(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】バイアス歯布および歯付き動力伝達ベルト
(51)【国際特許分類】
F16G 1/28 20060101AFI20220107BHJP
D03D 13/00 20060101ALI20220107BHJP
D02G 3/04 20060101ALI20220107BHJP
D02G 3/28 20060101ALI20220107BHJP
F16G 1/08 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
F16G1/28 G
D03D13/00
D02G3/04
D02G3/28
F16G1/08 D
(21)【出願番号】P 2020532733
(86)(22)【出願日】2018-11-02
(86)【国際出願番号】 US2018058933
(87)【国際公開番号】W WO2019118079
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-07-03
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ミン
(72)【発明者】
【氏名】ブランスデン,ナイジェル ピーター
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ガゴン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ショウン クシャン
(72)【発明者】
【氏名】デッカー,シンシア
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211084(JP,A)
【文献】特開平01-048918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 1/28
D03D 1/00
D03D 15/47
D03D 15/513
D03D 13/00
D02G 3/04
D02G 3/28
F16G 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達ベルト用のカバー帆布であって、
前記帆布は、縦糸および横糸から織られ、
前記縦糸および前記横糸は、それぞれ、第1のフィラメント糸および第2のフィラメント糸から撚り合わされており、
前記第1のフィラメント糸は、前記第2のフィラメント糸よりも抗張強度の高い繊維を含み、
前記帆布は、変形綾織りパターンで織られて
おり、
前記変形綾織りパターンは、1列以上の1/1または2/1の平織りと、1列以上の1/3または1/4または2/4の繻子織りが交互になって構成されているカバー帆布。
【請求項2】
前記縦糸および前記横糸が、それぞれ、1cmあたり1.0~5.0の範囲の上撚りで撚られている、請求項1に記載のカバー帆布。
【請求項3】
前記縦糸および前記横糸が、同一の組成を有する、請求項1に記載のカバー帆布。
【請求項4】
前記第1のフィラメント糸がアラミド繊維を含み、前記第2のフィラメント糸がナイロン繊維を含む、請求項
2に記載のカバー帆布。
【請求項5】
前記第1のフィラメント糸が、前記縦糸および前記横糸の全デニールの半分以上を占める、請求項
3に記載のカバー帆布。
【請求項6】
90°未満のバイアス角で斜めに配向された、請求項1に記載のカバー帆布。
【請求項7】
比較的平滑な面と比較的粗い面とを含む、請求項1に記載のカバー帆布。
【請求項8】
約80°のバイアス角で斜めに配向された、請求項1に記載のカバー帆布。
【請求項9】
歯付き動力伝達ベルトであって、
80°未満のバイアス角で配向した非伸縮性の縦糸および横糸から織られ、前記歯を覆うバイアス帆布を備え、
前記縦糸および前記横糸は、それぞれ、第1のフィラメント糸および第2のフィラメント糸から撚り合わされており、
前記第1のフィラメント糸は前記第2のフィラメント糸よりも高い抗張強度を有し、
前記帆布は変形綾織りパターンで織られて
おり、
前記変形綾織りパターンは、1列以上の1/1または2/1の平織りと、1列以上の1/3または1/4または2/4の繻子織りが交互になって構成されている歯付き動力伝達ベルト。
【請求項10】
前記バイアス帆布は、平織りと綾織りの交互の列で織られている、請求項
9に記載のベルト。
【請求項11】
前記縦糸および前記横糸が、それぞれ、1cmあたり1.0~5.0の範囲の上撚りで撚られている、請求項
9に記載のベルト。
【請求項12】
前記縦糸および前記横糸が、同一の組成を有する、請求項
9に記載のベルト。
【請求項13】
前記第1のフィラメント糸がアラミド繊維を含み、前記第2のフィラメント糸がナイロン繊維を含む、請求項
9に記載のベルト。
【請求項14】
前記第1のフィラメント糸が、前記縦糸および前記横糸の全デニールの半分以上を占める、請求項
13に記載のベルト。
【請求項15】
90°未満のバイアス角で斜めに配向された、請求項
9に記載のベルト。
【請求項16】
比較的平滑な面と比較的粗い面とを含む、請求項
9に記載のベルト。
【請求項17】
動力伝達ベルト用のカバー帆布であって、
前記帆布は、縦糸および横糸から織られ、
前記縦糸および前記横糸は、それぞれ、第1のフィラメント糸および第2のフィラメント糸から撚り合わされており、
前記第1のフィラメント糸は、前記第2のフィラメント糸よりも抗張強度の高い繊維を含み、
前記帆布は、変形綾織りパターンで織られており、
前記縦糸および前記横糸が、それぞれ、1cmあたり1.0~5.0の範囲の上撚りで撚られているカバー帆布。
【請求項18】
動力伝達ベルト用のカバー帆布であって、
前記帆布は、縦糸および横糸から織られ、
前記縦糸および前記横糸は、それぞれ、第1のフィラメント糸および第2のフィラメント糸から撚り合わされており、
前記第1のフィラメント糸は、前記第2のフィラメント糸よりも抗張強度の高い繊維を含み、
前記帆布は、変形綾織りパターンで織られており、
前記縦糸および前記横糸が、同一の組成を有し、
前記第1のフィラメント糸が、前記縦糸および前記横糸の全デニールの半分以上を占めるカバー帆布。
【請求項19】
歯付き動力伝達ベルトであって、
80°未満のバイアス角で配向した非伸縮性の縦糸および横糸から織られ、前記歯を覆うバイアス帆布を備え、
前記縦糸および前記横糸は、それぞれ、第1のフィラメント糸および第2のフィラメント糸から撚り合わされており、
前記第1のフィラメント糸は前記第2のフィラメント糸よりも高い抗張強度を有し、
前記帆布は変形綾織りパターンで織られており、
前記バイアス帆布は、平織りと綾織りの交互の列で織られている歯付き動力伝達ベルト。
【請求項20】
歯付き動力伝達ベルトであって、
80°未満のバイアス角で配向した非伸縮性の縦糸および横糸から織られ、前記歯を覆うバイアス帆布を備え、
前記縦糸および前記横糸は、それぞれ、第1のフィラメント糸および第2のフィラメント糸から撚り合わされており、
前記第1のフィラメント糸は前記第2のフィラメント糸よりも高い抗張強度を有し、
前記帆布は変形綾織りパターンで織られており、
前記縦糸および前記横糸が、それぞれ、1cmあたり1.0~5.0の範囲の上撚りで撚られている歯付き動力伝達ベルト。
【請求項21】
歯付き動力伝達ベルトであって、
80°未満のバイアス角で配向した非伸縮性の縦糸および横糸から織られ、前記歯を覆うバイアス帆布を備え、
前記縦糸および前記横糸は、それぞれ、第1のフィラメント糸および第2のフィラメント糸から撚り合わされており、
前記第1のフィラメント糸は前記第2のフィラメント糸よりも高い抗張強度を有し、
前記帆布は変形綾織りパターンで織られており、
前記第1のフィラメント糸がアラミド繊維を含み、前記第2のフィラメント糸がナイロン繊維を含み、
前記第1のフィラメント糸が、前記縦糸および前記横糸の全デニールの半分以上を占める歯付き動力伝達ベルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して歯付き動力伝達ベルトに関し、より詳細には、歯付きベルトの歯を覆うためのバイアス織の二成分非伸縮性帆布の使用に関するものであり、具体的には、縦糸と横糸がアラミド/ナイロン糸の混紡糸であり、織りが変形平織りである、歯カバー帆布のための斜めに配向された帆布に関する。
【0002】
歯付きベルトは、自動車エンジンのタイミングドライブ、および様々な産業用動力伝達アプリケーションで広く使用されている。歯付きベルトは、一般に、対応する溝付きプーリーまたはスプロケットと噛み合う、一連の突出した歯を有するエラストマー本体を含む。ベルト本体には、伸縮を制限し、歯のピッチを維持するために、抗張部材が埋め込まれている。歯を強化し、耐摩耗性を提供するために、歯カバーまたはジャケットが設けられている。ジャケットは、通常、カバー帆布に接着剤ディップ、カレンダーコート、ラミネート層などの1種以上の処理を施したものをベースにしている。
【0003】
米国特許第4,343,666号には、個々のベルトのジャケットを形成するために、円筒状の金型本体の周りに周方向に巻き付けられた一片の帆布から形成された歯ジャケット付きの歯付きベルトが開示されている。帆布は、平方織りであってもよく、配向されたものであってもよく、応力が緩和されてものであってもよく、また伸縮性があるものであってもよい。帆布の伸びは、帆布が過度の歪みや破断を生じることなく、溝の形状に完全に一致することを保証するために、少なくとも60%であることが好ましい。
【0004】
米国特許第2,519,590号には、縦糸および横糸が90°と180°の間の挟角で、ベルトの長手方向軸に対して47.5°と75°の間に配置された、バイアスカット帆布で覆われた動力伝達ベルトが開示されている。Vベルトのような、ゴム心全体が帆布で覆われているベルトが記載されている。
【0005】
米国特許第4,632,665号および米国特許第4,514,179号には、縦糸および横糸がそれぞれベルトの長手方向軸に対して30度から60度の間の角度をなすように、好ましくはバイアスカットされた非加工の縦糸および横糸からなる、均衡の取れた帆布である、歯カバーが開示されている。各糸は多くのフィラメントから構成されている。本発明の好ましい実施形態では、カバーは、縦糸および横糸がナイロンであり、「非伸縮性」帆布である耐摩耗帆布からなる。歯付きベルトを製造するための予成形方法も開示されている。
【0006】
米国特許第6,595,883号には、任意の天然または合成品種の、任意の望ましい角度での縦糸および横糸の織りを含む、任意の適当なまたは従来のタイプの織物材料を採用した織物部材を用いた、クラッチ用途に適したVベルトが開示されている。好ましい実施形態では、帆布は、縦糸が横糸に対して100~130°の角度であり、両方ともベルトの進行方向または長手方向に対して約57°±7°の方向に配向された、ナイロン/コットン混紡バイアス帆布である。
【0007】
米国特許第7,909,720号には、歯カバーが、縦糸および横糸を有する従来の織りを含み、斜めに切断することを含む、任意の所望の構成であってもよく、長い材料リストのいずれかを使用することが開示されている。キャンバス層は、コットン、ポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維、アラミド繊維などから形成された糸を用いて、平織り、綾織り、繻子織りなどで形成された布であってもよい。好ましい実施形態では、ナイロン66を織った伸縮性帆布を利用している。実施例における唯一の実施形態は、RFL溶液で処理された単プライコットンキャンバス層を使用している。
【0008】
米国公開特許第2009/0227406号には、歯カバーが、縦糸および横糸を有する従来の織りを含み、バイアスに切断することを含む任意の所望の構成であってもよく、長い材料リストのいずれかを使用することが開示されている。開示された好ましい実施形態、および実施例の唯一の実施形態は、外側歯面にポリエチレンフィルムをラミネートしたナイロン66帆布の歯布を利用している。
【0009】
米国特許第3,784,427号には、Vベルトカバーおよびホース補強に適したバイアスカット帆布の製造および処理方法が開示されている。
【0010】
米国特許第3,832,210号には、1本の管状帆布からバイアス帆布のストリップを螺旋状にカットすることに関連する、バイアスカット帆布の調製方法が開示されている。
【0011】
米国特許第4,238,530号には、縦糸及び横糸が90°と150°の間の挟角で配置された、連続的で継ぎ目のないバイアス帆布を製造する方法が開示されている。
【0012】
米国特許第4,907,323号には、バイアス帆布を製造するためのスリッティング方法及び装置が開示されている。
【0013】
米国特許第5,255,419号には、テンタリング装置及び関連する方法が開示されている。
【0014】
米国特許第6,494,235号には、平らな糸をベースとした工業用帆布に適用可能なバイアスバウンド帆布を連続的に製造するための方法および織機が開示されている。
【0015】
米国公開特許第2010/0275764号には、弾道発射体または耐穿刺性物品の製造に使用される糸からの織物帆布が開示されている。
【0016】
米国特許第6,605,014号および米国特許第4,343,666号にも、様々な歯の予成形方法を含む、歯付き動力伝達ベルトを製造する方法が開示されている。
【0017】
縦糸と横糸がアラミド/ナイロン糸の混紡糸であり、織りが変形平織り、変形綾織り、または変形繻子織りである、ベルト歯布のために斜めに配向された織物帆布を使用することは知られておらず、または示唆されていない。
【発明の概要】
【0018】
本発明は、カバー帆布を有するベルトを提供するか、または縦糸および横糸が混紡糸である、ベルト歯布のための斜めに配向された織物帆布を提供するシステムおよび方法を対象とする。織りは、1つ以上の平織り列が1つ以上の綾織りまたは繻子織り列と交互になった、変形平織りであってもよい。平織り列は、好ましくは1/1または1/2織りであってもよい。繻子織りまたは綾織り列は、好ましくは1/3、2/4、または1/4織りであってもよい。全体的な織りパターンは、ブロークン綾織りまたは変形繻子織り、またはクロウフットパターンであってもよい。織りは、変形綾織りまたは変形繻子織りであってもよい。
【0019】
混紡糸は、2つ以上の異なる個別のフィラメント糸の合撚糸であってもよい。縦糸と横糸はバランスがとれていてもよい。異なる個別のフィラメント糸は、アラミドとナイロンであってもよい。アラミドは、パラアラミドまたは共重合体アラミドであってもよい。
ナイロンは、ナイロン66、ナイロン46等であってもよい。合撚糸は、約1~約5撚り/cmの上撚りを有することができる。
【0020】
混紡糸の第1の個別フィラメント糸は、例えば、高い抗張強度または高耐熱性のある、任意の好適な高性能繊維であってもよい。混紡糸の第2の個別フィラメント糸は、高い柔軟性と耐摩耗性のある、任意の好適な繊維であってもよい。追加の糸が含まれてもよい。
【0021】
帆布は、好ましくは、バイアス角90°未満、または40°~89°のバイアス帆布である。
【0022】
帆布は、一方の面が比較的平滑で、他方の面が比較的粗くなるように織られているか、または加工されていることが好ましい。
【0023】
帆布は後処理されていてもよいし、処理が施されていてもよい。
【0024】
本発明はまた、カバー帆布を有するベルトを対象にしている。ベルトは、帆布が斜めに配向され、歯を覆っている歯付きベルトであってもよい。歯付きベルトは、歯の予成形工程を用いて製造することができる。
【0025】
前記では、以下の本発明の詳細な説明をよりよく理解するために、本発明の特徴および技術的利点をかなり大まかに概説した。本発明の特許請求の範囲の主題を形成する、本発明のさらなる特徴および利点を以下に記載する。開示された概念および特定の実施形態は、本発明の同じ目的を実行するための他の構造を修正または設計するための基礎として容易に利用され得ることが、当業者によって理解されるべきである。また、当業者であれば、そのような等価な構成が、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲から逸脱しないことを理解されたい。本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、その構成および動作方法の両方に関して、さらなる目的および利点とともに、添付の図面との関連で考慮すると、以下の説明からより良く理解されるであろう。しかしながら、各図は、図示および説明のみを目的として提供されており、本発明の限界を定義することを意図していないことが明確に理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付図面は、同様の数字が同様の部分を示すものであり、本発明の実施形態を図示しており、本明細書とともに、本発明の原理を説明する役割を果たす。図面において:
【0027】
【
図1】従来技術による歯付きベルトの部分破断斜視図である。
【0028】
【
図2】本発明の一実施形態に係る歯付きベルトの部分破断斜視図である。
【0029】
【
図3】本発明の帆布を説明するために使用される概略図である。
【0030】
【
図4】本発明の一実施形態に係る実施例4の帆布織り図である。
【0031】
【0032】
【
図6】本発明の別の実施形態に係る実施例1の帆布織り図である。
【0033】
【
図7】本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
【0034】
【
図8】本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
【0035】
【
図9】本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
【0036】
【
図10】本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
【0037】
【
図11】本発明の別の実施形態に係る実施例3の帆布織り図である。
【0038】
【
図12】本発明の別の実施形態に係る実施例2の帆布織り図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明は、タイミングベルトまたは歯付きベルトとも呼ばれる、同期ベルトに関する。
図1は、従来技術の歯付きベルトを示している。
図1において、歯付きベルト10は突出する横歯16を有し、その表面は帆布11によって覆われている。また、ベルトの長手方向に延びる、補強用抗張部材15も示されている。帆布11は、縦糸12及び横糸14を有する、従来の織物帆布として示されている。典型的には、横糸14がベルト長手方向を向いており、非常に伸縮性の高い糸構造となっている。一般的に、縦糸12は、ベルトの横方向を向いており、伸縮可能である必要はなく、また、非常に高い抗張強度も不要である。したがって、従来の帆布は、非常にアンバランスである。1つの一般的な帆布構造は、縦糸及び横糸の両方にナイロン66繊維を使用し、横糸は必要な伸縮性を提供するために高度にテクスチャード加工又はクリンプ加工され、2/2の綾織りになっている。
【0040】
図2は、本発明の実施形態に係る歯付きベルトを示している。
図2において、本発明の歯付きベルト20は、突出する横歯26を有し、その表面は帆布21によって覆われている。また、ベルトの長手方向に延びる、補強用抗張部材25も示されている。帆布21は、縦糸22および横糸24を有する、バイアスカットの織物帆布として示されている。バイアスカットとは、帆布の向きが斜めになっていることを意味し、縦糸と横糸の両方がベルトの長手方向に対してほぼ等しい角度で、かつ反対の角度になっていることを意味する。バイアス帆布は、有利には、バランスされていてもよく、すなわち、縦糸および横糸の両方に同じ糸構造を使用することができる。好ましい構成は、例えば、高温耐熱性を有する糸と、耐摩耗性を有する糸または接着ベルト本体材料との高い親和性を有する糸とを組み合わせたような、2つ以上の異なる個別の糸材料の好ましい特性を組み合わせた混紡糸である。ベルト20は、任意に、歯とは反対側に背面帆布(
図2において不図示)を有していてもよい。いくつかの実施形態では、混紡糸のバランスされた織物歯布は、ベルトの長手方向に平行な縦糸または横糸で配向されていてもよい。歯26のゴムとベルト20の背面28のゴムは、抗張部材25を取り囲むゴムと同じであってもよく、異なっていてもよい。これらのゴム材料は、当技術分野で知られている任意の好適なエラストマーまたはゴム組成物であってよい。
【0041】
図3は、本発明の帆布を説明するいくつかの有用な態様を示している。バイアス角aは、縦糸と横糸の間の挟角として定義される。帆布の垂直方向は、一般にバイアス角をほぼ二分する方向として定義され、これはベルトの長手方向に配向される方向でもある。バランスされた帆布の場合、縦糸と横糸の方向にはある程度の任意性があるが、一般的に縦糸および横糸は、バイアス帆布を製造する製織工程での糸の方向を指す。帆布は、従来の平織りによって製造することができ、縦糸を織機の方向に走行させて横糸を縦糸に交差させ、次いで斜めに裁断する工程を経て、場合によってはバイアス角を調整したり、バイアスカットされた2枚以上のピースを所望の長さになるように縫い付けたり、その他の方法で取り付ける。あるいは、帆布は、縁が一緒に織られる、従来の二層の平織り工程、すなわち、扁平したチューブを織った後、螺旋状に切り開く工程で製造されてもよい。あるいは、帆布は、円形にチューブを織ることによって製造することができ、縦糸を織機の方向に走行させて横糸をチューブの周囲を周方向に走行させ、次いで、任意の長さの連続したバイアス帆布を得るために、チューブを螺旋状に切り開く。帆布のどちらの面がベルト20上で外向きに配置されるか、帆布がどちらの方向にバイアスカットされたかに応じて、縦糸は、
図3に示される縦糸または横糸のいずれかの方向に延びる。あるいは、帆布は、斜めに織ることによって製造されてもよく、その場合、織りによっては、縦糸と横糸との区別がつかない場合がある。
【0042】
本明細書に記載の帆布は、典型的には、縦糸および横糸が互いに直角になるように織られている。所望のバイアス角は、当技術分野で知られた任意の手段によって、後続の工程で達成されてもよい。バイアス角は、歯の予成形作業の前に織られたときのバイアス角に基づいて、60°より大きく、または75°より大きく、または60°と90°の間、または75°と85°の間の範囲であってもよい。この範囲では、バイアス帆布は、予成形された歯のベルト製造工程において良好な歯の形成を補助するのに十分な、少しの伸縮性を有する。この少量の伸縮性は、斜め配置、すなわち、帆布が応力を受けたときの糸の再配置に由来することに留意すべきである。以下により詳細に記載される好ましい糸は、クリンプ加工されていない、従来の弾性(例えば、ポリウレタンまたはゴム)コアを有さない、多成分フィラメント合撚糸であってもよく、この用語が繊維技術分野で使用されるように、糸自体が非伸縮性となる。ベルト製造後、バイアス角は幾分、例えば、90°未満、80°未満、75°未満、又は60°未満、又は40°と89°の間、又は50°と89°の間にシフトしたことが観察され得る。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態に係る帆布織り図である。本願明細書に示されるこの帆布織り図および他の帆布織り図では、当技術分野の慣例に従って、正方形は縦糸と横糸の間の糸交差を表している。正方形の色は、交差している部分の上側、つまり目に見える糸が縦糸又は横糸のいずれであるかを示している。濃色又は陰影の付いた正方形は、縦糸が見えているか、又は横糸の上にあることを示している。薄い正方形は、横糸が縦糸の上にあることを示します。従来、縦糸は図中上向きに走り、横糸は左右に走っていた。帆布の斜め配向を示すために、
図4では、縦糸22が左上方に向かって走る矢印によって示されている。ここで、「上」とは、図示されている垂直方向を指し、一般的には、ベルトの長手方向となる。これらの帆布は、実際には、例えば、円形織機や従来の平織機などで縦方向に織られていてもよいが、本明細書で使用される「上」や「縦」という用語は、それほど限定的なものではなく、単に便宜上使用されているにすぎない。
図4に示すように、横糸24は右上向かって走っている。
図4の帆布は、1列おきに1/1平織りであり、交互の列が1/3繻子または綾織りであり、変形平織りと考えることができる。縦糸には1から4までの番号が付けられており、繰り返し単位は図の4×4の部分であることに留意されたい。表面が縦糸よりも横糸を多く示すことから、
図4の帆布は、不均一な横糸面(または充填面)の変形綾織りと呼ばれることもある。
【0044】
図5は、
図4の帆布を垂直軸について反転させた、背面の帆布織り図である。ここで、縦糸方向22は右上であり、横糸方向24は左上である。背面では、横糸よりも縦糸の方が多く見える。好ましくは、帆布は、背面が他の面(平滑な面)よりも粗くなるように織られていてもよい。
【0045】
図6は、本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
図6は、織られる可能性のある、配向された帆布を示しているが、
図2~5に示すように、ベルトに対して斜めに回転されて使用されてもよいことを理解されたい。
図6は、織りが1/1平織りである場合を示している。
【0046】
図7は、本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
図7は、織りが1/2の不規則な綾織りである場合を示している。1/2綾織りは、
図7に示すような横糸面綾織り、または縦糸面2/1綾織り(不図示)であってもよい。同様に、本明細書に記載されるいずれの織りも、左綾または右綾であってもよく、つまり、綾のパターンは、変形されているか否かに拘わらず、左上に進むか、または右上に進むかのいずれでもよいことを意味する。
【0047】
図8は、本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
図8は、織りが2/4横糸面綾織りであってもよく、あるいは4/2縦糸面綾織り(不図示)であってもよいことを示している。
【0048】
図9は、本発明の別の実施形態に係る帆布織り図である。
図9は、織りが別の種類の2/4繻子織りであってもよいことを示している。このような高次の織り数は、列から列へのパターンシフトに応じて、複数の方法で実行されてもよいことに留意されたい。
【0049】
例えば、
図10は、パターンシフトがクロウフットパターンを生成する、2/4の変形綾織りまたは変形繻子織りの別の例を示している。
図10の3列目ごとに、1/2パターンになっている。
【0050】
図11は、パターンを90°回転させる(すなわち、縦糸と横糸を切り替える)ことを基にした、
図10の2/4変形綾織りの代替形態である。ここでは、全ての列が2/4列になっており、同様のクロウフットまたはブロークン綾織りパターンが見られる。
【0051】
図12は、
図7の1/2綾織りの別の形態である。
図12は、1つおきの列が2/1であることを基調にした、偶数の1/2変形綾織りを示している。したがって、1/2列は2/1列と交互になる。
【0052】
図4~
図12に示される織りは、例示的なものであり、限定的ではないことが意図される。本発明は、平織りまたは平方織り、バスケット織り、綾織り、繻子織り、およびこれらの様々な組み合わせおよびバリエーションを含む任意の好適な帆布で実施することができる。好ましくは、織りは、繻子織りのように、縦糸または横糸のいずれかの延長ランを有する列が交互する、平方織りの列の組み合わせであってもよい。延長ラン(または繻子織り)とは、縦糸(または横糸)が、次の横糸(または縦糸)の下を通る前に、2本以上、好ましくは3本以上、または4本以上の横糸(または縦糸)の上を横切ることを意味する。延長ランは横糸面(または縦糸面)の帆布を形成し、表面の平滑性に寄与してもよく、これは耐摩耗性に有利であると考えられる。同時に、帆布の反対側の面を平滑な面よりも粗くすることが、ベルト本体への接着性に有利であると考えられている。上述したように、異なる織りは、有利には、所与の糸重量に対して、異なる帆布厚さをもたらすことができる。したがって、所与のベルト用途に最適な帆布厚さまたは重量を提供する糸および織りパターンの重量を選択することが可能である。例えば、このような選択は、ベルト内のコード位置に影響を与えたり、所望のピッチラインを与えたりするために使用することができる。
【0053】
本発明の帆布は、有利には、異なる材料の2つ以上の個別の糸の混紡糸を含む。混紡糸を構成する個別の糸は、好ましくは、テクスチャー加工がなく、クリンプ加工がなく、弾力性がなく、または本質的に非常に伸縮性のないものである。個々の糸は、1cm当たり数回までの軽い撚り(すなわち、「第1の撚り」)であってもよいが、撚られていない(すなわち、「ゼロの撚り」)ことが好ましい。縦糸および横糸のために使用される混紡糸は撚られてもよく、すなわち、個々の糸は一緒に撚り合わせて混紡糸を形成してもよく、好ましくは、1cm当たり最大数回の撚り(すなわち、「上撚り」または「プライ撚り」)で撚られてもよい。上撚りは、1~5撚り/cm、または2.0~4.0撚り/cmの範囲であってもよい。
【0054】
混紡糸を形成するために使用される2本以上の個別の糸のうちの1つは、高性能糸、例えば、アラミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(p-フェニレン-2、6-ベンゾビスオキサゾール(PBO))、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)などの高温耐性材料であってもよい。アラミドは、パラアラミド、メタ-アラミド、またはアラミド共重合体であってもよい。2本以上の個別の糸のうちの第2の糸は、ナイロン(PA)、ポリエステル、ポリエチレンナフタレート(PEN)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)などの他のベルト材料に対して、高い耐摩耗性または高い接着性などの他の所望の特性を有する高性能糸であってもよい。ナイロンは、例えば、ナイロン66、ナイロン6、ナイロン46等であってもよい。このようにして2本以上の個別の糸を組み合わせることにより、得られる帆布は、単一素材の帆布よりも汎用性が高く、単一素材では不可能な複数の要件を満たすことができる。2成分混紡糸の場合、第1の個別の糸の量は、好ましくは、混紡糸の全デニールの10%~90%、または25%~75%、または1/3~2/3、または50%~75%の範囲であってよく、残りが第2の個別の糸である。好ましい実施形態では、混紡糸は、50%未満のナイロンまたは50%未満のナイロン66である。
【0055】
好ましい混紡糸はアラミド糸とナイロン糸とを一緒に撚り合わせたものであり、この混紡糸は、バイアス帆布の縦糸と横糸の両方に使用することができる。アラミドは、好ましくは、パラアラミドまたは共重合体アラミドであってもよい。好適なパラアラミド繊維には、E.I.du Pont de Nemours and CompanyのKevlar(登録商標)繊維、Teijin Aramid B.V.のTwaron(商標)繊維、およびYantai Tayho Advanced Materials Co.,Ltd.のTaparan(登録商標)繊維が含まれる。好適な共重合体アラミド繊維には、Teijin Aramid B.V.のTechnora(商標)繊維が含まれ、ナイロンは好ましくはナイロン66であってもよい。ナイロン糸は、ナイロン部分配向糸(「POY」)、ナイロン完全延伸糸(「FDY」)、および延伸テクスチャード糸(「DTY」)として入手可能である。任意のタイプのものが有用であるが、強靭なベルト用途のためにはFDYナイロンが好ましい。アラミドの量は、好ましくは、混紡糸の全デニールの50%より多く、または25%~75%、または1/3~2/3、または55%~75%の範囲であってよく、残りはナイロン66などのナイロンである。好ましい範囲においては、混紡糸は、アラミドの高い強度とナイロンの良好な耐摩耗性の良好なバランスを有している。上撚りは、有利には、1~5撚り/cmの範囲である。撚りが多いと抗張強度を損なう可能性があり、撚りが少ないと耐摩耗性を損なう可能性がある。要求のさほど厳しくないベルト用途では、高機能および高コストの糸の量を減らし、ナイロンまたは他のコストの糸をより多く使用することができる。
【0056】
必ずしも必要ではないが、帆布の製造に使用される混紡糸には、第3の糸や他の追加の糸や繊維が含まれていてもよい。そのような追加の繊維は、天然繊維または合成繊維、有機繊維または無機繊維を含む、所望の特性を有する任意の要素または連続繊維であり得る。一例として、所望の量の伸縮性を提供するために、いくつかの弾性フィラメントを加えることができる。バルク化やコスト削減のために、他の繊維を追加することができる。
【0057】
本発明の帆布は、好ましくは、異なる特性を有する2つの面または表面を供する。一方の面は比較的平滑であるが、他方の面は比較的粗い。これが、従来のバイアス帆布との重要な違いである。最良の歯付きベルト性能を得るために、帆布の平滑な面は、ドライブシステムのスプロケットまたはプーリーに接触し、良好な耐摩耗性を提供する歯面外側に使用され、一方、粗い面は、歯材料との界面に存在し、歯材料または粘着コーティングとの良好な機械的接着性を提供することができる。
【0058】
本発明のバイアス帆布の製織後、種々の製織後工程または処理を使用するのが有利である。必要に応じて、任意の公知の製織後工程を使用することができる。このような工程には、洗浄、熱硬化、サイジング、浸漬または噴霧処理などが含まれる。また、バイアス角を調製するために熱硬化処理を用いてもよい。これは、硬化中に幅または張力を制御することで行われる。また、処理工程においては、幅の制御が重要になることがある。例えば、縦糸および横糸を所定の位置に固定するために、または歯の負荷能力、耐環境性、または耐摩耗性を改善するために、コーティングや処理が有用である場合がある。このようなコーティングは、例えば、RFL(レゾルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)、他のラテックス系コーティング、ゴムセメント、ポリウレタン、エポキシ、ゴム変性コーティングまたは潤滑剤変性コーティングを含む、1種以上のものであってもよい。
【0059】
本発明のバイアス帆布の厚さは、織られている糸のデニール、並びに織りのディテールに依存し、特定のベルト設計のために必要に応じて選択することができる。いくつかの一般的なベルト用途では、厚さは約0.030~0.045インチの範囲内とすることができる。他のものは、0.5mm~0.9mm、または最大1.5mmまであり得る。
【0060】
かくして、本発明のバイアス帆布は、ベルトの両方向(または全方向)に非常に強く、耐摩耗性が非常に高く、歯付きベルトの外側表面に接着することができる。しかしながら、それらはまた、弾性率が非常に高く、すなわち、あまり伸縮性がないため、ベルトを製造するためには、歯を予成形する工程を必要とする。その結果、特に、繊維強化ゴム又は高ジュロメータポリウレタンのような非常に硬い歯材料と適合させた場合に、帆布は、歯の高度の強化を提供する。従って、本発明のベルトは、従来のベルト設計よりも高い、単位幅当たりの荷重を運ぶのに適している。本発明のベルトの実施形態は、従来技術のベルトと比較すると、同期ベルトドライブシステムにおけるタイミング誤差を低減することも見出されている。
【0061】
本発明の帆布は、主に高負荷容量のタイミングベルト用の歯布として設計されているが、その他にも、任意の種類のベルトの背面用の背面帆布、Vベルトや丸ベルトなどの巻き付けベルト用の巻き付け帆布、任意の種類のベルトのプーリー接触面用の摩擦面帆布として使用することができる。高負荷のタイミングベルト歯カバーでは斜め向きが好まれるが、アプリケーションのニーズに応じて他の向きを使用することもできる。
【0062】
(実施例と比較例)
【0063】
実施例1は、1/1平方織り(平織り)チューブを螺旋状に切り開くことによって製造された、1/1織りのバイアスアラミド帆布である。縦糸、横糸ともに、840デニールのTayho社のTaparan(登録商標)パラアラミド糸と210デニールのナイロン66FDY糸を撚り合わせた、つまり、総デニールベースでアラミド80%、ナイロン20%の混紡糸である。
図6は、実施例1の織りパターンを示している。
【0064】
実施例2は、1/2綾織りのバイアスアラミド帆布である。縦糸、横糸ともに、840デニールのTayho社のTaparan(登録商標)パラアラミド糸と210デニールのナイロン66FDY糸を撚り合わせた、つまり、アラミド80%の混紡糸である。
図12は、実施例2の織りパターンを示している。
【0065】
実施例3は、クロウフット繻子織りに似た、2/4変形綾織りのバイアスアラミド帆布である。縦糸、横糸ともに、840デニールのTayho社のTaparan(登録商標)パラアラミド糸と210デニールのナイロン66FDY糸を撚り合わせた、つまり、アラミド80%の混紡糸である。
図11は、実施例3の織りパターンを示している。
【0066】
実施例4は、1/1平織りと1/3繻子織りとを組み合わせた変形平織りである。縦糸、横糸ともに、840デニールのTayho社のTaparan(登録商標)パラアラミド糸と420デニールのナイロン66FDY糸を撚り合わせた、つまり、アラミド2/3、ナイロン1/3の混紡糸である。
図4は、実施例4の織りパターンを示している。
【0067】
実施例5は実施例4と同じ織りを有するが、異なるアラミド糸を使用している。実施例5は、Teijinnの800デニールTechnora(商標)共重合体アラミド糸を使用している。従って、糸は、アラミド約65.6%、ナイロン約34.4%である。帆布は、垂直方向において、約80度の糸角度を有している。
【0068】
実施例6は実施例5と同じ帆布であるが、エポキシ処理を施したものである。
【0069】
比較例7は、縦糸のポリウレタン弾性糸と、横糸の210デニールのナイロン66糸の周りにアラミドとナイロンを巻いた、従来の2/2綾織り伸縮性帆布である。
【0070】
比較例8は、縦糸と横糸の材料が交換されていることを除き、比較例7と同様である。
【0071】
表1は、上に列挙した例示的な帆布の特性を示している。本発明の帆布の抗張特性は、比較帆布に比較して、試験された全ての方向においてはるかに均一である。本発明の実施例の帆布では、縦糸方向および横糸方向の伸びは実質的になく、垂直方向および水平方向の伸びは、応力下での織りの再配置に起因する。比較帆布は、横糸方向または縦糸方向のいずれかに、通常、比較的高い伸縮性を有している。また、本発明の帆布は、比較帆布に比べて著しく強い。このことは、本発明の帆布が、比較帆布に比べて糸数と厚みが著しく少ないことを考えると、さらに印象的である。したがって、本発明の帆布は、比較帆布よりも小さいベルトパッケージ(例えば、より小さいベルト幅)に、より強い強度および補強を詰め込むことができる。
【0072】
厚さは、織りの選択によって変えることができることに留意されたい。実施例1~5は同じ混紡糸を使用しているが、帆布の厚みの範囲が広いものとなった。この能力は、所望のピッチラインを達成するためのような様々なベルト構造を設計するために有用かもしれない。
【0073】
耐摩耗性試験は、GB/T21196.2-2007に準拠して、研磨材として金属組織のサンドペーパー1#W28を用い、595gの荷重で行った。実施例1~4は、両面とも同じ外観で織られていたため、両面ともほぼ同じ耐摩耗性が得られたことに留意されたい。実施例5、6は、一方の面が他方の面よりも平滑になるように織られているため、平滑な面では耐摩耗性に優れ、粗い面では歯ゴムとの接着性に優れていた。例えば、剥離接着試験では、実施例5、6の粗い面の接着力は平均100N/inch幅であるのに対し、実施例5、6の平滑な面の接着力は平均59N/inchであり、従来のアラミド伸縮性帆布の接着力は平均75N/inchであった。
【0074】
【0075】
表1の摩耗試験結果に基づいて、接着性、歯の剛性、ベルトの耐久性、およびタイミングドライブシステムの性能を評価するためのいくつかの試験ベルトを作るために、実施例5、6を選択した。予備的な結果は、歯ゴムへの帆布の接着が良好であることを示している。ベルトは、耐久性、タイミング誤差などの点で良好な性能が期待される。
【0076】
本発明およびその利点を詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換、および改変が本明細書においてなされ得ることを理解されたい。さらに、本願の範囲は、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、およびステップの特定の実施形態に限定されることを意図するものではない。当業者であれば、本発明の開示から容易に理解できるように、本明細書に記載される対応する実施形態と実質的に同じ機能を果たすか、または実質的に同じ結果を達成する、現在存在するか、または後に開発されるプロセス、機械、製造、物質の組成物、手段、方法、またはステップが、本発明に従って利用されてもよい。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、そのようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法、またはステップを含むことが意図される。本明細書に開示された発明は、本明細書に特に開示されていない要素が存在しない場合に適切に実施され得る。