(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】中空粒子及びその用途
(51)【国際特許分類】
C08G 59/34 20060101AFI20220107BHJP
C08G 59/50 20060101ALI20220107BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20220107BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20220107BHJP
C08J 3/22 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08G59/34
C08G59/50
C09D201/00
C09D7/65
C08J3/22 CFC
(21)【出願番号】P 2020112315
(22)【出願日】2020-06-30
(62)【分割の表示】P 2018506747の分割
【原出願日】2016-07-07
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】P 2016057134
(32)【優先日】2016-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 悠吾
(72)【発明者】
【氏名】松浦 春彦
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-032719(JP,A)
【文献】特開2007-075698(JP,A)
【文献】特開2007-291359(JP,A)
【文献】国際公開第2005/097870(WO,A1)
【文献】特開2009-242475(JP,A)
【文献】特開2006-089648(JP,A)
【文献】特開2005-213366(JP,A)
【文献】特開2008-107792(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0071646(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有する中空粒子であり、
前記少なくとも一つ以上の層が、屈折率が1.57以下の窒素原子を含有する樹脂を含有し、
前記窒素原子を含有する樹脂が、ポリアミン系化合物由来の成分により架橋された窒素原子を含有するビニル系樹脂であり、
前記窒素原子を含有する樹脂が、XPSでの測定において、0.03≦N/C≦0.2の関係を満たす窒素原子の存在比Nと炭素原子の存在比Cとを有する中空粒子。
【請求項2】
前記窒素原子を含有する樹脂が、ケイ素成分を含有する有機-無機ハイブリッド樹脂である請求項
1に記載の中空粒子。
【請求項3】
前記ケイ素成分を含有する有機-無機ハイブリッド樹脂が、XPSでの測定において、0.001≦Si/C≦0.1の関係を満たすケイ素原子の存在比Siと炭素原子の存在比Cとを有する請求項
2に記載の中空粒子。
【請求項4】
前記中空粒子が、10~150nmの平均粒子径を有する請求項1~
3のいずれかに記載の中空粒子。
【請求項5】
少なくとも一つ以上のアニオン性基を有する化合物で処理された表面を有する請求項1~
4のいずれかに記載の中空粒子。
【請求項6】
前記アニオン性基を有する化合物が、塩酸、オキソ酸から選択される請求項
5に記載の中空粒子。
【請求項7】
前記オキソ酸が、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物から選択される請求項
6に記載の中空粒子。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれかに記載の中空粒子を含有した分散体。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれかに記載の中空粒子を含有したコーティング剤。
【請求項10】
請求項1~
7のいずれかに記載の中空粒子を含有した断熱フィルム。
【請求項11】
請求項1~
7のいずれかに記載の中空粒子と、基材樹脂とを含有したマスターペレット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空粒子及びその用途に関する。更に詳しくは、本発明は、より小さく、単分散性が高くかつ、シェルのピンホールの発生量が少ない中空粒子及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
内部に孔を有する粒子は、その孔に各種の物質を内蔵させることによりマイクロカプセル粒子として使用されている。また、その孔が中空である(シェルで囲われた中空を有する)粒子は、中空粒子と称され、中空粒子は、光学散乱材料、低反射材料、断熱材料等として使用されている。
中空粒子の製造方法としては、例えば、特開2002-80503号公報(特許文献1)や特開2005-215315号公報(特許文献2)に、水溶媒中でラジカル反応性単量体と、ラジカル反応性単量体の重合体に対して相溶性の低い難水溶性の有機溶媒を含む油滴を調製した後、単量体を重合させることで中空粒子を製造する方法が記載されている。
また、国際公開WO2005/097870号(特許文献3)には、単量体と、反応性シランカップリング剤と、非反応性溶媒と、重合開始剤とを含む反応溶液を極性溶媒中に乳化し、重合することで得られる有機-無機ハイブリット中空粒子や、エポキシプレポリマーと非反応性溶媒からなる混合溶液を極性溶媒中に乳化し、ポリアミンを添加した後、重合して得られる中空粒子を、アミン基を有するシランカップリング剤で無機架橋することで得られる有機-無機ハイブリット中空粒子が記載されている。なお、本明細書において、「有機-無機」とは、ケイ素を無機成分とし、ケイ素以外の樹脂を有機成分としていることを意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-80503号公報
【文献】特開2005-215315号公報
【文献】国際公開WO2005/097870号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中空粒子は、光学散乱材料、低反射材料、断熱材料等の用途では、低分子のバインダー成分と共に使用される。
上記3件の特許文献に記載された中空粒子は、シェルに多くのピンホールが発生する。そのため、これら中空粒子を、上記用途に使用すると、バインダー成分が中空内部に浸入しやすい。その結果、中空粒子は、所望の特性(光散乱性、断熱性、光反射性等)を発揮できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして本発明によれば、少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有する中空粒子であり、前記少なくとも一つ以上の層が、屈折率が1.57以下の窒素原子を含有する樹脂を含有することを特徴とする中空粒子が提供される。
また、本発明によれば、前記中空粒子を含有した分散体が提供される。
更に、本発明によれば、前記中空粒子を含有したコーティング剤が提供される。
また、本発明によれば、前記中空粒子を含有した断熱フィルムが提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、小粒径で、単分散性が高く、反射率が低いフィルムを作製するのに適した中空粒子を提供できる。
本発明によれば、下記のいずれかの態様を有する場合、より反射率が低いフィルムを作製するのにより適し、かつ単分散性が高い中空粒子を提供できる。
(1)窒素原子を含有する樹脂が、XPSでの測定において、0.03≦N/C≦0.2の関係を満たす窒素原子の存在比Nと炭素原子の存在比Cとを有する。
(2)窒素原子を含有する樹脂が、ケイ素成分も含有する有機-無機ハイブリッド樹脂である。
(3)中空粒子が、10~150nmの平均粒子径を有する。
(4)窒素原子を含有する樹脂が、ビニル系単量体から構成された窒素原子を含有するビニル系樹脂である。
(5)少なくとも一つ以上のアニオン性基を有する化合物で処理された表面を有する。
(6)アニオン性基を有する化合物が、塩酸、オキソ酸、これら酸の誘導体から選択される。
(7)アニオン性基を有する化合物が、カルボン酸化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
中空粒子は、少なくとも一つ以上の層からなるシェルを有している。シェルを構成する層は、一つからなっていても、二つ以上の複数層(例えば、二つの層、三つの層、四つの層)からなっていてもよい。
少なくとも一つ以上の層は、屈折率が1.57以下の窒素原子を含有する樹脂(以下、N含有樹脂ともいう)を含有している。屈折率が1.57以下のN含有樹脂を含有する層を有する中空粒子は、低屈折率材料として使用した際に、光の進行を妨げ難いので、高い透明性を示す。シェルは、N含有樹脂を含有する一つの層のみからなっていてもよい。
N含有樹脂の屈折率が1.57を超える場合、得られる中空粒子の屈折率が高くなるため、中空粒子を低屈折率材料に使用した際に、十分な低屈折率化ができないことがある。中空粒子を低屈折率材料に使用する場合は、N含有樹脂の屈折率は低いほど好ましいため、下限は存在しない。N含有樹脂の屈折率は1.56以下がより好ましく、1.55以下が更に好ましい。
N含有樹脂は、XPS(X線光電子分光分析法)での測定において、0.03≦N/C≦0.2の関係を満たす窒素原子の存在比Nと炭素原子の存在比Cとを有することが好ましい。ここで、「N/C」は、アミノ基のようなN含有置換基を有する単量体由来の成分中の「N」原子と、N含有樹脂を構成する「C」原子との比を意味する。また、N含有置換基を有する単量体は、以下に記載するように架橋性単量体に主に由来する。N/Cが0.03未満の場合、架橋密度が低くなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。0.2を超える場合、架橋密度が高すぎるため、ピンホールが発生しやすくなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。N/Cは、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.13、0.15、0.18、0.2をとり得る。N/Cは、0.03~0.15であることがより好ましく、0.03~0.1であることが更に好ましい。
また、中空粒子は、10~150nmの平均粒子径を有していることが好ましい。平均粒子径が10nm未満の中空粒子は、中空粒子同士の凝集が発生して、取扱い性に劣ることがある。150nmより大きい中空粒子は、コーティング剤や樹脂と混練した場合に表面の凹凸や粒子界面での散乱が大きくなり、白化することがある。平均粒子径は、10nm、20nm、30nm、50nm、80nm、100nm、120nm、150nmをとり得る。平均粒子径は30~100nmであることがより好ましく、平均粒子径は30~80nmであることが更に好ましい。
N含有樹脂は、ビニル系単量体から構成された窒素原子を含有するビニル系樹脂であることが好ましい。特に芳香族環を有しないビニル系単量体から構成された窒素原子を含有するビニル系樹脂は耐候性が高く、経時での黄変等を抑制できるため好ましい。
【0009】
中空粒子は、単分散性の評価の指標であるCV値が30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることが更に好ましい。
中空粒子は、10~90%の中空率を有することが好ましい。10%未満であると、中空部が小さく,所望の特性が得られないことがある。90%より大きい場合、中空部が大きくなりすぎて中空粒子の強度が低下することがある。中空率は10%、20%、30%、40%、50%,60%、70%、80%、90%をとり得る。より好ましい中空率は10~80%であり、更に好ましい中空率は10~70%である。
中空粒子のシェルには,ピンホールが少ないことが好ましい。シェルのピンホールが多い場合、これら粒子を、熱伝導率を調整することが望まれている部材に使用した際に、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすい。そのため、中空粒子を低屈折率材料に使用した際に十分な低屈折率化ができないことがあったり、熱伝導率調整剤として使用した際に熱伝導率を調整できなかったりすることがある。
【0010】
N含有樹脂は少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体の重合体を、ポリアミン系化合物のような窒素原子を含有する架橋性単量体で架橋された重合体であることが好ましい。
N含有樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有する少なくとも一つの単量体を重合、又は共重合して得られる共重合体をポリアミン系化合物のような窒素原子を含有する架橋性単量体で架橋されたN含有ビニル系樹脂が好ましい。
中空粒子のN含有樹脂の含有量は、中空粒子100質量部に対して、5~100質量部であることが好ましい。5質量部未満であると、断熱塗料作製のために用いられる有機系のバインダーへの分散性が低くなり、塗膜が白化しやすいことがある。N含有樹脂の含有量は、中空粒子100質量部に対して、10~100質量部であることがより好ましく、50~100質量部であることが更に好ましい。
N含有樹脂には、種々の樹脂を使用でき、中でもケイ素成分を含有する有機-無機ハイブリッド樹脂(以下、Si&N含有樹脂と称する)が好ましい。本明細書において、「有機-無機」とは、ケイ素を無機成分とし、ケイ素以外の樹脂を有機成分としていることを意味する。
Si&N含有樹脂は、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有する少なくとも一つの単量体を重合、又は共重合して得られる共重合体をポリアミン系化合物のような窒素原子を含有する架橋性単量体で架橋されたSi&N含有ビニル系樹脂が好ましい。
Si&N含有樹脂は、少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体と、少なくとも1種以上のシリル基を有するラジカル反応性単量体とからなる共重合体をポリアミン系化合物のような窒素原子を含有する架橋性単量体で架橋された共重合体であることが好ましい。なお、エポキシ基とオキセタン基、シリル基とを併せて、非ラジカル反応性官能基ともいう。
また、Si&N含有樹脂の屈折率は1.57以下であることが好ましい。Si&N含有樹脂の屈折率が1.57を超える場合、得られる中空粒子の屈折率が高くなるため、中空粒子を低屈折率材料に使用した際に、十分な低屈折率化ができないことがある。中空粒子を低屈折率材料に使用する場合は、Si&N含有樹脂の屈折率は低いほど好ましいため、下限は存在しない。Si&N含有樹脂の屈折率は1.56以下がより好ましく、1.55以下が更に好ましい。
また、Si&N含有樹脂は、XPSでの測定において、0.001≦Si/C≦0.1の関係を満たすケイ素原子の存在比Siと炭素原子の存在比Cとを有することが好ましい。Si/Cが0.001未満の場合、架橋密度が低くなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。0.1を超える場合、架橋密度が高すぎるため、ピンホールが発生しやすくなり、低分子のバインダー成分が中空内部に浸入しやすくなることがある。Si/Cは、0.002~0.05であることがより好ましく、0.002~0.02であることが更に好ましい。
【0011】
(1)エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体
少なくとも1種以上のエポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体は、エポキシ基又はオキセタン基とラジカル反応性官能基とを有する。
ラジカル反応性官能基は、ラジカル重合で反応するエチレン性不飽和基であれば特に限定されない。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等が挙げられる。中でも反応性の制御が容易なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
【0012】
エポキシ基又はオキセタン基は、アミノ基、カルボキシ基、クロロスルホン基、メルカプト基、水酸基、イソシアナート基等を有する化合物と反応して重合体を生成する官能基である。
ラジカル反応性官能基とエポキシ基又はオキセタン基とを有する反応性単量体としては、特に限定されない。例えば、p-グリシジルスチレン、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチル(メタ)アクリレート及び3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0013】
(2)シリル基を有するラジカル反応性単量体
少なくとも1種以上のシリル基を有するラジカル反応性単量体は、シリル基とラジカル反応性官能基とを有する。
ラジカル反応性官能基は、ラジカル重合で反応するエチレン性不飽和基であれば特に限定されない。例えば、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等が挙げられる。中でも反応性の制御が容易なビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基が好ましい。
シリル基とラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体としては、特に限定されない。例えば、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0014】
(3)エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体とからなる共重合体
前記共重合体において、エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の割合(質量比)は、1:100~0.001であることが好ましい。シリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の割合が0.001未満の場合、シェルの強度が低くなり中空粒子が潰れたり、中空粒子が得られなかったりすることがある。100より大きい場合、シェルが脆くなりすぎて、ピンホールが発生しやすくなることによりフィルムの断熱性を高くし難くなることがある。より好ましい割合は1:10~0.001であり、更に好ましい割合は1:1~0.01である。
【0015】
(4)単官能単量体
エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体からなる重合体は、反応性官能基を1つだけ有する単官能単量体に由来する成分を含んでいてもよい。単官能単量体としては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステル等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
単官能単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の含有量は、反応性単量体に由来する成分全体の10質量%以上であることが好ましい。10質量%未満であると、中空粒子とならないことがある。エポキシ基又はオキセタン基を有するラジカル反応性単量体とシリル基を有するラジカル反応性単量体に由来する成分の含有量は、より好ましくは30質量%以上であり、更に好ましくは50質量%以上である。
【0017】
(5)架橋性単量体
N含有樹脂は、ポリアミン系化合物のような窒素原子を含有する架橋性単量体由来の成分を含有する。
ポリアミン系化合物としては、例えば、エチレンジアミン及びその付加物、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン及びその変性品、
N-アミノエチルピペラジン、ビス-アミノプロピルピペラジン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス-ヘキサメチレントリアミン、ジシアンジアミド、ジアセトアクリルアミド、各種変性脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等の脂肪族アミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、3-アミノ-1-シクロヘキシルアミノプロパン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン等の脂環族アミン及びその変性物、
【0018】
4,4’-ジアミノジフェニルメタン(メチレンジアニリン)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、m-フェニレンジアミン、2,4’-トルイレンジアミン、m-トルイレンジアミン、o-トルイレンジアミン、メタキシリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族アミン及びその変性物、その他特殊アミン変性物、
アミドアミン、アミノポリアミド樹脂等のポリアミドアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールのトリ-2-エチルヘキサン塩等の3級アミン類
等が挙げられる。
前記架橋性単量体は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0019】
(6)表面処理剤
中空粒子は、少なくとも一つ以上のアニオン性基を有する化合物で処理された表面を有していてもよい。この化合物で処理された表面は、中空粒子に耐熱性や有機溶媒中での分散性、低分子のバインダー成分が中空内部に侵入しにくくなるという性質を付与する。
アニオン性基を有する化合物としては、塩酸、酸無水物、オキソ酸(例えば、硝酸、燐酸、硫酸、炭酸のような無機酸やカルボン酸化合物、硫酸のアルキルエステル化合物、スルホン酸化合物、リン酸エステル化合物、ホスホン酸化合物、ホスフィン酸化合物等の有機酸が挙げられる)から選択される。
【0020】
カルボン酸化合物としては、カルボキシル基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ステアリン酸などの直鎖状カルボン酸;ピバリン酸、2,2-ジメチル酪酸、3,3-ジメチル酪酸、2,2-ジメチル吉草酸、2,2-ジエチル酪酸、3,3-ジエチル酪酸、2-エチルヘキサン酸、2-メチルヘプタン酸、4-メチルオクタン酸、ネオデカン酸などの分枝鎖状カルボン酸;ナフテン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの環状カルボン酸などを挙げることができる。これらの中で有機溶媒中での分散性を効果的に高めるためには、炭素数4~20の直鎖状カルボン酸、分枝鎖状カルボン酸等が好ましい。
また、カルボン酸化合物としてはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、マレオイル基、フマロイル基、スチリル基及びシンナモイル基等のラジカル反応性官能基を有するカルボン酸も使用できる。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-アクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-アクリロイロキシエチルフタル酸、2-メタクリロイロキシエチルフタル酸、ビニル安息香酸等が挙げられる。
【0021】
硫酸のアルキルエステル化合物としては、ドデシル硫酸等が挙げられる。
スルホン酸化合物としては、スルホ基を含有する化合物であれば特に限定されない。例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸、エチルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
リン酸エステル化合物は、リン酸のエステル化合物で有れば特に限定されない。例えば、下記一般式(I)で表される。
【0022】
【0023】
前記式中、R1は、炭素数4~19のアルキル基又はアリル基(CH2=CHCH2-)、(メタ)アクリル基、スチリル基である。炭素数4~19のアルキル基としてはブチル基、ペンチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、ステアリル基が挙げられる。これら基は、直鎖状でも、分岐状であってもよい。また、これらは1種類でも複数種を併用してもよい。
R2は、H又はCH3である。
nは、アルキレンオキサイドの付加モル数であり、全体を1モルとした場合、0~30の付加モル数を与えるのに必要な範囲の数値である。付加モル数は、0、1、5、10、15、20、25及び30を取りえる。
aとbの組み合わせは、1と2又は2と1の組み合わせである。
また、日本化薬株式会社のKAYAMER PM-21等も使用することができる。
【0024】
また、オキソ酸としては、酸基を有する重合体も使用することができる。例えば、ディスパービック103、ディスパービック110、ディスパービック118、ディスパービック111、ディスパービック190、ディスパービック194N、ディスパービック2015(以上ビックケミー社製)、ソルスパース3000、ソルスパース21000、ソルスパース26000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000、ソルスパース41090、ソルスパース43000、ソルスパース44000、ソルスパース46000、ソルスパース47000、ソルスパース53095、ソルスパース55000(以上ルーブリゾール社製)、EFKA4401、EFKA4550(エフカ アディティブズ社製)、フローレンG-600、フローレンG-700、フローレンG-900、フローレンGW-1500、フローレンGW-1640(以上共栄社化学社製)、ディスパロン1210、ディスパロン1220、ディスパロン2100、ディスパロン2150、ディスパロン2200、ディスパロンDA-325、ディスパロンDA-375(楠本化成製)、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824、アジスパーPB881、アジスパーPN411(味の素ファインテクノ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
また必要に応じてケイ素系化合物、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等で表面処理を行ってもよい。
前記ケイ素系化合物としては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシランや、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン、トリメチルシリルクルロライド等のクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-ウレイドプロピルトリアルコキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられるが、本発明に用いられるケイ素系化合物はこれらに限定されるものではない。
【0026】
前記チタネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA、プレンアクトETが挙げられるが、本発明に用いられるチタネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記アルミネート系カップリング剤としては、味の素ファインテクノ社製のプレンアクトAL-Mが挙げられるが、本発明に用いられるアルミネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記ジルコネート系カップリング剤としては、マツモトファインケミカル社製のオルガチックスZA-45、オルガチックスZA-65、オルガチックスZC-150、オルガチックスZC-540、オルガチックスZC-700、オルガチックスZC-580、オルガチックスZC-200、オルガチックスZC-320、オルガチックスZC-126、オルガチックスZC-300が挙げられるが、本発明に用いられるジルコネート系カップリング剤はこれらに限定されるものではない。
前記イソシアネート系化合物としては、エチルイソシアネート、プロピルイソシアネート、イソプロピルイソシアネート、ブチルイソシアネート、tert―ブチルイソシアネート、ヘキシルイソシアネート、ドデシルイソシアネート、オクタデシルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ベンジルイソシアネート、フェニルイソシアネート、4-ブチルフェニルイソシアネート、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリラート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられるが、本発明に用いられるイソシアネート系化合物はこれらに限定されるものではない。
前記表面処理剤は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0027】
(7)他の添加物
本発明の効果を阻害しない範囲で、中空粒子は、必要に応じて、顔料粒子(顔料)、染料、安定剤、紫外線吸収剤、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等の他の添加物を含んでいてもよい。
顔料粒子としては、当該技術分野で用いられる顔料粒子であれば特に限定されない。例えば、雲母状酸化鉄、鉄黒等の酸化鉄系顔料;鉛丹、黄鉛等の酸化鉛系顔料;チタンホワイト(ルチル型酸化チタン)、チタンイエロー、チタンブラック等の酸化チタン系顔料;酸化コバルト;亜鉛黄のような酸化亜鉛系顔料;モリブデン赤、モリブデンホワイト等の酸化モリブデン系顔料等の粒子が挙げられる。顔料粒子は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
(8)中空粒子の用途
中空粒子は、反射率を調整することが望まれている用途である塗料、紙、情報記録紙、断熱フィルム、熱電変換材料の添加剤として有用である。また、中空粒子は光拡散フィルム(光学シート)、導光板インク、反射防止膜、光取出し膜等に用いられるコーティング剤(塗布用組成物)の添加剤、光拡散板、導光板等の成形体形成用のマスターペレットの添加剤、化粧品の添加剤としても有用である。
(a)コーティング剤
コーティング剤は、少なくとも前記中空粒子を含有する。コーティング剤は任意のバインダーを含んでいてもよい。
バインダーとしては、特に限定されず、公知のバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられ、より具体的には、フッ素系樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、バインダー樹脂は、1つの反応性単量体単独重合体であってもよいし、複数のモノマーの共重合体であってもよい。また、バインダーとして反応性単量体を使用してもいい。
例えば反応性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ターシャリーブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、(シクロ)ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、(イソ)オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、(イソ)デシル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、(イソ)ステアリル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸と炭素数1~25のアルコールとのエステルのような単官能性反応性単量体、
【0029】
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、アダマンチルジ(メタ)アクリレート、イソボルニルジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の多官能性反応性単量体
が挙げられる。
【0030】
また、これらの反応性単量体を使用する際は電離放射線により硬化反応を開始させる重合開始剤を用いてもよい。例えば、イミダゾール誘導体、ビスイミダゾール誘導体、N-アリールグリシン誘導体、有機アジド化合物、チタノセン類、アルミナート錯体、有機過酸化物、N-アルコキシピリジニウム塩、チオキサントン誘導体等が挙げられる。
また、バインダーとしては例えばケイ素アルコキシドの加水分解物等の無機系バインダーを使用することもできる。ケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3-ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランが挙げられる。
公知のバインダー製品として、例えば、三菱レイヨン社製のダイヤナールLR-102やダイヤナールBR-106等が挙げられる。
コーティング剤中の中空粒子の含有量は、使用する用途によって適宜調整されるが、バインダー100質量部に対して、0.1~1000質量部の範囲で使用できる。
【0031】
コーティング剤には、通常分散媒体が含まれる。分散媒体としては水性及び油性の媒体がいずれも使用できる。油性の媒体としては、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、ジオキサン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶剤等が挙げられる。水性の媒体としては、水、アルコール系溶剤が挙げられる。
更に、コーティング剤には、硬化剤、着色剤、帯電防止剤、レベリング剤等の他の添加剤が含まれていてもよい。
コーティング剤の被塗布基材としては、特に限定されず、用途に応じた基材が使用できる。例えば、光学用途では、ガラス基材、透明樹脂基材等の透明基材が使用される。
【0032】
(b)マスターペレット
マスターペレットは、中空粒子と基材樹脂とを含む。
基材樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。例えば(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等が挙げられる。特に透明性が求められる場合には(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸アルキル-スチレン共重合樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂がよい。これらの基材樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、基材樹脂は、紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量含んでいてもかまわない。
【0033】
マスターペレットは、中空粒子と基材樹脂とを溶融混練して、押出成形、射出成形等の成形方法により製造できる。マスターペレットにおける中空粒子の配合割合は、特に限定されないが、好ましくは0.1~60質量%程度、より好ましくは0.3~30質量%程度、更に好ましくは0.4~10質量%程度である。配合割合が60質量%を上回ると、マスターペレットの製造が難しくなることがある。また、0.1質量%を下回ると、本発明の効果が低下することがある。
マスターペレットは、例えば押出成形、射出成形又はプレス成形することにより成形体となる。また、成形の際に基材樹脂を新たに添加してもよい。基材樹脂の添加量は最終的に得られる成形体に含まれる中空粒子の配合割合が0.1~60質量%程度となるように添加するのがよい。なお、成形時には、例えば紫外線吸収剤、熱安定剤、着色剤、フィラー等の添加剤を微量添加してもよい。
【0034】
(c)化粧料
中空粒子を配合しうる具体的な化粧料としては、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料、化粧水、乳液、クリーム、ボディーローション等の液状化粧料等が挙げられる。
これらの化粧料へ中空粒子の配合割合は、化粧料の種類によっても異なる。例えば、おしろい、ファンデーション等の固形状化粧料の場合は、1~20質量%が好ましく、3~15質量%が特に好ましい。また、ベビーパウダー、ボディーパウダー等のパウダー状化粧料の場合は、1~20質量%が好ましく、3~15質量%が特に好ましい。更に、化粧水、乳液、クリームやリキッドファンデーション、ボディーローション、プレシェーブローション等の液状化粧料の場合は、1~15質量%が好ましく、3~10質量%が特に好ましい。
【0035】
また、これらの化粧料には、光学的な機能の向上や触感の向上のため、マイカ、タルク等の無機化合物、酸化鉄、酸化チタン、群青、紺青、カーボンブラック等の着色用顔料、又はアゾ系等の合成染料等を添加できる。液状化粧料の場合、液状の媒体として、特には限定されないが、水、アルコール、炭化水素、シリコーンオイル、植物性又は動物性油脂等を用いることもできる。これらの化粧料には、前記他の成分以外に、化粧品に一般的に用いられる保湿剤、抗炎症剤、美白剤、UVケア剤、殺菌剤、制汗剤、清涼剤、香料等を添加することにより、各種機能を追加することもできる。
【0036】
(d)断熱フィルム
断熱フィルムは、少なくとも前記中空粒子を含有する。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部に空気層を有するため、断熱フィルムとして使用できる。また、前記中空粒子の粒子径が小さいため、透明性の高い断熱フィルムが得られ、バインダーが中空部に侵入しにくいため高い断熱性を有する断熱フィルムが得られやすい。前記断熱フィルムは前記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
【0037】
(e)反射防止膜
反射防止膜は、少なくとも前記中空粒子を含有する。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部の空気層により屈折率が低下するため、反射防止膜として使用できる。また、前記中空粒子は高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する反射防止膜が得られる。前記反射防止膜は前記のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
(f)反射防止膜付基材
反射防止膜付基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前記の反射防止膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、反射防止膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【0038】
(g)光取出し膜
光取出し膜は、少なくとも前記中空粒子を含有する。LEDや有機EL照明は、空気層と発光層の屈折率差が大きいため、発光した光が素子内部に閉じ込められやすい。そのため、発光効率を向上させる目的に光取出し膜が使用されている。前記中空粒子を含有するフィルムやシート状形状物は、中空粒子内部の空気層により屈折率が低下するため、光取出し膜として使用することが可能である。また、前記中空粒子が高い耐熱性を有するため、高い耐熱性を有する光取出し膜が得られる。前記光取出し膜は前述のコーティング剤をディップ法、スプレー法、スピンコート法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で基材に塗布し、乾燥し、更に必要に応じて、加熱や紫外線照射、焼成することで得ることができる。
(h)光取出し膜付基材
光取出し膜付基材は、ガラス、ポリカーボネート、アクリル樹脂、PET、TAC等のプラスチックシート、プラスチックフィルム、プラスチックレンズ、プラスチックパネル等の基材、陰極線管、蛍光表示管、液晶表示板等の基材の表面に前述の光取出し膜を形成したものである。用途によって異なるが、被膜が単独であるいは基材上に保護膜、ハードコート膜、平坦化膜、高屈折率膜、絶縁膜、導電性樹脂膜、導電性金属微粒子膜、導電性金属酸化物微粒子膜、その他必要に応じて用いるプライマー膜等と組み合わせて形成されている。なお、組み合わせて用いる場合、光取出し膜が必ずしも最外表面に形成されている必要はない。
【0039】
(9)中空粒子の製造方法
中空粒子は、特に限定されないが、例えば、非反応性溶媒を含有する重合体粒子を作製する工程(重合工程)と、重合体粒子から非反応性溶媒を相分離させる工程(相分離工程)と、非反応性溶媒を除去する工程(溶媒除去工程)を経ることにより製造できる。
従来の中空粒子の製造方法は、シェルが反応性単量体を1回重合させることで形成されており、有機溶媒(非反応性溶媒)とシェルとの相分離が重合と同時に行われる。本発明の発明者等は、この方法において、相分離と重合とを同時に行う工程が、ピンホールの発生と単分散性の低下を生じさせていると考えた。また、シェルのピンホールが、中空粒子を熱伝導率調整剤として使用した際におけるフィルムの熱伝導率の低減及びフィルムの反射率の低減を阻害していると考えた。そこで、発明者等は、非反応性溶媒の相分離前に、一旦、重合体粒子を形成し、その後に相分離を生じさせれば、ピンホールの発生を抑制でき、かつ単分散性を向上できると考えた。
具体的には、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。次いで、両官能基の残存する他方の官能基による重合により、重合体と非反応性溶媒とが相分離することで、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。この後、非反応性溶媒を除去することで中空粒子が得られる。
【0040】
前記において、重合と相分離とを分けることで、
・従来の製造方法で存在していたシェルの重合体間の隙間が存在しなくなり、得られる中空粒子のシェルでのピンホールの発生を抑制できる
・中空粒子の形状が油滴に依存せず、相分離前の重合体粒子の形状や粒度分布に依存するため、単分散性の高い中空粒子が得られやすい
という利点を有する。以下、製造方法の説明を記載する。
【0041】
(A)重合工程
重合工程では、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基とを有する反応性単量体を、両官能基のいずれか一方に基づいて重合させることにより重合体粒子を作製する。非反応性溶媒は、予め反応性単量体と混合するか、重合体粒子作製後に吸収させることにより、重合体粒子中に含有させる。
【0042】
(a)重合体粒子の作製方法
重合体粒子の作製方法としては、塊状重合法、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知の方法の中から、任意の方法を採用できる。その中でも、重合体粒子を比較的簡便に作製できる懸濁重合法、乳化重合法が好ましい。更に、単分散性の高い重合体粒子が得られやすい乳化重合法がより好ましい。
重合体粒子は、ラジカル反応性官能基又は非ラジカル反応性官能基を重合させることにより得られる。
【0043】
重合は、重合対象の官能基を重合させる化合物を添加することが好ましい。
(i)ラジカル反応性官能基を重合させる場合、この化合物には重合開始剤を使用できる。重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、クメンハイドロパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジメチルビス(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ビス(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ビス(tert-ブチルパーオキシ)トリメチルシクロヘキサン、ブチル-ビス(tert-ブチルパーオキシ)バレラート、2-エチルヘキサンペルオキシ酸tert-ブチル、ジベンゾイルパーオキサイド、パラメンタンハイドロパーオキサイド及びtert-ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物類、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(2,2’-アゾビス(2-メチル-ブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-イソプロピルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルカプロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,3,3-トリメチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-エトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-n-ブトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド)、1,1-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピネート)、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、ジメチル-2,2'-アゾビス(2-メチルプロピネート)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。重合開始剤は、1種のみ使用していてもよく、2種以上併用してもよい。
【0044】
また、前記の過硫酸塩類及び有機過酸化物類の重合開始剤と、ナトリウムスルホキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸及びその塩、第一銅塩、第一鉄塩等の還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤を重合開始剤として使用してもよい。
【0045】
重合が乳化重合である場合、重合開始剤は、水溶媒下で乳化重合が可能な水溶性の重合開始剤であることが好ましい。水溶性の重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-エチルプロパン)二塩酸塩、2,2-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、4,4-アゾビス(4-シアノペンタン酸)等のアゾ化合物類が挙げられる。
【0046】
(ii)重合体粒子は、ラジカル反応性官能基を先に重合して、重合体中に未反応の非ラジカル反応性官能基を有することが好ましい。非ラジカル反応性官能基を先に重合すると、非反応性溶媒の吸収がしにくくなることがある。
重合体粒子は、ラジカル反応性官能基と非ラジカル反応性官能基の一方の反応性官能基を重合することで、重合体中に未反応の他方の反応性官能基を有することが好ましい。しかし、重合体粒子の製造時に重合する官能基は、その全量が重合せず、部分的に重合しても大きな問題はないし、他方の重合官能基が一部重合しても大きな問題はない。例えば、グリシジルメタクリレートのラジカル反応性官能基を重合させて、エポキシ基を有する重合体粒子を作製する際には、未反応のラジカル反応性官能基が残存してもよいし、部分的にエポキシ基が開環反応してもよい(言い換えると、重合体粒子中に相分離が可能な量のエポキシ基が残っていればよい)。
連鎖移動剤の使用量の上限は、反応性単量体100質量部に対して、50質量部である。
(iii)連鎖移動剤を、反応性単量体の重合時に使用してもよい。連鎖移動剤としては、特に限定されず、例えば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、α-メチルスチレンダイマー、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物、アリルアルコール等のアリル化合物、ジクロロメタン、ジブロモメタン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物が挙げられる。連鎖移動剤は、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0047】
(b)非反応性溶媒の吸収
重合体粒子への非反応性溶媒の吸収は、重合体粒子の製造時又は製造後に行うことができる。また、非反応性溶媒の吸収は、非反応性溶媒と相溶しない分散媒の存在下又は非存在下で行うことができる。分散媒の存在下で行う方が、非反応性溶媒の吸収を効率よく行うことができるので好ましい。重合体粒子の製造方法が媒体を使用する場合、媒体は分散媒としてそのまま使用してもよく、一旦、重合体粒子を媒体から単離した後、分散媒に分散してもよい。
【0048】
重合体粒子を含む分散媒には、分散媒に相溶しない非反応性溶媒が添加され、一定時間撹拌等を行うことで重合体粒子に非反応性溶媒を吸収させることができる。
また、重合体粒子の製造時での非反応性溶媒の吸収は、重合体粒子の作製に適切な分散媒と非反応性溶媒を選定することで実現できる。例えば、水溶媒下で重合体粒子を乳化重合で作製する場合、水に相溶しない非反応性溶媒を事前に水溶媒に添加しておき、反応性単量体を重合させることで、重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うことができる。重合体粒子の作製と重合体粒子の吸収を同時に行うと、非反応性溶媒の吸収にかかる時間を削減できる。
【0049】
(i)分散媒
分散媒としては、重合体粒子を完全に溶解させない液状物であれば特に限定されない。例えば、水;エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール類;ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン等のアルカン;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン系溶媒が挙げられる。これらは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0050】
(ii)非反応性溶媒
非反応性溶媒としては、分散媒に相溶しない液状物であるものであれば特に限定されない。ここで分散媒に相溶しないとは、非反応性溶媒の分散媒への溶解度(25℃時)が10質量%以下のことである。例えば分散媒として水を使用した場合、使用できる非反応性溶媒としてはブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、デカン、ヘキサデカン、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1,4-ジオキサン、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等が挙げられる。これらは、1種のみ使用してもよく、2種以上併用してもよい。
非反応性溶媒の添加量は、特に限定されないが、重合体粒子100質量部に対して、20~5000質量部である。20質量部未満であると、得られる中空粒子の中空部が小さくなり、所望の特性が得られないことがある。5000質量部を超えると、中空部が大きくなりすぎて得られる中空粒子の強度が低下することがある。
【0051】
(B)相分離工程
次に、残存する反応性官能基を重合させて、重合体と非反応性溶媒とを相分離させる。相分離により、非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子が得られる。なお本発明において、中空粒子の中空とは、中空部に空気が存在する場合だけでなく、非反応性溶媒や他の分散媒体が中空部に存在しているマイクロカプセル粒子も含む趣旨である。
残存する反応性官能基を重合させるために添加する化合物は、前記重合工程に記載した、ラジカル反応性官能基を重合させるための重合開始剤、非ラジカル反応性官能基を重合させるための架橋剤と同じものを使用できる。
【0052】
(C)溶媒除去(置換)工程
中空粒子は、必要に応じてマイクロカプセル粒子に内包された非反応性溶媒を除去又は置換することで、中空部に空気や他の溶媒が存在する中空粒子を得ることができる。非反応性溶媒の除去方法としては特に限定されず、減圧乾燥法等が挙げられる。減圧乾燥法の条件は、例えば、500Pa以下の圧力、30~200℃、30分~50時間が挙げられる。また、非反応性溶媒を溶媒置換操作によって置換できる。例えば非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子又は、それらの分散体に、適当な分散媒体に加え、撹拌等を行うことで粒子内部の非反応性溶媒を分散媒体に置換させる。その後余分な非反応性溶媒と分散媒体を減圧乾燥法や遠心分離法、限外ろ過法等により除去することで非反応性溶媒を置換できる。溶媒置換は一回だけ行ってもいいし、複数回実施してもよい。
中空粒子は、必要に応じて中空粒子の溶媒分散体として使用してもよい。例えば、相分離工程後に得られる非反応性溶媒を内包したマイクロカプセル粒子の分散体の状態のまま使用してもよいし、他の分散溶媒で置換した溶媒分散体として使用してもよい。
中空粒子は、必要に応じて中空粒子の溶媒分散体を乾燥させた乾燥粉体として使用してもよい。中空粒子の乾燥方法としては特に限定されず、減圧乾燥法等が挙げられる。なお、乾燥粉体中には、乾燥せずに残った分散溶媒や非反応性溶媒等が残存していてもよい。
(D)その他工程
相分離工程後の中空粒子分散体中にアニオン性基を有する化合物を添加して撹拌したり、溶媒除去工程後に中空粒子にアニオン性基を有する化合物を添加し混合したりすることで中空粒子の表面をアニオン性基を有する化合物で処理することができる。中でも、相分離工程後に余分な架橋剤を除去した後に、中空粒子分散体中にアニオン性基を有する化合物を添加し、撹拌することが好ましい。処理条件は、例えば、30~200℃、30分~50時間が挙げられる。
また、相分離工程後の中空粒子分散体中にケイ素系化合物、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等を添加して撹拌したり、溶媒除去工程後に中空粒子にケイ素系化合物、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等を添加し混合したりすることで中空粒子の表面をケイ素系化合物、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等で処理することができる。中でも、中空粒子をアニオン性基を有する化合物で処理した後に、ケイ素系化合物、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤、イソシアネート系化合物等で処理することが好ましい。処理条件は、例えば、30~200℃、30分~50時間が挙げられる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。まず、実施例に使用した各種測定法の詳細を下記する。
(平均粒子径、中空率、CV値)
以下のように中空粒子の平均粒子径、中空率及びCV値を測定する。
すなわち10質量%中空粒子メチルアルコール分散液を60℃の真空乾燥機で4時間乾燥し、乾燥粉体を得る。中空粒子を、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製H-7600)を用いて、加速電圧80kVの条件下、倍率約30万倍でTEM写真を撮影する。このとき四酸化ルテニウム染色などを用いることによって、より明確に粒子を確認することができる。この写真に撮影された任意の100個以上の粒子の粒子径及び内径を観察する。この時、粒子の中心を通るように5箇所以上の粒子径及び内径を測定、平均することで、平均粒子径、平均内径とする。更に、(平均内径)3/(平均粒子径)3×100の式より、中空粒子の中空率を求める。
また中空粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、前記の粒子径の標準偏差と平均粒子径を求め、更に、(標準偏差)/(平均粒子径)×100の式より得られた値を中空粒子のCV値とする。
【0054】
(屈折率)
以下のように中空粒子のシェルを構成しているN含有樹脂の屈折率を求めた。
すなわち20℃に調製したメチルアルコールの屈折率nm、10質量%中空粒子メチルアルコール分散液の屈折率naをアタゴ社製アッベ屈折率計(NAR-1T)で測定する。メチルアルコールと中空粒子のシェルの比重をそれぞれ0.792、1.17とした場合の体積%qとし、Maxwell-Garnettの式を用いて、中空ナノ粒子のシェルを構成しているN含有樹脂の屈折率npを算出した。
〔Maxwell-Garnettの式〕
(na
2-nm
2)/(na
2+2nm
2)=q(np
2-nm
2)/(np
2+2nm
2)
なお、屈折率の評価は、1.57以下であれば○とし、1.57より大きければ×とする。
【0055】
(N/C)及び(Si/C)
以下のようにN含有樹脂、Si&N含有樹脂の(N/C)及び(Si/C)を測定する。
すなわち10wt%中空粒子メチルアルコール分散液を60℃の真空乾燥機で4時間乾燥し、乾燥粉体を得た後、IR用の錠剤成型器で圧縮成形し、試験片を作製する。試験片をX線光電子分光分析装置;XPS(島津製作所社製KRATOS AXIS-ULTRA DLD)を使用し、測定範囲:ワイドスペクトル(1350~0eV)光電子取り込み角度:90度、パスエネルギー:ワイドスペクトル160eV又は80eVの測定条件で、N含有樹脂、Si&N含有樹脂の窒素原子の存在比N[atom%]と炭素原子の存在比C[atom%]、ケイ素原子の存在比Si[atom%]を測定する。測定されたN、SiをCで割ることで、(N/C)及び(Si/C)を算出する。
なお、N/Cの評価は、0.03~0.2で有れば○とし、0.03未満及び0.2を超える場合は×とする。Si/Cの評価は、0.002~0.1で有れば○とし、0.002未満及び0.1を超える場合は×とする。
【0056】
(反射率)
以下のように中空粒子を用いたフィルムの反射率を測定する。
すなわち10質量%中空粒子メチルアルコール分散液20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA-9570W)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部、リン酸エステル系界面活性剤(第一工業製薬社製プライサーフA-208F)0.50質量部を混合し、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて5分間強制撹拌し、混合溶液を得る。混合溶液0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K-359SD1)を用いて、塗布して塗膜を得る。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させる。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J-Cure、型式JU-C1500、引き速:0.4m/min、ピーク照度:125mW/cm2)に3回通して硬化させることで、フィルムを作製する。
積分球(島津製作所社製、型式ISR-2200)を備えた紫外可視分光光度計(島津製作所社製、型式UV-2450)を用いて光源550nm、入射角8°からのフィルム上面からの反射率を測定する。
なお、フィルムの反射率の評価は、反射率が8.0%以下であれば○とし,反射率8.0%より大きければ×とする。なお、スライドガラスのみの反射率は8.4%、中空粒子を添加していないジペンタエリスリトールポリアクリレートのみで作製したフィルムの反射率は8.3%である。
【0057】
実施例1
攪拌機、温度計を備えた1Lの反応器に、グリシジルメタクリレート35質量部と3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン5質量部、n-オクチルメルカプタン0.8質量部、トルエン40質量部を入れて混合した。次に、p-スチレンスルホン酸ナトリウム0.8質量部、過硫酸カリウム0.4質量部をイオン交換水720質量部溶解した水相を添加した。混合溶液を撹拌しつつ70℃で10時間加熱することでエポキシ基が残存した重合体粒子を得た。乳化重合にトルエンを添加していたため、エポキシ基が残存した重合体粒子はトルエンで膨潤されていた。
次に、残存しているエポキシ基を重合させるために、エチレンジアミン20質量部を添加し、24時間70℃で重合を行った。重合体粒子中のエポキシ基が反応することで、重合体とトルエンが相分離し、マイクロカプセル粒子分散体を得た。得られた分散体をイオン交換水で3回洗浄し、過剰なエチレンジアミンを除去した後に、固形分が10質量%となるようにイオン交換水を添加し、10質量%中空粒子水分散液を得た。得られた10質量%中空粒子水分散液400質量部に4.7質量部の20wt%塩酸水溶液を添加し、室温で1時間撹拌することで、表面処理された中空粒子を得た。次にメチルアルコールで3回洗浄し、内部のトルエンの除去及び不要分の洗浄を行った後に、固形分が10質量%となるようにメチルアルコールを適宜添加し、10質量%中空粒子メチルアルコール分散液を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は65nm、CV値は17%であり、単分散性の高い中空粒子であった。また、中空率は34%と高く、シェルの屈折率は1.54と低かった。N/Cは0.06、Si/Cは0.007であった。
更に、得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は7.2%であり、低反射性に優れていた。
【0058】
実施例2
グリシジルメタクリレート添加量を30質量部、過硫酸カリウム添加量を1.2質量部に変更し、メチルメタクリレートを5質量部添加し、4.7質量部の20wt%塩酸水溶液の代わりに5.1質量部のドデカン酸(ラウリン酸)で処理することで、表面処理された中空粒子を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は64nm、CV値は17%であり、単分散性の高い中空粒子であった。また、中空率は30%と高く、シェルの屈折率は1.53と低かった。N/Cは0.05、Si/Cは0.006であった。
更に、得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は7.3%であり、低反射性に優れていた。
【0059】
実施例3
4.7質量部の20wt%塩酸水溶液の代わりに5.9質量部の2-メタクリロイロキシエチルコハク酸で処理すること以外は実施例1と同様にして、表面処理された中空粒子を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は65nm、CV値は17%であり、単分散性の高い中空粒子であった。また、中空率は34%と高く、シェルの屈折率は1.53と低かった。N/Cは0.05、Si/Cは0.005であった。
更に、得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は7.2%であり、低反射性に優れていた。
【0060】
実施例4
4.7質量部の20wt%塩酸水溶液の代わりに9.3質量部のドデシルベンゼンスルホン酸で処理すること以外は実施例1と同様にして、表面処理された中空粒子を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は65nm、CV値は17%であり、単分散性の高い中空粒子であった。また、中空率は34%と高く、シェルの屈折率は1.54と低かった。N/Cは0.04、Si/Cは0.004であった。
更に、得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は7.1%であり、低反射性に優れていた。
【0061】
実施例5
4.7質量部の20wt%塩酸水溶液の代わりに12.5質量部のホスマーPP(ユニケミカル社製、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート)で処理すること以外は実施例1と同様にして、表面処理された中空粒子を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は66nm、CV値は16%であり、単分散性の高い中空粒子であった。また、中空率は35%と高く、シェルの屈折率は1.53と低かった。N/Cは0.04、Si/Cは0.004であった。
更に、得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は7.1%であり、低反射性に優れていた。
【0062】
実施例6
4.7質量部の20wt%塩酸水溶液の代わりに22.9質量部のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(東邦化学社製RS-710)により処理すること以外は実施例1と同様にして、表面処理された中空粒子を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は66nm、CV値は16%であり、単分散性の高い中空粒子であった。また、中空率は35%と高く、シェルの屈折率は1.53と低かった。N/Cは0.04、Si/Cは0.004であった。
更に、得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は7.1%であり、低反射性に優れていた。
【0063】
比較例1
グリシジルメタクリレート及び3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランに代えてジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量使用し、エチレンジアミンを使用せず、過硫酸カリウムに代えてジラウロイルパーオキサイドを0.8質量部使用し、トルエンに代えてトルエン30質量部とシクロヘキサン10質量部とを使用し、p-トルエンスルホン酸ナトリウムに代えてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.4質量部使用し、表面処理しないこと以外は実施例1と同様にして、中空粒子を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は94nm、CV値は42%であり、単分散性の低い中空粒子であった。また、中空率は35%と高く、シェルの屈折率は1.53と低かった。N/Cは0、Si/Cは0であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は8.2%であり、低反射性に劣っていた。
【0064】
比較例2
グリシジルメタクリレート及び3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランに代えてjER828(三菱化学社製、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量184~194)を40質量使用し、エチレンジアミンに代えてN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシランを使用し、過硫酸カリウムを使用せず、トルエンに代えてトルエン30質量部とシクロヘキサン10質量部とを使用し、p-トルエンスルホン酸ナトリウムに代えてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.4質量部使用し、表面処理しないこと以外は実施例1と同様にして、中空粒子を得た。
得られた中空粒子の平均粒子径は103nm、CV値は39%であり、単分散性の低い中空粒子であった。また、中空率は32%と高く、シェルの屈折率は1.59と高かった。N/Cは0.02、Si/Cは0.005であった。得られた中空粒子を用いてフィルムを作製し、反射率を測定したところ、反射率は8.1%であり、低反射性に劣っていた。
以下の表1及び表2に、中空粒子の製造に使用した原料及び物性をまとめて示す。
【0065】
【0066】
【0067】
実施例1の中空粒子の写真を
図1に示す。
表2の実施例1~6と比較例1~2との比較により、小粒径で、単分散性が高く、反射率が低いフィルムを作製するのに適した中空粒子を製造できることが分かった。
【0068】
実施例7(反射防止膜・反射防止膜付基材)
実施例1で作製した10wt%の表面処理された中空粒子メチルアルコール分散液20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA-9570W)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部、ポリエーテルリン酸エステル系界面活性剤(日本ルーブリゾール社製ソルスパース41000)0.50質量部を混合し、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K-359SD1)を用いて、塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させた。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J-Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、ピーク照度:125mW/cm2)に3回通して硬化させることで、ガラス基板上に反射防止膜が形成されている反射防止膜付基材を作製した。反射防止膜付基材の反射率は7.2%であり、反射防止膜が付いていないスライドガラスの反射率(8.4%)より低く、反射防止性に優れていた。ここでの反射率の測定法は、前記中空粒子の測定法と同一とした。
【0069】
実施例8(光取出し膜・光取出し膜付基材)
実施例1で作製した10wt%表面処理された中空粒子メチルアルコール分散液20質量部、ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学社製NKエステルA-9570W)4質量部、光重合開始剤(BASF社製IRGACURE1173)0.20質量部、ポリエーテルリン酸エステル系界面活性剤(日本ルーブリゾール社製ソルスパース41000)0.50質量部を混合し、超音波ホモジナイザー(BRANSON社製、型式SONIFIER450)を用いて5分間強制撹拌し、コーティング剤を得た。コーティング剤0.5mlをスライドガラス(松浪硝子工業社製S1111)に滴下し、スピンコーター(共和理研社製、型式K-359SD1)を用いて、塗布して塗膜を得た。得られた塗膜を、室温(約25℃)及び常圧下で乾燥させた。乾燥した塗膜を紫外線照射装置(JATEC社製J-Cure、型式JUC1500、引き速:0.4m/min、ピーク照度:125mW/cm2)に3回通して硬化させることで、ガラス基板上に光取出し膜が形成されている光取出し膜付基材を作製した。
光取出し膜付基材の全光線透過率を、ヘーズメーターを用いて測定したところ、光取出し膜付基材の全光線透過率は93.4%であり、光取出し膜が付いていないスライドガラスの全光線透過率(92.0%)より大きかった。これは、光取出し膜中に中空粒子を含有しているため、光取出し膜の屈折率が低下し、空気界面での反射が抑制されたため、全光線透過率が向上したと考えられる。
全光線透過率は、JIS K7361-1:1997「プラスチック-透明材料の全光線透過率の試験方法-第1部:シングルビーム法」に記載の方法に準じて以下の手順で測定した。
すなわち、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、型式:HM-150型)を用いて装置光源の安定後、作製した光取出し膜付基板を光源(D65)、ダブルビーム法にて測定する。安定時間は30分後に測定を行い、安定していることを確認する。試験数を2回とし、その平均を全光線透過率とした。
【0070】
実施例9(導光板インク・導光板)
実施例1で作製した10wt%表面処理された中空粒子メチルアルコール分散液をメチルエチルケトンで3回洗浄し、10wt%中空粒子メチルエチルケトン分散液を得た。10wt%中空粒子メチルエチルケトン分散液を得た45質量部、アクリル系樹脂(DIC社製アクリディックA-181、固形分45%)10質量部、ポリエーテルリン酸エステル系界面活性剤(日本ルーブリゾール社製ソルスパース41000)1.0質量部を混合し、光拡散性組成物(導光板インク)を得た。
5インチの透明アクリル板に前記光拡散性組成物をドットピッチ500μm、ドットの径50μmになるようにスクリーン印刷し、導光板を得た。