(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】高ぬれ性セパレータおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/417 20210101AFI20220107BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20220107BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20220107BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20220107BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20220107BHJP
【FI】
H01M50/417
H01M50/403 A
H01M50/403 B
H01M50/403 Z
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/489
(21)【出願番号】P 2019516040
(86)(22)【出願日】2017-04-13
(86)【国際出願番号】 CN2017080411
(87)【国際公開番号】W WO2017206593
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2019-11-01
(31)【優先権主張番号】201610380478.0
(32)【優先日】2016-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518426387
【氏名又は名称】シャンハイ・エネルギー・ニュー・マテリアルズ・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI ENERGY NEW MATERIALS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】NO.155,NANLU ROAD,PUDONG NEW DISTRICT,SHANGHAI 201399,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】チョン、アレックス
(72)【発明者】
【氏名】シオン、レイ
(72)【発明者】
【氏名】デン、ホングイ
(72)【発明者】
【氏名】ホー、ファンボー
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ウェイチアン
【審査官】藤原 敬士
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-156574(JP,A)
【文献】特開2016-023307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/40 - 50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間のセパレータと、電解質とを含むリチウムイオン電
池であって、前記セパレータは、エチレンコポリマーと、グラフト化ポリオレフィンと、1.0×10
6ないし10.0×10
6の分子量を有する超高分子量ポリエチレンと、0.940ないし0.976g/cm
3の範囲の密度を有する高密度ポリエチレンとを含み、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、前記エチレンコポリマーの含有量が1-5重量部であり、前記グラフト化ポリオレフィンの含有量が0-5重量部であり、
前記電解質が、リン酸リチウム鉄円筒型セル用の電解質であり、
且つ、前記セパレータは、
前記電解質との接触角が20°ないし40°で
ある、リチウムイオン電
池。
【請求項2】
前記セパレータにおいて、前記エチレンコポリマーは、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、エチレン-アクリレートコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、およびエチレン-メチルメタクリレートコポリマーからなる群より選択される1以上である、請求項1に記載の
リチウムイオン電池。
【請求項3】
前記セパレータにおいて、前記グラフト化ポリオレフィンは、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン、アクリル酸グラフト化ポリエチレン、およびグリシジルメタクリレートグラフト化ポリエチレンからなる群より選択される1以上である、請求項1に記載の
リチウムイオン電池。
【請求項4】
前記セパレータにおいて、前記超高分子量ポリエチレンの前記高密度ポリエチレンに対する重量比が1:1ないし1:20である、請求項1に記載の
リチウムイオン電池。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のリチウムイオン電池
に含まれるセパレータの製造方法であって、前記方法は、以下の工程、
(1) グラフト化ポリオレフィンと、エチレンコポリマーと、1.0×10
6ないし10.0×10
6の分子量を有する超高分子量ポリエチレンと、0.940ないし0.976g/cm
3の範囲の密度を有する高密度ポリエチレンと、抗酸化剤と、気孔形成剤とを混合して混合物を形成する工程と、
(2) 押出機によって、前記混合物を押し出してストリップにする工程と、
(3) 有機溶媒によって、前記ストリップを抽出する工程と、
(4) 延伸機によって、抽出されたストリップを延伸してフィルムにする工程と、
(5) 前記フィルムに加熱硬化を施して巻き取り、リチウムイオン電池セパレータを得る工程と
を含み、
前記(1)工程において、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、前記エチレンコポリマーを1-5重量部の量で加え、前記グラフト化ポリオレフィンを0-5重量部の量で加え、前記超高分子量ポリエチレンの前記高密度ポリエチレンに対する重量比が、1:1ないし1:20であり、且つ、
前記セパレータは、
前記リチウムイオン電池電解質との接触角が20°ないし40°であり、
前記リチウムイオン電池電解質は、リン酸リチウム鉄円筒型セル用の電解質である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気化学の分野、特にリチウムイオン電池セパレータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は通常、正極、負極、セパレータ、電解質溶液、および電池ケースから構成される。リチウムイオン電池の構造において、セパレータは鍵となる内部要素の一つである。セパレータの主な機能は、電池の正極と負極とを分離して正極と負極との間の直接接触したがって短絡を防止するようにし、かつ電池の充電および放電中に電解質イオンをスムースに通過させて電流を生じさせることである。さらに、電池の作動温度が異常に上昇したときに、セパレータは電解質イオンの移動チャネルを閉じ、電流を切断して電池の安全を確保する。したがって、セパレータの性能が電池の界面構造および内部抵抗を決定し、電池の容量、サイクルおよび安全性能に直接影響することがわかる。優れた性能をもつセパレータは、電池の総体的な性能を改善するのに重要な役割を果たす。現在、リチウムイオン電池用の市販のセパレータは一般的に、ポリオレフィン多孔質フィルムを用いている。
【0003】
電池セパレータの主要な性能パラメータは、厚さ、気孔率、気孔径、気孔径分布、強度などを含む。電池の内部抵抗を低減させるためには、セパレータの厚さができるだけ薄いことを要するように、電極の面積ができるだけ大きくなければならない。電池セパレータ自体は電気伝導性ではないけれども、導電性イオンがセパレータを通して移動することが必要である。このことは、セパレータ自体が、一定の数の気孔、すなわち気孔率を有することを要する。しかし、過剰な気孔率はセパレータの低い強度をもたらし、それによって電池の総体的な信頼性に影響する。そのうえ、セパレータへの電解質のぬれ性が、イオン移動の抵抗に直接影響する。ぬれ性がよいほど、イオンがセパレータを通して移動する抵抗が小さくなり、電池の内部抵抗が小さくなる。一般的に、気孔径がそれほど大きくない場合には、気孔径分布が均一であるほど、電解質のぬれ性が良好になる。セパレータは、製造および電池部品の組み立ての間に延伸されることを要し、組み立てが完了した後、セパレータが電極材料によって穿刺されていないことを保証することも必要である。したがって、セパレータは、十分な引張強度だけでなく、一定の突刺し強度も必要とする。
【0004】
事実、同じ厚さをもつセパレータが、一定の気孔率、気孔径および気孔径を有する場合、電解質溶液に対するその表面のぬれ性は主に、セパレータそれ自体の材料に依存する。普通のポリオレフィンセパレータについては、それらの表面は主に非極性基を含み、リチウムイオン電池電解質に対して一般的なぬれ性を示す。ポリオレフィンセパレータの表面にセラミック粒子をコートした後には、セラミック粒子の多大な比表面積が電解質を吸着するのを助け、それによってポリオレフィンセパレータの表面のぬれ性を改善する。しかし、コートされたセラミック粒子が剥離されれば、ポリオレフィンセパレータ基材のぬれ性はいまだに本来の性質を維持し、コートされたセラミック粒子がセパレータの表面で密集しすぎて充填されれば、セパレータの本来の気孔率が塞がれるかもしれず、これはセパレータの正常な使用に影響するかもしれない。したがって、いつまでも安定で改善されたぬれ性を得るためには、ポリオレフィンセパレータの基材の性質を改善することが必要である。
【0005】
よって、この分野においては、高ぬれ性のポリマーセパレータを提供するという必要性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、高ぬれ性リチウムイオン電池セパレータを提供することをめざしている。
【0007】
第1の態様では、本発明は、リチウムイオン電池セパレータであって、前記セパレータは、エチレンコポリマーと、グラフト化ポリオレフィンと、1.0×106ないし10.0×106の分子量を有する超高分子量ポリエチレンと、0.940ないし0.976g/cm3の範囲の密度を有する高密度ポリエチレンとを含み、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、前記エチレンコポリマーの含有量が1-5重量部であり、前記グラフト化ポリオレフィンの含有量が0-5重量部である、リチウムイオン電池セパレータを提供する。
【0008】
前記セパレータは、リチウムイオン電池電解質との接触角が20°ないし40°、好ましくは21°ないし30°、より好ましくは22°ないし27°である。
【0009】
好ましい実施形態において、前記セパレータは、突刺し強度が540グラム以上である。
【0010】
別の好ましい実施形態において、前記セパレータは、厚さが9ないし35μm、ミクロ気孔径が0.3ないし0.65μm、および気孔率が40ないし50%である。
【0011】
前記エチレンコポリマーは、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、エチレン-アクリレートコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、およびエチレン-メチルメタクリレートコポリマーからなる群より選択される1以上である。
【0012】
前記グラフト化ポリオレフィンは、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン、アクリル酸グラフト化ポリエチレン、およびグリシジルメタクリレートグラフト化ポリエチレンからなる群より選択される1以上である。
【0013】
別の好ましい実施形態において、前記エチレンコポリマーは密度が0.936ないし0.950g/cm3であり、前記グラフト化ポリオレフィンは密度が0.950ないし1.13g/cm3である。
【0014】
別の好ましい実施形態において、前記超高分子量ポリエチレンの前記高密度ポリエチレンに対する重量比は1:1ないし1:20、より好ましくは1:2ないし1:10、最も好ましくは1:5ないし1:10である。
【0015】
別の好ましい実施形態において、前記超高分子量ポリエチレンは、分子量が2.0×106ないし8.0×106、より好ましくは3.5×106ないし5.0×106であり、前記高密度ポリエチレンは、密度が0.940ないし0.960g/cm3、より好ましくは0.950ないし0.960g/cm3である。
【0016】
別の好ましい実施形態において、前記セパレータはさらに抗酸化剤を含み、前記抗酸化剤の含有量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、0.5-20重量部、好ましくは1.5-16重量部、最も好ましくは2-12重量部である。
【0017】
前記抗酸化剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、ホスファイト、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N'-ビス(β-ナフチル)-p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、およびトリフェニルホスファイトの1以上であってもよい。
【0018】
第2の態様において、本発明は、上述した本発明によるセパレータの製造方法であって、前記方法は、以下の工程、
(1) グラフト化ポリオレフィンと、エチレンコポリマーと、1.0×106ないし10.0×106の分子量を有する超高分子量ポリエチレンと、0.940ないし0.976g/cm3の密度を有する高密度ポリエチレンと、抗酸化剤と、気孔形成剤とを混合して混合物を形成する工程と、
(2) 押出機によって、前記混合物を押し出してストリップにする工程と、
(3) 有機溶媒によって、前記ストリップを抽出する工程と、
(4) 延伸機によって、抽出されたストリップを延伸してフィルムにする工程と、
(5) 前記フィルムに加熱硬化を施して巻き取り、リチウムイオン電池セパレータを得る工程と
を含む製造方法を提供する。
【0019】
好ましい実施形態において、前記エチレンコポリマーの含有量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、1-5重量部、好ましくは1-3重量部である。
【0020】
別の好ましい実施形態において、前記グラフト化ポリオレフィンの含有量は0-5重量部、より好ましくは0-3重量部である。
【0021】
別の好ましい実施形態において、前記超高分子量ポリエチレンの前記高密度ポリエチレンに対する重量比は、1:1ないし1:20、より好ましくは1:2ないし1:10、最も好ましくは1:5ないし1:10である。
【0022】
別の好ましい実施形態において、前記気孔形成剤の量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、500ないし2000重量部、好ましくは700ないし1800重量部、最も好ましくは800ないし1600重量部である。前記気孔形成剤は、天然鉱物油、C6-15アルカン、C8-15脂肪族カルボン酸、C1-4アルキルC8-15脂肪族カルボキシレート、およびC2-6ハロゲン化アルキルの1以上であってもよい。
【0023】
前記抗酸化剤の量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、0.5-20重量部、好ましくは1.5-16重量部、最も好ましくは2-12重量部である。前記抗酸化剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、ホスファイト、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N'-ビス(β-ナフチル)-p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、およびトリフェニルホスファイトの1以上であってもよい。
【0024】
別の好ましい実施形態において、抽出に用いられる前記有機溶媒は、ジクロロメタン、n-ヘキサン、エチルアセテートまたはアセトンから選択される。
【0025】
第3の態様において、本発明は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間のセパレータと、電解質とを含み、前記セパレータが本発明の第1の態様に記載したセパレータである、リチウムイオン電池を提供する。
【0026】
第4の態様において、本発明は、リチウムイオン電池セパレータの製造のためのエチレンコポリマーBの使用であって、前記エチレンコポリマーBは、エチレン-ビニルアセテートコポリマー、エチレン-アクリレートコポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、エチレン-アクリル酸コポリマー、およびエチレン-メチルメタクリレートコポリマーからなる群より選択される1以上である使用を提供する。
【0027】
したがって、本発明は、高ぬれ性ポリマーセパレータを提供する。
【0028】
実施形態
ここにおいて使用される場合、「リチウムイオン電池」はリチウム二次電池、リチウムイオン二次電池などを含み、前記リチウムイオン二次電池はポリマーリチウムイオン二次電池を含む。
【0029】
本発明において、特記しない限り、数値範囲「a-b」は、aとbとの間の任意の実数の組合せの省略表現を意味し、ここでaおよびbは両方とも実数である。たとえば、「0-5」という数値範囲は、「0-5」の間のすべての実数がここに列挙されたことを意味し、「0-5」はこれらの数値の組合せの省略表現にすぎない。
【0030】
本発明において、特記しない限り、整数の数値範囲「a-b」は、aとbとの間の任意の整数の組合せの省略表現を意味し、ここでaおよびbの両方は整数である。たとえば、整数の数値範囲「1-N」は、1, 2...N, を意味し、ここでNは整数である。
【0031】
特記しない限り、本明細書において使用される場合の用語「a」または「an」は、「少なくとも1」を意味する。
【0032】
ここにおいて開示されている「範囲」は、最小限および最大限の形式にある。それは、それぞれ、1以上の最小限、および1以上の最大限であるかもしれない。所与の範囲は、最小限および最大限を選択することによって定義される。選択された最小限および最大限は、特別の範囲の境界を定義する。このように定義されうるすべての範囲は、包含的で組合せ可能であり、すなわち任意の最小限を任意の最大限と組合せて範囲を作ることができる。たとえば、60-120および80-110という範囲を特定のパラメータについて列挙すると、これらは60-110および80-120という範囲をも含むものと理解すべきものとする。また、最小範囲の値1および2を列挙したならば、かつ最大範囲の値3, 4および5を列挙したならば、下記の範囲: 1-3, 1-4, 1-5, 2-3, 2-4,および2-5がすべて含まれる。
【0033】
広範で集中的な研究の後、発明者は、通常のセパレータに要求される成分に加えて、エチレンコポリマーを加えたならば、高ぬれ性電池セパレータを得ることができ、前記セパレータは、かなり改善されたぬれ性を有する一方、従来のポリマーセパレータの良好な気孔率、気孔径、気孔径分布およびフィルム強度を有することを見出した。
【0034】
セパレータ
本発明によって提供されるリチウムイオン電池セパレータは、高ぬれ性電池セパレータである。前記セパレータは、リチウムイオン電池電解質との接触角が、20°ないし40°、好ましくは21°ないし30°、より好ましくは22°ないし27°である。同時に、前記セパレータは、他の優れた性質を維持することができ、たとえば、前記セパレータは、厚さが9ないし35μm、ミクロ気孔径が0.3ないし0.65μm、および気孔率が40ないし50%である。
【0035】
本発明による電気化学デバイス用セパレータを製造するための原材料は以下を含んでいてもよい。
【0036】
(a) 1.0×106ないし10.0×106の分子量を有する超高分子量ポリエチレンと、0.940-0.976g/cm3の範囲の密度を有する高密度ポリエチレンとの混合物であって、前記超高分子量ポリエチレンの前記高密度ポリエチレンに対する重量比が1:1ないし1:20である混合物;
(b) 前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、5-2000重量部の気孔形成剤;
(c) 前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、0.5-20重量部の抗酸化剤;
(d) 前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、0-5重量部のグラフト化ポリオレフィン;および
(e) 前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、1-5重量部のエチレンコポリマー。
【0037】
本発明の一実施形態において、前記超高分子量ポリエチレンは、分子量が2.0×106ないし8.0×106、好ましくは3.5×106ないし5.0×106である。
【0038】
本発明の一実施形態において、前記高密度ポリエチレンは、密度が0.940-0.960g/cm3、好ましくは0.950-0.960g/cm3である。
【0039】
本発明の一実施形態において、前記超高分子量ポリエチレンの前記高密度ポリエチレンに対する重量比は1:2ないし1:10、好ましくは1:5ないし1:10である。
【0040】
本発明の一実施形態において、前記グラフト化ポリオレフィンの含有量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、0-5重量部、好ましくは0-3重量部である。
【0041】
本発明の好ましい実施形態において、前記エチレンコポリマーの含有量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、1-3重量部である。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記エチレンコポリマーは密度が0.936-0.950g/cm3であり、前記グラフト化ポリオレフィンは密度が0.950-1.13g/cm3である。
【0043】
本発明の一実施形態において、前記気孔形成剤は、天然鉱物油、C6-15アルカン、C8-15脂肪族カルボン酸、C1-4アルキルC8-15脂肪族カルボキシレート、およびC2-6ハロゲン化アルキルの1以上であってもよい。前記気孔形成剤の量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、700ないし1800重量部、好ましくは800ないし1600重量部である。
【0044】
本発明の一実施形態において、前記抗酸化剤は、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)、ジブチルヒドロキシトルエン、ホスファイト、tert-ブチルヒドロキノン、n-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-フェニル)-プロピオネート、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、2-tert-ブチル-6-メチルフェノール、N,N'-ビス(β-ナフチル)-p-フェニレンジアミン、ジラウリルチオジプロピオネート、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、およびトリフェニルホスファイトの1以上であってもよい。前記抗酸化剤の量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、1.5-16重量部、好ましくは2-12重量部である。
【0045】
セパレータの製造方法
本発明による電気化学デバイス用セパレータの製造方法は下記の工程を含む。
工程1, 組成に従って上記の原材料を混合して混合物を形成する;
工程2, 押出機によって、前記混合物を押し出してストリップにする;
工程3, 有機溶媒によって、前記ストリップを抽出する;
工程4, 延伸機によって、抽出されたストリップを延伸してフィルムにする;
工程5, 前記フィルムに加熱硬化を施して巻き取り、本発明によるリチウムイオン電池セパレータを得る。
【0046】
上記工程1において、前記超高分子量ポリエチレンの前記高密度ポリエチレンに対する重量比は、1:1ないし1:20、好ましくは1:2ないし1:10、最も好ましくは1:5ないし1:10である。
【0047】
上記工程1において、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、前記エチレンコポリマーの量は、1-5重量部、好ましくは1-5重量部であり、前記グラフト化ポリオレフィンの量は0-5重量部、好ましくは0-3重量部である。
【0048】
上記工程1において、前記気孔形成剤の量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、500ないし2000重量部、好ましくは700ないし1800重量部、最も好ましくは800ないし1600重量部である。
【0049】
上記工程1において、前記抗酸化剤の含有量は、前記超高分子量ポリエチレンおよび前記高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、0.5-20重量部、好ましくは1.5-16重量部、最も好ましくは2-12重量部である。
【0050】
上記工程1において、混合は、この分野における通常の方法、たとえば、限定されないが、撹拌、ボールミリング、超音波分散などによって行うことができる。
【0051】
上記工程2において、本発明の一実施形態では、前記混合物を二軸押出機に供給し、前記二軸押出機内において、150℃超(好ましくは170-180℃)で、超高分子量ポリエチレンと、高密度ポリエチレンと、エチレンコポリマーと、任意のグラフト化ポリオレフィンと、抗酸化剤とを、気孔形成剤中に連続的に溶解させた後、前記二軸押出機によって(150-250rpmの速度で)連続的に押し出す。押出混合物を(スリット)ダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出し、75-85℃でキャストしてストリップにする。
【0052】
上記工程3において、前記ストリップから前記気孔形成剤を除去するために、抽出を用いる。抽出に用いられる有機溶媒は、ジクロロメタン、n-ヘキサン、エチルアセテート、またはアセトンから選択される。
【0053】
上記工程4において、抽出されたストリップを二方向延伸機に110-130℃で供給し、延伸してフィルムにする。好ましい実施形態において、フィルムに二次抽出を施し、二次抽出では一般的に、一次抽出で用いたのと同じ有機溶媒を用いる。
【0054】
上記工程5において、前記フィルムを110-130℃で10-20分間加熱硬化し、フィルムを15-25m/分の速度で巻き取る。
【0055】
セパレータの使用
本発明によるセパレータは、リチウムイオン電池およびその製造に用いることができる。リチウムイオン電池は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間の本発明のセパレータと、電解質とを含む。
【0056】
この分野における通常の電解質を用いてもよく、たとえば、限定されないが、電解質はアルキルカーボネート有機溶媒を含む。
【0057】
本発明において上で述べた特徴または実施例において述べた特徴を、任意の組合せで用いてもよい。明細書に記載したすべての特徴を任意の形態の組成物との組合せで用いることができ、明細書に記載した種々の特徴を、同じ、等しいまたは類似の目的を提供する任意の代替的な特徴によって置き替えることができる。したがって、特記しない限り、記載した特徴は、等価なまたは類似の特徴の一般的な例にすぎない。
【0058】
本発明の主要な特徴は、以下のとおりである:
本発明によるセパレータは、高い電解質ぬれ性、ならびに改善した気孔率、気孔径、気孔径分布およびフィルム強度を有する。
【0059】
本発明をさらに、特定の例との組合せで下記に説明する。これらの例は、本発明を説明するためのみに用いられるが、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解されるべきである。具体的な条件を特定しない、下記の実施例における実験方法は一般的に、通常の条件下または製造業者によって推奨される条件下で行われる。すべてのパーセンテージ、比、割合、または部は、特記しない限り、重量に基づく。
【0060】
本発明において、体積中のパーセント重量は当業者によく知られており、たとえば、100ml溶液中の溶質の重量をいう。
【0061】
特記しない限り、ここにおいて用いられるすべての専門的および科学的な用語は、この分野において用いられるものと同じ意味を有する。また、記載したのと類似のまたは等価な任意の方法または材料が本発明の方法において用いられるであろう。ここにおいて記載した好ましい実施形態および材料は、説明の目的のみのためである。
【0062】
実験方法
1. 厚さの測定
Mahr Inc.、ドイツからの膜厚計1216を用いることによって、GB/T6672-2001、プラスチックフィルムおよびシートの厚さの測定方法に従って、厚さを測定する。
【0063】
2. 抵抗の測定
マルチメータを用いてセパレータ上で10cm離れた二点で抵抗を測定し、採用した結果は異なる測定点での10の測定値の平均である。
【0064】
3. 透気度の測定
ガーレーデンソメータ4110を用いることによって、GB/T1037、プラスチックフィルムおよびシートの水蒸気透気度の試験方法に従って、透気度を測定する。
【0065】
4. 気孔率の測定
Quantachrome Inc.から入手できるPoreMaster-33、自動水銀ポロシメータを用いることによって、気孔率を測定する。
【0066】
5. 気孔径の測定
UV-3200ラージスクリーン走査型UV分光光度計を用いることによって気孔径を測定する。
【0067】
6. 接触角の測定
Kruss Inc.、ドイツから入手できるDSA100、ビデオ接触角分析装置を用いることによってリチウムイオン電池電解質との接触角を測定する。測定に用いる電解質は、リン酸リチウム鉄円筒型セル用の電解質である。
【0068】
7. 突刺し強度の測定
Shanghai QingJi Corporationから入手できる万能試験機QJ210Aを用いることによって、GB/T 2679.7、板紙の突刺し強度に従って、突刺し強度を測定する。
【0069】
8. 引張強度の測定
Shanghai QingJi Corporationから入手できる万能試験機QJ210Aを用いることによって、ASTM d882-2002、薄いプラスチックシートの引張特性のための標準試験方法に従って、引張強度を測定する。
【0070】
下記の実施例において、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレンは0.956g/cm3の密度を有し、エチレン-ビニルアセテートコポリマーおよびエチレン-アクリル酸コポリマーは0.946g/cm3の密度を有する。
【0071】
比較例1
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、9.6gのマレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0072】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤およびマレイン酸無水物グラフト化ポリエチレンを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0073】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得て、その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0074】
【0075】
実施例1
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、9.6gのエチレン-ビニルアセテートコポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0076】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤およびエチレン-ビニルアセテートコポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0077】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得た。その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0078】
【0079】
実施例2
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、4.8gのマレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン、4.8gのエチレン-ビニルアセテートコポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0080】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレンおよびエチレン-ビニルアセテートコポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0081】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得た。その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0082】
【0083】
実施例3
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、3.2gのマレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン、6.4gのエチレン-ビニルアセテートコポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0084】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレンおよびエチレン-ビニルアセテートコポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0085】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得た。その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0086】
【0087】
実施例4
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、6.4gのマレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン、3.2gのエチレン-ビニルアセテートコポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0088】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレンおよびエチレン-ビニルアセテートコポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0089】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得た。その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0090】
【0091】
実施例5
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、3.2gのマレイン酸無水物グラフト化ポリエチレン、6.4gのエチレン-アクリル酸コポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0092】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤、マレイン酸無水物グラフト化ポリエチレンおよびエチレン-アクリル酸コポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0093】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得た。その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0094】
【0095】
比較例2
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0096】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、および抗酸化剤を、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0097】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得て、その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0098】
【0099】
比較例3
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、16.0gのエチレン-ビニルアセテートコポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0100】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤、およびエチレン-ビニルアセテートコポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0101】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得て、その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0102】
【0103】
比較例4
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、32.0gのエチレン-ビニルアセテートコポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0104】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤、およびエチレン-ビニルアセテートコポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0105】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得て、その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0106】
【0107】
比較例5
220gの高密度ポリエチレン(0.956g/cm3の密度を有する)、100gの超高分子量ポリエチレン(5.0×106の分子量を有する)、6.4gのn-オクタデシル-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート(抗酸化剤)、3.2gのトリエトキシビニルシラングラフト化ポリエチレン、6.4gのエチレン-ビニルアセテートコポリマー、および2200gの鉱物油を、連続混合仕込みケトルに供給し、50rpmの速度で撹拌して原材料を均一に混合した。
【0108】
混合物を連続的に二軸押出機に供給し、二軸押出機中において180℃で、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、抗酸化剤、トリエトキシビニルシラングラフト化ポリエチレンおよびエチレン-ビニルアセテートコポリマーを、鉱物油に溶解し、二軸押出機によって200rpmの速度で連続的に押し出した。混合物は連続的にスリットダイに入り、スリットダイを通してキャスティング冷却ローラーに押し出され、80℃でキャストされてストリップになった。
【0109】
得られたストリップを、抽出用のジクロロメタンを含む抽出槽に入れて、ストリップから鉱物油を除去した。抽出したストリップを連続的に二軸延伸機に120℃で供給して延伸させてフィルムにした後、得られたフィルム材料にジクロロメタンで二次抽出を施し、得られたフィルムを脱イオン水で洗浄し、120℃で15分間加熱硬化し、20m/分の速度で巻き取ってセパレータを得た。その具体的な性能パラメータを試験し、下記の表に示したようであった。
【0110】
【0111】
上記の結果からわかるように、エチレンコポリマーを加えることなしに製造されたセパレータは、電解質との接触角が比較的大きく、よって抵抗が比較的大きい(比較例2)。エチレンコポリマーの添加の後、電解質との接触角および抵抗がかなり低減した。これは主に、エチレンコポリマーが多量のエステル基またはカルボン酸官能基を含み、これらは極性においてリチウムイオン電池電解質の主な成分に類似しているという事実によるであろう。結果として、改善されたぬれ性が得られる。単にマレイン酸無水物グラフト化ポリエチレンを添加することによって製造されたセパレータは、電解質との比較的大きな接触角を示す(比較例1)。
【0112】
また、上記の結果からわかるように、超高分子量ポリエチレンおよび高密度ポリエチレンの総重量が100部であることを基準にして、5重量部未満のエチレンコポリマーの添加はセパレータの気孔径および強度にそれほど影響をもたず、それによってセパレータ材料の本来の性質を維持し、一方で改善されたぬれ性を得る。エチレン-ビニルアセテートコポリマーの量が5重量部である場合(比較例3)、セパレータの突刺し強度および引張強度が減少し始める。エチレン-ビニルアセテートコポリマーの量が10重量部である場合(比較例4)、セパレータの突刺し強度および引張強度がかなり減少し、これはこのようなコポリマー自体の低い強度によるであろう。さらに、比較例5からわかるように、エステル基またはカルボン酸官能基をもたないグラフト化ポリマーを、エチレン-ビニルアセテートと組合せて用いた場合、30°未満の接触角を得ることはできず、セパレータの突刺し強度および引張強度もかなり低減し、これらはこのようなグラフト化ポリマーとエチレン-ビニルアセテートコポリマーとの間の不十分な相溶性によるであろう。
【0113】
上記は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の本質的な技術的内容の範囲を限定することを意図していない。本発明の本質的な技術的内容は、添付した特許請求の範囲に概括的に定義されている。他人によって完成されたあらゆる技術的実体または方法は、それが本出願の特許請求の範囲に定義されたのと正確に同じであるか、または等価な変化であるならば、特許請求の範囲内にあるとみなされる。