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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】対地静電容量測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 27/26 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G01R27/26 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020035482
(22)【出願日】2020-03-03
(65)【公開番号】P2021139662
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2020-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000156938
【氏名又は名称】関西電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】矢壷 修
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-109784(JP,A)
【文献】特開平8-94683(JP,A)
【文献】特開平10-51945(JP,A)
【文献】特開平10-239362(JP,A)
【文献】特開平11-271384(JP,A)
【文献】特開2011-38931(JP,A)
【文献】特開2011-209029(JP,A)
【文献】特開2011-209030(JP,A)
【文献】特開2012-2538(JP,A)
【文献】特開2017-198590(JP,A)
【文献】特許第6621515(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 27/00-27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接地系統における三相の配電線に接続された接地変圧器の二次側に接続された三相の負荷のうち、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせ、
前記接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧を測定し、
前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記接地変圧器の一次電圧に対する三次電圧の比率である三次変圧比と、前記接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスと、前記接地変圧器の二次電圧と、前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分と、を用いた換算式に基づき、前記接地変圧器の一次側の零相電圧を算出し、
前記算出した前記接地変圧器の一次側の零相電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出し、
前記換算式は、下式で表され、
【数1】
当該換算式において、
V0は前記零相電圧を示すベクトルであり、
V’0は前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧を示すベクトルであり、
V2は前記二次電圧を示すベクトルであり、
nは前記三次変圧比であり、
Z1は前記接地変圧器の一次側のインピーダンスを示すベクトルであり、
Z3は前記接地変圧器の三次側のインピーダンスを示すベクトルであり、
Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、
R3は前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分であり、
前記演算式は、下式で表され、
【数2】
当該演算式において、
V0は、前記零相電圧を示すベクトルであり、
Yk(k=a、b、c)は、k相の配電線の対地静電容量のアドミッタンスを示すベクトルと前記接地変圧器の二次側に接続されているk相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルとの和であり、
Vk(k=a、b、c)は、k相の対地電圧を示すベクトルから前記零相電圧を示すベクトルを減算した結果であり、
nは前記三次変圧比であり、
Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、
前記制限抵抗の両端間電圧の測定では、
前記制限抵抗の抵抗値を第一抵抗値と前記第一抵抗値とは異なる第二抵抗値とに切り替えて前記測定をそれぞれ行い、
前記接地変圧器の一次側の零相電圧の算出では、
前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第一換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第二換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、
前記配電線の三相一括の対地静電容量の算出では、
前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第一演算式と、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第二演算式と、の二式によって、前記第一演算式及び前記第二演算式の分子を相殺して、前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルと前記三相の負荷の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルとの和を導出し、
前記導出した和から前記三相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルを減算して得られる前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルから、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出する、
地静電容量測定方法。
【請求項2】
非接地系統における三相の配電線に接続された接地変圧器の二次側に接続された三相の負荷のうち、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせ、
前記接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧を測定し、
前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記接地変圧器の一次電圧に対する三次電圧の比率である三次変圧比と、前記接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスと、前記接地変圧器の二次電圧と、前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分と、を用いた換算式に基づき、前記接地変圧器の一次側の零相電圧を算出し、
前記算出した前記接地変圧器の一次側の零相電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出し、
前記換算式は、下式で表され、
【数3】
当該換算式において、
V0は前記零相電圧を示すベクトルであり、
V’0は前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧を示すベクトルであり、
V2は前記二次電圧を示すベクトルであり、
nは前記三次変圧比であり、
Z1は前記接地変圧器の一次側のインピーダンスを示すベクトルであり、
Z3は前記接地変圧器の三次側のインピーダンスを示すベクトルであり、
Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、
RLは前記接地変圧器の三次回路を構成する配線の抵抗値であり、
R3は前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分であり、
前記演算式は、下式で表され、
【数4】
当該演算式において、
V0は、前記零相電圧を示すベクトルであり、
Yk(k=a、b、c)は、k相の配電線の対地静電容量のアドミッタンスを示すベクトルと前記接地変圧器の二次側に接続されているk相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルとの和であり、
Vk(k=a、b、c)は、k相の対地電圧を示すベクトルから前記零相電圧を示すベクトルを減算した結果であり、
nは前記三次変圧比であり、
Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、
前記制限抵抗の両端間電圧の測定では、
前記制限抵抗の抵抗値を第一抵抗値と前記第一抵抗値とは異なる第二抵抗値とに切り替えて前記測定をそれぞれ行い、
前記接地変圧器の一次側の零相電圧の算出では、
前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第一換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第二換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、
前記配電線の三相一括の対地静電容量の算出では、
前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第一演算式と、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第二演算式と、の二式によって、前記第一演算式及び前記第二演算式の分子を相殺して、前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルと前記三相の負荷の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルとの和を導出し、
前記導出した和から前記三相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルを減算して得られる前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルから、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出する、
対地静電容量測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接地系統における三相の配電線の三相一括の対地静電容量を測定する対地静電容量測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、6.6kV系統等の非接地系統では、人工接地試験を実施することによって三相の配電線の三相一括の対地静電容量を測定し、当該測定結果に基づいて地絡過電圧継電器(以下、保護リレー)の動作感度を決定している。人工接地試験を実施する場合、当該系統に接続されている全ユーザの保護リレーをロックする必要が生じる。しかし、近年、太陽光発電等の自家用電気設備が増加していることに伴い、保護リレーをロックすべき箇所が増加している。
【0003】
自家用電気設備は電気主任技術者の選任が必要であるので、多くのユーザは、設備の保守に関しては外部委託を行っている。しかし、保護リレーをロックする作業は設備の保守に含まれない場合が多い。このため、ユーザは、保護リレーをロックする作業を外部委託するには、別途費用を負担する必要がある。一方、一のユーザが保護リレーをロックしないだけでも人工接地試験が実施できないので、試験者は、全てのユーザが保護リレーをロック可能となるよう試験の実施日時を調整するのに多大な負担がかかっている。
【0004】
このため、本発明者は、下記特許文献1に記載のように、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、ユーザや試験者に負担のかかる人工接地試験を行うことなく、非接地系統における三相の配電線の三相一括の対地静電容量を測定する測定方法を考案した。
【0005】
具体的には、当該測定方法では、三相の配電線に接続された接地変圧器の二次側に接続された三相の負荷のうち、少なくとも一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせ、各相の配電線の対地静電容量を不平衡状態にする。そして、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧から得られる接地変圧器の一次側の零相電圧と、制限抵抗の抵抗値と、接地変圧器の一次電圧に対する三次電圧の比率である三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、配電線の三相一括の対地静電容量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-198590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、本発明者は、複数の非接地系統において特許文献1に記載の測定方法及び人工接地試験のそれぞれで配電線の三相一括の対地静電容量を測定した結果を比較検討したところ、零相電圧が比較的小さい非接地系統において測定結果に大きな誤差が生じることを知見した。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされた発明であり、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、人工接地試験を行うことなく、非接地系統における三相の配電線の三相一括の対地静電容量を精度良く測定可能な測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による対地静電容量測定方法は、非接地系統における三相の配電線に接続された接地変圧器の二次側に接続された三相の負荷のうち、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせ、前記接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧を測定し、前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記接地変圧器の一次電圧に対する三次電圧の比率である三次変圧比と、前記接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスと、前記接地変圧器の二次電圧と、前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分と、を用いた換算式に基づき、前記接地変圧器の一次側の零相電圧を算出し、前記算出した前記接地変圧器の一次側の零相電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出し、前記換算式は、下式で表され、
【数1】
当該換算式において、V0は前記零相電圧を示すベクトルであり、V’0は前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧を示すベクトルであり、V2は前記二次電圧を示すベクトルであり、nは前記三次変圧比であり、Z1は前記接地変圧器の一次側のインピーダンスを示すベクトルであり、Z3は前記接地変圧器の三次側のインピーダンスを示すベクトルであり、Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、R3は前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分であり、前記演算式は、下式で表され、
【数2】
当該演算式において、V0は、前記零相電圧を示すベクトルであり、Yk(k=a、b、c)は、k相の配電線の対地静電容量のアドミッタンスを示すベクトルと前記接地変圧器の二次側に接続されているk相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルとの和であり、Vk(k=a、b、c)は、k相の対地電圧を示すベクトルから前記零相電圧を示すベクトルを減算した結果であり、nは前記三次変圧比であり、Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、前記制限抵抗の両端間電圧の測定では、前記制限抵抗の抵抗値を第一抵抗値と前記第一抵抗値とは異なる第二抵抗値とに切り替えて前記測定をそれぞれ行い、前記接地変圧器の一次側の零相電圧の算出では、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第一換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第二換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、前記配電線の三相一括の対地静電容量の算出では、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第一演算式と、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第二演算式と、の二式によって、前記第一演算式及び前記第二演算式の分子を相殺して、前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルと前記三相の負荷の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルとの和を導出し、前記導出した和から前記三相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルを減算して得られる前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルから、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出する
【0010】
本構成によれば、接地変圧器の二次側に接続された一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせる。これにより、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、各相の配電線の対地静電容量及び各相の二次側の負荷の合計アドミッタンスで表される、各相の配電線の対地アドミッタンスを不平衡な状態にし、接地変圧器の一次側に零相電圧を強制的に発生させることができる。その結果、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧を測定することが可能となる。
【0011】
ただし、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせると、接地変圧器の変圧比の誤差特性によって、接地変圧器の二次電圧に、前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分に応じた電圧降下が生じ得る。この場合、接地変圧器の一次電圧にも接地変圧器の一次側のインピーダンスに応じた電圧降下が生じる結果、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧にも、接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスに応じた電圧降下が生じ得る。
【0012】
本構成によれば、前記換算式に基づき、制限抵抗の抵抗値と接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスと接地変圧器の二次電圧と前記差分とを用いて、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせた場合に生じ得る上述の電圧降下を考慮し、接地変圧器の三次変圧比を用いて、制限抵抗の両端間電圧の測定結果から、接地変圧器の一次側の零相電圧を精度良く換算することができる。
【0013】
このため、本構成によれば、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、人工接地試験を行うことなく、制限抵抗の両端間電圧の測定結果から得られる精度の良い接地変圧器の一次側の零相電圧と、既知の制限抵抗の抵抗値と、接地変圧器の所謂一次・三次間変圧比である三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、非接地系統における三相の配電線の三相一括の対地静電容量を精度良く算出することができる。
【0015】
前記換算式は、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせて測定した制限抵抗の両端間電圧を示すベクトルV’と、当該測定時に接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスを示すベクトルZ、Zに応じて制限抵抗の両端間で降下した三相分の電圧を示すベクトルと、接地変圧器の変圧比の誤差特性によって接地変圧器の二次電圧を示すベクトルVが前記差分Rに応じて電圧降下することで、接地変圧器の一次側のインピーダンスを示すベクトルZに応じて接地変圧器の一次側で降下した前記一相の電圧を示すベクトルと、の和を算出し、当該和を3で除算した結果を三次変圧比nを用いて一次側換算することで、接地変圧器の一次側の零相電圧を示すベクトルVを算出する式となっている。
【0016】
このため、本構成によれば、前記換算式に基づき、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせた場合に生じ得る、制限抵抗の抵抗値Rと接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスを示すベクトルZ1、Z3と接地変圧器の二次電圧を示すベクトルV2と前記差分R3とに基づく上述の電圧降下を考慮して、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせて測定した制限抵抗の両端間電圧を示すベクトルV’0から、接地変圧器の一次側の零相電圧を示すベクトルV0を精度良く算出することができる。
本構成によれば、前記演算式の右辺の分子(Y ・V +Y ・V +Y ・V )が、制限抵抗の抵抗値Rによらず一定である。このため、制限抵抗の抵抗値Rを異ならせて2回前記測定を行い、各測定結果から得られるV と、各測定に用いた制限抵抗の抵抗値Rと、三次変圧比nと、をそれぞれ前記演算式に代入し、当該代入後の異なる値を入力して得られた二つの式によって前記分子(Y ・V +Y ・V +Y ・V )を相殺して、Y +Y +Y が示すベクトルを導出することができる。
そして、Ya+Yb+Ycが示すベクトルから、既知のa、b、c相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルを減算することで、a、b、c相の配電線の対地静電容量のアドミッタンスのベクトルの和を算出することができる。その結果、当該ベクトルの和から3相一括の対地静電容量を算出することができる。
本構成によれば、試験者は、制限抵抗の抵抗値を第一抵抗値と第二抵抗値とに切り替えて前記測定をそれぞれ行うという、簡易な測定作業を行うだけで、三相一括の対地静電容量を算出することができる。
【0017】
また、本発明による他の対地静電容量測定方法は、非接地系統における三相の配電線に接続された接地変圧器の二次側に接続された三相の負荷のうち、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせ、前記接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧を測定し、前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記接地変圧器の一次電圧に対する三次電圧の比率である三次変圧比と、前記接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスと、前記接地変圧器の二次電圧と、前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分と、を用いた換算式に基づき、前記接地変圧器の一次側の零相電圧を算出し、前記算出した前記接地変圧器の一次側の零相電圧と、前記制限抵抗の抵抗値と、前記三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出し、前記換算式は、下式で表され、
【数33】
当該換算式において、V0は前記零相電圧を示すベクトルであり、V’0は前記測定した前記制限抵抗の両端間電圧を示すベクトルであり、V2は前記二次電圧を示すベクトルであり、nは前記三次変圧比であり、Z1は前記接地変圧器の一次側のインピーダンスを示すベクトルであり、Z3は前記接地変圧器の三次側のインピーダンスを示すベクトルであり、Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、RLは前記接地変圧器の三次回路を構成する配線の抵抗値であり、R3は前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分であり、前記演算式は、下式で表され、
【数34】
当該演算式において、V0は、前記零相電圧を示すベクトルであり、Yk(k=a、b、c)は、k相の配電線の対地静電容量のアドミッタンスを示すベクトルと前記接地変圧器の二次側に接続されているk相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルとの和であり、Vk(k=a、b、c)は、k相の対地電圧を示すベクトルから前記零相電圧を示すベクトルを減算した結果であり、nは前記三次変圧比であり、Rは前記制限抵抗の抵抗値であり、前記制限抵抗の両端間電圧の測定では、前記制限抵抗の抵抗値を第一抵抗値と前記第一抵抗値とは異なる第二抵抗値とに切り替えて前記測定をそれぞれ行い、前記接地変圧器の一次側の零相電圧の算出では、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第一換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合に行った前記測定の結果を用いた前記換算式である第二換算式に基づき、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧を算出し、前記配電線の三相一括の対地静電容量の算出では、前記制限抵抗の抵抗値を前記第一抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第一演算式と、前記制限抵抗の抵抗値を前記第二抵抗値にした場合における前記零相電圧の算出の結果を用いた前記演算式である第二演算式と、の二式によって、前記第一演算式及び前記第二演算式の分子を相殺して、前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルと前記三相の負荷の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルとの和を導出し、前記導出した和から前記三相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルを減算して得られる前記配電線の対地静電容量の三相一括のアドミッタンスを示すベクトルから、前記配電線の三相一括の対地静電容量を算出する
【0018】
本構成によれば、接地変圧器の二次側に接続された一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせる。これにより、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、各相の配電線の対地静電容量及び各相の二次側の負荷の合計アドミッタンスで表される、各相の配電線の対地アドミッタンスを不平衡な状態にし、接地変圧器の一次側に零相電圧を強制的に発生させることができる。その結果、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧を測定することが可能となる。
ただし、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせると、接地変圧器の変圧比の誤差特性によって、接地変圧器の二次電圧に、前記一相の負荷の抵抗値と前記他相の負荷の抵抗値との差分に応じた電圧降下が生じ得る。この場合、接地変圧器の一次電圧にも接地変圧器の一次側のインピーダンスに応じた電圧降下が生じる結果、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧にも、接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスに応じた電圧降下が生じ得る。
本構成によれば、前記換算式に基づき、制限抵抗の抵抗値と接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスと接地変圧器の二次電圧と前記差分とを用いて、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせた場合に生じ得る上述の電圧降下を考慮し、接地変圧器の三次変圧比を用いて、制限抵抗の両端間電圧の測定結果から、接地変圧器の一次側の零相電圧を精度良く換算することができる。
このため、本構成によれば、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、人工接地試験を行うことなく、制限抵抗の両端間電圧の測定結果から得られる精度の良い接地変圧器の一次側の零相電圧と、既知の制限抵抗の抵抗値と、接地変圧器の所謂一次・三次間変圧比である三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、非接地系統における三相の配電線の三相一括の対地静電容量を精度良く算出することができる。
一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせた場合、実際には、制限抵抗の両端間電圧に、三次回路を構成する配線の抵抗値に応じた電圧降下も生じ得る。本構成によれば、前記換算式によって、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせた場合に生じ得る、制限抵抗の抵抗値Rと接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスを示すベクトルZ1、Z3と接地変圧器の二次電圧を示すベクトルV2と前記差分R3とに基づく上述の電圧降下を考慮し、更に、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせた場合に生じ得る、接地変圧器の三次回路を構成する配線の抵抗値に基づく上述の電圧降下も考慮して、より精度良く、接地変圧器の一次側の零相電圧を算出することができる。
【0020】
本構成によれば、前記演算式の右辺の分子(Y・V+Y・V+Y・V)が、制限抵抗の抵抗値Rによらず一定である。このため、制限抵抗の抵抗値Rを異ならせて2回前記測定を行い、各測定結果から得られるVと、各測定に用いた制限抵抗の抵抗値Rと、三次変圧比nと、をそれぞれ前記演算式に代入し、当該代入後の異なる値を入力して得られた二つの式によって前記分子(Y・V+Y・V+Y・V)を相殺して、Y+Y+Yが示すベクトルを導出することができる。
【0021】
そして、Y+Y+Yが示すベクトルから、既知のa、b、c相の負荷のアドミッタンスを示すベクトルを減算することで、a、b、c相の配電線の対地静電容量のアドミッタンスのベクトルの和を算出することができる。その結果、当該ベクトルの和から3相一括の対地静電容量を算出することができる。
【0023】
本構成によれば、試験者は、制限抵抗の抵抗値を第一抵抗値と第二抵抗値とに切り替えて前記測定をそれぞれ行うという、簡易な測定作業を行うだけで、三相一括の対地静電容量を算出することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、人工接地試験を行うことなく、非接地系統における三相の配電線の三相一括の対地静電容量を精度良く測定可能な測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】6.6kV非接地系統の構成を示す図である。
図2】三相一括の対地静電容量の測定方法を示すフローチャートである。
図3図1に示す接地変圧器を含む電気回路の等価回路図である。
図4図1に示す非接地系統の等価回路図である。
図5】接地変圧器の比誤差特性の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(本開示に至る経緯)
本発明者は、上記特許文献1に記載のように、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線の対地静電容量が平衡状態にあるときでも、ユーザや試験者に負担のかかる人工接地試験を行うことなく、非接地系統における三相の配電線の三相一括の対地静電容量を測定する測定方法を考案した。
【0027】
具体的には、当該測定方法では、三相の配電線に接続された接地変圧器の二次側に接続された三相の負荷のうち、少なくとも一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせ、各相の配電線の対地静電容量を不平衡状態にする。そして、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧から得られる接地変圧器の一次側の零相電圧と、制限抵抗の抵抗値と、接地変圧器の一次電圧に対する三次電圧の比率である三次変圧比と、を用いた演算式に基づき、配電線の三相一括の対地静電容量を算出する。
【0028】
しかし、本発明者は、複数の非接地系統において、特許文献1に記載の測定方法及び人工接地試験で配電線の三相一括の対地静電容量を測定した結果を比較検討したところ、零相電圧が比較的小さい非接地系統において測定結果に大きな誤差が生じることを知見した。そこで、本発明者は、この原因について鋭意検討を重ねた結果、零相電圧が比較的小さい非接地系統では、接地変圧器の変圧比の誤差特性が、配電線の三相一括の対地静電容量の測定結果に大きく影響を与えることを知見した。
【0029】
具体的には、接地変圧器における実際の一次電圧と二次電圧との比率(以降、真の変圧比)は、必ずしも公称変圧比と一致するとは限らず、公称変圧比に対して比誤差と呼ばれる誤差範囲で変動する。図5は、接地変圧器の比誤差特性の一例を示す図である。図5における横軸は、接地変圧器の二次側に接続された二次負担の容量を示し、縦軸は、接地変圧器の比誤差を示す。例えば、図5に示すように、接地変圧器は、定格容量Zの二次負担が接続されている場合に真の変圧比が公称変圧比よりもEV%低くなり、負荷が接続されていない場合に真の変圧比が公称変圧比よりもEV%高くなる特性(以降、比誤差特性)を有している。
【0030】
したがって、特許文献1に記載の測定方法で配電線の三相一括の対地静電容量を測定する場合に、接地変圧器の二次側に接続された一相の負荷のアドミッタンスを異ならせるため、定格容量Zの半分であった当該一相の負荷の容量を、定格容量Zの半分よりも大きい容量Zxに増大させたとする。この場合、接地変圧器の二次電圧に図5の破線矢印の長さ(α)に応じた分だけ、電圧降下が生じ得る。
【0031】
この場合、接地変圧器の一次電圧にも接地変圧器の一次側のインピーダンスに応じた電圧降下が生じる結果、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧にも、接地変圧器の一次側及び三次側のインピーダンスに応じた電圧降下が生じ得る。
【0032】
しかし、本発明者は、上述の比較検討において、特許文献1に記載の測定方法で配電線の三相一括の対地静電容量を測定する場合に、接地変圧器の三次側に接続された制限抵抗の両端間電圧に上述の電圧降下が生じていることを考慮せずに、制限抵抗の両端間電圧から一次側の零相電圧を算出していた。その結果、本発明者は、一次側の零相電圧が比較的小さい非接地系統では、特許文献1に記載の測定方法で配電線の三相一括の対地静電容量を算出する場合に、上述の電圧降下の影響を無視できなくなり、最終的に算出される対地静電容量に大きな誤差が生じることを知見した。
【0033】
そこで、本発明者は、特許文献1に記載の測定方法で配電線の三相一括の対地静電容量を算出する場合に用いる一次側の零相電圧を、一相の負荷のアドミッタンスを他相の負荷のアドミッタンスと異ならせた場合に生じ得る上述の電圧降下を考慮して、精度良く算出する方法を考案した。
【0034】
(実施形態)
以下、本発明に係る測定方法の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明に係る非接地系統の一実施形態である6.6kV非接地系統1の構成を示す図である。図1に示すように、6.6kV非接地系統1(以下、非接地系統1)は、配電用変圧器2、三相の配電線3a、3b、3c、接地変圧器5、切替スイッチSW1、制限抵抗R1、R2、スイッチSW2、抵抗R3、及び負荷4を備えている。
【0035】
配電用変圧器2は、変電所等に設けられ、三相の配電線3a、3b、3cへ三相の電圧V、V、Vを供給する。以下、a相の構成要素には符号aを付し、b相の構成要素には符号bを付し、c相の構成要素には符号cを付す。図1において、Y1(k=a、b、c)は、k相の配電線3kの対地静電容量のアドミッタンスを示している。また、以下では、説明の便宜上、k相の配電線3k(k=a、b、c)の対地静電容量をCと記載する。
【0036】
接地変圧器5は、一次回路51と、二次回路52と、三次回路53と、を備えている。
【0037】
一次回路51は、スター結線され、中性点が接地された三相の一次巻線51a、51b、51cを備えている。つまり、k(k=a、b、c)相の一次巻線51kは、一端がk相の配電線3kに接続され、他端が接地されている。
【0038】
二次回路52は、三相の一次巻線51a、51b、51cと同様、スター結線され、中性点が接地された三相の二次巻線52a、52b、52cを備え、k(k=a、b、c)相の配電線3kにより供給されたk相の電圧Vをそれぞれ同一の変圧比で変圧する。つまり、a相の二次巻線52aとa相の一次巻線51aとの変圧比、b相の二次巻線52bとb相の一次巻線51bとの変圧比、及びc相の二次巻線52cとc相の一次巻線51cとの変圧比は同一となっている。
【0039】
三次回路53は、オープンデルタ結線された三相の三次巻線53a、53b、53cを備え、接地変圧器5の一次回路51側(一次側)に発生している零相電圧Vを所定の変圧比(以下、三次変圧比)で変圧する。つまり、三次変圧比は、接地変圧器5の所謂一次・三次間変圧比を示している。a相の三次巻線53bとa相の一次巻線51aとの変圧比、b相の三次巻線53bとb相の一次巻線51bとの変圧比、及びc相の三次巻線53cとc相の一次巻線51cとの変圧比は同一となっている。
【0040】
切替スイッチSW1は、三次回路53のオープン端子53d、53e(三次側)に制限抵抗R1を接続するか、制限抵抗R2を接続するかを切替えるスイッチである。制限抵抗R1、R2は、制限抵抗R1、R2は、地絡事故の発生等が原因で三次回路53に大電流が流れた場合に、その電流の大きさを制限するものである。尚、制限抵抗R1の抵抗値(第一抵抗値)は、制限抵抗R2の抵抗値(第二抵抗値)と異なっている。
【0041】
負荷4には、二次回路52が備えるk(k=a、b、c)相の二次巻線52k(二次側)に接続され、当該二次巻線52kから供給されるk相の電圧を用いて動作する負荷が含まれる。以下、k相の当該二次巻線52kに接続されている負荷を、k相の負荷4kと記載する。
【0042】
以下、三相の電圧V、V、Vの大きさ及び各相の電圧間の位相差が規定値に保たれている状態であることを、三相の電圧V、V、Vが平衡状態であると記載する。また、三相の電圧V、V、Vの大きさ又は各相の電圧間の位相差が規定値に保たれていない状態であることを、三相の電圧V、V、Vが不平衡状態であると記載する。
【0043】
負荷4には、制限抵抗R1又は制限抵抗R2を介して三次回路53のオープン端子53d、53eに接続されている、制限抵抗R1又は制限抵抗R2の両端間電圧を測定する電圧計や地絡保護リレー等も含まれる。
【0044】
スイッチSW2は、a相の二次巻線52aに抵抗R3を接続するか否かを切り替えるスイッチである。抵抗R3は、所定の抵抗値を有する抵抗素子である。尚、抵抗R3に代えてコンデンサ等の他の電気素子を設けてもよい。
【0045】
以下、非接地系統1における三相の配電線3a、3b、3cの三相一括の対地静電容量を測定する方法について説明する。図2は、三相一括の対地静電容量の測定方法を示すフローチャートである。
【0046】
図2に示すように、試験者は、先ず、a相の二次巻線52aに接続されているa相の負荷4aのアドミッタンスを、b、c相の二次巻線52b、52cに接続されているb、c相の負荷4b、4c(他相の負荷)のアドミッタンスと異ならせる(S1)。
【0047】
具体的には、ステップS1において、試験者は、スイッチSW2(図1)を閉状態にすることで、a相の二次巻線52aに抵抗R3を接続する。これにより、a相(一相)の負荷4aのアドミッタンスだけを、b、c相(他相)の負荷4b、4cのアドミッタンスと異ならせる。したがって、a相の負荷4aの抵抗値と他のb、c相の負荷4b、4cの抵抗値との差分は、抵抗R3の抵抗値となる。
【0048】
つまり、試験者は、ステップS1を行うことにより、地絡事故が発生していない場合に各相の配電線3a、3b、3cの対地静電容量Ca、Cb、Ccが同一である(以下、各相の配電線3a、3b、3cの対地静電容量Ca、Cb、Ccが平衡状態である)ときでも、各相の配電線3a、3b、3cの対地静電容量Ca、Cb、Cc及び各相の負荷4a、4b、4cの合計アドミッタンスで表される、各相の配電線3a、3b、3cの対地アドミッタンスを不平衡な状態にし、接地変圧器5の一次回路51側に零相電圧Vを強制的に発生させることができる。その結果、接地変圧器5の三次回路53側に接続された制限抵抗R1又は制限抵抗R2の両端間電圧を測定することが可能となる。
【0049】
そこで、試験者は、三次回路53のオープン端子53d、53eに制限抵抗R1を接続するよう切替スイッチSW1を切り替え(S2)、負荷4に含まれる前記電圧計を用いて制限抵抗R1の両端間電圧を測定する(S3)。
【0050】
次に、試験者は、三次回路53のオープン端子53d、53eに制限抵抗R2を接続するよう切替スイッチSW1を切り替える(S4)。そして、試験者は、負荷4に含まれる前記電圧計を用いて制限抵抗R2の両端間電圧を測定する(S5)。
【0051】
次に、試験者は、ステップS3における測定の結果を用いた後述の換算式(第一換算式)に基づき、オープン端子53d、53eに制限抵抗R1を接続した場合における接地変圧器5の一次側の零相電圧を算出する。同様に、試験者は、ステップS5における測定の結果を用いた後述の換算式(第二換算式)に基づき、オープン端子53d、53eに制限抵抗R2を接続した場合における接地変圧器5の一次側の零相電圧を算出する(S6)。ステップS6の詳細については後述する。
【0052】
そして、試験者は、ステップS6で算出した二個の零相電圧と、当該二個の零相電圧の算出にそれぞれ用いた制限抵抗R1、R2の抵抗値と、三次変圧比nと、を用いた後述の演算式に基づき、三相の配電線3a、3b、3cの三相一括の対地静電容量を算出する(S7)。ステップS7の詳細については後述する。
【0053】
以下、ステップS6の詳細について詳述する。接地変圧器5の一次側の零相電圧を示すベクトルVは、三次変圧比nと、三次回路53に接続された制限抵抗の両端間電圧の測定結果を示すベクトルV’と、接地変圧器5の比誤差特性によって降下した電圧を示すベクトルV’’と、を用いて、式(21)によって示すことができる。
【数3】
【0054】
以降の説明では、説明の便宜上、接地変圧器5の一次側の零相電圧を示すベクトルVを、接地変圧器5の一次側の零相電圧Vと記載する。また、三次回路53に接続された制限抵抗の両端間電圧の測定結果を示すベクトルV’を、制限抵抗の両端間電圧の測定値V’と記載する。また、接地変圧器5の比誤差特性によって降下した電圧を示すベクトルV’’を、補正値V’’と記載する。
【0055】
式(21)の左辺に記載の一次側の零相電圧Vは、系統側一相分の電圧を示している。これに対し、式(21)の右辺に記載の制限抵抗の両端間電圧の測定値V’及び補正値V’’は、接地変圧器5の三次側における三相分の電圧の合計値を示している。このため、式(21)の右辺では、制限抵抗の両端間電圧の測定値V’と補正値V’’との和を3で除算した結果を、三次変圧比nを用いて一次側換算している。
【0056】
次に、式(21)に含まれる補正値V’’の算出方法について、図3を用いて説明する。図3は、図1に示す接地変圧器5を含む電気回路の等価回路図である。図3において、Zは、接地変圧器5の一次側のインピーダンスを示すベクトルである。具体的には、Zは、接地変圧器5の一次回路51が備える各相の一次巻線51k(k=a、b、c)のインピーダンスを示すベクトルである。Zは、接地変圧器5の二次側のインピーダンスを示すベクトルである。具体的には、Zは、接地変圧器5の二次回路52が備える各相の二次巻線52k(k=a、b、c)のインピーダンスを示すベクトルである。Zは、接地変圧器5の三次側のインピーダンスを示すベクトルである。具体的には、Zは、接地変圧器5の三次回路53が備える各相の三次巻線53k(k=a、b、c)のインピーダンスを示すベクトルである。
【0057】
図3において、Vは、既知の接地変圧器5の二次電圧を示すベクトルである。具体的には、Vは、各相の二次巻線52k(k=a、b、c)の両端間電圧を示すベクトルである。V’01は、ステップS3で測定される制限抵抗R1の両端間電圧を示すベクトルである。V’02は、ステップS5で測定される制限抵抗R2の両端間電圧を示すベクトルである。Iは、ステップS3の測定時に制限抵抗R1に流れる電流及びステップS5の測定時に制限抵抗R2に流れる電流を示すベクトルである。Iは、ステップS1でスイッチSW2が閉状態にされた場合に抵抗R3に流れる電流を示すベクトルである。
【0058】
以降の説明では、説明の便宜上、接地変圧器5の二次電圧を示すベクトルVを接地変圧器5の二次電圧Vと記載する。ステップS3で測定される制限抵抗R1の両端間電圧を示すベクトルV’01を、制限抵抗R1の両端間電圧の測定値V’01と記載する。また、ステップS5で測定される制限抵抗R2の両端間電圧を示すベクトルV’02を制限抵抗R2の両端間電圧の測定値V’02と記載する。制限抵抗R1、R2に流れる電流を示すベクトルIを、制限抵抗R1、R2に流れる電流Iと記載する。抵抗R3に流れる電流を示すベクトルIを、抵抗R3に流れる電流Iと記載する。
【0059】
ステップS1でスイッチSW2が閉状態にされ、接地変圧器5の二次側のa相の二次巻線52aに抵抗R3が接続されると、抵抗R3に電流Iが流れ、制限抵抗R1、R2に電流Iが流れる。このとき、接地変圧器5の二次側のa相の二次巻線52aに抵抗R3が接続されたことにより、接地変圧器5の比誤差特性によって接地変圧器5のa相の二次電圧に電圧降下が生じ得る。
【0060】
この場合、接地変圧器5のa相の一次電圧にも、接地変圧器5の一次側のインピーダンスZに応じた電圧降下が生じる。その結果、接地変圧器5の三次回路53に接続された制限抵抗R1、R2の両端間電圧にも、接地変圧器5の一次側のインピーダンスZと三次側のインピーダンスZに応じた三相分の電圧降下が生じ得る。
【0061】
これらのことから、a相の二次巻線52aに抵抗R3が接続された場合に接地変圧器5の比誤差特性によって降下した電圧のベクトルを示す補正値V’’は、下記式(22)によって示すことができる。
【数4】
【0062】
以降、制限抵抗R1の抵抗値及び制限抵抗R2の抵抗値を総称する場合、制限抵抗の抵抗値Rと記載する。制限抵抗R1、R2に流れる電流Iは、制限抵抗の両端間電圧の測定値V’と制限抵抗の抵抗値Rとを用いて、以下の式(23)によって示すことができる。
【数5】
【0063】
また、抵抗R3に流れる電流Iは、接地変圧器5の二次電圧Vと抵抗R3の抵抗値Rとを用いて、以下の式(24)によって示すことができる。
【数6】
【0064】
式(23)及び式(24)を用いて式(22)を変形することで、以下の式(25)が得られる。
【数7】
【0065】
更に、式(25)を用いて式(21)を変形することにより、接地変圧器5の一次側の零相電圧Vを算出するための換算式(26)が得られる。
【数8】
【0066】
したがって、ステップS3で測定された制限抵抗R1の両端間電圧の測定値V’01を換算式(26)のV’とし、ステップS3における測定に用いられた制限抵抗R1の抵抗値Rを換算式(26)のRとすることで、ステップS3で行った測定の結果を用いた換算式(26)である下記の第一換算式(27)が得られる。
【数9】
【0067】
同様にして、ステップS5で測定された制限抵抗R2の両端間電圧の測定値V’02を換算式(26)のV’とし、ステップS5における測定に用いられた制限抵抗R2の抵抗値Rを換算式(26)のRとすることで、ステップS5で行った測定の結果を用いた換算式(26)である下記の第二換算式(28)が得られる。
【数10】
【0068】
したがって、ステップS6では、試験者は、第一換算式(27)に、ステップS3で測定した制限抵抗R1の両端間電圧の測定値V’01と、ステップS3の測定時に用いた制限抵抗R1の抵抗値Rと、三次変圧比nと、接地変圧器5の一次側のインピーダンスZ及び三次側のインピーダンスZと、抵抗R3の抵抗値Rと、を代入する。これにより、試験者は、三次回路53に制限抵抗R1を接続した場合における接地変圧器5の一次側の零相電圧V01を算出する。
【0069】
また、ステップS6では、試験者は、第二換算式(28)に、ステップS5で測定した制限抵抗R2の両端間電圧の測定値V’02と、ステップS5の測定時に用いた制限抵抗R2の抵抗値Rと、三次変圧比nと、接地変圧器5の一次側のインピーダンスZ及び三次側のインピーダンスZと、抵抗R3の抵抗値Rと、を代入する。これにより、試験者は、三次回路53に制限抵抗R2を接続した場合における接地変圧器5の一次側の零相電圧V02を算出する。
【0070】
このように、ステップS6において、試験者は、ステップS2で制限抵抗の抵抗値を制限抵抗R1の抵抗値Rにした場合に、ステップS3で行った測定の結果を用いた換算式(26)である第一換算式(27)を用いて制限抵抗の抵抗値を制限抵抗R1の抵抗値Rにした場合における零相電圧V01を算出する。また、ステップS6において、試験者は、ステップS4で制限抵抗の抵抗値を制限抵抗R2の抵抗値Rにした場合に、ステップS5で行った測定の結果を用いた換算式(26)である第二換算式(27)を用いて制限抵抗の抵抗値を制限抵抗R2の抵抗値Rにした場合における零相電圧V02を算出する。
【0071】
これにより、第一換算式(27)及び第二換算式(28)によって、a相の負荷4aのアドミッタンスをb相及びc相の負荷4b、4cのアドミッタンスと異ならせて測定した制限抵抗R1、R2の両端間電圧の測定値V’01、V’02と、当該測定時に接地変圧器5の一次側及び三次側のインピーダンスZ、Zに応じて、制限抵抗R1、R2の両端間で降下した三相分の電圧と、接地変圧器5の比誤差特性によって接地変圧器5の二次電圧Vが前記差分Rに応じて電圧降下することで、接地変圧器5の一次側のインピーダンスZに応じて接地変圧器5の一次側で降下した電圧と、の和を3で除算した結果が、三次変圧比nを用いて一次側換算されることで、接地変圧器5の一次側の零相電圧V01、02が算出される。
【0072】
その結果、a相の負荷4aのアドミッタンスをb相及びc相の負荷4b、4cのアドミッタンスと異ならせた場合に生じ得る、制限抵抗の抵抗値Rと接地変圧器5の一次側及び三次側のインピーダンスZ、Zと接地変圧器5の二次電圧Vと抵抗R3の抵抗値Rとに基づく上述の電圧降下を考慮して、制限抵抗R1、R2の両端間電圧の測定結果から、接地変圧器5の一次側の零相電圧Vを精度良く換算することができる。
【0073】
次に、ステップS7の詳細について図4を用いて詳述する。図4は、図1に示す非接地系統1の等価回路図である。図4において、Vは、接地変圧器5の一次側の零相電圧を示すベクトルである。Y(k=a、b、c)は、k相の配電線3kの対地静電容量Cのアドミッタンスを示すベクトルとk相の負荷4kのアドミッタンスを示すベクトルとの和である。V(k=a、b、c)は、k相の対地電圧を示すベクトルから、ステップS1で発生させた零相電圧を示すベクトルを減算した結果である。nは、前記三次変圧比である。Rは、制限抵抗R1の抵抗値又は制限抵抗R2の抵抗値である。
【0074】
試験者は、ステップS7において、図4に示す符号を用いて表される以下の演算式(1)を用いる。
【数11】
尚、演算式(1)の導出根拠については後述する。
【0075】
試験者は、ステップS7において、先ず、演算式(1)に、三次変圧比nと、制限抵抗R1の抵抗値「25」と、を代入して、三次回路53に制限抵抗R1を接続した場合における一次側の零相電圧V01を示す以下の第一演算式(2)を得る。尚、制限抵抗R1の抵抗値(第一抵抗値)は例えば25(Ω)であるとする。
【数12】
【0076】
同様にして、試験者は、演算式(1)に、三次変圧比nと、制限抵抗R1の抵抗値「2.5」と、を代入して、三次回路53に制限抵抗R2を接続した場合における一次側の零相電圧V02を示す以下の第二演算式(3)を得る。尚、制限抵抗R2の抵抗値(第二抵抗値)は例えば2.5(Ω)であるとする。
【数13】
【0077】
ここで、第一演算式(2)を変形すると以下の式(2)’となり、第二演算式(3)を変形すると以下の式(3)’となる。
【数14】
【0078】
式(2)’及び式(3)’の左辺は等しいので、式(2)’及び式(3)’から以下の式(4)が得られる。
【数15】
【0079】
そして、式(4)におけるY+Y+Y、つまり、三相の配電線3a、3b、3cの対地静電容量C、C、Cの三相一括のアドミッタンスを示すベクトルと三相の負荷4a、4b、4cの三相一括のアドミッタンスを示すベクトルとの和をYと示し、9・n/25をr1、9・n/2.5をr2と示すことによって式(4)を簡略化すると、以下の式(4)’が得られる。
【数16】
【0080】
式(4)’を変形すると、式(5)が得られる。
【数17】
【0081】
そこで、試験者は、ステップS6で算出した零相電圧V01、V02と、既知のr1、r2と、を式(5)に代入することで、Yを算出する。
【0082】
上述のように、Y(k=a、b、c)は、k相の配電線3kの対地静電容量Cのアドミッタンスを示すベクトルとk相の負荷4kのアドミッタンスを示すベクトルとの和で示してある。よって、負荷4kの既知のインピーダンスをベクトルで示したものをZとすると、Yは、以下の式(6)によって示すことができる。
【数18】
【0083】
このため、式(5)を用いて算出したY(=Y+Y+Y)は、式(6)を用いることで、以下の式(7)で示すことができる。
【数19】
【0084】
式(7)を整理すると、以下の式(8)が得られる。
【数20】
【0085】
そこで、試験者は、既知のY、Z、Z、Zを式(8)に代入することで、三相の配電線3a、3b、3cの三相一括の対地静電容量を示す、(C+C+C)を算出する。
【0086】
このように、ステップS7において、試験者は、制限抵抗の抵抗値を制限抵抗R1の抵抗値Rにした場合における零相電圧Vの算出の結果である零相電圧V01を用いた演算式(1)である第一演算式(2)と、制限抵抗の抵抗値を制限抵抗R2の抵抗値Rにした場合における零相電圧Vの算出の結果である零相電圧V02を用いた演算式(1)である第二演算式(3)と、の二式に既知の値を代入することで、三相の配電線3a、3b、3cの三相一括の対地静電容量を算出する。
【0087】
上記実施形態によれば、試験者は、制限抵抗の抵抗値を制限抵抗R1の抵抗値Rと制限抵抗R2の抵抗値Rとに切り替えて、制限抵抗の両端間電圧の測定をそれぞれ行うという、簡易な測定作業を行うだけで、当該測定結果から接地変圧器5の一次側の零相電圧V01、02を精度良く算出することができる。また、精度良く算出された零相電圧V01、02を用いて、三相一括の対地静電容量を精度良く算出することができる。
【0088】
以下、演算式(1)の導出根拠について図4を用いて説明する。図4において、I0k(k=a、b、c)は、ステップS1で零相電圧Vを発生させたことにより、配電線3k及びk相の二次巻線52kを介して負荷4kに流れる電流を示すベクトルである。I’0k(k=a、b、c)は、ステップS1で零相電圧Vを発生させたことにより、配電線3k及びk相の一次巻線51kを介してグランドに流れる電流を示すベクトルである。Iは、I’0k(k=a、b、c)がk相の一次巻線51kに流れたことによって、三次巻線53kから制限抵抗R1又は制限抵抗R2へ流れる電流を示すベクトルである。
【0089】
0k(k=a、b、c)及びI’0k(k=a、b、c)は、ステップS1で零相電圧を発生させたことにより、接地されていない中性点から、配電線3kを介してk相の負荷4kへと流れる電流である。よって、以下の式(13)(14)が得られる。
【数21】
【0090】
よって、式(13)を用いて式(14)を変形すると、以下の式(15)が得られる。
【数22】
【0091】
次に、式(15)の左辺のI’0a+I’0b+I’0cを以下のように変形する。
【0092】
は、I’0k(k=a、b、c)がk相の一次巻線51kに流れたことにより、三次巻線53kから抵抗値Rの制限抵抗R1、R2に流れる電流である。よって、Iは、以下の式(16)によって示すことができる。
【数23】
【0093】
そこで、上述した式(10)(V+V+V=0)を用いて式(16)を変形すると、以下の式(17)が得られる。
【数24】
【0094】
一方、a相の三次巻線53bとa相の一次巻線51aとの変圧比、b相の三次巻線53bとb相の一次巻線51bとの変圧比、及びc相の三次巻線53cとc相の一次巻線51cとの変圧比は同一となっている。このため、Iを一次側換算することで以下の式(18)が得られる。
【数25】
【0095】
そこで、式(17)と式(18)とを用いて、式(15)のI’0a+I’0b+I’0cを変形すると、以下の式(19)が得られる。
【数26】
【0096】
そして、式(19)を用いて、以下のように式(15)を整理すると、演算式(1)が得られる。
【数27】
【0097】
(変形実施形態)
尚、前記実施形態は、本発明に係る実施形態の例示に過ぎず、本発明を前記実施形態に限定する趣旨ではない。
【0098】
例えば、二つの制限抵抗R1、R2(図1)及び切替スイッチSW1に代えて、抵抗値を異ならせることのできる一つの可変抵抗素子を制限抵抗として、非接地系統1に備えてもよい。これに合わせて、試験者は、ステップS2及びステップS4において、当該可変抵抗素子の抵抗値を切替えるようにしてもよい。
【0099】
また、図2に示す抵抗R3とスイッチSW2と同様にして、二次巻線52b又は二次巻線52cだけに、抵抗とスイッチとを接続可能にしてもよい。そして、ステップS1において、一相の負荷4のアドミッタンスが、他相の負荷4のアドミッタンスと異なるように、各スイッチを閉状態にするようにしてもよい。
【0100】
また、ステップS1でスイッチSW2が閉状態にされ、接地変圧器5の二次側のa相の二次巻線52aに抵抗R3が接続された場合、実際には、制限抵抗R1、R2の両端間電圧に、三次回路53を構成する配線の抵抗値に応じた電圧降下も生じ得る。
【0101】
このように、制限抵抗R1、R2の両端間電圧に、三次回路53を構成する配線の抵抗値Rに応じた電圧降下が生じることも考慮して、補正値V’’を、式(22)に代えて、下記の式(22)’によって示すようにしてもよい。
【数28】
【0102】
この場合、式(23)及び式(24)を用いて式(22)’を変形することで、以下の式(25)’が得られる。
【数29】
【0103】
したがって、式(25)’を用いて式(21)を変形することで得られる下記の式(26)’を、制限抵抗R1、R2の両端間電圧に三次回路53を構成する配線の抵抗値Rに応じた電圧降下も生じることを考慮した接地変圧器5の一次側の零相電圧Vを算出するための換算式としてもよい。
【数30】
【0104】
この場合、ステップS3で測定された制限抵抗R1の両端間電圧の測定値V’01を換算式(26)’のV’とし、ステップS3における測定に用いられた制限抵抗R1の抵抗値Rを換算式(26)’のRとすることで、ステップS3で行った測定の結果を用いた換算式(26)’である下記の第一換算式(27)’が得られる。
【数31】
【0105】
同様にして、ステップS5で測定された制限抵抗R2の両端間電圧の測定値V’02を換算式(26)’のV’とし、ステップS5における測定に用いられた制限抵抗R2の抵抗値Rを換算式(26)’のRとすることで、ステップS5で行った測定の結果を用いた換算式(26)’である下記の第二換算式(28)’が得られる。
【数32】
【0106】
そこで、ステップS6では、試験者は、第一換算式(27)’に、ステップS3で測定した制限抵抗R1の両端間電圧の測定値V’01と、ステップS3の測定時に用いた制限抵抗R1の抵抗値Rと、三次変圧比nと、接地変圧器5の一次側のインピーダンスZ及び三次側のインピーダンスZと、抵抗R3の抵抗値Rと、三次回路53を構成する配線の抵抗値Rとを代入して、三次回路53に制限抵抗R1を接続した場合における接地変圧器5の一次側の零相電圧V01を算出してもよい。
【0107】
また、ステップS6では、試験者は、第二換算式(28)’に、ステップS5で測定した制限抵抗R2の両端間電圧の測定値V’02と、ステップS5の測定時に用いた制限抵抗R2の抵抗値Rと、三次変圧比nと、接地変圧器5の一次側のインピーダンスZ及び三次側のインピーダンスZと、抵抗R3の抵抗値Rと、三次回路53を構成する配線の抵抗値Rとを代入して、三次回路53に制限抵抗R2を接続した場合における接地変圧器5の一次側の零相電圧V02を算出してもよい。
【0108】
また、演算式(1)に代えて、ステップS3で測定した制限抵抗R1の両端間電圧から得られる接地変圧器5の一次側の零相電圧Vと、制限抵抗R1の抵抗値Rと、三次変圧比nと、を用いた演算式(1)とは他の演算式に基づき、三相一括の対地静電容量を算出するようにしてもよい。
【0109】
また、換算式(26)及び換算式(26)’に代えて、ステップS3(S5)で測定した制限抵抗R1(R2)の両端間電圧と、制限抵抗R1(R2)の抵抗値R(R)と、三次変圧比nと、接地変圧器5の一次側及び三次側のインピーダンスZ、Zと、接地変圧器5の二次電圧Vと、抵抗R3の抵抗値Rと、を用いた換算式(26)及び換算式(26)’とは他の換算式に基づき、接地変圧器5の一次側の零相電圧Vを算出するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 非接地系統
2 配電用変圧器
3k(k=a、b、c) k相の配電線
4k(k=a、b、c) k相の負荷
5 接地変圧器
51 一次回路
52 二次回路
53 三次回路
(k=a、b、c) k相の配電線の対地静電容量
R 制限抵抗の抵抗値
R1、R2 制限抵抗
0、01、02 零相電圧
接地変圧器の二次電圧
(k=a、b、c) k相の電圧
接地変圧器の一次側のインピーダンス
接地変圧器の三次側のインピーダンス
n 三次変圧比
図1
図2
図3
図4
図5