(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】導電性高分子材料およびそれを用いた成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20220107BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20220107BHJP
C08K 7/06 20060101ALI20220107BHJP
H01B 1/24 20060101ALI20220107BHJP
H01B 1/04 20060101ALI20220107BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20220107BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20220107BHJP
B01J 23/75 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/04
C08K7/06
H01B1/24 A
H01B1/04
H01B5/16
C01B32/16
B01J23/75 M
(21)【出願番号】P 2020119922
(22)【出願日】2020-07-13
(62)【分割の表示】P 2016023657の分割
【原出願日】2016-02-10
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】堀越 蓉子
(72)【発明者】
【氏名】荒井 亨
(72)【発明者】
【氏名】金子 仁
(72)【発明者】
【氏名】塚本 歩
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-510763(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119102(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,H01B
C01B,B01J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラック
及びカーボンナノチューブ
を混合してなるCNT混合体
と、熱可塑性樹脂と、の混合物であって、
前記カーボンブラックの比表面積が30~400m
2/gであり、
前記カーボンナノチューブ
の9.8MPaの荷重下で測定した粉体抵抗率が0.035Ωcm以下で
あり、
前記カーボンナノチューブの体積換算のメジアン径D50
値が0.1~8μ
mであり、
前記CNT混合体中のカーボンナノチューブの含有量が5~70質量%である、導電性高分子材料。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブのラマン分光測定によるD/G値が0.6~1.5である、請求項1に記載の導電性高分子材料。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブのメジアン径D50値が0.1~3μmである、請求項1~2のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
【請求項4】
前記CNT混合体の含有量が、0.1~30質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
【請求項5】
前記カーボンブラックがアセチレンブラックである請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか一項に記載の導電性高分子材料を用いた、成形品。
【請求項7】
カーボンブラックとカーボンナノチューブとを混合してCNT混合体を得る工程と、
前記CNT混合体と熱可塑性樹脂とを混合して導電性高分子材料を得る工程と、
を備え、
前記カーボンブラックの比表面積が30~400m
2
/gであり、
前記カーボンナノチューブの9.8MPaの荷重下で測定した粉体抵抗率が0.035Ωcm以下であり、
前記カーボンナノチューブの体積換算のメジアン径D50値が0.1~8μmであり、
前記CNT混合体中のカーボンナノチューブの含有量が5~70質量%である、導電性高分子材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散性に優れたカーボンナノチューブ、およびカーボンブラックからなるカーボンナノチューブ混合体と、高分子材料とを含有し、良好な成形加工性(流動性)と高い導電性を有する高分子材料およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子材料に導電性を付与するためのフィラーとして、導電性炭素材であるカーボンブラックや(以下CBと記載)カーボンナノチューブ(以下CNTと記載)、およびこれらの混合体が用いられる。特にCNTを用いるあるいは添加する場合、比較的低い導電性フィラー含有量で高い導電率が得られる特徴があり、期待が集まっている。ここでCNTは一般的に5~100nmの外径、繊維長の外径に対する比を示すアスペクト比は10以上という繊維状の形状を有する。
【0003】
CNTを、高分子などのマトリックスに導電性を付与するためのフィラーとして使用する場合には、CNTの分散性および作製された導電性複合材料の成形加工性(流動性)が重要となるが、従来のCNT等の微細な炭素繊維は、繊維が互いに複雑に絡み合って二次構造を形成しており分散性が悪い。そのため、CNTを十分に分散させ、導電率の高い導電性高分子材料を得るためには、溶剤を使用し高分子材料との複合化を行うなどといった工程が必要となる(特許文献1)。また、CNTは高アスペクト比を有しているため、CBと比較して作製された導電性複合材料の流動性が低下する。
【0004】
特許文献2では、CNTを少量添加した場合においても、効率よく導電性を発現できる導電性複合材料についての記載がなされている。また、特許文献3では、分散性に優れたCNTと、熱可塑性高分子材料とを溶融混練することによって得られる導電性高分子材料について述べられている。また、特許文献4では、CNTのポリマーや粉体とのコンポジット化における分散性や混練性の改善について述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-201117号公報
【文献】特開2009-74072号公報
【文献】特開2010-1173号公報
【文献】特許第5003923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来技術には、下記の点でさらなる改善の余地があった。
例えば、特許文献1では、導電性を向上させるために、溶剤を使用し高分子材料との複合化を行うなどといった工程が必要でありエネルギーやコストの観点から好ましくない。また、特許文献2でも、導電性を向上させるために、混練によって得られた導電性高分子材料を、加熱保持する工程が必要でありエネルギーやコストの観点から好ましくない。また、特許文献4でも、ボールミルを用いた短繊維化を行う必要があり、エネルギーやコストの観点から好ましくない。
【0007】
一方、特許文献3では、得られる導電性高分子材料の体積抵抗率は、CNT添加量を5質量部とした場合で、103Ωcm程度にとどまっている。
【0008】
以上に示すように、CNTは、その製造および高導電性を与えるための分散に関わるコストが高い、流動性が低下するという課題を持ち、それ故用途が限られており、コストが重視される導電性高分子材料には導電性付与性能が劣るがコストや流動性的に有利なCB(アセチレンブラックやケッチェンブラック)が用いられてきた。
今後、異形の導電性炭素材からなるCNT混合体は、その形状、添加量により、高分子材料に多様な特性を与えると考えられる。特に大きなアスペクト比(直径に対する長さ)を有し、かつ分散性に優れたCNTと従来の安価で流動性に優れたCB等の炭素材料の組み合わせにより、コストパフォーマンスおよび流動性に優れたCNT混合体となる可能性を秘めている。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑み、分散性、流動性および導電性に優れたCBと、分散性、導電性および結晶性に優れたCNTの混合体(以下、CNT混合体と記載)を用いることにより、高導電性と高流動性を両立する導電性高分子材料およびその成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、上記課題を解決する本発明は、下記より構成される。
(1)カーボンブラック、およびカーボンナノチューブからなるCNT混合体を含有する導電性高分子材料であって、前記カーボンブラックの比表面積が30~400m2/gであり、前記カーボンナノチューブが9.8MPaの荷重下で測定した粉体抵抗率が0.035Ωcm以下で、体積換算のメジアン径D50が0.1~8μmの範囲であり、前記CNT混合体中のカーボンナノチューブの含有量が5~70質量%である、導電性高分子材料。
(2)前記カーボンナノチューブのラマン分光測定によるD/G値が0.6~1.5である、請求項1に記載の導電性高分子材料。
(3)前記多層カーボンナノチューブのメジアン径D50値が0.1~3μmである、(1)~(2)のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
(4)前記CNT混合体の含有量が、0.1~30質量%である、(1)~(3)のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
(5)前記カーボンブラックがアセチレンブラックである(1)~(4)のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
(6)用いられる高分子材料が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする(1)~(5)のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
(7)用いられる高分子材料が、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、エピクロヒドリンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムから選択されるゴムのいずれか1種類であることを特徴とする(1)~(5)のいずれか一項に記載の導電性高分子材料。
(8)(1)~(7)のいずれか一項に記載の導電性高分子材料を用いた成形品。
なお、本願明細書において、特にことわりがない限り、「~」という記号は両端の値「以上」および「以下」の範囲を意味する。例えば、「A~B」というのは、A以上、B以下であるという意味である。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、比表面積が30~400m2/gであるCBと、9.8MPaの荷重下で測定した粉体抵抗率が0.035Ωcm以下で、D/G値が0.6~1.3であり、体積換算のメジアン径D50が0.1~8μmの範囲であるCNTからなる混合体を用いることで、高導電性と高流動性を両立する導電性高分子材料およびその成形品を製造できることを見出した。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】合成例1で合成したCNTのTEM画像である。
【
図3】合成例1で合成したCNTの粒度分布図である。
【
図4】合成例1で使用した回転式反応器の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<カーボンブラック>
本発明におけるカーボンブラック(CB)は、直径3-500nm程度の炭素の微粒子が1個または複数個連なったものである。微粒子の連なり(ストラクチャー)は長いもので0.5μm程度となり、ストラクチャーが発達しているものほど導電性付与能に優れる。
【0014】
<カーボンナノチューブ>
本発明におけるカーボンナノチューブ(CNT)は、平均外径5~100nm、好ましくは5~50nm、ファイバー長の外径に対する比を示すアスペクト比が10以上である、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を指す。多層カーボンナノチューブはおおよそ5nm以上の外径を有する。また外径が大きくなりすぎる、例えば50nmを超えると、単位質量あたりの多層カーボンナノチューブの本数が減少してしまい導電ネットワークを形成しづらくなってしまう恐れがある。
本発明におけるカーボンナノチューブ(CNT)の定義には単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は含まれない。単層カーボンナノチューブは高導電性を示す特徴が有るが、カイラリティによる異性体が存在し、また強固なバンドル構造をとり分散が困難になる等実用上の課題が有り、本願の目的とするものではない。本発明に用いられるカーボンナノチューブの代表例として
図1に合成例1で合成したCNTのTEM写真を示す。多層カーボンナノチューブであることが示される。
【0015】
本発明に用いられるCNT混合体中に使用するCNTは、分散性に優れる。具体的には、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定(ISO 13320:2009)によって得られる体積基準によるメジアン径D50値が、0.1~8μm、好ましくは0.1~3μmである。メジアン径D50値が大きいほどCNTの凝集塊が多く存在し、分散性が悪いことを意味する。メジアン径D50値がこれらの上限を超えると、高分子材料に対する分散性が低下し、導電ネットワークが十分に形成されず、高い導電性が得られない場合がある。一方、メジアン径D50値が0.1μm未満であるCNTは、繊維が短く、高分子材料中で形成される導電ネットワーク内でのCNT間の接触点が増加することにより、接触抵抗が大きくなるため、高い導電性が得られないと考えられる。
【0016】
本発明に用いられるCNT混合体に使用するCBは、CNTとの混合時に導電性フィラー同士の電気的な接続(パーコレーション)頻度を高め、導電性樹脂の導電性を向上させることができ、目的に応じて様々なCBが使用できる。本発明に用いられるCBの比表面積は30~400m2/gの範囲であることが好ましい。CBの比表面積が小さいほど、CBの粒子径が大きくなり、CBの単位質量あたりの粒子数が減少する。CBの比表面積がこれらの下限未満になると、単位質量あたりの粒子数が減少し、導電ネットワークが十分に形成されず、高い導電性が得られない場合がある。一方で、CBの比表面積がこれらの上限を超えると、得られた導電性高分子材料の流動性が低下したり、高分子材料に対する分散性が低下し、導電ネットワークが十分に形成されず、高い導電性が得られない場合がある。CBは、CNTの分散性を高める観点から、体積基準のメジアン径D50が1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。
【0017】
<CNT混合体の分散性評価>
本発明に用いられるCNT混合体は従来の市販CNT(MWCNT)と比較し、高い分散性を示すことができる。
【0018】
また、本発明に用いられるCNT混合体中のCNTは、9.8MPaの荷重下で測定した粉体抵抗率が0.035Ωcm以下であることが好ましい。粉体抵抗率が0.035Ωcmを超えると、得られる導電性高分子材料の導電性が低下する場合がある。また、本発明記載のCNTは、ラマン分光測定で求められるD/Gが好ましくは0.6~1.5である。ここでD/Gとは、CNT粉体のラマン分光測定を行った際の、Dバンドピークに由来する面積の総和と、Gバンドピークに由来する面積の総和の比より求めることができる。D/Gが低いほどCNTの結晶性が高いことを示し、CNTの導電性が高くなることを意味する。D/Gが増大するとCNTの屈曲が増加するために、CNT同士の絡み合いがより複雑化し、高分子材料に対する分散性が低下するとともに、CNTの粉体抵抗率が増加してしまう傾向にある。しかし、D/Gを小さくするためには、結晶性を向上させる追加の処理工程を必要とし、優れた結晶性を有するCNTを容易に得ることは難しかった。一方、本発明に記載の触媒を用いる方法ではD/Gが0.6~1.5であるような優れた結晶性を有するCNTを効率良く得ることが出来る。このように、本発明に記載の触媒による優れた分散性、導電性および結晶性を有するCNTを用いることで、導電性により優れた導電性高分子材料が得られる。また、D/Gが1.5を超え屈曲が増加したCNTは、分散性の低下による粉体抵抗率の増加が起こる場合があり、黒鉛化処理などによって結晶性を向上させない限り、D/Gが0.6未満であるMWCNTを合成することは難しいこともわかっている。
【0019】
<触媒>
上記CNT混合体に用いるCNTの製造に用いられる合成触媒は公知の触媒が使用できるが、好ましくは下記触媒を用いる。
<触媒A>
触媒Aは、コバルトを主成分とする活性種をマグネシウムを含有する酸化物(酸化物というのは複合酸化物を含む概念である。)からなる担体に担持したカーボンナノチューブ製造用の触媒(以下、「コバルト-酸化マグネシウム担持触媒」と記載)である。
【0020】
<触媒Aの活性種>
本発明に用いられるコバルト-酸化マグネシウム担持触媒はCNT製造の実質的な活性種としてコバルトを主成分とする。コバルトは、金属コバルトのみならず、酸化物、水酸化物、含水酸化物、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩および炭酸塩等の化合物の形態であってもよい。活性種にはコバルト以外の成分として、第4~12族の元素を含んでもよい。これらとしては、鉄、ニッケルの鉄族やマンガン、モリブデンが挙げられる。ただし、触媒の活性種として含まれる第4~12族元素の成分中、少なくとも60モル%以上、好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上がコバルト成分(コバルト元素のモル%として)であることが望ましい。これ以外の活性種としては、第1~3族、または第14族の元素が含まれてもよい。
【0021】
<触媒Aの担体>
活性種が担持される担体としては、比表面積が0.01~5m2/gのマグネシウムを含有する酸化物が使用されることが好ましい。マグネシウムを含有する酸化物としては、たとえば、酸化マグネシウムやマグネシウムを含むスピネル型酸化物およびペロブスカイト型酸化物等が挙げられる。これらのうち、担体としては、酸化マグネシウムが最も好ましい。マグネシウムを含有する酸化物の比表面積は0.01~4m2/gがより好ましく、0.03~3m2/gが更により好ましい。比表面積が0.01m2/g未満であると、得られるCNTの結晶性および導電率が低下する場合がある。比表面積が5m2/gを超えると得られるCNTの合成活性や分散性が低下する場合がある。担体には、第1~3族、および第14族から選ばれる他の金属元素の酸化物が含まれてもよい。担体中のマグネシウム含有酸化物の含有量は少なくとも50質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、最も好ましくは98質量%以上である。マグネシウム含有酸化物が50質量%未満になると、合成活性が低下する場合がある。
【0022】
コバルト担持率が多いほど触媒活性が上がり、さらに、得られるCNTの結晶性が向上する傾向があるが、多すぎるとコバルトの粒子径が大きくなり合成活性が低下する場合がある。一方で、コバルト担持率が少ないと、合成活性は増加するが、触媒活性が低くなる傾向があり、また、得られるCNTの結晶性が低下したり導電率が低下したりする場合がある。そこで、担体へのコバルトの担持率は、任意であるが好ましくは3~150質量%、最も好ましくは5~90質量%である。なお、本発明では、担持率は以下の式に基づいて計算される。
担持率=活性種(金属成分として)の質量/担体の質量×100(%)
【0023】
コバルトを担体に担持する場合、担持方法は、特に限定されない。例えば、コバルトの塩を溶解させた非水溶液中(例えばエタノール溶液)又は水溶液中又はこれらの混合溶液中に、担体を含浸し、充分に分散混合した後、乾燥させ、空気中、高温(例:300~600℃)で焼成することにより、担体にコバルトを担持させることができる。また、単純にコバルトの塩を溶解させた非水溶液中(例えばエタノール)又は水溶液中に、担体を含浸し、充分に分散混合した後、水分除去乾燥させただけでも良い。あるいはコバルトの塩を溶解させた非水中又は水溶液中に、担体を含浸し、充分に分散混合した後、アルカリにて中和した後に水分を除去し、乾燥させ、焼成してもよい。乾燥はスプレードライなどの方法を用いても良い。本触媒を用いる場合、CNTを合成する際の反応温度は、特に600℃以上750℃以下が好ましい。反応温度が600℃未満になると、CNFの結晶性、導電性および分散性が低下する場合がある。また、750℃を超えると合成活性が低下する場合がある。
【0024】
上記の好ましい触媒Aを用い、好適な反応条件で合成を行うことで、高い結晶性、高い導電性、高い分散性のCNTを得ることができる。触媒Aは具体的にはWO2015/119102号パンフレットに記載されている触媒を用いることができる。
【0025】
<炭素含有ガス>
炭素含有ガスとしては、炭素数1~10の炭化水素や一酸化炭素、二酸化炭素およびこれらの混合体が使用できる。炭化水素としては例えばメタン、エタン、プロパン、エチレン、プロピレン、ベンゼン、トルエン、アセチレンが例示できる。本発明では最も好適には一酸化炭素が用いられる。一酸化炭素を使用することで、比較的低い反応温度であっても、結晶性や導電性の高いCNTを製造することができる。
【0026】
<CNT混合体に使用するCNTの製造方法及び条件>
以下の詳細な説明では原料ガスとして最も好適な一酸化炭素を使用した場合について説明するが、本発明はこれには限定は受けない。
原料ガスとして使用する一酸化炭素は、二酸化炭素や水素との混合ガスとして使用してもよく、窒素ガス等の不活性ガスを含んでいてもよい。一酸化炭素ガスの分圧は0.04~0.98MPaであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.3MPaであり、最も好ましくは0.05~0.1MPaである。一酸化炭素ガス分圧が0.04MPa未満であると、合成活性が低下したり、また得られるCNTの結晶性や導電性が低下する場合がある。また一酸化炭素ガス分圧が0.98MPaより高いと、得られるCNTの分散性が低下したり、触媒の失活が激しくなり合成活性が低下してしまう場合がある。
【0027】
水素ガス分圧は一酸化炭素ガス分圧に対し1~100%であることが好ましく、10~100%がより好ましい。一酸化炭素ガス分圧に対する水素ガス分圧が100%を超えると、合成活性が低下したり、得られるCNTの結晶性や導電性が低下する場合がある。水素ガス分圧が1%未満の場合、早期に触媒の失活が起こり合成活性が低下する場合がある。
なお、一酸化炭素ガス分圧に対する水素ガス分圧は以下の式によって計算できる。
一酸化炭素ガス分圧に対する水素ガス分圧=水素ガスのモル比/一酸化炭素ガスのモル比×100(%)
例えば、原料ガス組成がCO/H2/N2=85/15/0の混合ガスの場合であれば、一酸化炭素ガス分圧に対する水素ガス分圧は
一酸化炭素ガス分圧に対する水素ガス分圧=15/85×100=18(%)
と計算できる。
【0028】
一酸化炭素ガス、水素、二酸化炭素の原料ガスに、不活性ガスを加えた全ガス分圧は1.0MPa未満が好ましい。全圧が1.0MPaを超えると、製造に当たり高圧対応設備費用やユーティリティが嵩んでしまう可能性がある。また0.1MPa(大気圧)と比較し大きく減圧である場合、例えば0.08MPa未満の場合には、高温の反応器に対し大気(酸素)の混入を防ぐためのシールが難しく、好ましくない場合がある。
【0029】
一酸化炭素ガス流量は、1NL/g-活性種・分以上であることが好ましい。一酸化炭素ガス流量をこの範囲に設定することで、CNTを高い合成活性で製造することができる。ここでいう高い合成活性とは、具体的には10g-CNT/g-活性種・h(時間)以上であることを意味する。一酸化炭素ガス流量の上限は特にないが、200NL/g-活性種・分を超えると、ガスの流量が多すぎて、余熱のためのユーティリティコストが嵩み、好ましくない。また、合成活性が低下する場合がある。
尚、「NL」とは標準状態(0℃、1気圧)に換算したガス量L(リットル)を示し、「NL/g-活性種・分」とは、単位活性種存在下(活性種1gあたり)での1分間のガス流量を示す。
【0030】
<反応器>
CNT混合体に使用するCNTの製造において使用可能な反応器として好ましくは、炭素含有化合物を含むガス雰囲気下で触媒及び粒状炭素材料を収容することのできる任意の形状の反応器であり、その一部または全部が機械的に稼働することにより触媒及び生成したCNTを機械的に攪拌する機能を有する反応器が用いられる。反応器の可動部分は、攪拌羽、パドルのようなものでも良く、あるいは反応器自身が回転や振動しても良い。後者の例としてはロータリーキルン反応器が例示できる。本発明においては、機械的に攪拌する機能を有する反応器が回転式の反応器であることが好ましく、ロータリーキルン反応器のような軽微な勾配を有していてよい横型の回転式反応器がより好ましい。反応器内の触媒及び生成したCNTは機械的に攪拌されることで原料である炭素含有ガスと高い均一性で接触することができる。本反応器における反応は、バッチ式であっても、あるいは連続式であってもよい。
【0031】
製造されたCNTは、純度を高めるために活性種および担体を除去することが好ましい。活性種および担体の除去は、具体的には特開2006-69850号公報等に記載された、CNTを塩酸、硝酸、硫酸等の酸に分散させた後、ろ過や遠心分離等の手段によってCNTを回収する方法により行うことができる。
【0032】
<CNT混合体含有量>
本発明の導電性高分子材料のCNT混合体含有量は、目的とする導電性、用途により、一般的には0.1質量%から30質量%であり、好ましくは1質量%から10質量%である。CNT混合体含有量がこれらの下限未満になると、高分子材料中で導電ネットワークが十分に形成されず、高い導電性が得られない場合がある。一方で、CNT混合体含有量がこれらの上限を超えると、得られた導電性高分子材料の流動性が低下する場合がある。
【0033】
<CNT混合体中のCNTの含有量>
本発明に用いられるCNT混合体中のCNT含有量は、5質量%から70質量%である。CNT含有量がこれらの下限未満になると、CNTの導電性付与能が十分得られない場合がある。一方で、CNT含有量がこれらの上限を超えると、得られた導電性高分子材料の流動性が低下したり、CNT混合体のコストが増加する場合がある。
【0034】
本発明のCNT混合体の製造方法、すなわちCNTとCBの混合方法としては、任意の公知の混合方法を用いることができる。好ましくは、V型、水平型、自転公転式等の容器回転型混合器、リボン、スクリュー、パドル式の容器固定型混合器、流動層型混合器、重力式ブレンダー、ボールミル、等が用いられる。また、CNTとCBに液体を添加し、ボールミル、サンドミル、二軸混練機、自転公転式攪拌機、プラネタリーミキサー、ディスパーミキサー等により混合することでスラリーを得て、必要によりスラリーを乾燥させる方法もある。スラリーをそのまま樹脂との混練に用いても良いが、好ましくは乾燥されたCNT混合体を用いる。また、後述する導電性高分子材料の製造の際、溶融樹脂と共にCNTとCBを混合、混練してもよい。この際、CNTとCBを別々に樹脂と混合、混練しても良いし、上記CNT混合体を用いても良い。
【0035】
本発明に用いられる高分子材料は、任意であり、公知の高分子材料が使用できる。本発明に用いられる高分子材料の概念は、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂およびゴムを包含する。
<熱可塑性樹脂>
熱可塑性樹脂の例としては、例えば、可塑剤を含む、または含まないポリ塩化ビニル樹脂;低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリオレフィン系エラストマー(POE)、各種立体規則性のあるいはアタクティックのポリプロピレン、ポリエチレン-プロピレンコポリマー(EPR)、環状ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリルニトリル-スチレン(AS)樹脂等のスチレン系樹脂、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸等のポリ(メタ)アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂、各種ナイロン等のポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミドイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂、液晶ポリエステル樹脂、SBS(スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体)、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体)等のスチレン-ジエン系ブロック共重合体やその水添物、エチレン-スチレン共重合体、再表WO00/037517号公報および国際公開WO07/139116号パンフレットに記載の各種クロス共重合体、石油樹脂、並びにこれらのポリマーアロイなどが挙げられる。
好ましくは、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、アクリルニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブチレンテレフタラート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂から選択されるいずれか1種類以上である。熱硬化性樹脂の例としては、各種のエポキシ樹脂、シアネート樹脂、ベンゾオキサイジン樹脂、ビスマレイミド樹脂が例示できる。
【0036】
本発明に用いられるゴムとしては、特に限定されるものではないが、例えば、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、エピクロヒドリンゴム、フッ素ゴム、天然ゴムが挙げられる。
【0037】
<導電性高分子材料製造法>
本発明の導電性高分子材料、特に熱可塑性樹脂とCNT混合体からなる導電性高分子材料を製造する方法は特に限定されず、公知の適当なブレンド法、混練法を用いることができる。例えば、単軸、二軸のスクリュー押出機、バンバリー型ミキサー、プラストミル、コニーダー、加熱ロールなどで溶融混合を行うことができる。溶融混合を行う前に、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合しておくこともよい。溶融混合温度はとくに制限はないが、100~300℃、好ましくは150~270℃が一般的である。熱硬化性樹脂とCNT混合体からなる導電性高分子材料を製造する方法としては、一般には未硬化の熱硬化性樹脂とCNT混合体、必要に応じて硬化剤、硬化触媒、各種添加剤をバッチ式あるいは連続式の攪拌器やヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーなどで各原料を均一に混合し、その後型に注入し、加熱して硬化する。ゴムとCNT混合体からなる導電性高分子材料を製造する方法としては、一般には生ゴムとCNT混合体、必要に応じて架橋剤、架橋助剤、各種添加剤をバッチ式あるいは連続式の攪拌器や加熱ロールで混合し、必要に応じて型などを用い、加熱により硬化する。
【0038】
<導電性高分子材料の成形方法>
本発明の導電性高分子材料を用いて成形品を得る方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形、インフレーション法、キャスト法、ロール成形法、トランスファー成形法等の成形方法が適用できる。
【0039】
本発明の導電性高分子材料から得られる成形品は、特に電気電子部品搬送用成形品が好適である。例えば、ウエハーのトレー、回路基盤収納ボックス、ハードディスク、CD、DVD、MO等の光や磁気記録媒体の基盤、ハウジング、IC部品ボックス、ICトレー等があり、特にICトレーとして好適に使用される。ICトレーをはじめとした搬送用部品は、塵やほこりの付着を嫌うことから、表面抵抗が低いことが要求されるが、低すぎるとショートの危険性があり好ましくない。具体的には、表面抵抗は102~106Ωcmが好ましく、103~105Ωcmがさらに好ましい。
【0040】
本発明の導電性高分子材料は、導電性フィラーとして、前記CNT混合体以外の成分を含んでもよい。前記CNT以外の導電性フィラーとしては、本願の定義に入らない炭素繊維、人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛、金属粉等を用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により、本発明を説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
【0042】
[比表面積測定]
CNT、CNT混合体の比表面積は、Mountech社製Macsorb HM model-1201を用い、JIS K6217-2に従いBET一点法で求めた。
【0043】
[平均繊維径の算出]
前記方法で求めた比表面積の値を用いて、以下の式によりCNTの平均繊維径を算出した。
平均繊維径(nm)=1000×4/(ρ×S)
ここで、ρはCNTの密度(g/cm3)、SはCNTの比表面積(m2/g)をあらわす。なお、非特許文献Peng-Cheng Maa, Naveed A. Siddiqui a, Gad Marom b, Jang-Kyo Kim a; Dispersionand functionalization of carbon nanotubes for polymer-based nanocomposites: Areview, Composites: Part A 2010; 41: 1345-1367に基づき、CNTの密度は1.8g/cm3とした。算出結果を表2に示す。
【0044】
[粉体抵抗率測定]
<体積抵抗率測定>
CNT粉体、CNT混合体の体積抵抗率は、三菱化学アナリテック社製ロレスタGP:粉体抵抗測定システムMCP-PD51型を用い、23℃、相対湿度50%の雰囲気にて、荷重9.8MPaの条件下、四探針法にて求めた。測定には100mgのサンプルを用いた。
【0045】
[ラマン分光測定]
CNT粉体のラマン分光測定は、顕微レーザーラマン分光分析装置(Niolet Almega-XR型、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、レーザー532nm)を用い行った。
Dバンド(D1:ピーク位置1330cm-1、D3:1500cm-1、D4:1150cm-1)とGバンド(G+:1600cm-1、G-:1570cm-1)の波形分離を行った後、Dバンドピークに由来する面積の総和とGバンドピークに由来する面積の総和の比(D/G)を求めた。本D/Gが低いほどCNTの結晶性が高いことを示している。
(参考)
D1:グラファイト結晶構造内の点欠陥、結晶端由来の欠陥に由来
D3:アモルファスカーボンに由来
D4:ポリエンやイオン性不純物に由来
G+:グラファイトの結晶性ピーク:縦光学モード
G-:グラファイトの結晶性ピーク:横光学モード
【0046】
<分散性評価:レーザ回折・散乱法(ISO 13320:2009)による粒度分布測定>
分散性評価は、粒度分布測定装置(LS 13 320 ユニバーサルリキッドモジュール BECKMAN COULTER社製)にて行なった。
なお、1μm以下の分散粒子の割合およびメジアン径D50値の測定に先立ち、粒度分布測定装置の検定を行ない、下記各検定用試料の測定で得られたメジアン径D50値が以下の条件をすべて満足した場合、装置の測定精度は合格とし、実施例、比較例の粒度分布測定を実施した。
[水分散媒の調製]
蒸留水100mLにカルボキシメチルセルロースナトリウム(以下CMCNaと記載)0.10gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa0.1質量%の水分散媒を調製した。
[CMCNa水溶液の調製]
蒸留水100mLにカルボキシメチルセルロースナトリウム2.0gを添加し、24時間以上常温で撹拌し溶解させ、CMCNa2.0質量%の水溶液を調製した。
【0047】
[検定用試料の調製および検定]
(1)ポリスチレン分散液による検定
粒度分布測定装置(LS 13 320 ユニバーサルリキッドモジュール BECKMAN COULTER社製)に付属された、測定精度確認用LATRON300LS(メジアン径D50値:0.297μm)水分散液を使用した。
光学モデルをポリスチレン1.600、水1.333とそれぞれの屈折率に設定し、モジュール洗浄終了後に前記CMCNa水溶液を約1.0mL充填した。ポンプスピード50%の条件でオフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、粒度分布計に、LATRON300LSを粒子によってビームの外側に散乱する光のパーセントを示す相対濃度が8~12%、もしくはPIDS(偏光散乱強度差)が40%~55%になるように加え、粒度分布測定を行った。粒度(粒子径)に対する体積%のグラフを得て、精度の確認を行った。測定で得られたメジアン径D50値は0.297μm±0.018μm以内、同D10値は0.245μm±0.024μm以内、同D90値は0.360μm±0.036μm以内の範囲に入ることを確認した。
【0048】
(2)アルミナ分散液による検定
バイアル瓶にデンカ社製のアルミナLS-13(メジアン径D50値:45μm)および昭和電工(株)製のアルミナAS-50(メジアン径D50値:6.7μm)をそれぞれ0.120g秤量し、前記水分散媒を12.0g添加し、バイアル瓶を良く振りアルミナ水分散液を作製した。
光学モデルをアルミナ1.768、水1.333とそれぞれの屈折率に設定し、モジュール洗浄終了後に前記CMCNa水溶液を約1.0mL充填した。ポンプスピード50%の条件でオフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、粒度分布計に、調製した上記アルミナ水分散液を粒子によってビームの外側に散乱する光のパーセントを示す相対濃度が8~12%、もしくはPIDSが40%~55%になるように加え、粒度分布測定を行った。粒度(粒子径)に対する体積%のグラフを得て、精度の確認を行った。測定で得られたD50値がLS-13の場合は48.8μm±5.0μm以内、AS-50の場合は、12.6μm±0.75μm以内の範囲に入ることを確認した。
【0049】
[測定前処理]
バイアル瓶にCNTを6.0mg秤量し、前記水分散媒6.0gを添加した。測定前処理に超音波ホモジナイザーSmurtNR-50((株)マイクロテック・ニチオン製)を用いた。
超音波ホモジナイザーの先端に取り付けられ、振動を発生させるチップの劣化がないことを確認し、チップが処理サンプル液面から10mm以上つかるように調整した。チップは超音波発生時間の合計が30分以内、好ましくは新品のチップを使用する。TIME SET(照射時間)を40秒、POW SETを50%、START POWを50%(出力50%)とし、出力電力が一定であるオートパワー運転による超音波照射により均一化させCNT水分散液を作製した。
【0050】
[CNTの粒度分布測定]
前記の方法により調製したCNTの水分散液を用い、CNTの1μm以下の分散粒子の割合およびメジアン径D50値の測定を、以下の方法に従い実施した。LS 13 320 ユニバーサルリキッドモジュールの光学モデルをCNT、1.520、水1.333とそれぞれの屈折率に設定し、モジュール洗浄終了後にCMCNa水溶液を約1.0mL充填する。ポンプスピード50%の条件でオフセット測定、光軸調整、バックグラウンド測定を行った後、粒度分布計に、調製したCNT水分散液を粒子によってビームの外側に散乱する光のパーセントを示す相対濃度が8~12%、もしくはPIDSが40%~55%になるように加え、粒度分布計付属装置により78W、2分間超音波照射を行い(測定前処理)、30秒循環し気泡を除いた後に粒度分布測定を行った。粒度(粒子径)に対する体積%のグラフを得て、メジアン径D50値を求めた。
測定は、CNT1試料につき、採取場所を変え3測定用サンプルを採取して粒度分布測定を行い、メジアン径D50値をその平均値で求めた。
【0051】
本測定に用いるサンプルは、上記規格化された測定前処理以外の分散処理は一切行わない。ここで「上記規格化された測定前処理以外の分散処理」とは、乳鉢等による手動による分散処理、ジェットミルやビーズミル、ボールミル、乳化分散機等の機械的な分散処理や、上記測定前処理以外の超音波ホモジナイザーや超音波洗浄機等超音波を使用する分散処理を含む、分散性に影響を与える公知の分散処理を示す。
【0052】
<CNTの回転式合成反応器>
図4に模式的に示す横型の回転式の反応器100を市販のロータリーエバポレーター回転装置(東京理化器械株式会社製N-1110V)(図示せず)に接続し、バッチ式に反応を行った。反応器100は固定部104(非回転、耐熱性ガラス製)と回転部103(円筒状石英ガラス製)より構成される。さらに、反応器100の中心には固定部104に接続している非回転のガス導入部105(管状、直径12mm)がある。回転部103にはその先端に円筒部内壁に攪拌羽106が付いた反応部107(長さ約20cm、直径5cm)がある。攪拌羽106の配置は
図4のA-A’線端面図に示す通りである。固定部104にはガス導入部105に垂直に接続したガス導入管108及びガス導入部105にまっすぐ接続した熱電対導入管109が設置してある。熱電対導入管109からは、シールされた熱電対110が入り、ガス導入部105の出口の外側で180度反転し、熱電対測温部はガス導入部105の外側で反応部107の中の気相の温度を計測する。熱電対110は3本あり、反応部107の中心、右端部と左端部の温度を測定する。反応部107の外周に配置されたスリーゾーン横型管状電気炉(図示せず)の3つの電気炉を独立して制御することにより反応部107全体を均一に加熱することができる。固定部104の外周部に接続したガス排気管111が設置してあり、反応部107からの排ガスが排出される。
【0053】
<流動材>
回転式合成反応器を用いて反応する際、触媒を機械的に均一に流動させるために流動材として予め固定式合成反応器で製造しておいたカーボンナノチューブ(本発明の流動材用CNT)またはデンカブラックFX-35を使用する。
【0054】
<反応>
反応は、反応器100の反応部107に所定量の触媒、流動材を仕込み、反応器100は水平または若干反応部を下向きに傾斜させ、原料ガスをガス導入管108からガス導入部105、反応部107を経てガス排気管111へ流しながら回転部103を所定の回転数で回転させながら行った。
【0055】
コバルト-酸化マグネシウム担持触媒
(触媒調製例1)
硝酸コバルト六水和物(3N5、関東化学社製)6.17gを量り取り、質量比2:1の蒸留水とエタノール混合溶媒30gに溶解した。この硝酸コバルト水溶液に比表面積0.61m2/gの酸化マグネシウム(DENMAG(登録商標)KMAOH-F、タテホ化学社製)を2.5g加え、湯浴で50℃に保持した状態で1時間撹拌した。撹拌後、エバポレータで水を蒸発させた。得られた固体成分を60℃で24時間真空乾燥し、その後400℃で5時間焼成処理を行った。焼成処理後、得られた固体成分をメノウ乳鉢で粉砕し、コバルト金属が50質量%担持したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒を得た。
【0056】
(触媒調製例2)
硝酸コバルト六水和物(3N5、関東化学社製)18.5gを量り取り、質量比2:1の蒸留水とエタノール混合溶媒30gに溶解した。この硝酸コバルト水溶液に比表面積0.61m2/gの酸化マグネシウム(DENMAG(登録商標)KMAOH-F、タテホ化学社製)を2.5g加え、湯浴で50℃に保持した状態で1時間撹拌した。撹拌後、エバポレータで水を蒸発させた。得られた固体成分を60℃で24時間真空乾燥し、その後400℃で5時間焼成処理を行った。焼成処理後、得られた固体成分をメノウ乳鉢で粉砕し、コバルト金属が100質量%担持したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒を得た。
【0057】
原料の一酸化炭素は、(株)鈴木商館から購入した、G1グレード(純度99.95%)を使用した。
【0058】
<流動材用CNTの合成>
固定式合成反応器に、触媒調製例1にて作製したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒を活性種の含有量が5mgとなるように仕込んだ触媒ホルダーを設置し、窒素を十分流して窒素置換した。さらに、窒素80%、水素20%の還元ガスを大気圧(0.101MPa)下、680℃に昇温し、680℃に達してから30分間保持して触媒の還元を行った。引き続き、一酸化炭素ガス分圧を0.086MPaとし、水素ガス分圧を0.015MPaとした原料ガスを一酸化炭素ガス流量が13NL/g-活性種・分となるように触媒層に通過させ、1時間反応を行った。その後、原料ガスを窒素ガスに切り替え、直ちに冷却した。以降、該製造条件で製造されたCNTを流動材用CNTと呼ぶ。
【0059】
(合成例1 CNT(1)の製造)
回転式合成反応器内に、触媒調製例1にて作製したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒0.62g(活性種量0.25g)と、前記流動材用CNTを0.19g投入し、窒素を十分流して窒素置換しながら、大気圧(0.101MPa)下、反応器を回転速度30rpmで回転させ、昇温を開始した。600℃に達したところで、窒素80%、水素20%の還元ガスに切り替え650℃まで約20分間昇温させた。
650℃到達後、一酸化炭素ガス分圧を0.086MPaとし、水素ガス分圧を0.015MPaとした原料ガスを一酸化炭素ガス流量が3.9NL/g-活性種・分となるように触媒層に通過させ、60分反応を行った。その後、原料ガスを窒素ガスに切り替え、直ちに冷却した。以降、該製造条件で製造されたCNTをCNT(1)と呼ぶ。
【0060】
(合成例2 CNT(2)の製造)
回転式合成反応器内に、触媒調製例1にて作製したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒0.62g(活性種量0.25g)と、前記流動材用CNTを0.19g投入し、窒素を十分流して窒素置換しながら、大気圧(0.101MPa)下、反応器を回転速度30rpmで回転させ、昇温を開始した。560℃に達したところで、窒素80%、水素20%の還元ガスに切り替え610℃まで約20分間昇温させた。610℃到達後、一酸化炭素ガス分圧を0.086MPaとし、水素ガス分圧を0.015MPaとした原料ガスを一酸化炭素ガス流量が1.0NL/g-活性種・分となるように触媒層に通過させ、60分反応を行った。その後、原料ガスを窒素ガスに切り替え、直ちに冷却した。以降、該製造条件で製造されたCNTをCNT(2)と呼ぶ。
【0061】
(合成例3 CNT(3)の製造)
回転式合成反応器内に、触媒調製例1にて作製したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒0.62g(活性種量0.25g)と、前記流動材用CNTを0.19g投入し、窒素を十分流して窒素置換しながら、大気圧(0.101MPa)下、反応器を回転速度30rpmで回転させ、昇温を開始した。560℃に達したところで、窒素80%、水素20%の還元ガスに切り替え610℃まで約20分間昇温させた。610℃到達後、一酸化炭素ガス分圧を0.086MPaとし、水素ガス分圧を0.015MPaとした原料ガスを一酸化炭素ガス流量が1.0NL/g-活性種・分となるように触媒層に通過させ、30分間反応を行った。その後、原料ガスを窒素ガスに切り替え、直ちに冷却した。以降、該製造条件で製造されたCNTをCNT(3)と呼ぶ。
【0062】
(合成例4 CNT(4)の製造)
回転式合成反応器内に、触媒調製例2にて作製したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒0.62g(活性種量0.25g)と、前記流動材用CNTを0.19g投入し、窒素を十分流して窒素置換しながら、大気圧(0.101MPa)下、反応器を回転速度30rpmで回転させ、昇温を開始した。600℃に達したところで、窒素80%、水素20%の還元ガスに切り替え650℃まで約20分間昇温させた。650℃到達後、一酸化炭素ガス分圧を0.086MPaとし、水素ガス分圧を0.015MPaとした原料ガスを一酸化炭素ガス流量が1.0NL/g-活性種・分となるように触媒層に通過させ、30分間反応を行った。その後、原料ガスを窒素ガスに切り替え、直ちに冷却した。以降、該製造条件で製造されたCNTをCNT(4)と呼ぶ。
【0063】
(合成例5 CNT(5)の製造)
回転式合成反応器内に、触媒調製例1にて作製したコバルト-酸化マグネシウム担持触媒0.62g(活性種量0.25g)と、前記流動材用CNTを0.19g投入し、窒素を十分流して窒素置換しながら、大気圧(0.101MPa)下、反応器を回転速度30rpmで回転させ、昇温を開始した。560℃に達したところで、窒素80%、水素20%の還元ガスに切り替え610℃まで約20分間昇温させた。610℃到達後、一酸化炭素ガス分圧を0.086MPaとし、水素ガス分圧を0.015MPaとした原料ガスを一酸化炭素ガス流量が6.8NL/g-活性種・分となるように触媒層に通過させ、60分反応を行った。その後、原料ガスを窒素ガスに切り替え、直ちに冷却した。以降、該製造条件で製造されたCNTをCNT(5)と呼ぶ。
【0064】
(CNT混合体Kの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比95:5にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Kと呼ぶ。
【0065】
(CNT混合体Lの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比97:3にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Lと呼ぶ。
【0066】
(CNT混合体Mの製造)
SuperP(Timcal社製、比表面積62m2/g、DBP吸油量250mL/100g)とCNT(1)を質量比50:50にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Mと呼ぶ。
【0067】
(CNT混合体Nの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比90:10にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Nと呼ぶ。
【0068】
(CNT混合体Oの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比85:15にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Oと呼ぶ。
【0069】
(CNT混合体Pの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比80:20にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Pと呼ぶ。
【0070】
(CNT混合体Qの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比60:40にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Qと呼ぶ。
【0071】
(CNT混合体Rの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比50:50にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Rと呼ぶ。
【0072】
(CNT混合体Sの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比30:70にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Sと呼ぶ。
【0073】
(CNT混合体Tの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(1)を質量比20:80にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Tと呼ぶ。
【0074】
(CNT混合体Uの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(2)を質量比85:15にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Uと呼ぶ。
【0075】
(CNT混合体Vの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(3)を質量比85:15にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Vと呼ぶ。
【0076】
(CNT混合体Wの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(4)を質量比85:15にてCNT混合体Vの製造と同様に混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Wと呼ぶ。
【0077】
(CNT混合体Xの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)とCNT(5)を質量比85:15にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Xと呼ぶ。
【0078】
(CNT混合体Y製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)と、メジアン径D50値が42μm、粉体抵抗率が0.03Ωcm、D/Gが1.7であるFlotube9000(CNano社製)を質量比85:15にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Yと呼ぶ。
【0079】
(CNT混合体Zの製造)
アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)と、メジアン径D50値が42μm、粉体抵抗率が0.03Ωcm、D/Gが1.7であるFlotube9000(CNano社製)を質量比60:40にてスクリュー管に入れ、スパチュラを用いて混合した。以降、該混合条件で製造されたCNT混合体をCNT混合体Zと呼ぶ。
【0080】
表3に、CNT混合体の混合種と割合を示す。
【0081】
表1に各合成CNTの合成方法、触媒、反応温度、原料ガス組成、一酸化炭素ガス分圧、一酸化炭素ガス流量、反応時間を示す。表2にCNTおよびCBの粉体抵抗率、D/G、比表面積、平均繊維径、メジアン径D50を示す。
【0082】
実施例および比較例の混錬条件を以下に示す。また、配合は、表4、5に従った。高分子材料および導電性フィラーを溶融混練し、導電性高分子材料を得た。高分子材料としては、ポリスチレン(G200C、東洋スチレン株式会社製)、ポリプロピレン(J106G、株式会社プライムポリマー製)を使用した。混練機は、ラボプラストミル・マイクロ(株式会社東洋精機製作所製)を使用し、ミキサ部には小型セグメントミキサ KF6(株式会社東洋精機製作所製、容量6立方センチメートル)を使用した。混練は、温度220℃、回転数90rpm、混練時間10分の条件で行った。混練後、導電性高分子材料を、混練時と同じ温度にて、10kgf/cm2で5分間、続いて、100kg/cm2で2分間の条件で、ヒータープレスすることにより、直径20mm、厚さ1mmの導電性高分子材料の平板を得た。前記平板の体積抵抗率測定には、三菱化学アナリテック株式会社製ロレスタGPを使用し、プローブにはESPプローブを用いた。体積抵抗率測定は23℃、相対湿度50%の条件で行った。流動性の尺度であるメルトフローレート(MFR)の測定は東洋精機株式会社製を使用し、ポリスチレンは、温度200℃、荷重5kgf、ポリプロピレンは温度230℃、荷重2.2kgfの条件で行った。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
(実施例1)
導電性フィラーとしてCNT混合体Nを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Nが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0087】
(実施例2)
導電性フィラーとしてCNT混合体Oを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Oが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0088】
(実施例3)
導電性フィラーとしてCNT混合体Rを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Rが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0089】
(実施例4)
導電性フィラーとしてCNT混合体Sを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Sが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0090】
(実施例5)
導電性フィラーとしてCNT混合体Uを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Uが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0091】
(実施例6)
導電性フィラーとしてCNT混合体Vを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体V2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0092】
(実施例7)
導電性フィラーとしてCNT混合体Wを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Wが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0093】
(実施例8)
導電性フィラーとしてCNT混合体Xを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Xが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0094】
(実施例9)
導電性フィラーとしてCNT混合体N使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Nが2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0095】
(実施例10)
導電性フィラーとしてCNT混合体Pを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Pが2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0096】
(実施例11)
導電性フィラーとしてCNT混合体Qを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Qが2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0097】
(実施例12)
導電性フィラーとしてCNT混合体Rを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Rが2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0098】
(実施例13)
導電性フィラーとしてCNT混合体Mを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Mが2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表4に示す。
【0099】
【0100】
(比較例1)
導電性フィラーとして、アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)を使用し、220℃にて溶融混練した。FX-35が2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。体積抵抗率は測定限界(1.0×108Ωcm)以上となった。
【0101】
(比較例2)
導電性フィラーとして、市販のカーボンブラックECP300(ライオンスペシャリティケミカルズ社製、比表面積800m2/g、DBP吸油量365mL/100g)を使用し、220℃にて溶融混練した。ECP300が2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。
【0102】
(比較例3)
導電性フィラーとしてCNT混合体Yを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Yが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。体積抵抗率は測定限界(1.0×108Ωcm)以上となった。
【0103】
(比較例4)
導電性フィラーとして、メジアン径D50値が43であり、粉体抵抗率が0.032ΩcmおよびD/Gが1.7であるFlotube9000(CNano社製)を使用し、220℃にて溶融混練した。Flotube9000が2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。
【0104】
(比較例5)
導電性フィラーとしてCNT(1)を使用し、220℃にて溶融混練した。CNT(1)が2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。
【0105】
(比較例6)
導電性フィラーとしてCNT混合体Tを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Tが2.5質量%、G200Cが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。
【0106】
(比較例7)
導電性フィラーとして、CNT混合体Lを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Lが2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。体積抵抗率は測定限界(1.0×108Ωcm)以上となった。
【0107】
(比較例8)
導電性フィラーとして、アセチレンブラック(デンカ社製デンカブラック、FX-35)を使用し、220℃にて溶融混練した。FX-35が2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。体積抵抗率は測定限界(1.0×108Ωcm)以上となった。
【0108】
(比較例9)
導電性フィラーとして、市販のカーボンブラックECP300(ライオンスペシャリティケミカルズ社製、比表面積800m2/g、DBP吸油量365mL/100g)を使用し、220℃にて溶融混練した。ECP300が2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。体積抵抗率は測定限界(1.0×108Ωcm)以上となった。
【0109】
(比較例10)
導電性フィラーとしてCNT混合体Zを使用し、220℃にて溶融混練した。CNT混合体Zが2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。体積抵抗率は測定限界(1.0×108Ωcm)以上となった。
【0110】
(比較例11)
導電性フィラーとして、メジアン径D50値が43であり、粉体抵抗率が0.032ΩcmおよびD/Gが1.7であるFlotube9000(CNano社製)を使用し、220℃にて溶融混練した。Flotube9000が2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。
【0111】
(比較例12)
導電性フィラーとしてCNT(1)を使用し、220℃にて溶融混練した。CNT(1)が2.5質量%、J106Gが97.5質量%からなる導電性高分子材料を得た。体積抵抗率およびメルトフローレートの測定結果を表5に示す。
【0112】
【0113】
実施例1~14および比較例1~12に示すように、本発明のCNT混合体では、流動性の高い導電性高分子材料が得られているが、CB単独、CNT単独あるいは、本発明の規程範囲以外のCBまたはCNTを使用した混合体では、流動性または導電性で不十分な高分子材料しか得られていない。
【0114】
(実施例14)
実施例4で得られた導電性高分子材料を、二軸押出機(PCM-40、池貝鉄鋼所製)により温度270℃で溶融混練し、表皮材用樹脂ペレットを得た。更に、基材層用の65mm単軸押出機1台と、表皮材用の40mm単軸押出機2台を要した多層シート製膜装置を用い、65mm押出機でABS樹脂(デンカABSSE-20、デンカ社製)を溶融混練し、また40mm単軸押出機で表皮材を溶融混練しマルチマニフォールドダイ内で合流させ3層シートを作製した。得られたシートの表面抵抗値は2.6×104Ω/□であった。
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の熱可塑性導電性高分子材料は、高い導電性および流動性を有するため、例えば、帯電防止材料、発熱体、電磁波シールド材、導電性塗料、電気・電子機器容器、導電性摺動用部材、電池の電極板、金属配線を代替する導電材料、などへの利用が考えられる。
【符号の説明】
【0116】
100 回転式反応器
103 回転部
104 固定部
105 ガス導入部
106 攪拌羽
107 反応部
108 ガス導入管
109 熱電対導入管
110 熱電対
111 ガス排気管