(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20220107BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20220107BHJP
【FI】
A63B53/04 B
A63B102:32
(21)【出願番号】P 2020147898
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】201911098438.7
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511048409
【氏名又は名称】復盛應用科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】特許業務法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鄭 達謙
(72)【発明者】
【氏名】唐 運啓
(72)【発明者】
【氏名】陳 吉峰
(72)【発明者】
【氏名】李 寶斌
(72)【発明者】
【氏名】王 志科
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-41707(JP,A)
【文献】特開2004-97550(JP,A)
【文献】特開平7-216490(JP,A)
【文献】特開2017-221257(JP,A)
【文献】特開2001-58015(JP,A)
【文献】特開2007-75173(JP,A)
【文献】特開2010-284384(JP,A)
【文献】特開2004-298478(JP,A)
【文献】特開2007-125107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/04
A63B 102/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン合金から形成されて表面に結合部が設けられるヘッド本体を提供し、
1~17重量% の銅と6~37重量%のニッケルと残部のタングステンからなり、比重が12~17g/cm
3であるタングステン-銅-ニッケル合金から形成されるウェイトを提供し、
前記ウェイトを前記ヘッド本体の結合部に置き、前記ウェイトと前記ヘッド本体とが当接する箇所に、タングステン電極が前記ウェイトと前記結合部との間に発生させたアークを溶接熱源として溶融溶接を行い、前記ウェイトを前記ヘッド本体に緊密に結合させ、前記ヘッド本体の結合部は、開口及び内壁を有し、前記内壁が、前記開口に向かって延伸し、前記ヘッド本体の外表面から突出して、前記開口を囲む凸部を形成させ、前記ウェイトは、外周面と頂部表面とを有し、斜面が前記外周面及び前記頂部表面に接し、かつ、前記ウェイトを前記ヘッド本体の結合部内に設置するときに、前記ウェイトの斜面が前記結合部の内壁に向かうようにし、前記斜面と前記内壁とが囲むように充填空間を形成させることを特徴とする、ウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記タングステン-銅-ニッケル合金が、1~3重量%の銅と6~8重量%のニッケルとを含み、比重が17g/cm
3であることを特徴とする請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記タングステン-銅-ニッケル合金が、8~12重量%の銅と19~23重量%のニッケルとを含み、比重が14g/cm
3 であることを特徴とする請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記タングステン-銅-ニッケル合金が、13~17 重量%の銅と33~37重量%のニッケルとを含み、比重が12g/cm
3 であることを特徴とする請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記チタン合金の比重が、12~17g/cm
3 であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項6】
溶融溶接の際に不活性気体によって保護することを特徴とする請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記タングステン電極及びプラズマガスが、共に前記アークを発生させることを特徴とする請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項8】
70~90Aの電流で前記タングステン電極に前記アークを発生させることを特徴とする請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項9】
レーザービームを前記溶接熱源として溶融溶接を行うことを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項10】
パワーが1600~2200Wであるレーザービームを前記溶接熱源とすることを特徴とする請求項9に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項11】
前記ウェイトを前記ヘッド本体の結合部内に設置するときに、前記斜面と前記内壁とが角度を成し、前記角度が30~60°であることを特徴とする請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法。
【請求項12】
前記凸部の頂部縁は、前記外表面に対して第一高度を有し、前記凸部は、第一幅を有し、前記斜面は、前記外周面及び前記頂部表面とそれぞれ接して側部縁及び頂部縁を形成し、前記側部縁は、前記頂部表面に対して第二高度を有し、前記頂部縁は、前記外周面に対して第二幅を有し、かつ、前記第一高度、前記第一幅、前記第二高度及び前記第二幅は、同等であることを特徴とする、請求項1に記載のウェイトを有するゴルフクラブヘッド
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフクラブヘッドの製造方法に関し、特に、ウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、チタン合金などの軽量材料でヘッド本体を形成してから、ヘッド本体と高い比重を有する材料から形成されたウェイトとを結合することで、ゴルフクラブヘッド全体の重量を低減させるとともに、ゴルフクラブヘッドの重心の位置を低くしていた。
例えば、特許文献1は、従来のタングステン―鉄―ニッケル合金によりウェイトを形成するものである。
【0003】
しかしながら、溶融溶接法によって、従来のタングステン―鉄―ニッケル合金から形成されたウェイトとチタン合金から形成されたヘッド本体とを溶接すると、溶接ビードの箇所にチタン―鉄の針状組織が形成し、割れといった欠陥が生じ易くなるので、ウェイトとヘッド本体とを結合させるには、ブレーズ溶接法を用いて、さらに高価なブレーズ溶接剤を併用しなければならず、ゴルフクラブヘッドの製造コストを上昇させてしまった。
以上に鑑みて、従来のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、改善する必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は、割れといった欠陥が発生しにくいウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
さらに、本発明の目的は、ブレーズ溶接剤を省くことができるウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上(頂)」、「下(底)」、「内」、「外」、「側面」等の方向に関する用語は、図面の方向を参照するものであり、上記の各方向に関する用語は、本発明の各実施例を説明する或いは理解できるように用いられるものであり、本発明を限定するものではない。
【0008】
本発明における部分或いは部品において、使用された「一」或いは「一個」等の助数詞は、都合のために使用し、本発明の特許請求の範囲について通常の意義を与えるもので、本発明において、一個または少なくとも一個として解釈すべきであり、且つ、明確に別の意味を指していないかぎり、一つである意味は、複数の場合も含まれている。
【0009】
本発明に係るウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、チタン合金から形成され、表面に結合部が設けられるヘッド本体を提供し、1~17重量%の銅と6~37重量%のニッケルとを含み、残部がタングステンであり、比重が12~17g/cm3であるタングステン―銅―ニッケル合金から形成されるウェイトを提供し、前記ウェイトを前記ヘッド本体の結合部に置き、前記ウェイトと前記ヘッド本体とが当接する箇所に溶接熱源を与えて溶融溶接を行い、前記ウェイトを前記ヘッド本体に緊密に結合させることを特徴とする。
【0010】
これにより、本発明に係るウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、溶融溶接によって、タングステン―銅―ニッケル合金から形成されるウェイトを、チタン合金から形成されるヘッド本体に緊密に結合させることができ、このとき、ヘッド本体のチタン原子がウェイトに向かって拡散し、ウェイトの銅原子がヘッド本体に向かって拡散するので、得られたゴルフクラブヘッド製品に割れといった欠陥が発生しにくく、ゴルフクラブヘッドの歩留まりを向上させる効果を有する。
さらに、本発明に係るウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、溶融溶接によって、タングステン―銅―ニッケル合金から形成されるウェイトを、チタン合金から形成されるヘッド本体に緊密に結合させるので、溶融溶接の過程において、従来のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法で使われた高価なブレーズ溶接剤を省くことができ、ゴルフクラブヘッドの製造コストを低減させる効果を有する。
【0011】
また、前記タングステン―銅―ニッケル合金が、1~3重量%の銅と6~8重量%のニッケルとを含むことができ、比重が17g/cm3であっても良く、或いは、前記タングステン―銅―ニッケル合金が8~12重量%の銅と19~23重量%のニッケルとを含むことができ、比重が14g/cm3であっても良く、または、前記タングステン―銅―ニッケル合金が、13~17重量%の銅と33~37重量%のニッケルとを含むことができ、比重が12g/cm3であっても良い。
これにより、使用の需要によって、操作者は、異なる比重を有するタングステン―銅―ニッケル合金を選択してウェイトを形成することができる。
【0012】
また、前記チタン合金の比重が、12~17g/cm3であっても良い。
これにより、ゴルフクラブヘッド製品全体の重量を効果的に低減させることができる。
【0013】
また、タングステン電極にアークを発生させることができ、例えば、不活性気体の保護で、ウェイトと結合部との間にタングステン電極がアークを発生させ、或いは、タングステン電極及びプラズマガスが共にアークを発生させ、続いて、アークを溶接熱源として溶融溶接を行う。
これにより、アークを溶接熱源とすることで、狭くて深い溶接ビードを形成することができ、かつ、熱影響部における金属組織の変化を低減させることができる。
【0014】
また、70~90Aの電流でタングステン電極にアークを発生させることを特徴とする。
タングステン電極にアークを発生させることで、効果的に溶融溶接を行うことができる。
【0015】
また、レーザービームを溶接熱源として溶融溶接を行うことを特徴とする。
これにより、レーザービームを溶接熱源とすることで、狭くて深い溶接ビードを形成することができ、かつ、熱影響部における金属組織の変化を低減させることができる。
【0016】
また、パワーが1600~2200Wであるレーザービームを溶接熱源とすることを特徴とする。
これにより、効果的に溶融溶接を行うことができる。
【0017】
また、ヘッド本体の結合部は、開口及び内壁を有し、この内壁が、開口に向かって延伸し、前記ヘッド本体の外表面から突出して、前記開口を囲む凸部を形成させ、前記ウェイトは、外周面と頂部表面とを有し、斜面が、前記外周面及び頂部表面に接し、かつ、前記ウェイトをヘッド本体の結合部内に設置するときに、前記ウェイトの斜面が、前記結合部の内壁に向かうようにし、前記斜面と内壁とが囲むように充填空間を形成させることを特徴とする。
これにより、溶融溶接で形成した溶接ビードとウェイトとの結合面積を拡大させることができるので、ウェイトとヘッド本体との結合強度を効果的に向上させることができる。
【0018】
また、ウェイトをヘッド本体の結合部内に設置するときに、前記斜面と内壁とが、角度を成し、この角度が、30~60°であることを特徴とする。
これにより、溶融溶接で形成した溶接ビードとウェイトとの結合面積を拡大させることができるので、ウェイトとヘッド本体との結合強度を効果的に向上させることができる。
【0019】
また、前記凸部の頂部縁は、前記外表面に対して第一高度を有し、前記凸部は、第一幅を有し、前記斜面は、前記外周面及び頂部表面とそれぞれ接して側部縁及び頂部縁を形成し、前記側部縁は、前記頂部表面に対して第二高度を有し、前記頂部縁は、前記外周面に対して第二幅を有し、かつ、前記第一高度、第一幅、第二高度及び第二幅は、同等であることを特徴とする。
これにより、凸部は、溶融後に充填空間により充填しやすくなり、最適な溶け込み量及び結合強度に達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一つの実施例におけるゴルフクラブヘッド製品の分解斜視図。
【
図4】
図3に係るゴルフクラブヘッド製品の断面図。
【
図5】試験(B)における第B2組のゴルフクラブヘッド製品の溶接ビードの金属組織図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施例について、以下、図面を参照して説明する。
【0022】
図1に示されるように、本発明の一つの実施例に係るウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、ヘッド本体1を提供し、溶融溶接法によって、タングステン―銅―ニッケル合金から形成されるウェイト2をヘッド本体1に緊密に結合させることで、ゴルフクラブヘッド製品を成形させることを含む。
注意すべきことは、ゴルフクラブヘッド製品は、ウッドヘッド製品、或いは、アイアンヘッド製品であっても良く、ここでは限定されない。
【0023】
詳しく述べると、ヘッド本体1は、チタン合金から形成されても良く、例えば、表1に示される811チタン合金または表2に示される6-4チタン合金であっても良い。
チタン合金の比重は、約12~17g/cm3であり、これにより、ゴルフクラブヘッド製品全体の重量を効果的に低減させることができる。
【0024】
【0025】
【0026】
ヘッド本体1は、結合部11を有し、需要に基づき、結合部11は、ヘッド本体1の外表面または内表面に設けられることができ、ここでは、限定されない。
図1に示されるように、結合部11は、ヘッド本体1の外表面12が凹んで形成した結合溝であり、その外表面12に開口111が形成され、操作者は、開口111からウェイト2を結合部11に収容させることができる。
また、結合部11は、ヘッド本体1のソール部Sに位置することが好ましく、このように、結合部11に収容されたウェイト2によって、ゴルフクラブヘッド製品の重心を効果的に下げることができる。
【0027】
ウェイト2を形成するためのタングステン―銅―ニッケル合金は、1~17重量%の銅と6~37重量%のニッケルとを含むことができ、残部がタングステンであり、これにより、タングステン―銅―ニッケル合金の比重は、12~17g/cm3となる。
例えば、タングステン―銅―ニッケル合金の比重が17g/cm3である場合、タングステン―銅―ニッケル合金は、1~3重量%の銅と6~8重量%のニッケルとを含むことができ、残部がタングステンである。
タングステン―銅―ニッケル合金の比重が14g/cm3である場合、タングステン―銅―ニッケル合金は、8~12重量%の銅と19~23重量%のニッケルとを含むことができ、残部がタングステンである。
タングステン―銅―ニッケル合金の比重が12g/cm3である場合、タングステン―銅―ニッケル合金は、13~17重量%の銅と33~37重量%のニッケルとを含むことができ、残部がタングステンである。
【0028】
上記成分配合により、タングステン―銅―ニッケル合金は、ロックウェル硬さが95HRB~25HRCとなることができ、引張強度が約520~880MPaであり、かつ、伸び率が約4~7%であり、その硬度が、従来のタングステン―鉄―ニッケル合金の硬度に近い。
【0029】
ウェイト2が概ね結合部11に対応する形態を有することで、ウェイト2を結合部11内に設置する場合、ウェイト2の外周面21が結合部11の内壁112に当接することができ、かつ、ウェイト2の頂部表面22が、開口111から露出してヘッド本体1の外表面12と概ね同じ高さになることができる。
【0030】
続いて、操作者は、ウェイト2と結合部11とが当接する箇所に溶融溶接を行うことができる。
すなわち、ウェイト2と結合部11とが当接する箇所に溶接熱源を与え、このとき、チタン合金の融点が、タングステン―銅―ニッケル合金の融点より低いため、ヘッド本体1において当接箇所に近い一部のみが溶融して溶融金属液となることができ、さらに、溶融金属液が、結合部11の内壁112とウェイト2の外周面21との間に浸入するので、溶融金属液が冷却して凝固すると、ヘッド本体1とウェイト2との間に溶接ビードが形成する。
【0031】
例えば、操作者は、タングステン不活性溶接(Tungsten Inert Gas Welding、略して、TIG溶接)を行い、不活性気体(アルゴンガス、ヘリウムガス、または、アルゴン・ヘリウム混合ガスなど)の保護でタングステン電極にアークを発生させ、そのアークを溶接熱源とすることができる。
或いは、操作者は、プラズマ溶接(plasma welding)を行い、タングステン電極及びプラズマガスによってアークを発生させ、同様に、そのアークを溶接熱源とすることができる。
または、操作者は、レーザー溶接(laser beam welding)を行い、レーザービームを溶接熱源とすることができる。
これらは、当業者が理解できるものであるため、ここでは、説明を省略する。
【0032】
さらに、一部のヘッド本体1を溶融金属液に形成させるときに、操作者は、同時に溶接棒(図示せず)を溶融させて、ヘッド本体1において当接箇所に近い一部と溶接棒とが共に溶融金属液となるようにすることができる。
例えば、溶接棒は、同様に、チタン合金から形成されても良く、これにより、溶接棒とヘッド本体1との間に良好な接合性を有することができる。
【0033】
注意すべきことは、ウェイト2とヘッド本体1との結合強度を向上させるために、
図1~
図3に示されるように、結合部11の内壁112を開口111に向かって延伸させてヘッド本体1の外表面12から突出させ、開口111を囲む凸部113を形成させることができる。
さらに、ウェイト2の外周面21と頂部表面22との間に斜面23を形成させ、ウェイト2を結合部11内に設置するときに、ウェイト2の斜面23が結合部11の内壁112に向かうようにすることができる。
斜面23と内壁112とが、角度θを成し、この角度θが、30~60°であっても良く、これにより、斜面23と内壁112とが囲むように充填空間Fを形成させる。
これによって、溶融溶接を行う際に、凸部113と溶接棒とが共に溶融金属液となることができ、溶融金属液は、充填空間Fへ流れて充填空間Fを満たし、溶融金属液が冷却し凝固すれば、溶接ビードが形成される。
このとき、溶接ビードとウェイト2とが結合した面は、より広い結合面積を有するので、ウェイト2とヘッド本体1との結合強度を効果的に向上させることができる。
【0034】
本実施例では、凸部113の頂部縁114は、外表面12に対して第一高度H1を有し、凸部113は、第一幅W1を有し、第一高度H1と第一幅W1とが、概ね同等であっても良い。
角度θは、45°である。
さらに、斜面23は、外周面21及び頂部表面22とそれぞれ接して側部縁231及び頂部縁232を形成し、側部縁231は、頂部表面22に対して第二高度H2を有し、頂部縁232は、外周面21に対して第二幅W2を有し、第二高度H2と第二幅W2とが、概ね同等であっても良い。
注意すべきことは、第一高度H1、第一幅W1、第二高度H2及び第二幅W2は、同等であっても良く、これにより、凸部113は、溶融後に充填空間Fにより充填しやすくなり、最適な溶け込み量及び結合強度に達することができる。
【0035】
本実施例に係るウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、確実にウェイト2をヘッド本体1に緊密に結合させ、ゴルフクラブヘッド製品を成形することができると証明するために、以下の試験を行った。
【0036】
(A)タングステン―銅―ニッケル合金の成分割合
【0037】
本試験では、表3に示される合金からウェイト2を形成した後、ウェイト2及びヘッド本体1に溶融溶接を行い、さらに、各組のゴルフクラブヘッド製品の引張強度を測定した。
【0038】
【0039】
表3からわかるように、A0組のタングステン―銅―ニッケル合金から形成されたウェイト2は、溶融溶接によってヘッド本体1に結合されることができるが、その後に、研磨すると、ヘッド本体1とウェイト2とが分離してしまったので、両者の結合強度が劣ることが示された。
これに対し、A1~A3組のタングステン―銅―ニッケル合金から形成されたウェイト2は、ヘッド本体1に結合された後、引張強度が820~880MPaに達することができ、特に、A2組が最も優れた効果を有することが示された。
【0040】
(B)溶接方法の選択
【0041】
本試験では、TIG溶接をB1組(電流は、70~90A)とし、プラズマ溶接をB2組(電流は、70~90A)とし、レーザー溶接をB3組(パワーは、1600~2200W)とし、それぞれでウェイト2とヘッド本体1とを溶接した。
続いて、結合後の引張力を測定した結果、それぞれ1273kfg、1321kfg及び1072kfgであったので、プラズマ溶接が優れた効果を有することが示された。
【0042】
さらに、B2組のゴルフクラブヘッド製品の見た目を検査すると、そのウェイト2及び溶接によって形成された溶接ビードには、目立った割れがない。
また、溶接ビードの金属組織は、
図5に示されるように、左下がヘッド本体1であり、右上がウェイト2であり、ヘッド本体1とウェイト2との間にある熱影響部Zの幅は、約0.3~1.5mmであり、かつ、ヘッド本体1において熱影響部Zに近い箇所には、部分溶融領域Mがあり、ヘッド本体1のチタン原子がウェイト2に向かって拡散し、ウェイト2の銅原子がヘッド本体1に向かって拡散したので、溶接形式が拡散溶接であり、かつ、溶接ビードとヘッド本体1とウェイト2とが互いに溶解して溶け込むことができることが示された。
【0043】
(C)耐衝撃強度試験
【0044】
本試験では、811チタン(C1組)及び6-4チタン合金(C2組)それぞれによってヘッド本体1を形成した後、ウェイト2と共に溶融溶接を行った。
続いて、50m/sの衝撃速度で各組のゴルフクラブヘッド製品に対して耐衝撃強度試験を行った結果、C1組、C2組のゴルフクラブヘッド製品は、それぞれ3500回、3300回の衝撃に耐えることができ、さらに、ウェイト2にも溶接ビードにも割れが発生しないことが示された。
【0045】
以上により、本発明に係るウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、溶融溶接によって、タングステン―銅―ニッケル合金から形成されるウェイト2を、チタン合金から形成されるヘッド本体1に緊密に結合させることができる。
このとき、ヘッド本体1のチタン原子が、ウェイト2に向かって拡散し、ウェイト2の銅原子が、ヘッド本体1に向かって拡散するので、得られたゴルフクラブヘッド製品に割れといった欠陥が発生しにくく、ゴルフクラブヘッドの歩留まりを向上させる効果を有する。
【0046】
さらに、本発明に係るウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法は、溶融溶接によって、タングステン―銅―ニッケル合金から形成されるウェイト2を、チタン合金から形成されるヘッド本体1に緊密に結合させるので、溶融溶接の過程において、従来のウェイトを有するゴルフクラブヘッドの製造方法で使われた高価なブレーズ溶接剤を省くことができるので、ゴルフクラブヘッドの製造コストを低減させる効果を有する。
【0047】
本発明は、その精神と必須の特徴事項から逸脱することなく他のやり方で実施することができる。
したがって、本明細書に記載した実施形態は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 ・・・ヘッド本体
11 ・・・結合部
111・・・開口
112・・・内壁
113・・・凸部
114・・・頂部縁
12 ・・・外表面
2 ・・・ウェイト
21 ・・・外周面
22 ・・・頂部表面
23 ・・・斜面
231・・・側部縁
232・・・頂部縁
F ・・・充填空間
H1・・・第一高度
H2・・・第二高度
M ・・・部分溶融領域
S ・・・底部
W1・・・第一幅
W2・・・第二幅
Z ・・・熱影響部
θ ・・・角度