(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】赤道儀用極軸合わせ支援装置
(51)【国際特許分類】
G01C 1/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
G01C1/00 B
(21)【出願番号】P 2021139742
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2021-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521382986
【氏名又は名称】藤田 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【氏名又は名称】白井 重隆
(72)【発明者】
【氏名】藤田 文彦
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】特許第6892166(JP,B1)
【文献】特開平8-201703(JP,A)
【文献】特表2015-507178(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111238453(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00
G03B 17/56
F16M 11/00
H04N 5/222
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3本の支脚が120°ピッチで配された三脚に搭載される赤道儀の極軸合わせを支援するための赤道儀用極軸合わせ支援装置であって、
前記3本の支脚は、それぞれ天体観測の際に、極軸の方向に配される極軸側支脚、該極軸側支脚より東方に配される東側支脚、および、前記極軸側支脚より西方に配される西側支脚からなり、
装置本体と、
該装置本体に設けられた方位磁石と、
前記装置本体に配設されて、光軸が一致する2本のレーザ光をそれぞれ反対方向に照射する2つのレーザ発振器と、
前記東側支脚と前記西側支脚とに配されて、対応するレーザ発振器から照射された前記各レーザ光の的となる一対のレーザ照射ターゲットとを備えたことを特徴とする赤道儀用極軸合わせ支援装置。
【請求項2】
前記各レーザ照射ターゲットは、対応する支脚の同一高さ位置に配され、
前記装置本体には、前記各レーザ発振器を、対応するレーザ照射ターゲットの高さ位置まで水平に昇降させる発振器水平昇降手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置。
【請求項3】
前記発振器水平昇降手段は、前記装置本体が搭載される本体側三脚で、
該本体側三脚の上部台には、水平レベル器と、前記装置本体を水平旋回させる回転雲台とが配されたことを特徴とする請求項2に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三脚に搭載された赤道儀において、極軸を地軸と平行にセッティングする極軸合わせを支援するための赤道儀用極軸合わせ支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
天体望遠鏡(鏡筒)の架台として、3本の支脚が120°ピッチで配された三脚上に搭載される赤道儀が知られている(例えば、特許文献1など)。この赤道儀は、3本の支脚を有する三脚の上部台(雲台)に赤経体と赤緯体とを介して天体望遠鏡を載置したものである。なお、3本の支脚は、極軸側支脚(北半球では北側支脚、南半球では南側支脚)と、西側支脚と、東側支脚とからなる。以下、ここでは北半球での天体観測を例とする。
天体観測時には、赤経体の中心を通る極軸(赤径軸)と、赤経体の先端部に軸支された赤緯体の中心を通る赤緯軸の2軸を調整しながら、天体望遠鏡により所望の天体を視界に導入し、その後、日周運動(地球の自転速度)に合わせて天体望遠鏡を極軸の回りにモータ回転させることで、所望の天体を自動追尾する。
その際、天体望遠鏡にカメラを装着すれば、所望の天体の追尾撮影が可能となる。
【0003】
ところで、赤道儀を利用した天体観測では、赤道儀の極軸を地球の自転軸(地軸)と平行にセッティングする“極軸合わせ”を行う必要がある。極軸合わせでは、まず、天体望遠鏡により北天を観察し、北極星が赤緯体の一端部に装着され、かつ赤経軸と平行に設置された天体望遠鏡の視界中心(光軸)から所定距離に位置するように、赤道儀の方位および高度調整を行う。
なお、赤道儀用の三脚は、例えば、上部台の上面から突出した水平支点ピンを介して、3本の支脚のうちの1本(以下、北側支脚)が、赤道儀搭載時に、平面視して赤緯体の極軸上に配されるように構成されている。なお、南半球での天体観測時には、北側支脚ではなく南側支脚がこの極軸上に配される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的な赤道儀のセッティング時には、方位磁石を用いて、赤道儀の(極軸の)方位を真北に向ける必要がある。
しかしながら、赤道儀は電動モータを内蔵しており、かつ赤道儀を構成する多数の金属部品(ねじを含む)も、帯磁しているものがある。
そのため、赤道儀の周辺で方位磁石を使用すれば、これら電動モータや帯磁部品の磁界の影響で、極軸の方位を知ることは困難であった。これにより、例えば、使用者は手持ちしたり、離れた場所に置いた方位磁石を見ながら、北側支脚を真北に向ける調整作業が面倒で、その方位の調整精度も低かった。
【0006】
そこで、発明者は鋭意研究の結果、120°ピッチの三脚に搭載された赤道儀は、天体観測時に2本の支脚を真東と真西とに向ければ、残り1本の支脚(北側支脚)は必ず真北に向けられることに着目した。
すなわち、まず、装置本体に、互いの光軸が一致したレーザ光をそれぞれ反対方向に照射する2つのレーザ発振器と、方位磁石とをそれぞれ取り付ける一方、東側支脚と西側支脚とに一対のレーザ照射ターゲットを配置した極軸合わせ支援装置を作製し、その後、天体観測時に、この支援装置を東西2本の支脚間に配置して、方位磁石を用いて各レーザ照射方向を真東・真西に向けた2つのレーザ発振器から2本のレーザ光をそれぞれ照射し、次いで、各レーザ光が対応するレーザ照射ターゲットに当たるように、三脚の据え付け状態(位置)を調整すれば、残り1本の北側支脚は必ず真北(極軸)の方位を向く。これにより、上述した課題は全て解消されることを知見し、本発明を完成させた。
【0007】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みなされたもので、電動モータ付きの赤道儀の磁界の影響を受けることなく、簡単かつ高精度に三脚の極軸側支脚となる1本の支脚の方位を、赤道儀の極軸(北半球では真北、南半球では真南)の方向に向けることができ、これにより赤道儀の極軸合わせを支援することができる赤道儀用極軸合わせ支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の本発明は、3本の支脚が120°ピッチで配された三脚に搭載される赤道儀の極軸合わせを支援するための赤道儀用極軸合わせ支援装置であって、前記3本の支脚は、それぞれ天体観測の際に、極軸の方向に配される極軸側支脚、該極軸側支脚より東方に配される東側支脚、および、前記極軸側支脚より西方に配される西側支脚からなり、(この赤道儀用極軸合わせ支援装置は、)装置本体と、該装置本体に設けられた方位磁石と、前記装置本体に配設されて、光軸が一致する2本のレーザ光をそれぞれ反対方向に照射する2つのレーザ発振器と、前記東側支脚と前記西側支脚とに配されて、対応するレーザ発振器から照射された前記各レーザ光の的となる一対のレーザ照射ターゲットとを備えたことを特徴とする赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
【0009】
ここでいう赤道儀用極軸合わせ支援装置とは、天体観測時、赤道儀の極軸合わせに伴い、方位磁石を利用して、三脚の極軸側支脚(北半球での北側支脚、南半球での南側支脚)を極軸(と平行な)方向に向ける作業を支援するための装置である。なお、例えば磁北と真北(磁南と真南の場合も同じ)との間には、場所や時間によって所定のずれ(偏角)が生じている。そのため、方位磁石により真北(または真南)を求める際には、当然ながら磁北(または磁南)の方角から偏角分の補正が必要となる。
【0010】
三脚の種類は、上部台(雲台)の周りに3本の支脚(極軸側支脚、東側支脚および西側支脚)が120°ピッチで配されたものであれば任意である。
各支脚としては、例えば、テレスコ(登録商標)ピック方式などの各種の伸縮構造を有して、高さ(長さ)調整可能なものを採用してもよい。
極軸側支脚とは、北半球での天体観測時(極軸合わせ時)に、真北に向けられる北側支脚、または、南半球での天体観測時に、真南に向けられる南側支脚である。
東側支脚とは、3本の支脚のうち、南半球または北半球での天体観測時に、真東(極軸側支脚より東方)に配される支脚である。
西側支脚とは、南半球または北半球での天体観測時に、真西(極軸側支脚より西方)に配される支脚である。
なお、3本の支脚は、いずれを軸側支脚、東側支脚、西側支脚としてもよい。
【0011】
赤道儀の種類は、日周運動(地球の自転速度)に合わせて天体望遠鏡を極軸の回りにモータ回転させることで、所望の天体を自動追尾するものであれば限定されない。
“極軸合わせ”とは、赤道儀の極軸を地球の自転軸(地軸)と平行にセッティングする作業をいう。
装置本体の素材、形状、サイズなどは任意である。
装置本体には、水平レベル器や水平旋回手段などを設けてもよい。
方位磁石の種類は限定されない。例えば、ベースプレートに、磁針の中心部を中心にして回転可能な目盛リングを有する方位磁石が固定され、かつこのプレートのうち、方位磁石の取付け部分の近傍に、極軸方向(真北まはた真南)を示す矢印が表示されたベースプレートコンパスでもよい。その他、スマートフォンに搭載されたコンパスでもよい。
【0012】
レーザ発振器の種類は任意である。例えば、各種の気体レーザ(CO2レーザ、エキシマレーザ等)、各種の固体レーザ(ルビーレーザ、Nd:YAGレーザ等)、各種の液体レーザ(色素レーザ等)、各種の半導体レーザ(レーザダイオード等)を採用することができる。
各レーザ発振器は、装置本体に固定してもよい。または、手動式または自動式の発振器移動手段を介して、装置本体に昇降を含む移動可能に設けてもよい。
「光軸が一致する2本のレーザ光をそれぞれ反対方向に照射する」とは、レーザ照射口が180°位相状態で配された2本のレーザ発振器を使用し、これらのレーザ発振器からレーザ光を照射することを意味する。
【0013】
レーザ照射ターゲットの種類は限定されない。例えば、対応する支脚に一体的に表示された単なるマークでも、対応する支脚とは別体のターゲット部材でもよい。
また、レーザ照射ターゲットは、対応する支脚に直接配置されても、例えば、対応する支脚に連結されたブラケット等を利用し、支脚から離れて配置されてもよい。
レーザ照射ターゲットの形状、サイズは任意である。
また、対応する支脚における各レーザ照射ターゲットの高さ位置は限定されない。ただし、各レーザ照射ターゲットは、東,西側支脚の同じ高さ位置に配される方が好ましい。この場合、各レーザ発振器は、レーザ光が互いに反対方向へ水平に照射されるものとなる。
【0014】
また、請求項2に記載の本発明は、前記各レーザ照射ターゲットは、対応する支脚の同一高さ位置に配され、前記装置本体には、前記各レーザ発振器を、対応するレーザ照射ターゲットの高さ位置まで水平に昇降させる発振器水平昇降手段が設けられたことを特徴とする請求項1に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
【0015】
発振器水平昇降手段の昇降機構の種類は限定されない。例えば、パンタグラフ方式のもの、ねじ送り方式のもの、テレスコピック方式のものなどでもよい。
また、発振器水平昇降手段は、手動方式のものでも、電動モータ等の駆動部を有した自動方式のものでもよい。
発振器水平昇降手段は、1つだけでなく、同一または異なる種類のものを組み合わせてもよい。
発振器水平昇降手段には、各レーザ発振器を水平に昇降させるために水平レベル器を設けてもよい。
【0016】
さらに、請求項3に記載の本発明は、前記発振器水平昇降手段は、前記装置本体が搭載される本体側三脚で、該本体側三脚の上部台には、水平レベル器と、前記装置本体を水平旋回させる回転雲台とが配されたことを特徴とする請求項2に記載の赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
【0017】
本体側三脚の構造は、3本の支脚が120°ピッチで配されたものであれば任意である。各支脚には、伸縮構造を有したものを採用してもよい。
水平レベル器の種類は任意である。
回転雲台の構造も任意である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明の使用方法の一例を挙げれば、北半球での赤道儀の極軸合わせに際して、まず赤道儀用極軸合わせ支援装置を観測場所に配置し、方位磁石を利用して、磁針が示す磁北に偏角を考慮した真北を求める。その後、この真北を基準にして得られた真東と真西との方向に、各レーザ発振器の光軸をそれぞれ向ける。
次いで、各レーザ発振器からレーザ光をそれぞれ照射し、これらのレーザ光が、対応するレーザ照射ターゲットに当たるように、三脚の東側支脚および西側支脚の各高さと、観測場所上の各平面的な位置とをそれぞれ調整する。その結果、残った極軸側支脚は必ず真北を向く。
【0019】
これにより、電動モータを内蔵した赤道儀の磁界の影響を受けることなく、簡単かつ高精度に三脚の極軸側支脚(北半球での北側支脚、南半球では南側支脚)の方位を極軸の方向(北半球での真北、南半球での真南)に向けることができ、赤道儀の極軸合わせを支援することができる。
【0020】
特に、請求項2に記載の本発明によれば、あらかじめ各レーザ照射ターゲットを、対応する支脚の同一高さ位置に配置し、その後、発振器水平昇降手段により、光軸を水平状態のまま、各レーザ発振器を各レーザ照射ターゲットの高さ位置まで昇降させることができる。そのため、より簡単かつ高精度に、三脚の極軸側支脚の方位を極軸の方向に向けることができる。
【0021】
また、請求項3に記載の本発明によれば、例えば、まず水平レベル器により水平出しして、回転雲台の水平旋回を実現させる。その後、各レーザ発振器を、対応する支脚の各レーザ照射ターゲットと同一高さ位置に配置する際には、本体側三脚により装置本体を水平に昇降させるとともに、回転雲台により装置本体を水平旋回させる。
これにより、発振器水平昇降手段として、簡単でかつ低コストの構造を採用しながら、三脚の極軸側支脚の方位を、より高精度に赤道儀の極軸の方向に向けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置の使用状態の斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置の使用状態の要部拡大斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置の略正面図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置の略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、北半球(日本)での天体観測に使用される場合を例とする。
【実施例】
【0024】
図1において、10は本発明の実施例1に係る赤道儀用極軸合わせ支援装置である。
この赤道儀用極軸合わせ支援装置10は、3本の支脚11~13が120°ピッチで配された三脚14に搭載される赤道儀15の極軸合わせを支援するものである。
【0025】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。
まず、
図1を参照して、赤道儀15および三脚14について説明する。
赤道儀15は、3本の支脚11~13を有する三脚14の上部台(雲台)50に赤経体16と赤緯体17とを介して、図示しない天体望遠鏡を載置するものである。この赤道儀15は、内蔵の電動モータ(図示せず)により、日周運動(地球の自転速度)に合わせて天体望遠鏡を極軸aの回りにモータ回転させて、所望の天体を自動追尾する。このとき、天体望遠鏡にカメラを装着することで、所望の天体の追尾撮影が可能となる。
【0026】
図1に示すように、三脚14は、それぞれ天体観測の際に極軸aの方向に配される極軸側支脚11と、極軸側支脚11より西方に配される西側支脚12と、極軸側支脚11より東方に配される東側支脚13と、これら3本の支脚11~13が、周方向に120°ピッチで軸支される前記上部台50とを有している。
各支脚11~13は、各断面矩形状の上段筒部18に下段支柱部19が突没可能に挿入された2段式のテレスコピック構造のものである。各上段筒部18の中間高さ部分には、各支脚11~13が均等に広がるように支持するスリーポインテッド・スター形の支持部20が配されている。
【0027】
図2に示すように、各上段筒部18の開口する下端には、それぞれ略矩形枠状の筒端カバー21が外嵌されている。各筒端カバー21の内側枠部21aには、下段支柱部19の突出長さを調整する高さ調整ねじ22が配されている。
また、東,西側支脚12,13の各筒端カバー21のうち、同一高さ位置となる互いに対峙する一端部の上縁には、後述する2つのレーザ発振器23,24(
図1を参照)から照射された各レーザ光b1,b2(
図3を参照)の“的”となる、一対のレーザ照射ターゲット25,26が配設されている。各レーザ照射ターゲット25,26は、それぞれ中央部に小径な的孔27が穿たれた金属板片である。
【0028】
次に、
図1,
図3および
図4を参照して、実施例1の赤道儀用極軸合わせ支援装置10を具体的に説明する。
図3および
図4に示すように、この赤道儀用極軸合わせ支援装置10は、装置本体28と、装置本体28に設けられたベースプレートコンパス29と、装置本体28に配設されて、光軸が一致する2本のレーザ光b1,b2をそれぞれ反対方向に照射する前記2つのレーザ発振器23,24と、装置本体28が取り付けられて、各レーザ発振器23,24を、対応するレーザ照射ターゲット25,26の高さ位置まで水平に昇降させる本体側三脚(発振器水平昇降手段)30とを備えている。
【0029】
以下、これらの構成体を具体的に説明する。なお、説明の都合上、本体側三脚30から説明する。
本体側三脚30は、それぞれが脚の短い2段テレスコピック方式の3本の短尺支脚31と、各短尺支脚31が周方向に120°ピッチで軸支される本体側上部台34とを有している。本体側上部台34には、下から順に、装置本体28の水平出しをサポートするレベリングユニット(水平レベル器)35と、装置本体28を水平旋回させる回転雲台36とが上下2段で配設されている。この回転雲台36の上面に、装置本体28が固定されている(
図3を参照)。
【0030】
装置本体28は、縦長なカード状の矩形プレート37と、これより長尺な横長ブラケット38とを、平面視してT字状に連結した部材である(
図4を参照)。
このうち、矩形プレート37の上面には、ベースプレートコンパス29が固定されている。ベースプレートコンパス29は、縦長な矩形状のベースプレート39を有している。このベースプレート39の略外側半分には、磁針51の中心部を中心にして回転可能な目盛リング52が付いた方位磁石53が取り付けられている。また、ベースプレート39の内側半分には、目盛リング52の近傍から延びて真北(極軸方向)を示す、縦長な矢印40が表示されている。
【0031】
また、横長ブラケット38の一方の長辺部には、長さ方向に所定ピッチで4本のダブルロッドクランプ41が並列配置されている。各ダブルロッドクランプ41には、横長ブラケット38の長さ方向に軸線方向を揃えた2本のカーボンロッド42が平行にクランプされている。このうち、外側のカーボンロッド42の開口する両端部には、一対のアダプタ43を介して、2本の棒状のレーザ発振器23,24の基端部が、それぞれ着脱可能に嵌入されている。
【0032】
このとき、各レーザ発振器23,24の光軸を、カーボンロッド42の軸線に重ね合わせる。これにより、各レーザ発振器23,24から照射された2本のレーザ光b1,b2は、互いの光軸が一致する。また、カーボンロッド42の軸線方向と、ベースプレートコンパス29の矢印(真北)40の方向とは、平面視して直角に配されている。
なお、内側のカーボンロッド42は、2本のレーザ光の光軸を一致し易くするためのものである。なお、各カーボンロッド42の素材は、直径が適切で帯磁していなければ任意である。
【0033】
次に、
図1~
図4を参照して、本発明の実施例1に係る極軸合わせ支援装置10の使用方法の一例を説明する。なお、本発明の使用方法は、要旨を逸脱しなければこれに限定されない。
図1に示すように、赤道儀15の極軸合わせに際しては、まず、三脚14に配された3本の支脚11~13のうち、各レーザ照射ターゲット25,26付きの東,西側支脚12,13との間に、赤道儀用極軸合わせ支援装置10を配する。
その後、
図3に示すように、レベリングユニット35および本体側三脚30をそれぞれ使用して、装置本体28、ひいては各レーザ発振器23,24の水平出しを行う。
【0034】
その後、
図3および
図4に示すように、方位磁石53が搭載されたベースプレートコンパス29と回転雲台36とをそれぞれ利用し、ベースプレートの矢印40を真北に向ける。このとき、各レーザ発振器23,24の光軸方向(カーボンロッド42の長さ方向)と、ベースプレートコンパス29の真北を示す矢印40の方向とは、90°の位相関係にある。そのため、2本のレーザ発振器23,24の光軸は、一方が真東を向き、他方が真西を向く。
なお、磁北と真北との間には、場所や時間によって所定のずれ(偏角)が生じている。そのため、磁気コンパス39により真北を求める際には、当然ながら磁北の方角から偏角分の補正が必要となる。
【0035】
次に、
図2に示すように、この状態を維持して、西側のレーザ発振器23から真西に向けてレーザ光b1を照射する。
その後、
図1~
図3に示すように、このレーザ光b1が、西側支脚12のレーザ照射ターゲット25の的孔27と同一高さとなるように、三脚14の各支脚11~13の高さを適宜調整する。さらには、三脚14に搭載された図示しない水平レベル器を利用し、本体側上部台34、ひいては赤道儀15の水平出しを行う。なお、あらかじめ三脚14の各支脚11~13の高さを略決定し、その後、本体側三脚30を使用して、各レーザ照射ターゲット25,26の高さを調整してもよい。
【0036】
次いで、東側のレーザ発振器24から真東に向けてレーザ光b2を照射し、2本のレーザ光b1,b2が、東,西側支脚12,13の対応するレーザ照射ターゲット25,26の的孔27に当たるように、三脚14の設置状態を調整する。
こうして、三脚14の3本の支脚11~13のうち、西側支脚12が真西を向き、東側支脚13が真東を向くことで、必然的に残りの極軸側支脚(北側支脚)11は、真北を向く。
その後は、単に赤道儀15を上部台50に搭載することで、赤経体16の極軸aの方向が真北となる。
【0037】
これにより、電動モータを内蔵した赤道儀15の磁界の影響を受けることなく、簡単かつ高精度に三脚14の極軸側支脚11の方位を極軸aの方向(北半球での真北)に向けることができ、赤道儀15の極軸合わせを支援することができる。
また、実施例1では、このように各レーザ照射ターゲット25,26を、対応する東,西側支脚12,13の同一高さ位置に配置し、かつ本体側三脚30により、光軸を水平状態のまま、各レーザ発振器23,24を各レーザ照射ターゲット25,26の高さ位置まで昇降させることができる。その結果、より簡単かつ高精度に、三脚14の極軸側支脚11の方位を極軸(真北)aの方向に向けることができる。
【0038】
なお、各レーザ照射ターゲット25,26は、東,西側支脚12,13に着脱可能としてもよい。その場合、例えば、屋外において、凹凸のある法面での天体観測の場合には、あらかじめ各レーザ照射ターゲット25,26を、東,西側支脚12,13のうち、各レーザ光b1,b2の照射に好適な高さ位置に変更し、その後、各レーザ発振器23,24を昇降させて、光軸の水平状態を維持したまま、各レーザ発振器23,24を対応する支脚の的孔27の高さ位置に合わせることができる。
【0039】
これにより、観測場所に影響されず、三脚14の極軸側支脚11の方位を、より高精度に極軸aの方向に向けることができる。
また、このように装置側三脚14にレベリングユニット35と回転雲台36とを配設したため、簡単でかつ低コストの構造でありながら、三脚14の極軸側支脚11の方位を、さらに高精度に赤道儀15の極軸aの方向に向けることができる。
【0040】
なお、赤道儀用極軸合わせ支援装置10の使用方法は上述したものに限らず、例えば、以下の方法を採用してもよい。
すなわち、まず赤道儀用極軸合わせ支援装置10を所定の観測場所に配置し、装置本体28の水平出しを行う。その後、偏角を考慮して、ベースプレートコンパス29の矢印40を真北に向ける。
【0041】
次に、2つのレーザ発振器23,24の何れかよりレーザ光b1(b2)を照射し、それに対応するレーザ照射ターゲット25(26)に合わせて、東,西側支脚12,13のうち、何れかの支脚の高さを調整する。その後、この支脚を基準にして三脚14の水平出しを行う。最後に、これらのレーザ発振器23,24からレーザ光b1,b2をそれぞれ照射し、東,西側支脚12,13の位置を合わせる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、三脚に搭載される赤道儀の極軸合わせに有用な技術である。
【符号の説明】
【0043】
10 赤道儀用極軸合わせ支援装置
11 極軸側支脚
12 西側支脚
13 東側支脚
14 三脚
15 赤道儀
23,24 レーザ発振器
25,26 レーザ照射ターゲット
28 装置本体
30 本体側三脚(発振器水平昇降手段)
34 本体側上部台
35 レベリングユニット(水平レベル器)
36 回転雲台
53 方位磁石
a 極軸
b1,b2 レーザ光
【要約】
【課題】モータ付赤道儀の磁界の影響を受けず、簡単かつ高精度に三脚の極軸側支脚の方位を極軸方向に向けて、赤道儀の極軸合わせを支援できる赤道儀用極軸合わせ支援装置を提供する。
【解決手段】極軸合わせ時、三脚14の東,西側支脚12,13間に、赤道儀用極軸合わせ支援装置10を配置後、方位磁石53を利用し、各レーザ発振器23,24の光軸を真東,真西に向ける。次に、この状態で、各レーザ発振器23,24からのレーザ光b1,b2が、支脚12,13の各レーザ照射ターゲット25,26に当たるように、三脚14の位置を調整する。これにより、赤道儀15の磁界の影響を受けず、簡単かつ高精度に極軸側支脚11の方位を極軸aに合わせられる。
【選択図】
図1