(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ボイラ及び発電システム
(51)【国際特許分類】
F22B 37/40 20060101AFI20220107BHJP
F22B 1/18 20060101ALI20220107BHJP
F22B 33/18 20060101ALI20220107BHJP
F01K 23/10 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F22B37/40
F22B1/18 E
F22B33/18
F22B1/18 K
F01K23/10 U
(21)【出願番号】P 2020126334
(22)【出願日】2020-07-27
(62)【分割の表示】P 2016140552の分割
【原出願日】2016-07-15
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱パワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】馬場 秀敏
(72)【発明者】
【氏名】永井 雅明
【審査官】長尾 裕貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009765(JP,A)
【文献】特開2010-144997(JP,A)
【文献】国際公開第2005/012791(WO,A1)
【文献】特開平04-124501(JP,A)
【文献】特開2000-304203(JP,A)
【文献】特開2007-298244(JP,A)
【文献】特開2001-317893(JP,A)
【文献】特開平08-145301(JP,A)
【文献】特開平08-028808(JP,A)
【文献】実開昭60-076708(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/40
F22B 1/18
F22B 33/18
F01K 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、
隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板と、
前記伝熱管ブロックの垂直方向上面に、前記伝熱管の長手方向に沿う方向に設けられた板状部材を有するガイド部材と、を備え、
前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有し、
前記塞ぎ板の端面は、前記ガイド部材に接触して設けられ
るボイラ。
【請求項2】
前記塞ぎ板の垂直方向下面には、前記塞ぎ板の長手方向に対して直交方向に設けられた板状部材であり、隣接する前記伝熱管ブロックの間の隙間以上の垂直方向に延びる高さを有す
る補助板が設けられる請求項
1に記載のボイラ。
【請求項3】
複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、
隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板と、を備え、
前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有し、
前記塞ぎ板の垂直方向上面には、隣接する前記伝熱管ブロックの間の隙間以上の垂直方向に沿う高さを有する取手部が設けられ
るボイラ。
【請求項4】
複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、
隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板と、を備え、
前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有し、
隣接する前記伝熱管ブロックの間にて、前記塞ぎ板の主面に対して直交方向に設けられた板状部材である複数
の補助板が少なくとも一端側が前記伝熱管ブロックに接合して設けられ、前記塞ぎ板に対応して設置された各前
記補助板どうしの設置間隔は、前記伝熱管ブロックの間の隙間よりも小さ
いボイラ。
【請求項5】
複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、
隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板と、を備え、
前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有し、
前記伝熱管ブロックの隙間において、前記塞ぎ板が前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるよう複数配置され、
前記塞ぎ板の長手方向の端部には、隣接する前記塞ぎ板の長手方向の端部と互いに嵌め合わされる段差構造を有す
るボイラ。
【請求項6】
燃料ガスを燃焼して発生させた高温高圧ガスによって駆動されるガスタービンと、
前記ガスタービンで発生した排ガスが供給される請求項1から
5のいずれか1項に記載のボイラと、
前記ボイラから排出された蒸気によって駆動する蒸気タービンと、
前記ガスタービン及び前記蒸気タービンの少なくともいずれか一つの回転力によって駆動する発電機と、
を備える発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラ及び発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火力発電プラント等において用いられる排熱回収ボイラ(HRSG)のダクトの内部には、燃焼ガスなどの熱回収可能な温度を有する排ガスが流れ、給水や蒸気などと熱交換を行う熱交換器が設けられている。
図19には、熱交換器が低圧節炭器53として適用される排熱回収ボイラ(HRSG)を備えるガスタービンコンバインドサイクル(Gas Turbine Combined Cycle:GTCC)発電システムを示している。なお、
図19に示したガスタービンコンバインドサイクル発電システムについては、本発明の実施形態に係る発明の適用例として後述する。
【0003】
たとえば
図15から
図17に示すように、熱交換器10は、ダクト12の内部において、一側(紙面下側)から他側(紙面上側)へと矢印の方向へと排ガスが流れるように形成されている。熱交換器10は、伝熱管ブロック13が複数配置されており、伝熱管ブロック13は、
図17(
図16の切断方向に対して直交方向に切断した図)に示すように複数の伝熱管30から構成されている。
【0004】
図15及び
図16に示すように、伝熱管ブロック13は製作、施工などの観点から、隣接する伝熱管ブロック13の間には所定の隙間が設けられている。
図15の細い矢印に示すように、伝熱管ブロック13の間の隙間を排ガスが通過する場合、すなわち、排ガスの一部が、伝熱管ブロック13を構成する複数の伝熱管30を通過しないで、ショートパスする場合、伝熱管30での排ガスとの間での熱回収量の低減を招く。そのため、
図16及び
図17に示すように、従来、隣接する伝熱管ブロック13の間に設けられた隙間には、塞ぎ板11が配置される。これにより、伝熱管ブロック13の間の隙間を通過しようとする排ガスの流れの一部が塞ぎ板11によって妨げられ、排ガスは、ショートパスすることなく、伝熱管30側へ流れるため伝熱管30での排ガスとの間での熱回収が可能となる。
【0005】
下記の特許文献1には、再熱器を構成する伝熱管の間にバッフルプレートを複数個入れることが記載されている。排ガス流路断面積を減少させることで、伝熱管間のガス流速を上昇させることが記載されている。また、下記の特許文献2では、蒸発器の管群の一部に設けられたガスバイパス路において、ガスのバイパス量を調節するためのバイパスダンパーを設けることが記載されている。バイパスダンパーの開度を調節してバイパス量を調整することによって、蒸発器とその排ガス下流側熱交換器との吸熱割合を最適化する。さらに、下記の特許文献3においても、過熱器に設けられた排ガス流通路において、加熱器をバイパスする排ガス流量を調整する流量調整機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-161647号公報
【文献】特開2007-298244号公報
【文献】特開2010-144997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排熱回収ボイラを流れる排ガスは、ガスタービン(GT)の出口から排出され、熱回収が可能な温度を有する排ガスである。ガスタービンの燃焼器で燃焼に用いられる空気は、季節(外気温の変化)によって空気密度が変化することから、ガスタービンの排ガス(GT排ガス)の圧力が、季節に応じて変動する。外気温度が高く空気密度が低い夏季は、GTの排ガスの流量が減少して排ガスの圧力が低下し、外気温度が低く空気密度が高い冬季は、GTの排ガスの流量が増加して排ガスの圧力が上昇する。
【0008】
ところで、排熱回収ボイラの運転時において、排熱回収ボイラにおける排ガスの圧力が上昇して所定の値を越えると、GT排ガスの圧力が高くなりGTの運転継続に支障がある状態であると判断され、火力発電プラント等を停止する必要がある。火力発電プラント等では、長年にわたって運転が行われることで、排熱回収ボイラの熱交換器に付着したスケールなどによって、排熱回収ボイラ内を排ガスが通過する際に圧力損失が上昇する場合がある。そのため、特に空気密度が高くGT排ガスの流量が増加して圧力が上昇する冬季において、排熱回収ボイラにおける排ガスが通過する際の圧力損失が上昇して、GT排ガスの圧力が所定の値を越えて、運転継続が困難な状態であると判断される可能性が高い。
【0009】
そこで、排熱回収ボイラにおいて排ガスが通過する際の圧力損失を低減するため、排ガスの一部を、伝熱管ブロックを構成する複数の伝熱管側を通過させないで、圧力損失の増加分を見込んで排ガスの一部を最初から意図的にショートパスさせることが考えられる。しかし、排ガスが伝熱管を通過しないでショートパスを常時に続ける場合、多少なりとも排ガスからの熱回収効率が低下するので、年間を通して排ガスを常にショートパスさせることは、熱回収効率を低下させる要因となり、火力発電プラント等の全体プラントの性能向上を図るには好ましくない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、年間を通しての熱回収効率の低下することを抑制して、ボイラ内を排ガスが通過する際に過剰となる圧力損失の増加を抑制して、GT排ガスの圧力上昇を抑制することが可能なボイラ及び発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のボイラ及び発電システムは以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るボイラは、複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板とを備え、前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有する。
【0012】
この構成によれば、塞ぎ板は、自重によって取り付けられた状態が維持されるため、溶接によって塞ぎ板を伝熱管ブロックに対して取り付ける必要がなく、塞ぎ板の取り外しと取り付け作業を容易に実施することができる。
【0013】
本発明に係るボイラは、前記伝熱管ブロックの垂直方向上面に、前記伝熱管の長手方向に沿う方向に設けられた板状部材を有するガイド部材とを備え、前記塞ぎ板の端面は、前記ガイド部材に接触して設けられる。
【0014】
この構成によれば、塞ぎ板の水平方向の端面の少なくとも一部がガイド部材と接触するため、塞ぎ板の位置が水平方向にずれにくくなり、塞ぎ板と伝熱管ブロックの間の隙間が発生して、排ガスの一部がショートパスして通過することを抑制する。
【0015】
上記発明において、前記塞ぎ板の垂直方向下面には、前記塞ぎ板の長手方向に対して直交方向に設けられた板状部材であり、隣接する前記伝熱管ブロックの間の隙間以上の垂直方向に延びる高さを有する補助板が設けられてもよい。
【0016】
この構成によれば、補助板により塞ぎ板の剛性を向上して変形を抑制するので、塞ぎ板と伝熱管ブロックの間の隙間の発生で、排ガスの一部がショートパスで通過することを抑制する。また、隣接する伝熱管ブロックの間の隙間以上の高さを有する補助板が設けられることから、塞ぎ板が想定外の移動したときや、取り外しと取り付け作業時などに、塞ぎ板が伝熱管ブロックの間から落下することを防止できる。
【0017】
本発明に係るボイラは、複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板と、を備え、前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有し、前記塞ぎ板の垂直方向上面には、隣接する前記伝熱管ブロックの間の隙間以上の垂直方向に沿う高さを有する取手部が設けられている。
【0018】
この構成によれば、隣接する伝熱管ブロックの間の隙間以上の高さを有する取手部が設けられることから、塞ぎ板が伝熱管ブロックの間から落下することを防止できる。
【0019】
本発明に係るボイラは、複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板と、を備え、前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有し、隣接する前記伝熱管ブロックの間にて、前記塞ぎ板の主面に対して直交方向に設けられた板状部材である複数の補助板が少なくとも一端側が前記伝熱管ブロックに接合して設けられ、前記塞ぎ板に対応して設置された各前記補助板どうしの設置間隔は、前記伝熱管ブロックの間の隙間よりも小さい。
【0020】
この構成によれば、各塞ぎ板に対する伝熱管ブロックの間に設けられた複数の補助板の設置間隔は、伝熱管ブロックの間の隙間よりも小さいことから、塞ぎ板が伝熱管ブロックの間から落下することを防止できる。
【0021】
本発明に係るボイラにおいて、前記伝熱管ブロックの垂直方向上面に設けられ、前記伝熱管ブロックの間の隙間の方へ折り曲げられた形状を有する固定具と、前記固定具と前記塞ぎ板の間の隙間に挿入される、垂直方向に高さが変化する傾斜面を保有するストッパーとを備えてもよい。
【0022】
この構成によれば、塞ぎ板が、固定具とストッパーによって、伝熱管ブロックに対して固定される。塞ぎ板と固定具、及び、固定具とストッパーは、簡単に移動しない程度に例えば溶接や点付溶接などによって固定される。この場合、塞ぎ板を全周溶接によって伝熱管ブロックに対して固定する場合に比べて溶接箇所を減らすことができる。したがって、塞ぎ板の取り外しと取り付け作業を容易に実施することができる。
【0023】
本発明に係るボイラにおいて、前記伝熱管ブロックと前記塞ぎ板を挟んで、前記伝熱管ブロックに対して前記塞ぎ板を締め付け力で固定するクランプとを備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、クランプが、伝熱管ブロックと塞ぎ板を挟むことで、塞ぎ板が、クランプによって伝熱管ブロックに対して固定される。この場合、塞ぎ板を全周溶接によって伝熱管ブロックに対して固定する場合に比べて溶接箇所を減らすことができる。したがい、塞ぎ板の取り外しと取り付け作業を容易に実施することができる。
【0025】
本発明に係るボイラは、複数の伝熱管を有する伝熱管ブロックと、隣接する前記伝熱管ブロックとの間に形成された隙間の垂直方向上端部に前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるように取り外し可能に設置され、前記隙間を通過しようとするガスの流れを妨げる塞ぎ板と、を備え、前記塞ぎ板は、前記伝熱管ブロックへ供給されるガスの流体力で移動しない重さを有し、前記伝熱管ブロックの隙間において、前記塞ぎ板が前記伝熱管の長手方向に沿う方向が長手方向になるよう複数配置され、前記塞ぎ板の長手方向の端部には、隣接する前記塞ぎ板の長手方向の端部と互いに嵌め合わされる段差構造を有する。
【0026】
この構成によれば、塞ぎ板の長手方向(縦方向)端部が隣接する他の塞ぎ板の端部によって拘束されるため、塞ぎ板の垂直方向上面と底面との温度差に伴う熱伸び差による塞ぎ板端部の変形(反り)が抑制され、塞ぎ板と伝熱管ブロックの間の隙間が発生して、排ガスの一部がショートパスで通過することを抑制する。
【0027】
本発明に係る発電システムは、燃料ガスを燃焼して発生させた高温高圧ガスによって駆動されるガスタービンと、前記ガスタービンで発生した排ガスが供給される上述したボイラと、前記ボイラから排出された蒸気によって駆動する蒸気タービンと、前記ガスタービン及び前記蒸気タービンの回転力によって駆動する発電機とを備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、年間を通しての熱回収効率の低下を抑制して、排ガスの過剰となる圧力損失の増加を抑制して、GT排ガスの圧力上昇を抑制することできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造を示す縦断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第1変形例を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第2変形例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第3変形例を示す斜視図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第3変形例を示す斜視図であり、塞ぎ板を取り外した状態を示している。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造を示す縦断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造を示す側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造を示す平面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第1変形例を示す側面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第2変形例を示す縦断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第2変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造の第3変形例を示す部分拡大縦断面図である。
【
図14】本発明の第3実施形態に係る伝熱管ブロック間の塞ぎ板構造を示す斜視図である。
【
図16】伝熱管ブロック及び塞ぎ板を示す縦断面図である。
【
図17】伝熱管ブロック及び塞ぎ板を示す縦断面図であり、
図16の切断方向に対して直交方向に切断した図である。
【
図18】伝熱管ブロック間の隙間に設置される塞ぎ板を示す斜視図である。
【
図19】排熱回収ボイラを備えるガスタービンコンバインドサイクル発電システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1実施形態]
火力発電プラント等において用いられる排熱回収ボイラ(HRSG)のダクト12の内部を
図1に示す。排熱回収ボイラのダクト12の排ガス通路断面に垂直な方向を垂直方向とする。
図1では排ガスが流れる方向が垂直方向になり、
図19に示すような縦型の排熱回収ボイラ42では、垂直方向は略鉛直方向になる。ダクト12の配置方向で、垂直方向は、必ずしも鉛直方向に沿う必要はない。
図1に示すように、熱交換器10が設置されていて、本実施形態では、排ガス(ガス)は、熱交換器10の一側(紙面下側)から他側(紙面上側)へと垂直方向へと矢印で示した方向へと流れる。熱交換器10は、伝熱管ブロック13が複数配置されており、伝熱管ブロック13は、複数の伝熱管30から構成されていて、伝熱管30内を流通する給水や蒸気などが排ガスと熱交換をする。隣接する伝熱管ブロック13の間には製作・施工などの観点から所定の隙間が設けられている。なお、伝熱管ブロック13とダクト12の間の隙間には、排ガスをショートパスして通過させないように、伝熱管ブロック13垂直方向上面の一端に固定板14が設置されている。
【0031】
本実施形態では、年間を通して熱交換器10の熱回収効率が低下しないように、隣接する伝熱管ブロック13の間に設けられた隙間に対して、ある期間には塞ぎ板11を配置して排ガスをショートパスして通過させないようにしたり、別の期間には塞ぎ板11を取り外して、排ガスの一部を、複数の伝熱管30側を通過させずにショートパスして通過させたりしている。
【0032】
外気温度が低い期間は、空気密度が高くGTの排ガス流量が増加するので、排熱回収ボイラ内部を排ガスが通過する際の圧力損失が高くなる傾向にある。この期間には、塞ぎ板11が取り外されて、圧力損失を低減させてGT及び排熱回収ボイラの運転の継続を可能とする。
【0033】
他方、外気温度が高い期間は、空気密度が低くGTの排ガス流量が減少するので、排熱回収ボイラ内部の排ガス圧力損失が低くなる傾向にある。この期間には、塞ぎ板11が取り付けられて、熱交換器10の熱回収効率を向上させることができる。
【0034】
また、外気温度の計測に因らずに、ガスタービンの排ガス(GT排ガス)の圧力による判断も可能である。空気密度が高く、伝熱管ブロック13へ供給される排ガスの圧力、すなわち排熱回収ボイラ内部の排ガス圧力が高くなる傾向にある期間は、塞ぎ板11が取り外されて、排熱回収ボイラ内部の排ガスが通過する際の圧力損失を低減させる。
【0035】
他方、空気密度が低く、伝熱管ブロック13へ供給されるガスの圧力、すなわち排熱回収ボイラ内部の排ガス圧力が低くなる傾向にある期間は、塞ぎ板11が取り付けられて、熱交換器10の熱回収効率を向上させることができる。
【0036】
すなわち、所定の閾値として、GTと排熱回収ボイラの仕様や運用状況に応じて、適切な外気温度、又は、GT排ガスの圧力を設定することで、外気温度に応じて、又は、GT排ガスの圧力に応じて、塞ぎ板11を取り外しする期間と取り付ける期間を判断して、排熱回収ボイラの停止期間などを利用して、塞ぎ板11の取り外しや取り付け作業を計画的に実施することが可能となる。
【0037】
外気温度は、ガスタービンの吸気口入口によって測定される。また、GT排ガスの圧力は、ガスタービンの排ガス出口側に設けられた、図示しない圧力計によって測定される。
【0038】
伝熱管ブロック13の間の隙間に設置する塞ぎ板11は、縦方向(紙面直交方向)の縦長さが伝熱管ブロック13の縦方向長さを覆う長さであり、水平方向の横長さが隣接する伝熱管ブロック13間の隙間の幅を覆う長さである。また、垂直方向の板厚はソリ変形が生じにくく溶接などで固定が可能な厚さである。本実施形態では、例えば、縦2,000~4,000mm×横50~200mm×板厚3~5mm程度である。塞ぎ板11を配置して伝熱管ブロック13を排ガスの一部がショートパスして通過しないようにすることで、排ガスは伝熱管30の周囲を通過するので熱交換器10の熱回収効率の低減を抑制できる。但し、この状態では、排熱回収ボイラにおける排ガスの流通による圧力損失は、GT排ガスの流量が増加した場合には高くなる。一方、塞ぎ板11を取り外して、排ガスの一部を、複数の伝熱管30の周囲を通過させずにショートパスして通過させることで、排熱回収ボイラにおける排ガスの圧力損失を低減できる。但し、この状態では、熱交換器10の熱回収効率に多少の低下が生じる。
【0039】
具体的には、ガスタービンが燃焼に用いる空気の空気密度が高くなり排ガス流量が増加する期間、すなわち、外気温度が低くなる期間又はGT排ガスの圧力が高くなる期間(主に冬季)は塞ぎ板11を取り外す。他方、ガスタービンが燃焼に用いる空気の空気密度が低くなり排ガス流量が減少する期間、すなわち、外気温度が高くなる期間又はGT排ガスの圧力が低くなる期間(主に夏季)は塞ぎ板11を取り付ける。
【0040】
冬季は塞ぎ板11が取り外された部分(伝熱管ブロック13の間の隙間)を排ガスの一部が通過し、排ガスの一部が伝熱管30を通過せずにショートパスして通過するため、熱交換器10の熱回収効率が低下する。しかし、排熱回収ボイラにおける排ガスの圧力が過剰な分へと上昇し難くなるので、排ガスの圧力が所定の値を越えにくくなるため、GTの運転継続を控える状態であると判断されることはない。このように、塞ぎ板11を取り外すという作業のみで、GTと排熱回収ボイラを容易に運転継続できるという利点がある。他方、夏季は、塞ぎ板11によって、排ガスの一部がショートパスして通過することを妨げ、排ガスが伝熱管30の周囲を通過することから、熱交換器10の熱回収効率の低下を抑制できる。夏季は、空気密度が低く、排ガス流量が減少して冬季に比べて排熱回収ボイラにおける排ガスの圧力損出は少なくGT排ガスの圧力が上昇していないことから、塞ぎ板11の設置による排熱回収ボイラの排ガス流通による圧力損失の上昇分は、GTの運転継続の妨げとはならない。塞ぎ板11を伝熱管ブロック13の間の隙間に取り付けたり取り外したりすることにより、例えば0.1kPa~0.5kPaの排ガス流通による圧力損失を調整でき、GT排ガスの圧力の変動を吸収できるので、好ましい。
【0041】
[第1実施形態の変形例1]
従来、塞ぎ板11を取り付けたままとしており、塞ぎ板11は、
図18のように全周溶接で固定して伝熱管ブロック13との間に排ガスの一部が漏れて通過することを抑制してある。
図18では、溶接部分を符号Wで表している。したがって、塞ぎ板11を、外気温度に応じて、又は、ガスタービンの排ガス(GT排ガス)の圧力に応じて、例えば夏場と冬場の移り変わり時期に取り付けたり、取り外したりするには、全周溶接で塞ぎ板11を固定するよりも、下記の構成を採用して、取り付けと取り外しをする作業性を改善させることが望ましい。
【0042】
本実施形態では排ガスが
図1の矢印で示す方向である垂直上方向へと排ガスが流れるので、塞ぎ板11は、
図1に示すように、伝熱管ブロック13の垂直方向上面であって、伝熱管ブロック13の間の隙間を塞ぐように配置される。
【0043】
塞ぎ板11は、例えば鋼板であり、表面には腐食防止の表面処理が施されてもよい。塞ぎ板11の板厚は、例えば、t10mm~t30mm程度の厚板として、塞ぎ板11の重量は、排ガスの流体力による圧力で塞ぎ板11が浮かび上がらない重さとする。このように塞ぎ板11の重量を設定することで、塞ぎ板11は、自重によって取り付けられた状態が維持されるため、溶接によって塞ぎ板11を伝熱管ブロック13に対して取り付ける必要がなく、塞ぎ板11の取り付け・取り外し作業を短期間で実施することが可能となる。
【0044】
また、
図1及び
図2に示すように、塞ぎ板11が伝熱管ブロック13の垂直方向上面に設置されたとき、塞ぎ板11の水平方向の両端部にある端面に面するガイド金物(L字金物)15が、伝熱管ブロック13の垂直方向上面において、塞ぎ板11の端面の少なくとも一部と接触して設置されてもよい。ガイド金物15を設けることで、塞ぎ板11の位置が水平方向にずれにくくなる。その結果、塞ぎ板11がボイラ運転中の振動や排ガスの流体力などを受けたとしても、水平方向のずれを防止でき、塞ぎ板11と伝熱管ブロック13の間の隙間が発生して、排ガスの一部がショートパスして通過することを抑制するので好ましい。
【0045】
ガイド金物15は、水平部15aと垂直部15bを有し、水平部15aは、主面が水平方向に延び、伝熱管ブロック13の垂直上面に載置される。垂直部15bは、水平部15aに対して直交方向である垂直方向に延びるように設けられる。
【0046】
[第1実施形態の変形例2]
さらに、本実施形態では、
図3に示すように、各塞ぎ板11の底面に第1補助板16が取り付けられてもよい。第1補助板16は、例えば、幅が30~100mm、高さが100~200mm、板厚が3~10mm程度である。
図3は、配置構造を判り易くするために、
図2と異なり、手前側の伝熱管ブロック13及びガイド金物15の記載を省略した状態を示している。第1補助板16は、縦方向に延在する塞ぎ板11の長手方向の中央付近にて、塞ぎ板11の底面に対して直交方向に、溶接によって取り付けられる。第1補助板16により塞ぎ板11の剛性を向上して、温度差などによるソリ変形を抑制できる。また、第1補助板16の高さと塞ぎ板11の板厚を合わせた長さ(β)が、伝熱管ブロック13間の隙間の幅(α)よりも長くしてある。塞ぎ板11が予測できない状況で移動したときや、取り外しと取り付け作業時などに、仮に塞ぎ板11がガイド金物15から鉛直下方向(本実施形態では垂直下方向)に抜けることがあった場合でも、伝熱管ブロック13の間の隙間へと塞ぎ板11が落下することを防止できる。
【0047】
[第1実施形態の変形例3]
また、本実施形態では、
図4に示すように、第1補助板16の取り付けはないが、取手部17の高さを高くし、塞ぎ板11の板厚と取手部17の高さ(γ)を合わせた長さが、伝熱管ブロック13間の隙間の幅(α)より大きくなるようにしてもよい。取手部17は、縦方向に延在する塞ぎ板11の長手方向の中央付近にて、塞ぎ板11の垂直方向上面に対して直交方向に、溶接によって取り付けられる。この場合も、塞ぎ板11が仮にガイド金物15から鉛直下方向(本実施形態では垂直下方向)に抜けることがあった場合でも、伝熱管ブロック13の間の隙間へと塞ぎ板11が落下することを防止できる。
【0048】
[第1実施形態の変形例4]
さらに、上述した
図3の説明では、第1補助板16が塞ぎ板11の底面に設置される場合について説明したが、
図5及び
図6に示すように、少なくとも1つの第2補助板18が、伝熱管ブロック13の間の隙間に設置されるように、第2補助板18の水平方向の少なくとも一方の端部を伝熱管ブロック13に溶接などで取り付けてもよい。塞ぎ板11が1枚当たり第2補助板18は2対以上を設けると更に好ましい。この場合、複数の第2補助板18が伝熱管ブロック13の間の隙間の縦方向(塞ぎ板11の長手方向)に沿って並んで設置され、梯子状に設けられる。第2補助板18の設置間隔(δ)は、各塞ぎ板11に対して伝熱管ブロック13の間の隙間(α)の幅より小さくすることで、仮に塞ぎ板11がガイド金物15から鉛直下方向(本実施形態では垂直下方向)に抜けることがあった場合でも、伝熱管ブロック13の間の隙間へと塞ぎ板11が落下することを防止できる。
【0049】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る塞ぎ板構造について説明する。
上述した第1実施形態では、塞ぎ板11の厚さをt10mm~t30mm程度の厚板とする場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0050】
塞ぎ板11は、
図7から
図10に示すように、従来程度の板厚(例えば、t3~5mm程度)として、重量物としないで、固定具19を伝熱管ブロック13に溶接固定しておき、塞ぎ板11を固定具19と伝熱管ブロック13の間に挿入し、塞ぎ板11と固定具との間にストッパー20を挿入することで塞ぎ板11を固定する。
【0051】
図7、
図8に示すように固定具19は、伝熱管ブロック13の垂直方向上面から垂直方向上方へ延びて設けられ、垂直方向上部で伝熱管ブロック13の隙間の方に向かって折れ曲がった形状、例えばL字形状を有する。固定具19は、伝熱管ブロック13に対して溶接や締結ボルトなどによって固定される。
図8では、溶接による固定部分を符号W1で示している。
【0052】
伝熱管ブロック13の隙間の間に塞ぎ板11が設置されたとき、固定具19のうち、垂直方向上端部分で伝熱管ブロック13の隙間の方に向かって折れ曲がった部材は、例えば、塞ぎ板11と平行である。そして、伝熱管ブロック13の隙間の間に塞ぎ板11が設置されたとき、固定具19と塞ぎ板11の間に垂直方向に縦長さ(高さ)が変化する傾斜面のあるストッパー20が挿入可能である。固定具19は、例えば、垂直方向の縦:20~50mm×水平方向の横:50~100mm×板厚:3~5mm程度であり、伝熱管ブロック13の隙間を挟んで一つずつ対で設置される。
【0053】
ストッパー20は、例えばクサビ形状を有し、垂直方向に長さ(高さ)が変化する傾斜面を持つものである。固定具19と塞ぎ板11の間で、例えば、塞ぎ板11の長手方向の端部側から中央部側に向かって挿入されたり、塞ぎ板11の長手方向の中央部側から端部側へ向かって挿入されたりする。ストッパー20は、例えば、垂直方向の高さ:10~30mm×水平方向の横:30~50mm×板厚10~20mm程度のサイズを有する。ストッパー20は、固定具19と塞ぎ板11の間に挿入された後、固定具に対して運転中の振動などで簡易に移動しないよう点溶接で固定される。
図8及び
図9では、点溶接部分を符号W2で示している。
【0054】
この構造では、溶接箇所は、固定具19と伝熱管ブロック13との間、固定具19とストッパー20との間に限られる(W1,W2)。そのため、従来の固定方法(全周溶接)に比べ、伝熱管ブロック13との溶接箇所が減少し、塞ぎ板11の取り付けや取り外しの作業期間が短縮される。なお、固定具19は消耗品であり、塞ぎ板11の取り付けや取り外し作業の数回に1度程度で交換される。また、ストッパー20が振動で外れないようにするために、
図10に示すように、ストッパー20を両クサビ状(下側ストッパー20A,上側ストッパー20B)に支持固定してもよい。すなわち、伝熱管ブロック13の隙間を挟んで一つずつ対で設置されるストッパー20は、一方の下側ストッパー20Aが塞ぎ板11の長手方向の端部側から中央部側に向かって挿入され、他方の上側ストッパー20Bが塞ぎ板11の長手方向の中央部側から端部側へ向かって挿入される。下側ストッパー20Aと上側ストッパー20B同士、及び固定具に対しては、運転中の振動などで簡易に移動しないよう点溶接で固定されていると更に好ましい。
【0055】
[第2実施形態の変形例1]
上述した実施形態では、伝熱管ブロック13に対して、固定具19及びストッパー20を用いて溶接によって、塞ぎ板11を固定する構成について説明したが、本発明はこの例に限定されない。
【0056】
例えば、塞ぎ板11は、
図11及び
図12に示すように、締め付け力を保持できるクランプ21を用いて、伝熱管ブロック13に対して固定されてもよい。クランプ21は、例えば、C型クランプ(シャコ万力とも呼ばれる。)である。
【0057】
クランプ21は、伝熱管ブロック13と塞ぎ板11を挟むように、例えば、長方形状の塞ぎ板11の四隅に配置され、クランプ21の締め付けネジ22を調整して、対向する可動口金23と固定口金24との間で塞ぎ板11を締め付け力で固定する。また、塞ぎ板11が縦方向に沿う一方向に長い形状、すなわち長方形状である場合、塞ぎ板11の四隅だけでなく、縦方向に直交する水平方向に沿う短尺方向両側に所定のピッチ、例えば、300~600mmピッチでクランプ21を配置してもよい。従来の固定方法(全周溶接)に比べ、伝熱管ブロック13との溶接箇所が減少し、塞ぎ板11の取り付けや取り外しの作業期間が短縮される。
また、クランプ21の締め付けネジ22により塞ぎ板11の固定圧力を微調整可能であり、数回再使用することが可能である。
【0058】
また、クランプ21の締め付け力の低下抑制のため、可動口金23と塞ぎ板11とを溶接(点溶接)してもよい。
図12では、点溶接部分を符号W3で示している。さらに、また、締め付けネジ22のねじ山を潰してもよい(ねじ山潰し)。これにより、締め付けネジ22が緩まなくなるため、クランプ21の締め付け力の低下を抑制できる。なお、ねじ山を潰した場合は、塞ぎ板11及びクランプ21を取り外した後、使用済みのクランプ21を再利用することはできない。クランプ21を再利用するためには、締め付けネジ22の交換を行うことが好ましい。
【0059】
なお、クランプ21の熱膨張によって締め付け力が低下して、塞ぎ板11のズレやシャコ万力の脱落が生じないように、
図13に示すように、対向する可動口金23と固定口金24との間で塞ぎ板11と共に、クッション材25を挟み込んでもよい。クッション材25は、例えば、軟鋼や銅,エンジニアリングプラスチック等の使用温度(本実施形態では200~300℃)まで弾性を有する素材である。
【0060】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る塞ぎ板構造について説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と重複する構成及び作用効果については、詳細な説明を省略する。
上述した第1及び第2実施形態では、複数の塞ぎ板11が縦方向に沿い長手方向に複数枚配置される。隣接する塞ぎ板11は、平滑な長手方向の端面が互いに突き合わされて配置されてもよいし、本実施形態において、下記のとおり、長手方向の端面に噛み合い形状が施されて互いに若干の自由に動ける程度の隙間を持って接合されてもよい。
【0061】
上述した第1実施形態のように、塞ぎ板11を厚板とすると表裏に温度差が発生することにより反り変形が生じやすくなる。このため、
図14に示すように、隣接する塞ぎ板11の縦方向に沿う長手方向の端部の形状をそれぞれ凸状と凹状とし、隣接する端部同士を互いに若干の自由に動ける程度の隙間を持って篏合させる段差構造とする。すなわち、隣接する2枚の塞ぎ板11のうち、一方の塞ぎ板11の長手方向端部において凸部26が形成され、他方の塞ぎ板11の長手方向端部において凹部27が形成される。凸部26は、塞ぎ板11の板厚方向中央部にて、塞ぎ板11の長手方向端部から長手方向に突出した形状を有し、凹部27は、塞ぎ板11の板厚方向中央部にて、塞ぎ板11の長手方向端部から長手方向に窪んだ形状を有する。
【0062】
この構造により、塞ぎ板11の長手方向端部が隣接する他の塞ぎ板11の長手方向端部によって、相互の長手方向の熱伸びを許容しながら垂直方向の反り変形が拘束されるため、垂直方向上面と底面との温度差を生じて熱伸び差による塞ぎ板11の長手方向端部垂直方向を主とし、さらには面内温度分布があれば水平方向の変形も加わった変形(反り)が抑制され、伝熱管ブロック13と塞ぎ板11の間に隙間の発生を抑制して、この隙間からショートパスして通過する排ガス量を低減できる。
【0063】
なお、塞ぎ板11のような板状部材では、長手方向の板長が長くなるにつれて変形量(反り量)が増加することが知られていることから、塞ぎ板11の板長を短くして反り変形を抑制するようにしてもよい。塞ぎ板11として、厚板を用いることで表裏温度差が大きくなると反り変形を生じる量が大きくなる。したがって、板長を短くして、塞ぎ板11の長手方向端面を凸凹状の嵌め合い構造を持たせたものを組み合わせることによって、反り変形を抑制し、かつ、塞ぎ板11相互間の位置ずれや隙間発生を防止できる。
【0064】
なお、塞ぎ板11同士の嵌め合い構造は、凸部26と凹部27に限られず、L字形状の突出部を組み合わせたものでもよい。
【0065】
以下、本発明の第1から第3実施形態に係る熱交換器10が低圧節炭器53として適用される排熱回収ボイラ(HRSG)を備えるガスタービンコンバインドサイクル(Gas Turbine Combined Cycle:GTCC)発電システムについて説明する。
【0066】
図19に示すように、ガスタービンコンバインドサイクル発電システム40は、ガスタービン41と、排熱回収ボイラ42と、蒸気タービン43と、復水器(コンデンサ)44と、給水循環ライン(給水手段)62とを有する。
【0067】
ガスタービン41は、大気中から空気を吸込んで圧縮機45にて圧縮し、高圧の空気を燃焼器46に送給する。一方、燃料ガスが燃焼器46へ供給され、圧縮機45から供給された高圧の空気によって燃料が燃焼し、高温・高圧のガスとなる。高温・高圧のガスは、タービン47を回転させてガスタービン41を回転駆動する。また、蒸気タービン43が排熱回収ボイラ42で発生する蒸気(低圧蒸気、高圧蒸気)により回転駆動して、圧縮機45を駆動させると共に、蒸気タービン43とガスタービン41の回転駆動の少なくともいずれかで発電機48を回転駆動して電気出力を発生させ、発電を行う。
【0068】
そして、ガスタービン41で燃焼して発生した排ガス(GT排ガス)は、排熱回収ボイラ42に送給される。
【0069】
排熱回収ボイラ42は、ダクト12と、高圧過熱器49と、高圧蒸発器50と、高圧節炭器51と、低圧蒸発器52と、低圧節炭器53などを有する。高圧過熱器49、高圧蒸発器50、高圧節炭器51、低圧蒸発器52、低圧節炭器53は、ダクト12内に排ガスのガス流れ方向に沿って前流側から後流側に向かってこの順に配置されている。上述した熱交換器10は、排熱回収ボイラ42のダクト12内に配置される複数の熱交換器のうち最上部に配置される低圧節炭器53である。
【0070】
ダクト12はガスタービン41からの排ガスが導入されるガス入口部54と、煙突に続く出口ダンパ55とを有する。
図19に示す例では、ダクト12中に形成される排ガスの流路は、垂直上下方向に延びており、垂直下方側から垂直上方側に向けて排ガスが流れるように形成されている。出口ダンパ55は煙突と連結しており、出口ダンパ55から排出される排ガスは煙突から大気に放出される。
【0071】
高圧過熱器49、高圧蒸発器50、高圧節炭器51、低圧蒸発器52及び低圧節炭器53は、ダクト12内に収納されている。高圧過熱器49、高圧蒸発器50、高圧節炭器51、低圧蒸発器52及び低圧節炭器53は、複数の伝熱管30から構成される。また
図19の例では、高圧過熱器49、高圧蒸発器50、高圧節炭器51、低圧蒸発器52及び低圧節炭器53は、ダクト12内に各々の長手方向が水平となるように配置されている。高圧過熱器49、高圧蒸発器50、高圧節炭器51、低圧蒸発器52及び低圧節炭器53は、排ガスの排ガス流路と交差するように設けられ、垂直下方から垂直上方に向けて流れる排ガスに晒されるように配置されている。
【0072】
排熱回収ボイラ42から排出される低圧蒸気、高圧蒸気は、蒸気タービン43へ供給される。蒸気タービン43は、排熱回収ボイラ42で発生した低圧蒸気、高圧蒸気により回転駆動する。蒸気タービン43の駆動源として用いられた低圧蒸気、高圧蒸気は、給水循環ライン62に排出され、復水器44に送給される。復水器44は、蒸気タービン43の駆動源として用いられた低圧蒸気、高圧蒸気を凝縮して復水にする。復水器44から排出される復水はポンプ56により給水循環ライン62を介して排熱回収ボイラ42内に給水として送給される。
【0073】
排熱回収ボイラ42内に送給された給水は、低圧節炭器53に送り込まれて排ガスと熱交換することで加熱され、低圧蒸発器52内で加熱されて低圧ドラム57に送り込まれて気液分離される。低圧ドラム57で気液分離された低圧蒸気は、低圧ドラム57から排出され、蒸気タービン43の低圧蒸気タービン58に供給され、低圧蒸気タービン58を回転駆動させる。
【0074】
また、給水はポンプ59にて加圧された後、高圧節炭器51に送り込まれて加熱された後、高圧蒸発器50内で加熱されて高圧ドラム60に送り込まれて気液分離される。高圧ドラム60で気液分離された高圧蒸気は、高圧ドラム60から排出され、高圧過熱器49で過熱された後、蒸気タービン43の高圧蒸気タービン61に供給され、高圧蒸気タービン61を回転駆動させる。高圧蒸気タービン61から排出された蒸気は、図示しない蒸気配管で低圧蒸発器52内へと送られて再加熱されて低圧ドラム57で気液分離され、蒸気タービン43の低圧蒸気タービン58に供給される。
【0075】
上述したとおり、ガスタービンコンバインドサイクル発電システム40では、ガスタービン41のタービン47を回転させ、ガスタービン41を回転駆動させると共に、低圧蒸気、高圧蒸気を用いて蒸気タービン43の低圧蒸気タービン58、高圧蒸気タービン61を回転させ、蒸気タービン43を回転駆動させて、発電機48を回転駆動して発電を行う。
【0076】
また、低圧蒸気、高圧蒸気は、各々蒸気タービン43へ供給された後、復水器44に供給され、復水となり、排熱回収ボイラ42に給水として循環される。排熱回収ボイラ42で生成された低圧蒸気、高圧蒸気は蒸気タービン43に供給され、蒸気タービン43を回転駆動させ、蒸気タービン43とガスタービン41の回転駆動の少なくともいずれかで発電機48を回転駆動して発電を行う。
【0077】
以上、本発明の第1から第3実施形態によれば、伝熱管ブロック13と間の隙間に塞ぎ板11を取り付けたり、取り外したりすることで、外気温度、すなわち空気密度の変化によるGT排ガスの流量変動や排ガスの圧力の変動を吸収でき、排熱回収ボイラにおける排ガスの圧力損失が増加してGT排ガスの圧力が上昇する場合でも、GT排ガスの圧力が所定の圧力値を越える状態を回避できる。その結果、GTを停止させることなく、運転継続することが可能となる。
【0078】
また、本発明の第1から第3実施形態によれば、塞ぎ板11の全周を溶接する場合に比べて、塞ぎ板11の取り付け取り外しの設置作業性が向上するため、設置作業期間の短縮が可能となる。
【符号の説明】
【0079】
10 :熱交換器
11 :塞ぎ板
12 :ダクト
13 :伝熱管ブロック
14 :固定板
15 :ガイド金物
15a :水平部
15b :垂直部
16 :第1補助板
17 :取手部
18 :第2補助板
19 :固定具
20 :ストッパー
20A :下側ストッパー
20B :上側ストッパー
21 :クランプ
22 :締め付けネジ
23 :可動口金
24 :固定口金
25 :クッション材
26 :凸部
27 :凹部
30 :伝熱管
40 :ガスタービンコンバインドサイクル発電システム
41 :ガスタービン
42 :排熱回収ボイラ
43 :蒸気タービン
44 :復水器
45 :圧縮機
46 :燃焼器
47 :タービン
48 :発電機
49 :高圧過熱器
50 :高圧蒸発器
51 :高圧節炭器
52 :低圧蒸発器
53 :低圧節炭器
54 :ガス入口部
55 :出口ダンパ
56 :ポンプ
57 :低圧ドラム
58 :低圧蒸気タービン
59 :ポンプ
60 :高圧ドラム
61 :高圧蒸気タービン
62 :給水循環ライン