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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】治療薬の脈絡膜上投与のための装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61F9/007 130D
A61F9/007 130E
A61F9/007 130J
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019111845
(22)【出願日】2019-06-17
(62)【分割の表示】P 2016552291の分割
【原出願日】2015-02-11
(65)【公開番号】P2019147052
(43)【公開日】2019-09-05
【審査請求日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】61/938,956
(32)【優先日】2014-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/049,056
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/049,089
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/049,100
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/049,128
(32)【優先日】2014-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/104,295
(32)【優先日】2015-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14/619,256
(32)【優先日】2015-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520404610
【氏名又は名称】ジャイロスコープ・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(72)【発明者】
【氏名】オーベルキルヒャー・ブレンダン・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】プライス・ダニエル・ダブリュ
(72)【発明者】
【氏名】キーン・マイケル・エフ
(72)【発明者】
【氏名】ソクハンバー・サイード
(72)【発明者】
【氏名】ヤセバック・ダニエル・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ブルーウィラー・ミシェル・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ソファー・リア・アール
(72)【発明者】
【氏名】カーン・イサック・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】コー・ベンジャミン・エル
(72)【発明者】
【氏名】リーマン・クリストファー・ディー
(72)【発明者】
【氏名】グラブス・ネイサン・ディー
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0039253(US,A1)
【文献】特表平08-507457(JP,A)
【文献】特表2013-543418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61M 5/14
A61M 5/158
A61M 5/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療薬を眼に送達するための装置であって、
(a)本体と、
(b)前記本体から遠位に延在する可撓性カニューレであって、患者の眼の脈絡膜と強膜との間に挿入可能であるように大きさが決められ、構成されており、長手方向軸線を画定する、可撓性カニューレと、
(c)針であって、前記可撓性カニューレに対して滑動可能である、針と、
(d)作動アセンブリであって、前記針を前記可撓性カニューレに対して作動させて、それによって、前記針の遠位部分を、前記可撓性カニューレの前記長手方向軸線に対して斜めに配向された出射軸に沿って駆動するように動作可能であり、前記出射軸は前記可撓性カニューレの長手方向軸線に対して5°~30°の角度で配向されている、作動アセンブリと、
を含み、
前記可撓性カニューレが、前記可撓性カニューレの長さにわたって長手方向に延在する複数の内腔を画定し、前記複数の内腔のうちの少なくとも1つの内腔が、前記針を滑動可能に受容するように構成されている、装置。
【請求項2】
前記作動アセンブリが、前記針を作動させるために前記本体に対して移動可能である作動部材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記作動部材が、前記針を作動させるために前記本体に対して並進可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記作動部材が、前記針を作動させるために前記本体に対して回転可能である、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記作動アセンブリが、前記作動部材と関連するネジ山付き部材を含み、前記ネジ山付き部材は、前記作動部材が前記本体に対して回転したときに、前記本体内のネジ山付き穴に係合して前記針を作動させるように構成されている、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記針が鋭い遠位先端を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記針の前記鋭い遠位先端が、第1の斜面と、第2の斜面と、第3の斜面と、を含み、前記第1の斜面、前記第2の斜面、及び前記第3の斜面がそれぞれ、互いに対して斜めに配向されている、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記出射軸が、前記可撓性カニューレの前記長手方向軸線に対して7°~9°の角度で配向されている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記可撓性カニューレが鈍い遠位先端を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記可撓性カニューレが傾斜した遠位端を含み、前記傾斜した遠位端が傾斜角度を有し、前記傾斜角度が10°~30°である、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも2つの異なる流体源を前記針に連結させる針連結器を更に含む、請求項1に記載の装置。
【請求項12】
前記可撓性カニューレが、2.0×10 -6 Nm ~6.0×10 -6 Nm の曲げ剛性を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項13】
バルブアセンブリを更に含み、前記バルブアセンブリが、流体源と前記針との間の流体連結を提供するように動作可能であり、前記バルブアセンブリが、前記本体に対して前記針と共に並進するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項14】
治療薬を眼に送達するための装置であって、
(a)本体と、
(b)前記本体から遠位に延在する可撓性カニューレであって、患者の眼の脈絡膜と強膜との間に挿入可能であるように大きさが決められ、構成されており、長手方向軸線を画定する、可撓性カニューレと、
(c)針であって、前記可撓性カニューレに対して滑動可能である、針と、
(d)作動アセンブリであって、前記針を前記可撓性カニューレに対して作動させて、それによって、前記針の遠位部分を、前記可撓性カニューレの前記長手方向軸線に対して斜めに配向された出射軸に沿って駆動するように動作可能であり、前記出射軸は前記可撓性カニューレの長手方向軸線に対して5°~30°の角度で配向されている、作動アセンブリと、
を含み、
前記可撓性カニューレの遠位部が前記長手方向軸線に対して横方向に向いた遠位開口を含み、前記針が前記遠位開口を介して前記可撓性カニューレから出るように構成されている、装置。
【請求項15】
前記可撓性カニューレは閉じた遠位端を含み、前記遠位開口は前記閉じた遠位端の近位にある、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記可撓性カニューレ内に配置された針ガイドを更に含み、前記針は前記針ガイド内にスライド可能に配置されており、前記針ガイドは前記針を前記遠位開口の方にガイドするように構成されている、請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記可撓性カニューレは、丸まった辺を有する概して四角形の断面形状を持つ、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権)
本出願は、2014年2月12日に出願された「Suprachoroidal Approach」と題する米国特許仮出願第61/938,956号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願はまた、2014年9月11日に出願された「Suprachoroidal Injector Design」と題する米国特許仮出願第62/049,056号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本出願はまた、2014年9月11日に出願された「Suprachoroidal Suture Measurement Template」と題する米国特許仮出願第62/049,089号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0004】
本出願はまた、2014年9月11日に出願された「Suprachoroidal Procedure Method」と題する米国特許仮出願第62/049,100号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
本出願はまた、2014年9月11日に出願された「Suprachoroidal Manual Advance Injector and Third Arm」と題する米国特許仮出願第62/049,128号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
本出願はまた、2015年1月16日に出願された「Method and Apparatus for Suprachoroidal Administration of Therapeutic Agent」と題する米国特許仮出願第62/104,295号の優先権を主張するものであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
(共同研究に関する声明)
特許請求の範囲に記載された発明の有効出願日以前に有効であった共同研究契約の1以上の当事者によって、又は当該当事者のために、本出願に開示された主題が開発され、特許請求の範囲に記載された発明が作製された。特許請求の範囲に記載された発明は、共同研究契約の範囲内で行われた活動の結果として作製された。共同研究契約の当事者には、Ethicon Endo-Surgery,Inc.及びJanssen Research & Development,LLC.が含まれる。
【背景技術】
【0008】
人間の目はいくつかの層を備えている。白色の外側の層は強膜であり、脈絡膜層を取り囲んでいる。網膜は脈絡膜層の内側にある。強膜はコラーゲン及び弾性線維を含み、脈絡膜及び網膜を保護する。脈絡膜層は、網膜に酸素や栄養を供給する脈管系を含む。網膜は、桿体及び錐体などの感光性組織を備える。黄斑は、眼底にある網膜の中央に位置し、一般に、眼の水晶体及び角膜の中心を通る軸(すなわち、視軸)を中心とする。黄斑は、特に錐体細胞を通して中心視力を提供する。
【0009】
黄斑変性症は黄斑を冒す医学的状態であり、黄斑変性症を患う人は、ある程度の周辺視力を維持しつつ、中心視力の喪失又は低下を経験する場合がある。黄斑変性症は、加齢(「AMD」としても知られている)や遺伝的要因などの様々な要因により生じ得る。黄斑変性症は、ドルーゼンとしても知られる細胞残屑が網膜と脈絡膜との間に蓄積して地図状萎縮を引き起こす「ドライ」(非滲出性)型で発症する場合がある。黄斑変性症はまた、網膜の裏側の脈絡膜から血管が成長する「ウェット」(滲出性)型で発症する場合がある。黄斑変性症の人はある程度の周辺視力を維持することができるが、中心視力の喪失は生活の質に多大な悪影響を及ぼし得る。更に、残っている周辺視力の質が低下する可能性があり、場合によってはなお消失することもある。したがって、黄斑変性症に起因する失明を予防する又は逆転させるために、黄斑変性症の治療を行うことが望ましくあり得る。場合によっては、例えば、黄斑に近い地図状萎縮領域に直接隣接している網膜下層(網膜の感覚神経層の下で、網膜色素上皮の上)に治療物質を送達することなどにより、極めて局所的な方法でそのような治療を行うことが望ましくあり得る。しかしながら、黄斑は眼底にあり、かつ網膜の傷つきやすい層の下にあるので、実用的なやり方で黄斑にアクセスするのは困難であり得る。
【0010】
様々な手術法及び器具が作られ、眼を治療するために使用されてきたが、本発明者らよりも以前に、添付の特許請求の範囲に記載する本発明を作製又は使用した者はいないと考えられる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の実施形態は、治療薬を眼に送達するための装置を含む。装置は、本体と、カニューレと、中空針と、作動アセンブリと、を含む。カニューレは、本体から遠位に延在する。カニューレは、患者の眼の脈絡膜と強膜との間に挿入可能であるように大きさを決められ、構成されている。カニューレは長手方向軸線を画定する。針は、カニューレに対して滑動可能である。作動アセンブリは、針をカニューレに対して作動させ、それによって、針の遠位部分を、カニューレの長手方向軸線に対して斜めに配向された出射軸に沿って駆動するように動作可能である。
【0012】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、作動アセンブリは、針を作動させるために本体に対して移動可能である作動部材を含む。
【0013】
作動部材が、針を作動させるために本体に対して移動可能である、第1の実施形態のいくつかの変形形態では、作動部材は、針を作動させるために本体に対して並進可能である。
【0014】
作動部材が、針を作動させるために本体に対して移動可能である、第1の実施形態のいくつかの変形形態では、作動部材は、針を作動させるために本体に対して回転可能である。
【0015】
作動部材が、針を作動させるために本体に対して回転可能である、第1の実施形態のいくつかの変形形態では、作動アセンブリは、作動部材と関連するネジ山付き部材を含む。ネジ山付き部材は、作動部材が本体に対して回転したときに、本体内のネジ山付き穴に係合して針を作動させるように構成されている。
【0016】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、針は鋭い遠位先端を有する。
【0017】
針が鋭い遠位先端を含む第1の実施形態のいくつかの変形形態では、針の鋭い遠位先端は、第1の斜面と、第2の斜面と、第3の斜面と、を含む。第1の斜面、第2の斜面、及び第3の斜面はそれぞれ、互いに対して斜めに配向されている。
【0018】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、出射軸は、カニューレの長手方向軸線に対して約5°~約30°の角度で配向されている。
【0019】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、出射軸は、カニューレの長手方向軸線に対して約7°~約9°の角度で配向されている。
【0020】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、針は鈍い遠位先端を含む。
【0021】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、カニューレは傾斜した遠位端を含む。傾斜した遠位端は傾斜角度を有し、傾斜角度は約10°~約30°である。
【0022】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、カニューレは、カニューレの長さにわたって長手方向に延在する複数の内腔を画定する。複数の内腔のうちの少なくとも1つの内腔は、針を滑動可能に受容するように構成されている。
【0023】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、カニューレは、0.7×10-6Nm~11.1×10-6Nmの曲げ剛性を有する。
【0024】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、カニューレは、2.0×10-6Nm~6.0×10-6Nmの曲げ剛性を有する。
【0025】
第1の実施形態のいくつかの変形形態では、装置はバルブアセンブリを更に含む。バルブアセンブリは、流体源と針との間の流体連結を提供するように動作可能である。バルブアセンブリは、本体に対して針と共に並進するように構成されている。
【0026】
本発明の第2の実施形態は、外科用器具の使用方法を含む。外科用器具は、カニューレと、カニューレに対して移動可能である中空針と、を含む。方法は、患者の眼に切開を形成することによって強膜切開を行う工程を含み、切開は、眼の強膜層を貫通して、眼の脈絡膜上腔へのアクセスを提供する。方法は、強膜切開を介してカニューレを挿入する工程を更に含む。方法は、脈絡膜と強膜との間でカニューレを前進させて、カニューレの遠位端を脈絡膜上腔の後方領域に位置付ける工程を更に含む。方法は、網膜を穿孔することなく、針をカニューレに対して前進させて、脈絡膜を通って網膜下腔内に至らしめる工程を更に含む。方法は、前進した針を介して、治療薬を網膜下腔内に送達する工程を更に含む。
【0027】
第2の実施形態のいくつかの変形形態では、方法は、前進した針を介して治療薬を送達する前に、前進した針を介して流体の先行ブレブ(leading ble)を送達することを更に含む。
【0028】
第2の実施形態のいくつかの変形形態では、方法は、縫合糸ループを患者の眼に取り付ける工程を更に含む。縫合糸ループを取り付ける行為は、縫合糸を患者の眼の少なくとも一部(例えば、強膜)に通して、縫合糸によって画定された少なくとも1つのループを形成する工程を含む。カニューレを挿入する行為は、縫合糸ループにカニューレを通す工程を含む。
【0029】
本発明の第3の実施形態は、患者の眼に治療液を脈絡膜上投与する方法を含む。方法は、縫合糸を患者の眼の少なくとも一部(例えば、強膜)に通して、縫合糸によって画定された少なくとも1つのループを形成する工程を含む。方法は、眼の少なくとも一部(例えば、強膜)を切開して、眼の脈絡膜へのアクセスを提供する工程を更に含む。方法は、カニューレを、縫合糸によって画定された少なくとも1つのループに通して、眼の少なくとも一部(例えば、強膜)を切開することによって形成された切開の中に誘導する工程を更に含む。方法は、カニューレを通して針を前進させて脈絡膜を貫通し、治療液を投与する工程を更に含む。
【0030】
第3の実施形態のいくつかの変形形態では、方法は、瞳孔を介して直接可視化することによって、カニューレを注入部位まで誘導する工程を更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本明細書は本技術を具体的に指摘しかつ明確にその権利を請求する特許請求の範囲によって完結するが、本技術は、以下の特定の実施例の説明を添付図面と併せ読むことでより良く理解されるものと考えられ、図面では同様の参照符号は同じ要素を特定する。
図1】治療薬の脈絡膜上投与のための例示的な器具の斜視図である。
図2】本体の一部が取り除かれた状態の、図1の器具の別の斜視図を示す。
図3図1の器具のカニューレの遠位端の詳細図を示す。
図4図3のカニューレの断面図を示し、断面は図3の線4-4に沿って切り取られている。
図5A図1の器具の針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図5B図1の器具の針の遠位端の詳細な立面図を示す。
図5C図1の器具と共に使用するための例示的な代替針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図5D図1の器具と共に使用するための別の例示的な代替針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図5E図1の器具と共に使用するための更に別の例示的な代替針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図5F図1の器具と共に使用するための更に別の例示的な代替針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図5G図1の器具と共に使用するための更に別の例示的な代替針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図5H図1の器具と共に使用するための更に別の例示的な代替針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図5I図1の器具と共に使用するための更に別の例示的な代替針の遠位端の詳細な斜視図を示す。
図6図1の器具の側面図を示す。
図7】係止部材が取り除かれた状態の、図1の器具の別の側面図を示す。
図8】針をカニューレから遠位に延ばすために作動部材が遠位に進められた状態の、図1の器具の別の側面図を示す。
図9図1の器具と共に使用するための例示的な支持アセンブリの斜視図を示す。
図10図9の支持アセンブリの断面図を示す。
図11】様々な移動軸を示す、図9の支持アセンブリの別の斜視図を示す。
図12図1の器具が支持アセンブリのクレードル内に配置された状態の、図9の支持アセンブリの別の斜視図を示す。
図13】治療薬の脈絡膜上投与のための例示的な方法において用いられる例示的な縫合糸測定テンプレートの斜視図を示す。
図14A】眼の周囲の構造が固定化され、かつシャンデリアが設置された状態の、患者の眼の平面図を示す。
図14B図13のテンプレートが眼の上に配置された状態の、図14Aの眼の平面図を示す。
図14C】複数のマーカーが眼の上に配置された状態の、図14Aの眼の平面図を示す。
図14D】縫合糸ループが眼に取り付けられた状態の、図14Aの眼の平面図を示す。
図14E】強膜切開が行われている、図14Aの眼の平面図を示す。
図14F図1の器具が強膜切開開口部を通って眼の強膜と脈絡膜との間に挿入されている、図14Aの眼の平面図を示す。
図14G】眼底の直接可視化下で図1の器具が強膜と脈絡膜との間にある、図14Aの眼の平面図を示す。
図14H】眼底の直接可視化下で図1の器具の針が進められ、脈絡膜の外側表面を押圧して、脈絡膜を「テンティング」させた状態の、図14Aの眼の平面図を示す。
図14I】眼底の直接可視化下で針が先行ブレブを分注し、針は強膜と脈絡膜との間にあり、先行ブレブは脈絡膜と網膜との間の網膜下腔内にある状態の、図14Aの眼の平面図を示す。
図14J】眼底の強膜と脈絡膜との間において針が眼に治療薬を分注している状態の、図14Aの眼の平面図を示す。
図15A図14Aの眼の断面図を示し、断面は図14Aの線15A-15Aあたりで切り取られている。
図15B図14Aの眼の断面図を示し、断面は図14Eの線15B-15Bあたりで切り取られている。
図15C図14Aの眼の断面図を示し、断面は図14Fの線15C-15Cあたりで切り取られている。
図15D図14Aの眼の断面図を示し、断面は図14Gの線15D-15Dあたりで切り取られている。
図15E図14Aの眼の断面図を示し、断面は図14Hの線15E-15Eあたりで切り取られている。
図15F図14Aの眼の断面図を示し、断面は図14Iの線15F-15Fあたりで切り取られている。
図15G図14Aの眼の断面図を示し、断面は図14Jの線15G-15Gあたりで切り取られている。
図16A】縫合糸が最初に眼に通された状態の、図14Aの眼の詳細な斜視図を示す。
図16B】縫合糸が更に眼の強膜に通されてループを形成している状態の、図16Aの眼及び縫合糸の詳細な斜視図を示す。
図16C】縫合糸の2つの遊端部が結ばれた状態の、図16Aの眼及び縫合糸の詳細な斜視図を示す。
図16D図16Bの縫合糸ループに第2の縫合糸が取り付けられた状態の、図16Aの眼及び縫合糸の詳細な斜視図を示す。
図16E図16Dの第2の縫合糸が切断され、図16Bの縫合糸ループに結ばれた状態の、図16Aの眼及び縫合糸の詳細な斜視図を示す。
図17A図15Eに示された状態の図14Aの眼の詳細な断面図を示す。
図17B図15Fに示された状態の図14Aの眼の詳細な断面図を示す。
図17C図15Gに示された状態の図14Aの眼の詳細な断面図を示す。
図18】治療薬の脈絡膜上投与のための例示的な代替器具の斜視図を示す。
図19】本体の一部が取り除かれた状態の、図18の器具の別の斜視図を示す。
図20】作動部材が作動された状態の、図18の器具の別の斜視図を示す。
図21】針がカニューレに対して作動された状態の、図18の器具のカニューレの遠位端の斜視図を示す。
図22図1の器具と共に使用するための例示的な代替カニューレの遠位端の斜視図を示す。
図23図22のカニューレの針の遠位端の斜視図を示す。
図24図1の器具と共に使用するための別の例示的な代替カニューレの遠位端の斜視図を示す。
図25図24のカニューレの針の遠位端の斜視図を示す。
図26図1の器具と共に使用するための別の例示的な代替カニューレの遠位端の斜視図を示す。
図27図26のカニューレの断面図を示し、断面は図26の線27-27に沿って切り取られている。
図28図1の器具と共に使用するための例示的な代替カニューレの遠位端の斜視図を示す。
図29図28のカニューレの断面図を示し、断面は図28の線29-29に沿って切り取られている。
図30図1の器具と共に使用するための例示的な代替カニューレの遠位端の斜視図を示す。
図31A図30のカニューレの断面図を示し、断面は図30の線31-31に沿って切り取られている。
図31B図1の器具と共に使用するための例示的な代替カニューレの断面図を示す。
図31C図1の器具と共に使用するための別の例示的な代替カニューレの断面図を示す。
図31D図1の器具と共に使用するための更に別の例示的な代替カニューレの断面図を示す。
図32】治療薬の脈絡膜上投与のための方法で用いる例示的な代替縫合糸測定テンプレートの斜視図を示す。
図33】治療薬の脈絡膜上投与のための方法で用いる別の例示的な代替縫合糸測定テンプレートの斜視図を示す。
図34】治療薬の脈絡膜上投与のための別の例示的な代替器具の斜視図を示す。
図35図34の器具の断面斜視図を示し、断面は図34の線35-35に沿って切り取られている。
図36図34の器具の別の断面斜視図を示し、断面は図34の線36-36に沿って切り取られている。
図37図34の器具の本体の断面図を示し、断面は図34の線35-35に沿って切り取られている。
図38図34の器具の駆動アセンブリの部品の分解斜視図を示す。
図39図38の駆動アセンブリのノブ部材の斜視図を示す。
図40図38の駆動アセンブリの主ネジ部材及びナット部材の分解斜視図を示す。
図41図38の駆動アセンブリのクラッチアセンブリの分解斜視図を示す。
図42図34の器具のバルブアセンブリの分解斜視図を示す。
図43図42のバルブアセンブリの断面斜視図を示す。
図44A】バルブアセンブリが第1の状態にある、図42のバルブアセンブリの断面側面図を示す。
図44B】バルブアセンブリが第2の状態にある、図42のバルブアセンブリの断面側面図を示す。
図44C】バルブアセンブリが第3の状態にある、図42のバルブアセンブリの断面側面図を示す。
図45A図34の器具の部分断面側面図を示し、断面は図34の線35-35に沿って切り取られており、図38の駆動アセンブリは非作動状態にある。
図45B図34の器具の部分断面側面図を示し、断面は図34の線35-35に沿って切り取られており、図38の駆動アセンブリは第1の部分作動状態にある。
図45C図34の器具の部分断面側面図を示し、断面は図34の線35-35に沿って切り取られており、図38の駆動アセンブリは第2の部分作動状態にある。
図45D図34の器具の部分断面側面図を示し、断面は図34の線35-35に沿って切り取られており、図38の駆動アセンブリは完全な作動状態にある。
図46A】駆動アセンブリが非作動状態にある、図38の駆動アセンブリの近位部品の部分平面図を示す。
図46B】駆動アセンブリが第1の部分作動状態にある、図38の駆動アセンブリの近位部品の部分平面図を示す。
図46C】駆動アセンブリが第2の部分作動状態にある、図38の駆動アセンブリの近位部品の部分平面図を示す。
図46D】駆動アセンブリが完全な作動状態にある、図38の駆動アセンブリの近位部品の部分平面図を示す。
図47図34の器具と共に使用するための例示的な支持アセンブリの斜視図を示す。
図48図47の支持アセンブリの側平面図を示す。
図49図47の支持アセンブリの別の斜視図を示す。
【0032】
各図面は、いかなる意味においても限定を意図するものではなく、図に必ずしも示していないものを含め、本技術の様々な実施形態を様々な他の方法で実施し得ることが考えられる。本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を成す添付の図面は、本技術のいくつかの態様を示しており、その説明と共に本技術の原理を説明するのに役立つものであるが、本技術は図示される厳密な配置に限定されないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下の本技術の特定例の説明は、本発明の範囲を制限するために使用するべきではない。本技術のその他の例、特徴、態様、実施形態及び利点は、例として、本技術を実施するために想到される最良の形態の1つである以下の説明から、当業者には明らかとなるであろう。理解されるように、本明細書で説明される技術は、全て本技術から逸脱することなく、その他種々の明白な態様が可能である。したがって、図面及び明細書は、制限的なものではなく、例示的な性質のものと見なすべきである。
【0034】
更に理解されることとして、本明細書に記載されている教示、表現、実施形態、実施例などのうちの任意の1つ又は2つ以上は、本明細書に記載されている他の教示、表現、実施形態、実施例などのうちの任意の1つ又は2つ以上と組み合わされてもよい。したがって、以下に述べられる教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して分離して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適当な方法が、当業者には明らかとなろう。かかる改変例及び変形例は、特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0035】
本開示の明瞭さのために、「近位」及び「遠位」という用語は、遠位外科用エンドエフェクタを有する外科用器具を握持する外科医又は他の操作者に対して本明細書で定義される。「近位」という用語は、外科医又は他の操作者により近い要素の位置を指し、「遠位」という用語は、外科用器具の外科用エンドエフェクタにより近く、かつ、外科医又は他の操作者から更に離れた要素の位置を指す。
【0036】
I.スライダー関節接合機構を有する例示的な器具
図1及び図2は、患者の眼に治療薬を脈絡膜上投与する処置で使用するように構成された例示的な器具(10)を示す。器具(10)は、可撓性カニューレ(20)と、本体(40)と、滑動部(60)と、を含む。カニューレ(20)は本体(40)から遠位に延び、ほぼ矩形の断面を有する。カニューレ(20)は、より詳細に後述するように、概して、カニューレ(20)内で滑動可能な針(30)を支持するように構成されている。
【0037】
本実施例では、カニューレ(20)は、商品名PEBAXで製造される場合があるポリエーテルブロックアミド(PEBA)などの可撓性材料を含む。当然ながら、任意の他の好適な材料又は材料の組み合わせを使用することもできる。更に、本実施例では、カニューレ(20)は、約2.0mm×0.8mmの断面外形寸法を有し、長さは約80mmである。あるいは、任意の他の好適な寸法を用いてもよい。
【0038】
より詳細に後述するように、カニューレ(20)は、患者の眼の特定の構造及び輪郭にぴったり一致するのに十分な可撓性を有するが、カニューレ(20)はまた、患者の眼の強膜と脈絡膜との間にカニューレ(20)を座屈することなく前進させるのが可能となるのに十分な柱強度を有する。いくつかの要因がカニューレ(20)の好適な可撓性に寄与し得る。例えば、カニューレ(20)を構成するために使用する材料のジュロメータは、カニューレ(20)の可撓性を少なくともある程度特徴付ける。単なる例として、カニューレ(20)を形成するために用いられる材料は、約27D、約33D、約42D、約46Dのショア硬度、又は任意の他の好適なショア硬度を有し得る。ショア硬度は、約27D~約46Dの範囲内、又はより具体的には約33D~約46Dの範囲内、又はより具体的には約40D~約45Dの範囲内であり得ることを理解されたい。カニューレ(20)の特定の断面形状もまた、カニューレ(20)の可撓性を少なくともある程度特徴付けることができる。加えて、カニューレ(20)内部に配置される針(30)の剛性が、カニューレ(20)の可撓性を少なくともある程度特徴付けることができる。
【0039】
本実施例では、カニューレ(20)の可撓性は、カニューレ(20)の曲げ剛性を算出することによって定量化され得る。曲げ剛性は、弾性率と面積の慣性モーメントとの積により算出される。単なる例として、カニューレ(20)を形成するために使用可能な1つの例示的な材料は、ショア硬度D27、弾性率(E)1.2×10N/m、及び面積の慣性モーメント(I)5.52×10-14を有し得、算出されるx軸周りの曲げ剛性は0.7×10-6Nmとなる。カニューレ(20)を形成するために使用可能な別の例示的な材料は、ショア硬度D33、弾性率(E)2.1×10N/m、及び面積の慣性モーメント(I)5.52×10-14を有し得、算出されるx軸周りの曲げ剛性は1.2×10-6Nmとなる。カニューレ(20)を形成するために使用可能な別の例示的な材料は、ショア硬度D42、弾性率(E)7.7×10N/m、及び面積の慣性モーメント(I)5.52×10-14を有し得、算出されるx軸周りの曲げ剛性は4.3×10-6Nmとなる。カニューレ(20)を形成するために使用可能な別の例示的な材料は、ショア硬度D46、弾性率(E)17.0x10N/m、及び面積の慣性モーメント(I)5.52×10-14を有し得、算出されるx軸周りの曲げ剛性は9.4×10-6Nmとなる。よって、単なる例として、カニューレ(20)の曲げ剛性は、約0.7×10-6Nm~約9.4×10-6Nmの範囲内、又はより具体的には約1.2×10-6Nm~約9.4×10-6Nmの範囲内、又はより具体的には約2.0×10-6Nm~約7.5×10-6Nmの範囲内、又はより具体的には約2.0×10-6Nm~約6.0×10-6Nmの範囲内、又はより具体的には約3.0×10-6Nm~約5.0×10-6Nmの範囲内、又はより具体的には約4.0×10-6Nm~約5.0×10-6Nmの範囲内であり得る。
【0040】
本実施例では、カニューレ(20)の可撓性は、次式によって定量化することも可能である。
【0041】
【数1】
【0042】
上記等式において、曲げ剛性(EI)は、一定の全長(L)を有するカニューレ(20)を設定距離だけ偏倚させ、所定の撓み量(δ)を求めることによって実験的に算出される。次に、そのような撓みに必要な力の量(F)を記録することができる。例えば、そのような方法を用いる場合、カニューレ(20)の全長は0.06mであり得、所与の距離だけ偏倚させることができる。単なる例として、カニューレ(20)を形成するために使用可能な1つの例示的な材料は、0.0155mの撓みを得るために0.0188Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は5.5×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な別の例示的な材料は、0.0135mの撓みを得るために0.0205Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は6.8×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0099mの撓みを得るために0.0199Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は9.1×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0061mの撓みを得るために0.0241Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は1.8×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0081mの撓みを得るために0.0190Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は1.0×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0114mの撓みを得るために0.0215Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は8.4×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0170mの撓みを得るために0.0193Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は5.1×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0152mの撓みを得るために0.0224Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は6.6×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0119mの撓みを得るために0.0183Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は6.9×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0147mの撓みを得るために0.0233Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は7.1×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0122mの撓みを得るために0.0192Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は7.1×10-6Nmとなり得る。カニューレ(20)を形成するために使用可能な更に別の例示的な材料は、0.0201の撓みを得るために0.0201Nの力を必要とし、算出されるx軸周りの曲げ剛性は4.5×10-6Nmとなり得る。よって、単なる例として、カニューレ(20)曲げ剛性は、約1.0×10-6Nm~約9.1×10-6Nmの範囲内であり得る。他の例では、単なる例として、カニューレ(20)の曲げ剛性は、約0.7×10-6Nm~約11.1×10-6Nmの範囲内であり得、又はより具体的には、約2.0×10-6Nm~約6.0×10-6Nmの範囲内であり得ることを理解されたい。
【0043】
針(30)は、カニューレ(20)の曲げ剛性と異なる曲げ剛性を有し得る。単なる例として、針(30)は、弾性率(E)7.9×1010N/m、及び面積の慣性モーメント(I)2.12×10-17を有し、算出されるx軸周りの曲げ剛性が1.7×10-6Nmとなるニチノール材料で形成され得る。単に更なる例として、針(30)の曲げ剛性は、約0.5×10-6Nm~約2.5×10-6Nmの範囲内、又はより具体的には約0.75×10-6Nm~約2.0×10-6Nmの範囲内、又はより具体的には約1.25×10-6Nm~約1.75×10-6Nmの範囲内であり得る。
【0044】
図3及び図4から分かるように、カニューレ(20)は、ほぼ矩形の断面形状を有する。いくつかの実施例では、そのような矩形形状は、カニューレ(20)を患者の眼に挿入するときにカニューレ(20)が回転するのを防止することができる。当然のことながら、そのような特徴は、針(30)がカニューレ(20)から予測方向に出ることができるので、望ましくあり得る。他の実施例では、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、カニューレ(20)は、回転を概ね防ぐことができる任意の他の好適な断面形状を有し得る。
【0045】
カニューレ(20)は3つの内腔(22、24)を画定し、これら内腔は、カニューレ(20)を通って長手方向に延在し、傾斜した遠位端(26)で終端する。具体的には、内腔(22、24)は、2つの側部内腔(22)と1つの中央内腔(24)とを含む。側部内腔(22)はカニューレ(20)の可撓性に寄与する。側部内腔(22)は、傾斜した遠位端(26)で開口しているとして示されているが、いくつかの実施例では、側部内腔(22)は必要に応じて、傾斜した遠位端(26)で閉じられていてもよいことを理解されたい。より詳細に後述するように、中央内腔(24)は、針(30)及び光ファイバ(34)を受容するように構成されている。
【0046】
傾斜した遠位端(26)は、概して、強膜層と脈絡膜層とを分離して、強膜層又は脈絡膜層に外傷を与えずにこれら層の間にカニューレ(20)を進入させることが可能となるように斜面状である。本実施例では、傾斜した遠位端(26)は、本実施例のカニューレ(20)の長手方向軸線に対して約15°の角度で斜面状である。他の実施例では、傾斜した遠位端(26)は、約5°~約50°の範囲内、又はより具体的には約5°~約40°の範囲内、又はより具体的には約10°~約30°の範囲内、又はより具体的には約10°~約20の範囲内の傾斜角度を有し得る。
【0047】
上記のように、針(30)及び光ファイバ(34)は中央内腔(24)内に配置される。具体的には、針(30)を傾斜した遠位端(26)から遠位に進行させることができるように、針(30)は、中央内腔(24)内に滑動可能に配置される。本実施例の光ファイバ(34)は中央内腔(24)内に固定して取り付けられるが、他の実施例では、光ファイバ(34)は、針(30)と同様に、傾斜した遠位端(26)に対して滑動可能であってもよい。
【0048】
針(30)及び光ファイバ(34)は共に、中央内腔(24)内に配設されたガイド部材(36)を通る。ガイド部材(36)は、針(30)を傾斜した遠位端(26)に対して遠位に前進させるときに、針(30)を導くように構成されている。具体的には、本実施例のガイド部材(36)は、針(30)が傾斜した遠位端(26)に対して斜めに前進するように、針(30)をカニューレ(20)の長手方向軸線に沿って導くように構成されている。あるいは、別の実施例では、ガイド部材(36)は、カニューレ(20)の長手方向軸線とは別の経路に沿って針(30)を導くように構成されてもよい。例えば、そのような実施例のガイド部材(36)は、針(30)がガイド部材(36)を通って前進する際に針(30)を湾曲させることができる湾曲状チャネル(図示せず)を含んでもよい。その際、針(30)は、カニューレ(20)の長手方向軸線に対して斜角で配向された経路に沿って進められることができる。単なる例として、ガイド部材(36)は、カニューレ(20)の長手方向軸線に対して約7°~約9°の角度で配向された経路に沿ってカニューレ(20)を出るように針(30)を付勢してもよい。単に更なる例として、ガイド部材(36)は、カニューレ(20)の長手方向軸線に対して約5°~約30°の範囲内、又はより具体的にはカニューレ(20)の長手方向軸線に対して約5°~約20°の範囲内、又はより具体的にはカニューレ(20)の長手方向軸線に対して約5°~約10°の範囲内の角度で配向された経路に沿ってカニューレ(20)を出るように、針(30)を付勢してもよい。ガイド部材(36)はカニューレ(20)に対して別個の部材として示されているが、他の実施例では、ガイド部材(36)はカニューレ(20)と一体であってもよいことを理解されたい。
【0049】
本実施例の針(30)は、より詳細に後述するように、針(30)が患者の眼の組織構造を貫通する際に自己封止する傷を形成するだけ十分に小型でありながら、治療薬を送達する大きさである、ニチノール製皮下注射針を含む。単なる例として、針(30)は、35ゲージ(内径100μm)であり得るが、他の好適なサイズを用いてもよい。例えば、針(30)の外径は、27ゲージ~45ゲージの範囲内、又はより具体的には30ゲージ~42ゲージの範囲内、又はより具体的には32ゲージ~39ゲージの範囲内であり得る。別の単なる例示的な実施例として、針(30)の内径は、約50μm~約200μmの範囲内、又はより具体的には約50μm~約150μmの範囲内、又はより具体的には約75μm~約125μmの範囲内であり得る。
【0050】
図5A及び図5Bから最もよく分かるように、針(30)は鋭利な遠位端を有する。本実施例の遠位端(32)は三斜面形状である。具体的には、いくつかの斜面(31、33、35)が相互に合流して遠位端を形成している。遠位端(32)は、最初に、針(30)の第1の斜面(31)を、針(30)の長手方向軸線(LA)に対して斜角に研削又はレーザー切断することによって形成される。単なる例として、第1の斜面(31)は、針(30)の長手方向軸線(LA)に対して約30°の角度で配向され得る。次に、横方向に対向する一対の第2の斜面(33)が、針(30)の長手方向軸線(LA)に対して斜角で、針(30)に研削又はレーザー切断される。単なる例として、第2の斜面(33)はそれぞれ、針(30)の長手方向軸線(LA)に対して約35°の角度で配向され得る。
【0051】
最後に、一対の第3の斜面(35)が、第1の斜面(31)に対して及び第2の斜面(33)に対して斜角で、針(30)に研削又はレーザー切断される。第2の斜面(33)及び第3の斜面(35)は、第1の斜面(31)の少なくとも一部をそのまま残しながら、第1の斜面(31)の一部に切り込まれるように切断される。斜面(31、33、35)は全て針の遠位端で合流して尖端を形成する。針(30)は皮下注射針であるので、斜面(31、33、35)は、針(30)の遠位端の開口部(37)と交差する。図から分かるように、斜面(31、33、35)が開口部(37)と交差するにつれて、開口部(37)は先細になるので、針(30)の鋭さを更に増大させる更なる切断縁部を形成する。針(30)は特定の数及び配置の斜面(31、33、35)を有するものとして示されているが、他の実施例では、遠位端(32)は任意の他の好適な数の斜面を含んでよい。例えば、遠位端(32)は、単一斜面、2つの斜面、又は3つを超える斜面を含んでよい。単に更なる例として、遠位端(32)は、約5°~約50°の範囲内、又はより具体的には約15°~約40°の範囲内、又はより具体的には約15°~約30°の範囲内、あるいは約25°~約35°の範囲内の角度で形成された斜面を含んでよい。
【0052】
図5C図5Iは、針(30)の代わりに器具(10)と共に使用することができる、いくつかの単に例示的な代替的針(2730、2830、2930、3030、3130、3230、3330、3430)を示す。図5Cから分かるように、1つの単に例示的な代替針(2730)は、Touhy針(2730)であり得る。針(2730)は、わずかに湾曲状である鋭利な遠位端(2732)を含む。針(2730)は更に、遠位端(2732)に開口部(2737)を含む。開口部(2737)は、遠位端(2732)に鋭さをもたらす角度で針(2730)に切り込まれている。
【0053】
図5Dは、針(30)の代わりに器具(10)と共に使用することができる、別の例示的な代替針(2830)を示す。針(2830)は、針(2830)がFranseen針(2830)であることを除いて、前述の針(30)と実質的に同一である。図から分かるように、針(2830)は、4つに分かれた尖端を有する鋭い遠位先端(2832)を備えている。各尖端は、他の尖端に対して対称パターンで配向されている。放物線状の傾斜領域が、各尖端の間に配置されている。これら傾斜領域は、各尖端と共に、流体送達のための開口部(2837)を画定する。
【0054】
図5Eは、針(30)の代わりに器具(10)と共に使用することができる、更に別の代替針(2930)を示す。針(2930)は、針(2830)がWhitacre針(2830)であることを除いて、前述の針(30)と実質的に同一である。図から分かるように、針(2930)は、鋭い円錐形の遠位先端(2932)を備えており、遠位先端(2937)の近位には側部開口部(2937)が配設されている。遠位先端(2932)は、前述の傾斜角度と同様の、組織を穿孔するのに適した任意の角度で傾斜させることができる。開口部(2937)は、遠位先端(2932)の近位の任意の好適な距離にあってよい。
【0055】
図5Fは、針(30)の代わりに器具(10)と共に使用することができる、更に別の代替針(3030)を示す。針(3030)は、針(3030)がCournand針(3030)であることを除いて、前述の針(30)と実質的に同一である。図から分かるように、針(3030)は、傾斜縁部によって画定された開口部(3037)を有する鋭い遠位先端(3032)を備えている。傾斜縁部は、2つの異なる傾斜面、つまり近位面及び遠位面を形成する。各傾斜面は異なる傾斜角度を有する。例えば、近位面は、針(3030)の長手方向軸線に対して概して小角度で傾斜している一方で、遠位面は、針(3030)の長手方向軸線に対して概して大角度で傾斜している。本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、これら面は、任意の好適な角度で傾斜していてよいことを理解されたい。
【0056】
図5Gは、針(30)の代わりに器具(10)と共に使用することができる、更に別の代替針(3130)を示す。針(3130)は、針(3130)がMengini針(3130)であることを除いて、前述の針(30)と実質的に同じである。図から分かるように、針(3130)は、傾斜した縁部によって画定された開口部(3137)を有する鋭い遠位先端(3132)を備えている。傾斜縁部は、傾斜縁部の一方からもう一方に向かって連続的に調節される傾斜角度を有する。例えば、傾斜縁部は、最初に、針(3130)の長手方向軸線に垂直な平面に沿って針(3130)を切断する。傾斜縁部が下向きに延びるにつれて、傾斜縁部は、針(3130)の長手方向軸線と次第に平行になっていく平面で針(3130)を切断する。
【0057】
図5Hは、針(30)の代わりに器具(10)と共に使用することができる、更に別の代替針(3230)を示す。針(3230)は、針(3230)がバックカットベベル針(3230)であることを除いて、前述の針(30)と実質的に同じである。図から分かるよう、針(3230)は、上部斜面によって画定された開口部(3237)を有する鋭い遠位先端(3232)を備えている。遠位先端(3232)はまた、針(3230)の下面に2つの対向する斜面を含み、これらは先端斜面と交差し、それによって鋭い遠位先端(3232)を形成する。
【0058】
図5Iは、針(30)の代わりに器具(10)と共に使用することができる、更に別の代替針(3330)を示す。針(3330)は、針(3330)がDos Santos針(3330)であることを除いて、前述の針(30)と実質的に同じである。図から分かるように、針(3330)は、平坦な斜面を有する鋭い遠位先端(3332)を備えている。針(3330)は、遠位先端の近位側に配設された2つの開口部(3337)を更に含み、これら開口部(3337)は、針(3330)からの流体を連通させるように構成されている。斜面は、前述の傾斜角度と同様に、組織を穿孔するのに適した角度で傾斜させることができる。本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、開口部(3337)は、遠位先端(3332)から近位側の任意の好適な距離にあってよい。
【0059】
本実施例の光ファイバ(34)は、ポリイミド被覆された石英ガラスの単一光ファイバストランドである。光ファイバ(34)は単一光ファイバストランドであるとして本明細書に記載されるが、他の実施例では、光ファイバ(34)は複数のファイバからなり得ることを理解されたい。更に、光ファイバ(34)は、サファイア若しくはフッ化物ガラス、プラスチックなどの任意の好適な材料、及び/又は任意の他の好適な材料からなってもよい。より詳細に後述するように、光ファイバ(34)は、概して、患者の眼の内部に針(30)及び/又はカニューレ(20)を位置決めするのを補助するために、針(30)のすぐ前の領域を照射するように構成されている。光ファイバ(34)はあくまで任意であり、他の実施例では、光ファイバ(34)は省略されてもよいことを理解されたい。
【0060】
図1図2に戻って参照すると、本体(40)は、概して、湾曲した遠位端を有する細長い矩形として成形されている。図示されている本体(40)の特定の形状は、操作者によって把持されるように構成されている。あるいは、より詳細に後述するように、本体(40)は、器具(10)の位置決めを容易にするために、支援装置又はロボットアームに取り付けられてもよい。
【0061】
図2から最もよく分かるように、本体(40)の内部は、カニューレ取付部材(42)、ブッシング(44)、及び針前進部材(46)を含む。カニューレ取付部材(42)は、カニューレ(20)の近位端を本体(40)に固定して取り付け、それによりカニューレ(20)は本体(40)に対して回転又は並進できなくなる。上記のように、針(30)は、カニューレ(20)内部に滑動可能に配置される。針(30)の近位部分は、本体(40)を通り、かつブッシング(44)を通って延在し、前進部材(46)内で終端する。ブッシング(44)は、針(30)を本体(40)の残りの部分から分離するように構成されている。いくつかの実施例では、ブッシング(44)は、支援装置又は任意のその他の強磁性面に対するブッシング(busing)(44)の選択的な取り付けを可能にするために、磁化されてもよい。
【0062】
針前進部材(46)は、ブッシング係合部(48)及び本体係合部(50)を含む。ブッシング係合部(48)は、ブッシング(44)に対してブッシング係合部(48)を位置付けるように、ブッシング(44)の近位端に滑動可能に係合する。本体係合部(50)は、本体(40)に対して前進部材(46)を位置付けるように、本体(40)の内側に滑動可能に係合する。より詳細に後述するように、本体係合部(50)は、本体(40)の近位端を通って更に延在して、作動アセンブリ(60)に取着する。本体(40)及び前進部材(46)は、前進部材(46)が本体(40)に対して回転するのを防止するが、前進部材(46)が本体(40)に対して並進するのを可能にするように構成された、1組又は2組以上の相補的な機構を更に含んでもよい。相補的な機構としては、キーとキー溝、ピンとスロット、六角形機構等を挙げることができる。
【0063】
本実施例では、本体係合部(50)は、本体係合部(50)内に配設される流体連結部材(図示せず)を含む。具体的には、針(30)がブッシング係合部(48)を通って、本体係合部(50)の流体連結部材まで近位に延びることができるように、ブッシング係合部(48)は中空、すなわち内腔を備えていてもよい。より詳細に後述するように、本体係合部(50)の流体連結部材は、針(30)を供給管(64)に連結させて、供給管(64)が針(30)の内腔と流体連通するようにする。加えて、本体係合部(50)の流体連結部材は、針(30)を本体係合部(50)に連結させて、針(30)が本体(40)及びカニューレ(20)を通って前進できるようにする。単なる例として、流体連結部材は、針の近位端の周囲にオーバーモールドされた機構を含んでもよく、この機構は、螺合、締まり嵌め、溶接、接着剤などによって本体係合部に固定される。流体連結部材が取ることができる様々な好適な形態は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0064】
作動アセンブリ(60)は、作動部材(62)と係止部材(66)とを含む。作動部材(62)は、前進部材(46)の本体係合部(50)の近位端に固定される。本実施例では、作動部材(62)は、前進部材(46)の本体係合部(50)と一体であるが、前進部材(46)と本体係合部(50)は任意のその他の好適な手段で連結されてもよい。作動部材(62)の形状は、操作者によって把持されるように構成されている。より詳細に後述するように、作動部材(62)は、本体(40)に対して並進して本体(40)内の前進部材(46)を作動させ、それによって、針(30)をカニューレ(20)を通して遠位に前進させるように構成されている。更により詳細に後述するように、いくつかの変形形態では、これに加えて作動部材(62)を本体(40)に対して回転させてもよい。
【0065】
本実施例では、作動部材(62)は、作動部材(62)を通って長手方向に延在する内腔(図示せず)を含んでいる。作動部材(62)の内腔は、供給管(64)を受容するように構成されている。具体的には、供給管(64)は、本体係合部(50)の流体連結部材に接続し、本体係合部(50)を通って近位に延び、作動部材(62)を通って近位に延び、作動部材(62)の近位端から近位に延出する。よって、供給管(64)は、作動部材(62)を通って針(30)に至る導管を画定し、その結果、流体は、供給管(64)を介しかつ針(30)を通って注入部位に注入されることができる。本実施例では、供給管(64)の近位端は、注射器、自動若しくは半自動注入器、又は任意のその他の好適な流体源などの流体源に接続される。供給管(64)の近位端は、供給管(64)が流体源と取り外し可能に連結されるようにする、ルアー取付具及び/又は任意のその他の好適な種類の取付具を含むことができることを理解されたい。
【0066】
係止部材(66)は、本体(40)と作動部材(62)との間において、本体係合部(50)に着脱可能に取り付け可能である。より詳細に後述するように、係止部材(66)は、本体(40)と作動部材(62)との間の空間を埋めて、作動部材(62)が本体(40)に対して遠位に前進するのを防止する。しかしながら、作動部材(62)が本体(40)に対して遠位に前進するのを選択的に可能にするために、係止部材(66)を取り外すことができる。
【0067】
図6図8は、器具(10)の例示的な作動を示す。具体的には、図6から分かるように、針(30)は最初、カニューレ(20)の中に後退しており、係止部材(66)は、本体(40)と作動部材(62)との間に位置付けられ、それによって作動部材(62)の前進が防止される。より詳細に後述するように、器具(10)がこの構成にあるときに、カニューレ(20)を患者の眼の内部に位置付けることができる。
【0068】
カニューレ(20)を患者の眼の内部に位置付けた後、操作者が針(30)をカニューレ(20)に対して前進させることを所望する場合がある。図7から分かるように、針(30)を進めるために、操作者はまず、器具(10)から離れる方向に係止部材(66)を引っ張ることによって、係止部材(66)を取り外す。係止部材(66)を取り外したら、作動部材(62)を本体(40)に対して移動又は並進させて、針(30)をカニューレ(20)に対して前進させることができる。本実施例の作動部材(62)は、針(30)を並進させるように構成されているに過ぎず、針(30)を回転させるようには構成されていない。他の実施例では、針(30)を回転させるのが望ましい場合がある。したがって、代替実施例は、針(30)を回転させかつ並進させる機構を作動部材(62)に含ませてもよい。
【0069】
本実施例では、作動部材(62)を前進させて図8に示すように本体(40)と接触させることは、針(30)が患者の眼の内部に一定量貫通する位置まで針(30)をカニューレ(20)に対して前進させることに対応する。換言すれば、器具(10)は、針(30)を患者の眼の内部に適切に位置付けるために、操作者は、作動部材(62)を前進させて本体(40)と接触させるだけでよいように構成されている。いくつかの実施例では、カニューレ(20)に対する針(30)の所定の前進量は、約0.25mm~約10mm、又はより具体的には約0.1mm~約10mmの範囲内、又はより具体的には約2mm~約6mmの範囲内、又はより具体的には約4mmまでである。別の実施例では、作動部材(62)と本体(40)との接触は、カニューレ(20)に対する針(30)の最大前進量以外は特に重要な意味をもたなくてもよい。その代りに、器具(10)は、針(30)がカニューレ(20)に対してある所定の距離まで進められた時点を操作者に表示するための特定の触覚フィードバック機構を備えていてもよい。したがって、操作者は、器具上の表示部の直接可視化に基づいて及び/又は器具(10)からの触覚フィードバックに基づいて、患者の眼の中への針(30)の所望の貫通深度を決定することができる。当然ながら、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、そのような触覚フィードバック機構を本実施例と組み合わせてもよい。
【0070】
II.例示的な支持アセンブリ
図9図12は、前述の器具を構造的に支持するために使用することができる代表的な支持アセンブリ(110)を示す。支持アセンブリ(110)は、概して、操作者が器具(10)をその上に取り外し可能に連結することができる、選択的に可動である支持表面を提供するように構成されている。支持アセンブリ(110)は、フレックスアーム(112)と、回転アセンブリ(120)と、を含む。フレックスアーム(112)は概して可鍛性の材料からなり、これにより、操作者は、曲げ力が取り除かれた後にフレックスアーム(112)が維持できる位置までフレックスアーム(112)を所望通りに曲げることができる。単なる例として、フレックスアーム(112)は、可鍛性プラスチック又は金属棒などの可鍛性のある中実管を含み得る。他の実施例では、フレックスアーム(112)は、金属又はプラスチックの中空コイルからなってもよい。当然ながら、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、フレックスアーム(112)は、任意の他の好適な材料からなってもよく、又は任意の他の好適な構成を有してもよい。
【0071】
フレックスアーム(112)特有の構造に関わらず、フレックスアーム(112)は、下端部(114)と上端部(116)とを含む。図示されていないが、いくつかの実施例では、下端部(114)は、手術台又は外科的処置で使用するその他の構造体に支持アセンブリ(110)を取り付けるのを可能にすることができる、締め具、ブラケット、又はその他の取り付け機構を有してもよいことを理解されたい。単なる例として、下端部(114)は、眼科手術で用いられる従来のリストレストに下端部(114)を選択的に固定するように構成された1つ又は2つ以上の機構を含んでもよい。
【0072】
上端部(116)は回転アセンブリ(120)に固定して取り付けられる。図10から最もよく分かるように、フレックスアーム(112)の上端部(116)は、ネジ付き溶接スタッド(118)によって回転アセンブリ(120)に固定して取り付けられる。具体的には、ネジ付き溶接スタッド(118)は、回転アセンブリ(120)の基部(122)及びフレックスアーム(112)の上端部(116)の内半径に切り込まれたネジ山に係合する。本実施例では、基部(122)は、フレックスアーム(112)及びネジ付き溶接スタッド(118)に対して回転するように構成されている。あるいは、基部(122)は、フレックスアーム(112)に対して回転する能力を有さずに、フレックスアーム(112)に締結されているだけでもよい。基部(122)は、クランプスリーブ(124)及び連結棒(126)を受容するように構成されている。具体的には、クランプスリーブ(124)は連結棒(126)を受容するように構成されて、概して、クランプスリーブ(124)がフレックスアーム(112)の上端部(116)に対して直交位置を維持できるようにすると同時に、クランプスリーブ(124)がクランプスリーブ(124)の長手方向軸線を中心に回転できるようにする。図から分かるように、クランプスリーブ(124)は、バネ(125)を受容するように構成された穴(123)を含む。より詳細に後述するように、バネ(125)は、クランプスリーブ(124)を基部(122)から離れる方向に押すことによって、ワッシャ(128)と、連結棒(126)の対向する端部にある穴(図示せず)と、の間に圧縮力を生じさせる。
【0073】
回転アセンブリ(120)は、合わせくぎ(132)によって支持されるクレードル(130)を更に含む。合わせくぎ(132)は、クランプスリーブ(124)の穴及び連結棒(126)の穴(図示せず)を貫通する。連結棒(126)はバネ(125)と一緒になって、クランプスリーブ(124)及び合わせくぎ(132)を圧縮状態にする。この圧縮力は、圧縮スリーブ(124)及び合わせくぎ(132)の位置を概ね維持するのに十分なだけ強いが、操作者が作用させたときに圧縮スリーブ(124)及び/又は合わせくぎ(132)の回転を可能にするのに十分なだけ弱い。クレードル(130)は、上述の器具(10)を受容するように構成された陥凹部(132)を含む。加えて、クレードル(130)は、陥凹部(132)に隣接してクレードル(130)に埋め込まれた磁石(134)を含む。上述のブッシング(busing)(44)と同様の磁石のブッシングを備えた器具(10)の実施例では、磁石(134)は、器具(10)をクレードル(130)に取り外し可能に連結するように機能し得る。
【0074】
支持アセンブリ(110)の代表的な使用においては、支持アセンブリ(110)の構成要素は、図11に2点鎖線で示す軸を中心に回転させることができる。具体的には、フレックスアーム(112)の長手方向軸線を中心にクレードル(130)を軌道運動させるように、支持アセンブリ(110)を操作することができる。同様に、クランプスリーブ(124)の長手方向軸線を中心にクレードル(130)を軌道運動させるように、支持アセンブリ(110)を操作することができる。最後に、合わせくぎ(132)の長手方向軸線を中心にクレードル(130)を回転させるように、支持アセンブリ(110)を操作することができる。フレックスアーム(112)の可鍛性に加えて、支持アセンブリ(110)の構成要素の回転可能性により、クレードル(130)を患者に対して様々な所望の位置に移動させることが可能となる。
【0075】
例示に過ぎない1つの使用では、最初にクレードル(130)を患者に対して所望の位置に移動させてもよい。次に、器具(10)を、図12に示すようにクレードル(130)内に配置してもよい。あるいは、別の代表的な使用では、最初に器具(10)をクレードル(130)内に配置した後、クレードル(130)と器具(10)を一緒に移動させてもよい。支持アセンブリ(110)を器具(10)と併せて使用することができる他の好適な方法は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0076】
III.例示的な縫合糸測定テンプレート
より詳細に後述するように、図13は、治療薬を脈絡膜上腔送達するための方法で用いる代表的な縫合糸測定テンプレート(210)を示す。概して、テンプレート(210)は、患者の眼に押圧されて、患者の眼の上に特定のパターンの色素をスタンプするように構成されている。患者(patent)の眼にテンプレート(210)を押圧することへの本明細書における言及は、必ずしも限定するものではないが、(例えば、結膜を剥がすか、ないしは別の方法でずらした後に)強膜(304)表面にテンプレート(210)を直接押圧することを含み得ることを理解されたい。テンプレート(210)は、剛性本体(220)と、剛性シャフト(240)と、を含む。より詳細に後述するように、本体(220)が患者の眼の少なくとも一部に押し付けられる又はその上に定置され得るように、本体(220)は、概して、患者の眼の曲率と一致する輪郭とされている。本体(220)は、上方ガイド部(222)と、本体(220)の対眼面(224)から遠位に延出する複数の突出部(230)と、を含む。
【0077】
上方ガイド部(222)の形状はほぼ半円形であり、本体(220)の上部に配設される。上方ガイド部(222)の半円形状は、患者の眼の縁の曲率に対応する半径を有する。換言すれば、上方ガイド部(222)は、患者の眼球の曲率半径に対応する第1の半径に沿って近位に、かつ患者の眼の縁の曲率半径に対応する第2の半径に沿って下向きに(シャフト(240)の長手方向軸線に向かって)湾曲している。より詳細に後述するように、上方ガイド部(222)は、テンプレート(210)を患者の眼の縁に対して適切に位置付けるために使用され得る。したがって、テンプレートによって患者の眼の上に沈着され得るあらゆる着色は、患者の眼の縁に対して位置付けられ得る。
【0078】
突出部(230)は、上方ガイド部(222)から所定距離離間して配置される。具体的には、突出部(230)は、以下に記載する方法の実施中に使用する関連した印に対応し得るパターンを形成する。本実施例の突出部(230)は、4つの縫合糸ループ突出部(230a~230h)と、2つの強膜切開突出部(230i、230j)と、を含む。縫合糸ループ突出部(230a~320h)及び強膜切開突出部(230i、230j)は、本体(220)から外向きに等距離延出しており、これら突出部(230)は全体として、本体(220)によって画定された曲率を維持するようになっている。換言すれば、突出部(230a~230j)の先端は全て、患者の眼球の曲率半径を補完する曲率半径によって画定された曲面に沿っている。突出部(230a~230j)を、強膜又は患者の眼の他の部分に損傷を与えることなく、目に押圧することができるように、突出部(230a~230j)の先端には丸みが付けられており、非外傷性である。
【0079】
シャフト(240)は本体(220)から近位に延びている。シャフト(240)は、操作者がテンプレート(210)を把持して本体(220)を操作するのを可能にするように構成されている。本実施例では、シャフト(240)は本体(220)と一体である。他の実施例では、シャフト(240)は、螺合連結又は機械的スナップ嵌めなどの機械的締結手段によって、本体に選択的に取り付け可能であってもよい。いくつかの変形形態では、操作者は、シャフト(240)と複数の本体(220)とを含むキットを提示されてもよい。本体(220)は、異なる曲率半径を有する異なる眼球に対応する異なる曲率を有し得る。よって、操作者は、手術(operator)の前に特定の患者の解剖学的構造に基づいて、キットから適切な本体(220)を選択することができる。次いで操作者は、選択した本体(220)をシャフト(240)に固定することができる。図示してはいないが、シャフト(240)の近位端は、操作者がシャフト(240)をより簡単に把持できるように、T字形グリップ、ノブ、又はその他の把持機構を付加的に含んでもよいことを理解されたい。
【0080】
代表的な使用では、縫合糸ループ突出部(232)及び強膜切開突出部(234)はそれぞれ、後述する方法の特定の部分に対応する。具体的には、後述する方法の前又は最中に、操作者は、突出部(230)を色素又はインクパッド(250)に押し付けることによって、色素又はインクをブラシで突出部(230)に付けることによって、あるいは別の方法で色素又はインクを突出部(230)に適用することによって、突出部(230)を生体適合性色素又はインクでコーティングすることができる。突出部(230)が色素又はインクを受容したら、より詳細に後述するように、操作者は、テンプレート(210)の突出部(230)を患者の眼に押し付けることによって、患者の眼に印を付けることができる。テンプレート(210)を患者の眼から取り除いた後、突出部からの色素は目に付着したままとなって、目的の特定点に印を付けることができる。
【0081】
IV.治療薬を脈絡膜上腔送達するための例示的な方法
図14A図17Cは、前述の器具(10)を使用して治療薬を脈絡膜上腔送達するための代表的な処置を示す。単なる例として、本明細書に記載する方法は、黄斑変性症及び/又はその他の眼症状を治療するために採用され得る。本明細書に記載する処置は、加齢に伴う黄斑変性症の治療との関連において論じられているが、かかる限定を意図又は意味するものではないことを理解すべきである。例えば、いくつかの単に例示的な代替手順では、本明細書に記載されるものと同じ技術を用いて、網膜色素変性、糖尿病性網膜症、及び/又はその他の眼症状を治療することができる。加えて、本明細書に記載する処置は、加齢に伴うドライ型黄斑変性症又はウェット型黄斑変性症のいずれの治療にも用いることができることを理解されたい。
【0082】
図14Aから分かるように、処置は、操作者が開瞼器(312)、及び/又は固定化に好適なその他の器具を使用して、患者の眼(301)の周囲組織(例えば、眼瞼)を固定化することによって開始する。本明細書では固定化を眼(301)の周囲組織に関して記述しているが、眼(301)自体は自由に動くことができるままであってよいことを理解されたい。眼(301)の周囲組織が固定化されたら、瞳孔を介して眼(301)の内部を見るときに眼球内を照らすために、アイシャンデリアポート(314)が眼(301)に挿入される。本実施例では、上側頭四分円強膜切開を行うことができるように、アイシャンデリアポート(314)は下内側四分円内に位置付けられる。図15Aから分かるように、アイシャンデリアポート(314)は、光を眼の内側(314)に向けて導いて(例えば、黄斑の少なくとも一部を含む)網膜の少なくとも一部を照らすように位置付けられる。当然のことながら、そのような照射は、治療薬の送達の標的とされる眼(301)の領域に対応する。本実施例では、この段階で挿入されているのはシャンデリアポート(314)だけであり、光ファイバ(315)はまだポート(314)に挿入されていない。いくつかの他の変形形態では、この段階で光ファイバ(315)をシャンデリアポート(314)に挿入してもよい。いずれの場合にも、標的部位に対するアイシャンデリアポート(314)の適切な位置決めを確認するために、顕微鏡を任意に利用して眼を目視検査することができる。いくつかの実施例では、標的領域は、レチナール色素沈着の相対的欠如によって識別され得る。図14Aはアイシャンデリアポート(314)の特定の位置決めについて示しているが、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、アイシャンデリアポート(314)は任意のその他の位置付けがあってもよいことを理解されたい。
【0083】
アイシャンデリアポート(314)を位置付けたら、結膜のフラップを切開しフラップを後側に引っ張ることによって結膜を切開することにより、強膜(304)にアクセスすることができる。かかる切開が完了した後、出血を最小限に抑えるために、必要に応じて、焼灼用具を使用して強膜(304)の露出面(305)を白化(blanch)してもよい。かかる結膜の切開が完了した後、必要に応じて、WECK-CEL又はその他の好適な吸収装置を使用して、強膜(304)の露出面(305)を乾燥させてもよい。次に、上述したテンプレート(210)を使用して眼(301)に印を付けることができる。図14Bから分かるように、テンプレート(210)は眼(301)の縁と整列するように位置付けられる。操作者はテンプレート(210)に軽く力を加えて、眼(301)に色素を塗布することができる。次に、テンプレート(210)を除去し、図14Cから分かるように、強膜(304)の露出面(305)に色素が付着した状態にして、操作者に視覚的ガイド(320)を提供する。次に、操作者は、視覚的ガイド(320)を使用して縫合糸ループアセンブリ(330)を取り付け、強膜切開を行うことができる。視覚的ガイド(320)は、縫合糸ループマーカー(321、322、323、324、325、326、327)一式と、一対の強膜切開マーカー(329)と、を含む。
【0084】
図14Dは、完成した縫合糸ループアセンブリ(330)を示す。より詳細に後述するように、縫合糸ループアセンブリ(330)は、概して、器具(10)のカニューレ(20)を強膜切開を通して眼(301)の中まで誘導するように構成されている。図16A図16Eは、図14Dに示す縫合糸ループアセンブリ(330)などの縫合糸ループアセンブリ(330)を取り付けるための代表的な手順を示す。具体的には、図16Aから分かるように、湾曲針(333)を使用して、第1の縫合糸ループマーカー(321)の位置で縫合糸(332)を眼(301)に通す。次に、縫合糸(332)を、第2の縫合糸ループマーカー(322)を通して眼(301)の外に導く。こうして、縫合糸(332)を、第1の縫合糸ループマーカー(321)と第2の縫合糸ループマーカー(322)との間にしっかりと固定する。次いで、縫合糸(332)を、第3と第4の縫合糸ループマーカー(323、324)の間、第5と第6の縫合糸ループマーカー(325、326)の間、及び第7と第8の縫合糸ループマーカー(327、328)の間に、同様にしっかりと固定する。
【0085】
上記のように縫合糸(332)をしっかりと固定すると、縫合糸(332)は、図16Bに示す構成を形成する。図から分かるように、縫合糸(332)は、2つの遊端部(334)、2つのガイドループ(336)、及び1つの戻りループ(338)を形成するように構成されている。図16Cから分かるように、遊端部(334)は、操作者が遊端部(334)を把持できるように結ばれてもよい。同様に、図16D及び図16Eにおいて見て取れるように、戻りループ(338)を使用して第2の縫合糸(339)を取り付けて、操作者が戻りループ(338)を把持できるようにしてもよい。遊端部(334)及び第2の縫合糸(339)は、処置の全体を通じて眼(301)を安定させるのを助けるために用いることができることを理解されたい。あるいは、遊端部(334)及び第2の縫合糸(339)は、眼(301)から離れる方向に位置付けられる又は縛られるだけであってもよい。より詳細に後述するように、ガイドループ(336)を使用して、器具(10)のカニューレ(20)を強膜切開に通して誘導し、それによって、カニューレ(20)が強膜切開を通って脈絡膜上腔に入るときに、カニューレ(20)が接線角度で入るのを確実に助け、それによって、カニューレ(20)が脈絡膜(306)に外傷を与える危険性を低減することができる。
【0086】
縫合糸ループアセンブリ(330)を眼(301)に取り付けたら、眼(301)の強膜切開を行うことができる。図14Eにおいて見て取れるように、従来の外科用メス(313)又は他の好適な切断用器具を使用して、強膜切開マーカー(329)の間で眼(301)を切断する。強膜切開マーカー(329)は2つの分離しているドットを含むとして示されているが、他の実施例では、マーカー(329)は、実線、点線、又は破線などの任意の他の種類の印を含み得ることを理解されたい。強膜切開処置により、眼(301)の強膜(304)を通る小切開(316)が形成される。図15Bから最もよく分かるように、強膜切開は、脈絡膜(306)の穿孔を回避するように特に注意して行われる(preformed)。こうして、強膜切開処置により、強膜(304)と脈絡膜(306)との間の空間へのアクセスが提供される。眼(301)に切開(316)が形成されたら、強膜(304)を脈絡膜(306)から局所的に分離するため、必要に応じて鈍的切開を行ってもよい。本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、そうした切開は、先端の鈍い小さな細長い器具を使用して行うことができる。
【0087】
強膜切開処置を行ったら、操作者は、器具(10)のカニューレ(20)を、切開(316)を介して強膜(304)と脈絡膜(306)との間の空間に挿入することができる。図14Fから分かるように、カニューレ(20)は、縫合糸ループアセンブリ(330)のガイドループ(336)を通って切開(316)の中まで導かれる。上記のように、ガイドループ(336)はカニューレ(20)を安定させることができる。加えて、ガイドループ(336)は、カニューレ(20)を切開(316)に対して概ね接線配向に保持する。かかる接線配向は、切開(316)を介してカニューレ(20)を誘導する際の外傷を低減して、カニューレ(20)を安定させ、かつ周辺組織に損傷を加えるのを防止することができる。ガイドループ(336)を通してカニューレ(20)を切開(316)に挿入する際に、カニューレ(20)を非外傷性経路に沿って更に誘導するために、操作者は鉗子又はその他の器具を使用してもよい。当然ながら、鉗子又はその他の器具の使用はあくまでも任意であり、いくつかの実施例では省略されてもよい。図示してはいないが、いくつかの実施例では、カニューレ(20)は、様々な挿入深度を示すために、1つ又は2つ以上のマーカーをカニューレ(20)の表面上に含んでもよいことを理解されたい。あくまでも任意であるが、そのようなマーカーは、カニューレ(20)が非外傷性経路に沿って誘導されるときに、操作者が適切な挿入深度を特定するのを助けることが望ましくあり得る。例えば、操作者は、ガイドループ(336)及び/又は切開(316)に対するそのようなマーカーの位置を、カニューレ(20)が眼(301)に挿入される深さの標示として、目視で観察できる。単なる例として、1つのそうしたマーカーは、カニューレ(20)の挿入深度約6mmに対応し得る。
【0088】
カニューレ(20)が少なくとも部分的に眼(301)に挿入されたら、操作者は、この時点ではまだファイバ(315)が挿入されていないアイシャンデリアポート(314)に、光ファイバ(315)を挿入することができる。アイシャンデリアポート(314)が適所にあり、光ファイバ(315)と組み付けられた状態で、操作者は、光ファイバ(315)を通して光を導いて眼(301)を照射し、それによって眼(301)の内部を可視化することによって、アイシャンデリアポート(314)を作動させることができる。網膜(308)の地図状萎縮領域に対する適切な位置決めが確実となるように、カニューレ(20)の位置決めの更なる調整を必要に応じてこの時点で行ってもよい。場合によっては、操作者は、瞳孔を介した眼(301)の内部の可視化を最適化するために、縫合糸(334、339)を引っ張るなどして眼(301)を回転させて、眼(301)の瞳孔を操作者に向けること望む場合がある。
【0089】
図14G及び図15C図15Dは、強膜(304)と脈絡膜(306)との間を誘導されて治療薬の送達部位まで達したときのカニューレ(20)を示す。本実施例では、送達部位は、網膜(308)の地図状萎縮領域に隣接する、眼(301)の概ね後方領域に対応する。具体的には、本実施例の送達部位は、黄斑の上側の、神経感覚網膜と網膜色素上皮層との間の潜在的空間内である。図14Gは、眼(301)の瞳孔を介して方向付けられた顕微鏡により直接可視化された眼(301)を示しており、照明はファイバ(315)及びポート(314)を介して提供されている。図から分かるように、カニューレ(20)は、眼(301)の網膜(308)及び脈絡膜(306)を通して少なくとも部分的に視認可能である。よって、カニューレ(20)が図15Cに示す位置から図15Dに示す位置まで眼(301)を通して進められるときに、操作者はカニューレ(20)を追跡することができる。光ファイバ(34)を使用し、カニューレ(20)の遠位端を介して可視光を出射する変形形態では、この追跡を強化することができる。
【0090】
図15Dに示すようにカニューレ(20)を送達部位まで前進させたら、操作者は、図6図8に関して前述したように器具(10)の針(30)を前進させることができる。図14H図14I図15E、及び図17Aから分かるように、針(30)は、針(30)は、網膜(308)を穿孔することなく脈絡膜(306)を貫通するように、カニューレ(20)に対して進められる。図14Hから分かるように、脈絡膜(306)を貫通する直前、針(30)は、直接可視化下では、脈絡膜(306)の表面を「テンティング」しているように見える。換言すれば、針(30)は、脈絡膜を上向きに押して脈絡膜(306)を変形させることができ、テントの屋根を変形させるテントの支柱と同様の外観となる。操作者は、そうした視覚事象を用いて、脈絡膜(306)が穿孔されようとしているかどうかを特定したり、任意の最終的な穿孔位置を特定したりすることができる。「テンティング」を開始し、続いて脈絡膜(306)を穿孔するのに十分な針(30)前進の特定量は、患者の全体的な解剖学的構造、患者の部分的な解剖学的構造、操作者の好み、及び/又はその他の要因などであるがこれらに限定されない多くの要因によって決定される得る任意の好適な量であってよい。上記のように、針(30)前進の単に例示的な範囲は、約0.25mm~約10mm、又はより具体的には約2mm~約6mmであり得る。
【0091】
本実施例では、前述のテンティング効果を可視化することによって、針(30)が適切に進められたことを操作者が確認した後、操作者は、針(30)がカニューレ(20)に対して前進したときに平衡塩類溶液(BSS)又は他の同様の溶液を注入する。そのようなBSSは、針(30)が脈絡膜(306)を通って進められたときに、針(30)の前に先行ブレブ(leading bleb)(340)を形成し得る。先行ブレブ(340)は2つの理由から望ましくあり得る。1つ目は、図14I図15F、及び図17Bに示すように、先行ブレブ(340)は、針(30)が送達部位に適切に位置付けられた時点を表す更なる視覚的表示を操作者に提供し得る。2つ目に、先行ブレブ(340)は、針(30)が脈絡膜(306)を貫通したら、針(30)と網膜(308)との間のバリアを提供し得る。そのようなバリアは、網膜壁を外向きに押し(図15F及び図17Bにおいて最もよく見られるように)、それによって、針(30)を送達部位に前進させる際に網膜穿孔する危険性を最小限にすることができる。いくつかの変形形態では、針(30)から先行ブレブ(340)を送り出すために、フットペダルを作動させてもよい。あるいは、針(30)から先行ブレブ(340)を送り出すために使用可能な他の好適な機構が、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0092】
図14I図15F、及び図17Bから分かるように、操作者が先行ブレブ(340)を可視化したら、操作者はBSSの注入を中止して、流体のポケットが残された状態にすることができる。次に、器具(10)に関して上述したように注射器又はその他の流体送達装置を作動させることによって、治療薬(341)を注入することができる。送達される特定の治療薬(341)は、眼症状を治療するように構成された任意の好適な治療薬であってよい。いくつかの単に例示的な好適な治療薬としては、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、小分子又は大分子を有する薬剤、治療用細胞溶液、特定の遺伝子治療溶液、及び/又は任意のその他の好適な治療薬を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。単なる例として、治療薬(341)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2008年8月19日発行の「Treatment of Retinitis Pigmentosa with Human Umbilical Cord Cells」と題する米国特許第7,413,734号の教示の少なくともいくつかに従って提供され得る。
【0093】
本実施例では、送達部位に最終的に送達される治療薬(341)の量は約50μLであるが、任意の他の好適な量を送達してもよい。いくつかの変形形態では、針(30)から剤(341)を送り出すために、フットペダルを作動させる。あるいは、針(30)から剤(341)を送り出すために使用することができる他の好適な機構が、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。図14J図15G、及び図17Cから分かるように、治療薬(341)の送達は、流体ポケット(340、341)の膨張によって可視化させることができる。図のように、治療薬(341)が脈絡膜上腔に注入されると、治療薬(341)は先行ブレブ(340)の流体と本質的に混和する。
【0094】
送達が完了したら、作動アセンブリ(60)を本体(40)に対して近位に滑動させることによって、針(20)を後退させ、次に、カニューレ(30)を眼(301)から引き抜くことができる。針(20)のサイズにより、針(20)が脈絡膜(306)を貫通した部位は自己封止するので、脈絡膜(306)を通った送達部位を封止するための更なる工程を行う必要はないことを理解されたい。縫合糸ループアセンブリ(330)及びシャンデリア(314)は取り外すことができ、強膜(304)の切開(316)は、任意の好適な従来技術を用いて閉じることができる。
【0095】
上で述べたように、上記の処置は、黄斑変性症を有する患者を治療するために行われ得る。そのようないくつかの事例では、針(20)によって送達される治療薬(341)は、分娩後臍由来及び胎盤由来細胞を含み得る。上で述べたように、及び単なる例として、治療薬(341)は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2008年8月19日発行の「Treatment of Retinitis Pigmentosa with Human Umbilical Cord Cells」と題する米国特許第7,413,734号の教示の少なくともいくつかに従って提供され得る。あるいは、針(20)を使用して、米国特許第号7,413,734号及び/又は本明細書の他の箇所に記載されるものに加えて又はそれらの代わりに、任意の他の好適な物質(1つ又は複数)を送達することができる。単なる例として、治療薬(341)は、限定するものではないが、小分子、大分子、細胞、及び/又は遺伝子治療などの様々な種類の薬剤を含み得る。黄斑変性症は、本明細書に記載される処置によって治療され得る疾患の単に例示的な例の1つに過ぎないことも理解されたい。本明細書に記載される器具及び処置を用いて対処することができる他の生物学的状態は、当業者には明らかであろう。
【0096】
V.例示的な代替器具及び機構
いくつかの実施例では、本明細書に記載される器具の特定の構成要素又は機構を変化させることが望ましい場合がある。例えば、針(30)を作動させるための代替機構を有する、器具(10)と同様の器具を使用することが望ましい場合がある。更に他の実施例では、異なる幾何学的形状のカニューレ(20)又は針(30)を備えた、器具(10)と同様の器具を使用することが望ましい場合がある。上述のようなバリエーションを持たせた器具は、異なる外科的処置又は上記処置と同様の外科的処置において、様々な物理的特性を有する組織構造を係合するために望ましい場合がある。特定の変化例を本明細書に記載するが、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、本明細書に記載される器具は、任意の他の代替機構を含み得ることを理解されたい。
【0097】
A.回転式作動機構を有する例示的な代替器具
図18図21は、前述の器具(10)と同様である例示的な代替器具(410)を示す。器具(410)は、前述の医療処置を実施するために、器具(10)の代わりに容易に使用され得ることを理解されたい。更に、本明細書において特に記載した場合を除き、この実施例の器具(410)は、前述の器具(10)と実質的に同一であることも理解されたい。器具(10)と同様に、器具(410)は、カニューレ(420)と、本体(440)と、作動アセンブリ(460)と、を含む。カニューレ(420)は前述のカニューレ(20)と実質的に同じであるので、カニューレ(420)の特定の詳細の更なる説明は行わない。本体(440)がよりコンパクトな形状因子で構成されていることを除いて、本体(440)も前述の本体(40)と実質的に同じである。したがって、本体(440)の更なる詳細は、本明細書では説明しない。
【0098】
器具(10)と器具(410)との主な違いは、器具(410)の作動アセンブリ(460)が、滑動可能である代わりに回転可能であることである。図18及び図19から分かるように、作動アセンブリ(460)は、回転作動部材(462)と、ネジ山付き部材(464)と、ネジ山付き受容部材(466)と、を含む。作動部材(462)は概ね円筒形であり、操作者の指が把持するように構成されている。加えて、いくつかの実施例では、作動部材(462)は、作動部材(462)の把持性を強化するように構成されたゴム引き表面、ギザギザ、隆起部、及び/又は他の特徴を含み得る。流体供給管(463)は、作動部材(462)を通って形成された中心穴(図示せず)を通り、針(430)の近位端と連結される。よって、流体供給管(463)を使用して、治療薬及び/又はその他の流体を針(430)に供給することができる。流体供給管(463)は作動部材(462)又はネジ山付き部材(464)に固定されていないので、作動部材(462)及びネジ山付き部材(464)が回転したときに、流体供給管(463)は回転しない又はねじれない。
【0099】
ネジ山付き部材(464)は、作動部材(462)から遠位に延在し、ネジ山付き部材(464)の外側にネジ山(465)を含む。より詳細に後述するように、ネジ山付き部材(464)は、ネジ山付き部材(464)が作動部材(462)によって受容部材(466)に対して回転されたときに、針(430)を所定の長さだけ作動させるのに好適な長さを有する。ネジ山付き部材(464)の長さは、更に、ネジ山付き受容部材(466)を通って延びて、針(430)の近位端において針本体(434)に係合するのに好適である。針本体(434)は、本体(410)内に配設された軌道(412)上で滑動可能である。より詳細に後述するように、針本体(434)は、軌道(412)と一緒になって、針(430)の移動範囲を画定する。針本体(434)は、針(430)の近位端に固定して取り付けられ、ネジ山付き部材(464)の遠位端に回転可能に固定される。よって、針本体(434)はネジ山付き部材(464)と共に本体(440)に対して並進するが、針本体(434)はネジ山付き部材(464)と共に本体(440)に対して回転しない。
【0100】
ネジ山付き受容部材(466)は、本体(440)内に固定して取り付けられ、ネジ山付き部材(464)を受容するように概ね構成されている。ネジ山付き受容部材(466)はほぼ円筒形であり、ネジ山付き穴(図示せず)がネジ山付き受容部材(466)を通って延在している。ネジ山付き受容部材(466)の外側は、本体(440)に対するネジ山付き受容部材(466)の位置を維持するために、ローレット面を含み得る。当然ながら、ローレット面はあくまでも任意であり、他の実施例では、ネジ山付き受容部材(466)は、機械的締結機構、接着剤結合、及び/又はその他の構造若しくは技術によって本体(440)内部に固定されてもよい。
【0101】
ネジ山付き受容部材(466)のネジ山付き穴は、ネジ山付き部材(464)の外側のネジ山(465)と相補的なネジ山を含む。よって、ネジ山付き受容部材(466)はネジ山付き部材(464)を受容するように構成されており、ネジ山付き部材(464)を所与の方向に回転させることによってネジ山付き部材(464)が遠位又は近位に進むことができるようになっている。換言すれば、ネジ山付き部材(464)は並進する主ネジとしての役割を果たし、ネジ山付き受容部材(466)は静止ナットとしての役割を果たす。
【0102】
例示的な操作モードでは、図20及び図21から分かるように、針(430)は、概して、操作者が作動部材(462)を回転させることによって、カニューレ(420)に対して進められる。具体的には、作動部材(462)の回転は、ネジ山付き部材(464)をそれに応じて回転させる。ネジ山付き受容部材(466)は本体(410)に対して固定されているので、ネジ山付き部材(464)のネジ山付き受容部材(466)に対する回転は、ネジ山付き部材(464)を本体(410)に対して並進させる。ネジ山付き部材(464)が並進すると、ネジ山付き部材(464)は針本体(434)を軌道(412)に沿って遠位に押す。針本体(434)の遠位移動は、続いて、本体(410)及びカニューレ(420)に対する針(430)の遠位移動をもたらす。
【0103】
操作者は、針(430)がカニューレ(420)に対して所望量だけ前進するまで、作動部材(462)を回転させ続けることができる。あるいは、操作者が作動部材(462)を無制限に回転させ続けた場合、針本体(434)が軌道(412)の遠位端に達することによって、更なる回転が最終的に防止されることになる。次に、操作者は、針(430)を介して流体及び/又は治療薬を送達することができる。その後、操作者は、針(430)を後退させることを所望する場合がある。その時点にて、操作者は作動部材(462)の回転を単に反転させるだけでよい。作動部材(462)を逆回転させることにより、ネジ山付き部材(464)は本体(410)に対して近位に並進する。それに続いて、針本体(434)は本体(410)に対して近位に後退し、針(430)はカニューレ(420)に対して近位に後退する。いくつかの変形形態では、器具(410)は、針(430)を近位に付勢する弾性部材を含み、それによって、カニューレ(420)に対する針(430)の後退を更に補助する。
【0104】
B.例示的な代替カニューレ
図22及び図23は、前述の器具(10、410)と共に使用するための例示的な代替カニューレ(520)を示す。カニューレ(520)は、前述のカニューレ(20)と実質的に同じである。例えば、カニューレ(20)と同様に、カニューレ(520)は、患者の眼の特定の構造及び輪郭にぴったり一致するだけの十分な可撓性を有するが、カニューレ(520)はまた、座屈することなく前進させるのが可能となるのに十分な剛性を有する。図22から分かるように、カニューレ(520)は、カニューレ(20)と同様に、3つの内腔(522、524)を備え、これら内腔は、カニューレ(520)を通って長手方向に延在し、傾斜した遠位端(526)で終端する。内腔(522、524)及び傾斜した遠位端(526)は、前述の内腔(22、24)及び傾斜した遠位端(26)と実質的に同じであるので、これら要素の特定の詳細は、本明細書では説明しない。
【0105】
本実施例のカニューレ(520)は、針(530)と光ファイバ(534)とを含む。光ファイバ(534)は前述の光ファイバ(34)と実質的に同じであるので、光ファイバ(534)の特定の詳細は、ここでは繰り返さない。本実施例の針(530)が針(530)の可撓性を高めるための機構を含むことを除いて、針(530)は前述の針(30)と同様である。具体的には、図23から最もよく分かるように、針(530)は、インナーライナー(531)と、鋭利な遠位端(532)と、針(530)の外側表面の一連の交互のスリット(533)と、を含む。インナーライナー(531)は、ポリイミド又はその他の同様の材料を含む。インナーライナー(531)は、概して、針(530)をスリット(533)に対して封止するように動作可能である。
【0106】
鋭利な遠位端(532)が単一斜面構造を含むことを除いて、鋭利な遠位端(532)は前述の鋭利な遠位端(32)と同様である。具体的には、鋭利な遠位端(532)は、針(530)の長手方向軸線に対して45°の単一斜面を有して示されている。鋭利な遠位端(32)と同様に、鋭利な遠位端(532)は研削又はレーザー切断によって形成され得る。45°の斜面が示されているが、任意の他の好適な傾斜角度を用いてもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの実施例では、傾斜角度は、針の長手方向軸線に対して25°~50°の範囲であってよい。
【0107】
スリット(533)は、針(530)の上部及び底部に沿って交互パターンで配置される。具体的には、スリット(533)は、針(530)全体にわたって針(530)の上部又は底部のいずれかからほぼ中間まで各スリットを横方向にレーザー切断することによって作られる。各スリット(533)は、それに続く別のスリット(533)に対して離間した関係にある。特定の間隔が示されているが、任意の好適な間隔を用いてもよいことを理解されたい。例えば、本実施例のスリット(533)は、針(530)の可撓性を高めて、針(530)の真っ直ぐな長手方向軸線から離れる方向に針(530)を曲げることができるように構成されている。したがって、他の実施例では、針(530)は、針(530)の曲げ性を高めるために、互いにより近接して配向されたより多くのスリット(533)を備えていてもよい。更に他の実施例では、針(530)は、針(530)の剛性を高める又は曲げ性を低下させるために、更に離れて配向された少ない数のスリット(533)を含んでいてもよい。当然ながら、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、任意の他の好適な構成のスリット(533)を使用してもよい。この実施例ではガイド部材(36)が省略されているが、所望する場合は、ガイド部材(36)を含むようにしてもよいことも理解されたい。
【0108】
図24及び図25は、前述の器具(10、410)と共に使用するための更に別の代替カニューレ(620)を示す。カニューレ(620)は、前述のカニューレ(20)と実質的に同じである。例えば、カニューレ(20)と同様に、カニューレ(620)は、患者の眼の特定の構造及び輪郭にぴったり一致するだけの十分な可撓性を有するが、カニューレ(620)はまた、座屈することなく前進させるのが可能となるのに十分な剛性を有する。図22から分かるように、カニューレ(620)は、カニューレ(20)と同様に、3つの内腔(622、624)を備え、これら内腔は、カニューレ(620)を通って長手方向に延在し、傾斜した遠位端(626)で終端する。内腔(622、624)及び傾斜した遠位端(626)は、前述の内腔(22、24)及び傾斜した遠位端(26)と実質的に同じであるので、これら要素の特定の詳細は、ここでは繰り返さない。
【0109】
本実施例のカニューレ(620)は、針(630)と光ファイバ(634)とを含む。光ファイバ(634)は前述の光ファイバ(34)と実質的に同じであるので、光ファイバ(634)の特定の詳細は、ここでは繰り返さない。本実施例の針(630)が針カニューレ(631)と内側芯線(633)とを含んでいることを除いて、針(630)は前述の針(30)と同様である。具体的には、図25から最もよく分かるように、内側芯線(633)は、針カニューレ(631)内に長手方向に配設される。本実施例の針カニューレ(631)は、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのプラスチック、及び/又は任意のその他の好適な材料を含む細長い中空管である。針カニューレ(631)の内径は、内側芯線(633)のための空間を提供し、かつ流体流のための更なるすきまを提供するように構成されている。よって、針カニューレ(631)は、流体を前述の送達部位まで送達するように構成されていることを理解されたい。
【0110】
内側芯線(633)は、ステンレス鋼、ニチノール等からなるワイヤを含む。本実施例の内側芯線(633)は約1.3μmの外径を有するが、任意の他の好適な直径を用いてもよい。内側芯線(633)は、鋭い遠位先端(632)を含む。前述の鋭い遠位先端(32、532)とは異なり、本実施例の鋭い遠位先端(632)の形状は円錐形であり、そのため、鋭い遠位先端(632)は、内側芯線(633)の長手方向中心軸線上に位置する点に向かって先細になっている。本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、鋭い遠位先端(632)は任意の好適な勾配で先細になっていてよい。
【0111】
代表的な使用では、針カニューレ(631)及び内側芯線(633)は同時に進められて組織を穿孔する。具体的には、内側芯線(633)は針カニューレ(631)の前を進み、針カニューレ(631)及び内側芯線(633)の両方がカニューレ(620)に対して前進するときに、先端(632)は、針カニューレ(631)の遠位端に対して遠位に位置付けられる。内側芯線(633)は針カニューレ(631)の前を進むので、内側芯線(633)が最初に組織と接触し、鋭い遠位先端(632)によって貫通し始めることができる。針カニューレ(631)及び内側芯線(633)の両方が更に前進すると、針カニューレ(631)は、鋭い遠位先端(632)によって作られた開口部を通って組織を貫通し始める。次に、針カニューレ(631)は、前述のように組織を通して流体を送達することができる。
【0112】
針カニューレ(631)及び内側芯線(633)は、同時に前進するとして本明細書に記載されるが、他の実施例では、針カニューレ(631)及び内側芯線(633)は別個に前進してもよいことを理解されたい。例えば、例示に過ぎない1つの操作モードでは、内側芯線(633)が最初に前進して組織を貫通してもよい。次に、針カニューレ(631)が、組織を貫通した後の内側芯線(633)に追従して流体を送達してもよい。更に他の実施例では、針カニューレ(631)が最初に前進して組織と当接してもよい。次に、内側芯線(633)が前進して組織を貫通してもよい。最後に、針カニューレ(631)が再度前進して、内側芯線(633)によって形成された開口部を通って組織を貫通してもよい。当然ながら、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、外側カニューレ(621)及び内側芯線(633)は、任意の他の好適な順序で使用されてよい。この実施例ではガイド部材(36)が省略されているが、所望する場合は、ガイド部材(36)を含むようにしてもよいことも理解されたい。
【0113】
図26及び図27は、前述の器具(10、410)と共に使用できる更に別の代替カニューレ(730)を示す。カニューレ(720)は、前述のカニューレ(20)と同様である。例えば、カニューレ(20)と同様に、カニューレ(720)は、患者の眼の特定の構造及び輪郭にぴったり一致するだけの十分な可撓性を有するが、カニューレ(720)はまた、座屈することなく前進させるのが可能となるのに十分な剛性を有する。しかしながら、カニューレ(20)とは異なり、本実施例のカニューレ(720)は、中央内腔(724)開口部を有する鈍い遠位端(726)を含む。鈍い遠位端(726)は、患者の眼の組織構造内にカニューレ(720)を前進させたときの外傷を低減するために、本明細書に記載される他の遠位端(26、526、626)よりも望ましい場合がある。具体的には、鈍い遠位端(726)は、カニューレ(720)が患者の眼の組織を通って前進したときに組織に引っかかる可能性のある角部を含まないように、丸みを付けられる。鈍い遠位端(726)は特定の曲率半径(すなわち、垂直寸法に沿った及び水平寸法に沿った)を有するように示されているが、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、鈍い遠位端(726)は、任意の好適な半径で丸みを付けられてもよいことを理解されたい。
【0114】
図27から分かるように、鈍い遠位端(726)は、該遠位端を通って開口する中央内腔(724)のみを含んでいるが、カニューレ(720)は依然として、前述のカニューレ(20)と同様に3つの内腔(722、724)を含んでいる。具体的には、2つの側部内腔(722)は、前述の側部内腔(22)とよく似て、カニューレ(720)を通って長手方向に延在する。しかしながら、側部内腔(22)とは異なり、側部内腔(722)は、鈍い遠位端(726)によって、それらの各遠位端が閉じられている。中央内腔(724)はまたカニューレ(720)を通って長手方向に延在しているが、上述したように、中央内腔(724)は鈍い遠位端(726)も貫通する。中央内腔(724)は、前述の中央内腔(24)と同様に、本明細書に記載される針(30、530、630)と同様の好適な針を滑動可能に受容するように構成されている。
【0115】
図28及び図29は、前述の器具(10、410)と共に使用するための例示的な代替カニューレ(820)を示す。カニューレ(820)は前述のカニューレ(20)と実質的に同じである。例えば、カニューレ(20)と同様に、カニューレ(820)は、患者の眼の特定の構造及び輪郭にぴったり一致するだけの十分な可撓性を有するが、カニューレ(820)はまた、座屈することなく前進させるのが可能となるのに十分な剛性を有する。図28から分かるように、カニューレ(820)は、カニューレ(20)と同様に、2つの側部内腔(822)と1つの中央内腔(824)とを備え、これら内腔は、カニューレ(820)を通って長手方向に延在し、傾斜した遠位端(826)で終端する。内腔(822、824)及び傾斜した遠位端(826)は、前述の内腔(22、24)及び傾斜した遠位端(26)と実質的に同じであるので、これら要素の特定の詳細は、本明細書では説明しない。傾斜した遠位端(826)の非外傷性を維持するために、針ガイド(880)が内腔内に配設されてよく、針ガイド(880)の遠位面(882)は、傾斜した遠位端(826)とぴったり重なるか、又は傾斜した遠位端(826)のやや近位側になるようになっている。
【0116】
カニューレ(20)とは異なり、カニューレ(820)は、中央内腔(824)内に配設された針ガイド(880)を含むが、光ファイバは含まない。針ガイド(880)は、概ね、針(830)を、カニューレ(820)の長手方向軸線に対して所定の角度で上向きに導くように構成されている。本実施例では、針ガイド(880)はステンレス鋼からなるが、任意の他の好適な生体適合性材料を用いてもよいことを理解されたい。針ガイド(880)の形状は、中央内腔(824)への挿入が行われるように構成されている。本実施例では、針ガイド(880)は、圧入又は締まりばめによって中央内腔(824)内に固定されるが、他の実施例では、接着剤、機械的係止機構、及び/又はその他の構造若しくは技術を用いて針ガイド(880)を固定してもよい。
【0117】
図29から最もよく分かるように、針ガイド(880)は、針(830)を滑動可能に受容するように構成された内部内腔(882)を画定する。具体的には、内部内腔(882)は、ほぼ真っ直ぐな近位部分(886)と、湾曲した遠位部分(888)と、を含む。真っ直ぐな近位部分(886)は、カニューレ(820)の長手方向軸線に一致し、湾曲した遠位部分(888)は、カニューレ(820)の長手方向軸線(LA)から離れて上向きに湾曲する。本実施例の湾曲した遠位部分(888)は、カニューレ(820)の長手方向軸線(LA)に対して約7°~約9°の角度である出射軸(EA)に沿ってカニューレ(820)から遠位に延びる経路に沿って針(830)を導くように湾曲している。そのような角度は、針が脈絡膜(306)の中に貫通するのを確実にし、かつ針(830)が(脈絡膜(306)を貫通するのではなく)脈絡膜上腔を通って脈絡膜(306)の下に留まる可能性を最小限に抑える方向に針(830)を偏倚させるために望ましい場合があることを理解されたい。かかる角度は、針(830)が脈絡膜上腔に入った後に網膜を穿孔する危険性を最小限に抑える方向に針(830)を偏倚させるのに望ましい場合があることを更に理解されたい。例えばいくつかの実施例では、かかる角度が急勾配過ぎると、針(830)は網膜(308)を穿孔する傾向を有し得る。角度が浅すぎると、針(830)は脈絡膜(306)を貫通し損ねる場合がある。単に更なる例として、湾曲した遠位部分(888)は、カニューレ(820)の長手方向軸線(LA)に対して約5°~約30°の範囲内の角度、又はより具体的にはカニューレ(820)の長手方向軸線(LA)に対して約5°~約20°の範囲内の角度、又はより具体的にはカニューレ(820)の長手方向軸線(LA)に対して約5°~約10°の範囲内の角度で配向された出射軸(EA)に沿って、カニューレ(820)から出るように針(830)を付勢してもよい。
【0118】
いくつかの実施例では、カニューレ(820)に対する針(830)の角度を変化させる所望の効果は、針ガイド(880)なしで得ることができる。例えば、いくつかの実施例では、針(830)が所望の角度(例えば、20°)に弾性的に偏向されるように、針(830)は予め曲げられていてもよい。そのような実施例では、針(830)は、カニューレ(820)内部の実質的に真っ直ぐな経路をたどり、次に、カニューレ(820)に対して角度をなす位置において、カニューレ(820)に対して遠位に前進するように、拘束され得る。更に、他の実施例では、カニューレ(820)自体が、針ガイド(880)の湾曲した遠位部分(888)と同様の湾曲した内腔を使用して、所定の角度で針(830)を導くように構成されてもよい。更に、他の実施例では、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、針(830)の角度は、任意の他の好適な手段によって変更されてもよい。
【0119】
図30及び図31Aは、前述の器具(10、410)と共に使用するための例示的な代替カニューレ(2620)を示す。カニューレ(2620)は前述のカニューレ(20)と実質的に同じである。例えば、カニューレ(20)と同様に、カニューレ(2620)は、患者の眼の特定の構造及び輪郭にぴったり一致するだけの十分な可撓性を有するが、カニューレ(2620)はまた、座屈することなく前進させるのが可能となるのに十分な剛性を有する。図30から分かるように、カニューレ(2620)は、カニューレ(20)と同様に、2つの側部内腔(2622)と1つの中央内腔(2624)とを備え、これら内腔は、カニューレ(2620)を通って長手方向に延在し、傾斜した遠位端(2626)で終端する。内腔(2622、2624)及び傾斜した遠位端(2626)は、前述の内腔(22、24)及び傾斜した遠位端(26)と実質的に同じであるので、これら要素の特定の詳細は、本明細書では説明しない。針ガイド(2680)は、針ガイド(2680)がカニューレ(2620)内の別個の傾斜した開口部(2682)と当接するように内腔(2624)内に配設され、この傾斜した開口部(2682)は、傾斜した遠位端(2626)の近位のカニューレ(2620)の上面上に横方向に配向されている。
【0120】
カニューレ(20)とは異なり、カニューレ(2620)は、中央内腔(2624)内に配設された針ガイド(2680)を含む。針ガイド(2680)は、概して、針(2630)を、カニューレ(2620)の長手方向軸線(LA)に対して斜めに配向された出射軸(EA)に沿って、カニューレ(2620)の傾斜した開口部(2682)を通って上向きに導くように構成されている。針ガイド(2680)は、プラスチック、ステンレス鋼、及び/又は任意のその他の好適な生体適合性材料で形成され得る。針ガイド(2680)の形状は、中央内腔(2624)への挿入が行われるように構成されている。本実施例では、針ガイド(2680)は、圧入又は締まりばめによって中央内腔(2624)内に固定されるが、他の実施例では、接着剤及び/又は機械的係止機構を用いて針ガイド(2680)を固定してもよい。
【0121】
図31Aから最もよく分かるように、針ガイド(2680)は、針(2630)を滑動可能に受容するように構成された内部内腔(2684)を画定する。具体的には、内部内腔(2684)は、ほぼ真っ直ぐな近位部分(2686)と、湾曲した遠位部分(2688)と、を含む。真っ直ぐな近位部分(2686)は、カニューレ(2620)の長手方向軸線に一致し、湾曲した遠位部分(2688)は、カニューレ(2620)の長手方向軸線から離れて上向きに湾曲する。本実施例の湾曲した遠位部分(2688)は、カニューレ(2620)の長手方向軸線(LA)に対して約7°~約9°の角度でカニューレ(2620)から遠位に延びる出射軸(EA)に沿って針(2630)を導くように湾曲する。そのような角度は、針が脈絡膜(306)の中に貫通するのを確実にし、かつ針(2630)が(脈絡膜(306)を貫通するのではなく)脈絡膜上腔を通って脈絡膜(306)の下に留まる可能性、及び網膜穿孔の可能性を最小限に抑える方向に針(2630)を偏倚させるために望ましい場合があることを理解されたい。単に更なる例として、湾曲した遠位部分(2688)は、カニューレ(2620)の長手方向軸線(LA)に対して約5°~約30°の範囲内の角度、又はより具体的にはカニューレ(2620)の長手方向軸線(LA)に対して約5°~約20°の範囲内の角度、又はより具体的にはカニューレ(2620)の長手方向軸線(LA)に対して約5°~約10°の範囲内の角度で配向された出射軸(EA)に沿って、針(2630)がカニューレ(2620)から出るように付勢してもよい。
【0122】
本実施例の針(2630)は、図5A及び図5Bに関して上述した針(30)と実質的に同じである。具体的には、針(2630)は鋭利な遠位端(2632)を有する。図示してはいないが、前述の遠位端(32)と同様に、本実施例の遠位端(2632)は、互いに合流して遠位端(2632)を形成する3つの別個の斜面(図示せず)を有する三斜面形状である。同様に、針(2630)は皮下注射針であるので、斜面は、針(2630)の遠位端の開口部(2637)と交差する。針(2630)は3つの斜面を有するとして本明細書に記載されるが、他の実施例では、遠位端(32)は、遠位端(2632)に関して上で同様に説明したように、任意の好適な傾斜角度を有する任意の他の好適な数の斜面を含んでもよい。
【0123】
図31B図31Dは、カニューレ(2620)の代替として使用することができる様々な代替カニューレ(3420、3520、3620)を示す。本明細書において特記される場合を除き、カニューレ(3420、3520、3620)は前述のカニューレ(2620)と実質的に同じである。具体的には、カニューレ(2620)と同様に、各カニューレ(3420、3520、3620)は中央内腔(3424、3524、3624)を備え、これら内腔は、各対応するカニューレ(3420、3520、3620)を通って長手方向に延在し、対応する遠位端(3426、3526、3626)で終端する。針ガイド(2680)は、針ガイド(3480、3580、3680)がそれぞれ各対応するカニューレ(3420、3520、3620)内の別個の傾斜した開口部(3482、3582、3682)と当接するように各内腔(3424、3524、3624)内に配設され、これら傾斜した開口部は、各傾斜した遠位端(3426、3526、3626)の近位の各カニューレ(3420、3520、3620)の上面上に横方向に配向されている。
【0124】
各針ガイド(3480、3580、3680)は、概して、それぞれの針(3430、3530、3630)を、各カニューレ(3420、3520、3620)の長手方向軸線(LA)に対して斜めに配向されたそれぞれの出射軸(EA)に沿って、各対応する傾斜した開口部(3482、3582、3682)を通って上向きに導くように構成されている。各針ガイド(3480、3580、3680)は、各対応する針(3430、3530、3630)を滑動可能に受容するように構成された内部内腔(3484、3584、3684)を画定する。具体的には、各内部内腔(3484、3584、3684)は、ほぼ直線状の近位部分(3486、3586、3686)と、湾曲した遠位部分(3488、3588、3688)と、を含み、これら全ては、前述の近位部分(2686)及び遠位部分(2688)と同様である。
【0125】
カニューレ(3420、3520、3620)とカニューレ(2620)との間の一般的な違いは、各カニューレ(3420、3520、3620)が代替遠位先端(3426、3526、3626)を含むことである。例えば、図31Bから分かるように、カニューレ(3420)は、概して丸い遠位先端(3426)を含んでいる。同様に、図31Cから分かるように、カニューレ(3520)は、球状の遠位先端(3526)を含んでいる。球状の遠位先端(3526)は、(図31Cを示す頁に出入りする)横平面に沿って及び/又は(図31Cを示す頁に沿った)垂直面に沿って球状であってもよいことを理解されたい。例えば、いくつかの変形形態では、遠位先端(3526)は、(図31Cを示す頁に出入りする)横平面に沿ってのみ球状であり、(図31Cを示す頁に沿った)垂直面に沿っては、単に丸い遠位先端(3526)のように見える。最後に、図31Dから分かるように、カニューレ(3620)は、部分的に丸い遠位先端(3626)を含む。本明細書に記載する各遠位先端(3426、3526、3626)は、各カニューレ(3420、3520、3520)が患者の眼に挿入されるときに、異なる貫通特性を提供し得ることを理解されたい。例えば、丸い又は球状の遠位先端(3426、3526)は、比較的より非外傷性の特性を提供することができる一方で、部分的に丸い遠位先端(3626)は、遠位先端(2626)と同様の貫通能力と、丸い及び球状の遠位先端(3426、3526)と同様の非外傷性の特性と、を備えた中間的特性を提供することができる。本明細書では特定の具体的な遠位先端(2626、3426、3526、3626)を示しかつ説明するが、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、多くのその他の好適な遠位先端を使用できることを理解されたい。
【0126】
C.例示的な代替縫合糸測定テンプレート
図32は、本明細書において特記される場合を除き、前述のテンプレート(210)と実質的に同じである例示的な代替縫合糸測定テンプレート(910)を示す。例えば、テンプレート(910)は、前述の本体(220)と同様の本体(920)を含む。しかしながら、テンプレート(210)とは異なり、本実施例のテンプレート(910)にはシャフトがない。より詳細に後述するように、本体(920)は、概して、シャフトの代わりに鉗子によって把持されるように構成されている。本体(920)は、本体(220)と同様に、上方ガイド部(922)を含んでいる。本体(220)とは異なり、本実施例の本体(920)は複数の開口部(930)を含み、これにより本体(920)は、上述のように眼に印を付けるために突出部(230)を使用する代わりに、患者の眼に印を付けるためのステンシルのように使用され得る。
【0127】
上方ガイド部(922)は、形状がほぼ半円形であり、本体(920)の上部に配設される。上方ガイド部(922)の半円形状は、患者の眼の縁の曲率半径に対応する半径を有する。より詳細に後述するように、上方ガイド部(922)は、テンプレート(910)を患者の眼の縁に対して位置付けるために使用され得る。したがって、テンプレート(910)を使用して患者の眼の上に沈着され得る任意の着色は、患者の眼の縁に対して位置付けられ得る。開口部(930)を使用して患者の眼の上の目的の特定位置に印を付けることができるという点で、開口部(930)は前述の突出部(230)と同様である。本実施例の開口部(930)は、4つの縫合糸ループ開口部(932)と、1つの強膜切開開口部(934)と、を含む。
【0128】
本体(220)とは異なり、本実施例の本体(920)は、2つの把持部材(960)を含む。把持部材(960)は、本体(920)から近位に延出し、概して、鉗子又はその他の器具によって把持されるように構成されている。したがって、操作者は、鉗子又はその他の外科用器具を使用して把持部材(960)を把持し、本体(920)を操作することができる。把持部材(960)は細長い矩形として示されているが、他の実施例では任意の他の好適な形状を用いてもよいことを理解されたい。
【0129】
代表的な使用では、縫合糸ループ開口部(932)及び強膜切開開口部(934)はそれぞれ、前述の方法の特定の部分に対応する。具体的には、前述の方法の実施中、操作者は、1つ又は2つ以上の把持部材(960)を鉗子又はその他の器具で把持して、本体(920)を患者の眼に対して位置付けることができる。本体(920)が位置付けられたら、操作者は色素ペン又はその他の色素塗布装置を入手し、このペンを使用して開口部(930)内に色素を塗布することができる。色素を塗布し終わったら、操作者はテンプレート(910)を取り除いてよい。上述したように、テンプレート(910)を患者の眼から取り除いた後、開口部(930)を介して塗布された色素は目に付着したままとなり、目的の特定点に印を付けることができる。
【0130】
図33は、本明細書において特記される場合を除き、前述のテンプレート(210)と実質的に同じである例示的な代替縫合糸測定テンプレート(1010)を示す。例えば、テンプレート(1010)は、前述の本体(220)と同様の本体(1020)を含む。しかしながら、テンプレート(210)とは異なり、本実施例のテンプレート(1010)にはシャフトがない。より詳細に後述するように、本体(1020)は、概して、シャフトの代わりに鉗子によって把持されるように構成されている。本体(1020)は、本体(220)と同様に、上方ガイド部(1022)を含む。本体(220)とは異なり、本実施例の本体(1020)は複数の開口部(1030)を含み、これにより本体(1020)は、上述のように眼に印を付けるために突出部(230)を使用する代わりに、患者の眼に印を付けるためのステンシルのように使用され得る。
【0131】
上方ガイド部(1022)は、形状がほぼ半円形であり、本体(1020)の上部に配設される。上方ガイド部(1022)の半円形状は、患者の眼の縁の曲率半径に対応する半径を有する。より詳細に後述するように、上方ガイド部(1022)は、テンプレート(1010)を患者の眼の縁に対して位置付けるために使用され得る。したがって、テンプレート(1010)を使用して患者の眼の上に沈着され得る任意の着色は、患者の眼の縁に対して位置付けられ得る。開口部(1030)を使用して患者の眼の上の目的の特定位置に印を付けることができるという点で、開口部(1030)は前述の突出部(230)と同様である。本実施例の開口部(1030)は、4つの縫合糸ループ開口部(1032)と、1つの強膜切開開口部(1034)と、を含む。前述の開口部(930)とは対照的に、本実施例の開口部(1030)は、開口部(930)よりも大きくなっており、開口部(1030)を介してより容易に患者の眼の上に印付けを行うことができる。
【0132】
本体(220)とは異なり、本実施例の本体(1020)は、2つの把持開口部(1060)を含む。把持開口部(1060)は、概して、鉗子又はその他の器具によって把持されるように構成されている。したがって、操作者は、鉗子又はその他の外科用器具を使用して把持開口部(1060)を把持し、本体(1020)を操作することができる。把持開口部(1060)は六角形の開口部として示されているが、他の実施例では任意のその他の好適な形状を用いてもよいことを理解されたい。
【0133】
代表的な使用では、縫合糸ループ開口部(1032)及び強膜切開開口部(1034)はそれぞれ、前述の方法の特定の部分に対応する。具体的には、前述の方法の実施中、操作者は、1つ又は2つ以上の把持開口部(1060)を鉗子又はその他の器具で把持して、本体(1020)を患者の眼に対して位置付けることができる。本体(1020)が位置付けられたら、操作者は色素ペン又はその他の色素塗布装置を入手し、このペンを使用して開口部(1030)内に色素を塗布することができる。色素を塗布し終わったら、操作者はテンプレート(1010)を取り除いてよい。上述したように、テンプレート(1010)を患者の眼から取り除いた後、開口部(1030)を介して塗布された色素は目に付着したままとなり、目的の特定点に印を付けることができる。
【0134】
D.代替回転式作動機構を有する例示的な代替器具
図34図46Dは、前述の器具(10、410)と同様である例示的な代替器具(2010)を示す。器具(10、410)と同様に、器具(2010)は、概して、前述の処置において、患者の眼の脈絡膜上に治療用流体を送達するために使用可能である。したがって、器具(410)は、前述の医療処置を実施するために、器具(10)の代わりに容易に使用され得ることを理解されたい。器具(10)と同様に、この実施例の器具(2010)は、カニューレ(2020)と、本体(2040)と、作動アセンブリ(2100)と、を含む。カニューレ(2020)は、カニューレを通って延在するニチノール針(2030)を含み、前述のカニューレ(20)と実質的に同じである。カニューレ(2020)は前述のカニューレ(20)と実質的に同様であるとして示されているが、本明細書に記載する任意の他のカニューレを器具(2010)に容易に組み込むことができることを理解されたい。より詳細に後述するように、本体(2040)がバルブ作動凹部(2043)を含むことを除いて、本体(2040)もまた、前述の本体(40)と同様である。
【0135】
器具(10)と器具(2010)との主な違いは、器具(2010)の作動アセンブリ(2100)が、滑動可能である代わりに回転可能であることである。加えて、器具(2010)は、針(2030)の流体状態を変化させるように動作可能なバルブアセンブリ(2200)を含む。より詳細に後述するように、作動アセンブリ(2100)は、概して、ノブ部材(2110)を回転させることによって、バルブアセンブリ(2200)を長手方向に並進させ、それによって、針(2030)をカニューレ(2020)に対して長手方向に並進させるように動作可能である。
【0136】
図35図36及び図38から分かるように、作動アセンブリ(2060)は、ノブ部材(2110)と、並進アセンブリ(2130)と、クラッチアセンブリ(2160)と、を含む。図39において最もよく見て取れるように、ノブ部材(2110)は、作動部(2116)と、細長い駆動部(2118)と、を含む。加えて、ノブ部材(2110)は両端に開口部(2111、2112)を備え、これら開口部は、作動部(2116)及び駆動部(2118)の両方を通って長手方向に延在する内腔(2114)を画定する。作動部(2116)は、本体(2040)の外部に配設され、概して、操作者の手によって把持及び回転されて、作動アセンブリ(2060)を作動させるように構成されている。
【0137】
より詳細に後述するように、ノブ部材(2110)の駆動部(2118)は、本体(2040)内に遠位に延在し、概して、作動アセンブリ(2100)の様々な構成要素を駆動するように動作可能である。図39から最もよく分かるように、駆動部(2118)は、環状フランジ(2120)と、2つの細長い溝(2122)と、を含む。環状フランジ(2120)は、駆動部(2118)の外側表面から半径方向外向きに延出する。概して、環状フランジ(2120)は、より詳細に後述するように、並進アセンブリ(2130)に係合するように構成されている。駆動部(2118)の各溝(2122)は、駆動部(2118)の外側表面内に陥凹している。各溝(2122)は実質的に同様の形状を有し、第1の部分(2124)とアセンブリ部分(2126)とを含んでいる。第1の部分(2124)は、駆動部(2118)の長さに沿って長手方向に延在し、駆動部(2118)の遠位端の近位及び環状フランジ(2120)の遠位で終端する。より詳細に後述するように、第1の部分(2124)は、クラッチアセンブリ(2160)に滑動可能に係合するように構成されている。アセンブリ部分(2126)はL字形であり、第1の部分(2124)の少なくとも一部及び駆動部(2118)の遠位端と交差している。当然のことながら、アセンブリ部分(2126)は組み立て目的で含まれているに過ぎず、概して、器具(2010)が組み立てられた後は追加機能の目的を全く果たさない。したがって、アセンブリ部分(2126)はあくまでも任意であり、他の実施例では省略されてもよいことを理解されたい。
【0138】
図40から最もよく分かるように、並進アセンブリ(2130)は、ネジ付きインサート(2132)と並進部材(2140)とを含む。ネジ付きインサート(2132)はほぼ円形であり、そこを穴(2134)が貫通している。ネジ付きインサート(2132)の外部は、外向きに延出する一対のタブ(2136)を含む。図36から最もよく分かるように、タブ(2136)は、本体(2040)内に形成された一対の対応する凹部(2042)に係合して、ネジ付きインサート(2132)を本体(2040)内に並進で及び回転で固定する。凹部(2042)は図37にも示されている。図40に戻って参照すると、ネジ付きインサート(2132)の内部は、穴(2134)内に半径方向内向きに延出する一対のネジ部材(2138)を含む。より詳細に後述するように、ネジ部材(2138)は、並進部材(2140)の外部上の対応するネジ山(2148)にネジ式に係合し、これにより、ネジ付きインサート(2132)はナットとしての役割を果たすようになっている。当然のことながら、ネジ付きインサート(2132)は、概して、並進部材(2140)をネジ付きインサート(2132)に対して回転させたときに、並進部材(2140)を本体(2040)に対して並進させるように動作可能である。
【0139】
並進部材(2140)は、取付部分(2142)と、ネジ付き部分(2146)と、一対の長手方向に延びるアーム(2150)と、を含む。取付部分(2142)は、全体的に丸みが付けられており、遠位開口部(2143)と、環状凹部の形態の取付溝(2144)と、を含む。遠位開口部(2143)は、ほぼ円形であり、並進部材(2140)を通って延在する内腔(2145)を画定する。ネジ付き部分(2146)は、上述のネジ部材(2138)に係合するように構成されたネジ山(2148)を含み、そのため、並進部材(2140)をネジ付きインサート(2132)に対して回転させることによって、並進部材(2140)が本体(2040)に対して並進できるようになっている。換言すれば、並進部材(2140)は回転する主ネジとしての役割を果たし、ネジ付きインサート(2132)は固定ナットとしての役割を果たす。
【0140】
アーム(2150)は、ほぼ半円形の輪郭を有し、ネジ付き部分(2146)から近位に延在する。各アーム(2150)は、もう一方から分離されて、各アーム(2150)の間に実質的に同様の2つの細長い溝(2152)を画定する。各アーム(2150)は、それぞれの各アーム(2150)の近位端の近くに配設された環状溝(2154)を含む。各環状溝(2154)はもう一方に対応しており、その結果、環状溝(2154)は一緒になって、ノブ部材(2110)の環状フランジ(2120)を受容するように構成されている。ノブ部材(2110)の環状フランジ(2120)が環状溝(2154)に挿入されたときに、環状フランジ(2120)が溝内に並進で固定されるように、アーム(2150)は比較的剛性であることを理解されたい。したがって、ノブ部材(2110)がアーム(2150)を介して並進部材(2140)に連結されると、ノブ部材(2110)及び並進部材(2140)は、相互に一体的に並進することができる。しかしながら、環状溝(2154)の形状が環状であることから、ノブ部材(2110)及び並進部材(2140)は、互いに独立して自由に回転できる状態を維持することができる。
【0141】
図41から最もよく分かるように、クラッチアセンブリ(2160)は、第1の駆動ギア(2162)と、第2の駆動ギア(2168)と、第1のクラッチギア(2172)と、第2のクラッチギア(2178)と、各クラッチギア(2172、2178)の間に配置されたバネ(2186)と、を含む。各駆動ギア(2162、2168)の形状はほぼ円形であり、そこを通って穴(2163、2169)が延在している。各駆動ギア(2162、2168)は、一対の駆動突起(2164、2170)と、複数のギア歯(2166、2172)と、を更に含む。駆動突起(2164、2170)は、半径方向外向きに向けられており、並進部材(2140)のアーム(2150)によって画定された細長い溝(cannels)(2152)を貫通するように構成されている。駆動突起(2164、2170)は、更に、本体(2040)の対応する溝(2044、2046)によって受容されるように構成されており(図35及び図37参照)、これによって、駆動突起(2164、2170)は、駆動ギア(2162、2168)の長手方向位置を維持し、更には本体(2040)に対する駆動ギア(2162、2168)の自由な回転を可能にする(図35に見られるように)。当然のことながら、駆動突起(2164、2170)が並進部材(2140)のアーム(2150)に作用するので、駆動ギア(2162、2168)を回転させることにより、並進部材(2140)を対応して回転させることができる。並進部材は、駆動ギア(2162、2168)と共に回転し、更に駆動ギア(2162、2168)に対して並進することを理解されたい。
【0142】
第1の駆動ギア(2162)のギア歯(2166)は、第1の駆動ギア(2162)から近位に突出するように配向されている。これに対して、第2の駆動ギア(2168)のギア歯(2172)は、第2の駆動ギア(2168)から遠位に突出するように配向されている。両方の組のギア歯(2166、2172)は、概して鋸歯の形状とされ、各対応する駆動ギア(2162、2168)の各面の外周の周りに周囲方向に延在する。より詳細に後述するように、各組のギア歯(2166、2172)は、各対応するクラッチギア(2174、2180)の対応する組のギア歯(2178、2184)と噛み合うように構成されている。
【0143】
各クラッチギア(2174、2180)の形状はほぼ円形であり、そこを通って穴(2175、2181)が延在している。各クラッチギア(2174、2180)は、一対の突出部(2176、2182)と、複数のギア歯(2178、2184)と、を更に含む。突出部(2176、2182)は、各対応する穴(2175、2181)内へと内向きに突出する。突出部(2176、2182)は、ノブ部材(2110)の溝(2122)と滑動可能に係合するように構成されていることを理解されたい。より詳細に後述するように、突出部(2176、2182)は、各クラッチギア(2174、2180)が溝(2127)の長さに沿って並進できるようにしながら、各クラッチギア(2174、2180)をノブ部材(2110)に対して回転で固定するように構成されている。換言すれば、クラッチギア(2174、2180)は、ノブ部材(2110)と共に回転し、更にノブ部材(2110)に対して並進する。
【0144】
第1のクラッチギア(2174)のギア歯(2178)は、第1のクラッチギア(2174)から遠位に突出するように配向されている。これに対して、第2のクラッチギア(2180)のギア歯(2184)は、第2のクラッチギア(2180)から近位に突出するように配向されている。両方の組のギア歯(2178、2184)は、概して鋸歯の形状とされ、各対応するクラッチギア(2174、2180)の各面の外周の周りに周囲方向に延在する。上述されるように、各組のギア歯(2178、2184)は、駆動ギア(2162、2168)の対応する組のギア歯(2166、2172)と噛み合うように構成されている。
【0145】
各組のギア歯(2178、2184)が各対応する組のギア歯(2166、2172)と噛み合うと、ギア歯(2178、2184)は、各クラッチギア(2174、2180)の所与の方向への角回転に応じて、ギア歯(2166、2172)に対して駆動する又は滑るように構成されている。例えば、第1の駆動ギア(2162)のギア歯(2166)の向きに対する第1のクラッチギア(2174)のギア歯(2178)の向きにより、第1のクラッチギア(2174)の(例えば、器具2010の近位端から遠位に見た場合に)反時計回り方向への回転は、第1の駆動ギア(2168)の回転を駆動する。これに対して、第1のクラッチギア(2174)の時計回り方向への回転は、第1の駆動ギア(2168)に対する第1のクラッチギア(2174)の滑りを引き起こす。同様に、第2の駆動ギア(2168)のギア歯(2172)の向きに対する第2のクラッチギア(2180)のギア歯(2184)の向きにより、第2の駆動ギア(2168)の駆動は、第2のクラッチギア(2180)が反時計回り方向に回転したときに生じ、滑りは、第2のクラッチギア(2180)が時計回り方向に回転したときに生じる。したがって、及びより詳細に後述するように、第1のクラッチギア(2174)は、第1のクラッチギア(2174)が時計回り方向に回転したときに、第1の駆動ギア(2162)を駆動するように動作可能であり、第2のクラッチギア(2180)は、第2のクラッチギア(2180)が時計回り方向に回転したときに、第2の駆動ギア(2168)を駆動するように動作可能である。
【0146】
図42図44Bから最もよく分かるように、バルブアセンブリ(2200)は、バルブ本体(2210)と、バルブアクチュエータ(2230)と、針連結器(2240)と、を含む。具体的には、バルブ本体(2210)は、バルブハウジング(2212)と、バルブハウジング(2212)から近位に延在する円筒形取付部材(2218)と、連結器インサート(2220)と、を含む。バルブハウジング(2212)の形状はほぼ円筒形である。図43から最もよく分かるように、バルブハウジング(2212)はチャンバ(2214)を画定し、このチャンバ(2214)は、一対の供給管(2090、2091)と、より詳細に後述するバルブアクチュエータ(2230)と、を受容するように構成されている。バルブハウジング(2212)の両側は、一対のアクチュエータ開口部(2216)を含み、これら開口部は、バルブアクチュエータ(2230)を、バルブハウジング(2212)を介してチャンバ(2214)の中へと回転可能に受容するように構成されている。本実施例では、第1の供給管(2090)は、ブレブ流体(340)(例えば、BSS)の供給源と連結するように構成されており、第2の供給管(2091)は、治療薬(341)の供給源と連結するように構成されている。各流体供給管(2090、2091)は、流体供給管(2090、2091)をそれぞれの流体源と連結できるようにする従来のルアー機構及び/又は他の構造を含んでもよいことを理解されたい。
【0147】
バルブハウジング(2212)の近位端は、チャンバ(2214)内まで延びる管開口部(2215)を画定する。図に示すように、管開口部(2215)は、供給管(2090、2091)を収容している管(2092)を受容するように構成されている。より詳細に後述するように、管(2092)は供給管(2090、2091)を取り囲んで、作動アセンブリ(2100)による供給管(2090、2091)の不注意な回転を防止する。本実施例では、管開口部(2215)は、管(2092)が圧縮又は締まりばめによってバルブハウジング(2212)に固定されるような大きさとされる。他の実施例では、管(2092)は、別の方法として、接着剤結合、溶接、機械的締結具によって、及び/又は任意のその他の好適な構造若しくは技術を用いて、管開口部(2215)内に固定されてもよい。
【0148】
取付部材(2218)は、並進部材(2140)の遠位端と連結されるように構成されている。具体的には、取付部材(2218)は、並進部材(2140)の取付溝(2144)に係合するように構成された、円筒形内向き突出部(2219)を含む。本実施例では、取付部材(2218)は、バルブアセンブリ(2200)を並進部材(2140)に単に並進で連結するだけであるが、並進部材(2140)はバルブアセンブリ(2200)に対して自由に回転できる状態を維持することを理解されたい。換言すれば、バルブアセンブリ(2200)は並進部材(2140)と共に並進するが、バルブアセンブリ(2200)は並進部材(2140)と共に回転しない。
【0149】
連結器インサート(2220)は、バルブハウジング(2212)から遠位に延出し、より詳細に後述するように、概して、針連結器(2240)の近位端に挿入するように構成されている。連結器インサート(2220)の形状はほぼ円筒形であり、環状凹部(2222)と遠位先端(2224)とを含む。環状凹部(2222)は、ゴム製Oリング(2223)又はその他の密封装置を受容する。遠位先端(2224)は、一対の流体開口部(2226)と、円錐形突起(2228)と、を含む。流体開口部(2226)は一対の管内腔(2227)に対して開いており、これら管内腔(2227)は連結器インサート(2220)を通って延在する。より詳細に後述するように、管内腔(2227)は、概して、供給管(2090、2091)を受容するように構成されており、そのため、流体が流体開口部(2226)を介して針連結器(2240)に送達され得るようになっている。更により詳細に後述するように、円錐形突起(2228)は、流体を流体開口部(2226)から針(2030)の中に導くために、針連結器(2240)によって受容されるように構成されている。
【0150】
バルブアクチュエータ(2230)は、一対の作動アーム(2232)と、コネクタシャフト(2234)と、ピンチバルブ部材(2236)と、を含む。以下に記載するように、アクチュエータアーム(2232)は、概して、コネクタシャフト(2234)に回転力を加え、それによって、ピンチバルブ部材(2236)をコネクタシャフト(2234)の長手方向軸線を中心に回転させるように構成されている。本実施例では、作動アーム(2232)の形状はほぼ矩形である。他の実施例では、作動アーム(223)は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、任意のその他の好適な形状であってもよい。コネクタシャフト(2234)は、各作動アーム(2232)をもう一方に接続するほぼ円筒形のシャフトである。本実施例では、コネクタシャフト(2234)は作動アーム(2232)と一体化したものとして示されている。他の実施例では、コネクタシャフト(2234)は、バルブアクチュエータ(2230)の個別部品であってもよく、圧縮嵌合、接着剤結合、溶接、機械的締結等の任意の好適な接続手段によって作動アーム(2232)に固定され得ることを理解されたい。
【0151】
ピンチバルブ部材(2236)の形状はほぼ楕円形であり、バルブ部材(2236)の外周の周りに延びる環状凹部(2238)を含む。バルブ部材(2236)はコネクタシャフト(2234)と一体構造のものとして示されている。他の実施例では、バルブ部材(2236)は個別部品であってよく、オーバーモールド、接着剤結合、溶接等によってコネクタシャフト(2234)に取り付けられ得ることを理解されたい。各供給管(2090、2091)が環状凹部(2238)内に少なくとも部分的に配置されるように、環状凹部(2238)は、供給管(2090、2091)の外径に対応する曲率内半径を有する。バルブ部材(2236)はコネクタシャフト(2234)上に偏心配置される。より詳細に後述するように、バルブ部材(2236)がほぼ楕円形状であり、かつバルブ部材(2236)が偏心装着されることにより、バルブ部材(2236)が作動アーム(2232)を介してコネクタシャフト(2234)によって回転されたときに、バルブ部材(2236)は供給管(2090、2091)をはさみ、それによって供給管(2090、2091)を封止することができる。
【0152】
針連結器(2240)は、バルブ本体受容部分(2242)と、細長い針受容部分(2250)と、を含む。バルブ本体受容部分(2242)の形状はほぼ円筒形であり、対応する円筒形チャンバ(2244)を画定する。円筒形チャンバ(2244)は、バルブ本体受容部分(2242)の近位端を通って連結器インサート(2220)を受容する大きさである。チャンバ(2244)の遠位端において、バルブ本体受容部分(2242)は、バルブ本体(2210)の円錐形突起(2228)に対応する円錐形凹部(2246)を画定する。円錐形凹部(2246)の遠位端は、1つの流体開口部(2248)を含む。より詳細に後述するように、流体開口部(2248)は針内腔(2254)と連通して、針(2030)に流体を連通させる。円錐形凹部(2246)は、バルブ本体(2210)の円錐形突起(2228)に対応しているが、円錐形凹部(2246)は、円錐形凹部(2246)と円錐形突起(2228)との間に配置された流体空洞(2249)が存在するような大きさとされることを理解されたい。したがって、より詳細に後述するように、流体は、供給管(2090、2091)から、バルブ本体(2210)の流体開口部を通って、流体空洞(2249)に入り、円錐形凹部(2246)の流体開口部(2248)を通って、針内腔(2254)に至る。
【0153】
針受容部分(2250)の形状はほぼ円筒形であり、バルブ本体受容部分(2242)から遠位に延在する。針受容部分(2250)の遠位端は、通って針(2030)を受容するように構成された円錐形開口部(2252)を含む。具体的には、円錐形開口部(2252)は針内腔(2254)と連通しており、この針内腔(2254)は、針受容部分(2250)を通って長手方向に延在する。針内腔(2254)は、遠位部分(2256)と近位部分(2258)とを含む。針(2030)が遠位部分(2256)の中に束縛なく配置されるように、針内腔(2254)の遠位部分(2256)は、針(2030)の外径と比べて大きい直径を有する。針内腔(2254)の近位部分(2258)は、遠位部分(2256)から近位の延在し、円錐形凹部(2246)の流体開口部(2248)と交差する。したがって、針(2030)は近位部分(2258)を通って延在し、その結果、針(2030)が流体チャンバ(2249)と流体連通するようになっている。近位部分(2258)は遠位部分(2256)と比べて相対的に小さい。具体的には、針(2030)が遠位部分(2256)によって支持されるように、遠位部分(2256)の直径は、針(2030)の外径に近い。しかしながら、近位部分(2258)の直径は、針(2030)が近位部分(2258)に挿入可能となるだけ十分に大きいことを理解されたい。
【0154】
近位部分(2258)は、更に、針受容部分(2250)内の側面のノッチ(2260)と交差する。側面ノッチ(2260)は、針受容部分(2250)の外部からの近位部分(2258)へのアクセスを提供する。図示してはいないが、いくつかの実施例では、側面ノッチ(2260)は、針内腔(2254)の近位部分内に針(2030)を固定して取り付けて封止するために、エポキシ又は同様の液状硬化剤などの接着剤で充填されてもよいことを理解されたい。
【0155】
バルブアセンブリ(2200)の代表的な使用は、図44A図44Cに見ることができる。図44Aから最もよく分かるように、作動アーム(2232)はまず、作動アーム(2232)が、バルブアセンブリ(2200)の長手方向軸線に平行である平面に沿って後方に向いている第1の状態で開始する。バルブ部材(2236)は、供給管(2090、2091)がバルブ部材(2236)の環状凹部(2238)内に少なくとも部分的に配置されるように、バルブハウジング(2212)のチャンバ(2214)内に配置される。第1の位置において、バルブ部材(2236)が第1の供給管(2090)をはさまないか、又は、存在する場合、大きな力を第1の供給管(2090)に全く加えないように、第1の供給管(2090)はバルブ部材(2236)に対して緩められている。よって、先行ブレブ流体(340)は、第1の供給管(2090)を介して針(2030)まで連通自在であり得る。しかしながら、図44Aから分かるように、バルブ部材(2236)は、この時点で、第2の供給管(2091)がバルブ部材(2236)によってはさまれる、ないしは別の方法で圧縮されるように構成されかつ位置付けられている。よって、バルブアセンブリ(2200)が第1の位置にある状態では、第1の供給管(2090)は、流体が自在に通過可能であるように開いている一方、第2の供給管(2091)は、流体が第2の供給管(2091)を通って流れることができないように閉じられている。
【0156】
バルブアセンブリ(2200)を第2の状態に作動させるため、操作者は作動アーム(2232)の一方又は両方を把持して、コネクタシャフト(2234)の軸を中心に作動アーム(2232)を回転させることができる。本体(2040)のバルブ作動凹部(2043)の形状により、作動アーム(2232)は、本体(2040)に対して遠位及び上向きに回転可能である。当然ながら、他の実施例では、本体(2040)は、反対方向への回転が可能となるように、異なって構成されてもよい。作動アーム(2232)を回転させると、コネクタシャフト(2234)によってバルブ部材(2236)も回転する。図44Bに示すように、バルブ部材(2236)が、図44Aに示す位置に対して約90°である角度位置に達すると、供給管(2090、2091)に対するバルブ部材(2236)の位置及び構成により、流体が両方の供給管(2090、2091)を通って流れることができる。このようにして、作動アーム(2232)を約90°回転することによって、バルブアセンブリ(2200)は完全に開いた状態へと作動し、このとき、作動アーム(2232)は、バルブアセンブリ(2200)の長手方向軸線に垂直な面に沿って配向されている。いくつかの代替変形形態では、作動アーム(2232)がバルブアセンブリ(2200)の長手方向軸線に平行な平面に沿って配向されたときに、バルブアセンブリ(2200)は完全に開いた状態となり、作動アーム(2232)がバルブアセンブリ(2200)の長手方向軸線に垂直な平面に沿って配向されたときに、バルブアセンブリ(2200)は部分的に開いた状態となることを理解されたい。他の好適な配向及び関係は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。更に、器具(2010)を使用する前に供給管(2090、2091)が継続的にはさまれることによる応力を受けないように、器具(2010)は、図44Bに示される状態で梱包され出荷され得ることを理解されたい。
【0157】
第2の状態へと作動された後、作動アーム(2232)は、図44Cに示される第3の状態へと作動されてもよい。図から分かるように、作動アーム(2232)が第3の状態にあるとき、作動アーム(2232)は、バルブアセンブリ(2200)の長手方向軸線に平行な面に沿って前方に向いている。第3の状態において、バルブ部材(2236)が第2の供給管(2091)をはさまないか、又は、存在する場合、大きな力を第2の供給管(2091)に全く加えないように、第2の供給管(2091)はバルブ部材(2236)に対して緩められている。よって、治療薬(341)は、第2の供給管(2091)を介して針(2030)まで連通自在であり得る。しかしながら、図44Cから分かるように、バルブ部材(2236)は、この時点では、第1の供給管(2090)がバルブ部材(2236)によってはさまれる、ないしは別の方法で圧縮されるように構成されかつ位置付けられている。どちらの特定の供給管(2090)が緩められているか又ははさまれているのかに関わらず、第3の位置の構成は、第1の状態において緩められていた特定の供給管(2090、2091)が、第3の状態においてはさまれるといったものであることを理解されたい。同様に、第1の状態においてはさまれていた特定の供給管(2090、2091)は、第3の状態において緩められる。よって、第3の状態にあるバルブアセンブリ(2200)では、供給管(2090、2091)は、第1の状態と反対の状態となる。
【0158】
使用する際、第1の状態、第2の状態、及び第3の状態は、処置の異なる部分に合わせて構成され得る。例えば、図14I図15F、及び図17Bに示すように、また上述のように、操作者が流体の先行ブレブ(340)を標的部位に分注し終わるまで、バルブアセンブリ(2200)は最初、第1の状態とされ第1の状態に維持され得る。次に、操作者は、バルブアセンブリ(2200)を第2の状態を介して第3の状態に至るまで作動させてもよい。第3の状態に至ったら、図14J図15G、及び図17Cに示すように、また上述のように、操作者は治療薬(341)を標的部位に分注し始めることができる。バルブアセンブリ(2200)が第2の状態にある間、第2の状態に移行する間、又は第2の状態から移行する間、操作者は必ずしも流体を分注している必要はないことを理解されたい。バルブアセンブリ(2200)を使用することができる他の好適な方法は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0159】
図45A図45D及び図46A図46Dは、バルブアセンブリ(2200)を長手方向に駆動し、それによって針(2030)を長手方向に駆動するための、作動アセンブリ(2100)の代表的な使用を示す。器具(2010)を上述の医療処置で使用する場合、作動アセンブリ(2100)のこの作動は図14G及び図15Dに示される段階で開始されて、図14H図15E、及び図17Aに示される状態に至ってもよいことを理解されたい。図45A及び図46Aから分かるように、作動アセンブリ(2100)、バルブアセンブリ(2100)、及び針(2030)は、最初、完全に近位の位置にある。この位置では、並進部材(2140)はネジ付きインサート(2132)に対して近位位置に配置されており、そのため、ネジ部材(2138)は、並進部材(2140)の遠位端近くで、並進部材(2140)のネジ山(2148)に係合する。ノブ部材(2110)が並進部材(2140)に対して並進で固定されているので、ノブ部材(2110)は、ネジ付きインサート(2132)に対しても近位位置にある。図46Aから最もよく分かるように、第1のクラッチギア(2174)が溝(2122)によって近位に押される一方で、第2のクラッチギア(2180)がバネ(2186)によって近位に押されて第2の駆動ギア(2168)に係合するように、溝(2122)がクラッチギア(2174、2180)に対して配向されている。
【0160】
作動アセンブリ(2100)が近位位置にあるとき、操作者はノブ部材(2110)を反時計回り方向又は時計回り方向のどちらかに回転させることができる。ノブ部材(2110)が反時計回り方向に回転される場合、回転部材(2110)は自在に回転するだけとなる。これは2つの理由で起こる。第1に、第1のクラッチギア(2174)は、ノブ部材(2110)の溝(2122)によって、第1の駆動ギア(2162)との係合から離れて近位に離間している。第2に、第2のクラッチギア(2180)のギア歯(2184)の構造により、第2のクラッチギア(2180)がノブ部材(2110)によって、ノブ部材(2110)の溝(2122)を介して反時計回りに回転された場合、第2のクラッチギア(2180)は第2の駆動ギア(2168)に対して滑るだけとなる。
【0161】
作動アセンブリ(2100)、バルブアセンブリ(2200)、及び針(2030)の前進を開始するため、操作者はノブ部材(2110)を時計回り方向に回転させることができる。上記のように、第2のクラッチギア(2180)のギア歯(2184)は、第2のクラッチギア(2180)が時計回り方向に回転されたときに第2の駆動ギア(2168)を駆動するように構成されている。第2の駆動ギア(2170)が第2のクラッチギア(2180)によって駆動されると、第2の駆動ギア(2170)の駆動突起(2170)が並進部材(2140)に作用して、上述のように並進部材(2140)の時計方向回転を開始させる。並進部材(2140)が時計回りに回転すると、並進部材(2140)のネジ山(2148)が、ネジ付きインサート(2132)のネジ部材(2138)に作用する。ネジ付きインサート(2132)は本体(2040)に対して固定されているので、並進部材(2140)が時計回りに回転するときに、ネジ付きインサート(2132)は並進部材(2140)を遠位に並進させるように作用する。並進部材(2140)はノブ部材(2110)に対して並進で固定されているので、並進部材(2140)が遠位に並進すると、並進部材(2140)はノブ部材(2110)を遠位に並進させるように作用する。同様に、バルブアセンブリ(2200)は並進部材(2140)に対して並進で固定されているので、並進部材(2140)が並進すると、並進部材(2140)は、バルブアセンブリ(2200)を遠位に並進させるようにも作用する。
【0162】
操作者はノブ部材(2110)を引き続き時計方向に回転させて、針(2030)を、カニューレ(2020)の遠位端の外へと送り出すことができる。図45C及び図46Cは、作動アセンブリ(2100)、バルブアセンブリ(2200)、及び作動アセンブリ(2100)、バルブアセンブリ(2200)の直前の位置にある針(2030)を示し、針(2030)は完全な遠位まで移動されている。この位置では、第1のクラッチギア(2174)及び第2のクラッチギア(2180)の両方が、それぞれ第1の駆動ギア(2164)及び第2の駆動ギア(2170)と係合状態にある。したがって、図45C及び図46Cに示す位置では、ノブ部材(2110)を時計回り方向又は反時計回り方向のいずれかに回転させて、作動アセンブリ(2100)をそれぞれ遠位又は近位に駆動することができる。しかしながら、図46Cから最もよく分かるように、この位置において、回転部材(2110)は、より詳細に後述するように、更なる前進により回転部材(2110)の溝(2122)が、第2の駆動ギア(2170)との係合から外れるように第2のクラッチギア(2180)を駆動し始める位置まで、遠位に前進する。
【0163】
図45D及び図46Dから分かるように、回転部材(2110)が時計回り方向に回転されて、作動アセンブリを、図45C及び図46Dに示される位置よりもわずかに遠位に並進させている。この位置において、作動アセンブリ(2100)、バルブアセンブリ(2200)、及び針(2030)は、本体(2040)に対して最も遠位の位置となる。図から分かるように、この位置は、針(2030)がカニューレ(2020)の遠位端に対して最も遠位の位置まで進められているのに対応する。この最も遠位の位置において、並進部材(2140)は、ネジ付きインサート(2132)のネジ部材(2138)が、ネジ山(2148)の近位端のわずか遠位において、並進部材(2140)のネジ山(2148)に係合するように、遠位に並進されている。ノブ部材(2110)は並進部材(2140)に対して並進で固定されているので、並進部材(2140)はノブ部材(2110)を、本体(2040)に対してその最も遠位の位置まで並進させている。ノブ部材(2110)がその最も遠位の位置にあるとき、ノブ部材(2110)の溝(2122)は、溝(2122)が、第2の駆動ギア(2168)との係合から外れるように第2のクラッチギア(2180)を駆動するように、位置付けられている。第1のクラッチギア(2174)は、時計回り方向に回転されたときに滑るだけであり、第2のクラッチギア(2180)はこの段階で第2の駆動ギア(2168)との係合から外れているので、ノブ部材(2110)の更なる時計方向の回転は、ノブ部材(2110)の自由回転をもたらすだけであることを理解されたい。
【0164】
針(2030)がこの遠位位置にある状態で、操作者は、次に、バルブアセンブリ(2200)を図44Aに示す開放配置へと作動させて、管(2090、2091)及び針(2030)を介して治療薬を送達可能にすることができる。換言すれば、この段階で、器具(2010)を使用して、上記の図14I図14J図15F図15G,及び図17B図17Cに示す医療処置の工程を実施することができる。その後、操作者は、針(2030)を後退させることを所望する場合がある。
【0165】
ノブ部材(2110)が遠位位置にあるときに、ノブ部材(2110)の溝(2122)は、第2の駆動ギア(2168)との係合から外れるように第2のクラッチギア(2180)を駆動するが、第1のクラッチギア(2180)は第1の駆動ギア(2162)との係合を維持することを理解されたい。したがって、ノブ部材(2110)の更なる時計方向の回転は、第1のクラッチギア(2180)を第1の駆動ギア(2162)に対して滑らせるが、ノブ部材(2110)の反時計回りの回転は、第1のクラッチギア(2180)に第1の駆動ギア(2162)を反時計回り方向に駆動させる。第1の駆動ギア(2162)の反時計回り方向への回転は、第1の駆動ギア(2162)の駆動突起(2164)を介して並進部材(2140)を反時計回り方向に回転させる。並進部材(2140)を反時計回り方向に回転させると、ネジ山(2148)はネジ付きインサート(2132)に係合して、並進部材(2140)を近位に並進させる。よって、遠位位置にある回転部材(2110)を反時計回りに回転させることにより、並進部材(2140)は近位に並進し、それによって、作動アセンブリ(2100)、バルブアセンブリ(2200)、及び針(2030)を本体(2040)に対して後退させる。
【0166】
作動アセンブリ(2100)、バルブアセンブリ(2200)、及び針(2030)を、図45A及び図46Aに示す近位位置に戻すために、操作者は、前述のように、回転部材(2110)の溝(2122)が、第1の駆動ギア(2162)との係合から外れるように第1のクラッチギア(2174)を押すまで、回転部材(2110)を反時計回り方向に回転し続けてもよい。作動アセンブリ(2100)は、バルブアセンブリ(2200)及び針(2030)を近位位置と遠位位置との間で並進させるために通常使用されるものとして本明細書に記載されているが、そのような限定を意図するものではないことを理解されたい。例えば、操作者は、バルブアセンブリ(2200)及び針(2030)を任意の所望の位置に並進させるために、作動アセンブリ(2100)を使用してもよい。例示に過ぎない1つの使用では、針(2030)は、カニューレ(2020)の遠位に部分的に駆動されるだけであってもよい。別の代表的な使用では、操作者は、針がカニューレ(2020)の遠位端から出て前進する前の時点まで、針(2030)を部分的に前進させるだけであってもよい。次いで、操作者は、針(2030)をカニューレ(2020)の外に前進させることなく、処置を中止するか、ないしは別の方法で針(2030)をカニューレ(2020)に対して後退させることを望む場合がある。当然ながら、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、任意の他の好適な量の前進又は後退を用いてよい。
【0167】
作動アセンブリ(2100)を回転させてバルブアセンブリ(2200)及び針(2030)を作動させると、バルブアセンブリ(2200)及び針(2030)は、作動アセンブリ(2100)に対して実質的に回転で静止した状態を維持することを理解されたい。上記のように、そのような機能性は、作動アセンブリ(2100)の並進部材(2140)とバルブアセンブリ(2200)のバルブ本体(2210)との間の連結によって促進される。更に、普通であればバルブアセンブリ(2200)を回転させる可能性のあるトルクを、回転部材(2110)及び並進部材(2140)が供給管(2090、2091)に加えるのを防止するために、管(2092)は、回転部材(2110)及び並進部材(2140)の内腔(2114、2145)を通って延在することを理解されたい。本実施例では、バルブアセンブリ(2200)の回転を防止して、針(2030)が並進はするが回転はしないようにするのが望ましくあり得る。これは、針(2030)の幾何学的形状のため、及びその幾何学的形状と組織とが相互作用する可能性のためである。当然ながら、他の実施例では、針(2030)は、回転するのが望ましいように構成されてもよい。そのような実施例では、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるように、バルブアセンブリ(2200)の回転を防止する機構を省略又は変更してもよい。
【0168】
E.例示的な代替支持アセンブリ
図47図49は、前述の支持アセンブリ(110)と同様である例示的な代替支持アセンブリ(2510)を示す。しかしながら、支持アセンブリ(110)とは異なり、支持アセンブリ(2510)は比較的剛性の高い構造を含み、前述の器具(2010)を支持するように構成されている。支持アセンブリ(2510)は、垂直支持アーム(2520)と、クランプアセンブリ(2540)と、水平支持アーム(2560)と、を含む。垂直支持アーム(2520)は比較的剛性であり、概して、支持アセンブリ(2510)を従来の眼科手術用リストレスト又はその他の固定具に取り付けるのを可能にする。垂直支持アーム(2520)は上向きに延在し、ほぼ矩形の断面を有する。一体となったクレードル部材(2522)が、支持アーム(2520)の上端部の近くに含まれる。クレードル部材(2522)は、概して、部分的に円筒形状の凹部として成形され、これによりクレードル部材(2522)は、リストレスト又はその他の固定具の一部であり得る管状構造体を受容するように構成されている。支持アーム(2520)の上端部は、より詳細に後述するように、クランプアセンブリ(2540)を支持するように構成された、遠位に延出する突出部(2524)を更に含む。これも更により詳細に後述するように、垂直支持アーム(2520)は、クランプアセンブリ(2540)を取り付けるための穴(図示せず)を含み得る。
【0169】
クランプアセンブリ(2540)は、作動ノブ(2542)と、クランプブラケット(2546)と、を含む。作動ノブ(2542)は、操作者の手によって回転されるように構成されている。ネジシャフト(2544)が作動ノブ(2542)から遠位に延在する。より詳細に後述するように、作動ノブ(2542)は、概して、回転して、ネジシャフト(2544)を介してクランプブラケット及び垂直支持アーム(2520)と係合するように構成されている。クランプブラケット(2546)は、近位部分(2548)と、遠位部分(2552)と、近位部分(2548)と遠位部分(2552)との間に延在する一対のアーム(2556)と、を含む。近位部分(2548)は、近位部分(2548)を中心とする開口部(2550)を含む。開口部(2550)は、そこを通してネジシャフト(2542)を垂直支持アーム(2520)まで通過させるために、作動ノブ(2542)のネジシャフト(2544)を受容するように構成されている。遠位部分(2552)の形状は、ほぼ部分円筒形状の凹部(2554)を画定するようにほぼ湾曲状であり、垂直支持アーム(2520)のクレードル部材(2522)と相補的である。より詳細に後述するように、クレードル部材(2522)及び遠位部分(2552)は、一緒になってリストレスト又はその他の固定具の一部であり得る管状構造体をクランプするように動作可能である。
【0170】
アーム(2556)は、近位部分(2548)と遠位部分(2552)との間に延在している。具体的には、アーム(2556)は、近位部分(2548)と遠位部分(2552)との間に延びるときに、概して上向きに湾曲している。そのような湾曲は、より詳細に後述するように、クランプアセンブリ(2540)のクランプ作動を可能にするように構成されている。各アーム(2556)は、遠位部分(2552)の近くに配向された穴(2558)を含む。穴(2558)により、ネジ又はその他の締結具を介してアーム(2556)を垂直支持アーム(2520)の突出部(2524)に枢動可能に取り付けることが可能となる。
【0171】
水平支持アーム(2560)は、調整可能なカラー(2562)と、滑動可能なシャフト(2568)と、取付ブラケット(2572)と、を含む。調整可能なカラー(2562)はほぼL字形であり、滑動可能なシャフト(2568)が垂直支持アーム(2520)に対して滑動するのを選択的に可能にするように構成されている。具体的には、調整可能なカラー(2562)の下端部は、取付シャフト(2564)と、遠位開口部(図示せず)と、近位開口部(2565)と、調整ボタン(2566)と、を含む。取付シャフト(2564)は、調整可能なカラー(2562)から下向きに延びて、垂直支持アーム(2520)の中に至る。より詳細に後述するように、取付シャフト(2564)は、調整可能なカラー(2562)を垂直支持アーム(2520)に取り付け、これにより調整可能なカラー(2562)は、垂直支持アーム(2520)に対して選択的に回転及び並進できるようになっている。
【0172】
調整可能なカラー(2562)の遠位開口部及び近位開口部(2565)は、調整可能なカラー(2562)を通って延在する内腔(図示せず)を画定する。開口部(2565)は、滑動可能なシャフト(2568)が調整可能なカラー(2562)を通って長手方向に延びることができるように、滑動可能なシャフト(2568)を受容するように構成されている。より詳細に後述するように、調整可能なカラー(2562)は、滑動可能なシャフト(2568)を選択的に係止及び係止解除するように構成されており、その結果、滑動可能なシャフト(2568)は、調整可能なカラー(2562)内を垂直支持アーム(2520)に対して選択的に並進できるようになっている。
【0173】
滑動可能なシャフト(2568)の形状はほぼ楕円形であり、滑動可能なシャフト(2568)を通って長手方向に延在する中央溝(2570)を含む。いくつかの実施例では、中央溝(2570)は、調整可能なカラー(2562)の内腔内に配設されたピン又はその他の機構を受容して、滑動可能なシャフト(2568)の水平位置を維持することができる。当然ながら、そのような機構はあくまでも任意であり、いくつかの実施例では省略されてもよい。
【0174】
取付ブラケット(2572)は、前述の器具(2010)の少なくとも一部を受容するように構成されている。具体的には、取付ブラケット(2572)は、割り出しピン(2574)と、クイックリリースハンドル(2576)と、を含む。割り出しピン(2574)は、器具(2010)の対応する幾何学的形状に係合して、取付ブラケット(2572)に対する器具(2010)の位置を割り出すことができる。クイックリリースハンドル(2576)は取付ブラケット内部の機構と連通しており、それによって、取付ブラケット(2572)からの器具(2010)の解除、又は支持アセンブリ(2510)からの取付ブラケット(2572)の解除が容易となり得る。いくつかの実施例では、取付ブラケット(2572)は、クイックリリースハンドル(2576)を含むことに加えて又は含む代わりに、支持アセンブリ(2510)からの器具(2010)の迅速な着脱を可能にするために、器具(2010)内の対応する磁石に係合し得る磁石を含んでもよいことを理解されたい。
【0175】
支持アセンブリ(2510)の代表的な使用を図48及び図49に示す。図から分かるように、支持アセンブリ(2510)は、(例えば、矢印(2580、2582、2584)によって示されるような)3つの別個の可動域にわたって移動可能である。具体的には、図48から分かるように、支持アセンブリ(2510)は、まず、矢印(2580)が示すように垂直に作動させることができる。支持アセンブリ(2510)の垂直作動を可能にするために、操作者はボタン(2566)を押してよく、このボタン(2566)は、垂直支持アーム(2520)内の内部機構を作動させ、それによって3つの可動域全てにわたって調節することができる。取付シャフト(2564)が回転自在である状態で、操作者は水平支持アーム(2560)を把持し、水平支持アーム(2560)を所望の高さまで移動させることができる。
【0176】
滑動可能なシャフト(2568)はまた、矢印(2582)が示すように垂直支持アーム(2520)に対して横方向に並進可能である。滑動可能なシャフト(2568)を並進させるためには、操作者はボタン(2566)を押して、滑動可能なシャフト(2568)の並進の係止を解除することができる。図示してはいないが、ボタン(2566)は、ボタン(2566)を押したときに係合解除することができるバネ仕掛けの係止機構又はその他の同様の装置と連通していてもよいことを理解されたい。ボタン(2566)を押している間に、操作者は水平支持アーム(2560)を把持し、水平支持アーム(2560)を所望の横方向位置まで移動させることができる。
【0177】
図49から分かるように、水平支持アーム(2560)は、垂直支持アーム(2520)に対して矢印(2584)が示すように回転させることもできる。そのような回転もまた、上述のようにボタン(2566)を押すことによって開始される。具体的には、ボタン(2566)を押すことによって垂直支持アーム(2520)内部の機構が作動して、垂直支持アーム(2520)内の取付シャフト(2564)の回転及び並進が可能となる。取付シャフト(2564)が回転自在である状態で、操作者は水平支持アーム(2560)を把持し、水平支持アーム(2560)を所望の角度位置まで回転させることができる。支持アセンブリ(2510)を使用することができる他の好適な方法は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。同様に、器具(2010)を支持することができる他の好適な方法は、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなるであろう。
【0178】
VI.その他
本明細書に記載する処置及び装置は、加齢に伴う黄斑変性症の治療との関連において論じられているが、かかる限定を意図又は意味するものではないことを理解すべきである。本明細書に記載する処置及び装置は、様々な他の種類の医学的状態を治療するために用いることができる。単なる例として、本明細書に記載する処置及び装置(並びにその変形例)を用いて、網膜色素変性、糖尿病性網膜症、ウェット型加齢黄斑変性症、及び/又はその他の医学的状態を治療することができる。本明細書に記載する処置及び装置を用いることができる様々な好適な医療状況は、当業者には明らかとなろう。
【0179】
本明細書に記載される器具の変形のいずれも、本明細書で上述されるものに加えて、又はそれらの代わりに、様々な他の機構を含み得ることを理解されたい。あくまで一例として、本明細書で説明する装置のいずれも、参照により本明細書に組み入れられる様々な参考文献のいずれかで開示されている様々な機構の1つ以上を含むこともできる。
【0180】
本明細書で説明した教示、表現、実施形態、実施例などの任意の1つ以上を、本明細書で説明される他の教示、表現、実施形態、実施例などの任意の1つ以上と組み合わせてもよいことが理解されるべきである。したがって、上記の教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して分離して考慮されるべきではない。本明細書の教示を鑑みれば、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が、当業者には容易に明らかとなるであろう。かかる改変例及び変形例は、特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0181】
本明細書に参照により組み込まれると言及されるいかなる特許、刊行物、又はその他の開示内容も、その全体又は一部において、組み込まれた内容が現行の定義、見解、又は本開示に記載された他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれることが認識されるべきである。このように、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載されている開示は、参照により本明細書に組み込まれる任意の矛盾する内容に取って代わるものとする。本明細書に参照により援用するものとされているが、既存の定義、見解、又は本明細書に記載された他の開示内容と矛盾する全ての内容、又はそれらの部分は、援用された内容と既存の開示内容との間にあくまで矛盾が生じない範囲でのみ援用するものとする。
【0182】
上記に述べた変形形態は、1回の使用後に廃棄されるように設計されてもよいし、又は複数回使用されるように設計されてもよい。いずれか又は両方の場合において、各形態は、少なくとも1回の使用後に再利用のために再調整を行うことができる。かかる再調整には、装置の分解工程、それに続く特定の部品の洗浄又は交換工程、及びその後の再組み立て工程の任意の組み合わせが含まれ得る。特に、装置の特定の形態は分解することができ、また、装置の任意の数の特定の部材又は部品は、任意の組み合わせで選択的に交換するか取り外してもよい。特定の部品の洗浄及び/又は交換の際、装置のいくつかの変形例は、再調整用の施設で、又は処置の直前に操作者によって、その後の使用のために再組み立てされてもよい。当業者であれば、装置の再調整において、分解、洗浄/交換、及び再組み立てのための様々な技術を使用できる点を認識するであろう。かかる技術の使用、及びその結果として得られる再調整された装置は、全て本出願の範囲内にある。
【0183】
一例にすぎないが、本明細書に記載される形態は、手術の前及び/又は後で滅菌されてもよい。1つの滅菌法では、装置をプラスチック製又はTYVEK製の袋などの閉鎖かつ密封された容器に入れる。次いで、容器及び装置を、γ線、X線、又は高エネルギー電子線などの、容器を透過する放射線場に置くことができる。放射線は、装置上及び容器内の細菌を死滅させることができる。この後、滅菌された装置を、後の使用のために、滅菌容器中で保管することができる。装置はまた、これらに限定されるものではないが、β線若しくはγ線、エチレンオキシド、又は水蒸気などの、当該技術分野では既知のその他の任意の技術を使用して滅菌することもできる。
【0184】
以上、本発明の様々な実施形態を図示及び説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者による適切な改変により、本明細書に記載される方法及びシステムの更なる適合化を実現することができる。そのような可能な改変のいくつかについて述べたが、その他の改変も当業者には明らかであろう。例えば、上記で検討した例、実施形態、幾何形状、材料、寸法、比率、工程などは、例示的なものであって必須のものではない。したがって、本発明の範囲は以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面において図示及び説明した構造及び動作の細部に限定されないものとして理解される。
【0185】
〔実施の態様〕
(1) 治療薬を眼に送達するための装置であって、
(a)本体と、
(b)前記本体から遠位に延在するカニューレであって、患者の眼の脈絡膜と強膜との間に挿入可能であるように大きさが決められ、構成されており、長手方向軸線を画定する、カニューレと、
(c)中空針であって、前記カニューレに対して滑動可能である、中空針と、
(d)作動アセンブリであって、前記針を前記カニューレに対して作動させて、それによって、前記針の遠位部分を、前記カニューレの前記長手方向軸線に対して斜めに配向された出射軸に沿って駆動するように動作可能である、作動アセンブリと、
を含む、装置。
(2) 前記作動アセンブリが、前記針を作動させるために前記本体に対して移動可能である作動部材を含む、実施態様1に記載の装置。
(3) 前記作動部材が、前記針を作動させるために前記本体に対して並進可能である、実施態様2に記載の装置。
(4) 前記作動部材が、前記針を作動させるために前記本体に対して回転可能である、実施態様2に記載の装置。
(5) 前記作動アセンブリが、前記作動部材と関連するネジ山付き部材を含み、前記ネジ山付き部材は、前記作動部材が前記本体に対して回転したときに、前記本体内のネジ山付き穴に係合して前記針を作動させるように構成されている、実施態様4に記載の装置。
【0186】
(6) 前記針が鋭い遠位先端を含む、実施態様1に記載の装置。
(7) 前記針の前記鋭い遠位先端が、第1の斜面と、第2の斜面と、第3の斜面と、を含み、前記第1の斜面、前記第2の斜面、及び前記第3の斜面がそれぞれ、互いに対して斜めに配向されている、実施態様6に記載の装置。
(8) 前記出射軸が、前記カニューレの前記長手方向軸線に対して約5°~約30°の角度で配向されている、実施態様1に記載の装置。
(9) 前記出射軸が、前記カニューレの前記長手方向軸線に対して約7°~約9°の角度で配向されている、実施態様1に記載の装置。
(10) 前記カニューレが鈍い遠位先端を含む、実施態様1に記載の装置。
【0187】
(11) 前記カニューレが傾斜した遠位端を含み、前記傾斜した遠位端が傾斜角度を有し、前記傾斜角度が約10°~約30°である、実施態様1に記載の装置。
(12) 前記カニューレが、前記カニューレの長さにわたって長手方向に延在する複数の内腔を画定し、前記複数の内腔のうちの少なくとも1つの内腔が、前記針を滑動可能に受容するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
(13) 前記カニューレが、0.7×10-6Nm~11.1×10-6Nmの曲げ剛性を有する、実施態様1に記載の装置。
(14) 前記カニューレが、2.0×10-6Nm~6.0×10-6Nmの曲げ剛性を有する、実施態様1に記載の装置。
(15) バルブアセンブリを更に含み、前記バルブアセンブリが、流体源と前記針との間の流体連結を提供するように動作可能であり、前記バルブアセンブリが、前記本体に対して前記針と共に並進するように構成されている、実施態様1に記載の装置。
【0188】
(16) 外科用器具の使用方法であって、前記外科用器具は、カニューレと、前記カニューレに対して移動可能である中空針と、を含み、前記方法は、
(a)患者の眼に切開を形成することによって強膜切開を行う工程であって、前記切開は、前記眼の強膜層を通って延びて、前記眼の脈絡膜上腔へのアクセスを提供する、工程と、
(b)前記強膜切開を介して前記カニューレを挿入する工程と、
(c)前記脈絡膜と前記強膜との間に前記カニューレを前進させて、前記カニューレの遠位端を前記脈絡膜上腔の後方領域に位置付ける工程と、
(d)前記網膜を穿孔することなく、前記針を前記カニューレに対して前進させ、前記脈絡膜を通って網膜下腔内に至らしめる工程と、
(e)前記前進した針を介して、治療薬を前記網膜下腔内に送達する工程と、
を含む、外科用器具の使用方法。
(17) 前記前進した針を介して前記治療薬を送達する前に、前記前進した針を介して流体の先行ブレブを送達することを更に含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 患者の眼に縫合糸ループを取り付ける工程を更に含み、前記縫合糸ループを取り付ける前記行為が、縫合糸を前記患者の眼に通して、前記縫合糸によって画定された少なくとも1つのループを形成する工程を含み、前記カニューレを挿入する前記行為が、前記縫合糸ループに前記カニューレを通す工程を含む、実施態様16に記載の方法。
(19) 患者の眼に治療液を脈絡膜上投与する方法であって、
(a)前記患者の眼に縫合糸を通して、前記縫合糸によって画定された少なくとも1つのループを形成する工程と、
(b)前記眼の少なくとも一部を切開して、前記眼の前記脈絡膜へのアクセスを提供する工程と、
(c)カニューレを、前記縫合糸によって画定された前記少なくとも1つのループに通し、前記眼の少なくとも一部を切開することによって形成された切開の中に誘導する工程と、
(d)前記カニューレを通して針を前進させて前記脈絡膜を貫通し、前記治療液を投与する工程と、
を含む、方法。
(20) 前記方法が、前記患者の眼の瞳孔を介して直接可視化することによって、前記カニューレを注入部位まで誘導する工程を更に含む、実施態様19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
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図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図14H
図14I
図14J
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図15B
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図15E
図15F
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図17B
図17C
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