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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】スガマデックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08B 37/16 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
C08B37/16
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019570405
(86)(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 EP2018067707
(87)【国際公開番号】W WO2019002610
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-08-31
(31)【優先権主張番号】17179134.6
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516053888
【氏名又は名称】シントン・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】SYNTHON B.V.
【住所又は居所原語表記】Microweg 22, NL-6545 CM Nijmegen, Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ブフロビック、マリアン
(72)【発明者】
【氏名】セルノバ、レンカ
【審査官】神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194001(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/125501(WO,A1)
【文献】Tetrahedron Letters,1997年,Vol.38, No.42,pp.7365-7368
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.トリフェニルホスフィン及びN-メチル-2-ピロリドンの存在下において、γ-シクロデキストリンとCXとを混合すること、
b.前記反応生成物を塩基で処理し、対応する式(3):
【化1】
(式中、XはCl又はBr又はIである。)で表される6-ペル-デオキシ-6-ペル-ハロ-γ-シクロデキストリン化合物を得ること、
c.ナトリウム塩基の存在下において、式(3)で表される化合物を3-メルカプトプロピオン酸と反応させ、式(1):
【化2】
で表されるスガマデックスを得ること、
を含むスガマデックスの製造方法。
【請求項2】
γ-シクロデキストリンとトリフェニルホスフィンのモル比が、1:10~1:20の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
γ-シクロデキストリンとトリフェニルホスフィンのモル比が、1:15である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
N-メチル-2-ピロリドン中のγ-シクロデキストリンの濃度が0.1~1g/mlの範囲である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
N-メチル-2-ピロリドン中のγ-シクロデキストリンの濃度が0.4g/mlである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップa.におけるγ-シクロデキストリンとCXとの混合が、30℃より低い温度で行われる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
反応ステップa.が、ジクロロメタン又はメチル-tert-ブチルエーテル又はトルエン又はアセトニトリル又はTHFから選択される有機溶媒中で行われる、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
反応ステップc.が、N-メチル-2-ピロリドン又はジメチルアセトアミド又はジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドから選択される有機溶媒中で行われる、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記有機溶媒は水と共に使用される、請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
ステップb.における前記塩基は、水酸化アンモニウムである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
XがBrである、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
式(3)で表される化合物を精製することを更に含み、前記精製は、
(i) 式(3)で表される化合物をアルコール中に懸濁させること、ここで前記アルコールは、メタノール又はエタノール又はプロパノール又はイソプロパノールから選択され、水を3~30%(vol/vol)の範囲で含む、
(ii) ステップ(i)で得られた懸濁液を加熱すること、
(iii) 式(3)で表される化合物を分離すること、
を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記アルコールは、メタノール又はエタノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記アルコールは、5%(vol/vol)の水を含む、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップ(i)で得られた懸濁液は、45℃から前記溶媒の還流温度の範囲にある温度で加熱される、請求項12~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、医薬品であるスガマデックスの新規製造方法に関する。
【0002】
スガマデックス、すなわち、式(1):
【0003】
【化1】
【0004】
により表される5-シクロオクタキス-(1→4)-[6-S-(2-カルボキシエチル)-6-チオ-アルファ-D-グルコピラノシル]は、γ-シクロデキストリンの修飾体である。
【0005】
スガマデックスは、全身麻酔におけるロクロニウム又はベクロニウム剤による神経筋遮断薬の反転のための最初の選択的弛緩結合剤である。それは2008年にEMEAにより証明された。ブランド名ブリヂオン(Bridion(登録商標))の下で静脈注射のための滅菌溶液の形態で市販されている。スガマデックスはWO20001040316号において最初に公開された。WO20001040316号は、下記に示すスガマデックスの製造方法を開示する。
【0006】
【化2】
【0007】
第1ステップは、活性γ-シクロデキストリンを形成するためのジメチルホルムアミド(DMF)、トリフェニルホスフィン(PPh)及びヨウ素の反応によるヴィルスマイヤー・ハック(Vilsmeier-Haack)試薬のin situ調製(in situ preparation)を含む。第1ステップの副生成物として、トリフェニルホスフィンオキシドが形成される。反応混合物からのこの副生成物の除去は、非常に困難である。この副生成物は、第2ステップにおいて反応し、式(2)で表される不純物を形成し得る。
【0008】
【化3】
【0009】
第2ステップは、スガマデックスを形成するために、NaH及びDMFの存在下において、官能化γ-シクロデキストリンと3-メルカプトプロピオン酸との反応を含む。この反応の収率は低い(43%)。
【0010】
WO2012025937号には、WO20001040316号とは異なる試薬を用いた第1ステップの合成が記載されている。出願人によると、PPh/Iに替えてPX又はPX(ここで、Xは、F、Cl、Br、I)を使用することにより、ステップ1の生成物の収率及び純度がよくなる。PX及びPXの使用は、その毒性のため好ましくなく、更には腐食性で臭いを発するため大規模での処理を更に困難としている。
【0011】
WO2014125501号には、γ-シクロデキストリンとハロゲン化リンの反応と、次いで起こる生成物とアルカリ金属アルコキシドとの反応を含むスガマデックスの製造が記載されている。これらのアルコキシドは可燃性であるため、製造中における処理が困難である。
【0012】
WO2016194001号は、γ-シクロデキストリンとハロゲン化オキサリルとの反応、続いて起こる反応生成物のスガマデックスへの変換を含む製造方法が記載されている。ハロゲン化オキサリルは、水との接触時に毒性の有害ガスを放出する毒性液体である。
したがって、改善され且つ効率的なスガマデックスの製造方法が求められる。
【0013】
<発明の簡単な説明>
本発明の主題は、
a.トリフェニルホスフィン及びN-メチル-2-ピロリドンの存在下において、γ-シクロデキストリンとCXとを混合すること、
b.前記反応生成物を塩基で処理して対応する式(3);
【0014】
【化4】
【0015】
(式中、XはCl又はBr又はIである。)で表される6-ペル-デオキシ-6-ペル-ハロ-γ-シクロデキストリン化合物を得ること、
c.ナトリウム塩基の存在下において、式(3)の化合物と3-メルカプトプロピオン酸とを反応させて式(1);
【0016】
【化5】
【0017】
で表されるスガマデックスを得ること、
ことを含む新規なスガマデックスの製造方法である。
【0018】
<発明の詳細な説明>
本発明は、
a.トリフェニルホスフィン及びN-メチル-2-ピロリドンの存在下において、γ-シクロデキストリンとCXとを混合すること、
b.前記反応生成物を塩基で処理して対応する式(3);
【0019】
【化6】
【0020】
(式中、XはCl又はBr又はIである。)で表される6-ペル-デオキシ-6-ペル-ハロ-γ-シクロデキストリン化合物を得ること、
c.ナトリウム塩基の存在下において、式(3)の化合物と3-メルカプトプロピオン酸とを反応させて式(1);
【0021】
【化7】
【0022】
で表されるスガマデックスを得ること、
を含むスガマデックスの製造方法を提供する。
【0023】
ステップa.の出発物質は、γ-シクロデキストリンである。このシクロデキストリンは、商業的に入手可能である。
【0024】
ステップa.では、γ-シクロデキストリンがトリフェニルホスフィン及びN-メチル-2-ピロリドンと混合され、混合物を形成する。この混合物に、CX(式中、XはBr又はCl又はIであり、好ましくはBrである。)が添加される。γ-シクロデキストリンとCXのモル比は、1:8~1:20の範囲であってよく、好ましくは、1:10~1:15の範囲であり、より好ましくは、1:10~1:12の範囲である。任意に、有機溶媒が使用され得る。有機溶媒として、ジクロロメタン又はメチル-tert-ブチルエーテル又はトルエン又はアセトニトリル又はTHFを使用することができる。好ましくは、ジクロロメタンを使用することができる。CXは、ゆっくり添加されることが好ましく、具体的には10、20、30、40、50又は60分以内に添加されることが好ましく、30℃以下(below 30℃)の温度で添加されることが好ましい。次いで、前記混合物は、30℃~60℃の範囲の温度で加熱され、好ましくは45~55℃の範囲で加熱され、特に好ましくは50℃で加熱され、前記温度で1~5時間撹拌され、好ましくは前記温度で2時間撹拌される。
【0025】
驚いたことに、N-メチル-2-ピロリドンの存在は、反応が完了するのに不可欠であることがわかった。N-メチル-2-ピロリドンが存在しない場合、γ-シクロデキストリンとハロゲン化剤CX(式中、XはBr又はCl又はIであり、好ましくはBrである。)との間の反応後における反応混合物は、反応条件にもよるが55%(HPLC IN)未満の式(3)の化合物を含む。N-メチル-2-ピロリドンが存在する場合、γ-シクロデキストリンとハロゲン化剤との間の反応後における混合物は、95%を超える式(3)の化合物を含む。
【0026】
CX(式中、XはBr又はCl又はIである。)の使用により、従来技術の方法における副生成物である腐食性ハロゲン酸(HX)の量も低減される。
【0027】
有利なことに、CBr及びCIは、固体の結晶化合物であり、処理が容易である。
【0028】
本発明の方法はまた、前記反応で使用されるトリフェニルホスフィンの量を低減し、これにより副生成物として形成されるトリフェニルホスフィンオキシドの量も低減する。反応混合物からのこの副生成物の除去は、この副生成物がγ-シクロデキストリンと反応し最終生成物から取り除くのが困難な不純物を形成するため、とても困難である。
【0029】
γ-シクロデキストリンとトリフェニルホスフィンの好ましいモル比は、1:10~1:20の範囲であり、1:15が好ましい。N-メチル-2-ピロリドン中のγ-シクロデキストリンの濃度は、0.1~1g/mlの範囲であり、N-メチル-2-ピロリドン中のγ-シクロデキストリンの濃度は、好ましくは0.4g/mlである。前記反応の進行は、当業者に公知の分析手段であれば、適切な任意の手段によって観察することができる。
【0030】
前記反応が完了した後、混合物は、-10℃~20℃の範囲の温度、好ましくは0℃~5℃の範囲の温度に冷却される。混合物の温度が20℃以下(below 20℃)に維持されている間に、混合物に塩基が添加される(反応ステップb.)。γ-シクロデキストリンと塩基のモル比は、1:12~1:50の範囲であり、好ましくは1:15~1:25の範囲であり、より好ましくは1:16~1:18の範囲である。
【0031】
塩基として、アミン類(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン)等の有機塩基、もしくは、アンモニア水溶液(水酸化アンモニウム)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の無機塩基を使用することができる。好ましくは、20~30%のアンモニア水溶液が使用される。従来技術で知られている他の塩基と比較し、アンモニア水溶液は、より強い塩基を使用した場合より、反応における副生成物がより少ない。加えて、反応副生成物は、水中に可溶であり、反応混合物から容易に除去することができる。
【0032】
メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール(好ましくはメタノール)が、20℃~40℃の温度範囲、好ましくは20~25℃の温度範囲において、反応混合物に添加される。得られる混合物に水が添加される。混合物は、-10~10℃、好ましくは0~5℃に冷却され、10~60分撹拌され、固形生成物を沈殿させる。
【0033】
次いで、式(3)の化合物は、ステップc.において、従来技術において公知の方法により、ナトリウム塩基の存在下、3-メルカプトプロピオン酸と反応し、式(1)のスガマデックスを提供する。
【0034】
3-メルカプトプロピオン酸と式(3)の化合物のモル比は、8:1~25:1の範囲であってよく、好ましくは15:1~22:1の範囲であり、より好ましくは16:1~19:1の範囲である。ナトリウム塩基として、NaOH又はNaH又はNaアルコキシド、もしくは従来技術において公知の他のナトリウム塩基を使用することができる。塩基と式(3)の化合物のモル比は、16:1~40:1の範囲であってよく、好ましくは25:1~37:1の範囲であり、より好ましくは30:1~35:1の範囲である。反応ステップc.は、有機溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン又はジメチルアセトアミド又はジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシド)中で行うことができる。有機溶媒は、任意に水との混合物中で使用することができる。水の存在は、生成物の反応収率及び純度を更に改善する。水と有機溶媒の比率は、1:0.8~1:3(vol:vol)の範囲であってよく、好ましくは1:1.1である。反応混合物は、40℃から溶媒の還流温度の範囲の温度において任意に加熱され得る。有機溶媒が水と組み合わせて用いられる場合、水は、混合物を加熱する前又は加熱した後に混合物中に添加され得、好ましくは混合物を加熱した後に混合物中に添加される。混合物は、40℃から溶媒の還流温度の範囲の温度において、1~10時間、好ましくは2~5時間撹拌される。反応が完了した後、水混和性の有機溶媒、例えば、DMSO、もしくは、メタノール又はエタノール又はイソプロパノール等のアルコールが添加される。ステップc.で使用される有機溶媒と、反応が完了した後に添加される水混和性の有機溶媒比率は、2:0.7~2:1.5(vol:vol)の範囲であってよく、2:1が好ましい。
【0035】
混合物は、-10℃~25℃の範囲の温度、好ましくは0~5℃の範囲の温度に冷却され、混合物は、当該温度で10~60分間、好ましくは20~35分間撹拌され、混合物からスガマデックスを沈殿させる。沈殿した固体は、例えば濾過又は遠心分離など、当業者に公知の好適な方法で分離され得る。
【0036】
本発明の方法により製造された式(3)の化合物は、以下のステップを含む方法を使用して精製され得る。
【0037】
1.アルコール中で式(3)の化合物を懸濁させること。ここで、前記アルコールは3~30%(vol/vol)の範囲で水を含む。
2.混合物を加熱すること。
3.式(3)の化合物を分離すること。
【0038】
ステップIで使用されるアルコールは、好ましくはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールであり、特に好ましくはメタノール又はエタノールである。アルコールは、3~30%(vol/vol)の範囲で水を含み、好ましくは4~7%の範囲で水を含み、特に好ましくは5%(vol/vol)の水を含む。
【0039】
アルコール中の式(3)の化合物の濃度は、0.08~0.8g/mlの範囲であってよく、好ましくは0.1~0.5g/mlの範囲であり、特に好ましくは0.2g/mlである。
【0040】
ステップI.で得られた混合物は、ステップII.において、45℃から溶媒の還流温度の範囲の温度で、好ましくは50~60℃の範囲の温度で、10~60分間、好ましくは20~40分間加熱される。分離ステップIII.は、混合物を-10~10℃の範囲の温度に、好ましくは0~5℃の範囲の温度に冷却し、この温度で10~60分間、好ましくは30分間撹拌することを含む。沈殿した固体は、例えば濾過又は遠心分離など、当業者に公知の好適な方法で分離され得る。
【0041】
本発明の方法を使用することにより、得られる式(3)の化合物中のトリフェニルホスフィンの量は、前記従来技術に記載された方法と比較して低減される。
【0042】
以下の例は本発明の範囲を説明することを意図するものであり、これらを限定するものではない。
【実施例
【0043】
例1:式(3)の化合物の製造
【0044】
【化8】
【0045】
1000mlのN-メチル-2-ピロリジノンを、200gのγ-シクロデキストリンと混合した。混合物を0~5℃に冷却した。607gのトリフェニルホスフィンを一気に添加した。混合物を0~5℃で10分間混合した。
【0046】
この混合物に、240mlのジクロロメタン中に562gのテトラブロモメタンが溶解した溶液を徐々に添加した。添加速度は、反応温度が30℃以下(below 30℃)を持続するよう調整された。次いで混合物を50℃で2時間加熱した。反応が完了した後、混合物を0~5℃に冷却し、次いで、25%(vol/vol)のアンモニア水400mlを徐々に添加した。添加速度は、反応温度が20℃以下(below 20℃)を持続するよう調整された。800mlのMeOHを加え、次いで500mlの水を徐々に加えた。混合物を20~30℃で10分間撹拌し、次いで0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷MeOHで3×500ml洗浄した。式(3)の化合物が、全収率84%且つ純度99.5%(HPLC IN)で製造された。トリフェニルホスフィンオキシド不純物の含有量は7%(wt/wt、化合物(3)基準)であった。
【0047】
例2:式(3)の化合物の製造
【0048】
【化9】
【0049】
1000mlのN-メチル-2-ピロリジノンを、200gのγ-シクロデキストリンと混合した。混合物を12~17℃に冷却した。607gのトリフェニルホスフィンを一気に添加した。
【0050】
この混合物に、240mlのメチル-tert-ブチルエーテル(MTBE)中に562gのテトラブロモメタンが溶解した溶液を徐々に添加した。添加速度は、反応温度が30℃以下(below 30℃)を持続するよう調整された。次いで混合物を50℃で2時間加熱した。反応が完了した後、混合物を0~5℃に冷却し、次いで、25%(vol/vol)のアンモニア水400mlを徐々に添加した。添加速度は、反応温度が20℃以下(below 20℃)を持続するよう調整された。1000mlのMeOHを加え、次いで600mlの水を徐々に加えた。混合物を20~30℃で10分間撹拌し、次いで0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷MeOHで3×500ml洗浄した。式(3)の化合物が、全収率84%且つ純度99.5%(HPLC IN)で製造された。トリフェニルホスフィンオキシド不純物の含有量は7%(wt/wt、化合物(3)基準)であった。
【0051】
例3:式(3)の化合物の製造
0.477gのトリフェニルホスフィン、0.575gのテトラブロモメタン及び0.1gのγ-シクロデキストリンを、表1に示す溶媒2mlと混合した。エントリー1~3については、N-メチル-2-ピロリドンは添加されず、エントリー4については、0.5mlのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の存在下で実施された。混合物は室温で60分間撹拌され、次いで50℃で3時間加熱された。反応混合物の試料は、DMF、メタノール及びアンモニア水溶液の混合物中にサンプリングされ、HPLCにより分析された。反応変換率が表1に集約されている。
【0052】
【表1】
【0053】
例4:式(3)の化合物の精製
トリフェニルホスフィンオキシドの含有率が7%(wt/wt、式(3)の化合物基準)である例1に従い製造されたペル-ブロモ-γ-シクロデキストリン26.84gを、5%の水を含有するMeOH140mlに懸濁させた。混合物を60℃で30分間加熱し、次いで0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキをMeOHで洗浄した。生成物を室温で乾燥し、24.19gの式(3)の化合物を得た。分離された生成物中のトリフェニルホスフィンオキシドの含有率は0.13%(wt/wt、式(3)の化合物基準)であった。
【0054】
例5:スガマデックスの製造
例1に従い製造された式(3)の化合物5gを、40mlのDMSO中に懸濁させ、完全に溶解するまで25℃で撹拌した。5MのNaOH水溶液16mlを、氷水浴中で冷却した。このNaOH水溶液に、3.63mlの3-メルカプトプロパン酸を10分の間に滴下した。反応混合物の温度は10℃以下(below 10℃)に維持された。混合物を40℃に加熱し、次いで化合物(3)のDMSO溶液を加えた。混合物を45~50℃で3時間加熱した。混合物に28mlの水を徐々に加え、次いで10mlのDMSOを加えた。混合物を0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷アセトンで洗浄し、生成物を室温で乾燥し、約100%の収率でスガマデックスを得た。
【0055】
例6:スガマデックスの製造
例1に従い製造された式(3)の化合物1gを、8mlのジメチルスルホキシド中に懸濁させ、完全に溶解するまで25℃で撹拌した。5Mの水酸化ナトリウム水溶液3.22mlを、氷水浴中で冷却した。このNaOH水溶液に、0.73mlの3-メルカプトプロパン酸を10分の間に滴下した。反応混合物の温度は10℃以下(below 10℃)に維持された。化合物(3)のジメチルスルホキシド溶液を加え、反応混合物の温度を20℃以下(below 20℃)に維持した。次いで、混合物を45~50℃に加熱した。混合物の温度が到達したらすぐに6mlの水を添加し、反応混合物を45~50℃で3時間撹拌した。混合物に4mlのジメチルスルホキシドを加えた。混合物を0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷アセトンで洗浄し、生成物を室温で乾燥し、約100%の収率でスガマデックスを得た。
【0056】
例7:スガマデックスの製造
例1に従い製造された式(3)の化合物1gを、8mlのN-メチル-2-ピロリドン中に懸濁させ、完全に溶解するまで25℃で撹拌した。5Mの水酸化ナトリウム水溶液3.22mlを、氷水浴中で冷却した。このNaOH水溶液に、0.73mlの3-メルカプトプロパン酸を10分の間に滴下した。反応混合物の温度は10℃以下(below 10℃)に維持された。化合物(3)のN-メチル-2-ピロリドン溶液を加え、反応混合物の温度を20℃以下(below 20℃)に維持した。次いで、混合物を45~50℃に加熱した。混合物の温度が到達したらすぐに6mlの水を添加し、反応混合物を45~50℃で3時間撹拌した。混合物に4mlのイソプロパノールを加えた。混合物を0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷アセトンで洗浄し、生成物を室温で乾燥し、約100%の収率でスガマデックスを得た。
【0057】
例8:スガマデックスの製造
例1に従い製造された式(3)の化合物1gを、8mlのジメチルアセトアミド中に懸濁させ、完全に溶解するまで25℃で撹拌した。5Mの水酸化ナトリウム水溶液3.22mlを、氷水浴中で冷却した。このNaOH水溶液に、0.73mlの3-メルカプトプロパン酸を10分の間に滴下した。反応混合物の温度は10℃以下(below 10℃)に維持された。化合物(3)のジメチルアセトアミド溶液を加え、反応混合物の温度を20℃以下(below 20℃)に維持した。次いで、混合物を45~50℃に加熱した。混合物の温度が到達したらすぐに6mlの水を添加し、反応混合物を45~50℃で3時間撹拌した。混合物に4mlのイソプロパノールを加えた。混合物を0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷アセトンで洗浄し、生成物を室温で乾燥し、約100%の収率でスガマデックスを得た。
【0058】
例9:スガマデックスの製造
例1に従い製造された式(3)の化合物1gを、8mlのジメチルホルムアミド中に懸濁させ、完全に溶解するまで25℃で撹拌した。5Mの水酸化ナトリウム水溶液3.22mlを、氷水浴中で冷却した。このNaOH水溶液に、0.73mlの3-メルカプトプロパン酸を10分の間に滴下した。反応混合物の温度は10℃以下(below 10℃)に維持された。化合物(3)のジメチルホルムアミド溶液を加え、反応混合物の温度を20℃以下(below 20℃)に維持した。次いで、混合物を45~50℃に加熱した。混合物の温度が到達したらすぐに6mlの水を添加し、反応混合物を45~50℃で3時間撹拌した。混合物に4mlのイソプロパノールを加えた。混合物を0~5℃に冷却し、30分間撹拌し、濾過した。濾過ケーキを冷アセトンで洗浄し、生成物を室温で乾燥し、約100%の収率でスガマデックスを得た。