(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】抗酸化物質を含む皮膚充填剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 27/20 20060101AFI20220107BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20220107BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220107BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
A61L27/20
A61L27/52
A61L27/54
A61L27/58
(21)【出願番号】P 2020136201
(22)【出願日】2020-08-12
(62)【分割の表示】P 2018247976の分割
【原出願日】2012-06-01
【審査請求日】2020-09-10
(32)【優先日】2011-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511032040
【氏名又は名称】アラーガン・アンデュストリー・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN INDUSTRIE SAS
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】フティアン・リウ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ジェイ・マネシス
(72)【発明者】
【氏名】シャオジエ・ユ
(72)【発明者】
【氏名】アシーン・ワン・チー・チャン
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/018124(WO,A1)
【文献】特表2010-535277(JP,A)
【文献】Park D J et al,IN VITRO EVALUATION OF CONJUGATED HYALURONIC ACID WITH ASCORBIC ACID,Journal of Bone & Joint Surgery, British Volume,Vol. 92-B No. SUPP I 115,英国,2010年,http://www.bjjprocs.boneandjoint.org.uk/content/92-B/SUPP_I/115.3
【文献】医学のあゆみ,2005年,Vol.214, No.2,p.145-148
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 27/00
A61K 47/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒアルロン酸、およびヒアルロン酸と共有結合したビタミンC誘導体を含む、皮膚充填剤組成物
であって、ビタミンC誘導体が、アスコルビン酸2-グルコシド(AA2G)、リン酸アスコルビル3-アミノプロピル、リン酸アスコルビルナトリウム(SAP)およびL-アスコルビン酸2-リン酸塩(AA2P)より選択される、皮膚充填剤組成物。
【請求項2】
ビタミンC誘導体が、約3モル%~約15モル%の結合度でヒアルロン酸と共有結合している、請求項1に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項3】
ビタミンC誘導体が、生体内で酵素切断によりビタミンCに変換される、請求項1または2に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項4】
ビタミンC誘導体が、
L-アスコルビン酸2-リン酸塩(AA2P)
である、請求項1~3のいずれか一項に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項5】
ビタミンC誘導体が、アスコルビン酸2-グルコシド(AA2G)である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項6】
ビタミンC誘導体が、リン酸アスコルビル3-アミノプロピルである、請求項
1~3のいずれか一項に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項7】
ビタミンC誘導体が、リン酸アスコルビルナトリウム(
SAP)である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項8】
ヒアルロン酸が、架橋している、請求項1~7のいずれか一項に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項9】
ヒアルロン酸が、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、ペンタエリスリトールグリシダールエーテル(Star-PEGエポキシド)またはペンタエリスリトール(3-アミノプロピル)エーテル(Star-PEGアミン)で架橋している、請求項8に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項10】
ヒアルロン酸が、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)で架橋している、請求項9に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項11】
麻酔剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項12】
麻酔剤が、リドカインである、請求項11に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項13】
軟組織状態の治療のための、請求項1~12のいずれか一項に記載の皮膚充填剤組成物。
【請求項14】
軟組織状態が、しわまたは傷跡である、請求項13に記載の皮膚充填剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願
本出願は、2011年6月3日出願の米国仮特許出願第61/493,309号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、この全開示は、この参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、皮膚充填剤組成物に関し、より具体的には、抗酸化物質を含む注入可能な皮膚充填剤組成物に関する。
【0003】
皮膚の老化は進行性の現象であり、経時的に生じ、アルコール消費、喫煙、および日光露出等の生活要因の影響を受け得る。顔面皮膚の老化は、萎縮、たるみ、および肥厚を特徴とし得る。萎縮は、皮膚組織の厚みの激減に相当する。皮下組織のたるみは、余分な皮膚および眼瞼下垂につながり、頬および瞼の垂れ下がった外観につながる。肥厚は、顔面下部および首の膨張による過剰な体重増加を指す。これらの変化は、典型的には、乾燥、弾力性の喪失、およびザラザラした質感に関連する。
【0004】
ヒアルロン酸(HA)としても知られるヒアルロナンは、結合組織、上皮組織、および神経組織においてヒトの体全体に広く分布される非硫酸化グリコサミノグリカンである。ヒアルロナンは、皮膚の異なる層に豊富であり、そこで、それは、例えば、良好な水和作用を確保し、細胞外マトリックスの組織化を支援し、充填剤物質として働き、かつ組織修復機構に関与するといった複数の機能を有する。しかしながら、年齢とともに、皮膚中に存在するヒアルロナン、コラーゲン、エラスチン、および他のマトリックス重合体の量は減少する。例えば、太陽からの紫外線への繰り返しの露出は、皮膚細胞のヒアルロナン産生の減少、ならびにその分解速度の増加の両方を引き起こす。このヒアルロナン喪失は、例えば、欠点、欠損、疾患、および/または障害等の様々な皮膚状態をもたらす。例えば、皮膚中の水分含有量と皮膚組織中のヒアルロナンレベルとの間に強い相関関係が存在する。皮膚が老化するにつれ、皮膚中のヒアルロナンの量および質は低下する。これらの変化は、皮膚の乾燥およびしわにつながる。
【0005】
皮膚充填剤は、軟組織状態の治療および他の皮膚治療において有用であり、これは、皮膚充填剤が、これらの皮膚状態を治療するために、失われた内因性マトリックス重合体を置換し得るか、または既存のマトリックス重合体の機能を高める/促進し得るためである。これまでに、そのような組成物は、しわ、線、ひだ、傷跡を充填するため、かつ例えば、薄い唇をふくらませるか、またはくぼんだ目もしくは厚みが薄い頬を充填する等の皮膚組織を高めるための美容用途において使用されている。皮膚充填剤組成物において使用される1つの一般的なマトリックス重合体は、ヒアルロナンである。ヒアルロナンがヒトの体にとって自然であるため、それは、概して、耐性に優れており、多種多様の皮膚状態に対する極めてリスクの低い治療である。
【0006】
かつては、ヒアルロナンを含む組成物は、非架橋結合状態で存在する自然に存在する重合体から作製されていた。自然に存在するヒアルロナンは、水分子に対して優れた生体適合性および親和性を呈するが、皮膚充填剤としては乏しい生体力学的特性を呈する。1つの主な理由は、この重合体が架橋結合されていないため、溶解性が高く、したがって、皮膚領域に投与されるとすぐに除去されることである。この生体内クリアランスは、主に、この重合体の迅速な分解、主にヒアルロニダーゼによる酵素分解およびフリーラジカルによる化学分解により達成される。したがって、依然として商業的に使用されているが、非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む組成物は、投与後数日以内に分解する傾向があり、ひいては、それらの皮膚改善効果を維持するために極めて頻繁な再注入を必要とする。
【0007】
これらの生体内分解経路の影響を最小限に抑えるために、マトリックス重合体は、安定化したヒドロゲルを形成するために相互に架橋結合される。架橋結合されたマトリックス重合体を含むヒドロゲルは、より固形の物質であるため、そのようなヒドロゲルを含む皮膚充填剤は、移植部位の定位置により長く留まる。さらに、ヒドロゲルのより固形の性質が、皮膚充填剤の機械的特性を改善し、その皮膚充填剤が、皮膚領域をより良好に引き上げ、かつ充填するため、これらのヒドロゲルは、皮膚充填剤としてより好適である。ヒアルロナン重合体は、典型的には、架橋剤と架橋結合されて、ヒアルロナン重合体間で共有結合を形成する。そのような架橋結合された重合体は、分解により耐性を示すより水溶性の低いヒドロゲルネットワークを形成し、したがって、非架橋結合ヒアルロナン組成物ほど頻繁な再注入を必要としない。
【0008】
アスコルビン酸またはAsAとしても知られるビタミンCは、過酸化水素等の活性酸素種を減少させ、それにより中和し、ひいては心血管疾患、高血圧、慢性炎症性疾患、糖尿病、および重篤な火傷を伴う状態の治療を含む様々な臨床的利益のために酸化ストレスを低下させる抗酸化物質として周知である。例えば、いくつかの利益の中で、ビタミンCは、抗炎症薬の役割を果たし、コラーゲン新生および血管新生を促進する。ビタミンCは、酵素反応における補因子として機能することによりコラーゲン新生および/または血管新生を促進して、コラーゲン形成を促進し、血管および軟骨を発達させ、維持することで知られている。ビタミンCは、チロシナーゼの生物学的機能を阻害して、メラニン形成を予防するか、またはメラニン色素沈着の色を薄くすることで知られている。これらの理由のため、ビタミンCを含有する皮膚充填剤組成物の開発に関心が集まっている。
【0009】
ビタミンCは、概して、空気、光、および熱への暴露時に不安定である。それは、ある特定のレベルで細胞毒性であるとも考えられている。ビタミンCがヒアルロン酸ゲルと物理的に混合され、かつ皮膚に注入されるとき、そのビタミンCは、1週間未満にその混合物から完全に放出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
持続放出速度、すなわち、数日間ではなく数週間または数ヶ月間にわたる放出速度を有する、ビタミンCまたは別のビタミンを有する注入可能なヒアルロン酸ベースの組成物を提供することが所望される。しかしながら、ビタミンを含む安定した有効な持続放出皮膚充填剤製品を開発することは困難であることが証明されている。本発明は、結合ビタミン、例えば、ビタミン誘導体を含む、改善されたヒアルロン酸ベースの皮膚充填剤組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、皮膚状態の治療に有用な新規の皮膚充填剤を提供する。より具体的には、本発明は、生体適合性重合体、例えば、ヒアルロン酸、およびビタミン、例えば、ビタミンC、例えば、ビタミンC誘導体を一般的に含む、有効な長期持続性治療用皮膚充填剤組成物を提供する。
【0012】
本発明の一態様において、重合体は、多糖類、例えば、ヒアルロン酸である。ヒアルロン酸は、架橋結合された成分を含む。ビタミンは、ビタミンC、例えば、ビタミンC誘導体を含み得る。より具体的には、ビタミンCは、L‐アスコルビン酸2‐グルコシド(AA2G)、リン酸アスコルビル3‐アミノプロピル(ascobyl 3-aminopropyl phosphate)(ビタゲン)、およびリン酸アスコルビルナトリウム(AA2P)のうちの少なくとも1つである。
【0013】
ビタミンは、概して、正常な成長および栄養摂取のために必須である1群の有機化合物のうちのいずれかとして定義されており、それらが体によって合成され得ないため、食生活に少量必要とされる。
【0014】
本発明の一態様において、ビタミンは、ビタミン誘導体であり、好適な反応プロセス、例えば、エーテル化、アミド化、およびエステル化により重合体に共有結合される。
【0015】
結合度は、最大約5モル%、最大約10モル%、最大約15モル%、最大約20モル%、最大約25モル%、最大約30モル%、または最大約40モル%である。
【0016】
本発明の別の態様において、架橋結合されたヒアルロン酸および結合ビタミンCを含む注入可能な皮膚充填剤組成物の作製方法が提供される。
【0017】
本発明のさらに別の態様において、本発明に従う組成物を皮膚に導入することを含む、皮膚欠損を治療する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】L‐アスコルビン酸2‐グルコシド(AA2G)の構造の表示である。
【
図2】リン酸アスコルビル3‐アミノプロピル(ascobyl 3-aminopropyl phosphate)(ビタゲン)の構造の表示である。
【
図3】リン酸アスコルビルナトリウム(AA2P)の構造の表示である。
【
図4】1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)の構造の表示である。
【
図5】ペンタエリスリトールグリシダールエーテル(Star‐PEGエポキシド)の構造の表示である。
【
図6】ペンタエリスリトール(3‐アミノプロピル)エーテル(Star‐PEGアミン)の構造の表示である。
【
図7】本発明に従う様々な皮膚充填剤組成物についての結合度およびG’値を示す表である。
【
図8】本発明に従うHA‐AA2G(BDDE)皮膚充填剤組成物についての結合度、HA濃度、およびG’値を示す表である。
【
図9】AA2G‐PBS溶液からのAsA放出に対するα‐グルコシダーゼ濃度の影響を示す表である。
【
図10】本発明に従う結合された皮膚充填剤からの遊離AsAの放出プロファイル(放出維持)(モル%でのAA2G変換対反応時間)の表示を示す。
【
図11A】本発明に従う様々な皮膚充填剤についての追加の放出データを示す。
【
図11B】本発明に従う様々な皮膚充填剤についての追加の放出データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一態様において、皮膚充填剤組成物が提供され、これらの組成物は、生体適合性重合体、例えば、架橋結合されたヒアルロン酸等の多糖類、およびその重合体に共有結合されたビタミンC誘導体を概して含む。その組成物は、皮膚の新規コラーゲン新生および他の治療的または美容的利益のためのビタミンCの放出維持を提供する。例えば、皮内で、皮膚に導入されたときに、その組成物は、体内の内因性酵素と反応し、そして経時的に、生理活性ビタミンCが酵素切断により生体内で生成される。ビタミンCが数週間または数ヶ月の期間にわたりその組成物から放出されるにつれて、その付帯する利益が体にとって利用可能になる。
【0020】
その重合体はタンパク質、ペプチドおよびポリペプチド、ポリリジン、コラーゲン、プロコラーゲン、エラスチン、およびラミニンからなる重合体の群から選択され得る。
【0021】
その重合体はヒドロキシル、アミン、およびカルボキシル官能基を有する合成重合体、ポリ(ビニルアルコール)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、デアセチル化ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、およびポリメタクリル酸からなる重合体の群から選択され得る。その重合体は樹状(dentric)ポリオールおよび樹状(dentric)ポリアミンを含む、樹状(dentric)または有枝重合体からなる重合体の群から選択され得る。その重合体はヒドロキシル、アミン、およびカルボキシル官能基を有する固体表面からなる重合体の群から選択され得る。
【0022】
その多糖類はデンプンならびにその誘導体、デキストランならびにその誘導体、セルロースならびにその誘導体、キチンおよびキトサンおよびアルギン酸塩ならびにその誘導体を含む多糖類の群から選択され得る。
【0023】
本発明の1つの例示的な実施形態において、重合体はグリコサミノグリカンである。本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、2つ、またはそれ以上の異なるグリコサミノグリカン重合体をさらに含み得る。本明細書中で使用されるとき、用語「グリコサミノグリカン」は「GAG」および「ムコ多糖」と同義であり、そして繰返し二糖単位からなる長い直鎖多糖を指す。その繰返し単位はヘキソサミン(窒素含有六炭糖)に結合されたヘキソース(六炭糖)またはヘキスロン酸およびその医薬として許容される塩からなる。GAGファミリーのメンバーは、例えば、グルクロン酸、イズロン酸、ガラクトース、ガラクトサミン、グルコサミンのように、それらが含有するヘキソサミン、ヘキソース、またはヘキスロン酸単位の型において様々であり、そしてグリコシド結合の幾何においてもまた変化し得る。どんなグリコサミノグリカン重合体も、そのグリコサミノグリカン重合体が皮膚状態を改善するという条件で、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物において有用である。グリコサミノグリカンの非限定的な例として、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロナンが挙げられる。グリコサミノグリカンの許容される塩の非限定的な例として、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、およびそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物および方法において有用なグリコサミノグリカンおよびそれらから生じた重合体は、例えば、Piron and Tholin,Polysaccharide Crosslinking,Hydrogel Preparation,Resulting Polysaccharides(s) and Hydrogel(s),uses Thereof,米国特許公報第2003/0148995号、Lebreton,Cross‐Linking of Low and High Molecular Weight Polysaccharides Preparation of Injectable Monophase Hydrogels、Lebreton,Viscoelastic Solution Containing Sodium Hyaluronate and Hydroxypropyl Methyl Cellulose, Preparation and Uses,米国特許公報第2008/0089918号、Lebreton,Hyaluronic Acid‐Based Gels Including Lidocaine,米国特許公報第2010/0028438号、およびPolysaccharides and Hydrogels thus Obtained,米国特許公報第2006/0194758号、およびDi Napoli,Composition and Method for Intradermal Soft Tissue Augmentation,国際公開第 2004/073759号に示されており、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物および方法において有用なGAGは、例えば、ヒアルロナンベースの皮膚充填剤、JUVEDERM(登録商標)、JUVEDERM(登録商標)30、JUVEDERM(登録商標)Ultra、JUVEDERM(登録商標)Ultra Plus、JUVEDERM(登録商標)Ultra XC、およびJUVEDERM(登録商標)Ultra Plus XC(Allergan Inc,Irvine,California)のように商業的に入手可能である。表1は代表的なGAGを列挙する。
【0024】
【0025】
本発明の態様は、一部分において、コンドロイチン硫酸重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「コンドロイチン硫酸重合体」はD‐グルクロン酸(GlcA)およびN‐アセチル‐D‐ガラクトサミン(GalNAc)の2つの交互に現れる単糖の二糖を含む様々な長さの直鎖状硫酸化重合体およびその医薬として許容される塩を指す。コンドロイチン硫酸重合体は、エピマー化され、L‐イズロン酸(IdoA)になるD‐グルクロン酸残基をもまた含み得る。その場合、生じる二糖はデルマタン硫酸と呼ばれる。コンドロイチン硫酸重合体は100個超の糖の鎖を有することができ、そのうちのそれぞれは様々な位置および量で硫酸化され得る。コンドロイチン硫酸重合体は軟骨の重要な構造成分であり、そして圧縮に対するその抵抗性の大部分を提供する。どんなコンドロイチン硫酸重合体も、そのコンドロイチン硫酸重合体が皮膚状態を改善するという条件で、本明細書中に開示される組成物中で有用である。コンドロイチン硫酸の医薬として許容される塩の非限定的な例として、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸カリウム、コンドロイチン硫酸マグネシウム、コンドロイチン硫酸カルシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0026】
本明細書の態様は、一部分において、ケラタン硫酸重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「ケラタン硫酸重合体」は、二糖単位であって、β‐D‐ガラクトースおよびN‐アセチル‐D‐ガラクトサミン(GalNAc)をそれ自体含む、二糖単位を含む様々な長さの重合体およびその医薬として許容される塩を指す。ケラタン硫酸の繰返し領域内の二糖はフコシル化されることができ、そしてN‐アセチルノイラミン酸はその鎖の末端をキャップする。どんなケラタン硫酸重合体も、そのケラタン硫酸重合体が皮膚状態を改善するという条件で、本明細書中に開示される組成物中で有用である。ケラタン硫酸の医薬として許容される塩の非限定的な例として、ケラタン硫酸ナトリウム、ケラタン硫酸カリウム、ケラタン硫酸マグネシウム、ケラタン硫酸カルシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
本明細書の態様は、一部分において、ヒアルロナン重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「ヒアルロン酸重合体」は「HA重合体」、「ヒアルロン酸重合体」、および「ヒアルロン酸塩重合体」と同義であり、二糖単位であって、交互に現れるβ‐1,4およびβ‐1,3グリコシド結合により共に結合されるD‐グルクロン酸およびD‐N‐アセチルグルコサミン単量体をそれ自体含む、二糖単位を含む陰イオン性非硫酸化グリコサミノグリカン重合体およびその医薬として許容される塩を指す。ヒアルロナン重合体は動物および非動物源から精製され得る。ヒアルロナン重合体の大きさは約5,000ダルトン~約20,000,000ダルトンに及び得る。どんなヒアルロナン重合体も、そのヒアルロナンが皮膚状態を改善するという条件で、本明細書中に開示される組成物中で有用である。ヒアルロナンの医薬として許容される塩の非限定的な例として、ヒアルロナンナトリウム、ヒアルロナンカリウム、ヒアルロナンマグネシウム、ヒアルロナンカルシウム、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
本明細書の態様は、一部分において、架橋結合されたグリコサミノグリカン重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「架橋結合された」は個々の重合体分子または単量体鎖を結合して、ゲルのような、より安定な構造にする分子間結合を指す。よって、架橋結合されたグリコサミノグリカン重合体は少なくとも1つの個々の重合体分子を別の重合体分子に結合する少なくとも1つの分子間結合を有する。グリコサミノグリカン重合体の架橋結合はヒドロゲルの形成を典型的にもたらす。そのようなヒドロゲルは高い粘性を有し、そして細い針を通して押し出すために相当な力を要する。本明細書中に開示されるグリコサミノグリカン重合体は、非限定的に、多機能なPEGベースの架橋剤、ジビニルスルホン、ジグリシジルエーテル、およびビス‐エポキシド、ビスカルボジイミドを含むジアルデヒドおよびジスルフィド架橋剤を用いて架橋結合され得る。ヒアルロナン架橋剤の非限定的な例として、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル(PETGE)のような他機能PEGベースの架橋剤、ジビニルスルホン(DVS)、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル(BDDE)、1,2‐ビス(2,3‐エポキシプロポキシ)エチレン(EGDGE)、1,2,7,8‐ジエポキシオクタン(DEO)、(フェニレンビス‐(エチル)‐カルボジイミドおよび1,6ヘキサメチレンビス(エチルカルボジイミド)、アジピン酸ジヒドラジド(ADH)、ビス(スルホスクシンイミジル)スベリン酸塩(BS)、ヘキサメチレンジアミン(HMDA)、1‐(2,3‐エポキシプロピル)‐2,3‐エポキシシクロヘキサン、またはそれらの組み合わせが挙げられる。他の有用な架橋剤は、参照によりその全体が組み込まれる、2010年10月22日出願のStroumpoulis and Tezel,Tunably Crosslinked Polysaccharide Compositions、米国特許出願第12/910,466号中に開示されている。グリコサミノグリカン重合体を架橋結合する方法の非限定的な例は、例えば、に記載されている。本明細書に開示の組成物および方法において有用なグリコサミノグリカン重合体の非限定的な例は、例えば、Piron and Tholin,Polysaccharide Crosslinking,Hydrogel Preparation, Resulting Polysaccharides(s) and Hydrogel(s),uses Thereof,米国特許公報第2003/0148995号、Lebreton,Cross‐Linking of Low and High Molecular Weight Polysaccharides Preparation of Injectable Monophase Hydrogels、Lebreton,Viscoelastic Solutions Containing Sodium Hyaluronate and Hydroxypropyl Methyl Cellulose,Preparation and Uses,米国特許公報第2008/0089918号、Lebreton, Hyaluronic Acid‐Based Gels Including Lidocaine,米国特許公報第2010/0028438号、およびPolysaccharides and Hydrogels thus Obtained,米国特許公報第2006/0194758号、およびDi Napoli,Composition and Method for Intradermal Soft Tissue Augmentation,国際公開第2004/073759号に記載されており、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
本明細書に従って、式中の「%」は重量対重量(すなわち、重量/重量)パーセントとして定義される。例として、1重量/重量%は、10mg/gの濃度を意味する。
【0030】
1つの実施形態において、ヒドロゲル組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカン重合体を含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカン重合体は本明細書中に開示されるように皮膚状態を改善するのに十分な量で存在する。この実施形態の態様において、組成物は、架橋結合されたコンドロイチン硫酸重合体、架橋結合されたデルマタン硫酸重合体、架橋結合されたケラタン硫酸重合体、架橋結合されたヘパラン重合体、架橋結合されたヘパラン硫酸重合体、または架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。この実施形態の他の態様において、組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカンを含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカンは、例えば、その組成物中に存在する全グリコサミノグリカンの約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、または約9%もしくは約10重量%を示す。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカンを含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカンは、例えば、その組成物中に存在する全グリコサミノグリカンの最大1重量%、最大2重量%、最大3重量%、最大4重量%、最大5重量%、最大6重量%、最大7重量%、最大8重量%、最大9重量%、または最大10重量%を示す。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカンを含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカンは、例えば、その組成物中に存在する全グリコサミノグリカンの約0重量%~約20重量%、約1重量%~約17重量%、約3重量%~約15重量%、または約5重量%~約10重量%、例えば、約11重量%、約15重量%、または約17重量%を示す。
【0031】
この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカンを含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカンは、例えば、約2mg/g、約3mg/g、約4mg/g、約5mg/g、約6mg/g、約7mg/g、約8mg/g、約9mg/g、約10mg/g、約11mg/g、約12mg/g、約13mg/g、約13.5mg/g、約14mg/g、約15mg/g、約16mg/g、約17mg/g、約18mg/g、約19mg/g、または約20mg/gの濃度で存在する。この実施形態の他の態様において、組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカンを含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカンは、例えば、少なくとも1mg/g、少なくとも2mg/g、少なくとも3mg/g、少なくとも4mg/g、少なくとも5mg/g、少なくとも10mg/g、少なくとも15mg/g、少なくとも20mg/g、または少なくとも25mg/g、または約40mg/gの濃度で存在する。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカンを含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカンは、例えば、最大1mg/g、最大2mg/g、最大3mg/g、最大4mg/g、最大5mg/g、最大10mg/g、最大15mg/g、最大20mg/g、最大25mg/g、または最大40mg/gの濃度で存在する。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、架橋結合されたグリコサミノグリカンを含み、ここでその架橋結合されたグリコサミノグリカンは、例えば、約7.5mg/g~約19.5mg/g、約8.5mg/g~約18.5mg/g、約9.5mg/g~約17.5mg/g、約10.5mg/g~約16.5mg/g、約11.5mg/g~約15.5mg/g、または約12.5mg/g~約14.5mg/g、最大約40mg/gの濃度で存在する。
【0032】
本明細書の態様は、一部分において、低分子量のヒアルロナン重合体、高分子量のヒアルロナン重合体、または低および高分子量両方のヒアルロナン重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、「ヒアルロナン」について言及するとき、用語「高分子量」は、1,000,000ダルトン、またはそれ以上の平均分子量を有するヒアルロナン重合体を指す。高分子量ヒアルロナン重合体の非限定的な例として、ヒアルロナン重合体約1,500,000ダルトン、約2,000,000ダルトン、約2,500,000ダルトン、約3,000,000ダルトン、約3,500,000ダルトン、約4,000,000ダルトン、約4,500,000ダルトン、および約5,000,000ダルトンが挙げられる。本明細書中で使用されるとき、「ヒアルロナン」について言及するとき、用語「低分子量」は、1,000,000ダルトン未満の平均分子量を有するヒアルロナン重合体を指す。低分子量ヒアルロナン重合体の非限定的な例として、約200,000ダルトン、約300,000ダルトン、約400,000ダルトン、約500,000ダルトン、約600,000ダルトン、約700,000ダルトン、約800,000ダルトンの、および約900,000ダルトンのヒアルロナン重合体が挙げられる。
【0033】
1つの実施形態において、組成物は、低分子量の架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。この実施形態の態様において、組成物は、例えば、約100,000ダルトン、約200,000ダルトン、約300,000ダルトン、約400,000ダルトン、約500,000ダルトン、約600,000ダルトン、約700,000ダルトン、約800,000ダルトン、または約900,000ダルトンの平均分子量を有する架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、例えば、最大100,000ダルトン、最大200,000ダルトン、最大300,000ダルトン、最大400,000ダルトン、最大500,000ダルトン、最大600,000ダルトン、最大700,000ダルトン、最大800,000ダルトン、最大900,000ダルトン、または最大950,000ダルトンの平均分子量を有する架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、例えば、約100,000ダルトン~約500,000ダルトン、約200,000ダルトン~約500,000ダルトン、約300,000ダルトン~約500,000ダルトン、約400,000ダルトン~約500,000ダルトン、約500,000ダルトン~約950,000ダルトン、約600,000ダルトン~約950,000ダルトン、約700,000ダルトン~約950,000ダルトン、約800,000ダルトン~約950,000ダルトン、約300,000ダルトン~約600,000ダルトン、約300,000ダルトン~約700,000ダルトン、約300,000ダルトン~約800,000ダルトン、または約400,000ダルトン~約700,000ダルトンの平均分子量を有する架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。
【0034】
別の実施形態において、組成物は、高分子量の架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。この実施形態の態様において、組成物は、例えば、約1,000,000ダルトン、約1,500,000ダルトン、約2,000,000ダルトン、約2,500,000ダルトン、約3,000,000ダルトン、約3,500,000ダルトン、約4,000,000ダルトン、約4,500,000ダルトン、または約5,000,000ダルトンの平均分子量を有する架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、例えば、少なくとも1,000,000ダルトン、少なくとも1,500,000ダルトン、少なくとも2,000,000ダルトン、少なくとも2,500,000ダルトン、少なくとも3,000,000ダルトン、少なくとも3,500,000ダルトン、少なくとも4,000,000ダルトン、少なくとも4,500,000ダルトン、または少なくとも5,000,000ダルトンの平均分子量を有する架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、例えば、約1,000,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約1,500,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約2,000,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約2,500,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約2,000,000ダルトン~約3,000,000ダルトン、約2,500,000ダルトン~約3,500,000ダルトン、または約2,000,000ダルトン~約4,000,000ダルトンの平均分子量を有する架橋結合されたヒアルロナン重合体を含む。
【0035】
さらに別の実施形態において、組成物は、架橋結合されたヒアルロナン重合体を含み、ここでその架橋結合されたヒアルロナン重合体は様々な割合の高分子量ヒアルロナン重合体および低分子量ヒアルロナン重合体両方の組み合わせを含む。この実施形態の態様において、組成物は、架橋結合されたヒアルロナン重合体を含み、ここでその架橋結合されたヒアルロナン重合体は、約20:1、約15:1、約10:1、約5:1、約1:1、約1:5、約1:10、約1:15、または約1:20の割合の高分子量ヒアルロナン重合体および低分子量ヒアルロナン重合体両方の組み合わせを含む。
【0036】
本明細書の態様は、一部分において、ある程度の架橋結合を有する架橋結合されたグリコサミノグリカン重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「架橋結合の程度」は架橋剤に結合された、例えば、ヒアルロナンの二糖単量体単位等のグリコサミノグリカン重合体単量体単位の割合を指す。架橋結合の程度は架橋剤対グリコサミノグリカンの重量パーセント率として表される。
【0037】
本明細書の態様は、一部分において、架橋結合されていないグリコサミノグリカン重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「架橋結合されていない(非架橋結合)」は個々のグリコサミノグリカン重合体分子または単量体鎖を結合する分子間結合の欠如を指す。よって、非架橋結合グリコサミノグリカン重合体は分子間結合によりいかなる他のグリコサミノグリカン重合体に結合されていない。この実施形態の態様において、組成物は、非架橋結合コンドロイチン硫酸重合体、非架橋結合デルマタン硫酸重合体、非架橋結合ケラタン硫酸重合体、非架橋結合ヘパラン重合体、非架橋結合ヘパラン硫酸重合体、または非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む。非架橋結合グリコサミノグリカン重合体は、水溶性であり、概して、天然では流体のままである。よって、非架橋結合グリコサミノグリカン重合体は、多くの場合、細い針を通した組成物の押し出しプロセスを促進するための潤滑剤としてグリコサミノグリカン重合体ベースのヒドロゲル組成物と混合される。
1つの実施形態において、組成物は、非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含み、ここでその非架橋結合グリコサミノグリカン重合体は本明細書中に開示されるように皮膚状態を改善するのに十分な量で存在する。この実施形態の態様において、組成物は、非架橋結合グリコサミノグリカンを含み、ここでその非架橋結合グリコサミノグリカンは、例えば、約2mg/g、約3mg/g、約4mg/g、約5mg/g、約6mg/g、約7mg/g、約8mg/g、約9mg/g、約10mg/g、約11mg/g、約12mg/g、約13mg/g、約13.5mg/g、約14mg/g、約15mg/g、約16mg/g、約17mg/g、約18mg/g、約19mg/g、約20mg/g、約40mg/g、または約60mg/gの濃度で存在する。この実施形態の他の態様において、組成物は、非架橋結合グリコサミノグリカンを含み、ここでその非架橋結合グリコサミノグリカンは、例えば、少なくとも1mg/g、少なくとも2mg/g、少なくとも3mg/g、少なくとも4mg/g、少なくとも5mg/g、少なくとも10mg/g、少なくとも15mg/g、少なくとも20mg/g、少なくとも25mg/g、少なくとも35mg/g、または少なくとも40mg/gの濃度で存在する。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、非架橋結合グリコサミノグリカンを含み、ここでその非架橋結合グリコサミノグリカンは、例えば、最大1mg/g、最大2mg/g、最大3mg/g、最大4mg/g、最大5mg/g、最大10mg/g、最大15mg/g、最大20mg/g、または最大25mg/gの濃度で存在する。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、非架橋結合グリコサミノグリカンを含み、ここでその非架橋結合グリコサミノグリカンは、例えば、約1mg/g~約60mg/g、約10mg/g~約40mg/g、約7.5mg/g~約19.5mg/g、約8.5mg/g~約18.5mg/g、約9.5mg/g~約17.5mg/g、約10.5mg/g~約16.5mg/g、約11.5mg/g~約15.5mg/g、または約12.5mg/g~約14.5mg/gの濃度で存在する。
【0038】
1つの実施形態において、組成物は、低分子量の非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む。この実施形態の態様において、組成物は、例えば、約100,000ダルトン、約200,000ダルトン、約300,000ダルトン、約400,000ダルトン、約500,000ダルトン、約600,000ダルトン、約700,000ダルトン、約800,000ダルトン、または約900,000ダルトンの平均分子量を有する非架橋結合ヒアルロナンを含む。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、例えば、最大100,000ダルトン、最大200,000ダルトン、最大300,000ダルトン、最大400,000ダルトン、最大500,000ダルトン、最大600,000ダルトン、最大700,000ダルトン、最大800,000ダルトン、最大900,000ダルトン、または最大950,000の平均分子量を有する非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、例えば、約100,000ダルトン~約500,000ダルトン、約200,000ダルトン~約500,000ダルトン、約300,000ダルトン~約500,000ダルトン、約400,000ダルトン~約500,000ダルトン、約500,000ダルトン~約950,000ダルトン、約600,000ダルトン~約950,000ダルトン、約700,000ダルトン~約950,000ダルトン、約800,000ダルトン~約950,000ダルトン、約300,000ダルトン~約600,000ダルトン、約300,000ダルトン~約700,000ダルトン、約300,000ダルトン~約800,000ダルトン、または約400,000ダルトン~約700,000ダルトンの平均分子量を有する非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む。
【0039】
別の実施形態において、組成物は、高分子量の非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む。この実施形態の態様において、組成物は、例えば、約1,000,000ダルトン、約1,500,000ダルトン、約2,000,000ダルトン、約2,500,000ダルトン、約3,000,000ダルトン、約3,500,000ダルトン、約4,000,000ダルトン、約4,500,000ダルトン、または約5,000,000ダルトンの平均分子量を有する非架橋結合ヒアルロナンを含む。この実施形態の他の態様において、組成物は、例えば、少なくとも1,000,000ダルトン、少なくとも1,500,000ダルトン、少なくとも2,000,000ダルトン、少なくとも2,500,000ダルトン、少なくとも3,000,000ダルトン、少なくとも3,500,000ダルトン、少なくとも4,000,000ダルトン、少なくとも4,500,000ダルトン、または少なくとも5,000,000ダルトンの平均分子量を有する非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、例えば、約1,000,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約1,500,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約2,000,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約2,500,000ダルトン~約5,000,000ダルトン、約2,000,000ダルトン~約3,000,000ダルトン、約2,500,000ダルトン~約3,500,000ダルトン、または約2,000,000ダルトン~約4,000,000ダルトンの平均分子量を有する非架橋結合ヒアルロナン重合体を含む。さらに他の態様において、組成物は、例えば、2,000,000ダルトン超~約3,000,000ダルトン未満、2,000,000ダルトン超~約3,500,000ダルトン未満、2,000,000ダルトン超~約4,000,000ダルトン未満、2,000,000ダルトン超~約4,500,000ダルトン未満、2,000,000ダルトン超~約5,000,000ダルトン未満の平均分子量を有する非架橋結合ヒアルロナン重合体を含有する。
【0040】
別の実施形態において、組成物は、非架橋結合ヒアルロナン重合体を含み、ここでその非架橋結合ヒアルロナンは、様々な割合の高分子量ヒアルロナン重合体および低分子量ヒアルロナン重合体両方の組み合わせを含む。この実施形態の態様において、組成物は、非架橋結合ヒアルロナン重合体を含み、ここでその非架橋結合ヒアルロナン重合体は、約20:1、約15:1、約10:1、約5:1、約1:1、約1:5、約1:10、約1:15、または約1:20の割合の高分子量ヒアルロナン重合体および低分子量ヒアルロナン重合体両方の組み合わせを含む。
【0041】
本明細書の態様は、一部分において、実質的に架橋結合されていないグリコサミノグリカン重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「実質的に架橋結合されていない(実質的に非架橋結合)」は、組成物のうちの少なくとも90重量%のレベルでの本明細書中に開示される組成物中の非架橋結合グリコサミノグリカン重合体の存在を指し、その組成物のうちの残りの最大10重量%は架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含む他の成分から成る。この実施形態の態様において、組成物は、実質的に非架橋結合のコンドロイチン硫酸重合体、実質的に非架橋結合のデルマタン硫酸重合体、実質的に非架橋結合のケラタン硫酸重合体、実質的に非架橋結合のヘパラン重合体、実質的に非架橋結合のヘパラン硫酸重合体、または実質的に非架橋結合のヒアルロナン重合体を含む。この実施形態の他の態様において、組成物は、非架橋結合グリコサミノグリカンを含み、ここでその非架橋結合グリコサミノグリカンは、例えば、その組成物中に存在する全グリコサミノグリカンの約90重量%以上、約91重量%以上、約92重量%以上、約93重量%以上、約94重量%以上、約95重量%以上、約96重量%以上、約97重量%以上、約98重量%以上、または約99重量%以上、または約100重量%を示す。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、非架橋結合グリコサミノグリカンを含み、ここでその非架橋結合グリコサミノグリカンは、例えば、その組成物中に存在する全グリコサミノグリカンの約90重量%~約100重量%、約93重量%~約100重量%、約95重量%~約100重量%、または約97重量%~約100重量%を示す。
【0042】
本明細書の態様は、一部分において、架橋結合グリコサミノグリカン重合体を本質的に含まないヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「本質的に含まない」(または「本質的に~からなる」)は微量な架橋結合マトリックス重合体しか検出され得ない組成物を指す。この実施形態の一態様において、組成物は、架橋結合コンドロイチン硫酸重合体を本質的に含まないコンドロイチン硫酸、架橋結合デルマタン硫酸重合体を本質的に含まないデルマタン硫酸、架橋結合ケラタン硫酸重合体を本質的に含まないケラタン硫酸、架橋結合ヘパラン重合体を本質的に含まないヘパラン、架橋結合ヘパラン硫酸重合体を本質的に含まないヘパラン硫酸、または架橋結合ヒアルロナン重合体を本質的に含まないヒアルロナン硫酸を含む。
【0043】
本明細書の態様は、一部分において、架橋結合グリコサミノグリカン重合体を完全に含まないヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「完全に含まない」は使用される装置またはプロセスの検出範囲内で架橋結合グリコサミノグリカン重合体が検出され得ない、またはその存在が確認され得ない組成物を指す。この実施形態の一態様において、組成物は、架橋結合コンドロイチン硫酸重合体を完全に含まないコンドロイチン硫酸、架橋結合デルマタン硫酸重合体を完全に含まないデルマタン硫酸、架橋結合ケラタン硫酸重合体を完全に含まないケラタン硫酸、架橋結合ヘパラン重合体を完全に含まないヘパラン、架橋結合ヘパラン硫酸重合体を完全に含まないヘパラン硫酸、または架橋結合ヒアルロナン重合体を完全に含まないヒアルロナン硫酸を含む。
【0044】
本明細書の態様は、一部分において、ある割合の架橋結合グリコサミノグリカン重合体および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含むヒドロゲル組成物を提供する。架橋結合および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体のこの割合はゲル:流体率としてもまた知られる。いかなるゲル:流体率も、そのような割合が本明細書中に開示されるように皮膚状態を改善する本明細書中に開示される組成物を作製するという条件で、本明細書中に開示される組成物の作製において有用である。本発明に係る組成物中のゲル:流体率の非限定的な例として、100:0、98:2、90:10、75:25、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、25:75、10:90、2:98、および0:100が挙げられる。
【0045】
この実施形態の態様において、組成物は、架橋結合グリコサミノグリカン重合体および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含み、ここでそのゲル:流体率は、例えば、約0:100、約1:99、約2:98、約3:97、約4:96、約5:95、約6:94、約7:93、約8:92、約9:91、または約10:90である。この実施形態の他の態様において、組成物は、架橋結合グリコサミノグリカン重合体および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含み、ここでそのゲル:流体率は、例えば、最大1:99、最大2:98、最大3:97、最大4:96、最大5:95、最大6:94、最大7:93、最大8:92、最大9:91、または最大10:90である。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、架橋結合グリコサミノグリカン重合体および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含み、ここでそのゲル:流体率は、例えば、約0:100~約3:97、約0:100~約5:95、または約0:100~約10:90である。
【0046】
この実施形態の他の態様において、組成物は、架橋結合グリコサミノグリカン重合体および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含み、ここでそのゲル:流体率は、例えば、約15:85、約20:80、約25:75、約30:70、約35:65、約40:60、約45:55、約50:50、約55:45、約60:40、約65:35、約70:30、約75:25、約80:20、約85:15、約90:10、約95:5、約98:2、または約100:0である。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、架橋結合グリコサミノグリカン重合体および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含み、ここでそのゲル:流体率は、例えば、最大15:85、最大20:80、最大25:75、最大30:70、最大35:65、最大40:60、最大45:55、最大50:50、最大55:45、最大60:40、最大65:35、最大70:30、最大75:25、最大80:20、最大85:15、最大90:10、最大95:5、最大98:2、または最大100:0である。この実施形態のさらに他の態様において、組成物は、架橋結合グリコサミノグリカン重合体および非架橋結合グリコサミノグリカン重合体を含み、ここでそのゲル:流体率は、例えば、約10:90~約70:30、約15:85~約70:30、約10:90~約55:45、約80:20~約95:5、約90:10~約100:0、約75:25~約100:0、または約60:40~約100:0である。
【0047】
本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、その組成物が個人に投与されるとき有益な効果を提供する別の剤または剤の組み合わせをさらに含み得る。そのような有益な剤は非限定的に、抗酸化物質、かゆみ止め、抗セルライト剤、抗傷跡剤、抗炎症剤、麻酔剤、抗刺激物剤、血管収縮薬、血管拡張薬、止血剤もしくは抗線溶剤のような抗出血剤、角質溶解剤、テンション剤、抗ざそう剤、色素沈着剤、抗色素沈着剤、または保湿剤を含む。
【0048】
本明細書の態様は、一部分において、麻酔剤を随意に含み得る、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。麻酔剤は好ましくは局所麻酔剤、すなわち、例えば、アミノアミド局所麻酔薬およびアミノエステル局所麻酔薬等の、可逆的な局所麻酔および痛覚の喪失を引き起こす麻酔剤である。本明細書中に開示される組成物中に含まれる麻酔剤の量はその組成物の投与に際して個人が経験する痛みをやわらげるのに有効な量である。よって、本明細書中に開示される組成物中に含まれる麻酔剤の量はその組成物総量のうちの約0.1重量%~約5重量%である。麻酔剤の非限定的な例として、リドカイン、アムブカイン(ambucaine)、アモラノン、アミロカイン(amylocaine)、ベノキシネート、ベンゾカイン、ベトキシカイン(betoxycaine)、ビフェナミン、ブピバカイン、ブタカイン、ブタンベン、ブタニリカイン、ブテタミン、ブトキシカイン(butoxycaine)、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、シクロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン(dimethysoquin)、ジメトカイン(dimethocaine)、ジペロドン、ジシクロニン(dycyclonine)、エクゴニジン(ecgonidine)、エクゴニン、塩化エチル、エチドカイン、ベータ‐ユーカイン、ユープロシン(euprocin)、フェナルコミン(fenalcomine)、フォルモカイン(formocaine)、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、イソブチルp‐アミノ安息香酸、ロイシノカイン(leucinocaine)メシレート、レボキサドロール(levoxadrol)、リドカイン、メピバカイン、メプリルカイン、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン(myrtecaine)、ネパイン、オクタカイン(octacaine)、オルトカイン、オキセサゼイン、パレトキシカイン(parethoxycaine)、フェナカイン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン(piridocaine)、 ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン、プロカイン、プロパノカイン(propanocaine)、プロパラカイン、プロピポカイン(propipocaine)、プロポキシカイン、スードコカイン(psuedococaine)、ピロカイン(pyrrocaine)、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、トリカイン、トリメカイン、ゾラミン、それらの組み合わせ、およびそれらの塩が挙げられる。アミノエステル局所麻酔薬の非限定的な例として、プロカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、シメトカイン(cimethocaine)(ラロカイン(larocaine))、プロポキシカイン、プロカイン(ノボカイン)、プロパラカイン、テトラカイン(アメソカイン)を含む。アミノアミド局所麻酔薬の非限定的な例として、アルチカイン、ブピバカイン、シンコカイン(ジブカイン)、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン(リグノカイン)、メピバカイン、ピペロカイン、プリロカイン、ロピバカイン、およびトリメカインが挙げられる。本明細書中に開示される組成物は、単一の麻酔剤または複数の麻酔剤を含み得る。組み合わせ局所麻酔薬の非限定的な例には、リドカイン/プリロカイン(EMLA)がある。
【0049】
したがって、1つの実施形態において、本明細書中に開示される組成物は、麻酔剤およびその塩を含む。この実施形態の態様において、本明細書中に開示される組成物は、アミノアミド局所麻酔薬およびその塩またはアミノエステル局所麻酔薬およびその塩を含む。この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、プロカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、シメトカイン、プロポキシカイン、プロカイン、プロパラカイン、テトラカイン、もしくはそれらの塩、またはそれらの組み合わせを含む。この実施形態のさらに他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、アルチカイン、ブピバカイン、シンコカイン、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン、メピバカイン、ピペロカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン、もしくはそれらの塩、またはそれらの組み合わせを含む。この実施形態のさらに他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、リドカイン/プリロカインの組み合わせを含む。
【0050】
この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、その全組成物の約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、または約10重量%の量の麻酔剤を含む。さらに他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、その全組成物の少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、少なくとも1.0重量%、少なくとも2.0重量%、少なくとも3.0重量%、少なくとも4.0重量%、少なくとも5.0重量%、少なくとも6.0重量%、少なくとも7.0重量%、少なくとも8.0重量%、少なくとも9.0重量%、または少なくとも10重量%の量の麻酔剤を含む。さらに他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、その全組成物の最大0.1重量%、最大0.2重量%、最大0.3重量%、最大0.4重量%、最大0.5重量%、最大0.6重量%、最大0.7重量%、最大0.8重量%、最大0.9重量%、最大1.0重量%、最大2.0重量%、最大3.0重量%、最大4.0重量%、最大5.0重量%、最大6.0重量%、最大7.0重量%、最大8.0重量%、最大9.0重量%、または最大10重量%の量の麻酔剤を含む。さらなる態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、その全組成物の約0.1重量%~約0.5重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約3.0重量%、約0.1重量%~約4.0重量%、約0.1重量%~約5.0重量%、約0.2重量%~約0.9重量%、約0.2重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、または約0.5重量%~約2.0重量%の量の麻酔剤を含む。
【0051】
別の実施形態において、本明細書中に開示される組成物は、麻酔剤を含まない。
【0052】
本発明の一態様において、重合体、例えば、グリコサミノグリカン重合体、例えば、ヒアルロン酸重合体、例えば、少なくとも一部が架橋結合されるヒアルロン酸およびその重合体に共有結合された有益な剤を含む、注入可能な皮膚充填剤が提供される。
【0053】
その重合体に共有結合される有益な剤は、例えば、体内でのその剤の放出の延長を高めるために、その重合体に化学的に結合され得るビタミン、抗酸化物質、増殖因子、ペプチド、または他のいかなる有益な剤を含み得る。
【0054】
その有益な剤はビタミンを含み得る。いくつかの実施形態において、ビタミンはビタミンC、レチノイド、およびビタミンEのうちの少なくとも1つである。
【0055】
1つの特に有利な実施形態において、その重合体に共有結合される有益な剤はビタミンC、またはビタミンC誘導体である。その組成物中のビタミンCの量は、体内で放出されたとき少なくとも1つの所望の治療的または美容的利益、例えば、非限定的に、コラーゲン新生、抗炎症、細胞生存率の向上、抗酸化、血管新生、不透明さ、および他の利益を提供するのに有効な量である。本明細書中に開示される組成物中に含まれるビタミンCの量はその組成物総量のうちの約0.04重量%~約5.0重量%、例えば、その組成物総量のうちの約0.1重量%~約4.0重量%、例えば、その組成物総量のうちの約0.2重量%~約2.0重量%である。1つの実施形態において、本明細書中に開示される組成物中に含まれるビタミンCの量はその組成物総量のうちの約0.3重量%~約1.2重量%である。
【0056】
本発明に係る組成物中の重合体に共有結合される好適なビタミンCまたはビタミンC誘導体はアスコルビン酸、L‐アスコルビン酸、L‐アスコルビン酸2‐硫酸塩(AA‐2S)およびL‐アスコルビン酸2‐リン酸塩(AA‐2P)、アスコルビン酸2‐O‐グルコシド(AA‐2G)、6‐O‐アシル‐2‐O‐アルファ‐D‐グルコピラノシル‐L‐アスコルビン酸(6‐Acyl‐AA‐2G)、(リン酸アスコルビル3‐アミノプロピル(ascobyl 3-aminopropyl phosphate)、パルミチン酸アスコルビル)、それらの誘導体および組み合わせを含む。本明細書中に開示される組成物は、単一のビタミンC剤または複数のビタミンC剤を含み得る。
【0057】
本発明の別の態様において、その重合体に化学的に結合される有益な剤はレチノイドである。好適なレチノイドはレチノール(‐ヒドロキシル基、‐OH)、トレチノイン(レチノイン酸‐カルボキシル酸基‐COOH)、およびアダパレンス(adapalence)(カルボキシル基、‐COOH)を含む。
【0058】
本発明の別の態様において、その重合体に化学的に結合される有益な剤はビタミンE、例えば、(g‐トコフェロール、d‐トコフェロール)である。
【0059】
本発明の別の態様において、その重合体に化学的に結合される有益な剤は抗酸化物質、例えば、アルファ‐リポ酸(ALA、‐COOH)、ジメチルアミノエタノール(DMAE、‐OH)、カタラーゼ(‐OH)である。
【0060】
本発明の別の態様において、その重合体に化学的に結合される有益な剤は(アミン基を有する)増殖因子、例えば、上皮増殖因子(アミン基を有するEGF)、形質転換増殖因子(アミン基を有するTGF)である。
【0061】
本発明の別の態様において、その重合体に化学的に結合される有益な剤は(アミン基を有する)ペプチド、例えば、マイクロコラーゲンペンタペプチド、ケラチン、またはエラスチンである。
【0062】
本発明の別の態様において、少なくとも一部が架橋結合されたグリコサミノグリカン重合体、および例えば、本明細書中に開示される組成物の酵素分解および/または化学分解等の、その組成物の分解を低下させるまたは妨げるのに有効な量の抗酸化剤を含む注入可能な皮膚充填剤が提供される。よって、本明細書中に開示される組成物中に含まれる抗酸化剤の量はその組成物総量のうちの約0.1重量%~約10重量%である。抗酸化剤の非限定的な例として、ポリオール、フラボノイド、フィトアレキシン、アスコルビン酸剤、トコフェロール、トコトリエノール、リポ酸、メラトニン、カロテノイド、それらの類似体または誘導体、およびそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書中に開示される組成物は、単一の抗酸化剤または複数の抗酸化剤、レチノール、補酵素、イデベノン、アロプリノール、グルタチオン、亜セレン酸ナトリウムを含み得る。
【0063】
本明細書の態様は、一部分において、重合体およびその重合体に共有結合されたビタミンCを含むヒドロゲル組成物を提供する。ビタミンCの非限定的な例として、アスコルビン酸、ならびにアスコルビン酸のナトリウム、カリウム、およびカルシウム塩、長鎖脂肪酸を有するアスコルビン酸の脂肪溶解性エステル(パルミチン酸アスコルビルまたはステアリン酸アスコルビル)、リン酸アスコルビルマグネシウム(MAP)、リン酸アスコルビルナトリウム(SAP)、およびアスコルビン酸2‐グルコシド(AA2G(登録商標))、リン酸アスコルビルナトリウム(AA2P)、硫酸アスコルビル二ナトリウム、およびリン酸アスコルビル3‐アミノプロピル(ascobyl 3-aminopropyl phosphate)(ビタゲン)が挙げられる。
【0064】
アスコルビン酸は、例えば、その全組成物の約0.01重量%、約0.1重量%、約0.2重量%、約0.3重量%、約0.4重量%、約0.5重量%、約0.6重量%、約0.7重量%、約0.8重量%、約0.9重量%、約1.0重量%、約2.0重量%、約3.0重量%、約4.0重量%、約5.0重量%、約6.0重量%、約7.0重量%、約8.0重量%、約9.0重量%、または約10重量%の量でその組成物中に存在し得る。さらに他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、その全組成物の少なくとも0.1重量%、少なくとも0.2重量%、少なくとも0.3重量%、少なくとも0.4重量%、少なくとも0.5重量%、少なくとも0.6重量%、少なくとも0.7重量%、少なくとも0.8重量%、少なくとも0.9重量%、少なくとも1.0重量%、少なくとも2.0重量%、少なくとも3.0重量%、少なくとも4.0重量%、少なくとも5.0重量%、少なくとも6.0重量%、少なくとも7.0重量%、少なくとも8.0重量%、少なくとも9.0重量%、または少なくとも10重量%の量のアスコルビン酸を含む。さらに他の態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、その全組成物の最大0.1重量%、最大0.2重量%、最大0.3重量%、最大0.4重量%、最大0.5重量%、最大0.6重量%、最大0.7重量%、最大0.8重量%、最大0.9重量%、最大1.0重量%、最大2.0重量%、最大3.0重量%、最大4.0重量%、最大5.0重量%、最大6.0重量%、最大7.0重量%、最大8.0重量%、最大9.0重量%、または最大10重量%の量のアスコルビン酸を含む。さらなる態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、その全組成物の約0.1重量%~約0.5重量%、約0.1重量%~約1.0重量%、約0.1重量%~約2.0重量%、約0.1重量%~約3.0重量%、約0.1重量%~約4.0重量%、約0.1重量%~約5.0重量%、約0.2重量%~約0.9重量%、約0.2重量%~約1.0重量%、約0.2重量%~約2.0重量%、約0.5重量%~約1.0重量%、または約0.5重量%~約2.0重量%の量のアスコルビン酸を含む。
【0065】
本発明の1つの実施形態において、架橋結合されたヒアルロン酸ベースの重合体およびその重合体に化学的に結合されたビタミンCを含み、かつ最大約3モル%、最大約5モル%、最大約10モル%、最大約15モル%、最大約20モル%、最大約25モル%、最大約30モル%、または最大約40モル%の結合度を有する、ヒドロゲル組成物が提供される。
【0066】
本発明の1つの実施形態において、ヒアルロン酸がStar‐PEGエポキシドまたはStarPEGアミドと架橋結合された、皮膚充填剤が提供される。この実施形態において、結合度は約20モル%~約32モル%であり得る。
【0067】
本発明の別の実施形態において、ヒアルロン酸がBDDEと架橋結合された、皮膚充填剤が提供される。この実施形態において、結合度は約3モル%~約15モル%、例えば、約10モル%~約13モル%であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、皮膚充填剤はバイオアベイラビリティを維持する。例えば、ヒトの皮膚に導入されたときに、少なくとも約1ヶ月~最大約20ヶ月、またはそれ以上の間、アスコルビン酸または他のビタミンをヒトに放出するために有効である、皮膚充填剤が提供される。
【0069】
本明細書の態様は、一部分において、複素弾性率、弾性率、粘性率、および/またはタンジェントδを示す、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中に開示される組成物は、その組成物が、力(ストレス、変形)を適用されたときに、弾性成分(例えば、架橋結合されたグリコサミノグリカン重合体等の、固体様)および粘性成分(例えば、架橋結合されていないグリコサミノグリカン重合体、または担体相等の液体様)を有するという点で粘弾性である。この特性を示した流体力学的属性は、変形に対する組成物全体の抵抗性を定義する、複素弾性率(G*)である。複素弾性率は実数および虚数部分を有する複素数である、G*=G’+iG’’である。G*の絶対値はAbs(G*)=Sqrt(G’2+G’’2)である。複素弾性率は弾性率(G’)および粘性率(G’’)の合計として定義され得る。Falcone,et al.,Temporary Polysaccharide Dermal Fillers:A Model for Persistence Based on Physical Properties,Dermatol Surg.35(8):1238-1243(2009)、Tezel,上記、2008、Kablik,上記、2009、Beasley,上記、2009、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0070】
弾性率、または弾性の係数は、力をかけられたときに、ヒドロゲル物質が変形に抵抗する能力、または逆に言えば、非恒久的に変形される物体の性質を指す。弾性率は組成物の硬度を特徴付け、それはその組成物の運動からのエネルギーの貯蔵を示すので、貯蔵弾性率としても知られる。弾性率は弾性と強度との間の相互作用を示し(G’=圧力/歪み)、よって、組成物の硬さまたは軟らかさの定量的計測を定める。物体の弾性率は弾性変形領域における物体の圧力対歪み曲線の傾きとして定義される。λ=圧力/歪み、ここでλは弾性率(単位:パスカル)であり、圧力は(変形を引き起こす力)/(力がかけられた領域)であり、歪みはその物体の元の状態に対してその圧力により引き起こされた変化率である。その力がかけられる速さによるが、より硬い組成物は、より高い弾性率を有するであろう、かつ、より硬い組成物は、例えば、注入等の、ある一定の距離、その物質を変形するためにより大きな力を要するであろう。教示を含めて、圧力がどのようにして計測されるべきかを明記すれば、多くの型の弾性率が定義される。3つの主要な弾性率は引張弾性率、せん断弾性率、および体積弾性率である。
【0071】
粘性率は粘性損失として失われるエネルギーを示すので、損失弾性率としてもまた知られる。タンジェントδは粘性率と弾性率の割合である。タンジェントδ=G’’/G’。Falcone,上記,2009。本明細書中に開示されるタンジェントδ値については、タンジェントδは周波数1Hzでの動的弾性率から得られる。より低いタンジェントδはより硬い、より固い、またはより弾性の組成物に相当する。
【0072】
別の実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、ある弾性率を示す。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約25Pa、約50Pa、約75Pa、約100Pa、約125Pa、約150Pa、約175Pa、約200Pa、約250Pa、約300Pa、約350Pa、約400Pa、約450Pa、約500Pa、約550Pa、約600Pa、約650Pa、約700Pa、約750Pa、約800Pa、約850Pa、約900Pa、約950Pa、約1,000Pa、約1,200Pa、約1,300Pa、約1,400Pa、約1,500Pa、約1,600Pa、約1,700Pa、約1,800Pa、約1,900Pa、約2,000Pa、約2,100Pa、約2,200Pa、約2,300Pa、約2,400Pa、または約2,500Paの弾性率を示す。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、少なくとも25Pa、少なくとも50Pa、少なくとも75Pa、少なくとも100Pa、少なくとも125Pa、少なくとも150Pa、少なくとも175Pa、少なくとも200Pa、少なくとも250Pa、少なくとも300Pa、少なくとも350Pa、少なくとも400Pa、少なくとも450Pa、少なくとも500Pa、少なくとも550Pa、少なくとも600Pa、少なくとも650Pa、少なくとも700Pa、少なくとも750Pa、少なくとも800Pa、少なくとも850Pa、少なくとも900Pa、少なくとも950Pa、少なくとも1,000Pa、少なくとも1,200Pa、少なくとも1,300Pa、少なくとも1,400Pa、少なくとも1,500Pa、少なくとも1,600Pa、少なくとも1,700Pa、少なくとも1,800Pa、少なくとも1,900Pa、少なくとも2,000Pa、少なくとも2,100Pa、少なくとも2,200Pa、少なくとも2,300Pa、少なくとも2,400Pa、または少なくとも2,500Paの弾性率を示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、最大25Pa、最大50Pa、最大75Pa、最大100Pa、最大125Pa、最大150Pa、最大175Pa、最大200Pa、最大250Pa、最大300Pa、最大350Pa、最大400Pa、最大450Pa、最大500Pa、最大550Pa、最大600Pa、最大650Pa、最大700Pa、最大750Pa、最大800Pa、最大850Pa、最大900Pa、最大950Pa、最大1,000Pa、最大1,200Pa、最大1,300Pa、最大1,400Pa、最大1,500Pa、または最大1,600Paの弾性率を示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約25Pa~約150Pa、約25Pa~約300Pa、約25Pa~約500Pa、約25Pa~約800Pa、約125Pa~約300Pa、約125Pa~約500Pa、約125Pa~約800Pa、約500Pa~約1,600Pa、約600Pa~約1,600Pa、約700Pa~約1,600Pa、約800Pa~約1,600Pa、約900Pa~約1,600Pa、約1,000Pa~約1,600Pa、約1,100Pa~約1,600Pa、約1,200Pa~約1,600Pa、約500Pa~約2,500Pa、約1,000Pa~約2,500Pa、約1,500Pa~約2,500Pa、約2,000Pa~約2,500Pa、約1,300Pa~約1,600Pa、約1,400Pa~約1,700Pa、約1,500Pa~約1,800Pa、約1,600Pa~約1,900Pa、約1,700Pa~約2,000Pa、約1,800Pa~約2,100Pa、約1,900Pa~約2,200Pa、約2,000Pa~約2,300Pa、約2,100Pa~約2,400Pa、または約2,200Pa~約2,500Paの弾性率を示す。
【0073】
別の実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、ある粘性率を示す。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約10Pa、約20Pa、約30Pa、約40Pa、約50Pa、約60Pa、約70Pa、約80Pa、約90Pa、約100Pa、約150Pa、約200Pa、約250Pa、約300Pa、約350Pa、約400Pa、約450Pa、約500Pa、約550Pa、約600Pa、約650Pa、または約700Paの粘性率を示す。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、最大10Pa、最大20Pa、最大30Pa、最大40Pa、最大50Pa、最大60Pa、最大70Pa、最大80Pa、最大90Pa、最大100Pa、最大150Pa、最大200Pa、最大250Pa、最大300Pa、最大350Pa、最大400Pa、最大450Pa、最大500Pa、最大550Pa、最大600Pa、最大650Pa、または最大700Paの粘性率を示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約10Pa~約30Pa、約10Pa~約50Pa、約10Pa~約100Pa、約10Pa~約150Pa、約70Pa~約100Pa、約50Pa~約350Pa、約150Pa~約450Pa、約250Pa~約550Pa、約350Pa~約700Pa、約50Pa~約150Pa、約100Pa~約200Pa、約150Pa~約250Pa、約200Pa~約300Pa、約250Pa~約350Pa、約300Pa~約400Pa、約350Pa~約450Pa、約400Pa~約500Pa、約450Pa~約550Pa、約500Pa~約600Pa、約550Pa~約650Pa、または約600Pa~約700Paの粘性率を示す。
【0074】
別の実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、あるタンジェントδを示す。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、約2.0、約2.1、約2.2、約2.3、約2.4、または約2.5のタンジェントδを示す。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、最大0.1、最大0.2、最大0.3、最大0.4、最大0.5、最大0.6、最大0.7、最大0.8、最大0.9、最大1.0、最大1.1、最大1.2、最大1.3、最大1.4、最大1.5、最大1.6、最大1.7、最大1.8、最大1.9、最大2.0、最大2.1、最大2.2、最大2.3、最大2.4、または最大2.5のタンジェントδを示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約0.1~約0.3、約0.3~約0.5、約0.5~約0.8、約1.1~約1.4、約1.4~約1.7、約0.3~約0.6、約0.1~約0.5、約0.5~約0.9、約0.1~約0.6、約0.1~約1.0、約0.5~約1.5、約1.0~約2.0、または約1.5~約2.5のタンジェントδを示す。
【0075】
本明細書の態様は、一部分において、透明性および/または半透明性を有する本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。(透明または透明度とも呼ばれる)透明性は光が物質を通り抜けることを可能にする物理的特性であり、一方、(半透明または半透明度とも呼ばれる)半透明性は光が拡散して通り抜けることを可能にするのみである。反対の特性は不透明性である。透明な物質は澄んでいるが、一方、半透明な物質は明らかには透けて見え得ない。本明細書中に開示される絹フィブロインヒドロゲルは透明性および半透明性等の、光学特性を呈し得る、または呈し得ない。ある特定の場合、例えば、表面のしわの充填において、不透明ヒドロゲルを有することは有益であろう。レンズまたは眼に充填するための「体液」の開発等の、他の場合において、半透明ヒドロゲルを有することは有益であろう。これらの特性はヒドロゲル物質の構造分布に作用することにより改変され得る。ヒドロゲルの光学特性を制御するために使用される因子は、非限定的に、重合体濃度、ゲル結晶度、およびヒドロゲルの均一性を含む。
【0076】
光が物質にぶつかるとき、光はいくつかの異なる様式でその物質と相互作用し得る。これらの相互作用は光の性質(その波長、周波数、エネルギー等)およびその物質の性質による。光波は反射、および屈折を伴う透過率のいくつかの組み合わせにより物体と相互作用する。よって、光学的に透明な物質はそれに降りかかる光の多くが伝導されることを可能にし、光がほとんど反射されない。光の伝導を可能にしない物質は光学的に不透明または単に不透明と呼ばれる。
【0077】
1つの実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、光学的に透明である。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の約75%、光の約80%、光の約85%、光の約90%、光の約95%、または光の約100%を伝導する。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の少なくとも75%、光の少なくとも80%、光の少なくとも85%、光の少なくとも90%、または光の少なくとも95%を伝導する。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の約75%~約100%、光の約80%~約100%、光の約85%~約100%、光の約90%~約100%、または光の約95%~約100%を伝導する。
【0078】
別の実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、光学的に不透明である。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の約5%、光の約10%、光の約15%、光の約20%、光の約25%、光の約30%、光の約35%、光の約40%、光の約45%、光の約50%、光の約55%、光の約60%、光の約65%、または光の約70%を伝導する。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の最大5%、光の最大10%、光の最大15%、光の最大20%、光の最大25%、光の最大30%、光の最大35%、光の最大40%、光の最大45%、光の最大50%、光の最大55%、光の最大60%、光の最大65%、光の最大70%、または光の最大75%を伝導する。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、光の例えば、約5%~約15%、約5%~約20%、約5%~約25%、約5%~約30%、約5%~約35%、約5%~約40%、約5%~約45%、約5%~約50%、約5%~約55%、約5%~約60%、約5%~約65%、約5%~約70%、約5%~約75%、約15%~約20%、約15%~約25%、約15%~約30%、約15%~約35%、約15%~約40%、約15%~約45%、約15%~約50%、約15%~約55%、約15%~約60%、約15%~約65%、約15%~約70%、約15%~約75%、約25%~約35%、約25%~約40%、約25%~約45%、約25%~約50%、約25%~約55%、約25%~約60%、約25%~約65%、約25%~約70%、または約25%~約75%を伝導する。
【0079】
1つの実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、光学的に半透明である。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の約75%、光の約80%、光の約85%、光の約90%、光の約95%、または光の約100%を拡散して伝導する。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の少なくとも75%、光の少なくとも80%、光の少なくとも85%、光の少なくとも90%、または光の少なくとも95%を拡散して伝導する。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、光の約75%~約100%、光の約80%~約100%、光の約85%~約100%、光の約90%~約100%、または光の約95%~約100%を拡散して伝導する。
【0080】
本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、そのヒドロゲルを粉砕して粒子にすることによりさらにプロセスされ、そして随意に、例えば、水または食塩水等の、担体相と混合し、溶液、油、ローション、ゲル、軟膏、クリーム、スラリー、膏薬、またはペーストのような注入可能なまたは局所的物質を形成し得る。よって、開示されるヒドロゲル組成物は、単相性または多相性組成物であり得る。ヒドロゲルは直径約15μm~約30μm、約50μm~約75μm、約100μm~約150μm、約200μm~約300μm、約450μm~約550μm、約600μm~約700μm、約750μm~約850μm、または約900μm~約1,000μm等の、約10μm~約1000μmの粒子サイズに製粉され得る。
【0081】
本明細書の態様は、一部分において、注入可能である本明細書中に開示される組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「注入可能な」は細い針を伴う注入装置を用いて個人の皮膚領域にその組成物を投与することが必要な特性を有する物質を指す。本明細書中で使用されるとき、用語「細い針」は27ゲージ、またはそれ以下の針を指す。本明細書中に開示される組成物の注入可能性は上記に議論されるようにヒドロゲル粒子をある大きさにすることにより達成され得る。
【0082】
この実施形態の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、細い針を通して注入可能である。この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、例えば、約27ゲージ、約30ゲージ、または約32ゲージの針を通して注入可能である。この実施形態のさらに他の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、例えば、22ゲージ、もしくはそれ以下、27ゲージ、もしくはそれ以下、30ゲージ、もしくはそれ以下、または32ゲージ、もしくはそれ以下の針を通して注入可能である。この実施形態のさらに他の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、例えば、約22ゲージ~約35ゲージ、22ゲージ~約34ゲージ、22ゲージ~約33ゲージ、22ゲージ~約32ゲージ、約22ゲージ~約27ゲージ、または約27ゲージ~約32ゲージの針を通して注入可能である。
【0083】
この実施形態の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、100mm/分の速度で約60N、約55N、約50N、約45N、約40N、約35N、約30N、約25N、約20N、または約15Nの押出力で注入され得る。この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、約60N、もしくはそれ以下、約55N、もしくはそれ以下、約50N、もしくはそれ以下、約45N、もしくはそれ以下、約40N、もしくはそれ以下、約35N、もしくはそれ以下、約30N、もしくはそれ以下、約25N、もしくはそれ以下、約20N、もしくはそれ以下、約15N、もしくはそれ以下、約10N、もしくはそれ以下、または約5N、もしくはそれ以下の押出力で27ゲージの針を通して注入され得る。この実施形態のさらに他の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、約60N、もしくはそれ以下、約55N、もしくはそれ以下、約50N、もしくはそれ以下、約45N、もしくはそれ以下、約40N、もしくはそれ以下、約35N、もしくはそれ以下、約30N、もしくはそれ以下、約25N、もしくはそれ以下、約20N、もしくはそれ以下、約15N、もしくはそれ以下、約10N、もしくはそれ以下、または約5N、もしくはそれ以下の押出力で30ゲージの針を通して注入され得る。この実施形態のさらに他の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、約60N、もしくはそれ以下、約55N、もしくはそれ以下、約50N、もしくはそれ以下、約45N、もしくはそれ以下、約40N、もしくはそれ以下、約35N、もしくはそれ以下、約30N、もしくはそれ以下、約25N、もしくはそれ以下、約20N、もしくはそれ以下、約15N、もしくはそれ以下、約10N、もしくはそれ以下、または約5N、もしくはそれ以下の押出力で32ゲージの針を通して注入され得る。
【0084】
本明細書の態様は、一部分において、粘着性を示す、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。粘着性は、粘着性吸引力、粘着力、または圧縮力とも呼ばれ、分子を合体させるよう働く、物質内の類似分子間の分子間引力により引き起こされる物質の物理的特性である。粘着性は重量グラム(gmf)を用いて表される。粘着性は、他の因子のうち、開始遊離グリコサミノグリカン重合体の分子量率、グリコサミノグリカン重合体の架橋結合度、架橋結合後の残留遊離グリコサミノグリカン重合体の量、およびそのヒドロゲル組成物のpHにより影響を受ける。組成物は、投与部位に局在したまま残るように十分に粘着性であるべきである。さらに、ある特定の用途において、十分な粘着性は組成物が機械的な負荷循環の場合において、その形、ひいては機能性を保持するために重要である。よって、1つの実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、水と同等の粘着性を示す。さらに別の実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、投与部位に局在したまま残るのに十分な粘着性を示す。さらに別の実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、その形を保持するのに十分な粘着性を示す。1つのさらなる実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、その形および機能性を保持するのに十分な粘着性を示す。
【0085】
本明細書の態様は、一部分において、生理学的に許容される容量オスモル濃度を示す、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「容量オスモル濃度」は溶液中で浸透圧的に活性な溶質の濃度を指す。本明細書中で使用されるとき、用語「生理学的に許容される容量オスモル濃度」は生体の正常な機能にしたがう、またはそれに特徴的な容量オスモル濃度を指す。よって、本明細書中に開示されるようなヒドロゲル組成物の投与は、哺乳類に投与されたとき、長期のまたは恒久的な有害な効果を実質的に有さない容量オスモル濃度を示す。容量オスモル濃度は溶媒リットル当たりの浸透圧的に活性な溶質のオスモルを用いて表される(Osmol/LまたはOsm/L)。容量オスモル濃度は、溶質のモルではなく、浸透圧的に活性な溶質粒子のモルを計測するので、モル濃度とは区別される。いくつかの化合物は溶液中で解離し得るが、一方で、他の化合物は解離し得ないので、その区別が生じる。溶液の容量オスモル濃度は以下の式から計算され得る:Osmol/L=ΣψiηiCi、ここでψはその溶液の非理想特性の程度を表す浸透係数であり、ηは分子が解離した、粒子(例えば、イオン)の数であり、そしてCはその溶質のモル濃度であり、そしてiは特定の溶質の同一性を表す標識である。本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の容量オスモル濃度は溶液を計測する従来の方法を用いて計測され得る。
【0086】
1つの実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、生理学的に許容される容量オスモル濃度を示す。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約100mOsm/L、約150mOsm/L、約200mOsm/L、約250mOsm/L、約300mOsm/L、約350mOsm/L、約400mOsm/L、約450mOsm/L、または約500mOsm/Lの容量オスモル濃度を示す。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、少なくとも100mOsm/L、少なくとも150mOsm/L、少なくとも200mOsm/L、少なくとも250mOsm/L、少なくとも300mOsm/L、少なくとも350mOsm/L、少なくとも400mOsm/L、少なくとも450mOsm/L、または少なくとも500mOsm/Lの容量オスモル濃度を示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、最大100mOsm/L、最大150mOsm/L、最大200mOsm/L、最大250mOsm/L、最大300mOsm/L、最大350mOsm/L、最大400mOsm/L、最大450mOsm/L、または最大500mOsm/Lの容量オスモル濃度を示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約100mOsm/L~約500mOsm/L、約200mOsm/L~約500mOsm/L、約200mOsm/L~約400mOsm/L、約300mOsm/L~約400mOsm/L、約270mOsm/L~約390mOsm/L、約225mOsm/L~約350mOsm/L、約250mOsm/L~約325mOsm/L、約275mOsm/L~約300mOsm/L、または約285mOsm/L~約290mOsm/Lの容量オスモル濃度を示す。
【0087】
本明細書の態様は、一部分において、生理学的に許容される重量オスモル濃度を示す、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「重量オスモル濃度」は体内の溶媒キロ当たりの浸透圧的に活性な溶質の濃度を指す。本明細書中で使用されるとき、用語「生理学的に許容される重量オスモル濃度」は生体の正常な機能に従う、またはそれに特徴的な重量オスモル濃度を指す。よって、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の投与は、哺乳類に投与されたとき、長期のまたは恒久的な有害な効果を実質的に有さない重量オスモル濃度を示す。重量オスモル濃度は溶媒キログラム当たりの浸透圧的に活性な溶質のオスモルを用いて表され(osmol/kgまたはOsm/kg)、そしてその溶液中に存在する全ての溶質のモル濃度の合計に等しい。溶液の重量オスモル濃度は浸透圧計を用いて計測され得る。最新の研究室で最も一般的に使用される器具は氷点降下浸透圧計である。この器具は、重量オスモル濃度が増加している溶液中で起こる氷点変化(氷点降下浸透圧計)、または重量オスモル濃度が増加している溶液中で起こる蒸気圧変化(蒸気圧降下浸透圧計)を計測する。
【0088】
1つの実施形態において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、生理学的に許容される重量オスモル濃度を示す。この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約100mOsm/kg、約150mOsm/kg、約200mOsm/kg、約250mOsm/kg、約300mOsm/kg、約350mOsm/kg、約400mOsm/kg、約450mOsm/kg、または約500mOsm/kgの重量オスモル濃度を示す。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、少なくとも100mOsm/kg、少なくとも150mOsm/kg、少なくとも200mOsm/kg、少なくとも250mOsm/kg、少なくとも300mOsm/kg、少なくとも350mOsm/kg、少なくとも400mOsm/kg、少なくとも450mOsm/kg、または少なくとも500mOsm/kgの重量オスモル濃度を示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、最大100mOsm/kg、最大150mOsm/kg、最大200mOsm/kg、最大250mOsm/kg、最大300mOsm/kg、最大350mOsm/kg、最大400mOsm/kg、最大450mOsm/kg、または最大500mOsm/kgの重量オスモル濃度を示す。この実施形態のさらに他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約100mOsm/kg~約500mOsm/kg、約200mOsm/kg~約500mOsm/kg、約200mOsm/kg~約400mOsm/kg、約300mOsm/kg~約400mOsm/kg、約270mOsm/kg~約390mOsm/kg、約225mOsm/kg~約350mOsm/kg、約250mOsm/kg~約325mOsm/kg、約275mOsm/kg~約300mOsm/kg、または約285mOsm/kg~約290mOsm/kgの重量オスモル濃度を示す。
【0089】
本明細書の態様は、一部分において、実質的な安定性を示す、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物について言及するとき、用語「安定性」または「安定な」は個人への投与前の貯蔵中にいかなる実質的なまたは顕著な程度まで低下し、分解し、または壊れる傾向がない組成物を指す。本明細書中で使用されるとき、用語「実質的な熱安定性」、「実質的に熱安定な」、「オートクレーブ安定な」、または「蒸気滅菌安定な」は本明細書中に開示されるような熱処理にかけられたときに実質的に安定である、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を指す。
【0090】
本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の安定性は、例えば、常圧でのまたは圧力下での(例えば、オートクレーブ)蒸気滅菌等の、熱処理に、ヒドロゲル組成物をかけることにより決定され得る。好ましくは、その熱処理は約1分~約10分間少なくとも約100℃の温度で行われる。本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の実質的な安定性は、1)滅菌後の本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の押出力(ΔF)の変化を決定することにより評価されることができ、ここで(特定の添加物を伴うヒドロゲル組成物の押出力)-(添加物の添加を伴わないヒドロゲル組成物の押出力)により計算されるとき、2N未満の押出力の変化は実質的に安定なヒドロゲル組成物の表示であり、および/または2)滅菌後の本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の流体力学的特性の変化を決定することにより評価されることができ、ここで(添加物を伴うゲル製剤のタンジェントδ 1Hz)-(添加物を伴わないゲル製剤のタンジェントδ 1Hz)により計算されるとき、0.1未満のタンジェントδ 1Hzの変化は実質的に安定なヒドロゲル組成物の表示である。よって、本明細書中に開示される実質的に安定なヒドロゲル組成物は、以下の特徴:均一性、押出力、粘着性、ヒアルロナン濃度、剤(単数または複数)濃度、容量オスモル濃度、pH、または熱処理前のヒドロゲルに所望される他の流体力学的特徴のうちの1つ以上を滅菌後に保持する。
【0091】
1つの実施形態において、グリコサミノグリカン重合体および本明細書中に開示される少なくとも1つの剤を含むヒドロゲル組成物は、本明細書中に開示される所望のヒドロゲル特性を維持する熱処理を用いてプロセスされる。この実施形態の態様において、グリコサミノグリカン重合体および本明細書中に開示される少なくとも1つの剤を含むヒドロゲル組成物は、例えば、約100℃、約105℃、約110℃、約115℃、約120℃、約125℃、または約130℃の熱処理を用いてプロセスされる。この実施形態の他の態様において、グリコサミノグリカン重合体および本明細書中に開示される少なくとも1つの剤を含むヒドロゲル組成物は、例えば、少なくとも100℃、少なくとも105℃、少なくとも110℃、少なくとも115℃、少なくとも120℃、少なくとも125℃、または少なくとも130℃の熱処理を用いてプロセスされる。この実施形態のさらに他の態様において、グリコサミノグリカン重合体および本明細書中に開示される少なくとも1つの剤を含むヒドロゲル組成物は、例えば、約100℃~約120℃、約100℃~約125℃、約100℃~約130℃、約100℃~約135℃、約110℃~約120℃、約110℃~約125℃、約110℃~約130℃、約110℃~約135℃、約120℃~約125℃、約120℃~約130℃、約120℃~約135℃、約125℃~約130℃、または約125℃~約135℃の熱処理を用いてプロセスされる。
【0092】
本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の長期安定性は、ヒドロゲル組成物を、例えば、約45℃環境での約60日間の保存等の熱処理に供することにより決定され得る。本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の長期安定性は、1)45℃熱処理後のヒドロゲル組成物の透明度および色を評価することにより評価されることができ、ここで、透明なおよび無色のヒドロゲル組成物は、実質的に安定なヒドロゲル組成物の表示であり、2)45℃熱処理後の本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の押出力(ΔF)の変化を決定することにより評価されることができ、ここで、(45℃熱処理前の特定の添加物を伴うヒドロゲル組成物の押出力)-(45℃熱処理後の特定の添加物を伴うヒドロゲル組成物の押出力)により計算されるとき、2N未満の押出力の変化は実質的に安定なヒドロゲル組成物の表示であり、および/または3)滅菌後の本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の流体力学的特性の変化を決定することにより評価されることができ、ここで、(45℃熱処理前の特定の添加物を伴うゲル形成のタンジェントδ 1Hz)-(45℃熱処理後の特定の添加物を伴うゲル形成のタンジェントδ 1Hz)により計算されるとき、0.1未満のタンジェントδ 1Hzの変化は実質的に安定なヒドロゲル組成物の表示である。よって、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の長期安定性は45℃熱処理後の以下の特徴:透明度(透明性および半透明性)、均一性、および粘着性のうちの1つ以上の保持により評価される。
【0093】
この実施形態の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約3ヶ月、約6ヶ月、約9ヶ月、約12ヶ月、約15ヶ月、約18ヶ月、約21ヶ月、約24ヶ月、約27ヶ月、約30ヶ月、約33ヶ月、または約36ヶ月間、室温で実質的に安定である。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、少なくとも3ヶ月、少なくとも6ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも18ヶ月、少なくとも21ヶ月、少なくとも24ヶ月、少なくとも27ヶ月、少なくとも30ヶ月、少なくとも33ヶ月、または少なくとも36ヶ月間、室温で実質的に安定である。この実施形態の他の態様において、ヒドロゲル組成物は、例えば、約3ヶ月~約12ヶ月、約3ヶ月~約18ヶ月、約3ヶ月~約24ヶ月、約3ヶ月~約30ヶ月、約3ヶ月~約36ヶ月、約6ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約18ヶ月、約6ヶ月~約24ヶ月、約6ヶ月~約30ヶ月、約6ヶ月~約36ヶ月、約9ヶ月~約12ヶ月、約9ヶ月~約18ヶ月、約9ヶ月~約24ヶ月、約9ヶ月~約30ヶ月、約9ヶ月~約36ヶ月、約12ヶ月~約18ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約30ヶ月、約12ヶ月~約36ヶ月、約18ヶ月~約24ヶ月、約18ヶ月~約30ヶ月、または約18ヶ月~約36ヶ月間、室温で実質的に安定である。
【0094】
本明細書の態様は、一部分において、医薬として許容される組成物である、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「医薬として許容される」は、個人に投与されたとき、悪い、アレルギー性の、または他の有害なもしくは所望されない反応を生じないいかなる分子実体または組成物を意味する。医薬として許容されるヒドロゲル組成物は、医療および獣医学的用途に有用である。医薬として許容されるヒドロゲル組成物は、単独でまたは他の補足的な活性成分、剤、薬物、もしくはホルモンとの組み合わせで個人に投与され得る。
【0095】
本明細書の態様は、一部分において、薬理学的に許容される賦形剤を含む、本明細書中に開示されるようなヒドロゲル組成物を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「薬理学的に許容される賦形剤」は「薬理学的賦形剤」または「賦形剤」と同義であり、哺乳類に投与されたときに長期のまたは恒久的な有害な効果を実質的に有さない賦形剤を指し、そして例えば、安定化剤、充填剤、凍結保護物質、溶解保護物質、添加物、媒体、担体、希釈剤、または補助剤等の、化合物を包含する。賦形剤は一般的に活性成分と混合され、またはその活性成分を希釈するもしくは封入することが許容され、そして固体、半固体、または液体剤であり得る。本明細書中に開示される医薬組成物は、活性成分の、医薬として許容される組成物へのプロセスを促進する、1つ以上の医薬として許容される賦形剤を含み得ることもまた考えられる。いかなる薬理学的に許容される賦形剤もその活性成分と非親和性でない限り、医薬として許容される組成物中でのその使用が企図される。薬理学的に許容される賦形剤の非限定的な例は、例えば、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Howard C.Ansel et al.,eds.,Lippincott Williams&Wilkins Publishers,7th ed.1999)、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(Alfonso R.Gennaro ed.,Lippincott,Williams&Wilkins,20th ed.2000)、Goodman&Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics(Joel G.Hardman et al.,eds.,McGraw‐Hill Professional,10th ed.2001)、およびHandbook of Pharmaceutical Excipients(Raymond C.Rowe et al.,APhA Publications,4th edition 2003)で見つけることができ、それぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、非限定的に、緩衝液、保存剤、等張化剤、塩、抗酸化物質、重量オスモル濃度調節剤、乳化剤、湿潤剤、甘味または香味剤等を含む、非限定的に、他の医薬として許容される成分を随意に含み得ることがさらに考えられる。
【0097】
医薬として許容される緩衝液は本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を調製するために使用され得る緩衝液であるが、ただし、生じる調製物は医薬として許容されるものである。医薬として許容される緩衝液の非限定的な例として、酢酸塩緩衝液、ホウ酸塩緩衝液、クエン酸塩緩衝液、中性緩衝食塩水、リン酸塩緩衝液、およびリン酸塩緩衝食塩水が挙げられる。医薬として許容される緩衝液のいかなる濃度も、治療的に有効な量の活性成分がこの有効な濃度の緩衝液を用いて回復されるという条件で、本明細書中に開示される医薬組成物の調合において有用であり得る。生理学的に許容される緩衝液の濃度の非限定的な例は、約0.1mM~約900mMの範囲内で生じる。医薬として許容される緩衝液のpHは、生じる調製物が医薬として許容されるという条件で、調節され得る。必要に応じ、酸または塩基が医薬組成物のpHを調節するために使用され得ることが理解される。いかなる緩衝されたpHレベルも、治療的に有効な量のマトリックス重合体活性成分がこの有効なpHレベルを用いて回復されるという条件で、医薬組成物の調合において有用であり得る。生理学的に許容されるpHの非限定的な例は、約pH5.0~約pH8.5の範囲内で生じる。例えば、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物のpHは約5.0~約8.0、または約6.5~約7.5、約7.0~約7.4、または約7.1~約7.3であり得る。
【0098】
医薬として許容される保存剤は、非限定的に、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンを含む。医薬として許容される保存剤は、非限定的に、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、例えば、PURITE(登録商標)(Allergan,Inc.Irvine,CA)等の安定化オキシクロロ組成物、ならびに例えば、DTPAまたはDTPA‐ビスアミド、DTPAカルシウム、およびCaNaDTPA‐ビスアミド等のキレート剤を含む。
【0099】
本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物において有用な医薬として許容される等張化剤は、非限定的に、例えば、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム等の塩、ならびにグリセリンを含む。その組成物は、塩として提供されることができ、そして非限定的に、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸等を含む、多くの酸と共に形成され得る。塩はその対応する遊離塩基形より水性または他のプロトン溶媒中で可溶性である傾向がある。これらのおよび薬理学分野において既知の他の物質が本明細書中に開示される医薬組成物中に含まれ得ることが理解される。薬理学的に許容される成分の他の非限定的な例は、例えば、Ansel,上記,(1999)、Gennaro,上記,(2000)、Hardman,上記,(2001)、およびRowe,上記,(2003)で見つけることができ、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0100】
本明細書の態様は、一部分において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を投与することによる個人の軟組織状態を治療する方法を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「治療する」は軟組織の欠点、欠損、疾患、および/または障害を特徴とする軟組織状態の美容的または臨床的症状を個人において低下させることもしくは消去すること、または軟組織の欠点、欠損、疾患、および/または障害を特徴とする状態の美容的または臨床的症状の開始を個人において遅らせることもしくは妨げることを指す。例えば、用語「治療する」は軟組織の欠損、疾患、および/または障害を特徴とする状態の症状を例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%、低下させることを意味し得る。軟組織の欠損、疾患、および/または障害を特徴とする状態の治療における本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の有効性はその状態に関連する1つ以上の美容的、臨床的症状、および/または生理学的指標を観察することにより決定され得る。軟組織の欠損、疾患、および/または障害における改善は、同時治療の必要性が低下したことによってもまた示され得る。当業者は特定の軟組織の欠損、疾患、および/または障害に関連する適切な症状または指標を知っているであろう、そして、ある個人が本明細書中に開示される化合物または組成物での治療の対象になるかどうかを決定する方法を知っているであろう。
【0101】
ヒドロゲル組成物は、個人に投与される。個人は典型的にどんな年齢、性別、または人種のヒトでもある。典型的に、軟組織状態を治療するための従来の処置の対象であるいかなる個人も本明細書中に開示される方法の対象である。老化皮膚の徴候を有する対象は成人であるが、早期老化または治療に好適な他の皮膚状態(例えば、傷跡)を有する対象もまた本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物で治療され得る。さらに、現在開示されるヒドロゲル組成物および方法は、現在の軟組織移植技術では技術的に不可能であり得る、または審美的に許容され得ない、体の部分または領域の少しの/中程度の拡張、形の変化、または輪郭の変化を求める個人に適用し得る。手術前評価はその処置に関連する全ての危険性および利点を開示する徹底的なインフォームドコンセントに加えて、ルーチンの履歴および身体検査を典型的に含む。
【0102】
本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物および方法は軟組織状態の治療において有用である。軟組織状態は、非限定的に、軟組織の欠点、欠損、疾患、および/または障害を含む。軟組織状態の非限定的な例は、例えば、胸の増大、胸の再構築、乳房固定、小乳房症、胸部発育不全、ポーランド症候群、カプセルの収縮および/または破裂のような移植合併症のための欠陥等の、胸の欠点、欠損、疾患、および/または障害、例えば、顔面の増大、顔面の再構築、メソセラピー、パリー‐ロンバーグ症候群、深在性エリテマトーデス、皮膚の穴、傷跡、こけた頬、薄い唇、鼻の欠点もしくは欠損、後眼窩の欠点もしくは欠損、眉間の線、鼻唇の線、口周囲の線、および/もしくはほうれい線のような顔のひだ、線、および/もしくはしわ、および/または顔面の他の輪郭の欠陥もしくは欠点等の、顔の欠点、欠損、疾患、または障害、首の欠点、欠損、疾患、または障害、皮膚の欠点、欠損、疾患、および/または障害、例えば、上腕、前腕、手、肩、背中、腹部を含む胴、臀部、腿、ふくらはぎを含む下腿、足底皮下脂肪を含む足、眼、生殖器、または他の体の部分、領域、もしくは範囲の増大または再構築等の、他の軟組織の欠点、欠損、疾患、および/または障害、またはこれらの体の部分、領域、もしくは範囲に影響する疾患または障害、失禁、大便失禁、他の形態の失調、および胃食道逆流疾患(GERD)を含む。本明細書中で使用されるとき、用語「メソセラピー」は上皮、真皮上皮の接合部、および/または真皮に小さな多数の液滴として投与される剤の上皮内、皮内、および/または皮下注入を含む、皮膚の非外科的美容処置技術を指す。
【0103】
本明細書中に開示されるような方法のいずれかで使用されるヒドロゲル組成物の量は、所望される変化および/または改善、所望される軟組織状態の症状の低下および/または消去、個人および/または医師により所望される臨床的および/または美容的効果、ならびに治療される体の部分または領域に基づいて典型的に決定されるであろう。組成物投与の有効性は以下の臨床的および/または美容的計測:軟組織の形の変化および/または改善、軟組織の大きさの変化および/または改善、軟組織の輪郭の変化および/または改善、組織機能の変化および/または改善、組織内殖の支持および/または新規コラーゲン沈着、組成物の移植維持、患者の満足および/または生活の質の改善、ならびに埋め込み可能な外来物質の使用の減少のうちの1つ以上により表され得る。
【0104】
例えば、胸の増大処置について、その組成物および方法の有効性は以下の臨床的および/または美容的計測:胸の大きさの増加、胸の形の変化、胸の輪郭の変化、移植維持、カプセル収縮の危険性の低下、リポ壊死のう胞形成の速度の低下、患者の満足および/または生活の質の改善、ならびに胸部移植の使用の減少のうちの1つ以上により表され得る。
【0105】
別の例として、顔面の軟組織の治療におけるその組成物および方法の有効性は以下の臨床的および/または美容的計測:唇、頬、または眼領域の大きさ、形、および/または輪郭の増大のような顔面の造作の大きさ、形、および/または輪郭の増大、唇、頬、または眼領域の形の大きさ、形、および/または輪郭の変化のような顔面の造作の大きさ、形、および/または輪郭の変化、皮膚のしわ、ひだ、もしくは線の減少または消去、皮膚のしわ、ひだ、または線に対する抵抗性、皮膚の水分補給、皮膚の弾力性の増加、皮膚の粗さの低下または消去、皮膚緊縮性の増加および/または改善、引き伸ばされた線もしくは跡の減少または消去、皮膚の色調、つや、明るさ、および/もしくは輝きの増加ならびに/または改善、皮膚の色の増加および/または改善、皮膚の青白さの低下または消去、組成物の移植維持、副作用の減少、患者の満足および/または生活の質の改善のうちの1つ以上により表され得る。
【0106】
さらに別の例として、尿失禁処置について、括約筋支持のための組成物および方法の有効性は以下の臨床的計測:失禁頻度の減少、移植維持、患者の満足および/または生活の質の改善、ならびに埋め込み可能な外来性充填剤の使用の減少のうちの1つ以上により表され得る。
【0107】
この実施形態の態様において、投与されるヒドロゲル組成物の量は、例えば、約0.01g、約0.05g、約0.1g、約0.5g、約1g、約5g、約10g、約20g、約30g、約40g、約50g、約60g、約70g、約80g、約90g、約100g、約150g、または約200gである。この実施形態の他の態様において、投与されるヒドロゲル組成物の量は、例えば、約0.01g~約0.1g、約0.1g~約1g、約1g~約10g、約10g~約100g、または約50g~約200gである。この実施形態のさらに他の態様において、投与されるヒドロゲル組成物の量は、例えば、約0.01mL、約0.05mL、約0.1mL、約0.5mL、約1mL、約5mL、約10mL、約20mL、約30mL、約40mL、約50mL、約60mL、約70mL、約80mL、約90mL、約100mL、約150mL、または約200mLである。この実施形態の他の態様において、投与されるヒドロゲル組成物の量は、例えば、約0.01mL~約0.1mL、約0.1mL~約1mL、約1mL~約10mL、約10mL~約100mL、または約50mL~約200mLである。
【0108】
治療期間は個人および/または医師により所望される美容的および/または臨床的効果、ならびに治療される体の部分または領域に基づいて典型的に決定されるであろう。この実施形態の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の投与は、例えば、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、約11ヶ月、約12ヶ月、約13ヶ月、約14ヶ月、約15ヶ月、約18ヶ月、または約24ヶ月間、軟組織状態を治療し得る。この実施形態の他の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の投与は、例えば、少なくとも6ヶ月、少なくとも7ヶ月、少なくとも8ヶ月、少なくとも9ヶ月、少なくとも10ヶ月、少なくとも11ヶ月、少なくとも12ヶ月、少なくとも13ヶ月、少なくとも14ヶ月、少なくとも15ヶ月、少なくとも18ヶ月、または少なくとも24ヶ月間、軟組織状態を治療し得る。この実施形態のさらなる態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の投与は、例えば、約6ヶ月~約12ヶ月、約6ヶ月~約15ヶ月、約6ヶ月~約18ヶ月、約6ヶ月~約21ヶ月、約6ヶ月~約24ヶ月、約9ヶ月~約12ヶ月、約9ヶ月~約15ヶ月、約9ヶ月~約18ヶ月、約9ヶ月~約21ヶ月、約6ヶ月~約24ヶ月、約12ヶ月~約15ヶ月、約12ヶ月~約18ヶ月、約12ヶ月~約21ヶ月、約12ヶ月~約24ヶ月、約15ヶ月~約18ヶ月、約15ヶ月~約21ヶ月、約15ヶ月~約24ヶ月、約18ヶ月~約21ヶ月、約18ヶ月~約24ヶ月、または約21ヶ月~約24ヶ月間、軟組織状態を治療し得る。
【0109】
本明細書の態様は、一部分において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の投与を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「投与」は、臨床的に、治療的に、または実験的に有益な結果をもたらす可能性のある、本明細書中に開示される組成物を個人に提供するいかなる送達機構をも意味する。個人に組成物を投与するために使用される実際の送達機構は、非限定的に、皮膚状態の型、皮膚状態の位置、皮膚状態の原因、皮膚状態の重篤さ、所望される軽減の程度、所望される軽減の期間、使用される特定の組成物、使用される特定の組成物の排泄速度、使用される特定の組成物の薬力学、使用される特定の組成物中に含まれる他の化合物の性質、特定の投与経路、例えば、年齢、体重、一般的な健康等の、個人の特定の特徴、履歴、および危険因子、またはそれらの組み合わせを含む因子を考慮に入れることにより当業者に決定され得る。この実施形態の一態様において、本明細書中に開示される組成物は、注入により個人の皮膚領域に投与される。
【0110】
個々の患者へのヒドロゲル組成物の投与経路は個人および/または医師により所望される美容的および/または臨床的効果、ならびに治療される体の部分または領域に基づいて典型的に決定されるであろう。本明細書中に開示される組成物は、非限定的に、針を伴うシリンジ、ピストル(例えば、油空圧ピストル)、カテーテル、局所的なもの、または直接的な外科的埋め込みによるものを含む当業者に既知のどんな手段によっても投与され得る。本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、例えば、皮膚領域もしくは皮下組織領域等の、皮膚領域に投与され得る。例えば、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、約0.26mm~約0.4mmの直径および約4mm~約14mmに及ぶ長さの針を利用して注入され得る。あるいは、その針は21~32Gであり、かつ約4mm~約70mmの長さを有し得る。好ましくは、その針は使い捨ての針である。その針はシリンジ、カテーテル、および/またはピストルと結合され得る。
【0111】
さらに、本明細書中に開示される組成物は、一回または複数回にわたり、投与され得る。最終的に、使用されるタイミングは良質医療の基準に従うであろう。例えば、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、1回、または数日間もしくは数週間空けたセッションでいくつかのセッションにわたり投与され得る。例えば、個人は1、2、3、4、5、6、もしくは7日毎、または1、2、3、もしくは4週間毎に本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を投与され得る。個人への本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物の投与は毎月または隔月の頻度であり、または3、6、9、または12ヶ月毎に投与され得る。
【0112】
胸の軟組織置換処置について、投与経路は脇の下、乳輪周囲、および/または乳房下部の経路を含み得る。あるいは、またはさらに、組成物は、体軸横断内視鏡胸筋下アプローチをとおして送達され得る。顔面の軟組織置換処置について、投与経路は正面、側頭、頬骨、眼周囲、下顎(amdibula)、口周囲、または顎の経路であり得る。尿失禁処置において、投与経路は経尿道または尿道周囲の経路を含み得る。あるいは、またはさらに、投与は順行性経路により送達され得る。本明細書中で議論される経路は所望の臨床的効果を達成するために複数の経路の使用を除外しない。
【0113】
本明細書の態様は、一部分において、皮膚領域を提供する。本明細書中で使用されるとき、用語「皮膚領域」は上皮皮膚接合部、ならびに表層真皮(乳頭状領域)および深層真皮(網状領域)を含む真皮を含む、皮膚の領域を指す。皮膚は3つの主要な層である、防水性を提供し、かつ感染に対するバリアとして働く上皮、皮膚の付属物のための場所として働く真皮、および皮下組織(皮下脂肪層)から成る。上皮は血管を含有せず、そして、真皮からの拡散により養われる。上皮を作り上げる細胞の主な型はケラチノサイト、メラノサイト、ランゲルハンス細胞、およびメルケル細胞である。
【0114】
真皮は結合組織からなる上皮の下の皮膚層であり、そして、圧力および歪みから体を保護する。真皮は基部膜により上皮にしっかりと結合される。それは触覚および温覚を与える、多くの機械受容器/神経末端を抱えもする。それは毛包、汗腺、皮脂腺、アポクリン汗腺、リンパ管、および血管を含有する。真皮中の血管は栄養を提供し、かつその細胞自体からのおよび上皮の基底細胞層からの除去物を消耗する。真皮は構造的に2つの領域:乳頭状領域と呼ばれる上皮に近い表面領域、および網状領域として知られる深くより厚い領域に分けられる。
【0115】
乳頭状領域はゆるい乳輪状結合組織からなる。それは上皮に向かって伸びる乳頭突起と呼ばれるその指のような放射のために名付けられる。乳頭突起は、上皮と互いに組み合わさる「でこぼこの」表面を真皮に提供し、その2つの皮膚層間結合を増強する。網状領域は乳頭状領域中に深く存在し、かつ通常非常により厚い。それは密集した不規則な結合組織からなり、そして、それ全体を織りなすコラーゲン性の、弾力性の、および網状の繊維の密集からその名前が付けられている。これらのタンパク質繊維は真皮の強度、拡張性、および弾力性の特性を提供する。髪の毛の根元、皮脂腺、汗腺、受容体、爪、および血管もまた網状領域内に位置される。入れ墨のインクは真皮中に保持される。妊娠による妊娠線もまた真皮中に位置される。
【0116】
皮下組織は真皮の下に存在する。その目的は下にある骨および筋肉に皮膚の皮膚領域を結合すること、および皮膚領域に血管および神経を供給することである。それはゆるい結合組織およびエラスチンからなる。主な細胞型は線維芽細胞、マクロファージ、および脂肪細胞である(皮下組織は体脂肪のうちの50%を含有する)。脂肪は体の詰め物および断熱材として働く。
【0117】
この実施形態の一態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、皮膚領域または皮下組織領域への注入により個人の皮膚領域に投与される。この実施形態の態様において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物は、例えば、上皮皮膚接合領域、乳頭状領域、網状領域、またはそれらの組み合わせへの注入により個人の皮膚領域に投与される。
【0118】
本明細書の他の態様は、一部分において、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚状態を患う個人に投与するステップを含む、皮膚状態を治療する方法を開示し、ここでその組成物の投与は皮膚状態を改善し、それにより皮膚状態を治療する。この実施形態の一態様において、皮膚の脱水を治療する方法は、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚の脱水を患う個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚に水分を補給し、それにより皮膚の脱水を治療する。この実施形態の別の態様において、皮膚の弾力性の不足を治療する方法は、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚の弾力性の不足を患う個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚の弾力性を増大させ、それにより皮膚の弾力性の不足を治療する。この実施形態のさらに別の態様において、皮膚の粗さを治療する方法は、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚の粗さを患う個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚の粗さを低下させ、それにより皮膚の粗さを治療する。この実施形態のさらに別の態様において、皮膚の緊縮性の不足を治療する方法は本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚の緊縮性の不足を患う個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚をよりぴんと張らせ、それにより皮膚の緊縮性の不足を治療する。
【0119】
この実施形態の1つのさらなる態様において、皮膚の引き伸ばされた線または跡を治療する方法は、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚の引き伸ばされた線または跡を患う個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚の引き伸ばされた線または跡を減少させまたは消去し、それにより皮膚の引き伸ばされた線または跡を治療する。この実施形態の別の態様において、皮膚の青白さを治療する方法は、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚の青白さを患う個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚の色調または輝きを増大させ、それにより皮膚の青白さを治療する。この実施形態の別の態様において、皮膚のしわを治療する方法は、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を、皮膚のしわを患う個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚のしわを減少させまたは消去し、それにより皮膚のしわを治療する。この実施形態のさらに別の態様において、皮膚のしわを治療する方法は、本明細書中に開示されるヒドロゲル組成物を個人に投与するステップを含み、ここでその組成物の投与は皮膚のしわに対して皮膚を抵抗性にさせ、それにより皮膚のしわを治療する。
【0120】
本発明のある実施形態に従う結合ビタミンC/HAゲルは放出プロファイルの点でビタミンCとHAとの物理的混合に優る明らかな利点を示した。結合HAゲルは単純なインビトロ放出条件(酵素が関連しない)において十分安定である。結合ビタミンCゲルは酵素の助けを伴って放出の維持を示すと考えられる。エーテル化を通して結合されたAA2Gゲルの場合、活性ビタミンCの放出はα‐グルコシダーゼおよび/またはヒアルロニダーゼにより誘発される。アミド化による結合ビタゲンまたはAA2Pゲルに関して、活性ビタミンCの放出はホスファターゼにより誘発される。結合AA2Gゲルの場合、活性ビタミンCの放出は加水分解およびグルコシダーゼにより誘発される。
【0121】
いくつかの実施形態において、皮膚充填剤はバイオアベイラビリティを維持する。例えば、(例えば、顔面の空所の軟組織の欠損の修正のためにヒトに皮内でまたは皮下で)ヒトの皮膚に導入されたときに、ヒトにアスコルビン酸(または他のビタミン)を少なくとも約1ヶ月~最大約20ヶ月間、またはそれ以上放出する、皮膚充填剤が提供される。
【0122】
例えば、充填剤の期間と調和したビタミンC有効性の維持を予測するために、結合度についての見積もりがなされる。この見積もりはエーテル化によるHAへのAA2G結合の形成に基づいた。その製剤は生理学的条件下で安定であるが、細胞膜に結合されたα‐グルコシダーゼによりアスコルビン酸(AsA)の放出を開始する。α‐グルコシダーゼが細胞膜に結合しているという事実のために、AsAの放出は充填剤/細胞境界面で起こる。HA‐AA2GからのAsAのさらなる放出にHA分解が付随し、AA2Gが線維芽細胞に使用可能になるであろう。AsAの放出はしたがって、AA2G結合度およびHAの期間による。およそ5モル%の結合度を有するゲルは少なくとも最大1ヶ月間、例えば、3~5ヶ月間、活性ビタミンCを放出し得る。10モル%の結合度を有するゲルは最大6~8ヶ月間、活性ビタミンCを放出し得る。15モル%の結合度を有するゲルは最大約10ヶ月間、またはそれ以上、活性ビタミンCを放出し得る。30モル%では最大1年半である。
【表2】
*ゲルのパラメーター:体積 0.1cc、濃度 24mg/mLに基づく。(0.1×24×3%×1000)/(338
*0.1)=2.13(mM)
**仮定:
・AsAは一定の速度で放出される。
・AsAの有効な濃度は0.05mMであり、そして2日間超、有効性を維持する。2.13
*2/(0.05
*30)=2.8(ヶ月)
【0123】
本発明の1つの実施形態において、Star‐PEGエポキシドと架橋結合されたヒアルロン酸を含み、かつ約5モル%~約40モル%の結合度でそのヒアルロン酸に結合されたビタミンC誘導体(例えば、AA2G(アスコルビン酸2‐グルコシド)、ビタゲン(リン酸L‐アスコルビル3‐アミノプロピル)、およびSAP(リン酸アスコルビルナトリウム)のうちの1つ)を有する皮膚充填剤が提供される。
【0124】
この皮膚充填剤の作製方法は、4‐アームエポキシドによってキャップされたAA2G(AA2G‐4アームエポキシド)、未反応の4‐アームエポキシド、および遊離AA2Gを含有する組成物を得るために好適な割合、反応温度、および反応時間で、ペンタエリスリトールグリシダールエーテル(Star‐PEGエポキシド)をアスコルビン酸2‐グルコシド(AA2G)と反応させることを含む。4アームエポキシドでキャップされたAA2G(AA2G‐4アームエポキシド)はエポキシル基によりヒアルロン酸に結合される。未反応の4アームエポキシドはヒアルロン酸を架橋結合するための架橋剤として、およびAA2Gをさらに結合するための結合剤として働く。
【0125】
本発明の別の実施形態において、BDDEと架橋結合されたヒアルロン酸を含み、かつ約3モル%~約15モル%の結合度でそのヒアルロン酸に結合されたビタミンC誘導体(例えば、AA2G(アスコルビン酸2‐グルコシド)、ビタゲン(リン酸L‐アスコルビル3‐アミノプロピル)、およびSAP(リン酸アスコルビルナトリウム)のうちの1つ)を有する皮膚充填剤が提供される。
【0126】
この皮膚充填剤の作製方法は、BDDEによってキャップされたAA2G(AA2G‐BDDE)、未反応のBDDE、および遊離AA2Gを含有する組成物を得るために好適な割合、反応温度、および反応時間で、BDDEをアスコルビン酸2‐グルコシド(AA2G)と反応させることを含む。BDDEでキャップされたAA2G(AA2G‐BDDE)はエポキシル基によりヒアルロン酸に結合される。未反応のBDDEはヒアルロン酸を架橋結合するための架橋剤として、およびAA2Gをさらに結合するための結合剤として働く。
【0127】
図9はAA2G‐PBS溶液からのAsA放出に対するα‐グルコシダーゼ濃度の効果を示す表である。AA2GのAsAへの変換はα‐グリコシダーゼの濃度による。α‐グリコシダーゼ濃度がゲル1g当たり6.3ユニットであるとき、AA2Gは15分間でほとんど完全にAsAに変換した。α‐グリコシダーゼ濃度がゲル1g当たり4.7ユニットであるとき、AA2GをAsAに完全に変換するのに30分かかった。さらなるα‐グリコシダーゼ濃度喪失はAA2GのAsAへの変換を遅くした。
【0128】
図10は本発明に従う結合された皮膚充填剤からの遊離AsAの放出プロファイルの表示(放出維持)(モル%でのAA2G変換対反応時間)を示す。AA2GはAA2G/ジュビダーム(Juvederm)混合物中で、40分でAsAに完全に変換した。HA‐AA2G結合物はAsAへのAA2G変換の時間依存性を示した。
【0129】
図11Aおよび11Bは本発明に従う様々な皮膚充填剤についての追加の放出データを示す。より具体的には、HA‐AA2Gゲル中のAA2GのAsAへの変換はα‐グリコシダーゼ濃度に依存する。高いα‐グリコシダーゼ濃度はAA2GのAsAへの変換を速くした。所与のα‐グリコシダーゼ濃度について、種々の製剤はAA2GのAsAへの異なるプロファイルを示した。
実施例
【実施例1】
【0130】
架橋剤としてBDDEを用いて架橋結合されたHAゲルへのAA2G結合
400.6mgのLMW HAをシリンジ中の1802mgの1重量%NaOH中で約30分間水和した。800.7mgのAA2G、続いて713.7mgのBDDE、および1416.8mgの10%NaOHをバイアル中に入れた。上記溶液(pH12超)を50℃の水浴中で約20分間反応させ、その後上記水和HAに添加した。その添加後、その混合物を2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。その混合ペーストをバイアル中に入れ、そして50℃の水浴中に約2.5時間入れた。223.5mgの12M HClを9.05gのPBS(pH7.4)に添加した。約2.5時間後、HA‐AA2Gゲルが形成された。そのゲルを切断して断片にし、そしてHCl‐PBS溶液をそれに添加した。そのゲルを中和させ、そして環状振騰器上で一晩膨潤させた。そのゲルを、約60μmスクリーンをとおしてふるいにかけ、そして2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。そのゲルを15,000MWCO RC透析バッグ中に入れ、PBS緩衝液(pH7.4)中で透析した。その透析を、PBS緩衝液を頻繁に交換しながら約185時間続けた。その透析後、そのゲルをシリンジ中に入れ、そして4℃の冷蔵庫内で貯蔵した。
【実施例2】
【0131】
AA2G結合の決定
実施例1中に示されるようなゲルの重量を透析直前、および透析後に決定した。そのゲルが透析後に約1g/mLであったと仮定した。透析を、1LのPBS中で8時間超あたりに顕著なAA2Gが出てこなくなった点で止めた。そのAA2GをUV/Vis分光光度計(Nanodrop 2000C、ThermoScientific)を用いて260nmで計測した。AA2Gの較正曲線を2%HA中の様々な濃度のAA2Gを用いて計算した(260nmでの吸収=1.4838[AA2G(mM)])。
透析後のHAの重量:HAの出発重量×(透析前の実際の重量/理論的重量)
透析後のAA2Gのmmol:式(260nmでの吸収=1.4838[AA2G(mM)])中に透析後の260nmでの吸収を入れた。
AA2Gでの結合:(AA2G(mmol)/HA(mmol))×100%
実施例1中に示されるようなゲル中のAA2G結合度は14.7モル%である。
【実施例3】
【0132】
ゲルの流体力学的特性の決定
振動平行プレートレオメータ(Anton Paar, Physica MCR 301)を実施例1中で得られたゲルの特性を計測するために使用した。使用されたプレートの直径は25mmであった。そのプレート間のギャップを1mmに設定した。各計測について、一定の歪みでの周波数掃引をはじめに、その後、固定周波数での歪み掃引を行った。G’(貯蔵弾性率)を1%の歪みでの歪み掃引曲線から得た。そのゲルについてのその値は1450Paである。
【実施例4】
【0133】
可変性の結合度およびゲル流体力学的特性を有する、架橋剤としてBDDEを用いた、架橋結合されたHAゲルへのAA2G結合
本手順は実施例1中に示されるものと類似した。結合度は架橋剤対HAおよびAA2Gモル率を調整することにより改変される。ゲル特性を実施例3中に示されるように計測した。詳細は以下のとおりである。
400.8mgのLMW HAをシリンジ中の1752.1mgの1%NaOH中で約30分間水和した。800.3mgのAA2G、続いて354.1mgのBDDE、および1402.0mgの10%NaOHをバイアル中に入れた。上記溶液(pH12超)を50℃の水浴中で約20分間反応させ、その後上記水和HAに添加した。その添加後、その混合物を2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。その混合ペーストをバイアル中に入れ、そして50℃の水浴中に約2.5時間入れた。140.9mgの12M HClを9.0053gのPBS(pH7.4)に添加した。約2.5時間後、HA‐AA2Gゲルが形成された。そのゲルを切断して断片にし、HCl‐PBS溶液をそれに添加した。そのゲルを中和させ、そして環状振騰器上で一晩膨潤させた。そのゲルを、約60μmスクリーンをとおしてふるいにかけ、そして2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。そのゲルを15,000MWCO RC透析バッグ中に入れ、PBS緩衝液(pH7.4)中で透析した。その透析を、PBS緩衝液を頻繁に交換しながら約164.5時間続けた。その透析後、そのゲルをシリンジ中に入れ、そして4℃の冷蔵庫内で貯蔵した。結合度は13%である。ゲル貯蔵弾性率(G’)は、803Paである。
【実施例5】
【0134】
架橋剤としてBDDEを用いた、架橋結合されたHAゲルへのAA2G結合。結合度は5.3%であり、G’は約300Paである。
400.3mgのLMW HAをシリンジ中の3002.0mgの1%NaOH中で約30分間水和した。800.5mgのAA2G、続いて264.3mgのBDDE、および1100.0mgの10%NaOHをバイアル中に入れた。上記溶液(pH12超)を50℃の水浴中で約20分間反応させ、その後上記水和HAに添加した。その添加後、その混合物を2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。その混合ペーストをバイアル中に入れ、そして50℃の水浴中に約2.5時間入れた。104.2mgの12M HClを8.5128gのPBS(pH7.4)に添加した。約2.5時間後、HA‐AA2Gゲルが形成され、そしてHCl‐PBS溶液をそれに添加した。そのゲルを中和させ、そして環状振騰器上で週末にかけて(約55時間)膨潤させた。そのゲルを、約60μmスクリーンをとおしてふるいにかけ、そして2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。そのゲルを15,000MWCO RC透析バッグ中に入れ、PBS緩衝液(pH7.4)中で透析した。その透析を、PBS緩衝液を頻繁に交換しながら約114時間続けた。その透析後、そのゲルをシリンジ中に入れ、そして4℃の冷蔵庫内で貯蔵した。結合度およびゲル流体力学的特性を実施例2および3中に示されるような手順で計測する。結合度は5.3%である。ゲル貯蔵弾性率は約300Paである。
【実施例6】
【0135】
架橋剤としてstar‐PEGエポキシドを用いた、架橋結合されたHAゲルへのAA2G結合。結合度は29.4%であり、G’は約235Paである。
200.4mgのLMW HAをシリンジ中の2000mgの1%NaOH中で約30分間水和した。400mgのAA2G、続いて312.7mgのstar‐PEGエポキシド、および1026.5mgの10%NaOHをバイアル中に入れた。上記溶液を50℃の水浴中で約20分間反応させ、その後上記水和HAに添加した。その添加後、その混合物を2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。その混合ペーストをバイアル中に入れ、そして50℃の水浴中に約2.5時間入れた。187.4mgの12M HClを3.034gのPBS(pH7.4)に添加した。約2.5時間後、HA‐AA2Gゲルが形成され、そしてHCl‐PBS溶液をそれに添加した。そのゲルを中和させ、そして環状振騰器上で週末にかけて(約68時間)膨潤させた。そのゲルを、約60μmスクリーンをとおしてふるいにかけ、そして2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。そのゲルを15,000MWCO RC透析バッグ中に入れ、PBS緩衝液(pH7.4)中で透析した。その透析を、PBS緩衝液を頻繁に交換しながら約95時間続けた。その透析後、そのゲルをシリンジ中に入れ、そして4℃の冷蔵庫内で貯蔵した。結合度およびゲル流体力学的特性は実施例2および3中に示されるような手順で計測される。結合度は29.4%である。ゲル貯蔵弾性率は約235Paである。
【実施例7】
【0136】
架橋剤としてstar‐PEGエポキシドを用いた、架橋結合されたHAゲルへのAA2G結合。結合度は27.8%であり、G’は約363Paである。
200.3mgのLMW HAをシリンジ中の2000mgの1%NaOH中で約30分間水和した。400.2mgのAA2G、続いて313.4mgのstar‐PEGエポキシド、および1022.6mgの10%NaOHをバイアル中に入れた。上記溶液を上記水和HAに添加した。その添加後、その混合物を2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。その混合ペーストをバイアル中に入れ、そして50℃の水浴中に約2.5時間入れた。196.5mgの12M HClを3.016gのPBS(pH7.4)に添加した。約2.5時間後、HA‐AA2Gゲルが形成され、そして上記HCl‐PBS溶液をそれに添加した。そのゲルを中和させ、そして環状振騰器上で一晩(約24時間)膨潤させた。そのゲルを、約60μmスクリーンをとおしてふるいにかけ、そして2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。そのゲルを15,000MWCO RC透析バッグ中に入れ、PBS緩衝液(pH7.4)中で透析した。その透析を、PBS緩衝液を頻繁に交換しながら約98.5時間続けた。その透析後、そのゲルをシリンジ中に入れ、そして4℃の冷蔵庫内で貯蔵した。結合度およびゲル流体力学的特性を実施例2および3中に示されるような手順で計測する。結合度は27.8%である。ゲル貯蔵弾性率は約363Paである。
【実施例8】
【0137】
架橋剤としてBDDEを用いた、架橋結合されたHMW HAゲルへのAA2G結合。結合度は9.8モル%であり、G’は約238Paである。
400.3mgのHMW HAをシリンジ中の2501.3mgの4重量%NaOH中で約30分間水和した。1200mgのAA2G、続いて304.7mgのBDDE、および1178.6mgの16重量%NaOHをバイアル中に入れた。上記溶液(pH12超)を50℃の水浴中で約20分間反応させ、そして20ccのシリンジに移し、その後上記水和HAに添加した。その添加後、その混合物を2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。その混合ペーストを20ccのバイアル中に入れ、そして50℃の水浴中に約2.5時間入れた。約2.5時間後、HA‐AA2Gゲルが形成された。その後、226.6mgの12M HClを8492.2mgの10倍PBS(pH7.4)に添加し、HCl‐PBS溶液を得、そのHCl‐PBS溶液を、上記ゲルを中和させ、膨潤させるために添加した。そのゲルを環状振騰器上で48時間にわたり、中和させ、そして膨潤させた。そのゲルを、約60μmスクリーンをとおしてふるいにかけ、そして2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20回混合した。そのゲルを20,000MWCO CE透析バッグ中に入れ、PBS緩衝液(pH7.4)中で透析した。その透析を、PBS緩衝液を頻繁に交換しながら約114時間続けた。その透析後、そのゲルをシリンジ中に入れ、そして4℃の冷蔵庫内で貯蔵した。結合度およびゲル流体力学的特性を実施例2および3中に示されるような手順で計測する。結合度は5.3%である。ゲル貯蔵弾性率は約300Paである。
【実施例9】
【0138】
架橋剤としてBDDEを用いた、架橋結合されたLMW HAゲルへのビタゲン結合。結合度は15モル%であり、G’は約365Paである。
398.2mgのLMW HAをシリンジ中の1753.24mgの1重量%NaOH中で約40分間水和した。BDDE(311.7mg)を膨潤したHAに添加し、そしてHAをさらなる80分間、膨潤させ続けた。膨潤したHA/BDDE混合物を50℃で20分間予め反応させた。
801.9mgのビタゲンを1459.7mgの10重量%NaOH中で別に溶解し、そしてBDDEと予め反応させたHAと混合した。その混合物を50℃でさらなる2.5時間、反応させ続けた。約2.5時間後、HA‐ビタゲンゲルが形成された。その後、195mgの12M HClを9004.0mgの10倍PBS(pH7.4)に添加し、HCl‐PBS溶液を得、そしてそのHCl‐PBS溶液を、上記ゲルを中和させ、そして膨潤させるために添加した。そのゲルを環状振騰器上で48時間にわたり、中和させ、そして膨潤させた。そのゲルを、約60μmスクリーンをとおしてふるいにかけ、そして2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより約20分間混合した。そのゲルを20,000MWCO CE透析バッグ中に入れ、PBS緩衝液(pH7.4)中で透析した。その透析を、PBS緩衝液を頻繁に交換しながら約120時間続けた。その透析後、そのゲルをシリンジ中に入れ、そして4℃の冷蔵庫内で貯蔵した。そのゲルの流体力学的特性を実施例3中に示されるような手順で計測した。結合度は物質収支により約15モル%と計算される。ゲル貯蔵弾性率は約365Paである。
【実施例10】
【0139】
アミド化化学反応による直鎖状HAへのビタゲン結合
200.3mgのHMW HAを60ccのシリンジ中の10mLの水中で水和した。500mgのビタゲンを0.5mLの水中に溶解し、そして溶液をpH4.8まで中和した。197.7mgのEDCおよび149mgのNHSを6mLの水中で別に溶解した。上記溶液(溶液およびEDC/NHS溶液)を23.5mLの水を含有する別の60ccシリンジに添加する。その2つのシリンジを、2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより20回混合する。その混合物を1つのシリンジ中で貯蔵し、そして37℃浴中に4時間浸した。最後に、その溶液を、顕著なビタゲンが観察されなくなるまで、PBS緩衝液(pH7.4)に対して透析した。結合度を、示される実施例3と類似の方法により決定した。結合度は約10モル%である。
【実施例11】
【0140】
架橋結合されたHAゲルへのAA2P結合
200.4mgのLMW HAをシリンジ中の1000mgのMES 5.2緩衝液中で約30分間水和する。292mgのAA2Pをバイアル中に入れ、続いて300mgのstar‐PEGアミンを添加する。上記溶液を室温で一晩反応させる。そのゲルをPBS緩衝液で水和し、PBS緩衝液に対して透析し、未反応のAA2Pを除去した。最終的なゲルを実施例2および3中に示されるように特徴付け、結合度およびゲル流体力学的特性を決定した。結合度は約20モル%である。貯蔵弾性率(G’)は約500Paである。
【実施例12】
【0141】
AA2Gを伴うHA/BDDE皮膚充填剤製品の製剤
上記実施例中に示されるゲルのいずれにも、透析後、好適な量の遊離HAゲルが、ゲルの粘着性および/または注入可能性を改善改変するよう、そのゲルに添加され得る。例えば、均一な粘弾性ゲル(「遊離」HAゲル)を得るために、遊離HA繊維をリン酸緩衝液中で膨潤させる。(例えば、約1w/w%~約5w/w%の遊離HAを有する組成物を得るために)この非架橋結合ゲルは透析ステップ前に、実施例1中で得られたHA/BDDE架橋結合ゲルに添加される。生じるゲルをその後、処理済み滅菌シリンジ中に満たし、そして滅菌のために十分な温度および圧で少なくとも約1分間オートクレーブにかける。オートクレーブ後、最終的なHA‐AA2G製品を包装し、そして皮膚充填剤として使用するために医師に配布する。
【実施例13】
【0142】
リドカインを含むHA‐AA2G皮膚充填剤の製剤
実施例12の手順に従う、ただし、透析ステップ後、かつ遊離HAゲル添加前に、リドカインクロル水和物(リドカインHCl)をその混合物に添加する。粉末形態のリドカインHClははじめにWFI中で可溶化され、そして0.2μmフィルターをとおしてろ過され得る。希釈NaOH溶液をわずかに塩基性のpH(例えば、約7.5~約8のpH)に到達させるためにその粘着性HA‐AA2Gゲルに添加する。上記リドカインHCl溶液をその後、そのわずかに塩基性のゲルに添加し、最終的に所望される濃度、例えば、約0.3w/w%に到達させる。HA‐AA2G/リドカイン混合物の結果としてのpHは、そのとき、約7であり、そしてHA濃度は約24mg/mLである。適切なブレンダー機構を備えた標準の反応器中で、適切な均一性を得るために機械的混合を行う。
【実施例14】
【0143】
HAヒドロゲルへのカルボキシル官能基を含有する添加物の結合
レチノイン酸(トレチノインとしても知られる)、アダパレンス(adapalence)(、およびアルファ‐リポ酸等の、添加物はカルボキシル官能基(‐COOH)を含有する。これらの添加物はEDC化学反応を用いたエステル化によりHAヒドロゲルに結合される。本発明の1つの実施形態に従う結合についての実施例は、以下のように説明される。
200mgのHMW HAを60ccシリンジ中の10mLのMES緩衝液(pH4.8)中で水和する。別のシリンジ中で、200mgのレチノイン酸を5mLの水‐アセトン混合物(水/アセトン体積率1:3)中に溶解する。上記2つのシリンジをシリンジ接続器により約20回混合する。その後、197.7mgのEDCおよび149mgのNHSを別のシリンジ中の6mLの水中で別に溶解する。EDCおよびNHSを含有するシリンジをHAおよびレチノイン酸を含有するシリンジと繋げ、2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより反応物を少なくとも20回混合する。その混合物を1つのシリンジ中で貯蔵し、そして37℃浴中に4時間浸す。そのゲルをイソプロパノールに対して透析し、未結合のレチノイン酸を除去し、そしてその後、無菌条件下でPBS緩衝液に対して透析する。そのゲルを滅菌シリンジ中に包装し、そして4℃で貯蔵する。
【実施例15】
【0144】
HAヒドロゲルへのヒドロキシル官能基を含有する添加物の結合
レチノール(トレチノインとしても知られる)、カタラーゼ、ジメチルアミノエタノール、およびg‐トコフェロール等の添加物はヒドロキシル官能基(‐OH)を含有する。これらの添加物はEDC化学反応を用いたエステル化によりHAヒドロゲルに結合される。結合についての典型的な実施例は、以下のように説明される。
200mgのHMW HAを60ccのシリンジ中の10mLの2‐(N‐モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH4.8)中で水和する。別のシリンジ中で、200mgのレチノール酸を5mLの水‐アセトン混合物(水/アセトン体積率1:3)中に溶解する。上記2つのシリンジをシリンジ接続器により約20回混合する。その後、197.7mgのEDCおよび149mgのNHSを別のシリンジ中の6mLの水中で別に溶解する。EDCおよびNHSを含有するシリンジをHAおよびレチノールを含有するシリンジに繋げ、2つのシリンジ間を行ったり来たりさせることにより反応物を少なくとも20回混合する。その混合物を1つのシリンジ中で貯蔵し、そして37℃浴中に4時間浸す。そのゲルをイソプロパノールに対して透析し、未結合のレチノールを除去し、そしてその後、無菌(aspect)条件下でPBS緩衝液に対して透析する。そのゲルを滅菌シリンジ中に包装し、そして4℃で貯蔵する。
【実施例16】
【0145】
改変後のHAヒドロゲルへのヒドロキシル官能基を含有する添加物の結合
これは2つのステップのプロセスである。ステップ1:HAヒドロゲル、例えば、ジュビダームまたはレスチラン(restylane)をEDC/NHSで処理し、HAのカルボキシル基を活性化する。ステップ2:活性化されたHAヒドロゲルを、ヒドロキシル基を含有する添加物で処理する。ヒドロキシル基を含有する添加物はレチノール、カタラーゼ、ジメチルアミノエタノール、およびg‐トコフェロールヒドロキシル官能基(‐OH)である。架橋結合されたHAゲルへの添加物の結合についての典型的な実施例は、以下のとおりである。
2gmのジュビダームゲルを200gmのEDCおよび150mgのNHSと室温で混合する。その後、3mLのアセトン‐水混合物中の200mgのレチノールを添加する。上記混合物を37℃で4時間反応させる。そのゲルをイソプロパノールに対して透析し、未結合のレチノールを除去し、そしてその後、無菌条件下でPBS緩衝液に対して透析する。そのゲルを滅菌シリンジ中に包装し、そして4℃で貯蔵する。
【実施例17】
【0146】
HAヒドロゲルへの増殖因子、ペプチド、またはエラスチンの結合
官能アミン基を含有する、上皮増殖因子(EGF)、形質転換増殖因子(TGF)、およびペプチド等の、添加物はHAに結合され、有益な皮膚充填剤を形成し得る。これらの添加物はアミド化化学反応によりHAに結合される。結合についての典型的な実施例は、以下のように説明される。
200.3mgのHMW HAを10mLのMES緩衝水(pH5.4)中で水和する。100mgのMES溶液中の20mgのEGFを添加する。上記混合物に、197.7mgのEDCおよび149mgを添加する。生じる反応混合物を37℃で4時間反応させる。反応完了後、そのゲルをイソプロパノールに対してさらに透析し、そしてその後、無菌条件下でPBS緩衝液に対して透析する。そのゲルを滅菌シリンジ中に包装し、4℃で貯蔵する。
【0147】
最後に、本明細書の態様が様々な実施形態について示されているが、当業者は開示される特定の実施例が本明細書中に開示される発明の原理の単に例示であることを容易に理解するであろうことが理解されるべきである。それゆえ、開示される発明は本明細書中に示される特定の方法、プロトコル、および/または試薬等に決して限定されないことが理解されるべきである。よって、本明細書の精神から離れることなく、当業者は多くのおよび様々な改変または変化を作出し得る、あるいは、開示される発明の代替の構成は本明細書中の教示に従ってなされ得る。詳細における変化は付属の請求項中に定義されるような本発明の精神から離れることなく、なされ得る。最後に、本明細書中で使用される用語は特定の実施形態を説明する目的のためのみであり、そして請求項によってのみ定義される本発明の範囲を限定するとは意図されない。さらに、上記説明中に含有される、または付属の図面中に示される全ての事柄は単に例示として、および限定ではないと解釈されるべきであることが意図される。したがって、本発明は示されるおよび説明されるとおりの正確なものに限定されない。
【0148】
本発明を実施するために本発明者に知られる最も良い様式を含む、本発明のある特定の実施形態が本明細書中に示される。もちろん、これらの示される実施形態についての変形は上記説明を読めば当業者に明らかになるであろう。本発明者は、当業者がそのような変形を使用することを適切であると予想し、そして本発明者は本発明が本明細書中に具体的に示されるものとは異なって実施されることを意図する。したがって、本発明は適用可能な法により許可されるように、本明細書中に付属の請求項中に列挙される発明の全ての改変および均等物を含む。さらに、上記に示される要素の、それらの全ての可能な変形の、どんな組み合わせも、本明細書中に別段の定めなき限り、または別段のように文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。
【0149】
本明細書中に開示される本発明の代替の要素または実施形態のグループ化は限定として解釈されるべきでない。各グループ構成要素は個々に、またはそのグループの他の構成要素もしくは本明細書中に見られる他の要素とのどんな組み合わせでも言及され、そして請求され得る。1グループの1つ以上の構成要素は利便性および/または特許性の理由のためにグループ中に含められ、またはグループから消去され得る。そのような包含または消去が起こるとき、本明細書は改変されたグループを含有し、したがって付属の請求項中で使用される全てのマーカッシュ形式のグループの記述を実現するとみなされる。
【0150】
別段の定めなき限り、本明細書および請求項中で使用される成分の量、分子量等の特性、反応条件等を表す全ての数字は用語「約」により全ての場合において修飾されると理解されるべきである。本明細書中で使用されるとき、用語「約」は、そのように指定された項目、パラメータ、または用語が、示された項目、パラメータ、または用語の値の10パーセント超および未満の範囲を包含することを意味する。したがって、逆の定めなき限り、本明細書および付属の請求項中に設定される数字パラメータは本発明により得られると考えられる所望の特性により変化し得る近似値である。何はともあれ、かつ請求項の範囲に対する均等物の原則の適用を限定する試みではなく、各数字パラメータは少なくとも報告される有意な桁の数字に照らして、かつ通常の端数処理技術を適用することにより解釈されるべきである。本発明の広い範囲を示す数字範囲およびパラメータは近似値であるにもかかわらず、特定の実施例中に示される数値は可能な限り正確に報告される。どの数値も、しかしながら、それらの各試験計測中に見られる標準偏差から必然的に生じるある特定の誤差を本質的に含有する。
【0151】
本発明を示す文脈中で(特に以下の請求項の文脈中で)使用される用語「a」、「an」、「the」、および同様の指示物は、本明細書中に別段の定めなき限りまたは文脈により明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を含むと解釈されるべきである。本明細書中の値の範囲の列挙はその範囲に入る各別々の値を個々に言及する省略法として働くと単に意図される。本明細書中に別段の定めなき限り、各個々の値は、それが本明細書中に個々に列挙されているかのように本明細書中に組み込まれる。本明細書中に示される全ての方法は、本明細書中に別段の定めなき限り、または別段のように文脈により明らかに矛盾しない限り、いかなる好適な順序でも行われ得る。本明細書中に提供されるいかなるおよび全ての実施例または例示的な言語(例えば、「等の」)の使用は単に本発明をよりよく例示することが意図され、そして別段のように請求される本発明の範囲についての限定を提示しない。本明細書中のどの言語も本発明の実施に本質的な非請求要素を示すと解釈されるべきでない。
【0152】
本明細書中に開示される特定の実施形態は言語からなるまたは本質的に言語からなることを用いて請求項中でさらに限定され得る。請求項中で使用されるとき、改正毎に提出されまたは追加されようとも、接続用語「からなる」は請求項中で特定されない要素、ステップ、または成分を除外する。接続用語「本質的に~からなる」は特定の物質またはステップ、ならびに基本的なおよび新規の特性(単数または複数)に実質的に影響しないものに請求項の範囲を限定する。そのように請求される本発明の実施形態は本明細書中に本質的にまたは明示的に示され、および可能にされる。
【0153】
本明細書中に引用されるおよび特定される全ての特許、特許公報、および他の出版物は、例えば、本発明に関連して使用され得るそのような出版物中に示される組成物および方法を示すおよび開示する目的のために、それらの全体が引用により本明細書中に個々におよび明示的に組み込まれる。これらの出版物は本出願の出願日前のそれらの開示についてのみ提供される。この点におけるいずれも、本発明者が先発明によってまたは他の理由のためにそのような開示に先行する権利を与えられないことの承認として解釈されるべきでない。その日付についての全ての記述またはこれらの文書の内容についての表示は本出願人に入手可能な情報に基づき、そしてこれらの文書の日付または内容の正確さについての承認を構成しない。