(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ガラス用組成物及びガラス、並びにその製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
C03C 3/097 20060101AFI20220107BHJP
C03C 21/00 20060101ALI20220107BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20220107BHJP
G06F 3/041 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C03C3/097
C03C21/00 101
G09F9/00 313
G09F9/00 302
G06F3/041 460
G06F3/041 495
(21)【出願番号】P 2019563449
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(86)【国際出願番号】 CN2018086752
(87)【国際公開番号】W WO2018210209
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】201710344172.4
(32)【優先日】2017-05-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519319819
【氏名又は名称】トンシュー テクノロジー グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TUNGHSU TECHNOLOGY GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】1112,Floor 11,101,Floor 1 to Floor 17,Building 4,Yard 2,Sihezhuang Road,Fengtai District Beijing China
(73)【特許権者】
【識別番号】518369475
【氏名又は名称】トンシュー グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TUNGHSU GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 369 Zhujiang Road, New & Hi-Tech Industrial Development Zone, Shijiazhuang, Hebei, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】特許業務法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,チン
(72)【発明者】
【氏名】シェン,ユーグオ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リーホン
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン,チュェン
(72)【発明者】
【氏名】イェン,ドンチォン
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジュンフォン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン,グアンタオ
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0090321(US,A1)
【文献】国際公開第2016/104454(WO,A1)
【文献】特表2016-534015(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0087194(US,A1)
【文献】特表2015-500194(JP,A)
【文献】特開2015-224155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、
SiO
2:45~
47重量%、Al
2O
3:
21.5~
25重量%、MgO:
1.5~2重量%、Na
2O:
13~
16重量%、P
2O
5:
11~15重量%、及びTiO
2:
1~
1.8重量%からなることを特徴とするガラス用組成物。
【請求項2】
前記ガラス用組成物は、K
2O、As
2O
3、Sb
2O
3、SO
3及びFのうちの1種又は複数種を含有しない、ことを特徴とする請求項
1に記載のガラス用組成物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のガラス用組成物に対して、混合、溶融、均質化、キャスト成形及びアニーリングを順次行うことを含む、ことを特徴とするガラスの製造方法。
【請求項4】
アニーリングしたガラスに対して、分断、研削及び化学強化を行うことを含む、ことを特徴とする請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
ディスプレイデバイスの製造における、請求項1
または2に記載のガラス用組成物の使用。
【請求項6】
タッチスクリーンカバーの製造における、請求項
5に記載のガラス用組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの分野に関し、具体的には、ガラス用組成物及びガラス、並びにその製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチスクリーンは、先進的な電子入力機器として、シンプルで便利であり、応答速度が高く、省スペース化ができ、ヒューマンコンピューターコミュニケーションが容易であるなど、多くの利点を有する。タッチスクリーン技術は、20世紀の70年代に始まり、早期では産業用コンピューターやPOS端末などの産業用又は商業用機器で使用されるのが一般的である。2007年に、米国のApple社は、iPhone(登録商標)携帯電話を発売し、これは、タッチ産業の発展におけるマイルストーンになっている。タッチスクリーン付き電子表示機器は、軽量化や薄型化しておりスタイリッシュな外観を有し、消費者が直接かつ便利に操作できるようになり、人間とコンピューターの相互作用の親密さを高め、消費者の中で大人気であり、また、タッチスクリーンが主流の制御インターフェイスへなり始める。
【0003】
タッチスクリーン付き電子製品の普及に伴い、タッチスクリーンガラスには、耐損傷性や耐引掻き性などの機械的強度が期待されるだけでなく、優れた靭性も必要とされる。上記問題を解決するためには、ガラスの靭性を向上させる上に、ガラスの強度を高めることも考慮に入れる必要がある。しかし、従来のガラス組成物で製造されたガラスの機械的特性や力学的特性などは、カバーガラスを生産するときのニーズを満たすのに十分ではない。したがって、現在、製造されるガラスの機械的特性や力学的特性などの総合的な特性を著しく向上できるガラス組成物及び調製方法が緊急に求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術における上記欠陥を解決するために、ガラス用組成物及びガラス、並びにその製造方法及び応用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成させるために、第1態様によれば、本発明は、ガラス用組成物であって、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、SiO2:45~64重量%、Al2O3:16~26重量%、MgO:0.1~2重量%、Na2O:10~17重量%、P2O5:0.5~15重量%、及び、必要に応じてTiO2:0~2重量%を含有するガラス用組成物を提供する。
【0006】
好ましくは、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物は、SiO2:45~64重量%、Al2O3:16~25重量%、MgO:0.1~2重量%、Na2O:10~16重量%、P2O5:1~15重量%、及び、必要に応じてTiO2:0.01~2重量%を含有する。
【0007】
好ましくは、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物は、SiO2:45~64重量%、Al2O3:16~25重量%、MgO:0.1~2重量%、Na2O:10~16重量%、P2O5:8~15重量%、及び、必要に応じてTiO2:0.1~1.8重量%を含有する。
【0008】
好ましくは、前記ガラス組成物は、K2O、As2O3、Sb2O3、SO3及びFのうちの1種又は複数種を含有しない。
【0009】
第2態様によれば、本発明は、上記ガラス用組成物に対して、混合、溶融、均質化、キャスト成形及びアニーリングを行うことを含むガラスの製造方法をさらに提供する。
【0010】
好ましくは、該方法は、アニーリングしたガラスに対して、分断、研削及び化学強化を行うことを含む。
【0011】
第3態様によれば、本発明は、上記方法によって製造されたガラスをさらに提供する。
【0012】
好ましくは、前記ガラスは、密度が2.42g/cm3以下であり、歪点が629℃以上であり、50~350℃での熱膨張係数が94.19×10-7/℃以下であり、ヤング率が81.6GPa以上であり、光透過率が90.1%以上であり、圧縮応力が760.5MPa以上であり、応力層の深さが53.1μm以上であり、破壊靭性が6.76MN/m3/2以上であり、5重量%塩酸溶液における浸食量が0.537mg/cm2以下であり、10重量%フッ化水素酸緩衝溶液における浸食量が1.968mg/cm2以下であり、且つ10重量%フッ化水素酸溶液における浸食量が9.915mg/cm2以下である。
【0013】
好ましくは、前記ガラスは、密度が2.389~2.42g/cm3であり、歪点が629~660℃であり、50~350℃での熱膨張係数が84.27~94.19×10-7/℃であり、ヤング率が81.6~83.5GPaであり、光透過率が90.1~91.0%であり、圧縮応力が760.5~831.5MPaであり、応力層の深さが53.1~65.7μmであり、破壊靭性が6.76~7.23MN/m3/2であり、5重量%塩酸溶液における浸食量が0.503~0.537mg/cm2であり、10重量%フッ化水素酸緩衝溶液における浸食量が1.902~1.968mg/cm2であり、且つ10重量%フッ化水素酸溶液における浸食量が9.631~9.915mg/cm2である。
【0014】
第4態様によれば、本発明は、ディスプレイデバイスの製造、好ましくはタッチスクリーンカバーの製造における、上記ガラス用組成物又は上記ガラスの応用をさらに提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明で製造されたガラスは、高い耐薬品性、高い歪点を有し、ガラスの表面には、高い圧縮応力及び圧縮応力層の深さが形成され、且つ該ガラスは、大きなヤング率を有するため、優れた破壊靭性が得られ、ガラス脆性の低下、ガラスの耐衝撃性の改善に寄与し、また、該カバーガラスは、失透が発生しにくく且つガラス化が容易であり、生産プロセスの要件を満たし、優れた耐熱性、耐衝撃性及び優れた耐引掻き性や耐摩耗能を有し、ディスプレイ製品のガラス表面への衝撃や引掻きの損傷を好適に防止でき、カバーガラスとして好適である。さらに、製造されたタッチスクリーンのカバーガラスは、携帯電話、コンピュータ、デジタル及び光学的レンズなどの分野に幅広く利用され得る。
【0016】
本発明のほかの特徴及び利点は、以下の特定の実施形態の部分において詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の特定の実施形態について詳細に説明する。なお、ここで説明する特定の実施形態は、本発明を説明して解釈するために過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0018】
本明細書で開示される範囲の端点及び任意の値は、この特定の範囲又は値に限定されず、そのような範囲又は値は、これら範囲又は値に近い値を含むと理解されるべきである。数値の範囲の場合、各範囲の端点値の間、各範囲の端点値と個々の点の値の間、及び個々の点の値の間は、互いに組み合わせて1つ以上の新しい値の範囲を生成することができ、これら値の範囲は、本明細書における具体的な開示としてみなされるべきである。
【0019】
第1態様によれば、本発明は、ガラス用組成物を提供し、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物は、SiO2:45~64重量%、Al2O3:16~26重量%、MgO:0.1~2重量%、Na2O:10~17重量%、P2O5:0.5~15重量%、及び、必要に応じてTiO2:0~2重量%を含有する。
【0020】
好ましくは、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物は、SiO2:45~64重量%、Al2O3:16~25重量%、MgO:0.1~2重量%、Na2O:10~16重量%、P2O5:1~15重量%、及び、必要に応じてTiO2:0.01~2重量%を含有する。
【0021】
より好ましくは、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物は、SiO2:45~64重量%、Al2O3:16~25重量%、MgO:0.1~2重量%、Na2O:10~16重量%、P2O5:8~15重量%、及び、必要に応じてTiO2:0.1~1.8重量%を含有する。
【0022】
本発明のガラス用組成物では、SiO2は、ガラス骨格を構成する成分であり、SiO2の含有量が高いと、耐化学性及び機械的強度が高まり、ガラスの高温粘度が高まる。ただし、SiO2が多すぎると、温度に伴う粘度変化率の低いガラスが得られにくくなり、SiO2の含有量が低すぎると、ガラスの形成が困難であり、歪点が低下し、膨張係数が増え、耐酸性及び耐アルカリ性のいずれも下がる。融解温度、結晶化上限温度、ガラス膨張係数、機械的強度、ガラス温度に伴う粘度変化率などの特性を考慮して、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物において、SiO2の含有量は、45~64重量%であり、たとえば、45重量%、46重量%、47重量%、48重量%、49重量%、50重量%、51重量%、52重量%、53重量%、54重量%、55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、60重量%、61重量%、62重量%、63重量%又は64重量%であってもよい。
【0023】
本発明のガラス用組成物では、Al2O3は、ガラスの化学的安定性を改善しガラスの結晶化傾向を低減させ、また、引張弾性率を向上させ、製造されたガラスの歪点、強度及び化学強化特性などを向上させることができる。ただし、Al2O3の含有量が多すぎると、ガラスは、溶融しにくく、温度に伴う粘度変化率が高くなり、逆には、Al2O3の含有量が低すぎると、ガラスは、結晶化しやすく、機械的強度が低く成形に不利である。このため、総合的に考慮すると、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物において、Al2O3の含有量は、16~26重量%、好ましくは、16~25重量%、より好ましくは、16~17.5重量%、さらに好ましくは、16~17重量%であり、たとえば、16重量%、17重量%、18重量%、19重量%、20重量%、21重量%、22重量%、23重量%、24重量%、25重量%又は26重量%であってもよい。
【0024】
本発明のガラス用組成物では、MgOは、ガラスの溶解製造に有利であり、ガラスの安定性を向上させて、ガラスの結晶化傾向を抑制し、弾性率を向上させるが、所定量を超えると、ガラスに失透が生じる。このため、総合的に考慮すると、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物において、MgOの含有量は、0.1~2重量%であり、たとえば、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%、1.8重量%、1.9重量%又は2重量%であってもよい。
【0025】
本発明のガラス用組成物では、Na2Oは、イオン交換成分であり、その含有量を適切に高めると、ガラスの高温粘度を効果的に低減させて溶融性及び成形性を向上させ、そして失透性を改善することができる。ただし、その含有量が高すぎると、ガラスの熱膨張係数を高めて、ガラスの化学耐久性を低減させる。このため、総合的に考慮すると、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物において、Na2Oの含有量は、10~17重量%、好ましくは、10~16重量%であり、たとえば、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%、15重量%、16重量%又は17重量%であってもよい。
【0026】
本発明のガラス用組成物では、P2O5は、イオン交換特性を向上させる成分であり、特に圧縮応力層の厚さを増やし、ただし、その含有量が多すぎると、相分離が発生したり、HClなどの酸によるエッチング速度が過度に高くなったりして、ガラス品質の低下を引き起こす。このため、総合的に考慮すると、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物において、P2O5の含有量は、0.5~15重量%、好ましくは、1~15重量%、より好ましくは、8~15重量%、さらに好ましくは、8~9.5重量%、一層好ましくは、8~9重量%であり、たとえば、0.5重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、10重量%、11重量%、12重量%、13重量%、14重量%又は15重量%であってもよい。
【0027】
本発明のガラス用組成物では、TiO2は、イオン交換特性を向上させる成分であり、また高温粘度を低減させ、耐酸性を向上させることができるが、その含有量が多すぎると、ガラスの着色又は失透を引き起こす。このため、総合的に考慮すると、ガラス用組成物の全重量を基準にして、酸化物換算で、該ガラス用組成物において、TiO2の含有量は、0~2重量%、好ましくは、0.01~2重量%、より好ましくは、0.1~1.8重量%、さらに好ましくは、0.1~0.9重量%であり、たとえば、0.01重量%、0.05重量%、0.1重量%、0.2重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.8重量%、0.9重量%、1重量%、1.1重量%、1.2重量%、1.3重量%、1.4重量%、1.5重量%、1.6重量%、1.7重量%又は1.8重量%であってもよい。
【0028】
本発明の好適実施形態によれば、前記ガラス組成物において、K2O、As2O3、Sb2O3、SO3及びFのうちの1種又は複数種の成分の含有量が0.1重量%未満である。より好ましくは、前記ガラス組成物は、K2O、As2O3、Sb2O3、SO3及びFのうちの1種又は複数種を含有しない。
【0029】
本発明では、当業者にとって明らかなように、本発明のガラス用組成物において、組成物がSiO2、Al2O3、MgO、Na2O、P2O5及びTiO2を含有するとは、該組成物にSi含有化合物、Al含有化合物、Mg含有化合物、Na含有化合物、P含有化合物及びTi含有化合物を含有することを意味し、且つ前述した各成分の含有量は、すべて各元素の酸化物で換算する。
【0030】
本発明のガラス用組成物では、この組成物を用いてガラスを製造するときに、ガラスに優れた総合的な特性を付与できるのは、主に、組成物における各成分の相互配合、特にSiO2、Al2O3、MgO、Na2O、P2O5及びTiO2の相互配合、より特に前述特定の含有量の各成分の相互配合による作用のためである。
【0031】
第2態様によれば、本発明は、ガラスの製造方法をさらに提供し、該方法は、上記ガラス用組成物に対して、混合、溶融、均質化、キャスト成形及びアニーリングを行うことを含む。
【0032】
本発明の方法では、ガラス用組成物に対する限定については、具体的には、前述の関連内容の説明を参照すればよく、ここで詳しく説明しない。
【0033】
本発明の方法では、前記溶融は、プラチナ-ロジウム坩堝において行われることができ、好ましくは、溶融条件として、温度は、1550~1630℃であり、時間は、4~10hである。当業者であれば、実際の状況に応じて具体的な溶融温度及び溶融時間を決定することができ、それは、当業者によく知られているものであるため、ここで詳しく説明しない。
【0034】
本発明の方法では、前記均質化は、本分野において一般的な均質化方式であり、たとえば、撹拌することで溶融ガラスにおける気泡を放出し、且つ溶融ガラスにおける各成分を均一に分布させる。
【0035】
本発明の方法では、前記キャスト成形は、本分野において一般的なキャスト成形方式であり、たとえば、ステンレス金型において行うことができ、具体的なステップ及び条件のパラメータは、本分野において公知の技術であるため、ここで詳しく説明しない。
【0036】
本発明の方法では、好ましくは、アニーリング条件として、温度は、600~700℃であり、時間は、1~3hである。当業者であれば、実際の状況に応じて具体的なアニーリング温度及びアニーリング時間を決定することができ、これは、当業者によく知られているものであるため、ここで詳しく説明しない。
【0037】
本発明の方法では、該方法は、アニーリングしたガラスを室温に降温した後、加工処理を行うことをさらに含んでもよい。
【0038】
本発明の方法では、加工処理について特に限定がなく、本分野において一般的な各種の機械的加工方式であってもよく、たとえば、アニーリングして得た産物に対して、分断、研削及び化学強化などを行うことができる。
【0039】
第3態様によれば、本発明は、上記方法によって製造されたガラスをさらに提供する。
【0040】
本発明によれば、前記ガラスは、密度が2.42g/cm3以下であり、歪点が629℃以上であり、50~350℃での熱膨張係数が94.19×10-7/℃以下であり、ヤング率が81.6GPa以上であり、光透過率が90.1%以上であり、圧縮応力が760.5MPa以上であり、応力層の深さが53.1μm以上であり、破壊靭性が6.76MN/m3/2以上であり、5重量%塩酸溶液における浸食量が0.537mg/cm2以下であり、10重量%フッ化水素酸緩衝溶液における浸食量が1.968mg/cm2以下であり、且つ10重量%フッ化水素酸溶液における浸食量が9.915mg/cm2以下である。
【0041】
好ましくは、前記ガラスは、密度が2.389~2.42g/cm3であり、歪点が629~660℃であり、50~350℃での熱膨張係数が84.27~94.19×10-7/℃であり、ヤング率が81.6~83.5GPaであり、光透過率が90.1~91.0%であり、圧縮応力が760.5~831.5MPaであり、応力層の深さが53.1~65.7μmであり、破壊靭性が6.76~7.23MN/m3/2であり、5重量%塩酸溶液における浸食量が0.503~0.537mg/cm2であり、10重量%フッ化水素酸緩衝溶液における浸食量が1.902~1.968mg/cm2であり、且つ10重量%フッ化水素酸溶液における浸食量が9.631~9.915mg/cm2である。
【0042】
第4態様によれば、本発明は、ディスプレイデバイスの製造、好ましくはタッチスクリーンカバーの製造における、上記ガラス用組成物又は上記ガラスの応用をさらに提供する。
【0043】
本発明の前記応用によれば、ガラスは、ディスプレイデバイス(特にタッチスクリーンカバー)を製造する前に、化学強化を行うことができ、化学強化方法は、本分野における各種の公知の方法であり、たとえば、化学強化方法には、強化液が純粋なKNO3メルトであり、温度が410~450℃であり、時間が3~6hである。化学強化は、ガラスの機械的特性を向上できる。
【0044】
本発明で製造された特殊な特性を有するガラスは、オーバーフロープロセスによるタッチスクリーンカバーとして有用である。
【0045】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明する。以下の実施例及び比較例では、特に断らない限り、使用される各材料は、すべて市販品として入手でき、特に断らない限り、使用される方法は、本分野における一般的な方法である。
【0046】
以下の実施例及び比較例では、アルキメデス法を参照してガラス密度を測定し、単位は、g/cm3であった。
【0047】
ASTM C-336に準じて3点テスターを用いてガラスのひずみ点を測定し、単位は、℃であった。
【0048】
ASTM E-228に準じて横型膨張計を使用して50~350℃でのガラス熱膨張係数を測定し、単位は、10-7/℃であった。
【0049】
共鳴法によってヤング率を測定し、単位は、GPaであった。
【0050】
UV-可視分光光度計テスターを用いてガラスの光透過率を測定し、単位は、%であった。
【0051】
FSM-6000LE表面応力計を用いて、ガラス表面の圧縮応力(単位MPa)及び圧縮応力層の深さ(単位μm)を測定した。
【0052】
GB4161-2007に準じてガラスの破壊靭性を測定し、単位は、MN/m3/2であった。
【0053】
減量法を用いて5重量%塩酸溶液におけるガラスの浸食量を検出し、検出条件として、欠陥のないガラスを95℃の濃度5重量%の塩酸溶液に入れて、振動させながら24h浸食し、浸食量を計算し、計算式は、浸食量=(M’-M)/Sであり、ここで、M’は、浸食前のサンプルの重量を表し、Mは、浸食後のサンプルの重量を表し、Sは、サンプルの表面積を表し、単位は、mg/cm2であった。
【0054】
減量法を用いて10重量%フッ化水素酸緩衝溶液におけるガラスの浸食量を検出し、検出条件として、欠陥のないガラスを20℃の濃度10重量%のフッ化水素酸緩衝溶液(NH4:HFの体積比6:1)に入れて、振動させながら20min浸食し、浸食量を計算し、計算式は、浸食量=(M’-M)/Sであり、ここで、M’は、浸食前のサンプルの重量を表し、Mは、浸食後のサンプルの重量を表し、Sは、サンプルの表面積を表し、単位は、mg/cm2であった。
【0055】
減量法を用いて10重量%フッ化水素酸溶液におけるガラスの浸食量を検出し、検出条件として、欠陥のないガラスを20℃の濃度10重量%のフッ化水素酸溶液に入れて、振動させながら20min浸食し、浸食量を計算し、計算式は、浸食量=(M’-M)/Sであり、ここで、M’は、浸食前のサンプルの重量を表し、Mは、浸食後のサンプルの重量を表し、Sは、サンプルの表面積を表し、単位は、mg/cm2であった。
【0056】
実施例1~12及び比較例1~3
表1及び2に示すように、各成分を秤量して均一に混合し、混合材料をプラチナ-ロジウム坩堝に投入して、次に、1550℃の抵抗炉において7時間加熱し、プラチナロッドを用いて撹拌して気泡を放出した。溶解した溶融ガラスをステンレス鋳鉄金型にキャストして、所定の板形状のガラス製品を成形し、次に、ガラス製品をアニーリング炉において650℃で3時間アニーリングし、電源を切って25℃まで炉冷した。ガラス製品について分断、研削、研磨を行い、製造されたガラス完成品(厚さ0.7mm)を用いて、研磨して得たガラス製品の表面について、テスト前に脱イオン水できれいに洗浄し、その後、430℃の溶融KNO3に入れて3h処理し、次に取り出して25℃に冷却し、脱イオン水できれいに洗浄して乾燥し、ガラス完成品を得た。それぞれ各ガラス完成品の諸特性について測定し、結果を表1~3に示した。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
以上の表1~3の結果から明らかなように、本発明で製造されたガラスは、高い耐薬品性、高い歪点を有し、ガラスの表面には、高い圧縮応力及び圧縮応力層の深さが形成され、且つ該ガラスは、大きなヤング率を有するため、優れた破壊靭性が得られ、ガラス脆性の低下、ガラスの耐衝撃性の改善に寄与し、また、該カバーガラスは、失透が発生しにくく且つガラス化が容易であり、生産プロセスの要件を満たし、優れた耐熱性、耐衝撃性及び優れた耐引掻き性や耐摩耗能を有し、ディスプレイ製品のガラス表面への衝撃や引掻きの損傷を好適に防止でき、カバーガラス(特にタッチスクリーンカバーガラス)としての要件を満たせる。
【0061】
また、以上の実施例1~12と比較例1~2の結果を比較して分かるように、本発明は、各成分の含有量を特定の範囲に限定することによって、製造されたガラスの化学的安定性、破壊靭性及び耐衝撃性を向上させることができ、且つ優れた耐薬品性を付与する。さらに、以上の実施例1~10と実施例11~12の結果を比較して分かるように、本発明は、さらに各成分の含有量を好適範囲に限定することによって、製造されたガラスの化学的安定性、破壊靭性及び耐衝撃性をより向上させ、それにより、総合的な特性に最も優れたガラス製品が得られ得る。
【0062】
以上、本発明の好適実施形態を詳細に説明したが、本発明は、上記実施形態における詳細に制限されず、本発明の技術構想の範囲から逸脱せずに、本発明の技術案についてさまざまな簡単な変形を行うことができ、これら簡単な変形は、すべて本発明の特許範囲に属する。
【0063】
また、なお、上記特定の実施形態において説明した各特定の技術的特徴は、矛盾しない限り、任意の適切な方式で組み合わせることができる。不要な重複を回避するために、本発明は、さまざまな可能な組み合わせの形態について説明しない。
【0064】
これに加えて、本発明のさまざまな実施形態も任意に組み合わせることができ、本発明の主旨に違反しない限り、本発明の開示内容とみなすべきである。