(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】酸官能性化合物
(51)【国際特許分類】
C08G 63/692 20060101AFI20220107BHJP
C08G 63/91 20060101ALI20220107BHJP
C08G 63/685 20060101ALI20220107BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20220107BHJP
C09K 23/52 20220101ALI20220107BHJP
【FI】
C08G63/692
C08G63/91
C08G63/685
C08L67/04
B01F17/52
(21)【出願番号】P 2020507605
(86)(22)【出願日】2018-08-07
(86)【国際出願番号】 EP2018071398
(87)【国際公開番号】W WO2019030228
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-03-27
(32)【優先日】2017-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598067245
【氏名又は名称】ベーイプシロンカー ヘミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクター ハフトゥング
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オケル アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ギーベルハウス イリナ
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンキー ギヨーム ヴォイチェフ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンズ マルクス
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0059088(US,A1)
【文献】米国特許第03689531(US,A)
【文献】再公表特許第2009/081528(JP,A1)
【文献】国際公開第2011/034030(WO,A1)
【文献】特表2016-530362(JP,A)
【文献】特開平08-027315(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/66
C08G 63/688
C08G 63/692
C08G 63/685
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、酸官能性化合物:
i.少なくとも1つのエーテル単位E及び少なくとも1つのエステル単位
Sから成る、少なくとも1つのセグメントであって、前記エーテル単位
E及びエステル単位
Sはエーテル連結によって又はエステル連結によって接続され、エーテル単位
E及びエステル単位
Sの数の合計は少なくとも3であり、前記エーテル単位
E及びエステル単位
Sはランダムな順序で配列されている、少なくとも1つのセグメント;及び
ii.
リン酸基及び酸性リン酸エステル基から成る群から選択される、少なくとも1つの酸性基であって、前記少なくとも1つのセグメントに共有結合により連結されている、少なくとも1つの酸性基、
前記酸官能性化合物は一般式:Y(-X-W-Z)
q(Ia)を有し、式中、
(1)Yは1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、XはNH、及び/又はNR
1により表され、R
1は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~20個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表され、又は
(2)Yは1~500個の炭素原子、及び更なる酸素原子を含有する有機基により表され、XはOにより表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表される。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセグメントは2つのエステル連結間の最大部分によって画定され、エーテル単位
E及びエステル単位
Sの数の合計は少なくとも3であり、前記少なくとも1つのセグメントは2つの隣接するエーテル単位
E間のエーテル連結の平均数L及びエーテル単位
Eの平均数Eを有し、比Rが式(A):L/(E-1)により定義され、Eが1.0よりも大きい場合にはRは1.0よりも小さい、請求項1に記載の酸官能性化合物。
【請求項3】
比Rは0.9よりも小さい、請求項2に記載の酸官能性化合物。
【請求項4】
前記少なくとも1つのセグメントは、三級アミン基、三級アミン基の塩、及び四級アンモニウム基から選択されるアミン基を含む重合開始部分に連結されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の酸官能性化合物。
【請求項5】
前記重合開始部分は、エーテル基、エステル基、二級アミド基、三級アミド基、二級アミン基、及び三級アミン基から成る群のうちの1つを介して、前記少なくとも1つのセグメントに直接連結されている、請求項4に記載の酸官能性化合物。
【請求項6】
前記重合開始部分はポリエチレンイミンである、請求項4又は5に記載の酸官能性化合物。
【請求項7】
前記エーテル単位
Eは、式(III)-[CR
30
2]
n-O-から成る群から選択され、式中nは2又は3の整数であり、及びR
30は互いに独立して1~25個の炭素原子を有する有機基又は水素を表す、請求項1~6のいずれか1項に記載の酸官能性化合物。
【請求項8】
Z-aは互いに独立して選択されて一般式(II)により表され、
~PO(V)
n(OH)
2-n(II)
式中、
Vは互いに独立して基OR
33により表され、
式中、R
33は互いに独立して1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、
nは0又は1により表される
ことを特徴とする、請求項7に記載の酸官能性化合物。
【請求項9】
Z-aは互いに独立して選択されて一般式(II)により表され、
~PO(V)
n(OH)
2-n(II)
式中、
Vは互いに独立して基OR
33により表され、
式中、R
33は互いに独立して1~35個の炭素原子を含有する有機基により表され、
nは0又は1により表される
ことを特徴とする、請求項8に記載の酸官能性化合物。
【請求項10】
前記エーテル単位
Eは、オキシランモノマー及びオキセタンモノマーから選ばれる少なくとも一種の環状エーテルモノマーの開環重合反応によって形成され、前記エステル単位
Sは、プロピオラクトン、バレロラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトンから選ばれる少なくとも一種の環状エステルモノマーの開環重合反応によって形成されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の酸官能性化合物。
【請求項11】
n=0であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の酸官能性化合物。
【請求項12】
塩形成された又は部分的に塩形成された形態で存在する、請求項1~11のいずれか1項に記載の酸官能性化合物。
【請求項13】
酸官能性化合物の分散剤としての使用
であって、前記酸官能性化合物が以下を含む、使用:
i.少なくとも1つのエーテル単位E及び少なくとも1つのエステル単位Sから成る、少なくとも1つのセグメントであって、前記エーテル単位E及びエステル単位Sはエーテル連結によって又はエステル連結によって接続され、エーテル単位E及びエステル単位Sの数の合計は少なくとも3であり、前記エーテル単位E及びエステル単位Sはランダムな順序で配列されている、少なくとも1つのセグメント;及び
ii.リン酸基、酸性リン酸エステル基、スルホン酸基、酸性スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される、少なくとも1つの酸性基であって、前記少なくとも1つのセグメントに共有結合により連結されている、少なくとも1つの酸性基、
前記酸官能性化合物は一般式:Y(-X-W-Z)
q
(Ia)を有し、式中、
(1)Yは1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、XはNH、及び/又はNR
1
により表され、R
1
は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~20個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表され、又は
(2)Yは1~500個の炭素原子、及び更なる酸素原子を含有する有機基により表され、XはOにより表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表される。
【請求項14】
酸官能性化合物の湿潤剤としての使用
であって、前記酸官能性化合物が以下を含む、使用:
i.少なくとも1つのエーテル単位E及び少なくとも1つのエステル単位Sから成る、少なくとも1つのセグメントであって、前記エーテル単位E及びエステル単位Sはエーテル連結によって又はエステル連結によって接続され、エーテル単位E及びエステル単位Sの数の合計は少なくとも3であり、前記エーテル単位E及びエステル単位Sはランダムな順序で配列されている、少なくとも1つのセグメント;及び
ii.リン酸基、酸性リン酸エステル基、スルホン酸基、酸性スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される、少なくとも1つの酸性基であって、前記少なくとも1つのセグメントに共有結合により連結されている、少なくとも1つの酸性基、
前記酸官能性化合物は一般式:Y(-X-W-Z)
q
(Ia)を有し、式中、
(1)Yは1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、XはNH、及び/又はNR
1
により表され、R
1
は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~20個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表され、又は
(2)Yは1~500個の炭素原子、及び更なる酸素原子を含有する有機基により表され、XはOにより表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表される。
【請求項15】
粒子と、
酸官能性化合物と、を含む組成物
であって、前記酸官能性化合物が以下を含む、組成物:
i.少なくとも1つのエーテル単位E及び少なくとも1つのエステル単位Sから成る、少なくとも1つのセグメントであって、前記エーテル単位E及びエステル単位Sはエーテル連結によって又はエステル連結によって接続され、エーテル単位E及びエステル単位Sの数の合計は少なくとも3であり、前記エーテル単位E及びエステル単位Sはランダムな順序で配列されている、少なくとも1つのセグメント;及び
ii.リン酸基、酸性リン酸エステル基、スルホン酸基、酸性スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される、少なくとも1つの酸性基であって、前記少なくとも1つのセグメントに共有結合により連結されている、少なくとも1つの酸性基、
前記酸官能性化合物は一般式:Y(-X-W-Z)
q
(Ia)を有し、式中、
(1)Yは1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、XはNH、及び/又はNR
1
により表され、R
1
は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~20個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表され、又は
(2)Yは1~500個の炭素原子、及び更なる酸素原子を含有する有機基により表され、XはOにより表され、Wは少なくとも1つの前記i.に定義されたセグメントのうちの1つのセグメントであり、q=1~100であり、及びZは互いに独立して選択され水素又は部分Z-aであり、Z-aは0~600個の炭素原子及び少なくとも1つの前記ii.に定義された酸性基を含有する有機基から互いに独立して選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表される。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の酸官能性化合物を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)環状エステルと環状エーテルとを開環重合反応において共に反応させることによりセグメントを調製する工程であって、前記開環重合反応は、ヒドロキシル基、二級アミン基、及び一級アミン基から選択される少なくとも1つの官能基を含む重合開始化合物により開始される、工程;及び
b)工程a)のセグメントを、剤を用いて変換し、少なくとも1つの酸性基iiを前記セグメントに共有結合により連結させる工程であって、前記少なくとも1つの酸性基iiは、
リン酸基及び酸性リン酸エステル基から成る群から選択される工程。
【請求項17】
工程a)において、前記環状エステル及び環状エーテルは、反応条件に維持された反応混合物に、実質的に同時に添加される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
工程a)において、前記重合開始化合物は、前記環状エステル及び環状エーテルを含有する反応条件に維持された反応混合物に添加される、請求項16又は17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸官能性化合物、当該酸官能性化合物の製造方法、当該酸官能性化合物の使用、及び当該酸官能性化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液体中に溶解又は分散形態で存在する湿潤剤は、表面張力又は界面張力を低下させ、それによってその液体の湿潤容量を増加させる。このようにして、湿潤剤は、表面が液体によって容易に湿潤されるようにする。
【0003】
分散剤は一般に、結合剤、塗料、コーティング、顔料ペースト、プラスチック及びプラスチックブレンド、接着剤及びシーリングコンパウンド中の固体粒子を安定化させるため、対応する系の粘度を低下させるため、及び流動特性を改善するために好適である。液体媒体中への固体の導入を可能にするためには、高い機械力が必要である。分散力を低減し、固体粒子の解膠のために必要とされる系内への総エネルギー入力を最小化し、そしてひいては分散時間を最小化するためにも、分散剤を使用することが慣例となっている。この種の分散剤は、アニオン性、カチオン性、及び/又は中性の構造を有する表面活性物質である。これらの物質は、少量で、固体に直接適用するか又は分散媒体に添加される。分散操作後に、凝集固体が一次粒子へ完全に解膠した後、再凝集が起こり、それによって分散の努力が完全に又は部分的に帳消しになってしまう場合があることもまた知られている。
【0004】
不適切な分散及び/又は再凝集の結果として、色ずれ、液体系における粘度の上昇、及び塗料及びコーティングにおける光沢の喪失、並びにプラスチックにおける機械的強度及び材料均質性の低下といった望まない効果が典型的に起こる。
【0005】
実際には、湿潤剤及び分散剤として使用するために様々なタイプの化合物が考えられ得る。このことは特に、顔料、充填剤、及び繊維等の異なる分散対象粒子に対する多種多様な結合剤に特に基づく多くの異なるタイプの系が存在するという事実に起因する。無機顔料及び充填剤の分散に関しては、リン酸基、リン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、及びカルボキシル基のような酸性基を含有する分散剤が良好な結果を与えることが多い。
【0006】
特許文献1は、ポリエチレングリコールをラクトン及びアルキレンオキシドと反応させてポリマー性のジオール(a polymeric diol)を形成し、前記ジオールをリン酸化してリン酸エステルを形成することによって得られる分散剤に関し、得られた分散剤は、アルキレンオキシドに基づくセグメント及びラクトンに基づくセグメントがブロック様の態様に配列されたブロック様の構造を有する。これらの分散剤は、無機粒子に関して満足のいく分散安定化を示すものの、部分的な解決策を示すに過ぎない。
【0007】
特許文献2は、ラクトン、アルキレンオキシド、及び有機モノヒドロキシ開始剤を含有する混和物を、触媒として水酸化カリウムを使用して重合させることによる、ポリマー製品の製造に関する。得られる線状ブロック共重合体はヒドロキシル末端基を有し、実施形態においてこれらの末端基は、モノカルボン酸又はその対応する無水物とのエステル化反応によってエステル基に変換される。
【0008】
昨今使用されている無機顔料の多様性を考慮すると、十分な安定化が十分に確保されているとは言えず、したがって、分散剤の性能のさらなる改善がなお必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第95/34593号
【文献】米国特許第3689531号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、分散剤の技術分野で既知の状況である上述した不都合な点を排除することであり、言い換えれば、固体粒子の効果的な安定化を提供する、及び特には無機顔料を分散するための、分散剤を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の態様では、本発明は、以下を含む酸官能性化合物を提供する:
i.少なくとも1つのエーテル単位E及び少なくとも1つのエステル単位から成る、少なくとも1つのセグメントであって、前記エーテル単位及びエステル単位はエーテル連結によって又はエステル連結によって接続され、エーテル単位及びエステル単位の数の合計は少なくとも3であり、前記エーテル単位及びエステル単位はランダムな順序で配列されている、少なくとも1つのセグメント;及び
ii.リン酸基、酸性リン酸エステル基、スルホン酸基、酸性スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される、少なくとも1つの酸性基であって、前記少なくとも1つのセグメントに共有結合により連結されている、少なくとも1つの酸性基。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、以下を含む酸官能性化合物を提供する:
i.エーテル連結又はエステル連結によって互いに接続された少なくとも1つのエーテル単位及び少なくとも1つのエステル単位から成る、少なくとも1つのセグメントであって、各セグメントは2つのエステル連結間の最大部分によって画定され、エーテル単位及びエステル単位の数の合計は少なくとも3であり、前記少なくとも1つのセグメントは、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数L及びエーテル単位の平均数Eを含み、比Rが式(A):L/(E-1)によって定義され、Eが1.0よりも大きい場合にはRは1.0よりも小さく、Eが1.0に等しい場合にはLは0.0よりも大きい、少なくとも1つのセグメント;及び
ii.リン酸基、酸性リン酸エステル基、スルホン酸基、酸性スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される、少なくとも1つの酸性基であって、前記少なくとも1つのセグメントに共有結合により連結されている、少なくとも1つの酸性基。
【0013】
前記少なくとも1つのセグメントの前記エーテル単位(E)及びエステル単位(S)は、エーテル連結又はエステル連結によって互いに接続されている。エーテル単位(E)は、オキシランモノマー又はオキセタンモノマー等の環状エーテルモノマーの開環重合反応によって形成されてよい。エステル単位(S)は、プロピオラクトン、バレロラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、好ましくはイプシロンカプロラクトンといったラクトンモノマー等の環状エステルモノマーの開環重合反応によって形成されてよい。
【0014】
エーテル連結は、オキシ結合、即ち-O-として定義される。エーテル連結は、2つの隣接するエーテル単位間で形成されてもよく、またエーテル単位と、エステルモノマーのヒドロキシル末端位におけるエステル単位との間で形成されてもよい。エステル連結は、下記のカルボキシレートエステル結合として定義される。
【0015】
【0016】
エステル連結は2つの隣接するエステル単位間で形成されてよく、またエーテル単位とエステルモノマーのカルボキシル末端位のエステル単位との間で形成されてもよい。
【0017】
前記少なくとも1つのセグメントiは、少なくとも1つのエーテル単位(E)及び少なくとも1つのエステル単位(S)から成り、前記少なくとも1つのセグメントiの各々は、少なくとも1つのエーテル単位E及び少なくとも1つのエステル単位Sで構成される、全部で少なくとも3つの単位を有する。故に、前記少なくとも1つのセグメントのエーテル単位の平均数Eは少なくとも1.0である。Eが1.0に等しい場合には、Lは0.0よりも大きいことが必要である。Eが1.0よりも大きい場合には、比Rは1.0よりも小さい。
【0018】
前記セグメントにおけるエーテル単位及びエステル単位の並びが、本発明の基本的な態様である。一方では一般に、エーテル単位及びエステル単位の対応するブロック構造を提供することが可能であるが、他方ではそれらの構造単位がセグメント内に多少なりともランダムに共重合された構造(ランダム共重合型等)を生成することも可能である。本発明によれば、前記セグメントは、エステル単位及びエーテル単位の並びを提供するものであり、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数L及び比Rは、セグメント内でエステル単位及びエーテル単位がどのくらいランダムに配列されているかの定量的尺度として提供される。
【0019】
式(A)に従う比Rは、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数Lが、前記並びに沿って、エーテル単位がエステル単位によって交代されている(統計的又は非統計的な)変化に関係しているという理解に基づく。前記並びがポリエーテルブロック及びポリエステルブロックの2ブロック構造によって形成される場合、2の隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数Lは、セグメント内のエーテル単位の平均数の合計Eマイナス1つのエーテル単位(即ちE-1)に等しくなる。故に、ポリエーテルブロック及びポリエステルブロックの前記2ブロック構造については、Lが(E-1)に等しいため、比Rは1.0に等しい。
【0020】
前記セグメントが、少なくとも1つのエステル単位によって中断されるエーテル単位の並びを幾つか有する場合、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数Lはそれに伴い減少することとなり、一方でセグメント内のエーテル単位の平均数Eは一定に保たれ得る。結果として、比Rはしたがって1.0未満となる。
すなわち、R=L/(E-1)<1.0
【0021】
比Rが1.0よりも小さい場合、前記酸官能性化合物は、分散剤としての分散能の向上などの、特性の改善を提供する。特に、この酸官能性化合物はより低い結晶化傾向を示すため、低温における酸官能性化合物の分散安定性が改善され得る。酸官能性化合物の特性の改善は、その酸官能性化合物を分散剤として使用した場合の、色の改善、光沢の改善、及び/又は分散体の粘度の低下であり得る。加えて、その低い結晶化傾向に起因して、添加剤組成物中での前記酸官能性化合物の取り扱いがより容易となる。
【0022】
前記少なくとも1つの酸性基iiは、リン酸基、酸性リン酸エステル基、スルホン酸基、酸性スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される。これらの酸性基の各々は、プロトン供与能を有するブロンステット酸基である。
【0023】
本発明に係る酸官能性化合物は、広範囲にわたる分散対象固体に対して、良好な分散効果を有するということを指摘すべきである。このことは、とりわけ、塩基性の表面を有する固体を特に良好に分散することができるだけでなく、中性の表面を有する固体もまた良好に分散できるという事実において明らかである。
【発明の効果】
【0024】
本発明による酸官能性化合物はこのように、特に高い品質を有し、湿潤剤及び分散剤として広く使用することができる。加えて、特に顔料ペーストの場合には、多くの異なる樹脂、結合剤、レットダウン系(let down systems)、及びコーティング材料中でこれらのペーストを使用できるようするために、広範な適合性を保証することが必要である。さらに、本発明による酸官能性化合物は、ペースト、又はこれらのペーストを用いて製造される結合剤及びコーティング材料の、フロキュレーションフリーの適用性を可能にする。加えて、本発明による酸官能性化合物は、分散安定剤、特にエマルション安定剤として好適である。本発明による酸官能性化合物の使用の結果として、添加される母材の粘度は分散中に明らかに低下され、このようにして高い固体含有量を有する製剤の調製が可能となる。このようにして(揮発性の)溶媒の量を低減して環境安全性を改善することができる。要するに、本発明による酸官能性化合物は、硬化塗料の安定性に悪影響を及ぼすことなく、高い充填度での加工を可能とするような程度まで顔料又は充填剤の良好な安定化を維持しつつ、対応する塗料、ペースト、又はプラスチック製剤の母材の粘度を低下させると結論づけることができる。さらに、本発明による酸官能性化合物は、艶消し剤に関する良好な安定化効果を提供し、良好な艶消し性をもたらす。無溶媒系であっても艶消しが達成されることもある(大部分の艶消し剤は通常シリカを主体とする)。大量の艶消し剤は通常は高い(及び厄介な)粘度をもたらすが、本発明による酸官能性化合物は、粘度を低下させ大量の艶消し剤の使用を可能にする。最後に、本発明による酸官能性化合物は経済的に調製することができ、一般に入手可能な原料に基づくということを指摘すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
セグメント単位の順序
一般に、エーテル単位及びエステル単位がセグメントに沿って交互に配列される度合いが増すほど、比Rは1.0よりも小さくなり0.0に近づくことになる。典型的には、セグメントの混合物が酸官能性化合物中に存在し、各セグメントにおいてエーテル単位の平均数Eが互いに等しく(例えば4.0エーテル単位)及び2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数Lが統計的分布を有する(即ち0.0~3.0の間となる)場合には、比Rは実質的に0.5に等しくなる(例えば0.4~0.6の範囲となる)。
【0026】
究極的には、セグメントがエーテル単位及びエステル単位の完全な交互構造(例えばT-S-T-S構造)を有する場合には、2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数Lは0.0に等しい(エーテル連結Lは存在しないため)。故に、完全な交互構造に対する比Rは0.0に等しい。
【0027】
代表的な一実施形態では、エーテル単位の隣接するエステル単位への単位連結の数は少なくとも2、好ましくは少なくとも3である。
【0028】
代表的な一実施形態では、比Rは0.9よりも小さく、好ましくはRは0.8よりも小さく、より好ましくはRは0.7よりも小さい。
【0029】
代表的な一実施形態では、比Rは実質的に0.5に等しい。この実施形態では、前記少なくとも1つのセグメントの前記エーテル単位及びエステル単位は、ランダムな順序で配列される。前記少なくとも1つのセグメントのエーテル単位及びエステル単位がランダムな順序で配列される場合には、比Rは実質的に0.5に等しくなる。エーテル単位とエステル単位とのモル比が1.0:1.0に等しく、且つセグメントの付加重合反応中、エステル単位のエーテル単位への接続の機会が実質的にエーテル単位のエーテル単位への接続の機会に等しい場合には、結果として生ずるセグメントの比Rは約0.5である。特に、この例では、付加重合反応中に、エステル単位のエーテル単位への接続の反応速度は実質的にエーテル単位のエーテル単位への接続の反応速度に等しい。実施例においては、セグメントの付加重合反応のためのエーテル単位とエステル単位とのモル比を調節することによって、セグメントの比Rはそれに応じて0.5未満又は0.5超に調整され得る。
【0030】
一実施例では、比Rは0.3~0.7であり、好ましくは比Rは0.4~0.6である。
【0031】
代表的な一実施形態では、比Rは実質的に0.0に等しい。この実施形態では、前記少なくとも1つのセグメントのエーテル単位及びエステル単位は、実質的に交互の順序に配列されている。比Rは少なくとも0.0である。前記エーテル単位とエステル単位とのモル比が1:1であり、且つ前記少なくとも1つのセグメントのエーテル単位及びエステル単位が完全な交互の順序に配列されている場合、比Rは0.0に等しい。
【0032】
加えて、エーテル単位とエステル単位とのモル比に関わらずエーテル単位が常に1以上のエステル単位によって交代されている場合も、比Rは0.0に等しい。これらの実施形態の全てにおいて、前記少なくとも1つのセグメントの2つの隣接するエーテル単位間のエーテル連結の数Lは、0.0に等しい。
【0033】
一実施例では、比Rは0.0~0.1である。
【0034】
重合開始部分
代表的な一実施形態では、少なくとも1つのセグメントが、三級アミン基、三級アミン基の塩、及び四級アンモニウム基から選択されるアミン基を含む重合開始部分に連結されている。
【0035】
重合開始部分は、前記エーテル単位及びエステル単位の開環重合を開始して前記少なくとも1つのセグメントiを形成するために使用される重合開始分子の残基である。重合開始部分はアミン基を含む。重合開始部分は、前記少なくとも1つのセグメントiに共有結合により連結されている。前記重合開始分子(即ち、重合開始化合物の)は、重合開始分子の官能基がエーテル単位及びエステル単位の付加反応を開始し、それにより前記少なくとも1つのセグメントiを形成した後、セグメントiに共有結合により連結される。付加反応を開始するための重合開始分子の官能基の例としては、ヒドロキシル基、一級アミン基、及び二級アミン基が挙げられる。
【0036】
前記重合開始化合物は、一般式(IV)で表され得る:
Y(-X-H)q、式中、Yは1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、XはO、NH、及び/又はNR1により表され、q=1~100である。通常、R1は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~20個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表される。
【0037】
代表的な一実施形態では、前記重合開始部分は、前記少なくとも1つのセグメントに、エーテル基、エステル基、二級アミド基、三級アミド基、二級アミン基、及び三級アミン基から成る群のうちの1つを介して直接連結される。
【0038】
代表的な一実施形態では、前記重合開始部分はポリエチレンイミンを含む。
【0039】
代表的な一実施形態では、前記エーテル単位は、式(III)-[CR30
2]n-O-から成る群から選択され、式中、nは2又は3の整数であり、R30は互いに独立して1~25個の炭素原子を有する有機基又は水素を表す。
【0040】
特に代表的な一実施形態では、式中、nが2に等しい場合には、R30の少なくとも1つは、式-R31-O-R32を有するエーテル基を表し、式中、R31及びR32は互いに独立して1~30個の炭素原子を有する有機基を表す。
【0041】
代表的な一実施形態では、酸性基iiは、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、及びスルホン酸エステル基から成る群から選択されるエステル基を含む連結部を介してセグメントiに共有結合により連結されている。
【0042】
代表的な一実施形態では、酸官能性化合物は下記一般式を有し、
Y(-X-W-Z)q(Ia)、
式中、Yは1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、XはO、NH、及び/又はNR1により表され、式中、R1は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~500個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表され、Wはセグメントiであり、q=1~100であり、Zは互いに独立して水素又は部分Z-aであるように選択され、Z-aは互いに独立して0~600個の炭素原子を含有する有機基及び少なくとも1つの酸性基iiから選択され、少なくとも1つのZはZ-aにより表される。
【0043】
特に代表的な一実施形態では、部分Z-aは互いに独立して選択され、0~500個の炭素原子を含有し、好ましくは0~20個の炭素原子を含有し、且つリン酸基及びリン酸エステル基から成る群から選択される少なくとも1つの酸性基を含有する。
【0044】
代表的な一実施形態では、Z-aは互いに独立して選択されて下記一般式(II)により表され、
~PO(V)n(OH)2-n (II)
式中、
Vは、独立に選択されて同じ分子の酸素原子に対する化学結合及び/又は基OR33により表され、
式中、R33は互いに独立して1~500、好ましくは1~35個の炭素原子を含有する有機基により表され、
nは0又は1により表される。
【0045】
特に代表的な一実施形態では、n=0である。
【0046】
代表的な一実施形態では、前記少なくとも1つのセグメントにおけるエステル単位とエーテル単位とのモル比は9:1~1:1である。エステル単位の量が多いほど、粒子を含む分散系に対するアミン官能性化合物の良好な適合性が提供される。さらに、より大量のエステル単位を有し且つ式(A)によって定義される比Rが特定の値であるセグメント構造によって、所望の技術的効果が増強される。
【0047】
代表的な一実施形態では、前記酸官能性化合物は、塩形成された又は部分的に塩形成された形態で存在する。
【0048】
本発明の別の態様では、本発明による酸官能性化合物の、分散剤としての使用が提供される。
【0049】
本発明の別の態様では、本発明による酸官能性化合物の、湿潤剤としての使用が提供される。
【0050】
本発明の別の態様では、粒子と、本発明による酸官能性化合物と、を含む組成物が提供される。
【0051】
本発明の別の態様では、本発明による酸官能性化合物の製造方法が提供され、前記方法は以下の工程を含む:
a)環状エステルと環状エーテルとを開環重合反応において共に反応させることにより、セグメントを調製する工程であって、前記開環重合反応は、ヒドロキシル基、一級アミン基、及び二級アミン基から選択される少なくとも1つの官能基を含む重合開始化合物によって開始される工程;及び
b)工程a)のセグメントを、剤を用いて変換し、少なくとも1つの酸性基iiを前記セグメントに共有結合により連結させる工程であって、前記少なくとも1つの酸性基iiは、リン酸基、リン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される工程。
【0052】
得られる酸官能性化合物は、本発明の酸官能性化合物の特徴を有する。
【0053】
代表的な一実施形態では、工程a)において、重合開始化合物はポリエチレンイミンを含む。
【0054】
代表的な一実施形態では、工程a)において、環状エステル及び環状エーテルは、反応条件に維持される反応混合物に、実質的に同時に加えられる。
【0055】
環状エステルと環状エーテルとを開環重合反応において共に反応させることによるセグメントの調製は、前記セグメントのエーテル単位及びエステル単位がランダムな順序で配列されるように行われてよい。一実施形態では、環状エステル及び環状エーテルは、反応条件に至らしめる前に共に混合されてよい。一実施例では、環状エステルと環状エーテルとの混合物は、前記セグメントのエーテル単位及びエステル単位がランダムな順序に重合されるように、制御可能に、例えば滴下により、反応混合物に添加されてよい。
【0056】
好ましい触媒の種類は、環状エステル及び環状エーテルの両方の開環重合を触媒する、AlCl3/DBUのような二元触媒系等の触媒である。
【0057】
代表的な一実施形態では、工程a)において、前記重合開始化合物は、環状エステル及び環状エーテルを含有する反応条件に維持された反応混合物に添加される。この実施形態では、工程a)は、環状エステル及び環状エーテルを含有する反応混合物を形成する工程と、この反応混合物を、付加反応のために好適な温度及び好適な雰囲気といった反応条件に至らしめる工程と、この反応混合物に前記重合開始化合物を添加する工程と、を含む。反応条件のために好適な雰囲気は、酸素を含まない雰囲気であってよい。
【0058】
一実施例では、重合開始化合物は液体形態で反応混合物に滴下される。重合開始化合物を溶媒中に溶解し、溶解された重合開始化合物を反応混合物に滴下してもよい。
【0059】
代表的な一実施形態では、工程a)において、環状エーテルはヒドロキシル基を含む。一実施例では、環状エーテルは、1つのヒドロキシル基を有するトリメチロールプロパンオキセタンモノマーである。環状エーテルの官能基はさらに、他の環状エーテル又は環状エステルと反応して、前記セグメントの他の単位に対する連結を少なくとも3つ有するエーテル単位を形成してもよい。このようにして、分枝状セグメントが形成される。
【0060】
代表的な一実施形態では、工程a)において、重合開始化合物は、1分子当たり少なくとも2つの開環重合反応を開始させる多官能性の開始剤であり、重合開始化合物の前記少なくとも1つの官能基は、2つのヒドロキシル基、2つの二級アミン基、及び一級アミン基から成る群のうちの少なくとも1つを含む。この実施形態では、重合開始化合物の前記少なくとも1つの官能基は、同一の重合開始化合物からの少なくとも2つの鎖の形成を開始させることにより、多官能性である。このようにして、多官能性の重合開始化合物によって、同一の重合開始化合物から工程a)の間に少なくとも2つのセグメントが形成されることが可能となる。
【0061】
代表的な一実施形態では、工程a)において、前記環状エーテルは、式(III)-[CR30
2]n-O-から成る群から選択されるエーテル単位を提供し、式中nは2又は3の整数であり、R30は互いに独立して1~25個の炭素原子を有する有機基又は水素を表す。
【0062】
代表的な一実施形態では、式中、nが2に等しい場合には、R30の少なくとも1つは式-R31-O-R32を有するエーテル基を表し、式中、R31及びR32は互いに独立して1~30個の炭素原子を有する有機基を表す。
【0063】
本発明の別の態様では、以下を含む酸官能性化合物が提供される:
i.エーテル連結又はエステル連結によって互いに接続された少なくとも1つのエーテル単位及び少なくとも1つのエステル単位から成る、少なくとも1つのセグメントであって、各セグメントは2つのエステル連結間の最大部分によって画定され、エーテル単位及びエステル単位の数の合計は少なくとも3であり、前記少なくとも1つのセグメントのエーテル単位及びエステル単位はランダムな順序で配列されている、少なくとも1つのセグメント;及び
ii.リン酸基、リン酸エステル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される、少なくとも1つの酸性基であって、前記少なくとも1つのセグメントに共有結合により連結されている、少なくとも1つの酸性基。
【0064】
本発明の別の態様では、本発明による酸官能性化合物の製造方法による得ることができる酸官能性化合物であって、前記少なくとも1つのセグメントのエーテル単位及びエステル単位がランダムな順序で配列されている酸官能性化合物が提供される。
【0065】
本発明の一実施形態では、前記酸官能性化合物は一般式(I)に従い、
Y(-X-W-(Z)c)q (I)
【0066】
式中、q=1~200であり、cは独立に選択されて1~6の整数により表され、
Yは独立に選択されて1~500個の炭素原子を含有する有機基により表され、
Xは独立に選択されてO、NH、及び/又はNR1により表され、
【0067】
式中、R1は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~500個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表され、
Wは独立に選択されて構造単位S及び構造単位Eから成る直鎖状若しくは分枝状鎖により表され、
【0068】
前記構造単位Sは独立に選択されて構造単位(S1)及び/又は(S2)により表され、
【化2】
【0069】
構造単位Eは独立に選択されて構造単位(E1)及び/又は(E2)により表され、
【化3】
(E1)
【化4】
(E2)
【0070】
式中、
各ケースにおけるR11、R12、R13、及びR14は、互いに独立して水素及び/又は接続基~R101-CH2-O~及び/又は1~25個の炭素原子を含有する非接続有機基により表され、ただし、R11、R12、R13、及びR14から成る群のうち少なくとも2つの残基は水素により表され、R101は独立に選択されて1~25個の炭素原子を含有する有機基により表される任意の基であり、
【0071】
各ケースにおけるR15、R16、R17、R18、R19、及びR20は互いに独立して水素及び/又は接続基~R102-CH2-O~及び/又は1~25個の炭素原子を含有する非接続有機基により表され、ただし、R15、R16、R17、R18、R19、及びR20から成る群のうちの少なくとも4つの残基は水素により表され、R102は独立に選択されて1~25個の炭素原子を含有する有機基により表される任意の基であり、
【0072】
Wは、構造単位S及びEから成る群のうちの4~50個の構造単位から成り、ただし、S:Eのモル比は12:1~1:5であり、
【0073】
鎖Wにおける可能な構造単位連結は、S-S、E-E、S-E、及びE-Sから成る群から選択され、ここで、鎖Wは、連結S-E及びE-Sから成る群の、1よりも多い連結を含有し、式(1)が満たされ、
【0074】
W鎖におけるS-E連結の数+W鎖におけるE-S連結の数/W鎖における構造単位Uの数>1 (1)
式中、Uは、W鎖において過剰に存在しない、構造単位S又は構造単位Eのいずれかにより表され、
【0075】
Zは、独立に選択された基であり、且つ水素、及び/又は0~600個の炭素原子を含有しリン酸基、酸性リン酸エステル基、スルホン酸基、酸性スルホン酸エステル基、及びカルボン酸基から成る群から選択される少なくとも1つの酸性残基を含有する独立に選択された部分Z-a、により表され、
ただし、一般式(I)において、少なくとも1つのZはZ-aにより表される。
【0076】
R1がYの炭素原子に対する化学結合により表される場合には、関連の分子は対応する環状構造を有する。
【0077】
構造単位Sは、それぞれが別のS又はEに対する可能な連結を提供する、正確に2つの接続基を含有する。構造単位Eもまた、それが~R101-CH2-O~及び/又は~R102-CH2-O~によって特定される接続基を含有しない場合には、正確に2つの接続基を含有する。このような場合には、Eは、別のS又はEに対する可能な構造単位連結を提供しない非接続基のみを置換基として含有する。このようなE単位は、正確に2つの構造単位連結を含有する。2つを超える接続基(1つのE単位に関して)の存在は、分枝状W鎖の可能性を与える。例えば、接続基~R101-CH2-O~は、~R101-CH2-O-S~に従う構造要素を形成するために、S単位と連結され得る。したがって、2つを超える接続基を有するE単位は、別のS又はE単位に対する2つを超える構造単位連結を有し得る。
【0078】
「任意の基(optional group)」という表現は、関連の基が存在しても存在しなくてもよいということを意味するものである。例えば、R102が存在しない場合には、~R102-CH2-O~は~CH2-O~に相当する。
【0079】
W鎖におけるS及びEの並びは、本発明のこれらの実施形態の基本的な態様である。一方でS及びEの対応するブロック構造を提供することは一般的に可能であるが、他方では、構造単位S及びEがW鎖中に(多少なりとも)ランダムに共重合された構造(ランダム共重合型)を生成することも可能である。本発明の実施形態によると、W鎖は、S及びEの(多少なりとも)ランダムな並びを提供すべきであり、ここで、W鎖内でS及びEがどのくらいランダムに共重合されたかの一種の定量的尺度として式(1)が与えられる。式(1)による定義の根拠は、ランダム構造においては、対応するブロック構造中よりも相対的に多くのS-E及びE-S連結が存在するということである。
【0080】
式(1)のさらなるパラメータはUであり、これはW鎖において過剰に存在しない、構造単位S(の数)又は構造単位E(の数)のいずれかにより表される。このことは、Uが一般に、W鎖内におけるその種の数が少ない方の構造単位のタイプ(S又はE)の数を表すということを意味する。しかしながら、W鎖内に同数のS及びEが存在する場合には、U=W鎖内のSの数=W鎖内のEの数、となる。
【0081】
本発明の実施形態はまた、上述したような酸官能性化合物の製造方法に関し、第一工程において、Y(-X-H)qを重合開始剤として使用し、及び
構造単位Sを生成する環状エステルコモノマーSmは、構造単位Eを生成する環状エーテルコモノマーEmとランダムに共重合され、
前記第一工程の中間生成物は式Y(-X-W-(H)c)qに従い、
これは第二工程において、部分Z-aを提供する剤を用いて、一般式(I)に従う化合物を生成するべく変換される。
【0082】
Sm及びEmのランダム共重合は、式(1)を満たす種の生成の根拠である。しかしながら、ランダム共重合の結果として一般に、S及びEの異なる並びを有する広範囲にわたる種が存在する(生成物混合物が得られる)。統計的な観点から、前記得られた種のうちの一部は、ブロック様構造を有する(副生成物であると見なすことができる)ために式(1)を満たさないという可能性は非常に高い。しかしながら、通常、得られた種の大部分は式(1)の条件を満たす。
【0083】
本発明の実施形態により上述したように、W鎖は、S及びEの(多少なりとも)ランダム並びを提供すべきであり、W鎖中にS及びEがどのくらいランダムに共重合されたかの一種の定量的尺度として式(1)が与えられる。統計的な観点から、対応するランダム共重合は一般に、式(1)を満たす共重合種をもたらす。
【0084】
両タイプのポリマー(ブロック型及びランダム型)の特性決定のために、例えば、元素分析、1H NMR、13C NMR、UV及びIR分光法、GPC及びDSC等の、様々な分析方法を使用し得る。対応するホモポリマー(それぞれ1つの関連のモノマータイプに基づく)のガラス転移温度が十分に異なる場合、DSC(示差走査熱量計)測定によって、対応するホモポリマーとランダムポリマーとを識別することが可能である。ブロックポリマーとランダムポリマーとを識別するための分析方法の詳細な説明は、文献(polymere,Synthese,Eigenschaften und Anwendung、S.Koltzenburg、M.Maskos、O.Nuyken、Springer発行 Berlin Heidelberg、2014、S.397-399)中に記載されている。
【0085】
特定の実施例においては、両タイプのポリマー(ブロック型及びランダム型)の特性決定は、以下の工程を含む方法によって行われてよい:第一に、少なくとも1つのセグメントのエステル連結を加水分解することによって、エステル基を含まない前記少なくとも1つのセグメントの並びを得る工程。これらの並びは、いくつかの、隣接するエーテル単位間のエーテル連結Lで構成され、及び任意でエーテル単位に対するエステル単位のエーテル連結を含む、種々の並びの長さを有し得る。エーテル単位の並びの平均の数的長さは、例えばLC-MS技術及び/又はGPC技術に基づき決定されてよい。これらの測定から、隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数Lが決定され得、かつエーテル単位の平均数Eが決定され得る。
【0086】
任意で、隣接するエーテル単位間のエーテル連結の平均数L及び/又はエーテル単位の平均数Eは、例えば、NMRのような他の技術を用いて決定されてもよい。
【0087】
典型的には、本発明の実施形態の酸官能性化合物は、異なる酸官能性化合物種を含有し、これらの種の少なくとも70モル%は、下記の式を満たす。
W鎖内のS-E連結の数+W鎖内のE-S連結の数/W鎖内の構造単位Uの数>1.2
【0088】
本発明の好ましい実施形態では、一般式(I)においてc=1であり、即ち、
一般式(I)は一般式(Ia)に従い、
Y(-X-W-Z)q (Ia)
【0089】
式中、q=1~200であり、
即ち、Wは独立に選択されて直鎖状鎖により表され、構造単位Eは独立に選択されて構造単位(E1)及び/又は(E2)により表され、
【0090】
式中、
各ケースにおけるR11、R12、R13、及びR14は、互いに独立して水素及び/又は1~25個の炭素原子を含有する非接続有機基で表され、ただし、R11、R12、R13、及びR14から成る群のうちの少なくとも2つの残基は水素により表され、
【0091】
各ケースにおけるR15、R16、R17、R18、R19、及びR20は、互いに独立して水素及び/又は1~25個の炭素原子を含有する非接続有機基により表され、ただし、R15、R16、R17、R18、R19、及びR20から成る群のうちの少なくとも4つの残基は水素により表され、及び
【0092】
一般式(Ia)において、少なくとも1つのZはZ-aにより表される。
【0093】
いくつかの実施形態では、構造単位Eは正確に2つの接続基を含有し、直鎖状のW鎖が形成される。
【0094】
これらのタイプの酸官能性化合物は、比表面積の小さな無機顔料/充填剤に基づく分散用途に関して、特に利点を提供する。
【0095】
典型的には、一般式(I)及び一般式(Ia)のそれぞれは、独立に選択されてZ-aにより表される、1~200、好ましくは1~50、及びより好ましくは1~25個のZを含有する。
【0096】
Z-aは、無機粒子等の、粒子に対する親和性を提供する基である。
【0097】
本発明の好ましい実施形態では、一般式(I)及び一般式(Ia)において、qはZ-a部分の数よりも小さくない。
【0098】
構造単位Sの、好ましくは80~100モル%、より好ましくは100モル%は、構造単位(S1)により表される。
【0099】
構造単位(S1)はε-カプロラクトンの重合により生成され、構造単位(S2)はδ-バレロラクトンの重合により生成される。
【0100】
ε-カプロラクトンは一般に市販されており、経済面で魅力的である。さらに、ε-カプロラクトンは、δ-バレロラクトンと比較して結晶化傾向が低く、通常、より良好な適合性を提供する。
【0101】
多くの場合、構造単位(E1)において、R11、R12、及びR13から成る群のうちの少なくとも1つの残基及びR14は、1~22個の炭素原子を含有する有機基により表される。
【0102】
また多くの場合、構造単位(E1)において、R11、R12、R13、及びR14から成る群のうちの少なくとも1つの残基は、独立に選択されたC1-C4アルキル基及び/又は下記式に従う独立に選択された有機基により表され、
~CH2-O-R201
式中、R201は独立に選択されてC1-C20アルキル基、C1-C20アルキルアリール基、C1-C20アリールアルキル基、C1-C18アリール基、C1-C20ヘテロアルキル基、C1-C20ヘテロアルキルアリール基、C1-C20ヘテロアリールアルキル基、及び/又はC1-C18ヘテロアリール基により表される。
【0103】
構造単位(E1)は、対応するエポキシ官能性モノマーの重合により生成される。好適なタイプ又は種としては例えば、脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び/又は芳香脂肪族グリシジルエーテル、グリシジルエステル、及びオレフィンオキシド、例えば、C1-C20-アルキルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ナフチルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、p-tert-ブチル-フェニルグリシジルエーテル、2-エチル-ヘキシルグリシジルエーテル、C12-C14-グリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2,3-エポキシプロピルネオデカノエート(Cardura(登録商標)E10、Resolution Performance Products)、C4-C20オレフィンオキシド、例えば1,2-オクテンオキシド、1,2-ノネンオキシド、1,2-ウンデセンオキシド、1,2-ドデセンオキシド、1,2-オクタデセンオキシド、4-メチル-1,2-ペンテンオキシド、1,2ブテンオキシド、プロペンオキシド、エチレンオキシド、スチレンオキシド、ブタジエンモノキシド、イソプレンモノキシド、シクロペンテンオキシド、及び/又は2-エチル-1,2-ブテンオキシドが挙げられる。構造単位E1が接続基~R101-CH2-O~を含有する場合には、この構造単位は、例えばグリシドール等の、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する対応するエポキシ官能性モノマーから誘導される。
【0104】
通常、構造単位(E2)において、R15、R16、R17、R18、R19、及びR20から成る群のうちの少なくとも1つの残基は、独立に選択されたC1-C24炭化水素基及び/又は次式に従う独立に選択された有機基により表され、
~CH2-O-R202
式中、R202は独立に選択されて1~24個の炭素原子を含有する有機基により表される。
【0105】
構造単位(E2)は対応するオキセタンモノマーの重合により生成される。好適なタイプ又は種としては例えば、非置換のオキセタン及びその脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び/又は芳香脂肪族誘導体、例えば3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン及び、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3,3-ジプロピルオキセタン、3,3-ジエチルオキセタン、3-エチル-3-ブチルオキセタン、3-ブチル-3-メチルオキセタン、3-エチル-3-メチルオキセタン、及びエチルヘキシルオキセタンが挙げられる。
【0106】
構造単位(E2)が接続基~R102-CH2-O~を含有する場合には、この構造単位は、少なくとも1つのヒドロキシル官能基を有する対応するオキセタン官能性モノマー、例えば、3-エチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、3-メチル-3-(ヒドロキシメチル)オキセタン、及び、統計的構造、ブロック構造、又は勾配構造に配列することができる1~10個のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドによるエトキシ化又はプロキシ化により得られるそれらの誘導体から誘導される。
【0107】
本発明の好ましい実施形態では、構造単位Eの、70~100モル%、好ましくは100モル%は、構造単位(E1)により表される。
【0108】
対応するモノマー(エポキシド)は、反応性の遊離体であり、一般に市販されている。ほとんどのエポキシドは経済的観点から魅力的である。
【0109】
好ましくは、W鎖は、構造単位S及びEから成る群から選択される4~30個、より好ましくは5~20個の構造単位から成る。
【0110】
これによって、関連の製品の有利なハンドリング性、より低い粘度、及びより良好な溶解性が得られる。
【0111】
好ましい実施形態では、W鎖内の構造単位のモル比S:Eは9:1~1:1であって、UはEにより表される。
【0112】
分散系における適合性を最適化するためには一般的に、W鎖は少なくともEモノマー単位と同数のSモノマー単位を有することが有利である。そのような酸官能性化合物は極性及び非極性結合剤系の両方において良好に使用することができ、湿潤剤及び分散剤として及び/又は分散安定剤として使用される場合に優れた適合性を示す。これにより、多種多様な結合剤及びコーティング材料と組み合わせた良好な使用が保証される。
【0113】
Y及び対応する重合開始剤Y(-X-H)qは、炭素、水素、窒素、及び酸素から成る群の化学元素のみを(排他的に)含有することが一般に好ましい。異なる重合開始剤Y(-X-H)q種の混合物を使用することも可能である。
【0114】
パラメータqは、本発明による酸官能性化合物の構造に明確な影響を与える。qが独立に選択し得るという事実は、q値の異なる様々な種の混合物を使用することも可能であることを意味する。
【0115】
より高い「q値」を有する種は、例えば、通常は制御されたフロキュレーション挙動を提供し、結果として特に耐沈降性及び耐サギング性の改良につながる一方で、低い「q値」を有する種、特にq=1の種は、通常解膠挙動を示す傾向が増大される。一般に、q値が大きいほど、1分子当たりより多くの接着基が存在し、分子の固体表面への接着性が増大されるのが普通であると結論づけることができる。
【0116】
解膠効果を最適化するためには、好ましくはq=1の種を(任意で排他的に)使用すべきである。
【0117】
特定の一実施形態では、一般式(I)において、XはOにより表され、q=1であり、Yは1~80、好ましくは1~30個の炭素原子を含有する。
【0118】
ほとんど場合、Y(-X-H)qは、XがOにより表される重合開始剤であり、Yは少なくとも1つのポリエーテルラジカル、ポリエステルラジカル、及び/又は炭化水素ラジカルを含有する。しばしば、Yは1つだけでなく複数の前述の型のラジカルを含有する。
【0119】
本発明による酸官能性化合物の合成に使用されるアルコールY(-O-H)qは、O及び/又はN等の追加のヘテロ原子及び/又はエーテル、ウレタン、カーボネート、アミド、尿素、及び/又はエステル基を含有してもよい。Yラジカルは、酸官能性化合物の形成において不活性であるC=C二重結合及び/又は三級アミン基等の追加の基を含有してもよい。任意で存在するエステル、エーテル、ウレタン、及び/又はカーボネート基は、ブロック構造(例えば、ポリエチレンオキシドブロック-ポリプロピレンオキシドブロック-ポリ-ε-カプロラクトンブロック)で存在してもよく、勾配を形成してもよく、又はランダムに配列されてもよい。
【0120】
Y中に存在し得るエーテル基及び/又はポリエーテルについて:
使用してもよいY(-O-H)qの例には、例えば、Y(-O-H)qとして上述した化合物をアルコキシル化することによって、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等のアルキレンオキシドを有するアルカノール、シクロアルカノール、フェノールや、イソプロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、クレゾールグリシジルエーテル、及びフェニルグリシジルエーテル等の脂肪族又は芳香族グリシジルエーテル等をアルコキシル化することによって、合成され得るモノ、ジ、又はポリヒドロキシポリエーテルも、含まれ得る。これらの原料の混合物を使用してもよい。混合ポリエーテルのケースでは、それらはランダムに、勾配形態で、又はブロック状に配列され得る。
【0121】
これらのポリエーテルは多くの場合、およそ100~10,000、特に多くの場合は150~7.500、及び特に典型的には200~5,000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。
【0122】
エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及びそれらの混合物に基づくポリエーテルが好ましい。例としては、ヒドロキシブチルビニルエーテル等のヒドロキシル官能性ビニル化合物、アリルポリエーテル等のモノヒドロキシ官能性ポリオキシアルキレンモノアルコール(例えば、ClariantAGのポリグリコールA350、ポリグリコールA500、ポリグリコールA1100、ポリグリコールA11-4、ポリグリコールA20-10、若しくはポリグリコールA20-20、又はBASF AGのPluriol(登録商標)A010R、Pluriol(登録商標)A11RE、Pluriol(登録商標)A13R、Pluriol(登録商標)A22R、若しくはPluriol(登録商標)A23R)、ビニルポリエーテル(例えば、ClariantAGのポリグリコールV500、ポリグリコールV1100、若しくはポリグリコールV5500)、メタノール開始ポリオキシエチレンモノアルコール(例えば、BASF AGのPluriol(登録商標)A350E、Pluriol(登録商標)A500E、Pluriol(登録商標)A750E、Pluriol(登録商標)A1020E、Pluriol(登録商標)A2000E、若しくはPluriol(登録商標)A5010E)、アルカノール開始ポリオキシプロピレンモノアルコール(例えば、ClariantAGのポリグリコールB01/20、ポリグリコールB01/40、ポリグリコールB01/80、ポリグリコールB01/120、若しくはポリグリコールB01/240、又はBASF AGのPluriol(登録商標)A1350P若しくはPluriol(登録商標)A2000P)及び種々の脂肪酸アルコールで開始された可変のアルコキシル化度を有するポリアルコキシレート(BASF SEより商品名Lutensol(登録商標)A、Lutensol(登録商標)AT、Lutensol(登録商標)AO、Lutensol(登録商標)TO、Lutensol(登録商標)XP、Lutensol(登録商標)XL、Lutensol(登録商標)AP、及びLutensol(登録商標)ONで入手可能)が挙げられる。エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド基を含有し、任意でスチレンオキシドで修飾されたポリオキシアルキレンモノアルコールが好ましい。末端OH基を有するエチレン及びプロピレンオキシドのブタノール開始ポリオキシアルキレンである、ポリオキシアルキレンモノアルコール(例えば、ClariantAGのポリグリコールB11/50、ポリグリコールB11/70、ポリグリコールB11/100、ポリグリコールB11/150、ポリグリコールB11/300、若しくはポリグリコールB11/700、BASF AGのPluriol(登録商標)A1000PE、Pluriol(登録商標)A1320PE、若しくはPluriol(登録商標)A2000PE、又はDOW ChemicalsのTerralox WA110)を使用することが特に好ましい。
【0123】
Yは通常、好ましくは、ポリテトラヒドロフラン、ポリオキセタン類、及び/又はポリオキシラン類から誘導されるエーテル酸素原子を含有する基中に存在する、1~200個のエーテル酸素原子を含有する。
【0124】
Yは好ましくは、3~100個のエーテル酸素原子を含有し、これらのエーテル酸素原子の少なくとも50、好ましくは少なくとも80モル%はエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド構造単位中に存在する。
【0125】
Y中に存在しうる炭化水素ラジカルについて:
炭化水素ラジカルは好ましくは、アリルラジカル、分枝状又は非分枝状アルキルアリールラジカル、アラルキルラジカルの形態で、及び/或いは非環状、環状、分枝状、又は非分枝状アルキルラジカルとして、存在する。こうした化合物の混合物、即ち、少なくとも2つの異なる化合物Y(-O-H)qを使用してもよい。脂肪族又は芳香脂肪族化合物Y(-O-H)qは直鎖状若しくは分枝状、飽和若しくは不飽和であってよい。飽和種が好ましい。
【0126】
q=1である、炭化水素ラジカルを有するY(-O-H)qの例としては、メタノール、エタノール、ブタノール、エチルヘキサノール、デカノール、イソトリデシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルアルコール、ベンジルアルコール、プロパルギルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、オキソアルコール、ネオペンチルアルコール、シクロヘキサノール、脂肪族アルコール、アルキルフェノール、アルキルナフトール、及びフェニルエタノールが挙げられる。
【0127】
q>1である炭化水素ラジカルを有するY(-O-H)qの例としては、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、及び糖類(例えば、ペンタエリスリトール)が挙げられる。
【0128】
加えて、Y(-O-H)q、ポリオレフィンポリオール又はモノオール、例えば、非硬化、部分硬化、及び/又は完全硬化ポリブタジエン、非硬化、部分硬化、及び/又は完全硬化ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、又はエチレン/ブチレンコポリマーを使用してよい。これらの化合物は、当業者には既知である。
【0129】
Y中に存在してよいエステル基及び/又はポリエステルについて:
モノヒドロキシモノエステル及びモノ、ジ、又はポリヒドロキシポリエステルをY(-O-H)qとして使用してもよい。
【0130】
ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ官能性アクリレート又はメタクリレートが、好適なモノヒドロキシモノエステルの例である。
【0131】
ポリエステルは、例えば、ジカルボン酸、並びに無水物、酸クロライド、又はジアルキルエステル(例えば、ジメチルエステル又はジエチルエステル)等のそれらのエステル化可能な誘導体を、ジオール及びモノ、ジ、又はトリ官能性開始剤成分との反応により反応させることによって合成することができる。ジヒドロキシポリエステルの形成は、必要に応じて、化学量論量のモノヒドロキシ化合物を用いることにより抑制することができる。エステル化は、実質的に、又は共留剤の存在化で共沸エステル化させることによって、行われ得る。ジカルボン酸の例としては、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ピメリン酸、フタル酸、又は二量化脂肪酸、及びそれらの異性体並びに水素化物が挙げられる。対応するジオールの例としては、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シス-1,2-シクロヘキサンジメタノール、トランス-1,2-シクロヘキサンジメタノール、並びにエチレングリコール及び/又はプロピレングリコールに基づくポリグリコールが挙げられる。
【0132】
Y(-O-H)qとして使用するための好ましいポリエステルとしては、1以上の任意でアルキル置換されたヒドロキシカルボン酸のポリ縮合、及び/又はプロピオラクトン、バレロラクトン、ブチロラクトン、カプロラクトン、及び/又は置換ラクトン等の対応するラクトン類のモノ、ジ、又はトリヒドロキシ開始剤成分による開環重合によって得ることができるものが挙げられる。これらは好ましくは、150~5000g/molの数平均分子量Mnを有する。原則として、Y(-O-H)qとして挙げられる他の全ての化合物もまた、開始剤成分として使用され得る。上述した化合物の混合物を使用してもよい。ラクトン重合は、当業者に既知の方法によって行われる。
【0133】
Yに含有され得るウレタンラジカル及び/又はポリウレタンについて:
モノ、ジ、又はトリ官能性開始剤成分の存在下でのジイソシアネートのジヒドロキシ化合物との付加反応により得ることのできるポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、及び/又はポリエーテルポリエステルポリウレタンもまた、Y(-O-H)qとして使用してよい。2~12個の炭素原子を有するジオール、ポリオキシアルキレングリコール、及びジヒドロキシ官能性ポリエステルもまた、ウレタン基を含有するY(-O-H)q化合物の合成のためのヒドロキシル化合物として使用してよい。ポリエステル上のポリエーテルについては上述した通りである。
【0134】
Yに含有され得るポリカーボネートについて:
Yラジカルはまた、オープン鎖状又は環状のカーボネートとの既知の反応によって得られるもののような、カーボネート基も含有し得る。例えば、ポリウレタンの合成において使用されるもののような、カーボネートで修飾された直鎖状ポリエステル又はポリカーボネートジオールが好適である。好適なカーボネートとしては、例えば、脂肪族、環状脂肪族、芳香脂肪族、及び/又は芳香族炭酸エステル、例えばジアルキルカーボネート、即ち、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、又はジフェニルカーボネート、カテコールカーボネート、又は環状アルキレンカーボネートが挙げられる。任意で置換されていてもよい5員又は6員の環を有する環状アルキレンカーボネートが特に好適である。好ましい置換基としては、最大30個の炭素原子を有する、脂肪族、環状脂肪族、及び/又は芳香族基が挙げられる。好適な環状アルキレンカーボネートの例としては、エチレンカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリセロールカーボネート、トリメチレンカーボネート、4-メチルトリメチレンカーボネート、5-メチルトリメチレンカーボネート、5,5-ジメチルトリメチレンカーボネート、5,5-ジエチルトリメチレンカーボネート、又は5-メチル-5-プロピルトリメチレンカーボネートが挙げられる。
【0135】
Yに含有され得るポリオキサゾリンについて:
ヒドロキシ官能性ポリ-2-アルキル-2-オキサゾリン又はポリ-2-アルキル-2-オキサジンもまたY(-O-H)qとして機能し得る。モノヒドロキシ官能性化合物を使用するのが好ましい。ポリ-2-アルキル-2-オキサゾリン又はポリ-2-アルキル-2-オキサジンは、パラ-トルエンスルホン酸、メチルトシラート、又はメチルトリフラート等の開始剤を用いた2-アルキル-2-オキサゾリン又は2-アルキル-2-オキサジンのカチオン開環重合により得られる。リビングカチオン重合機構から生ずるオキサゾリニウム又はオキサジニウム末端基を、アミノエステル末端基を介したアルカリ加水分解によって、より安定なヒドロキシアミドに変換することができる。モノヒドロキシ官能性ポリ-2-アルキル-2-オキサゾリン又はポリ-2-アルキル-2-オキサジンの合成の代替法は、開始剤種として2-(4-ヒドロキシフェニル)-N-メチル-2-オキサゾリニウムトリフルオロメタンスルホネートを用いた重合による。アルキル置換基の選択によって適合性を制御することができ、例えば、ポリ-2-エチル-2-オキサゾリンはその水溶性に起因してより極性の高い系のために好適であり、一方でポリ-2-ラウリル-2-オキサゾリンは、例えば、非極性系において適合性を有する。2-エチル-2-オキサゾリン及び2-ラウリル-2-オキサゾリンのブロック共重合体が形成される場合には、このポリマーは、特に広範な適合性によって特徴付けられる。このようなポリ-2-アルキル-2-オキサゾリン又はポリ-2-アルキル-2-オキサジンは通常、300~10,000g/mol、好ましくは500~5,000g/molの数平均分子量Mnを有する。追加の官能基を有し得る種々の2-オキサゾリンもまた使用してよい。このような種としては、例えば、脂肪酸に基づく対応する2-オキサゾリンが挙げられる。
【0136】
Y中に存在し得るエチレン性不飽和化合物のOH官能性ポリマーについて:
エチレン性不飽和モノマーのOH官能性ポリマーもまたY(-O-H)qとして使用してよい。
【0137】
OH官能は、エチレン性不飽和モノマー、開始剤、又は鎖調整剤を用いた既知の態様において導入され得る。モノヒドロキシ官能性ポリアクリル酸エステル、及び/又はポリメタクリル酸エステルが好ましい。例えば、Soken Chemical & Engineering Co製のActflowUMM1001等のモノヒドロキシ官能性ポリアクリレートマクロマーが市販されている。これらのポリアクリレートは通常、300~12,000g/mol、好ましくは通常500~9,000g/molの数平均分子量Mnを有する。これらは、ブロック構造で形成されてよく、又はランダムに配列されてもよく、又は勾配を形成してもよい。
【0138】
OH官能性エチレン性不飽和モノマーの例としては、2~36個の原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状脂肪族ジオールのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば、3-ヒドロキシプロピルメタクリレート、3,4-ジヒドロキシブチルモノメタクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2,5-ジメチル-1,6-ヘキサンジオールモノメタクリレート;カプロラクトン及び/又はバレロラクトン変性ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(式中、ヒドロキシ(メタ)アクリレートは好ましくは、2~8個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状脂肪族ジオールから誘導される);OH官能性ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート及びOH官能性ポリ(プロピレングリコール)(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0139】
追加のエチレン性不飽和モノマーの例としては、1~22個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状脂肪族アルコールのアルキル(メタ)アクリレート、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及びtert-ブチル(メタ)アクリレート;アリール(メタ)アクリレート、例えば、ベンジルメタクリレート又はフェニルアクリレート(ここで、アリールラジカルはそれぞれ、非置換か又は最大4回まで置換されていてもよい)、例えば4-ニトロフェニルメタクリレート;5~80個の炭素原子を含有する、エーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又は混合ポリエチレン/プロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリルメタクリレート、メトキシエトキシエチルメタクリレート、1-ブトキシプロピルメタクリレート、シクロヘキシルオキシメチルメタクリレート、メトキシメトキシエチルメタクリレート、ベンジルオキシメチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、2-ブトキシエチルメタクリレート、2-エトキシエチルメタクリレート、アリルオキシメチルメタクリレート、1-エトキシブチルメタクリレート、1-エトキシエチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール)メチルエーテル(メタ)アクリレート;アミノアルキル(メタ)アクリレート、例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-トリメチル-アンモニウムエチルメタクリレートクロライド、及びN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート;スチレン及び置換スチレン、例えば4-メチルスチレン、メタクリロニトリル、及びアクリロニトリル;エチレン性不飽和複素環、例えば、4-ビニルピリジン及び1-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]-2-イミダゾリジノン等;1~20個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニル;マレインイミド、N-フェニルマレインイミド、及び1~22個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状脂肪族アルキル基を有するN-置換マレインイミド、例えばN-エチルマレインイミド及びN-オクチルマレインイミド;(メタ)アクリルアミド;1~22個の炭素原子を有する直鎖状、分枝状、又は環状脂肪族アルキル基を有するN-アルキル及びN,N-ジアルキル置換アクリルアミド、例えばN-(tert-ブチル)アクリルアミド及びN,N-ジメチルアクリルアミドが挙げられる。
【0140】
OH官能性ではない好ましいモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アリール(メタ)アクリレート、及びスチレンが挙げられる。
【0141】
Yに含有され得る三級アミンについて:
三級アミンを有するヒドロキシ官能性化合物がY(-O-H)qとして作用してもよい。三級アミンを有する適切なヒドロキシル官能性化合物の例としては、2-ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、3-ジメチルアミノプロパノール、3-ジエチルアミノプロパノール、2-[2-(ジメチルアミノ)エトキシ]エタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N-エチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アニリン、N,N,N’-トリメチル-N’-ヒドロキシエチル-ビスアミノエチルエーテル、及びN,N-ビス-(3-ジメチルアミノプロピル)-N-イソプロパノールアミン、トリス(2-ヒドロキシエチル)アミンが挙げられる。
【0142】
本発明のさらに好ましい実施形態では、対応する重合開始剤Y(-X-H)qはアミノヒドロキシ化合物であり、式中、XはO及びNH及び/又はNR1により表され、ただし、qは≧2である。
【0143】
適切なアミノヒドロキシ化合物の例としては、エタノールアミン、プロパノールアミン、イソ-プロパノールアミン、4-アミノブタノール、5-アミノペンタノール、6-アミノヘキサノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン、N-ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、3-((2-ヒドロキシエチル)-アミノ)-1-プロパノール、ジイソプロパノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、及びN-(2-ヒドロキシエチル)アニリンが挙げられる。
【0144】
本発明の特定の一実施形態では、対応する重合開始剤Y(-X-H)qはアミン化合物であり、式中、XはNH及び/又はNR1により表される。本発明による酸官能性化合物の合成に使用されるアミン化合物Y(-X-H)qは、O及び/又はN等の追加のヘテロ原子及び/又はエーテル、アミド、及び/又はウレア基を含有してもよい。Yラジカルは、前記酸官能性化合物の形成において不活性であるC=C二重結合及び/又は三級アミン基等の追加の基を含有してもよい。任意で存在するエーテル基は、ブロック構造において存在してもよく(例えば、ポリエチレンオキシドブロック-ポリプロピレンオキシドブロック)、勾配を形成してもよく、又はランダムに配列されてもよい。
【0145】
本発明の特定の一実施形態では、一般式(I)において、XはNH及び/又はNR1により表され、q=1~200、好ましくはq=2~50であり、Yは1~250個のアミノ基を有する。
【0146】
通常、R1は独立に選択されてYの炭素原子に対する化学結合及び/又は1~20個の炭素原子を含有する独立に選択された有機基により表される。
【0147】
重合開始剤Y(-X-H)qとして使用することのできる適切なモノ官能性アミンの例としては、例えば、脂肪族、環状脂肪族、芳香族、及び/又は芳香脂肪族アミンが挙げられる。それらの例としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、2-エチル-1-ヘキシルアミン、ビス(2-エチルヘキシル)アミン、ジブチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ベンジルアミン、N-ベンジルメチルアミン、及びN-フェニルベンジルアミン、及びシクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0148】
さらなる例としては、(硬化)タローアミン、ココスアミン、ステアリルアミン、及びC16-C22アルキルアミンのような飽和及び不飽和一級脂肪族アミン(Ecogreen Oleochemicals GmbHより商品名Rofamin(登録商標)タイプで入手可能)。飽和及び不飽和一級並びに二級脂肪族(脂肪酸)アミン(Akzo Nobel Surface Chemistry LLCより商品名Armeen(登録商標)タイプで入手可能)もまた重合開始剤として使用され得る。
【0149】
適切なモノ官能性アミンのさらなる例は、下記一般式により表されるポリエーテルモノアミンである。
Rt-[OEt]d[OPr]e[OBu]f-NH2
式中、Rtは、1~22個の炭素原子、好ましくは1~4個の炭素原子を有するアルキル残基である。d[OEt]、e[OPr]、及びf[OBu]単位はいずれの順序に配列されてもよい。これには、特に、統計的並び又は[OEt]、[OPr]、及び/又は[OBu]ブロックの形での配列、又は勾配の形での配列、例えば、ポリアルキレンオキシド鎖に沿って[OEt]又は他のアルコキシ単位が多めの又は少なめの形が含まれる。
【0150】
適切なポリエーテルモノアミンの例には、Huntsman Corporation製のJEFFAMINE(登録商標)Mタイプ(例えば、JEFFAMINE(登録商標)M-2070、JEFFAMINE(登録商標)M-2005、JEFFAMINE(登録商標)M-600、及びJEFFAMINE(登録商標)M-1000)及びHuntsman Corporation製のSurfonamine(登録商標)Lタイプ及びSurfonamine(登録商標)Bタイプ(例えば、Surfonamine(登録商標)L-100、Surfonamine(登録商標)L-200、Surfonamine(登録商標)L-207、Surfonamine(登録商標)L-300、Surfonamine(登録商標)B-60、Surfonamine(登録商標)B-100、Surfonamine(登録商標)B-200)がある。
【0151】
好ましくは、d>e>fである。特に好ましくはf=0である。
特に好ましくはf=0及び比d/eは>1、より良好には>2、さらにより良好には>3、例えば、3~50である。
【0152】
三級アミンを有するアミノ官能性化合物もまたY(-X-H)qとして使用してよい。
三級アミンを有する適切なアミノ官能性化合物の例としては、2-(ジエチルアミノ)エチルアミン、2(ジメチルアミノ)エチルアミン、3-(ジメチルアミノ)プロピルアミン、3-(ジエチルアミノ)プロピルアミン、ビス-(3-ジメチルアミノプロピル)アミン、N-(3-アミノプロピル)イミダゾール、1-(3-アミノプロピル)-2-メチル-1H-イミダゾール、2-(1H-イミダゾール-1-イル)エタナミン、2-(アミノメチル)ピリジン、4-(アミノメチル)ピリジン及び3-(2-エチル-1H-イミダゾール-1-イル)プロパン-1-アミン、テトラメチルイミノビスプロピルアミンが挙げられる。
【0153】
本発明の特定の一実施形態では、対応する重合開始剤Y(-X-H)qとしてポリアミン化合物を使用することができる。適切なポリアミン化合物の例としては、脂肪族直鎖状ポリアミン、例えば1,6-ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、テトラエチレンペンタミン(TEPA)、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン、及びより高分子の類縁体、式NH2-(C2H4NH)n-C2H4-NH2(n>5)に従う直鎖状縮合物、ジプロピレントリアミン、(3-(2-アミノエチル)アミノプロピルアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン、N,N-ジメチルジプロピレントリアミン、及びN,N’-ビス(3-アミノプロピル)-エチレンジアミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、トリス(2-アミノエチル)アミンが挙げられる。さらなる例としては、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノ-ジフェニルメタン、1,3-及び1,4-キシリレンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1-ピペラジンエタンアミン、N,N’-ビス-(2-アミノエチル)ピペラジン、N-[(2-アミノエチル)2-アミノエチル]ピペラジン、ポリアルキレンオキシドに基づくジ及び/又はポリアミンがあり、アミン基を有する適切な低分子量のポリエーテルの例としては、例えば、Huntsman Corporation製のJEFFAMINE(登録商標)D、ED、EDR、T、及びSDタイプ(例えば、D-230、D-400、D-2000、D-4000、HK-511、ED-600、ED-900、ED-2003、EDR-148、EDR-176、T-403、T-3000、T-5000、SD-231、SD-401、SD-2001、ST-404)が挙げられる。典型的に、一級、二級、及び三級アミノ基を有する脂肪族及び分枝状ポリアミン、特にポリ(C2-C4)-アルキレンアミンが使用される。さらに適切な種は、ポリエチレンイミンと呼ばれ、Lupasol(登録商標)(BASF SE)のようなアジリジンホモポリマーであるもの又はEpomin(登録商標)タイプ(日本触媒)として知られる化合物などである。これらの化合物は、既知のプロセス(例えばエチレンイミンの重合)に従って合成される。分枝状構造を有し且つ三級アミノ基を有するポリアミンは、重合の開始に関して非反応性であるため、高い粘度を引き起こさない高分子構造が可能である。
【0154】
粒子表面では、一般に低分子量は弱い吸着をもたらすことが多いが、高分子量では取り扱い及び溶解性に関する問題を引き起こす場合がある。典型的に、前記ポリアミンはヒドロキシル基を含有せず、少なくとも200の分子量を有し、少なくとも4、好ましくは少なくとも8個の一級又は二級アミノ基を有する。好ましいポリアミンは少なくとも6個の三級アミノ基を有する。
【0155】
代替の実施形態では、ポリアミンはエポキシドモノマーで修飾され、その結果ヒドロキシル基を含有する。当該修飾ポリアミンは重合開始化合物として容易に使用できる。当該修飾ポリアミンはより少ない一級アミノ基及び/又は二級アミノ基を含有し、より多くのヒドロキシル基を含有する。当該修飾ポリアミンの利点は、得られるアミン官能性化合物が、セグメントに対するより少ないアミド連結(及びセグメントに対するより多くのエステル連結又はエーテル連結)を含有し、それにより、より粘度の低いアミン官能性化合物が得られることである。
【0156】
代替の実施形態では、ポリアミンは、マルチエポキシド(ジエポキシド、トリエポキシド、テトラエポキシド、ペンタエポキシド、又はヘキサエポキシド等)の、上述したような少なくとも1つの一級アミンを有する化合物及び少なくとも1つの一級アミンを有するオリゴアミンとの付加反応により調製されてもよい。
【0157】
部分Z-aを提供する剤(第二工程)は、ポリ又はジカルボン酸(又はその無水物)であり得る。
【0158】
適切なポリ又はジカルボン酸(又は対応する無水物)の例としては、例えば、マレイン酸(又はその無水物)、フタル(又はその無水物)、トリメリット酸(又はその無水物)、ヘキサヒドロフタル酸(又はその無水物)、テトラヒドロフタル酸(又はその無水物)、コハク酸(又はその無水物)、フミン酸(又はその無水物)、ドデシルコハク酸(又はその無水物)、ピロメリット酸(又はその無水物)、メチルヘキサヒドロフタル酸(又はその無水物)、及びメチルテトラヒドロフタル酸(又はその無水物)が挙げられる。
【0159】
ポリカルボン酸(又は対応する無水物)のさらなる例にとしては、例えば、マレイン酸無水物及び/又はマレイン酸の、例えば、スチレン、アルファオレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、及び(メタ)アクリレート等の反応性炭素-炭素二重結合を有する化合物とのコポリマー、例えば、マレイン酸無水物とエチレンとのコポリマー、マレイン酸無水物とプロピレンとのコポリマー、マレイン酸無水物とイソブチレンとのコポリマー、マレイン酸無水物とイソプレンとのコポリマー、マレイン酸無水物とメチルビニルエーテルとのコポリマー、マレイン酸無水物と1-オクタデセンとのコポリマー、マレイン酸無水物、エチレン、ブチレン、及びスチレンのコポリマー、マレイン酸無水物とポリアルキレングリコールモノアリルエーテルとのコポリマー、マレイン酸無水物とスチレンとのコポリマーが挙げられる。
【0160】
適切なポリマー鎖のモノマーは、ブロック構造において存在してもよく、勾配を形成してもよく、又はランダムに配列されてもよい。
【0161】
さらに、硫酸、三酸化硫黄、塩素硫酸、及び塩化スルフリル、及び二酸化硫黄を前記剤として使用し得る。
【0162】
しかしながら、対応するリン含有基を有する部分Z-aを提供する剤が最も有利である。
【0163】
好ましくは、部分Z-aは独立に選択され、0~500個、好ましくは0~20個の炭素原子を含有し、且つリン酸基及びリン酸エステル基から成る群から選択される少なくとも1つの酸性残基を含有する。
【0164】
典型的には、Z-aは独立に選択されて下記一般式(II)により表される。
~PO(V)n(OH)2-n(II)
式中、
Vは独立に選択されて同じ分子の酸素原子に対する化学結合及び/又は基OR33により表され、
式中、
R33は独立に選択されて1~500個、好ましくは1~35個の炭素原子を含有する有機基により表され、
nは独立に選択されて0及び/又は1により表される。
【0165】
Vが同じ分子中の酸素への化学結合である場合には、通常、開始剤としてポリエチレンイミン又はポリヒドロキシル化合物が使用されている。
【0166】
OR33は多く場合、(第一反応工程の)中間生成物Y(X-W-(H)c)qの残基により表され、好ましくは式中、c=1及びq=1であり、これが、エステル形成リン化合物との反応により、本発明に従う酸性リン酸エステル誘導体を形成した。
【0167】
一般にはOR33は、上述したようなY(-O-H)q種の残基によって表すこともでき、好ましくは式中q=1である。少量の対応するヒドロキシル基含有化合物をY(X-W-(H)c)q種とともにリン酸エステルの形成下でエステル形成リン化合物と反応させる場合が、このケースに該当し得る。
【0168】
通常、n=0である。ポリリン酸の使用によって通常、n=0の生成物が与えられる(下記で説明する)。
【0169】
好ましくは、本発明に従う酸性リン酸エステル誘導体は、(第一反応工程の)中間生成物の少なくとも1つのヒドロキシル基を、酸性リン酸エステルの形成下でエステル形成リン化合物と反応させることにより合成される。
【0170】
エステル形成リン化合物は、ヒドロキシル基を含有する化合物との反応によってリン酸エステルを形成可能な化合物であると理解される。エステル形成リン化合物の例としては、ポリリン酸、五酸化リン、塩化ホスホリル、及びアセチルリン酸が挙げられる。特定のリン酸化剤、特に、例えば塩化ホスホリルを用いる場合には特定の置換パターンを生じ得る。ポリリン酸及び五酸化リンが好ましいが、ポリリン酸が特に好ましい。ポリリン酸とではモノエステルが主に形成され、五酸化リンとではモノエステル/ジエステル混合物が形成される。モノエステルが好ましい。リン酸化反応において、リン酸化対象の種々の成分の混合物を使用することもまた可能である。
【0171】
前記エステル形成リン化合物のヒドロキシル化合物との反応は好ましくは、溶媒の非存在下で150℃まで、好ましくは100℃未満の温度で行われる。しかしながら、この反応は、好適な不活性溶媒(例えば、メトキシプロピルアセテート)の存在下で行われてもよい。
【0172】
本発明による酸官能性化合物は、酸基に起因して塩を形成することができる。本発明の意味において、それらはまた、対応する塩の形態で使用されてもよい。いくつかの場合には、こうした部分的又は完全な塩形成を通して、効率の改善及び/又は溶解性又は適合性の改善を達成することができる。製品の酸性が干渉を引き起こす用途では、当該酸官能性化合物の部分的又は完全な中和を通して改善を達成できることも多い。好適な塩形成化化合物としては、アルカリ(土類)金属塩、例えば炭酸塩、重炭酸塩、又は水酸化物、低分子量アミン類、例えばトリエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、及びオレイルアミンが挙げられる。さらに欧州特許出願公開0893155号によると、本発明によるリン酸エステル化合物のポリマー性のアミン(ポリアミン、アミン性(メタ)アクリレートコポリマー、ポリアリルアミン)との塩は、湿潤剤及び分散剤として可能性がある。
【0173】
一般に、モノ酸性酸官能性化合物の、低分子量モノアミンとの、並びに低分子量ポリアミン又はポリマー性のアミンとの、部分的な又は完全な塩形成といった、様々な組み合わせが可能である。
【0174】
また、ポリ酸性酸官能性化合物の、低分子量モノアミンとの、並びに低分子量ポリアミン又はポリマー性アミンとの、部分的な又は完全な塩形成も可能である。
【0175】
1つの好ましい組み合わせは、モノ酸性酸官能性化合物の低分子量モノアミン又はポリマー性ポリアミンとの部分的な又は完全な塩形成である。別の好ましい組み合わせは、ポリ酸性酸官能性化合物の低分子量モノアミンとの部分的な又は完全な塩形成である。
【0176】
リン酸基及びリン酸エステル基は、熱安定性及び良好な貯蔵寿命を提供する。さらに、前記の基は無機顔料のための効果的な固定基である。
【0177】
本発明による酸官能性化合物は、塩形成された、部分的に塩形成された、又は塩形成されない形態で存在し得る。塩形成されない、塩形成された、及び/又は部分的に塩形成された形態で存在する場合には、これは通常、第一にはそれぞれ化学的環境(pH)に依存し、第二には酸官能性化合物そのものの種類に依存する。モノ塩基及びポリ塩基を塩形成成分とみなしてもよい。
【0178】
製造法:
上記で既に述べたように、本発明の実施形態はまた、本発明による酸官能性化合物の製造方法に関し、本方法では、第一工程において、重合開始剤としてY(-X-H)qを使用し、構造単位Sを生成する環状エステルコモノマーSmが構造単位Eを生成する環状エーテルコモノマーEmとランダムに共重合され、
第一工程の中間生成物は式Y(-X-W-(H)c)qに従い、
この中間生成物を第二工程において、部分Z-aを提供する剤を用いて変換して、一般式(I)に従う化合物を生成する。
【0179】
典型的には、Sm及びEmはアニオン又はカチオン重合により共重合され、ただし、使用されるコモノマーの重合反応性を提供する重合触媒が使用され、これによってランダム共重合が支持される。
【0180】
記載されたモノマーの開環重合を促進するいずれかの触媒を用いてもよい。代表的な触媒としては、ブロンステット/ルイス酸(CF3SO3CH3/AlCl3、BF3、ZnCl2、希土類トリフラート類(Sc(OTf)3)、グアニジン類、及びアミジン類、例えば、(1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、N-メチル-1,5,7-トリアザビシクロドデセン(MTBD)、及び1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU)、ホスファゼン、チオウレア-アミン、NH-カルベン、及び酵素が挙げられる(H.Sardon、A.Pascual、D.Mecerreyes、D.Taton、H.Cramail、J.Hedrick、Macromorecules 2015、48、3153-3165)。好ましい触媒の種類には、両方のモノマーの類似した反応性を提供するAlCl3/DBUのような二元触媒系がある(S.Naumann、P.Scholten、J.Wilson、A.Dove、J.Am.Chem.Soc.2015、137、14439-14445)。
【0181】
前記触媒は触媒的に有意な量で使用され、この量は、反応物の性質及び量、温度及び混合に依存する。0.001~5重量パーセントの触媒濃度が典型的であり、0.01~2重量パーセントの濃度が好ましい。
【0182】
重合反応中により多くの反応性モノマーを添加するセミバッチ製造が、関連のランダムポリマーを生成するさらなる可能性を与え得る。
【0183】
本発明による酸官能性化合物は、粘度に応じて、バルクで、又は好適な溶媒、溶媒混合物、又は他の好適なキャリア媒体の存在下で合成されてよい。選択された反応条件下では反応しないか又は反応物とのその反応性が無視できる程度であって、反応物及び反応生成物が少なくとも部分的に可溶であるような、全ての溶媒又はキャリア媒体が好適である。これらの溶媒又はキャリア媒体としては、例えば、トルエン、キシレン、脂肪族及び/又は環状脂肪族石油留分等の炭化水素、クロロホルム、トリクロロエタン等の塩素化炭化水素、非環状エーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のポリアルキレングリコールジアルキルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トリアセチン、フタレート又は他の可塑剤等の、モノ、ジ、又はポリカルボン酸のエステル、「二塩基酸エステル」と呼ばれるC2-C4ジカルボン酸のジアルキルエステル、エチルグリコールアセテート、メトキシプロピルアセテート等のアルキルグリコールエステル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン等のケトン、ジメチルホルムアミド等の酸アミド等が挙げられる。好適には、それらの溶媒及び/又はキャリア媒体は、企図される使用分野を考慮して既に選択されている。
【0184】
適用分野によって、溶媒を使用してもよく、又は使用しなくてもよい。溶媒を使用する場合には、それらは当該酸官能性化合物中に残存してもよく、又は全体的に又は部分的に除去され、必要に応じて他の溶媒又はキャリア媒体で置換されてもよい。
【0185】
溶媒は、任意で減圧下で及び/又は例えば水を加えて共沸により、蒸留することによって、全体的に又は部分的に除去されてよい。しかしながら、当該酸官能性化合物はまた、脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン等の非溶媒を加えて沈殿させることによって単離されてもよく、次いで、ろ過及び任意で乾燥して分離することにより単離されてもよい。これらの方法のいずれかによって得られた当該酸官能性化合物は、その後各適用分野のために好適な溶媒中に溶解してもよく、又は任意で、純粋な形態で、例えば、粉末コーティングにおいて、使用してもよく、又は不活性なキャリアに塗布してもよい。粉末コーティング又は特定のプラスチック加工法などの、固体の使用が好ましい用途のためには、当該酸官能性化合物は、さらなる既知の方法によって固体形態に変換されてもよい。このような方法の例としては、マイクロカプセル化、スプレー乾燥、SiO2等の固体キャリアへの吸着、又はPGSS法(パーティクルズ・フロム・ガスサチュレーテッドソリューションズ)が挙げられる。
【0186】
本発明はまた、上述したような又は上述したようにして製造された酸官能性化合物を、好ましくはコーティング、塗料、プラスチック、顔料ペースト、シーラント、セラミック、化粧品、接着剤、キャスティングコンパウンド、充填剤、バッテリー用途、ガス及び油田用途、スパックリングコンパウンド、インク、及び印刷着色剤において、添加剤として、好ましくは湿潤剤及び分散剤として、使用することに関する。
【0187】
本発明はまた、上述したような酸官能性化合物で又は上述したように製造された酸官能性化合物で処理された無機粒子及び/又は無機繊維を含有する、固体混合物に関する。
【0188】
本発明のさらなる対象は、上述したような酸官能性化合物を又は上述したように製造された酸官能性化合物を含有するコーティング及び/又はプラスチックである。
【0189】
本発明による酸官能性化合物は、例えば、アルミニウム不動態化剤、分散剤、分散安定剤、又は湿潤剤として使用され、及び例えば色素性の及び/又は充填剤を含有する製品、例えば、顔料濃縮物又はペースト、コーティング組成物、シーラント、プラスチック、セラミック、化粧品、接着剤、キャスティングコンパウンド、スパックリングコンパウンド、インク、及び/又は印刷インクにおいて、使用することができる。好ましい顔料濃縮物は、適切な塗料系と混合し、それにより色素性の塗料を製造することができるものである。
【0190】
上述した酸官能性化合物はしたがって、例えば、インクジェット印刷、紙コーティング、皮革及び織物インク、ペースト、顔料濃縮物、セラミック、接着剤及びシーラント、キャスティングコンパウンド、プラスチック及び化粧用製剤のための、例えば、塗料、コーティング、インク、及び印刷着色料の製造又は加工において、特にこれらが顔料及び/又は充填剤(繊維性のものも)等の固体を含有する場合に、使用されてよい。上述した酸官能性化合物はまた、合成、半合成、又は天然巨大分子物質、例えばポリ塩化ビニル、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレン又はポリプロピレンに基づくモールディングコンパウンドの製造又は加工において、使用されてもよい。また、当該酸官能性化合物を、例えば、キャスティングコンパウンド、ポッティング材料、PVCプラスチゾル、ゲルコート、ポリマーコンクリート、回路基板、産業用塗料、木材及び家具用塗料、自動車用塗料及びエナメル、(汚染防止)海洋塗料、耐食塗料、缶及びコイルコーティング、又はペインター及び建築用塗料を製造するために使用してもよい。
【0191】
本発明による酸官能性化合物は、色素性の塗料のための塗料系において使用され得るばかりでなく、樹脂、油、グリース、潤滑剤、ゴム、シーラント、印刷着色料、インク、接着剤、ワックス、又はコーティング組成物等の広範な製剤及び/又は製品における使用もまた可能である。当該酸官能性化合物はまた、パーソナルケア産業において又は電子産業における電気的用途において、造船業において、医療用途の枠内で、建築産業において、又は自動車産業において、調製される製剤において、使用してもよい。例としては、電子ペーパー、例えば電子書籍のディスプレイ、超小型電子チップ及び回路基板の封止、防汚コーティング等の水中の船体コーティング、シリコーンチューブ、又はブレーキ部品用の潤滑用添加剤が挙げられる。
【0192】
本発明による酸官能性化合物は、液晶ディスプレイ、液晶スクリーン、色分解装置、センサー、プラズマディスプレイ用スクリーン、SED系のディスプレイ(表面伝導型電子放出素子ディスプレイ)、及びMLCC(積層セラミック化合物)用のカラーフィルターの製造にも有利に使用され得る。MLCC技術は、マイクロチップ、積層セラミックコンデンサ、及び回路基板の製造において使用されている。
【0193】
化粧用製剤における使用は、例えば、メークアップ、パウダー、リップスティック、ヘアダイ、クリーム、ネイルポリッシュ、及び日焼け止め製剤等の化粧用製剤の製造に役立ち得る。これらは、W/O又はO/Wエマルション、溶液、ゲル、クリーム、ローション、又はスプレー等の通常の形態で存在してよい。有利には、本発明による酸官能性化合物は、これらの組成物を製造するために使用される分散体において使用することができる。それらは、典型的に化粧品においてこれらの目的のために使用される、水、ひまし油、又はシリコーンオイル等のキャリア媒体と、有機及び無機顔料、例えば二酸化チタン又は酸化鉄等の固体とを含有し得る。
【0194】
言及すべき他の応用分野としては、NIP(ノンインパクトプリンティング)、インクジェット(紙、箔、セラミック、人工及び天然繊維布上の)、分散セラミック(水性又は無水)、ポッティング材料中の分散が挙げられる。本発明による酸官能性化合物はまた、上述した製剤及び応用分野において、そのまま、即ち、対応する濃縮物中に予め組み込むことなく、使用することもできる。
【0195】
典型的には、当該酸官能性化合物並びに顔料及び/又は充填剤を含有する製品は、塗料、又はコーティング組成物用の顔料濃縮物である。しかしながら結局は、当該酸官能性化合物の使用は、いずれの顔料含有及び/又は充填剤含有製品においても可能である。
【0196】
顔料濃縮物は特に、本発明による酸官能性化合物に加えて、例えば、水及び/又は有機溶媒及び少なくとも1つの顔料を含有する組成物である。これらの顔料濃縮物は特に、充填剤及び結合剤としての有機ポリマーを追加で含有し得る。典型的には顔料濃縮物は、結合材としての有機ポリマーを、全く含有しないか又は少量だけ含有する。こうした既知の結合剤は、対応する最終塗料系中に存在させるのが有利であり、それについては下記で説明する。
【0197】
好適な有機溶媒は特に、脂肪族溶媒;環状脂肪族溶媒;トルエン、キシレン、溶剤ナフサ等の芳香族溶媒;エーテル類、エステル類、及び/又はケトン類、例えばブチルグリコール、ブチルジグリコール、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン;及び/又はメトキシプロピルアセテート、ジアセトンアルコール等の溶剤といった、典型的に塗料及び染料業界において使用されて当業者には既知のものである。
【0198】
使用される顔料は、当業者に既知の顔料であってよい。好適な顔料の例としては、モノ、ジ、トリ、及びポリアゾ顔料、オキサジン、ジオキサジン、チアジン顔料、ジケトピロロピロール類、フタロシアニン類、ウルトラマリン及び他の金属錯体顔料、インジゴ顔料、ジフェニルメタン顔料、トリアリールメタン顔料、キサンテン顔料、アクリジン顔料、キナクリドン顔料、メチン顔料、アントラキノン、ピラントロン、ペリレン顔料、及び他のポリ環状カルボニル顔料、カーボンブラック顔料及び/又はカーボンブラック系の顔料、例えばグラファイトが挙げられる。有機顔料のさらなる例は、学術論文:W.Herbst、K.Hunger「Industrial Organic Pigments」、1997(発行元:Wiley-VCH、ISBN:3-527-28836-8)中に見ることができる。使用される顔料は、亜鉛、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リン酸亜鉛、硫酸バリウム、リソフォン、酸化鉄、ウルトラマリン、リン酸マンガン、アルミン酸コバルト、スズ酸コバルト、亜鉛酸コバルト、酸化アンチモン、硫化アンチモン、酸化クロム、クロム酸亜鉛、ニッケル、ビスマス、バナジウム、モリブデン、カドミウム、チタン、亜鉛、マンガン、コバルト、鉄、クロム、アンチモン、マグネシウム、アルミニウム系の混合金属酸化物(例えば、ニッケルチタンイエロー、バナジン酸モリブデン酸ビスマスイエロー又はクロムチタンイエロー)等の無機顔料であってよい。さらなる例は、学術論文:G.Buxbaum「Industrial Inorganic Pigments」、1998(発行元:Wiley-VCH、ISBN:3-527-28878-3)に見ることができる。無機顔料は、純粋な鉄、酸化鉄、及び酸化クロム又は混合酸化物系の磁性顔料、アルミニウム、亜鉛、銅、又は真鍮のメタリックエフェクト顔料、並びにパール顔料又は蛍光及び燐光顔料等であることができる。他の例としては、少なくとも1つの寸法において100nm未満の粒子サイズを有するナノスケールの有機又は無機固体、例えばある種のカーボンブラック、又は単層CNT、多層CNT、及びグラフェン等の炭素の他の同素形態が挙げられる。粒子サイズは、例えば、透過型電子顕微鏡、分析用超遠心システム、又は光散乱法により決定される。金属酸化物及び/若しくは水酸化物又は半金属酸化物及び/若しくは水酸化物から成る粒子、並びに混合金属酸化物及び/若しくは水酸化物並びに/又は半金属酸化物及び/若しくは水酸化物から成る粒子もまた挙げてよい。例えば、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、チタン等の酸化物及び/若しくは酸化水酸化物を、このように極めて細粒化された固体の製造に使用してもよい。これらの酸化性の及び/若しくは水酸化性の及び/若しくは酸化水酸化性の粒子の製造プロセスには、例えば、イオン交換プロセス、プラズマプロセス、ゾルゲル法、沈殿、粉砕(例えば摩砕による)、又は火炎加水分解法等の、種々の方法が含まれ得る。上記に挙げた全ての顔料はまた、表面変性形態で存在してもよく、表面において塩基性、酸性、又は中性基を有してもよい。
【0199】
各製品、特にコーティング組成物が、充填剤を含有する場合には、その充填剤は、例えば、当業者に既知の充填剤である。粉末性又は繊維性充填剤の例としては、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、シリカ、珪藻土、珪質土、石英、シリカゲル、タルク、カオリン、雲母、パーライト、長石、スレート粉、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、カルサイト、ドロマイト、ガラス、又は炭素の、粉末性又は繊維性の粒子から構成されるものが挙げられる。使用される繊維は性状において有機及び/又は無機であってよく、また強化材料としても使用される。顔料又は充填剤の他の例は、例えば、米国特許第4,795,796号に見ることができる。水酸化アルミニウム又はマグネシウム等の難燃剤、及びシリカ等の艶消し剤もまた、本発明による湿潤剤及び分散剤によって特に良好に分散及び安定化することができる。
【0200】
本発明による酸官能性化合物はまた、顔料又は充填剤等の繊維又は粒子の加工性又は適合性を改善するために、それらの表面処理に使用することもできる。
【0201】
本発明による酸官能性化合物はまた、顔料濃縮物等の固体濃縮物の製造に特に好適である。この目的のためには、本発明による酸官能性化合物を、有機溶媒、可塑剤、及び/又は水等のキャリア媒体中に存在させ、分散対象の固体を撹拌しながら添加する。さらに、これらの濃縮物はまた、結合剤及び/又は他の賦形剤を含有してもよい。本発明による酸官能性化合物を用いて、特に、結合剤を含有しない安定な顔料濃縮物を製造することが可能である。本発明による酸官能性化合物を用いて、顔料プレスケーキから流動性の固体濃縮物を製造することも可能である。この目的のためには、本発明による酸官能性化合物を、有機溶媒、可塑剤、及び/又は水を未だ含有し得るプレスケーキと混合し、このようにして得られた混合物を分散させる。様々な経路により製造される固体濃縮物をその後、例えば、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、又はエポキシ樹脂等の様々な基剤に組み込むことができる。顔料はまた、溶媒を用いずに直接、本発明による酸官能性化合物中に分散させることもでき、熱可塑性及び熱硬化性プラスチック製剤を顔料化するために特に好適である。
【0202】
適用分野によっては、本発明による酸官能性化合物は、最終的にはさらなる用途にとって興味深い製品が、本発明による湿潤剤及び分散剤を、有利には各製品の全量に対して0.01~10重量%の割合で含有するような量で、使用される。しかしながら、さらに大きな量も可能である。分散対象の固体、例えば、顔料に対して、本発明による添加剤組成物は、好ましくは0.5~100重量%の量で使用される。
【0203】
安定化が難しい固体を使用する場合、本発明による湿潤剤及び分散剤の量はずっと多くてもよい。必要とされる分散剤の濃度は、一般に分散対象の固体の比表面積に依存する。故に、例えば、どの顔料が含まれるかを知ることもまた重要であり得る。一般に、有機顔料はより高い比表面積を有ししたがって、より大量の分散剤を必要とする傾向があるため、無機顔料の安定化に必要な分散剤の量は一般に、有機顔料を安定化させるために必要とされるよりも少ないと言える。湿潤剤及び分散剤の典型的な添加量は、分散対象の固体、特に顔料に対してそれぞれ、無機顔料用の場合は1~30重量%であり、有機顔料用の場合は10~50重量%である。非常に細粒化された顔料、例えば、ある種のカーボンブラックの場合には、30~90%以上の添加量が必要とされる。十分な顔料安定化のための判断基準としては、例えば、コーティング組成物の光沢及び透明性、又は浮遊度を挙げることができる。固体の分散は、単一の固体を摩砕することで又は複数の顔料の混合物を同時に摩砕することで行われ得、最良の結果は通常単一の固体の摩砕によって得られる。異なる固体の混合物を使用すると次第に、固体の表面上の相対する電荷に起因して液相中で凝集が生ずる場合がある。これらのケースにおいては、本発明による酸官能性化合物を用いると、全粒子の、均一な、通常は正の、電荷を達成することができ、したがって電荷の違いに起因する不安定性を防ぐことができる。摩砕された材料に添加される場合、特に第一に分散対象の固体を添加剤及び任意で溶媒と混合する(「プレミックス」)だけの場合、分散剤はそれらの最適な効果を達成するが、それは、その場合には、添加剤が結合剤ポリマーと競合する必要なく優先的に固体表面に吸着できるためである。しかしながら実際には、この手順は例外的なケースにおいてのみ必要である。必要な場合には、例えば既に仕上げ済みのバッチにおける浮遊又はフロキュレーションの問題を解決するために、本発明による酸官能性化合物を後で使用してもよい(いわゆる「後添加剤」)。しかしながら、この場合には通常、より多くの添加剤添加量が必要とされる。本発明による酸官能性化合物が最終的にそれらの効果を発現すべきである製品、特にコーティング組成物及び/又は塗料はまた、結合剤としての有機ポリマーを含有してもよい。当業者であれば、これらの結合剤について周知している。前記少なくとも1つの結合剤は例えば、対象の製品が色素性の塗料となるように、例えば本発明による酸官能性化合物を含有する顔料濃縮物と混合される塗料系によって導入されてもよい。しかしながら、有機ポリマーマトリックスに基づく他の色素性の及び/又は充填剤を含有する製品、例えば、プラスチック、シーラント、及び当業者に既知の他の製品もまた可能である。製品は、ポリマー樹脂及び/又は結合剤としての有機ポリマーを含有する系とみなされる場合があり、その場合その製品は、好適な硬化条件下で固体有機ポリマーマトリックス(例えば、コーティング組成物)を形成することができる。結合剤を含有する成分と混合するだけでこうした有機ポリマー性のマトリックス(例えば、顔料濃縮物)を形成できる系もまた製品と称する。例えば、当業者には公知のアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、硝酸セルロース、セルロースアセトブチラート、メラミン、塩素化ゴム、及び/又はエポキシ樹脂を使用してもよいが、それらに限定されない。水系コーティングの例としては、例えば自動車車体用の、陰極又は陽極電着塗料が挙げられる。他の例としては、プラスター、ケイ酸塗料、エマルション塗料、水希釈性アルキドに基づく水系塗料、アルキドエマルション、ハイブリッド系、二成分系、ポリウレタン、及びアクリレート分散体が挙げられる。一成分系及び二成分系の両方が可能であり、後者の場合には、一般に、当業者に既知の典型的な架橋剤としての第二成分中に、ポリイソシアネート、メラミン樹脂、及び/又はポリアミド樹脂もまた存在する。結合剤としてアクリレート樹脂を含有する製品系、特にコーティング組成物が好ましい。
【0204】
別の変形形態は、結合剤成分中にエポキシ樹脂を含有し及び架橋成分中にアミン官能性樹脂を含有する、二成分(2C)コーティング組成物及び/又は二成分(2C)塗料である。製品として好ましい前記コーティング組成物は、水系であっても又は溶媒系であってもよい。水系とはコーティング組成物が溶媒として主に水を含有することと理解すべきである。水系コーティング組成物は特に、コーティング組成物中に存在する全溶媒量に対して10重量%以下の有機溶媒を含有する。全溶媒量に対して5重量%以下、好ましくは2重量%以下の水を含有するコーティング組成物は、溶媒系であるとみなされる。
【0205】
例えば、光開始剤、消泡剤、湿潤剤、セルロース誘導体(例えば、硝酸セルロース、酢酸セルロース、セルロースアセトブチラート)等のフィルム形成添加剤、反応性希釈剤、流動制御剤、分散剤、及び/又はレオロジー制御添加剤を、例えば追加の製品成分として使用してもよい。
【0206】
本発明による製品として好ましい顔料濃縮物及びコーティング組成物は、当業者に既知の方法により製造される。例えば、撹拌容器又はディソルバー等の従来の混合装置中でコーティング組成物の成分を撹拌混合しながらの段階的な添加等の、既知の方法が使用される。
【0207】
コーティング及び/又は塗料層は、好ましい顔料濃縮物及びコーティング組成物を用いることにより製造できる。コーティングは、基材にコーティングを塗布し、その後硬化を行う、当業者に既知の塗布技術を用いることにより行われる。
【0208】
塗布は例えば、既知のスプレー、噴霧、ブラッシング、ローリング、キャスティング、含浸、及び/又は浸漬法により行われる。コーティング組成物を基材上に塗布した後、従来の方法によって硬化又は乾燥を行う。例えば、塗布されたコーティング組成物は、熱により物理的に乾燥させることによって、及び/又は例えば好ましくはUV照射及び電子線等の化学線を適用することによって(放射線硬化)、硬化可能であり得る。熱的硬化は、例えば、コーティング組成物及び/又は基材の種類に応じて約10℃~約400℃の範囲で、行うことができる。それぞれの場合において、硬化時間は例えば、硬化法の種類(熱的方法又は化学線法)、使用されるコーティング組成物の種類、及び/又は基材に依存する。この目的のために、基材は、移動状態にしても休止状態にしてもよい。
【0209】
粉末性の及び繊維性の固体のための分散剤及び/又はコーティング剤として上述した用途に加えて、本発明による酸官能性化合物はまた、合成樹脂における減粘剤及び適合化剤として使用してもよい。このような合成樹脂の例としては、充填剤及び繊維を高い含量で有する不飽和ポリエステル樹脂から成る、いわゆる「シートモールディングコンパウンド」(SMC)及び「バルクモールディングコンパウンド」(BMC)が挙げられる。それらの製造及び加工は、米国特許第4,777,195号に記載されている。SMC及びBMC樹脂混合物における課題は多くの場合、加工中の収縮を低減するための製剤へのポリスチレン(PS)の添加である。PSは使用される不飽和ポリエステル樹脂との適合性が悪く、及びしたがって、成分の分離が起こる。PS充填SMC又はBMC混合物を使用する場合には、本発明による酸官能性化合物、好ましくは酸性リン酸エステル官能性化合物は、それらの良好な分散品質に起因して、PSと不飽和ポリエステル樹脂との適合化効果を生み出し、このような混合物の貯蔵安定性及び加工信頼性を増大させる。
【0210】
本発明による酸官能性化合物により、例えば、非適合性のポリオール混合物、ポリオール-イソシアネート混合物、又はポリオール-プロペラント混合物(ポリウレタンの製造に使用されるような)において、相転移効果を達成することができる。
【0211】
下記に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
【0212】
概論
分子均質性を有さない物質の場合には、記載される分子量は(下記においても上記の既述と同様に)数的な意味での平均値を表す。分子量又は数平均分子量Mnは、滴定可能なヒドロキシル又はアミノ基が存在する場合には、そのOH価又はアミン価をそれぞれ測定することによる末端基測定によって決定される。末端基測定が適用できない化合物の場合には、数平均分子量は、ポリスチレン標準物質に対するゲル浸透クロマトグラフィによって決定される。別途特記しない限り、パーセンテージは重量パーセンテージである。
【0213】
非揮発性成分の測定
サンプル(2.0±0.1gの試験物質)を、予め乾燥させたアルミニウムるつぼ中で秤量し、150℃の炉中で20分間乾燥させ、デシケータ中で冷却して、再秤量した。残渣はサンプル中の固体含有量に相当する(ISO3251)。
【0214】
酸価の測定
酸価は、規定の条件下で1gの物質を中和するのに必要なKOHをmgで表した量である。酸価は、DIN EN ISO2114に従い、エタノール中の0.1N KOHを用いた中和反応により決定した。
【0215】
【0216】
ヒドロキシル価の測定
アルコール性ヒドロキシル基を、過剰の無水酢酸とのアセチル化により反応させた。水を加えて過剰の無水酢酸を酢酸へと分解し、エタノール性KOHを用いて逆滴定した。ヒドロキシル価は、1gの物質をアセチル化したときに結合される酢酸量と等価のKOHをmgで表した量であると理解される。
【0217】
アミン価の測定
酢酸中の過塩素酸(HClO4)は、一級、二級、及び三級アミン基だけではない窒素を含有する有機塩基のための好適な滴定剤であることが分かっている。酢酸等の酸溶媒は、有機弱塩基の測定における検査(良好な溶解性、プロトン供与性酸溶媒)に合格している。シクロヘキサン、ジオキサン、クロロベンゼン、アセトン、及びメチルエチルケトン等の不活性溶媒の添加により、非常に弱い塩基の滴定を改良することができる。
【0218】
R-NH2+HClO4→R-NH3
++ClO4
-
【0219】
酸無水物価の測定
無水物基を、過剰の一級アミンと反応させてカルボン酸及びアミドを形成させた。次いで、過剰の一級アミンを、イソプロパノール性塩酸で逆滴定した。
【0220】
【0221】
DSC測定
この試験方法は、特定の条件下で融点及び結晶化挙動が検出可能である共重合生成物に適用可能である。DSC Q2000(TA Instruments)にてマニュアル及びメーカーの指示書に従い、カバー付きアルミニウムるつぼ、マイクロスケール、及びプラテンプレスを用いて測定を行った。サンプルの最初の重量は、5~15mgの間で選択すべきである。よりハンドリング性をよくするため、サンプルを融解させて、アルミニウムるつぼ中に精秤した。るつぼを、プレスを用いて有孔アルミニウム蓋で密閉し、サンプルプレートに挿入した。10℃/分の加熱速度にて測定を行った。
【0222】
2つの測定サイクル(加熱及び冷却)をプロットし、1つのダイヤグラムで一緒に分析した。横軸に温度を、縦軸に加熱フローを示した。重畳信号が認められた場合、それぞれのピーク最大値が読み取り可能な方法で評価した。
【0223】
NMR測定
Bruker DPX300にて300MHZ(1H)又は75MHZ(13C)でNMR測定を行った。使用された溶媒は、重クロロホルム(CDCl3)及び重ジメチルスルホキシド(DMSO-d6)であった。
【0224】
中間生成物の調製:第一工程
本発明による実施例
調製法1
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(500ml)に、成分Y(-X-H)q(表中では「成分Y-X1」と略記)及び触媒混合物を仕込み、110℃に加熱して触媒混合物を溶解させた。ラクトンSm(表中では「成分S」と略記)とエポキシドEm(表中では「成分E1-1」と略記)との混合物を、温度が120℃を超えないように、成分Y-X1に加えた。添加終了後、反応混合物を140℃に加熱し、その温度で撹拌してエポキシドを完全に反応させ(NMRにより制御)、非揮発性成分の含量は、>98%であった(ISO3251による非揮発性成分の測定)。
【0225】
【表1】
MPEG(数字)=メトキシポリエチレングリコール(分子量:g/mol)、CAPA=ε-カプロラクトン、2-EHGE=2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、C12-C14-アルキルGE=C12-C14アルキルグリシジルエーテル、DBN=1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン、AlCl
3=三塩化アルミニウム
【0226】
調製法2
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(500mL)にラクトンSm(表中では「成分S」と略記)及びエポキシドEm(表中では「成分E1-1」と略記)の混合物を仕込み、80℃に加熱した。次いでこの混合物に、ポリアミンY(-X-H)q(表中では「成分Y-X2」と略記)をゆっくりと加えた。添加終了後、混合物を140℃に加熱し、2時間撹拌した。次いで、反応混合物を40℃に冷却し、触媒を加えて、140℃まで昇温した。エポキシド及びラクトンモノマーの導入をNMRにより判定した。
【0227】
【表2】
PEI(数字)=ポリエチレンイミン(分子量)、VAL=δ-バレロラクトン、CAPA=ε-カプロラクトン、2-EHGE=2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、CGE=o-クレシルグリシジルエーテル、C12-C14-アルキルGE=C12-C14アルキルグリシジルエーテル、DBN=1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン、AlCl
3=三塩化アルミニウム
【0228】
調製法3
撹拌器及びサーモスタットを備えた圧力反応器中でアルコキシル化を行った。成分Y(-X-H)q(表中では「成分Y-X1」と略記)及び触媒を反応器中に導入し、反応器を閉じ、脱気し、及び窒素により不活性化した。反応器中の水(水酸化カリウムと開始剤として使用したアルコールとの反応において副生物として形成された)を減圧下で除去し、再度反応器を窒素により不活性化した。135℃に加熱した後、成分Sm(表中では「成分S」と略記)及び成分Em(表中では「成分E1-2」と略記)の混合物を、5バールの最大圧力を超えないような速度で計測しながら導入した。添加終了後、圧力が一定の状態となるまで135℃で反応させた後、室温まで冷却を行って、酸性カチオン交換樹脂(Sigma-Aldrichより購入したAmberlite(登録商標)IR-120(H))により脱アルカリ化を行った。
【0229】
【0230】
調製法4
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(500mL)に成分Y(-X-H)q(表中では「成分Y-X1」と略記)及び触媒を仕込み、80℃に加熱した。ラクトンSm(表中では「成分S」と略記)とオキセタンEm(表中では「成分E2」と略記)との混合物を成分Y(-X-H)q(表中では「成分Y-X1」と略記)に温度が85℃を超えないようにゆっくりと加えた。オキセタン及びラクトンモノマーの導入をNMRにより評価した。
【0231】
【0232】
酸官能性化合物Y(-X-W-(Z)c)qの調製:第二工程
調製法5
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(250mL)に、成分Y(-X-W-(H)c)q(表中では「成分Y-X1-W」と略記)を仕込み、50℃に加熱した。次いでこの混合物に、ポリリン酸(表中では「成分Z1」と略記)をゆっくりと加えた。添加終了後、混合物を80℃に加熱し、この温度で4時間撹拌した。酸価の測定により完成度を制御した。
【0233】
【0234】
調製法6
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(250mL)に、成分Y(-X-W-(H)c)q(表中では「成分Y-X2-W」と略記)及び無水物(表中では「成分Z2」と略記)を仕込んだ。混合物を110℃に加熱し、酸無水物価が0~3mgKOH/gとなるまでこの温度で撹拌した。
【0235】
【0236】
比較例(本発明によらない)
本発明に従わず調製された実施例には、(*)印を付す。
【0237】
調製法7
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(500mL)に、成分Y(-X-H)q(表中では「成分Y-X1」と略記)及び触媒混合物を仕込み、110℃に加熱した。次いで、エポキシドEm(表中では「成分E1-1」と略記)を温度が120℃を超えないようにゆっくりと加えた。添加終了後、反応混合物を140℃に加熱し、エポキシドが完全に反応するまで(NMRにより制御)この温度で撹拌した。次いで、ラクトンSm(表中では「成分S」と略記)をゆっくりと加え、混合物を非揮発性成分の含量が>98%(ISO3251に従い測定)となるまで、140℃で撹拌した。
【0238】
【表7】
MPEG(数字)=メトキシポリエチレングリコール(分子量)、CAPA=ε-カプロラクトン、2-EHGE=2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、DBN=1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン、AlCl
3=三塩化アルミニウム
【0239】
調製法8
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(500mL)に、エポキシドEm(表中では「成分E1-1」と略記)を仕込み、80℃に加熱した。次いで、ポリアミンY(-X-H)q(表中では「成分Y-X2」と略記)をこの混合物にゆっくりと加えた。添加終了後、140℃まで昇温し、混合物を2時間撹拌した。次いで、反応混合物を40℃に冷却し、触媒を加えて、140℃まで昇温した。反応混合物を、エポキシドが完全に反応するまで(NMRにより制御)、この温度で撹拌した。次いで、ラクトン(表中では「成分S」と略記)を140℃でゆっくりと加えた。エポキシド及びラクトンモノマーの導入をNMRにより判定した。
【0240】
【表8】
PEI(数字)=ポリエチレンイミン(分子量)、CAPA=ε-カプロラクトン、2-EHGE=2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、DBN=1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)ノナ-5-エン、AlCl
3=三塩化アルミニウム
【0241】
酸官能性化合物Y(-X-W-(Z)c)qの調製:第二工程
調製法9
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(250mL)に、成分Y(-X-W-(H)c)q(表中では「成分Y-X1-W」と略記)を仕込み、50℃に加熱した。次いで、ポリリン酸(表中では「成分Z1」と略記)をこの混合物にゆっくりと加えた。添加終了後、混合物を80℃に加熱し、この温度で4時間撹拌した。酸価の測定により完成度を制御した。
【0242】
【0243】
調製法10
凝縮器、KPG撹拌器、温度センサー、及び窒素ラインを備えたクリーン乾燥四つ口フラスコ(250mL)に、成分Y(-X-W-(H)c)q(表中では「成分Y-X2-W」と略記)及び無水物(表中では「成分Z2」と略記)を仕込んだ。混合物を110℃に加熱し、酸無水物価が0~3mgKOH/gとなるまでこの温度で撹拌した。
【0244】
【0245】
【0246】
表中のデータ(数値)は、対応する酸誘導体における原料の比率についての情報を提供する。(*)のマークが付されたサンプルは、ブロックポリマー(比較例)である。比較対象は、Y-X1-W10-Z1とY-X1-W25-Z1*、Y-X2-W02-Z2とY-X2-W16-Z2*、及びY-X2-W01-Z2とY-X2-W15-Z2*である。DSC測定(上記にて説明)により、ブロックポリマー(*)と対応するランダム型とを識別することが可能であり、ブロック構造(Y-X1-W25-Z1*、Y-X2-W16-Z2*、Y-X2-W15-Z2*)のDSCプロットは、対応するランダム構造(Y-X1-W10-Z1、Y-X2-W02-Z2、Y-X2-W01-Z2)のプロットと比較して、狭い(あまり広くない)溶融/結晶化ピークを示した。さらに、前記ブロック構造の結晶化温度は、対応するランダム構造よりも高い(表12参照)。
【0247】
【0248】
適用例1
適用試験に使用した原料:
Setal189XX65-ポリエステル樹脂、Allnex/Nuplexより購入
Sicotrans Red L2817-透明酸化鉄、BASFより購入
【0249】
加工方法1
ミルベースの調製
ミルベース製剤における顔料/結合剤比率及び添加剤添加量等のパラメータの変化は、顔料分散の品質及び安定化に膨大な影響を及ぼす。樹脂の量は、例えばミルベース及び最終塗料の、流動挙動/粘度、顔料の湿潤、貯蔵安定性に影響を与え得る。摩砕相において利用可能な最適量の湿潤及び分散用添加剤が存在する場合に限り、最良の顔料分散が達成できる。したがって、試験目的では、パラメータの変更によって系を多少なりとも「センシティブ」に調整することができる。試験される添加剤の十分な差別化を得るために、異なる量の湿潤及び分散用添加剤(表13参照)を有する顔料分散体を調製した。
【0250】
【0251】
製剤の詳細な組成を表14に示す。
【0252】
【0253】
ミルベースの調製のために、結合剤、湿潤及び分散用添加剤、及び溶媒(ポジション1-3)をガラス瓶(100mL)に充填してスパチュラを用いて均質化した。この手順の後、この混合物に顔料及びガラスビーズを加えて高速シェイカー(冷却システム付き分散機DAS A200-K(SYSTEM LAU))により、テフロンディスク(4,5cmΦ)を用い最大エネルギー入力(ステージ3=100%動力)で120分間分散した。その後、ガラスビーズをろ過(240μmペーパーフィルターを用いた)により除去した。
【0254】
ミルベース粘度の判定
ミルベース粘度は顔料分散体の効率/質に対するヒントを提供できる。そのため、室温(RT)で1日保存後、室温で3日保存後のミルベースの粘度を測定した。
【0255】
サンプルの粘度を判定するため下記の装置及びパラメータを使用した:Rheologica Stresstech(回転レオメータ、コーン/プレート)、コーン(25mm/1°)、せん断速度0~1000(1/s)、23℃(DIN EN ISO2884-1に準拠)。
【0256】
結果
適用試験の結果を下記(表15~16)に示す。
【0257】
【0258】
【0259】
試験されたミルベースの変形形態タイプ1及びタイプ2において、統計的ポリマーである添加剤Y-X1-W10-Z1は通常、対応するブロック構造Y-X1-W25-Z1*と比較して、より良好な粘度低下を示した。さらに、本発明添加剤Y-X1-W10-Z1は、対応するブロック構造Y-X1-W25-Z1*と比較して、より少ない添加剤添加量(タイプ2)で、粘度低下において明らかな有利性を示した。
【0260】
適用例2
適用試験に使用された原料
Ebecryl4381:UV/EB硬化性樹脂-30%のジプロピレングリコールジアクリレート(DPGDA)に希釈された不飽和ポリエステル樹脂、Allnexより購入
Laromer DPGDA:ジプロピレングリコールジアクリレート、BASFより購入
Irgacure1173:反応性及び放射線硬化接着剤において使用される2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、IGMより購入
ACEMATT HK440:未処理シリカ系艶消し剤、Evonikより購入
BYK-088:溶剤系のための消泡剤、BYK Chemie GmbHより購入
BYK-306:環境硬化プラスチック系及び溶剤型コーティング系のためのシリコーン含有表面添加剤、BYK Chemie GmbHより購入
BYK-350:溶剤系及び無溶剤系のためのアクリル系レベリング添加剤、BYK Chemie GmbHより購入
【0261】
加工方法2
UVマットベースの調製
高品質UVマットベースを得るためには、艶消し剤の十分な湿潤及び分散が重要である。下記の性質により、使用される添加剤の効果が示される:
光沢の減少(低い光沢が好ましい)、表面外観(平滑で微細なものが好ましい)、及び塗料粘度(低粘度/流動性が好ましい)。
【0262】
製剤の詳しい組成を表17に示す。
【0263】
【0264】
UVマットベースを調製するために、ポジション1-3に示した原料をディソルバー(1865rpm)により短時間混合し、次いで、この混合物にポジション4-6に示した添加剤を加え、1865rpmにてさらに3分間撹拌した。その後この混合物に、湿潤及び分散用添加剤(ポジション7)及び溶媒(PMA=1-メトキシ-2-プロピルアセテート)を撹拌しながら加えた。最後に、艶消し剤(ポジション8)を加え、混合物全体を1865rpmにて10分間撹拌した。
【0265】
最終塗料を黒色PMMA(ポリメチルメタクリレート)パネル上に塗布し、IST Metz GmbH製の水銀UVランプ(スピード:5m/分、100%強度)を用いて硬化した。
【0266】
マッティング効果(光沢低下の測定)
Micro tri gloss(BYK-Gardner)を用いた20°/60°/85°での光沢測定。
【0267】
適用試験の結果を下記(表18~19)に示す。
【0268】
【0269】
【0270】
試験された塗料系において、統計的ポリマーに基づく添加剤Y-X2-W02-Z2及びY-X2-W01-Z2は、対応するブロック共重合体Y-X2-W16-Z2*及びY-X2-W15-Z2*と比較して良好なマッティング性及び良好な粘度低下をもたらす。このことは、本発明による酸官能性化合物の高い分散品質を示している。