(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】廃棄物処分場で用いられる保護ブロック体
(51)【国際特許分類】
B09B 1/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
B09B1/00 F
B09B1/00 G
(21)【出願番号】P 2020048733
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2020-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】503024147
【氏名又は名称】仙台環境開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】舟山 重則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜広
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-314076(JP,A)
【文献】特開2004-097941(JP,A)
【文献】特開2019-107603(JP,A)
【文献】登録実用新案第3059703(JP,U)
【文献】特開2002-187751(JP,A)
【文献】特開2016-144801(JP,A)
【文献】特開平10-277514(JP,A)
【文献】特開2000-220282(JP,A)
【文献】特開平10-151680(JP,A)
【文献】特開2006-068737(JP,A)
【文献】特開2000-343057(JP,A)
【文献】特開2007-044594(JP,A)
【文献】特開2008-231897(JP,A)
【文献】特開昭59-114316(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00
E02B 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処分場に敷設される遮水シート及びその上の保護マット
を被覆するように隣接して並べて設置される
複数の保護ブロック体
のそれぞれであって、
各保護ブロック体は、
前記保護マットに面する第1の面と当該第1の面に対向する第2の面を有する箱体と、
廃棄処理される無機繊維材の廃棄物であって、前記箱体の内部に充填される当該無機繊維材の廃棄物とを備え
、
前記無機繊維材の廃棄物は、破砕処理されたグラスウール又はロックウールであり、
前記箱体は、シート体を折り曲げて形成されることを特徴とする保護ブロック体。
【請求項2】
前記シート体は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを素材とする合成樹脂製シートであることを特徴とする請求項
1に記載の保護ブロック体。
【請求項3】
廃棄処理されるマット廃棄物であって、前記箱体の内部に充填される前記無機繊維材の廃棄物と前記箱体の前記第1の面又は前記第2の面との間に配置される前記マット廃棄物を含むことを特徴とする請求項
1又は2に記載の保護ブロック体。
【請求項4】
前記マット廃棄物は、廃棄されたタイルカーペットであることを特徴とする請求項
3に記載の保護ブロック体。
【請求項5】
前記箱体の前記第1の面及び第2の面の縦寸法は900mm~1000mm、横寸法は500mm~1000mmであり、前記箱体の厚さ寸法は150mm~250mmであることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれかに記載の保護ブロック体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処分場で用いられる保護ブロック体に関し、より具体的には、廃棄物処分場に敷設される遮水シート及びその上の保護マット上に設置される保護ブロック体に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物の最終処分場(以下、廃棄物処分場と称する)は、環境保全の観点から汚水の外部流出、廃棄物の飛散・流出、ガス発生などを防止しながら、所要量の廃棄物を安全に埋立処分できる構造物である。廃棄物処分場は、廃棄物処理法により、遮断型最終処分場、安定型最終処分場、管理型最終処分場の3つに分類され、各最終処分場に構造・維持基準や、各々の処分場に埋立処分できる産業廃棄物の種類等が定められている。
【0003】
廃棄物処分場は、地下水の汚染を防止するために、その廃棄物埋め立て用領域の底面及び法面は遮水シートで被覆される。さらに、その遮水シートが廃棄物に含まれる突起物などで破損して穴があき、遮水シートから地面内に水が漏れるのを防止するために、さらに、遮水シートを保護するための保護マットを敷きその上に砂や土などを保護材とする保護層(以下、砂等の保護層と称する)が作られる。遮水シートは、例えばゴム、塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタンなどを加工した遮水性能を有するシートであり、保護マットは、遮水シートを損傷から保護するためのマットであり、例えば不織布やフェルトなどを用いて作られる。
【0004】
図1は、廃棄物処理場に敷設される遮水シートと砂等の保護層を示す概略図である。遮水シート1は、埋め立て領域5の法面5a及び底面5bの全面を被覆するように敷設され、さらにその遮水シート1の上に保護マット2を敷き、その上にバックホウやパワーシャベルなどの重機と人力を利用して、厚さ約500mm程度の砂等の保護層3を形成する。こうすることにより、遮水シートの破損・劣化を防止することができる。
【0005】
図1(a)に示すように、まず、廃棄物処分場5の底面5b全面に砂等の保護層3を形成し、さらに、底面5bから一定高さ分の法面5aに砂等の保護層3を形成する。廃棄物の埋め立てが進み、一定高さ部分付近まで廃棄物の堆積が進むと、さらに、
図1(b)に示すように、次の一定高さ分の法面5aに砂等の保護層3を形成し、さらに廃棄物の埋め立てが進むと、
図1(c)に示すように、さらなる一定高さ分の一定高さ分の法面5aに砂等の保護層3を形成していき、法面5aの頂部まで保護層が形成されていく。法面5aにおける砂等の保護層3の厚さもおよそ500mmである。
【0006】
また、特許文献1及び2には、保護マットを遮水シート上に設置する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-025179号公報
【文献】実用新案登録第3154202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
廃棄物処理場の法面の保護層の形成作業は、大量の砂を搬入して施工する必要があり、重機と人力によって行われ、大がかりであり、労力と時間のかかる作業である。
【0009】
今般、本発明者は、廃棄物処分場に敷設された遮水シートを保護する保護ブロック体であって、砂等の保護層に代わり、人手の作業により施工可能であって低コスト且つ高い保護性能を有する保護層を形成するための保護ブロック体を開発した。
【0010】
本発明の目的は、廃棄物処分場で用いられる保護ブロック体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明の保護ブロック体は、廃棄物処分場に敷設される遮水シート及びその上の保護マットを被覆するように隣接して並べて設置される複数の保護ブロック体のそれぞれであって、各保護ブロック体は、前記保護マットに面する第1の面と当該第1の面に対向する第2の面を有する箱体と、廃棄処理される無機繊維材の廃棄物であって、前記箱体の内部に充填される当該無機繊維材の廃棄物とを備え、前記無機繊維材の廃棄物は、破砕処理されたグラスウール又はロックウールのみであり、前記箱体は、シート体を折り曲げて形成されることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、シート体は、ポリエチレンまたはポリプロピレンを素材とする合成樹脂製シートである。
【0013】
箱体の少なくとも第1の面は、保護ブロック体が廃棄物処分場の法面に敷設される遮水シート上の保護マットの上に設置された際に廃棄物処分場に廃棄された廃棄物の沈下に追随して保護ブロック体が遮水シート上の保護マット上を滑って下がる程度の滑り特性を有することが好ましい。
【0014】
また、上記した保護ブロック体は、さらに、廃棄処理されるマット製品の廃棄物(マット廃棄物)を有していてもよい。マット廃棄物は、箱体の内部に充填される無機繊維廃棄物と箱体の第1の面又は第2の面との間に配置される。マット廃棄物は、例えば、廃棄されたタイルカーペットである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、廃棄物をリサイクル利用して製作される保護ブロック体が提供される。廃棄物処分場の法面における従来の保護層を形成するための砂に代わって、この保護ブロック体を用いることで、重機などを使わずに、人手による作業により、保護層を形成でき、作業が容易且つ簡略化される。また、保護層の厚さを薄くすることができることから、廃棄容積を増量することができる。さらに、遮水シートに対する滑り特性を有し、遮水シートの破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】廃棄物処理場に敷設される遮水シートと砂等の保護層を示す概略図である。
【
図2】本発明の実施の形態における保護ブロック体が廃棄物処分場に設置された形態を模式的に示す概略図である。
【
図3】本発明の実施の形態における保護ブロック体の構成例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における保護ブロック体の別の構成例を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態におけるブロック体10が保護マットに対して滑る状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0018】
図2は、本発明の実施の形態における保護ブロック体が廃棄物処分場に設置された形態を模式的に示す概略図である。本発明の保護ブロック体10は、後述するように、直方体形状の箱体の内部にグラスウールやロックウールなどの無機繊維材の廃棄物を充填したブロック状の構造物であり、廃棄物処分場5の底面5b及び法面5aを被覆するように敷設される遮水シート1の上の保護マット2の上に設置されうる。
図2では、廃棄物処分場5の底面5bは、遮水シート1の上の保護マット2の上に保護材としての砂等の保護層3を形成し、廃棄物処分場5の法面5aに、本発明における保護ブロック体10を設置する状態を示す。保護ブロック体10は、保護砂に代わって、遮水シート1及び保護マット2を被覆するように、法面5aに互いに隣接させて複数並べて設置される。本発明の保護ブロック体10は、廃棄物処分場5の底面5bにも砂等の保護層3に代わって設置可能であるが、本実施の形態例では、法面5aに設置する場合を例に以下に説明する。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態における保護ブロック体10の構成例を示す図であり、
図3(a)はその外観斜視図、
図3(b)はその横断面図である。
【0020】
保護ブロック体10は、直方体形状の箱体11と、その内部に充填されるグラスウールやロックウールのような無機繊維材の廃棄物12とを有して構成される。なお、無機繊維材の廃棄物12は、破砕処理されたものでもよい。無機繊維材の廃棄物12を破砕機などで破砕処理することで、廃棄物12は、グラスウールやロックウールなどの小片となり、廃棄物12の箱体11への充填作業を容易にし、また、より均一に充填することができる。箱体11は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンを素材とする合成樹脂製シートであるシート体を折り曲げて直方体形状を形成する。具体的には、シート体には、一般に広く普及している汎用のいわゆるブルーシートを用いることができる。
【0021】
直方体形状の箱体11は、廃棄処分場5の法面5aに設置の際に遮水シート1及び保護マット2に面する側の第1の面11aと当該第1の面11aに対向する第2の面11bを有する直方体形状に形成される。箱体11の第1の面11a及び第2の面11bの縦寸法は、例えば900mm~1000mm程度、横寸法は例えば500mm~1000mm程度であり、箱体11の厚さ寸法は150mm~250mm程度である。箱体11の寸法サイズは、作業者が持ち運べる程度の大きさ、重量とするように決定されるのが好ましい。また、箱体11の厚さは、埋立処分される廃棄物に含まれる鋭利な突起物などが遮水シートまで達しない程度に十分な厚さであり、砂等の保護層(約500mmの厚さ)より薄くすることができ、廃棄物処分場の実質的な容積増となる。
【0022】
箱体11の内部には、グラスウールやロックウール等の無機繊維材の廃棄物12が充填される。特に、建築用断熱材又は吸音材として用いられるボード状またはロール状のグラスウール及びロックウールは、無害で長期間安定している素材であり、また、産業廃棄物としての処分量も多く、好ましくは、これらを破砕機で破砕することにより数cm程度の小片とし、充填物として利用する。これにより、グラスウール又はロックウール素材の廃棄物を、廃棄物として埋立処分することなく、廃棄処分場の設備の一部としてリサイクル利用して有効活用することができる。
【0023】
充填される無機繊維材の廃棄物12(例えば、破砕されたグラスウール又はロックウールの小片)の充填密度は、例えば200kg/m3程度である。当該密度であれば、縦1000mm×横1000mm×厚さ200mmの保護ブロック体は約40kgの重量となり、また、縦1000mm×横500mm×厚さ200mmの保護ブロック体であれば、約20kgの重量となり、設置作業の際に、少なくとも作業員1~2人で取り扱える重量となる。すなわち、人手により持ち運ぶことができ、重機を用いずに、法面に並べて設置する作業も行うことができる。
【0024】
図4は、本発明の実施の形態における保護ブロック体の別の構成例を示す図であり、
図4(a)はその外観斜視図、
図4(b)はその横断面図である。保護ブロック11の別の構成例は、
図3の構成例と比較して、箱体11の内部に無機繊維材の廃棄物12が充填されることに加えて、追加の構成要素として、箱体11の内部に、PVC(ポリ塩化ビニル)やPP(ポリプロピレン)などの合成樹脂性又はゴム製マットの廃棄物(マット廃棄物)13が挿入されて配置される。マット廃棄物13を配置することで、鋭利なものがより通りにくい構造となり、遮水シート1に対する保護性能が向上する。マット廃棄物13は、箱体11の第1の面11a又は第2の面11bの裏面側(箱体11の内部側)に配置され、無機繊維材の廃棄物12と箱体11の第1の面11a又は第2の面11bとの間に配置される。
【0025】
マット廃棄物13は、廃棄処分されるマット製品であり、例えば市販されているいわゆるタイルカーペットである。タイルカーペットは、PVCマットにカーペット生地が組み込まれた平面状で矩形形状のマット製品であり、産業廃棄物としてその処分量も比較的多く、本発明の保護ブロック体10の製作に利用する廃棄物として最適である。タイルカーペットは、その縦横寸法が500mm×500mm程度(厚さ10mm~20mm程度)であり、保護ブロック体10の箱体11の縦横寸法を、タイルカーペットのサイズの倍数とすることで、タイルカーペットを切断するなどの加工をすることなく、箱体11の寸法(第2の面11bの寸法)に合わせて必要枚数のタイルカーペットを挿入して配置することができる。
【0026】
タイルカーペットなどのマット廃棄物13を配置することで、埋め立て処分される廃棄物に含まれる突起物が遮水シートにまで達する危険性がさらに低減し、遮水シートの破損を防止する保護性能がより向上するとともに、無機繊維材の廃棄物12の充填量を相対的に減らすことで保護ブロック体10の厚さをより薄くできる可能性もある。グラスウール又はロックウールなどの無機繊維材の廃棄物に加えて、マット廃棄物13も、廃棄物として埋立処分することなく、廃棄処分場の設備の一部としてリサイクル利用して有効活用することができる。
【0027】
図5は、本発明の実施の形態における保護ブロック体10が遮水シート上の保護マット2に対して滑る状態を説明する図である。
図5(b)は、法面に砂等の保護層3を形成する場合の図であって、法面の保護層3形成後に、廃棄物の埋め立てが進み、廃棄物が堆積していくと、時間経過とともに徐々に廃棄物の堆積物4が沈下していき、それに伴って遮水シート1と保護マット2も引きずられるように引っ張られ、遮水シート1や保護マット2が破損するおそれがある。
【0028】
一方、本発明の保護ブロック体10においては、箱体11を形成するシート体の素材は、
図5(a)に示すように、保護ブロック体10が廃棄物処分場の法面に敷設される遮水シート1上の保護マット2上に設置された際に廃棄物処分場に埋め立てられた廃棄物の堆積物4の沈下に追随してその保護ブロック体10が遮水シート1上の保護マット2上を滑って下がる程度の滑り特性を有するものが選択される。これにより、廃棄物の沈下に応じて、保護ブロック体10も遮水シート上の保護マット2に対して滑って下がるので、廃棄物の沈下に応じて遮水シート自体が引きずられて引っ張られることなく、遮水シート1や保護マット2の破損するのを防止することができる。箱体11を形成するシート体として利用可能ないわゆるブルーシートは、この滑り特性を満たす素材である。
【0029】
本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
1:遮水シート、2:保護マット、3:砂等の保護層、4:廃棄物の堆積物、5:廃棄物処分場、5a:法面、5b:底面、10:保護ブロック体、11:箱体、11a:第1の面、11b:第2の面、12:無機繊維材の廃棄物、13:マット廃棄物