IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーディー グラス ソリューションズ,インクの特許一覧

特許6995891パッケージ光活性ガラス基板内のRFシステムのための2D及び3DのRF集中素子デバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】パッケージ光活性ガラス基板内のRFシステムのための2D及び3DのRF集中素子デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 7/01 20060101AFI20220107BHJP
   H01P 5/08 20060101ALI20220107BHJP
   C03B 32/02 20060101ALI20220107BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H03H7/01 Z
H01P5/08 L
C03B32/02
C03C15/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019570136
(86)(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 US2018039841
(87)【国際公開番号】W WO2019010045
(87)【国際公開日】2019-01-10
【審査請求日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】62/529,990
(32)【優先日】2017-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516218823
【氏名又は名称】スリーディー グラス ソリューションズ,インク
【氏名又は名称原語表記】3D GLASS SOLUTIONS,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(72)【発明者】
【氏名】フレミング ジェブ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】バリントン ジェフ
(72)【発明者】
【氏名】マクウェシー カイル
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-516307(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0277047(US,A1)
【文献】特表2017-504211(JP,A)
【文献】特開平10-199728(JP,A)
【文献】特表2016-502261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 5/00- 7/54
H01P 5/08
C03B 32/02
C03C 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積化集中素子デバイスが感光性ガラスの中又は上にシステムインパッケージ(SiP,system-in-package)の少なくとも一部分として形成された、パッケージ内のシステムを生成するための方法であって、
1又は2以上の構造体を備える設計レイアウトをマスキングして、感光性ガラス基板の上又は中に1又は2以上の集中素子デバイスを形成するステップであって、各々の集中素子デバイスが、1又は2以上の抵抗器、1又は2以上のコンデンサ及び1又は2以上のインダクタからなる、ステップと、
前記感光性ガラス基板の少なくとも一部分を活性化エネルギー源に露光するステップと、
少なくとも10分間、前記感光性ガラス基板をそのガラス転移温度を超えて加熱するステップと、
前記露光された感光性ガラス基板の少なくとも一部を結晶材料に変換させるように前記感光性ガラス基板を冷却して、ガラス結晶基板を形成するステップと、
前記ガラス結晶基板をエッチャント溶液でエッチングして、前記ガラス結晶基板内に1又は2以上のトレンチ及び1又は2以上のビアを形成するステップであって、前記1又は2以上のトレンチ及び前記1又は2以上のビアに隣接している前記ガラス結晶基板がセラミック相に変換され、ステップと、
前記1又は2以上の抵抗器のために形成された前記1又は2以上のトレンチを抵抗器材料で充填するステップと、
前記1又は2以上のトレンチを充填して、前記感光性ガラス基板の表面上に堆積する銅の電気めっきを可能にするように、前記エッチングステップ中に露光される前記ガラス結晶基板の表面においてシード層を堆積、成長、又は選択的にエッチングするステップと
前記1又は2以上のコンデンサ及び前記1又は2以上のインダクタのために形成された前記1又は2以上のトレンチ及び前記1又は2以上のビア内に銅を電気めっきするステップと、
前記1又は2以上のコンデンサの電極の間に1又は2以上のコンデンサ空間を形成し、高k材料で前記1又は2以上のコンデンサ空間を充填し、前記1又は2以上のコンデンサのキャパシタンスを増加させ、前記1又は2以上のコンデンサの品質係数を改善するステップと、
前記1又は2以上のインダクタの間若しくは周りに1又は2以上のインダクタ空間を形成し、磁気粒子を含むゾルーゲル材料で前記1又は2以上のインダクタ空間を充填し、前記1又は2以上のインダクタのインダクタンスを増加させるステップと
を含む、
前記方法。
【請求項2】
1又は2以上の前記集積化集中素子デバイスで、アイソレータ、サーキュレータ、又はRFフィルタを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1又は2以上の集積化集中素子デバイスで、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、バンドパスフィルタ、変成器、サーキュレータ、及びアイソレータのうちの少なくとも1つを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1又は2以上のアンテナ、インピーダンスマッチング素子、50オーム終端素子、集積化接地板、RF遮蔽素子、EMI遮蔽素子、RF結合器、RF分割器、変成器、スイッチ、電力分割器、電力結合器、及び/又はダイプレクサを形成するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
集積化集中素子デバイスが感光性ガラスの中又は上にシステムインパッケージ(SiP,system-in-package)の少なくとも一部分として形成された、パッケージ内のシステムを生成するための方法であって、
1又は2以上の構造体を備える設計レイアウトをマスキングして、感光性ガラス基板の上又は中に1又は2以上の集中素子デバイスを形成するステップであって、各々の集中素子デバイスが、1又は2以上の抵抗器、1又は2以上のコンデンサ及び1又は2以上のインダクタからなる、ステップと、
前記感光性ガラス基板の少なくとも一部を結晶材料に変換して、ガラス結晶基板を形成するステップと、
前記ガラス結晶基板をエッチャント溶液でエッチングして、前記ガラス結晶基板内に1又は2以上のトレンチ及び1又は2以上のビアを形成するステップであって、前記1又は2以上のトレンチ及び前記1又は2以上のビアに隣接している前記ガラス結晶基板がセラミック相に変換され、ステップと、
前記1又は2以上の抵抗器のために形成された前記1又は2以上のトレンチを抵抗器材料で充填するステップと、
前記1又は2以上のトレンチを充填して、前記感光性ガラス基板の表面上に堆積する銅の電気めっきを可能にするように、前記エッチングステップ中に露光される前記ガラス結晶基板の表面においてシード層を堆積、成長、又は選択的にエッチングするステップと
前記1又は2以上のコンデンサ及び前記1又は2以上のインダクタのために形成された前記1又は2以上のトレンチ及び前記1又は2以上のビア内に銅を電気めっきするステップと、
前記1又は2以上のコンデンサの電極の間に1又は2以上のコンデンサ空間を形成し、高k材料で前記1又は2以上のコンデンサ空間を充填し、前記1又は2以上のコンデンサのキャパシタンスを増加させ、前記1又は2以上のコンデンサの品質係数を改善するステップと、
前記1又は2以上のインダクタの間若しくは周りに1又は2以上のインダクタ空間を形成し、磁気粒子を含むゾルーゲル材料で前記1又は2以上のインダクタ空間を充填し、前記1又は2以上のインダクタのインダクタンスを増加させるステップと
を含む、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
なし
【0002】
連邦政府の資金による研究の記載
なし
【0003】
本発明は、一般に、パッケージ光活性ガラス基板内のRFシステムのためのRF集中素子デバイスの分野に関する。
【背景技術】
【0004】
本発明の範囲を限定することなく、RF集中素子デバイスに関連するその背景技術について説明する。
【0005】
感光性ガラス構造体は、集積化電子素子などを他の素子システム又はサブシステムと併用するいくつかのマイクロマシニングプロセス及び微細加工プロセスに対して提案されてきた。従来のガラスのシリコン微細加工は、高価で、歩留まりが低く、一方、射出成形プロセス又はエンボスプロセスでは、一貫性のない形状が生産されている。シリコン微細加工プロセスは、高価な資本設備、総じて100万ドルを超える費用がそれぞれにかかるフォトリソグラフィー及び反応性イオンエッチング又はイオンビームミリングのツールに依存しており、これらのツールには、何百万~何十億超えという費用のかかる超清浄高生産のシリコン加工施設が必要である。射出成形及びエンボスは、3次元形状を生産する、それほど費用のかからない方法であるが、転写の際に欠陥を生じさせ、又は確率論的な硬化プロセスに起因して差をもたらす。理想的なインダクタは、抵抗とキャパシタンスがゼロになる。しかし、実際のインダクタは、「寄生」抵抗、インダクタ、及びキャパシタンスを有する。
【0006】
歴史的には、インダクタキャパシタンスは、絶縁コイル巻線間の電荷分離の結果であるという仮定に基づいて、「巻線間のキャパシタンス」と呼ばれている。しかしながら、インダクタが導電接地板を介して測定される場合、コイルと接地板との間のキャパシタンスもまた、測定の一部である。測定接地板からのコイルの距離、及び測定基板の実効誘電率は、キャパシタンス対接地に影響を及ぼす。このことは、テスト治具がどのようにSRF測定に影響を及ぼすかについて部分的に説明している。次の等式は、SRFがどのようにLC回路内のインダクタンスとキャパシタンスとに関係しているかについて示している。
【0007】
【数1】
【0008】
ただし、Lは、ヘンリー単位でのインダクタンスであり、Cは、ファラッド単位でのキャパシタンスである。
【0009】
付加インダクタンスに加えて、キャパシタンス及び抵抗は、(1)PCB相互接続部、(2)長尺の金属再配線、(3)ボンドパッド、(4)はんだボール、(5)基板損失及び誘電率/損失正接、並びに/又は(6)一貫性のない組立てからの損失を排除する。
【0010】
この等式から、一般に、RFフィルタ及び/又はマイクロ波フィルタは、1又は2以上の結合された共振器でできており、複数の異なる技術を使用して共振器/フィルタを作製し得ることが明白である。共振器/フィルタのほとんどが、3つの大まかなカテゴリ、すなわち、集中素子、マイクロストリップ伝送線、及び同軸導波管のうちの1つに分類される。
【0011】
集中素子又はインダクタコンデンサ(LC)のフィルタは、RF及びマイクロ波のフィルタ並びに他のデバイスにおいて使用される最も単純な共振器構造体である。集中素子回路は、並列又は直列のインダクタ及びコンデンサからなる。集中素子のフィルタ/デバイスの利点は、それらが非常に小型であり得ることであるが、欠点は、それらは、品質係数が低く、歪み/雑音のレベルが大きく、比較的、性能が劣ることである。そのため、集中素子デバイスは、RF/マイクロ波の適用例においては実行可能な一選択肢とは見なされない。
【0012】
2003年に発表されたInder Bahlによる書籍、Lumped Elements for RF and Microwave Circuitsには、「理想的な集中素子は、フリンジ場に起因する関連の寄生リアクタンスにより、より低いマイクロ波周波数でも実現不可能である。RF及びマイクロ波の周波数では、各構成要素には、関連の電場及び磁場、並びに有限の散逸損失がある。したがって、そのような構成要素は、それらにわたる電気エネルギー及び磁気エネルギーを貯蔵又は放出し、それらの抵抗は、電力散逸の原因になる。これらの素子内のC、L、及びRの構成要素の相対値は、LEの使用目的によって決まる。それらの電気的振舞いについて説明するには、そのような構成要素の等価回路モデルが、一般に使用される。集中素子等価回路(EC,equivalent circuit)モデルは、関連の寄生成分が下付き文字によって表される基本回路素子(L、C、又はR)からなる。MIC及びMMICの正確なコンピュータ支援型設計には、これらの構成要素の完全で正確な特性評価が必要である。これには、接地板、フリンジ場、近接効果、基板の材料及び厚さ、導体の厚さ、並びに関連の実装技術及び適用例の効果を含む包括的なモデルが必要である。したがって、その寄生成分及びそれらの周波数依存特性を伴う集中素子のEC表現は、正確な素子モデル化に不可欠である。ECモデルは、もしあれば共振を含むその応答について十分に説明するのに必要な回路素子からなる。モデルは、解析的な電磁シミュレーション、及び測定ベースの方法を使用して開発され得る。集中素子の初期モデルは、解析的な半経験的な等式を使用して開発された。1943年には、Termanは、薄い金属の直線のインダクタンスの式を発表し、後にそれは、金属化厚さの効果を追加したCaulton et al.によって改善された。Wheelerは、より低いマイクロ波周波数において適度に優れた正確性を伴う、円形スパイラルインダクタのインダクタンスについての近似式を提示した。この式は、マイクロ波集中回路の設計において広範に使用されてきた。その他の者も、複数のジオメトリのインダクタンス計算について論じてきた。MICのマイクロストリップインダクタの論理的モデル化は、通常、2つの方法、すなわち、集中素子手法と結合線手法とに基づいている。集中素子手法は、接地板効果を伴う自由空間インダクタンスについての式を使用する。これらの周波数に依存しない式は、インダクタの全長が動作波長のごく一部であるとき、及びターン間キャパシタンスが無視できるときのみ、有用である。結合線手法においては、インダクタは、多導体結合マイクロストリップ線を使用して解析される。RF及びマイクロ波の回路のための10の集中素子のこの技法は、2ターンについて最大で約18GHzまでのスパイラルインダクタの性能を適度によく予測する。櫛歯型コンデンサの初期理論については、Alleyが発表し、Joshi et al.は、これらのコンデンサについての修正された式を提示した。Mondalは、結合線手法に基づいて、MIMコンデンサの分散モデルについて報告した。Pengelly et al.は、Q係数に特に重点を置いて、インダクタ及び櫛歯型コンデンサを含む、GaAs上の異なる集中素子に関する最初の広範な結果を提示した。Pettenpaul et al.は、基本マイクロストリップ理論及び回路網解析と共に数値解法を使用する集中素子モデルについて報告した。一般に、解析モデルは、集中素子の電気性能を推測するのに優れている。マイクロ波周波数における集中L、C、R素子の実現は、構成要素のサイズを動作波長よりもはるかに小さく維持することによって可能である。しかしながら、構成要素のサイズが1/10よりも大きくなると、これらの構成要素は、抵抗、キャパシタンス、及びインダクタンスなどの望ましくない関連の寄生成分をもたらす。RF周波数及びより高い周波数では、寄生成分のリアクタンスはより著しくなり、周波数の上昇により、結果的に、より高い損失及びスプリアス共振がもたらされることになる。したがって、経験的表現は、LE性能を正確に予測するほど正確ではない。一旦、集中素子が、電磁(EM,electromagnetic)シミュレーション又は測定結果のいずれかによって正確に特徴付けられると、寄生リアクタンスは、構成要素の不可欠な一部になり、それらの効果は、設計内に含められ得る。ワークステーション計算能力及びユーザフレンドリーのソフトウェアにおける近年の進歩は、EM場シミュレータの開発を可能にしている。これらのシミュレータは、伝送線などの単一及び多層の受動回路素子及びそれらの不連続性、パッチ、多層構成要素、すなわち、インダクタ、コンデンサ、抵抗器、ビアホール、エアブリッジ、インダクタ変成器、及びパッケージなど、並びに様々な回路素子間の受動結合のシミュレーションの重要な役割を果たす。密に詰められたモノリシックマイクロ波集積化回路(MMIC,Monolithic Microwave Integrated Circuit)の性能に対する放射線、表面波、及び構成要素間の相互作用の効果の正確な評価は、3次元(3D)EMシミュレータを使用してのみ計算され得る。集中素子の正確なモデルを開発する最も一般に使用される方法は、DC抵抗及びSパラメータデータを測定することによる。このモデル化手法により、迅速で正確な結果が得られるが、それらの結果は、一般に、測定されるデバイスのみに限定される。ECモデルパラメータは、適用例に応じて、測定されたDC及びSパラメータデータ(1又は2ポートのデータ)を最大で26又は40GHzまで相関させるコンピュータ最適化によって抽出される。モデルパラメータ値の正確度は、近年開発されたオンウェハ較正標準及び技法を使用することによって測定正確度と同程度にすることができる。等価な回路モデルは、最初の並列共振周波数(fres)まではほとんど有効である。しかしながら、設計が高調波に関わっているとき、例えば、出力部において第2及び第3の高調波の終端部を備える電力増幅器では、最高設計周波数まで働くEMシミュレーションデータ、又はより高次の共振を考慮するより複雑なモデルのいずれかが必要である。動作周波数がfres/3未満である場合には、上述のモデルは適当である。RF周波数及びマイクロ波周波数においては、LEの抵抗は、表皮効果に起因して、それらのDC値とは全く異なる。RF信号がLEにわたって印加されたとき、導体材料の有限導電率に起因して、EM場は、導体にその断面に沿って制限された深さしか侵入しない。場が表面における値の1/e(約36.9%)に減少する導体内の距離は、侵入深さ、又は表皮深さと呼ばれる。この効果は、周波数に応じ、侵入深さは周波数の増加と共に減少する。RF電流の流れは、表面のみに限定され、その結果、DC値よりも高いRF表面抵抗がもたらされる。この効果は、構成要素内の抵抗損失の正確なモデル化の間、考慮される。」と記述されている。
【0013】
ストリップラインとしても知られているマイクロストリップ伝送線は、優れた共振器/フィルタを作製し、サイズ及び性能の観点から、集中素子フィルタよりも優れた妥協案を提案することができる。マイクロストリップ回路を製造するのに使用されるプロセスは、精密な薄膜プロセスを使用するプリント回路ボードを製造するのに使用されるプロセスと非常に似ているが、石英基板、セラミック基板、サファイア基板、及び金などのより低い抵抗の金属を使用して、低い電力/損失のRF適用例に必要な性能を得ることが必要である。
【0014】
同軸導波管(CW,Coaxial Waveguide)フィルタは、平面伝送線よりも高いQ係数を提供し、高性能RF適用例において使用される。同軸共振器は、それらのサイズを低減させるために、高誘電率材料を活用することができる。周波数、サイズに反比例するCWフィルタのサイズは、セラミック基板に関して30GHzを上回る周波数において2cm未満に達することができる。セラミック基板と物理的サイズとの組合せにより、フィルタが、これらのフィルタを他のRFフィルタと比べて高価にすること及び大型にすることが避けられ、そのため、市販の可搬型で小型のRF製品には一般に使用されていない。
【0015】
最も一般的なRFフィルタのうちの1つは、表面弾性波(SAW,surface acoustic wave)及び/又はバルク弾性波(BAW,bulk acoustic wave)である。SAWとBAWとは共に、動作周波数が圧電材料における音速を超えると、信号対雑音比の減少を呈する。単一の結晶BAWデバイスは、より高い性能を有するように示されているが、周波数が圧電材料の音速を超えるときの信号対雑音の劇的な急減を被りもする。SAWフィルタ及びBAWフィルタにおいて使用される圧電材料の音速により、それらの適用例が3GHz未満の周波数に限定されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0016】
【文献】2003年に発表されたInder Bahlによる書籍、Lumped Elements for RF and Microwave Circuits
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
全てのこれらの利点にもかかわらず、依然として、既存のデバイスには、信号対雑音比を増加させ、構築が容易で安価であり、(1)PCB相互接続部、(2)長尺の金属再配線、(3)ボンドパッド、(4)はんだボール、(5)基板損失及び誘電率/損失正接、並びに/又は(6)一貫性のない組立てからの損失を排除する改善の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
1つの実施形態においては、本発明は、集積化集中素子デバイスが光限定性ガラスの中又は上にシステムインパッケージ(SiP,system-in-package)として形成される、パッケージの中にシステムを生成するための方法を含み、この方法は、1又は2以上の構造体を備える設計レイアウトをマスキングして、感光性ガラス基板の上又は中に1又は2以上の電気的構成要素を形成するステップと、感光性ガラス基板の少なくとも一部分を活性化エネルギー源に露光するステップと、少なくとも10分間、感光性ガラス基板をそのガラス転移温度を超えて加熱するステップと、露光されたガラスの少なくとも一部を結晶材料に変成させるように感光性ガラス基板を冷却して、ガラス結晶基板を形成するステップと、ガラス結晶基板をエッチャント溶液でエッチングして、デバイスの中に1又は2以上のチャネルを形成するステップであって、ガラス結晶基板が、トレンチに隣接しており、セラミック相に変換されてもよい、ステップと、トレンチを充填し光限定性ガラスの表面上に堆積する銅の電気めっきを可能にするように、エッチングステップ中に露光されるガラス結晶基板の表面においてシード層を堆積、成長、又は選択的にエッチングするステップとを含み、集積化集中素子デバイスは、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、光限定性ガラスの中又は上にシステムインパッケージ(SiP)に実装されるパッケージ集中素子デバイスから寄生雑音及び損失を少なくとも25%、低減させる。1つの態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiP内にあるアイソレータを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるサーキュレータを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるRFフィルタを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるローパス、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、バンドパスフィルタ、変成器(transformer)、サーキュレータ、アイソレータのうちの少なくとも1つを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、光限定性ガラス基板の中又は上に電力結合器、電力分割器RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも30%を排除するSiP RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失(基板への実装素子のパッケージ化に関連する損失)の少なくとも35%を排除するSiP RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも50%を排除するSiP RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、1又は2以上のRFフィルタ、RFサーキュレータ、RFアイソレータ、アンテナ、インピーダンスマッチング素子、50オーム終端素子、集積化接地板、RF遮蔽素子、EMI遮蔽素子、RF結合器、RF分割器、変成器、スイッチ、電力分割器、電力結合器、及び/又はダイプレクサを形成するステップをさらに含む。
【0019】
本発明の別の実施形態は、本明細書に上述の方法によって作製される光限定性ガラス基板の中又は上のシステムインパッケージ(SiP)に実装されるパッケージ集中素子デバイスを含む。1つの態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるアイソレータである。別の態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるサーキュレータである。別の態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるRFフィルタである。別の態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、バンドパスフィルタ、変成器、サーキュレータ、アイソレータのうちの少なくとも1つである。別の態様においては、デバイスは、光限定性ガラス基板の中又は上の電力結合器、電力分割器RF回路である。別の態様においては、デバイスは、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも30%を排除するSiP RF回路である。別の態様においては、デバイスは、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも35%を排除するSiP RF回路である。別の態様においては、方法は、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも50%を排除するSiP RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、デバイスは、1又は2以上のRFフィルタ、RFサーキュレータ、RFアイソレータ、アンテナ、インピーダンスマッチング素子、50オーム終端素子、集積化接地板、RF遮蔽素子、EMI遮蔽素子、RF結合器、RF分割器、変成器、スイッチ、電力分割器、電力結合器、及び/又はダイプレクサである。
【0020】
さらなる別の実施形態においては、本発明は、集積化集中素子デバイスが光限定性ガラスの中又は上にシステムインパッケージ(SiP)として形成される、パッケージの中にシステムを生成するための方法を含み、この方法は、1又は2以上の構造体を備える設計レイアウトをマスキングして、感光性ガラス基板の上又は中に1又は2以上の電気的構成要素を形成するステップと、露光されたガラスの少なくとも一部を結晶材料に変成して、ガラス結晶基板を形成するステップと、ガラス結晶基板をエッチャント溶液でエッチングして、デバイスの中に1又は2以上のチャネルを形成するステップであって、ガラス結晶基板が、トレンチに隣接しており、セラミック相に変換されてもよい、ステップと、トレンチを充填し光限定性ガラスの表面上に堆積する銅の電気めっきを可能にするように、エッチングステップ中に露光されるガラス結晶基板の表面においてシード層を堆積、成長、又は選択的にエッチングするステップとを含み、集積化集中素子デバイスは、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、光限定性ガラスの中又は上にシステムインパッケージ(SiP)に実装されるパッケージ集中素子デバイスから寄生雑音及び損失を少なくとも25%、低減させる。1つの態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるアイソレータを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるサーキュレータを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるRFフィルタを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、バンドパスフィルタ、変成器、サーキュレータ、アイソレータのうちの少なくとも1つを形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、光限定性ガラス基板の中又は上に電力結合器、電力分割器RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも30%を排除するSiP RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも35%を排除するSiP RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、等価な表面実装型デバイスと比較したとき、RF寄生信号損失の少なくとも50%を排除するSiP RF回路を形成するステップをさらに含む。別の態様においては、方法は、1又は2以上のRFフィルタ、RFサーキュレータ、RFアイソレータ、アンテナ、インピーダンスマッチング素子、50オーム終端素子、集積化接地板、RF遮蔽素子、EMI遮蔽素子、RF結合器、RF分割器、変成器、スイッチ、電力分割器、電力結合器、及び/又はダイプレクサを形成するステップをさらに含む。
【0021】
本発明の別の実施形態は、本明細書に上述の方法によって作製される光限定性ガラス基板の中又は上にシステムインパッケージ(SiP)に実装されるパッケージ集中素子デバイスを含む。1つの態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるアイソレータである。別の態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるサーキュレータである。別の態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるRFフィルタである。別の態様においては、デバイスは、集積化集中素子デバイスがSiPの中にあるローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、バンドパスフィルタ、変成器、サーキュレータ、アイソレータのうちの少なくとも1つである。別の態様においては、デバイスは、光限定性ガラス基板の中又は上の電力結合器、電力分割器RF回路である。別の態様においては、デバイスは、基板への実装素子のパッケージ化に関連するRF寄生信号の少なくとも30%を排除するSiP RF回路である。別の態様においては、デバイスは、基板への実装素子のパッケージ化に関連するRF寄生信号の少なくとも35%を排除するSiP RF回路である。別の態様においては、デバイスは、1又は2以上のRFフィルタ、RFサーキュレータ、RFアイソレータ、アンテナ、インピーダンスマッチング素子、50オーム終端素子、集積化接地板、RF遮蔽素子、EMI遮蔽素子、RF結合器、RF分割器、変成器、スイッチ、電力分割器、電力結合器、及び/又はダイプレクサである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明の特徴及び利点をより完全に理解するために、次に、添付の図に沿って本発明の詳細な説明を参照する。
図1A】本発明のシステムインパッケージ(SiP)対表面実装技術(SMT,Surface-Mount Technology)におけるコンデンサの性能に対するキャパシタンスの寄生信号/損失の影響を示すグラフである。
図1B】本発明のSiP対SMTにおけるインダクタの性能に対する寄生信号/損失の影響を示すグラフである。
図2A】本発明のPCB上の表面実装パッケージにおける30GHzバンドパスフィルタ及びRFの歪みの性能を示すグラフである。
図2B】本発明の28GHzのSiPバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。
図2C】本発明のSiPベースの2.5GHzローパスフィルタの性能を示すグラフである。
図2D】本発明のSiPベースの2.5GHzローパスフィルタの画像である。
図3A】本発明のSiPベースの19GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。
図3B】本発明のSiPベースの19GHzバンドパスフィルタの画像である。
図4A】本発明のSiPベースの24GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。
図4B】本発明のSiPベースの24GHzバンドパスフィルタの画像である。
図5A】本発明のSiPベースの33GHzローパスフィルタの性能を示すグラフである。
図5B】本発明のSiPベースの33GHzローパスフィルタの画像である。
図6A】本発明のSiPベースの28GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。
図6B】本発明のSiPベースの28GHzバンドパスフィルタの画像である。
図7A】本発明のSiPベースの7GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。
図7B】本発明の複数のSiPベースの7GHzバンドパスフィルタの画像である。
図8】本発明のSiPベースのフィルタの挿入損失を示すグラフである。
図9】本発明の集中素子を含むドハティ増幅器設計を示す図である。
図10】電力分割器/結合器を示す図である。
図11】終端抵抗器が集中素子サーキュレータに接続されているときのサーキュレータを示す図であり、それは、アイソレータになる。
図12】本発明の集積化集中素子デバイスを備えるガラスベースのSiPを示す図である。SiPは、およそ0.5cm×0.5cmである。
図13】本発明の集積化集中素子デバイスを備えるガラスベースのSiPのサンプル化を示している。SiPのサイズに応じて、単一のウェハ上に多数のSiPが存在し得る。
図14A-14F】本発明を使用するデバイスを作製するプロセスを示す図である。
図15A-15F】本発明を使用するデバイスを作製するさらなる処理ステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の様々な実施形態の作製及び使用について詳細に後述するが、本発明が幅広い多様な特定の文脈で具現化され得る多くの適用可能な発明概念を提供していることを認識すべきである。本明細において論じる特定の実施形態は、単に本発明を作製し使用するための特定のやり方を示しているにすぎず、本発明の範囲を定めるものではない。
【0024】
本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語が以下に定義される。本明細書において定義される用語は、本発明に関係する分野の当業者によって一般に理解される意味を有する。「a」、「an」及び「the」などの用語は、単数形の実体のみを示すように意図するものではなく、特定の例が例示に使用され得る概括的なクラスを含む。本明細書における専門用語は、本発明の特定の実施形態について説明するのに使用されるが、それらの用法は、特許請求の範囲において概説されていない限り、本発明を限定するものではない。
【0025】
本発明は、RFドメインにおける集中素子デバイスに関連する寄生損失及び寄生信号を排除する。集中素子デバイス又は集中素子デバイスの配列は、広い数の電子デバイス及び機能を実装するためのコンデンサ、インダクタ、及び抵抗器からなり、これらの電子デバイス及び機能は、寄生信号若しくは寄生損失を排除又は大いに低減するマイクロ波及び高周波のための光限定性ガラスセラミックのシステムインパッケージ(SiP)の中に、フィルタ(バンドパスフィルタ、バンドストップフィルタ、ハイパスフィルタ、ノッチフィルタ、ローパスフィルタ)、サーキュレータ、アンテナ、電力調節部、電力結合器、電力分割器、マッチング回路網、アイソレータ、及び/又はドハティ電力増幅器を含む。寄生信号又は寄生損失は、パッケージ化された集中素子デバイスをSiPに取り付けるパッケージ化、はんだボンディング(ボールグリッド)、電子コネクタ(ワイヤ)、電気的ボンドパッド、及び実装素子からのインダクタンス、キャパシタンス、及び抵抗と組み合わせられるアンテナ効果から生じさせられる。歪み信号又は損失は、プリント回路ボード又は基板上の他のRFデバイスに伝送される。実際の意図された性能から大きい性能変動を生成するのに十分な変動が集中素子の従来のパッケージ化及び実装には存在する。これらの変動は、パッケージ化におけるわずかな差に起因してランダムであるように見え、それにより、RF製品に多数の設計の繰返し及び/又は手動のトリミング/訂正に耐えさせて、所望の動作エンベロープを満たす最終的なRF回路を生成する。RFパッケージ化及び素子実装に関連する歪みを排除することにより、RFフィルタデバイスは、設計され/シミュレーションされるようにあらかじめ形成することが可能になる。光限定性ガラスセラミックSiPに集中素子デバイスを集積化することにより、回路は、RFスペクトル全体を通して設計されシミュレーションされるようにあらかじめ形成することが可能になる。これらの集中素子デバイス構造体は、デバイスパリティ、より低い損失、低信号歪み、低減した寄生キャパシタンス、低減した費用、及びより小さい物理的サイズに対する設計により、2次元又は3次元の集中素子デバイスを形成するように、個別に又は同時のいずれかで、水平平面だけでなく垂直平面でも構成されている。
【0026】
背景技術において説明したように、感光性ガラス構造体は、集積化電子素子などを他の素子システム又はサブシステムと併用するいくつかのマイクロマシニングプロセス及び微細加工プロセスに対して提案されてきた。本発明は、従来のガラスのシリコン微細加工に対して利点を有し、この従来のガラスは、高価で、歩留まりが低く、一方、射出成形プロセス又はエンボスプロセスでは、一貫性のない形状が生産されている。本発明は、シリコン微細加工プロセスに対して付加的利点を有し、このシリコン微細加工プロセスは、高価な資本設備、総じて100万ドルを超える費用がそれぞれにかかるフォトリソグラフィー及び反応性イオンエッチング又はイオンビームミリングのツールに依存しており、これらのツールには、何百万~何十億超えという費用のかかる超清浄高生産のシリコン加工施設が必要である。本発明は、射出成形及びエンボスに伴う問題も克服し、この射出成形及びエンボスは、転写の際に欠陥を生じさせ、又は確率論的な硬化プロセスに起因して差をもたらす。理想的なインダクタは、抵抗とキャパシタンスがゼロになる。しかし、実際のインダクタは、「寄生」抵抗、インダクタ、及びキャパシタンスを有する。インダクタの第1の自己共振周波数は、インダクタがその自己キャパシタンスにより共振する最低周波数である。第1の共振は、インダクタンスとキャパシタンスとの並列組合せによってモデル化され得る。抵抗器「R1」は、インダクタの自己共振周波数(SRF,self-resonant frequency)における共振周波数付近のインピーダンスを制限し、次の条件のうちの全てが満たされる:(1)入力インピーダンスは、そのピークである、(2)入力インピーダンスの相角度は、正(誘導性)から負(容量性)へと移行して、ゼロである、(3)相角度がゼロであるので、Qはゼロである、(4)負の容量性リアクタンス(Xc=1/jωC)は、正の誘導性リアクタンス(XL=jωL)を取り消すだけであるので、実効インダクタンスはゼロである、(5)2ポート挿入損失(例えば、S21dB)は、最大値であり、これは、周波数対S21dBのプロットの中の最小値に対応する、及び(6)2ポート相(例えば、S21)の角度は、より低い周波数における負からより高い周波数における正へと移行して、ゼロである。
【0027】
これらのニーズに対処するために、本発明者らは、半導体、RFエレクトロニクス、マイクロ波エレクトロニクス、及び光学撮像用の新規なパッケージ化及び基板材料としてガラスセラミック(APEX(登録商標)ガラスセラミック)を開発した。APEX(登録商標)ガラスセラミックは、単純な3ステッププロセスで第一世代の半導体設備を使用して処理され、最終材料は、ガラス若しくはセラミックのいずれかに形作られ、又はガラスとセラミックとの両方の領域を包含することができる。APEX(登録商標)ガラスセラミックは、次、すなわち、簡単に加工された高密度のビアと、電子デバイスとのうちの一方又は一部を含むSiPの生成を可能にし、この電子デバイスは、インダクタ、コンデンサ、抵抗器、伝送線、同軸線、アンテナ、マイクロプロセッサ、メモリ、増幅器、トランジスタ、マッチング回路網、RFフィルタ、RFサーキュレータ、RFアイソレータ、インピーダンスマッチング素子、50オーム終端素子、集積化接地板、RF遮蔽素子、EMI遮蔽素子、RF結合器、RF分割器、変成器、スイッチ、マルチプレクサ、及び/又はダイプレクサを含む。
【0028】
図1Aは、同じ3pFコンデンサと5pFコンデンサとのテスト結果を示している。1組のコンデンサが、ガラスSiP上に集積化され、テストされた。他の組のコンデンサは、表面実装技術(SMT)でパッケージ化され、テストされた。結果的に生じるデータは、SiP集積化コンデンサが、SMTでパッケージ化される同じコンデンサと比較して、150%~135%の間のより高いSRFを有し、したがって、従来技術に対して著しく改善したことを示した。性能の改善は、ボンディングパッド、ボールボンド、埋込みリード、基板、及びSMTパッケージ化に関連する他の寄生効果から損失を取り除くことに起因する。図1Bは、SMTか、又は集積化SiPかのいずれかにおいて測定される2つのインダクタ(56nHと95nH)間の性能を示している。SiPベースのインダクタは、SMTパッケージ化のパッドによって生じさせられるキャパシタンスに関連する寄生損失又は信号を取り除くことに起因してSMTの一部よりもSRFが50%高い。平均的な集積化SiP構成要素に関しては、SMTと正確に同じ一部と比較してSRFが50%高い。SMTデバイスに対する集積化SiPデバイス間の性能差がdB単位で測定されるとき、パッケージの中にシステムを作製するのに使用される他のRF/マイクロ波構成要素に加えて、フィルタ、ドハティ増幅器、サーキュレータ、アイソレータ、アンテナ、電力分割器、電力結合器において実現されるインダクタとコンデンサとの組合せの使用に関連する寄生損失又は信号を付加することができる。損失の組合せに関しては、図2A図2Dでわかり得る。図2A及び図2Bは、SiPに集積化される集中素子フィルタの性能と、表面実装デバイス(SMD)パッケージの中にパッケージ化されるその他との差を示している。図1Aは、プリント回路ボードベースのSiPにおいて実装されるSMDパッケージ内の集中素子バンドパスフィルタのための信号を示している。図1Bは、ガラスベースのSiPに直接、集積化される同じ集中素子バンドパスフィルタの信号を示している。図1A及び図1Bの性能曲線の下のエリア間の正規化差は、およそ200%である。これは、SiP基板の中に直接、集積化されるRF集中素子デバイスの使用により、寄生雑音及び損失が、最大で200%低減又は排除されることを示している。損失、歪み/雑音、寄生信号及び劣っている性能品質係数を排除すると、SiPベースの集中素子デバイスは、120よりもはるかに大きい品質係数のインダクタと共に、80よりもはるかに大きい品質係数のコンデンサを有することができる。SiPの中に直接、集積化される集中素子デバイスの性能の向上により、この場合、小さい形状サイズにより結合され得るRF/マイクロ波デバイスにおける劇的に改善した機能が実証されている。SiPの中又はSiPの上の直接、集積化された集中素子ベースのデバイスは、RFフィルタ、RFサーキュレータ、RFアイソレータ、アンテナ、インピーダンスマッチング素子、50オーム終端素子、集積化接地板、RF遮蔽素子、EMI遮蔽素子、RF結合器、RF分割器、変成器、スイッチ、電力分割器、電力結合器、及び/又はダイプレクサを含むが、これらに限定するものではない。SiP上のこれらの直接、集積化された集中素子デバイスは、集積化回路デバイスと接続される。これらの集積化回路デバイスは、マイクロプロセッサ、マルチプレクサ、スイッチ、増幅器、及びメモリを含むが、これらに限定するものではない。図3Aは、本発明のSiPベースの19GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。図3Bは、本発明のSiPベースの19GHzバンドパスフィルタの画像である。
【0029】
図4Aは、本発明のSiPベースの24GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。本発明は、キャパシタンス対周波数を測定したとき、本発明のSiP対SMTについて150%及び135%、信号を改善した。図4Bは、SiPベースの24GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。本発明は、インダクタンス対周波数を測定したとき、SMTと比較したとき、本発明のSiPを使用して50%、信号を改善した。
【0030】
図5Aは、本発明のSiPベースの33GHzローパスフィルタの性能を示すグラフである。図5Bは、本発明のSiPベースの33GHzローパスフィルタの画像を示している。
【0031】
図6Aは、本発明のSiPベースの28GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。図6Bは、本発明のSiPベースの28GHzバンドパスフィルタの画像を示している。
【0032】
図7Aは、本発明のSiPベースの7GHzバンドパスフィルタの性能を示すグラフである。図7Bは、本発明の複数のSiPベースの7GHzバンドパスフィルタの画像を示している。
【0033】
図8は、本発明のSiPベースのフィルタの挿入損失を示すグラフである。
【0034】
図9は、本発明を使用して作製され得る集中素子を含むドハティ増幅器設計を示している。図10は、本発明を使用して作製され得る電力分割器/結合器を示している。図11は、終端抵抗器が集中素子サーキュレータに接続されているときのサーキュレータを示し、それは、アイソレータになり、本発明を使用して作製され得る。図12は、本発明の集積化集中素子デバイスを備えるガラスベースのSiPを示している。SiPは、およそ0.5cm×0.5cmである。図13は、本発明の集積化集中素子デバイスを備えるガラスベースのSiPのサンプル化を示している。SiPのサイズに応じて、単一のウェハ上に多数のSiPが存在し得る。
【0035】
具体的には、集積化集中素子RFデバイスを備えるSiPは、従来の半導体処理設備を使用するAPEX(登録商標)ガラスにおけるデバイスパリティに対する設計により生産されてきた。APEX(登録商標)ガラスSiP内の集積化集中素子RFフィルタは、図12でわかり得る。このAPEX(登録商標)ガラスSiPは、集積化集中素子デバイスを備える。SiPの中心における空きエリアは、SiPを完成するように集積化回路を配置するためにある。図13は、本発明の集積化集中素子デバイスを備えるガラスベースのSiPのサンプル化を示している。SiPのサイズに応じて、単一のウェハ上に多数のSiPが存在し得る。APEX(商標)ガラスウェハには、集積化集中素子デバイスを備える500超えのSiPが投入された。
【0036】
十分に集積化された集中素子デバイスを備えるSiPは、光限定性ガラスにおいて生産され得、この光限定性ガラスは、温度安定性が高く、機械的及び電気的特性に優れており、プラスチック及び多くの金属よりも耐化学性に優れている。本発明者らが知る限りでは、唯一の市販の光限定性ガラスは、Schott社製のFOTURAN(商標)である。FOTURAN(商標)は、微量の銀イオンを含有するリチウムアルミニウムシリケートガラスを含む。酸化セリウムの吸収バンド内でUV光に露光されると、酸化セリウムは、光子を吸収し電子を解放する増感剤として作用し、それにより、隣接する酸化銀を還元して銀原子が形成され、例えば、
Ce3+ + Ag+ = Ce4+ + Ag0
である。
【0037】
銀原子は、ベーキングプロセス中に銀ナノクラスタに合体し、周囲のガラスを結晶化するために核生成サイトを誘導する。マスクを通してUV光に露光された場合、ガラスの露光領域のみ、後続の熱処理中に結晶化することになる。
【0038】
この熱処理は、ガラス転移温度付近の(例えば、FOTURAN(商標)の場合、空気中で465℃よりも高い)温度で実施されなければならない。結晶相は、フッ化水素酸(HF)などのエッチャントに、露光されていない硝子状の非晶質領域よりも可溶性である。具体的には、FOTURAN(商標)の結晶領域は、10%HF中の非晶質領域よりも約20倍速くエッチングされ、それにより、露光領域が除去されると、壁勾配比が約20:1のマイクロ構造体が可能になる。本明細書に参照することによって組み込まれているT. R. Dietrich et al., "Fabrication technologies for microsystems utilizing photoetchable glass," Microelectronic Engineering 30, 497 (1996)を参照されたい。
【0039】
好ましくは、成形されたガラス構造体は、少なくとも1又は2以上の2次元又は3次元の誘導性デバイスを包含する。誘導性デバイスは、一連の接続されたループを作製することによって形成されて、自立インダクタを形成する。ループは、長方形、円形、楕円形、フラクタル、又は誘導を生じさせるパターンを生成する他の形状のいずれかとすることができる。APEX(登録商標)ガラスのパターン化領域には、めっき又は気相堆積を含むいくつかの方法によって、金属、合金、複合材、ガラス、又は他の磁気媒体が充填され得る。デバイス内の構造体(ループ、ターン、又は他の誘導性素子)の寸法と数が組み合わせられる媒体の磁気誘電率により、デバイスのインダクタンスがもたらされる。
【0040】
FOTURAN(商標)については、Invenios社(FOTURAN(商標)の米国の供給業者)によって供給される情報に記載されており、これは、酸化シリコン(SiO)75~85重量%、酸化リチウム(LiO)7~11重量%、酸化アルミニウム(Al)3~6重量%、酸化ナトリウム(NaO)1~2重量%、三酸化アンチモニウム(Sb)又は酸化ヒ素(As)0.2~0.5重量%、酸化銀(AgO)0.05~0.15重量%、及び酸化セリウム(CeO)0.01~0.04重量%から構成される。本明細書において使用されるとき、「APEX(登録商標)ガラスセラミック」、「APEXガラス」、又は単に「APEX」という用語は、本発明のガラスセラミック組成物の1つの実施形態を表すために使用される。
【0041】
本発明は、レンズに使用される成形APEXガラス構造体によって撮像適用例に使用するための、及び貫通層又は層内の設計を含む光限定性APEXガラスを備える光学マイクロ構造体を加工するための単一材料手法を提供する。
【0042】
概ね、ガラスセラミック材料は、マイクロ構造体の形成において限られた成功しか収めておらず、性能、均一性、他者による使用可能性、及び入手可能性の問題に悩まされてきた。過去のガラスセラミック材料は、歩留まりエッチングアスペクト比がおよそ15:1であるのとは対照的に、APEX(登録商標)ガラスは、平均エッチングアスペクト比が50:1よりも大きい。これにより、使用者は、より小さくより深い形状を生成することが可能になる。加えて、本発明者らの製造プロセスにより、90%よりも高い製品歩留まりが可能になる(これまでのガラス歩留まりは、50%前後である)。最後に、これまでのガラスセラミックでは、ガラスのおよそ30%しか、セラミック状態に変換されず、一方、APEX(登録商標)ガラスセラミックの場合、この変換は、70%前後である。
【0043】
APEX(登録商標)ガラス組成物は、その性能の向上について3つの主な仕組みを提供する:(1)銀の量が多いほど、より小さいセラミック結晶の形成につながり、これは粒界においてより速くエッチングされる、(2)シリカ含有量(HF酸によってエッチングされる主な構成成分)の減少により、露光されていない材料の望ましくないエッチングが減少する、並びに(3)アルカリ金属及び酸化ホウ酸の全重量パーセントが高いほど、製造中にさらにより均質なガラスが生産される。
【0044】
本発明は、電磁透過、変成器、フィルタリング適用例に使用される誘導性構造体を形成するのに使用するためのガラスセラミック構造体を加工するための方法を含む。本発明は、ガラスセラミック構造体の多平面内に生成される誘導性構造体を含み、そのようなプロセスは、(a)基板の向き又はエネルギー源の向きのいずれかを変更することによって様々な角度において露光が生じるように、励起エネルギーに露光するステップ、(b)ベーキングステップ、及び(c)エッチングステップを採用する。角度のサイズは、鋭角又は鈍角のいずれであってもよい。湾曲した構造体及び指状の構造体は、ほとんどのガラス、セラミック、又はシリコンの基板に生成することが実現不可能ではなくとも困難である。本発明は、ガラスセラミック基板のための水平平面だけでなく垂直平面にもそのような構造体を生成できる能力を生み出している。本発明は、ガラスセラミックの上又は中に誘導性構造体を加工するための方法を含む。
【0045】
ガラスのセラミック化は、ガラス基板全体をおよそ20J/CMの310nm照明に露光することによって達成される。ガラス空間をセラミック内に生成することを試みるとき、使用者は、ガラスがガラスのままの状態に維持すべきところを除いて、材料の全てを露光する。1つの実施形態では、本発明は、直径が異なる種々の同心円を包含する石英/クロムマスクを提供する。
【0046】
本発明は、電気マイクロ波及び高周波の適用例におけるガラスセラミック構造体の上又は中に誘導性デバイスを加工するための方法を含む。ガラスセラミック基板は、シリカ60~76重量%、KO少なくとも3重量%及びKOとNaOとの組合せ6~16重量%、AgO及びAuOからなる群から選択される少なくとも1つの酸化物0.003~1重量%、CuO0.003~2重量%、B0.75~7重量%、Al6~7重量%、BとAlとの組合せ13重量%以下、LiO8~15重量%、及びCeO0.001~0.1重量%を含むが、これらに限定されない広い数の組成変形形態を有する感光性ガラス基板とすることができる。この及び他の様々な組成物は、一般に、APEX(登録商標)ガラスと呼ばれる。
【0047】
露光された部分は、ガラス基板をガラス転移温度付近の温度まで加熱することによって結晶材料に変成させることができる。ガラス基板をフッ化水素酸などのエッチャントでエッチングすると、露光された部分の、露光されていない部分に対する異方性エッチング比は、少なくとも30:1であり、このとき、ガラスは、広域スペクトル中紫外線(約308~312nm)投光ランプに露光されて、アスペクト比が少なくとも30:1の成形ガラス構造体がもたらされ、誘導性構造体が生成される。露光用のマスクは、誘導性構造体/デバイスを生成するための湾曲した構造体を形成するように露光するために、連続したグレースケールを提供するハーフトーンマスクとすることができる。ハーフトーンマスク又はグレースケールにより、露光強度を制御することによってデバイス構造体を制御することが可能になる。指状のマスクのアンダーカットもまた、誘導性構造体/デバイスの生成に向けて生産するのに使用され得る投光露光と共に使用され得る。次いで、露光されたガラスは、典型的には、2ステッププロセスでベーキングされる。10分~2時間の間、420℃~520℃の間で加熱される温度範囲により、銀イオンを銀ナノ粒子へと合体させ、10分~2時間の間、520℃~620℃の間で加熱される温度範囲により、酸化リチウムは、銀ナノ粒子の周りに形成することが可能になる。次いで、ガラス板は、エッチングされる。ガラス基板は、異方性エッチングによる成形ガラス構造体を提供するように、典型的には5~10体積%のHF溶液のエッチャントでエッチングされ、露光された部分の、露光されていない部分に対するエッチング比は、広域スペクトル中紫外線投光照明により露光されたときは、少なくとも30:1であり、レーザにより露光されたときは、30:1よりも大きい。
【0048】
次いで、ガラス構造体は、典型的には、5~10体積%のHF溶液のエッチャントでエッチングされる。十分に集積化された集中素子デバイス構造体が、生成される。
【0049】
本発明及びその利点について詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、及び代替を本明細書において行うことができることを理解すべきである。所望の回路性能又は材料互換性があるいくつかの場合においては、SiPは、光限定性ガラスベースのデバイスのうちの1つの代わりに、抵抗器、コンデンサ、又はインダクタのSMDバージョンを使用することを選択することができる。素子のうちの1又は2以上のSMDバージョンを使用すると、組立て及びパッケージ化の際に細心の注意が必要なSiPの寄生発生雑音に寄与することになる。その上、本出願の範囲は、本明細書において記載されるプロセス、機械、製造物、物質の組成物、手段、方法、及びステップの具体的な実施形態に限定されるように意図するものではない。当業者は、本発明の開示から、本明細書において説明される対応する実施形態と実質的に同じ機能を実施し、又は実質的に同じ結果を達成する、現存する又は後に開発されることになるプロセス、機械、製造物、物質の組成物、手段、方法、若しくはステップが、本発明に従って利用可能であることを容易に認識するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造物、物質の組成物、手段、方法、又はステップをそれらの範囲内に含むように意図されている。
【0050】
図14A図14Fは、本発明を使用してデバイスを作製するプロセスを示している。図14A図14Dは、本発明の1つの例を示している。図14Aは、光限定性ガラス10である出発材料を示し、この光限定性ガラス10は、ウェハとすることができ、好ましくは、例えば、表面粗さが50nm以下で、RMS粗さが<200Åの表面対表面の平行度が10%以下の1mmの厚さのAPEX(登録商標)ガラスであってもよい。図14A図14Dのそれぞれにおいては、上面等角図が、破線A-A’に沿って示されている断面側面図と共に示されている。この例においては、SiP及びその製造物の抵抗器セクションが示されている。ステップ1からの光限定性ガラスウェハの表面においては、トレンチ/長方形のパターンが形成されている光限定性ガラス10上にフォトマスクが堆積され、光限定性ガラス10は、強度が約20J/cmの310nmにおける放射線に露光され、上述の露光を生成するようにベーキングされる。露光の幅、長さ、及び深さは、抵抗器値を決定する、抵抗器媒体の抵抗率と組み合わせられる。上面図と断面側面図は共に、図示の抵抗器のビアパターンを含んで示されている。マスクによってカバーされていない光限定性ガラス10を露光することにより、光限定性ガラス10の中にセラミック12が生成される。
【0051】
図14Bにおいては、先行ステップにおいて形成されたセラミック12が、さらに処理される。セラミック12に変換された光限定性ガラス10領域は、上述のHF酸のウェットエッチングでエッチングされて、トレンチ14が形成される。
【0052】
図14Cにおいては、光限定性ガラス10のエッチングされた領域には、アルミナ、AlN、Be、又は他の高周波数抵抗器材料のRF抵抗器ペースト又は媒体16が充填される。トレンチ14には、シルクスクリーンプロセスによって堆積される抵抗器ペースト又は媒体16が充填される。過剰なペーストは、DI軽水(light DI water)、又はIPAリンス及びナイロン拭き取りによって除去される。
【0053】
抵抗器ペースト16を含む光限定性ガラス10ウェハは、次いで、アルゴン又は真空などの不活性環境を含む焼なまし炉内に置かれる。光限定性ガラス10ウェハは、抵抗性材料を焼結するように傾斜付けられる。表面上の過剰な抵抗器媒体はいずれも、2μmシリカ研磨媒体及び水により、5分間のCMPプロセスによって除去され得る。
【0054】
光限定性ガラス10には、抵抗器を接続するために、標準フォトレジストが再度、コーティングされる。抵抗器層が堆積可能なフォトレジストを通してパターンを生成するように標準プロセスに続いて、パターンが露光され現像される。ウェハは、照明O2プラズマに露光されて、そのパターンでいずれの残留有機材料も除去される。典型的には、これは、1分間、200W順方向電力により0.1mトールにおいて達成される。次に、金属化層18、例えば、薄膜状のタンタル、チタニウム、TiN、TiW、NiCr、又は他の同様の媒体が堆積される。典型的には、堆積は、真空堆積によって達成される。シード層の真空堆積は、40Å/分の速度において、ガラス基板上にリフトオフパターンを通してタンタルをDCスパッタリングすることによって達成され得る。
【0055】
別の方法においては、光限定性ガラス10ウェハには、標準フォトレジストがコーティングされる。金属シード層が堆積可能なフォトレジストを通してパターンを生成するように標準プロセスに続いて、パターンが露光され現像される。ウェハは、照明O2プラズマに露光されて、そのパターンでいずれの残留有機材料も除去される。典型的には、これは、1分間、200W順方向電力により0.1mトールにおいて達成される。400Åのタンタルの薄膜シード層が、真空堆積によって堆積される。シード層の真空堆積は、40Å/分の速度において、ガラス基板上にリフトオフパターンを通してタンタルをDCスパッタリングすることによって達成され得る。
【0056】
図14Eに示す別の実施形態においては、SiPのコンデンサセクションが、マスクを使用して形成される。ステップ1からの光限定性ガラス10ウェハの表面においては、フォトマスクを使用して、上述の光限定性ガラスにおいてはしご形状の露光部を生成するように、強度約20J/cmの310nm照明においてコンデンサを撮像する。はしごの踏み板間の間隔は、5~95%の間の範囲に及ぶことができる。この構造体は、互いにかみ合った電極ベースのコンデンサを形成する。
【0057】
図14Fに示す別の実施形態においては、SiPのインダクタセクションは、マスクを使用して形成される。本明細書に上述の光限定性ガラス10ウェハ上のコンデンサ又は抵抗器に隣接する表面においては、貫通孔ビアのパターンを含むフォトマスクが作製され、ここでは、ビアの行のうちの一方が、他方の行に対して30%オフセットされている。ビアパターンは、上述の露光部を生成するように、強度約20J/cmの310nm放射線において露光される。この図は、インダクタのためのビアパターンの上面図を示している。
【0058】
セラミックに変換されたガラス領域は、上述のHF酸のウェットエッチングでエッチングされる。光限定性ガラス10ウェハは、銅めっき槽中に置かれ、この槽は、エッチングされたセラミック構造体を優先的にめっきし、ビア及び上述の互いにかみ合った線構造体を完全に充填する。
【0059】
図15A図15Fは、本発明を使用してデバイスを作製するためのさらなる処理ステップを示している。図15Aは、銅がガラス構造体(ビア及び互いにかみ合った線)を通して充填され、APEXガラス構造体が、インダクタのためのビアを接続しコンデンサのための互いにかみ合ったパターンを仕上げるパターンを有する第2のフォトマスクを使用して露光されることを示している。図15Bは、インダクタの断面図を示している。310nm照明の強度は、0.1J/cmであり、ウェハは、上述したように、30分間、アルゴンにおいて600℃でベーキングされる。図15A及び図15Bは、これにより、最初の数ミクロンの露光されたガラスをセラミックに変換することを示している。ウェハは、金属銀を露光する希釈HF槽中に置かれる。ウェハは、露光された銀/エッチングされた領域を選択的に金属化する銅めっき溶液中に置かれる。図15Cは、次のステップを示し、ここでは、付加的フォト露光及びエッチングが達成されて、コンデンサの品質係数すなわちQを改善するように、コンデンサの互いにかみ合った電極間のガラス/セラミック材料を除去することができる。図15Dは、次のステップを示し、ここでは、付加的フォト露光及びエッチングが達成されて、コンデンサの品質係数を改善するように、互いにかみ合った電極間のガラス/セラミック材料を除去し、キャパシタンスを劇的に増加させる高k媒体で充填され得る。図15Eは、次のステップを示し、ここでは、付加的フォト露光及びエッチングが達成されて、インダクタの品質係数すなわちQを改善するように、コイルが自立できるようにするために、インダクタの長方形の輪郭内で材料として識別されるガラス/セラミック材料を除去することができる。図15Fは、次のステップを示し、ここでは、付加的フォト露光及びエッチングが達成されて、インダクタの長方形の輪郭内で、又は長方形の輪郭の外側で材料として識別されるガラス/セラミック材料を除去することができる。この領域には、磁気コアインダクタを生成するように、不活性ガスの下、焼結され得る磁気粒子が充填され得る。これにより、さらにより高いレベルのインダクタンスを伴う集積化インダクタが可能になる。
【0060】
本明細書において論じられているいずれの実施形態も、本発明のいずれの方法、一式、試薬、又は組成物に関して実装され得、逆もまた同様であることが企図される。さらには、本発明の組成物は、本発明の方法を達成するために使用され得る。
【0061】
本明細書に説明される具体的な実施形態が、本発明を限定するものとしてではなく、例示として示されていることが理解されよう。本発明の主要な特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な実施形態において採用され得る。当業者は、本明細書に説明される特定の手順に対する数多くの等価物を日常的な実験のみを使用して認識し、又は確認することができるであろう。そのような等価物は、本発明の範囲内にあると見なされ、特許請求の範囲によって包含される。
【0062】
本明細書に言及の全ての発行物及び特許出願は、本発明が関係する当業者のレベルを示している。全ての発行物及び特許出願は、各個々の発行物又は特許出願が参照によって組み込まれていると具体的に及び個々に示されている場合と同じ範囲まで参照によって本明細書に組み込まれている。
【0063】
特許請求の範囲及び/又は本明細書における「備える、含む(comprising)」という用語と併用するとき、「a」又は「an」という単語の使用は、「1つ(one)」を意味し得るが、「1又は2以上(one or more)」、「少なくとも1つ(at least one)」、及び「1又は複数(one or more than one)」という意味とも一致する。特許請求の範囲における「又は(or)」という用語の使用は、代替形態のみを明示的に示さない限り、又は代替形態が互いに排他的でない限り、「及び/又は(and/or)」を意味するのに使用されるが、本開示は、単なる代替形態及び「及び/又は(and/or)」を示す定義を支持する。本出願全体を通じて、「約(about)」という用語は、値がデバイスの固有の誤差変動を含むことを示すのに使用され、方法は、値、又は研究課題の中に存在する変動を決定するのに採用される。
【0064】
本明細書及び特許請求の範囲に使用されるとき、「備える、含む(comprising)」(及び「comprise」や「comprises」などのcomprisingのいずれかの形態)、「有する(having)」(及び「have」や「has」などのhavingのいずれかの形態)、「含む(including)」(及び「includes」や「include」などのincludingのいずれかの形態)、又は「包含する(containing)」(及び「contains」や「contain」などのcontainingのいずれかの形態)は、包括的又はオープンエンドであり、追加の列挙されていない要素又は方法ステップを排除しない。本明細書に提供される組成物及び方法のうちのいずれかの実施形態においては、「備える、含む(comprising)」は、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」又は「~からなる(consisting of)」により置き換えられ得る。本明細書において使用されるとき、「本質的に~からなる(consisting essentially of)」という句は、指定された整数又はステップだけでなく、特許請求される発明の特徴又は機能にそれほど影響しないものが必要である。本明細書において使用されるとき、「~からなる(consisting)」という用語は、列挙した整数(例えば、特徴、要素、特性、特質、方法/プロセスステップ、若しくは制限)、又は整数の群(例えば、特徴(複数可)、要素(複数可)、特性(複数可)、特質(複数可)、方法/プロセスステップ又は制限(複数可))の存在のみを示すのに使用される。
【0065】
本明細書において使用される「又はそれらの組合せ(or combinations thereof)」という用語は、その用語に先行するリスト化された項目の全ての配列及び組合せを示している。例えば、「A、B、C、又はそれらの組合せ(A, B, C, or combinations thereof)」は、A、B、C、AB、AC、BC、又はABC、及び順序が特定の文脈で重要である場合、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、又はCABのうちの少なくとも1つも含むように意図されている。この例に続いて、BB、AAA、AB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、及びCABABBなどの1又は2以上の項目又は用語の繰返しを包含する組合せが明示的に含まれている。当業者は、別段、文脈から明らかでない限り、通常はいずれの組合せにも項目又は用語の数に対する制限がないことを理解するであろう。
【0066】
本明細書において使用されるとき、限定することなく、「約(about)」、「実質的な(substantial)」、又は「実質的に(substantially)」などの近似の単語は、そのように修飾されたとき、必ずしも絶対的又は完璧ではないと理解されるものの、存在する条件を指定することを保証するには十分に近いと当業者には見なされることになる条件を示す。説明が変わることがあり得る程度は、どの程度、変更を起こし得るかに依存することになり、修飾された特徴が、修飾されていない特徴の所要の特性及び能力を依然として有すると当業者に依然として認識させる。概して、先の議論を条件とするが、「約(about)」などの近似の単語によって修飾される本明細書における数値的な値は、記載の値とは、少なくとも±1、2、3、4、5、6、7、10、12又は15%異なっている場合がある。
【0067】
本明細書において開示され、特許請求される組成物及び/又は方法の全ては、本開示に照らして必要以上の実験なしに、作製され実行され得る。本発明の組成物及び方法を好ましい実施形態の観点で説明してきたが、変形形態が、組成物及び/又は方法に対して、本発明の概念、趣旨、及び範囲から逸脱することなく、本明細書に説明される方法のステップ又はステップシーケンスで適用され得ることは当業者には明らかであろう。当業者には明らかな全てのそのような同様の置換形態及び修正形態は、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨、範囲、及び概念のうちにあるものと見なされる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図15F