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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】廃水処理システムとその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220107BHJP
   B01D 71/16 20060101ALI20220107BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D71/16
B01D63/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020079069
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021171731
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】594152620
【氏名又は名称】ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】浜田 敏充
(72)【発明者】
【氏名】中塚 修志
(72)【発明者】
【氏名】昌子 弘一
(72)【発明者】
【氏名】小林 正人
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-126767(JP,A)
【文献】特開2016-179420(JP,A)
【文献】特開2019-107645(JP,A)
【文献】特開2003-093803(JP,A)
【文献】国際公開第2017/183236(WO,A1)
【文献】特開2009-028616(JP,A)
【文献】特開2007-319792(JP,A)
【文献】特開2007-319791(JP,A)
【文献】特開2018-130679(JP,A)
【文献】特開2019-034093(JP,A)
【文献】特開2014-161797(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00- 71/82
C02F 1/44
B01D 21/00- 21/34
C02F 1/52- 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水源からの含油廃水が流入する廃水ピット、アニオン性界面活性剤が入り、凝集剤と吸着剤が入っていない薬剤タンク、原水タンク、ろ過膜装置、ろ過水タンクを有する廃水処理システムであって、
前記廃水ピットと薬剤タンクが薬剤添加ラインで接続され、前記薬剤タンクおよび前記薬剤添加ラインの少なくとも一方において薬剤添加量が制御できるものであり、
前記ろ過膜装置が、ろ過膜として酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜エレメントを含むものであり、
前記廃水ピットと前記原水タンクがプレフィルターと廃水ポンプを備えた廃水ラインで接続され、
前記原水タンクと前記ろ過膜装置が、循環ポンプを備えた原水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置のろ過水出口と前記ろ過水タンクが、ろ過水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置の濃縮水出口と前記原水タンクが、第1濃縮水ラインで接続されており、
前記原水タンク、前記原水ライン、前記ろ過膜装置、前記第1濃縮水ラインおよび前記原水タンクからなる循環ラインを有している、廃水処理システム。
【請求項2】
記薬剤タンクに入れる薬剤が、アニオン性界面活性剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を含んでいるものである、請求項1記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記廃水ピットが攪拌装置を有しているものである、請求項1または2記載の廃水処理システム。
【請求項4】
前記原水タンクが、内部の原水温度を調節するための温度調節装置、温度計、水位計を備えており、
前記温度調節装置が、原水を加温するための加温装置、原水を冷却するための冷却装置および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置から選ばれる1または2以上のものである、請求項1~3のいずれか1項記載の廃水処理システム。
【請求項5】
前記原水タンクが、内部の原水温度を調節するための温度調節装置、温度計、水位計を備えており、
前記温度調節装置が、
原水を加温するための加温装置および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置の組み合わせからなるもの、
原水を冷却するための冷却装置および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置の組み合わせからなるもの、
原水を加温するための加温装置、原水を冷却するための冷却装置および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置の組み合わせからなるもののいずれかの組み合わせである、請求項1~3のいずれか1項記載の廃水処理システム。
【請求項6】
前記ろ過膜装置が、ろ過膜エレメントの1または2以上を一セットとして、これを複数セット有しているものであり、
前記原水タンクと前記ろ過膜装置の複数のろ過膜エレメントセットが、循環ポンプを備えた幹となる原水ラインと、前記幹となる原水ラインから分岐された複数の分岐原水ラインで接続され、前記幹となる原水ラインと前記複数の分岐ラインが1または2以上のライン切り替え弁を介して接続されており、
前記ろ過膜装置の複数のろ過膜エレメントセットが、前記ライン切り替え弁を切り替えることで、原水が供給されるろ過膜エレメントセットと原水が供給されないろ過膜エレメントセットに分けることができるものである、請求項1~5のいずれか1項記載の廃水処理システム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項記載の廃水処理システムの運転方法であって、
前記廃水ピットの廃水に前記薬剤タンクのアニオン性界面活性剤を含み、凝集剤と吸着剤を含まない薬剤を添加して薬剤量を制御し、必要に応じて攪拌する薬剤添加工程、
前記廃水ピット内の廃水を前記原水タンクに送って貯水する廃水送水工程、
前記循環ポンプを作動させ、前記原水タンク内の原水を原水ラインにより前記ろ過膜装置に送ってろ過するろ過工程、
前記ろ過工程で得られたろ過水をろ過水ラインによりろ過水タンクに送って貯水するろ過水の貯水工程、
前記ろ過工程で得られた濃縮水を前記第1濃縮水ラインにより前記原水タンクに返送する工程を有している、廃水処理システムの運転方法。
【請求項8】
前記薬剤添加工程が、
薬剤としてアニオン界面活性剤を廃水1Lに対して5~500mgを添加して制御する工程である、請求項7記載の廃水処理システムの運転方法。
【請求項9】
請求項4または5記載の廃水処理システムの運転方法であって、
前記廃水ピットの廃水に前記薬剤タンクのアニオン性界面活性剤を含み、凝集剤と吸着剤を含まない薬剤をアニオン性界面活性剤が廃水1Lに対して5~500mgになるように添加して薬剤量を制御し、必要に応じて攪拌する薬剤添加工程、
前記廃水ピット内の廃水を前記原水タンクに送って貯水する廃水送水工程、
前記循環ポンプを作動させ、前記原水タンク内の原水を原水ラインにより前記ろ過膜装置に送ってろ過するろ過工程、
前記ろ過工程で得られたろ過水をろ過水ラインによりろ過水タンクに送って貯水するろ過水の貯水工程、
前記ろ過工程で得られた濃縮水を前記第1濃縮水ラインにより前記原水タンクに返送する工程を有しており、
前記循環ポンプを連続して作動させてろ過運転を継続した状態で、前記原水タンク内の原水量が満水水位から所定値まで減少したときを水位計で検知し、前記廃水ポンプを作動させて前記廃水源から前記原水タンクに廃水を供給することで、前記原水タンク内の水位を満水水位に維持する水位維持工程と、
前記温度調節装置を作動させることで、前記原水タンク内の原水温度の変化を抑制する原水の温度調節工程を有している、廃水処理システムの運転方法。
【請求項10】
請求項4または5記載の廃水処理システムの運転方法であって、
前記廃水ピットの廃水に前記薬剤タンクのアニオン性界面活性剤を含み、凝集剤と吸着剤を含まない薬剤をアニオン性界面活性剤が廃水1Lに対して5~500mgになるように添加して薬剤量を制御し、必要に応じて攪拌する薬剤添加工程、
前記廃水ピット内の廃水を前記原水タンクに送って貯水する廃水送水工程、
前記循環ポンプを作動させ、前記原水タンク内の原水を原水ラインにより前記ろ過膜装置に送ってろ過するろ過工程、
前記ろ過工程で得られたろ過水をろ過水ラインによりろ過水タンクに送って貯水するろ過水の貯水工程、
前記ろ過工程で得られた濃縮水を前記第1濃縮水ラインにより前記原水タンクに返送する工程を有しており、
前記循環ポンプを連続して作動させてろ過運転を継続した状態で、前記原水タンク内の原水量が満水水位から所定値まで減少したときを水位計で検知し、前記廃水ポンプを作動させて前記廃水源から前記原水タンクに廃水を供給することで、前記原水タンク内の水位を満水水位に維持する水位維持工程を有しており、
前記原水タンクの水位維持工程が、予め決められた原水タンクの満水水位を基準水位として、前記基準水位から20~40%の範囲で水位が低下したとき、前記廃水ポンプを作動させて前記廃水源から前記原水タンクに廃水を供給する工程であり
前記満水水位が、前記原水タンクの内容量の80~95%の範囲の原水を満たしたときの水位である、廃水処理システムの運転方法。
【請求項11】
請求項4または5記載の廃水処理システムの運転方法であって、
前記廃水ピットの廃水に前記薬剤タンクのアニオン性界面活性剤を含み、凝集剤と吸着剤を含まない薬剤をアニオン性界面活性剤が廃水1Lに対して5~500mgになるように添加して薬剤量を制御し、必要に応じて攪拌する薬剤添加工程、
前記廃水ピット内の廃水を前記原水タンクに送って貯水する廃水送水工程、
前記循環ポンプを作動させ、前記原水タンク内の原水を原水ラインにより前記ろ過膜装置に送ってろ過するろ過工程、
前記ろ過工程で得られたろ過水をろ過水ラインによりろ過水タンクに送って貯水するろ過水の貯水工程、
前記ろ過工程で得られた濃縮水を前記第1濃縮水ラインにより前記原水タンクに返送する工程を有しており、
前記循環ポンプを連続して作動させてろ過運転を継続した状態で、前記温度調節装置を作動させることで、前記原水タンク内の原水温度の変化を抑制する原水の温度調節工程を有しており、
前記温度調節工程が、前記廃水源から前記原水タンク内に廃水を供給したとき、
運転開始時における前記原水タンク内の原水温度を基準温度として、
前記廃水温度が前記基準温度よりも低いときは、前記加温装置で加温する方法、前記攪拌装置で攪拌する方法および前記二つの方法を組み合わせる方法のいずれか一つの方法を実施し、
前記廃水温度が前記基準温度よりも高いときは、前記冷却装置で冷却する方法、前記攪拌装置で攪拌する方法および前記二つの方法を組み合わせる方法のいずれか一つの方法を実施する、廃水処理システムの運転方法。
【請求項12】
請求項6記載の廃水処理システムの運転方法であって、
前記廃水ピットの廃水に前記薬剤タンクのアニオン性界面活性剤を含み、凝集剤と吸着剤を含まない薬剤をアニオン性界面活性剤が廃水1Lに対して5~500mgになるように添加して薬剤量を制御し、必要に応じて攪拌する薬剤添加工程、
前記廃水ピット内の廃水を前記原水タンクに送って貯水する廃水送水工程、
前記循環ポンプを作動させ、前記原水タンク内の原水を原水ラインにより前記ろ過膜装置に送ってろ過するろ過工程、
前記ろ過工程で得られたろ過水をろ過水ラインによりろ過水タンクに送って貯水するろ過水の貯水工程、
前記ろ過工程で得られた濃縮水を前記第1濃縮水ラインにより前記原水タンクに返送する工程を有しており、
前記ろ過工程において、前記原水タンクから前記幹となる原水ラインと前記複数の分岐原水ラインにより前記複数のろ過膜エレメントセットに原水を送るとき、前記ライン切り替え弁を操作することで、原水を供給するろ過膜エレメントセットと原水を供給しないろ過膜エレメントセットに分けてろ過するろ過工程を実施した後、
前記原水を供給したろ過膜エレメントセット群のろ過膜エレメントのろ過性能の低下を目安としてまたは予め定められた時間で、前記ライン切り替え弁を切り替えることで、原水を供給していたろ過膜エレメントセットへの原水の供給を停止し、原水を供給しなかったろ過膜エレメントセットへの原水の供給を開始し、
その後順番に、原水を供給するろ過膜エレメントセットと原水を供給しないろ過膜エレメントセットを切り替えてろ過する、廃水処理システムの運転方法。
【請求項13】
前記ろ過工程において、原水を供給していたろ過膜エレメントセットへの原水の供給を停止した後、前記原水の供給を停止したろ過膜エレメントセットを洗浄剤が入った洗浄槽に浸漬することでろ過膜エレメントを浸漬洗浄する、請求項12記載の廃水処理システムの運転方法。
【請求項14】
前記ろ過工程において、予め定められた時間で前記ライン切り替え弁を切り替えた後に、原水を供給しているろ過膜エレメントセットに対して、50~500mg/Lのアニオン界面活性剤水溶液を用いて、予め定められた時間ごとに、0.7~1.2MPaの入口圧、5~15L/分の循環流量で、1~10分間の循環運転を行い、この循環運転中は、廃水処理運転を中断する請求項12記載の廃水処理システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含油廃水の処理をすることができる廃水処理システムとその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野の工場などから排出される廃水には、鉱物油、雑油、ワックス、界面活性剤、懸濁物などが含まれており、そのまま下水に廃水を流すことはできず、処理する必要がある。
特許文献1には、油含有水にアニオン界面活性剤を添加した後、膜面線速度1m/sec以上で膜分離する油含有水の膜分離方法の発明が記載されている。ろ過膜としては、MF膜、UF膜が例示され、内圧式チューブラー膜、スパイラス膜が好適であることが記載されている。
特許文献2には、廃水処理するときに管状RO膜による処理工程を実施する発明が記載されており、RO膜の材質としてセルロースアセテート、芳香族ポリアミド、スルホン化ポリエーテルスルホンなどが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-179420号公報
【文献】特開2019-107645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、含油廃水の処理をすることができる廃水処理システムとその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、廃水源からの含油廃水が流入する廃水ピット、1または2以上の薬剤タンク、原水タンク、ろ過膜装置、ろ過水タンクを有する廃水処理システムであって、
前記廃水ピットと1または2以上の薬剤タンクが薬剤添加ラインで接続され、前記薬剤タンクおよび前記薬剤添加ラインの少なくとも一方において薬剤添加量が制御できるものであり、
前記ろ過膜装置が、ろ過膜として酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜エレメントを含むものであり、
前記廃水ピットと前記原水タンクがプレフィルターと廃水ポンプを備えた廃水ラインで接続され、
前記原水タンクと前記ろ過膜装置が、循環ポンプを備えた原水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置のろ過水出口と前記ろ過水タンクが、ろ過水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置の濃縮水出口と前記原水タンクが、第1濃縮水ラインで接続されており、
前記原水タンク、前記原水ライン、前記ろ過膜装置、前記第1濃縮水ラインおよび前記原水タンクからなる循環ラインを有している、廃水処理システムと、その運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の廃水処理システムとその運転方法によれば、高いろ過性能を維持したまま、長期間安定した廃水処理ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の廃水処理システムを含む廃水処理フローを示す図。
図2】本発明の廃水処理システムの原水タンクの一実施形態を示す図。原水タンクの内部が見えるように表示している。
図3】本発明の廃水処理システムのろ過膜装置で使用できるろ過膜エレメントの斜視図。
図4図3に示すろ過膜エレメントを複数組み合わせたろ過膜エレメントセットの平面図。
図5図4に示すろ過膜エレメントの複数本が筒状ケースハウジングに入れられたろ過膜エレメントセットの斜視図。但し、実際には見えない内部が見えるように表示している。
図6】ろ過膜装置のろ過膜エレメントセットの一実施形態を示す図。
図7】ろ過膜装置のろ過膜エレメントセットの別実施形態を示す図。
図8】ろ過膜装置のろ過膜エレメントセットのさらに別実施形態を示す図。
図9】本発明の廃水処理システムを使用した廃水処理システムの運転方法の一工程を説明するための図。
図10】実施例の廃水処理システムにおけるろ過量と温度の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[廃水処理システム]
図1図8により本発明の廃水処理システムの一態様を説明する。図1中、少なくとも破線で囲まれた範囲を有しているものが本発明の廃水処理システムとなる。
【0009】
廃水ピット1は、各種工場などの廃水源から廃水ライン20により含油廃水が流入する廃水槽であり、通常は地面よりも低い位置に設けられている。
廃水ピット1は、底部において砂利や砂などの沈殿物、凝集剤を添加したときの沈殿物を排出するための排出ライン17が接続されていてもよい。
含油廃水中の油の種類や濃度は特に限定されるものではなく、例えば、特開2003-93803号公報に記載のn-ヘキサン抽出物量と同じ成分であって、同じ濃度範囲を基準とすることができる。
【0010】
廃水ピット1と薬剤タンク15は、薬剤の添加量を制御できる薬剤添加ライン16で接続されている。
薬剤タンク15は一つでもよいし、複数でもよい。
薬剤タンク15が複数の場合は、1本の薬剤添加ライン16を複数の薬剤タンク15で共用してもよい。
複数の薬剤タンク15で1本の薬剤添加ライン16を共用する場合は、1本の薬剤添加ライン16と、1本の薬剤添加ライン16から分岐された複数本の分岐ラインと複数の薬剤タンク15が接続された形態にすることができる。
薬剤タンク15と薬剤添加ライン16の一方または両方は、図示していない薬剤添加量の制御装置を備えているものである。
【0011】
1または2以上の薬剤タンク15に入れる薬剤は、界面活性剤、凝集剤、吸着剤から選ばれる1または2以上のものを使用することができる。
界面活性剤、凝集剤および吸着剤の種類、添加量、添加する順番は、廃水ピット1中の含油廃水の濃度、組成(性質)によって、適宜決定できる。
例えば、廃水ピット1中の含油廃水がn-ヘキサン抽出物を含む廃水の場合、添加する界面活性剤としては、特にアニオン性界面活性剤が好ましく使用できる。
また、例えば、廃水ピット1中の含油廃水が、正または負の電荷を有した樹脂分散物を含む廃水の場合は、反対の電荷を有した凝集剤を適宜量添加した後、凝集剤添加後の含油廃水の組成(性質)に応じて、新たに界面活性剤を添加することもできる。
界面活性剤の種類は限定されるものではなく、アニオン性、非イオン(ノニオン)性、カチオン性、両性の界面活性剤が使用できるが、多くの場合、アニオン性界面活性剤が好ましく使用できる。
アニオン性界面活性剤は、カルボン酸型アニオン性界面活性剤、スルホン酸型アニオン性界面活性剤、硫酸エステル型アニオン性界面活性剤、リン酸エステル型アニオン性界面活性剤などが使用でき、中でも直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(例:L-アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)が好ましく使用できる。
アニオン性界面活性剤としては、日油株式会社、三洋化成工業株式会社、日華化学株式会社、竹本油脂株式会社、東邦化学工業株式会社、第一工業製薬株式会社、テイカ株式会社、川研ファインケミカル株式会社、日本乳化剤株式会社、広栄化学工業株式会社、新日本理化株式会社、ライオン・スペシャリティー・ケミカルズ株式会社、ライオン・ハイジーン株式会社、株式会社ネオス、AGCセイミケミカル株式会社および四日市合成株式会社などから販売されているアニオン性界面活性剤のほか、アニオン性界面活性剤を含む各種洗剤を使用することができる。
市販の洗剤(界面活性剤)には、界面活性剤成分以外に消泡剤や安定剤などが配合されており、その中で特に廃水ピットや原液タンクでの泡立ちの無いものが好ましく使用できる。
凝集剤としては、有機凝集剤、無機系凝集剤を使用することができる。
有機凝集剤としては、ポリアクリル酸エステル系、ポリメタクリル酸エステル系、ポリアクリルアミド系、ポリアミン系、ポリジシアンジアミド系等のカチオン性高分子凝集剤、ポリアクリル酸ソーダ系、アクリル酸とアクリルアミドとの共重合体等のアニオン性高分子凝集剤、天然セルロース誘導体高分子凝集剤、天然系芳香族化合物凝集剤、アミン系等の低分子凝集剤などを挙げることができる。
無機系凝集剤としては、ベントナイトやモンモリロナイトなどの粘土鉱物の少なくとも1種を必須成分とし、これとポリ塩化アルミニウム、ポリ塩化鉄、硫酸第二鉄及び硫酸アルミニウムから選ばれる1種以上を組み合わせたものを挙げることができる。
吸着剤としては、活性炭、珪藻土、活性白土、油吸収材などを挙げることができる。
油吸収材としては、例えば、樹皮、泥炭、おが屑、製紙用パルプ、バガス、コルク、鶏の羽、わら、羊毛と人毛等の有機素材、バーミキュライトや軽石などの無機素材、ポリプロピレンやその他のポリマーの合成樹脂素材などがある。
合成樹脂素材の油吸着材は、一般的に油回収効果が最も優れていて、油:油吸着材の重量比が40:1に達する場合もあり、これに対し、有機素材では10:1、無機素材では2:1である。
油吸収材の形態としては、バルク、袋詰め、繊維状の物、オイルフェンスとして板状、巻物状、敷物状、パッド状、網目状など連続的成形された平らな連続体として成型加工されたものが例示できる。
吸着剤を廃水ピット1中に投入するための薬剤タンク15としては、図1
示すように廃水ピット1の外に設置されたもの(外置き型)のほか、開放面(または複数の穴)を有する容器であって、前記容器内に袋詰形態の吸着剤や連続体形態の吸着剤が入れられたものを廃水ピット1内に設置したもの(内置き型)を薬剤タンクとして使用することができる。内置き型の薬剤タンクは、容器の開放面(または複数の穴)から廃水が浸入して吸着剤と接触することになる。
【0012】
廃水ピット1は、底部において砂利や砂などの沈殿物、凝集剤を添加したときの沈殿物を排出するための排出ライン17が接続されている。
廃水ピット1は、薬剤タンク15内の薬剤を供給した後、廃水と薬剤を混合するための攪拌装置を設置することもできる。
【0013】
廃水ピット1と原水タンク3は、廃水ポンプ10を備えた廃水ライン21で接続されている。
廃水ライン21には、廃水ポンプ10とプレフィルター2が設置されている。
プレフィルター2は、例えば金網フィルターであり、砂利、ゴミ、砂などを取り除くためのものである。
【0014】
原水タンク3は、内部の原水温度を調節するための温度調節装置、温度計(図示していない)、水位計(図示していない)を備えている。
原水タンク3の容量は、廃水処理量などに応じて設定することができるものであり、温度調節装置、水位計、温度計は原水タンク3の容量に応じて選択することができる。
例えば、原水タンク3の容量が50m3より少ない場合の水位計として、ロードセルのような重力測定器が設置されていてもよい。
温度調節装置は、図2に示すとおり、原水を加温するための加温装置30、原水を冷却するための冷却装置31および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32から選ばれる1または2以上のものである。
温度調節装置は、手動、半自動、自動のいかなる運転モードでの運転制御が実施できるものでもよい。
原水を加温するための加温装置30は、公知のヒーター、熱交換器などを使用することができる。
原水を冷却するための冷却装置31は、公知のチラー、熱交換器などを使用することができる。
原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32は、先端の攪拌部32aの位置を上下できるものを使用することもできるほか、原水タンク3内を循環できるポンプ装置を使用することもできる。
加温装置30、冷却装置31および攪拌装置32は、図示していない外部電源と電気的に接続されている。
なお、加温装置30、冷却装置31および攪拌装置32は、原水タンク3内に設置される必然性を有した装置部分が原水タンク3内に設置されていればよく、それ以外の装置部分は原水タンク3の外に設置することもできる。また、温度計は、原水タンク3内に設置することができるほか、原水タンク3外に設置された反射式温度計などを使用することもできる。
【0015】
温度調節装置は、
原水を加温するための加温装置30および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32の組み合わせからなるもの、
原水を冷却するための冷却装置31および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32の組み合わせからなるもの、
原水を加温するための加温装置30、原水を冷却するための冷却装置31および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32の組み合わせからなるもののいずれかの組み合わせからなるものを選択して使用することができる。
【0016】
原水タンク3とろ過膜装置4は、循環ポンプ11を備えた幹となる原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)で接続されている。
ろ過膜装置4は、酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜を備えているものであり、チューブラー型ろ過膜の本発明の好ましい一態様はチューブラー型RO膜である。
【0017】
ろ過膜装置4は、ろ過膜として酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜を含むものである。
ろ過膜装置4としては、図3図5に示す形態のものを使用することができる。
【0018】
図3に示すろ過膜装置4は、多孔支持管41内にチューブラー型RO膜42が配置されているろ過膜エレメント40である。
多孔支持管41は、合成樹脂(例えば繊維強化樹脂)または金属(例えばステンレス)からなるものであり、厚さ方向に貫通された多数の孔43が分散配置されている。
チューブラー型RO膜42は、不織布、紙などからなる支持管の内側にRO膜が形成されたものでもよい。
チューブラー型RO膜42の内径は、被処理水の濃度(固形分濃度)に応じて調整することができるものであり、例えば5~15mmの範囲にすることができる。
チューブラー型RO膜42は、廃水の流路が大きいため膜が閉塞し難く、廃水の流入が膜面閉塞物を剥離する方向にも流れているため、凝集物が存在する廃水処理に適している。
【0019】
図4に示すろ過膜装置4は、複数本のろ過膜エレメント40が連結されて1本になったろ過膜エレメントセット50である。
ろ過膜エレメントセット50は、直列配置されたろ過膜エレメント40のうち、隣接するろ過膜エレメント40同士がU字管51で連結されているものである。U字管51に代えて他の連結方法を使用することもできる。
ろ過膜エレメントセット50の第1端開口部50aには第2原水ライン22bが接続され、反対側の第2端開口部50bには第1濃縮水ライン28が接続されている。
ろ過膜エレメントセット50は、例えば、2~10本のろ過膜エレメント40が直列に接続されたものにすることができる。
【0020】
図4に示すろ過膜装置4は、筒状のケーシング61内にろ過膜エレメントセット50が収容され、全体として1本の管状になっているモジュール型ろ過膜エレメントセット60である。
モジュール型ろ過膜エレメントセット60は、両端面(第1端面62と第2端面63)が閉塞された筒状のケーシング61内にろ過膜エレメントセット50が巻き込まれて円柱状になった形態で収容されているものである。
筒状のケーシング61の第1端面62には、ろ過膜エレメントセット50の原水入り口63と濃縮水出口64が突き出されている。
筒状ハウジング61の側面64からは、ろ過水出口65が突き出されており、さらに図示していない通気孔が形成されている。
モジュール型ろ過膜エレメントセット60は、1または複数を組み合わせて使用することができる。
【0021】
ろ過膜装置4は、一つのろ過膜エレメントセット50を一セットとして、これを複数セット有しているものを使用することができる。
図6に示すろ過膜装置4は、4本のろ過膜エレメントからなる第1ろ過膜エレメントセット50Aと、4本のろ過膜エレメントからなる第2ろ過膜エレメントセット50Bの2セットを有している。
第1ろ過膜エレメントセット50Aは、第1原水ライン切換え弁35を介して、第2原水ライン22bと第1原水分岐ライン23aで接続されている。
第2ろ過膜エレメントセット50Bは、第1原水ライン切換え弁35を介して、第2原水ライン22bと第2原水分岐ライン23bで接続されている。
第1ろ過膜エレメントセット50Aと第2ろ過膜エレメントセット50Bは、第1ライン切換え弁35を切り替えることによって、第1ろ過膜エレメントセット50Aと第2ろ過膜エレメントセット50Bのいずれか一方のセットのみに原水を流し、他方のセットには原水を流さないようにすることができる。
【0022】
図6に示すろ過膜装置4では、第1ろ過膜エレメントセット50Aは第1ろ過水出口25aがろ過水ライン26と接続され、第1濃縮水出口28aが第1濃縮水ライン28と接続されている。
図5に示すろ過膜装置4では、第2過膜エレメントセット50Bは第2ろ過水出口25bがろ過水ライン26と接続され、第2濃縮水出口28bが第1濃縮水ライン28と接続されている。
【0023】
図7に示すろ過膜装置4は、4本のろ過膜エレメントからなる第1ろ過膜エレメントセット50A、4本のろ過膜エレメントからなる第2ろ過膜エレメントセット50B、4本のろ過膜エレメントからなる第3ろ過膜エレメントセット50Cの3セットを有している。
第1ろ過膜エレメントセット50Aは、第1原水ライン切換え弁36aを介して、第2原水ライン22bと第1原水分岐ライン23aで接続されている。
第2ろ過膜エレメントセット50Bは、第1原水ライン切換え弁36aを介して、第2原水ライン22bと第2原水分岐ライン23bで接続されている。
第3ろ過膜エレメントセット50Cは、第2ライン切換え弁36bを介して、第2原水ライン22b、第2原水分岐ライン23b、第3原水分岐ライン23cで接続されている。
【0024】
第1ろ過膜エレメントセット50A、第2ろ過膜エレメントセット50B、第3ろ過膜エレメントセット50Cは、第1原水ライン切換え弁36aと第2原水ライン切換え弁36bを操作することによって、次のように原水の流れを制御することができる。
(i)第1形態
第1原水ライン切換え弁36aを切り替え、第2原水ライン切換え弁36bを閉じることによって、第1ろ過膜エレメントセット50Aのみに原水を流し、残りの2セットには原水を流さないようにする形態。
(ii)第2形態
第1原水ライン切換え弁36aを切り替え、第2原水ライン切換え弁36bを閉じることによって、第2ろ過膜エレメントセット50Bのみに原水を流し、残りの2セットには原水を流さないようにする形態。
(iii)第3形態
第1原水ライン切換え弁36aを切り替え、第2原水ライン切換え弁36bを閉じることによって、第1ろ過膜エレメントセット50Aと第2ろ過膜エレメントセット50Bの両方に原水を流し、第3ろ過膜エレメントセット50Cには原水を流さないようにする形態。
(iv)第4形態
第1原水ライン切換え弁36aを切り替え、第2原水ライン切換え弁36bを開けることによって、第2ろ過膜エレメントセット50Bと第3ろ過膜エレメントセット50Cに原水を流し、第1ろ過膜エレメントセット50Aには原水を流さないようにする形態。
図6は2つの切換え弁を備えた実施形態であるが、切換え弁を3つ使用することで、第1ろ過膜エレメントセット50A、第2ろ過膜エレメントセット50B、第3ろ過膜エレメントセット50Cのそれぞれのみに原水が供給できるようにすることもできる。
【0025】
図7に示すろ過膜装置4では、第1ろ過膜エレメントセット50Aは第1ろ過水出口25aがろ過水ライン26と接続され、第2過膜エレメントセット50Bは第2ろ過水出口25bがろ過水ライン26と接続されている。
第1ろ過膜エレメントセット50Aの第1濃縮水出口28aと第2過膜エレメントセット50Bの第1濃縮水出口28bは、共用ラインを介して第1濃縮水ライン28と接続されている。
図7に示すろ過膜装置4では、第3ろ過膜エレメントセット50Cは、第3ろ過水出口25cがろ過水ライン26と接続され、第3濃縮水出口28cが第1濃縮水ライン28と接続されている。
【0026】
図8に示すろ過膜装置4は、4本のろ過膜エレメントからなる第1ろ過膜エレメントセット50A、4本のろ過膜エレメントからなる第2ろ過膜エレメントセット50Bの2セットを有している。
第1ろ過膜エレメントセット50Aは、第1原水ライン切換え弁37aを介して、第2原水ライン22bから分岐された第1原水分岐ライン23aと、第1原水分岐ライン23aから分岐された2本の第2原水分岐ライン24a、24bにより接続されている。
第2ろ過膜エレメントセット50Bは、第1原水ライン切換え弁37aを介して、第2原水ライン22bから分岐された第1原水分岐ライン23bと、第1原水分岐ライン23bから分岐された2本の第2原水分岐ライン25a、25bにより接続されている。
【0027】
第1ろ過膜エレメントセット50Aの第1濃縮水出口28aは、濃縮水ライン切り替え弁37bを介して、第1濃縮水ライン28に接続され、第2ろ過膜エレメントセット50Bの第1濃縮水出口28bは、濃縮水ライン切り替え弁37bを介して、第1濃縮水ライン28に接続されている。
【0028】
ろ過水タンク5は、ろ過水ポンプ12を備えたろ過水採水ライン29aに接続されており、ろ過水採水ライン29は外部ろ過水タンク8に接続されている。
ろ過膜装置4の濃縮水出口は、第1濃縮水ライン28により原水タンク3に接続されている。
原水タンク3と濃縮水タンク7は、循環ポンプ11とろ過膜装置4の間の循環ラインから分岐された第2濃縮水ライン30で接続されている。
【0029】
廃水処理システムは、原水タンク3、原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)、ろ過膜装置4、第1濃縮水ライン28および原水タンク3からなる循環ラインを有している。
なお、必要に応じて各ラインには、液体の流れを阻止したり、流したりするための電磁弁などからなる開閉弁を設置することもできる。
【0030】
[廃水処理システムの運転方法]
図1図8により本発明の廃水処理システムの運転方法の一態様を説明する。
薬剤タンク15の薬剤を薬剤添加ライン16から廃水ピット1の廃水に添加して、必要に応じて攪拌する薬剤添加工程を実施する。
薬剤タンク15を複数設けたときは、複数の薬剤を同時にまたは間隔をおいて添加する。
廃水ピット1の廃水がバッチ給液方式の場合は、薬剤タンク15は移動式容器でもよく、作業者がバッチ給液ごとに、廃水ピット1に薬剤を直接投入することもできる。
【0031】
薬剤添加工程における薬剤の添加量は、次のようにすることができる。
薬剤としてアニオン型界面活性剤を添加するときは、本発明の好ましい一態様は廃水ピット1の廃水1Lに対して5~500mgを添加し、本発明の別の好ましい一態様は廃水ピット1の廃水量1Lに対して20~60mgを添加する。
薬剤として凝集剤を添加するときは、本発明の好ましい一態様は廃水ピット1の廃水の浮遊物質濃度(SS濃度)の約10%濃度になるように廃水ピット1の廃水量に対して凝集剤を添加する。
このように廃水ピット1に薬剤を添加することによって、ろ過工程における透過流束が低下し難く、かつ洗浄による透過流束の回復効果が高いという効果が得られる。
【0032】
次に廃水ピット1内の薬剤が添加された廃水を原水タンク3に送って貯水する廃水送水工程を実施する。
次に循環ポンプ11を作動させ、原水タンク3内の原水を原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)によりろ過膜装置4に送ってろ過するろ過工程を実施する。
次にろ過工程で得られたろ過水をろ過水ライン26によりろ過水タンク5に送って貯水するろ過水の貯水工程を実施する。
ろ過工程で得られた濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に返送して、原水としてろ過工程を実施する。
ろ過水タンク5内のろ過水は、ろ過水採水ライン29から外部ろ過水タンク8に送って貯水して、必要に応じて工業用水、中水、洗浄用水、防火用水、植木用の水、融雪用や打ち水用の水として再利用することができる。
原水タンク3、原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)、ろ過膜装置4、第1濃縮水ライン28および原水タンク3からなる循環ラインを使用して、上記運転方法を継続実施する。
なお、原水タンク3に濃縮水を返送することで原水中の懸濁質濃度が過度になったときは、原水タンク3内の原水の一部を第2濃縮水ライン30から排出して、濃縮水タンク7に貯水する。
【0033】
上記運転方法を継続実施したとき、原水タンク3の原水量が減少して、水位が低下する。
従来このような場合には、循環ポンプ11を停止した状態で廃水ポンプ10を作動させ、廃水ピット1内の廃水を原水タンク3内に供給していた。
しかし、本発明の運転方法では、図2に示す水位計を備えた原水タンク3を使用することで、循環ポンプ11を連続して作動させてろ過運転を継続した状態で、廃水ポンプ10を作動させ、廃水ピット1内の廃水を原水タンク3内に供給することで原水タンク3の水位を維持することができる。
【0034】
次に図9により水位維持工程の一実施形態を説明する。
図9(a)は、運転開始時において原水タンク3内に原水が満水である状態(満水水位:FL)を示している。
満水水位は予め設定することができるものであり、例えば、原水タンクの内容量の80~95%の範囲の原水を満たしたときの水位にすることができる。
【0035】
図9(b)に示すとおり、原水タンク3内の原水をろ過膜装置4に送ってろ過することで、原水タンク3内の原水量は、ろ過水タンク5に貯水されたろ過水量に相当する分だけ減少する。
このようにして原水タンク3内の原水量が満水水位から所定値(限界水位:LL)まで減少したときを水位計で検知し、図9(c)に示すとおり、廃水ポンプ10を作動させて廃水ピット1から原水タンク3に廃水ライン21により廃水を供給することで、原水タンク3内の水位を満水水位に維持する。
限界水位は、予め決められた原水タンク3の満水水位を基準水位として、前記基準水位から20~40%の範囲で水位が低下したときの水位にすることができる。
このような図9(a)~(c)を繰り返すことで、循環ポンプ11を停止することなく連続的に作動させた状態で、原水タンク3内の原水量(原水の水位)を維持することができる。
【0036】
また、上記運転方法を継続実施したとき、廃水ピット1内の廃水の温度変化によって、廃水ピット1から原水タンク3に廃水を送水したとき、原水タンク3内の原水温度に変化が生じる。
例えば、昼間と夜間、夏季と冬季などでは、廃水ピット1の周囲温度に大きな温度が生じることが考えられるため、廃水ピット1内の廃水温度にも違いが生じることになる。
このため昼間と夜間、夏季と冬季などでは、廃水ピット1の廃水が送水される原水タンク3内の原水温度にも変化が生じることになる。
従来このような場合には、原水温度が変化した場合でも、そのままろ過膜装置4に送ってろ過していた。
しかし、このように温度変化の大きい原水と接触を繰り返すろ過膜装置4のろ過膜は、温度変化によるストレスを継続的に受ける結果、劣化が促進され、使用寿命が低下されることになる。
【0037】
本発明の運転方法の温度調節工程では、運転開始時における原水タンク3内の原水温度を基準温度として、廃水ピット1内の廃水温度が前記基準温度よりも低いときは、図2に示す加温装置30で加温する方法、図2に示す攪拌装置32で攪拌する方法および前記二つの方法を組み合わせる方法のいずれか一つの方法を実施する。
【0038】
また本発明の運転方法の温度調節工程では、運転開始時における原水タンク3内の原水温度を基準温度として、廃水ピット1内の廃水温度が前記基準温度よりも高いときは、図2に示す冷却装置31で冷却する方法、攪拌装置32で攪拌する方法および前記二つの方法を組み合わせる方法のいずれか一つの方法を実施する。
【0039】
原水タンク3内の原水温度は、原水タンク3内に備え付けられた温度計または原水タンクの外側に設置された反射式温度計などにより計測するが、廃水ピット1の周囲温度と基準温度の差を考慮しておくことによって、攪拌装置32を常時作動させておく方法、加熱装置30による予備加熱または冷却装置31による予備冷却を実施する方法も適用できる。
基準温度は、ろ過膜が酢酸セルロース膜であることから、20~30℃の範囲の温度にすることができる。
【0040】
次に図6に示す実施形態のろ過膜装置4を使用した場合のろ過工程を説明する。
原水タンク3から幹となる原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)からろ過膜装置4に原水を送るとき、原水ライン切り替え弁35を操作することで、第1ろ過膜エレメントセット50Aのみに原水を送ってろ過工程を実施し、第2ろ過膜エレメントセット50Bには原水は送らない。
第1ろ過膜エレメントセット50Aでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水し、濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
その後、原水ライン切り替え弁35を操作することで、第2ろ過膜エレメントセット50Bのみに原水を送ってろ過工程を実施し、第1ろ過膜エレメントセット50Aには原水は送らず、ろ過を停止する。
第2ろ過膜エレメントセット50Bでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水し、濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
その後は、原水ライン切り替え弁35を操作することで、第1ろ過膜エレメントセット50Aによるろ過運転の実施、第2ろ過膜エレメントセット50Bのろ過運転の停止、第1ろ過膜エレメントセット50Aによるろ過運転の停止、第2ろ過膜エレメントセット50Bのろ過運転の実施を繰り返す。
【0041】
図6に示すろ過膜装置4を使用したときのろ過工程において、第1ろ過膜エレメントセット50Aおよび第2ろ過膜エレメントセット50Bのいずれか一方のろ過膜エレメントセットへの原水の供給を停止してろ過運転を停止したとき、原水の供給を停止した第1ろ過膜エレメントセット50Aおよび第2ろ過膜エレメントセット50Bのいずれか一方のろ過膜エレメントセットを洗浄剤が入った洗浄槽に浸漬することでろ過膜エレメントを浸漬洗浄することができる。
洗浄剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩などのアニオン型界面活性剤溶液を使用することができる。
洗浄剤濃度は、本発明の好ましい一態様は5~1,000mg/Lであり、本発明の別の好ましい一態様は50~250mg/Lである。
ろ過膜エレメントの浸漬時間は、本発明の好ましい一態様は5~1,440分であり、本発明の別の好ましい一態様は5~300分である。
また、浸漬洗浄と共に洗浄槽中の水溶液を洗浄液として使用し、洗浄槽内または洗浄槽の付近に設置されたポンプからの循環ライン(図示されていない)により循環運転して洗浄することもできる。
循環洗浄するときの洗浄時のろ過圧力(膜エレメントの入口圧力)は0.5~1.5MPa、洗浄時の低循環流量は5~15L/分にすることができる。
さらに、第1ろ過膜エレメントセット50Aおよび第2ろ過膜エレメントセット50Bのいずれか一方のろ過膜エレメントセットへの原水の供給を開始してろ過運転を開始したとき、原水の供給を開始した第1ろ過膜エレメントセット50Aおよび第2ろ過膜エレメントセット50Bのいずれか一方のろ過膜エレメントセットを50~500mg/Lのアニオン型界面活性剤水溶液を用いて、予め定められた時間ごとに、0.7~1.2MPaの入口圧、5~15L/分の循環流量で、1~10分間の循環運転を行う方法を適用できる。この循環運転中は、廃水処理運転を中断する。
前記の予め定められた時間は、一定間隔のろ過運転時間により設定できるほか、ろ過性能の低下を目安として設定することもできる。
【0042】
次に図7に示す実施形態のろ過膜装置4を使用した場合のろ過工程を説明する。
(i)第1形態のろ過膜装置4を使用したろ過工程
原水タンク3から幹となる原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)を経てろ過膜装置4に原水を送るとき、第1ライン切換え弁36aを切り替え、第2ライン切換え弁36bを閉じることによって、第1ろ過膜エレメントセット50Aのみに原水を流してろ過工程を実施し、第2ろ過膜エレメントセット50B、第3ろ過膜エレメントセット50C残りのセットには原水を流さず、ろ過工程が実施されないようにする。
第1ろ過膜エレメントセット50Aでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水し、濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
【0043】
(ii)第2形態のろ過膜装置4を使用したろ過工程
原水タンク3から幹となる原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)を経てろ過膜装置4に原水を送るとき、第1ライン切換え弁36aを切り替え、第2ライン切換え弁36bを閉じることによって、第2ろ過膜エレメントセット50Bのみに原水を流してろ過工程を実施し、第1ろ過膜エレメントセット50Aと第3ろ過膜エレメントセット50Cには原水を流さず、ろ過工程が実施されないようにする。
第2ろ過膜エレメントセット50Bでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水し、濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
【0044】
(iii)第3形態のろ過膜装置4を使用したろ過工程
原水タンク3から幹となる原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)を経てろ過膜装置4に原水を送るとき、第1ライン切換え弁36aを切り替え、第2ライン切換え弁36bを閉じることによって、第1ろ過膜エレメントセット50Aと第2ろ過膜エレメントセット50Bに原水を流してろ過工程を実施し、第3ろ過膜エレメントセット50Cには原水を流さず、ろ過工程が実施されないようにする。
第1ろ過膜エレメントセット50Aと第2ろ過膜エレメントセット50Bでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水し、濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
【0045】
(iv)第4形態のろ過膜装置4を使用したろ過工程
原水タンク3から幹となる原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)を経てろ過膜装置4に原水を送るとき、第1ライン切換え弁36aを切り替え、第2ライン切換え弁36bを開けることによって、第2ろ過膜エレメントセット50Bと第3ろ過膜エレメントセット50Cに原水を流してろ過工程を実施し、第1ろ過膜エレメントセット50Aには原水を流さず、ろ過工程が実施されないようにする。
第2ろ過膜エレメントセット50Bと第3ろ過膜エレメントセット50Cでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水し、濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
【0046】
第1形態~第4形態のろ過膜装置4を使用したろ過工程は、それらを適宜組み合わせて実施することによって、第1ろ過膜エレメントセット50A~第3ろ過膜エレメントセット50Cの中で、順番にろ過工程を実施しないろ過膜エレメントセットが存在するようにして、ろ過工程を実施しないろ過膜エレメントセットに対して、上記した浸漬洗浄を実施したり、循環洗浄を実施したりする。
【0047】
次に図8に示す実施形態のろ過膜装置4を使用した場合のろ過工程を説明する。
原水タンク3から幹となる原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)を経てろ過膜装置4に原水を送るとき、原水ライン切り替え弁37aを操作することで、第1ろ過膜エレメントセット50Aのみに原水を送ってろ過工程を実施し、第2ろ過膜エレメントセット50Bには原水は送らない。
第1ろ過膜エレメントセット50Aでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水する。
第1ろ過膜エレメントセット50Aでろ過して生じた濃縮水は、濃縮水ライン切り替え弁37bを操作して、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
その後、原水ライン切り替え弁37aと濃縮水ライン37bを操作することで、第2ろ過膜エレメントセット50Bのみに原水を送ってろ過工程を実施し、第1ろ過膜エレメントセット50Aには原水は送らず、ろ過を停止する。
第2ろ過膜エレメントセット50Bでろ過したろ過水は、ろ過水ライン26からろ過水タンク5に送って貯水し、濃縮水は、第1濃縮水ライン28から原水タンク3に戻し、これを繰り返す。
その後は、原水ライン切り替え弁37aと濃縮水ライン切り替え弁37bを操作することで、第1ろ過膜エレメントセット50Aによるろ過運転の実施、第2ろ過膜エレメントセット50Bのろ過運転の停止、第1ろ過膜エレメントセット50Aによるろ過運転の停止、第2ろ過膜エレメントセット50Bのろ過運転の実施を繰り返す。
ろ過工程を実施しないろ過膜エレメントセットに対して、上記した浸漬洗浄を実施したり、循環洗浄を実施したりする。
【0048】
ろ過膜装置4を使用したろ過工程では、廃水ピット1内の廃水中に薬剤が添加されているため、ろ過運転中における透過流束が低下し難く、洗浄による透過流束の回復率も高くすることができる。これらの効果は、特に薬剤として界面活性剤を添加したときに大きくなる。
また廃水ピット1内の廃水中に薬剤を添加したことによって、原水中の懸濁物濃度(固形分濃度)が高くなった場合であっても、ろ過膜として酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜を使用していることから、透過流束で評価されるろ過性能への影響を小さくすることができる。
【0049】
各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲で、適宜構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0050】
実施例1
図1図6に示す廃水処理フローにより実施した。
日本国内の工場で発生したアルミダイカスト廃水を処理した。
廃水ピット1内の廃水(n-ヘキサン抽出物の濃度が約100mg/L)の中へ、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を濃度が約33mg/Lになるように制御して添加した。
また、原水タンク3は温度調節装置を備えたものを使用して、原水タンク3内の原水温度が20~30℃の範囲に維持されるようにした。
【0051】
ろ過膜装置4は、図3に示す内径11.5mmの管状ポリエステル不織布支持体の管内表面に厚さ0.2mmの酢酸セルロース逆浸透膜を積層させた長さ2,500mmの管状膜エレメント(ダイセン・メンブレン・システムズ製TR-70C3-P18A)を4本直列接続したもの(図4)1セットとして2セット(第1セット50Aと第2セット50B)を直列設置したものである。
第1セット50Aと第2セット50Bは、1日毎に切換えて運転を実施した。
第1セット50Aと第2セット50Bのそれぞれの運転入口圧力は2.0~2.4MPa、循環流量は15~18L/分でろ過運転した。
【0052】
ろ過膜装置4は最初に第1セット50A使用した後、第2セット50Bに切り替え、その後はこの使用順序を繰り返した。
第1セット50Aまたは第2セット50Bを使用したろ過運転開始から6時間後、12時間後、18時間後において、約330ppmの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩水溶液を用いて、低圧(1.0MPa)低循環流量(10L/分)で5分間の循環運転を行った。
また、ろ過運転を実施した第1セット50Aまたは第2セット50Bは、他のセットに切り替えた後、約130ppmの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩水溶液の中に浸漬して洗浄した。
【0053】
表1にろ過性能(阻止率)を示す。次式から求めた。
阻止率(%)=(廃水値-ろ過水値)/廃水値×100
(廃水値は、廃水のCOD、BOD、n-ヘキサン濃度、カルシウム濃度、イオン状シリカ濃度であり、ろ過水値は、ろ過水のCOD、BOD、n-ヘキサン抽出物濃度、カルシウム濃度、イオン状シリカ濃度である。)
10にろ過量と温度の関係を示す。ろ過量の回復値は、約2~2.5L/分で安定しており、長期間継続して廃水濃縮ができるようになる。
【0054】
【表1】
【0055】
表1から明らかなとおり、本発明の廃水処理システムとその運転方法によれば、優れた処理性能を発揮することができるものであり、処理水はそのまま下水に流すことができるほか、植物への散水用などにも使用できるようになる。
【0056】
比較例1
実施例1とは、廃水ピット1に直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を添加していないこと、原水タンク3の廃水温度を管理していないこと、第1セット50Aと第2セット50Bは、1日毎に切換えて運転を実施していないこと、ろ過運転の6時間毎に実施する5分間の低圧循環運転を清水で実施したことを除いて、実施例1と同様にして処理した。
運転開始1週間は、廃水温度が27~30℃、ろ過量の回復値は約1.5L/分付近であったが、廃水水位が満水状態の1/3を割り込み、廃水温度が37℃に達した際には、濾過量が約0.4L/分まで急激に落ち込み、その後、廃水温度が30℃以下になっても濾過量は、最大でも0.8L/分にしか回復しなかった。
このままの状態で約1週間、廃水温度が30~40℃で濾過量は、0.6L/分付近で推移した。
【0057】
実施例2
比較例1の処理をした後、廃水ピット1に直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を実施例1と同濃度になるよう添加したところ、ろ過量は著しく回復し、4時間後には濾過量は1.4L/分(廃水温度:約35℃)まで増加した。
【0058】
参考例1
実施例1と同じ廃水処理システムを使用して日本国内の工場で発生するエポキシ樹脂電着塗装廃水の処理を実施した。
廃水ピット1内の廃水は、浮遊物質の濃度(SS濃度)が約400mg/Lであったため、廃水中のエポキシ樹脂とは反対の電荷を有する高分子凝集剤を濃度が40mg/L(SS濃度の10%量)になるようにして添加し、添加し混合撹拌後に静置して凝集物を沈降させた。廃水ピット1に沈殿した沈殿物は、排出ライン17から排出した。
その後、上澄み水をろ過膜装置4に供給し、実施例1と同様にろ過工程を実施した。運転入口圧力は3.0~4.0MPaで供給した。
運転中は10分毎にスポンジボールを用いて、処理水の流れの逆側からろ過膜装置4のろ過膜エレメントの膜表面の接触反復洗浄を実施した。
25℃で換算した濾過量は、2週間安定して0.3~0.5L/分であった。
【0059】
比較例2
参考例1とは、使用されるエポキシ樹脂の反対の電荷を有する高分子凝集剤を添加しないことを除いて、参考例1と同様にして処理した。
運転直後からろ過量が急激に低下し、ろ過膜装置4のろ過膜エレメント40の多孔支持管41の管内表面(酢酸セルロース膜表面)には黒色の付着物が見られ、ろ過量は洗浄によっても回復しなかった。
【0060】
実施例、比較例3
日本国内の工場で発生するアルミダイカスト廃水の処理を実施した。
実施例1と同じ廃水処理システムを使用し、廃水ピット1に直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を添加した例(実施例)と添加しない例(比較例3)で実施例1と同様に実施した。
1か月間廃水濃縮処理運転を実施した後の実施例および比較例3のろ過膜エレメント(内径11.5mmの管状ポリエステル不織布支持体の管内表面に0.2mmの酢酸セルロース逆浸透膜を積層させた長さ2,500mmの管状膜エレメント)を使用し、低循環量洗浄運転を実施した。
低循環量洗浄運転は、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウムを含んだ市販の界面活性剤の3%水溶液(温度:約25℃)を使用し、運転圧力3.0MPa、循環流量10L/分の条件で、実施例は15分、比較例3は2時間実施した。
その後、透過流束と塩化ナトリウム2,000ppm水溶液の塩阻止率を測定した。なお、低循環量洗浄運転の前にも透過流束と塩化ナトリウム2,000ppm水溶液での塩阻止率を測定した。結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【0062】
実施例のろ過膜装置(管状のろ過膜エレメント)では、洗浄によってほぼ初期値に近い性能にまで回復しており、継続した安定的なろ過運転が実施できるようになる。
比較例3のろ過膜装置(管状のろ過膜エレメント)では、透過流束、塩化ナトリウム塩阻止率のどちらもあまり回復していなかったため、酢酸セルロース膜に構造上に回復不能な損傷が生じたものと認められ、継続したろ過運転ができなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明の廃水処理システムとその運転方法は、各種工場や事業所などで生じる油を含む廃水の処理に利用することができ、例えば、金型に塗布した離型剤を含む含油排水であるダイキャスト排水、洗車廃水、大規模調理施設からの廃水などを処理することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 廃水ピット
2 プレフィルター
3 原水タンク
4 ろ過膜装置
5 ろ過水タンク
13 ポンプ保護用ストレナー
図1
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図3
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図10