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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】生産物の管理システム
(51)【国際特許分類】
   A01K 61/59 20170101AFI20220107BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20220107BHJP
   A01K 29/00 20060101ALI20220107BHJP
   A01G 7/00 20060101ALI20220107BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20220107BHJP
   G16Y 10/15 20200101ALI20220107BHJP
【FI】
A01K61/59
G05B19/418 Z
A01K29/00 A
A01G7/00 603
G06Q10/06
G16Y10/15
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019131051
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021013361
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2021-07-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】506042645
【氏名又は名称】株式会社ウフル
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】特許業務法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹廣 洋児
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 美由紀
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 祐昌
(72)【発明者】
【氏名】竹之下 航洋
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇
(72)【発明者】
【氏名】西村 亮治
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-148007(JP,A)
【文献】特開2001-256289(JP,A)
【文献】特開2006-254807(JP,A)
【文献】特開2000-166421(JP,A)
【文献】特開平09-149742(JP,A)
【文献】特開2003-052275(JP,A)
【文献】国際公開第2017/199927(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 61/00
G05B 19/418
A01K 29/00
A01G 7/00
G06Q 10/06
A01K 61/59
G16Y 10/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産物の生育を管理する生産物管理システムであって、
生産物の生産拠点に設けられるとともにデータの出力を行う生産拠点側装置と、
管理拠点に設けられるとともに前記データを取得する管理拠点側装置と、
を有し、
前記生産拠点側装置は、前記生産拠点において前記生産物を生育する過程で生成又は入力される管理データを出力し、
前記管理拠点側装置は、前記管理データを取得した場合に、前記管理データ、前記管理データを加工又は検査して生じる関連情報、前記管理データの受信に応じて生成される認証情報、の少なくともいずれか一つを記憶又は出力し、
さらに、前記管理拠点側装置は、
取得した前記管理データが予め設定された基準条件を満たすか否かを判定する判定部と、
前記管理データが前記基準条件を満たしていないと前記判定部が判定した場合に前記生産拠点側装置に対して作業指示を送信する処理部と、
を有し、
前記生産拠点側装置は、
前記基準条件を満たすか否かを判定する第2の判定部と、
前記基準条件を前記管理データが満たしていないと前記第2の判定部が判定した場合に前記生産拠点内において作業指示を出力する第2の処理部と、
を有し、
前記第2の判定部の判定方法は、前記判定部の判定方法とは異なる
生産物管理システム。
【請求項2】
前記管理拠点側装置と前記生産拠点側装置との間のネットワークが不通である場合に、前記生産拠点側装置は、前記基準条件を前記管理データが満たすか否かを前記第2の判定部によって判定し、前記作業指示を前記第2の処理部によって出力する、
請求項1に記載の生産物管理システム。
【請求項3】
前記管理データは、複数の項目のデータを含み、
前記基準条件は、前記項目ごとに定められ、
前記作業指示は、前記項目ごとに対応付けられた指示を含む、
請求項1又は請求項2に記載の生産物管理システム。
【請求項4】
前記作業指示は、濾過材の交換や洗浄、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水流調整、水産物の体格確認に関する作業の中から選ばれるいずれかの指示を少なくとも含む、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の生産物管理システム。
【請求項5】
前記作業指示は、給餌、給餌量の調整、換水、注水、溶存酸素量の調整、水温調整、水産物の体格確認に関する作業の中から選ばれるいずれかの指示を少なくとも含む
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の生産物管理システム。
【請求項6】
複数の前記生産拠点側装置を有し、
各々の前記生産拠点側装置は、複数の生産拠点の各々に設けられ、
前記管理拠点側装置は、複数の生産拠点の各々に設けられた前記生産拠点側装置から出力された管理データに対応する情報を一括して記憶又は出力する
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の生産物管理システム。
【請求項7】
前記管理データは、物理的又は化学的パラメータ、作業者の労働条件、作業報告、飼育環境条件の内の少なくとも一つの種類のデータを含む
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の生産物管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産物の管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、生産物を生育するシステムの一例として、閉鎖循環式養殖システムが開示されている。特許文献1の養殖システムは、養殖水槽に電解処理ラインを接続して、養殖用水のPH値センサ、アンモニアセンサ、硝酸センサの電気信号に応答させるとともにコントローラによりインバータ電源を制御する。これにより、交流電解処理装置の処理能力を自動的に制御して、高効率で低コストの魚介類の養殖を実現しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-52275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生産拠点で生育システム(例えば養殖システムなど)を導入して生産物を生育する場合、システムの運用方法、作業者の作業状況、飼育環境などによって生産物の品質が大きく変わり得る。しかし、特許文献1で開示されるシステムを含め、従来の生育システムでは、生産拠点で適正な運用がなされているかを客観的に示す情報を生産拠点外で把握することはできなかった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料を生産拠点とは異なる拠点で確保することができる生産物管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つである生産物管理システムは、
生産物の生育を管理する生産物管理システムであって、
生産物の生産拠点に設けられるとともにデータの出力を行う生産拠点側装置と、
管理拠点に設けられるとともにデータを取得する管理拠点側装置と、
を有し、
生産拠点側装置は、生産拠点において生産物を生育する過程で生成又は入力される管理
データを出力し、
管理拠点側装置は、管理データを取得した場合に、管理データ、管理データを加工又は
検査して生じる関連情報、管理データの受信に応じて生成される認証情報、の少なくとも
いずれか一つを記憶又は出力し、
さらに、管理拠点側装置は、
取得した管理データが予め設定された基準条件を満たすか否かを判定する判定部と、
管理データが基準条件を満たしていないと判定部が判定した場合に生産拠点側装置に対
して作業指示を送信する処理部と、
を有し、
生産拠点側装置は、
準条件を満たすか否かを判定する第2の判定部と

準条件を管理データが満たしていないと第2の判定部が判定した場合に生産拠点内において作業指示を出力する第2の処理部と、
を有し、
第2の判定部の判定方法は、判定部の判定方法とは異なる
【0007】
上記の生産物管理システムでは、生産拠点側装置が「生産拠点において生産物を生育する過程で生成又は入力される管理データ」を出力し、管理拠点側装置は、生産拠点側装置が出力する管理データを取得する。よって、生産拠点において生産物を生育する過程で生じるデータを管理拠点で管理できるようになる。なお、管理データは生産拠点側装置から管理拠点側装置に直接送受信されてもよく、クラウドコンピューティングを利用して、ストレージやデータベース、サーバなどに生産拠点側装置から管理情報をアップロード(出力)し、管理拠点側装置がストレージやデータベース、サーバなどから管理データをダウンロードもしくはブラウジングにより取得してもよい。
その上で、管理拠点側装置は、上記管理データを取得した場合に、「管理データ」、「管理データを加工又は検査して生じる関連情報」、「管理データの受信に応じて生成される認証情報」、の少なくともいずれか一つを記憶又は出力する。
生産拠点での生産物の生育に伴って生産拠点側から出力される管理データそのもの、又は上記関連情報、若しくは上記認証情報を管理拠点側装置に記憶しておけば、生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料を管理拠点側装置に蓄積することができる。同様に、管理データそのもの、又は上記関連情報、若しくは上記認証情報を管理拠点側装置から出力すれば、その出力を受ける装置や人が生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料を取得することができる。
いずれの場合でも、生産拠点から送信された管理データ又は関連情報、若しくは認証情報を生産拠点から独立した形で管理拠点側で管理することが可能となり、生産拠点で生産物の生育が適正になされていることの認証や管理データに基づく何らかの対処(例えば、生産拠点への指示や管理データの解析・研究等)を行う上で有利になる。
【0008】
上記の生産物管理システムにおいて、管理拠点側装置は、取得した管理データが予め設定された基準条件を満たすか否かを判定する判定部と、管理データが基準条件を満たしていないと判定部が判定した場合に生産拠点側装置に対して作業指示を送信する処理部と、を有していてもよい。
このように、管理拠点側装置が上記判定部と上記処理部とを有していれば、管理データが基準条件を満たすか否かを管理拠点で判定し、管理データが基準条件を満たしていない場合に生産拠点に対して作業指示を与えることができるため、生産拠点では、この作業指示に応じて生育に関わる事項を修正し、生産に関する事項の適正化を図ることができる。
【0009】
上記の生産物管理システムにおいて、生産拠点側装置は、管理データが予め設定された基準条件を満たすか否かを判定する第2の判定部と、管理データが基準条件を満たしていないと第2の判定部が判定した場合に作業指示を出力する第2の処理部と、を有していてもよい。
このように、生産拠点側装置が上記第2の判定部と上記第2の処理部とを有していれば、管理データが基準条件を満たすか否かを生産拠点で判定し、管理データが基準条件を満たしていない場合に生産拠点内の他の装置に作業指示を与えることができるため、通信環境の不具合等により管理拠点側装置と生産拠点側装置との間のネットワークが不通となった場合でも、生産拠点側装置から生産拠点内の他の装置に作業指示を与えることができる。
【0010】
上記の生産物管理システムにおいて、作業指示は、給餌、給餌量の調整、換水、注水、濾過材の交換や洗浄、溶存酸素量の調整、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水温調整、水流調整、水産物の体格確認に関する作業の中から選ばれるいずれかの指示を少なくとも含んでいてもよい。
管理データが基準条件を満たしていない場合に管理拠点から生産拠点に対して上記指示(給餌、給餌量の調整、換水、注水、濾過材の交換や洗浄、溶存酸素量の調整、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水温調整、水流調整、水産物の体格確認に関する作業の中から選ばれるいずれかの指示)を与えることができれば、生産物の生育環境の是正が可能となり、生産拠点において生産の適正化を一層図りやすくなる。
【0011】
上記の生産物管理システムにおいて、管理データは、物理的又は化学的パラメータ、作業者の労働条件、作業報告、飼育環境条件の内の少なくとも一つの種類のデータを含んでいてもよい。
管理データがこのような種類のデータを含んでいれば、生産拠点で生産物を生育する過程で生じる物理的又は化学的パラメータ、作業者の労働条件、作業報告、飼育環境条件の少なくともいずれかの要素を管理拠点側で取得することができるようになり、その要素を管理拠点側で管理することができるようになる。例えば、管理データが「生産拠点で生産物を生育する過程で生じる物理的又は化学的パラメータ」を含んでいる場合、このパラメータそのもの、又はこのパラメータを加工又は検査して生じる関連情報、若しくは、このパラメータの受信に応じて生成される認証情報を「生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料」とすることができる。このような判断材料が得られれば、生産拠点で生産物の生育が適正になされていることの認証や管理データに基づく生産拠点への指示や管理データの解析・研究等を行う上でより有用である。そして、管理データが、労働条件、作業報告、飼育環境条件などを含んでいる場合には、この管理データを適正な条件のもと生育された生産物であることを証明する証拠として、生産物の安全性・品質を認証する認証機関への申請手続きを確実かつ簡便に行うことができる。
【0012】
上記の生産物管理システムは、複数の生産拠点側装置を有していてもよい。そして、各々の生産拠点側装置は、複数の生産拠点の各々に設けられていてもよい。
このように、複数の生産拠点の各々に生産拠点側装置が設けられていれば、複数の生産拠点の各々から管理拠点に対して管理データを出力することができるようになり、管理拠点では、各生産拠点から独立した形で各管理データを一括して管理することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料を生産拠点とは異なる拠点で確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、第1実施形態の生産物管理システムを概念的に示す説明図である。
図2図2は、生産拠点で用いられる生産システムを概念的に示す説明図である。
図3図3は、生産拠点側装置の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
図4図4は、管理拠点側装置の電気的構成を概念的に示すブロック図である。
図5図5は、各時間に生成される管理データを概念的に説明する説明図である。
図6図6は、各時間に生成される管理データの具体例を概念的に説明する説明図である。
図7図7は、項目毎に基準条件と指示を対応付けた情報を概念的に説明する説明図である。
図8図8は、各管理データにおいて各項目が基準条件を満たすか否かを管理拠点側装置で判定した場合の判定結果例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
1.生産物管理システムの概要
第1実施形態について、図面を参照して説明する。
図1で示す生産物管理システム1は、生産物の生育を管理するシステムである。なお、以下では、生産物の生育の一例として水生生物の生育を挙げ、生産物管理システム1が水生生物の生育を管理する管理システムである例について説明する。
【0016】
生産物管理システム1は、例えば、甲殻類の陸上養殖を管理する管理システムとして構成されている。生産物管理システム1は、複数の生産拠点側装置10と管理拠点側装置70とを備える。複数の生産拠点側装置10の各々は、各生産拠点に設けられている。以下では、図1のように3つの生産拠点側装置10A,10B,10Cの各々が、生産拠点Bp1,Bp2,Bp3に設けられ、管理拠点側装置70が管理拠点Bmに設けられた例を挙げて説明する。
【0017】
生産拠点Bp1,Bp2,Bp3の各々は、生産物を生産する拠点であり、生産物の生産が行われる場所である。各々の生産拠点には、図2のような生産システムSyが設けられており、生産システムSyは図3のような生産拠点側装置10を備えている。図1で示す3つの生産拠点側装置10A,10B,10Cは、いずれも図3で示す生産拠点側装置10のように構成されており、各々が情報の送信を行い得る構成をなす。
【0018】
複数の生産拠点Bp1,Bp2,Bp3の各々に設けられる生産システムSyは、例えば、図2のような閉鎖循環式の陸上養殖システムとして構成されている。図2で示す生産システムSyは、生産拠点側装置10、飼育槽50、沈殿槽52、泡沫分離槽54、濾過部56、調温部58、ポンプ60、紫外線殺菌部62、酸素供給装置64などを備える。飼育槽50は、飼育水が溜められた水槽であり、水産物を生育する水槽である。沈殿槽52は、飼育水に含まれる固形物を沈殿させて固液分離を行う槽である。泡沫分離槽54は、泡沫分離装置によって泡沫(気泡)を発生させるとともに飼育水中の汚濁物質を泡沫に吸着させて分離する層である。濾過部56は、飼育水を濾過処理する設備であり、例えば物理濾過及び生物濾過を順次行い得る槽を備える。調温部58は、飼育水の温度を調整する設備であり、例えば、飼育水の加熱及び冷却を行い得る槽として構成されている。ポンプは、飼育水を循環させるためのポンプである。紫外線殺菌部62は、流動する飼育水を紫外線殺菌灯によって殺菌する設備である。酸素供給装置64は、飼育水中の溶存酸素量を適正化するために飼育槽50内に酸素を供給する装置である。
【0019】
図3のように、生産拠点側装置10は、情報処理装置11とセンサ群13とを備え、後述する管理拠点側装置70との間で通信網を介して情報の送受信を行い得る装置として構成されている。本実施形態では、生産拠点側装置10と管理拠点側装置70との間で通信網を介して情報の送受信を行うが、情報の出力、取得の方法はこれに限られない。クラウドコンピューティングを利用して、ストレージやデータベース、サーバなどに生産拠点側装置10が情報をアップロードし、管理拠点側装置70が情報をダウンロードもしくはブラウジングすることで、情報の出力、取得を行うこととしてもよい。情報処理装置11は、例えば、コンピュータとして構成されており、主に、制御装置12、通信部34、操作部36、記憶部38、表示部40、印刷部42などを備える。制御装置12は、CPUを備えた情報処理装置であり、様々な演算、制御、情報処理を行い得る。通信部34は、外部の装置と公知の方式で有線通信又は無線通信を行う装置である。操作部36は、キーボード、マウス、タッチパネル等の公知の入力デバイスである。表示部40は、ディスプレイなどの公知の表示装置である。印刷部42は、プリンタなどの公知の印刷装置である。なお、ここで、情報処理装置11はコンピュータのような定置型装置として示したが、これに限られずスマートフォンやタブレット等の可搬型装置であってもよい。
【0020】
センサ群13は、温度センサ14、溶存酸素センサ16、pHセンサ18、塩分センサ20、カルシウムセンサ22、マグネシウムセンサ24、アンモニアセンサ26、亜硝酸センサ28、硝酸センサ30、酸化還元電位センサ32(以下、ORPセンサ32ともいう)、導電率センサ34、水位センサなどを備える。温度センサ14は、システムSyにおける1か所以上の温度を検出可能な構成をなし、例えば飼育槽50内の飼育水の温度を検出する。溶存酸素センサ16は、飼育槽50内の飼育水の溶存酸素濃度を検出する。pHセンサ18は、飼育槽50内の飼育水のpHを検出する。塩分センサ20は、飼育槽50内の飼育水の塩分濃度を検出する。カルシウムセンサ22は、飼育槽50内の飼育水のカルシウム濃度を検出する。マグネシウムセンサ24は、飼育槽50内の飼育水のマグネシウム濃度を検出する。アンモニアセンサ26は、飼育槽50内の飼育水のアンモニア濃度を検出する。亜硝酸センサ28は、飼育槽50内の飼育水の亜硝酸濃度を検出する。硝酸センサ30は、飼育槽50内の飼育水の硝酸濃度を検出する。ORPセンサ32は、飼育槽50内の飼育水の酸化還元電位を検出する。導電率センサ34は、飼育槽50内の飼育水の導電率を検出する。水位センサは、飼育槽50に設置され、水位を検出する。なお、各々のセンサは、検出対象を検出する検出部を1つのみ備えていてもよく、複数の検出部を備えていてもよい。
【0021】
管理拠点Bmは、生産拠点Bp1,Bp2,Bp3から情報を取得し、情報の管理を行う拠点であり、例えば、生産拠点Bp1,Bp2,Bp3の各々から離れた場所にある。管理拠点Bmには、図4のような管理拠点側装置70が設けられ、管理拠点側装置70は、生産拠点側装置10A,10B,10Cから情報を受信し得る構成をなす。なお、生産拠点Bp1,Bp2,Bp3からインターネット上のサーバーに情報をアップロードし、サーバー上にアップロードされた情報を管理拠点側装置70がダウンロードもしくはブラウジングする構成としてもよい。
【0022】
管理拠点側装置70は、例えば、コンピュータとして構成されており、主に、制御装置72、通信部74、操作部76、記憶部78、表示部80、印刷部82などを備える。制御装置72は、CPUを備えた情報処理装置であり、様々な演算、制御、情報処理を行い得る。通信部74は、外部の装置と公知の方式で有線通信又は無線通信を行う装置である。操作部76は、キーボード、マウス、タッチパネル等の公知の入力デバイスである。表示部80は、ディスプレイなどの公知の表示装置である。印刷部82は、プリンタなどの公知の印刷装置である。なお、ここで、管理拠点側装置70はコンピュータのような定置型装置として示したが、これに限られずスマートフォンやタブレット等の可搬型装置であってもよい。
【0023】
2.生産拠点での運用
次に、生産拠点での運用について詳述する。
生産拠点では、生産システムSyによって生産物の生産が行われる。
生産システムSyでは、生産物の生産を行うにあたって記録の対象となる項目(データ入力対象となる項目)が複数種類定められており、各項目に関するデータが制御装置12に入力されるようになっている。なお、制御装置12へのデータ入力は、センサ群13の要素となる各センサやその他の装置によって自動的に入力されるようになっていてもよく、作業者が操作部36を操作して人為的に入力してもよく、両入力方式を併用してもよい。さらに、作業者と入力されたデータとの関係を示す情報も入力することで、どの作業者がその作業を行ったかを紐づけることができ、作業の改善に役立てることも可能となる。また、各々の項目についてのデータ入力のタイミングは、項目毎に定められており、例えば、1日ごとにデータが入力される項目、数時間ごとにデータが入力される項目、数十分ごとにデータ入力される項目、数日おきにデータが入力される項目、作業者が任意のタイミングでデータ入力を行う項目、予め定められた条件が成立した場合にデータ入力が行われる項目など、様々である。もちろん、これらのタイミング以外のタイミングでデータの入力がなされてもよく、常時データが入力され続けてもよい。図5の例では、記録の対象となる項目(データ入力対象となる項目)となる項目が、項目1、2、3、4、5・・・と定められ、時間1、2、3、4、・・・の各々のタイミングで1以上の項目のデータが入力されるような場合に、時間1、2、3、4、・・・の各々のタイミングで生成される各管理データを概念的に示している。例えば、時間1には、時間1における項目1のデータ(データ11)と項目2のデータ(データ21)が入力されるようになっており、これらのデータが管理データ1として扱われるようになっている。同様に、時間4には、時間4における項目1のデータ(データ14)と項目2のデータ(データ24)と項目3のデータ(データ34)が入力されるようになっており、これらのデータが管理データ4として扱われるようになっている。図5では、時間毎に生成される管理データを抽象的に示しているが、具体的には、時間毎に生成される管理データを図6のようにしてもよい。
【0024】
具体的には、生産拠点側装置10に記録する項目(データが入力される項目)として、飼育水の温度、飼育水の流速、外気の温度、外気の湿度、飼育水の酸化還元電位、飼育水の導電率などの物理的パラメータの項目が含まれ、これらの項目のデータは、項目ごとに定められたタイミングで各項目の値を検出するセンサからの入力又は作業者が操作部36を操作して行う人為的なデータ入力によって制御装置12に入力されるようになっている。なお、図6では、物理的パラメータの項目の一例として飼育水温度や飼育水の流速が例示され、これらのパラメータが各時間に入力される例となっている。
【0025】
また、生産拠点側装置10に記録する項目(データが入力される項目)として、飼育水の溶存酸素濃度、飼育水のpH、飼育水の塩分濃度、飼育水のカルシウム濃度、飼育水のマグネシウム濃度、飼育水のアンモニア濃度、飼育水の亜硝酸濃度、飼育水の硝酸濃度、などの化学的パラメータの項目が含まれ、これらの項目のデータは、項目ごとに定められたタイミングで各項目の値を検出するセンサからの入力又は作業者が操作部36を操作して行う人為的なデータ入力によって制御装置12に入力されるようになっている。なお、図6では、化学的パラメータの項目の一例として飼育水の溶存酸素濃度や飼育水のカルシウム濃度(Ca濃度)が例示され、これらのパラメータが各時間に入力される例となっている。
【0026】
更に、生産拠点側装置10に記録する項目(データが入力される項目)として、給餌、給餌量の調整、換水、注水、濾過材の交換や洗浄、溶存酸素量の調整、各種清掃、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水温調整、水流調整、水産物の体格確認などの作業実績の項目が含まれ、これらの項目についてのデータ(例えば、各項目の作業を実行したか否かを示すデータ)は、例えば、項目ごとに定められたタイミング又は任意のタイミングで装置からの自動入力又は作業者が操作部36を操作して行う人為的なデータ入力によって制御装置12に入力されるようになっている。なお、図6では、作業実績の項目の一例として給餌や溶存酸素量の調整が例示され、これらの作業結果が各時間に入力される例となっている。
【0027】
更に、生産拠点側装置10に記録する項目(データが入力される項目)として、各作業者の労働時間、出勤時刻、退勤時刻、残業時間、作業人数、管理者の有無などの労働条件の項目が含まれ、これらの項目についてのデータは、項目ごとに定められたタイミング又は任意のタイミングで、装置(例えば、入退室管理システムや出退勤管理システムなどの装置)からの自動入力や作業者が操作部36を操作して行う人為的なデータ入力によって制御装置12に入力されるようになっている。なお、図6では、労働条件の項目の一例として勤怠や各時間における作業人数が例示され、これらの内容を特定するデータが各時間において入力される例となっている。
【0028】
更に、生産拠点側装置10に記録する項目(データが入力される項目)として、各装置が正常に動作しているか否か、窓や扉が適正な状態になっているか否か、換気がなされているか否か、照明が点灯しているか否か、などの飼育環境条件の項目が含まれ、これらの項目についてのデータは、項目ごとに定められたタイミング又は任意のタイミングで、装置による自動入力や作業者が操作部36を操作して行う人為的なデータ入力によって制御装置12に入力されるようになっている。なお、図6では、飼育環境条件の項目の一例として装置動作状況や換気状況が例示され、これらを特定するデータが各時間において入力される例となっている。
【0029】
このように、生産システムSyでは、生産拠点にて生産物を生育する過程で生成又は入力される様々な管理データが当該生産拠点に設けられた生産拠点側装置10によって取得される。そして、生産拠点側装置10は、取得した管理データを管理拠点側装置70に送信する。生産拠点側装置10が管理拠点側装置70に管理データを送信するタイミングは、例えば、所定時間おき(例えば、1日おき、数時間おきなど)であってもよく、データが入力される度であってもよく、作業者が定める任意のタイミングであってもよい。なお、生産拠点側装置10にて取得された各々の項目のデータが、項目ごとに定められた基準条件を満たしているか否かを判定した判定結果等、各々の項目のデータに基づくデータも管理データに含まれる。
【0030】
以下では、生産拠点側装置10が、蓄積された管理データを一定時間毎に管理拠点側装置70に送信する例について説明する。この例では、生産拠点側装置10は、前回の管理データの送信から次の管理データの送信までの一定時間内に生産拠点側装置10が取得したデータを、次の管理データの送信タイミングにまとめて送信する。例えば、図6の例では、生産拠点側装置10は、時間1の後、時間2までの間に制御装置に入力された各項目のデータを時間2の管理データ(管理データ2)として管理拠点側装置に送信するようになっている。同様に、生産拠点側装置10は、時間2の後、時間3までの間に制御装置に入力された各項目のデータを時間3の管理データ(管理データ3)として管理拠点側装置に送信するようになっている。このようにして、生産拠点側装置10から管理拠点側装置へと管理データが送信される。なお、通信環境の不具合等により生産拠点側装置10から管理拠点側装置70にデータ送信できなかった場合は、その後、通信環境の不具合が解消したときに生産拠点側装置10から管理拠点側装置70にデータ送信すればよい。
【0031】
3.管理拠点での管理
管理拠点側装置70は、生産拠点側装置10から管理拠点側装置70に向けて管理データが送信される毎に、送信された管理データを受信する。例えば、図6のような管理データ1、2、3、4・・・・が生産拠点側装置10から管理拠点側装置70に向けて順次送られた場合、管理拠点側装置70はそれらの管理データを順次受信し、図6と同様のデータ(管理データ1、2、3、4・・・を蓄積するデータ)として記憶部78に記憶する。そして、管理拠点側装置70は、管理データを受信する毎に、受信した管理データを検査する。具体的には、管理拠点側装置70は、管理データを受信する毎に、受信した管理データに含まれる各々の項目のデータが、項目ごとに定められた基準条件を満たしているか否かを判定する。なお、本構成では、制御装置72が判定部の一例に相当し、管理データが基準条件から外れているか否かを判定するように機能する。
【0032】
ここで、管理拠点側装置70における管理データの受信処理及び判定処理について具体的に説明する。例えば、図6の例において時間2(時間1を経過してから時間2までの収集された管理データ)の管理データ2が生産拠点側装置10から管理拠点側装置70に送信されたとする。この場合、管理拠点側装置70は、管理データ2を受信し、その管理データ2を記憶部78に記憶する。更に、管理データ2に含まれる各項目のデータが項目毎に定められた基準条件を満たしているか否かを判定する。基準条件として、例えば、飼育水温度の項目に関しては「飼育水の温度がA1~A2の範囲内に収まっていること」が定められている。同様に、飼育水の溶存酸素濃度については「飼育水の溶存酸素濃度がB1~B2の範囲内に収まっていること」が基準条件として定められている。他の項目についても、それぞれの項目における基準条件が定められている。
【0033】
例えば、図6で示す時間2の管理データ2のように、飼育水温度、飼育水の流速、溶存酸素濃度、作業人数、装置動作、換気の有無のデータを含んだ管理データが生産拠点側装置10から管理拠点側装置70に送信された場合、管理拠点側装置70は、管理データ2を受信して記憶部78に記憶する。記憶する際、管理データが改ざんできないように処理をしてもよい。更に、管理拠点側装置70は、管理データ2に含まれる飼育水温度の温度、飼育水の流速、溶存酸素濃度、作業人数、装置動作状況、換気状況、が各々の項目の基準条件を満たすか否かを判定する。例えば、飼育水温度について温度範囲A1~A2に収まっているか否かを判定し、収まっている場合(基準条件を満たす場合)には、管理データ2の判定結果のデータに「飼育水温度が基準条件を満たす旨のデータ」を含める。同様に、飼育水の溶存酸素濃度については濃度範囲B1~B2に収まっているか否かを判定し、収まっている場合(基準条件を満たす場合)には、管理データ2の判定結果のデータに、「飼育水の溶存酸素濃度が基準条件を満たす旨のデータ」を含める。このようにして、管理データ2の判定結果のデータを生成し、その判定結果のデータを記憶部78に記憶する。このような判定結果のデータを管理データ毎に生成すれば、記憶部78には、図8のような管理データ毎の判定結果のデータを記憶することができる。なお、図8では、基準条件を満たすと判定された項目の判定結果を「○」として示し、満たさないと判定された項目の判定結果を「×」として示している。
【0034】
管理拠点側装置70は、このように管理データを受信する毎に管理データに含まれる各項目のデータの検査(基準条件を満たすか否かの判定)を行い、いずれかの管理データにおいて、いずれかの項目のデータが基準条件を満たさない場合、その項目に対応付けられた作業指示を、その管理データの送信元の生産拠点側装置10に送信する。具体的には、図7のように、各項目に対応付けて各項目のデータが基準条件を外れた場合に与える作業指示が定められている。例えば、項目1に対応付けられた作業指示は、管理データに含まれる項目1のデータが基準条件を外れる場合に、その管理データの送信元の生産拠点側装置に送信する作業指示である。作業指示は、給餌、給餌量の調整、換水、注水、濾過材の交換や洗浄、溶存酸素量の調整、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水温調整、水流調整、水産物の体格確認の中から選ばれるいずれかの指示を少なくとも含んでいる。
【0035】
例えば、図7で示す項目1が給餌作業である場合、項目1のデータは、例えば、「正規の時間(例えば、時刻1~時刻2)に給餌作業を行ったか否かを特定するデータ」とすることができる。そして、項目1の基準条件は、例えば、「正規の時間に給餌作業を行ったこと」とすることができ、項目1に対応付ける作業指示は「給餌」とすることができる。このような場合、生産拠点側装置10から送られてきた管理データに含まれる項目1のデータが、「正規の時間に給餌作業が行われなかった旨のデータ」である場合、その管理データの項目1のデータについては基準条件を満たさないと判定され、管理拠点側装置70から送信元の生産拠点側装置10に対して項目1に対応付けられた作業指示(「給餌」の作業指示)が送信される。よって、生産拠点側装置10を備える生産拠点に対し、給餌が未実施であるという情報を提供することができる。なお、送信元の生産拠点側装置10に対して、項目1に対応付けられた作業指示とともに項目1が基準範囲を満たしていない旨の警告情報を送信してもよい。
【0036】
図7で示す項目2が「飼育水の硝酸濃度」である場合、項目2のデータは、例えば、「飼育水の硝酸濃度を示すデータ」とすることができる。そして、項目2の基準条件は、「硝酸濃度がD1以下の範囲内である」とすることができ、項目2に対応付ける作業指示は「換水」とすることができる。このような場合、生産拠点側装置10から送られてきた管理データに含まれる項目2のデータが、「D1以下の範囲を外れるデータ」である場合、その管理データの項目2のデータについては基準条件を満たさないと判定され、管理拠点側装置70から送信元の生産拠点側装置10に対して項目2に対応付けられた作業指示(「換水」の作業指示)が送信される。よって、生産拠点側装置10を備える生産拠点に対し、換水を行うべき状況であるという情報を提供することができる。なお、送信元の生産拠点側装置10に対して、項目2に対応付けられた作業指示とともに項目2が基準範囲を満たしていない旨の警告情報を送信してもよい。
【0037】
図7で示す項目3が「飼育水の溶存酸素濃度」である場合、項目3のデータは、例えば、「飼育水の溶存酸素濃度を示すデータ」とすることができる。そして、項目3の基準条件は、「溶存酸素濃度がB1~B2の範囲内である」とすることができ、項目3に対応付ける作業指示は「溶存酸素量の調整」とすることができる。このような場合、生産拠点側装置10から送られてきた管理データに含まれる項目3のデータが、「B1~B2の範囲を外れるデータ」である場合、その管理データの項目3のデータについては基準条件を満たさないと判定され、管理拠点側装置70から送信元の生産拠点側装置10に対して項目3に対応する作業指示(「溶存酸素量の調整」の作業指示)が送信される。よって、生産拠点側装置10を備える生産拠点に対し、溶存酸素量の調整を行うべき状況であるという情報を提供することができる。なお、送信元の生産拠点側装置10に対して、項目3に対応付けられた作業指示とともに項目3が基準範囲を満たしていない旨の警告情報を送信してもよい。
【0038】
図7で示す項目4が「飼育水の温度」である場合、項目4のデータは、例えば「飼育水の温度を示すデータ」とすることができる。そして、項目4の基準条件は、「飼育水の温度がA1~A2の範囲内である」とすることができ、項目4に対応付ける作業指示は「注水」とすることができる。なお、注水される水の温度や量は飼育水の温度に応じて、適宜調整される。このような場合、生産拠点側装置10から送られてきた管理データに含まれる項目4のデータが、「A1~A2の範囲を外れるデータ」である場合、その管理データの項目4のデータについては基準条件を満たさないと判定され、送信元の管理拠点側装置70から生産拠点側装置10に対しては項目4に対応する作業指示(「注水」の作業指示)が送信される。よって、生産拠点側装置10を備える生産拠点に対し、注水を行うべき状況であるという情報を提供することができる。なお、送信元の生産拠点側装置10に対して、項目4に対応付けられた作業指示とともに項目4が基準範囲を満たしていない旨の警告情報を送信してもよい。
【0039】
図7で示す項目5が濾過材の交換作業である場合、項目5のデータは、例えば、「決められた期間内に濾過材の交換作業を行ったか否かを特定するデータ」とすることができる。そして、項目5の基準条件は、例えば、「決められた期間内に濾過材の交換作業を行ったこと」とすることができ、項目5に対応付ける作業指示は「濾過材の交換」とすることができる。このような場合、生産拠点側装置10から送られてきた管理データに含まれる項目5のデータが、「決められた期間内に濾過材の交換作業が行われなかった旨のデータ」である場合、その管理データの項目5のデータについては基準条件を満たさないと判定され、管理拠点側装置70から送信元の生産拠点側装置10に対して項目5に対応する作業指示(「濾過材の交換」の作業指示)が送信される。よって、生産拠点側装置10を備える生産拠点に対し、濾過材の交換を行うべき状況であるという情報を提供することができる。なお、送信元の生産拠点側装置10に対して、項目5に対応付けられた作業指示とともに項目5が基準範囲を満たしていない旨の警告情報を送信してもよい。
【0040】
この例では、制御装置72が処理部の一例に相当し、判定部による判定結果に応じた処理を行うように機能し、具体的には、管理データが基準条件から外れていると判定部が判定した場合に生産拠点側装置10に対して作業指示を送信するように機能する。なお、通信環境の不具合等により管理拠点側装置70から生産拠点側装置10に作業指示を送信できなかった場合は、その後、通信環境の不具合が解消したときに管理拠点側装置70から生産拠点側装置10に作業指示を送信すればよい。
【0041】
4.関連情報を記憶する例
上述した例では、管理拠点側装置70が管理データを受信した場合に、管理データそのものを記憶部78に記憶する例を示したが、管理データそのものを記憶部78に記憶する方法に代えて、又はこの方法と併用して、管理データを加工又は検査して生じる関連情報を記憶してもよい。ここで、管理データの加工には、管理データの蓄積、分析、解析や、管理データに基づく予測データの生成も含まれる。予測データとして例えば、蓄積したデータに基づき予測した最適な換水時期等が挙げられる。管理データを加工して生じる関連情報としては、管理データを暗号化した暗号データであってもよく、管理データを統計処理したデータ(例えば平均値のデータ)であってもよく、管理データの一部を所定の法則で又はランダムに間引いたデータ(複数の管理データから一部のみを抽出したデータなど)であってもよい。管理データを検査して生じる関連情報としては、例えば、管理拠点側装置70が管理データを受信した場合に、上述の方法で管理データが基準を満たしているか否かを判定した後、判定結果のみを記憶部78に記憶しておいてもよい。例えば、図8のような判定結果のデータのみを記憶部78に記憶していてもよい。或いは、上記判定を行った後、基準条件を満たさないデータのみを記憶しておいてもよく、基準条件を満たすデータのみを記憶しておいてもよい。
【0042】
5.認証情報を記憶する例
上述した例では、管理拠点側装置70が管理データを受信した場合に、管理データそのものを記憶部78に記憶する例を示したが、管理データそのものを記憶部78に記憶する方法に代えて、又はこの方法と併用して、管理データの受信に応じて生成される認証情報を記憶部78に記憶しておいてもよい。例えば、図8のように全期間において全項目で判定を行った後、全期間の全項目で基準条件を満たしていた場合には、その旨の情報を認証情報(全期間において全項目で基準条件を満たす旨の認証情報)として記憶してもよい。このような認証情報を記憶すれば、「その管理データの送信元の生産拠点において全期間を通して基準条件を満たす生産がなされていたこと」の証明を残すことができ、生産拠点の信頼性を高めるために様々に役立てることができる。
【0043】
或いは、全期間において全項目で基準条件を満たさない事態が一定時間を超えて発生しなかった場合には、その旨の認証情報を記憶してもよい。例えば、全期間において各項目で判定を行った場合において、いずれかの時間のいずれかの項目で基準条件を満たさなかったとしても、基準条件を満たさない判定結果が得られてから一定時間内に基準条件を満たさない事態が解消された場合には、基準条件を満たさない事態が一定時間を超えて発生しなかったと判定することができる。そして、基準条件を満たさなかった全ての場合においてこのように解消された場合には、その旨の認証情報(全期間において全項目で基準条件を満たさない事態が一定時間を超えて発生しなかった旨の認証情報)を記憶してもよい。
【0044】
なお、これらの例に限定されず、例えば、全期間において基準条件を満たさない判定が一定割合以下であった場合にその旨の認証情報を記憶してもよく、特定の項目について全期間で基準条件を全て満たしていた場合に、その旨の認証情報を記憶してもよい。
【0045】
6.管理データ、関連情報、認証情報を出力する例
ここまでの説明では、管理拠点側装置70が管理データそのもの、又は上述の関連情報、若しくは上述の認証情報、の少なくともいずれかを記憶する例を示したが、管理拠点側装置70がこれらの情報の少なくともいずれかを出力してもよい。具体的には、管理拠点側装置70が上述の管理データ、又は上述の関連情報、若しくは上述の認証情報、の少なくともいずれかを、他の装置(例えば、管理拠点側装置70から離れた遠隔地に設けられたサーバー等)へ送信してもよく、また、クラウドコンピューティングを利用して、ストレージやデータベース、サーバなどにアップロードしてもよい。さらに、印刷部42によって書面として印刷するような出力であってもよい。
【0046】
7.本構成の効果の例示
本構成の生産物管理システム1では、生産拠点側装置10が「生産拠点において生産物を生育する過程で生成又は入力される管理データ」を出力し得る。そして、管理拠点側装置70は、生産拠点側装置10が出力する管理データを取得し得る。よって、生産拠点において生産物を生育する過程で生じるデータを管理拠点で管理できるようになる。その上で、管理拠点側装置70は、上記管理データを取得した場合に、「管理データ」、「管理データを加工又は検査して生じる関連情報」、「管理データの受信に応じて生成される認証情報」、の少なくともいずれか一つを記憶又は出力する。生産拠点での生産物の生育に伴って生産拠点側から送信される管理データそのもの、又は上記関連情報、若しくは上記認証情報を管理拠点側装置に記憶しておけば、生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料を管理拠点側装置に蓄積することができる。また、蓄積したデータを分析、解析することで、予測データの生成なども可能となる。同様に、管理データそのもの、又は上記関連情報、若しくは上記認証情報を管理拠点側装置70から出力すれば、その出力を受ける装置や人が生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料を取得することができる。いずれの場合でも、生産拠点から送信された管理データ又は関連情報、若しくは認証情報を生産拠点から独立した形で管理拠点側で管理することが可能となり、生産拠点で生産物の生育が適正になされていることの認証や管理データに基づく何らかの対処(例えば、生産拠点への指示や管理データの解析・研究および、管理データに基づく予測情報の生成、予測情報の活用等)を行う上で有利になる。
【0047】
生産物管理システム1では、管理拠点側装置70は、取得した管理データが予め設定された基準条件を満たすか否かを判定する判定部と、管理データが基準条件を満たしていないと判定部が判定した場合に生産拠点側装置10に対して作業指示を送信する処理部と、を有する。このように、管理拠点側装置70が上記判定部と上記処理部とを有していれば、管理データが基準条件を満たすか否かを管理拠点で判定し、管理データが基準条件を満たしていない場合に送信元の生産拠点に対して作業指示を与えることができる。よって、生産拠点では、この作業指示に応じて生育に関わる事項を修正し、生産に関する事項の適正化を図ることができる。また、生産物を生育する課程が繰り返し行われることで、管理データが蓄積されていく。蓄積された管理データに基づき分析・解析・予測することにより、さらなる改善が可能となる。
【0048】
更に、上記作業指示は、給餌、給餌量の調整、換水、注水、濾過材の交換や洗浄、溶存酸素量の調整、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水温調整、水流調整、水産物の体格確認の中から選ばれるいずれかの指示を少なくとも含む。このように、管理データが基準条件を満たしていない場合に管理拠点から生産拠点に対して上記指示(給餌、給餌量の調整、換水、注水、濾過材の交換や洗浄、溶存酸素量の調整、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水温調整、水流調整、水産物の体格確認の中から選ばれるいずれかの指示)を与えることができれば、生産物の生育環境の是正が可能となり、生産拠点において生産の適正化を一層図りやすくなる。例えば、生産拠点では、給餌、給餌量の調整、換水、注水、濾過材の交換や洗浄、溶存酸素量の調整、ミネラル成分の供給、微生物の供給、水温調整、水流調整、水産物の体格確認の少なくともいずれかに着目して注意又は修正することができる。そして、このように生産拠点に対してより具体的な注意又は修正を促すことができれば、生産拠点において生産の適正化を一層図りやすくなる。
【0049】
生産物管理システム1では、管理データは、物理的又は化学的パラメータ、作業者の労働条件、作業報告、飼育環境条件の内の少なくとも一つの種類のデータを含む。管理データがこのような種類のデータを含んでいれば、生産拠点で生産物を生育する過程で生じる物理的又は化学的パラメータ、作業者の労働条件、作業報告、飼育環境条件の少なくともいずれかの要素を管理拠点側で取得することができるようになり、その要素を管理拠点側で管理することができるようになる。なお、管理データとして、法規制の順守に対応する項目、飼料のトレーサビリティ、エネルギー消費量、温室効果ガスの排出量等のデータが含まれても良い。
【0050】
例えば、管理データが「生産拠点で生産物を生育する過程で生じる物理的又は化学的パラメータ」を含んでいる場合、このパラメータそのもの、又はこのパラメータを加工又は検査して生じる関連情報、若しくは、このパラメータの受信に応じて生成される認証情報を「生産拠点で生産物の生育が適正になされているか否かの判断材料」とすることができる。このような判断材料が得られれば、生産拠点で生産物の生育が適正になされていることの認証や管理データに基づく生産拠点への指示や管理データの解析・研究等を行う上でより有用である。そして、管理データが、労働条件、作業報告、飼育環境条件などを含んでいる場合には、この管理データを適正な条件のもと生育された生産物であることを証明する証拠として、生産物の安全性・品質を認証する認証機関への申請手続きを確実かつ簡便に行うことができる。
【0051】
また、生産物管理システム1は、複数の生産拠点側装置10A,10B,10Cを有している。そして、複数の生産拠点側装置10A,10B,10Cの各々は、複数の生産拠点Bp1,Bp2,Bp3の各々に設けられている。このように、複数の生産拠点Bp1,Bp2,Bp3の各々に生産拠点側装置10が設けられていれば、複数の生産拠点Bp1,Bp2,Bp3の各々から管理拠点Bmに対して管理データを送信することができるようになり、管理拠点Bmでは、各生産拠点から独立した形で各管理データを一括して管理することが可能となる。
【0052】
<他の実施形態>
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述又は後述の実施形態の特徴は、矛盾しない範囲であらゆる組み合わせが可能である。また、上述又は後述の実施形態のいずれの特徴も、必須のものとして明示されていなければ省略することもできる。更に、上述した実施形態を、次のように変更してもよい。
【0053】
上記実施形態では、管理拠点側装置70のみが上記判定部と上記処理部とを有していたが、生産拠点側装置10が第2の判定部と第2の処理部とを有していてもよい。例えば、生産拠点側装置10は、管理データが予め設定された基準条件を満たすか否かを判定する第2の判定部と、管理データが基準条件を満たしていないと第2の判定部が判定した場合に作業指示を出力する第2の処理部と、を有していてもよい。この場合、制御装置12が第2の判定部の一例に相当し、管理データが基準条件から外れているか否かを判定するように機能し、制御装置12が第2の処理部の一例に相当し、第2の判定部による判定結果に応じた処理を行うように機能する。このような例において、「管理データが基準条件から外れているか否か」を制御装置12(第2の判定部)が判定する場合の判定方法は、上述した制御装置72(判定部)による判定方法(管理データが基準条件から外れているか否かを制御装置72が判定する場合の判定方法)と同様としてもよく、異ならせてもよい。また、管理データが基準条件を満たしていないと制御装置12(第2の判定部)が判定した場合に制御装置12(第2の処理部)が生産拠点内において作業指示を出力する際の作業指示の選定方法は、上述した制御装置72(処理部)による選定方法(管理データが基準条件を満たしていないと制御装置72(判定部)が判定した場合に制御装置72(処理部)が生産拠点側装置10に対する作業指示を選定する際の選定方法)と同様であってもよく、異なっていてもよい。
このように、生産拠点側装置10が上記第2の判定部と上記第2の処理部とを有していれば、管理データが基準条件を満たすか否かを生産拠点で判定し、管理データが基準条件を満たしていない場合に生産拠点内の装置に対して作業指示を与えることができる。これにより、通信環境の不具合等により管理拠点側装置70と生産拠点側装置10との間のネットワークが不通となった場合でも、生産拠点側装置10から作業指示を出力することができる。例えば、管理データが基準条件を満たしていない場合に生産拠点側装置10の表示部40に作業指示を出力することや、生産拠点内におけるローカルエリアネットワークが不通でない場合には生産拠点内における他の装置に作業指示を出力することが可能となる。
【0054】
上記実施形態では、生産物の生育の例として、甲殻類などの水生生物を養殖する「水産養殖」を例示したが、「水産養殖」を対象とする場合、「塩分を含む水で水産物を養殖する水産養殖」であってもよく、「塩分を含まない水での水産物を養殖する水産養殖」であってもよい。
【0055】
上記実施形態では、生産物管理システムでの「生産物の生育管理」の例として、「水生生物の養殖管理」の一例を示したが、「生産物の生育管理」は、「水産業における生育管理」「農業における生育管理」「畜産業における生育管理」「林業における生育管理」などであってもよく、その他の第一次産業における生育管理であってもよい。また、生育管理は、生まれてから出荷までの全過程を管理するものであってもよく、その全過程のうちの一部過程のみを管理するものであってもよい。
【0056】
上記実施形態では、1つの生産拠点に1つの生産拠点側装置が設けられた例を示したが、1つの生産拠点に複数の生産拠点側装置が設けられていてもよい。また、1つの管理拠点に複数の管理拠点側装置が設けられていてもよい。この場合、例えば、複数の管理拠点側装置のいずれもが各生産拠点側装置から管理データを受信し得るように構成されていてもよい。
【0057】
上記実施形態では、管理拠点が1つのみであり、管理拠点側装置が1つのみである例を示したが、管理拠点が2以上存在し、各管理拠点に管理拠点側装置が設けられていてもよい。
【0058】
上記実施形態では、生産拠点が3つの例を示したが、生産拠点が1つであり、1つの生産拠点に1以上の生産拠点側装置が設けられていてもよい。或いは、生産拠点の数は、2又は4以上であってもよく、この場合、各生産拠点に1以上の生産拠点側装置が設けられていればよい。
【0059】
上記実施形態では、生産拠点側装置10が管理拠点側装置70に向けて管理データを送信し、管理拠点側装置70が生産拠点側装置10から自身に向けて送信された管理データを受信する例を示した。しかし、この例に限定されない。例えば、クラウドコンピューティング等を利用し、生産拠点側装置10及び管理拠点側装置70とは異なる場所に設置された外部記憶システム(ストレージやデータベース、サーバなど)に対して生産拠点側装置10から管理データを送信(例えばアップロード)してもよい。この場合、生産拠点側装置10から外部記憶システムへ送信する方法は、所定条件の成立(例えば、規定された送信時間の到来、規定されたデータ量の管理データの蓄積等の条件)に応じて自動的にアップロードする方法でなされてもよく、作業者の操作に応じてアップロードする方法でなされてもよく、その他の方法であってもよい。そして、この場合、管理拠点側装置70は、上記外部記憶システムから管理データを受信(例えばダウンロード)して取得すればよい。管理拠点側装置70が、上記外部記憶システムから管理データを受信する方法は、所定条件の成立(例えば、上記アップロードの実行完了、規定された送信時間の到来、規定されたデータ量のアップロードデータの蓄積等の条件)に応じて自動的にダウンロードする方法でなされてもよく、作業者の操作に応じてダウンロードする方法でなされてもよく、その他のブラウジングにより取得する方法であってもよい。
【0060】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1…生産物管理システム
10…生産拠点側装置
12…制御装置(第2の判定部、第2の処理部)
70…管理拠点側装置
72…制御装置(判定部、処理部)
Bm…管理拠点
Bp1,Bp2,Bp3…生産拠点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8