(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】プッシュスイッチ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 11/00 20060101AFI20220107BHJP
H01H 13/52 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01H11/00 D
H01H13/52 F
(21)【出願番号】P 2021033898
(22)【出願日】2021-03-03
(62)【分割の表示】P 2017018837の分割
【原出願日】2017-02-03
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000131430
【氏名又は名称】シチズン電子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(72)【発明者】
【氏名】天野 惣一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 健
(72)【発明者】
【氏名】三浦 充紀
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-051657(JP,A)
【文献】特開2010-257601(JP,A)
【文献】特開2004-031185(JP,A)
【文献】特開2000-188036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 11/00 - 13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースに形成された凹部の底面上に、複数の固定接点、及び前記複数の固定接点を互いに導通させるための可動接点を配置するステップと、
第1保護シートを、前記複数の固定接点及び前記可動接点を覆う様に前記ケースの側壁の上面に固定するステップと、
前記第1保護シートと、前記可動接点を押下するための押下部材を前記第1保護シートとの間に挟持するための第2保護シートとの接着領域を、プッシュスイッチの特性を示す指標が所望の値になる様に、前記側壁の上の第1の位置と、前記第1保護シート上で前記第1の位置より前記押下部材側の第2の位置との間に設定するステップと、
前記第2保護シートを、前記押下部材を前記第1保護シートとの間に挟持する様に、前記接着領域において前記第1保護シートに接着するステップと、を有し、
前記第2の位置は、前記側壁の内壁面よりも前記第1の位置側である、
ことを特徴とするプッシュスイッチの製造方法。
【請求項2】
前記押下部材の下面の一部のみを覆う接着部材によって前記押下部材の下面と前記第1保護シートの上面とを接着するステップを更に含む、請求項1に記載のプッシュスイッチの製造方法。
【請求項3】
プッシュスイッチの特性を示す前記指標は、ピーク荷重又はクリック率である、請求項1又は2に記載のプッシュスイッチの製造方法。
【請求項4】
凹部が形成されたケースと、
前記凹部の底面上に配置された複数の固定接点と、
凸形の形状を有し、押下されることにより変形して前記複数の固定接点を互いに導通させるための可動接点と、
前記複数の固定接点及び前記可動接点を覆う様に前記ケースの側壁の上面に固定された第1保護シートと、
前記第1保護シートの上に配置された、前記可動接点を押下するための押下部材と、
所定の接着領域において前記第1保護シートに接着され、前記押下部材を前記第1保護シートとの間に挟持する第2保護シートと、を有し、
前記所定の接着領域は、プッシュスイッチの特性を示す指標が所望の値になる様に、前記側壁の上の第1の位置と、前記第1の位置より前記押下部材側の第2の位置との間に設定され
、
前記第2の位置は、前記側壁の内壁面よりも前記第1の位置側である、
ことを特徴とするプッシュスイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プッシュスイッチ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ポータブルステレオ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、車載オーディオ等のデバイスに搭載されるスイッチとして、プッシュスイッチが知られている。
【0003】
特許文献1には、中央接点、外側接点、及び可動接点から構成されるスイッチ接点部が設けられたケースと、押圧体と、保護シートとを有するプッシュスイッチが記載されている。可動接点は、上方凸形のドーム状に形成された金属製の弾性薄板である。可動接点の外周下端は外側接点上に載置され、可動接点の中央部下面は中央接点と間隔をあけて対峙している。押圧体は、可動接点の中央部上面に載置されている。保護シートの周縁部は、レーザー照射によって、ケースの壁部に溶着固定されている。保護シートの中央部は、レーザー照射によって、押圧体の上面に溶着固定されている。
【0004】
図10は、プッシュスイッチの押圧部のストローク(変形量)Sと、プッシュスイッチの操作荷重Fとの関係を示したグラフである。グラフの横軸はストロークSを、縦軸は操作荷重Fを示す。プッシュスイッチの押圧部を押圧することによりストロークSが増加すると、操作荷重Fは増加していく。やがてストロークSが所定の値Spになると、操作荷重Fは極大値(ピーク荷重Fp)をとり、プッシュスイッチの可動接点は反転し始める。その後ストロークSが更に増加すると、操作荷重Fが減少しながら、可動接点は反転を続ける。やがてストロークSが所定の値Sbになると、操作荷重Fが極小値(ボトム荷重Fb)をとり、可動接点は反転し終わる。可動接点が反転し終わった後は、ストロークSが増加すると操作荷重Fは急激に増加する。
【0005】
一般に、プッシュスイッチの特性を表す指標として、プッシュスイッチの押圧操作の固さを示すピーク荷重、及びプッシュスイッチを押圧操作したときの感触のよさを示すクリック率が用いられる。ピーク荷重は、可動接点が反転し始めるときの操作荷重Fpとして表される。クリック率は、可動接点が反転し始めるときの操作荷重(Fp)に対する、可動接点が反転し始めてから反転し終わるまでの操作荷重Fの減少量(Fp-Fb)の比((Fp-Fb)/Fp)として表される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
プッシュスイッチのピーク荷重及びクリック率は、可動接点の設計を変更することにより調整することが可能である。しかしながら、可動接点の設計の変更には製造コストの上昇や技術的困難性を伴う場合が多いため、可動接点の設計を変更することなくプッシュスイッチのピーク荷重及びクリック率を調整したいという要請がある。
【0008】
そこで、本発明は、上述した問題点を解消することを可能としたプッシュスイッチを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、可動接点の設計を変更することなくピーク荷重及びクリック率を調整可能なプッシュスイッチの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るプッシュスイッチの製造方法は、ケースに形成された凹部の底面上に、複数の固定接点、及び複数の固定接点を互いに導通させるための可動接点を配置するステップと、第1保護シートを、複数の固定接点及び可動接点を覆う様にケースの側壁の上面に固定するステップと、第1保護シートと、可動接点を押下するための押下部材を第1保護シートとの間に挟持するための第2保護シートとの接着領域を、プッシュスイッチの特性を示す指標が所望の値になる様に、側壁の上の第1の位置と、第1保護シート上で第1の位置より押下部材側の第2の位置との間に設定するステップと、第2保護シートを、押下部材を第1保護シートとの間に挟持する様に、接着領域において第1保護シートに接着するステップと、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るプッシュスイッチの製造方法は、押下部材の下面の一部のみを覆う接着部材によって押下部材の下面と第1保護シートの上面とを接着するステップを更に含むことが好ましい。
【0012】
本発明に係るプッシュスイッチの製造方法では、プッシュスイッチの特性を示す指標は、ピーク荷重又はクリック率であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るプッシュスイッチは、凹部が形成されたケースと、凹部の底面上に配置された複数の固定接点と、凸形の形状を有し、押下されることにより変形して複数の固定接点を互いに導通させるための可動接点と、複数の固定接点及び可動接点を覆う様にケースの側壁の上面に固定された第1保護シートと、第1保護シートの上に配置された、可動接点を押下するための押下部材と、所定の接着領域において第1保護シートに接着され、押下部材を第1保護シートとの間に挟持する第2保護シートと、を有し、所定の接着領域は、プッシュスイッチの特性を示す指標が所望の値になる様に、側壁の上の第1の位置と、第1の位置より押下部材側の第2の位置との間に設定されていることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るプッシュスイッチでは、第2の位置は、側壁の内壁面よりも第1の位置側であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るプッシュスイッチでは、第2の位置は、側壁の内壁面よりも押下部材側であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るプッシュスイッチでは、プッシュスイッチの特性を示す指標は、ピーク荷重又はクリック率であることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、可動接点の設計を変更することなくピーク荷重及びクリック率を調整可能なプッシュスイッチを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図5】プッシュスイッチ1の
図1に示すV-V’線に沿った断面図である。
【
図6】(a)~(e)は、プッシュスイッチ1の製造方法を説明するための図である。
【
図7】(a)は、他のプッシュスイッチ2の
図5と同様の断面図であり、(b)は、更に他のプッシュスイッチ3の
図5と同様の断面図である。
【
図8】(a)は、プッシュスイッチの第1保護シート及び第2保護シートの接着領域の幅dとピーク荷重Pとの関係を示したグラフであり、(b)は、プッシュスイッチの第1保護シート及び第2保護シートの接着領域の幅dとクリック率Cとの関係を示したグラフである。
【
図9】更に他のプッシュスイッチ4の
図5と同様の断面図である。
【
図10】プッシュスイッチのストロークと操作荷重との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、プッシュスイッチ及びその製造方法について詳細に説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
図1は、プッシュスイッチ1の斜視図である。
図2は、プッシュスイッチ1の分解斜視図である。
図3は、プッシュスイッチ1の上面図である。
図4は、プッシュスイッチ1の底面図である。
図5は、プッシュスイッチ1の
図1に示すV-V’線に沿った断面図である。以下では、
図1に示すV-V’線に沿った方向を、プッシュスイッチ1の短手方向とし、
図1に示すV-V’線に垂直な方向を、プッシュスイッチ1の長手方向とする。
【0021】
プッシュスイッチ1は、ケース10と、固定接点20と、可動接点30と、第1保護シート40と、アクチュエータ50と、第2保護シート60とを有する。
【0022】
ケース10は、基板11と、枠体12とで構成される。枠体12の裏面は、接着剤70Aによって基板11の表面に接着されている。基板11の表面には、枠体12に囲まれた凹部13が形成されている。
【0023】
枠体12は、ケース10の側壁の一例である。符号12aは、凹部13に面する枠体12の内壁面を指し、符号12bは、内壁面12aとは反対側である枠体12の外壁面を指す。
図1に示すV-V’線に沿った枠体12の幅、すなわち内壁面12aと外壁面12bとの距離は、例えば0.5mmである。
【0024】
固定接点20は、中央固定接点21と、周辺固定接点22とで構成される。中央固定接点21は、円盤状の導体であり、凹部13内の基板11の表面に固定されている。周辺固定接点22は、環状の導体であり、中央固定接点21を囲む様に、凹部13の底面である基板11の表面に固定されている。
【0025】
基板11の裏面には、一対の第1電極23A及び23Bと、一対の第2電極24A及び24Bとが形成されている。第1電極23A及び23Bはそれぞれ、不図示の貫通電極及び裏面配線を介して中央固定接点21に電気的に接続されている。第2電極24A及び24Bはそれぞれ、不図示の貫通電極及び裏面配線を介して周辺固定接点22に電気的に接続されている。
【0026】
可動接点30は、凸形の形状を有する可とう性の導電性部材であり、端部が周辺固定接点22に接する様に基板11上に配置されている。可動接点30が押下されると、凸形の形状が反転して中央固定接点21と周辺固定接点22とが導通し、スイッチがONになる。可動接点30は、例えばステンレス鋼により構成される。
【0027】
第1保護シート40は、例えば、厚さが約0.05mmの可とう性の絶縁樹脂シートである。第1保護シート40は、裏面の端部が接着剤70Bによって枠体12の上面に接着されることにより、基板11及び枠体12とともに、中央固定接点21、周辺固定接点22、及び可動接点30を、凹部13内に封入している。第1保護シート40の中央部の上面は、接着剤70Eによって、アクチュエータ50に接着されている。第1保護シート40は、第2保護シート60と共に、アクチュエータ50を挟持している。
【0028】
アクチュエータ50は、第1保護シート40を介して可動接点30を押下するための樹脂製の部材である。アクチュエータ50は、例えば、上面及び下面が直径約0.5mm、高さが約0.2mmの円柱形状を有する。アクチュエータ50の上面は、接着剤70Dによって第2保護シート60の下面に接着され、アクチュエータ50の下面は、接着剤70Eによって、第1保護シート40の上面に接着されている。アクチュエータ50は、第1保護シート40及び第2保護シート60によって挟持されている。アクチュエータ50は、押下部材の一例である。
【0029】
第2保護シート60は、例えば、厚さが約0.05mmの可とう性の絶縁樹脂シートである。第2保護シート60の中央部の下面は、接着剤70Dによって、アクチュエータ50の上面に接着されている。第2保護シート60は、第1保護シート40と共に、アクチュエータ50を挟持している。
【0030】
図3及び5に示す通り、接着領域T1において、第1保護シート40の上面が、第2保護シート60の下面に接着剤70Cによって接着されている。接着領域T1は、枠体12の外壁面12bと、枠体12の外壁面12bよりも枠体12の内壁面12a側の所定の位置M1との間に枠体12の幅方向に広がった領域である。位置M1は、接着領域T1の内側端部に相当し、プッシュスイッチ1のピーク荷重P1が約1.5N、プッシュスイッチ1のクリック率C1が約0.6となる様に設定されている。接着領域T1の幅d1(枠体12の外壁面12bと位置M1との間の距離)は、枠体12の周方向に沿って略一定の約0.36mmである。
【0031】
図6(a)~(e)は、プッシュスイッチ1の製造方法を説明するための図である。
【0032】
まず、
図6(a)に示す通り、予め第1電極23A、23B、第2電極24A、24B、並びに図示しない貫通電極及び裏面配線が設けられた基板11の端部の上面と、枠体12の下面とを、接着剤70Aによって接着することにより、凹部13を有するケース10が得られる。
【0033】
次に、
図6(b)に示す通り、ケース10の凹部13の底面上に、中央固定接点21、周辺固定接点22、及び可動接点30が固定される。中央固定接点21は、第1電極23A、23Bと導通する様に固定される。周辺固定接点22は、第2電極24A及び24Bと導通する様に固定される。可動接点30の端部は、周辺固定接点22上に固定される。
【0034】
次に、
図6(c)に示す通り、第1保護シート40の端部の下面を接着剤70Bによって枠体12の上面に接着することにより、中央固定接点21、周辺固定接点22、及び可動接点30が凹部13内に封入される。
【0035】
次に、
図6(d)に示す通り、枠体12の外壁面12bと、枠体12の外壁面12bよりも枠体12の内壁面12a側の所定の位置M1との間に枠体12の幅方向に広がった接着領域T1において、第1保護シート40の上面に接着剤70Cが塗布される。所定の位置M1は、プッシュスイッチ1のピーク荷重P1及びクリック率C1が所望の値になる様に設定される。
【0036】
次に、
図6(e)に示す通り、アクチュエータ50が第1保護シート40及び第2保護シート60の間に配置される様に、接着剤70Cにより第2保護シート60の端部の下面を第1保護シート40の端部の上面に接着して、プッシュスイッチ1が得られる。
【0037】
図7(a)は、他のプッシュスイッチ2の
図5と同様の断面図であり、
図7(b)は、更に他のプッシュスイッチ3の
図5と同様の断面図である。
【0038】
プッシュスイッチ2及び3は、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域以外についてはプッシュスイッチ1と同様の構成を有する。プッシュスイッチ2及び3の第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域以外の構成については、説明を省略する。プッシュスイッチ2及び3は、プッシュスイッチ1と同様の製造方法によって製造可能である。
【0039】
図7(a)に示す通り、プッシュスイッチ2では、接着領域T2において、第1保護シート40の上面が、第2保護シート60の下面に接着剤70Cによって接着されている。接着領域T2は、枠体12の外壁面12bと、枠体12の外壁面12bよりも枠体12の内壁面12a側の所定の位置M2との間に枠体12の幅方向に広がった領域である。位置M2は、接着領域T2の内側端部に相当し、プッシュスイッチ2のピーク荷重P2が約1.83N、プッシュスイッチ2のクリック率C2が約0.5となる様に設定されている。位置M2は、プッシュスイッチ2の短手方向においては、枠体12の内壁面12aに一致している。接着領域T2の幅d2(枠体12の外壁面12bと位置M2との間の距離)は、枠体12の周方向に沿って略一定の約0.5mmである。
【0040】
図7(b)に示す通り、プッシュスイッチ3では、接着領域T3において、プッシュスイッチ3の第1保護シート40の上面が、第2保護シート60の下面に接着剤70Cによって接着されている。接着領域T3は、枠体12の外壁面12bと、枠体12の外壁面12bよりも枠体12の内壁面12a側の所定の位置M3との間に枠体12の幅方向に広がった領域である。位置M3は、接着領域T3の内側端部に相当し、プッシュスイッチ3のピーク荷重P3が約2.38N、プッシュスイッチ3のクリック率C3が約0.41となる様に設定されている。位置M3は、プッシュスイッチ3の短手方向においては、枠体12の内壁面12aよりもアクチュエータ50側に位置している。接着領域T3の幅d3(枠体12の外壁面12bと位置M3との間の距離)は、枠体12の周方向に沿って略一定の約0.63mmである。
【0041】
図8(a)は、プッシュスイッチの第1保護シート及び第2保護シートの接着領域(枠体12の外壁面12bと所定の位置との間に枠体12の幅方向に広がった領域)の幅dとピーク荷重Pとの関係を示したグラフである。
【0042】
図8(a)における横軸は、接着領域の幅dを示す。
図8(a)における縦軸は、プッシュスイッチ2のピーク荷重P2を100%とした、相対的なピーク荷重の大きさP(%)を示す。
【0043】
図8(a)に示す通り、プッシュスイッチ1のピーク荷重P1は約82%であり、プッシュスイッチ3のピーク荷重P3は約130%である。したがって、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域の幅を短くするとピーク荷重は減少し、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域の幅を長くするとピーク荷重は増加する。
【0044】
図8(b)は、プッシュスイッチの第1保護シート及び第2保護シートの接着領域の幅dとクリック率Cとの関係を示したグラフである。
【0045】
図8(b)における横軸は、接着領域の幅dを示す。
図8(b)における縦軸は、プッシュスイッチ2のクリック率C2を100%とした、相対的なクリック率の大きさC(%)を示す。
【0046】
図8(b)に示す通り、プッシュスイッチ1のクリック率C1は約120%であり、プッシュスイッチ3のクリック率C3は約82%である。したがって、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域の幅を短くするとクリック率Cは増加し、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域の幅を長くするとクリック率Cは減少する。
【0047】
以上より、プッシュスイッチにおいて、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域の幅を調整することにより、プッシュスイッチのピーク荷重及びクリック率を調整することが可能となる。
【0048】
図9は、更に他のプッシュスイッチ4の
図5と同様の断面図である。
【0049】
プッシュスイッチ4は、第1保護シート40と第2保護シート60とを接着する接着剤以外についてはプッシュスイッチ1と同様の構成を有するので、その接着剤以外の構成については、説明を省略する。プッシュスイッチ4は、プッシュスイッチ1と同様の製造方法によって製造可能である。
【0050】
プッシュスイッチ4は、アクチュエータ50の下面と第1保護シート40の上面とが、接着剤70E’によって接着されている。接着剤70E’は、直径を約0.27mmとする、アクチュエータ50の上面及び下面と同心円状の円形状を有する。プッシュスイッチ4では、接着剤70E’の直径がアクチュエータ50の上面及び下面の直径(約0.5mm)よりも短く、接着剤70E’はアクチュエータ50の下面の一部のみを覆っている。プッシュスイッチ4では、接着剤70E’がアクチュエータ50の下面の一部のみを覆っているため、
図9に示すプッシュスイッチ4の中心部分Cからずれた位置でプッシュスイッチ4を押圧した場合のピーク荷重及びクリック率のばらつきが減少する。
【0051】
上述の例では、プッシュスイッチ1は、アクチュエータ50の上面を第2保護シート60の下面に接着するための接着剤70D、及びアクチュエータ50の下面を第1保護シート40の上面に接着するための接着剤70Eを有している。しかしながら、これに限らず、プッシュスイッチでは、接着剤70D及び接着剤70Eのいずれかを有さなくてもよい。
【0052】
第1保護シート40及び第2保護シート60の接着強度を充分に確保するために、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域の幅dは、枠体12の外壁面12bと枠体12の内壁面12aとの距離の3分の2よりも長い方が好ましい。
【0053】
プッシュスイッチのピーク荷重及びクリック率のばらつきを充分に抑えるために、第1保護シート40及び第2保護シート60の接着領域の幅dは、枠体12の一方の外壁面12bとこれに対向する外壁面12bとの距離の3分の1よりも短い方が好ましい。
【0054】
上述のプッシュスイッチ1では、ケース10を構成する基板11及び枠体12は別体とした。しかしながら、これに限らず、基板11及び枠体12は一体的に構成されていてもよい。
【0055】
上述のプッシュスイッチ1では、接着領域T1の幅d1は、枠体12の周方向に沿って略一定の約0.36mmであるとした。しかしながら、これに限らず、接着領域T1の幅は、プッシュスイッチ1の短手方向と長手方向とで異なる値であってもよく、また、枠体12の周方向に沿って変化してもよい。
【0056】
上述のプッシュスイッチ1では、接着領域T1の一端部は、枠体12の外壁面12bであるとした。しかしながら、これに限らず、接着領域T1の一端部は、必ずしも枠体12の外壁面12bに一致していなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1、2、3、4 プッシュスイッチ
10 ケース
11 基板
12 枠体
13 凹部
20 固定接点
21 中央固定接点
22 周辺固定接点
23A、23B 第1電極
24A、24B 第2電極
30 可動接点
40 第1保護シート
50 アクチュエータ
60 第2保護シート
70A、70B、70C、70D、70E、70E’ 接着剤