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特許69958722,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法
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  • 特許-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法 図1
  • 特許-2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/278 20060101AFI20220107BHJP
   C07C 21/18 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C07C17/278
C07C21/18
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019548789
(86)(22)【出願日】2017-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 IN2017050555
(87)【国際公開番号】W WO2018100586
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-13
(31)【優先権主張番号】201611040763
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】201711023883
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】516132161
【氏名又は名称】エスアールエフ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【弁理士】
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ホセ
(72)【発明者】
【氏名】ラジ スニール
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ アンブジ
(72)【発明者】
【氏名】カティヤール アヌラグ
(72)【発明者】
【氏名】アナンド ラジディープ
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-114215(JP,A)
【文献】国際公開第2014/080916(WO,A1)
【文献】特表2012-505240(JP,A)
【文献】特表2013-507241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための方法であって、以下の工程、
(a)反応器内に熱源を用意する工程、
(b)塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの混合物を、事前に混合して、又は別々に前記反応器に入れて、混合物を得る工程、
(c)工程(b)の前記混合物を開始剤の存在下で前記熱源と接触して、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得る工程、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する工程、
を含み、
前記反応器内の前記熱源が、電気炉であり、かつ前記開始剤が、四塩化炭素、ヘキサクロロエタン、クロロホルム、及びその混合物からなる群から選択されることを特徴とする調製方法。
【請求項2】
連続又はバッチ反応モードで行う請求項1記載の調製方法。
【請求項3】
前記熱源を使用して、250~700℃の範囲の温度を得る記反応器内で250~700℃の範囲で塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの混合物に温度を与える又はその両方を行って、混合物を得、請求項1記載の調製方法。
【請求項4】
塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び前記開始剤が、前記電気炉を使用して250~400℃で予熱される、請求項1記載の調製方法。
【請求項5】
テトラフルオロエチレンに対する塩化メチルのモル比が、0.1~3:1から選択される、請求項1記載の調製方法。
【請求項6】
前記反応が、300~750℃から選択される温度で行われる、請求項1記載の調製方法。
【請求項7】
前記反応における原材料の滞留時間が、0.1~3.5秒である、請求項1記載の調製方法。
【請求項8】
工程(c)の前記第2反応混合物が、フッ化ビニリデン、クロロテトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロペン、オクタフルオロシクロブタン、クロロジフルオロメタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエテン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1-クロロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ジフルオロメタン及びトリフルオロメタンで構成されている、請求項1に記載の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応副生成物を再循環させ、供給組成と出口組成との間で平衡を得ることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製する改善された方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
フルオロオレフィンは、冷媒として重要な役割を果たす。近年、フルオロオレフィン、すなわち2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)は、別のフッ素化冷媒、すなわち1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)に代わる新しい冷媒として注目されている。米国特許第2931840号明細書には、塩化メチルとクロロジフルオロメタン又はテトラフルオロエチレンとの混合物を700~950℃で一般的な加熱手段、例えば反応器内の電熱器で加熱、分解することでHFO-1234yfを調製する方法について記載している。
【0003】
この方法では、幾つかの副生成物が生成されるせいで収率が低くなることが観察されている。これらの副生成物を再利用する方法は開示されていない。
【0004】
特開2016-027004号明細書には、蒸気、窒素又は二酸化炭素から選択される熱源を、塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの400~870℃の混合物が入った反応器に供給することでHFO-1234yfを調製する方法が記載されている。さらに、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)及びクロロトリフルオロエチレン(CTFE)の再利用について開示しており、これらはHFO-1234rfを調製するための原材料として使用される。しかしながら、この文献は、供給組成と出口組成との間の平衡については何も開示してはいない。驚くべきことに、本発明の発明者は、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロペン(HFP)、オクタフルオロシクロブタン(OFCB)、1-クロロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(R-226cb)、クロロテトラフルオロエタン(R-124)、ジフルオロメタン及びトリフルオロメタンを含む組成物を反応器に再循環させることで平衡が得られ、これらの化合物のさらなる生成が減少し、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの収率が上昇することを観察した。
【0005】
本発明の発明者は、塩化メチル及びテトラフルオロエチレンを300~700℃の予熱した反応器に事前に混合した状態で又は別々に供給すると、蒸気、窒素又は二酸化炭素から選択した熱源を塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの混合物が入った同様の温度範囲の反応器に供給する場合より高い率で2,3,3,3-テトラフルオロプロペンが生成されることを観察した。
【0006】
本発明の発明者はさらに、塩化メチル及びテトラフルオロエチレンを300~700℃の予熱した反応器に事前に混合した状態で又は別々に開始剤の存在下で供給すると、より良好な2,3,3,3-テトラフルオロプロペン選択性が得られることを観察した。これは主に、メタン(R50)の含有量が上記の開始剤の使用により劇的に低下するからであった。
【0007】
本発明の第1の目的は、開始剤を含む、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法を提供することであり、反応副生成物を再循環させることで供給組成と出口組成とが平衡する。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)予熱した塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤を、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて第1反応混合物を得て、
(c)熱源を用いてこの第1反応混合物を加熱することで2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び第2反応混合物成分を得て、
(d)第2反応混合物成分を反応器に再循環させることで平衡を得て、
(e)2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0010】
本発明の第2の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)塩化メチル及びテトラフルオロエチレンを、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(c)工程(b)の混合物を熱源と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0011】
本発明の第3の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)塩化メチル及びテトラフルオロエチレンを、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(c)工程(b)の混合物を開始剤の存在下で熱源と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0012】
本発明の第4の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製する方法を提供し、この方法は、
(a)塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤を、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(b)熱源を反応器に用意し、
(c)熱源を工程(a)の混合物と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0013】
本発明の第5の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製する方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤を、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(c)工程(b)の混合物を熱源と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】グラフ。最初は反応器入口でのOFCB濃度が上昇するにつれて反応器出口でのOFCB濃度も上昇するが、一定のレベルに達した後は反応器出口でのOFCB濃度のさらなる上昇は止まり、反応器入口でのOFCB濃度は上昇することが明らかである。したがって、平衡が得られたと言える。
図2】グラフ。最初は反応器入口でのR-124濃度が上昇するにつれて反応器出口でのR-124濃度も上昇するが、一定のレベルに達した後は反応器出口でのR-124濃度のさらなる上昇は止まり、反応器入口でのR-124濃度は上昇することが明らかである。したがって、平衡が得られたと言える。
図3】上記のグラフから、最初は反応器入口でのR-226cb濃度が上昇するにつれて反応器出口でのR-226cb濃度も上昇するが、一定のレベルに達した後は反応器出口でのR-226cb濃度のさらなる上昇は止まり、反応器入口でのR-226cb濃度は上昇することが明らかである。したがって、平衡が得られたと言える。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための改善された方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)予熱した塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤を、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて第1反応混合物を得て、
(c)熱源を用いてこの第1反応混合物を加熱することで2,3,3,3-テトラフルオロプロペン及び第2反応混合物成分を得て、
(d)第2反応混合物成分を反応器に再循環させることで平衡を得て、
(e)2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0016】
反応器内に用意する熱源は電気炉又は電熱器である。
【0017】
工程(b)で使用する塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤は電気炉を使用して250~400℃で予熱し、連続的に反応器内へと、事前に混合した状態で又は別々に導入し、第1反応混合物を得る。工程(c)で得られる第2反応混合物成分はフッ化ビニリデン、クロロテトラフルオロエタン、ヘキサフルオロプロペン、オクタフルオロシクロブタン、クロロジフルオロメタン、1-クロロ-2,2-ジフルオロエテン、1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1-クロロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ジフルオロメタン及びトリフルオロメタンを含む。
【0018】
第1の態様の本発明は連続反応モードで行われ、反応副生成物は反応器に再循環させる。
【0019】
反応副生成物は第2反応混合物成分を含む。
【0020】
最初は反応器入口での第2反応混合物成分濃度が上昇するにつれて反応器出口での第2反応混合物成分濃度も上昇するが、一定のレベルに達した後は反応器出口での第2反応混合物成分のさらなる増加は止まり、反応器入口での第2反応混合物成分は増加し、反応器の供給口と出口との間で平衡が得られる。
【0021】
第2反応混合物を工程(b)の反応器に再循環させることで反応中に発生する熱も制御でき、それによって反応発熱性は制御され、それによって第2反応混合物成分のさらなる生成が減少し、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの収率が上昇する。
【0022】
本発明の第2の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)塩化メチル及びテトラフルオロエチレンを、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(c)工程(b)の混合物を熱源と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0023】
本発明の第3の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)塩化メチル及びテトラフルオロエチレンを、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(c)工程(b)の混合物を開始剤の存在下で熱源と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0024】
本発明の第4の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製する方法を提供し、この方法は、
(a)塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤を、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(b)熱源を反応器に用意し、
(c)熱源を工程(a)の混合物と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0025】
本発明の第5の態様は、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製する方法を提供し、この方法は、
(a)反応器内に熱源を用意し、
(b)塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤を、事前に混合した状態で又は別々に反応器に入れて混合物を得て、
(c)工程(b)の混合物を熱源と接触させることで2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物を得て、
(d)工程(c)から2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを単離する
ことを含む。
【0026】
反応器内に用意する熱源は電気炉/電熱器である。さらに、熱源は250~700℃の範囲の温度を得るために使用し、あるいは反応器内で250~700℃の範囲で塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの混合物に温度を与えるため、あるいはその両方により混合物を得るために使用する。
【0027】
好ましい実施形態において、塩化メチルは炉温250~300℃に設定された電気炉に連続的に導入され、塩化メチル(R40)は300℃で加熱される。テトラフルオロエチレンは炉温300℃に設定された電気炉内の管に連続的に導入され、テトラフルオロエチレンは300℃で予熱される。開始剤は炉温300℃に設定された電気炉内の管に連続的に導入され、開始剤は300℃で予熱される。これらの予熱された気体成分材料(塩化メチル、テトラフルオロエチレン及び開始剤)は、内部温度で管理する反応器に供給される。
【0028】
本発明で用いる開始剤は、四塩化炭素、ヘキサクロロエタン、トリクロロアセチルクロリド、クロロホルム、ホスゲン、塩化チオニル、塩化スルホニル、トリクロロメチルベンゼン、有機ハイポクロライト及び無機ハイポクロライト又はこれらの混合物から成る群から選択される。
【0029】
塩化メチルに対する開始剤の濃度は0.1~8%から選択される。塩化メチルのテトラフルオロエチレンに対するモル比は0.1~3:1で選択される。
【0030】
本発明で得られる、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む反応混合物は任意で、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む無水反応混合物に転化させる。
【0031】
本発明において、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを調製するための上記の方法は任意で、アルゴン及び窒素から選択される不活性ガスの存在下で行われる。
【0032】
本発明で得られる2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの単離は、従来技術で既知の幾つかの技法、例えば蒸留、吸着、吸収等又はこれらの組み合わせを用いて行う。
【0033】
反応領域における原材料の滞留時間は0.1~3.5秒である。
【0034】
以下の実施例は例として挙げたものであって、本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【実施例
【0035】
実施例1;2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの調製方法
モル比がそれぞれ1:0.82のテトラフルオロエチレンと塩化メチルとの混合物を予熱し、次に350℃まで過熱し、電熱器で620℃まで予熱、維持したインコネル製反応器に供給した。
【0036】
開始剤がある場合とない場合の2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの収率についての比較結果を示す。
【0037】
【0038】
実施例2:2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの調製方法
モル比がそれぞれ1:1.16のテトラフルオロエチレンと塩化メチルとの混合物を予熱し、次に350℃まで過熱し、電熱器で550℃に維持したインコネル製反応器に供給した。
【0039】
【0040】
実施例3:2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの調製方法
【0041】
【0042】
本発明の方法で得られた2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの反応混合物/組成物からの単離は、当該分野で既知の任意の方法、例えば一連の蒸留、吸収及び吸着又はこれらの組み合わせにより行う。
【0043】
実施例4:フッ化ビニリデンを680℃で再循環させて平衡を得ることによる2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの調製
モル比0.88の塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの混合物を四塩化炭素と共に予熱し、次に350℃まで過熱し、電熱器により620℃に維持した反応器に供給した。反応は発熱性であり、温度は680℃まで上昇した。このようにして得られた反応混合物はHFO1234yf、VDF及び他の副生成物から成った。VDFを反応器に再循環させた。反応開始時とVDF再循環後に、反応器出口で採取した試料を、熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフを用いて分析した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例5:フッ化ビニリデンを708℃で再循環させて平衡を得ることによる2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの調製
モル比0.88の塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの混合物を四塩化炭素と共に予熱し、次に350℃まで過熱し、電熱器により620℃に維持した反応器に供給した。反応は発熱性であり、温度は708℃まで上昇した。このようにして得られた反応混合物はHFO1234yf、VDF及び他の副生成物から成った。VDFを反応器に再循環させた。反応開始時とVDF再循環後に、反応器出口で採取した試料を、熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフを用いて分析した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表1及び表2から、最初は反応器入口でのVDF濃度が上昇するにつれて反応器出口でのVDF濃度も上昇するが、一定のレベルに達した後は反応器出口でのVDF濃度のさらなる上昇は止まり、反応器入口でのVDF濃度は上昇することが明らかである。したがって、平衡が得られたと言える。
【0048】
実施例6:OFCB、R-124又はR-226cbを再循環させて平衡を得ることによる2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの調製
モル比0.88の塩化メチルとテトラフルオロエチレンとの混合物を予熱し、次に350℃まで過熱し、電熱器により645℃に維持した反応器に供給した。反応は発熱性であり、温度は680℃まで上昇した。このようにして得られた反応混合物成分はHFO-1234yf、オクタフルオロシクロブタン(51.6モル%)、クロロテトラフルオロエタン(33.4モル%)、1-クロロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(9.8モル%)及び他の副生成物から成った。オクタフルオロシクロブタン(51.6モル%)、クロロテトラフルオロエタン(33.4モル%)、1-クロロ-1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(9.8モル%)を反応器に1つずつ再循環させた。反応開始時と反応成分の再循環後に、反応器出口で採取した試料を、熱伝導度検出器を備えたガスクロマトグラフを用いて分析した。結果を図1、2及び3に示す。
【0049】
上記の実験データは、反応器入口に第2反応混合物成分が存在することで平衡が生じ、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの生成に対する選択性が上昇することをはっきりと示している。
【0050】
しかしながら、この平衡は実施例の化合物に限定されず、第2反応混合物の成分の殆ど又は全てに適用できる。
図1
図2
図3