれている。また、該パック剤は、それぞれ単独の剤では溶液状態であるが、2剤を混合することにより、徐々にゲル化し、パックとして使用した後、取り除くタイプのパック剤であり、ピールオフパックとも称される。
【0032】
本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物は、上記したように、使用時及び保管時に型崩れのない保型性を有し、かつ離水が抑制されているため、見た目のみならず、弾力があり感触的にも購買意欲を刺激する商品価値の高いものとなる。
【0033】
本実施形態のキシログルカン含有ゲル状組成物は、上記の通りであるが、本発明に係るキシログルカン含有ゲル状組成物は、上記実施形態に特に限定されるものではない。また、その作用効果も特に限定されるものではない。
【実施例
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、以下、各成分の配合量は、全て重量%で示す。
【0035】
キシログルカン含有ゲル状組成物の製造
実験例1~4
下記表1に示す処方に従い、原料を水に分散させた後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例1~4のキシログルカン含有ゲル状組成物を調製した。
実験例1~3では、タマリンドガムとしてグリロイド(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を、実験例4では、グリエイト(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を用いた。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、型から取り外した後、保型性を評価した。結果を表1に示す。
なお、保型性の評価は目視にて行い、下記の項目にて判定した。
〔保型性の判定〕
○:型の形状を明確に保っており十分な保型性が認められる。
△:若干崩れている部分はあるが、型の形状を保っており保型性が認められる。
×:液に流動性があり保型性は認められない。
【0036】
【表1】
【0037】
実験例5~24
実験例5,7,8,10,12~15,17~24では、タマリンドガムとしてグリロイド(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を用いた。また、実験例6,9,11,16では、タマリンドガムとしてグリエイト(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を用いた。
下記表2~5に示す処方に従い、原料を水に分散させた後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例5~24のキシログルカン含有ゲル状組成物を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価した。結果を表2~表5に示す。
表2~表5に示すように、本発明の構成要件を具備し、さらに、アルコール類及び糖類の濃度が10%~70%であることによって、保型性のあるゲルを形成し得ることがわかった。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】
以下、実験例25~61では、タマリンドガムとしてグリロイド(DSP五協フード&ケミカル株式会社製)を用いた。
【0043】
実験例25~29
下記表6に示す処方に従い、原料を水に分散させた後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例25~29のキシログルカン含有ゲル状組成物を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価した。結果を表6に示す。
表6に示すように、本発明の構成要件を具備している実験例25~29は、保型性が良好であった。
【0044】
【表6】
【0045】
実験例30~33:洗浄料
下記表7に示す処方に従い、原料を水に分散させた後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、洗浄料である実験例30~33のキシログルカン含有ゲル状組成物を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価した。結果を表7に示す。
本発明の構成要件を具備する実験例30~33で得られたキシログルカン含有ゲル組成物は、良好な泡立ちを有する洗浄料であったが、特に実験例33は、良好な弾力性を示し、泡立ちも大変良好であった。
【0046】
【表7】
【0047】
実験例34~37:洗顔石鹸
下記表8に示す処方に従い、原料を水に分散させ、必要に応じ加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例34~37のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状化粧料(洗顔石鹸)を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価した。結果を表8に示す。
表8に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例35~37では、アルコール類としてブチレングリコール、グリセリンを添加することで保型性が付与され、弾力のあるゲル状組成物が製造された。更に、水溶性高分子を添加することで、保型性が更に改善され離水性もさらに改善された。このように保型性が改善されたことで、より複雑な形体の型に流し込むことが可能となった。
一方、本発明の構成要件の一部を具備しない実験例34(比較例)では、保型性が悪かった。
【0048】
【表8】
【0049】
実験例38~43:洗顔料
下記表9に示す処方に従い、原料を水に分散させ、必要に応じ加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例38~43のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状化粧料(洗顔料)を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性及び離水の有無を評価すると共に、透明性を評価した。結果を表9に示す。
なお、離水の有無及び透明性の評価は、ゲル組成物を調製(型から取り出した)後、密閉容器内において40℃で3日間放置したゲル組成物の状態確認を目視にて行い、下記の項目にて判定した。
〔離水の有無〕
有:ゲル組成物に明らかに離水が確認できる。
無:ゲル組成物にほとんど離水が確認できない。
〔透明性の判定〕
○:ゲル組成物に濁りがなく、完全に透明である。
△:ゲル組成物が若干白濁しているが、十分な透明感がある。
×:ゲル組成物が完全に白濁している。
表9に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例38~43のキシログルカン含有ゲル状組成物は、いずれも優れた保型性を有していた。また、水溶性高分子を有しない実験例38及び39に比べて、実験例40~43は、有意に離水を起こしていないことが明らかであった。また、実験例39~43のキシログルカン含有ゲル状組成物は、エデト酸4ナトリウムといったキレート剤を含有していることによって、透明性を有することが明らかであった。
【0050】
【表9】
【0051】
実験例44~48:ゲル状パック
下記表10に示す処方に従い、原料を水に分散させ、必要に応じ加熱し、均一な溶液を調製後、型に薄く流し込み成型することによって、実験例44~48のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状パックを調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様に保型性を評価すると共に離水の有無を評価した。結果を表10に示す。
なお、離水性の評価は、得られたゲル組成物の調製(型から取り出した)直後の重量(初期ゲル組成物重量)、及び、密閉容器内において40℃で3日間放置後のゲル状組成物の重量(経時ゲル組成物重量)を測定し、離水率(%)=(初期ゲル組成物重量-経時ゲル組成物重量)/初期ゲル組成物重量×100の式に基づいて、離水率を算出することによって行った。
表10に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例45~48において、アルコール類としてブチレングリコール、グリセリンを添加することによって、保型性が付与された。更に、水溶性高分子を添加することで、離水が抑制された。保型性が付与されたことで薄いシート状に成形することができ、また、離水が少ないことで、商品価値の高い製品を製造し得ることがわかった。
一方、本発明の構成要件を全て具備しない実験例44(比較例)では、保型性が悪く、また、これにより、離水性を評価するに至らなかった。
【0052】
【表10】
【0053】
実験例49:ゲル状スクラブ含有透明洗顔料
下記表11に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例49のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状スクラブ含有透明洗顔料を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性及び透明性を評価した。結果を表11に示す。
表11に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例49のキシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性が十分であった。
従って、本ゲル状スクラブ含有透明洗顔料は、このように保型性があることから、様々な型に流すことができた。また、適度な弾力を有することから、肌に直接こすり付けて洗浄することが可能である。本ゲル状スクラブ含有透明洗顔料の原料混合液は適度な粘性を有することからスクラブを均一に分散させることができた。また、キレート剤の添加により透明性が高くなり、スクラブが分散している状態がはっきりわかることから見栄えのよいものであった。
【0054】
【表11】
【0055】
実験例50:ゲル状入浴剤
下記表12に示す処方に従い、原料を水に分散させ、必要に応じ加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、キシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状入浴剤(化粧料)を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価した。結果を表12に示す。
表12に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例50のキシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性が十分であった。
【0056】
【表12】
【0057】
実験例51、52:入浴剤
下記表13に示す処方に従い、原料を水に分散させ、必要に応じ加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例51、52のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状入浴剤(化粧料)を調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価すると共に、離水の有無を評価した。結果を表13に示す。
表13に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例51、52のゲル状入浴剤は、保型性があるため、様々な型に流すことができ、形状のバリエーションを楽しむことができるものであった。また、実験例52に示すように、水溶性高分子であるカルボキシビニルポリマーを含有することによって、離水が抑制されることがわかった。
【0058】
【表13】
【0059】
実験例53:ゲル状メイク落とし
下記表14に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例53のキシログルカン含有組成物としてのゲル状メイク落としを調製した。
そして、得られたキシログルカン含有ゲル状組成物について、上記と同様にして保型性を評価した。結果を表14に示す。
表14に示すように、本発明の構成要件を具備する実験例53のキシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性が十分であった。
【0060】
【表14】
【0061】
実験例54、55:メイク落とし
下記表15に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例54、55のキシログルカン含有ゲル状組成物としてのゲル状化粧料(メイク落とし剤)を調製した。
そして、得られた化粧料の保型性を評価すると共に離水の有無を、上記と同様に評価した。結果を表15に示す。
表15に示すように、実験例54、55のゲル状メイク落としは、保型性があるため、様々な型に流すことができ、また、適度な弾力を有することから、肌に直接こすり付けて消しゴムのようにメイクを落とすことができる。
また、実験例55は水溶性高分子であるカルボキシビニルポリマーを併用することで離水が抑制されることがわかった。
【0062】
【表15】
【0063】
実験例56:用時調製型ピールオフゲルパック入浴剤
下記表16に示す処方に従い、原料を混合後適宜加熱し、均一な溶液であるA液(A剤)、B液(B剤)を調製し、実験例56の用時調製型ピールオフゲルパックを調製した。
そして、A液とB液を混合して得られた化粧料の保型性を、上記と同様に評価した。結果を表16に示す。
表16に示すように、実験例56のピールオフゲルパック入浴剤は、保型性を有していた。
また、A液、B液は、それぞれの調製後は液状であり、経時的にゲル化することなく混合しやすいものであった。そして、使用時に両者を混合することで、顔に塗布する際にはゾル状であるが、塗付後に顔上で保型性のあるゲル化を形成した。本パックは適度な水分と弾力を有するため、肌にフィットし、使用後は容易にはがすことができるだけでなく、肌のほてりを押さえるクールダウンケアや、美容液のあとに使用することで、美容成分を肌に行き渡らせることができる。
【0064】
【表16】
【0065】
実験例57:頭髪用洗浄剤
下記表17に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、実験例57のキシログルカン含有ゲル状組成物としての頭髪用洗浄剤を調製した。
そして、得られた化粧料の保型性を、上記と同様に評価した。結果を表17に示す。
表17に示すように、実験例57の頭髪用洗浄剤は、保型性を有していた。
かかる実験例57の頭髪用洗浄剤は、液状ではなく、石鹸のような一定の形状を有する固形状であることから、容器ではなくそのものの形や弾力といった肌触りを楽しむことができる。
【0066】
【表17】
【0067】
実験例58:美容ゲル
下記表18に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、美容ゲルを調製した。
そして、得られた美容ゲルの保型性を、上記と同様に評価した。結果を表18に示す。
表18に示すように、実験例58の美容ゲルは、保型性が十分であった。
実験例58の美容ゲルは、保型性があるため、様々な型に成形することができ、肌に貼り付けることができる美容液等、新しい形態の商品を提供できる。
【0068】
【表18】
【0069】
実験例59、60、61:洗顔料
下記表19に示す処方に従い、原料を混合後加熱し、均一な溶液を調製後、型に流し込み成型することによって、洗顔料を調製した。
そして、得られた美容ゲルの保型性を、上記と同様に評価した。また、離水性の評価は、上記実験例44~48と同様に、ゲル組成物の調製(型から取り出した)直後の重量(初期ゲル組成物重量)、及び、ゲル組成物を調製(型から取り出した)後、密閉容器内において40℃で3日間放置した後のゲル組成物の重量(経時ゲル組成物重量)を測定し、下記式により離水率を算出することによって行うと共に、ゲル組成物の調製(型から取り出した)直後の重量(初期ゲル組成物重量)、及び、ゲル組成物を調製(型から取り出した)後、密閉容器内において室温で3ヵ月間放置した後のゲル組成物の重量(経時ゲル組成物重量)を測定し、下記式により離水率を算出することによって行った。
離水率(%)=(初期ゲル組成物重量-経時ゲル組成物重量)/初期ゲル組成物重量×100
結果を表19に示す。
表19に示すように、実験例59のキシログルカン含有ゲル状組成物は、保型性は十分であったが離水率は経時的に高くなる傾向にあった。一方、水溶性高分子を併用した実験例60及び実験例61については、離水率が顕著に抑制され、商品販売期間中に商品外観を損なうおそれの少ない商品を提供できることがわかった。
【0070】
【表19】
【0071】
以上のように本発明の実施の形態及び実施例について説明を行なったが、各実施の形態及び実施例の特徴を適宜組み合わせることも当初から予定している。また、今回開示された実施の形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態及び実施例ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。