(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】水性被覆材
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20220107BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20220107BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20220107BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20220107BHJP
E04F 13/02 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/02
E04F13/02 A
(21)【出願番号】P 2020091914
(22)【出願日】2020-05-27
(62)【分割の表示】P 2016156335の分割
【原出願日】2016-08-09
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】P 2015255493
(32)【優先日】2015-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180287
【氏名又は名称】エスケー化研株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀井 健志
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-162355(JP,A)
【文献】特開2009-108671(JP,A)
【文献】特開2009-106933(JP,A)
【文献】特開2011-079908(JP,A)
【文献】特開2007-125539(JP,A)
【文献】特開2008-007738(JP,A)
【文献】特開2006-341163(JP,A)
【文献】特開2002-080798(JP,A)
【文献】特開2005-299381(JP,A)
【文献】特開2008-143164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/02
C09D 201/00
C09D 7/61
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸放湿性を有する水性被覆材であって、
合成樹脂エマルション(A)、
吸放湿性粉体(B)、
平均粒子径0.4μm以上
60μm以下、屈折率1.4以上2.0以下の粉粒体(C)、
平均粒子径80μm以上の骨材(D)、及び
水への溶解度10g/100g以下、沸点200℃以上の疎水性物質(E)を含み、
上記粉粒体(C)と上記骨材(D)との重量比[(C)/(D)]が0.1/1~10/1であることを特徴とする水性被覆材。
【請求項2】
上記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、
上記吸放湿性粉体(B)を5重量部以上500重量部以下、
上記粉粒体(C)及び上記骨材(D)を合計で100重量部以上3000重量部以下含有することを特徴とする請求項1記載の水性被覆材。
【請求項3】
上記合成樹脂エマルション(A)を構成するモノマー群中に疎水性モノマーを含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の水性被覆材。
【請求項4】
上記疎水性物質(E)が、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の水性被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた吸放湿性を有する水性被覆材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、快適な居住空間に対する関心が高まっている。例えば、壁、天井等の内装面の表面仕上げにおいては、結露防止やカビ発生防止、あるいは湿度調整による不快感抑制等の機能を有する吸放湿性のある仕上材への期待が高まっている。
【0003】
吸放湿性のある仕上材として、例えば特許文献1には、吸放湿性材料粒粉が添加された被覆材が記載されている。具体的に、アクリル樹脂エマルジョン、水、吸放湿性材料粒粉を含む被覆材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-155786号公報(請求項1、段落0030)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような被覆材による仕上外観は、単一色の色調であり、美観性の点において限界がある。また、吸放湿性の点においても改善の余地がある。
【0006】
本発明はこのような問題点に鑑みなされたものであり、美観性、吸放湿性等に優れた水性被覆材を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記問題点を解決するために鋭意検討の結果、合成樹脂エマルション、吸放湿性粉体、特定の粉粒体、骨材及び特定の疎水性物質を必須成分とする水性被覆材に想到し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.吸放湿性を有する水性被覆材であって、
合成樹脂エマルション(A)、
吸放湿性粉体(B)、
平均粒子径0.4μm以上60μm以下、屈折率1.4以上2.0以下の粉粒体(C)、
平均粒子径80μm以上の骨材(D)、及び
水への溶解度10g/100g以下、沸点200℃以上の疎水性物質(E)を含み、
上記粉粒体(C)と上記骨材(D)との重量比[(C)/(D)]が0.1/1~10/1であることを特徴とする水性被覆材。
2.上記合成樹脂エマルション(A)の固形分100重量部に対し、
上記吸放湿性粉体(B)を5重量部以上500重量部以下、
上記粉粒体(C)及び上記骨材(D)を合計で100重量部以上3000重量部以下含有することを特徴とする1.記載の水性被覆材。
3.上記合成樹脂エマルション(A)を構成するモノマー群中に疎水性モノマーを含むことを特徴とする1.または2.に記載の水性被覆材。
4.上記疎水性物質(E)が、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートであることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の水性被覆材。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性被覆材は、その形成塗膜において優れた美観性、吸放湿性等を発揮するものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明の水性被覆材は、構成成分として、合成樹脂エマルション(A)、吸放湿性粉体(B)、平均粒子径0.4μm以上80μm未満、屈折率1.4以上2.0以下の粉粒体(C)、平均粒子径80μm以上の骨材(D)、及び水への溶解度10g/100g以下、沸点200℃以上の疎水性物質(E)を含む。
【0012】
上記合成樹脂エマルション(A)(以下「(A)成分」ともいう)は、結合材として作用するもので、例えば、アクリル樹脂エマルション、ウレタン樹脂エマルション、酢酸ビニル樹脂エマルション、エチレン樹脂エマルション、シリコン樹脂エマルション、エポキシ樹脂エマルション、フッ素樹脂エマルション、アクリル・酢酸ビニル樹脂エマルション、アクリル・ウレタン樹脂エマルション、アクリル・シリコン樹脂エマルション、アクリル・フッ素樹脂エマルション等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0013】
(A)成分としては、アルキル(メタ)アクリレート及び/または芳香族基含有モノマーを主成分とするモノマー群の乳化重合物が好適である。アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマーとしては公知のものを使用することができる。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、アルキル(メタ)アクリレートと表記する。
【0014】
さらに、本発明では、(A)成分を構成するモノマー群中に疎水性モノマーを含むことが好ましい。疎水性モノマーとしては、例えば、長鎖アルキル(メタ)アクリレート、芳香族基含有モノマー等が挙げられる。
【0015】
長鎖アルキル(メタ)アクリレートとしては、炭素数6以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートが使用でき、例えば、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。芳香族基含有モノマーとしては、例えば、スチレン、2-メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ビニルナフタレン、クロロスチレン等のスチレン系モノマー、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基含有(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。
【0016】
本発明では、特に、上記疎水性モノマーとして、炭素数6以上(好ましくは8以上)のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを含む態様が好ましい。
【0017】
モノマー群中における上記疎水性モノマーの含有量は、重量比率で、好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは99.5重量%以下である。このような場合、後述の疎水性物質との相溶性が高まり、本発明の効果を高めることができる。
【0018】
(A)成分のガラス転移温度は、特に限定されないが、好ましくは-40℃以上80℃以下、より好ましくは-30℃以上50℃以下である。なお、ガラス転移温度はFoxの計算式により求められる値である。
【0019】
(A)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは10nm以上500nm以下、より好ましくは50nm以上400nm以下、さらに好ましくは100nm以上300nm以下である。このような(A)成分は、吸放湿性向上等の点で好適である。なお、合成樹脂エマルションの平均粒子径は、動的光散乱法によって測定される値である。具体的には、動的光散乱測定装置(「LB‐550」株式会社堀場製作所製)等を用いて測定することができる。(測定温度は25℃。)
【0020】
(A)成分は、公知の乳化重合法で製造すればよい。例えば乳化重合法として、バッチ重合、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合等の方法により製造することができる。また(A)成分の製造時には、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤等の乳化剤、アゾ系開始剤、過酸化系開始剤、過硫酸塩開始剤、レドックス開始剤、光重合開始剤、反応性開始剤等の開始剤、その他、溶剤、分散剤、乳化安定化剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、架橋剤、pH調整剤、連鎖移動剤、触媒等を、目的に応じ、必要量添加することができる。(A)成分の固形分は、好ましくは10重量%以上65重量%以下、より好ましくは30重量%以上60重量%以下である。(A)成分としては、媒体として基本的に水を含むものを使用すればよい。
【0021】
本発明で用いる吸放湿性粉体(B)(以下「(B)成分」ともいう)は、吸放湿性を付与するものである。このような(B)成分は、温度20℃・相対湿度90%における吸湿率が、好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上の性能を有する。なお、上記吸湿率とは、試料を温度20℃・相対湿度45%の恒温恒湿器にて24時間乾燥した後、温度20℃・相対湿度90%の恒温恒湿器にて24時間吸湿させたときの重量変化より求められる値である。すなわち、
吸湿率(%)={(吸湿後の重量-乾燥後の重量)/乾燥後の重量}×100
【0022】
(B)成分としては、例えば、ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、硫酸ナトリウム、アルミナ、アロフェン、珪藻土、珪質頁岩、セピオライト、アタバルジャイト、モンモリロナイト、ゾノライト、イモゴライト、大谷石粉、活性白土、木炭、竹炭、活性炭、木粉、貝殻粉、多孔質合成樹脂粒等が挙げられ、本発明では特に、ベーマイト、シリカゲル、ゼオライト、珪藻土、珪質頁岩から選ばれる1種以上を好適に用いることができる。
【0023】
(B)成分の平均粒子径は、特に限定されないが、好ましくは1μm以上1000μm以下、より好ましくは5μm以上500μm以下、さらに好ましくは10μm以上200μm以下、最も好ましくは15μm以上150μm以下である。なお、吸放湿性粉体の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定できる。
【0024】
(B)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは5重量部以上500重量部以下、より好ましくは8重量部以上400重量部以下、さらに好ましくは10重量部以上300重量部以下である。このような範囲である場合、優れた吸放湿性を発揮することができ、耐水性、耐洗浄性、強度等の点においても好適である。
【0025】
本発明水性被覆材では、平均粒子径0.4μm以上80μm未満、屈折率1.4以上2.0以下の粉粒体(C)(以下「(C)成分」ともいう)、及び平均粒子径80μm以上の骨材(D)(以下「(D)成分」ともいう)を用いる。本発明では、これら(C)成分及び(D)成分の併用によって、美観性、吸放湿性等において優れた性能を得ることができる。その作用機構は明らかではないが、上記物性値を有する(C)成分は、被膜中にて透明性を示すため、被膜に深み感等を付与しつつ、(D)成分の発色性を殆ど阻害しないものと考えられる。さらに、(C)成分は、被膜中において水蒸気通過経路となる孔の形成に寄与するものと考えられる。本発明の効果は、このような作用機構が関与して奏されるものと推測される。
【0026】
(C)成分の平均粒子径は0.4μm以上80μm未満であり、好ましくは0.5μm以上75μm以下、より好ましくは1μm以上60μm以下、さらに好ましくは2μm以上45μm以下である。(C)成分の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置によって測定できる。
【0027】
(C)成分の屈折率は1.4以上2.0以下であり、好ましくは1.45以上1.7以下である。屈折率はアッベ屈折計を用いて測定できる。
【0028】
(C)成分の具体例としては、例えば珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、硫酸バリウム、二酸化珪素、炭酸カルシウム等の無機質粉粒体、樹脂粒子等の有機質粉粒体等が挙げられる。また、これらは通常、無着色品である。またこれらは、中実体であることが望ましい。本発明中の(C)成分としては、特に無機質粉粒体が好適である。
【0029】
本発明における(D)成分は、その粒子特性によって、多色感、凹凸感等の美観性が付与できるものである。(D)成分としては、例えば、天然石粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等の各種骨材が挙げられる。このうち、天然石粉砕物としては、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物が挙げられる。(D)成分としては、このような各種骨材の表面を、例えば顔料、染料、釉薬等で表面処理を行うことにより、着色コーティングしたもの(着色骨材)等も挙げられる。このような骨材は、1種または2種以上で使用できる。(D)成分としては、少なくとも着色骨材が含まれることが望ましく、少なくとも2種以上の異色の着色骨材が含まれることがより望ましい。さらに、(D)成分として、着色骨材と透明性骨材を組み合わせることもできる。また、(D)成分として、有彩色のものと、無彩色のものを組み合わせてもよい。このような(D)成分は、美観性向上の点で好適である。
【0030】
(D)成分の平均粒子径は80μm以上であり、好ましくは80μm以上1000μm以下、より好ましくは90μm以上800μm以下である。(D)成分の平均粒子径は、JIS Z8801-1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0031】
本発明では、(C)成分と(D)成分との重量比[(C)/(D)]を0.1/1~10/1、好ましくは0.2/1~5/1、より好ましくは0.3/1~3/1に設定する。これにより、美観性、吸放湿性等において、優れた物性が得られる。この重量比[(C)/(D)]が小さすぎる場合は、仕上外観における深み感等の美観性が不十分となり、また吸放湿性向上効果が得られ難くなる。重量比[(C)/(D)]が大きすぎる場合は、(D)成分による発色性が不十分となりやすく、塗装作業性等に支障をきたすおそれもある。
【0032】
(C)成分及び(D)成分の合計量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは100重量部以上3000重量部以下、より好ましくは500重量部以上2500重量部以下である。(C)成分及び(D)成分の合計量が、このような混合比率であれば、美観性、吸放湿性等において、より好適であり、造膜性、耐水性、耐割れ性、塗装作業性等の点においても有利となる。
【0033】
本発明水性被覆材は、上記成分に加え、水(水温20℃)への溶解度が10g/100g以下、沸点200℃以上の疎水性物質(E)(以下「(E)成分」ともいう)を含むことができる。このような(E)成分は、吸放湿性向上化の点で好適である。(E)成分の水への溶解度は、好ましくは5g/100g以下、より好ましくは1g/100g以下、さらに好ましくは0.1g/100g以下、最も好ましくは0.08g/100g以下であり、沸点は好ましくは240℃以上、より好ましくは260℃以上である。
【0034】
(E)成分としては、例えば、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールターシャリーブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、オクチレングリコール、2-エチルヘキシレングリコール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレート、ベンジルアルコール等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用できる。本発明では(E)成分として、特に、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートを含むことが好ましい。
【0035】
このような(E)成分の作用機構は明らかでないが、(E)成分は、合成樹脂エマルション中において、水中よりも、樹脂粒子付近に多く存在するものと考えられ、水性被覆材の貯蔵時ないし成膜時に亘り、吸放湿性粉体内に樹脂粒子が入り込むことを抑制しているものと思われる。これにより、吸放湿性粉体本来の吸放湿性が十分に発揮できるものと思われる。(A)成分が、その構成成分として疎水性モノマーを含む場合は、このような作用が特に有利にはたらくものと考えられる。
【0036】
(E)成分の混合比率は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは0.1重量部以上40重量部以下、より好ましくは1重量部以上30重量部以下である。このような範囲である場合、吸放湿性向上化等の点で好適である。
【0037】
本発明水性被覆材では、上記成分の他、上記(C)成分、(D)成分以外の粉粒体や骨材等を使用することもできる。例えば、大粒径の骨材、鱗片状骨材等を適宜混合することにより、アクセント的な美観性を付与することも可能である。
【0038】
また、本発明水性被覆材には、必要に応じ、例えば着色顔料、中空ビーズ、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、pH調整剤、繊維類、つや消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、吸着剤、触媒、架橋剤等を混合することができ、このような成分を適宜組み合わせて使用することができる。本発明水性被覆材には、必要に応じ、水、溶剤等を混合することもできる。
【0039】
なお、本発明において、着色顔料、及び中空ビーズの混合比率は、上記(D)成分による美観性を阻害しない程度に抑えることが望ましい。着色顔料及び中空ビーズの合計量は、(A)成分の固形分100重量部に対し、好ましくは30重量部以下、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。着色顔料及び中空ビーズを含まない態様も好適である。
【0040】
本発明水性被覆材は、その形成被膜において吸放湿性を示すものである。吸放湿性は、JIS A6909:2014「建築用仕上塗材」7.29による吸放湿量で測定することができる。本発明被覆材の吸放湿量は、好ましくは20g/m2以上、より好ましくは60g/m2以上、さらに好ましくは70g/m2以上、最も好ましくは80g/m2以上である。
【0041】
本発明の水性被覆材は、主に、壁、天井等の内装面の表面仕上げ材として用いることができるものである。壁、天井等を構成する基材としては、特に限定されないが、例えば、コンクリート、モルタル、スレート板、珪酸カルシウム板、ALC板、押出成型板、石膏ボード、レンガ、磁器タイル、サイディングボード、金属板、合板等が挙げられる。またこれら基材は、何らかの表面処理(シーラー、サーフェーサー、フィラー、パテ等)が施されたものであってもよく、既存塗膜等を有するものであってもよい。
【0042】
水性被覆材の塗付け量は、形成される模様の種類等にもよるが、好ましくは0.1kg/m2以上4kg/m2以下、より好ましくは0.2kg/m2以上3kg/m2以下程度である。このような塗付け量の範囲内で、複数回に分けて塗分けることも可能である。塗装器具としては、特に限定されず、例えば、スプレー、ローラー、コテ、刷毛等が使用できる。塗付時には水等の希釈剤を混合して、粘性を適宜調製することもできる。希釈割合は、好ましくは0重量%以上10重量%以下である。塗装及びその後の乾燥は、好ましくは、0℃以上40℃以下(常温)で行えばよい。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0044】
(実施例1)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合にて各原料を常法にて混合攪拌し、水性被覆材を製造した。
【0045】
シーラー処理を施したスレート板(基材)の上に、水性被覆材(製造後1日保管したもの)をコテを用いて、塗付け量1.5kg/m2で塗装し、試験体を作製した。なお、水性被覆材の製造、保管、及び試験体の作製は、いずれも温度23℃、相対湿度50%の環境下で行った。得られた水性被覆材に対し、次の試験を行った。
【0046】
(1)仕上外観
上記試験体の仕上外観を目視にて評価した。評価は、自然石調の多色感を有するものを「A」、多色感に欠くものを「C」とする3段階評価(A>B>C)で行った。
【0047】
(2)吸放湿性1
上記試験体の側面及び裏面をアルミニウム粘着テープでシールした後、JIS A6909:2014「建築用仕上塗材」7.29の手順によって、吸放湿量(g/m2)を測定した。評価基準は、次の通りである。結果は表2に示す。
A:吸放湿量80g/m2以上
B:吸放湿量70g/m2以上80g/m2未満
C:吸放湿量60g/m2以上70g/m2未満
D:吸放湿量60g/m2未満
【0048】
(3)吸放湿性2
製造後50℃環境下で7日間保管した水性被覆材を用いた以外は、上記吸放湿性1と同様の方法で試験体を作製し、吸放湿量を測定した。結果は表2に示す。
【0049】
(実施例2~11、比較例1~2)
表2に示す配合以外は、実施例1と同様の方法で水性被覆材を製造し、実施例1と同様の試験を行った。結果は表2に示す。
【0050】
【0051】