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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】徐放性及び速放性のホウ素源を含む肥料
(51)【国際特許分類】
   C05D 9/02 20060101AFI20220107BHJP
   C05G 3/40 20200101ALI20220107BHJP
   C05D 1/02 20060101ALI20220107BHJP
   C05G 5/12 20200101ALI20220107BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C05D9/02
C05G3/40
C05D1/02
C05G5/12
B01J2/00 C
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2019553973
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 US2018025499
(87)【国際公開番号】W WO2018183914
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】62/479,948
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509157373
【氏名又は名称】ザ・モザイク・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マクラフリン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフィエン・デグリース
(72)【発明者】
【氏名】ロスリン・ベアード
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゴ・コキ・ダ シルバ
(72)【発明者】
【氏名】カイル・フリーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・フライ
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104163709(CN,A)
【文献】特表2014-524400(JP,A)
【文献】国際公開第2016/126691(WO,A1)
【文献】米国特許第03655357(US,A)
【文献】特開昭63-117983(JP,A)
【文献】特公昭47-019724(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B1/00-21/00
C05C1/00-13/00
C05D1/00-11/00
C05F1/00-17/993
C05G1/00-5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮された塩化カリウム組成物から形成された顆粒を含む粒状肥料の組成物であって、
2 Oを48.0重量パーセント~62.0重量パーセント含有する塩化カリウムを含み
第1溶解度を有する第1ホウ素源を含み第1ホウ素源はナトリウムベースのホウ素源またはホウ酸を含み、
第1溶解度よりも低い第2溶解度を有する第2ホウ素源を含み、第2ホウ素源はカルシウムベースのホウ素源を含み、
第1ホウ素源が、第2ホウ素源よりも速い速度で顆粒から放出されるようになっていることを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項に記載の粒状肥料の組成物であって、第1ホウ素源がテトラホウ酸ナトリウムを含むことを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の粒状肥料の組成物であって、第2ホウ素源がカルシウムベースのホウ素源であるコールマン石を含むことを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項に記載の粒状肥料の組成物であって、第2ホウ素源がさらにリン酸ホウ素を含むことを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の粒状肥料の組成物であって、第1及び第2ホウ素源が、総量で0.001重量パーセント(wt%)から1.0wt%のホウ素を供給する量で粒状肥料に存在することを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項に記載の粒状肥料の組成物であって、第1及び第2ホウ素源が、総量で0.1wt%から0.7wt%のホウ素となる量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項に記載の粒状肥料の組成物であって、第1及び第2ホウ素源が、総量で0.3wt%から0.6wt%のホウ素となる量で存在することを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の粒状肥料の組成物であって、第2ホウ素源に対する第1ホウ素源の比率が5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4または1:5から選択されることを特徴とする組成物。
【請求項9】
複数のホウ素源を含む粒状肥料製品を形成する方法であって、
2 Oを48.0重量パーセント~62.0重量パーセント含有する塩化カリウムを含む主要養分源を含有する肥料組成物を供給するステップと、
第1溶解度を有する第1ホウ素源と、第1ホウ素源よりも低い第2溶解度を有する第2ホウ素源と供給するステップと、
肥料組成物を圧縮するステップと、
圧縮した肥料組成物を肥料顆粒に粉砕するステップとを備え
第1ホウ素源がナトリウムベースのホウ素源またはホウ酸を含み、第2ホウ素源がカルシウムベースのホウ素源を含み、
第1ホウ素源が、第2ホウ素源よりも速い速度で肥料顆粒から放出されるようになっていることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項に記載の方法であって、第1ホウ素源がテトラホウ酸ナトリウムを含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項に記載の方法であって、第2ホウ素源がコールマン石を含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、第2ホウ素源がさらにリン酸ホウ素を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項に記載の方法であって、第1及び第2ホウ素源が、粒状肥料において総量で0.001重量パーセント(wt%)から1.0wt%のホウ素を供給する量で存在することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、第1及び第2ホウ素源が、総量で0.1wt%から0.7wt%のホウ素となる量で存在することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、第1及び第2ホウ素源が、総量で0.3wt%から0.6wt%のホウ素となる量で存在することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項に記載の方法であって、第2ホウ素源に対する第1ホウ素源の比率が5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4または1:5から選択されることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項に記載の方法であって、凝集されたMOP製品の顆粒を、大きさによって分類するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項に記載の方法であって、
ホウ素以外の微量栄養素を供給するステップをさらに備え、少なくとも1種類の微量栄養素が、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、元素形態の硫黄(S)、酸化硫酸塩の形態の硫黄(SO4)及びそれらの組み合わせからなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項に記載の方法であって、各ホウ素源を主要養分源へ添加して圧縮する前に、各ホウ素源が一緒に混ぜ合わされることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項に記載の方法であって、第1及び第2ホウ素源が、圧縮の前に主要養分源に別々に加えられることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項に記載の方法であって、圧縮の前に結合剤を添加するステップをさらに備えることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、結合剤が、ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、ピロリン酸四カリウム(TKPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、リン酸二アンモニウム(DAP)、リン酸一アンモニウム(MAP)、粒状リン酸一アンモニウム(GMAP)、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、でんぷん、デキストラン、リグノスルホン酸塩、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリンまたはそれらを組み合わせたものからなるグループから選択されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は概して肥料組成物に関する。より具体的には本発明は、植物がよりタイムリーにホウ素を利用可能にする一つの手段として、少なくとも2つの異なるホウ素源を多量栄養素のキャリア肥料に対して取り込むことに関する。
【0002】
関連出願
本出願は2017年3月31日に出願された米国特許仮出願第62/479,948号の利益を主張するとともに、参照によりその全体を本明細書に援用する。本願は、2011年8月4日に出願された米国特許仮出願第61/514,952号の利益を主張する、米国特許第9,266,784号に関連し、参照によりこれら両方の全体を本明細書に援用する。
【背景技術】
【0003】
植物の必須栄養素は2つのグループに分けられる。すなわち、一次及び二次の両方を含む多量栄養素と、微量栄養素である。植物は土壌から窒素、リン、カリウムを含む一次栄養素を得る。このため、それらは、これらの栄養素が欠乏している土壌を補うための肥料の大部分を構成する。
【0004】
標準的な肥料の基準によると、肥料の化学組成または化学解析の結果は、必須栄養素である窒素、リン、カリウムの(重量)比率で表現される。より具体的には、肥料の化学式を表すとき、最初の値は「全窒素」(N)として元素ベースでの窒素の比率を示す。2つ目の値は「有効リン酸」(P)として酸化物ベースでリンの比率を示す。3つ目の値も同様に「有効酸化カリウム」(KO)として酸化物ベースでカリウムの比率を示す。これらは別名(N-P-KO)としても知られている。
【0005】
リンとカリウムの量は、それらの酸化物で表現されるが、技術的には肥料中に五酸化二リンや酸化カリウムは存在しない。リンは通常、リン酸一カルシウムとして最も多く存在しているが、他のリン酸カルシウムまたはリン酸アンモニウムとしても存在している。カリウムは通常、塩化カリウムや硫酸カリウムの形態で存在している。次の式を使ってPおよびKの酸化物の形態を元素の表現(N-P-K)に変換できる。
%P = %P2O5 x 0.437 %K=% K2O x 0.826
%P2O5= %P x 2.29 %K2O= %K x 1.21
【0006】
土壌に加えられる肥料を介して利用可能とされる一次栄養素に加え、植物の成長にとって二次栄養素及び微量栄養素も必須である。これらの必要な量は、一次栄養素と比べてかなり少ない。二次栄養素には、硫黄(S)、カルシウム(Ca)及びマグネシウム(Mg)が含まれる。微量栄養素には、これらに限定されないが、例えばホウ素(B)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、銅(Cu)、鉄(Fe)及び塩素(Cl)が含まれる。
【0007】
微量栄養素の中で、ホウ素欠乏症は多くの農業領域、とりわけ砂土において大きな懸念事項である。ホウ素の施肥は、栄養欠乏症と毒性との間の狭いウインドウ(領域)に起因して課題となっている。植物の根の領域で利用可能なホウ素の量は、注意深く考慮されるべきである。なぜならば、植物はホウ素に対する感受性が高く、ごく少量のみ必要とするからである。ホウ素が高濃度で存在すれば、ホウ素の毒性から苗木の損傷のリスクを引き起こす可能性がある。ホウ素をホウ砂などの肥料顆粒でバルク配合する従来の手法では、ホウ素の散布が不均等となり得るため、非効率的または不適切である。このことは、その顆粒の近くではBが高濃度となり、顆粒から離れたところでは濃度不足になるという結果になり得る。
【0008】
ホウ素を均等に散布できるようにするため、本願の出願人は、米国特許第9,266,784号に記載されているように、圧縮の前または途中で塩化カリウム(MOP)顆粒に加えられる異なるホウ素源によって、ホウ素毒性の発生を少なくし、植物が必要とする少量のホウ素を均等に散布することを提案する。
【0009】
ホウ素肥料の管理に関する別の課題は、すべての植物の生育段階で十分量のホウ素を提供することである。なぜならば、この微量栄養素が苗木から開花まで重要な役割を果たすからである。例えば四ホウ酸ナトリウムなどの、一般的に使用される可溶性ホウ素源は水溶性が高く、それゆえ窒素と硫黄を除く多くの他の栄養素と比べて、土壌中において極めて高い移動性を有する傾向にある。なぜならば、可溶性ホウ素源はほとんどの土壌中で主に非荷電であるからである。それゆえ可溶性ホウ素源は、根から吸収される前に土壌から浸出しやすく、とりわけ雨の多い環境においてはそうである。その結果、生育期の後の、特に開花の時期にホウ素欠乏症となりやすい。したがって、ホウ素毒性の発生を最小限にしながら、生育段階において植物が確実に必須栄養素を得られるように、適切な濃度のホウ素を供給するようにバランスをとることは難しい。
【0010】
ホウ素毒性のリスクを低減しつつ、植物の根域に対してホウ素を均等かつ十分に散布できるようにするための、速放性及び徐放性の両方を兼ね備えるホウ素肥料製品が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の実施例は、異なる放出速度または放出特性を有する、少なくとも2種類のホウ素源を有するNPK肥料製品を含む。実施例として、NPK肥料製品は、窒素肥料(例えば尿素)、カリ肥料(例えばカリまたは塩化カリウム(MOP))またはリン酸肥料(例えばリン酸一アンモニウムまたはリン酸二アンモニウム(MAPまたはDAP))を含む、多量栄養素のキャリアを含むことができる。一実施例として、第1ホウ素源は、高い可溶性を有し、それゆえ生育期の初期段階において植物が利用可能な速放性のホウ素源である。第2ホウ素源は、第1ホウ素源よりも低い可溶性を有し、それゆえ第1ホウ素源と比較して徐放性のホウ素源であり、植物にとって生育期の後期段階において利用可能である。2種類のホウ素源を用いることによって、単一のホウ素源の場合よりも、ホウ素がより均等かつ継続的に放出されるようにすることができる。その結果、一連の生育期にわたり、植物の根域にとっての可給性が高まると同時に、ホウ素毒性のリスクと苗木損傷のリスクとを低減したり排除したりすることができる。
【0012】
第1ホウ素源は、例えば四ホウ酸ナトリウム(すなわちホウ砂)やホウ酸を含む、ナトリウムベースのホウ素や酸性ホウ素などの高い可溶性のものまたは速放性のものを含むことができる。一方で、第2ホウ素源は、例えばコールマン石(CaB(OH)・(HO))を含むカルシウムベースのホウ素源や、リン酸ホウ素(BPO)などの第1ホウ素源よりも著しく可溶性が小さいものを含むことができる。P肥料に関して、好ましい徐放性ホウ素源は、リン酸ホウ素である。リン酸ホウ素に関して具体的には、実施例として、リン酸及びホウ酸の反応生成物を異なる温度まで加熱することによって、溶解度を調整することができる。溶解度が第1ホウ素源よりも小さくかつ第2ホウ素源よりも大きい別のホウ素源として、例えばウレキサイト(NaCaB(OH)・5(HO))を含むことができる。当該別のホウ素源は、徐放性のホウ素源と組み合わせて使用するとき、速放性のホウ素源として使用でき、あるいは、速放性のホウ素源と組み合わせて使用するときに、徐放性のホウ素源として使用できる。
【0013】
肥料製品には、必要に応じて1種類以上の追加の微量栄養素や第2栄養素を含むことができる。例えば、これらに限定されないが、ホウ素(B)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、鉄(Fe)及び塩素(Cl)などの追加の栄養源を含む微量栄養素を含むことができる。また例えば第2栄養素として、硫黄(S)をその元素形態として、硫黄をその酸化硫酸塩の形態(SO)として、マグネシウム(Mg)やカルシウム(Ca)、その他様々な濃度におけるそれらの様々な組み合わせのいずれかを含むことができる。肥料は、圧縮補助剤や着色剤、または圧縮材料の場合には、ヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)などの1種類以上の結合成分を含んでもよい。
【0014】
本発明の一実施例によると、キャリアは凝集されたMOP肥料を含み、肥料製品は少なくとも2種類のホウ素源を有するMOP供給材料を圧縮することによって準備される。本発明の別の実施例として、肥料は標準的な造粒工程によって形成される、粒状化またはプリル(ペレット)化された窒素またはリン酸塩を含有するキャリアを含む。その造粒工程においては、ホウ素源は、造粒サーキットまたはプリル化サーキットに加えられる。
【0015】
上述の本発明の概要は、図示した各実施例または本発明のすべての実装を説明しようとするものではない。以下の詳細な説明でより具体的にこれらの実施例について実例を挙げる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
添付の図面に関連して様々な実施例の以下の詳細な説明を考慮することで、本開示の主題はより完全に理解される。
【0017】
図1図1は、本発明の一実施例による、土壌から浸出したホウ素を解析するための灌流セルアセンブリを示す。
図2図2は、本発明の一実施例による、灌流セルアセンブリにおける様々な配合設計のための細孔容積の関数として、放出されるホウ素の重量パーセント(すなわちホウ素浸出の時系列)をプロットしたものである。
図3図3は、本発明の一実施例による、ホウ素の可給性を解析するためのポット試験アセンブリである。
図4図4は、浸出処理におけるポットあたりのホウ素吸収と、ポット試験アセンブリにおける全体のホウ素の割合としての水溶性ホウ素に対する添加ホウ素の割合として浸出ホウ素とを比較したプロットである。
図5図5は、ポット試験アセンブリにおける配合設計ごとのポットごとのホウ素吸収を比較したプロットである。
図6図6は、ポット試験アセンブリにおける、6種類の肥料施用について、浸出ポットまたは非浸出ポットにおけるポットあたりのホウ素吸収を示すグラフである。
図7図7は、本発明の一実施例による、ポット試験アセンブリにおける異なる配合設計について、非浸出ポットで育てた植物に対する、浸出前のポットで育てたキャノーラ植物の対照比較である。
図8図8は、一実施例による圧縮サーキットについての工程系統図である。
【0018】
本発明は、様々な変形例や代替形態に修正可能であると同時に、それらの仕様は図面に例として示されており、詳細に説明される。なお当然理解できることであるが、しかしながらその意図は、説明した特定の実施例に本発明を限定するものではない。それどころか本発明は、本発明の趣旨及び範囲に含まれるすべての修正例、均等物及び代替例をカバーすることを意図している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施例は、少なくとも2種類のホウ素源を有するNPK肥料製品を含む。そのホウ素源は、異なる放出速度または放出特性を有し、ホウ素毒性のリスクを低減しつつ、植物の全生育期間におけるホウ素の可給性を調整することができる。
【0020】
実施例として、NPK肥料製品は、窒素肥料(例えば尿素)、カリ肥料(例えばカリまたは塩化カリウム(MOP))またはリン酸肥料(例えばリン酸一アンモニウムまたはリン酸二アンモニウム(MAPまたはDAP))を含む、多量栄養素のキャリアを含むことができる。MOPキャリアに関して、MOP肥料の基材は、市販の様々なMOP源とすることができる。例えばMOP肥料の基材を、これに限定されないが、KOを約20重量パーセント~約80重量パーセント、より具体的には約48~62重量パーセント、さらに具体的には約55~62重量パーセントの範囲で有するMOP供給材料とすることができる。
【0021】
一実施例として、第1ホウ素源は、高い可溶性を有し、それゆえホウ素の放出速度が速い。第2ホウ素源は第1ホウ素源よりも低い可溶性を有し、それゆえホウ素の放出速度は遅い。第1ホウ素源は、例えば四ホウ酸ナトリウム(すなわちホウ砂)などの高い可溶性または速放性のナトリウムベースのホウ素を含むことができる。一方で、第2ホウ素源は、例えばコールマン石(CaB(OH)・(HO))を含むカルシウムベースのホウ素源や、リン酸ホウ素(BPO)などの第1ホウ素源よりも著しく可溶性の小さいホウ素源を含むことができる。リン酸ホウ素に関して具体的には、実施例として、リン酸及びホウ酸の反応生成物を異なる温度まで、かつ、一定の温度で異なる期間にわたって加熱することによって、溶解度を調整することができる。
【0022】
溶解度が第1ホウ素源よりも小さくかつ第2ホウ素源よりも大きい別のホウ素源として、例えばウレキサイト(NaCaB(OH)・5(HO)))を含むことができる。また当該別のホウ素源は、徐放性のホウ素源と組み合わせて使用するときに、速放性のホウ素源として使用でき、あるいは、速放性のホウ素源と組み合わせて使用するときに、徐放性のホウ素源として使用できる。表1は、選択されたホウ酸塩化合物を示す。
【0023】
表1.異なるホウ素源の溶解度
【0024】
実施例として、少なくとも2種類のホウ素源が存在し、その量は肥料顆粒において約0.001重量パーセント(wt%)から約1.0wt%、より具体的には、約0.1wt%から約0.7wt%、さらに具体的には約0.3wt%から約0.6wt%のホウ素を供給する量である。徐放性のホウ素に対する速放性のホウ素の比率は、例えば5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4または1:5などとすることができ、植物が必要とする任意の比率に調整可能である。
【0025】
肥料製品が凝集されて圧縮された顆粒である場合、完成品の強度や取扱性を改善するために、1種類以上の結合剤または結合成分を含むこともできる。その結果、顆粒の取り扱い中や輸送の間に、顆粒がすり減ったり壊れたりしにくくなる。このことは「圧縮された粒状の塩化カリウムと、それを製造するための方法および装置」と題する米国特許第7,727,501号に説明されており、参照によりその全体を本願に援用する。結合剤は化学物質であり、圧縮サーキットの供給原料に添加されて、圧縮粒子の強度と品質を改良する。この結合剤は、肥料の供給材料における不純物を隔離したりキレートしたりする働きをする一方で、圧縮混合物に対して接着力を提供する。結合剤として、例えばヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)、ピロリン酸四ナトリウム(TSPP)、ピロリン酸四カリウム(TKPP)、トリポリリン酸ナトリウム(STPP)、リン酸二アンモニウム(DAP)、リン酸一アンモニウム(MAP)、粒状第1リン酸アンモニウム(GMAP)、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム、でんぷん、デキストラン、リグノスルホン酸塩、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリンまたはそれらを組み合わせたものを含むことができる。結合剤に加えて、または結合剤の代わりに、微量元素によっては、それ自身が結合剤として働き、粒子の強度を改善するものもある。
【0026】
本発明の一実施例として、凝集された顆粒であり、少なくとも2種類のホウ素源を含有するNPK肥料製品は、第1溶解度を有する第1ホウ素源と、第1ホウ素源よりも小さな第2溶解度を有する第2ホウ素源とを、圧縮サーキットの主要栄養素の供給材料にブレンドすることによって作られる。ホウ素源は圧縮工程の前に供給材料に添加することができ、供給材料に対して別々に加えるか、または、供給材料に対してそれらを加える前にひとまとめにしてブレンドさせるかのいずれかの方法で加えることができる。このブレンドされた供給原料を圧縮した後、例えば粉砕や分粒などの従来通りのさらなる処理によって、少なくとも2種類のホウ素源を含み、それらが顆粒製品全体に均等に散布された、凝集された肥料顆粒を生産することができる。
【0027】
圧縮された顆粒肥料組成物を製造するための生産ラインまたは生産サーキットは、概してベルトコンベヤや空気コンベヤなどの材料供給装置を含む。この材料供給装置は、様々な微粒子状の主要栄養素ストリーム、スクリーニング、回収材料または廃棄材料、第1及び第2ホウ素源、1種類以上の任意の第2栄養素や微量栄養素および1種類以上の任意の結合剤を圧縮機に投入するものである。その後、圧縮機によって高圧力で供給材料を圧縮し、凝集された中間シート状のものまたは固形物にする。これはその後、粉砕されたり、分類されたり、大きさを変えられたり、もしくは再仕上げされたりして、少なくとも2種類のホウ素源を含有する所望の完成品の顆粒肥料にすることができる。
【0028】
図8は、本発明の生産方法として予期される一実施例に含まれるステップを示すフローチャートである。具体的には、図8はホウ素源がブレンドされた後かまたは別々に、生産サーキットの主要栄養材料へと投入されることを示す。ホウ素源は、計量装置を含む1つ以上のインジェクターによってサーキット内の様々な位置で供給材料へと投入され得る。計量装置によって、単位原料当たりに加えられる各構成成分の量をより正確にコントロールすることができる。
【0029】
ホウ素源を供給材料に加え、必要に応じて結合剤を供給材料に加えた後、添加物および供給材料がブレンドされる。ブレンドのステップは、これらの材料が一体となるようにするか、または供給機構を通してそれらの接続輸送(joint carriage)の間にブレンドできるようにするかのいずれかによって、受動的に行うことができる。あるいは、インジェクターと圧縮機との間の生産サーキットに追加できる個別のブレンド装置があってもよく、それによって圧縮の前に、ホウ素源、任意の結合剤、任意の他の添加物および供給材料ストックを、より積極的にまたは能動的にブレンドすることができる。
【0030】
ブレンドされた供給材料は、ここでホウ素源と任意の他の添加物と混合された後に圧縮される。圧縮工程は、例えばロール圧縮機などの従来型の圧縮装置を使って行うことができる。得られた凝集中間組成物は、その後、図8に示すように所望の粒径またはタイプの最終製品を生産するのに適した粉砕、スクリーニングまたはその他の従来型の分類方法を使って所望の完成した粒状製品に加工することができる。
【0031】
なお当然理解できることであるが、1種類以上の追加の微量栄養素、第2栄養素や結合剤をフィードストックに対して同時にまたは別々に追加できるようにするために任意の工程または機器の変更が付随することは、本発明の範囲内において予期されている。
【0032】
次の例によってさらに本願の実施例を例示する。
【0033】

試験1:カラム溶解
MOP微粉は、ホウ砂およびコールマン石由来の様々なホウ素比率で圧縮されて、肥料顆粒の約0.5wt%の総ホウ素量を与える。ホウ砂として供給されるホウ素の、コールマン石に対する様々な比率は、1:0(すなわちコールマン石が無し)、1:1、1:3、0:1(すなわちホウ砂が無し)であった。顆粒由来のホウ素の溶解について、カラムかん流技術を使って72時間にわたって測定した。図1を参照すると、カラムかん流技術では、かん流セルアセンブリ100を使用する。かん流セルアセンブリ100の垂直カラムセル106内において、既知の重量の肥料102が土壌104内に埋め込まれる。浸透溶液Sは、グラスウールの障壁108と、それに続く肥料試料102と酸で洗浄された砂104aの一部とを取り囲む土壌104とを通して、底部から頂部へとくみ上げられる。上端103はフィルター紙110を備え、集められた浸出液112によって土壌が除去されないようになっている。
【0034】
この特定のかん流の実施例においては、肥料製品1グラムの試料が土壌の柱内に埋め込まれた。浸透溶液はpHが約6で10mMのCaCl溶液であり、10mL/hの流速でカラム内に導入された。
【0035】
かん流技術の結果を図2のグラフに示す。図2において、組成物ごとに放出された(すなわち浸出液に捕捉された)ホウ素の重量パーセントがプロットされている。これによると、ホウ砂のコールマン石に対する割合を変化させることによって、速放性と徐放性の特徴を調整できるということを示している。
【0036】
試験2:ポット試験
キャノーラ植物と、MOP肥料のコントロール(ホウ素なし)と、試験1で使用したものと同様の4つの肥料配合を使ってポット試験を行った。この肥料配合は、0.5%のホウ素を含むMOPからなり、ホウ素について速放性(ホウ砂)と徐放性(コールマン石)との比率が異なる(表2)。土壌は、ポットあたりマウントコンパスの砂壌土1kgからなり、その化学分析については下の表3に説明する。ホウ素源は、1ヘクタールあたり1.5kgのホウ素に相当する比率で加えられ、これは1kgのポットあたり0.9mgのホウ素と、86.6mgのK(カリウム)とに相当する。各肥料施用につき5つの反復測定を行った。
【0037】
表2:酸で抽出可能なBと水で抽出可能なBの比較
【0038】
表3.実験で使用した南オーストラリアの土壌の選択された特性
【0039】
この試験において、キャノーラ作物を植え付ける前に30個のポットが浸出され、30個のポットが浸出されなかった。図3を参照すると、浸出ポット300は、4つの細孔容積302(すなわち350mL×4)の脱塩水を1kgの土壌304に注ぐことによって浸出された。土壌304に対して土壌304の表面下1cmの箇所にMOP肥料306が加えられた。ポット300の底部で捕捉された浸出液308は、ホウ素の解析に供された。ポット300から浸出したホウ素の量は、肥料における徐放性のホウ素の量の増加に伴い減少した(図4)。キャノーラ植物の作物を、その後に植え付けたところ、約12週間生育でき、その後に植物シュートにおけるホウ素の濃度を解析した。図7に示すように、様々な配合の非浸出ポット700は、それと同じ配合の浸出ポット702よりも大きく育った。
【0040】
表2、図2(カラム灌流)、図4(ポット試験)、図5(ポット試験)及び図6(ポット試験)に示すように、カラム灌流とポット試験技術の両方において、水溶性ホウ素の割合が高くなるにつれて、ホウ素の放出率が高まり、植物によるホウ素の吸収が減る一方で、酸で抽出可能なKへの影響が最小限となることが観察された。
【0041】
特に図6を参照すると、ポットごとのホウ素の植物吸収が12週間後に測定された。非浸出ポットにおいて、ホウ素の吸収についてのホウ素肥料配合の一貫した影響はなかった。浸出ポットに関しては、肥料配合中のコールマン石由来の徐放性ホウ素の量が増加するにつれて、ホウ素の植物吸収が増加した。
【0042】
これらの試験から、徐放性のホウ素と速放性のホウ素のバランスによってホウ素の吸収を改善できることが測定された。そして、徐放性のホウ素源を多量栄養素の肥料に加えることによって、浸出環境において植物の一連の生育段階にわたってホウ素を良好に供給できることが測定された。
【0043】
本明細書でシステム、装置及び方法の様々な実施例について説明してきた。これらの実施例は、例として提供されたものであるに過ぎず、請求の範囲に記載した発明の範囲を限定しようとするものではない。なお当然理解できることであるが、さらに、本明細書で説明した実施例の様々な特徴を様々な方法で組み合わせることで、多くの追加的実施例を生み出すことができる。さらに様々な材料、寸法、形状、構成及び配置等について、開示の実施例で使用するために説明してきたが、開示したそれら以外のものが、請求の範囲に記載した発明の範囲を超えることなく使用されてもよい。
【0044】
関連する技術分野における当業者であれば理解できることであるが、これの主題は、上述した個々の実施例のいずれに記載したものよりも少ない特徴を含んでいてもよい。本明細書に説明した実施例は、この主題の様々な特徴を組み合わせることのできる方法の網羅的なプレゼンテーションとなることを意味するのではない。したがって当業者によって理解されるように、実施例は相互に排他的な特徴の組み合わせではない。むしろ様々な実施例には個々の異なる実施例から選択された、異なる個々の特徴の組み合わせを含むことができる。さらに、一実施例に関して説明した部材は、特に断りのない限り、他の実施例で説明されていないときでも他の実施例に組み入れることができる。
【0045】
従属クレームは、一つ以上の他のクレームとの特定の組み合わせについてクレーム中で言及してもよいが、他の実施例も同様に、従属クレームとそれぞれの他の従属クレームの主題との組み合わせであったり、他の従属クレームまたは独立クレームとの一つ以上の特徴の組み合わせであったりを含むことができる。
【0046】
上記の参照による文献の援用は、いずれも本明細書に明示的に開示したものに反する主題が援用されないように制限される。上記の参照による文献の援用は、いずれも本明細書に参照により援用される文書内にクレームが含まれないようにさらに制限される。また上記の参照による文献の援用は、いずれも当該文書内にあるいずれの定義も明確に本明細書に含まれない限りは、参照により援用されないようにさらに制限される。
【0047】
クレーム中で「~のための手段」や「~のためのステップ」という特定の用語が使用されない限りは、クレームを解釈する目的で35U.S.C.§112(f)の規定が行使されないということが明確に意図されている。
図1
図2
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図5
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図7
図8