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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】導電性接着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/35 20180101AFI20220128BHJP
   C09J 7/25 20180101ALI20220128BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220128BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20220128BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20220128BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20220128BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20220128BHJP
   C09J 163/00 20060101ALN20220128BHJP
   C09J 167/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C09J7/35
C09J7/25
C09J201/00
C09J11/04
C09J9/02
H05K1/02 N
H01B1/22 D
C09J163/00
C09J167/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020098261
(22)【出願日】2020-06-05
(62)【分割の表示】P 2020503827の分割
【原出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2020147759
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2020-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2018198274
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青柳 慶彦
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/010101(WO,A1)
【文献】特開2015-210927(JP,A)
【文献】国際公開第2016/190278(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/030237(WO,A1)
【文献】特許第6719036(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー成分として熱硬化性樹脂を含有し、貯蔵弾性率のピークトップ温度を90~120℃に有し、貼付面の最大高さ粗さ(Rp)が20μm以下であり、貼付面の平均算術表面粗さRaが0.1μm以上であり、150~180℃で硬化し得る、導電性接着シート。
【請求項2】
属粒子を含む請求項1に記載の導電性接着シート。
【請求項3】
前記バインダー成分がエポキシ樹脂及びウレタン変性ポリエステル樹脂を含む請求項2に記載の導電性接着シート。
【請求項4】
可塑剤をさらに含む請求項2又は3に記載の導電性接着シート。
【請求項5】
有機リン系難燃剤をさらに含む請求項2~4のいずれか1項に記載の導電性接着シート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性接着シートを有するシールドフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性接着シートに関する。より詳細には、本発明は、プリント配線基板に接着して使用される電磁波シールドフィルムに用いられる導電性接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板においては、導電性接着剤が多用される。例えば、プリント配線基板に接着して使用される電磁波シールドフィルム(以下、単に「シールドフィルム」と称する場合がある)は、金属箔などのシールド層と当該シールド層の表面に設けられた導電性接着シートとを有する。導電性接着シートは、例えばシールド層の表面に導電性接着剤をシート状に塗工して形成され、シールド層をプリント配線基板の表面に接着すると共に、プリント配線基板のグランドパターンとシールド層とを導通させる。
【0003】
このような導電性接着シートは、プリント配線基板の表面に設けられた絶縁フィルム(カバーレイ)と強固に密着すると共に、絶縁フィルムに設けられた開口部から露出しているグランドパターンと良好な導通を確保することが求められる。
【0004】
導電性接着シートを有するシールドフィルムとしては、例えば、特許文献1及び2に開示のものが知られている。上記シールドフィルムは、導電性接着シートが露出した表面が、プリント配線基板表面、具体的にはプリント配線基板の表面に設けられたカバーレイ表面と貼着するように貼り合わせて使用される。
【0005】
なお、シールドフィルムをプリント配線基板に貼り合わせる際、導電性接着層とプリント配線基板とをラミネート等により仮に貼り付けて(「仮止め」、「仮貼り」などと称する場合がある)積層体を作製した後に、この積層体を高温(例えば150~180℃)に加熱し、加圧して、導電性接着層の硬化(「本硬化」と称する場合がある)を行うことがある。このように仮止めを行う場合、仮止め時において接着強度が弱いと、本硬化工程までの間に、シールドフィルムがプリント配線基板に対して位置ズレが生じたり、プリント配線基板から脱落することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-110769号公報
【文献】特開2012-28334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導電性接着シートを有するシールドフィルムとしては、例えば、転写フィルム/絶縁層(保護層)/金属層/導電性接着シート(導電性接着層)/セパレートフィルム(剥離基材)の積層構造からなるフィルムが知られている。このようなシールドフィルムの作製には、通常、セパレートフィルム上に導電性接着剤組成物を塗工して導電性接着層を形成して一旦[セパレートフィルム/導電性接着層]の積層構造を有する積層体を作製し、この積層体と[転写フィルム/絶縁層/金属層]の積層構造を有する積層体とを、導電性接着層と金属層とが接着するように貼り合わせて作製する、いわゆるラミネート法が採用される。
【0008】
しかしながら、ラミネート法は二つの積層体を別々に作製し、その後作製した積層体同士を貼り合わせるという多段階の工程が必要となる。一方、二つの積層体を別々に作製することなく、シールドフィルムを構成する各層を順次積層していく方法が知られている。この方法では、金属層などのシールド層上に直接導電性接着剤組成物を塗工して導電性接着層を形成する、いわゆるダイレクトコート法が採用される。
【0009】
なお、シールドフィルムをプリント配線基板に貼り合わせる際、上述のようにシールドフィルムの導電性接着層面がプリント配線基板との貼り合わせ面となる。ここで、シールドフィルムの導電性接着層表面の平滑性が高いほどプリント配線基板との密着性に優れる。ラミネート法により作製されたシールドフィルムにおける導電性接着層は、セパレートフィルム上に導電性接着剤組成物を塗布して形成された層であるため、配線基板との貼り合わせ面となる導電性接着層表面はセパレートフィルムの表面形状が転写された形状となり、すなわち表面の平滑性が高い導電性接着層を形成することが容易であり、プリント配線基板との密着性に優れる傾向がある。
【0010】
一方、ダイレクトコート法により作製されたシールドフィルムにおける導電性接着層表面は、セパレートフィルムの表面形状が転写された形状とはならず、通常、導電性接着層に配合された導電性粒子の表面の一部が導電性接着層表面から露出し、凹凸形状となりやすい。このため、ダイレクトコート法により作製されたシールドフィルムは、プリント配線基板との貼り合わせ面となる導電性接着層表面の平滑性が低く、プリント配線基板との密着性が劣る傾向があった。特に、仮止めを行う場合、シールドフィルムがプリント配線基板に対して位置ズレが生じやすかったり、プリント配線基板から脱落しやすい、すなわち仮止め性が劣るという問題があった。
【0011】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、表面の平滑性が低くても仮止め性が良好な導電性接着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、貯蔵弾性率のピークトップ温度が120℃以下であり、貼付面の平均算術表面粗さRaが0.1μm以上である導電性接着シートによれば、表面の平滑性が低くても仮止め性が良好な導電性接着シートが得られることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成させたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、貯蔵弾性率のピークトップ温度が120℃以下であり、貼付面の平均算術表面粗さRaが0.1μm以上である導電性接着シートを提供する。
【0014】
上記導電性接着シートは、バインダー成分及び金属粒子を含むことが好ましい。
【0015】
上記バインダー成分はエポキシ樹脂及びウレタン変性ポリエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0016】
上記導電性接着シートは、可塑剤をさらに含むことが好ましい。
【0017】
上記導電性接着シートは、有機リン系難燃剤をさらに含むことが好ましい。
【0018】
また、本発明は、上記導電性接着シートを有するシールドフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電性接着シートによれば、表面の平滑性が低くても仮止め性が良好となる。このため、例えば生産性に優れるダイレクトコート法によりシールドフィルムを作製した場合であっても、シールドフィルムとプリント配線基板の仮止め性が良好であり、仮止め時の位置ズレやプリント配線基板からの脱落が起こりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の導電性接着シートを有するシールドフィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図2】シールドフィルムとプリント配線基板との仮止め状態の一実施形態を示す模式断面図である。
図3】シールドフィルムとプリント配線基板とが本硬化により接着して形成されるシールド配線基板の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の導電性接着シートは、貯蔵弾性率のピークトップ温度が120℃以下である。すなわち、本発明の導電性接着シートは、貯蔵弾性率のピークトップを120℃以下に有する。上記ピークトップ温度は、好ましくは115℃以下、より好ましくは110℃以下である。上記ピークトップ温度は、例えば40℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上である。貯蔵弾性率のピークトップ温度が120℃以下であることにより、本発明の導電性接着シートは仮止め時の環境下において柔軟性が高く、プリント配線基板との貼り合わせ面の平滑性が低くても、プリント配線基板との密着性が良好であり、仮止め性に優れる。具体的には、導電性接着シートが貼り合わせられるプリント配線基板表面には、絶縁フィルム(カバーレイ)面と、絶縁フィルムに設けられた開口部から露出しているグランドパターン面とが存在し、絶縁フィルム面とグランドパターン面の間には絶縁フィルムの厚さ分の段差が存在する。このようなプリント配線基板に対しても本発明の導電性接着シートは、絶縁フィルムとの仮止め性に優れ、且つ本硬化では接着剤が絶縁フィルムに設けられた開口部を充分に埋め込むことができ、グランドパターン面との接着性にも優れる。また、貯蔵弾性率のピークトップ温度が40℃以上であると、室温付近の環境下での接着剤の硬化が起こりにくく、導電性接着シートの保存安定性が良好となる。
【0022】
本発明の導電性接着シートの貼付面(プリント配線基板に貼り合わせられる側の面)の平均算術表面粗さ(Ra)は、0.1μm以上であり、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、1.5μm以上であってもよい。本発明の導電性接着シートは、Raが0.1μm以上であると、プリント配線基板と導電性接着シートとの仮止め性が良好である。また、上記Raは、5μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下である。上記Raが5μm以下であると、プリント配線基板と導電性接着シートとの仮止め性がより良好となる。
【0023】
本発明の導電性接着シートの貼付面(プリント配線基板に貼り合わせられる側の面)の最大高さ粗さ(Rp)は、特に限定されないが、20μm以下であることが好ましく、より好ましくは15μm以下である。上記Rpが20μm以下であると、プリント配線基板と導電性接着シートとの仮止め性がより良好となる。なお、本発明の導電性接着シートは、表面の平滑性が低い場合であってもプリント配線基板と導電性接着シートとの仮止め性が良好である観点から、上記Rpは、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよい。
【0024】
なお、本明細書において「接着シート」とは、接着性を有するシート状のものをいい、例えば接着テープ、接着フィルム、接着層のいずれも「接着シート」に該当するものとする。
【0025】
本発明の導電性接着シートは、バインダー成分及び導電性粒子を少なくとも含むことが好ましい。上記バインダー成分及び上記導電性粒子はそれぞれ、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0026】
上記バインダー成分としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、活性エネルギー線硬化性化合物などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0027】
上記熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂などが挙げられる。上記熱硬化性樹脂は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0028】
上記エポキシ系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノール型エポキシ系樹脂、スピロ環型エポキシ系樹脂、ナフタレン型エポキシ系樹脂、ビフェニル型エポキシ系樹脂、テルペン型エポキシ系樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ系樹脂、グリシジルアミン型エポキシ系樹脂、ノボラック型エポキシ系樹脂などが挙げられる。
【0029】
上記ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロムビスフェノールA型エポキシ樹脂などが挙げられる。上記グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、トリス(グリシジルオキシフェニル)メタン、テトラキス(グリシジルオキシフェニル)エタンなどが挙げられる。上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えばテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。上記ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0030】
上記エポキシ樹脂としては、中でも、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、より好ましくはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。
【0031】
上記熱硬化性樹脂は、例えば、反応性の第1官能基を有する第1樹脂と、第1官能基と反応し得る第2官能基を有する第2樹脂とを含むことが好ましい。なお、第1官能基及び第2官能基の両方を有する樹脂を含んでいてもよい。第1官能基としては、例えば、エポキシ基、アミド基、水酸基などが挙げられる。第2官能基としては、第1官能基に応じて選択すればよく、例えば、第1官能基がエポキシ基である場合、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、アミノ基などとすることができる。具体的には、例えば、第1樹脂がエポキシ樹脂である場合、第2樹脂としては、エポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂などを用いることができる。中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0032】
また、第1官能基が水酸基である場合、第2樹脂としては、エポキシ基変性ポリエステル樹脂、エポキシ基変性ポリアミド樹脂、エポキシ基変性アクリル樹脂、エポキシ基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性アクリル樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂などを用いることができる。中でも、カルボキシル基変性ポリエステル樹脂、カルボキシル基変性ポリアミド樹脂、カルボキシル基変性ポリウレタンポリウレア樹脂、ウレタン変性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0033】
活性エネルギー線硬化性化合物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個のラジカル反応性基(例えば、(メタ)アクリロイル基)を有する重合性化合物などが挙げられる。上記活性エネルギー線硬化性化合物は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0034】
上記バインダー成分としては、中でも、熱硬化性樹脂が好ましく、より好ましくはエポキシ樹脂とウレタン変性ポリエステル樹脂である。この場合、シールドフィルムとプリント配線基板との仮止め性により優れ、且つ、本硬化の際は熱硬化によりシールドフィルムとプリント配線基板の接着性・密着性により優れる。さらに、高温高湿下における接着信頼性にも優れる。
【0035】
上記バインダー成分が熱硬化性樹脂を含む場合、上記バインダー成分を構成する成分として、熱硬化反応を促進するための硬化剤を含んでいてもよい。熱硬化性樹脂が第1官能基及び第2官能基を有する場合、硬化剤は、第1官能基及び第2官能基の種類に応じて適宜選択することができる。第1官能基がエポキシ基であり、第2官能基が水酸基である場合は、イソシアネート系硬化剤、フェノール系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、アミン系硬化剤、カチオン系硬化剤などを使用することができる。上記硬化剤は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0036】
本発明の導電性接着シートにおけるバインダー成分の含有割合は、特に限定されないが、本発明の導電性接着シートの総量100質量%に対して、5~60質量%が好ましく、より好ましくは10~50質量%、さらに好ましくは20~40質量%である。上記含有割合が5質量%以上であると、仮止め性により優れる。上記含有割合が60質量%以下であると、導電性粒子を充分に含有させることができる。
【0037】
バインダー成分が第1樹脂及び第2樹脂を含む場合、本発明の導電性接着シートにおける第1樹脂の含有割合は、特に限定されないが、本発明の導電性接着シートの総量100質量%に対して、0.05~20質量%が好ましく、より好ましくは0.5~10質量%、さらに好ましくは1~5質量%である。また、この場合の本発明の導電性接着シートにおける第2樹脂の含有割合は、特に限定されないが、本発明の導電性接着シートの総量100質量%に対して、5~50質量%が好ましく、より好ましくは10~40質量%、さらに好ましくは15~30質量%である。第1樹脂及び第2樹脂の含有割合がそれぞれ上記範囲内であると、導電性接着シートの貯蔵弾性率のピークトップ温度をより容易に120℃以下とすることができる。
【0038】
バインダー成分が第1樹脂及び第2樹脂を含む場合、本発明の導電性接着シートにおける硬化剤の含有量は、第1樹脂と第2樹脂の総量100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、より好ましくは0.05~1質量部、さらに好ましくは0.1~0.5質量部である。上記含有量が上記範囲内であると、第1樹脂と第2樹脂との硬化を適度に促進させることができ、導電性接着シートの貯蔵弾性率のピークトップ温度をより容易に120℃以下とすることができる。
【0039】
上記導電性粒子としては、例えば、金属粒子、金属被覆樹脂粒子、カーボンフィラーなどが挙げられる。上記導電性粒子は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0040】
上記金属粒子及び上記金属被覆樹脂粒子の被覆部を構成する金属としては、例えば、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛などが挙げられる。上記金属は一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0041】
上記金属粒子としては、具体的には、例えば、銅粒子、銀粒子、ニッケル粒子、銀被覆銅粒子、金被覆銅粒子、銀被覆ニッケル粒子、金被覆ニッケル粒子、銀被覆合金粒子などが挙げられる。上記銀被覆合金粒子としては、例えば、銅を含む合金粒子(例えば、銅とニッケルと亜鉛との合金からなる銅合金粒子)が銀により被覆された銀被覆銅合金粒子などが挙げられる。上記金属粒子は、電解法、アトマイズ法、還元法などにより作製することができる。
【0042】
上記金属粒子としては、中でも、銀粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。導電性に優れ、金属粒子の酸化及び凝集を抑制し、且つ金属粒子のコストを下げることができる観点から、特に、銀被覆銅粒子、銀被覆銅合金粒子が好ましい。
【0043】
上記導電性粒子の形状としては、球状、フレーク状(鱗片状)、樹枝状、繊維状、不定形(多面体)などが挙げられる。中でも、導電性接着シートの抵抗値がより低く、シールド性がより良好となる観点から、フレーク状が好ましい。
【0044】
上記導電性粒子の平均粒径(D50)は、1~50μmであることが好ましく、より好ましくは3~40μmである。上記平均粒径が1μm以上であると、導電性粒子の分散性が良好で凝集が抑制でき、また酸化されにくい。上記平均粒径が50μm以下であると、グランドパターンとの接続性が良好となる。
【0045】
本発明の導電性接着シートにおける導電性粒子の含有割合は、特に限定されないが、本発明の導電性接着シートの総量100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上である。上記含有割合が5質量%以上であると、グランドパターンとの接続性がより良好となる。また、上記導電性粒子の含有割合は、90質量%以下が好ましく、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、特に好ましくは64質量%以下である。上記含有割合が90質量%以下であると、導電性接着シートの貯蔵弾性率のピークトップ温度を120℃以下とすることがより容易となる。なお、導電性接着シートの等方導電性を実現する場合は、上記含有割合は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上である。
【0046】
本発明の導電性接着シートは、難燃剤を含んでいてもよい。上記難燃剤としては、例えば、環境上の問題からノンハロゲン系難燃剤が好ましく、メラミンシアヌレート、ポリリン酸メラミン等の窒素系難燃剤;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水和物;リン酸エステル、赤リン等のリン系難燃剤などが挙げられる。上記難燃剤は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0047】
上記難燃剤としては、中でも、有機リン系難燃剤が好ましい。有機リン系難燃剤を含む場合、難燃性の向上に加え、導電性接着シートにおける接着剤がプリント配線基板における絶縁フィルムに設けられた開口部をよりいっそう充分に埋め込むことができ、本硬化によりグランドパターン面との接着性により優れる。
【0048】
上記有機リン系難燃剤としては、ホスフィン酸金属塩が挙げられる。ホスフィン酸金属塩としては、例えば、トリスジエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスメチルエチルホスフィン酸アルミニウム、トリスジフェニルホスフィン酸アルミニウム、ビスジエチルホスフィン酸亜鉛、ビスメチルエチルホスフィン酸亜鉛、ビスジフェニルホスフィン酸亜鉛、ビスジエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスジエチルホスフィン酸チタン、ビスメチルエチルホスフィン酸チタニル、テトラキスメチルエチルホスフィン酸チタン、ビスジフェニルホスフィン酸チタニル、テトラキスジフェニルホスフィン酸チタンなどが挙げられる。また、ホスフィン酸金属塩(例えば、有機ホスフィン酸のアルミニウム塩)とポリリン酸メラミンとのブレンドを用いてもよい。
【0049】
本発明の導電性接着シートにおける難燃剤(特に、有機リン系難燃剤)の含有割合は、特に限定されないが、本発明の導電性接着シートの総量100質量%に対して、0.5~30質量%が好ましく、より好ましくは1~25質量%、さらに好ましくは5~20質量%である。上記含有割合が0.5質量%以上であると、難燃性がより良好となり、VTM-0を実現することができる。上記含有割合が30質量%以下であると、導電性接着シートのバルク強度を高く維持でき、仮止め性やプリント配線基板の接着性により優れる。また、等方導電性を実現しやすい。
【0050】
本発明の導電性接着シートは、可塑剤を含むことが好ましい。可塑剤を含む場合、導電性接着シートの貯蔵弾性率のピークトップ温度が可塑剤を含まない場合に対して低くなる傾向があり、貯蔵弾性率のピークトップ温度を120℃以下とすることが容易となる。上記可塑剤は、一種のみを使用してもよく、二種以上を使用してもよい。
【0051】
上記可塑剤としては、例えば、フタル酸系可塑剤、脂肪酸系可塑剤、リン酸系可塑剤、エポキシ系可塑剤、ポリエステル系可塑剤などが挙げられる。中でも、導電性接着シートの仮止め性に優れ、且つ耐熱性に優れる観点から、エポキシ系可塑剤が好ましい。
【0052】
上記エポキシ系可塑剤としては、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化あまに油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化油系等のエポキシ化不飽和油脂;エポキシ化あまに油脂肪酸ブチル、オクチルエポキシステアレート、エポキシブチルステアレート、エポキシ化脂肪酸モノエステル、エポキシ化オレイン酸オクチルエステル、エポキシ化オレイン酸デシルエステル、エポキシモノエステル、アルキルエポキシステアレート、n-アルキルエポキシステアレート、イソアルキルエポキシステアレート等のエポキシ化不飽和脂肪酸エステル;エポキシヘキサヒドロフタル酸ジ-2-エチルヘキシル、エポキシヘキサヒドロフタル酸ジイソデシル、シクロアルキルエポキシステアレート等のエポキシシクロヘキサン誘導体;エピクロルヒドリン誘導体などが挙げられる。
【0053】
本発明の導電性接着シートにおける可塑剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の導電性接着シート中のバインダー成分の総量100質量部に対して、0.5~50質量部が好ましく、より好ましくは3~30質量部、さらに好ましくは5~15質量部、特に好ましくは6~10質量部である。上記含有量が0.5質量部以上であると、可塑剤による効果が充分に発現し、導電性接着シートの貯蔵弾性率のピークトップ温度を120℃以下とすることがより容易となる。上記含有量が50質量部以下であると、開口部への埋め込み性がより良好となり、また、難燃剤がブリードアウトすることを防止することができる。
【0054】
本発明の導電性接着シートは、本発明の効果を損なわない範囲内において、上記の各成分以外のその他の成分を含有していてもよい。上記その他の成分としては、公知乃至慣用の接着シートに含まれる成分が挙げられる。上記その他の成分としては、例えば、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、希釈剤、沈降防止剤、充填剤、着色剤、レベリング剤、カップリング剤、粘着付与樹脂などが挙げられる。上記その他の成分は、一種のみを使用してもよいし、二種以上を使用してもよい。
【0055】
本発明の導電性接着シートは、等方導電性を有することが好ましい。
【0056】
本発明の導電性接着シートの厚みは、用途に応じて適宜選択することができる。上記厚みは、本発明の導電性接着シートはシールドフィルムに用いるのに適する観点から、例えば1~50μm、好ましくは5~25μmである。厚みが1μm以上であると、プリント配線基板の絶縁フィルムに設けられた開口部への埋め込み性がより良好となる。厚みが50μm以下であると、薄膜化の要求に応えることができる。また、本発明の導電性接着シートをボンディングフィルム(例えば補強板とプリント配線板とのボンディングフィルム)に用いるのに適する観点からは、例えば10~70μm、好ましくは30~65μmである。
【0057】
本発明の導電性接着シートの、下記仮止め性試験により求められる、ポリイミドフィルムに対する剥離力は、特に限定されないが、0.5N/10mm以上であることが好ましく、より好ましくは1N/10mm以上、さらに好ましくは3N/10mm以上である。上記剥離力が0.5N/10mm以上であると、導電性接着シートとプリント配線基板との仮止め性がより良好となる。
[仮止め性試験]
セパレートフィルム上に形成された導電性接着シート面とポリイミドフィルムとを、プレス機を用いて温度:120℃、時間:5秒、圧力:0.5MPaの条件で加熱加圧し、仮止めする。次いで、導電性接着シートが接着されたポリイミドフィルムの反対面側を両面テープにより補強板に固定し、常温で引張速度50mm/分、剥離角度180°にて剥離し、剥離時のピール強度の最大値を測定する。
【0058】
本発明の導電性接着シートの、下記導電性試験により求められる抵抗値は、特に限定されないが、500mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは300mΩ以下、さらに好ましくは100mΩ以下である。上記抵抗値が500mΩ以下であると、プリント配線基板のグランドパターンと導電性接着シートとの導通性が良好となる。
[導電性試験]
プリント配線基板として、ポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、グランドパターンを疑似した2本の銅箔パターンが形成され、その上に絶縁性の接着剤層及びポリイミドフィルムからなるカバーレイが形成されたプリント配線基板を用いる。銅箔パターンの表面には表面層として金めっき層を設ける。カバーレイには、直径0.8mmのグランド接続部を模擬した円形開口部が形成されている。そして、導電性接着シートとプリント配線基板とを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:30分、圧力:2~3MPaの条件で接着した後、2本の銅箔パターン間の電気抵抗値を抵抗計で測定して抵抗値とする。
【0059】
本発明の導電性接着シートの、下記接着性試験により求められるポリイミドフィルムに対する剥離力は、特に限定されないが、3N/10mm以上であることが好ましく、より好ましくは3.5N/10mm以上、さらに好ましくは5N/10mm以上である。上記剥離力が3N/10mm以上であると、本硬化後の導電性接着シートとプリント配線基板との接着性がより良好となる。
[接着性試験]
セパレートフィルム上に形成された導電性接着シート面とポリイミドフィルムとを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:3分、圧力:2~3MPaの条件で加熱加圧し、セパレートフィルムをはがし、露出した面に熱硬化性ボンディングフィルムを仮止めする。ボンディングフィルムの反対面にも、ポリイミドフィルムを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:3分、圧力:2~3MPaの条件で加熱接着し、さらに150℃で1時間加熱する。次いで、導電性接着シートが接着されたポリイミドフィルムの反対面側を両面テープにより補強板に固定し、常温で引張速度50mm/分、剥離角度180°にて剥離し、剥離時のピール強度の最大値を測定する。
【0060】
本発明の導電性接着シートの、下記接着性試験により求められる電解ニッケル金めっき箔に対する剥離力は、特に限定されないが、2N/10mm以上であることが好ましく、より好ましくは3N/10mm以上である。上記剥離力が2N/10mm以上であると、本硬化後の導電性接着シートとプリント配線基板との接着性がより良好となる。
[接着性試験]
セパレートフィルム上に形成された導電性接着シート面と、銅箔積層フィルム(銅箔とポリイミドフィルムの積層体)の銅箔の表面に電解ニッケル金めっき箔を形成した積層フィルムの電解ニッケル金めっき箔面とを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:3分、圧力:2~3MPaの条件で加熱加圧し、セパレートフィルムをはがし、露出した面に熱硬化性ボンディングフィルムを仮止めする。ボンディングフィルムの反対面にも、上記積層フィルムと同じ積層フィルムの電解ニッケル金めっき箔面を、プレス機を用いて温度:170℃、時間:3分、圧力:2~3MPaの条件で加熱接着し、さらに150℃で1時間加熱する。次いで、導電性接着シートが接着された電解ニッケル金めっき箔の反対面側を両面テープにより補強板に固定し、常温で引張速度50mm/分、剥離角度180°にて剥離し、剥離時のピール強度の最大値を測定する。
【0061】
本発明の導電性接着シートの、温度85℃、湿度85%RHの環境下に1000時間放置した後の下記導電性試験により求められる抵抗値は、特に限定されないが、1200mΩ以下であることが好ましく、より好ましくは800mΩ以下、さらに好ましくは500mΩ以下である。上記抵抗値が1200mΩ以下であると、高温高湿下における保存性に優れ、プリント配線基板のグランドパターンと導電性接着シートとの接着信頼性に優れる。
[導電性試験]
プリント配線基板として、ポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、グランドパターンを疑似した2本の銅箔パターンが形成され、その上に絶縁性の接着剤層及びポリイミドフィルムからなるカバーレイが形成されたプリント配線基板を用いる。銅箔パターンの表面には表面層として金めっき層を設ける。カバーレイには、直径0.8mmのグランド接続部を模擬した円形開口部が形成されている。そして、導電性接着シートとプリント配線基板とを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:30分、圧力:2~3MPaの条件で接着した後、2本の銅箔パターン間の電気抵抗値を抵抗計で測定して抵抗値とする。
【0062】
本発明の導電性接着シートは、公知乃至慣用の製造方法により製造することができる。例えば、セパレートフィルムなどの仮基材又は基材上に、導電性接着シートを形成する接着剤組成物を塗布(塗工)し、必要に応じて、脱溶媒及び/又は一部硬化させて形成することが挙げられる。
【0063】
上記接着剤組成物は、例えば、上述の導電性接着シートに含まれる各成分に加え、溶剤(溶媒)を含む。溶剤としては、例えば、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。接着剤組成物の固形分濃度は、形成する導電性接着シートの厚さなどに応じて適宜設定される。
【0064】
上記接着剤組成物の塗布には、公知のコーティング法が用いられてもよい。例えば、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、リップコーターディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーター、スロットダイコーターなどのコーターが用いられてもよい。
【0065】
本発明の導電性接着シートはプリント配線基板との仮止め性に優れるためシールドフィルムに用いることができる。図1は、本発明の導電性接着シートを有するシールドフィルムの一実施形態を示す模式断面図である。図1に示すシールドフィルム1は、転写フィルム11、絶縁層(保護層)12、金属層13、導電性接着シート(導電性接着層)14、及びセパレートフィルム15をこの順に有する。なお、シールドフィルム1において、導電性接着シート14は本発明の導電性接着シートである。
【0066】
シールドフィルム1はプリント配線基板表面に貼り合わせて使用される。図2は、シールドフィルムをプリント配線基板表面に貼り付けた仮止め状態の一実施形態を示す模式断面図である。図2に示す積層体Xでは、シールドフィルム1のセパレートフィルム15を剥離して露出した導電性接着シート14面と、プリント配線基板2の絶縁フィルム(カバーレイ)23面とが貼り合わせられ、シールドフィルム1とプリント配線基板2とが仮止めされている。
【0067】
プリント配線基板2は、基板本体21と、基板本体21の一方の面の一部に設けられたグランドパターン22を含む回路パターンと、グランドパターン22の一部を覆うように設けられた絶縁フィルム(カバーレイ)23とを有する。絶縁フィルム23は、グランドパターン22の一部を露出させるための開口部23aを有する。グランドパターン22は、開口部23aにグランド接続部22aを有する。
【0068】
シールドフィルム1から転写フィルム11が剥離され、露出した絶縁層12表面を加圧しながら加熱することで、導電性接着シート14は、図2に示す仮止め状態から例えば加熱により本硬化されて接着層14’となり、シールドフィルムはプリント配線基板2に接着する。なお、本硬化により、導電性接着シート14は絶縁フィルム23と接着し、さらに、導電性接着シート14を構成する接着剤が開口部23aを埋め込み、開口部23aに上記接着剤が充填されてグランドパターン22と接着し、図3に示すシールド配線基板Yを形成する。導電性接着シート14を構成する接着剤が開口部23aに充填されることで、グランドパターン22と金属層13とが導通する。本硬化における加圧条件及び加熱条件は、導電性接着シートの種類により適宜設定される。
【0069】
なお、図1~3を用いて、本発明の導電性接着シートが金属層を有するシールドフィルムに用いられる例を説明したが、本発明の導電性接着シートは、金属層を有しないシールドフィルムに用いられてもよい。
【0070】
本発明の導電性接着シートを備えたシールドフィルムは、本発明の導電性接着シートを、転写フィルム、絶縁層、及び金属層をこの順に有する積層体の金属層表面、あるいは、金属層を有しない場合は転写フィルム及び絶縁層をこの順に有する積層体の絶縁層表面に、直接形成することにより得てもよいし(ダイレクトコート法)、いったんセパレートフィルム上に本発明の導電性接着シートを形成した後、上記金属層表面あるいは絶縁層表面に転写する(貼り合わせる)ことにより、金属層上あるいは絶縁層上に本発明の導電性接着シートを設けることにより得てもよい(ラミネート法)。本発明の導電性接着シートは平滑性が低くてもプリント配線基板との仮止め性に優れるため、貼り合わせ面が平滑となりやすいラミネート法はもちろん、ダイレクトコート法でも作製することできる。また、ラミネート法では一旦セパレートフィルムに導電性接着シートを形成して転写する必要があるため生産性が劣ったり、厚みばらつきが生じることがあるが、ダイレクトコート法によればこのような問題を解消することができ、すなわち生産性に優れ、厚みばらつきを抑制することができる。
【0071】
なお、ラミネート法による場合、シールドフィルムの導電性接着シート表面にはセパレートフィルムを有することとなるが、ダイレクトコート法による場合も、必要に応じて、導電性接着シートの表面にセパレートフィルムを貼り合わせてもよい。セパレートフィルムは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のベースフィルム上に、シリコーン系、フッ素系等の離型剤を、導電性接着シートと接触する側の表面に塗布されたものを使用することができる。
【0072】
本発明の導電性接着シートは、シールドフィルムに限らず、フレキシブルプリント配線基板への導電性(金属)補強板の取付けに用いることもできる。
【実施例
【0073】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の相対的な配合量であり、特記しない限り「質量部」で表す。また、「可塑剤の含有量(PHR)」は、バインダー成分100質量部に対する可塑剤の含有量(質量部)を示す。
【0074】
実施例1~2、比較例1
トルエンとメチルエチルケトンの混合溶剤(体積比40:60)240質量部に、表に記した各成分を配合して混合し、実施例及び比較例の各接着剤組成物を調製した(固形分42質量%)。使用した各成分の詳細は以下の通りである。
【0075】
ウレタン変性ポリエステル樹脂:東洋紡(株)製、商品名「バイロン UR-3600」
有機リン系難燃剤:クラリアントケミカルズ(株)製、商品名「Exolit OP935」
エポキシ樹脂:日本化薬(株)製、商品名「NC-2000-L」
エポキシ系可塑剤:(株)ADEKA製、商品名「アデカサイザー O130P」
【0076】
表面が離型剤処理されたPETフィルム(厚み25μm)の表面に、保護層用樹脂組成物を、ワイヤーバーを用いて塗布し、加熱乾燥することで、厚み5μmの保護層を形成した。次いで、圧延加工により作製した厚み2μmの銅箔を、保護層の表面に貼り合わせた。次いで、上記接着剤組成物を、ワイヤーバーにより、圧延銅箔の表面に塗布した後、100℃×3分の乾燥を行うことにより、導電性接着シートを有するシールドフィルムを作製した。
【0077】
なお、保護層用樹脂組成物の配合は、ビスフェノールA型エポキシ系樹脂(三菱ケミカル(株)製、商品名「JER1256」)を100質量部、硬化剤(三菱ケミカル(株)製、商品名「ST14」)を0.1質量部、黒色系着色剤としてカーボン粒子(東海カーボン(株)製、商品名「トーカブラック#8300/F」)を15質量部、溶剤としてトルエンを460質量部とした。
【0078】
参考例1
市販のシールドフィルム(タツタ電線(株)製、商品名「PC6000U1」)を用いた。
【0079】
(評価)
実施例、比較例、及び参考例で得られた各シールドフィルムの導電性接着シートについて以下の通り評価した。評価結果は表に記載した。
【0080】
(1)表面状態
シールドフィルムにおける導電性接着シート表面について、コンフォーカル顕微鏡(Lasertec社製、OPTELICS HYBRID、対物レンズ20倍)を用いて、導電性接着シート表面の任意の5か所を測定した後、データ解析ソフト(LMeye7)を用い、JIS B 0601:2013に準拠してRa及びRpを測定した(カットオフ波長λcは0.8mmとした)。なお、参考例1のシールドフィルムについては、セパレートフィルムを剥離して露出する導電性接着シート表面について測定を行った。
【0081】
(2)貯蔵弾性率
シールドフィルムにおける導電性接着シートについて、Anton Paar社製の「Modular Compact Rheometer(MCR) 300」を用いて貯蔵弾性率を測定した。
【0082】
(3)仮止め性
シールドフィルムの導電性接着シート面とポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名「カプトン100H」、厚み:25μm)とを、小型プレス機を用いて温度:120℃、時間:5秒、圧力:0.5MPaの条件で加熱加圧し仮止めした。そして、シールドフィルムを貼り付けたポリイミドフィルムの、ポリイミドフィルム側の表面に、両面テープを施した補強板を貼り付け、シールドフィルムの転写フィルム側を常温で引張試験機((株)島津製作所製、商品名「AGS-X50S」)を用い、引張速度50mm/分、剥離角度180°にて剥離し、剥離時のピール強度の最大値を測定した。
【0083】
(4)接着性(ポリイミドフィルム)
シールドフィルムの導電性接着シート面とポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名「カプトン100H」、厚み:25μm)とを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:3分、圧力:2~3MPaの条件で加熱加圧し、転写フィルムをはがし、保護層面に熱硬化性ボンディングフィルムを仮止めした。ボンディングフィルムの反対面にも、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製、商品名「カプトン100H」、厚み:25μm)を、プレス機を用いて温度:170℃、時間:3分、圧力:2~3MPaの条件で加熱接着し、さらに150℃で1時間加熱した。次いで、シールドフィルムが接着されたポリイミドフィルムの反対面側を両面テープにより補強板に固定し、常温で引張試験機((株)島津製作所製、商品名「AGS-X50S」)を用い、引張速度50mm/分、剥離角度180°にて剥離し、剥離時のピール強度の最大値を測定した。
【0084】
(5)接着性(電解ニッケル金めっき箔)
2つのポリイミドフィルムの代わりに、銅箔積層フィルム(銅箔とポリイミドフィルムの積層体)の銅箔の表面に電解ニッケル金めっき箔(ENIG)(厚み:0.1μm)を形成した積層フィルムを用い、電解ニッケル金めっき箔面を貼付面としたこと以外は上記(4)接着性の評価と同様にして評価した。
【0085】
(6)接続抵抗値
ポリイミドフィルムからなるベース部材の上に、グランドパターンを疑似した2本の銅箔パターンが形成され、その上に絶縁性の接着剤層及びポリイミドフィルムからなるカバーレイ(絶縁フィルム)が形成されたプリント配線基板を準備した。銅箔パターンの表面には表面層として金めっき層を設けた。なお、カバーレイには、直径aのグランド接続部を模擬した円形開口部を形成した。各実施例及び比較例において作製したシールドフィルム、又は参考例のシールドフィルムとプリント配線基板とを、プレス機を用いて温度:170℃、時間:30分、圧力:2~3MPaの条件で接着した。シールドフィルムを接着した後、2本の銅箔パターン間の電気抵抗値を抵抗計で測定し、銅箔パターンと導電性接着シートとの接続性を評価し、接続抵抗値とした。なお、上記直径aが0.5mm、0.8mm、1.0mm、1.4mm、及び1.8mmである場合それぞれについて測定を行った。
【0086】
(7)高温高湿下における接着信頼性
上記(6)接続抵抗値の評価に用いたプリント配線基板と同じものを準備した。なお、カバーレイには、直径0.8mmのグランド接続部を模擬した円形開口部を形成した。各実施例及び比較例において作製したシールドフィルム、又は参考例のシールドフィルムを、温度85℃、湿度85%RHの環境下に1000時間放置した後、プレス機を用いて温度:170℃、時間:30分、圧力:2~3MPaの条件でプリント配線基板に接着した。シールドフィルムを接着した後、2本の銅箔パターン間の電気抵抗値を抵抗計で測定し、銅箔パターンと導電性接着シートとの接続性を評価し、接続抵抗値とした。
【0087】
【表1】
【0088】
貯蔵弾性率のピークトップ温度が120℃以下である本発明の導電性接着シートを有するシールドフィルム(実施例)は、ダイレクトコート法で作製したものであり、導電性接着シート表面の平滑性が比較的低いにも関わらず、仮止め性が良好であり、ポリイミドフィルム及び電解ニッケル金めっき箔に対する接着性が良好であり、且つプリント配線基板との接着後の接続抵抗値も開口部の直径が0.5mm以上では充分に低かった。また、高温高湿下保存後の接着信頼性にも優れていた。一方、貯蔵弾性率が120℃を超える導電性接着シートを有するシールドフィルム(比較例)は、ダイレクトコート法で作製したものであり、仮止め性が不充分であった。なお、参考例のシールドフィルムは導電性接着シートの平滑性が高く、仮止め性が良好であり、ポリイミドフィルム及び電解ニッケル金めっき箔に対する接着性も良好であったが、高温高湿下保存後の接着信頼性には劣っていた。
【符号の説明】
【0089】
1 シールドフィルム
11 転写フィルム
12 絶縁層(保護層)
13 金属層
14 導電性接着シート(導電性接着層)
15 セパレートフィルム
X 積層体
2 プリント配線基板
21 基板本体
22 グランドパターン
22a グランド接続部
23 絶縁フィルム(カバーレイ)
23a 開口部
Y シールド配線基板
14’ 接着層
図1
図2
図3