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特許6995830生体吸収性金属を用いたマイクロニードル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】生体吸収性金属を用いたマイクロニードル
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61M37/00 510
A61M37/00 520
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019503880
(86)(22)【出願日】2017-04-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-04-18
(86)【国際出願番号】 KR2017003775
(87)【国際公開番号】W WO2017176069
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2018-10-09
(31)【優先権主張番号】10-2016-0042690
(32)【優先日】2016-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0181865
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518357760
【氏名又は名称】レプエンピープル・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ソン・ヨン・チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・タク・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・ウク・チュ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083387(JP,A)
【文献】国際公開第2008/062832(WO,A1)
【文献】特開2011-172968(JP,A)
【文献】特表2008-528192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部と、
前記基板部に設けられ、前記基板部上から突出して皮膚に挿入されるニードル部と、
前記ニードル部と前記基板部との連結部位に形成された切取部と、
を含み、
前記基板部及び前記ニードル部は生体吸収性金属で形成されていて、
前記ニードル部は、前記基板部に形成されたニードル孔と、前記ニードル孔に収容されたまま前記基板部と一端が連結された第1ニードルと、前記第1ニードルの他端と一端が連結されたまま前記ニードル孔に収容された第2ニードルと、を含み、
前記切取部は、前記第1ニードルの一端から前記第1ニードルの幅方向に沿って配置された多数のスリット孔を含み、
前記切取部は、ノッチをさらに含み、前記ノッチは、前記第1ニードルの一端の幅方向の両側に配置され、前記スリット孔が配置された方向に形成されており、
前記生体吸収性金属は、マグネシウム及び亜鉛のうちの少なくとも一つの成分を含み、分解過程でMg2+イオン、MgCl、水素ガスまたはZn2+イオン、ZnO、水素ガスが生成されて体内へ伝達され、
前記ニードル部は、前記基板部が皮膚上から分離されると、前記基板部から離脱して皮膚に残留することを特徴とする、生体吸収性金属を用いたマイクロニードル。
【請求項2】
前記第2ニードルは、一端から他端へ行くほど次第に幅が狭くなる形状に形成され、その一端は前記第1ニードルの幅よりも大きい幅に形成されることにより係止部をなすことを特徴とする、請求項1に記載の生体吸収性金属を用いたマイクロニードル。
【請求項3】
前記係止部は、皮膚に接触した前記基板部が前記皮膚上から分離されるとき、皮膚組織に係止され、前記第1ニードルと前記第2ニードルが皮下組織に結着されるようにすることを特徴とする、請求項に記載の生体吸収性金属を用いたマイクロニードル。
【請求項4】
前記第1ニードルまたは前記第2ニードルの周面には、担持溝が前記第1ニードルまたは前記第2ニードルの周方向に沿って多数設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の生体吸収性金属を用いたマイクロニードル。
【請求項5】
前記担持溝が前記第1ニードルまたは前記第2ニードルの上面または底面にさらに設けられていることを特徴とする、請求項に記載の生体吸収性金属を用いたマイクロニードル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体吸収性金属を用いたマイクロニードルに関し、より詳細には、体内に薬物だけでなく、人体に有用な機能性物質も一緒に供給することができるように構成された、生体吸収性金属を用いたマイクロニードルに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達システム(DDS:drug delivery system)は、薬理学的活性を有する物質を様々な物理化学的技術を用いて細胞、組織、臓器および器官などへ送り届ける一連の技術を意味する。
【0003】
薬物送達システムとしては、口から薬物を摂取する経口投与方式が最も一般的に使用されており、これ以外にも、人体の一部分に薬物を送り込む経皮透過型方式などがある。その中でも、金属材質の注射針で患者の皮膚に孔を開けて液状の薬物を送達する方式、すなわち、注射器を用いた薬物送達方式が古くから広く用いられている。
【0004】
しかし、注射器を用いた薬物送達方式は、薬物注入の際に患者に疼痛を与え、かつ、繰り返し接種の手間と注射器の管理不十分による注射針の再利用により患者に感染を誘発させるおそれがあるという欠点がある。
【0005】
また、上記の方式は、注射器使用の知識を保有している接種者が必要とされるため、患者が自ら注射器を用いて薬物を投与することができないという欠点もある。
【0006】
よって、近年では、注射器を用いた薬物送達方法を改善するために、ペン型注射器よりも遥かに小さいマイクロサイズの経皮透過型マイクロニードルが製作され活用されている。
【0007】
マイクロニードルは、角質層に物理的に小さな孔を開けて薬物を送達するシステムであって、1998年に米国ジョージア工科大学のプラウスニッツグループで半導体プロセス技術を利用してシリコン素子でマイクロニードルアレイを作り、薬物送達の応用可能性を提示したことを始めとして多くの研究が盛んに行われており、シリコンだけでなく、金属、ポリマー、ガラス及びセラミックなどのさまざまな材質をベースに、さまざまなサイズと形状に作られている。
【0008】
また、マイクロニードルは、生体内薬物やワクチンなどの活性物質の伝達、体内分析物質の検出および生検(biopsy)に使用される以外に、スキンケア物質や薬物の皮膚組織内への注入または皮膚内からの血液などの体液の抽出を目的として使用されることもある。よって、マイクロニードルは、局部的かつ持続的な薬物注入が可能であり、皮膚への挿入時に疼痛を最小化することができるので、最近様々な分野での使用が非常に急増している薬物送達方式の一つであるといえる。
【0009】
ところが、従来のマイクロニードルは、マイクロニードルに含まれている薬物が体内に広がるため、ユーザーの皮膚に長時間接触しなければならない構造を持つので、ユーザーの皮膚にニードルの材質による炎症が発生するという欠点がある。
【0010】
また、マイクロニードルは、皮膚への挿入の際にニードルが曲がったり折れたりすることなく皮膚に挿入されるように十分に高い物理的強度を維持しなければならないので、それに適した強度および形状制御が可能であるという特性が求められる。
【0011】
しかし、従来のマイクロニードルは、一般に分解性ポリマーと金属性材質で製作されるが、分解性ポリマーで製作されたマイクロニードルは、分解性ポリマー特有の低強度および成形の困難さにより体内に薬物を送達する効果が高くなかった。また、金属性素材で製作されたマイクロニードルは、ニードルの生成に限界があるとともに、皮下に挿入されたニードルが分節される場合にはユーザーに炎症反応を誘発し、金属性素材に対するアレルギー反応があるユーザーには使用できないという欠点があった。
【0012】
したがって、本出願人は、かかる問題点を解決するために本発明を提案した。これに関連する先行技術文献としては、特許文献1の「マイクロニードルの製造方法」などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】韓国登録特許第10-1634911号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、かかる問題点を解決するためのもので、その目的は、マイクロニードルがユーザーの皮膚に長時間接触するか或いは体内に残留しても、ユーザーに対する疼痛の誘発や感染の懸念を防ぐことができるように構成されたマイクロニードルを提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、マイクロニードルに担持された薬物をユーザーの体内に伝達する過程で、人体に有用なミネラル成分なども一緒に体内に伝達することができるマイクロニードルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、基板部と、前記基板部に設けられ、前記基板部上から突出して皮膚に挿入されるニードル部と、前記ニードル部と前記基板部との連結部位に形成された切取部と、を含み、前記基板部または前記ニードル部は生体吸収性金属で形成できる。
【0017】
また、前記ニードル部は、前記基板部が皮膚上から分離されると、前記基板部から離脱して皮膚に残留できる。
【0018】
また、前記ニードル部は、前記基板部に形成されたニードル孔と、前記ニードル孔に収容されたまま前記基板部と一端が連結された第1ニードルと、前記第1ニードルの他端と一端が連結されたまま前記ニードル孔に収容された第2ニードルと、を含むことができる。
【0019】
また、前記第2ニードルは、一端から他端へ行くほど次第に幅が狭くなる形状に形成され、その一端は前記第1ニードルの幅よりも大きい幅に形成されることにより係止部をなすことができる。
【0020】
また、前記係止部は、皮膚に接触した前記基板部が前記皮膚上から分離されるとき、皮膚組織に係止され、前記第1ニードルと前記第2ニードルが皮下組織に結着できる。
【0021】
また、前記切取部は、前記第1ニードルの一端から前記第1ニードルの幅方向に沿って互いに一定の間隔を置いて配置された多数のスリット孔を含むことができる。
【0022】
また、前記切取部は、ノッチをさらに含み、前記ノッチは、前記第1ニードルの一端における、前記第1ニードルの幅方向の両側にそれぞれ配置され、前記ニードル孔と連通可能に形成できる。
【0023】
また、前記第1ニードルまたは前記第2ニードルの周面には、担持溝が前記第1ニードルまたは前記第2ニードルの周方向に沿って多数設けられ得る。
【0024】
また、前記担持溝は、前記第1ニードルまたは前記第2ニードルの上面または底面にさらに設けられ得る。
【0025】
また、前記生体吸収性金属は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、および鉄のうちの少なくとも一つの成分を含む金属であり得る。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードルは、体内に治療のための薬物の他にも、生体吸収性金属に含まれている成分(マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄など)を伝達して、ユーザーに薬物と一緒にミネラルを供給することができる。
【0027】
また、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードルは、皮膚に接触した基板部を皮膚上から分離させる簡単な過程で皮下にニードル部を残留できるので、人体に有用な生体吸収性金属がユーザーの体内に容易に残留するようにすることができ、これにより、ユーザーは別途の施術を受けることなく人体に有用な生体吸収性金属を体内に収容することができる。
【0028】
また、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードルは、生体吸収性金属で形成されたニードル部が皮下で分解される過程で生成される副産物が皮下内で膨潤現象を提供してユーザーの皮膚のシワを改善することができる。例えば、マグネシウムで構成された生体吸収性金属は、副産物としてマグネシウムイオンと水酸化マグネシウム、水素ガスなどを発生させて皮膚の局所領域にマグネシウムを集中的に注入することができ、発生した水素ガスの膨潤によって皮膚のシワを改善することができる。よって、マグネシウム1gあたり約1Lの水素ガスが発生するため、少ない量でも非常に効率の良い効果を期待することができる。
【0029】
また、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードルは、生体吸収性金属で形成された基板部およびニードル部が、それ自体に担持された薬物を皮下に迅速に伝達することができるよう、薬物送達エンハンサーの役割も果たすため、ユーザーは、必要とされる薬物の迅速な伝達を介して治療を受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの斜視図である。
図2図1に示されたA部分を拡大して示す平面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る基板部上にニードル部が立てられた状態を示す斜視図である。
図4図3に示されたA部分を拡大して示す斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係るニードル部に切開溝が形成された様子を示す平面図である。
図6】皮膚に付着した基板部が皮膚上から分離されるときに皮膚に残留するニードル部の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の利点、特徴、及びそれらを達成する方法は、添付図面と共に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になるだろう。
【0032】
しかし、本発明は、以下で開示する実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態で実現される。但し、本実施形態は、単に本発明の開示を完全たるものにし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。本発明は、請求項の範疇によってのみ定められる。
【0033】
以下、図1乃至図6を参照して、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードルを詳細に説明する。本発明を説明するにあたり、関連した公知の機能或いは構成についての具体的な説明は、発明の要旨を不明確にしないために省略される。
【0034】
図1は本発明の一実施形態に係るマイクロニードルの斜視図、図2図1に示されたA部分を拡大して示す平面図、図3は本発明の一実施形態に係る基板部上にニードル部が立てられた状態を示す斜視図、図4図3に示されたA部分を拡大して示す斜視図、図5は本発明の一実施形態に係るニードル部に切開溝が形成された様子を示す平面図、図6は皮膚に付着した基板部が皮膚上から分離されるときに皮膚に残留するニードル部の様子を示す図である。
【0035】
図1乃至図6に示すように、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードル100は、皮膚に接触する基板部110と、前記基板部110に設けられ、前記基板部110上から突出して皮膚に挿入されるニードル部120と、前記ニードル部120と前記基板部110との連結部位に形成された切取部130と、を含むことができる。
【0036】
前記基板部110は、所定の面積と厚さを持つ薄い板材の形状を有することができ、皮下に伝達しようとする薬物が担持できる。
【0037】
前記基板部110に薬物を担持させる方式としては、前記基板部110を薬物の貯留した容器に浸漬させてコーティングさせる方式や、薬物を基板部110に塗布してコーティングする方式などの様々な公知の方式が使用できる。
【0038】
ちなみに、前記基板部110に担持される薬物は、病気の予防および治療のための薬物または遺伝子物質を含むことができ、スキンケアのためのEGF(Epidermal Growth Factor:上皮細胞増殖因子)またはヒアルロン酸(Hyaluronic acid)であり得る。
【0039】
一方、前記基板部110は生体吸収性金属で形成できる。すなわち、前記基板部110は、生体吸収性金属として活用されるマグネシウム、カルシウム、亜鉛、および鉄のうちの少なくとも一つの成分を含む金属で製作できる。
【0040】
また、上述したような構成を持つ基板部110は、接着性物質の塗布された接着性シート(図示せず)に置かれたまま、ユーザーの皮膚にパッチ(patch)の形で付着することができる。
【0041】
前記ニードル部120は、前記基板部110を、レーザーを用いたカット装置で加工することにより形成できる構成要素であり、前記基板部110の表面上に互いに一定の間隔を置いて多数設けられてもよい。よって、前記ニードル部120も生体吸収性金属で形成されるといえる。
【0042】
図3及び図4に示すように、前記ニードル部120は、公知の成形工程を介して、前記基板部110の表面上から垂直方向に折り曲げられて突出することができる。すなわち、前記ニードル部120は、前記基板部110がユーザーの皮膚と接触すれば、ユーザーの皮下に挿入されて薬物を伝達する部位である。
【0043】
前記ニードル部120は、図2に示すように、前記基板部110に形成されるニードル孔121と、前記ニードル孔121に収容されたまま前記基板部110と一端が連結される第1ニードル122と、前記第1ニードル122の他端と一端が連結されたまま前記ニードル孔121に収容される第2ニードル123と、を含むことができる。
【0044】
前記ニードル孔121は、レーザーカッターを用いたカット加工または板金加工によって基板部110上に形成できる。この過程で、前記第1ニードル122と前記第2ニードル123が形成できる。
【0045】
すなわち、前記ニードル孔121の形状およびサイズは、前記第1ニードル122と前記第2ニードル123の形状およびサイズを決定する要素である。その形状およびサイズは、第1ニードル122と第2ニードル123の形状およびサイズに対応して可変する。
【0046】
前記第1ニードル122と前記第2ニードル123は、全体的に矢尻の形状を有することができ、前記第1ニードル122は、一定の幅を持ったまま、前記ニードル孔121を区画する前記基板部110の一面部位にその長さ方向の一端が連結できる。
【0047】
前記第2ニードル123は、長さ方向の一端から他端へ行くほど次第に幅が狭くなる矢尻の形状に形成され、その長さ方向の一端は、前述したように前記第1ニードル122の長さ方向の他端に連結できる。
【0048】
また、前記第2ニードル123の長さ方向の一端は、前記第1ニードル122の長さ方向の他端の幅よりも大きい幅に形成されることにより、その幅方向の両側に係止部123aをなすことができる。
【0049】
前記切取部130は、皮膚に接触した基板部110が皮膚上から分離されるときに、皮下に挿入された第1ニードル122と第2ニードル123が皮下に残留するようにするため、前記第1ニードル122の長さ方向の一端部位が前記基板部110上で容易に切れるようにすることができる。すなわち、前記切取部130は、図6に示すように、皮膚上から基板部110が分離されると、皮下層に前記ニードル部120が残留するようにすることができる。
【0050】
前記切取部130は、図2に示すように、第1ニードル122の長さ方向の一端から前記第1ニードル122の幅方向に沿って互いに一定の間隔を置いて配置される多数のスリット孔131の形状に形成できる。
【0051】
前記スリット孔131は、前記基板部110の厚さ方向に沿って穿設され、前記第1ニードル122の長さ方向の一端が前記基板部110から容易に切れるようにその連結部位の面積を減らす役割を果たす。
【0052】
以下、上述したように構成された切取部130によって前記第1ニードル122と前記第2ニードル123が皮下に残留する過程をより具体的に説明する。
【0053】
皮下に挿入された前記第1ニードル122と前記第2ニードル123は、皮下組織の収縮力によって皮下組織に結着できる。このとき、ユーザーによって皮膚上から分離される前記基板部110が皮下組織の収縮力よりも大きな力で第1ニードル122と第2ニードル123を引っ張ると、第1ニードル122と第2ニードル123も基板部110と一緒に皮膚上から分離されるしかない。
【0054】
しかし、本発明の一実施形態では、前記切取部130のスリット孔131を基板部110と第1ニードル122との連結部位に多数形成することにより、第1ニードル122と第2ニードル123を引っ張る基板部110の力を、皮下組織が提供する収縮力よりも小さくなるように減衰させ、前記第1ニードル122と前記第2ニードル123が皮下に残留するようにした。
【0055】
また、前記第2ニードル123に形成された係止部123aが皮下組織に係止できるので、前記第1ニードル122と前記第2ニードル123が皮下組織にさらに結着できる。よって、皮膚に接触していた基板部110が皮膚上から分離されるとき、前記第1ニードル122と前記基板部110との連結部位が容易に切れる。
【0056】
ここで、皮膚に残留した前記第1ニードル122と前記第2ニードル123は、前記基板部110に担持された薬物を皮下に伝達するだけでなく、生体吸収性金属に含まれているミネラル成分も皮下に伝達することができる。すなわち、生体吸収性金属として活用されるマグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄成分が皮下に伝達されることにより、体内にミネラル成分も供給することができる。
【0057】
ちなみに、生体吸収性金属は、整形外科用インプラントに応用するために、マグネシウムをベースにした合金が製作されて国内外で商用化された事例があり、整形外科用インプラントに適用された生体吸収性金属は、安全な骨折固定のために体内で分解速度を最大限に下げるか、或いは耐食性の向上に焦点が合わせられていた。
【0058】
ところが、本発明の一実施形態に係るマイクロニードル100を形成する生体吸収性金属は、整形外科用に適用された生体吸収性金属とは異なり、体内で分解速度を加速化して皮下で薬物の放出と共にミネラルの供給が可能なメカニズムが適用できる。
【0059】
例えば、生体吸収性金属として活用されるマグネシウム、カルシウム、亜鉛は、下記の[化学式1]乃至[化学式3]でそれぞれ表されるように、水と反応して水素ガスを放出しながら分解されるメカニズムを保有している。
【0060】
【化1】
【0061】
【化2】
【0062】
【化3】
【0063】
上述したような生体吸収性金属で形成された基板部110とニードル部120は、皮下でイオンおよび分解産物を放出し、その副産物により生成される水素ガスが皮下内で膨潤効果を提供してシワ改善効果を誘導することができる。
【0064】
また、生体吸収性金属の構成成分であるマグネシウムと亜鉛が生体内に挿入されて生成される副産物であるZnOとMgClは、皮膚の表面に留まりながら、基板部110と前記ニードル部120に担持された薬物が皮下に吸収されることを向上させる薬物送達エンハンサー(enhancer)の役割も果たすことができる。したがって、生体吸収性金属で形成された前記基板部110と前記ニードル部120は、それ自体に担持している薬物をユーザーに効果的に伝達することができる。
【0065】
一方、前記切取部130は、図5に示すように、ノッチ132をさらに含むことができる。前記ノッチ132は、前記第1ニードル122の長さ方向の一端における、前記第1ニードル122の幅方向の両側にそれぞれ配置され、前記ニードル孔121と連通可能に形成できる。
【0066】
前記ノッチ132は、前記基板部110が皮膚上から分離される過程で、前記第1ニードル122の長さ方向の一端部が前記基板部110上でさらに容易に切れるようにすることができ、また、前記基板部110から前記第1ニードル122が分離されるときに、ユーザーに伴われる引っ張りが緩和されるようにする。
【0067】
さらに具体的には、前記ノッチ132は、前記基板部110に連結された前記第1ニードル122の長さ方向の一端部における、その幅方向の両側のうちのいずれか一部位が前記基板部110上で優先的に切開されるようにして、前記第1ニードル122が容易に切れるようにすることができる。
【0068】
すなわち、前記ノッチ132は、前記多数のスリット孔131の周りに配置された前記基板部110と前記第1ニードル122との連結部位Pが前記第1ニードル122の幅方向に沿って順次切開されるようにして、前記基板部110上で前記第1ニードル122が迅速に切れるようにする。併せて、皮膚上からニードル部110が分離されたときに伴う引っ張りが前記ノッチ132によって減少することができる。
【0069】
前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の周面には担持溝124が設けられてもよい。
【0070】
前記担持溝124は、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の周方向に沿って互いに一定の間隔を置いて鋸歯状に多数設けられてもよく、そのそれぞれの担持溝124は、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の厚さだけ穿孔して設けられてもよい。
【0071】
前記担持溝124は、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123に担持される薬物の量を調節することができるようにする。すなわち、担持溝124は、その形成個数に応じて第1ニードル122または第2ニードル123の側面積を増減することができ、これにより、第1ニードル122または第2ニードル123に担持される薬物の量が調節できる。
【0072】
また、前記担持溝124は、前述したように、鋸歯状の溝であって、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の周面に形成されるので、皮下組織が前記担持溝124の形成空間に収容された状態で収縮できる。
【0073】
したがって、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の周面に形成された前記担持溝124は、皮下に挿入された前記第1ニードル122と前記第2ニードル123が皮下組織にさらに結着されるようにして、前記基板部110が皮膚上から分離されるとき、前記第1ニードル122が前記基板部110に導かれて皮膚上から分離されることを防止することができるようにする。
【0074】
ちなみに、前記担持溝124は、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の周面に限定されて形成されず、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の上面または底面に互いに一定の間隔を置いて多数設けられてもよく、これにより、前記第1ニードル122または前記第2ニードル123の上面または底面に担持される薬物の量も調節することができるのは勿論である。
【0075】
上述のように構成された本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードル100は、体内に治療のための薬物の他にも、生体吸収性金属に含まれている成分(マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄など)を伝達して、ユーザーに薬物と一緒にミネラルを供給することができる。
【0076】
また、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードル100は、皮膚に接触した基板部110を皮膚上から分離させる簡単な過程によって、皮下にニードル部120が残留することができるので、人体に有用な金属がユーザーの体内に容易に残留するようにすることができ、これにより、ユーザーは別途の塗布や施術を受けることなく人体に有用な金属を体内に収容することができる。
【0077】
また、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードル100は、生体吸収性金属で形成されたニードル部120が皮下で分解される過程で生成される副産物(水素ガス)が皮下内で膨潤現象を提供することにより、ユーザーの皮膚のシワを改善することができる。
【0078】
また、本発明の一実施形態に係る生体吸収性金属を用いたマイクロニードル100は、生体吸収性金属で形成された基板部110及びニードル部120が、それ自体に担持された薬物を皮下に迅速に伝達することができるように薬物送達エンハンサー(enhancer)の役割も果たす。よって、ユーザーは、必要とされる薬物の迅速な伝達を介して治療を受けることができる。
【0079】
以上、本発明に係る具体的な実施形態について説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく様々な変形が可能であるのはもちろんである。
【0080】
よって、本発明の範囲は、説明された実施形態に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定められるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の生体吸収性金属を用いたマイクロニードルは、医療分野、スキンケア分野などの多様な産業分野に販売されて使用可能である。
【符号の説明】
【0082】
100 マイクロニードル
110 基板部
120 ニードル部
130 切取部
P 連結部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6