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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】抗体を精製するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 1/34 20060101AFI20220128BHJP
   C07K 16/18 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07K1/34
C07K16/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020132960
(22)【出願日】2020-08-05
(62)【分割の表示】P 2017525326の分割
【原出願日】2015-07-27
(65)【公開番号】P2020189853
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2020-08-05
(31)【優先権主張番号】62/028,994
(32)【優先日】2014-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511266520
【氏名又は名称】ユナイテッド セラピューティクス コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】508285606
【氏名又は名称】ザ ユナイテッド ステイツ オブ アメリカ, アズ リプレゼンテッド バイ ザ セクレタリー, デパートメント オブ ヘルス アンド ヒューマン サービシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087871
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 積
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド メー
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー アトラグベ
(72)【発明者】
【氏名】マーク ジー.ファーカーソン
(72)【発明者】
【氏名】サミール シャバン
(72)【発明者】
【氏名】メアリー コレック
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ ミトラ
【審査官】田村 直寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0336957(US,A1)
【文献】特表2009-539403(JP,A)
【文献】特表2008-546387(JP,A)
【文献】国際公開第2013/075849(WO,A1)
【文献】BioProcess International,2003年05月,pp. 43-44,46-49
【文献】Journal of Clinical Oncology, 2009, Vol.27, No.1, p.85-91
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/34
C07K 16/18
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ch14.18モノクローナル抗体を精製するための方法であって、
(a)前記モノクローナル抗体を含む第一の組成物をアフィニティクロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第二の組成物を得;
(b)前記第二の組成物のpHを低下させて第三の組成物を得;
(c)溶媒洗浄剤を用いて前記第三の組成物を洗浄して第四の組成物を得;
(d)前記溶媒洗浄剤を除去するために前記第四の組成物を洗浄して第五の組成物を得;
(e)前記第五の組成物を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第六の組成物を得;
(f)前記第六の組成物をナノろ過にかけて、第七の組成物を得、ここで、第七の組成物はビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタンを含み
(g)前記第七の組成物を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体及びビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタンを含む第八の組成物を得;および
(h)PBSを含む組成物へと前記第八の組成物をダイアフィルトレーションして、前記モノクローナル抗体を含むが、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタンを実質的に含まない第九の組成物を得ること
を含む、方法。
【請求項2】
前記第八の組成物中のビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタンの濃度は、pH6.3~6.7において10~50mMのビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記PBSの濃度は、10~50mMのリン酸ナトリウム及び100~200mMのNaClである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記モノクローナル抗体は、前記第九の組成物へとダイアフィルトレーションされる前に、少なくとも2.0~5.0AUの濃度に濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記モノクローナル抗体は、前記第九の組成物へとダイアフィルトレーションされる前に、少なくとも4.0~6.0AUの濃度に濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記陰イオン交換クロマトグラフィーカラムは、Capto(商標)吸着カラムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも3容積単位の前記第八の組成物は、1容積単位の、PBSを含む前記第九の組成物へとダイアフィルトレーションされる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも5容積単位の生物学的組成物は、1容積単位の、PBSを含む組成物へとダイアフィルトレーションされる、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第九の組成物は、ヒスチジンを含む組成物へとさらにダイアフィルトレーションされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年7月25日に出願された米国仮出願第62/028,994号の利益を請求し、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
モノクローナル抗体及び他の生物学的材料を精製するための既知の方法は、望ましくない不純物を除去するためにしばしば必要とされる。それは、生物学的製剤が治療用途のために生産される場合に特に重要である。不純物を除去するための1つの方法は、ダイアフィルトレーション (diafiltration)による方法である。ダイアフィルトレーションは、当核分野で公知であり、そして例えば、Wayne P. Olson, Separations Technology: Pharmaceutical and Biotechnology Applications (Interpharm Press 1995); Munir Cheryan, Ultrafiltration and Microfiltration Handbook (2d ed. CRC Press 1998); Stefan Behme, Manufacturing of Pharmaceutical Proteins (Wiley-VCH 2009);及びGlyn N. Stacey, Medicines from Animal Cell Culture (John Wiley 2007)(それらの全ては、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0003】
Ch14.18(また、本明細書においては、「ジヌトキシマグ(dinutuximab)」とも呼ばれる)は、抗GD2モノクローナル抗体であり、そしてその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Gillies et al., Journal of Immunological Methods 125:191-202 (1989)に記載されている。治療目的のためにch14.18抗体を用いる場合、モノクローナル抗体の安全性及び有効性を確保するために、不純物、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-tris)を除去することが重要である。従って、生物学的組成物から所望しない不純物を除去する方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載される本発明の多くの実施形態は、リン酸緩衝食塩水 (PBS)を用いて生物学的組成物をダイアフィルトレーションし、精製された組成物を得ることを含む、生物学的組成物の精製方法に関する。
【0005】
1つの実施形態によれば、生物学的組成物は、少なくとも1つの単離されたタンパク質を含む。
【0006】
1つの実施形態によれば、前記単離されたタンパク質はモノクローナル抗体である。1つの実施形態によれば、前記モノクローナル抗体は、ch14.18である。
【0007】
1つの実施形態によれば、生物学的組成物はさらに、少なくとも1つの不純物を含む。1つの実施形態によれば、不純物は、ビス(2-ヒドロキシエチル)アミン-トリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-tris)である。1つの実施形態によれば、生物学的組成物中のBis-トリスの濃度は、6.3~6.7のpHで、10~50mMのBis-trisである。
【0008】
1つの実施形態によれば、ダイアフィルトレーションは、生物学的組成物からBis-trisの少なくとも70%を除去する。
【0009】
1つの実施形態によれば、PBSの濃度は、10~50mMのリン酸ナトリウム及び100~200mMのNaClである。
【0010】
1つの実施形態によれば、モノクローナル抗体は、PBSを含む組成物にダイアフィルトレーションされる前、少なくとも2.0~5.0AUの濃度に濃縮される。1つの実施形態によれば、モノクローナル抗体は、PBSを含む組成物にダイアフィルトレーションされる前、少なくとも4.0~6.0AUの濃度に濃縮される。
【0011】
1つの実施形態によれば、前記方法はさらに、少なくとも1つのクロマトグラフィーを用いて、モノクローナル抗体を単離し、そして精製することを含む。
【0012】
1つの実施形態によれば、前記方法は、少なくとも1つのアフィニティクロマトグラフィーカラム、少なくとも1つの陽イオン交換クロマトグラフィーカラム、及び/又は少なくとも1つの陰イオン交換クロマトグラフィーカラムを使用して、モノクローナル抗体を単離し、そして精製することを含む。1つの実施形態によれば、陰イオン交換クロマトグラフィーカラムは、Capto(商標)吸着カラム (adhere column)である。1つの実施形態によれば、モノクローナル抗体は、Bis-trisを含む組成物を使用して、Capto(商標)吸着カラムから溶出される。
【0013】
1つの実施形態によれば、少なくとも3容積単位(volume unit)の生物学的組成物が、1容積単位の、PBSを含む組成物へとダイアフィルトレーションされる。1つの実施形態によれば、少なくとも5容積単位(volume unit)の生物学的組成物が、1容積単位の、PBSを含む組成物へとダイアフィルトレーションされる。
【0014】
1つの実施形態によれば、精製された組成物は、ヒスチジンを含む組成物へと、さらにダイアフィルトレーションされる。
【0015】
モノクローナル抗体を精製するための方法がさらに記載され、ここで前記方法は、(a)前記モノクローナル抗体を含む第一の組成物をアフィニティクロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第二の組成物を得;(b)前記第二の組成物のpHを低下させて第三の組成物を得;(c)溶媒洗浄剤(solvent-detergent)を用いて前記第三の組成物を洗浄して第四の組成物を得;(d)前記溶媒洗浄剤を除去するために前記第四の組成物を洗浄して第五の組成物を得;(e)前記第五の組成物を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第六の組成物を得;(f)前記第六の組成物をナノろ過にかけて、第七の組成物を得;(g)前記第七の組成物を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体及びBis-trisを含む第八の組成物を得;(h)PBSを含む組成物へと前記第八の組成物をダイアフィルトレーションして、前記モノクローナル抗体を含むが、Bis-trisを実質的に含まない第九の組成物を得ること、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、PBSを用いたダイアフィルトレーションの後、ch14.18の弱陽イオン交換HPLC分析を示す。ラインAは、PBSを用いてダイアフィルトレーションされたch14.18を表す。ラインBは、HBSへとダイアフィルトレーションされたch14.18を表す。
図2図2は、弱陽イオン交換HPLCカラムにロードされた25mMのBis-trisのサンプルを示し、そして約7分の保持時間を有するピークがBis-trisによるものであることを示す。弱陽イオン交換による25mMのBis-tisの評価。ラインAは215nmでモニターされた吸光度を示す。ラインBは、280nmでモニターされた吸光度を示す。
図3図3は、新規又は使用済み樹脂からのCapto(商標)吸着溶離液プールの弱陽イオンHPLCを示し、そして約7分でのピークがBis-trisによるものであり、そして以前の使用からのカラム上のいくらかの汚染物質によるものではないことを実証する。Capto(商標)吸着溶離液プールのサンプルは、新規又は使用済みクロマトグラフィーカラム由来のch14.18を有さない。ラインAは、新規カラム由来のサンプルに関する。ラインBは、使用済みカラム由来である。
図4図4は、PBSへのダイアフィルトレーションの前、汚染物質によりスパイクされた(spiked)、ch14.18の弱陽イオン交換HPLCクロマトグラフィーを示す。ラインAは、汚染物質のスパイクなしでのch14.18を表す。ラインBは、リン酸トリブチル及びポリソルベート80によりスパイクされたch14.18を表す。ラインCは、メトトレキセートによりスパイクされたch14.18を表す。精製方法由来の微量添加物のいずれも、約7分でのピークに関与していない(図1及び2)。
図5図5は、モノクローナル抗体(例えば、ch14.18)を精製するためのプロセスフローチャートの1つの実施形態を示す略図を提供する。この精製方法は、当初は、国立癌研究所(NCI)により開発され(実施例2を参照のこと)、そして続いて、United Therapeutics Corpにより改良された(実施例1を参照のこと)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
好ましい実施形態の詳細な説明
本明細書に記載される多くの実施形態は、精製された組成物を得るために、リン酸緩衝食塩水(PBS)により生物学的組成物をダイアフィルトレーションすることを含む、生物学的組成物の精製方法に関する。
【0018】
生物学的組成物
【0019】
当核分野で公知の多くの生物学的組成物は、本明細書に記載される方法を用いて精製され得る。生物学的組成物は、化学的に合成された材料よりもむしろ、生物学的に創造された少なくとも1つの材料、例えばタンパク質、核酸、細胞、組織、ワクチン及び血液、又はそれらの成分を含むことができる。
【0020】
生物学的組成物は、例えば組換えタンパク質を含む、少なくとも1つの単離されたタンパク質を含むことができる。生物学的組成物は、例えば少なくとも1つの単離された核酸を含むことができる。生物学的組成物は、例えば少なくとも1つのモノクローナル抗体を含むことができる。
【0021】
1つの特定の実施形態によれば、生物学的組成物は、少なくとも1つのch14.18モノクローナル抗体を含むが、但し他の抗体及び生物製剤は本明細書に開示される教示により精製され得る。
【0022】
生物学的組成物は、例えば少なくとも1つの不純物を含むことができる。その不純物は、例えば所望しない塩、例えばBis-trisであり得る。生物学的組成物中のBis-tris不純物の濃度は、例えば1~100mMのBis-tris、又は10~50mMのBis-tris、又は20~40mMのBis-trisであり得る。pHは、例えば、6~7、又は6.3~6.7、又は6.4~6.6であり得る。
【0023】
PBSを用いるダイアフィルトレーション
【0024】
いくつかの実施形態によれば、本明細書に記載される方法は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6容積単位の生物学的組成物を1容積単位のPBSへとダイアフィルトレーションすることを含む。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、生物学的組成物は、所望しないBis-trisを含み、そして本明細書に記載される方法は、PBSダイアフィルトレーションにより、生物学的組成物からBis-trisの少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又は少なくとも95%を除去することを含む。
【0026】
PBSの濃度は、例えば10~50mMのリン酸ナトリウム、及び100~200mMのNaClであり得る。
【0027】
いくつかの実施形態によれば、PBSによるダイアフィルトレーションの前、生物学的組成物は最初に、濃縮される。
【0028】
いくつかの実施形態によれば、PBSダイアフィルトレーションの後、生物学的組成物は、20mMのヒスチジン、150mMのNaCl及び0.05% Tween20塩水(HBS)を含む製剤へダイアフィルトレーションされる。
【0029】
モノクローナル抗体の単離
【0030】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態によれば、前記方法はまた、PBSダイアフィルトレーションの前、モノクローナル抗体を単離し、そして精製することも含む。モノクローナル抗体は、例えば少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムにより単離され、そして精製され得る。モノクローナル抗体は、例えば、少なくとも1つのアフィニティクロマトグラフィーカラム、少なくとも1つの陽イオン交換クロマトグラフィーカラム、及び/又は少なくとも1つの陰イオン交換クロマトグラフィーカラムにより単離され、そして精製され得る。陰イオン交換クロマトグラフィーカラムは例えば、Capto(商標)吸着カラムであり得る。
【0031】
Capto(商標)吸着カラムは、当核技術分野において公知であり、そしてGE Healthcare Life Sciencesから市販されている。それは、充填層クロマトグラフィーによるプロテインA媒体への捕捉の後、モノクローナル抗体の中間精製及び研磨のためのマルチモーダル媒体である。本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、Capto(商標)吸着カラムを用いてのモノクローナル抗体の精製を含み、ここで前記モノクローナル抗体は、Bis-tris緩衝液を含む組成物により溶離される。次に、溶離された抗体製剤は、上記で論じられたように、PBSを含む製剤にダイアフィルトレーションされ、そして任意にはさらに、HBSを含む製剤にダイアフィルトレーションされる。
【0032】
本明細書に記載される方法は、例えば産生されたモノクローナル抗体を含む生物学的組成物を濃縮することを、さらに含むことができる。
【0033】
本明細書に記載される方法は、例えばプロテインA平衡化緩衝液への生物学的組成物のダイアフィルトレーションを、さらに含むことができる。特定の態様によれば、プロテインA平衡化緩衝液は、7.0~8.0のpHであって、25~100mMのリン酸ナトリウム、0.5~2.0MのNaClを含むことができる。
【0034】
本明細書に記載される方法は、例えばアフィニティクロマトグラフィーカラム、例えばプロテインA親和性カラムに生物学的組成物を通すことを、さらに含むことができる。
【0035】
本明細書に記載される方法は、例えば生物学的組成物のpHを下げることによるウィルス不活性化を、さらに含むことができる。
【0036】
本明細書に記載される方法は、例えば溶媒洗浄剤による生物学的組成物の洗浄によるウィルス不活性化を、さらに含むことができる。特定の態様によれば、溶媒洗浄剤は、10~25%のポリソルベート(TWEEN)、5~10%のリン酸トリブチルを含む。
【0037】
本明細書に記載される方法は、例えば、何れかの溶媒洗浄剤を除去するために生物学的組成物を洗浄することを、さらに含むことができる。
【0038】
本明細書に記載される方法は、例えば50HS平衡化緩衝液に生物学的組成物をダイアフィルトレーションすることを、さらに含むことができる。特定の態様によれば、50HS平衡化緩衝液は、4.0~5.5のpHであって、5~20mMのクエン酸塩、5~30mMのリン酸塩、15~100mMの塩化ナトリウムを含む。
【0039】
本明細書に記載される方法は、例えば陽イオン交換アフィニティクロマトグラフィーカラム、例えば50HSカラムに生物学的組成物を通すことを、さらに含むことができる。
【0040】
本明細書に記載される方法は、例えば生物学的組成物を、ナノろ過にかけることを、さらに含むことができる。
【0041】
本明細書に記載される方法は、例えば陰イオン交換アフィニティクロマトグラフィーカラム、例えばCapto(商標)吸着カラムに、PBSダイアフィルトレーションの前、生物学的組成物を通すことを、さらに含むことができる。モノクローナル抗体は、Bis-tris緩衝液を用いて、Capto(商標)吸着カラムから溶離され得る。
【0042】
本明細書に記載される方法は、例えばPBSダイアフィルトレーションの後、ヒスチジン緩衝液に生物学的組成物をダイアフィルトレーションすることを、さらに含むことができる。
【0043】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載される方法は、以下の工程:
(a)前記モノクローナル抗体を含む第一の組成物をアフィニティクロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第二の組成物を得;
(b)前記第二の組成物のpHを低下させて第三の組成物を得;
(c)溶媒洗浄剤(solvent-detergent)を用いて前記第三の組成物を洗浄して第四の組成物を得;
(d)前記溶媒洗浄剤を除去するために前記第四の組成物を洗浄して第五の組成物を得;
(e)前記第五の組成物を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第六の組成物を得;
(f)前記第六の組成物をナノろ過にかけて、第七の組成物を得;
(g)前記第七の組成物を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体及びBis-trisを含む第八の組成物を得;
(h)PBSを含む組成物へと前記第八の組成物をダイアフィルトレーションして、前記モノクローナル抗体を含むが、Bis-trisを実質的に含まない第九の組成物を得ること、を含む。
【実施例
【0044】
実施例1-弱陽イオン交換HPLCアッセイの開発
【0045】
ch14.18精製方法の開発において、目的は、国立癌研究所(HCI)により最初に開発された精製方法を改善することであった(NCIにより最初に開発された方法については、図5を参照のこと)。さらなる目的は、使用の前、樹脂を衛生的にするのに有用であり得る、より良好な容量、より良好な流動特性を有するか、又はより苛酷な化学物質に耐性があるクロマトグラフィー樹脂にアップグレートすることであった(例えば、GE HealthcareのCapto(商標)吸着樹脂)。
【0046】
最後の2つのクロマトグラフィー工程(図5のセクション18及び19を参照のこと)に関しては、NCIは、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーカラムを用いて、ch14.18の凝集体及び二量体を除去し、続いて研磨樹脂としてQ Sepharose 陰イオン交換樹脂を使用した。それらは、ウィルス、凝集体及び微量汚染物を除去する樹脂、すなわちGE Healthcare のCapto(商標)吸着樹脂(例えば、GE Healthcare Life Sciences, Instructions 28-9064-05 Capto(商標) 吸着アフィニティクロマトグラフィー製品マニュアルを参照のこと、その内容は参照により本明細書に完全に組み込まれ、そしてhttps://www.gelifesciences.com/gehcls_images/GELS/Related%20Content/Files/1334667780708/litdoc28906405_20120420104439.pdfで入手できる)にアップグレートされた。この樹脂は、混合モード樹脂であり、陰イオン交換と疎水性相互作用との組み合わせである。それは、フリースルーモードで操作され、ここで汚染物は、樹脂に結合し、一方では、ch14.18モノクローナル抗体は結合せず、そしてフロースルーに残存した。
【0047】
ch14.18の精製が修正されるのと同時に、品質指示アッセイもまた開発された。それらの1つは、弱陽イオン交換クロマトグラフィーHPLCアッセイであった。このために、TOSOHのTSKGEL CM-3SWカラムを使用し、ch14.18の純度を評価した。この分析に関しては、カラムに結合され、そして塩勾配としてカラムを溶出される抗体を、カラムに通した。カラムを、低塩のリン酸ナトリウム緩衝液(緩衝液A)により平衡化し、そして勾配を、高められた濃度のリン酸ナトリウム/過塩素酸ナトリウム緩衝液(緩衝液B)で生ぜしめた。この分離方法を用いて、カラム溶出液を、215nmでモニターし、そしてch14.18ピークを、注入の約15~19分後、カラムから溶出した。ch14.18の保持時間は、前記方法及び勾配が最適化されるにつれて、変化した。アッセイの開発の間、ch14.18の種々のサンプルを試験し、そしてそれらのいくつかにおいては、約7.5分の保持時間を有する、かなり大きなピークが観察された。この汚染物を同定しようとする際、ch14.18のサンプルを、製造方法において初期で添加された汚染物によりスパイクした(図1を参照のこと)。汚染物を含まなかったch14.18のサンプルを、メトトレキセート又はリン酸トリブチル及びポリソルベート80によりスパイクした。それらの汚染物の何れも、7.5分の保持時間を有するピークの源であるとは思えなかった。
【0048】
サンプル源を追跡し、そしてサンプルが精製方法のどの工程から得られたかを通して、問題のピークは、精製方法における最終研磨工程であるCapto(商標)吸着クロマトグラフィー処理の後にのみ見られたことが注目された。汚染物は、いくらかの微量汚染物、例えばカラム上で共精製され、そして濃縮する、細胞培養方法由来の宿主細胞であると思われた。使用済みカラム又は新しいカラム上にロードされた、Capto(商標)吸着カラム上での模擬試験からのサンプルを、弱陽イオン交換クロマトグラフィーHPLCにより評価した(図2を参照のこと)。ほぼ同じ濃度で、7.5分の汚染ピークが両サンプルに見出され、このことは、汚染物が上流の汚染物に由来しなかったことを示唆する。
【0049】
サンプルを含む、ch14.18のサンプルの起源及び、それを含まないサンプルの起源を追跡することにより、汚染物は、Capto(商標)吸着精製工程のために使用される緩衝塩であるBis-trisであることが明らかになった(図3を参照のこと)。
【0050】
汚染物を同定すると、全精製工程を経た、精製されたch14.18のいくつかは、Bis-trisピークを含んでいたのに対して、他のサンプルは含んでいなかった理由が次に調べられた。NCIにより使用されるリン酸緩衝食塩水(PBS)中の処方物から移行された、20mMのヒスチジン、150mMのNaCl、0.05%Tween20生理食塩水(HBS)中の最終抗体製剤もまた、開発されている。ch14.18を含むCapto(商標)吸着生成物プールを、HBS緩衝液に直接ダイアフィルトレーションした場合、Bis-trisピークが保持液プールからダイアフィルトレーションしなかったことに注目すべきである。しかしながら、このプールがまず、リン酸緩衝食塩水に、次に、HBS緩衝液にダイアフィルトレーションされる場合、Bis-trisは溶液から完全に除去された。図4は、HBSにダイアフィルトレーションされるか又はPBSによりダイアフィルトレーションされたCapto(商標)吸着クロマトグラフィー工程からのch14.18を示す。
【0051】
結論として、Capto(商標)吸着カラムは、モノクローナル抗体の精製のためにバイオテクノロジー産業において一般的に使用される。それは、微量汚染物、例えば残留プロテインAリガンド、残留宿主細胞DNA、残留宿主細胞タンパク質、抗体凝集体、及びウィルスの除去に有用である。PBSを用いるダイアフィルトレーションが、モノクローナル抗体、例えばch14.18の最終製剤化の前、Bis-tris不純物を除去するのに効果的手段であることが判明した。
【0052】
実施例2-プロセスフローチャート
【0053】
プロセスフローチャートが、モノクローナル抗体(例えば、ch14.18)を精製するための1つの実施形態を示す図5に提供されている。示される工程は、厳密に限定されることを意味するものではなく、そして当面の方法の特定の必要性及び状況に応じて調整され得る。図5の方法は一般的に次の工程を参照している:
【0054】
セクション8.モノクローナル抗体の産物 (harvest)(例えば、粗産物)の初期プール及びろ過。
【0055】
セクション9.セクション8の産物をアフィニティクロマトグラフィーカラム(例えば、プロテインAクロマトグラフィーカラム)に通して、モノクローナル抗体を含む第2組成物を得ること。
【0056】
セクション10.第2組成物のpHを下げることによりウィルスを不活性化し、第3組成物を入手すること。次に、第3組成物を、溶媒洗浄剤により洗浄し、第4組成物を得、次にこれを、再び洗浄し、溶媒洗浄剤を除去し、第5組成物を得る。
【0057】
セクション11.第5組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(例えば、SPセファロースFFクロマトグラフィー)に通し、モノクローナル抗体を含む第6組成物を得ること。プロテインAクロマトグラフィーは反復され(セクション12)、続いてウィルス不活性化が反復され(セクション13)、続いて陽イオン交換クロマトグラフィー(例えば、セファロース)が反復され得る(セクション14)。次に、セファロースのランをプールし、第6組成物を形成する。
【0058】
セクション16、第6組成物を、ナノろ過にかけ、さらにウィルスを除去し、第7組成物を得ること。
【0059】
セクション17、18、19。第7組成物を、Superdex 200サイズ排除クロマトグラフィーカラムに通すことにより、モノクローナル抗体の凝集体及びダイマーを除去し、モノクローナル抗体を濃縮すること。組成物をQセファロース陰イオン交換樹脂に通し、モノクローナル抗体を含む第8組成物を入手する。
【0060】
セクション20。濃縮及び最終ろ過。その後、第8組成物を濃縮及び最終ろ過し、例えばPBSを含む組成物へのダイアフィルトレーションにかけ、モノクローナル抗体を含む第9組成物を入手する。
【0061】
さらなる実施形態
【0062】
実施形態1-リン酸緩衝食塩水(PBS)を用いて生物学的組成物をダイアフィルトレーションし、精製された組成物を得ることを含む、生物学的組成物を精製するための方法。
実施形態2-前記生物学的組成物は少なくとも1つの単離されたタンパク質を含む、実施形態1の方法。
実施形態3-前記生物学的組成物は少なくとも1つの単離されたモノクローナル抗体、例えばch14.18を含む、実施形態1~2の方法。
実施形態4-前記生物学的組成物はさらに、少なくとも1つの不純物、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ-トリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-tris)を含む、実施形態1~3のいずれかの方法。
実施形態5-前記生物学的組成物はさらに、pH6.3~6.7において10~50mMの濃度で、Bis-trisをさらに含む、実施形態1~4のいずれかの方法。
実施形態6-前記ダイアフィルトレーションは、前記生物学的組成物から少なくとも50%、少なくとも70%、又は少なくとも90%のBis-trisを除去する、実施形態1~5のいずれかの方法。
実施形態7-前記PBSの濃度は、10~50mMのリン酸ナトリウム及び100~200mMのNaClである、実施形態1~6のいずれかの方法。
実施形態8-前記モノクローナル抗体は、PBSを含む組成物へとダイアフィルトレーションされる前に、少なくとも2.0~5.0AUの濃度に濃縮される、実施形態1~7のいずれかの方法。
実施形態9-少なくとも1つのクロマトグラフィーカラムを使用して、前記モノクローナル抗体を単離及び精製することをさらに含む、実施形態1~8のいずれかの方法。
実施形態10-少なくとも1つのアフィニティクロマトグラフィーカラム、少なくとも1つの陽イオン交換クロマトグラフィーカラム、及び/又は少なくとも1つの陰イオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばCapto(商標)吸着カラムを使用して、前記モノクローナル抗体を単離及び精製することをさらに含む、実施形態1~9のいずれかの方法。
実施形態11-前記モノクローナル抗体は、PBSによりダイアフィルトレーションされる前に、Bis-trisを含む組成物を使用して、Capto(商標)吸着カラムから溶出される、実施形態1~10のいずれかの方法。
実施形態12-少なくとも3容積単位 (volume unit)、少なくとも4容積単位、少なくとも5容積単位、又は少なくとも6容積単位の生物学的組成物は、1容積単位の、PBSを含む組成物へとダイアフィルトレーションされる、実施形態1~11のいずれかの方法。
実施形態13-前記精製された組成物は、ヒスチジンを含む組成物へとさらにダイアフィルトレーションされる、実施形態1~12のいずれかの方法。
実施形態14-(a)前記モノクローナル抗体を含む第一の組成物をアフィニティクロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第二の組成物を得;(b)前記第二の組成物のpHを低下させて第三の組成物を得;(c)溶媒洗浄剤を用いて前記第三の組成物を洗浄して第四の組成物を得;(d)前記溶媒洗浄剤を除去するために前記第四の組成物を洗浄して第五の組成物を得;(e)前記第五の組成物を陽イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体を含む第六の組成物を得;(f)前記第六の組成物をナノろ過にかけて、第七の組成物を得;(g)前記第七の組成物を陰イオン交換クロマトグラフィーカラムに通過させて、前記モノクローナル抗体及びBis-trisを含む第八の組成物を得;(h)PBSを含む組成物へと前記第八の組成物をダイアフィルトレーションして、前記モノクローナル抗体を含むが、Bis-trisを実質的に含まない第九の組成物を得ることを含む、モノクローナル抗体を精製するための方法。
図1
図2
図3
図4
図5