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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 226/06 20060101AFI20220107BHJP
   C08F 216/14 20060101ALI20220107BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20220107BHJP
   C08F 226/10 20060101ALI20220107BHJP
   C11D 3/37 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08F226/06
C08F216/14
C08F220/36
C08F226/10
C11D3/37
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020516151
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2019014226
(87)【国際公開番号】W WO2019208111
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2018086824
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018188233
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】竹知 亮輔
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】ソ連国特許発明第01616928(SU,A)
【文献】国際公開第2012/033183(WO,A1)
【文献】特表2013-538877(JP,A)
【文献】特表平08-505166(JP,A)
【文献】特表2015-522697(JP,A)
【文献】特開2007-231261(JP,A)
【文献】LEE, V. A. et al.,Metal complexes of polymers with amino acid residues. Formation, stability and controlled biological activity,Journal of Controlled Release,1990年,14,61-70,DOI:10.1016/0168-3659(90)90061-W
【文献】KLEIN, Joachim et al.,New amphiphilic copolymers derived from hydrophobically modified vinyl saccharides,Canadian Journal of Chemistry,1995年,73,1941-1947,DOI:10.1139/v95-239
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 226/06
C08F 216/14
C08F 220/36
C08F 226/10
C11D 3/37
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と下記式(1)、(1’)又は(1’’);
【化1】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH又はCHCH 基を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)のいずれかで表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、
該構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、1~99質量%であることを特徴とする共重合体。
【請求項2】
N-ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と下記式(1);
【化2】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)で表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、
該構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、1~99質量%であることを特徴とする共重合体
【請求項3】
前記N-ビニルラクタム系単量体(A)がビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の共重合体。
【請求項4】
該構造単位(a)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、50~99質量%であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の共重合体。
【請求項5】
前記単量体(B)は、下記式(1’)又は(1’’);
【化3】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH又はCHCH 基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。)のいずれかで表される単量体であることを特徴とする請求項1、3、4のいずれかに記載の共重合体。
【請求項6】
前記N-ビニルラクタム系単量体(A)及び単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、10質量%未満であることを特徴とする請求項1~5のいずれかに記載の共重合体。
【請求項7】
前記式(1)、(1’)又は(1’’)において、nが0~9の数であることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の共重合体。
【請求項8】
N-ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と下記式(1)、(1’)又は(1’’);
【化4】
(式中、R は、水素原子又はCH 基を表す。R は、CH 基、CH CH 基又は直接結合を表す。R 、R 及びR は、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R ~R のうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。R 及びR は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R 及びR が結合し、環状構造を形成していてもよい。Y は、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y -O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。X は、カウンターアニオンを表す。)のいずれかで表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、
該構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、1~99質量%である共重合体を含むことを特徴とする移染防止剤。
【請求項9】
N-ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と下記式(1)、(1’)又は(1’’);
【化5】
(式中、R は、水素原子又はCH 基を表す。R は、CH 基、CH CH 基又は直接結合を表す。R 、R 及びR は、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R ~R のうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。R 及びR は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R 及びR が結合し、環状構造を形成していてもよい。Y は、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y -O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。X は、カウンターアニオンを表す。)のいずれかで表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、
該構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、1~99質量%である共重合体と該共重合体以外の洗剤用添加剤とを含むことを特徴とする洗剤組成物。
【請求項10】
共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、N-ビニルラクタム系単量体(A)と下記式(1)、(1’)又は(1’’);
【化6】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH又はCHCH 基を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)のいずれかで表される単量体(B)とを含む単量体成分を重合させる工程を含み、
該単量体成分中の単量体(B)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、1~99質量%であることを特徴とする共重合体の製造方法。
【請求項11】
共重合体を製造する方法であって、
該製造方法は、N-ビニルラクタム系単量体(A)と下記式(1);
【化7】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)で表される単量体(B)とを含む単量体成分を重合させる工程を含み、
該単量体成分中の単量体(B)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、1~99質量%であることを特徴とする共重合体の製造方法
【請求項12】
前記N-ビニルラクタム系単量体(A)がビニルピロリドンであることを特徴とする請求項10又は11に記載の共重合体の製造方法。
【請求項13】
前記単量体成分中のN-ビニルラクタム系単量体(A)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、50~99質量%であることを特徴とする請求項10~12のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項14】
前記単量体(B)は、下記式(1’)又は(1’’);
【化8】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH又はCHCH 基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の炭化水素基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。)のいずれかで表される単量体であることを特徴とする請求項10、12、13のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項15】
前記単量体成分中のN-ビニルラクタム系単量体(A)及び単量体(B)以外のその他の単量体(E)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、10質量%未満であることを特徴とする請求項10~14のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記式(1)、(1’)又は(1’’)において、nが0~9の数であることを特徴とする請求項10~15のいずれかに記載の共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体及びその製造方法に関する。より詳しくは、移染防止剤等の洗剤用途に有用な共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣類等に用いられる洗剤には、洗剤の洗浄効果を向上させることを目的として、ゼオライト、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸系共重合体等の洗剤ビルダー(洗剤助剤)を配合することが行われている。このような洗剤ビルダーとして用いられる重合体について、例えば特許文献1には、所定の構造で表されるカチオン性基含有単量体(A)に由来する構造単位(a)と、カルボキシル基含有単量体(B)に由来する構造単位(b)とを必須とする両性重合体であって、該両性重合体は、該両性重合体を形成する全単量体に由来する構造単位の総量100質量%に対して、構造単位(a)を1~99質量%含み、構造単位(b)を1~99質量%含むことを特徴とする両性重合体が開示されている。
【0003】
また、衣類等の洗濯の際には、衣類等に含まれる染料が染み出し、他の部分に染着することがある。これを防止する技術として、ポリマー等、種々の添加剤も開発されている。このような添加剤に関して、例えば特許文献2には、次の成分:(a)1-ビニルピロリドン、特定の構造で示される1-ビニルイミダゾール、1-ビニルイミダゾールの混合物ならびに1-ビニルピロリドンおよび/または特定の構造の1-ビニルイミダゾールからなる混合物(これらは20重量%まで他のモノエチレン性不飽和モノマーを含有する)20~95重量%および(b)少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合および/または少なくとも1つのメルカプト基を分子中に含有する非水溶性ポリマー5~80重量%からなる混合物のラジカル開始共重合により得られたコポリマーが開示されている。
特許文献3には、特定の構造を有する化合物(A)を含む水溶性単量体用中間体含有組成物であって、該組成物は、特定の構造を有する化合物(B)を特定量含む水溶性単量体用中間体含有組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2013-538877号公報
【文献】特表平8-505166号公報
【文献】特開2011-137135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のとおり、特許文献2及び3には、ビニルピロリドンを原料とする重合体の色移り防止能について報告されている。しかしながら、例えば洗剤用途においては、種々の他の添加剤と混合されることとなるため、併用する添加剤等に応じて移染防止能を発揮する添加剤の種類を選択できるよう、更なる重合体を開発する余地があった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、移染防止能に優れる重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、移染防止剤として用いられる重合体について種々検討したところ、N-ビニルラクタム系単量体とアミノ基、第4級アンモニウム基又はアミンオキシド基のいずれかを有する所定の構造の単量体とを所定の割合で共重合させた共重合体が移染防止能に優れることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、N-ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と下記式(1)、(1’)又は(1’’);
【0009】
【化1】
【0010】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)のいずれかで表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、上記構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、1~99質量%である共重合体である。
【0011】
上記N-ビニルラクタム系単量体(A)がビニルピロリドンであることが好ましい。
【0012】
上記構造単位(a)の含有割合は、全構造単位100質量%に対して、50~99質量%であることが好ましい。
【0013】
上記単量体(B)は、下記式(1);
【0014】
【化2】
【0015】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)で表される単量体であることが好ましい。
【0016】
上記単量体(B)は、下記式(1’)又は(1’’);
【0017】
【化3】
【0018】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。)で表される単量体であることが好ましい。
【0019】
上記N-ビニルラクタム系単量体(A)及び単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、10質量%未満であることが好ましい。
【0020】
上記式(1)、(1’)又は(1’’)において、nが0~9の数であることが好ましい。
【0021】
本発明はまた、上記共重合体を含む移染防止剤でもある。
本発明はまた、上記共重合体と該共重合体以外の洗剤用添加剤とを含む洗剤組成物でもある。
【0022】
本発明は更に、共重合体を製造する方法であって、上記製造方法は、N-ビニルラクタム系単量体(A)と下記式(1)、(1’)又は(1’’);
【0023】
【化4】
【0024】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)のいずれかで表される単量体(B)とを含む単量体成分を重合させる工程を含み、上記単量体成分中の単量体(B)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、1~99質量%である共重合体の製造方法でもある。
【0025】
上記N-ビニルラクタム系単量体(A)がビニルピロリドンであることが好ましい。
【0026】
上記単量体成分中のN-ビニルラクタム系単量体(A)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、50~99質量%であることが好ましい。
【0027】
上記単量体(B)は、下記式(1);
【0028】
【化5】
【0029】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。Xは、カウンターアニオンを表す。)で表される単量体であることが好ましい。
【0030】
上記単量体(B)は、下記式(1’)又は(1’’);
【0031】
【化6】
【0032】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であって、0~100の数を表す。)で表される単量体であることが好ましい。
【0033】
上記単量体成分中のN-ビニルラクタム系単量体(A)及び単量体(B)以外のその他の単量体(E)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、10質量%未満であることが好ましい。
【0034】
上記式(1)、(1’)又は(1’’)において、nが0~9の数であることが好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明の共重合体は、上述の構成よりなり、移染防止能に優れるため、移染防止剤等の洗剤用途等に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に本発明の好ましい形態について具体的に説明するが、本発明は以下の記載のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下に記載される本発明の個々の好ましい形態を2又は3以上組み合わせた形態も、本発明の好ましい形態に該当する。
【0037】
≪共重合体≫
本発明の共重合体は、N-ビニルラクタム系単量体(A)由来の構造単位(a)と上記式(1)、(1’)又は(1’’)のいずれかで表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有し、構造単位(b)の含有割合が、全構造単位100質量%に対して、1~99質量%である。本発明の共重合体は、このような構造を有することにより染料に似た構造となるため、染料との相互作用が高まり、吸着性が向上し、移染防止能に優れるものと考えられる。
本発明の共重合体は、構造単位(b)として式(1)で表される単量体(B)に由来するもの、式(1’)で表される単量体(B)に由来するもの、及び、式(1’’)で表される単量体(B)に由来するもののうち少なくとも1つの構造単位を有するものであればよい。すなわち、これらのうち1つ又は2つ有していてもよく、これら3つすべて有していてもよい。上記共重合体は、式(1)~(1’’)の中でも、式(1)又は(1’)で表される単量体(B)由来の構造単位(b)を有することが好ましい。より好ましくは式(1’)で表される単量体(B)由来の構造単位(b)を有することである。
【0038】
上記共重合体は、構造単位(a)の含有割合が、全構造単位(共重合体)100質量%に対して1~99質量%であることが好ましい。これにより、共重合体の移染防止能がより向上することとなる。上記範囲の下限値は、より好ましくは10質量%であり、更に好ましくは20質量%であり、一層好ましくは30質量%であり、より一層好ましくは50質量%であり、特に好ましくは70質量%である。上記範囲の上限値は、より好ましくは98質量%であり、更に好ましくは97質量%であり、一層好ましくは、96質量%であり、特に好ましくは95質量%である。
【0039】
上記共重合体は、構造単位(b)の含有割合が、全構造単位(共重合体)100質量%に対して、2~90質量%であることが好ましい。これにより、共重合体の移染防止能がより向上することとなる。上記範囲の下限値は、より好ましくは3質量%であり、更に好ましくは4質量%であり、特に好ましくは5質量%である。上記範囲の上限値は、より好ましくは80質量%であり、更に好ましくは70質量%であり、一層好ましくは50質量%であり、特に好ましくは30質量%である。
【0040】
上記共重合体は、N-ビニルラクタム系単量体(A)及び単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよく、構造単位(e)の割合としては、共重合体100質量%に対して0~10質量%であることが好ましい。より好ましくは10質量%未満であり、更に好ましくは0~9質量%であり、一層好ましくは0~5質量%であり、更に一層好ましくは0~3質量%であり、最も好ましくは0質量%である。
上記共重合体において単量体(B)が式(1)で表される単量体であって、構造単位(e)の割合が全構造単位100質量%に対して10質量%未満である形態は、本発明の好ましい実施形態の1つである。
【0041】
上記共重合体は、重量平均分子量が1,000~1,000,000であることが好ましい。
これにより本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となる。
重量平均分子量としてより好ましくは2,000~800,000であり、更に好ましくは3,000~600,000であり、一層好ましくは4,000~400,000であり、より一層好ましくは5,000~200,000であり、更に一層好ましくは5,000~100,000であり、特に好ましくは5,000~50,000である。
上記重量平均分子量は、実施例に記載の方法により測定することができる。
【0042】
<N-ビニルラクタム系単量体(A)>
上記N-ビニルラクタム系単量体(A)は、環状N-ビニルラクタム構造を有する単量体であれば特に制限されないが、下記式(2);
【0043】
【化7】
【0044】
(式中、R、R、R、R10は、同一又は異なって、水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1~10のアルキル基を表す。pは、0~4の整数を表す。qは、1~3の整数を表す。)で表される構造であることが好ましい。
上記R~R10におけるアルキル基の炭素数としては、1~6が好ましく、より好ましくは1~4である。上記アルキル基として更に好ましくはメチル基、エチル基であり、特に好ましくはメチル基である。上記R~R10における置換基としては、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホン酸基及びこれらのエステルや塩;アミノ基、水酸基等が挙げられる。R~Rとしては水素原子であることが好ましい。R10としては水素原子又はメチル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
pとしては、0~2の整数であることが好ましく、より好ましくは0~1の整数であり、最も好ましくは0である。
qとしては、1又は2であることが好ましく、より好ましくは1である。
【0045】
上記式(2)で表される化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-5-メチルピロリドン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルカプロラクタム、1-(2-プロペニル)-2-ピロリドン等が挙げられ、1種又は2種以上を用いることができる。N-ビニルラクタムとしては、ピロリドン環を有する不飽和単量体が好ましい。より好ましくはN-ビニルピロリドンである。
【0046】
<単量体(B)>
上記単量体(B)は、上記式(1)、(1’)又は(1’’)のいずれかで表される単量体である。
式(1)~(1’’)において、Rが直接結合である場合とは、上記式(1)~(1’’)のHC=C(R)-R-O-がHC=C(R)-O-で表されることを意味する。
C=C(R)-R-は、RがCH基、RがCH基の場合はメタリル基、RがCH基、RがCHCH基の場合はイソプレニル基、RがCH基、Rが直接結合の場合はイソプロペニル基、Rが水素原子、RがCH基の場合はアリル基、Rが水素原子、RがCHCH基の場合はブテニル基、Rが水素原子、Rが直接結合の場合はビニル基である。
【0047】
上記単量体(B)における重合可能な炭素-炭素二重結合を有する基、すなわちHC=C(R)-R-としては、イソプレニル基、メタリル基、アリル基、ビニル基が好ましい。重合体の安定性の観点から、イソプレニル基、メタリル基、アリル基がより好ましく、アリル基が特に好ましい。
【0048】
上記式(1)又は(1’’)におけるR、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。上記式(1’)におけるR及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。炭素数1~20の有機基は全体として炭素数が1~20であれば限定されないが、アルキル基、アリール基、アルケニル基等の炭化水素基であることが好ましい。当該アルキル基、アリール基、アルケニル基は、無置換の基であっても、水素原子の1又は2以上が他の有機基によって置換された基であっても、炭素原子の1又は2以上が他の原子に置換された基であっても良い。この場合の他の有機基としては、アルキル基(R、R又はRで表される有機基がアルキル基である場合には、置換後の有機基は全体として無置換のアルキル基に該当する。)、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、水酸基、アシル基、エーテル基、アミド基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等が挙げられる。中でも好ましくはアルキル基である。上記他の原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子等が挙げられる。中でも好ましくは窒素原子である。
【0049】
上記式(1)~(1’’)におけるR、R、R、R及びRの炭素数は、1~15が好ましく、1~10がより好ましく、1~8が更に好ましく、1~6が一層好ましく、1~4が特に好ましい。炭素数が上記好ましい範囲であれば、重合体の移染防止能がより向上する。また、高い収率で単量体(B)を製造することができるため、単量体の重合性及び得られる重合体の純度が向上する。
、R、R、R及びRとして具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、オクチル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、2-エチルヘキシル基等のアルキル基;ブチレン基、オクチレン基、ノニレン基等のアルケニル基;フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、2,3-若しくは2,4-キシリル基、メシチル基、ナフチル基等のアリール基、又は、これらの水素原子の一部がアルコキシ基、カルボキシエステル基、アミノ基、アミド基、水酸基、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、スルホン酸基、スルホン酸基の塩等で置換された基、例えばヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等が挙げられる。これらの中でも、アルキル基、アリール基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、フェニル基、ベンジル基である。
【0050】
上記式(1)におけるR~Rのうちいずれか2つ、上記式(1’)におけるR及びR、又は、式(1’’)におけるR及びRは、夫々結合して環状構造を形成していてもよい。この場合、環状構造が安定する点で、窒素原子と、式(1)におけるR~Rのうちいずれか2つ、式(1’)におけるR及びR、式(1’’)におけるR及びRとで形成される環状構造は3~7員環であることが好ましい。すなわち、式(1)におけるR~Rのうちいずれか2つの合計(又は、式(1’)におけるR及びRの合計、若しくは、式(1’’)におけるR及びRの合計)の炭素数が2~6であることが好ましい。
上記環状構造としては窒素原子を含む複素環であれば特に制限されず、式(1)~(1’’)に記載の窒素原子以外に更に窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子等のヘテロ原子を有していてもよい。また、上記環状構造は、置換基を有していてもよく、すなわち、環状構造が有する水素原子の1又は2以上が他の有機基によって置換された構造であってもよい。他の有機基としては上述のとおりである。
上記環状構造として好ましくはピラゾール、イミダゾール、ピロール等であり、より好ましくは、ピラゾール、イミダゾール等の2つの窒素原子を有する複素環である。
【0051】
上記式(1)~(1’’)において、Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基であるが、単量体(B)の重合性を良好にする観点から、Yは炭素数2~4のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~3のアルキレン基であることがより好ましい。具体的にはエチレン基、プロピレン基、ブチレン基等の炭素数2~4のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、プロピレン基等の炭素数2~3のアルキレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基としては、1種又は2種以上を用いることができるが、2種以上を用いる場合は、-Y-O-で表されるオキシアルキレン基は、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの付加形態であってもよい。
上記式(1)~(1’’)において、nはオキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であり、0~100の数を表す。nとしては0~80が好ましい。これにより重合体の移染防止能がより向上する。nとしては0~50がより好ましく、0~10が更に好ましく、一層好ましくは0~9であり、特に好ましくは0~5であり、最も好ましくはnが0である。
【0052】
上記単量体(B)が四級化した窒素原子を有する場合、四級化した窒素原子近傍には、カウンターアニオンXが存在することになる。カウンターアニオンXの種類は特に限定されないが、ハロゲン原子のイオン、アルキル硫酸イオン、有機酸のイオンが好ましい。ハロゲン原子のイオンとしては、具体的には、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子等のイオンが挙げられる。中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子のイオンが好ましく、塩素原子のイオンがより好ましい。
アルキル硫酸イオンとしては、具体的には、メチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン等が挙げられる。中でも、メチル硫酸イオンが好ましい。
上記有機酸のイオンとしては、酢酸イオン(CHCOO)、プロピオン酸イオン(CHCHCOO)が好ましい。
【0053】
上記式(1)~(1’’)においてnが0である単量体(B)として、具体的には、1-アリルオキシ-3-ジメチルアミノ-2-オール、1-アリルオキシ-3-ジエチルアミノ-2-オール、1-アリルオキシ-3-ジプロピルアミノ-2-オール、1-アリルオキシ-3-ジブチルアミノ-2-オール等の1-アリルオキシ-3-ジアルキルアミノ-2-オール;1-アリルオキシ-3-ジエタノールアミノ-2-オール等の1-アリルオキシ-3-ジアルカノールアミノ-2-オール;1-アリルオキシ-3-メチルベンジルアミノ-2-オール;等の炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体とアミン化合物との付加反応物及びこれに4級化剤を付加させたモノマー若しくはこれの塩酸、酢酸等の酸による中和物若しくはこれの過酸化水素、有機過酸、過硫酸、過カルボン酸等の過酸等による酸化物等が挙げられる。中でも好ましくは1-アリルオキシ-3-ジメチルアミノ-2-オール、1-アリルオキシ-3-ジエタノールアミノ-2-オール及びこれらの酸による中和物及び4級化物であり、より好ましくは1-アリルオキシ-3-ジメチルアミノ-2-オールの4級化物である。
【0054】
上記炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、イソプレニルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル等が挙げられる。中でも好ましくは(メタ)アリルグリシジルエーテルであり、より好ましくはアリルグリシジルエーテルである。
【0055】
上記アミン化合物は、アミノ基を有し、炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体の環状エーテル構造と反応することができる限り特に制限されない。
上記アミン化合物の炭素数としては、1~24が好ましく、1~20がより好ましく、1~16が更に好ましく、1~10が特に好ましい。
上記アミン化合物としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン塩が挙げられ、下記式(3)又は(4);
【0056】
【化8】
【0057】
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、炭素数1~20の有機基を表し、R~Rのうち2つが結合し、環状構造を形成していてもよい。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表し、R及びRが結合し、環状構造を形成していてもよい。Xは、カウンターアニオンを表す。)で表される化合物が好ましい。より好ましくは上記式(4)で表される化合物である。
上記R~R及びXは、上記式(1)又は(1’)におけるR~R及びXと同様である。
【0058】
第1級アミン、第2級アミンとしては、例えば、炭素数1~24の(ジ)アルキルアミン、炭素数1~24の(ジ)アルカノールアミン、炭素数1~24のアルキルアルカノールアミン、炭素数1~24のアルキルアリールアミン、炭素数1~24の環状アミン等が挙げられる。
第3級アミン塩としては炭素数1~24のトリアルキルアミン塩、炭素数1~24のトリアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0059】
炭素数1~24の(ジ)アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ステアリルアミン、シクロヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ペンチルアミン、ジペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、ジヘプチルアミン、オクチルアミン、ジオクチルアミン、ドデシルアミン、ジドデシルアミン等が好ましい。
炭素数1~24の(ジ)アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、ジブタノールアミン、ヘキサノールアミン等が好ましい。
炭素数1~24のアルキルアルカノールアミンとしては、メチルエタノールアミン等が好ましい。
炭素数1~24のアルキルアリールアミンとしては、メチルベンジルアミン、エチルベンジルアミン等が好ましい。
炭素数1~24の環状アミンとしては、モルホリン、ピロール、ピラゾール、イミダゾール等が好ましい。
炭素数1~24のトリアルキルアミン塩としては、トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩等が好ましい。
炭素数1~24のトリアルカノールアミン塩としては、トリメタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等が好ましい。
【0060】
上記炭素数2~8の環状エーテル含有基を有する不飽和単量体とアミン化合物との反応は、無触媒で行っても良いが、三フッ化ホウ素等の酸性触媒や、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の塩基性触媒の存在下で行っても構わない。
【0061】
上記式(1)においてnが1~100である単量体(B)は、下記(1)~(4)の方法で製造することが好ましい。当該方法によれば、高い収率で単量体(B)を製造することができる。また、上記式(1’)においてnが1~100である単量体(B)は、下記工程A及び工程Cにより製造することが好ましい。また、上記式(1’’)においてnが1~100である単量体(B)は、下記工程A及び工程Cにより得られた反応物に対して、過酸化水素、有機過酸、過硫酸、過カルボン酸等の過酸等により酸化することにより製造することができる。製造方法(1)は、(I)下記式(5);
【0062】
【化9】
【0063】
(式中、Rは、水素原子又はCH基を表す。Rは、CH基、CHCH基又は直接結合を表す。Yは、同一若しくは異なって、炭素数2~20のアルキレン基を表す。nはオキシアルキレン基(-Y-O-)の平均付加モル数であり、0~100の数を表す。)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、(II)工程Aで得られた反応物と第3級アミン塩を反応させる工程(工程B)とを含む方法である。
上記式(5)におけるR、R、Y及びnは、上記式(1)~(1’’)におけるR、R、Y及びnと同様である。
【0064】
製造方法(2)は、(I)上記式(5)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとアルカリ化合物とを反応させる工程(工程A)と、(II)工程Aで得られた反応物と第2級アミンとを反応させる工程(工程C)と、(III)工程Cで得られた反応物と四級化剤とを反応させる工程(工程D)とを含む方法である。
【0065】
製造方法(3)は、(I)上記式(5)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とエピハロヒドリンとを触媒存在下で反応させる工程(工程E)と、(II)工程Eで得られた反応物と第3級アミン塩とを反応させる工程(工程F)とを含む方法である。
【0066】
製造方法(4)は、上記式(5)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体とグリシジルトリアルキルアンモニウム塩とを反応させる工程(工程G)を含む方法である。
【0067】
上記式(5)で表されるポリアルキレングリコール鎖含有単量体としては、アルキレングリコールモノビニルエーテル、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール又はそれらのアルキレンオキシド付加構造を有するアルコールに、アルキレンオキシドを公知の方法により付加させて製造したものを使用することができる。これにより、得られるカチオン性基含有単量体(A)の純度を高くすることができる。
【0068】
上記製造方法(1)~(3)において用いられる第2級アミン、第3級アミン塩は、上述のアミン化合物における具体例及び好ましい例と同様である。
上記製造方法(1)~(3)において用いられるエピハロヒドリンとして、具体的には、エピクロルヒドリン、エピブロモヒドリン、エピヨードヒドリン等が挙げられる。中でも、工業的に安価なことから、エピクロルヒドリンが好ましい。
上記製造方法(4)において用いられるグリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、下記式(6);
【0069】
【化10】
【0070】
(式中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1~20の有機基を表す。RとRとは、結合して環状構造を形成してもよい。X’はハロゲン原子のイオンを表す。)で表されるものが好ましい。
上記式(6)におけるR、R及びRは、上記式(1)におけるR、R及びRと同様である。
上記グリシジルトリアルキルアンモニウム塩としては、具体的には、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリエチルアンモニウムクロリド、グリシジルトリメチルアンモニウムブロミド、グリシジルトリエチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。中でも、工業的に入手が容易なことから、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリドが好ましい。
上記製造方法(1)~(4)における各工程は、下記反応式で表される。
【0071】
【化11】
【0072】
上記製造方法(1)~(4)における各工程における原料の使用量、反応条件等は特に制限されないが、例えば特許文献1に記載の方法を参照することができる。
【0073】
<その他の単量体(E)>
本発明の共重合体は、ビニルラクタム系単量体(A)及び単量体(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。
その他の単量体(E)としては、例えば、(i)アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和モノカルボン酸及びこれらの塩;(ii)フマル酸、マレイン酸、メチレングルタル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びこれらの塩(一塩であっても二塩であっても良い);(iii)2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸等の(ポリ)アルキレングリコール含有不飽和スルホン酸、3-(メタ)アリルオキシ-3-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-(メタ)アリルオキシエチレンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、α-メチル-p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルスルファミン酸、(メタ)アリルスルホン酸、イソプレンスルホン酸、4-(アリルオキシ)ベンゼンスルホン酸、1-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸、1,1-ジメチル-2-プロペン-1-スルホン酸、3-ブテン-1-スルホン酸、1-ブテン-3-スルホン酸、2-アクリルアミド-1-メチルプロパンスルホン酸、2-アクリルアミドプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-n-ブタンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-フェニルプロパンスルホン酸、2-((メタ)アクリロイルオキシ)エタンスルホン酸等の不飽和スルホン酸及びこれらの塩;(iv)ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アリルオキシ-1,2-ジヒドロキシプロパン、(メタ)アリルアルコール、イソプレノール等の不飽和アルコール及びこれらの水酸基にアルキレンオキシドを付加したアルキレンオキシド付加物;(v)N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等のN置換若しくは無置換の(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール及びこれらの塩またはこれらの4級化物等の不飽和アミン;
【0074】
(vi)(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル及びその誘導体;(vii)(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸iso-ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸エステル類;(viii)スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、ビニルナフタレン、フェニルマレイミド、ビニルアニリン等のビニルアリール単量体;(ix)エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;(x)アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等が挙げられ、これらは、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、上記(i)~(iii)、(v)における塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が例示される。上記(iv)、(ix)におけるアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等が例示され、炭素数1~20のアルキレンオキシドが好ましく、炭素数1~4のアルキレンオキシドがより好ましい。上記アルキレンオキシドの付加モル数としては、上記(iv)の化合物1モルあたり0~50モルが好ましく、0~20モルがより好ましく、上記(ix)の化合物1モルあたり1~50モルが好ましく、1~20モルがより好ましい。
【0075】
≪共重合体の製造方法≫
本発明の共重合体の製造方法は、特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は上述のとおりであり、各単量体の好ましい割合は、各構造単位の好ましい割合と同様である。
N-ビニルラクタム系単量体(A)と上記式(1)、(1’)又は(1’’)のいずれかで表される単量体(B)とを含む単量体成分を重合させる工程を含み、上記単量体成分中の単量体(B)の含有割合が、全単量体100質量%に対して、1~99質量%である共重合体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0076】
上記重合工程における、単量体成分の重合を開始する方法としては、特に制限されないが、例えば、重合開始剤を添加する方法、UVを照射する方法、熱を加える方法、光開始剤存在下に光を照射する方法等が挙げられる。
上記重合工程において、重合開始剤を用いることが好ましい。
上記重合開始剤としては、例えば、過酸化水素;過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、ジ-t-ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;アスコルビン酸と過酸化水素、過硫酸塩と金属塩等の、酸化剤と還元剤とを組み合わせてラジカルを発生させる酸化還元型開始剤等が好適である。これらの重合開始剤のうち、残存単量体が減少する傾向にあることから、過酸化水素、過硫酸塩、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物が最も好ましい。これらの重合開始剤は、単独で使用されてもよく、2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0077】
上記重合開始剤の使用量としては、単量体の使用量(N-ビニルラクタム系単量体(A)、単量体(B)及びその他の単量体(E)の合計の使用量)1モルに対して、0.1g以上、15g以下であることが好ましく、0.1g以上、12g以下であることがより好ましく、0.1g以上、10g以下であることが更に好ましい。
【0078】
上記重合工程においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いても良い。連鎖移動剤として、具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸等のチオール系連鎖移動剤;四塩化炭素、塩化メチレン等のハロゲン化物;イソプロピルアルコール、グリセリン等の、第2級アルコール;次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩)(これらの水和物を含む);亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸(塩);亜硫酸水素ナトリウム等の重亜硫酸(塩);亜ジチオン酸ナトリウム等の亜ジチオン酸(塩);ピロ亜硫酸カリウム等のピロ亜硫酸(塩)などが挙げられる。上記連鎖移動剤は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
連鎖移動剤の使用量としては、単量体(全単量体)の使用量1モルに対して、0g以上、30g以下であることが好ましく、0g以上、15g以下であることがより好ましい。
【0079】
上記重合工程において、溶剤(溶媒)を使用する場合、溶剤としては、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール(2-プロパノール)、n-ブチルアルコール、ジエチレングリコール等のアルコール類等から選ばれる1種または2種以上が例示される。溶剤としては、水が好ましい。
溶媒として水を用いることにより、重合反応後に溶媒を置換する工程を行わずに、洗剤用途等に用いることができる。
すなわち、重合工程は水溶液中で行われることが好ましい。
上記溶媒の使用量としては、単量体100質量%に対して40~1000質量%が好ましい。
【0080】
上記重合工程において、重合温度は、特に限定されるものではないが、比較的低温の方が共重合体の分子量が大きくなるので好ましく、60℃~100℃の範囲内であれば、重合率がより向上するので更に好ましい。尚、反応時間は、上記重合反応が完結するように、反応温度や、単量体成分、重合開始剤、及び、溶媒等の種類(性質)や組み合わせ、使用量等に応じて、適宜設定すればよい。
【0081】
≪本発明共重合体の用途≫
本発明の共重合体は、移染防止剤等の洗剤、洗剤用添加剤、スケール防止剤、各種無機物や有機物の分散剤、増粘剤、粘着剤、接着剤、表面コーティング剤、架橋剤、保湿剤等の用途に用いられることが好ましく、より好ましくは移染防止剤等の洗剤用途である。本発明の共重合体を移染防止剤等の洗剤用添加剤として使用する方法もまた本発明の1つである。
【0082】
<移染防止剤>
本発明はまた、本発明の共重合体を含む移染防止剤でもある。
本発明の共重合体が移染防止能を発揮することができる染料の種類は特に制限されず、衣類等の染色に通常用いられる染料であればよいが、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染染料、酸性媒染染料、分散染料、反応染料、蛍光増白染料等が挙げられる。
染料として好ましくは、直接染料、酸性染料等の水溶性の染料である。水溶性の染料は、洗濯時に色落ちしやすいため、本発明の技術的意義をより効果的に発揮することとなる。
【0083】
<洗剤組成物>
本発明の共重合体は、洗剤組成物(洗浄剤組成物)に用いることができる。すなわち、本発明は上記共重合体と該共重合体以外の洗剤用添加剤とを含む洗剤組成物でもある。
上記洗剤組成物は、好ましくは衣料用であり、洗濯洗剤等に用いられることが好ましい。
【0084】
上記洗剤組成物における上記共重合体の含有量は、洗剤組成物100質量%に対して、0.1~20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1~15質量%であり、更に好ましくは0.1~10質量%である。
【0085】
本発明の共重合体以外の洗剤用添加剤としては、界面活性剤や通常洗剤に用いられる添加剤であれば特に制限されず、洗剤分野において従来公知の知見が適宜参照されうる。
また、上記洗剤組成物は、粉末洗剤組成物であってもよいし、液体洗剤組成物であってもよい。
【0086】
界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤からなる群から選択される1種又は2種以上である。
【0087】
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸又はエステル塩、アルカンスルホン酸塩、飽和脂肪酸塩、不飽和脂肪酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アルケニルエーテルカルボン酸塩、アミノ酸型界面活性剤、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、アルキルリン酸エステル又はその塩、アルケニルリン酸エステル又はその塩等が好適である。これらのアニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0088】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、高級脂肪酸アルカノールアミド又はそのアルキレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグリコキシド、脂肪酸グリセリンモノエステル、アルキルアミンオキサイド等が好適である。これらのノニオン性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基には、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0089】
カチオン性界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等が好適である。また、両性界面活性剤としては、カルボキシル型両性界面活性剤、スルホベタイン型両性界面活性剤等が好適である。これらのカチオン性界面活性剤、両性界面活性剤におけるアルキル基、アルケニル基は、メチル基等のアルキル基が分岐していてもよい。
【0090】
上記界面活性剤の配合割合は、通常、洗剤組成物の全量に対して10~60質量%であり、好ましくは15~50質量%であり、更に好ましくは20~45質量%であり、特に好ましくは25~40質量%である。界面活性剤の配合割合が少なすぎると、十分な洗浄力を発揮できなくなる虞があり、界面活性剤の配合割合が多すぎると、経済性が低下する虞がある。
【実施例
【0091】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0092】
<重量平均分子量の測定条件(GPC)>
装置:東ソー社製高速GPC装置(HLC-8320GPC)
検出器:RI
カラム:昭和電工社製 SHODEX Asahipak GF-310-HQ、GF-710-HQ、GF-1G 7B
カラム温度:40℃
流速:0.5ml/min
検量線:GLサイエンス社製 Polyethylene Glycol,Polyethylene Oxide
溶離液:0.1N酢酸ナトリウム/アセトニトリル=3/1(質量比)
【0093】
<固形分の測定>
130℃に加熱したオーブンで共重合体(共重合体1.0gに水3.0gを加えたもの)を1時間放置して乾燥処理した。乾燥前後の質量変化から、固形分(%)と、揮発成分(%)を算出した。
【0094】
<移染防止能評価>
以下の方法により、移染防止能の測定を行った。移染防止能の評価においては、まず、液体洗剤配合物と2.0%重合体水溶液を調製した。25%ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム(製品名:エマール20C、花王社製)11.0gとポリオキシエチレンラウリルエーテル(製品名:エマルゲン108、花王社製)2.8gと16%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(製品名:ネオペレックスG-15、花王社製)17.2gとプロピレングリコール3gとオレイン酸ナトリウム1.2gとエタノール1gに純水を加えて50.0gとした後、撹拌し、液体洗剤配合物を調製した。上記2.0%重合体水溶液は、重合体を適量の水で希釈して固形分濃度2.0質量%に調製したものを用いた。次に、500mlビーカーに、調製した液体洗剤組成物0.6gと2.0%重合体水溶液0.3gに50ppmCaイオン硬度水500gを加えたのち、クロラゾールブラック0.005gを加えて撹拌した。前記の溶液に5cm×5cmの綿布(Testfabrics社製、Style460-6)1gを加え、25℃で15分間撹拌を行った。その後、得られた綿布を50ppm(Ca/Mg=3/1)硬度水500gにより15分間すすぎを行い、このすすぎ工程を再度繰り返すことで染色布を得た。この工程で得られた染色布と評価前の白色綿布のWB値を色差計(日本電色工業製、分光式色差計SE-6000)で測定することにより重合体の移染防止能を評価した。評価結果について、0%は、重合体を添加せずに洗浄した試験布と同じ色の強さを表し、100%は試験布が評価前の色の強さを維持していることを表す。すなわち、高い値ほど移染防止能が高いことを示している。
【0095】
<実施例1>
(単量体1の合成)
アリルグリシジルエーテル(以下、「AGE」とも称する。)のトリメチルアミン誘導体モノマー(AGE-TMA)の合成法を以下に述べる。
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製4つ口フラスコに、純水104.9g、トリメチルアミン塩酸塩191.1gを仕込み、攪拌しながら50℃まで昇温した。次に、AGE228.3gを120分かけて添加し、その後、2時間反応させ、80%AGE-TMAを得た。
【0096】
(共重合体1の合成)
流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水141.1gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、80℃に保持された重合反応系中に、N-ビニルピロリドン(以下、「NVP」とも称する。)を80.0g、80%AGE-TMAを11.1g、10%2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(以下、「10%V-50」とも称する。)を30.8g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては120分間、80%AGE-TMAについては90分間、10%V-50については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。滴下終了後、更に120分間、前記反応溶液を80℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度36%の重合体水溶液を得た。重合体(共重合体1)の重量平均分子量は12,300であった。また、移染防止能は53%であった。
【0097】
<実施例2>
(単量体2の合成)
AGEのジエタノールアミン誘導体モノマー(AGE-DEA)の合成法を以下に述べる。
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量1000mLのガラス製4つ口フラスコに、純水110.7g、ジエタノールアミン214.5gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。次に、AGE228.3gを60分かけて添加し、その後、5時間反応させ、80%AGE-DEAを得た。
【0098】
(共重合体2の合成)
流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水141.0gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、80℃に保持された重合反応系中に、NVPを80.0g、80%AGE-DEAを11.1g、10%V-50を30.7g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては120分間、80%AGE-DEAについては90分間、10%V-50については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。滴下終了後、更に120分間、前記反応溶液を80℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度35%の重合体水溶液を得た。重合体(共重合体2)の重量平均分子量は22,100であった。また、移染防止能は49%であった。
【0099】
<実施例3>
(単量体3の合成)
AGEのN-メチルベンジルアミン誘導体モノマー(AGE-MeBnA)の合成法を以下に述べる。
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量200mLのガラス製4つ口フラスコに、純水26.8g、N-メチルベンジルアミン42.4gを仕込み、攪拌しながら60℃まで昇温した。次に、AGE38.0gを120分かけて添加し、その後、5時間反応させた。得られた単量体を純水、塩酸で洗浄した後、酢酸エチルを用いて抽出した。水分を硫酸ナトリウムを用いて十分に除去し、硫酸ナトリウムをろ過で取り除くことによって90%AGE-MeBnAを得た。
【0100】
(共重合体3の合成)
流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水134.8gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、80℃に保持された重合反応系中に、NVPを80.0g、90%AGE-MeBnAを4.7g、10%V-50を29.5g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては120分間、90%AGE-MeBnAについては90分間、10%V-50については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。滴下終了後、更に120分間、前記反応溶液を80℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度35%の重合体水溶液を得た。重合体(共重合体3)の重量平均分子量は26,200であった。また、移染防止能は46%であった。
【0101】
<実施例4>
(単量体4の合成)
AGEのピラゾール誘導体モノマー(AGE-Py)の合成法を以下に述べる。
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量200mLのガラス製4つ口フラスコに、純水16.9g、ピラゾール25.3gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温した。次に、AGE42.4gを10分かけて添加し、その後、2時間反応させた。得られた単量体に含まれる水をロータリーエバポレーターで留去することによって100%AGE-Pyを得た。
【0102】
(共重合体4の合成)
還流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水65.2gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、80℃に保持された重合反応系中に、NVPを60.0g、25%AGE-Pyを20.7g、10%V-50を22.7g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、NVPについては180分間、25%AGE-Pyについては180分間、10%V-50については180分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。滴下終了後、更に60分間、前記反応溶液を80℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度42%の重合体水溶液を得た。重合体(共重合体4)の重量平均分子量は18,400であった。また、移染防止能は48%であった。
【0103】
<比較例1>
日本触媒社製の粉体製品ポリビニルピロリドン(PVP)K-30を用いて、移染防止能を評価した。移染防止能は37%であった。
【0104】
<比較例2>
(共重合体5の合成)
流冷却器、攪拌機(パドル翼)を備えた容量500mLのガラス製セパラブルフラスコに、純水99.0gを仕込み、攪拌しながら80℃まで昇温して重合反応系とした。次に、攪拌下、80℃に保持された重合反応系中に、80%アクリル酸(以下、80%AAとも称する。)を90.0g、80%AGE-TMAを10.1g、10%V-50を41.5g、それぞれ別々のノズルより滴下した。各溶液の滴下時間は、80%AAについては120分間、80%AGE-TMAについては90分間、10%V-50については120分間とした。また、各溶液の滴下速度は一定とし、各溶液の滴下は連続的に行った。滴下終了後、更に90分間、前記反応溶液を80℃に保持(熟成)して重合を終了した。このようにして、固形分濃度35%の重合体水溶液を得た。重合体(共重合体5)の重量平均分子量は31,400であった。共重合体5の重量平均分子量については、創和科学株式会社製 POLYACRYLIC ACID STANDARDにて検量線を作成し算出した。移染防止能は28%であった。
【0105】
実施例1~4及び比較例1、2における(共)重合体の移染防止能測定の結果を表1に示した。
【0106】
【表1】