(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】同期ベルト駆動システム
(51)【国際特許分類】
F16H 7/12 20060101AFI20220107BHJP
F16G 1/28 20060101ALI20220107BHJP
F02B 67/06 20060101ALI20220107BHJP
D07B 1/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F16H7/12 A
F16G1/28 E
F02B67/06 D
D07B1/02
(21)【出願番号】P 2019572577
(86)(22)【出願日】2018-07-05
(86)【国際出願番号】 US2018040965
(87)【国際公開番号】W WO2020009703
(87)【国際公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーバー,キャロル
(72)【発明者】
【氏名】シェルハース,ダグラス ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ケヴィン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,レスリー
(72)【発明者】
【氏名】レイシー,ウィリアム フレイザー
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ガゴン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,ユディン
(72)【発明者】
【氏名】ピアソン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ムーリ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】オチョア,チャーリー
(72)【発明者】
【氏名】ビア,カーラ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クックソン,シンディ
(72)【発明者】
【氏名】ピース,ジェニファ イー.
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】マクナミー,パトリック ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ショーン クシャン
(72)【発明者】
【氏名】デック,アンドルゼイ
【審査官】筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-506124(JP,A)
【文献】特表2009-519424(JP,A)
【文献】特表2010-529380(JP,A)
【文献】特表2008-514888(JP,A)
【文献】特開昭63-235744(JP,A)
【文献】特表2005-511984(JP,A)
【文献】特表2009-513913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
F16G 1/28
F02B 67/06
D07B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高弾性ファイバを備える張力心線を有する同期ベルト(200)と、
少なくとも一方が長円スプロケット(10)である、駆動スプロケットおよび少なくとも1つの従動スプロケットと、
テンショナとを備え、前記テンショナが、径方向外周面と前記径方向外周面の径方向内側である受容部とを有し、軸方向に延びる円筒状部分を有するベースと、前記径方向外周面に揺動自在に係合する偏心アームと、前記径方向内側の受容部内に配置され、付勢力を前記偏心アームに付与する捻りバネと、前記偏心アームに軸支されるプーリとを備え、
前記偏心アームと前記プーリと前記捻りバネとが、前記偏心アーム、プーリ、捻りバネのいずれも他から
、前記円筒状部分の軸心に沿って軸方向に変位しないようにして、同軸的に配置され、
前記プーリが前記偏心アームの全体を囲繞する
同期ベルト駆動システム。
【請求項2】
前記長円スプロケット(10)が歯付き面と、2つの円弧部(14、15)の間に配置される少なくとも1つの直線部(16)とを備え、前記円弧部が固定半径(R1、R2)を有し、前記直線部が所定長さを有する請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項3】
前記長円スプロケット(10)が、前記駆動スプロケットと前記従動スプロケットの間の角度変位タイミング誤差がピーク・ピーク値で0.5度よりも小さくなるような大きさとフェーズを有する請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項4】
前記高弾性ファイバが繊維ガラス、PBO、アラミド、および炭素繊維からなるグループから選択される1以上である請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項5】
前記高弾性ファイバが高強度ガラス繊維である請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項6】
前記高弾性ファイバが炭素繊維である請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項7】
前記張力心線が炭素繊維とガラス繊維を備えるハイブリッド心線である請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項8】
システム全体の幅が20mmよりも短い請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項9】
システム全体の幅が18mm以下である請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項10】
システム全体の幅が16mm以下である請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【請求項11】
システム全体の幅が14mm以下である請求項1に記載の同期ベルト駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概略的に、同期ベルト、オートテンショナ、駆動プーリ、および1以上の従動プーリを含み、内燃機関において用いられるような同期ベルト駆動システムに関し、これらのうちの少なくとも1つのプーリは長円形であり、より詳しくは、油中で走行するのに適し、かつ公知のシステムよりもかなり狭いパッケージ幅を有するベルト駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどのエンジン用の同期ベルト駆動システムは、エンジンブロックの外側であって、エンジンの前部に取付けられている。同期ベルトは、いわゆる「ドライ」なベルトアプリケーションにおいて潤滑なしに走行するかもしれない。この提案の結果は、駆動ベルトとカムシャフトがオイルシールを通ってブロックを出なければならないことであり、これは時間とともにオイル漏れを生じやすい。利点は、機関室内のベルト駆動機構の幅を容易に収容できること、すなわち駆動システムの幅の制約が相対的にないことである。それにも関わらず、いくつかの機関室はスペースを制限され、かつ車両重量の減少が望まれ、これにより、減少したシステムの重量および幅において同じ駆動負荷、張力、およびタイミングの要求を達成できるような、より狭いドライベルト駆動システムが望まれる。この明細書において「幅」は、駆動機構のレイアウト図において見たとき、駆動システムあるいは駆動要素の軸方向すなわち駆動の平面に垂直な方向の寸法を指す。
【0003】
内燃機関のタイミングチェーンは一般に、エンジンの内部に取付けられ、これにより容易に潤滑される。他のエンジン・タイミングの提案は、タイミングチェーン駆動機構の設計に類似して、エンジンブロック内に同期ベルト駆動システムを設けることである。この提案はシャフトにおけるシールの数を減少させる。この提案は、特大エンジンブロックと、このエンジン用のタイミングチェーン駆動機構の幅に対応させるときの費用を避けるために、システムの幅に対して多くの制約を要求する。さらに、このいわゆる「ウェット」ベルトアプリケーションは、ベルト材料がオイルと他のエンジン流体に対して優れた耐性を有することを要求する。したがって、オイルに接触して走行する環境において、タイミングチェーンシステムを直接置き換え、減少したシステム重量で同じ駆動負荷と張力とタイミング要件に対処する、より狭いウェットベルト駆動システムが望ましい。
【0004】
一例として、ひとつの公知の商用の油中ベルト同期駆動システムは、約18mm幅のベルトと、約19~23mm幅の円形プーリと、約35~38mmの幅を占める従来のテンショナとを有する。最大タイミング誤差は、典型的にはピーク・ピーク値で約2°と思われる。システムの質量は、VVT要素を含むと全体で約2500gであり、VVTを含まないと約1700gであると言われる。
【0005】
米国特許第9927001号明細書(Dayco Europe SRL)はこの技術の代表である。ここには、オイルに接触させて走行する19mm幅のベルトを用いた、ベルト寿命のテストが記載されている。
【0006】
18mmよりも小さい、すなわち典型的な現在のシステム幅の半分よりも小さい、全システム幅を減少させることが望まれる。これを行うことは、いくらか狭いベルトおよびプーリと、かなり狭いテンショナとを必要とする。これは簡単な課題ではない。ベルト幅を縮小することは、ベルトの引張り歪、接触圧力、および歯の変形を増大させ、延いてはタイミング誤差を増加させるとともにベルト劣化を促進し、同期システムの性能と寿命予想値を低下させるからである。望まれることは、ベルト寿命を失うことなくタイミング誤差を約50%減少させつつ、システム幅を20mm以下まで減少させ、それに応じて重量を減少させることである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、減少したシステム重量および幅でもって、一般的な駆動負荷と張力とタイミング要件に対処することができる、より狭い、ウェットまたはドライのベルトの同期システムを提供するシステムおよび方法に向けられる。
【0008】
本発明は、高弾性の同期ベルトと長円スプロケットと狭い外形のオートテンショナとを有するシステムに関する。高弾性同期ベルトは好ましくは、高弾性ガラス繊維、炭素繊維、PBOまたはアラミド、およびこれらの混合物を含むような、高弾性繊維の張力心線を有する。長円スプロケットは、タイミング誤差がピーク・ピーク値で1.5°、好ましくはピーク・ピーク値で1.0°以下まで減少させるように選択されたフェーズと大きさを有する。長円スプロケットは、歯付き面と、固定半径を有する2つの円弧部の間に配置された少なくとも1つの直線部とを有し、直線部は所定長さを有する。テンショナは、好ましくは100Nから600Nの範囲内にあり、好ましくは捻りバネと非対称減衰を有する、緩み側ベルト張力を維持するように選択された減衰機能と張力付与機能を有する。テンショナは好ましくは、径方向外周面と受容部を有し、軸方向に延びる円筒状部分を有するベースと、径方向外周面に揺動自在に係合する偏心アームと、受容部内に配置される捻りバネとを備え、捩りバネは付勢力を偏心アームに付与し、偏心アームに軸支されるプーリとを備える。好ましくは、偏心アームとプーリと捻りバネとはいずれも、他から軸A-Aに沿って軸方向に変位しない。
【0009】
上述したことは、下記の本発明の詳細な説明がよりよく理解されるために、本発明の特徴と技術的利点をむしろ広く概説したものである。本発明のさらなる特徴と利点は以下に記載され、これは本発明の特許請求の範囲の主題を形成する。本発明と同じ目的を実行するために他の構成を修正し、あるいは設計することを基礎として、開示された概念と特別な実施形態が容易に利用されることが当業者によって理解されるべきである。また、そのような均等な構成が添付された特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱しないことが当業者によって理解させるべきである。その構成と作用の方法について、さらなる目的と利点とともに、本発明の特徴であると思われる新規な特徴は、添付された図面に関連して検討されるとき、後述する説明から、よりよく理解される。しかし、各特徴は説明および記載のみの目的のためであり、本発明の限界の定義として意図されないことが、明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
この明細書に組み込まれその一部を構成し、同様の数字が同様の部分を示す添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【0011】
【0012】
【
図2】他の実施形態の長円スプロケットの側面図である。
【0013】
【
図3】ツインカム、直列4気筒、4ストロークガソリンエンジンの斜視図である。
【0014】
【
図4】燃料ポンプがカムシャフト後方に組み込まれた、シングルカム、直列4気筒、4ストロークディーゼル駆動エンジンの斜視図である。
【0015】
【
図5】燃料ポンプが同期ベルト駆動システムに組み込まれたシングルカム、4気筒、4ストロークディーゼル駆動エンジンの斜視図である。
【0016】
【
図6】ツインカム、4気筒、4ストロークガソリン駆動エンジンの模式図である。
【0017】
【
図7】4気筒、4ストロークディーゼルエンジンの従動スプロケットに対する一般的な全負荷特性を表し、抽出された1.5次振動および2次振動の曲線を含む。
【0018】
【
図8】4気筒、4ストロークエンジンの駆動スプロケットに対する2次振動負荷特性を表す。
【0019】
【
図9】3ピストン型燃料ポンプ(あるいは1.5次振動を誘発する他の装置)を備えた4気筒、4ストローク・コモンレール・ディーゼルエンジンの駆動スプロケットに対する1.5次オーダーの負荷特性を表す。
【0020】
【
図10】同期ベルトにおける応力/歪みの関係を表す曲線群である。
【0021】
【
図11】
図6のシステムでのエンジンの振動における長円スプロケットのフェージング/ミスフェージングの効果を示す一連の曲線群である。
【0022】
【
図12】長円スプロケットを適用する前と後での
図6に示されるエンジンのカムシャフトにおける角振動特性を示すグラフである。
【0023】
【
図13】長円スプロケットを適用する前と後での
図6に示されるエンジンの張り側張力特性を示すグラフである。
【0024】
【
図14】クランクシャフトの回転速度に対する角振動のグラフである。
【0025】
【
図15】吸気カムにおけるクランクシャフトの回転速度に対する角振動のグラフである。
【0026】
【
図16】排気カムにおけるクランクシャフトの回転速度に対する角振動のグラフである。
【0027】
【
図17】吸気カムにおけるクランクシャフトの回転速度に対する角度変位のグラフである。
【0028】
【
図18】排気カムにおけるクランクシャフトの回転速度に対する角度変位のグラフである。
【0029】
【
図19】各カムシャフトのタイミング誤差に対する長円スプロケットのフェージングの効果を示すグラフである。
【0030】
【
図20】標準および高弾性ベルトを有する各カムシャフトのタイミング誤差に対する長円スプロケットのフェージングの効果を示すグラフである。
【0031】
【
図21】ベルト幅によるタイミング誤差に対する長円スプロケットの効果を示すグラフである。
【0032】
【
図22】偏心の大きさによるタイミング誤差に対する長円スプロケットの効果を示すグラフである。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【
図35】本発明の特徴をテストするために用いられた同期ベルト駆動システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明は、狭く設計された、高弾性の同期ベルトと1以上の長円スプロケットとオートテンショナとを含む同期ベルト駆動システムに関する。高弾性同期ベルトは好ましくは、従来のガラス繊維の張力部材を有するが、同様な幅の同期ベルトの弾性の約2倍の引張り弾性を有する。高弾性同期ベルトは好ましくは、耐熱性かつ耐油性の材料により構成される。長円スプロケットは好ましくは、スプロケットと長円スプロケットの間の角変位タイミング誤差がピーク・ピーク値で1.5°よりも小さくなるような大きさとフェーズを有する。オートテンショナは、径方向外周面と径方向外周面の径方向内側である受容部とを有し、軸方向に延びる円筒状部分を有するベースと、径方向外周面に揺動自在に係合する偏心アームと、径方向内側の受容部内に配置され、付勢力を偏心アームに付与する捻りバネと、偏心アームに軸支されるプーリとを備えてもよい。好ましくは、偏心アームとプーリと捻りバネとは、偏心アーム、プーリまたは捻りバネのいずれも偏心アーム、プーリまたは捻りバネから軸A-Aに沿って軸方向に変位しないようにして、同軸的に配置され、最小幅となる。
【0047】
高弾性同期ベルト
【0048】
同期ベルトの構成は
図34に示される。ベルト200は、一方の側においてランド部212と交互になっている歯214と、平坦な背面220とを有する。本体ゴムすなわちエラストマは、歯ゴム212と背ゴム222を含む。歯側は歯布216により覆われ、背側220は背布224により覆われる。歯の繰返し長さはピッチPである。張力部材218はベルト本体ゴム内に埋設され、ベルトに高弾性を付与する。
【0049】
歯布216は帆布と、タイミング誤差および耐久性等のシステム性能と同様に、例えば接着、耐油性、耐摩耗性等の1以上のベルト性能を高めるための1以上の処理剤とを含む。帆布の処理剤は従来公知の適当な処理剤であってもよい。同様に、背布224は帆布と、歯布と同じか異なる1以上の処理剤とを含む。このように「布」の語句は、ベルト内に組み込まれるために用意されている形態であるものを含む、1以上の処理剤を伴う帆布を説明するために用いられる。「帆布」は通常に、処理を施す前における、織布、不織布、あるいは編布の材料を指す。
【0050】
歯布は、アプリケーションに必要なように、適当な伸び、強度、耐摩耗性、耐熱性、耐環境性を有する適当な織布、編布、不織布であればよい。フロースルー式ベルト製造工程(後に定義される)において使用するために、長さ方向の伸びが80%か100%よりも大きいことが好ましい。予成形工程のため、もっと小さい伸びが適切であるかもしれず、あるいは有意な伸びがないことが適切であるかもしれない。帆布は、ナイロン、アラミド、PPS、PEEK、ポリエステル、およびこれらの組み合わせ等の、高弾性、耐油性、耐摩耗性、耐熱性繊維を含んでもよい。十分な伸びのヤーンは、織り込み、弾性コアへの巻き付け、バイアス付与、およびこれらの組み合わせを含む公知の適当な方法により得られる。
【0051】
背布は、アプリケーションのために、適当な伸び、強度、耐摩耗性、耐熱性(高温または低温)、耐環境性を有する適当な織布、編布、不織布であればよい。一般的に、ベルトの背面に平らに置かれるので、背布の伸び量に対して特別な要求はない。ベルトの可撓性を維持するために、ある程度の伸びが好ましい。背布は、低温耐性を改善し、繰り返される冷間始動において背面クラック発生を減少させることがわかっている。
【0052】
好ましい帆布処理剤は、山田等による米国特許出願公開2014/0080647号公報に記載されているように、エポキシまたはエポキシゴム処理剤を含み、この公報は参照することによりこの明細書に組み込まれる。このような処理剤は、歯布の耐摩耗性と耐油性と耐水性を改善し、高温かつ高負荷状態あるいは油中または水環境内で使用されたときであっても十分な耐久性を有する歯付きベルトを提供することを意図している。
【0053】
適当なゴム合成物が歯ゴム212または背ゴム222のために使用可能である。さらに、張力心線218に接触する接着ゴム層や他の層のように、必要に応じて他のゴム層があってもよい。必要に応じて、ベルト内の背側および他の場所において、歯の中、張力心線層の中に、同じまたは異なる合成物が用いられてもよい。ウィットフィールドに付与された米国特許第6358171号明細書は、参照することによってこの明細書に組み込まれ、歯ゴムあるいはベルト本体ゴムのための代表的なゴム合成物を述べている。そこに記載されているように、ベルト本体ゴムの合成物は、HNBRのような共重合体ゴムを含むニトリルグループを含んでもよく、ゴムはゴムのガラス転移を低下させる第3のモノマーを含んでもよい。ゴム合成物は、ゴムに対して約0.5から約50重量部(PHR)の繊維強化材を含んでもよい。米国特許第9140329号明細書は、参照することによってこの明細書に組み込まれ、歯ゴムあるいはベルト本体ゴムのための他の代表的なゴム合成物を述べている。そこに記載されているように、ベルト本体ゴムの合成物は、HNBRまたはHXNBRゴム、レゾルシノール、およびメラミン合成物を含んでもよい。
【0054】
ベルト本体のゴム合成物は、充填物、可塑剤、劣化防止剤、加工助剤、加硫剤、助剤、相溶剤等の、公知の添加剤をさらに含んでもよい。
【0055】
ベルトの張力心線218は公知のものであってもよいが、好ましくは繊維ガラス、PBO、アラミド、炭素繊維、または2以上のこれらの組み合わせである。張力心線は好ましくは、油接触環境での使用のために、油に対して高い耐性を有する接着処理剤を含む。例えば、接着処理剤はニトリル含有ラテックスまたはゴム、あるいは他の耐油性材料に基づくものでもよい。好ましい張力心線は、ナットソンに付与された米国特許第6945891号明細書に開示されたような炭素繊維、あるいは秋山等に付与された米国特許第7682274号明細書に記載されたようなガラス/カーボン混合心線である。張力心線のための好ましい繊維ガラスは、Kガラス、Uガラス、Mガラス、あるいはSガラスのような高強度繊維ガラスである。
【0056】
本発明の歯付きベルトは、公知のベルト製造方法により製造されてもよい。最も一般的な提案は溝付きマンドレルに種々の材料を巻き、最初に歯カバージャケットを、次に張力心線と本体ゴムを、最後に背面ジャケットを取付ける。そしてベルトスラブとともにマンドレルは、材料と一緒に絞り込むために加熱加圧する加圧シェル内に搬入され、ゴムが歯溝内に流入して歯カバージャケットを溝の形の中に押し込む(「フロースルー式」として知られる)。代替的に、歯カバージャケットは近似的な溝形に予成形されてもよく、歯カバージャケットをマンドレルに設置する前あるいはその間、選択的にゴムが歯を埋める(予成形方法)。これらの方法における他の変形例も可能である。背面帆布ベルトを製造する主要な付加的特徴は、背面にゴムが設けられたベルトができたときにベルトの背部を寸法合わせのために切削することができないので、望ましい最終ベルト厚さを得るためには、ゴム層が十分に注意して計測されなければならないことである。
【0057】
ゴム組成物は一般的に、歯と同期ベルトの歯剛性と耐荷重に対して十分に寄与する弾性レベルを有する。同様に、歯カバージャケットは歯に対する補強に役立ち、これはまた、歯の剛性とベルトの耐荷重にも役立つ。張力心線は一般的に、弾性(あるいはスパン剛性)および強度のような、同期ベルトの張力性能に支配的である。これらの材料の選択によってベルトスパン剛性と歯の剛性の組み合わせを最適化することは、システムの負荷を減少させるとともに、ベルトに必要な強度を最小化しつつ、より幅狭のベルトが同じシステムタイミング誤差を有することがわかった。ガラス繊維の心線を有する従来のベルトに対して特にスパン剛性を増加させることは望ましい効果を有する。コンピュータ・シミュレーションによれば、2倍までのスパン剛性を有し、同じ歯剛性を有する一連のベルトは同じシステムタイミング誤差を有するが、システムの最大ベルト張力と最大ベルト有効張力と最大テンショナスパン張力とを低減させる。
【0058】
長円スプロケット
【0059】
本発明は同期ベルト駆動システムであり、同期ベルト駆動システムは、歯付き面と、2つの円弧部(14、15)の間に配置される少なくとも1つの直線部(16)とを有する第1長円スプロケット(10)を備え、円弧部は固定半径(R1、R2)を有し、直線部は所定長さを有し、歯付き面を有するスプロケット(300)を備え、スプロケットは無端歯付き部材(200)により第1長円スプロケットに係合され、第1長円スプロケット(10)は、スプロケットと第1長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差がピーク・ピーク値で1.5度よりも小さくなるような大きさとフェーズを有する。
【0060】
図1は長円スプロケットの側面図である。本発明のスプロケット10は歯付き面11を備える。歯付き面11は歯付きベルトに係合する。歯付き面11はランド部12と、隣接する溝部13とを備える。溝部13は、対応する歯付きベルトの歯形状に適合した形状を有する。歯付きベルトはまた、駆動および従動スプロケットの回転を同期させるために用いられるので、同期ベルトとも呼ばれる。
【0061】
スプロケット10は部分14と部分15を備える。部分14は、固定半径R2を備える円弧状歯付き面11aを有する。部分15は、固定半径R1を備える円弧状歯付き面11bを有する。半径R1、R2は等しく一定であるので、部分14、15は1つの円の円弧である。このようにして円弧を使用することにより、本発明のスプロケットの、設計と製造工程の複雑さが低減する。
【0062】
部分14と部分15の間には直線部分16が配置される。部分16は、相互に各部分14、15を変位させて、スプロケットを長円形にする効果を有する、長方形部を備える。スプロケット面11は点160と161の間、および点162と163の間において、真っすぐ、すなわち直線的あるいは平面である。
【0063】
平坦部分16は、システムのトルク変動の振幅に関係する長さを有する。この実施形態において、部分16は、点160と161の間、および点162と163の間において、約2mmの寸法(W)を有する。したがって部分14の曲率中心17は、スプロケットの回転中心20から、距離W/2、約1mmだけずれており、これは長円スプロケットの偏心の「大きさ」と呼ばれる。また部分15の曲率中心18は、スプロケットの回転中心20から、距離W/2、約1mmだけずれている。ここに示された寸法は説明の目的のために過ぎず、限定することを意図していない。したがってスプロケットの長軸長さは以下の寸法を有することとなる。
Lmajor=R1+R2+W
各部分14、15の主要長さ(MG)は以下の寸法を有する。
MG=(R1+W/2)または(R2+W/2)
スプロケットの短軸長さは以下の寸法を有する。
Lminor=R1+R2
2以上のローブを有するスプロケットに有用であるかもしれない、より一般的な大きさは、最大主要長さと最小短軸長さの差(すなわちこの2ローブの場合、MG-R1またはMG-R2)である。対称的な2ローブの場合、大きさはちょうどW/2である。非対称設計すなわち2よりも大きいローブを有する場合、W/2から小さい変位がある。
【0064】
部分16の長さ(W)は部分14、15の半径によって決定され、動的角振動特性に依存し、これは、この明細書の他の箇所において説明されるように、相殺される。スプロケット10は、固定面ピッチ、固定角度ピッチ、またはこれら2つの組み合わせを用いて設計されることができる。「面ピッチ」は、OD線に沿って測定される、スプロケットのOD上における任意の2つの連続した対応する「ピッチ点」の間の距離として定義される。
固定面ピッチは次のように計算される。
SP=(((((Ng×Nom Pitch)/Pi)-PLD)×Pi)/Ng)
ここで
SP=面ピッチ
Ng=スプロケットの溝の数
Nom Pitch=名目システムピッチ
Pi=約3.141
PLD=システムの直径PLD
「角度ピッチ」は、スプロケット上の「ピッチ点」に対応する任意の連続する2つの角度差によって定義され、度またはラジアンで測定される。固定角度ピッチは以下のように定義される。
AP=360/Ng(度)
ここで、
AP=角度ピッチ
Ng=スプロケットの溝の数
【0065】
スプロケットの溝の輪郭は、エンジンの特定の挙動に適合するように個々に設計されてもよい。
【0066】
歯の弾性率とスプロケットのオフセット(W/2)との組合せにおいて、ベルトスパンの弾性率は、特定のエンジン速度で張力の変動を相殺するように最適化される。したがって、このアプリケーションでは、ベルトは、要求される張力負荷を伝達するよう設計されるとともに、システムのスプリング部材として解析および設計される。システムの動的応答は、全ての張力変動が、ベルトとベルト駆動システムを通して実質的に伝達されないように相殺する、ベルト弾性率と長円スプロケット半径(R1およびR2)の組合せを達成する相互作用のプロセスによって選択される。
【0067】
図2は、スプロケットの他の実施形態の側面図である。この実施形態は、
図1に示されたのとは異なり、円弧部14、15、16の間に配置される3つの直線部を備える。3つの直線部(161~162)、(163~164)、(165~166)は、各円弧部14、15、16の間に配置される。各円弧部14、15、16はそれぞれ、一定で等しい半径R1、R2、R3を備える。3つの直線部は、スプロケットの周縁部に約120°の間隔で、均等に配置される。
図9は、
図2に示されるスプロケットを用いたシステムにおける1.5次振動の負荷特性の代表例である。
【0068】
図3、4、5は、カムシャフトと補機を駆動するために歯付ベルトシステムを用いた4気筒、4ストローク内燃機関のいくつかの典型的な駆動装置のレイアウトである。これらのエンジンは、一般的に高2次振動を示す。燃料ポンプの仕様によっては、ある種のディーゼルエンジンは、1.5次振動を含み、これが支配的である。このような振動を示すグラフは、
図7、8、9である。
【0069】
2次振動を相殺するため、本発明のスプロケット10はエンジンのクランクシャフトCRKに取り付けられる。他の支配的な次数の存在によっては、他の実施形態のスプロケットを適用することが必要であるかもしれない。これらは、クランクシャフトに取り付けられてもよいが、例えばウォータポンプ、燃料ポンプ、あるいはカムシャフトスプロケットなど、システムの他の場所に同様に適用されてもよい。エンジンクのランクシャフトは、ベルト駆動システムの全体における駆動部である。ベルトの駆動される方向はDoRである。スプロケット比のため、エンジンのクランクシャフトCRKは、カムシャフトCAM1の1回転につき2回転する。
【0070】
図3において、スプロケット300はカムシャフトCAM1に連結され、スプロケット304は第2カムシャフトCAM2に連結される。従来公知のアイドラIDR1、IDR2が、適正なベルト経路と張力制御を維持するために用いられる。スプロケット100は、ウォータポンプWPに連結される。ベルト200は、いくつかのスプロケット間に掛け回される。ベルト200の回動方向はDoRとして示される。ベルト200がクランクシャフトスプロケットCRKに係合する位置は201である。カムシャフトの慣性とトルク負荷は301で表される。
【0071】
歯付ベルト200は、スプロケット10とカムスプロケット300の間に掛け回される。ベルトのエントリポイント201は、ベルト200がスプロケットと係合する位置である。クランクシャフトCRKとカムスプロケット304の間のベルトスパン長さはSLである。
【0072】
同様に
図4、5において、カムシャフトスプロケット300は、エンジンカムシャフトCAMに取り付けられる。
図4において、負荷特性301は、カムシャフトの後ろ側に取り付けられる燃料ポンプのトルク特性を含むが、
図5では、燃料ポンプのトルクは、負荷特性302によって表される。ウォータポンプやバキュームポンプなどの他のコンポーネントによって引き起こされる慣性とトルク負荷(301、302、101)も同様に存在するかもしれない。すなわち、
図4、
図5においてWP(101)である。
図4において、IDR1とIDR2は、ベルト200を適正にガイドするための公知のアイドラである。
図4において、クランクシャフトスプロケット10とカムスプロケット300の間のベルトスパン長さはSLである。
【0073】
ガソリンエンジンにおいて、支配的な周期的な変動トルク負荷は、通常カムシャフトの特性である。ディーゼルエンジンにおいては、支配的な次数は、駆動システムに含まれるであろうカムシャフトおよび/または燃料噴射ポンプによって生じ得る。ウォータポンプとバキュームポンプによって発生するトルクは変動するが、それらは周期的ではなく、本来的に、カムシャフトと同じ周期あるいは周波数であり、通常、駆動装置の振動の支配的な特性ではない。
【0074】
図5は、ディーゼルエンジンの駆動装置に燃料噴射ポンプを含んだ他のシングルカムエンジンの実施形態の斜視図である。この実施形態では、
図4に示されるシステムに加え、システムは、燃料ポンプIPに連結されたスプロケット305をさらに備える。また、種々のエンジン補機(図示せず)を駆動するために用いられる他のマルチリブベルトに係合可能であるスプロケットP1が示される。
図5において、カムの負荷は、301で示され、燃料ポンプの負荷は302で示される。スプロケット100は、ウォータポンプWPに連結される。
図5において、燃料噴射ポンプによって生じるトルク負荷は302で示される。
【0075】
4気筒、4ストロークエンジンの一般的な全負荷特性は、
図7において曲線Eにより示される。曲線DとCは、一般的な2次および1.5次振動の特性であり、全負荷特性から抽出されたものである。直列4気筒、4ストローク、ガソリン駆動エンジンの負荷特性は、1.5次の振動を通常含まない。
【0076】
本発明のスプロケット10が回転するときのベルト係合点201におけるスプロケット10の平均半径の変化は、
図8、9において曲線Cで示される。
図4におけるベルトの有効長さ変化である曲線Cの積分は
図8、9において曲線Dである。平均スプロケット半径の変化の微分は、スプロケット形状の変化により、歯付き面11上で与えられる点の加速度である。
【0077】
2次振動を相殺するために、長円スプロケット10の平坦部16がカムシャフトスプロケット300とのタイミングの関係で配置される。すなわち、例えば
図4におけるスプロケット300とスプロケット10の間のベルト200の有効長さが、周期的なカムシャフトのトルク変動によって生ずる交互に変動するベルト張力を実質的に相殺するように変化するように設定される。2次振動を相殺する設計の一例としては、カムシャフトトルク、すなわちベルト張力が最大となるときに、スプロケット10の最大長さ(R1+R2+W)を、ベルトのエントリポイント201と一致させることによって達成することができる。
【0078】
長円スプロケットを含む駆動装置の完全な寸法上の特質は、変動トルク、ベルトスパン弾性率、システム内の各従動補機の慣性、ベルト取付け張力、そしてベルトとスプロケットの間の相互作用などのパラメータに依存する。ベルトとスプロケットの間の相互作用は、スプロケットにおいて噛み合っている歯の数、ベルト歯の弾性率、ベルト寸法、ベルトとスプロケット面の間の摩擦係数などのパラメータに依存する。
【0079】
図6は、ツインカム、4気筒、4ストロークガソリンエンジンの模式図である。例示されたシステムは、カムCM1、CM2とそれらの間に掛け回されるベルトBを備える。それはさらに、テンショナTEN、ウォータポンプWP、およびクランクシャフトスプロケットCRKを備える。ベルトBの回動方向はDoRで示される。重要なスパン長さは、スプロケットCRKとスプロケットIDR、スプロケットIDRとスプロケットWP、およびスプロケットCRKとスプロケットWPの間である。
図6において、クランクシャフトスプロケットCRKとカムスプロケットCM1の間のベルトスパン長さはSLである。DoR方向においてCM1とCRKの間には大きな負荷衝撃は存在しないことから、これらは計算の上では1つのスパンSLとして扱い得る。
図6に示されるシステムの変数の一般的な近似値は以下の通りである。
一般的なカムトルク変動:+40N/ -30N
ベルトスパン弾性率:240Mpa
【0080】
一般的なコンポーネントの慣性の値は
CRK=0.4gm2
CM1=CM2=1.02gm2
WP=0.15gm2
【0081】
ベルト取付け張力:400N(取付け張力は、テンショナTENによって公知の方法により維持される)
【0082】
3つのスプロケットでの噛み合い歯:CRK⇒9歯;CM1、CM2⇒15歯
【0083】
ベルト寸法:幅=25.4mm;長さ=1257.3mm
【0084】
スプロケット面11の摩擦係数の一般的な値は0.15~0.5の範囲にあり、典型的には0.2である。
【0085】
一般的なベルト取付け張力は、システムの要求にしたがって75Nから900Nまでの範囲にあり得る。
【0086】
ベルトスパン弾性率は、張力部材の構造、ベルト内の張力部材のストランド数、およびベルト幅に依存する。20本の張力部材を有するベルト幅25.4mmに対するベルトスパン弾性率の一例は、約240Mpaの辺りにある。
【0087】
図7は、4気筒、4ストロークディーゼルエンジンの従動スプロケットに対する典型的な全負荷特性を表わし、抽出された1.5次振動(曲線C)と2次振動(曲線D)の曲線を含む。直列4気筒、4ストロークガソリン駆動エンジンの負荷特性は、通常1.5次振動を含まない。オフセットはW/2に対応する。全負荷は
図7の曲線Eに対応する。
【0088】
図7において、線Aは0トルクである。線Bはベルト駆動システムにおける平均トルクを示す。曲線Cは、全負荷曲線Eから抽出された1.5次振動のトルク特性を示す。曲線Dは、全負荷曲線Eから抽出された2次振動のトルク特性である。曲線Eは、クランクシャフトCRKにおいて測定されたエンジンの全トルク特性である。曲線Eの下の領域は、特定の速度でエンジンを回転するのに使用された仕事を示す。
【0089】
図8は、長円スプロケットとそれによるベルトスパン長さの変化(曲線D)による半径の変化(曲線C)を含む4気筒、4ストロークエンジンの駆動スプロケットの2次振動負荷特性(曲線B)を示す。
【0090】
図8において、直線Aはトルク0である。曲線Bは、全負荷から抽出された2次振動のトルク特性である。曲線Cは、クランクシャフトプーリが360°回転するときに
図1におけるセグメント16により生じるクランクシャフトプーリの有効半径の変化である。曲線Dは曲線Cの積分であり、
図1に示されるスプロケットにより発生するベルト駆動スパン長さの有効変化である。
【0091】
図9は、3ピストン型燃料ポンプ(あるいは1.5次振動を誘発する他の装置)を備えた4気筒、4ストロークディーゼルエンジンの駆動スプロケットに対する1.5次振動のトルク特性Bを表しており、代替的な3つのローブを有する実施形態である長円スプロケット(
図2)のスプロケット半径長さの変化(曲線C)、およびその結果としてのベルトスパン長さの変化(曲線D)を含んでいる。ベルトスパン長さは、例えば
図6におけるカムスプロケットCAMとクランクシャフトスプロケットCRKの間の距離である。
【0092】
図9において、直線Aはトルク0である。曲線Bは、全負荷から抽出された1.5次振動のトルク特性である。曲線Cは、クランクシャフトプーリが360°回転するときのクランクシャフトプーリの有効半径の変化である。曲線Dは、曲線Cの積分であり、
図3に示される代替的な実施形態によって発生する駆動長さの有効変化である。
【0093】
本発明のシステムにおいて使用される種々のベルトの張力部材の弾性率が
図10に示される。曲線SS1~SS6は、種々のベルト200に対する応力-歪み曲線として知られている。各曲線は、ベルトにおける張力心線に対して異なる材料を用いたときの弾性率を示す。エラストマのHNBRベルト本体は、例示的なもので限定的なものではない。HNBRに加え、他のベルト本体の材料には、EPDM、CR(クロロプレン)やポリウレタン、あるいは前述したものの2以上の組合せを含んでもよい。その材料は次のものを含む。
SS1(繊維ガラス #1 張力心線、HNBR本体)
SS2(繊維ガラス #2 張力心線、HNBR本体)
SS3(繊維ガラス #3 張力心線、HNBR本体)
SS4(炭素繊維張力心線、HNBR本体)
SS5(アラミド張力心線、HNBR本体)
SS6(炭素繊維抗張力心線、HNBR本体)
【0094】
公知のように、各張力部材の弾性率は、各曲線SS1~SS6の傾きである。一般的に、これの測定と計算は、曲線の実質的に直線の部分において行われる。繊維ガラス、炭素繊維、アラミドに加えて、別の張力部材として、微細なステンレス鋼フィラメントワイヤあるいはPBOも含まれ得る。
【0095】
M=Δ応力/Δ歪み (曲線の実質的に直線の部分において測定される)
【0096】
ベルトスパンの弾性率は、張力部材の構造、すなわちベルト内の張力部材のストランドの数およびベルト幅に依存する。曲線SS1に対するベルトスパン弾性率の一例は、繊維ガラス張力部材のストランド数20を有する幅25.4mmのベルトに対して、約242MPaである。
【0097】
図11は、
図6に示されるシステムでのエンジンの振動における長円スプロケットの長軸長さのフェージング/ミスフェージングの効果を示す一連の曲線群である。曲線Dは、ベルトのエントリポイント201に対するスプロケット長軸長さの位置とトルクパルスとの間の最適なタイミングの配置である。曲線A、B、Cは、曲線Dの位置から時計回りにタイミングがそれぞれ+6、+4、+2歯分ずらされたものである。曲線Eは、反時計回りに2歯分タイミングがずらされたものである。最大トルクと慣性負荷に対する最大ベルトスパン長さのフェージングは、駆動装置での支配的な振動の次数に依存して変化し、それらはシステムによって低減されるべきものである。ベルトのエントリポイント201は、ベルトがスプロケットに係合する点である。
図3において、スパン長さはSLである。
【0098】
角度間隔すなわちフェージングに関し、許容される角度公差は、以下の式を用いて計算される。
±(360/2×スプロケット溝の数)
【0099】
ベルト駆動スパン長さは、トルクが最大のときに最大になる。
【0100】
図12は、
図6に示されるツインカム、4気筒、4ストロークエンジンに設けられた正確にフェージングが合わされた長円スプロケットの効果を示すグラフである。曲線A、Bは、円形スプロケットを用いた従来技術の設計における吸気および排気カムシャフトスプロケットそれぞれにおける角振動の計測値を示す。
【0101】
比較として、曲線C、Dは、本発明のスプロケットがクランクシャフトに用いられたときの吸気および排気カムシャフトスプロケットそれぞれにおける角振動の計測値を示す。角振動における全体の減衰は約50%である。
【0102】
同様に
図13は、
図6に示されるツインカム、4気筒、4ストロークエンジンにおいて、
図1に示されるような正確にフェージングされた長円スプロケットの効果を示すグラフである。曲線A、B、Cはそれぞれ、従来技術においてエンジン速度の範囲にわたって、最大、平均、最小の張り側張力の計測値を示す。この例では、張力は
図6のIDR位置で計測された。ベルト寿命を延ばすには、ベルト張り側張力は最小にされなければならない。曲線D、E、Fは、本発明のスプロケットが用いられたときの最大、平均、最小のベルト張り側張力の測定値を示す。エンジンの共振速度範囲(約4000rpm~約4800rpm)において、張り側取付け張力での全体の減衰は50~60%の範囲にある。ベルト張り側張力での減衰は、ベルトが使用されるライフスパンにおける顕著な改善を示す。
【0103】
本発明のシステムはICエンジンにおいてタイミング誤差を低減させるのに有用である。タイミング誤差は、振動、要素の不正確さ、および弾性歪のようなランダム要素によって引き起こされる駆動および従動軸の間の位置の不一致である。この場合、それはエンジンのクランクシャフト(駆動)と比較して、ICエンジンのカムシャフト(従動)の回転の不正確さである。それは通常、角度のピーク・ピーク値で報告される。例えば、
図3を参照すると、スプロケット300とスプロケット304はそれぞれ長円である。長円スプロケットの使用は、タイミング誤差を著しく減少させ、これは延いては燃費、低エミッションにおける改良をもたらし、一般的にエンジン性能と効率を改善する。要素レベルでは、タイミング誤差を減少させ、システム負荷を低減させることは、よりよい耐久性とNVH問題の低下を導く。張力の低下は、駆動において、NVHレベル、特に噛み合い振動を低減させる。タイミング誤差を低減させるために長円スプロケットを適用することは、エンジンのカムシャフトだけに制限されない。その利益は、長円スプロケットをクランクまたは燃料ポンプに配置することにより同様に得られる。
【0104】
図14はクランクシャフトの回転速度に対する角振動のグラフである。典型的な角振動数は、エンジン速度が増加するに従って減少する。
図14は電動エンジンと燃焼エンジンのデータを示す。電動エンジンでは、クランクシャフトは電気モータによって駆動され、各シリンダでは燃料の燃焼はない。燃焼エンジンでは、クランクシャフトは内燃機関における通常の方法で、すなわち各シリンダにおいて燃料が燃焼して駆動される。電動エンジン(MER)は、所定のエンジン回転速度に対する燃焼エンジン(FER)よりも小さい角振動を生じる。
【0105】
図15はクランクシャフトの回転速度に対する吸気カムの角振動のグラフである。長円スプロケットは吸気バルブトレイン・カムシャフトに取付けられる。3つの状態が示されている。第1は長円スプロケットがない標準駆動システムである(曲線A)。第2は長円スプロケットを有するもので(曲線B)、第3は長円スプロケットと高弾性ベルトを有するものである(曲線C)。長円スプロケットのフェーズと大きさは、3時の位置から10.5ピッチで、1.5mmである。標準ベルトの弾性率は630,000Nであり、高弾性ベルトの弾性率は902,000Nである。弾性率はニュートン(N)で示され、単位長さを100%だけ拡張するために必要な力として定義される。
【0106】
第3の状態の角振動(曲線C)は、ピーク・ピーク値で約1.5度における標準駆動システムに対する値と比較したときに、ピーク・ピーク値で0.5度よりも小さくなるよう著しく低減され、両者とも4000RPMで測定された。
【0107】
図16はクランクシャフトの回転速度に対する排気カムの角振動のグラフである。長円スプロケットは排気バルブトレイン・カムシャフトに取付けられる。3つの状態が示されている。第1は長円スプロケットがない標準駆動システムである(曲線A)。第2は長円スプロケットを有するもので、第3は長円スプロケットと高弾性ベルトを有するものである(曲線B)。第3の状態の振動角は、ピーク・ピーク値で約1.5度における標準駆動システムに対する値と比較したとき、ピーク・ピーク値で約0.5度まで著しく低減され、両者とも4000RPMで測定された(曲線C)。しかし、エンジンによって、改良はピーク・ピーク値で1.5度から0.5度までの範囲であり、低減は60%を越えたに過ぎない。長円スプロケットのフェーズと大きさは、3時の位置から23.5ピッチで、1.5mmである。標準ベルトの弾性率は約630,000Nであり、高弾性ベルトの弾性率は902,000Nである。
【0108】
図17はクランクシャフトの回転速度に対する吸気カムの角度変位のグラフである。角度変位はタイミング誤差とも呼ばれ、クランクシャフトの位置に対して測定される。長円スプロケットは吸気バルブトレイン・カムシャフトに取付けられる。3つの状態が示されている。第1は長円スプロケットがない標準駆動システムである(曲線A)。第2は長円スプロケットを有するもので、第3は長円スプロケット(曲線B)と高弾性ベルト(曲線C)を有するものである。第3の状態の角度変位は、ピーク・ピーク値で約1.5度における標準駆動システムに対する値と比較したとき、ピーク・ピーク値で約0.5度より小さくなるまで著しく低減され、両者とも4000RPMで測定された(曲線C)。しかし、エンジンによって、改良はピーク・ピーク値で1.5度より下から約0.5度までの範囲であり、低減は60%を越えたに過ぎない。長円スプロケットのフェーズと大きさは、3時の位置から10.5ピッチで、1.5mmである。標準ベルトの弾性率は約630,000Nであり、高弾性ベルトの弾性率は約902,000Nである。
【0109】
図18はクランクシャフトの回転速度に対する排気カムの角度変位のグラフである。長円スプロケットは排気バルブトレイン・カムシャフトに取付けられる。3つの状態が示されている。第1は長円スプロケットがない標準駆動システムである(曲線A)。第2は長円スプロケットを有するもので(曲線B)、第3は長円スプロケットと高弾性ベルトを有するものである(曲線C)。第3の状態の角度変位は、ピーク・ピーク値で約1.5度における標準駆動システムに対する値と比較したとき、ピーク・ピーク値で約0.5度まで著しく低減され、両者とも4000RPMで測定された。しかし、エンジンによって、改良はピーク・ピーク値で1.5度より下から約0.5度までの範囲であり、低減は60%を越えたに過ぎない。長円スプロケットのフェーズと大きさは、3時の位置から23.5ピッチで、1.5mmである。標準ベルトの弾性率は約630,000Nであり、高弾性ベルトの弾性率は約902,000Nである。
【0110】
図19は各カムシャフトのタイミング誤差に対する長円スプロケットのフェージングの効果を示すグラフである。Y軸は、クランクシャフトに関する各カムシャフトの角度変位すなわちタイミング誤差である。それはピーク・ピーク値すなわち最小と最大の数値差として示される。グラフの列1、2は全て円形スプロケットを用いて構成した標準駆動装置を示す。列3は、吸気および排気カムシャフトに取付けられた3次振動長円スプロケットの使用を示す。各スプロケットは、最大のずれがカムシャフトの突出部に合致するように位置決めされている。列4~13は長円スプロケットのずれを異ならせて使用した種々の実験結果を示す。3時の位置は全てのずれに対する基準である。与えられた数値は単に、スプロケットの基準点がその位置から回転した、ピッチあるいは溝gの数である。基準点は角度測定のために基準として使用された点である。これは12時の位置に定められる。CWは時計方向を指す。例えば、「EX23.5g cw」は3時の位置と、エンジンにおいて3時から時計方向に23.5溝のずれを有する排気カム長円スプロケットとを参照する。
【0111】
図20は標準および高弾性ベルトを有する各カムシャフトのタイミング誤差に対する長円スプロケットのフェージングの効果を示すグラフである。Y軸は、クランクシャフトに関する各カムスプロケットの、ピーク・ピーク値の度における角度変位すなわちタイミング誤差である。それはピーク・ピーク値すなわち最小と最大の数値差として示される。グラフの列1、3は全て円形スプロケットを用いて構成した標準駆動装置を示す。各列は、吸気および排気カムシャフトに取付けられた3次振動長円スプロケットの使用を示す。各スプロケットは、最大のずれがカムシャフトの突出部に合致するように位置決めされている。列2、4~8は長円スプロケットのずれを異ならせて使用した種々の実験結果を示す。3時の位置は全てのずれに対する基準である。与えられた数値は単に、スプロケットの基準点がその位置から回転した、ピッチあるいは溝の数である。基準点は角度測定のために基準として使用された点である。これは3時の位置に定められる。長円スプロケットのフェーズと大きさは、3時の位置から、排気に対しては23.5ピッチ、吸気に対しては10.5ピッチであり、それぞれ1.5mmである。標準ベルトの弾性率は約630,000Nであり、高弾性ベルトの弾性率は約902,000Nである。
【0112】
図21はベルト幅によるタイミング誤差に対する長円スプロケットの効果を示すグラフである。列1は円形スプロケットを用いたシステムにおける14mm幅ベルトを示す。列2は長円スプロケットを用いたシステムにおける14mm幅ベルトを示す。列3は標準スプロケットを用いたシステムにおいて高弾性ベルトを用いた14mm幅ベルトを示す。列4は長円スプロケットを用いたシステムにおいて高弾性ベルトを用いた14mm幅ベルトを示す。列5は標準スプロケットを用いたシステムにおいて標準弾性ベルトを用いた18mm幅ベルトを示す。
【0113】
図22は偏心の大きさによるタイミング誤差に対する長円スプロケットの効果を示すグラフである。各列は吸気および排気カムシャフトに用いられた長円スプロケットを示す。各システムの偏心の大きさは1.0mmから1.5mmの範囲にある。
【0114】
ベルト駆動システムの振動を低減するための長円スプロケットの有効性を評価するテストは、電動および燃焼エンジンの両方において実行することができる。図面に含まれる、タイミング誤差の改善の結果は、電動エンジンにおいて得られた。ほとんどの場合において、これらの結果は燃焼エンジンに移るが、いくつかのケースでは、長円スプロケットはあるエンジンに対して振動を低減させない。テストは、要求される改善が達成され、かつ信頼性があることを確認するために、燃焼エンジンに対して実施されるべきである。テストを実行するために必要なステップはエンジン振動の分野において公知である。これらは、振動センサが油環境において作動することを必要とし、160℃まで耐えることができ、油と添加物による化学攻撃に耐えることができることも含む。一貫性のチェックが一連のテストランの開始時と終了時に実行される。測定は、60秒間にわたるアイドル運転から最高エンジン速度までの助走の間、行われる。データ収集と解析のために、標準的なローテク(Rotec)システムが用いられる。
【0115】
テンショナ
【0116】
本発明は、軸方向に延びる円筒状部分を有するベースを備え、円筒状部分が径方向外周面と径方向外周面の径方向内側である受容部とを有し、径方向外周面に揺動自在に係合する偏心アームと、径方向内側の受容部内に配置される捻りバネとを備え、捩りバネが付勢力を偏心アームに付与し、偏心アームに軸支されたプーリとを備えるテンショナである。
【0117】
図23は好ましいテンショナの分解図である。テンショナ400はベース410を備える。ベース410は外周面414を有する、軸方向に延びる円筒状部分412を備える。円筒状部分412はさらに、開口411と受容部418とを備える。
【0118】
偏心アーム420は円筒状部分412の周りに揺動する。ブッシュ460は内周面422と外周面414の間に配置される。ブッシュ460は、円筒状部分412の開口411に、実質的に整列するスロット461を備える。プーリ440はニードルベアリング450の面421に軸支される。ニードルベアリングは油中環境において使用される。従来公知の他のベアリングも適用可能である。
【0119】
捻りバネ430はベルト負荷を付与するために、偏心アーム420に係合し、ベルト(図示せず)に向かって付勢する。端部431はスロット461と開口411から突出し、偏心アーム420の受容部424に係合する。端部432はベース410の受容部415に係合する。捻りバネ430は全体的に受容部418内に配置される。受容部418は円筒状部分412の中央の窪み部である。捻りバネ430はベアリング450、プーリ440および偏心アーム420と同一平面上にある。捻りバネ430は、プーリ440、ベアリング450、ブッシュ460および円筒状部分412の径方向の内側に配置される。すなわち、捻りバネ430、ベアリング450、プーリ440および偏心アーム420は、これらの要素の何れもが、他から軸A-Aに沿って軸方向に変位しないようにして、全て同軸的に配置される。
【0120】
保持リング406はベース410の円周方向スロット416に係合する。保持リング405は偏心アーム420の円周方向スロット423に係合する。保持リング405はベアリング450を偏心アーム420に保持する。保持リング6は偏心アーム420をベース410に保持する。オイル保持リング405、406の存在は、軸方向力を伝達するスラストワッシャとして作用する。
【0121】
プーリ440はベアリング450に圧入される。固定具404は捻りバネ430とベース410の孔417から突出して、テンショナ400をエンジン(図示せず)のような取付け面へ固定する。
【0122】
ブッシュ460は、約0.05から約0.20の範囲内の動摩擦係数(COF)を有する。静的なCOFは、好ましくは動的なCOFよりも小さい。
【0123】
図24は上方から見た分解図である。偏心アーム420は軸A-Aの周りに揺動し、この軸は円筒状部分412に対して同軸的であり、固定具404を通って延びる。偏心アーム420は軸A-Aの周りに揺動する。プーリ440は偏心アーム420の幾何学的中心であるBの周りに回転する。Bは軸A-Aから偏心的にずれており、これにより偏心アーム420の偏心的な揺動運動が可能になり、これにより、テンショナ400は可変的な負荷をベルト(図示せず)に付与する。
【0124】
図25はベースの斜視図である。端部受容部415はベース410の受容部418の一端に配置される。端部432は受容部415に係合し、これにより端部432を固定し、捻りバネの反作用点として作用する。
【0125】
図26は偏心アームの斜視図である。Bはプーリ420の幾何学的中心であり、その点の周りにプーリ420が回転する。偏心アーム420は軸A-AにおいてAの周りに揺動する。受容部424はスプリング430の端部431に係合する。
【0126】
図27は捻りバネの斜視図である。端部431は偏心アーム420受容部424内に突出する。端部432は受容部415に係合する。
【0127】
図28はテンショナの断面図である。捻りバネ430、ブッシュ460、円筒状部分412、偏心アーム420、ベアリング450およびプーリ440は、これらの要素の何れもが、他から軸A-Aに沿って軸方向に変位しないようにして、同軸的に配置される。この完全な入れ子状の配列は、テンショナの高さ(あるいは幅)を最小化し、非常に狭いアプリケーションに使用されることを可能にする。
【0128】
図29は代替的な実施形態の分解図である。要素は、ベアリング451が滑り軸受であり、ブッシュ460が省略されていることを除いて、この明細書に記載されたものと同じである。この代替的な実施形態は油中で走行するために構成され、および/またはオイルはねかけ式潤滑するにおいて使用される。偏心アーム420は軸A-Aの周りに揺動する。プーリ440は軸B-Bの周りに揺動する。
図26参照。軸A-Aは軸B-Bから離れて配置され、したがって軸A-Aに対して同軸的ではなく、偏心アーム420の偏心的な揺動運動が可能になる。
【0129】
【0130】
図31は
図29の代替的な実施形態の断面図である。捻りバネ430、偏心アーム420およびベアリング451は、これらの要素の何れもが、他から軸A-Aに沿って軸方向に変位しないようにして、同軸的に配置される。ベース410の流体導管471は、流体導管473を介して、オイルのような流体がエンジンオイルシステム(図示せず)からベアリング451へ流れる経路を提供し、ベアリングを潤滑する。Oリング472はエンジンオイルシステムへの接続をシールする手段を提供する。
【0131】
図32は代替的な実施形態の側面図である。偏心アーム420とプーリ440の代わりに、この代替的な実施形態はカム445を備える。カム445は偏心アーム420と同じ原理により作動し、この装置において同じ位置を占める。プーリ445はない。カム445は細長部材480に係合する。細長部材480は、いかなる従来公知の適当な低摩擦材料でもよい。細長部材480はまた、滑りガイドとも呼ばれる。チェーンCは摺動ガイド480の表面に摺動自在に係合する。ピボット481は摺動ガイドの一端部に配置される。摺動ガイド480はカム445の回転に応じてピボット481の周りに揺動する。表面446の偏心形状により、カム445の回転は摺動ガイド480を481の周りに揺動させ、これによりチェーンCの負荷を維持する。この実施形態は、一例として、内燃機関の同期システムにおいて有用である。この実施形態はチェーンの代わりに同期ベルトに対して用いることもできる。
【0132】
図33は
図32の代替的な実施形態の斜視図である。カム445の表面446は摺動ガイド480に係合する。
【0133】
同期ベルト駆動システム
【0134】
本発明の駆動システムは、ベルトと、少なくとも1つの上述した長円スプロケットと、上述したテンショナとを含む。駆動システムは、少なくとも2つのスプロケットと、駆動スプロケットと従動スプロケットとを含む。駆動および従動スプロケットの少なくとも1つは、ここに記載されたような長円である。テンショナは好ましくは、ここに記載されたように設計され、ベルトスパンに接触するために背面アイドラプーリまたはスライダを用いてもよい。
【0135】
1つの実施形態において、同期ベルト駆動システムは例えば、自動車あるいは他の陸上車両のための、内燃機関のオーバーヘッドカム駆動機構である。例示が上記に紹介され、
図3~6に示される。
図3と
図6は典型的なデュアル・オーバーヘッドカム・駆動システムを示し、
図4と
図5はシングル・オーバーヘッドカム・駆動システムを示す。これらの例は駆動部としてクランクスプロケットを有し、従動スプロケットとして1以上のカムスプロケットを有する。各駆動機構はまた、種々の背面アイドラ機構とウォータポンプとここに記載されたテンショナとを含んでもよい。
図5の駆動機構は噴射ポンプを含む。駆動機構はディーゼルまたはガソリンエンジンのためであってもよい。他の実施形態では、駆動機構は、ポンプまたは例えばクランクスプロケットを含むバランスシャフトのような単一の従動要素、従動要素用の従動スプロケット、およびテンショナであってもよい。各ケースおよび無数の他の種々の駆動システムでは、ここに記載された本発明の原理は、空気中、あるいはオイルまたは他のエンジン流体に接触しつつ走行することができ、従来の駆動機構よりも実質的に狭いパッケージを有する、同期駆動システムを提供するために利用できる。
【0136】
同期ベルト駆動システム用の上述したテンショナ構造の主な利点はコンパクトさである。従来のベルト駆動機構では、テンショナはしばしば幅広の要素であり、パッケージ全体の幅を著しく制限している。ここに記載されたテンショナ構造によれば、ベルトは希望するように小さくでき、テンショナと他のスプロケットは実質的に同じ幅で、かつ小さいクリアランスにすることができ、存在するか、潜在的なミスアライメントを調整するために望むのであれば、僅かに広くすることができる。
【0137】
長円スプロケットを高弾性同期ベルトとともに使用することにより、細い幅のベルトを有しつつ非常に良好に作用する駆動機構を得ることができる。ベルト幅を縮小することは一般に、この技術分野では、ベルトにおいて増加した張力と負荷(単位幅あたり)に関連し、スパン長さと歯の変形をもたらし、延いてはタイミング精度と耐久性を悪化させる。しかし本システムは、ベルトの減少した張力および負荷と、十分な耐久性とともに、非常に改善されたタイミングを示すことができる。
【0138】
例
【0139】
下記の各例において、テスト装置レイアウトは、
図35に示されるようにクランクシャフトに連結された電動モータによって駆動される、3気筒エンジンのデュアル・オーバーヘッドカム駆動機構である。3気筒エンジンはフォード・モーター・カンパニーによって製造される1リッターFOXエンジンとして知られている。標準のオイルウェット同期駆動システムは後述する種々のテスト駆動機構を収容するように改造される。全てが、油温140℃でCastrol Magnet 5W-20のオイルを用いて、オイルに接触する状態で走行する。テスト装置レイアウト240は、RPP歯形状を有するベルト200に適合するために、19溝の駆動部すなわちクランクプーリ243と、RPX溝形状と9.525mmピッチを有する2つの38溝の従動カムプーリ242、245とを含む。速度プロファイルと、ベルト幅、プーリおよびテンショナ244の詳細は後述するように変えられた。
【0140】
表1に示される3つの代表的なベルトは種々のシステムのテストに使用された。ベルト1はデイコ(Dayco)によって供給される、1リッターFOXエンジンのための標準のベルトである。ベルト2はゲイツ・ユニッタ・アジアによって供給される油中ベルトである。ベルト3は、張力心線がUガラス繊維(高強度ガラス)で被覆された炭素繊維のハイブリッド心線によって置き換えられた、ベルト2の改良品である。
【0141】
ベルト1はデイコによるWO2005080820に記載されているように構成されていると思われる。
【0142】
ベルト2は山田らの米国特許出願公開2014/0080647号公報に記載されたベルト材料により構成されており、この公開内容は参照することにより、この明細書に組み入れられる。歯布は、緯糸にパラ・アラミド/ナイロンの弾性ストレッチヤーン、経糸にナイロンを用いた、2×2の綾織りである。歯布は、山田らの米国特許出願公開2014/0080647号公報に記載されているように、エポキシとNBRラテックスと硬化剤の処理剤により処理された。処理は浸漬し、従来のオーブン内で乾燥することにより行われた。背面帆布は、NBRラテックス系のRFLで処理された、2×2の綾織り、ナイロン、ストレッチ繊維であった。ベルト本体(歯の背部の両方)ゴム材料は、短繊維強化材、レゾルシノール、およびメラミン化合物を含むHNBRである、共重合体ゴムを含むニトリルグループに基づいた。ベルト本体のゴム合成物はさらに、カーボンブラック、いくつかの可塑剤、劣化防止剤、加硫剤、および加硫助剤を含む、従来公知の添加剤を含んでいた。システムAのベルトの張力心線18は、オイル環境において使用されるオイルに対して対抗するためにNBR・RFL処理剤により処理された、捻られた高強度ガラス繊維のヤーンであった。
【0143】
ベルト3は、異なる張力心線を用いたことを除いて、ベルト2と同様に構成されている。ベルト3は、米国特許第7682274号明細書に記載されているようにカーボンとガラスのハイブリッドの心線、すなわち複数の高強度硝子繊維ヤーンによって被覆された炭素繊維コアヤーンによって置き換えられたガラス心線を有していた。
【表1】
【0144】
比較例のシステムの第1のテストシリーズ
【0145】
第1テストシリーズのテスト装置レイアウトは、標準のプーリに慣性が合致した標準のテンショナとプーリを含んでいた。カムプーリは円形であり、1.5mmの直径のピッチラインデファレンシャル(DPLD)で切削加工され、クランクプーリは1.45mmDPLDを有していた。両カムスプロケットは標準のVVT装置を含む標準のプーリに合致する慣性であった。テンショナ244は、単一の偏心した中心と対称減衰を有し、約500Nの取付け張力を与え、かつ滑らかな62mm直径のプーリを有する、標準のコンパクトテンショナであった。テンショナプーリの面の幅は24.5mmであり、テンショナの全体の幅は約36mmであった。これは最も幅広の要素であり、したがって比較例の駆動機構パッケージの全幅は約36mmであった。クランク速度は5000と6000rpmの間で変化し、10秒間の増速と10秒間の減速が繰り返された。
【0146】
表2に示されるように5つの駆動システムがテストされ、第6のシステムの結果が他の5つに基づいて推定された。このシリーズではベルトのみが変えられた。ベルト1は3つの異なる幅、18mm、12mm、および10mmで用いられた。ベルト2は2つの異なる幅、18mmおよび10mmで用いられ、結果が12mmの幅に対して推定された。2つの類似したテスト装置が用いられた。システムは比較例(「比較」)システム1、2に対して、他のシステムのベルトが損傷するまで、固定時間に対して実行された。システム3、6の結果は、装置1が装置2よりも多少長い走行時間を与えることを示す。システムのテストにおけるこのような変化は異常ではない。これらのテストは本発明システムのテストの基準値として用いられた。さらなるテストが、システムのパッケージの大きさを最小化するゴールと、また過度に長い走行時間を避けるために、10mm幅のベルトを用いて実施された。
【表2】
【0147】
比較例と本発明システムの第2のテストシリーズ
【0148】
この第2のテストシリーズのテストレイアウトは第1のシリーズと同様であり、
図35に示されるようなものであるが、テスト装置は第3の装置、すなわち装置3であった。装置3は第1装置および第2装置とは異なり、標準のフライホイールは第3の装置には含まれていたが、装置1および2には含まれていなかった。表3に示されるように、2つの駆動システムは装置3においてテストされた。比較システム7は、標準のプーリに慣性が合致した、標準のテンショナとプーリを含んでいた。カムプーリは円形であり、1.5mmの直径ピッチラインデファレンシャル(DPLD)で切削加工され、クランクプーリは1.45mmのDPLDを有していた。両カムスプロケットは標準のVVT装置を含む標準のプーリに合致する慣性であった。テンショナ244は、単一の偏心した中心と対称減衰を有し、約500Nの取付け張力を与え、かつ滑らかな62mm直径のプーリを有する、標準のコンパクトテンショナであった。テンショナプーリの面の幅は24.5mmであり、テンショナの全体の幅は約36mmであった。これは最も幅広の要素であり、したがって比較例の駆動機構パッケージの全幅は約36mmであった。このテストシリーズにおいて、クランク速度は各テストの間4750rpmの一定値に保持された(これはほぼ最大共振速度である)。10mm幅、RPP116歯形状、9.525mmピッチのベルト2が比較システム7に用いられた。
【0149】
本発明システム8は同じテストレイアウトを有するが、カムスプロケットは長円形であり、1.5mmの直径ピッチラインデファレンシャル(DPLD)で切削加工された。長円の吸気カムスプロケット242は、0.75mmの偏心量で、13gcwの位置に位相決めされた、すなわちエンジンの基準値から時計方向に13溝だけ角変位した、
図2に示されるような3ローブ型である。長円の排気カムスプロケット245は、1.0mmの偏心量で、23.5gcwの位置に位相決めされた、すなわち基準値から時計方向に23.5溝だけ角変位した、
図2に示されるような3ローブ型である。両カムスプロケットは標準のプーリに慣性が合致している。
【0150】
システム8のテンショナ244は、取付け張力が約500Nで、60mm直径のプーリを有する単一偏心中心の、ここに記載された設計によるコンパクトテンショナであった。したがってテンショナは14mmのプーリ面幅と約16mmの全体幅を有していた。テンショナはまた、例えばリウ等に付与された米国特許第6609988号明細書に記載され、約300Nの非対称減衰を有していた。
【0151】
クランクプーリは同様に、狭いベルトおよびパッケージ幅に合致するように、減縮した面幅を有していた。
【0152】
ベルト3は、10mm幅、RPP116歯形状、9.525mmピッチで、システム8のために使用された。
【0153】
2つのシステムはベルトの損傷が生じるまで走行された。その結果は表3に示されている。690時間における比較例システム7の走行時間は、777時間における比較例システム6の結果に一致している。本発明システム8の結果は1266時間の走行時間のほとんど2倍である。これは、狭い高弾性ベルトと円形スプロケットおよび特別な狭いテンショナとの組み合わせがベルト寿命を著しく延長させることを示す。
【0154】
表3は、テストの前後を含む、いくつかのタイミング誤差の結果を含んでいる。改善されたタイミング誤差の結果は、より高いベルト弾性の効果と、テンショナ設計の効果と、長円スプロケットの効果とを含む、効果の組合せであると考えられる。表3は、他のタイミングからの個々の効果のいくつかを示し、そのうちのいくつかは表3に示されるような12mm幅のベルトに対して実施された。最終的な結果は、ベルトの寿命の間にわたって、ピーク・ピーク値で1°よりも小さい最大タイミング誤差を有する非常に狭い(10mmベルト)である。
【0155】
加えて、表3は、システムのベルトの有効張力が500Nから250Nまで、実質的に低減されることを示し、この効果はほとんど長円スプロケットによるものである。この長円プーリの有利な効果は非常に重要である。それは取付け張力が歯飛びを生じさせることなく低下することを可能にし、これは延いてはランド部の摩耗率を減少させる。
【0156】
このようにシステム7、8の結果は、高弾性ベルトが長円スプロケットおよび同心的テンショナと組み合わせられたときの、非常に優れたシステム全体の性能とベルト寿命を示している。その結果は、取付け張力を最適化することによりさらに改善されると考えられる。長円スプロケットは、歯の剪断損傷モードのベルト寿命を順当に延長させる、クランクにおける有効張力を著しく減少させる。しかし、観察される損傷モードはランド部の摩耗(これはシステムにおけるPVに深く関係する(接触面圧×滑り速度))であったので、ベルト寿命における長円スプロケットの積極的な効果は減少する。換言すれば、長円スプロケットを使用して、有効張力を低減させるが、取付け張力も低減させれば(すなわちベルトとプーリの間のより低いPV)、ベルト寿命はさらに延びた。
【0157】
10mmのベルト幅がテストを速めるために選択された。これらの結果、および加速されたテストとより現実的なアプリケーションとの相関関係を伴う他の経験から、14mmまでベルト幅を増加させることは、約3500時間のテスト装置におけるシステム8の耐久性をもたらすと考えられ、これは約240,000kmの車両の寿命に関係すると期待される。14mmのベルト幅は上述したテンショナおよびプーリに適用可能であり、駆動パッケージの全幅を18mm以下の大きさにすることができ、これは標準の要素を有する従来の駆動機構のパッケージ幅の約半分である。この駆動システムは、標準の要素を有する従来の駆動システムよりも、容易にほぼ30%軽くなることも推定される。
【表3】
【0158】
特に長円スプロケットに関連した、本発明のいくつかの付加的な特徴が次に示される。
【0159】
特徴1。本発明は同期ベルト駆動システムに関し、同期ベルト駆動システムは、歯付き面と、2つの円弧部(14、15)の間に配置される少なくとも1つの直線部(16)とを有する第1長円スプロケット(10)を備え、円弧部は固定半径(R1、R2)を有し、直線部は所定長さを有し、歯付き面を有するスプロケット(300)を備え、スプロケットは無端歯付き部材(200)により第1長円スプロケットに係合され、第1長円スプロケット(10)は、スプロケットと第1長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差がピーク・ピーク値で1.5度よりも小さくなるような大きさとフェーズを有する。
【0160】
特徴2。特徴1における同期ベルト駆動システムは、第2回転負荷に接続された第2長円スプロケットをさらに備え、第2長円スプロケットは無端歯付き部材に係合し、第2長円スプロケットは、スプロケットと第2長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差がピーク・ピーク値で1.5度よりも小さくなるような大きさとフェーズを有する。
【0161】
特徴3。特徴1における同期ベルト駆動システムにおいて、スプロケットと第1長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差はピーク・ピーク値で0.5度よりも小さい。
【0162】
特徴4。特徴3における同期ベルト駆動システムにおいて、スプロケットと第2長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差はピーク・ピーク値で0.5度よりも小さい。
【0163】
特徴5。特徴1における同期ベルト駆動システムにおいて、無端歯付き部材の幅は12mm以上である。
【0164】
特徴6。特徴1における同期ベルト駆動システムにおいて、無端歯付き部材は約630,000Nから約902,000Nの範囲内の弾性を有する。
【0165】
特徴7。特徴1における同期ベルト駆動システムにおいて、大きさは約1.0mmから1.5mmの範囲内にある。
【0166】
特徴8。特徴1における同期ベルト駆動システムにおいて、第1長円スプロケットのフェーズは、基準点に対して回転したとき、9溝から25溝の範囲内である。
【0167】
特徴9。特徴8における同期ベルト駆動システムにおいて、基準点は3時の位置を基準とする。
【0168】
特徴10。特徴2における同期ベルト駆動システムにおいて、第2長円スプロケットのフェーズは、基準点に対して回転したとき、9溝から25溝の範囲内である。
【0169】
特徴11。特徴10における同期ベルト駆動システムにおいて、基準点は3時の位置を基準とする。
【0170】
特徴12。特徴10における同期ベルト駆動システムにおいて、第1長円スプロケットのフェーズは、基準点に対して回転したとき、9溝から25溝の範囲内である。
【0171】
特徴13。特徴12における同期ベルト駆動システムにおいて、基準点は3時の位置を基準とする。
【0172】
特徴14。特徴1における同期ベルト駆動システムにおいて、スプロケットは駆動装置に接続され、第1長円スプロケットは回転負荷に接続される。
【0173】
特徴15。特徴14における同期ベルト駆動システムにおいて、駆動装置はエンジンのクランクシャフトである。
【0174】
特徴16。特徴2における同期ベルト駆動システムにおいて、第1長円スプロケットは排気カムシャフトに接続される。
【0175】
特徴17。特徴2における同期ベルト駆動システムにおいて、第2長円スプロケットは吸気カムシャフトに接続される。
【0176】
特徴18。本発明はまた同期ベルト駆動システムに関し、同期ベルト駆動システムは、歯付き面と、2つの円弧部の間に配置される少なくとも1つの直線部とを有する第1長円スプロケットを備え、円弧部は固定半径を有し、直線部は所定長さを有し、歯付き面を有するスプロケットを備え、スプロケットは無端歯付き部材により第1長円スプロケットに係合され、第1長円スプロケットは、スプロケットと第1長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差がピーク・ピーク値で1度よりも小さくなるような大きさとフェーズを有し、第2回転負荷に接続された第2長円スプロケットを備え、第2長円スプロケットは無端歯付き部材に係合し、第2長円スプロケットは、スプロケットと第2長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差がピーク・ピーク値で1.5度よりも小さくなるような大きさとフェーズを有する。
【0177】
特徴19。特徴18における同期ベルト駆動システムにおいて、第1長円スプロケットは排気カムシャフトに接続され、第2長円スプロケットは吸気カムシャフトに接続され、スプロケットはエンジンのクランクシャフトに接続される。
【0178】
特徴20。特徴19における同期ベルト駆動システムにおいて、スプロケットと第1長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差はピーク・ピーク値で0.5度よりも小さく、スプロケットと第2長円スプロケットの間の角度変位タイミング誤差はピーク・ピーク値で0.5度よりも小さい。
【0179】
テンショナに関連した本発明の付加的な特徴のいくつかが次に示される。
【0180】
特徴1。本発明はテンショナに関し、テンショナは、軸方向に延びる円筒状部分を有するベースを備え、円筒状部分は径方向外周面と径方向外周面の径方向内側である受容部とを有し、径方向外周面に揺動自在に係合する偏心アームと、径方向内側の受容部内に配置される捻りバネとを備え、捩りバネは付勢力を偏心アームに付与し、偏心アームに軸支されるプーリとを備える。
【0181】
特徴2。特徴1におけるテンショナにおいて、プーリはニードルベアリングに軸支される。
【0182】
特徴3。特徴1におけるテンショナにおいて、偏心アームとプーリと捻りバネとは、偏心アーム、プーリ、捻りバネのいずれも他から軸A-Aに沿って軸方向に変位しないようにして、同軸的に配置される。
【0183】
特徴4。特徴1におけるテンショナにおいて、偏心アームはブッシュにおいてベースに軸支される。
【0184】
特徴5。本発明はまたテンショナに関し、テンショナは、径方向外周面と径方向内側の受容部を有するベース円筒状部分と、径方向外周面に揺動自在に係合する偏心アームと、径方向内側の受容部内に配置される捻りバネとを備え、捻りバネは付勢力を偏心アームに付与し、偏心アームに係合するとともに偏心アームの回転に応じて揺動するように配置された細長部材を備える。
【0185】
特徴6。特徴5におけるテンショナにおいて、偏心アームと捻りバネとは、偏心アームまたは捻りバネのいずれも他から軸A-Aに沿って軸方向に変位しないようにして、同軸的に配置される。
【0186】
特徴7。特徴5におけるテンショナにおいて、偏心アームはブッシュにおいてベースに軸支される。
【0187】
特徴8。特徴5におけるテンショナにおいて、プーリはニードルベアリングにおいて偏心アームに軸支される。
【0188】
特徴9。本発明はまたテンショナに関し、テンショナは、軸方向に延びる円筒状部分を有するベースを備え、円筒状部分は径方向外周面と径方向内側の受容部を有し、径方向外周面に揺動自在に係合する偏心アームを備え、径方向内側の受容部内に配置される捻りバネを備え、捻りバネは付勢力を偏心アームに付与し、偏心アームに軸支されるプーリを備え、偏心アームとプーリと捻りバネとは、偏心アーム、プーリ、捻りバネのいずれも偏心アーム、プーリ、または捻りバネから軸A-Aに沿って軸方向に変位しないようにして、同軸的に配置される。
【0189】
特徴10。特徴9におけるテンショナにおいて、ベースはさらに流体導管を有し、これにより流体がベアリングに入る。
【0190】
特徴11。特徴9におけるテンショナにおいて、プーリはベアリングに軸支される。
【0191】
特徴12。特徴11におけるテンショナにおいて、ベアリングはニードルベアリングである。
【0192】
本発明とその利点が説明されたが、添付された特許請求の範囲によって定義される本発明の精神と範囲から逸脱することなく、種々の変更、置換および変形が可能であることが理解されるべきである。さらに、本発明の範囲が、この明細書に記載されたプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されない。当業者が本発明の開示内容から容易に理解するので、ここに記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、あるいは実質的に同じ結果を達成する、現存し、または後に開発される、プロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップが本発明に従って使用可能である。したがって、添付された特許請求の範囲は、そのようなプロセス、機械、製造物、組成物、手段、方法、またはステップの範囲を含むことを意図される。ここに開示された本発明は、ここに特に開示されていない要素なしに、適切に実施され得る。