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特許6995844アトピー性皮膚炎を治療するためのIL-13アンタゴニストの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】アトピー性皮膚炎を治療するためのIL-13アンタゴニストの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20220128BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20220128BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220128BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20220128BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZMD
A61P17/00
A61P37/08
A61P43/00 111
A61K31/573
C07K16/28 ZNA
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2019515636
(86)(22)【出願日】2017-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-21
(86)【国際出願番号】 US2017052891
(87)【国際公開番号】W WO2018057849
(87)【国際公開日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】62/398,713
(32)【優先日】2016-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/527,204
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/530,683
(32)【優先日】2017-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/539,037
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】リン, チンユイ
(72)【発明者】
【氏名】オマチ, セオドア エー.
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン, ライアン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】イェン, カール
(72)【発明者】
【氏名】チョン, イェンアン
(72)【発明者】
【氏名】デバスク, ケンドラ
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-506321(JP,A)
【文献】国際公開第2016/149276(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/112970(WO,A1)
【文献】ClinicalTrials.gov archive, NCT02340234,v25,2016年05月04日
【文献】British Journal of Pharmacology,2015年,173(5),793-803
【文献】THE LANCET Respiratory Medicine,2016年09月04日,4(10),781-796
【文献】THE LANCET,2016年04月26日,388(10039),31-44
【文献】SANOFI PRESS RELEASE,2016年06月06日,https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2016/2016-06-06-07-00-00
【文献】Journal of Allergy and Clinical Immunology,2013年,132(3),567-574
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P 17/00
A61P 37/08
A61P 43/00
A61K 31/573
C07K 16/28
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者におけるアトピー性皮膚炎の治療に用いるための、抗IL-13抗体を含む医薬組成物であって、
抗IL-13抗体が250mgまたは500mgの1回の負荷用量、およびそれに続く125mgまたは250mgの1回の維持用量で患者に投与され、
前記負荷用量と前記維持用量のそれぞれとが、フラット用量で皮下に投与され、
前記抗IL-13抗体が、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む医薬組成物。
【請求項2】
前記負荷用量が250mgであり、且つ前記維持用量が125mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記負荷用量が500mgであり、前記維持用量が250mgである、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記維持用量が前記負荷用量の投与の4週間後に投与され、前記維持用量がその後治療期間の間4週間ごとに1回投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記治療期間が24週間以上である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記医薬組成物が前記患者にて疾患重症度を軽減し、前記患者の疾患重症度がアトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法によって評価される、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記アトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法が湿疹面積・重症度指数(EASI)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物が、前記抗IL-13抗体の初回用量の投与に先立って判定される前記EASIに比べて50%または75%または90%前記EASIを低下させ、
前記EASIが前記初回用量の投与の12週後、または前記初回用量の投与の20週後、または前記初回用量の投与の24週後に判定される、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記アトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法がアトピー性皮膚炎重症度得点(SCORAD)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物が前記抗IL-13抗体の初回用量の投与に先立って判定される前記SCORADに比べて50%または75%前記SCORADを低下させ、
前記SCORADが前記初回用量の投与の12週間後に判定される、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記アトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法が治験医師による全般的評価(IGA)である、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が前記IGAをゼロまたは1に低下させ、
前記IGAが前記抗IL-13抗体の初回用量の投与の12週間後に判定される、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記アトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法が、患者報告アウトカム(PRO)であり、
前記PROが、掻痒の視覚的アナログ尺度(VAS)、睡眠不足のVAS、またはアトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)のスコアであり、
前記PROが前記抗IL-13抗体の初回用量の投与の12週間後に判定される、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記医薬組成物が前記掻痒のVASを40%~55%低下させる、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記医薬組成物が前記睡眠不足のVASを53%~61%低下させる、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物が前記ADIQのスコアを54%~65%低下させる、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記アトピー性皮膚炎がRajka/Langelandの基準スコアによって判定されるとき中程度から重度であり、前記Rajka/Langelandの基準スコアは4.5~9の間であると判定される、請求項1~16のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記抗IL-13抗体が皮下投与用具を用いて前記患者に投与される、請求項1~17のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記皮下投与用具が、充填済みの注射器、使い捨てのペン型注射用具、微量針用具、微量注入器、針のない注射用具、及び自動注入用具から選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記患者がまた、1以上の局所コルチコステロイドを投与される、請求項1~19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記1以上の局所コルチコステロイドが、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、及びトリアムシノロンアセトニドとヒドロコルチゾンの組み合わせから選択される、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記患者が12歳以上である、請求項1~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記患者が局所コルチコステロイドで不適切に管理されている、請求項1~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、そのすべてが全体として参照によって本明細書に組み入れられる2016年9月23日に出願された米国仮特許出願番号62/398,713、2017年6月30日に出願された米国仮特許出願番号62/527,204、2017年7月10日に出願された米国仮特許出願番号62/530,683、及び2017年7月31日に出願された米国仮特許出願番号62/539,037の優先権の利益を主張する。
【0002】
配列表
本出願は、EFS-Webを介して提出されている、全体として参照によって本明細書に組み入れられる配列表を含有する。2017年8月30日に作りだされた前記ASCIIのコピーはP33854-WO.SL.TXTと名付けられ、12,532バイトのサイズである。
【0003】
技術分野
アトピー性皮膚炎を治療するためのIL-13アンタゴニストの使用が提供される。提供されるのはまた、IL-13アンタゴニストを投与することによってアトピー性皮膚炎を治療する方法及びアトピー性皮膚炎の重症度を軽減する方法である。
【背景技術】
【0004】
アトピー性皮膚炎(AD)は、あらゆる年齢群を冒す慢性で再発性の且つ寛解する炎症性の疾病である。臨床的には、ADは、乾燥症、紅斑性の痂皮形成性の皮疹、苔癬化、損傷された皮膚バリア、及び激しい掻痒を特徴とする(BieberT.,N.Engl.J.Med.2008;358:1483-94)。
【0005】
AD患者は大きな疾患の負担を有し、彼らの生活の質(QoL)は有意に影響を受ける。研究の1つでは、ADは、糖尿病及び高血圧症よりも患者の精神的健康に対して大きなマイナス効果を有することが示された(Zuberbier,T.,et al.,J Allergy Clin.Immunol.2006;118:226-32)。中程度から重度のAD患者には社会的機能不全及び睡眠障害が広く行き渡り、それは疾患重症度に直接関連する(Williams,H.,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.2008;121:947-54.el5)。抑うつ症、不安症及び社会的機能不全はAD患者に影響を及ぼすだけでなく、彼らの介護人にも影響を及ぼす(Zuberbier,T.,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.2006;118:226-32)。もう1つの一般的な消耗性の皮膚疾患である乾癬と比べて、AD患者は、低い日常役割機能―身体の、活力の、社会生活の機能、日常役割機能―感情の、及び心の健康のサブスケールスコアを有する(Kiebert,G.,et al.,Int.J.Dermatol.2002;41:151-8)。
【0006】
インターロイキン(IL)-13はTヘルパー2型(Th2)炎症の重要なメディエータと見なされ、IL-13のレベルの上昇はアトピー性皮膚炎だけでなく、喘息、炎症性大腸疾患、特発性肺線維症(IPF)及び慢性閉塞性肺疾患(COPD)を含むが、これらに限定されない多数の他の疾患に関連している(Oh CK,et al.,Eur.Respir.Rev.19:46-54(2010);Fahy JV,et al.,Nat.Rev.Immunol.15:57-65[2015])。IL-13は、Th2細胞、好塩基球、好酸球、及び肥満細胞、と同様に気道上皮細胞及び2型自然リンパ系細胞を含む多数の細胞型によって産生される。IL-13は、IL-4と共有するIL-4Rα/IL-13Rαlであるヘテロ二量体受容体に結合し、STAT-6シグナル伝達経路を活性化する(Hershey,GK,J.Allergy Clin.Immunol.111(4):677-90[2003])。Th2の炎症には、Th2細胞に加えて2型自然リンパ系細胞(ILC2)を含む幾つかの細胞型の活性化が関与するので、「Th2の炎症」はさらに最近では科学文献にて、「2型炎症」と呼ばれている。Th2細胞に加えて、ILC2はIL-5及びIL-13のようなサイトカインの重要な供給源として特定されている。従って、以前Th2サイトカインとして特定されているIL-13及びIL-5のようなサイトカインは今や科学文献では2型サイトカインとも呼ばれている。同様に、アトピー性皮膚炎を含むそのようなサイトカインに関連する病態は、今や2型推進疾患または2型関連疾患とも呼ばれる。たとえば、Noonan,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.,132(3):567-574(2013);Hanania,et al.,Thorax.70(8):748-56 (2015);及びCai,et al.,Bioanalysis,8(4):323-332(2016)を参照のこと。
【0007】
好酸球性炎症は、アレルギー性及び非アレルギー性の双方(Gonlugur(2006),Immunol.Invest.35(l):29-45)で種々の病気に関連する。炎症は損傷に対する生きている組織の回復応答である。炎症反応の特徴は、組織自体で産生される特定の化学物質による損傷された組織における白血球の蓄積である。好酸球白血球は、アレルギー性疾病、蠕虫感染及び腫瘍性疾患のような多種多様な状態で蓄積する(Kudlacz,et al.,(2002),Inflammation,26:111-119)。免疫系の成分である好酸球白血球は粘膜表面の防御要素である。それらは抗原だけでなく、寄生虫、化学物質及び外傷に応答する。
【0008】
組織好酸球は、アトピー性皮膚炎と同様に、たとえば、湿疹、天疱瘡、急性蕁麻疹及び中毒性表皮壊死症のような皮膚疾患に存在する(Rzany,et al.,Br.J.Dermatol.135:6-11(1996))。好酸球は、IgEが介在するアレルギー性皮膚反応における組織及び空の顆粒タンパク質に蓄積する(Nielsen,et al.,Ann.Allergy Asthma Immunol.,85:489-494(2001))。肥満細胞と組み合わせた好酸球は関節の炎症を引き起こす可能性がある(Miossec,J.Clin.Rheumatol.3:81-83(1997))。好酸球性炎症は関節損傷を伴うことがある。滑液好酸球増多症は、たとえば、関節リウマチ、寄生虫性疾患、好酸球増多症候群、ライム病及びアレルギー性の過程のような疾患、と同様に関節血症及び関節造影に関連することができる(Atanes,et al.,Scand.J. Rheumatol.,25:183-185(1996))。好酸球性炎症は同様に骨を冒すことができる(Yetiser,et al.,Int.J.Pediatr.Otorhinolaryngol.,62:169-173(2002))。好酸球性筋疾患の例には、好酸球性筋周膜炎、好酸球性多発筋炎、及び限局性好酸球性筋炎が挙げられる(Lakhanpal,et al.,Semin.Arthritis Rheum.,17:331-231(1988))。骨格筋を冒す好酸球性炎症は、寄生虫感染または薬剤または好酸球増多の一部の全身性疾患(たとえば、特発性好酸球増多症候群及び好酸球増多・筋肉痛症候群)の特徴と関連してもよい。好酸球は自己免疫抗体によって認識されるエピトープに対する炎症反応に関与する(Engineer,et al.,Cytokine,13:32-38(2001))。結合組織の疾患は、好中球性の、好酸球性のまたはリンパ球性の血管炎症を招いてもよい(Chen,et al.,J.Am.Acad.Dermatol.,35:173-182(1996))。組織及び末梢血の好酸球は活動型リウマチ性疾患で存在することができる。結合組織疾患の1種である強直性脊椎炎における血清ECPレベルの上昇は、好酸球が原因となる過程にも関与することを示唆している(Feltelius,et al.,Ann.Rheum.Dis.,46:403-407(1987))。ウエゲナー肉芽腫症は稀に、肺結節、胸膜滲出、及び末梢血好酸球増多症を呈することができる(Krupsky,et al.,Chest,104:1290-1292(1993))。
【0009】
少なくとも400/mm3の末梢血好酸球増多症は、全身性硬化症の症例の7%、限局性強皮症の症例の31%及び好酸球性筋膜炎の症例の61%で発生し得る(Falanga,et al.,J.Am.Acad.Dermatol.,17:648-656(1987))。強皮症は、Meissnerの及びAuerbachの網状組織に密接に類似する炎症過程を生じ、消化器系では肥満細胞及び好酸球白血球から成る。好酸球が推進する神経毒は、強皮症で発生するように、消化器の運動機能不全に寄与することができる(DeSchryver-Kecskemeti,et al.Arch.Pathol.Lab Med.,113:394-398(1989))。
【0010】
好酸球は、限局性(Varga,et al.,Curr.Opin.Rheumatol.,9:562-570(1997))または全身性(Bouros,et al.,Am.J.Respir.Crit.Care Med.,165:1581-1586(2002))の結合組織の増殖を伴うことができる。それらは、線維芽細胞におけるプロテオグリカンの分解を阻害することによって線維化を扇動することができ(Hernnas,et al.,Eur.J.Cell Biol.,59:352-363(1992))、線維芽細胞はGM-CSFを分泌することによって好酸球の生存に介在する(Vancheri,et al.,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.,1:289-214(1989))。好酸球は、鼻組織(Bacherct,et al.,J.allergy Clin.Immunol.,107:607-614(2001))、気管支組織(Arguelles,et al.,Arch.Intern.Med.,143:570-571(1983))、及び消化器ポリープ組織(Assarian,et al.,Hum.Pathol.,16:311-312(1985))に見いだすことができる。同様に、好酸球は炎症性の偽腫瘍(筋線維芽腫瘍)に局在することができる。好酸球は、眼窩部にて炎症性の偽腫瘍を伴うことが多く、その場合、状態は血管性浮腫及びアレルギー性鼻結膜炎を模倣することができる(Li,et al.,Ann.Allergy,69:101-105(1992))。
【0011】
好酸球性炎症は組織外傷(たとえば、手術または負傷の結果)で見いだすことができる。好酸球性炎症は、循環器疾患(たとえば、好酸球性心筋炎、好酸球性冠状動脈炎、虚血性心疾患、急性心筋梗塞、心臓破裂)にも関連することができる。壊死性の炎症過程にも好酸球性炎症が関与することができる(多発筋炎、冠動脈解離、神経ベーチェット病の壊死性病変、認知症、脳梗塞)。
【0012】
幾つかの証拠は、IL-13がアトピー性皮膚炎(AD)における重要な病原性成分であることを示唆している。IL-13の発現の上昇はADの皮膚にて一貫して報告されており(Hamid,Q,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.98:225-31[1996];Jeong,CW, et al.,Clin.Exp.Allergy,33:1717-24[2003];Tazawa,T,et al.,Arch Dermatol.Res.295:459-64[2004];Neis,MM,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.118:930-7[2006];Suarez-Farinas,M,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.132:361-70[2013];Choy,DF,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.130:1335-43[2012])、一部の報告はIL-13の発現と疾患重症度の間の関係を示唆している(La Grutta,S,et al.,Allergy,60:391-5[2005])。高いIL-13はAD患者の血清でも報告されており(Novak,N,et al.,J.Invest.Dermatol.2002;119:870-5;国際特許出願番号PCT/US2016/022481[公開番号WO2016149276])、幾つかの研究はAD患者の血液におけるIL-13を発現しているT細胞の増加を報告している(Akdis,M,et al.,J.Immunol.1997;159:4611-9;Aleksza,M,et al.,Br.J.Dermatol.2002;147:1135-41;La Grutta,S,et al.,Allergy,2005;60:391-5)。従って、IL-13及びその受容体は、喘息、IPF及びADを含む種々の2型炎症関連疾患の治療のための治療用標的となっている(Corren,J,et al.,N.Eng.J.Med.365:1088-98[2011];Scheerens,H,et al.,Clin.Exp.Allergy,44:38-46[2014];Beck,LA,et al.,N.Eng.J.Med.371:130-9[2014];Thaci,D,et al.,Lancet,2016;387:40-52)。アトピー性皮膚炎及びレブリキズマブにおけるIL-13を考察している追加の出版物には、He,JQ,et al.,Genes Immun.2003;4:385-89;Kim,BE,et al.Clin.Immunology,2008;126,332-7;Bhogal,RK及びBona,CA.,Int.Rev.Immunol.2008;27:472-96;Kim,ST,et al.J.Gene Med.2009;11:26-37;Bieber,T,et al.J.Allergy Clin.Immunol.2014;133:AB404;Thaci,D,et al.J.Allergy Clin.Immunol.2014;133:AB192;2.Ultsch,M,et al.J.Mol.Biol.2013;425:1330-1339が挙げられる。
【0013】
加えて、広く作用する抗炎症活性を持つ作用物質を検討している幾つかの臨床試験は、改善された臨床疾患に関連したIL-13の発現の低下を明らかにしている。たとえば、シクロスポリンAで12週間治療した中程度から重度のADの19人の成人患者はIL-13の皮膚での発現の低下を示し(Khattri,S,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.2014;133(6):1626-34)、シクロスポリンAのマイクロエマルションで治療した10人の小児患者は血中のIL-13を発現しているCD3T細胞の減少を示し(Bunikowski,R,et al.,Pediatr.Allergy Immunol.2001;12:216-23)、狭帯域の紫外線Bで治療した中程度から重度のADの12人の成人はIL-13の皮膚での発現の有意な低下を示した(Tintle,S,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.2011;128:583-93.e1-4)。
【0014】
多数のIL-13アンタゴニストが記載されており、喘息、COPD及びIPFを含む種々の2型炎症関連疾患で臨床的に調べられている。これらには、IMA-026、IMA-638(アンルキンズマブとも呼ばれる、INN番号.910649-32-0;QAX-576);トラロキヌマブ(CAT-354とも呼ばれる、CAS番号.1044515-88-9);及びAER-001、ABT-308(ヒト化13C5.5抗体とも呼ばれる)が挙げられる。加えて、特定のIL-4受容体アルファアンタゴニストが開発されており、これらはIL-13及びIL-4双方のアンタゴニストである。IL-4受容体アルファアンタゴニストの例には、AMG-317、AIR-645、喘息と同様にアトピー性皮膚炎について臨床的に調べられているデュピルマブ、(たとえば、Beck,LA、et al.、N.Eng.J.Med.371:130-9[2014]を参照のこと)及びAER-001、IL4/IL-13トラップが挙げられる。別のIL-13アンタゴニストは、レブリキズマブである。レブリキズマブは高い安定性のためにヒンジ領域で変異を持つヒト化モノクローナル免疫グロブリン(Ig)G4抗体(huIgG4)である。レブリキズマブは高い親和性で可溶性ヒトIL-13に特異的に結合し、高い効力でその機能的活性を中和する。レブリキズマブはIL-4Rアルファ/IL-13Rアルファ受容体を介してIL-13のシグナル伝達を阻害する。それはIL-13のIL-4Rアルファへの結合を阻止するが、IL-13のIL-13Rアルファ1またはIL-13Rアルファ2への結合を阻止しない。レブリキズマブは種々の出版物に記載されており、幾つかの喘息の試験で調べられている(たとえば、Corren,et al.(2011),N.Engl.J.Med.365:1088-98;Scheerens,et al.(2012),Am.J.Respir.Crit.Care Med.,185:A3960;Jia,et al.(2012),J.Allergy Clin.Immunol.,130:647-654,e10;Hanania,et al.,Thorax,2015;70:748-756;Hanania,et al.,Lancet Respir.Med.,2016,available at dx(dot)doi(dot)org(slash)S2213-2600(16)30265-X,published online September 5,2016;WO2012/083132を参照のこと)。
【0015】
ADへの治療上のアプローチは主として、誘因回避、入浴及び皮膚軟化剤の使用による皮膚の水和及び大部分は局所コルチコステロイド(TCS)から成る抗炎症療法から成る。多くの患者では、TCSによる治療は症状軽減の対策を提供するが、疾患を適切に管理するわけではない。加えて、TCSの使用は多数の併存疾患、及び患者への大きな負担を含む限界に関連する。中程度から重度のADの治療についての全身性の免疫抑制治療及び経口グルココルチコイドの無作為比較盲検臨床試験の文献(PubMed、the Nankervis systematic review、the Global Resource for Eczema Trials [GREAT]データベースを含む)の再検討は、従来の全身性の免疫抑制治療の使用は、重大な副作用によって限定されることが多く;さらにそれらの使用は主としてFDAの認可外であることを強調している。これらの知見は、たとえば、最近認可された抗IL-4Rα抗体であるデュピルマブのような、根底にあるADに特異的な経路を標的とする薬剤を開発する実質的に満たされないニーズ及び重要性を示している。難治性ADにおける生物療法について有望なことは、全身性の免疫抑制療法の必要性を減らし、最終的に集中的なTCS療法の必要性を減らすさらに有効な治療法を提供することである。デュピルマブは中程度から重度のADの成人の治療のために認可された最初の且つ唯一の生物製剤である一方で、それは、600mgの初回用量(300mgの2回の皮下注射)とそれに続く2週間ごとに1回の300mgとして投与される(Simpson,et al.,N.Engl.J.Med.2016;375(24):2335-2348)。
【0016】
TCSに適正に反応しない持続性の中程度から重度の疾患を有するそれらの患者では、最近のガイドラインは多数の進歩した治療選択肢の要点を述べている(Ring,J,et al.,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.2012;26:1176-93;Schneider,L,et. al.,J.Allergy Clin.Immunol.,2013;131:295-9.e1-27)。進歩した選択肢には、局所カルシニューリン阻害剤(TCI)、光療法、ならびに、たとえば、経口コルチコステロイド、シクロスポリン、アザチオプリン、メソトレキセート、及びミコフェノレートのような免疫抑制剤が挙げられる。これらの間で、シクロスポリンだけが中程度から重度のADの治療に認可されており(多数の欧州の国々では国家的に認可されているが、米国ではそうではない)、その使用は16歳を超えた患者に限定されている(最大8週間[NEORAL(登録商標)])。シクロスポリンは最も広範に研究された全身性の作用物質であるけれども、試験結果の解釈及び臨床診療への適用可能性は試験設計によって限定されている(Schmitt,J,et al.,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.2007;21:606-619)。たとえば、アザチオプリン及びメソトレキセートのような他の免疫抑制剤の研究は、ほとんど症例報告から成り、無作為比較試験の報告はほとんどない(Haeck,IM,et al.,J.Am.Acad.Dermatol.2011;64:1074-84;Schram,ME,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.,2011;128:353-9)。処方行為は、明瞭に好まれる作用物質がないことを報告した欧州皮膚科医の最近の調査によって強調された、有意な各国特有の変動を明らかにしている:43%使用されたシクロスポリン、31%経口コルチコステロイド、及び22%アザチオプリン(Proudfoot,LE,et al.,Br.J.Dermatol.,2013;169:901-9)。
【0017】
中程度から重度のADの患者を治療するのに使用される全身性免疫抑制剤を含む進歩した治療法は中程度から良好な有効性の証拠を示すけれども、副作用による不十分な忍容性がその長期の使用を限定している。シクロスポリンが実質的な有効性を示している症例でさえ、治療法の中止後2週間以内に患者のおよそ50%が再発し、6週間に内に80%が再発する(Amor,KT,et al.,J.Am.Acad.Dermatol.2010;63:925-46)。有害な副作用及び限定にもかかわらず、これらの作用物質を使用し続けることは、さらに安全で有効な治療法についての高度に満たされない医学的ニーズを示している。
【0018】
許容できる利益・リスクの特性を伴う中程度から重度のADのための新規の治療法を見いだす試みにおいて、炎症性の細胞及びメディエータを特異的に標的とする多数の生物製剤が調べられている(Taieb,A.et al.,J.Dtsch.Dermatol.Ges.2012;10:174-8;Guttman-Yassky,E,et al.,Expert Opin.Biol.Ther.2013;13:549-61)。しかしながら、これらの研究及び症例報告の幾つかは少数の患者のみ(1人または2人ほど少ない)で行われ、一貫性のない有効性及び/または安全性のシグナルを示している。
【0019】
従って、アトピー性皮膚炎疾患の症状の重症度を軽減し、有効性を最大化する新しい治療処置及び治療投薬計画についてのニーズがある。加えて、既存の治療に比べて限定された毒性を持つ改善された安全性特性を提供し、または患者のためのさらなる忍容性または利便性を提供し、それによって治療剤の使用法の患者の順守及び治療投薬計画の順守を改善する新しい治療処置及び治療投薬計画についてのニーズがある。
【0020】
本明細書に記載されている本発明は特定の上述のニーズを満たし、他の利益を提供する。
【0021】
特許出願及び出版物を含む本明細書で引用されている参考文献はすべて、任意の目的で全体として参照によって組み入れられる。
【発明の概要】
【0022】
本発明は、幾つかの有効性結果判定法によって評価されるように、付随して局所コルチコステロイドを使用している患者を含む、本明細書で提供される投薬計画を使用しているアトピー性皮膚炎患者に投与すると、抗IL-13アンタゴニストモノクローナル抗体であるレブリキズマブが治療効果を提供するという驚くべき且つ予想外の発見に少なくともある程度基づく。従って、本明細書で提供されるのは、アトピー性皮膚炎を治療することにおけるレブリキズマブのような抗IL-13抗体を含むIL-13アンタゴニストの使用、及びレブリキズマブのような抗IL-13抗体を含むIL-13アンタゴニストによってアトピー性皮膚炎を治療する方法である。
【0023】
従って、態様の1つでは、治療上有効な量のIL-13アンタゴニストを含む医薬組成物を患者に投与することを含む、医薬組成物が患者にて疾患重症度を軽減し、疾患重症度がアトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法(ADDSOM)によって評価される、患者にてアトピー性皮膚炎を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、アトピー性皮膚炎はRajka/Langelandの基準スコアによって判定されるように中程度から重度であり、Rajka/Langelandの基準スコアは4.5~9の間であると判定される。一部の実施形態では、方法はさらに1以上の局所コルチコステロイドの投与を含む。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、IL-13アンタゴニストの投与の前に、IL-13アンタゴニストの投与と同時に、またはIL-13アンタゴニストの投与の後で投与される。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、及びトリアムシノロンアセトニドとヒドロコルチゾンの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、患者は12歳以上である。一部の実施形態では、患者は局所コルチコステロイドで不適切に管理されている。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストはモノクローナル抗IL-13抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、各VHのHVRが配列番号5、配列番号6、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含むVHを含み、且つ各VLのHVRが配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有するHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含むVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号1及び配列番号3から選択される配列を含むVHを含み、且つ配列番号2及び配列番号4から選択されるVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒトIL-13を結合する完全長抗体またはその断片である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG4である。一実施形態では、抗IL-13抗体はレブリキズマブである。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストは皮下投与用具を用いて患者に投与される。特定のそのような実施形態では、皮下投与用具は、充填済みの注射器、使い捨てのペン型注射用具、微量針用具、微量注入器、針のない注射用具、及び自動注入用具から選択される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは充填済みの注射器を用いて患者に投与される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは自動注入用具を用いて患者に投与される。
【0024】
別の態様では、アトピー性皮膚炎を治療するのに使用するための医薬組成物は、125mgまたは250mgまたは500mgまたは約125mgまたは約250mgまたは約500mgの抗IL-13抗体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、110mg~140mgの間の抗IL-13抗体または120mg~130mgの間の抗IL-13抗体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、225mg~275mgの間の抗IL-13抗体または240mg~260mgの間の抗IL-13抗体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、450mg~550mgの間の抗IL-13抗体または475mg~525mgの間の抗IL-13抗体または490mg~510mgの間の抗IL-13抗体を含む。一部の実施形態では、医薬組成物は、125mg、または約125mg、または110mg~140mgの間または120mg~130mgの間の抗IL-13抗体を含み、組成物は4週間ごとに1回皮下に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、12週間の期間または20週間の期間または24週間の期間投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、250mg、または約250mg、または225mg~275mgの間、または240mg~260mgの間の抗IL-13抗体を含み、組成物は4週間ごとに1回または8週間ごとに1回皮下に投与される。一部の実施形態では、医薬組成物は、24週間以上の期間または24週間、投与される。一部の実施形態では、アトピー性皮膚炎は、Rajka/Langelandの基準スコアによって判定されるような中程度から重度であり、Rajka/Langelandの基準スコアは4.5~9の間であると判定される。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストはモノクローナル抗IL-13抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、各VHのHVRが配列番号5、配列番号6、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含むVHを含み、且つ各VLのHVRが配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有するHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含むVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号1及び配列番号3から選択される配列を含むVHを含み、且つ配列番号2及び配列番号4から選択される配列を含むVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒトIL-13を結合する完全長抗体またはその断片である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG4である。一実施形態では、抗IL-13抗体はレブリキズマブである。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストは皮下投与用具を用いて患者に投与される。特定のそのような実施形態では、皮下投与用具は、充填済みの注射器、使い捨てのペン型注射用具、微量針用具、微量注入器、針のない注射用具、及び自動注入用具から選択される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは充填済みの注射器を用いて患者に投与される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは自動注入用具を用いて患者に投与される。一部の実施形態では、方法はさらに、1以上の局所コルチコステロイドの投与を含む。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、IL-13アンタゴニストの投与の前に、IL-13アンタゴニストの投与と同時に、またはIL-13アンタゴニストの投与の後で投与される。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、及びトリアムシノロンアセトニドとヒドロコルチゾンの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、患者は12歳以上である。一部の実施形態では、患者は局所コルチコステロイドで不適切に管理されている。
【0025】
さらに別の態様では、治療上有効な量のIL-13アンタゴニストを含む医薬組成物を患者に投与することを含む、医薬組成物が疾患重症度を軽減し、疾患重症度がアトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法(ADDSOM)によって評価される、患者にてアトピー性皮膚炎を治療する方法が提供され、その際、アトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法は、湿疹面積・重症度指数(EASI)、アトピー性皮膚炎重症度得点(SCORAD)、または治験医師による全般的評価(IGA)、または患者報告アウトカム(PRO)である。一部の実施形態では、アトピー性皮膚炎は、Rajka/Langelandの基準スコアによって判定されるように中程度から重度であり、Rajka/Langelandの基準スコアは4.5~9の間であると判定される。一部の実施形態では、方法はさらに、1以上の局所コルチコステロイドの投与を含む。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、IL-13アンタゴニストの投与の前に、IL-13アンタゴニストの投与と同時に、またはIL-13アンタゴニストの投与の後で投与される。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、及びトリアムシノロンアセトニドとヒドロコルチゾンの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、患者は12歳以上である。一部の実施形態では、患者は局所コルチコステロイドで不適切に管理されている。一部の実施形態では、ADDSOMはEASIであり、医薬組成物は、医薬組成物の初回用量の投与の前に判定されたEASIに比べてEASIを50%または75%または90%低下させる。一部の実施形態では、EASIは、初回用量の投与の12週後または初回用量の投与の20週後または初回用量の投与の24週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはSCORADであり、医薬組成物は、医薬組成物の初回用量の投与の前に判定されたSCORADに比べてSCORADを50%低下させる。一部の実施形態では、ADDSOMはSCORADであり、医薬組成物は、医薬組成物の初回用量の投与の前に判定されたSCORADに比べてSCORADを75%低下させる。一部の実施形態では、SCORADは初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはIGAであり、医薬組成物はIGAをゼロまたは1に低下させる。一部の実施形態では、IGAは医薬組成物の初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはPROであり、PROは、掻痒の視覚的アナログ尺度(VAS)、睡眠不足VAS、またはアトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)スコアである。一部の実施形態では、PROは医薬組成物の初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、PROは掻痒のVASであり、医薬組成物は掻痒VASを40%~55%低下させる。一部の実施形態では、PROは睡眠不足VASであり、医薬組成物は睡眠不足VASを53%~61%低下させる。一部の実施形態では、PROはADIQであり、医薬組成物はADIQスコアを54%~65%低下させる。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストはモノクローナル抗IL-13抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、各VHのHVRが配列番号5、配列番号6、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含むVHを含み、且つ各VLのHVRが配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有するHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含むVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号1及び配列番号3から選択される配列を含むVHを含み、且つ配列番号2及び配列番号4から選択されるVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒトIL-13を結合する完全長抗体またはその断片である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG4である。一実施形態では、抗IL-13抗体はレブリキズマブである。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストは皮下投与用具を用いて患者に投与される。特定のそのような実施形態では、皮下投与用具は、充填済みの注射器、使い捨てのペン型注射用具、微量針用具、微量注入器、針のない注射用具、及び自動注入用具から選択される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは充填済みの注射器を用いて患者に投与される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは自動注入用具を用いて患者に投与される。
【0026】
その上さらに別の態様では、治療上有効な量が125mg及び250mgから選択され、IL-13アンタゴニストが4週間ごとに1回皮下に投与される、治療上有効な量のIL-13アンタゴニストを患者に投与することを含む方法が提供される。一部の実施形態では、治療上有効な量は、約125mgまたは110mg~140mgの間の抗IL-13抗体、または120mg~130mgの間の抗IL-13抗体である。一部の実施形態では、治療上有効な量は、約250mgまたは225mg~275mgの間の抗IL-13抗体、または240mg~260mgの間の抗IL-13抗体である。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストはモノクローナル抗IL-13抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、各VHのHVRが配列番号5、配列番号6、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含むVHを含み、且つ各VLのHVRが配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有するHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含むVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号1及び配列番号3から選択される配列を含むVHを含み、且つ配列番号2及び配列番号4から選択されるVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒトIL-13を結合する完全長抗体またはその断片である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG4である。一実施形態では、抗IL-13抗体はレブリキズマブである。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストは皮下投与用具を用いて患者に投与される。特定のそのような実施形態では、皮下投与用具は、充填済みの注射器、使い捨てのペン型注射用具、微量針用具、微量注入器、針のない注射用具、及び自動注入用具から選択される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは充填済みの注射器を用いて患者に投与される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは自動注入用具を用いて患者に投与される。一部の実施形態では、アトピー性皮膚炎は、Rajka/Langelandの基準スコアによって判定されるように中程度から重度であり、Rajka/Langelandの基準スコアは4.5~9の間であると判定される。一部の実施形態では、方法はさらに、1以上の局所コルチコステロイドの投与を含む。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、IL-13アンタゴニストの投与の前に、IL-13アンタゴニストの投与と同時に、またはIL-13アンタゴニストの投与の後で投与される。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、及びトリアムシノロンアセトニドとヒドロコルチゾンの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、患者は12歳以上である。一部の実施形態では、患者は局所コルチコステロイドで不適切に管理されている。一部の実施形態では、治療上有効な量は患者における疾患重症度を軽減し、疾患重症度はアトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法(ADDSOM)によって評価される。一部の実施形態では、ADDSOMは、湿疹面積・重症度指数(EASI)、アトピー性皮膚炎重症度得点(SCORAD)、または治験医師による全般的評価(IGA)、または患者報告アウトカム(PRO)である。一部の実施形態では、ADDSOMはEASIであり、治療上有効な量は、IL-13アンタゴニストの初回用量の投与の前に判定されたEASIに比べてEASIを50%または75%または90%低下させる。一部の実施形態では、EASIは、初回用量の投与の12週後または初回用量の投与の20週後または初回用量の投与の24週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはSCORADであり、治療上有効な量は、IL-13アンタゴニストの初回用量の投与の前に判定されたSCORADに比べてSCORADを50%低下させる。一部の実施形態では、ADDSOMはSCORADであり、治療上有効な量は、IL-13アンタゴニストの初回用量の投与の前に判定されたSCORADに比べてSCORADを75%低下させる。一部の実施形態では、SCORADは初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはIGAであり、治療上有効な量はIGAをゼロまたは1に低下させる。一部の実施形態では、IGAはIL-13アンタゴニストの初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはPROであり、PROは、掻痒の視覚的アナログ尺度(VAS)、睡眠不足のVAS、またはアトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)スコアである。一部の実施形態では、PROはIL-13アンタゴニストの初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、PROは掻痒のVASであり、治療上有効な量は掻痒のVASを40%~55%低下させる。一部の実施形態では、PROは睡眠不足のVASであり、治療上有効な量は睡眠不足VASを53%~61%低下させる。一部の実施形態では、PROはADIQであり、治療上有効な量はADIQスコアを54%~65%低下させる。
【0027】
別の態様では、投与が少なくとも1回の負荷用量の投与と少なくとも1回のその後の維持用量の投与とを含み、少なくとも1回の負荷用量のそれぞれと少なくとも1回の維持用量のそれぞれがフラット用量で皮下に投与される、治療上有効な量のIL-13アンタゴニストを患者に投与することによって患者にてアトピー性皮膚炎を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、アトピー性皮膚炎は、Rajka/Langelandの基準スコアによって判定されるように中程度から重度であり、Rajka/Langelandの基準スコアは4.5~9の間であると判定される。一部の実施形態では、方法はさらに、1以上の局所コルチコステロイドの投与を含む。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、IL-13アンタゴニストの投与の前に、IL-13アンタゴニストの投与と同時に、またはIL-13アンタゴニストの投与の後で投与される。一部の実施形態では、1以上の局所コルチコステロイドは、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、及びトリアムシノロンアセトニドとヒドロコルチゾンの組み合わせから選択される。一部の実施形態では、患者は12歳以上である。一部の実施形態では、患者は局所コルチコステロイドで不適切に管理されている。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストはモノクローナル抗IL-13抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、各VHのHVRが配列番号5、配列番号6、及び配列番号7のアミノ酸配列を有するHVR-H1、HVR-H2、及びHVR-H3を含むVHを含み、且つ各VLのHVRが配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有するHVR-L1、HVR-L2、及びHVR-L3を含むVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号1及び配列番号3から選択される配列を含むVHを含み、且つ配列番号2及び配列番号4から選択されるVLを含む抗体である。特定の実施形態では、抗IL-13抗体は、ヒトIL-13を結合する完全長抗体またはその断片である。一部の実施形態では、抗IL-13抗体はIgG4である。一実施形態では、抗IL-13抗体はレブリキズマブである。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有する重鎖と配列番号12のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む。一部の実施形態では、負荷用量は250mgまたは500mgであり、維持用量は125mgである。一部の実施形態では、負荷用量は250mgであり、維持用量は125mgである。一部の実施形態では、負荷用量は500mgであり、維持用量は125mgである。一部の実施形態では、維持用量は負荷用量の投与の4週間後に投与され、維持用量はその後治療期間の間、4週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、負荷用量は250mgであり、維持用量は125mgであり、維持用量は負荷用量の投与の4週間後、及びその後治療期間の間、4週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、負荷用量は250mgであり、負荷用量が投与され、15日後、第2の負荷用量の投与がそれに続き、維持用量は125mgである。一部の実施形態では、維持用量は第2の負荷用量の投与の2週間後に投与され、維持用量はその後治療期間の間、4週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、負荷用量は250mgであり、負荷用量が投与され、29日後、第2の負荷用量の投与がそれに続き、維持用量は125mgである。一部の実施形態では、維持用量は第2の負荷用量の投与の4週間後に投与され、維持用量はその後治療期間の間、4週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、負荷用量は500mgであり、維持用量は250mgである。一部の実施形態では、維持用量は負荷用量の投与の4週間後に投与され、維持用量はその後治療期間の間、4週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、維持用量は負荷用量の投与の4週間後に投与され、維持用量はその後治療期間の間、8週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、負荷用量は500mgであり、維持用量は250mgであり、維持用量は負荷用量の4週間後、及びその後治療期間の間、4週間ごとに1回投与される。一部の実施形態では、治療期間は24週以上である。一部の実施形態では、治療期間は24週である。一部の実施形態では、治療上有効な量は患者における疾患重症度を軽減し、疾患重症度はアトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法(ADDSOM)によって評価される。一部の実施形態では、ADDSOMは、湿疹面積・重症度指数(EASI)、アトピー性皮膚炎重症度得点(SCORAD)、または治験医師による全般的評価(IGA)、または患者報告アウトカム(PRO)である。一部の実施形態では、ADDSOMはEASIであり、治療上有効な量は、IL-13アンタゴニストの初回用量の投与の前に判定されたEASIに比べてEASIを50%または75%または90%低下させる。一部の実施形態では、EASIは、初回用量の投与の12週後または初回用量の投与の20週後または初回用量の投与の24週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはSCORADであり、治療上有効な量は、IL-13アンタゴニストの初回用量の投与の前に判定されたSCORADに比べてSCORADを50%低下させる。一部の実施形態では、ADDSOMはSCORADであり、治療上有効な量は、IL-13アンタゴニストの初回用量の投与の前に判定されたSCORADに比べてSCORADを75%低下させる。一部の実施形態では、SCORADは初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはIGAであり、治療上有効な量はIGAをゼロまたは1に低下させる。一部の実施形態では、IGAはIL-13アンタゴニストの初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、ADDSOMはPROであり、PROは、掻痒の視覚的アナログ尺度(VAS)、睡眠不足のVAS、またはアトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)スコアである。一部の実施形態では、PROはIL-13アンタゴニストの初回用量の投与の12週後に判定される。一部の実施形態では、PROは掻痒のVASであり、治療上有効な量は掻痒のVASを40%~55%低下させる。一部の実施形態では、PROは睡眠不足のVASであり、治療上有効な量は睡眠不足VASを53%~61%低下させる。一部の実施形態では、PROはADIQであり、治療上有効な量はADIQスコアを54%~65%低下させる。一部の実施形態では、IL-13アンタゴニストは皮下投与用具を用いて患者に投与される。特定のそのような実施形態では、皮下投与用具は、充填済みの注射器、使い捨てのペン型注射用具、微量針用具、微量注入器、針のない注射用具、及び自動注入用具から選択される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは充填済みの注射器を用いて患者に投与される。一実施形態では、IL-13アンタゴニストはレブリキズマブであり、レブリキズマブは自動注入用具を用いて患者に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例2に記載されているような試験Iの概要を示す。略記は以下のとおりである:D=日数;Pbo=プラセボ;SC=皮下;TCS=局所コルチコステロイド;Wk=週
図2-1】(図2A)実施例2に記載されているように12週間にわたってEASI-50を達成している患者の比率を示す図である。白丸で点線、レブリキズマブ250mg単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、レブリキズマブ125mg単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、レブリキズマブ125mgを4週ごとに1回(Q4W)と1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。(図2B)実施例2に記載されているように12週間にわたってSCORAD-50を達成している患者の比率を示す図である。白丸で点線、レブリキズマブ250mg単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、レブリキズマブ125mg単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、レブリキズマブ125mgを4週ごとに1回(Q4W)と1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。
図2-2】(図2C)実施例2に記載されているように12週間にわたってIGA0/1を達成している患者の比率を示す図である。白丸で点線、レブリキズマブ250mg単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、レブリキズマブ125mg単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、レブリキズマブ125mgを4週ごとに1回(Q4W)と1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。
図3A】実施例2に記載されているように修正した治療企図集団において20週間にわたってEASI-50(図3A)、EASI-75(図3B)及びEASI-90(図3C)を達成している患者の比率を示す図である。白丸で点線、レブリキズマブ250mg単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、レブリキズマブ125mg単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、レブリキズマブ125mgを4週ごとに1回(Q4W)と1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。
図3B】実施例2に記載されているように修正した治療企図集団において20週間にわたってEASI-50(図3A)、EASI-75(図3B)及びEASI-90(図3C)を達成している患者の比率を示す図である。白丸で点線、レブリキズマブ250mg単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、レブリキズマブ125mg単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、レブリキズマブ125mgを4週ごとに1回(Q4W)と1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。
図3C】実施例2に記載されているように修正した治療企図集団において20週間にわたってEASI-50(図3A)、EASI-75(図3B)及びEASI-90(図3C)を達成している患者の比率を示す図である。白丸で点線、レブリキズマブ250mg単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、レブリキズマブ125mg単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、レブリキズマブ125mgを4週ごとに1回(Q4W)と1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。
図4】実施例2に記載されているような修正した治療企図集団における12週間にわたるEASIでのベースラインからのパーセント変化を示す図である。白丸で点線、レブリキズマブ250mg単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、レブリキズマブ125mg単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、レブリキズマブ125mgを4週ごとに1回(Q4W)と1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。示したデータ点は標準誤差の棒と共に調整された平均値である。星印()はプラセボで補正した変化が17.4%、p=0.025であることを示す。
図5】実施例3に記載されているようなレブリキズマブのアトピー性皮膚炎長期的PK-PDモデルを示す図である。図5では、R(t)はEASIのスコアであり;Kin0はベースラインの疾患進行速度定数であり;kinはレブリキズマブによる及びプラセボ/TCS効果を含む疾患進行速度定数であり;Edrugは疾患進行の抑制に対するレブリキズマブの薬剤効果であり;Econはプラセボ/TCS効果(経時的に一定)であり;Emaxは疾患進行の抑制に対するレブリキズマブの最大薬剤効果であり;EC50はEmaxの50%をもたらすレブリキズマブの濃度であり;koutは組織修復の速度定数であり;R(t=0)はベースラインのEASIスコアであり;IIVは個体間変動であり;ωkoutはkoutについての個体間変動であり;ωEconはEconについての個体間変動であり;ρkoutxEconはkoutとEconの間での相関であり、σは残余誤差である。
図6】実施例3に記載されているような第1群(表5を参照)のレブリキズマブの投薬計画についての経時的なモデルで予測した平均のEASI-75の応答を示す図である。太い実線は、プラセボ処理についての平均のシミュレート応答である(プラセボ処理におけるEASI-75での改善は局所コルチコステロイドの全体的な有効性へのありそうな寄与を表す)。中くらいに太い実線は4週間ごとに1回の(レブリキズマブ125mg、Q4W)投薬計画で投与された125mgレブリキズマブについての平均のシミュレート応答である。点線は、1日目に与えられた250mgの負荷用量とそれに続く4週目に開始した4週間ごとに1回投与された(レブリキズマブ250mg負荷、125mgQ4W)レブリキズマブの125mg維持用量についての平均のシミュレート応答である。細い実線は、1日目に与えた500mgの負荷用量とそれに続く4週目で開始した4週間ごとに1回投与した125mg維持用量のレブリキズマブ(レブリキズマブ500mg負荷、125mgQ4W)についての平均のシミュレート応答である。太い点線は、1日目と29日目に投与した250mg用量のレブリキズマブとそれに続く8週目で開始した4週間ごとに1回投与した125mg維持用量のレブリキズマブ(1日目と29日目のレブリキズマブ250mg、125mgQ4W)についての平均のシミュレート応答である。細い点線は、1日目と15日目に投与した250mg用量のレブリキズマブとそれに続く4週目(29日目)で開始した4週間ごとに1回投与した125mg維持用量のレブリキズマブ(1日目と15日目のレブリキズマブ250mg、125mgQ4W)についての平均のシミュレート応答である。信頼区間は明瞭さのためにプロットから取り除いた。
図7】実施例3に記載されているような第2群(表5を参照)のレブリキズマブの投薬計画についてのモデルで予測した経時的な平均のEASI-75の応答を示す図である。太い実線は、プラセボ処理についての平均のシミュレート応答である(プラセボ処理におけるEASI-75での改善は局所コルチコステロイドの全体的な有効性へのありそうな寄与を表す)。中くらいの実線は、4週間ごとに1回投与される125mgレブリキズマブの投薬計画(レブリキズマブ125mg、Q4W)ついての平均のシミュレート応答である。細い点線は、4週間ごとに1回投与される250mgレブリキズマブの投薬計画(レブリキズマブ250mg、Q4W)ついての平均のシミュレート応答である。太い点線は、1日目に投与した500mgの負荷用量とそれに続く4週目で開始した4週間ごとに1回投与した250mgのレブリキズマブの維持用量(レブリキズマブ500mg負荷、250mgQ4W)である。信頼区間は明瞭さのためにプロットから取り除いた。
図8】実施例3に記載されているような第3群(表5を参照)のレブリキズマブの投薬計画についてのモデルで予測した経時的な平均のEASI-75の応答を示す図である。太い実線は、プラセボ処理についての平均のシミュレート応答である(プラセボ処理におけるEASI-75での改善は局所コルチコステロイドの全体的な有効性へのありそうな寄与を表す)。中くらいの実線は、4週間ごとに1回投与される125mgレブリキズマブの投薬計画(レブリキズマブ125mg、Q4W)ついての平均のシミュレート応答である。細い点線は、8週間ごとに1回投与される250mgレブリキズマブの投薬計画(レブリキズマブ250mg、Q8W)ついての平均のシミュレート応答である。太い点線は、500mgの負荷用量とそれに続く4週目で開始した8週間ごとに1回投与した250mgのレブリキズマブの維持用量(レブリキズマブ500mg負荷、250mgQ8W)ついての平均のシミュレート応答である。信頼区間は明瞭さのためにプロットから取り除いた。
図9】実施例3に記載されているような第4群(表5を参照)のレブリキズマブの投薬計画についてのモデルで予測した経時的な平均のEASI-75の応答を示す図である。太い実線は、プラセボ処理についての平均のシミュレート応答である(プラセボ処理におけるEASI-75での改善は局所コルチコステロイドの全体的な有効性へのありそうな寄与を表す)。中くらいの実線は、4週間ごとに1回投与された125mgレブリキズマブの投薬計画(レブリキズマブ125mg、Q4W)ついての平均のシミュレート応答である。太い点線は、4週間ごとに1回投与された37.5mgレブリキズマブの投薬計画(レブリキズマブ37.5mg、Q4W)ついての平均のシミュレート応答である。細い点線は、125mgの負荷用量とそれに続く4週目で開始した4週間ごとに1回投与した37.5mgのレブリキズマブの維持用量(レブリキズマブ125mg負荷、37.5mgQ4W)ついての平均のシミュレート応答である。信頼区間は明瞭さのためにプロットから取り除いた。
図10】実施例4に記載されているような試験IIの概要を示す。略記は以下のとおりである:D=日数;EASI=湿疹面積・重症度指数;q4wk=4週間ごとに;TCS=局所コルチコステロイド;Wk=週
図11-1】実施例2に記載されているような12週目でEASI-50(図11A)、EASI-75(図11B)、IGA0/1(図11C)及びSCORAD-50(図11D)を達成している患者の比率を示す図であり、プラセボと比べた試験の各群におけるEASI-50、EASI-75、IGA0/1及びSCORAD-50をそれぞれ達成している患者の比率での変化を、図11A~11Dのそれぞれにて点線と各棒に対して調整した矢印とによって示す。略記は以下のとおりである:EASI=湿疹面積・重症度指数;IGA=治験医師による全般的評価;Q4W=4週間ごとに;SCORAD=アトピー性皮膚炎重症度得点;SD=単回投与;斑点のある棒=125mg単回投与のレブリキズマブと1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);斜線棒=250mg単回投与のレブリキズマブと1日2回のTCS;点状の棒=4週間ごとに(Q4W)1回の125mgレブリキズマブと1日2回のTCS;白い棒=プラセボと1日2回のTCS。
図11-2】実施例2に記載されているような12週目でEASI-50(図11A)、EASI-75(図11B)、IGA0/1(図11C)及びSCORAD-50(図11D)を達成している患者の比率を示す図であり、プラセボと比べた試験の各群におけるEASI-50、EASI-75、IGA0/1及びSCORAD-50をそれぞれ達成している患者の比率での変化を、図11A~11Dのそれぞれにて点線と各棒に対して調整した矢印とによって示す。略記は以下のとおりである:EASI=湿疹面積・重症度指数;IGA=治験医師による全般的評価;Q4W=4週間ごとに;SCORAD=アトピー性皮膚炎重症度得点;SD=単回投与;斑点のある棒=125mg単回投与のレブリキズマブと1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);斜線棒=250mg単回投与のレブリキズマブと1日2回のTCS;点状の棒=4週間ごとに(Q4W)1回の125mgレブリキズマブと1日2回のTCS;白い棒=プラセボと1日2回のTCS。
図12-1】実施例2に記載されているような掻痒のVAS(図12A)、ADIQ(図12B)、睡眠不足のVAS(図12C)及びDLQI(図12D)のベースラインからの経時的な変化を示す図である。白丸で点線、250mgのレブリキズマブの単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、125mgのレブリキズマブの単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、4週間ごとに(Q4W)1回の125mgのレブリキズマブと1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。略記は以下のとおりである:VAS=視覚的アナログ尺度;ADIQ=アトピー性皮膚炎影響質問票;DLQI=皮膚科関連生活の質評価指標。
図12-2】実施例2に記載されているような掻痒のVAS(図12A)、ADIQ(図12B)、睡眠不足のVAS(図12C)及びDLQI(図12D)のベースラインからの経時的な変化を示す図である。白丸で点線、250mgのレブリキズマブの単回投与と1日2回(BID)の局所コルチコステロイド(TCS);黒三角で点線、125mgのレブリキズマブの単回投与と1日2回のTCS;白四角で実線、4週間ごとに(Q4W)1回の125mgのレブリキズマブと1日2回のTCS;+記号で実線、プラセボと1日2回のTCS。略記は以下のとおりである:VAS=視覚的アナログ尺度;ADIQ=アトピー性皮膚炎影響質問票;DLQI=皮膚科関連生活の質評価指標。
【発明を実施するための形態】
【0029】
特許出願及び出版物を含む、本明細書で引用されている参考文献はすべて任意の目的で全体として参照によって組み入れられる。
【0030】
特に定義されない限り、本明細書で使用されている専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。Singleton,et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,N.Y.1994),及びMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure,4th ed.,John Wiley & Sons(New York,N.Y.1992)は、当業者に本出願で使用されている用語の多数に対する一般的な手引きを提供している。
【0031】
特定の定義
本明細書を解釈する目的で、以下の定義が適用され、適当であればいつでも、単数で使用される用語は複数も含み、逆もまた同様である。以下に記述される定義が参照によって組み入れられた文書と矛盾する事象では、以下に記述される定義が統制するべきである。
【0032】
本明細書及び添付のクレームで使用されるとき、単数形態「a」、「an」及び「the」は文脈が明瞭に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、たとえば、「タンパク質」または「抗体」への言及はそれぞれ複数のタンパク質または抗体を含み、「細胞」への言及は細胞の混合物を含む、等である。
【0033】
本明細書及び添付のクレームで提供される範囲は、双方の端点及び端点間の点すべてを含む。従って、たとえば、2.0~3.0の範囲は2.0、3.0及び2.0と3.0の間のすべての点を含む。
【0034】
用語「マーカー」及び「生体マーカー」は、遺伝子、タンパク質、炭水化物構造、または糖脂質、代謝産物、mRNA、miRNA、タンパク質、DNA(cDNAまたはゲノムDNA)を含む分子を指すのに相互交換可能に使用され、DNAのコピー数、または後成的な変化、たとえば、増えた、減った、または変化したDNAのメチル化(たとえば、シトシンのメチル化またはCpGのメチル化、非CpGのメチル化);ヒストンの修飾(たとえば、(脱)アセチル化、(脱)メチル化、(脱)リン酸化、ユビキチン化、SUMO化、ADP-リボシル化);変化したヌクレオソームの位置決め、哺乳類の組織または細胞におけるその発現または存在は、標準の方法(または本明細書で開示されている方法)によって検出することができ、且つ、それは、たとえば、本明細書に記載されているような抗IL-13抗体のような2型炎症経路の阻害剤を用いた2型炎症経路の阻害に基づいた治療投薬計画に対する哺乳類の細胞または組織の感受性について予測してもよく、診断的及び/または予後診断的であってもよい。生体マーカーは、たとえば、血球数のような、しかし、これに限定されない、対象から得られる生体試料で測定することができる生物学的なまたは臨床的な特質であってもよい。
【0035】
用語「生体試料」には、血液、血清、血漿、末梢血単核細胞(PBMC)、痰、組織生検(たとえば、肺試料)、及び鼻ぬぐい液または鼻ポリープを含む鼻試料が挙げられるが、これらに限定されない。試料は、治療前、治療中または治療後に採取されてもよい。
【0036】
用語「アトピー性皮膚炎」または「AD」は、強い掻痒(たとえば、重度の痒み)、乾燥症(たとえば、異常に乾燥した皮膚)、紅斑性の痂皮皮疹、苔癬化、損傷した皮膚バリア、落屑性で乾燥した湿疹状の病変を特徴とする慢性再発性で寛解する炎症性の皮膚疾患である。用語「アトピー性皮膚炎」には、表皮バリアの機能不全、アレルギー(たとえば、特定の食物、花粉、カビ、イエダニ、動物等に対するアレルギー)、放射線曝露、及び/または喘息によって引き起こされる、またはそれに関連するADが含まれるが、これらに限定されない。多くの場合、慢性のAD病変には、皮膚の肥厚したプラーク、苔癬化及び線維性丘疹が含まれる。
【0037】
本明細書で提供される治療剤aには、標的サイトカインであるインターロイキン(IL)-13に結合することができる作用物質、たとえば、本明細書で特定される標的をコードする核酸分子(すなわち、siRNA)に結合することができるタンパク質または核酸分子に結合することができるポリペプチド(複数可)(たとえば、抗体、免疫付着因子またはペプチボディ)、アプタマーまたは小分子が挙げられる。
【0038】
「抗IL-13結合剤」はヒトIL-13に結合する作用物質を指す。そのような結合剤には小分子、アプタマーまたはポリペプチドを挙げることができる。そのようなポリペプチドには、免疫付着因子、抗体、ペプチボディ及びペプチドから成る群から選択されるポリペプチド(複数可)を挙げることができるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、結合剤は1uM~1pMの間の親和性でヒトIL-13の配列に結合する。抗IL-13結合剤の具体例には、抗IL-13抗体、ヒトFcに融合させた可溶性IL-13受容体アルファ2、ヒトFcに融合させた可溶性IL-4受容体アルファ、ヒトFcに融合させた可溶性IL-13受容体アルファを挙げることができる。例となる抗IL-13抗体には、IMA-026、IMA-638(アンルキンズマブとも呼ばれる、INN番号.910649-32-0;QAX-576)、トラロキヌマブ(CAT-354とも呼ばれる、CAS番号.1044515-88-9);AER-001、ABT-308(ヒト化13C5.5抗体とも呼ばれる)、及びレブリキズマブが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態によれば、抗IL-13抗体は、配列番号1、3及び24から選択される配列を含むVHと、配列番号2、4及び25から選択される配列を含むVLとを含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は、HVRH1、HVRH2、HVRH3、HVRL1、HVRL2、及びHVRL3を含み、その際、代表的なHVRは配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、抗IL-13抗体はレブリキズマブである。一実施形態によれば、抗体はIgG1抗体である。別の実施形態によれば、抗体はIgG4抗体である。一実施形態によれば、IgG4抗体はその定常ドメインにてS228Pの変異を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は、その重鎖可変領域にてQ1Eの変異を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は、軽鎖可変領域にてM4Lの変異を含む。
【0039】
用語「小分子」は50ダルトン~2500ダルトンの間の分子量を有する有機分子を指す。
【0040】
用語「抗体」は、最も広い意味で使用され、具体的に、たとえば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多エピトープ特異性を持つ抗体、単鎖抗体、二重特異性抗体を含む多重特異性抗体、及びそれが所望の抗原結合活性を示す限りでの抗体断片を対象とする。そのような抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体及び合成抗体であることができる。
【0041】
用語「管理されない」または「管理できない」は、疾患の症状をできるだけ抑える治療投薬計画の不適切性を指す。本明細書で使用されるとき、用語「管理されない」及び「不適切に管理される」は相互交換可能に使用することができ、同一の状態を指すことにする。患者の管理状況は、患者の既往歴、治療に対する応答性及び処方されている現在の治療のレベルを含む多数の因子に基づいて主治医によって決定することができる。
【0042】
用語「治療剤」は疾患を治療するのに使用される任意の作用物質を指す。
【0043】
用語「コルチコステロイドの節約」または「CS」は、別の治療剤の投与のゆえに、疾患の治療のためにコルチコステロイドを利用している患者にて疾患を治療するのに使用されるコルチコステロイドの頻度及び/または量の低下、またはその排除を意味する。「CS剤」はコルチコステロイドを利用している患者にてCSを生じることができる治療剤を指す。
【0044】
用語「コルチコステロイド」には、局所コルチコステロイドが含まれるが、これに限定されない。例となる局所コルチコステロイドには、通常クリームにて0.1%の濃度で製剤化されるトリアムシノロンアセトニド、及び通常クリームにて1%または2.5%の濃度で製剤化されるヒドロコルチゾンが挙げられる。たとえば、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフルオラゾン二酢酸エステル、フルオシノニド、及びハロベタゾールプロピオン酸エステルのような特定の局所コルチコステロイドは非常に高度に効力があると見なされている。たとえば、アムシノニド、デソキシメタゾン、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドのような特定の局所コルチコステロイドは高度に効力があると見なされている。たとえば、ベタメタゾン吉草酸エステル、クロコルトロンピバル酸エステル、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、フルオシノニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、モメタゾンフロ酸エステル、及びプレドニカルベートのような特定の局所コルチコステロイドは中程度に効力があると見なされている。たとえば、アルクロメタゾンジプロピオン酸エステル、デソニド及びヒドロコルチゾンのような特定の局所コルチコステロイドは効力が低いと見なされている。「吸入可能なコルチコステロイド」は吸入による送達に好適であるコルチコステロイドを意味する。例となる吸入可能なコルチコステロイドは、フルチカゾン、ベクロメタゾンジプロピオン酸エステル、ブデノシド、モメタゾンフロ酸エステル、シクレソニド、フルニソリド、トリアムシノロンアセトニド及び現在利用可能なまたは将来利用可能になる他のコルチコステロイドである。吸入することができ、且つ長時間作用型ベータ2アゴニストと併用されるコルチコステロイドの例には、ブデソニド/フォルモテロール及びフルチカゾン/サルメテロールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
用語「負荷用量」は、「維持用量」と呼ばれる、その後与えられる用量及び治療の残りで与えられる各用量よりも多い、治療の経過の開始時に与えられる用量を意味する。通常、負荷用量は1回または2回投与される。負荷用量(単数)または負荷用量(複数)の投与の後、維持用量が投与され、維持用量は、その後、通常、定期的な間隔で治療の経過の残りで投与される。
【0046】
用語「フラット用量」は、重量、または重量もしくは体重に関連する患者特有の因子にかかわりなく患者すべてに単回用量が使用されることを意味する。たとえば、100mgの抗体のフラット用量の投与は、重量にかかわりなくあらゆる患者が100mgの用量を受け入れることを意味する。フラット用量は固定用量と呼ばれることがある。
【0047】
用語「体重に基づく用量」は患者の体重に基づいて算出される用量を意味する。従って、投与される用量は患者の体重に左右される。たとえば、抗体の1mg/kgの用量は、50kgの体重の患者は50mgの用量を受け入れる一方で、80kgの体重の患者は80mgの用量を受け入れることを意味する。
【0048】
治療剤に対する「患者の応答」または「応答」(及びその文法上の変形)は、限定しないで(1)減速及び完全停止を含む疾患の進行のある程度の抑制、(2)疾患の症状の出現及び/または症状の数の低下、(3)病変サイズの低下、(4)隣接する末梢臓器及び/または組織への免疫細胞または炎症細胞の浸潤の抑制(すなわち、低下、減速または完全停止)、(5)疾患の広がりの抑制(すなわち、低下、減速または完全停止)、(6)疾患病変の退行または切除を生じてもよいが、生じなくてもよい自己免疫反応の低下、(7)疾患に関連する1以上の症状のある程度の緩和、及び/または(8)治療に続く無病提示の長さの増加を含む、患者に対する利益を示す任意の評価項目を用いて評価することができる。
【0049】
患者の応答性が治療経過の間、経時的に低下しない場合、「患者は治療に対する応答性を維持する」。患者の応答性が治療経過の間、経時的に低下する場合、患者は「不適切な応答者」である。たとえば、その症状が治療の開始時の局所コルチコステロイド(TCS)によって管理されたが、その症状が治療経過の間、その後のTCS投与によって緩和できないアトピー性皮膚炎の患者は治療に対する応答性を失いつつあり、TCSに対する不適切な応答者と見なされる。
【0050】
「皮下投与用具」は、皮下の経路によって薬剤、たとえば、治療用抗体または医薬製剤を投与するように適応させたまたは設計された用具を指す。例となる皮下投与用具には、充填済みの注射器を含む注射器、注入用具、点滴ポンプ、注入ペン、無針用具、及び貼付送達系が挙げられるが、これらに限定されない。皮下投与用具は、特定の容量、たとえば、約1.0mL、約1.25mL、約1.5mL、約1.75mL、または約2.0mLの医薬製剤を投与する。
【0051】
「親和性」は、分子(たとえば、抗体)の単一の結合部位とその結合相手(たとえば、抗原)との間の非共有結合の相互作用の合計の強さを指す。特に指示されない限り、本明細書で提供されるとき、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー(たとえば、抗体及び抗原結合アーム)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子Xのその相手Yに対する親和性は一般に解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本明細書に記載されているものを含む、当該技術で既知の一般的な方法によって測定することができる。結合親和性を測定するための具体的な説明に役立ち、例となる実施形態は以下に記載されている。
【0052】
「親和性成熟した」抗体は、1以上の変化を持たない親抗体に比べて1以上の超可変領域(HVR)にてそのような変化を伴う抗体を指し、そのような変化は抗原に対する抗体の親和性で改善を生じる。
【0053】
用語「抗標的抗体」及び「標的に結合する抗体」は、抗体が標的に的を絞るのに診断剤及び/または治療剤として有用であるように十分な親和性で標的を結合することができる抗体を指す。一実施形態では、無関係の非標的タンパク質への抗標的抗体の結合の程度は、たとえば、放射性免疫アッセイ(RIA)またはBiacoreアッセイによって測定されるとき、標的への抗体の結合の約10%未満である。特定の実施形態では、標的に結合する抗体は、≦lμM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10-8M以下、たとえば、10-8M~10-13M、たとえば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。特定の実施形態では、抗標的抗体は様々な種の間で保存されているエピトープに結合する。
【0054】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原を結合するインタクトな抗体の一部を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、単鎖Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ジアボディ、線形抗体、単鎖抗体分子(たとえば、scFv)、及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにてその抗原への参照抗体の結合を50%以上阻止する抗体を指し、逆に、参照抗体は競合アッセイにてその抗原への抗体の結合を50%以上阻止する。競合アッセイを実施するための種々の方法は当該技術で周知である。
【0056】
本明細書の目的で「アクセプターヒトフレームワーク」は、以下で定義されるようなヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークに由来する軽鎖可変ドメイン(VL)のフレームワークまたは重鎖可変ドメイン(VH)のフレームワークのアミノ酸配列を含むフレームワークである。ヒト免疫グロブリンフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワーク「に由来する」アクセプターヒトフレームワークはその同じアミノ酸配列を含んでもよく、それはアミノ酸配列の変化を含有してもよい。一部の実施形態では、アミノ酸の変化の数は10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下または2以下である。一部の実施形態では、VLアクセプターヒトフレームワークはVLのヒト免疫グロブリンフレームワークの配列またはヒトコンセンサスフレームワークの配列と配列において同一である。
【0057】
用語「キメラ」抗体は、重鎖及び/または軽鎖の一部が特定の供給源または種に由来する一方で、重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0058】
抗体の「クラス」は重鎖が持つ定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体の5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMがあり、それらの幾つかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、たとえば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2に分けられてもよい。免疫グロブリンの様々なクラスに相当する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。
【0059】
「エフェクター機能」は、抗体のアイソタイプで異なる、抗体のFc領域に起因する生物活性を指す。抗体のエフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性の細胞傷害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞介在性の細胞傷害性(ADCC);貪食作用;細胞表面受容体(たとえば、B細胞受容体)の下方調節;及びB細胞の活性化が挙げられる。
【0060】
作用物質、たとえば、医薬製剤の「有効量」は所望の治療成績または予防成績を達成するのに必要な投与量及び時間で有効な量を指す。
【0061】
用語「Fc領域」は本明細書では、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するのに使用される。その用語にはネイティブの配列のFc領域及び変異体Fc領域が含まれる。一実施形態では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、またはPro230から重鎖のカルボキシル末端まで伸びる。しかしながら、Fc領域のC末端リシン(Lys447)は存在してもよいし、または存在しなくてもよい。本明細書で特定されない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991にて記載されたようなEU指標とも呼ばれるEU番号付け方式に従う。
【0062】
「フレームワーク」または「FR」は超可変領域(HVR)の残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは一般に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4から成る。従って、HVR及びFRの配列は一般に、VH(またはVL)にて以下の順、FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4で現れる。
【0063】
用語「完全長抗体」、「インタクトな抗体」及び「全抗体」は、ネイティブな抗体構造に実質的に類似する構造を有する、または本明細書で定義されるようなFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すのに本明細書では相互交換可能に使用される。
【0064】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」は相互交換可能に使用され、そのような細胞の子孫を含む、外来性の核酸が導入されている細胞を指す。宿主細胞には「形質転換体」及び「形質転換された細胞」が含まれ、それには初代形質転換細胞と、継代の数にかかわりなくそれらに由来する子孫とが含まれる。子孫は親細胞と核酸内容が完全に同一でなくてもよいが、変異を含有してもよい。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされたものまたは選択されたものと同じ機能または生物活性を有する突然変異体子孫は本明細書に含まれる。
【0065】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される、またはヒト抗体のレパトアを利用する非ヒト供給源もしくは他のヒト抗体をコードする配列に由来する抗体のものに相当するアミノ酸配列を持つものである。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を具体的には排除する。
【0066】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンのVLまたはVHのフレームワーク配列の選択で最も共通して存在するアミノ酸残基を表すフレームワークである。一般に、ヒト免疫グロブリンのVLまたはVHの配列の選択は可変ドメインの配列の亜群に由来する。一般に、配列の亜群は、Kabat,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,NIH Publication,91-3242,Bethesda MD(1991),vols.1-3にあるような亜群である。一実施形態では、VLについては、亜群はKabat,et al.,上記にあるような亜群カッパIである。VHについては、亜群はKabat,et al.,上記にあるような亜群IIIである。
【0067】
「ヒト化」抗体は、非ヒトのHVRに由来するアミノ酸残基とヒトFRに由来するアミノ酸残基とを含むキメラ抗体を指す。特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常2つの可変ドメインの実質的にすべてを含み、その際、HVR(たとえば、CDR)のすべてまたは実質的にすべては非ヒト抗体のものに相当し、FRのすべてまたは実質的にすべてはヒト抗体のものに相当する。ヒト化抗体は任意で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでもよい。抗体、たとえば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」はヒト化を受けている抗体を指す。
【0068】
用語「超可変領域」または「HVR」は、配列において超可変である、及び/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインのそれぞれを指す。一般に、ネイティブの4鎖抗体は6つのHVR;VHにおける3つ(H1、H2、H3)及びVLにおける3つ(L1、L2、L3)を含む。HVRは一般に超可変ループに由来する及び/または「相補性決定領域」(CDR)に由来するアミノ酸残基を含み、後者は通常、最高の配列変異性であり、及び/または抗原認識に関与する。HVR領域は本明細書で使用されるとき、24~36位(HVRL1について)、46~56位(HVRL2について)、89~97位(HVRL3について)、26~35B位(HVRH1について)、47~65位(HVRH2について)、及び93~102位(HVRH3について)の範囲内に位置する任意の数の残基を含む。
【0069】
「個体」または「患者」または「対象」は哺乳類である。哺乳類には、家畜化された動物(たとえば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ及びウマ)、霊長類(たとえば、ヒト、及びサルのような非ヒト霊長類)、ウサギ及び齧歯類(たとえば、マウス及びラット)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、個体または患者または対象はヒトである。一部の実施形態では、「個体」または「患者」または「対象」は本明細書では、喘息または呼吸器状態の1以上の兆候、症状または他の指標を経験しつつあるまたは経験している治療に適格な単一のヒト対象である。対象として含められるように意図されるのは、疾患の臨床兆候を示していない臨床研究試験に関与する対象、または疫学調査に関与する対象、または対照として一度使用された対象である。対象は、IL-13アンタゴニストまたは別の薬剤で以前治療されたことがあってもよく、またはそのように治療されたことがなくてもよい。対象は、本明細書の治療が開始されるとき、IL-13アンタゴニストに対してナイーブであってもよく、すなわち、対象は、「ベースライン」(すなわち、本明細書の治療方法にてIL-13アンタゴニストの初回用量の投与前の時間内での設定点、たとえば、治療が開始される前に対象をスクリーニングする日)にて、たとえば、IL-13アンタゴニストによって以前治療されたことがなくてもよい。そのような「ナイーブ」な対象は一般にそのような薬剤(複数可)による治療の候補者であると見なされる。
【0070】
「小児の」個体または患者または対象は、出生から18歳まで(または0~18歳)のヒトである。一部の実施形態では、小児の個体または患者または対象は、2~6歳、2~17歳、6~11歳、6~18歳、6~17歳、8~17歳、12~17歳または12~18歳である。
【0071】
「単離された」抗体は、自然環境の成分から分離されているものである。一部の実施形態では、たとえば、電気泳動(たとえば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)またはクロマトグラフィ(たとえば、イオン交換または逆相HPLC)によって判定されるとき、抗体は95%を超えてまたは99%の純度まで精製される。抗体の純度の評価のための方法の概説については、たとえば、Flatman,et al.,J.Chromatogr.B,848:79-87(2007)を参照のこと。
【0072】
「単離された」核酸は、その自然環境の成分から分離されている核酸分子を指す。単離された核酸には普通、核酸分子を含有する細胞に含有される核酸分子が含まれるが、核酸分子は染色体外に、または天然の染色体の位置とは異なる染色体の位置に存在する。
【0073】
「抗標的抗体をコードする単離された核酸」は、単一のベクターまたは別々のベクターにおけるそのような核酸分子(複数可)、及び宿主細胞における1以上の位置に存在するそのような核酸分子(複数可)を含む、抗体の重鎖及び軽鎖(またはその断片)をコードする1以上の核酸分子を指す。
【0074】
用語「モノクローナル抗体」は実質的に均質な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団を構成する個々の抗体は、たとえば、天然に存在する変異を含有する、またはモノクローナル抗体製剤の製造の間に生じる考えられる変異体抗体を除いて、同一であり、及び/または同じエピトープを結合し、そのような変異体は一般に軽微な量で存在する。通常、様々な決定基(エピトープ)に対して向けられた様々な抗体を含むポリクローナル抗体製剤とは対照的に、モノクローナル抗体製剤の各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に対して向けられている。従って、修飾語「モノクローナル」は抗体の実質的に均質な集団から得られるような抗体の特徴を示し、特定の方法による抗体の製造を必要とするとは解釈されるべきではない。たとえば、本明細書で提供される方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座のすべてまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない種々の技法によって作製されてもよく、モノクローナル抗体を作製するためのそのような方法及び他の例となる方法は本明細書に記載されている。
【0075】
「裸の抗体」は異種部分(たとえば、細胞傷害性部分)または放射性標識に結合されていない抗体を指す。裸の抗体は医薬製剤に存在してもよい。
【0076】
「ネイティブな抗体」は様々な構造を持つ天然に存在する免疫グロブリン分子を指す。たとえば、ネイティブなIgG抗体は、ジスルフィド結合している2本の同一の軽鎖と2本の同一の重鎖とで構成された約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。N末端からC末端に向かって、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VH)とその後に続く3つの定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を有する。同様にN末端からC末端に向かって、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変ドメインとも呼ばれる可変領域(VL)とその後に続く定常軽鎖(CL)ドメインを有する。抗体の軽鎖は、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの型の一方に割り当てられてもよい。
【0077】
用語「添付文書」は、治療薬の適応、用途、投与量、投与、併用療法、禁忌及び/またはその使用に関する警告についての情報を含有するそのような治療薬の商用包装に習慣的に含まれる指示書を指すのに使用される。用語「添付文書」は、用途、試験の原理、試薬の調製及び取り扱い、検体の採取及び調製、アッセイの較正及びアッセイの手順、アッセイの感度及び特異性のような性能及び精度データについての情報を含有する診断薬の商用包装に習慣的に含まれる指示書を指すのにも使用される。
【0078】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を並べ、必要に応じてギャップを導入し、最大のパーセント配列同一性を達成した後、配列同一性の一部としての保存的置換を考慮しないで、参照ポリペプチド配列におけるアミノ酸残基と同一である候補配列におけるアミノ酸残基の比率として定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定する目的での配列比較は、当該技術における技量の範囲内である種々の方法にて、たとえば、BLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアのような公的に利用できるコンピュータソフトウエアを用いて達成することができる。当業者は、比較される配列の完全長にわたる最大の配列比較を達成するのに必要とされるアルゴリズムを含む、配列を並べるための適当なパラメータを決定することができる。しかしながら、本明細書の目的では、%アミノ酸配列同一性の値は配列比較のコンピュータプログラムであるALIGN-2を用いて生成される。ALIGN-2配列比較のコンピュータプログラムはGenentech社によって作成され、ソースコードはU.S.Copyright Office,Washington D.C.,20559におけるユーザー文書に提出されており、米国著作権登録番号TXU510087のもとで登録されている。ALIGN-2プログラムはGenentech社、South San Francisco,Californiaから公的に利用可能であり、ソースコードからコンパイルされてもよい。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIX操作システムでの使用のためにコンパイルされるべきである。配列比較パラメータはすべてALIGN-2プログラムによって設定され、変化しない。
【0079】
ALIGN-2がアミノ酸配列の比較に採用される状況では、所与のアミノ酸配列Aの所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する%アミノ酸配列同一性(代わりに所与のアミノ酸配列Bへの、それとの、またはそれに対する特定の%アミノ酸配列同一性を有するまたは含む所与のアミノ酸配列Aと表現することができる)は以下のように算出される。
【0080】
XがA及びBのそのプログラムの配列比較にて配列比較プログラムALIGN-2によって同一の一致としてスコア化されたアミノ酸残基の数であり、YがBにおけるアミノ酸残基の総数である分数X/Yを100倍する。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと同等ではない場合、Bに対するAの%アミノ酸配列同一性はAに対するBの%アミノ酸配列同一性と同等ではないことが十分に理解されるであろう。具体的に言及されない限り、本明細書で使用される%アミノ酸配列同一性の値はすべて、ALIGN-2コンピュータプログラムを用いて直前の段落に記載されているように得られる。
【0081】
用語「医薬製剤」または「医薬組成物」は、その中に含有される有効成分の生物活性を有効であるようにするような形態であり、且つ製剤が投与される対象にとって許容し難いほど毒性である追加の成分を含有しない調製物を指す。
【0082】
「薬学上許容できるキャリア」は、対象に対して非毒性である、有効成分以外の医薬製剤における成分を指す。薬学上許容できるキャリアには、緩衝液、賦形剤、安定剤または保存剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
用語「標的」は、指示されない限り、霊長類(たとえば、ヒト)及び齧歯類(たとえば、マウス及びラット)のような哺乳類を含む脊椎動物起源に由来するネイティブな分子を指す。その用語は「完全長」の未処理の標的と同様に細胞での処理の結果生じる標的の形態を包含する。用語はまた標的の天然に存在する変異体、たとえば、スプライス変異体または対立遺伝子変異体も包含する。
【0084】
用語「治療」(及び、たとえば、「治療する」または「治療すること」のようなその文法的な変形)は、治療される個体の自然の経過を変える試みにおける臨床介入を指し、臨床病態の予防のために、またはその経過の間で実施することができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発の予防、症状の緩和、疾患の直接的なまたは間接的な病理的帰結の減少、転移を予防すること、疾患の進行の速度を下げること、病状の改善または緩和、及び寛解または改善された予後が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、抗体を用いて疾患の発生を遅延させ、疾患の進行を遅らせる。
【0085】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗原に抗体を結合することに関与する抗体の重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブな抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は一般に類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と3つの超可変領域(HVR)を含む(たとえば、Kindt,et al.Kuby Immunology,6th ed.,W.H.Freeman and Co.,page,91(2007)を参照のこと)。単一のVHまたはVLのドメインは抗原結合特異性を付与するのに十分であってもよい。さらに、特定の抗原を結合する抗体は、抗原を結合する抗体に由来するVHまたはVLドメインを用いて単離し、それぞれ相補性のVLまたはVHドメインのライブラリをスクリーニングしてもよい。たとえば、Portolano,et al.,J.Immunol.150:880-887(1993);Clarkson,et al.,Nature,352:624-628(1991)を参照のこと。
【0086】
用語「ベクター」はそれが連結する別の核酸を増やすことができる核酸分子を指す。用語には、自己複製する核酸構造としてのベクターと同様にそれが導入されている宿主細胞のゲノムの組み込まれるベクターが含まれる。特定のベクターはそれらが操作可能に連結される核酸の発現を指示することができる。そのようなベクターは本明細書では「発現ベクター」と呼ばれる。
【0087】
アトピー性皮膚炎と診断された患者における用語「再燃」は、連続した治療のもとで少なくとも3日間にわたる、且つ治療の拡大を必要とする疾患重症度(治療する医師及び/または患者によって評価されるような)での臨床上有意な上昇と一致する病変の程度または重症度の測定できる上昇を意味する(たとえば、Darsow,et al.,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.2010;24:317-28を参照のこと)。
【0088】
アトピー性皮膚炎は「Hanifin/Rajkaの基準」を用いて診断することができる。Hanifin/Rajkaの診断基準はActa Derm.Venereol.(Stockh),1980;Suppl.92:44-7に記載されている。アトピー性皮膚炎の診断を確定するには、患者は、以下でリストにした少なくとも3つの「基本的な特徴」及び3以上の軽微な特徴の存在を必要とする。基本的な特徴には、掻痒、屈曲部の苔癬化または線形性のような典型的な形態及び分布、慢性のまたは慢性的に再発する皮膚炎、ならびに、たとえば、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎のようなアトピーの個人既往歴または家族歴が挙げられる。軽微な特徴には、乾燥症、魚鱗癬、手掌の多紋理、または毛包角化症、即時型(1型)皮膚試験の反応性、血清IgEの上昇、皮膚感染症の若齢の発症、それに向かう傾向(特にStaph,aureus及びHerpes simplex)、細胞性免疫の損傷、非特異的な手足皮膚炎の傾向、乳首湿疹、口唇炎、再発性結膜炎、Dennie-Morgan眼窩下襞、円錐角膜、前方被膜下白内障、眼窩の黒化、顔面蒼白/顔面紅斑、白色粃糠疹、前頭部被摺、及び発汗時の痒みが挙げられる。追加の軽微な基準には、ウール及び脂質溶媒への非忍容性、毛包周囲炎、食物不耐性、環境因子または感情的因子により影響される経過、及び白色皮膚描記症/遅延蒼白が挙げられる。
【0089】
アトピー性皮膚炎の重症度は、Rajka,G.及びLangeland,T,Acta Derm.Venereol.(Stockh),1989;144(Suppl):13-4に記載されたような「Rajka/Langelandの基準」によって判定することができる。3つの疾患重症度の評価のカテゴリーは1~3にスコア化されている:I)含まれる体面積の程度、II)たとえば、1年の間でおおよそ3ヵ月の経過または継続する経過、及びIII)軽い痒みから普通夜間の睡眠を妨げる重度の痒みに及ぶ激しさ。1.5または2.5のスコアは許容される。疾患全体の重症度は、3つの疾患評価カテゴリーからの個々のスコアの合計によって判定され、重症度は3~4の総スコアとして定義される軽度、4.5~7.5のスコアとしての中程度、及び8~9の総スコアとしての重度によるこれらスコアの合計によって判定される。
【0090】
用語「アトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法」または「ADDSOM」は、アトピー性皮膚炎に関連し、且つ定量的にまたは定性的に評価することができる特定の兆候、症状、特徴またはパラメータの判定を意味する。例となるADDSOMには、「湿疹面積・重症度指数」(EASI)、「アトピー性皮膚炎重症度得点」(SCORAD)、「治験医師による全般的評価」(IGA)、「兆候の治験医師による全般的評価」(IGSA)、Rajka/Langelandのアトピー性皮膚炎重症度スコア、ならびに掻痒の視覚的アナログ尺度(SCORADの一部として評価される疾患重症度の態様)、睡眠不足の視覚的アナログ尺度(SCORADの一部として評価される疾患重症度の態様)、アトピー性皮膚炎症状日記(ADSD)、アトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)、皮膚科関連生活の質評価指標(DLQI)(Finlay及びKhan,Clin.Exper.Dermatol.1994;19:210),ならびに5-D痒みスケール(Elman,et al.,Br.J.Dermatol.2010;162(3):587-593)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
「湿疹面積・重症度指数」または「EASI」は、ADの重症度及び程度を評価する臨床設定で使用される検証された測定単位である、Hanifin,et al.,Exp.Dermatol.2001;10:11-18。4つの個々の体領域:頭頚部(H&N)、上肢(UL;外側腋窩及び手を含む)、胴体(内側腋窩及び股間を含む)、及び下肢(LL;臀部及び足を含む)が臨床医または他の医療専門家によって評価される。各体領域については、冒された体表面積(BSA)を評価し、冒されたBSAの比率(0%~100%)について0~6(または0が発疹なしに等しい場合任意で0~7)のスコアに割り当て;各領域は個々に、重症度の平均の程度(0~3:なし、軽度、中程度、重度)について格付けされ、4つの臨床兆候:紅斑、硬化・丘疹形成、擦り剥き及び苔癬化のそれぞれについて半分は許される。0~12の合計スコアを各体領域に割り当て、体領域の総スコアは、個々の臨床兆候のスコア(最大=12)×冒された面積スコア(最大=6)×体領域指数(H&N-0.1、UL-0.2、胴体-0.3、LL-0.4)の合計に基づいて指定される。総スコア(0~72)は4つの体領域のスコアのそれぞれについての総スコアの合計に基づいて指定される。
【0092】
「治験医師による全般的評価」または「IGA」は5点の尺度に基づいたADの重症度及び治療に対する臨床応答を判定する臨床設定で使用される評価尺度である。0のスコア(きれい)はアトピー性皮膚炎の炎症性兆候がないことを意味し、1のスコア(ほぼきれい)は単に認知できる紅斑及び単に認知できる丘疹形成硬化があることを意味する。2、3または4のスコア(軽度、中程度、重度)は紅斑、丘疹形成硬化、毛細血管性出血及び痂皮形成に基づく。「験医師による兆候の全般的評価」または「IGSA」は、紅斑、浮腫、苔癬化したプラークまたは丘疹、及び擦り剥きの評価に基づいて、きれいから重度に及ぶ病変評価等級を使用する。加えて、評価された病変の等級は皮膚病変の程度及び位置に基づいて等級を上げてもよいし、または等級を下げてもよい。
【0093】
「アトピー性皮膚炎重症度得点」または「SCORAD」は、アトピー性皮膚炎に関する欧州特別委員会(全会一致の報告書、Dermatology,1993;186:23-31)によって開発されたADの重症度の臨床評価である。疾患重症度の3つの態様がスコア化される:(i)0~100の間で評価されるスコアによる炎症によって冒された体面積の、総計スコアでは「A」として割り当てられる程度、(ii)0~18に及ぶ総スコアについて重症度(なし、軽度、中程度、重度)に基づいて0~3のスコアをそれぞれ割り当て、総計スコアでは「B」として割り当てられる、6つの臨床兆候、紅斑、浮腫/丘疹形成、毛細血管性出血/痂皮形成、擦り剥き、苔癬化及び乾燥の激しさ、ならびに(iii)それぞれ最近3日間の昼夜の平均であり、総計スコアでは「C」として割り当てられる、患者報告アウトカムを使用する2つの主観的な評価尺度である、掻痒の視覚的アナログスコア(0[痒みなし]~10[考えられる最悪の痒み]に及ぶ)及び睡眠不足の視覚的アナログスコア(0[睡眠不足なし]~10[考えられる最悪の睡眠不足]に及ぶ)。総計スコア(0~103)は式:A/5+(7B/2)+Cに従って決定される。
【0094】
用語「患者報告アウトカム」または「PRO」は、疾患の感情的な及び機能的な影響を含んでもよい患者のアトピー性皮膚炎疾患の症状に関する患者の視点から生活の質を評価する臨床診療または臨床試験にて使用される検証された質問票またはツールを意味する。PROは、臨床医または他人によって患者の応答が解釈されることなく患者から直接もたらされる患者の健康状態の状況の報告である。結果は、絶対的な用語(たとえば、疾患の症状、兆候または状態の重症度)において、または以前の評価尺度からの変化として評価される。臨床試験では、PROの手段を用いて1以上の概念に対する医療介入の効果を評価することができる(すなわち、測定されるもの、たとえば、症状または症状の群が、健康状態の重症度を評価するのに示される特定の機能または機能の群、または症状もしくは機能の群に対して影響を及ぼす)。ADを評価するのに使用される例となるPROのツールには、掻痒の視覚的アナログ尺度(SCORADの一部として評価される疾患重症度の態様)、睡眠不足の視覚的アナログ尺度(SCORADの一部として評価される疾患重症度の態様)、アトピー性皮膚炎の症状日記(ADSD)、アトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)、皮膚科関連生活の質評価指標(DLQI)(Finlay及びKhan、Clin.Exper.Dermatol.1994;19:210)、及び5-D痒みスケール(Elman,et al.、Br.J.Dermatol.2010;162(3):587-593)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0095】
組成物及び方法
本発明は、幾つかの有効性結果判定法によって評価されるように、付随して局所コルチコステロイドを使用している患者を含む、本明細書で提供される投薬計画を使用しているアトピー性皮膚炎患者に投与すると、抗IL-13アンタゴニストモノクローナル抗体であるレブリキズマブが治療効果を提供するという驚くべき且つ予想外の発見に少なくともある程度基づく。従って、本明細書で提供されるのは、レブリキズマブのような抗IL-13抗体を含むIL-13アンタゴニストによってアトピー性皮膚炎を治療する方法である。
【0096】
レブリキズマブは、高親和性でIL-13を結合し、且つ活性があるIL-4Rアルファ/IL-13Rアルファ1ヘテロ二量体を介したシグナル伝達を阻止するヒト化されたモノクローナルのIgG4抗体である。レブリキズマブは、種々の用量で喘息にて臨床的に調べられており、成績は以下で要約されているような文献にて報告されている。
【0097】
MILLYの試験では、吸入コルチコステロイド治療にもかかわらず、不十分にしか管理されない喘息の成人に250mgのレブリキズマブまたはプラセボを4週間ごとに1回、合計6ヵ月間投与した。Corren,et al.,N.Engl.J.Med.,2011;365:1088-98。レブリキズマブで治療した患者、特に生体マーカー(血清ペリオスチンが高い)が高い亜群の患者は、FEVによって測定したときプラセボ群よりも肺機能で大きな改善を示した。Corren,et al.,上記。
【0098】
MOLLYの試験は、コルチコステロイドの吸入を受けていない喘息患者に125mgのレブリキズマブまたは250mgのレブリキズマブまたは500mgのレブリキズマブまたはプラセボを4週間ごとに1回合計12週間投与した用量範囲探索試験だった。Noonan,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.,2013;132:567-74。FEVにおける平均の相対変化はプラセボ群に比べてレブリキズマブ投与群すべてにおいて数的に高かったが、これらの差異は統計的にも臨床的にも有意ではなかった。Noonan,et al.,上記。加えて、MOLLYの試験は用量・応答を示す目的を満たしていなかった。Noonan,et al.,上記。結果からの結論の1つは、MOLLYの試験の喘息患者のその集団では、単一のサイトカインIL-13を遮断することは既存の治療に比べてFEVによって測定したとき肺の機能を改善するには不十分だったということである。Noonan,et al.,上記。
【0099】
LUTE及びVERSEの試験では、4週間ごとに1回投与したレブリキズマブ37.5mg、125mg及び250mgの3つの異なる用量が吸入コルチコステロイドで管理されない中程度から重度の喘息患者で調べられた。Hanania,et al.,Thorax,2015;70:748-756。レブリキズマブによる治療は喘息悪化の比率を低下させ、それは、生体マーカーが低い(血清ペリオスチンが低い)患者(全用量で5%低下)よりも生体マーカーが高い(血清ペリオスチンが高い)患者(全用量で60%低下)でさらに顕著であったが、明瞭な用量・応答は明らかではなかった。Hanania,et al.,2015,上記。レブリキズマブの治療に続いて肺機能も改善し、ペリオスチンが低い患者に比べてペリオスチンが高い患者にてFEVでの最大の増加があった。Hanania,et al.,2015,上記。
【0100】
本明細書に記載されているように、AD患者及び喘息患者は双方とも、IL-13の生物学及びTh2が介在する過敏症に関連する高レベルの生体マーカーを有する。その結果、喘息で臨床利益を生じるレブリキズマブの用量レベルはAD患者でも生物活性を生じると考えられた。従って、実施例に記載されている臨床試験I及び臨床試験IIに記述されているようなAD患者での試験のために提案された初回用量は上述のような喘息での公開された臨床経験に基づく。
【0101】
本明細書に記載されている臨床試験I及び臨床試験IIの開始後、喘息におけるレブリキズマブのフェーズ3臨床試験の結果(LAVOLTA I及びLAVOLTA II)を分析し、2016年9月5日、dx(ドット)doi(ドット)org(スラッシュ)S2213-2600(16)30265-Xで利用できるHanania,et al.,Lancet Respir Med.,2016にてオンラインで公開した。LAVOLTA I及びIIは吸入コルチコステロイド及び少なくとも1つの第2の制御要素にもかかわらず管理されない喘息患者におけるレブリキズマブの有効性及び安全性を評価する反復フェーズ3試験だった。これらのフェーズ3試験は、双方の試験における統計的に有意な有効性の実証及び許容できる安全性特性があるという条件で、世界中の保健機関からの販売承認を求める目的で設計された。
【0102】
LAVOLTA I及びIIでは、患者は、4週間ごとに1回、52週間にわたって投与される37.5mgのレブリキズマブまたは125mgのレブリキズマブまたはプラセボで治療された。主要な有効性評価項目は悪化の比率における低下であった。高い生体マーカー(血清ペリオスチンが高い、または血中好酸球数が多い)または低い生体マーカー(血清ペリオスチンが低い、または血中好酸球数が少ない)に従って患者を階層化した。Hanania,et al.2016,上記で報告されたように、双方の試験にわたる有効性の成績は食い違った。レブリキズマブはLAVOLTA Iでは生体マーカーが高い患者にて悪化の比率を有意に低下させたが、LAVOLTA IIでは低下させなかった。Hanania,et al.2016,上記。薬物動態及び薬物力学の成績は上述のフェーズII試験のものと一致したが、双方の試験が明瞭な用量・応答を示せなかったということは、薬剤曝露が類似しており、IL-13経路が阻害されたことを示している。Hanania,et al.2016,上記。
【0103】
その結果、本明細書に記載されているアトピー性皮膚炎の臨床試験I及び臨床試験IIで調べたレブリキズマブの投薬計画は喘息での臨床経験に基づいたが、臨床試験I及び臨床試験IIについて記載されている投薬計画でレブリキズマブがアトピー性皮膚炎患者に対して臨床的に意味のある利益を提供するかどうかは不明確だった。上記で要約されているような喘息患者におけるレブリキズマブの食い違った成績及び複数の試験にわたる明瞭な用量・応答の欠如は、フェーズ3のLAVOLTA I及びII試験について報告された結果の点からの考慮を含めて、アトピー性皮膚炎患者におけるレブリキズマブの治療効果に関するそのような不確実性に寄与している。本明細書に記載されている本発明に先立って、レブリキズマブが本明細書で提供される投薬計画にてアトピー性皮膚炎患者に臨床的に意味のある利益を提供することができるかどうかは予測できなかった。
【0104】
例となる抗体
抗IL-13抗体
態様の1つでは、本発明はヒトIL-13に結合する単離された抗体を提供する。
【0105】
例となる抗IL-13抗体は既知であり、それには、たとえば、IMA-026、IMA-638(アンルキンズマブとも呼ばれる、INN番号.910649-32-0;QAX-576);トラロキヌマブ(CAT-354とも呼ばれる、CAS番号.1044515-88-9);及びAER-001、ABT-308(ヒト化13C5.5抗体とも呼ばれる)が挙げられるが、これらに限定されない。そのような抗IL-13抗体及びIL-13の他の阻害剤の例は、たとえば、WO2005/062967、W02008/086395、W02006/085938、US7,615,213、US7,501,121、W02007/036745、W02010/073119、W02007/045477、WO2014/165771にて開示されている。一実施形態では、抗IL-13抗体はヒト化IgG4抗体である。一実施形態では、抗IL-13抗体はレブリキズマブである。一実施形態では、抗IL-13抗体は3つの重鎖HVR、HVR-H1(配列番号5)、HVR-H2(配列番号6)、及びHVR-H3(配列番号7)を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は3つの軽鎖HVR、HVR-L1(配列番号8)、HVR-L2(配列番号9)、及びHVR-L3(配列番号10)を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR、HVR-H1(配列番号5)、HVR-H2(配列番号6)、HVR-H3(配列番号7)、HVR-L1(配列番号8)、HVR-L2(配列番号9)、及びHVR-L3(配列番号10)を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は配列番号1、3及び24から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHを含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は配列番号2、4及び25から選択されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLを含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号1、3及び24から選択されるアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHと、配列番号2、4及び25から選択されるアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLとを含む。
【0106】
別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号1及び配列番号2を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号1及び配列番号4を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号1及び配列番号25を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号3及び配列番号2を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号3及び配列番号4を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号3及び配列番号25を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号24及び配列番号2を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号24及び配列番号4を含む。別の実施形態では、抗体は可変領域の配列、配列番号24及び配列番号25を含む。
【0107】
上記実施形態のいずれかでは、抗IL-13抗体をヒト化することができる。一実施形態では、抗IL-13抗体は、上記実施形態のいずれかのようなHVRを含み、さらにアクセプターヒトフレームワーク、たとえば、ヒト免疫グロブリンのフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0108】
別の態様では、抗IL-13抗体は、配列番号1のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)の配列を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は参照配列に比べて置換(たとえば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、その配列を含む抗IL-13抗体はヒトIL-13に結合する能力を保持する。特定の実施形態では、合計1~10のアミノ酸が配列番号1にて置換され、変化し、挿入され、及び/または欠失している。特定の実施形態では、置換、挿入または欠失はHVRの外側の領域(すなわち、FRにて)で発生する。任意で、抗IL-13抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む配列番号1におけるVH配列を含む。任意で、抗IL-13抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む配列番号3におけるVH配列を含む。任意で、抗IL-13抗体は、その配列の翻訳後修飾を含む配列番号24におけるVH配列を含む。
【0109】
別の態様では、抗IL-13抗体が提供され、その際、抗体は配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に比べて置換(たとえば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、その配列を含む抗IL-13抗体はIL-13に結合する能力を保持している。特定の実施形態では、合計1~10のアミノ酸が配列番号2において置換され、挿入され、及び/または欠失している。特定の実施形態では、置換、挿入または欠失はHVRの外側の領域にて(すなわち、FRにて)生じる。任意で、抗IL-13抗体はその配列の翻訳後修飾を含む、配列番号2におけるVL配列を含む。任意で、抗IL-13抗体はその配列の翻訳後修飾を含む、配列番号4におけるVL配列を含む。任意で、抗IL-13抗体はその配列の翻訳後修飾を含む、配列番号25におけるVL配列を含む。
【0110】
別の態様では、抗IL-13抗体が提供され、該抗体は上記で提供されている実施形態のいずれかのようなVHと、上記で提供されている実施形態のいずれかのようなVLとを含む。
【0111】
さらなる態様では、本発明は本明細書で提供される抗IL-13抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。たとえば、特定の実施形態では、配列番号1のVH配列と配列番号2のVL配列とを含む抗IL-13抗体と同じエピトープに結合する、またはその抗体によって競合して阻害することができる抗体が提供される。
【0112】
本発明のさらなる態様では、上記実施形態のいずれかに係る抗IL-13抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体であることができる。一実施形態では、抗IL-13抗体は抗体断片、たとえば、Fv、Fab、Fab’、scFv、またはF(ab’)2の断片である。別の実施形態では、抗体は完全長抗体、たとえば、本明細書で定義されるようなインタクトなIgG1またはIgG4抗体、または他の抗体のクラスまたはアイソタイプである。別の実施形態によれば、抗体は二重特異性抗体である。一実施形態では、二重特異性抗体はHVRを含み、または上記に記載されているVH及びVLの領域を含む。
【0113】
一実施形態では、抗IL-13抗体は3つの重鎖HVR、HVR-H1(配列番号13)、HVR-H2(配列番号14)、及びHVR-H3(配列番号15)を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は3つの軽鎖HVR、HVR-L1(配列番号16)、HVR-L2(配列番号17)、及びHVR-L3(配列番号18)を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は3つの重鎖HVR及び3つの軽鎖HVR、HVR-H1(配列番号13)、HVR-H2(配列番号14)、HVR-H3(配列番号15)、HVR-L1(配列番号16)、HVR-L2(配列番号17)、及びHVR-L3(配列番号18)を含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHを含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号11のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLを含む。一実施形態では、抗IL-13抗体は、配列番号12のアミノ酸配列を有する可変重鎖領域VHと配列番号11のアミノ酸配列を有する可変軽鎖領域VLとを含む。
【0114】
上記実施形態のいずれかでは、抗IL-13抗体はヒト化することができる。一実施形態では、抗IL-13抗体は上記実施形態のいずれかのようなHVRを含み、さらにアクセプターヒトフレームワーク、たとえば、ヒト免疫グロブリンのフレームワークまたはヒトコンセンサスフレームワークを含む。
【0115】
別の態様では、抗IL-13抗体は配列番号12のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン(VH)を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列に比べて置換(たとえば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、その配列を含む抗IL-13抗体はIL-13に結合する能力を保持している。特定の実施形態では、合計1~10のアミノ酸が配列番号12において置換され、変化し、挿入され、及び/または欠失している。特定の実施形態では、置換、挿入または欠失はHVRの外側の領域にて(すなわち、FRにて)生じる。任意で、抗IL-13抗体はその配列の翻訳後修飾を含む、配列番号12におけるVH配列を含む。
【0116】
別の態様では、抗IL-13抗体が提供され、該抗体は配列番号11のアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン(VL)を含む。特定の実施形態では、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列に比べて置換(たとえば、保存的置換)、挿入または欠失を含有するが、その配列を含む抗IL-13抗体はIL-13に結合する能力を保持している。特定の実施形態では、合計1~10のアミノ酸が配列番号11において置換され、挿入され、及び/または欠失している。特定の実施形態では、置換、挿入または欠失はHVRの外側の領域にて(すなわち、FRにて)生じる。任意で、抗IL-13抗体はその配列の翻訳後修飾を含む、配列番号11におけるVL配列を含む。
【0117】
別の態様では、抗IL-13抗体が提供され、該抗体は上記で提供されている実施形態のいずれかのようなVHと上記で提供されている実施形態のいずれかのようなVLとを含む。
【0118】
さらなる態様では、本発明は本明細書で提供される抗IL-13抗体と同じエピトープに結合する抗体を提供する。たとえば、特定の実施形態では、配列番号12のVH配列と配列番号11のVL配列とを含む抗IL-13抗体と同じエピトープに結合する、またはその抗体によって競合して阻害することができる抗体が提供される。
【0119】
本発明のさらなる態様では、上記実施形態のいずれかに係る抗IL-13抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体を含むモノクローナル抗体であることができる。一実施形態では、抗IL-13抗体は抗体断片、たとえば、Fv、Fab、Fab’、scFv、ジアボディ、またはF(ab’)2の断片である。別の実施形態では、抗体は完全長抗体、たとえば、本明細書で定義されるようなインタクトなIgG1またはIgG4抗体、または他の抗体のクラスまたはアイソタイプである。別の実施形態によれば、抗体は二重特異性抗体である。一実施形態では、二重特異性抗体はHVRを含み、または上記に記載されているVH及びVLの領域を含む。
【0120】
さらなる態様では、上記実施形態のいずれかに係る抗IL-13抗体は以下のセクション1~7に記載されているような特徴のいずれかを単独でまたは組み合わせで組み入れてもよい。
【0121】
1.抗体の親和性
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は≦lμM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(たとえば、10-8M以下、たとえば、10-8M~10-13M、たとえば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0122】
一実施形態では、Kdは、以下のアッセイによって記載されているような対象とする抗体のFab型とその抗原とで実施される放射性標識した抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。抗原についてのFabの溶液結合親和性は、非標識抗原の滴定系列の存在下にて最低濃度の(125I)標識抗原でFabを平衡化し、次いで結合した抗原を抗Fab抗体コーティングプレートで捕捉することによって測定される(たとえば、Chen,et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照のこと)。アッセイ用の条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)マルチウェルプレート(Thermo Scientific)を50mM炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉用抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングし、その後、室温(およそ23℃)にて2~5時間PBS中2%(w/v)ウシ血清アルブミンでブロックする。非吸着性プレート(Nunc#269620)にて、100pMまたは26pMの[125I]抗原を対象とするFab(たとえば、抗VEGF抗体のFab-12の評価と一致する、Presta,et al.,Cancer Res.57:4593-4599(1997))の連続希釈と混合する。次いで対象とするFabを一晩インキュベートするが、インキュベートは平衡に達するのを保証するためにさらに長い時間(たとえば、約65時間)継続してもよい。その後、室温でのインキュベート(たとえば、1時間)のために混合物を捕捉プレートに移す。次いで溶液を取り除き、PBS中0.1%ポリソルベート20(TWEEN-20(登録商標))でプレートを8回洗浄する。プレートが乾燥すると、150μl/ウェルのシンチレーションカクテル(MICROSCINT-20 TM;Pacckard)を加え、TOPCOUNT TMガンマカウンター(Packard)で10分間プレートを計測する。20%以下の最大結合が得られる各Fabの濃度を競合結合アッセイで使用するために選択する。
【0123】
別の実施形態によれば、Kdは、約10反応単位(RU)での不動化抗原CM5チップと共に25℃でのBIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイを用いて測定される。手短には、供給業者の指示書に従って、カルボキシメチル化したデキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIACORE,Inc)をN-エチル-N’-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化する。抗原を10mMの酢酸ナトリウムpH4.8で5μg/ml(約0.2μM)まで希釈し、その後、5μl/分の流速で注入し、およそ10反応単位(RU)の結合したタンパク質を達成する。抗原の注入に続いて、1Mのエタノールアミンを注入して未反応の基をブロックする。動態測定については、25℃にておよそ25μl/分の流速で、2倍連続希釈のFab(0.78nM~500nM)を、0.05%ポリソルベート20(TWEEN-20TM)界面活性剤を伴ったPBS(PBST)に注入する。会合と解離のセンサーグラムを同時に適合させることによって単純な1対1のLangmuir結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウエアバージョン3.2)を用いて会合速度(kon)及び解離速度(koff)を算出する。平衡解離定数(Kd)はkoff/konの比として算出される。たとえば、Chen,et al.,J.Mol.Biol.293:865-881(1999)を参照のこと。上記表面プラズモン共鳴アッセイによってon速度が10M-1s-1を超えるのであれば、そのときは、分光計、たとえば、ストップフロー装備型分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌されたキュベットを伴った8000シリーズSLM-AMINCO TM分光光度計(ThermoSpectronic)で測定したとき、漸増濃度の抗原の存在下でpH7.2のPBSにて25℃での20nMの抗原抗体(Fab形態)の蛍光放射強度(励起=295nm、放射=340nm、16nmのバンドパス)の増減を測定する蛍光消光法を用いて、on速度を決定することができる。
【0124】
2.抗体断片
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、Fv及びscFvの断片、及び本明細書に記載されている他の断片が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の概説については、Hudson,et al.Nat.Med.9:129-134(2003)を参照のこと。scFv断片の概説については、Pluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag,New York),pp.269-315(1994)を参照のこと;WO93/16185;及び米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照のこと。サルベージ受容体結合エピトープの残基を含み、長い生体内での半減期を有するFab及びF(ab’)2の断片の考察については、米国特許第5,869,046号を参照のこと。
【0125】
ジアボディは、二価または二重特異性であってもよい2つの抗原結合部位を持つ抗体断片である。たとえば、EP404,097;WO1993/01161;Hudson,et al.,Nat.Med.9:129-134(2003);及びHollinger,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディもHudson,et al.,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載されている。
【0126】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全部もしくは一部、または抗体の軽鎖可変ドメインの全部もしくは一部を含む抗体断片である。特定の実施形態では、単一ドメイン抗体はヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;たとえば、米国特許第6,248,516 B1号を参照のこと。
【0127】
抗体断片は、本明細書に記載されているような、インタクトな抗体のタンパク質分解消化と同様に組換え宿主細胞(たとえば、E.coliまたはファージ)による産生を含むが、これらに限定されない種々の技法によって作ることができる。
【0128】
3.キメラ抗体及びヒト化抗体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体はキメラ抗体である。特定のキメラ抗体は、たとえば、米国特許第4,816,567号;及びMorrison,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984))に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(たとえば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、またはサルのような非ヒト霊長類に由来する可変領域)と、ヒトの定常領域とを含む。さらなる例では、キメラ抗体はクラスまたはサブクラスが親抗体のものから変化している「クラススイッチした」抗体である。キメラ抗体にはその抗原結合部位が含まれる。
【0129】
特定の実施形態では、キメラ抗体はヒト化抗体である。通常、非ヒト抗体はヒト化されてヒトへの免疫原性を減らす一方で、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持している。一般に、ヒト化抗体は、HVR、たとえば、CDR(またはその一部)が非ヒト抗体に由来し、FR(またはその一部)がヒト抗体配列に由来する1以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は任意で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むであろう。一部の実施形態では、ヒト化抗体における一部のFR残基は非ヒト抗体(たとえば、HVR残基が由来する抗体)に由来する対応する残基で置換されて、たとえば、抗体の特異性または親和性を復元するまたは改善する。
【0130】
ヒト化抗体及びそれらを作る方法は、たとえば、Almagro及びFransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)にて概説されており、たとえば、Riechmann,et al.,Nature,332:323-329(1988);Queen,et al.,Proc.Nat’lAcad.Sci.USA,86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号;Kashmiri,et al.,Methods,36:25-34(2005)(SDR(a-CDR)移植を記載している);Padlan,Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「再表面化」を記載している);Dall’Acqua,et al.,Methods,36:43-60(2005)「FRシャッフリングを記載している);及びOsbourn,et al.,Methods,36:61-68(2005)及びKlimka,et al.,Br.J Cancer,83:252-260(2000)(FRシャッフリングへの「誘導選択」のアプローチを記載している)にさらに記載されている。
【0131】
ヒト化に使用されてもよいヒトフレームワーク領域には、「最良適合」法を用いて選択されるフレームワーク領域(たとえば、Sims,et al.J.Immunol.151:2296(1993)を参照のこと);軽鎖及び重鎖の可変領域の特定の亜群のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(たとえば、Carter,et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285(1992);及びPresta,et al.J.Immunol.,151:2623(1993を参照のこと);ヒト成熟(体細胞変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖細胞系列のフレームワーク領域(たとえば、Almagro及びFransson,Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照のこと);ならびにスクリーニング用のFRライブラリに由来するフレームワーク領域(たとえば、Baca,et al.,J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok,et al.,J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0132】
4.ヒト抗体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体はヒト抗体である。ヒト抗体は当該技術で既知の種々の技法を用いて作製することができる。ヒト抗体は一般にvan Dijk及びvan de Winkel,Curr.Opin.Pharmacol.5:368-74(2001)ならびにLonberg,Curr.Opin.Immunol.20:450-459(2008)に記載されている。
【0133】
ヒト抗体は、抗原負荷に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を持つインタクトな抗体を産生するように操作されているトランスジェニック動物に免疫原を投与することによって調製されてもよい。そのような動物は通常、ヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部または一部を含有し、それは内在性の免疫グロブリン遺伝子座を置き換える、または染色体外に存在する、または動物の染色体に無作為に組み込まれる。そのようなトランスジェニック動物では、内在性の免疫グロブリン遺伝子座は一般に不活化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を入手する方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照のこと。また、たとえば、XENOMOUSETM技術を記載している米国特許第6,075,181号及び同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載している米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7,041,870号、及びVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開番号2007/0061900も参照のこと。そのような動物によって生成されるインタクトな抗体のヒト可変領域は、たとえば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに操作されてもよい。
【0134】
ヒト抗体はハイブリドーマに基づく方法によって作ることもできる。ヒトのモノクローナル抗体の作製のためのヒト骨髄腫及びマウス・ヒトのヘテロ骨髄腫の細胞株は記載されている(たとえば、Kozbor,J.Immunol.,133:3001(1984);Brodeur,et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987);及びBoemer,et al.,J.Immunol.,147:86(1991)を参照のこと)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体も、Li,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,103:3557-3562(2006)にも記載されている。追加の方法には、たとえば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株に由来するモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)及びNi,Xiandai Mianyixue,26(4):265-268(2006)(ヒト・ヒトハイブリドーマを記載している)に記載されているものが挙げられる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)もVollmers及びBrandlein,Histology and Histopathology,20(3):927-937(2005)ならびに Vollmers及びBrandlein,Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology,27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0135】
ヒト抗体は、ヒトに由来するファージディスプレイライブラリから選択されるFvクローンの可変ドメイン配列を単離することによっても生成されてもよい。そのような可変ドメイン配列は、次いで所望のヒト定常ドメインと組み合わせてもよい。抗体ライブラリからヒト抗体を選択する技法は以下に記載されている。
【0136】
5.ライブラリに由来する抗体
本発明の抗体は所望の活性(単数)または活性(複数)を持つ抗体についてのコンビナトリアルライブラリをスクリーニングすることによって単離されてもよい。たとえば、ファージディスプレイライブラリを生成し、所望の結合特性を持つ抗体についてそのようなライブラリをスクリーニングする種々の方法が当該技術で知られている。そのような方法は、たとえば、Hoogenboom,et al.in Methods in Molecular Biology,178:1-37(O’Brien,et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2001)にて概説され、さらに、たとえば、McCafferty,et al.,Nature,348:552-554;Clackson,et al.,Nature,352:624-628(1991);Marks,et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks及びBradbury,in Methods in Molecular Biology,248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,NJ,2003);Sidhu,et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee,et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,101(34):12467-12472(2004);ならびにLee,et al.,J.Immunol.Methods,284(1-2):119-132(2004)に記載されている。
【0137】
特定のファージディスプレイ法では、Winter,et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されているように、VH及びVLの遺伝子のレパトアはポリメラーゼ鎖反応(PCR)によって別々にクローニングされ、ファージライブラリにて無作為に組み換えられ、それを次いで抗原結合ファージについてスクリーニングすることができる。ファージは通常、単鎖Fv(scFv)断片として、またはFab断片として抗体断片を表す。免疫された供給源に由来するライブラリは、ハイブリドーマの構築を必要とすることなく免疫原に対する高い親和性の抗体を提供する。或いは、Griffiths,et al.,EMBO J,12:725-734(1993)に記載されているように、ナイーブなレパトアをクローニングし(たとえば、ヒト由来)、免疫することなく、広い範囲の非自己及び自己の抗原に対する抗体の単一供給源を提供することができる。最終的に、Hoogenboom及びWinter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)によって記載されているように、ナイーブなライブラリも、幹細胞由来の再構成していないV遺伝子セグメントをクローニングし、無作為配列を含有するPCRプライマーを用いて高度に可変のCDR3領域をコードし、試験管内で再構成を達成することによって合成して作製することができる。ヒト抗体のファージライブラリを記載している特許公開には、たとえば、米国特許公開番号2005/0079574、2005/0119455、2005/0266000、2007/0117126、2007/0160598、2007/0237764、2007/0292936、及び2009/0002360が挙げられる。
【0138】
ヒト抗体ライブラリから単離される抗体または抗体断片は本明細書のヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0139】
6.多重特異性抗体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は多重特異性抗体、たとえば、二重特異性抗体である。多重特異性抗体は少なくとも2つの異なる部位について結合特異性を有するモノクローナル抗体である。特定の実施形態では、結合特異性の一方はIL-13のためのものであり、他方は他の抗原のためのものである。特定の実施形態では、二重特異性抗体はIL-13の2つの異なるエピトープに結合してもよい。二重特異性抗体を用いて細胞に対して細胞傷害剤を局在させてもよい。二重特異性抗体は完全長抗体または抗体断片として調製することができる。
【0140】
多重特異性抗体を作製する技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖・軽鎖のペアの組換え同時発現(Milstein及びCuello,Nature,305:537(1983)),WO93/08829,ならびにTraunecker,et al.,EMBO J.10:3655(1991)を参照のこと)、及び「ノブ・イン・ホール」操作(たとえば、米国特許第5,731,168号を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。多重特異性抗体はまた、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果を操作すること(WO2009/089004A1);2以上の抗体または断片を架橋すること(たとえば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan,et al.,Science,229:81(1985)を参照のこと);ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体を作り出すこと(たとえば、Kostelny,et al.,J.Immunol.,148(5):1547-1553(1992)を参照のこと);二重特異性抗体の断片を作製するために「ジアボディ」技術を使用すること(たとえば、Holbnger,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)を参照のこと);及び単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(たとえば、Gruber,et al.,J.Immunol.,152:5368(1994)を参照のこと);及び、たとえば、Tutt,et al.J.Immunol.147:60(1991)に記載されているような三重特異性抗体を調製することによって作製されてもよい。
【0141】
「オクトパス抗体」を含む3以上の機能的な抗原結合部位を持つ操作された抗体も本明細書に含まれる(たとえば、US2006/0025576A1を参照のこと)。
【0142】
本明細書の抗体または断片には、IL-13に結合する抗原結合部位と同様に別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用性Fab」または「DAF」も含まれる(たとえば、US2008/0069820を参照のこと)。
【0143】
7.抗体の変異体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列の変異体が熟考される。たとえば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましくてもよい。抗体のアミノ酸配列の変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適当な修飾を導入することによってまたはペプチド合成によって調製されてもよい。そのような修飾には、たとえば、抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/またはそれへの残基の挿入、及び/またはその中での残基の置換が挙げられる。最終構築物が所望の特性、たとえば、抗原結合を持つという条件で、欠失、挿入及び置換の組み合わせを行って最終構築物に到達することができる。
【0144】
置換、挿入及び欠失の変異体
特定の実施形態では、1以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体が提供される。置換突然変異誘発について対象とする部位にはHVR及びFRが挙げられる。保存的置換は、「保存的置換」の見出しのもとで表1に示されている。さらに実質的な変化は、「例となる置換」の見出しのもとで、さらに以下に記載されているようにアミノ酸の側鎖のクラスを参照して表1にて提供されている。アミノ酸の置換を対象とする抗体に導入し、所望の活性、たとえば、保持された/改善された抗原結合、低下した免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDCについて生成物をスクリーニングしてもよい。
表1
【0145】
アミノ酸は共通する側鎖の特性に従ってグループ分けされてもよい:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖の配向に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0146】
非保存的な置換は、これらのクラスの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0147】
置換変異体の型の1つには親抗体の1以上の超可変領域の残基を置換することが関与する(たとえば、ヒト化抗体またはヒト抗体)。一般に、さらなる試験のために選択される得られる変異体(複数可)は親抗体に比べて特定の生物学的特性で修飾(たとえば、改善)(たとえば、高い親和性、低下した免疫原性)を有するであろうし、及び/または親抗体の特定の生物学的特性を実質的に保持しているであろう。例となる置換変異体は、親和性成熟した抗体であり、それは、たとえば、本明細書に記載されているもののようなファージディスプレイに基づく親和性成熟法を用いて都合よく生成されてもよい。手短には、1以上のHVR残基を変異させ、変異体抗体がファージで表示され、特定の生物活性(たとえば、結合親和性)についてそれをスクリーニングする。
【0148】
HVRにて変化(たとえば、置換)を作って、たとえば、抗体の親和性を改善してもよい。そのような変化は、HVRの「ホットスポット」、すなわち、体細胞突然変異過程の間に高い頻度で変異を受けるコドンによってコードされる残基(Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008))、及び/またはSDR(a-CDR)で作られてもよく、得られる変異体VHまたはVLは結合親和性について調べられる。二次ライブラリから構築し、再選択することによる親和性成熟は、たとえば、Hoogenboom,et al.in Methods in Molecular Biology,178:1-37(O’Brien,et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001).)に記載されている。親和性成熟の一部の実施形態では、種々の方法(たとえば、変異性PCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性突然変異誘発)のいずれかによって変異のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで二次ライブラリが作り出される。次いでライブラリをスクリーニングして所望の親和性を持つ抗体変異体を特定する。多様性を導入するための別の方法には、幾つかのHVRの残基(たとえば、一度に4~6残基)が無作為化されるHVR指向性のアプローチが関与する。たとえば、アラニン走査変異誘発またはモデル化を用いて、抗原結合に関与するHVRの残基を具体的に特定してもよい。CDR-H3及びCDR-L3は特に標的とされることが多い。
【0149】
特定の実施形態では、そのような変化が抗体の抗原を結合する能力を実質的に低下させない限り、置換、挿入または欠失は1以上のHVRの範囲内で生じてもよい。たとえば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(たとえば、本明細書で提供されるような保存的置換)がHVRにて行われてもよい。そのような変化はHVR「ホットスポット」またはSDRの外側であってもよい。上記で提供されている変異体VH及びVLの配列の特定の実施形態では、各HVRは未変化であり、または1、2または3以下のアミノ酸置換を含有する。
【0150】
変異誘発の標的とされてもよい抗体の残基または領域を特定する有用な方法は、Cunningham及びWells,(1989),Science,244:1081-1085によって記載されたように「アラニン走査変異誘発」と呼ばれる。この方法では、標的残基の残基または基(たとえば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluのような荷電残基)が特定され、中性または負に荷電したアミノ酸(たとえば、アラニンまたはポリアラニン)によって置き換えられ、抗体の抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを判定する。さらなる置換は最初の置換に対する機能的感度を示すアミノ酸の位置で導入されてもよい。代わりに、またはさらに、抗体と抗原の間の接触点を特定する抗原・抗体複合体の結晶構造。そのような接触残基及び近隣の残基は置換の候補として標的とされてもよいし、または排除されてもよい。変異体をスクリーニングしてそれらが所望の特性を含有するかどうかを判定してもよい。
【0151】
アミノ酸配列の挿入には、1つの残基から100以上の残基を含有するポリペプチドに及ぶ長さでのアミノ末端及び/またはカルボキシル末端での融合、と同様に単一のまたは複数のアミノ酸残基の配列内挿入が挙げられる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を持つ抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入変異体には、抗体の血清半減期を長くする酵素(たとえば、ADEPTについて)またはポリペプチドへの抗体のN末端またはC末端の融合が挙げられる。
【0152】
グリコシル化変異体
特定の実施形態では、本明細書で提供され抗体は、抗体がグリコシル化される程度を増やすまたは減らすように変えられる。抗体に対するグリコシル化部位の付加または欠失は、1以上のグリコシル化部位が作り出されるまたは取り除かれるようにアミノ酸配列を変えることによって都合よく達成されてもよい。
【0153】
抗体がFc領域を含む場合、それに連結された炭水化物を変えてもよい。哺乳類細胞によって産生されるネイティブの抗体は通常、Fc領域のCH2ドメインのAsn297へのN-結合によって一般に連結される分岐状の二分岐のオリゴ糖を含む。たとえば、Wright,et al.TIBTECH,15:26-32(1997)を参照のこと。オリゴ糖には、種々の炭水化物、たとえば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース及びシアル酸、と同様に二分岐オリゴ糖構造の「幹」にてGlcNAcに連結されるフコースが含まれてもよい。一部の実施形態では、本発明の抗体におけるオリゴ糖の修飾は特定の改善された特性を持つ抗体変異体を作るために行われてもよい。
【0154】
一実施形態では、Fc領域に(直接または間接的に)連結されるフコースを欠く炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。たとえば、そのような抗体におけるフコースの量は1%~80%、1%~65%、5%~65%または20%~40%であってもよい。フコースの量は、たとえば、WO2008/077546に記載されたように、MALDI-TOF質量分光計で測定したとき、Asn297に連結された糖構造(たとえば、複合体、ハイブリッド及び高いマンノース構造)すべての合計に対するAsn297での糖鎖内のフコースの平均量を算出することによって決定される。Asn297はFc領域におけるほぼ297位(Fc領域残基のEU番号付け)に位置するアスパラギン残基を指す;しかしながら、Asn297は、抗体における軽微な配列変異のせいで297位の上流または下流の約±3アミノ酸、すなわち、294位~300位の間に位置してもよい。そのようなフコシル化の変異体は改善されたADCC機能を有してもよい。たとえば、米国特許公開番号US2003/0157108(Presta,L.);US2004/0093621(KyowaHakko Kogyo Co.,Ltd)を参照のこと。「脱フコシル化」または「フコース欠損」の抗体変異体に関連する出版物の例には、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;W02005/053742;W02002/031140;Okazaki,et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki,et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)が挙げられる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化を欠損するLec13CHO細胞(Ripka,et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);米国特許出願番号US2003/0157108A1,Presta,L;及びWO2004/056312A1,Adams,et al.,特に実施例11)、及びたとえば、アルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子FUT8のノックアウトCHO細胞のようなノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki,et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);及びWO2003/085107)が挙げられる。
【0155】
二分したオリゴ糖を伴う、たとえば、抗体のFc領域に連結された二分岐オリゴ糖がGlcNAcによって二分される抗体変異体がさらに提供される。そのような抗体変異体は低下したフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有してもよい。そのような抗体変異体の例は、たとえば、WO2003/011878(Jean- Mairet,et al.);米国特許第6,602,684号(Umana,et al.);及びUS2005/0123546(Umana,et al.)に記載されている。Fc領域に連結されたオリゴ糖にて少なくとも1つのガラクトース残基を持つ抗体変異体も提供される。そのような抗体変異体は改善されたCDC機能を有してもよい。そのような抗体変異体は、たとえば、WO1997/30087(Patel,et al.);WO1998/58964(Raju,S.);及びWO1999/22764(Raju,S.)に記載されている。
【0156】
Fc領域の変異体
特定の実施形態では、1以上のアミノ酸の修飾が本明細書で提供される抗体のFc領域に導入され、それによってFc領域変異体を生成してもよい。Fc領域変異体は、1以上のアミノ酸の位置でアミノ酸の修飾(たとえば、置換)を含むヒトFc領域の配列(たとえば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のFc領域)を含んでもよい。
【0157】
特定の実施形態では、本発明は、すべてではないが一部のエフェクター機能を持つ抗体変異体を熟考し、それは、生体内での抗体の半減期は重要であるが、特定のエフェクター機能(たとえば、補体及びADCC)は不必要であるまたは有害である適用について抗体を望ましい候補にする。試験管内及び/または生体内の細胞傷害性アッセイを行ってCDC及び/またはADCCの活性の低下/枯渇を確認することができる。たとえば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠いている(従って、ADCC活性を欠くと思われる)が、FcRnへの結合能を保持していることを保証することができる。ADCCに介在する主要な細胞であるNK細胞はFcγRIIIのみを発現しているのに対して単球はFcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現している。造血細胞におけるFcRの発現はRavetch及びKinet,Annu.Rev.Immunol.9:457-492(1991)の464ページの表3にて要約されている。対象とする分子のADCC活性を評価するための試験管内アッセイの非限定例は、米国特許第5,500,362号(たとえば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’lAcad.Sci.USA,83:7059-7063(1986)を参照のこと)及びHellstrom,I.et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,82:1499-1502(1985);5,821,337(Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照のこと)に記載されている。或いは、非放射性アッセイ法を採用してもよい(たとえば、フローサイトメトリー用のACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA);CytoTox(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照のこと)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。代わりに、またはさらに、対象とする分子のADCC活性は、たとえば、Clynes,et al.Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA,95:652-656(1998)で開示されたもののような、たとえば、動物モデルにて生体内で評価されてもよい。C1q結合アッセイを行って抗体がC1qを結合できないのでCDC活性を欠くことも確認してもよい。たとえば、WO2006/029879及びWO2005/100402におけるC1q及びC3c結合ELISAを参照のこと。補体の活性化を評価するには、CDCアッセイを行ってもよい(たとえば、Gazzano-Santoro,et al.,J.Immunol.Methods,202:163(1996); Cragg,M.S.et al.,Blood,101:1045-1052(2003);ならびにCragg,M.S.及びM.J.Glennie,Blood,103:2738-2743(2004)を参照のこと)。当該技術で既知の方法を用いてFcRnの結合及び生体内でのクリアランス/半減期の決定も行うことができる(たとえば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照のこと)。
【0158】
低下したエフェクター機能を持つ抗体には、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329の1以上の置換を持つものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFcの突然変異体には、残基265及び297のアラニンへの置換を伴ういわゆる「DANA」Fc突然変異体を含む265位、269位、270位、297位及び327位のアミノ酸の2以上で置換を持つFcの突然変異体が挙げられる(米国特許第7,332,581号)。
【0159】
FcRへの改善されたまたは低下した結合を伴う特定の抗体変異体が記載されている(たとえば、米国特許第6,737,056号;WO2004/056312、及びShields,et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照のこと)。
【0160】
特定の実施形態では、抗体変異体は、ADCCを改善する1以上のアミノ酸置換、たとえば、Fc領域の298位、333位及び/または334位(残基のEU番号付け)での置換を伴うFc領域を含む。
【0161】
一部の実施形態では、たとえば、米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogie,et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、変化した(すなわち、改善したまたは低下した)C1q結合及び/または補体依存性の細胞傷害性(CDC)を生じる変化がFc領域で作り出される。
【0162】
長い半減期を持ち、且つ母体IgGの胎児への移行に関与する胎児性Fc受容体(FcRn)(Guyer,et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim,et al.,J.Immunol.24:249(1994))への改善された結合を伴う抗体はUS2005/0014934A1(Hinton,et al.)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域のFcRnへの結合を改善する、その中での1以上の置換を伴うFc領域を含む。そのようなFc変異体には、Fc領域の残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434の1以上での置換、たとえば、Fc領域の残基434の置換を持つものが挙げられる(米国特許第7,371,826号)。
【0163】
Fc領域の変異体の他の例に関して、Duncan及びWinter,Nature,322:738-40(1988);米国特許第5,648,260号;米国特許第5,624,821号;及びWO94/29351も参照のこと。
【0164】
システインで操作した抗体変異体
特定の実施形態では、抗体の1以上の残基がシステイン残基で置換されるシステインで操作した抗体、たとえば、「THIOMABS」を作り出すことが望ましくてもよい。特定の実施形態では、置換された残基は抗体のアクセスし易い部位に存在する。それらの残基をシステインで置換することによって、本明細書にさらに記載されているように、反応性チオール基が抗体のアクセスし易い部位にそれによって配置され、抗体を薬剤部分またはリンカー・薬剤部分のような他の部分に結合するのに使用されて、免疫結合体を作り出してもよい。特定の実施形態では、以下の残基:軽鎖のV205(Kabatの番号付け);重鎖のA118(EU番号付け);及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)の任意の1以上がシステインで置換されてもよい。システインで操作した抗体は、たとえば、米国特許第7,521,541号に記載されているように生成されてもよい。
【0165】
抗体誘導体
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、当該技術で知られ、容易に利用できる追加の非タンパク性部分を含有するようにさらに修飾されてもよい。抗体の誘導体化に好適な部分には水溶性ポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3、6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、酸化ポリプロピレン/酸化エチレンコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(たとえば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは水中でのその安定性のゆえに製造することにおいて利点を有してもよい。ポリマーはどの分子量であってもよく、分岐状または非分岐状であってもよい。抗体に連結されるポリマーの数は変化してもよく、1より多いポリマーが連結されるのであれば、それらは同一の分子または異なる分子であることができる。一般に、誘導体化に使用されるポリマーの数及び/または種類は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件下での治療法で使用されるかどうか、等を含むが、これらに限定されない検討事項に基づいて決定することができる。
【0166】
別の実施形態では、抗体と放射線への曝露によって選択的に加熱されてもよい非タンパク性部分との結合体が提供される。一実施形態では、非タンパク性部分はカーボンナノチューブである(Kam,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,102:11600-11605(2005))。放射線は任意の波長のものであってもよく、それには、普通の細胞に害を及ぼさないが、抗体・非タンパク性部分の近傍の細胞を殺傷する温度に非タンパク性部分を加熱する波長が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
組換え法及び組成物
たとえば、米国特許第4,816,567号に記載されているように、抗体は組換え法及び組成物を用いて作製されてもよい。一実施形態では、本明細書に記載されている抗体をコードする単離された核酸が提供される。そのような核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/または抗体のVHを含むアミノ酸配列(たとえば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)をコードしてもよい。さらなる実施形態では、そのような核酸を含む1以上のベクター(たとえば、発現ベクター)が提供される。さらなる実施形態では、そのような核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態では、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列と抗体のVHを含むアミノ酸配列とをコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクターと抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターとを含む(たとえば、それで形質転換されている)。一実施形態では、宿主細胞は真核細胞、たとえば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ系細胞(たとえば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態では、抗体を作製する方法が提供され、その際、該方法は、抗体の発現に好適な条件下にて、上記で提供されているような抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養することと、任意で宿主細胞(または宿主細胞の培養培地)から抗体を回収することとを含む。
【0168】
抗体の組換え生産については、たとえば、上記に記載されているような抗体をコードする核酸を単離し、さらなるクローニング及び/または宿主細胞での発現のために1以上のベクターに挿入する。そのような核酸は、従来の手順を用いて(たとえば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定されてもよい。
【0169】
抗体をコードするベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載されている原核細胞または真核細胞が挙げられる。たとえば、特にグリコシル化及びFcのエフェクター機能を必要としない場合、抗体は細菌にて産生されてもよい。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、たとえば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照のこと(また、E.coliにおける抗体断片の発現を記載しているCharlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ,2003),pp.245-254も参照のこと)。発現の後、抗体は可溶性分画における細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製することができる。
【0170】
原核生物に加えて、たとえば、糸状菌または酵母のような、そのグリコシル化経路がヒト化されている真菌及び酵母の株を含む真核性微生物は抗体をコードするベクターのための好適なクローニング宿主または発現宿主であり、部分的にまたは完全にヒトのグリコシル化パターンを持つ抗体の産生を生じる。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004),及びLi,et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照のこと。
【0171】
グリコシル化された抗体の発現に好適な宿主細胞は多細胞生物(無脊椎生物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎生物細胞の例には植物細胞及び昆虫細胞が挙げられる。昆虫細胞と併せて使用されてもよい、特にSpodoptera frugiperda細胞の形質移入に使用されてもよい多数のバキュロウイルスの株が特定されている。
【0172】
植物細胞の培養物も宿主として使用することができる。たとえば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物にて抗体を生産するためのPLANTIBODIESTM技術を記載している)を参照のこと。
【0173】
脊椎動物細胞も宿主として使用されてもよい。たとえば、浮遊で増殖するように適合している哺乳類細胞株が有用であってもよい。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40で形質転換したサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胚性腎臓株(たとえば、Graham,et al.,J.Gen.Virol.36:59(1977)に記載されたような293または293細胞);幼若ハムスター腎臓細胞(BHK);マウスセルトリ細胞(たとえば、Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されたようなTM4細胞);サル腎臓細胞(CV1);アフリカミドリサル腎臓細胞(VERO-76);ヒト子宮頸癌細胞(HELA);イヌ腎臓細胞(MDCK;バッファローラット肝臓細胞(BRL3A);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(HepG2);マウス乳癌(MMT060562);たとえば、Mather,et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されたようなTRI細胞;MRC5細胞;及びFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞(Urlaub,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980))を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞;ならびに、たとえば、Y0、NS0及びSp2/0のような骨髄腫細胞株が挙げられる。抗体産生に好適な特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、たとえば、Yazaki及びWu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,NJ),pp.255-268(2003)を参照のこと。
【0174】
医薬製剤
本明細書に記載されている抗IL-13抗体の、本明細書では医薬組成物とも呼ばれる医薬製剤は、凍結乾燥製剤または水溶液の形態にて所望の程度の純度を有するそのような抗体または分子を1以上の任意の薬学上許容できるキャリア(Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1980))と共に混合することによって調製される。薬学上許容できるキャリアは一般に、採用される投与量及び濃度にてレシピエントに対して非毒性であり、それらには、たとえば、リン酸塩、クエン酸塩及び他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(たとえば、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンのようなアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;たとえば、血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンのようなタンパク質;たとえば、ポリビニルピロリドンのような親水性ポリマー;たとえば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンのようなアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類及び他の炭水化物;たとえば、EDTAのようなキレート剤;たとえば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖類;ナトリウムのような塩形成性の対イオン;金属錯体(たとえば、Zn-タンパク質錯体);及び/または、たとえば、ポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書の例となる薬学上許容できるキャリアにはさらに、可溶性の中性で活性があるヒアルロニダーゼ糖タンパク質(sHASEGP)のような間質薬剤分散剤、たとえば、ヒト可溶性PH-20ヒアルロニダーゼ糖タンパク質、たとえば、rHuPH20(HYLENEX(登録商標)、Baxter International,Inc.)が挙げられる。rHuPH20を含む特定の例となるsHASEGP及び使用方法は、米国特許公開番号2005/0260186及び2006/0104968に記載されている。態様の1つでは、sHASEGPは、たとえば、コンドロイチナーゼのような1以上の追加のグリコサミノグリカナーゼと併用される。
【0175】
例となる凍結乾燥した抗体製剤は米国特許第6,267,958号に記載されている。水性抗体製剤には米国特許第6,171,586号及びWO2006/044908に記載されたものが挙げられ、後者の製剤はヒスチジン・酢酸緩衝液を含む。
【0176】
本明細書の製剤は、治療される特定の適応について必要に応じて1を超える有効成分、好ましくは、互いに有害に影響を及ぼさない相補的活性を持つものも含有してもよい。たとえば、制御要素にTh2経路の阻害剤をさらに提供することが望ましくてもよい。そのような有効成分は意図する目的にとって有効である量で併用して好適に存在する。
【0177】
有効成分は、たとえば、液滴形成法によって、または界面重合によって調製されるマイクロカプセルにて、たとえば、コロイド状薬剤送達系(たとえば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子及びナノカプセル)またはマクロエマルションにおける、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンのマイクロカプセル及びポリ-(メタクリル酸メチル)のマイクロカプセルにて封入されてもよい。そのような技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に開示されている。
【0178】
持続放出製剤が調製されてもよい。持続放出製剤の好適な例には、そのマトリクスが成形物品の形態、たとえば、薄膜またはマイクロカプセルの形態である、抗体を含有する固形疎水性ポリマーの半透過性マトリクスが挙げられる。
【0179】
生体内投与で使用される製剤は一般に無菌である。無菌状態は、たとえば、無菌の濾過膜を介した濾過によって容易に達成されてもよい。
【0180】
治療方法及び組成物
特定の実施形態では、治療上有効な量のレブリキズマブをアトピー性皮膚炎患者に投与することを含み、治療が、アトピー性皮膚炎疾患重症度結果判定法(ADDSOM)によって測定または評価されたとき、疾患重症度の低下を生じる、アトピー性皮膚炎を治療する方法が提供される。一部の実施形態では、アトピー性皮膚炎はRajka/Langelandの基準スコアによって判定されたとき、中程度から重度である。4.5~9の間のRajka/Langelandの基準スコアが通常、中程度から重度のアトピー性皮膚炎と見なされる。一部の実施形態では、方法はさらに、1回以上の局所コルチコステロイドの投与を含む。局所コルチコステロイドは、IL-13アンタゴニストの投与の前に(すなわち、先立って)、IL-13アンタゴニストの投与と同時に、またはIL-13アンタゴニストの投与の後で投与されてもよい。例となる局所コルチコステロイドには、トリアムシノロンアセトニド、ヒドロコルチゾン、及びトリアムシノロンアセトニドとヒドロコルチゾンの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。トリアムシノロンアセトニドは通常、クリームにて0.1%の濃度で製剤化され、ヒドロコルチゾンは通常、クリームにて1%または2.5%の濃度で製剤化される。たとえば、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、クロベタゾールプロピオン酸エステル、ジフルオラゾン二酢酸エステル、フルオシノニド、及びハロベタゾールプロピオン酸エステルのような特定の局所コルチコステロイドは非常に高度に効力があると見なされている。たとえば、アムシノニド、デソキシメタゾン、ハルシノニド、及びトリアムシノロンアセトニドのような特定の局所コルチコステロイドは高度に効力があると見なされている。たとえば、ベタメタゾン吉草酸エステル、クロコルトロンピバル酸エステル、フルオシノロンアセトニド、フルランドレノリド、フルオシノニド、フルチカゾンプロピオン酸エステル、ヒドロコルチゾン酪酸エステル、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、モメタゾンフロ酸エステル、及びプレドニカルベートのような特定の局所コルチコステロイドは中程度に効力があると見なされている。たとえば、アルクロメタゾンジプロピオン酸エステル、デソニド及びヒドロコルチゾンのような特定の局所コルチコステロイドは効力が低いと見なされている。TCSは1日1回、1日2回、1日3回、または必要に応じて患部に塗布してもよい。一部の実施形態では、患者は局所コルチコステロイドで不適切に管理されている。
【0181】
種々のADDSOMが当該技術で知られ、新規のアトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)に加えて本明細書に記載されている。例となるADDSOMには、「湿疹面積・重症度指数」(EASI)、「アトピー性皮膚炎重症度得点」(SCORAD)、「治験医師による全般的評価」(IGA)、「兆候の治験医師による全般的評価」(IGSA)、Rajka/Langelandのアトピー性皮膚炎重症度スコア、ならびに掻痒の視覚的アナログ尺度(SCORADの一部として評価される疾患重症度の態様)、睡眠不足の視覚的アナログ尺度(SCORADの一部として評価される疾患重症度の態様)、アトピー性皮膚炎症状日記(ADSD)、アトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)、皮膚科関連生活の質評価指標(DLQI)(Finlay及びKhan,Clin.Exper.Dermatol.1994;19:210)、及び5-D痒みスケール(Elman,et al.,Br.J.Dermatol.2010;162(3):587-593)を含むが、これらに限定されない患者報告アウトカムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0182】
本明細書で提供されるような治療剤は、非経口、皮下、腹腔内、肺内及び鼻内の手段を含む好適な手段によって投与することができる。非経口注入には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内または皮下の投与が挙げられる。特定の実施形態では、投薬は注射、たとえば、静脈内または皮下の注射によって与えられる。さらに別の実施形態では、治療剤は注射器(たとえば、充填済みのまたはそうではない)または自己注射器を用いて投与される。特定の実施形態では、治療剤は局所に適用される。
【0183】
特定の実施形態では、本発明の抗IL-13抗体は、たとえば、自己注射用具、自動注入用具、または自己投与用に設計された他の用具を用いて投与される。特定の実施形態では、本発明の抗IL-13抗体は皮下投与用具を用いて投与される。自己注射器の用具を含む種々の自己注射用具及び皮下投与用具が当該技術で知られており、市販されている。例となる用具には、充填済み注射器(たとえば、Becton DickinsonのBD HYPAK SCF(登録商標)、READYFILL(商標)、及びSTERIFILL SCF(商標);BaxterのCLEARSHOT(商標)コポリマー充填済み注射器;及びWest Pharmaceutical Servicesから入手可能なDaikyo Seiko CRYSTAL ZENITH(登録商標)充填済み注射器);Becton DickinsonのBD Penのような使い捨てペン型注射用具;超鋭利且つ極微針の用具(たとえば、Becton DickinsonのINJECT-EASE(商標)及び微量注入用具;及びValeritasから入手可能なH-PATCH(商標))、同様に無針注射器具(たとえば、Biojectから入手可能なBIOJECTOR(登録商標)及びIJECT(登録商標);及びMedtronicから入手可能なSOF-SERTER(登録商標)及び貼付用具)が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、たとえば、本発明の抗IL-13抗体は、そのすべてが参照によって組み入れられる米国特許公開番号2014/0114247、2014/0148763、及び2013/0131590;米国特許第7,597,685号、同第7,896,850号、及び同第8,617,109号に記載されたような種々の成分で構成される自己注射用具を用いて投与される。少なくとも第2の治療用化合物との抗IL-13抗体のそのような自己注射用具または皮下投与用具による同時製剤化または同時投与が想定される。
【0184】
疾患の予防または治療については、本発明の抗体の適当な投与量(単独で、または1以上の他の追加の治療剤との併用で使用される場合)は、治療される疾患の種類、抗体の種類、疾患重症度及び経過、抗体が予防目的で投与されるのか、または治療目的で投与されるのか、以前の治療法、患者の既往症及び抗体に対する応答、ならびに主治医の裁量に左右されるであろう。抗体は一度、または一連の治療にわたって患者に好適に投与される。特定の実施形態では、本発明の抗体は、125mgもしくは250mgもしくは約125mgもしくは約250mgのフラット用量(体重に基づく用量ではない)または110mg~140mgの間のフラット用量または120mg~130mgの間のフラット用量または225mg~275mgの間のフラット用量または240mg~260mgの間のフラット用量として投与される。特定の実施形態では、用量はある期間について4週間ごとに1回または8週間ごとに1回、皮下注射によって投与される。特定の実施形態では、その期間は、12週間、または20週間、または24週間、または9ヵ月、または1年、2年、5年、10年、15年、20年または患者の生涯である。この治療法の進展は従来の技法及びアッセイによって容易にモニターされる。特定の実施形態では、患者は中程度から重度のアトピー性皮膚炎を有し、患者は必要に応じてTCSを塗布する一方で、本発明の抗体で治療される。特定の実施形態では、TCSは1日1回。または1日2回、または1日3回以上塗布される。特定の実施形態では、患者は経時的にTCSの使用を減らすことができる一方で、本発明の抗体は投与されている。TCSのそのような低下した使用は、「漸減」または「TCSの節約」と呼ばれる。減った使用が発生してもよい期間は、1、2、3、または4週間、または2、3、4、5、または6ヵ月である。
【0185】
特定の実施形態に係る本発明のIL-13アンタゴニストは1以上の追加の治療剤との併用での投与を含む。用語「との併用で」は、追加の治療剤(複数可)がIL-13アンタゴニストを含む医薬組成物の前に、その後で、またはそれと同時に投与されることを意味する。用語「との併用で」にはまた、IL-13アンタゴニストと第2の治療剤との順次投与または同時投与も含まれる。
【0186】
たとえば、IL-13アンタゴニストを含む医薬組成物の「前に」投与する場合、追加の治療剤は、IL-13アンタゴニストを含む医薬組成物の投与に先立つ約72時間、約60時間、約48時間、約36時間、約24時間、約12時間、約10時間、約8時間、約6時間、約4時間、約2時間、約1時間、約30分、約15分または約10分に投与されてもよい。IL-13アンタゴニストを含む医薬組成物の「後で」投与する場合、追加の治療剤は、IL-13アンタゴニストを含む医薬組成物の投与の後、約10分、約15分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約6時間、約8時間、約10時間、約12時間、約24時間、約36時間、約48時間、約60時間または約72時間に投与されてもよい。IL-13アンタゴニストを含む医薬組成物と「同時に」または一緒に投与することは、追加の治療剤がIL-13アンタゴニストを含む医薬組成物の投与の(前、後または同時の)5分未満の範囲内にて別々の剤形で対象に投与される、または追加の治療剤とIL-13アンタゴニストの双方を含む単一の併用投与製剤として対象に投与されることを意味する。
【0187】
追加の治療剤は、たとえば、別のIL-13アンタゴニスト、IL-4Rアンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト、IL-6アンタゴニスト、IL-6Rアンタゴニスト、TNFアンタゴニスト、IL-8アンタゴニスト、IL-9アンタゴニスト、IL-17アンタゴニスト、IL-5アンタゴニスト、IgEアンタゴニスト、CD48アンタゴニスト、IL-31アンタゴニスト、胸腺間質リンホポエチン(TSLP)アンタゴニスト、インターフェロン-ガンマ(IFN.ガンマ.)抗生剤、局所コルチコステロイド、タクロリムス、ピメクロリムス、ミコフェノレート、シクロスポリン、アザチオプリン、メソトレキセート、クロモリンナトリウム、プロテイナーゼ阻害剤、またはそれらの組み合わせであってもよい。特定の実施形態では、抗IL-13アンタゴニストを含む医薬組成物は、経口免疫抑制剤、たとえば、ピメクロリムスもしくはタクロリムスのような局所カルシニューリン阻害剤、または、たとえば、プレドニゾロンのような経口コルチコステロイドと併せて対象に投与される。特定の実施形態では、抗IL-13アンタゴニストを含む医薬組成物は、たとえば、紫外線(UV)療法のような非薬物療法と併せて対象に投与される。
【0188】
特定の実施形態では、本発明の抗体は、フラット(すなわち、体重に依存しない)負荷用量として1回以上投与され、その後フラット維持用量としての1回以上の投与が続く。特定の実施形態では、負荷用量は250mgまたは500mgであり、維持用量は125mgである。特定の実施形態では、250mgの2回の負荷用量が15日間離してまたは29日間離して投与される。特定の実施形態では、最後の負荷用量の2週間後または最後の負荷用量の4週間後に投与され、次いでその後4週間ごとに投与される。特定の実施形態では、負荷用量は500mgであり、維持用量は250mgである。特定の実施形態では、250mgの維持用量は負荷用量の4週間後に投与され、次いでその後4週間ごとにまたは8週間ごとに投与される。
【0189】
製造物品
本発明の別の態様では、上記に記載されている疾病の治療、予防及び/または診断に有用な物質を含有する製造物品が提供される。製造物品は容器と、容器上のまたは容器に関連するラベルまたは添付文書とを含む。好適な容器には、たとえば、ビン、バイアル、注射器、IV溶液バッグ、自己注射器等が挙げられる。容器は、たとえば、ガラスまたはプラスチックのような種々の物質から形成されてもよい。容器は、単独である、または状態を治療する、予防する及び/または診断するのに有効な別の組成物と組み合わせる組成物を保持しており、無菌のアクセスポートを有してもよい(たとえば、容器は静脈内溶液バッグであってもよく、または皮下注射針で穴開けできるストッパーを有するバイアルであってもよい)。組成物における少なくとも1つの活性剤は本発明の抗体である。ラベルまたは添付文書は組成物が選択される状態を治療するのに使用されることを表示する。さらに、製造物品は、(a)その中に含有される組成物を伴い、組成物が本発明の抗体を含む第1の容器と、(b)その中に含有される組成物を伴い、組成物がさらなる治療剤を含む第2の容器とを含んでもよい。本発明のこの実施形態の製造物品はさらに、特定の状態を治療するのに組成物を使用することができることを示す添付文書を含んでもよい。代わりに、またはさらに、製造物品はさらに、たとえば、注射用の静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液及びデキストロース溶液のような薬学上許容できる緩衝液を含む第2(または第3)の容器を含んでもよい。それはさらに、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、注射器及び自己注射器を含む、商業的な及びユーザーの観点から望ましい他の物質を含んでもよい。
【実施例
【0190】
実施例1:抗IL-13抗体
モノクローナルヒト化抗IL-13抗体を含む抗IL-13抗体は以前記載されている(たとえば、WO2005/062967を参照のこと)。その中に記載されているモノクローナルヒト化抗IL-13抗体の1つがIgG4抗体であるレブリキズマブである。配列表も参照のこと。以下に記載されている試験ではレブリキズマブが使用され、薬学上許容できる組成物にて125mg/mLで製剤化され、充填済み注射器にて供給された。
【0191】
実施例2:臨床試験I
臨床試験Iは、局所コルチコステロイド(TCS)によって不適当に管理されている持続性の中程度から重度のアトピー性皮膚炎患者(18~75歳)にてレブリキズマブの安全性及び有効性を評価するフェーズII無作為二重盲検プラセボ比較試験だった。この試験にてレブリキズマブはTCSとの併用で調べられた。試験のスキームを図1に提供する。
【0192】
スクリーニング
試験に登録するのに適格な患者は少なくとも1年間症状がある中程度から重度のADを有する必要があり、適格性基準をすべて満たす必要があった。導入期間への参加について及び導入期間の終了時で再び、適格性を評価し、治療期間への参加及び試験薬への無作為化についての適格性を評価するスクリーニングで患者を査定した。
【0193】
試験対象患者基準には、以下:年齢18~75歳;Hanifin/Rajka基準によって診断され、スクリーニング時少なくとも1年間症状があるAD;スクリーニング時Rajka/Langeland基準によって等級付けしたとき中程度から重度のAD;ADの治療のための少なくとも毎日のTCS及び定期的な皮膚軟化剤の≧1ヵ月(スクリーニング来診に先立って3ヵ月以内)の治療投薬計画に不適切な応答の既往歴;スクリーニング時且つ導入期間の終了時(来診3)にて≧14のEASIスコア、スクリーニング時且つ導入期間の終了時(来診3)にて≧3(5点尺度)のIGAスコア;スクリーニング時体表面積(BSA)の≧10%のADの関与;及びスクリーニング時≧3の掻痒VASスコア(SCORADの一部として測定された)が含まれた。
【0194】
臨床試験除外基準には、以下:レブリキズマブを含む抗IL-13または抗IL-4/IL-13療法の過去及び/または現在の使用;スクリーニングに先立って4週間以内または治験薬の5半減期以内のいずれか長い方の治験薬の使用;生物製剤に対する重度のアレルギー反応もしくはアナフィラキシー反応またはレブリキズマブ注射の成分に対する既知の過敏症;TCSまたは試験で使用されるTCS製品に含有される他の成分に対する過敏症;導入期間に先立って7日以内の植物療法、伝統的なもしくは非伝統的な植物薬、必須脂肪酸または鍼治療を含むが、これらに限定されない補完医療、代替医療もしくはホメオパシー医療の使用、または試験中でのそのような医療の必要性;<40kgの体重または>38kg/mの肥満度指数;T細胞リンパ腫またはアレルギー性接触皮膚炎を含むが、これらに限定されない他の皮膚の状態の証拠;スクリーニング時(-15日目)の活発な皮膚感染の証拠または進行中の治療(局所抗生剤を含む);特定の感染;最近(<1年)の寄生虫感染、特に回虫(たとえば、Ascaris,Ancylostoma)、扁形動物(たとえば、Schistosoma)感染の既往歴、またはリステリア感染の既往歴;来診1に先立って12ヵ月以内に治療を必要とする活動型の結核;急性または慢性の肝炎または既知の肝硬変の証拠;HIV感染を含む既知の免疫不全症;スクリーニング時のTCI(局所カルシニューリン阻害剤)の使用;スクリーニング来診の前4週間以内での日焼け室/日焼けサロンの使用;スクリーニングの3ヵ月以内でのアレルゲン免疫療法;ベースライン来診(1日目)に先立って4週間以内での弱毒生ワクチンの接種;試験の間での計画された手術;スクリーニングECGまたは臨床検査(血液学、血清化学及び尿分析)における臨床的に有意な異常;スクリーニングの間での正常の上限(ULN)×≧2.0のAST、ALTまたは総ビリルビンの上昇;皮膚の基底細胞癌または有棘細胞癌または原位置での癌腫を含む既知の現在の悪性腫瘍または潜在的な悪性腫瘍についての現在の評価;子宮頸癌、非黒色腫皮膚癌;ステージIの子宮癌の適切に治療された原位置での癌腫を除く、スクリーニングに先立って5年以内の悪性腫瘍の既往歴;ならびに治療にもかかわらず管理されていない他の臨床的に有意な内科疾患が含まれた。
【0195】
導入期間
スクリーニング来診に続いて、適格な患者は2週間の導入期間(-14日目~-1日目)に入り、その間にプロトコールで特定された局所療法投薬計画が開始された。導入期間の第1日目(-14日目)に患者は導入期間全体を通して使用するTCSを受け入れた。患者は、以下の局所療法投薬計画:少なくとも毎日1回乾燥皮膚表面すべてに対する皮膚軟化剤;1日2回のすべての活動性皮膚病変のみへの中程度の効力のTCS(トリアムシノロンアセトニド0.1%)から成るTCSクリームを毎日塗布するように要求された。顔面または間擦部位を冒す病変については、治験医師の裁量でトリアムシノロンアセトニド0.1%の代わりに効力の低いTCS(ヒドロコルチゾン2.5%クリーム)を使用してもよい。
【0196】
導入期間の終了時、試験薬(レブリキズマブまたはプラセボ)に対する無作為化についての適格性の2回目の評価を行い、患者は≧14のEASIスコア且つ≧3のIGAスコアによって評価されるような中程度から重度のADを示し続けなければならなかった。
【0197】
治療期間
導入期間の終了時、1)プロトコールで特定したTCS投薬計画のコンプライアンスを示し、且つ2)上記に記載されているような適格性基準を満たし続けた患者を無作為化した。計画は、およそ200人の患者を以下の4つの治療群(表1を参照のこと):(1)第1群:皮下に(SC)単回投与(1日目)で投与されたレブリキズマブ250mgとそれに続く2回のプラセボ投与(4週目と8週目)で合計3回の投与+TCSクリーム;(2)第2群:SC単回投与(1日目)でのレブリキズマブ125mgとそれに続く2回のプラセボ投与(4週目と8週目)で合計3回の投与+TCSクリーム;(3)第3群:レブリキズマブ125mgSCを4週間ごと(Q4W)に合計3回の投与+TCSクリーム;及び(4)第4群:プラセボSCでQ4Wの合計3回の投与+TCSクリームの1つの無作為化する(1:1:1:1)ことだった。3回の活性のある投与は曝露・応答の関係性及び投薬頻度の要件の双方を特徴付けるように含まれた。
【0198】
これら4つの試験治療群に無作為化された患者はTCSとの併用で試験薬(レブリキズマブまたはプラセボSC)を受け入れた。12週間の治療期間の全体にわたって、これらの患者は、少なくとも1日1回の皮膚軟化剤と導入期間に記載されているようなトリアムシノロンアセトニド0.1%クリーム(1日2回、身体の活発な皮膚病変すべてに)を塗布し続けた。顔面または間擦部位を冒す病変については、治験医師の裁量でトリアムシノロンアセトニド0.1%の代わりに効力の低いTCS(ヒドロコルチゾン2.5%クリーム)を使用してもよい。患者は治療期間全体を通して局所クリームの使用を記録し、携帯型e日記を用いてPRO関連の質問に応答した。各試験来診では、患者は、重量を測定する試験施設に彼らのTCS容器を持ち込むように要求された。
【0199】
安全性経過観察期間
プラセボ比較治療期間(1週目~12週目)の間に試験治療を完了した患者はすべて安全性についてさらに8週間(13週目~20週目)観察される。この安全性経過観察期間の間に患者は、導入期間及び治療期間の間に特定されたような局所治療投薬計画を適用することをもはや要求されなかった。代わりに、トリアムシノロンアセトニド0.1%クリーム及び/またはヒドロコルチゾン2.5%クリームが患者及び試験治験医師によって決定されるように適用されてもよい。各試験来診で患者は重量を測定する試験施設に彼らのTCS容器を持ち込むように要求された。患者は乾燥皮膚に少なくとも1日1回皮膚軟化剤を適用し続けることを勧められた。ADの治療法の拡大は、治験医師の意見でそれが臨床的に指示されたのであれば、試験の間で許された。
【0200】
局所カルシニューリン阻害剤(TCI)はこの試験の間ではどんな時も許されなかった。スクリーニングの時点でTCIを使用していた患者は、彼らが試験の間TCIを使用することを止めるのに同意し、且つ治験医師の意見でTCIの使用を止め、プロトコールで指定されたTCSクリームを代わりに使用することが安全であれば、試験に参加することを許された。
【0201】
レブリキズマブの用量及びスケジュールについての論理的根拠
ADのためのレブリキズマブの用量は、喘息プログラムによる臨床経験ならびに2つの患者集団におけるIL-13生物学及びレブリキズマブの予想されるPK特性における類似性に基づいた。AD及び喘息の患者は双方とも、IL-13の生物学及びTh2が介在する過敏症に関連する高いレベルの生体マーカーを有する。特に、IL-13は喘息患者の肺で上昇し、喘息では病態形成の役割を有する一方で、IL-13の高い発現はADの皮膚にて一貫して報告されている。
【0202】
さらに、レブリキズマブの主要なクリアランスのメカニズムが非特異的なエンドサイトーシス及び異化作用を介し、標的が介在するクリアランスの最少の寄与を考えると、レブリキズマブのPK特性は喘息患者とAD患者との間で類似すると予想される。種々の組織へのモノクローナル抗体の分配に関して文献では限られた情報しか存在しないけれども、動物モデルでの利用できるデータは、肺及び皮膚組織におけるモノクローナル抗体の類似する血漿から組織への分配係数を示唆している(Shah,DK.et al.,mAbs,2013;5(2):297-305)。従って、喘息にて臨床利益を生じるレブリキズマブの用量レベルはAD患者においても生物活性を生じてもよい。
【0203】
上記に記載されているように、3つの異なる用量投薬計画がこのフェーズII試験で調べられ;(1)125mgQ4Wの用量(第3群)は潜在的に有効な用量として含まれた。125mgQ4Wは、試験開始の時点で進行中だった喘息におけるレブリキズマブの極めて重要なフェーズIII成人試験(LAVOLTA I及びII)にて検討された最高用量の投薬計画(すなわち、最高の総曝露)だった。喘息とADの間でのIL-13の役割及び薬物動態の予想される類似性を考えると、この用量はAD患者で有効であってもよいと仮定され;(2)単回250mg用量(第1群)が代替の潜在的に有効な用量として提案された。この用量は、最初の12週間にわたって125mgQ4Wよりも低い全体曝露を生じると予想された。12週目での主要な評価項目によって、単回250mg用量を調べ、年4回の投薬の可能性を探索し;(3)単回125mg用量(第2群)を潜在的に部分的有効用量として提案した。この用量での全体的な曝露は125mgQ4W及び250mg単回投与の投薬計画よりも2~3倍低いと予想されたことを考えると、これら3つの用量群からのデータを用いてAD患者におけるレブリキズマブの曝露・応答の関係性を特徴付けることができる。
【0204】
しかしながら、上記に記載されているように、LAVOLTA I及びIIの試験の成績は食い違った。2016年9月5日オンラインで公開したdx(ドット)doi(ドット)org(スラッシュ)S2213-2600(16)30265-Xで入手可能なHanania,et al.,Lancet Respir Med.,2016。薬物動態及び薬物力学の成績は以前記載されたフェーズIIの試験に由来するものと一致したが、双方の試験が明瞭な用量・応答を示せなかったということは、薬物曝露が類似し、IL-13経路が阻害されたことを示している。Hanania,et al.,2016,上記。従って、レブリキズマブが本明細書に記載されている投薬計画にてアトピー性皮膚炎患者に臨床的に意味のある利益を提供するかどうかは不確実だった。
【0205】
フェーズII試験についての主要な評価項目を12週目で測定した。12週目でのレブリキズマブの平均血清トラフ濃度は125mgQ4Wを受け入れている患者については定常状態の値の90%を超えると予想された。加えて、125mgQ4Wの用量については、12週目での予測されたトラフ濃度はレブリキズマブがフェーズIIの喘息臨床試験で生物活性を実証した範囲の十分に範囲内だった。250mg単回投与については、12週間にわたる予測された平均曝露は、フェーズIIの喘息試験で生物活性を実証した37.5mgQ4W投薬計画のそれを上回る;Hanania,et al,Thorax,2015;70:748-756。
【0206】
対照群についての論理的根拠
治療群4における患者はプラセボSC+TCSクリームを受け入れたので、実薬対照として役立った。この治療群をレブリキズマブSCの対照として用い、TCSとの補助療法としてのレブリキズマブの有効性及び安全性効果を適切に評価した。
【0207】
ステップアップ療法(たとえば、全身性の作用物質)が開始される一方で、TCSの使用は臨床実践での標準治療であり、継続される(European Academy of Dermatology and Venereology[EADV]2009 guidelines;Darsow,et al.,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.2010;24:317-28)ので、TCSの実薬対照群が含まれた。加えて、持続する中程度から重度の疾患の患者にてTCSを止めることはADの症状及び疾患の負担で有意な悪化を生じてもよい。
【0208】
有効性結果判定法
主要な有効性結果判定法は12週目でのEASI-50(EASIスコアのベースラインからの50%の低下)を達成する患者の比率であった。この試験についての二次的な有効性結果判定法は以下のとおりであった:(i)12週目でのEASIスコアのベースラインからのパーセント変化及び絶対的な変化;(ii)12週目でのEASIスコアのベースラインからの75%の低下(EASI-75)を達成する患者のパーセント;(iii)12週目での0または1のIGAスコアを達成する患者のパーセント;(iv)12週目でのIGAのベースラインからの≧2点の低下を伴う患者のパーセント;(v)12週目でのIGAのベースラインからの絶対的な変化;(vi)12週目での0または1のIGSAスコアを達成する患者のパーセント;(vii)12週目でのIGSAのベースラインからの≧2点の低下を伴う患者のパーセント;(viii)12週目でのIGSAのベースラインからの絶対的な変化;(ix)12週目でのSCORADのベースラインからのパーセント変化及び絶対的な変化;(x)12週目でのSCORAD-50/75でのベースラインからの50%または75%の低下を伴う患者のパーセント;(xi)12週目でのEASI-50を達成し且つ16及び20週目でEASI-50を維持している患者のパーセント;(xii)12週目で0または1のIGAスコアを達成し且つ16及び20週目で0または1のIGAスコアを維持している患者のパーセント;(xiii)12週目での0または1のIGSAスコアを達成し且つ16及び20週目で0または1のIGSAスコアを維持している患者のパーセント;(xiv)12週目でSCORAD-50を達成し且つ16及び20週目でSCORAD-50を維持している患者のパーセント;(xv)12週目での冒された体表面積(BSA)総%のベースラインからのパーセント変化;(xvi)12週目での掻痒VAS(SCORADの一部として評価される)によって測定されるような掻痒のベースラインからの絶対的な変化及びパーセント変化;(xvii)12週目での5-D痒みスケールによって測定されるような掻痒のベースラインからの絶対的変化及びパーセント変化;(xviii)12週目までのベースラインからのTCSの合計使用(グラム)(xvix)試験の終了または早期終結までの12週目からのTCSの合計使用(グラム);(xx)ベースラインから12週目までの病勢増悪の数;(xxi)ADSDによって評価されるようなベースラインから12週目までのADの症状における変化;(xxii)ADIQによって評価されるようなベースラインから12週目までのAD特有の健康関連のQoLでの変化;ならびに(xxiii)DLQIによって測定されるようなベースラインから12週目までの健康関連のQoLでの変化。
【0209】
安全性結果判定法
この試験についての安全性結果判定法は以下のとおりであった:(i)治療により発現した有害事象の頻度及び重症度;(ii)ベースラインにて及び試験中でのヒト抗薬物抗体(ATA)の発生;(iii)試験の全体を通しての皮膚及び他の臓器系の感染の頻度及び重症度;皮膚感染の臨床定義は以下のとおりだった:感染の診断は、皮疹の部位での蜂蜜色の痂皮、漿液性分泌物、膿疱または疼痛の存在を含むが、これらに限定されず、且つ発熱またはADの病勢の増悪(上記で定義された)を含む全身性の特徴に関連してもよい治験医師の臨床評価に基づいた;ならびに(iv)治験医師によって評価されるような試験薬の中断に続く疾患反跳の発生;疾患反跳の臨床的な定義は、治療法の開始より前に比べて大きい重症度レベルまでの治療法停止後の疾患重症度の有意な悪化だった(Hijnen,et al.,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.2007;21(1)85-9)。
【0210】
アトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)
我々は、米国食品医薬品局の患者報告アウトカム(PRO)のガイドライン(www(ドット)fda(ドット)gov(スラッシュ)downloads(スラッシュ)Drugs(スラッシュ)Guidances(スラッシュ)UCM193282(ドット)pdf.にてオンラインで入手可能)に従って12歳以上の患者にて使用するためのAD専用の健康関連の生活の質ツールを開発した。具体的には文献の見直しを行ってADのPRO状況を評価した。中程度から重度のADの成人18~75歳(n=15)及び思春期12~17歳(n=15)との概念誘発(CE)の面接を行い患者にとって重要であるADの兆候及び症状を引き出した。グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて面接の記録を質的に分析した。項目生成会議(IGM)を開催してデータを見直し、CE面接からの患者のフィードバックに基づいて予備的なADIQを開発した。
【0211】
以下の表2に示されるADIQに含まれる概念の明瞭さと関連性を確認した34人の成人及び思春期の患者との認知面接にて原案のADIQを調べた。精神測定の検証は含まれない。
表2.アトピー性皮膚炎影響質問票(ADIQ)
【0212】
結果
この試験では、209人の患者を調べた。12週目で、プラセボに比べてレブリキズマブ(4週間ごとに125mg)とTCSで治療した患者の大きな比率がEASI-50(図2A及び図3A)、EASI-75(図3B)、EASI-90(図3C)及びSCORAD-50(図2B)を達成した。加えて、12週目では、主要な有効性結果であるEASI-50を達成した患者の比率はプラセボ(62.3%)に比べてレブリキズマブ群すべてで大きかったが、図11Aに示すように複数回用量群(125mgQ4W群について82.4%[p=0.026])でのみ統計的有意性を達成した。全体としては、二次有効性結果であるEASI-75の応答を達成している患者の比率はレブリキズマブ用量群すべてで高かったが、図11Bに示すように12週目にてプラセボ(34.0%)に比べて125mgQ4W群(54.9%[p=0.036])においてのみ有意に高かった。12週目で0/1のIGAを達成した患者の比率はプラセボに比べてレブリキズマブ群すべてにおいて高かったが、統計的有意性には達しなかった。しかしながら、他の結果と同様に、データはIGAについて用量・応答の関係性を示唆し(図11C)、125mgQ4W群は治療期間の最終の週で継続した改善を示した(図2C)。SCORAD-50に関して、レブリキズマブ125mgQ4W群(51.0%[p=0.018])及び250mgSD群(47.2%[p=0.030])はプラセボ(26.4%;図11D)に比べて12週目でこの評価項目を達成した。レブリキズマブ群はすべて冒されたBSAで改善を示した(表3)。プラセボ群にも実質的な改善(47.4%)があったが、冒されたBSAの12週目での最大の減少はレブリキズマブ125mgQ4W群(57.7%の減少)で観察された。BSAについてのプラセボで補正した有効性は統計的に有意ではなかった(p=0.38)。
【0213】
レブリキズマブの治療は掻痒のVAS(表3及び表7)にて改善をもたらした。2週間のTCS導入期間の間での掻痒VASにおける改善は重症度測定結果における改善よりも量的に大きかった。治療群すべての間でのTCSの使用の高いコンプライアンス率があり、TCSはベースラインから12週目までの平均で日数の86.8%(125mgSD)、86.7%(250mgSD)、91.9%(125mgQ4W)及び88.2%(プラセボ)使用された。
【0214】
12週目にてプラセボに比べて4週間ごとの125mgレブリキズマブとTCSで治療した患者において睡眠不足のVASでも大きな改善があり、同様に、IGA0/1、掻痒のVAS及びAD特有の健康に関する生活の質(QoL)の測定、特にアトピー性皮膚炎影響質問票で改善の傾向もあった(表3、表7、図12A図12B及び図12C)。DLQIスコアにて用量依存性の改善もあり、プラセボに比べてレブリキズマブ群すべてでベースラインからの数的に大きな低下があった(表3、表7、図12D)。
【0215】
薬物動態のパラメータも以下のように評価した。レブリキズマブの薬物動態の分析のための血清試料は、すべての投薬計画について1日目(投与前)、及び1、4(投与前)、6、8(投与前)、12、16及び20週目に得た。血清レブリキズマブの濃度はレブリキズマブの治療投薬計画の1つを受け入れた患者について記述統計学を用いて治療及び来診によって取りまとめた。報告されたPKパラメータには、1週目のCmax、4、8、及び12週目のCmin及び排出半減期が挙げられる。レブリキズマブの投薬計画のそれぞれについての平均PKパラメータ及びそれぞれの標準偏差を表8に示す。結果は、AD患者におけるレブリキズマブの薬物動態が成人の喘息について以前公開された文献で報告されたレブリキズマブについての薬物動態(たとえば、Hanania,et al.,Thorax,70(8):748-756(2015))に一致したことを示すということは、19~22日の半減期を持つ線形で用量に比例する特性を示している。
【0216】
有害事象の比率は治療群の間で一般に類似し(66.0%のプラセボに対比してレブリキズマブ群すべてで66.7%)、ほとんどが重症度では軽度または中程度だった(表9)。具体的には、レブリキズマブ群(すべての用量を合わせて)における3人(2%)の患者及びプラセボ群における1人(2%)の患者が、試験からの離脱を招くAE(125mgSD群での皮膚感染、125mgQ4W群での不安神経症及びミオパシー、及びプラセボ群でのアトピー性皮膚炎)を経験した。レブリキズマブ群の患者の1人(1%)が投薬中断を招くAE(消化器ウイルス感染)を経験した。死亡、アナフィラキシーの事象、悪性腫瘍、またはプロトコールで定義された寄生虫感染、または対象とする標的細胞内感染はなかった。注射部位反応は稀に生じた(レブリキズマブ群すべてで1.3%及びプラセボで1.9%);事象はすべて重篤ではなく、平均1~3日続き、治療の中断を招くことはなかった。
【0217】
ヘルペスの感染は稀に且つレブリキズマブで治療した患者の間でのみ(n=6[3.8%];n=4[2.6%]で単純性ヘルペス;n=2[1.3%]で帯状疱疹)発生し;事象はすべて重篤ではなく、治療の中断を招くことはなかった。加えて、ヘルペス性湿疹の事象はなかった。レブリキズマブ治療群(すべての用量を合わせて)の間で14人(9%)の患者及びプラセボ群で9人(17%)の患者に皮膚感染があった。好酸球関連のAEも稀に報告され、5人のレブリキズマブで治療した患者の間でのみ発生し(3.2%;「好酸球増多症」の3事象及び「好酸球の数が増えた」2事象)、事象はすべて重篤ではなく、激しさは軽度から中程度であり、治療の中断を生じなかった。これら5人の患者における最大好酸球数は0.91~3.2×10/Lであり、このうち、3人は等級2の好酸球増多症(1501~5000個/mm)だった。これら5人の患者のうちで、報告された事象で言及されている関連する臨床症状はなかった。さらに、観察された上昇は以前のレブリキズマブの試験で見られたもの(Hanania,et al.,Thorax,2015:70(8):748-756;Hanania,et al.,Lancet Respir Med.,2016;4(10):781-796)に合致した。我々は、この疾患分野における生物学的試験で報告された結膜炎で生じた以前の平衡失調を評価した(Thaci,et al.,Lancet,2016:387(10013):40-52)。プールしたレブリキズマブ群における合計15人(9.6%)の患者及びプラセボ群の4人(7.5%)の患者が結膜炎のAEを有したが;事象はすべて重篤ではなく、治療の中断を招くことはなかった。
表3.12週目での重要な有効性結果
ADIQ=アトピー性皮膚炎影響質問票;BSA=体表面積;CI=信頼区間;DLQI=皮膚科関連生活の質評価指標;EASI=湿疹面積・重症度指数;IGA=治験医師による全般的評価;SCORAD=アトピー性皮膚炎重症度得点;SE=標準誤差;VAS=視覚的アナログ尺度
表7.スクリーニングからベースライン(導入)までのEASI、SCORAD、IGA、掻痒のVAS及び冒されたBSAのパーセントにおけるパーセント変化
BSA=体表面積;EASI=湿疹面積・重症度指数;IGA=治験医師による全般的評価;Q4W=4週間ごとに;SD=単回投与;SCORAD=アトピー性皮膚炎重症度得点;SD=単回投与;SE=標準誤差;VAS=視覚的アナログ尺度。
表8.単回用量または複数回用量の皮下投与に続くレブリキズマブの薬物動態の平均パラメータ
max,wk1=1週目でのレブリキズマブの最大濃度、Cmin,wk4=4週目で観察された最低濃度、Cmin,wk8=8週目で観察された最低濃度、Cmin,wk12=12週目で観察された最低濃度、t1/2=排出半減期
表9.重要な安全性情報の要約、0~20週目
AE=有害事象;Q4W=4週間ごとに;SAE重篤な有害事象;SD=単回投与;
盲検データを見直してSampsonの基準によるアナフィラキシーとして症例を判定した。†試験薬に関連する感染は治験医師が評価した。
【0218】
我々はまた、図2Aに示すデータについて明らかな用量・応答の関係性も観察した。250mgの単回投与は125mgの単回投与と比べて早期の時点では数的に良好だった。さらに、図2Aで示すデータは、4週間ごとに1回の125mg用量は12週目で有効性プラトーに達したとは思われなかったことを示唆している。これらのデータは多量の投薬(たとえば、250mgでのQ4W)または負荷用量のいずれかの潜在的な利益を示唆している。
【0219】
加えて、20週目にて修正治療企図集団ではプラセボに比べて、4週間ごとの125mgレブリキズマブとTCSで治療した患者の大きな集団がEASI-50(図3A)、EASI-75(図3B)、及びEASI-90(図3C)を達成した。表9も参照のこと。プラセボに比べてレブリキズマブで治療した患者では12週間にわたるEASIでのベースラインからの大きなパーセントの低下も観察された(図4)。とりわけ、4週間ごとに1回12週間にわたって125mgのレブリキズマブを受け入れた患者は、プラセボ群における53.1%の変化(低下)に比べてEASIにて70.5%の変化(低下)を示した。レブリキズマブ治療とプラセボの間でのその17.4%の差異は統計的に有意だった、p=0.025。
表9.20週目での重要な有効性結果の要約
BSA=体表面積;EASI=湿疹面積・重症度指数;IGA=治験医師による全般的評価;SCORADアトピー性皮膚炎重症度得点;SD=単回投与;SE=標準誤差、VAS=視覚的アナログ尺度
【0220】
我々はまた、SCORADの掻痒視覚的アナログ尺度(VAS)、睡眠不足VAS及びADIQによって患者の症状及び健康関連の生活の質を評価した。掻痒VAS、睡眠不足VAS及びADIQにてベースラインからの改善が明らかにされた(表3に示す)。事後解析によってスクリーニングからの変化も調べた。4週間ごとに1回投与した125mgのレブリキズマブで治療した患者は12週目で掻痒VASの55.2%のスクリーニングからの低下(プラセボに対してp=0.03)を示した一方で、プラセボはスクリーニングからの39.3%の低下を生じた。スクリーニングから12週目までに睡眠不足VASでの改善もあり、レブリキズマブ治療による61.5%の低下(プラセボに対してp=0.04)及びプラセボでの39.3%の低下があった。ADIQにてレブリキズマブ治療によるスクリーニングからの64.7%の低下(プラセボに対してp=0.02)及びプラセボでの41.8%の低下があった。レブリキズマブが単回投与(125mg及び250mg)でのみ与えられた群についてはこれらの評価項目における差異はプラセボに比べてほとんどの場合、統計的に有意ではなかった。
【0221】
要約すれば、これらの結果は、中程度から重度のADにおける標的とするIL-13は多数の重症度結果にて一般に用量依存性に、臨床的に意味のある、プラセボで補正した改善を提供している。毎月の投薬はEASI-50、EASI-75及びSCORAD-50を達成する患者の比率を有意に改善し、IGA0/1を達成する患者における改善及び掻痒VASにおける改善の傾向があった。これらの改善はプラセボ群における実質的な応答と関連する強力なTCSの塗布より優位に立って見られた。有害事象の比率は治療群間では一般に類似しており、ほとんどは重症度で軽度または中程度であった。
【0222】
加えて、結果は、標準治療であるTCS治療に対する不適切な応答及び薬効範囲のさらに厳しい限界に向かう患者集団を示すベースラインの特徴を有する中程度から重度のAD患者にて、レブリキズマブはTCSの厳格な塗布より優位に立って治療効果を提供することを示している。試験は、その主要な評価項目―12週目でのEASI-50を伴う患者の比率を満たし―レブリキズマブ125mgQ4W群の統計的に有意な数の患者がベースラインEASIスコアにおけるこのレベルの低下を達成した。さらに、治療期間の最終週にわたる上向きの傾きの応答曲線は、レブリキズマブ125mgQ4W群については12週目までに応答のプラトーに達しなくてもよく、さらに長い治療期間が改善された有効性をもたらしてもよいことを示唆している。用量・応答の関係性があると思われ、レブリキズマブ125mgQ4W用量は、ほとんどの評価項目、特にEASIにわたって数的に最高の応答率を示し、レブリキズマブ125mgSDは12週目で最小の利益を示した。
【0223】
とりわけ、レブリキズマブ250mgSDが幾つかの結果についてより早期の時点で数的により高い応答を示したということは、より多い投薬または負荷用量のいずれかの潜在的な利益を示唆している。主要な有効性の評価項目のすべてにおいて、12週間の治療期間の経過にわたって観察された途切れない改善があった。12週目での二次的な有効性評価項目の多くにおける差異は、プラセボ群の患者に比べてレブリキズマブ125mgQ4W群の患者について未補正の5%有意レベルにて統計的に有意だった。これらには、EASI-75を伴う患者の比率、SCORAD-50を伴う患者の比率、EASIスコアのベースラインからのパーセント変化、及びSCORADにおけるベースラインからのパーセント変化が含まれた。IGA及び掻痒VASにおける改善はプラセボよりも数的に高かった。掻痒は中程度から重度のAD患者にてQoLの低下に対する重要な寄与因子であると見なされ、掻痒の改善のせいであると思われる、レブリキズマブ125mgQ4W投薬によるQoL(DLQI及びADIQによって評価されるような)及び睡眠で数的に大きな改善があった。一般に、レブリキズマブの効果は、20週目まで維持されたEASI、IGA0/1及びSCORADの応答を含む幾つかの結果にて8週間の経過観察期間の間も維持された。
【0224】
複数の評価項目にわたって観察された用量・応答の関係性、及び増加する用量及び持続時間によって有効性が改善する傾向を考えると、用量(負荷用量の形態、または250mgQ4Wのような多い用量のいずれか)及び/または治療期間のさらなる増加が有効性の改善をもたらしてもよいと仮定するのは理に適っている。さらに、喘息患者のFEV(Hanania,et al.,Thorax,2015;70(8):748-756)とAD患者のEASI/IGAの評価項目との間でのレブリキズマブの用量・応答の関係性における観察された差異は、ADが実際、応答のプラトーを達成するのにさらに高い用量のレブリキズマブを必要としてもよいことを示唆している。これは、喘息患者に比べてアトピー性皮膚炎患者の間での高いIL-13負荷に一致する。
【0225】
この試験のプロトコールは、無作為化について適格であるために2週間の導入期間の間1日2回のTCSの患者のコンプライアンスを必要とした。さらに、患者はこの導入期間の後、十分なAD重症度を示す場合に限り、無作為化について適格であった。この試験に含まれる患者はTCSによって不適正に管理されていたが、このTCS導入期間に含めることによって疾患の実質的な改善がもたらされた。この改善は、抑制されたベースラインAD重症度スコア、たぶん、ベースラインを超える追加の改善の実証をさらに困難にさせる、特に痒みの評価によって実証された。
【0226】
治療期間の間に、プロトコールは1日2回のTCSの継続した塗布を命じ、患者には電子日記による毎日の備忘録が提供され、この試験における患者は全治療群にて88%の高いコンプライアンス率でTCSを塗布した。毎日のTCSの使用は、継続的かつ無制限にではなくむしろ急性病変に通常推奨される一方で、この概念実証型のフェーズ2試験は、TCSの節約を評価するのではなく、熱心に厳密なTCSの塗布に加えてレブリキズマブの潜在的な有効性を理解するよう求めた(Eichenfield,et al.,J.Am.Acad.Dermatol.2014;71(1):116-132)。このTCS投薬計画は長期治療または臨床診療を反映しなくてもよいのでTCSの頻度の少ない塗布が考慮された。しかしながら、この投薬計画はTCSのラベリングに一致し、製品のラベリングによって命じられるよりも少ない頻度での承認適応症外使用についての規制上の懸念があった。同時に、レブリキズマブの単剤療法のようなバックグラウンドTCS考慮しない代替設計が対照群内での実質的な患者の脱落及び/または帰属した患者の不具合を招くという懸念があった。実際、単剤療法の設定での生物療法の試験は、この試験でのプラセボ群の13%の中断率とは対照的に対照群内でおよそ50%という中断率/帰属した患者の不具合率(Simpson,et al.,N.Engl.J.Med.2016;375(24):2335-2348)をもたらしている。12週間の治療期間の間での厳密なTCSの塗布はプラセボ群で観察された実質的な応答を説明する可能性がある。長期の及び頻繁なTCSの使用はADにて進行性の改善を生じることが示されているが、ほとんどの指針はAEを避けるための限定的な毎日使用を提案している。たとえば、Brunner,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.2016;138(1):169-178;Schneider,et al.,J.Allergy Clin.Immunol.2013;131(2):295-9.e1-27;及びHanifin,et al.,J.Am.Acad.Dermatol.2004;50(3):391-404を参照のこと。さらに、プラセボ群におけるこの実質的な応答は、プラセボ群とレブリキズマブ治療群との間での大きな治療上の差異が何故観察されないのかということであり得る。長期の及び頻繁なTCS使用の相対的に高い有効性にもかかわらず、レブリキズマブ治療を加えることによって、特にADの兆候(EASI)及び全般的なスコア(SCORAD)にてさらに有意な改善があった。
【0227】
抗IL-4Rαモノクローナル抗体であるデュピルマブは中程度から重度のAD患者にて有効性を実証し、最近ADにて認可された。IL-4RαはIL-4及びIL-13のシグナル伝達双方にとっての重要な受容体サブユニットであると考えられている。ADにおいてIL-13に比べたIL-4の相対的な重要性は確立されていないという但し書き付きで、AD患者におけるデュピルマブの試験はADを治療するためのIL-13の遮断の可能性についての洞察を提供している。IL-13及びIL-4は双方とも、重複する生物学及びエフェクター機能を共有し、たとえば、双方ともTヘルパー2細胞の発生、IgEの産生、好酸球の動員、抗菌ペプチドの下方調節を介した上皮バリア完全性の崩壊、線維形成及びフィラグリン発現の低下において役割を担っている。たとえば、Paternoster,et al.,Nat.Genet.2011;44(2):187-192;Kagami,et al.,Clin.Exp.Immunol.2005;141(3):459-466を参照のこと。生物学におけるそのような高い重複のゆえに、IL-13単独の遮断は、併用でのIL-13とIL-4の遮断に匹敵するADにおける改善に、さらに特異的な標的化された作用を提供する可能性があってもよい。加えて、たとえば、IL-13のような可溶性サイトカインを標的とすることは、投薬頻度での得られる改善と共に線形PKプロファイルの利点を提供してもよい。これは、レブリキズマブをQ4Wで投与する能力をある程度説明し、維持の間での少ない頻度の投薬を可能にしてもよい。対照的に、受容体を標的とすることは、Q2Wで投与されるデュピルマブ(Kovalenko,et al.,CPT Pharmacometrics Syst.Pharmacol.(2016),Nov;5(11):617-624)と同様に、薬剤の中止または中断ののち、濃度の急速な低下を招き得る標的が介在する薬剤のクリアランスに関連する。
【0228】
この試験の結果は、IL-13が介在するシグナル伝達経路がADの病態形成で重要な役割を担い、このサイトカインの遮断が有意な臨床利益をもたらし得ることを示唆している。中程度から重度のAD患者は、単回投与及び集中的なTCSの使用があったとしてもレブリキズマブ治療によって改善を示した。様々なバックグラウンド投薬計画に関する(またはその非存在下での)長い期間の、さらに頻繁なまたは多い投薬による、且つ大きな集団での将来の試験はADにおけるIL-13のみを標的とすることの役割を明瞭にするのに役立つであろう。
【0229】
実施例3:代わりの投薬計画
代わりのレブリキズマブ投薬計画が開発され、有効性を実証すると予測される得るかどうかを評価するために、我々は、以下に記載されているような新規の、メカニズムに基づいた長期的なPK-PDモデルを開発した。モデルを用いて、予測された有効性、たとえば、種々の負荷用量とそれに続くその後の種々の維持用量、たとえば、規則的な時間間隔で投与されるレブリキズマブのフラット用量、または種々の低いフラット用量または高いフラット用量、またはレブリキズマブによる治療間隔の増大を含むが、これらに限定されない種々の代替の投薬計画のEASI-75のスコアをシミュレートした。
【0230】
モデルの開発は、上記に記載されているフェーズII臨床試験Iの遂行の間に収集されていた薬物動態及び有効性の生データから始まった。アトピー性皮膚炎患者におけるレブリキズマブの薬物動態データは、喘息患者及び健常被験者から得られた薬剤濃度(データは示さず)に基づいて開発されたレブリキズマブの集団PKモデルから行った予測に一致した。このことは、以下に記載されているようなアトピー性皮膚炎のPK-PDモデルの開発を円滑にするレブリキズマブの集団PKモデルの使用を可能にした。
【0231】
レブリキズマブのアトピー性皮膚炎のPK-PDモデルは、臨床試験Iに由来する12週までのEASIスコア及び以前確立されたレブリキズマブの集団PKモデルに基づいて開発された。PDの反応効果はEASIスコアの低下だった。プラセボ及び/またはTCSの投与の効果もモデルに組み込んだ。共変量解析は、ベースラインEASIスコアが、組織の修復速度定数であるKout及びプラセボ/TCS効果であるEconの双方にて有意な共変量であることを示唆した。最終的なモデルを図5に示し、モデルのパラメータを表4にて提供する。
表4.レブリキズマブのアトピー性皮膚炎モデルのパラメータ
信頼区間は1000のブートストラップ標本について推定したパラメータの2.5番目と97.5番目の百分位数である;記号の説明のための明細を描いている図5を参照のこと。
【0232】
モデルには、特定の仮定、たとえば、曝露・反応の関係性は薬剤濃度すべてにわたって類似するという仮定が含まれるが、我々はそれが試験1で観察された生のEASIスコアにおける変化を適正に記述することを見いだした。さらに、モデルは、この目的について設計されていないにもかかわらず、試験1から12週目までのEASI-50、EASI-75及びEASI-90の応答を非常に上手く予測することができた。この結果は、モデルについて追加の検証を提供し、その精度及びロバスト性で我々の信頼を高めた。
【0233】
我々は最終的なモデルを用いて多数の投薬計画をシミュレートし、次いで治療の間での種々の時点でのEASIスコアを予測した。シミュレートした投薬計画を以下の表5にて提供する。シミュレーションはすべて24週の期間にわたって行った。4週間ごとに1回投与する125mgの投薬計画を参照点として用いてシミュレートした結果のすべてを比較した。表5に示すように、シミュレートした投薬計画は大まかに4つの群に分類された:第1群の計画は負荷用量と維持用量の並びであり、第2群の計画は4週間ごとに1回投与される250mgに基づく並びであり、第3群の計画は8週間ごとに1回投与される250mgに基づく並びであり、第4群の計画は4週間ごとに1回投与される37.5mgに基づく低投薬の並びだった。
表5.レブリキズマブADモデルでシミュレートした投薬計画
【0234】
第1群のレブリキズマブの投薬計画のそれぞれで経時的にEASI-75を達成している患者のシミュレーションを図6に示す。PK-PDモデルは、負荷用量の並びはすべて4週間ごとに1回の125mgの投薬計画だけに対するEASI-75の応答で小さな改善を生じることを予測した。この改善は、曲線の真ん中部分(たとえば、56~84日目)で最も明らかであり、その後の時点(140~168日目)ではほとんど薄められた。
【0235】
第2群のレブリキズマブの投薬計画のそれぞれで経時的にEASI-75を達成している患者のシミュレーションを図7に示す。PK-PDモデルは、4週間ごとに1回の250mgに基づく計画は、曲線の真ん中部分の間で4週間ごとに1回の125mgの計画からの分離(すなわち、EASI-75での改善)を示し始め、分離はその後の時点で維持されると予測した。
【0236】
第3群のレブリキズマブの投薬計画のそれぞれで経時的にEASI-75を達成している患者のシミュレーションを図8に示す。PK-PDモデルは、8週間ごとに1回投与される250mgの計画は4週間ごとに1回投与される125mgの計画に匹敵する有効性を有し、薬剤のない週(たとえば、12週目及び20週目)に軽い改善があり、次の投薬がある(たとえば、8週目及び16週目)前の週でやや悪い結果があると予測した。
【0237】
第4群のレブリキズマブの投薬計画のそれぞれで経時的にEASI-75を達成している患者のシミュレーションを図9に示す。PK-PDモデルは、4週間ごとに1回投与される37.5mgの計画は4週間ごとに1回投与される125mgの投薬計画よりも有効性が低いと予測した。
【0238】
要約すれば、レブリキズマブのアトピー性皮膚炎PK-PDモデルは、4週間ごとに1回投与された37.5mgのレブリキズマブの用量を含む投薬計画を例外として、「4週間ごとに1回」のレブリキズマブの投薬計画はすべて、4週間ごとに1回投与される125mg(上記に記載されているフェーズII臨床試験Iで臨床的に調べられた用量)に比べて同等またはさらに良好なEASI-75のスコアを提供すると予測した。これらのシミュレーションは4週間ごとに1回投与される37.5mgのレブリキズマブがEASI-75のスコアによって評価すると他のシミュレートした投薬計画のいずれかよりも有効性が低いと予測されることを示した。
【0239】
レブリキズマブのアトピー性皮膚炎PK-PDモデルはまた、最良のEASI-75の成績は16~24週間の治療期間での4週間ごとに1回投与される250mgのレブリキズマブ(負荷用量の有無にかかわらず)で得られることも予測した。モデルはまた、負荷用量を含めることが早期の時点で(たとえば、8週または12週で)EASI-75の成績を改善するが、負荷用量を欠く投薬計画に比べたこの改善の影響は経時的に(たとえば、20週または24週で)低下することも予測した。従って、負荷用量を含めることは治療の経過での早期に改善された治療効果を提供してもよい。最終的に、モデルは8週間ごとに1回の250mgのレブリキズマブの投与が4週間ごとに1回の125mgのレブリキズマブの投与で予測されたEASI-75の成績に類似するEASI-75の改善を生じることを予測した。「250mgのq8w投薬計画」についてのEASI-75における全体的な改善は、250mg用量が投与されない週(たとえば、4週)の間に幾分高く、250mg用量の投与(たとえば、8週)の直前の「125mgのq4w投薬計画」よりもやや低いと予測された。従って、ここに記載されているモデル化の結果は、多数のレブリキズマブ投薬計画がアトピー性皮膚炎患者に治療効果を提供すると予測されることを実証している。
【0240】
実施例4:臨床試験II
臨床試験IIは、TCSによって不適切に管理されている、持続性の中程度から重度のADの成人患者(18~75歳)におけるレブリキズマブ単剤療法の安全性及び有効性を評価するためのフェーズII無作為非盲検試験であった。試験IIのスキームを図10に提供する。
【0241】
スクリーニング
試験に登録するのに適格な患者は以下に記載されている適格性基準をすべて満たす必要があった。
【0242】
試験対象患者基準には、以下:年齢18~75歳;Hanifin/Rajka基準によって診断され、スクリーニング時に少なくとも1年間症状があるAD;スクリーニング時にRajka/Langeland基準によって等級付けしたとき中程度から重度のAD;ADの治療のための少なくとも毎日のTCS及び定期的な皮膚軟化剤の≧1ヵ月(スクリーニング来診に先立って3ヵ月以内)の治療投薬計画に不適切な応答の既往歴;スクリーニング時且つ導入期間の終了時(来診3)にて≧14のEASIスコア、スクリーニング時且つ導入期間の終了時(来診3)にて≧3(5点尺度)のIGAスコア;スクリーニング時体表面積(BSA)の≧10%のADの関与;及びスクリーニング時≧3の掻痒VASスコア(SCORADの一部として評価された);治療期間への参加の時点(1日目)でのプロトコールが指定した2週間の導入期間のTCS投薬計画(14日のうち少なくとも10日)の順守が含まれた。
【0243】
臨床試験除外基準には、以下:レブリキズマブを含む抗IL-13または抗IL-4/IL-13療法の過去及び/または現在の使用;スクリーニングに先立って4週間以内または治験薬の5半減期以内のいずれか長い方の治験薬の使用;生物製剤に対する重度のアレルギー反応もしくはアナフィラキシー反応またはレブリキズマブ注射の成分に対する既知の過敏症;TCSまたは試験で使用されるTCS製品に含有される他の成分に対する過敏症;導入期間に先立って7日以内の植物療法、伝統的なもしくは非伝統的な植物薬、必須脂肪酸または鍼治療を含むが、これらに限定されない補完医療、代替医療もしくはホメオパシー医療の使用、または試験中でのそのような医療の必要性;<40kgの体重または>38kg/mの肥満度指数;T細胞リンパ腫またはアレルギー性接触皮膚炎を含むが、これらに限定されない他の皮膚の状態の証拠;スクリーニング時(-15日目)の活発な皮膚感染の証拠または進行中の治療(局所抗生剤を含む);特定の感染;最近または活発な(6ヵ月以内)の寄生虫感染、特に回虫(たとえば、Ascaris,Ancylostoma)、扁形動物(たとえば、Schistosoma)感染の既往歴、またはリステリア感染の既往歴;来診1に先立って12ヵ月以内に治療を必要とする活動型の結核;急性または慢性の肝炎または既知の肝硬変の証拠;HIV感染を含む既知の免疫不全;スクリーニング時点でのTCI(局所カルシニューリン阻害剤)の使用;スクリーニング来診の前4週間以内での日焼け室/日焼けサロンの使用;スクリーニングの3ヵ月以内でのアレルゲン免疫療法;ベースライン来診(1日目)に先立って4週間以内での弱毒生ワクチンの接種;試験の間での計画された手術;スクリーニングECGまたは臨床検査(血液学、血清化学及び尿分析)における臨床的に有意な異常;スクリーニングの間での正常の上限(ULN)×≧2.0のAST、ALTまたは総ビリルビンの上昇;皮膚の基底細胞癌または有棘細胞癌または原位置での癌腫を含む既知の現在の悪性腫瘍または潜在的な悪性腫瘍についての現在の評価;子宮頸癌、非黒色腫皮膚癌;ステージIの子宮癌の適切に治療された原位置での癌腫を除く、スクリーニングに先立って5年以内の悪性腫瘍の既往歴;ならびに治療にもかかわらず管理されない他の臨床的に有意な内科疾患が含まれた。
【0244】
導入期間
スクリーニングに続いて適格な患者は2週間の導入期間(-14日目~-1日目)に入った。導入期間の後、患者はその試験前のTCS(及び他のADの薬物)の使用を中止し、以下で要点を示すようなプロトコールが指定した局所療法投薬計画を始めた。導入期間の第1日目(-14日目)に患者は導入期間全体を通して使用するためのTCSを受け取った。具体的には、患者は身体での使用にためのトリアムシノロンアセトニド0.1%のクリームと、顔面及び間擦部位での使用のためのヒドロコルチゾン2.5%のクリームとを受け取った。患者は少なくとも1日1回乾燥皮膚表面に皮膚軟化剤を塗布し、1日2回活動性皮膚病変にクリームを塗布し、冒されていない領域にクリームを塗布しないように指導された。
【0245】
導入期間の終了時、疾患重症度の評価を行い、EASI及びIGA(上記の試験対象患者基準を参照のこと)によって評価したとき、中程度から重度のADを示し続けている患者が試験薬(レブリキズマブ)またはTCSのみに対する無作為化について適格だった。
【0246】
治療期間(1~12週目)
導入期間の終了時、プロトコールが指定したTCS投薬計画の順守を示し、適格性基準(上記の試験対象患者基準を参照のこと)を満たし続けた患者を無作為化した。合計約50人の患者を以下の2つの治療群(図10を参照のこと):第1群:合計3回の投与について4週間ごとの(Q4W)皮下注射(SC)によって投与される125mgのレブリキズマブ;及び第2群:TCSクリームのみ、の1つに無作為化した(1:1)。第1群に無作為化された患者はプロトコールが指定したTCS投薬計画を受け入れず、第2群に無作為化された患者は導入期間の間に適用した同じTCS投薬計画を用いてTCSを塗布し続けた(病変皮膚のみに1日2回)。
【0247】
安全性経過観察期間(13~20週目)
治療期間(1~12週目)の間での試験治療を完了した患者はすべて安全性についてさらに8週間(13~20週目)観察された。この安全性経過観察期間の間に、第2群(TCSのみ)の患者は、導入期間及び治療期間の間に指定されたようなプロトコールが指定したTCS投薬計画を適用することをもはや必要とされなかった。代わりに、患者または試験の治験医師によって決定されるように、トリアムシノロンアセトニド0.1%クリーム及び/またはヒドロコルチゾン2.5%クリームが活動性皮膚病変に塗布されてもよい。同様に、治療群1(レブリキズマブ単剤療法)の患者は、患者または試験の治験医師によって決定されるように、トリアムシノロンアセトニド0.1%クリーム及び/またはヒドロコルチゾン2.5%クリームを活動性皮膚病変のみに使用してもよい。患者はすべて乾燥皮膚に1日少なくとも1回皮膚軟化剤を塗布し続けるように勧められた。
【0248】
局所カルシニューリン阻害剤(TCI)はこの試験の間のどんな時も許されなかった。スクリーニングの時点でTCIを使用していた患者は、彼らが試験の間TCIを使用することを止めるのに同意し、且つ治験医師の意見でTCIの使用を止め、プロトコールで指定されたTCSクリームを代わりに使用することが安全であれば、試験に参加することを許された。
【0249】
レブリキズマブの用量及びスケジュールについての論理的根拠
試験IIのためのレブリキズマブの用量及びスケジュールについての論理的根拠は試験Iについての上記に記載されている論理的根拠に類似した。このフェーズII試験では1つのレブリキズマブ用量投薬計画(125mgのQ4W[第1群])を調べた。125mgのQ4W用量投薬計画は潜在的に有効な用量として含まれ、喘息におけるレブリキズマブの極めて重要なフェーズIII成人試験(LAVOLTA I及びII)にて検討された最高用量投薬計画だった。喘息とADの間でのIL-13の役割及び薬物動態の予想される類似性を考えると、この用量はAD患者で有効であってもよいと仮定された。
【0250】
しかしながら、上記に記載されているように、LAVOLTA I及びIIの試験の結果は食い違った。2016年9月5日にオンラインで公開したdx(ドット)doi(ドット)org(スラッシュ)S2213-2600(16)30265-Xで入手可能なHanania,et al.,Lancet Respir Med.,2016。薬物動態及び薬物力学の結果は以前記載されたフェーズII試験に由来するものに一致したが、双方の試験が明瞭な用量・応答を示せなかったということは、薬剤曝露が類似しており、IL-13経路が阻害されたことを示している。Hanania,et al.,2016、上記。従って、本明細書に記載されている投薬計画ではレブリキズマブがアトピー性皮膚炎患者に臨床的に意味のある利益を提供するかどうかは不明確であった。
【0251】
フェーズII試験の主要評価項目は12週目で評価した。12週目での血清レブリキズマブの平均トラフ濃度は125mgのQ4Wを受け入れている患者について定常状態の値の90%を超えると予想された。加えて、125mgQ4Wの用量については、12週目で予測されるトラフ濃度はレブリキズマブがフェーズIIの喘息臨床試験で生物活性を実証した範囲の十分に範囲内にあった。
【0252】
対照群についての論理的根拠
治療群2の患者はTCSクリームのみを受け入れたので、実薬対照として役立った。この治療群をレブリキズマブSCの対照として使用して、TCSと比べた単剤療法としてのレブリキズマブの安全性及び有効性を適正に評価した。
【0253】
TCSの使用は臨床実践における標準治療なのでTCS実薬対照群が含まれた(欧州皮膚科・性病科学会議[EADV]2009年の指針;Darsow,et al.,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.2010;24:317-28;米国皮膚科学会2014年の指針;Eichenfield,et al.,J.Am.Acad.Dermatol.2014:71(l):116-32)。
【0254】
有効性結果判定法
この試験についてのTCSのみと比べたレブリキズマブ単剤療法の探索的な有効性結果判定法は以下のとおりだった、順に:(i)12週目でのベースラインEASIからの50%または75%の低下(EASI50/75)を伴う患者のパーセント(EASI-50及びEASI-75はベースラインと比べた12週目でのEASIスコアのそれぞれ50%及び75%の低下として定義した);(ii)12週目でのEASIスコアのベースラインからのパーセント変化及び絶対的な変化;(iii)12週目で0または1のIGAスコアを達成している患者のパーセント;(iv)12週目でのIGAのベースラインからの≧2点の低下を伴う患者のパーセント;(v)12週目でのIGAのベースラインからの絶対的な変化;(vi)12週目で0または1のIGSAスコアを達成している患者のパーセント;(vii)12週目でのIGSAのベースラインからの≧2点の低下を伴う患者のパーセント;(viii)12週目でのIGSAのベースラインからの絶対的な変化;(ix)12週目でのSCORADのベースラインからのパーセント変化及び絶対的な変化;(x)12週目でのSCORADのベースラインからの50%または75%の低下(SCORAD-50/75)を伴う患者のパーセント;(xi)12週目での冒された合計パーセント体表面積(BSA)のベースラインからのパーセント変化;(xii)12週目での掻痒VAS(SCORADの一部として評価される)によって評価されたときの掻痒のベースラインからの絶対的な変化及びパーセント変化;(xiii)ベースラインから12週目までの病勢増悪の数;ならびに(xiv)12週目の前にプロトコールが指定しないTCSを受け入れた患者のパーセント。
【0255】
安全性結果判定法
この試験についての安全性結果判定法は以下のとおりだった:(i)TCSのみと比べた単剤療法として使用したレブリキズマブによる12週目で治療で出現した有害事象の発生;(ii)ベースラインにて及び試験中でのヒト抗薬物抗体(ATA)の発生;(iii)試験全体にわたる皮膚及び他の臓器系の感染の頻度及び重症度;皮膚感染の臨床上の定義は以下のとおりだった:感染の診断は、皮疹の部位での蜂蜜色の痂皮、漿液性分泌物、膿疱、または疼痛の存在を含むが、これらに限定されない、及びAD疾患における発熱または増悪(上記で定義されている)を含む全身性の特徴に関連してもよい治験医師の臨床評価に基づいた;(iv)治験医師によって評価されるような試験薬の中断に続く疾患反跳の発生;疾患反跳の臨床上の定義は、治療を開始する前よりも大きい重症度レベルまでの治療法の中止後の疾患重症度の有意な悪化であった(Hijnen,et al.,J.Eur.Acad.Dermatol.Venereol.2007;21(1)85-9);(v)ベースラインから12週目までの注射部位反応の発生;ならびに(vi)ベースラインから12週目までの特定関心事の有害事象を含む治療で出現した有害事象の頻度及び重症度。
【0256】
結果
臨床試験IIの重要な有効性の成績は以下の表6に要約する。データは12週間の試験期間にわたるレブリキズマブ単剤療法は有効だったことを示している。EASI-75及びEASI-90の成績はレブリキズマブ治療群とTCS治療群の間で類似していた一方で、IGA、SCORAD及び掻痒の成績はTCS群よりもレブリキズマブ群で幾分低かった。
表6.12週目での重要な有効性の成績
ベースラインの掻痒VAS≧3の患者にて
【0257】
抗IL-13抗体(レブリキズマブ)のアミノ酸配列
以下の表は、レブリキズマブのCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、及びCDR-L3の領域のアミノ酸配列を、VH、VL、重鎖配列及び軽鎖配列と共に示す。以下の配列表で示し、上記に記載されているように、VH及び重鎖はN末端グルタミンを含んでもよく、重鎖はC末端リシンも含んでもよい。当該技術で周知のように、N末端グルタミン残基はピログルタミン酸を形成することができ、C末端リシン残基は製造過程の間に短縮することができる。
配列表
図1
図2-1】
図2-2】
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
【配列表】
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