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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】廃水処理システムとその運転方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20220107BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220107BHJP
   B01D 63/06 20060101ALI20220107BHJP
   B01D 69/04 20060101ALI20220107BHJP
   B01D 71/16 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/58
B01D63/06
B01D69/04
B01D71/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020079071
(22)【出願日】2020-04-28
(65)【公開番号】P2021171733
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2021-06-03
(73)【特許権者】
【識別番号】594152620
【氏名又は名称】ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】浜田 敏充
(72)【発明者】
【氏名】中塚 修志
(72)【発明者】
【氏名】昌子 弘一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩志
(72)【発明者】
【氏名】小林 正人
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-126767(JP,A)
【文献】特開2009-183800(JP,A)
【文献】特開2016-190218(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00- 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃水源からの含油廃水が貯水される原水タンク、ろ過膜装置、ろ過水タンクを有する廃水処理システムであって、
前記原水タンクが、内部の原水温度を調節するための温度調節装置、温度計、水位計を備えており、
前記温度調節装置が、原水を加温するための加温装置、原水を冷却するための冷却装置および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置を全て有しているものであり、
前記ろ過膜装置が、ろ過膜として酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜を含むものであり、
前記廃水源と前記原水タンクがプレフィルターと廃水ポンプを備えた廃水ラインで接続され、
前記原水タンクと前記ろ過膜装置が、循環ポンプを備えた原水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置のろ過水出口と前記ろ過水タンクが、ろ過水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置の濃縮水出口と前記原水タンクが、第1濃縮水ラインで接続され、
前記ろ過水タンクがろ過水ポンプを備えたろ過水採水ラインに接続されており、
前記原水タンク、前記原水ライン、前記ろ過膜装置、前記第1濃縮水ラインおよび前記原水タンクからなる循環ラインを有しており
前記循環ラインにアニオン型界面活性剤を含む界面活性剤の水溶液が洗浄液として供給できるようになっているものである、廃水処理システム。
【請求項2】
前記界面活性剤の水溶液が、アニオン型界面活性剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を含んでいるものである、請求項1記載の廃水処理システム。
【請求項3】
前記ろ過膜装置が、複数本のろ過膜装置が直列配置されているものである、請求項1または2記載の廃水処理システム。
【請求項4】
さらに濃縮水タンクを有しており、前記原水タンクと前記濃縮水タンクが、前記循環ラインと、前記循環ポンプと前記ろ過膜装置の間の循環ラインから分岐された第2濃縮水ラインで接続されているものである、請求項1~のいずれか1項記載の廃水処理システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項記載の廃水処理システムの運転方法であって、
前記循環ポンプを作動させ、前記原水タンク内の原水を前記原水ラインにより前記ろ過膜装置に送ってろ過するろ過工程、
前記ろ過工程で得られたろ過水をろ過水ラインからろ過水タンクに送って貯水するろ過水の貯水工程、
前記ろ過工程で得られた濃縮水を前記第1濃縮水ラインから前記原水タンクに返送する工程を有しており、
前記循環ポンプを連続して作動させてろ過運転を継続した状態で、前記原水タンク内の原水量が満水水位から所定値まで減少したときを水位計で検知し、前記廃水ポンプを作動させて前記廃水源から前記原水タンクに廃水を供給することで、前記原水タンク内の水位を満水水位に維持する水位維持工程と、
前記温度調節装置を作動させることで、前記原水タンク内の原水温度の変化を抑制する原水の温度調節工程を有しており
前記温度調節工程が、前記廃水源から前記原水タンク内に廃水を供給したとき、運転開始時における前記原水タンク内の原水温度が基準温度となるものであり、
前記基準温度が20~30℃の範囲の温度であり、
前記廃水の温度が前記基準温度よりも低いときは、前記加温装置で加温する方法、前記攪拌装置で攪拌する方法および前記二つの方法を組み合わせる方法のいずれか一つの方法を実施し、
前記廃水の温度が前記基準温度よりも高いときは、前記冷却装置で冷却する方法、前記攪拌装置で攪拌する方法および前記二つの方法を組み合わせる方法のいずれか一つの方法を実施し、
さらに前記ろ過膜装置のろ過性能が低下したときには、アニオン型界面活性剤の水溶液を洗浄液として使用し、循環ラインにより循環運転して洗浄する工程を有している、廃水処理システムの運転方法。
【請求項6】
前記界面活性剤の水溶液が、アニオン型界面活性剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を含んでいるものである、請求項5記載の廃水処理システムの運転方法。
【請求項7】
前記界面活性剤の水溶液を洗浄液として使用し、循環ラインにより循環運転して洗浄する工程が、洗浄液中の界面活性剤濃度が200~500mg/L、洗浄時のろ過圧力が0.5~2.0MPa、洗浄時の低循環流量が5~20L/分で実施する、請求項5または6記載の廃水処理システムの運転方法。
【請求項8】
前記原水タンクの水位維持工程が、予め決められた原水タンクの満水水位を基準水位として、前記基準水位から20~70%の範囲で水位が低下したとき、前記廃水ポンプを作動させて前記廃水源から前記原水タンクに廃水を供給する工程である、請求項5~7のいずれか1項記載の廃水処理システムの運転方法。
【請求項9】
前記満水水位が、前記原水タンクの内容量の80~95%の範囲の原水を満たしたときの水位である、請求項5~8のいずれか1項記載の廃水処理システムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含油廃水の処理をすることができる廃水処理システムとその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種分野の工場などから排出される廃水には、鉱物油、雑油、ワックス、界面活性剤、懸濁物などが含まれており、そのまま下水に廃水を流すことはできず、処理する必要がある。
特許文献1には、油含有水にアニオン界面活性剤を添加した後、膜面線速度1m/sec以上で膜分離する油含有水の膜分離方法の発明が記載されている。ろ過膜としては、MF膜、UF膜が例示され、内圧式チューブラー膜、スパイラス膜が好適であることが記載されている。
特許文献2には、廃水処理するときに管状RO膜による処理工程を実施する発明が記載されており、RO膜の材質としてセルロースアセテート、芳香族ポリアミド、スルホン化ポリエーテルスルホンなどが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-179420号公報
【文献】特開2019-107645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、含油廃水の処理をすることができる廃水処理システムとその運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、廃水源からの含油廃水が貯水される原水タンク、ろ過膜装置、ろ過水タンクを有する廃水処理システムであって、
前記原水タンクが、内部の原水温度を調節するための温度調節装置、温度計、水位計を備えており、
前記ろ過膜装置が、ろ過膜として酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜を含むものであり、
前記廃水源と前記原水タンクがプレフィルターと廃水ポンプを備えた廃水ラインで接続され、
前記原水タンクと前記ろ過膜装置が、循環ポンプを備えた原水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置のろ過水出口と前記ろ過水タンクが、ろ過水ラインで接続され、
前記ろ過膜装置の濃縮水出口と前記原水タンクが、第1濃縮水ラインで接続され、
前記ろ過水タンクがろ過水ポンプを備えたろ過水採水ラインに接続されており、
前記原水タンク、前記原水ライン、前記ろ過膜装置、前記第1濃縮水ラインおよび前記原水タンクからなる循環ラインを有している、廃水処理システムと、その運転方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の廃水処理システムとその運転方法によれば、ろ過膜の劣化を抑制することができ、ろ過膜の使用寿命を延ばすことができるため、長期間安定した廃水処理運転ができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の廃水処理システムを含む廃水処理フローを示す図。
図2】本発明の廃水処理システムの原水タンクの一実施形態を示す図。原水タンクの内部が見えるように表示している。
図3】本発明の廃水処理システムの濾過膜装置で使用する濾過膜エレメントの斜視図。
図4図3に示す濾過膜エレメントを複数組み合わせた濾過膜エレメント集合体の平面図。
図5図3に示す濾過膜エレメントの複数本が筒状ケースハウジングに入れられた濾過膜モジュールの斜視図。但し、実際には見えない内部が見えるように表示している。
図6】本発明の廃水処理システムを使用した廃水処理システムの運転方法の一工程を説明するための図。
図7】実施例の廃水処理システムにおけるろ過量と温度の関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[廃水処理システム]
図1図4により本発明の廃水処理システムの一態様を説明する。図1中、少なくとも破線で囲まれた範囲を有しているものが本発明の廃水処理システムとなる。
【0009】
廃水ピット1は、各種工場などの廃水源から廃水ライン20により含油廃水が流入する廃水槽であり、通常は地面よりも低い位置に設けられている。廃水ピット1は、底部において砂利や砂などの沈殿物、凝集剤を添加したときの沈殿物を排出するための排出ライン17が接続されていてもよい。
含油廃水中の油の種類や濃度は特に限定されるものではなく、例えば、特開2003-93803号公報に記載のn-ヘキサン抽出物量と同じ成分であって、同じ濃度範囲を基準とすることができる。
【0010】
廃水ピット1と原水タンク3は、廃水ポンプ10を備えた廃水ライン21で接続されている。
廃水ライン21には、廃水ポンプ10とプレフィルターが設置されている。
プレフィルターは、例えば金網フィルターであり、砂利、ゴミ、砂などを取り除くためのものである。
なお、廃水源からの廃水量などに応じて、廃水ピット1を設置することなく、廃水源から直接原水タンク3に含油廃水を送ることもできる。
【0011】
原水タンク3は、内部の原水温度を調節するための温度調節装置、温度計(図示していない)、水位計(図示していない)を備えている。
原水タンク3の容量は、廃水処理量などに応じて設定することができるものであり、温度調節装置、水位計、温度計は原水タンク3の容量に応じて選択することができる。
例えば、原水タンク3の容量が50m3より少ない場合の水位計として、ロードセルのような重力測定器が設置されていてもよい。
温度調節装置は、図2に示すとおり、原水を加温するための加温装置30、原水を冷却するための冷却装置31および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32から選ばれる1または2以上のものである。
温度調節装置は、手動、半自動、自動のいかなる運転モードでの運転制御が実施できるものでもよい。
原水を加温するための加温装置30は、公知のヒーター、熱交換器などを使用することができる。
原水を冷却するための冷却装置31は、公知のチラー、熱交換器などを使用することができる。
原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32は、先端の攪拌部32aの位置を上下できるものを使用することもできるほか、原水タンク3内を循環できるポンプ装置を使用することもできる。
加温装置30、冷却装置31および攪拌装置32は、図示していない外部電源と電気的に接続されている。
なお、加温装置30、冷却装置31および攪拌装置32は、原水タンク3内に設置される必然性を有した装置部分が原水タンク3内に設置されていればよく、それ以外の装置部分は原水タンク3の外に設置することもできる。また、温度計は、原水タンク3内に設置することができるほか、原水タンク3外に設置された反射式温度計などを使用することもできる。
【0012】
温度調節装置は、
原水を加温するための加温装置30および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32の組み合わせからなるもの、
原水を冷却するための冷却装置31および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32の組み合わせからなるもの、
原水を加温するための加温装置30、原水を冷却するための冷却装置31および原水を攪拌して温度を均一にするための攪拌装置32の組み合わせからなるもののいずれかの組み合わせからなるものを選択して使用することができる。
【0013】
原水タンク3とろ過膜装置4は、循環ポンプ11を備えた原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)で接続されている。
ろ過膜装置4は、酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜を備えているものであり、チューブラー型ろ過膜の本発明の好ましい一態様はチューブラー型RO膜である。
【0014】
ろ過膜装置4としては、図3に示すとおり、多孔支持管41内にチューブラー型RO膜42が配置されているものを使用することができる。
多孔支持管11は、合成樹脂(例えば繊維強化樹脂)または金属(例えばステンレス)からなるものであり、厚さ方向に貫通された多数の孔43が分散配置されている。
チューブラー型RO膜42は、不織布、紙などからなる支持管の内側にRO膜が形成されたものでもよい。
チューブラー型RO膜42の内径は、被処理水の濃度(固形分濃度)に応じて調整することができるものであり、例えば5~15mmの範囲にすることができる。
チューブラー型RO膜42は、廃水の流路が大きいため膜が閉塞し難く、廃水の流入が膜面閉塞物を剥離する方向にも流れているため、廃水の高濃度濃縮および凝集物が存在する廃水処理に適している。
【0015】
ろ過膜装置4は、図4に示すとおり、複数本のろ過膜装置4が連結されて1本になったろ過膜装置集合体50を使用することもできる。
図4に示すろ過膜装置集合体50は、直列配置されたろ過膜装置4のうち、隣接するろ過膜装置4同士がU字管51で連結されているものである。U字管51に代えて他の連結方法を使用することもできる。
ろ過膜装置集合体50の第1端開口部50aには第2原水ライン22bが接続され、反対側の第2端開口部50bには濃縮水ライン25が接続されている。
ろ過膜装置集合体50は、例えば、10~20本のろ過膜装置4が直列に接続されたものにすることができる。
【0016】
ろ過膜装置4は、図5に示すように、筒状のケーシング61内にろ過膜装置集合体50が収容され、全体として1本の管状になっているチューブラー型RO膜モジュール60を使用することもできる。
チューブラー型RO膜モジュール60は、両端面(第1端面62と第2端面63)が閉塞された筒状のケーシング61内にろ過膜装置集合体50が巻き込まれて円柱状になった形態で収容されているものである。
筒状のケーシング61の第1端面62には、ろ過膜装置集合体50の原水入り口63と濃縮水出口64が突き出されている。
筒状ハウジング61の側面64からは、ろ過水出口65が突き出されており、さらに図示していない通気孔が形成されている。
チューブラー型RO膜モジュール60は、1または複数を組み合わせて使用することができる。
【0017】
ろ過膜装置4とろ過水タンク5は、ろ過膜装置4のろ過水出口とろ過水タンク5がろ過水ライン23で接続されている。
ろ過水タンク5は、ろ過水ポンプ12を備えたろ過水採水ライン24に接続されており、ろ過水採水ライン24は外部ろ過水タンク8に接続されている。
ろ過膜装置4の濃縮水出口は、第1濃縮水ライン25により原水タンク3に接続されている。
原水タンク3と濃縮水タンク7は、循環ポンプ11とろ過膜装置4の間の循環ラインから分岐された第2濃縮水ライン26で接続されている。
【0018】
廃水処理システムは、原水タンク3、原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)、ろ過膜装置4、第1濃縮水ライン25および原水タンク3からなる循環ラインを有している。
なお、必要に応じて各ラインには、液体の流れを阻止したり、流したりするための電磁弁などからなる開閉弁を設置することもできる。
【0019】
[廃水処理システムの運転方法]
図1図6により本発明の廃水処理システムの運転方法の一態様を説明する。
ろ過工程において、循環ポンプ11を作動させ、原水タンク3内の原水を原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)によりろ過膜装置4に送ってろ過する。
ろ過工程で得られた濃縮水は、第1濃縮水ライン25から原水タンク3に返送して、原水としてろ過工程を実施する。
【0020】
次に、ろ過水の貯水工程において、ろ過工程で得られたろ過水をろ過水ライン23からろ過水タンク5に送って貯水する。
ろ過水タンク5内のろ過水は、ろ過水採水ライン24から外部ろ過水タンク8に送って貯水して、必要に応じて工業用水、中水、洗浄用水、防火用水、植木用の水、融雪用や打ち水用の水として再利用することができる。
原水タンク3、原水ライン(第1原水ライン22aと第2原水ライン22b)、ろ過膜装置4、第1濃縮水ライン25および原水タンク3からなる循環ラインを使用して、上記運転方法を継続実施する。
なお、原水タンク3に濃縮水を返送することで原水中の懸濁質濃度が過度になったときは、原水タンク3内の原水の一部を第2濃縮水ライン26から排出して、濃縮水タンク7に貯水する。


【0021】
上記運転方法を継続実施したとき、原水タンク3の原水量が減少して、水位が低下する。
従来このような場合には、循環ポンプ11を停止した状態で廃水ポンプ10を作動させ、廃水ピット1内の廃水を原水タンク3内に供給していた。
しかし、本発明の運転方法の水位維持工程では、循環ポンプ11を連続して作動させてろ過運転を継続した状態で、廃水ポンプ10を作動させ、廃水ピット1内の廃水を原水タンク3内に供給する。
【0022】
次に図6により水位維持工程の一実施形態を説明する。
図6(a)は、運転開始時において原水タンク3内に原水が満水である状態(満水水位:FL)を示している。
満水水位は予め設定することができるものであり、例えば、原水タンクの内容量の80~95%の範囲の原水を満たしたときの水位にすることができる。
【0023】
図6(b)に示すとおり、原水タンク3内の原水をろ過膜装置4に送ってろ過することで、原水タンク3内の原水量は、ろ過水タンク5に貯水されたろ過水量に相当する分だけ減少する。
このようにして原水タンク3内の原水量が満水水位から所定値(限界水位:LL)まで減少したときを水位計で検知し、図6(c)に示すとおり、廃水ポンプ10を作動させて廃水ピット1から原水タンク3に廃水ライン21により廃水を供給することで、原水タンク3内の水位を限界水位(LL)から満水水位(FL)の間に維持する。
限界水位は、予め決められた原水タンク3の満水水位を基準水位として、前記基準水位から20~70%の範囲で水位が低下したときの水位にすることができる。
このような図6(a)~(c)を繰り返すことで、循環ポンプ11を停止することなく連続的に作動させた状態で、原水タンク3内の原水量(原水の水位)を維持することができる。
【0024】
また、上記運転方法を継続実施したとき、廃水ピット1内の廃水の温度変化によって、廃水ピット1から原水タンク3に廃水を送水したとき、原水タンク3内の原水温度に変化が生じる。
例えば、昼間と夜間、夏季と冬季などでは、廃水ピット1の周囲温度に大きな温度が生じることが考えられるため、廃水ピット1内の廃水温度にも違いが生じることになる。
このため昼間と夜間、夏季と冬季などでは、廃水ピット1の廃水が送水される原水タンク3内の原水温度にも変化が生じることになる。
従来このような場合には、原水温度が変化した場合でも、そのままろ過膜装置4に送ってろ過していた。
しかし、このように温度変化の大きい原水と接触を繰り返すろ過膜装置4のろ過膜は、温度変化によるストレスを継続的に受ける結果、劣化が促進され、使用寿命が低下されることになる。
【0025】
本発明の運転方法の温度調節工程では、運転開始時における原水タンク3内の原水温度を基準温度として、廃水ピット1内の廃水温度が前記基準温度よりも低いときは、図2に示す加温装置30で加温する方法と、図2に示す攪拌装置32で攪拌する方法を組み合わせる方法を実施する。
【0026】
また本発明の運転方法の温度調節工程では、運転開始時における原水タンク3内の原水温度を基準温度として、廃水ピット1内の廃水温度が前記基準温度よりも高いときは、図2に示す冷却装置31で冷却する方法と、攪拌装置32で攪拌する方法を組み合わせる方法を実施する。
【0027】
原水タンク3内の原水温度は、原水タンク3内に備え付けられた温度計または原水タンクの外側に設置された反射式温度計などにより計測するが、廃水ピット1の周囲温度と基準温度の差を考慮しておくことによって、攪拌装置32を常時作動させておく方法、加熱装置30による予備加熱または冷却装置31による予備冷却を実施する方法も適用できる。
基準温度は、ろ過膜が酢酸セルロース膜であることから、20~30℃の範囲の温度にすることができる。
【0028】
ろ過膜装置4のろ過膜は、ろ過性能が低下したときには、界面活性剤(例えば、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩のようなアニオン型界面活性剤)の水溶液を洗浄液として使用し、循環ラインにより循環運転して洗浄することができる。
洗浄液中の界面活性剤濃度は200~500mg/L、洗浄時のろ過圧力は0.5~2.0MPa、洗浄時の低循環流量は5~20L/分にすることができる。
【0029】
各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲で、適宜構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0030】
実施例1
図1に示す廃水処理フローにより実施した。
日本国内の工場で発生したアルミダイカスト廃水を処理した。廃水ピット1には、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩を添加し、濃度が約33mg/Lになるように制御した。
【0031】
原水タンク3は、満水水位(FL)を容量の90%の位置に設定し、満水水位から1/3量の原水が減った位置を限界水位(LL)として設定した。
原液タンク3には、撹拌機32、電気式ヒーター30および15℃冷水を循環して熱交換可能な蛇管(冷却装置)31を備えたものを使用した。基準温度は20~30℃の範囲とした。
【0032】
ろ過膜装置4は、図3に示す内径11.5mmの管状ポリエステル不織布支持体の管内表面に厚さ0.2mmの酢酸セルロース逆浸透膜を積層させた長さ2,500mmの管状膜エレメント(ダイセン・メンブレン・システムズ製TR-70C3-P18A)を4本直列接続したもの(図4)1セットして2セット(第1セットと第2セット)を並列設置した。
第1セットと第2セットは、1日毎に切換えて運転を実施した。
第1セットと第2セットのそれぞれの運転入口圧力は2.0~2.4MPa、循環流量は15~18L/分でろ過運転した。
【0033】
運転開始後、原水タンク3の水位が限界水位になった時点で自動的に廃水ピット1からの送水を開始して、限界水位(LL)から満水水位(FL)の間の水位を維持した。
7~9月の廃水ピット1の廃水温度は約30~35℃であったため、原水タンク3内の原水温度が約25~30℃になるよう、攪拌装置32で撹拌しながら、約15℃の冷水を熱交換可能な蛇管31内へ循環することや、冷水循環を止めることによって温度調整した。
11~1月の廃水ピット1の廃水温度は約5~15℃であったため、運転開始時の原水タンク3内に廃水ピット1の廃水を送液した際は、原水温度が10℃付近になることがあるが、その際、攪拌装置32で撹拌しながら、電気式ヒーター30で満水状態の原水タンク3内の原水温度を約30℃になるまで昇温し、その後加熱を止めることで、原水温度を約25~30℃になるようよう温度調整した。
【0034】
ろ過膜装置4は最初に第1セットを使用した後、第2セットに切り替え、その後はこの使用順序を繰り返した。
第1セットまたは第2セットを使用したろ過運転開始から6時間後、12時間後、18時間後において、約330mg/Lの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩水溶液を用いて、低圧(1.0MPa)低循環流量(10L/分)で5分間の循環運転を行った。
また、ろ過運転を実施した第1セットまたは第2セットは、他のセットに切り替えた後、約130mg/Lの直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩水溶液の中に浸漬して洗浄した。
【0035】
表1にろ過性能(阻止率)を示す。次式から求めた。
阻止率(%)=(廃水値-ろ過水値)/廃水値×100
(廃水値は、廃水のCOD、BOD、n-ヘキサン抽出物濃度、カルシウム濃度、イオン状シリカ濃度であり、ろ過水値は、ろ過水のCOD、BOD、n-ヘキサン濃度、カルシウム濃度、イオン状シリカ濃度である。)
図7にろ過量と温度の関係を示す。ろ過量の回復値は、約2~2.5L/分で安定しており、長期間継続して廃水濃縮ができるようになる。
【0036】
【表1】
【0037】
比較例1
実施例1と同じ工場で発生したアルミダイカスト廃水を、原水タンク3内に原水温度を調節するための温度調節装置が設置されていないことを除いて実施例1と同じ廃水処理システムを用いて廃水処理を行った。廃水処理は、原水タンク3の水位維持工程と温度調節工程は実施しなかった。
廃水ピット1の廃水温度は約30~35℃で、原水タンク3の水位が下がると運転熱が加わり、原水タンク内の原水温度は40℃になった。さらに原水タンク3の水位が下がると、ろ過膜装置の運転圧の変動幅などが大きくなり、酢酸セルロースからなるチューブラー型ろ過膜に回復不能の性能低下が発生した。
その際、ろ過量の回復値は、約0.5L/分未満の数値に留まり、それ以上には回復しなかった。
【0038】
表1から明らかなとおり、本発明の廃水処理システムとその運転方法によれば、優れた処理性能を発揮することができるものであり、処理水はそのまま下水に流すことができるほか、植物への散水用などにも使用できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の廃水処理システムとその運転方法は、各種工場や事業所などで生じる油を含む廃水の処理に利用することができ、例えば、金型に塗布した離型剤を含む含油排水であるダイキャスト排水、洗車廃水、大規模調理施設からの廃水などを処理することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 廃水ピット
2 プレフィルター
3 原水タンク
4 ろ過膜装置
5 ろ過水タンク
13 ポンプ保護用ストレナー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7