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▶ パーキンエルマー ヘルス サイエンス インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-17
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】動的電子衝撃イオン源
(51)【国際特許分類】
   H01J 49/14 20060101AFI20220128BHJP
   H01J 49/42 20060101ALI20220128BHJP
   G01N 27/62 20210101ALN20220128BHJP
【FI】
H01J49/14 700
H01J49/42 150
G01N27/62 E
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021500691
(86)(22)【出願日】2019-07-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 US2019041540
(87)【国際公開番号】W WO2020014571
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-01-29
(31)【優先権主張番号】16/033,927
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509329888
【氏名又は名称】パーキンエルマー ヘルス サイエンス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウェルキー、デイビッド ジー.
(72)【発明者】
【氏名】チェン、トン
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-031173(JP,A)
【文献】米国特許第04206383(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 49/14
H01J 49/42
G01N 27/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源チャンバであって、
第1の入口ポートと、
前記第1の入口ポートとは異なる第2の入口ポートと、
出口ポートと、
前記イオン源チャンバ内に磁場を生成する磁場発生器と、
前記イオン源チャンバ内に第1の電場を生成する第1の電場発生器と、
前記イオン源チャンバ内に第2の電場を生成する第2の電場発生器とを備えるイオン源チャンバを有するシステムにおいて、
前記イオン源チャンバは、動作中に、
前記第1の入口ポートから気相中性種を受け取る工程と、
前記第2の入口ポートから電子の流れを受け取る工程と、
前記磁場発生器を使用して、前記イオン源チャンバを通して電子を導く工程と、
前記気相中性種と前記電子の間の相互作用を通じて、前記イオン源チャンバ内のイオン化領域でイオンを生成する工程と、
前記第1の電場発生器を使用して、前記イオン源チャンバからのイオンの少なくとも一部を、イオンビーム軸に沿って出口ポートを通して集束及び加速する工程とを行い、
前記第2の電場発生器は、前記イオン源から加速されたイオンの少なくとも一部に対する磁場の影響を低減又は排除し、
前記第2の電場の強度は前記磁場の強度に基づいて選択される、システム。
【請求項2】
前記電子が前記イオン源チャンバ内を第1の横方向に流れ、前記第1の横方向はイオンビーム軸に直交し、
前記磁場発生器は、前記第1の横方向に、前記電子の流れと一致する磁場を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記磁場発生器が、少なくとも2つの永久磁石を有する、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記第2の電場発生器は、第2の横方向に第2の電場を生成し、前記第2の横方向は、前記第1の横方向に直交し、前記イオンビーム軸に直交する、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記イオン源チャンバからのイオンの少なくとも一部を、イオンビーム軸に沿って出口ポートを通して集束及び加速する工程は、
第1の質量電荷比(m/z)範囲を有する第1の部分集合のイオンの各イオンに、前記第1の電場発生器を使用してイオンビーム軸に沿ってイオンを集束及び加速する第1の力を印加し、ここで、磁場中の第1の部分集合のイオンの動きにより、前記第1の部分集合のイオンは第2の力を受け、前記第2の力は前記イオンビーム軸と磁場の方向との両方に直交する、第1の力を印加する工程と、
前記第1の部分集合のイオンの各イオンに、前記第2の電場発生器を使用して第3の力を印加する工程と、
前記第1の部分集合のイオンを出口ポートに導繰工程とを含んでなり、
ここで、前記第1の部分集合のイオンの各イオンについて、前記第3の力と前記第2の力は方向が逆であり、大きさが実質的に等しく、前記第2の電場の強度はさらに、前記第1の部分集合のイオンの速度に基づいて選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記イオン源チャンバからのイオンの少なくとも一部を、イオンビーム軸に沿って出口ポートを通して集束及び加速する工程は、
前記第1のm/z範囲とは異なる第2のm/z範囲を有するイオンの第2の部分集合の各イオンに、前記第1の電場発生器を使用して第4の力を印加し、それにより、前記第2の部分集合のイオンは、磁場中の前記第2の部分集合のイオンの動きによって第5の力を受け、前記第5の力は、イオンビーム軸と磁場の方向の両方に直交する、第4の力を印加する工程と、
前記第2の部分集合のイオンの各イオンに、第2の電場発生器を使用して第6の力を印加する工程とを含んでなり、
前記第2の部分集合のイオンの各イオンについて、前記第5の力の大きさは、前記第6の力の大きさとは異なる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記第2の電場発生器は、前記イオン化領域の周辺に沿って配置された第1の電極を含み、前記第2の電場発生器は、第1の電位を前記第1の電極に印加して、前記第2の電場を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第2の電場発生器は、前記イオン化領域の周辺に沿って前記第1の電極の反対側に配置された第2の電極をさらに備え、前記第2の電場発生器は、第2の電場を生成するために第2の電位を前記第2の電極に印加する、請求項7に記載のシステム。電極。
【請求項9】
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された1つ以上の電気要素をさらに含み、前記第2の電場発生器は、1つ以上の前記電気要素に第3の電位を印加し、前記第3の電位は、前記第1の電位と前記第2の電位の平均である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の電極の内側輪郭及び前記第2の電極の内側輪郭は、少なくとも部分的に、一定の断面形状を画定し、前記断面形状は、多角形、楕円、円、双曲線、又は放物線のうちの1つである、請求項8に記載のシステム。
【請求項11】
質量分析器をさらに備え、前記質量分析器は、前記イオン源チャンバから前記出口ポートを介してイオンの少なくとも一部を受け取る、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の電場発生器は、前記第1の入口ポートに近接して配置された入口電極を含み、前記第1の電場発生器は、前記入口電極に電位を印加して前記第1の電場を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記第1の電場発生器は、前記出口ポートに近接して配置された出口電極を含み、前記第1の電場発生器は、前記出口電極に電位を印加して前記第1の電場を生成する、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
柱状形状のイオン源チャンバにおいて、
前記チャンバの第1の端部に配置された入口電極アセンブリと、
前記チャンバの第2の端に配置された出口電極アセンブリと、
前記第1の端部と前記第2の端部との間の軸に沿って配置され、イオンが生成されるイオン源の体積を画成する、本体電極アセンブリと、
前記イオン源チャンバ内の第1の軸方向であって前記軸と平行である前記第1の軸方向に第1の電場を生成して、イオン源チャンバから出口ポートを通って分析物イオンの少なくとも一部を集束及び加速する、第1の電場発生器と、
第2の電場発生器であって、動作中に、前記イオン源チャンバ内の軸に直交する第1の横方向に第2の電場を生成し、これにより、イオン源から加速される、第1のm/zを有するイオンの運動に対する磁場の影響の範囲が減少又は排除され、前記第2の電場の強度は前記磁場の強度に基づいて選択される、第2の電場発生器と、
電子源と、
前記電子源から電子を取り込むために、入口電極アセンブリ又は本体電極アセンブリに配置された第1の入口ポートと、
少なくとも1つの分析物を取り込むために、入口電極アセンブリ又は本体電極アセンブリに配置された第2の入口ポートと、
軸及び第1の横方向に垂直な第2の横方向に双極子磁場を生成する磁石アセンブリとを備え
前記電子源は、前記チャンバ内に電子ビームの一部がある状態で、前記イオン源チャンバを、前記磁場と一致する第2の横方向に通過する電子ビームを生成する、イオン源チャンバ。
【請求項15】
前記入口電極アセンブリの内面が円錐台状構造である、請求項14に記載のイオン源。
【請求項16】
前記本体電極アセンブリが中空の柱状構造のものであり、
前記本体電極の、前記軸に垂直な横断面上での断面形状は、円、双曲線、放物線、多角形のうちの1つであり、
前記軸に垂直な横断面上での、前記本体電極の断面形状は、軸対称又は軸非対称のいずれかである、請求項14に記載のイオン源。
【請求項17】
前記入口電極アセンブリ、前記出口電極アセンブリ、及び前記本体電極アセンブリに供給されるそれぞれのDC電圧をリアルタイムで変化させる制御モジュールを備え、その結果、請求項16の前記第1のm/z範囲は、動作中に全質量範囲をスキャンすることができる、システム。
【請求項18】
前記第2の電場の強度はさらにm及びzに基づいて選択される、請求項5に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析システム、より詳細には、イオン化されたサンプル成分をイオン源から質量分析器に移動させることに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフィ/質量分析(GC/MS)は、ガスクロマトグラフィと質量分析の機能を組み合わせて、テストサンプル内のさまざまな物質を同定する分析手法である。
一部のGC/MS機器では、サンプルが成分に分離され、イオン源によってイオン化される。次に、イオン化されたサンプル成分は、検査のために下流の質量分析計(四重極質量フィルターなど)に移される。イオンの収集を改善するために、電極レンズ(例えば、直流レンズ)を使用して、イオンを下流の輸送チャンバ及び質量分析器に集束させることができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
この開示は、質量分析機器において、イオン源から下流の質量分析計の入口にイオンを効率的に移動させるためのシステム及び技術を特徴とする。
GC/MS機器では、ガスクロマトグラフィによってサンプルがその成分に分離される。一例として、キャピラリーカラムを使用して、カラム内での相対的な保持に基づいてサンプル成分を分離することができる。続いて、カラムから溶出したサンプル成分をイオン化し、イオン化したサンプル成分を質量分析計で分析する。
【0004】
サンプル成分は、イオン源を使用してイオン化できる。イオン源の例には、電子イオン化(EI)イオン源及び化学イオン化(CI)イオン源が含まれる。
一例として、EIイオン源は、ガスクロマトグラフィから溶出されたサンプル成分の流入物を受け取り、サンプル成分をイオン源内のイオン化領域に向けることができる。さらに、イオン源は、イオン化領域を介して電子ビームを生成することができ、電子ビーム内の電子との相互作用によって、溶出された成分の一部をイオン化させる。次に、イオン化されたサンプル成分は、イオン源から加速され(DC電極レンズを使用するなど)、分析のために下流の質量分析計に送られる。
【0005】
一般に、質量分析計の性能は、少なくとも部分的には、受け取ったイオン化サンプル成分の焦点と角度の広がりに依存する。特に、質量分析計の性能は、イオン化されたサンプル成分の、角度の広がりが小さくなるように精密に集束されている流れを受け取ると改善される。したがって、GC/MS機器の性能を向上させるために、イオン化されたサンプル成分は、理想的には、精密に集束されたビーム経路に沿って、角度広がりの程度が低い状態でイオン源チャンバを出る必要がある。
【0006】
さらに、場合によっては、イオン源は、電子ビームの方向に平行であり、かつ電子ビームと一致する方向に、磁場を生成するように構成された磁場発生器を含むことができる。これは、例えば、電子ビームの電子を電子ビームの方向の周りにらせん方向に移動させるので、有用であり得る。これにより、イオン源チャンバ内の各電子の経路が長くなり、各電子がサンプル成分と相互作用してイオン化する可能性が高くなる。その結果、イオン源の効率が向上する。
【0007】
ただし、この磁場は、イオン化されたサンプル成分がイオン源を通過して出るときに、それらの経路にも影響を与える可能性がある。例えば、磁場は、イオン化されたサンプル成分に、それらの進行方向に直交する方向にローレンツ力を与え、それらの経路から逸脱させる可能性がある。結果として、イオン化されたサンプル成分は、曲がった経路に沿って、及び/又は不均一又は散乱した方式でイオン源を出る可能性があり、それによって質量分析計の性能に悪影響を与える。さらに、場合によっては、イオン化されたサンプル成分がイオン源のチャンバ壁と衝突し、イオン源チャンバからまったく出ないことがある。
【0008】
イオン源は、この効果を埋め合わせるために電場発生器を含むことができる(例えば、イオン化されたサンプル成分に対する磁場の効果を低減又は排除することによって)。一例として、電場発生器は、イオン源チャンバ内に電場を生成するように構成することができ、その結果、イオン化されたサンプル成分に追加の力が与えられる。電場によってイオン化されたサンプル成分に与えられる力は、磁場によってイオン化されたサンプル成分に与えられる力と方向が反対であるが、実質的に等しい大きさであり得、その結果、2つの力は互いに実質的に打ち消し合う。その結果、イオン化されたサンプル成分は、直線経路から逸脱したり散乱したりする可能性が低くなり、したがって、より集束された態様でイオン源チャンバから排出される。
【0009】
一態様では、システムは、イオン源チャンバを有する。イオン源チャンバは、第1の入口ポートと、第1の入口ポートとは異なる第2の入口ポートと、出口ポートと、イオン源チャンバ内で磁場を生成するように構成された磁場発生器と、イオン源チャンバ内に第1の電場を生成するように構成された第1の電場発生器と、イオン源チャンバ内に第2の電場を生成するように構成された第2の電場発生器とを有する。イオン源チャンバは、動作中に、第1の入口ポートを介して気相の中性種を受け取り、第2の入口ポートを介して電子の流れを受け取り、磁場発生器を使用してイオン源チャンバを通して電子を導き、気相中性種と電子の間の相互作用によって、イオン源チャンバ内のイオン化領域でイオンを生成し、第1の電場発生器を使用して、イオンビーム軸に沿ってイオン源チャンバから出口ポートを通ってイオンの少なくとも一部を集束及び加速するように構成される。第2の電場発生器は、イオン源から加速されたイオンの少なくとも一部に対する磁場の影響を低減又は排除するように構成される。
【0010】
この実施形態の実施には、以下の技術的特徴の1つ以上を含めることができる。
いくつかの実施形態では、電子は、イオン源チャンバ内で第1の横方向に流れることができる。第1の横方向は、イオンビーム軸に直交してもよい。磁場発生器は、第1の横方向に、電子の流れと一致する磁場を生成するように構成することができる。磁場発生器は、少なくとも2つの永久磁石を含むことができる。第2の電場発生器は、第2の横方向に第2の電場を生成するように構成することができる。第2の横断方向は、第1の横断方向に直交し、イオンビーム軸に直交することができる。
【0011】
いくつかの実施形態では、イオン源チャンバから出口ポートを介してイオンの少なくとも一部を集束及び加速することには、第1のm/z範囲を有するイオンの第1の部分集合の各イオンに、第1の電場発生器を使用する第1の力を加えてイオンビーム軸に沿ってイオンを集束及び加速し、これにより、第1の部分集合のイオンは、磁場中の第1の部分集合のイオンの移動により第2の力であって、第2の力は両方のイオンビーム軸と磁場の方向に直交する第2の力を受けることを含み得る。イオン源チャンバから出口ポートを介したイオンの少なくとも一部の集束及び加速することはまた、第1の部分集合のイオンの各イオンに、第2の電場発生器を使用する第3の力を印加し、第1の部分集合のイオンを出口ポートから誘導することを含み得る。第1の部分集合のイオンの各イオンについて、第3の力及び第2の力は、方向が反対であり、大きさが実質的に等しいものであってよい。イオン源チャンバから出口ポートを介してイオンの少なくとも一部を集束及び加速することは、第1のm/z範囲とは異なる第2のm/z範囲を有する第2の部分集合のイオンの各イオンに、第1の電場発生器を使用して第4の力を適用し、これにより、第2の部分集合のイオンは、磁場中の第2の部分集合のイオンの運動により第5の力であってイオンビーム軸及び磁場の方向の両方に直交する第5の力を受けることを含み得る。イオン源チャンバから出口ポートを介してイオンの少なくとも一部を集束及び加速することは、第2の部分集合のイオンの各イオンに、第2の電場発生器を使用して第6の力を加えることも含み得る。第2の部分集合のイオンの各イオンについて、第5の力の大きさは、第6の力の大きさとは異なる可能性がある。
【0012】
いくつかの実施形態では、第2の電場発生器は、イオン化領域の周辺に沿って配置された第1の電極を含むことができる。第2の電場発生器は、第1の電位を第1の電極に印加して第2の電場を生成するように構成することができる。第2の電場発生器は、イオン化領域の周辺に沿って第1の電極の反対側に配置された第2の電極をさらに含むことができる。第2の電場発生器は、第2の電位を第2の電極に印加して第2の電場を生成するように構成することができる。システムは、第1の電極と第2の電極との間に配置された1つ以上の電気要素をさらに含むことができる。第2の電場発生器は、1つ以上の電気要素に第3の電位を印加するように構成することができる。第3の電位は、第1の電位及び第2の電位の平均であり得る。第1の電極の内部輪郭及び第2の電極の内部輪郭は、少なくとも部分的に、一定の断面形状を画定することができる。断面形状は、多角形、楕円、円、双曲線、又は放物線のいずれかになる。
【0013】
いくつかの実施形態では、システムはさらに質量分析器を有することができる。質量分析計は、イオン源チャンバから出口ポートを介してイオンの少なくとも一部を受け取るように構成できる。
【0014】
いくつかの実施形態では、第1の電場発生器は、第1の入口ポートの近傍に配置された入口電極を有することができる。第1の電場発生器は、入口電極に電位を印加して第1の電場を生成するように構成することができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、第1の電場発生器は、出口ポートの近傍に配置された出口電極を有することができる。第1の電場発生器は、電位を出口電極に印加して第1の電場を生成するように構成することができる。
【0016】
別の態様では、柱状形状のイオン源チャンバは、チャンバの第1の端部に配置された入口電極アセンブリと、チャンバの第2の端部に配置された出口電極アセンブリと、第1の端と第2の端の間の軸に沿って、イオンが生成されるソースの空間容積を含むように配置された本体電極アセンブリとを含むことができる。イオン源チャンバはまた、イオン源チャンバ内の第1の軸方向に第1の電場を生成して、イオン源チャンバから出口ポートを通って分析物イオンの少なくとも一部を集束及び加速するように構成された第1の電場発生器と、動作中に、イオン源チャンバ内の軸に直交する第1の横方向に第2の電場を生成するように構成された第2の電場発生器とを含むことができ、これにより、イオン源から加速され、第1のm/z数値範囲を有するイオンの運動に対する磁場の影響が減少又は排除される。イオン源チャンバはまた、電子源から電子を導入するために、入口電極アセンブリ又は本体電極アセンブリに配置された第1の入口ポートと、少なくとも1つの分析物を導入するために、入口電極アセンブリ又は本体電極アセンブリに配置された第2の入力ポートと、軸及び第1の横方向に垂直な第2の横方向に双極磁場を生成するように構成された磁石アセンブリと、チャンバ内に電子ビームの一部がある状態で、磁場に一致する第2の横方向へ、有孔イオン化チャンバを通過する電子ビームを生成するように構成された電子源とを有することができる。
【0017】
この実施形態の実施には、以下の技術的特徴の1つ以上を含めることができる。
いくつかの実施形態では、入口電極アセンブリの内面は、円錐体状構造であり得る。
いくつかの実施形態では、本体電極アセンブリは、中空の柱状構造であり得る。軸に垂直な横断面上の本体電極の断面形状は、円、双曲線、放物線、多角形のいずれかであり得る。軸に垂直な横断面上の本体電極の断面形状は、軸対称又は軸非対称のいずれかであり得る。
【0018】
別の態様では、システムは、入口電極アセンブリ、出口電極アセンブリ、及び本体電極アセンブリに供給されるそれぞれのDC電圧をリアルタイムで変化させる制御モジュールを含むことができ、その結果、請求項16の第1のm/z範囲は、動作中に全質量範囲をスキャンすることができる。
【0019】
1つ以上の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴の利点は、説明及び図面、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】例示のガスクロマトグラフィ/質量分析(GC/MS)システムを示す概略図。
図2】例示のイオン源を示す断面図。
図3A】GC/MSシステムにおいてイオン化されたサンプル成分に対する例示の磁場の影響を示す概略図。
図3B】GC/MSシステムにおいてイオン化されたサンプル成分に対する例示の補償電場の影響を示す概略図。
図4A】例示のイオン源の断面図。
図4B】イオン源の構成例の断面図。
図4C】イオン源の構成例の断面図。
図4D】イオン源の構成例の断面図。
図5】イオン源チャンバの例を通過するイオン化されたサンプル成分の軌跡を例示する図。
図6A】イオン源チャンバの例を通過するイオン化されたサンプル成分の軌跡を例示する図(電場による補償なしのイオン化されたサンプル成分の軌跡の例)。
図6B】イオン源チャンバの例を通過するイオン化されたサンプル成分の軌跡を例示する図(電場による補償を伴うイオン化されたサンプル成分の軌跡の例)。
図6C】イオン源チャンバの例を通過するイオン化されたサンプル成分の軌跡を例示する図(電場による補償なしのイオン化されたサンプル成分の軌跡の例)。
図6D】イオン源チャンバの例を通過するイオン化されたサンプル成分の軌跡を例示する図(電場による補償を伴うイオン化されたサンプル成分の軌跡の例)。
図7A】従来のGC/MSシステムのシミュレートされた性能と比較した、本明細書に記載の例示的なGC/MSシステムのシミュレートされた性能を示すグラフ。
図7B】従来のGC/MSシステムのシミュレートされた性能と比較した、本明細書に記載の例示的なGC/MSシステムのシミュレートされた性能を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
例示的なガスクロマトグラフィ/質量分析(GC/MS)システム100の簡略化された概略図が図1に示されている。システム100は、ガスクロマトグラフィ110、イオン源120、イオン輸送チャンバ130、四重極質量分析計140、及び制御モジュール150を有する。
【0022】
システム100の動作中、サンプルは、ガスクロマトグラフィ110のインジェクタポート152に注入され、キャピラリーカラム154に入る。サンプルは、ヘリウムガスの流れの助けを借りて、キャピラリーカラム154及び加熱されたオーブン156を通って流れる。サンプルは、カラム154内のそれらの相対的保持比に従ってそれらの成分に分離される。たとえば、サンプル成分の分離は、カラムの寸法(長さ、直径、膜厚など)とその相特性に依存する可能性がある。サンプル中の異なる分子間の化学的性質の違いと、カラムの固定相に対する相対的な親和性により、サンプルがカラムの全長を移動するときに分子の分離が促進される。
【0023】
カラム154の出口部分158は、加熱された輸送構成要素160を通過し、イオン源120内に配置されたポート162で終端する。カラム154で分離された後、サンプル成分は、ポート162からイオン源120のチャンバに順次溶出する。場合によっては、サンプル成分に1つ以上の気相中性種を含めることができる。
【0024】
場合によっては、イオン源120は、電子イオン化(EI)イオン源であり得る。例えば、図1に示されるように、イオン源120は、イオン源120のチャンバを通して電子ビーム166を生成することができ、これにより、溶出成分の一部が、イオン化領域164(例えば、イオン源120のチャンバ内のボイド領域)内の電子ビーム166の電子との相互作用によってイオン化される。図1では、電子ビーム166は十字で表されており、電子ビーム166の方向が紙面内にあることを示している。場合によっては、イオン化は、サンプル成分の気相中性種と電子ビーム166の電子との間の相互作用のために起こり得る。
【0025】
イオン源120はまた、引き出し電極170、及び/又はリペラ電極(図示せず)、及び/又はイオン化領域164の周辺に沿って配置された電極に電圧を印加することによって、イオン化領域164(図1に等電位線168によって示される)内に電場を生成する。イオン化領域164内に形成されたサンプルイオンは、電場に応答し、出口ポート172を介してイオン源120のチャンバから加速される。
【0026】
サンプルイオンは、出口ポート172を介して引き出され、イオン輸送チャンバ130によって四重極質量分析計140の入口に輸送される。
四重極質量分析計140の透過効率及び分解能は、四重極質量分析計140に入るサンプルイオンのビームの特性(例えば、それらが四重極質量分析計140に入るときのサンプルイオンの半径方向の位置、角度、及び/又は運動エネルギー)に依存する。そして、これらのイオンビーム特性は、システム100で使用される任意のイオン輸送光学系(例えば、DC電極レンズ)の集束特性の制限と併せて、イオン源120のイオン化効率及び放出特性による制約を受ける。
【0027】
これらの特性を改善するために、場合によっては、イオン輸送チャンバ130は、イオン輸送チャンバ130内に無線周波数(RF)場を生成するイオンガイド174を含むことができる。場合によっては、イオン輸送チャンバ130はまた、軸方向電場(例えば、サンプルイオンビームの進行経路の方向に沿って延びる電場)を生成することができる。サンプルイオンがイオン輸送チャンバ130を通過するとき、特定のm/z比又は/z比の範囲のイオンのみが次の段階に到達する。他のイオンは不安定な軌道を有し、イオンガイド174と衝突する。これにより、特定のm/z比又はm/z比の範囲を有したイオンを選択できる。
【0028】
場合によっては、イオン輸送チャンバ130は、ガスで加圧することができる。例えば、イオン源を出るサンプルイオンは、加圧されたイオン輸送チャンバ130に通され得、そしてそれらがイオン輸送チャンバ130の全長を横切るときにイオンガイド軸176の周りで振動するようにRF場によって拘束され得る。ガス分子との衝突により、サンプルイオンの運動エネルギーが散逸し、その結果、半径方向の偏位と運動エネルギーが減少する。運動エネルギーの散逸により、イオン輸送チャンバ130の出口178に到達した時に、サンプルイオンは、改善されたビーム特性(例えば、径方向の位置及び角度の変動が少ない、及び運動エネルギーが低い)に集中し、従来の静電光学系よりも、質量分析計によるイオン透過率及び/又は分解能が高くなる。これはまた、例えば、イオン源120から生成されるような、最初は空間的及び角度的に広いイオン分布の伝達効率を改善するので、有益であり得る。
【0029】
イオン輸送チャンバ130の出口178に集束されたイオンビームは、サンプルイオンの質量分析のために四重極質量分析器140の入口に注入される。
たとえば、四重極質量分析計は、質量電荷比(m/z)に基づいてサンプルイオンを質量分解できる。一例として、四重極質量分析計140は、2×2構成に配置された4つの平行な導電性ロッドを含むことができ、それぞれの対向するロッド対は、互いに電気的に接続されている。DCオフセット電圧のRF電圧を、ロッドの一方のペアともう一方のペアの間に印加できる。サンプルイオンがロッド間の四重極を下流に移動すると、特定の質量電荷比のイオンのみが、特定の電圧比で検出器に到達する。他のイオンは弾道が不安定で、ロッドと衝突する。これにより、特定のm/z比のイオンを選択できる。続いて、質量分解されたイオンがイオン検出器によって検出される。イオン検出器からの出力信号は、制御モジュール150によって処理され、そこで、送信されたm/z比のイオンの信号強度が記録される。
【0030】
イオン検出器からの出力信号を処理することに加えて、制御モジュール150はまた、システム100の他の構成要素のいくつか又はすべての動作を制御することができる。例えば、場合によっては、制御モジュール150は、イオン源120、イオン輸送チャンバ130、及び/又は四重極質量分析器140に通信可能に結合され得、それらの性能を調整するために各構成要素に命令又はコマンドを提供する。場合によっては、制御モジュール150は、少なくとも部分的に、1つ以上のコンピューティングデバイスを使用して実装することができる(例えば、1つ以上の電子処理デバイスは、それぞれ、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、サーバーコンピュータなどなどの1つ以上のマイクロプロセッサを有する。)。
【0031】
場合によっては、イオン源は、電子ビームの方向に平行であり、電子ビームと一致する方向に磁場を生成するように構成された磁場発生器を含むことができる。これは、例えば、電子ビームの電子を電子ビームの方向の周りにらせん方向に移動させるので、有用であり得る。これにより、イオン源チャンバ内の各電子の経路が長くなり、各電子がサンプル成分と相互作用してイオン化する可能性が高くなる。その結果、イオン源のイオン化効率が向上する。
【0032】
例えば、図2は、イオン源120の簡略化された断面図を示している。上記のように、イオン源120は、イオン源120のイオン化領域164を介して電子ビーム166を生成することができ、イオン化領域164内の溶出成分の一部を、電子ビーム166内の電子との相互作用によってイオン化させる。図2では、電子ビーム166は、垂直の点線で表されている。
【0033】
イオン源120はまた、イオン化領域164(点線の垂直線によって表される)内に磁場204を生成するように構成された磁場発生器202を含む。場合によっては、磁場発生器202は、電子ビーム166の両端に配置され、電子ビーム166の方向に平行な方向に整列された2つの磁石206a及び206b(例えば、永久磁石)を有することができる。
【0034】
図2に示すように、磁場204は、電子ビーム166の方向に平行であり、電子ビーム166と一致する方向に生成される。これにより、電子ビーム166の電子は、電子ビーム166の方向の周りにらせん方向に移動し、それによって、イオン化領域164内の各電子の経路を長くし、各電子がイオン化領域164内のサンプル成分と相互作用してイオン化する可能性を高める。
【0035】
ただし、この磁場は、イオン化されたサンプル成分がイオン源を通過して出るときに、それらの経路にも影響を与える可能性がある。例えば、磁場は、イオン化されたサンプル成分に、それらの進行方向に直交する方向にローレンツ力を与え、それらの経路から逸脱させる可能性がある。結果として、イオン化されたサンプル成分は、曲がった経路に沿って、及び/又は不均一又は散乱した方式でイオン源120を出て、それによって質量分析器の性能に悪影響を与える可能性がある。さらに、場合によっては、イオン化されたサンプル成分がイオン源チャンバのチャンバ壁と衝突し、イオン源からまったく出ないことがある。
【0036】
例えば、図3Aに示されるように、磁場204は、電子ビームの方向に平行であり、溶出されたサンプル成分の経路に直交する方向に生成される。磁場204は十字で表され、磁場204の方向が紙面内にあることを示している。
【0037】
さらに、外部電場Eと磁場Bにより、瞬間速度vで電荷qの粒子に作用する力Fは、次の式で与えられる(SI単位系)。
F=q(E+v×B)
ここで、×はベクトル積である。
【0038】
イオン化されたサンプル成分は正に帯電した粒子であるため、力300(上方向に垂直に整列した矢印で表される)がイオン化されたサンプル成分に進行方向に直交する方向に与えられ、経路から外れる。結果として、サンプル成分は、イオン源120を通る直線経路ではなく、湾曲した経路又は曲がった経路302を横断する。したがって、イオン化されたサンプル成分は、不均一又は散乱した方式でイオン源120を出る可能性があり、それにより、質量分析器の性能に悪影響を与える。さらに、磁場Bの大きさが十分に大きい場合、イオン化されたサンプル成分の経路302は、イオン化されたサンプル成分がイオン源120のチャンバ壁と衝突する程度に逸脱し得、それによってそれらがイオン源120から出るのを妨げる。
【0039】
イオン化されたサンプル成分に対する磁場の影響を低減又は排除するために、イオン源チャンバは、この影響を埋め合わせるための電場発生器を含むことができる。一例として、電場発生器は、イオン源チャンバ内に電場を生成するように構成することができ、その結果、イオン化されたサンプル成分に追加の力が与えられる。電場によってイオン化されたサンプル成分に与えられる力は、磁場によってイオン化されたサンプル成分に与えられる力と方向が反対であるが、実質的に等しい大きさであり得、その結果、2つの力は互いに実質的に打ち消し合う。結果として、イオン化されたサンプル成分は、それらの経路から逸脱したり、飛散したりする可能性が低くなり、したがって、より集中的にイオン源チャンバを出る。
【0040】
例えば、図3Bに示されるように、イオン源120は、電場発生器310を含むことができる。電場発生器310は、電位が電極に印加されると、電場がイオン源120のチャンバ内に生成されるように、イオン化領域164に対して配置された1つ以上の電極を含む。例えば、図3Bに示されるように、電場発生器310は、イオン化領域164の周辺に沿って配置された電極312a及び312bを含むことができる。電極312aと312bとの間に(例えば、電極312aが電極312bよりも高い電位を有するように)電位が印加されると、磁場は、磁場204の方向に直交する方向、かつ力300に逆平行な方向に生成される。イオン化されたサンプル成分は正に帯電した粒子であるため、力314(下方向に垂直に整列した矢印によって表される)が、力300と反対の方向にイオン化されたサンプル成分に与えられる。
【0041】
電場発生器310は、電場を選択的に生成して、イオン化されたサンプル成分に対する磁場の影響を埋め合わせるように構成することができる。例えば、磁場204の強度に基づいて、電場発生器310は、結果として生じる電場によってイオン化されたサンプル粒子に加えられる力314が、磁場によって与えられる力300と等しくなるように、又は、実質的に等しい大きさであるように、対応する電位を電極312a及び312bに選択的に印加することができる。例えば、特定の電荷q、速度v、及び磁場Bが与えられると、電場発生器310は、対応する電位を電極312a及び312bに印加して、q(E+v×B)がゼロに等しい、又は実質的にゼロに等しくなるように電場Eを生成することができる。したがって、イオン化されたサンプル成分は、それらの経路から散逸する可能性が低く、より集中的にイオン源チャンバを出る(例えば、イオン輸送チャンバ130及び/又は四重極質量分析器140に向かう直線経路316に沿って)。
【0042】
場合によっては、電場発生器310は、特定のm/z比又はm/z比の範囲を有するイオン化サンプル成分を、異なるm/z比又はm/zの範囲を有するイオン化サンプル成分からフィルタ又は単離するように構成することができる。
【0043】
例えば、上記のように、外部電場Eと磁場Bにより、瞬間速度vで電荷qの粒子に作用する力Fは、次の式で与えられる(SI単位系)。
F=q(E+v×B)
さらに、対象に作用する力Fは、対象の質量mにその加速度aを乗算したものに等しくなる。
【0044】
F=ma
したがって、イオン化されたサンプル成分が受ける加速度は、次のように表すことができる。
【0045】
【数1】
特に、加速度aは、イオン化されたサンプル成分の電荷q(又は、z)とイオン化されたサンプル成分の質量mの両方に依存する。したがって、イオン化されたサンプル成分のそれぞれは、それぞれのm/z比に応じて、異なって加速され得る。
【0046】
特定のタイプのイオン化されたサンプル成分を分離又はフィルタリングするために、電場発生器310は、それらのイオン化されたサンプル成分に固有の電場を生成するように構成することができる。例えば、対象のイオン化されたサンプル成分がm/zのm/z比を有する場合、電場発生器310は、下記式となるような電場Eを生成することができる。
【0047】
【数2】
したがって、対象のイオン化されたサンプル成分は、磁場と電場の複合効果のために正味ゼロの加速及び/又は正味ゼロの力を受け、直線経路に沿ってイオン源120から出る。
【0048】
ただし、m/zとは異なるm/z比を持つイオン化されたサンプル成分は、磁場と電場の複合効果により、ゼロ以外の加速度及び/又はゼロ以外の力を受ける。したがって、それらは、対象のイオン化されたサンプル成分の直線経路から離れるように加速され得る。したがって、対象のイオン化サンプル成分は、他のイオン化サンプル成分から物理的に分離することができる。
【0049】
これにより、特定のm/z比又はm/z比範囲を有したイオンを選択できる。例えば、対象となるイオン化されたサンプル成分は、分析のために四重極質量分析計140に移され得、一方、他のイオン化されたサンプル成分のいくつか又はすべては、収集及び除去され得る。
【0050】
電場発生器310は、様々な電場を選択的に印加して、対象となる異なるイオン化されたサンプル成分をフィルタリング又は分離することができる。例えば、電場発生器310は、第1の電場Eを選択的に適用して、対象の第1のイオン化されたサンプル成分(例えば、第1のm/z比を有する)をフィルタリング又は分離することができる。続いて、電場発生器310は、第2の電場を選択的に印加して、対象の第2のイオン化サンプル成分(例えば、第2の異なるm/z比を有する)をフィルタリング又は分離することができる。したがって、電場発生器310は、それぞれの特定の用途に適合するように、生成された電場の特性を変えることができる。
【0051】
場合によっては、電場発生器310は、少なくとも部分的に、ユーザによって制御することができる。例えば、場合によっては、ユーザは、適用されるべき特定の電場を指定することができる(例えば、制御モジュール150に命令を提供することによって)。場合によっては、電場発生器310は、少なくとも部分的に、システム100によって自動的に制御することができる。例えば、場合によっては、制御モジュール150は、ユーザからの入力なしに、印加されるべき特定の電場を自動的に指定することができる。
【0052】
上記のように、電場発生器310は、特定の範囲のm/z比を有するイオン化サンプル成分を、異なる範囲のm/z比を有するイオン化サンプル成分からフィルタリング又は分離するように構成することができる。これは、例えば、特定の電場Eを選択的に印加することによって実行でき、その結果、目標範囲内のm/z比を有するイオン化サンプル成分は、イオン源120を通って直線又は十分に直線の経路を移動し、四重極質量分析器140に到達する。さらに、目標範囲外のm/z比を有するイオン化されたサンプル成分は、直線経路から離れるように加速され、四重極質量分析計140に到達する可能性が低い。
【0053】
上記のように、イオン輸送チャンバ130は、特定のm/z比のイオンのみが次の段階に到達するように、イオン輸送チャンバ130内にRF場を生成するイオンガイド174を含むことができる。さらに、四重極質量分析計140はまた、導電性ロッドにRF電圧を印加することにより、特定のm/zを有するイオンの選択を可能にすることができる。場合によっては、電場発生器310、イオン伝達チャンバ130、及び/又は四重極質量分析器140は、電場発生器310、イオン伝達チャンバ130、及び/又は四重極質量分析器140の選択ウィンドウが重なるように動作するように構成することができる。これは、たとえば、これらの各部分が連携して動作し、m/z比に基づいてイオン化されたサンプル成分を選択できるため、有益な場合がある。
【0054】
一例として、N<Nの値が与えられた場合、イオン輸送チャンバ130及び/又は四重極質量分析計140は、第1の範囲のm/z比、すなわちN<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。さらに、電場発生器310もまた、同じ範囲内のm/z比、N<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。併せて、これらの部分により、m/z比がN<m/z<Nの範囲のイオン化サンプル成分を選択できる。
【0055】
別の例として、N<N<N<Nの値が与えられた場合、イオン輸送チャンバ130及び/又は四重極質量分析計140は、第1の範囲の比N<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。さらに、電場発生器310は、同じ範囲内の比率N<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。併せて、これらの部品により、次の範囲の比率N<m/z<Nを持つイオン化されたサンプル成分の選択が可能になる。
【0056】
別の例として、N<N<N<Nの値が与えられた場合、イオン輸送チャンバ130及び/又は四重極質量分析計140は、第1の範囲の比N<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。さらに、電場発生器310は、同じ範囲内の比率N<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。併せて、これらの部分により、次の範囲N<m/z<Nの比率を持つイオン化されたサンプル成分の選択が可能になる。
【0057】
別の例として、N<N<N<Nの値が与えられた場合、イオン輸送チャンバ130及び/又は四重極質量分析計140は、第1の範囲の比N<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。さらに、電場発生器310は、同じ範囲内のm/z比N<m/z<Nを有するイオン化されたサンプル成分を選択するように構成することができる。併せて、これらの部分により、m/z比が次の範囲N<m/z<Nのイオン化サンプル成分を選択できる。
【0058】
選択ウィンドウの例を上記で説明したが、これらは単なる例示的な例である。実際には、選択ウィンドウの任意の組み合わせを使用して、特定の範囲のm/z比内のイオン化サンプル成分を選択できる。
【0059】
上記のように、電場発生器は、電位が電極に印加されると、電場がイオン化領域内に生成されるように、イオン化領域に対して配置された1つ以上の電極を含むことができる。実際には、1つ以上の電極は、実装に応じて、異なる方式で配置することができる。
【0060】
例として、図4Aは、例示的なイオン源120(図3Bと同様の視点から描かれる)の断面図を示し、図4Bは、平面Aにおけるイオン源120の例示的な構成を示す。図4Bに示すように、イオン源120は、イオン化領域164の周辺に沿って配置された2つの電極402a及び402bを含む。電極402a及び402bは、非導電性の間隙404a及び404bによって分離されている。電極402aと402bとの間に電位が印加されると(例えば、電極402aが電極402bよりも高い電位を有する場合)、電場406(下方向に垂直に整列した矢印によって表される)がイオン化領域164内に生成される。場合によっては、より低い電位を有する電極(例えば、電極402b)を接地することができる。
【0061】
図4Cは、平面Aに対するイオン源120の別の例示的な構成の断面図を示す。図4Cに示すように、イオン源120は、イオン化領域164の周辺に沿って配置された4つの電極410a~dを含む。電極410a~dは、非導電性の間隙412a~dによって分離されている。電極410aと410cとの間に電位が印加されると(例えば、電極410aが電極410cよりも高い電位を有する場合)、電場414(下方向に垂直に整列した矢印によって表される)がイオン化領域164内に生成される。場合によっては、電極410b及び410dはそれぞれ、電極410a及び410cの電位の間の電位を有することができる。場合によっては、電極410b及び410dの電位は、電極410a及び410cの電位の平均であり得る。
【0062】
図4Dは、平面Aに対するイオン源120の別の例示的な構成の断面図を示す。図4Dに示すように、イオン源120は、イオン化領域164の周辺に沿って配置された電極420を含む。電極420の端部は、非導電性の間隙422によって分離されている。電位が電極420に印加されると(例えば、電極410aが周囲環境よりも高い電位を有する場合)、電場424(下方向に垂直に整列した矢印によって表される)がイオン化領域164内に生成される。
【0063】
図4B~4Dに示す例では、電極及び非導電性の間隙は、イオン化領域164の周辺に沿って分布され、少なくとも部分的に、円形の断面プロファイルを定義する。例えば、電極及び非導電性の間隙のそれぞれは、弧状又は環状の断面を有し、これらは、組み合わせて、円形の形状の少なくとも一部を画定する。ただし、これらは単なる例示である。実際には、電極と非導電性の間隙が他の断面形状を画定することができる。例えば、場合によっては、電極及び非導電性の間隙は、少なくとも部分的に、多角形、楕円、円、双曲線、放物線、又はそれらの組み合わせを画定することができる。
【0064】
図5は、例示的なイオン源120及び例示的なイオン輸送チャンバ130の断面図を示している(図3Bと同様の視点から描かれている)。さらに、図5は、いくつかのトレース502を含み、それぞれが、イオン源120及びイオン輸送チャンバ130を通るイオン化されたサンプル成分のシミュレートされた軌道を表す。ここで、イオン源120内の磁場の影響は、対応する電場を使用して電場によって埋め合わせされ、その結果、イオン化されたサンプル成分に磁場によって与えられる力は、イオン化されたサンプル成分に電場によって与えられる力によって相殺される。したがって、イオン化されたサンプル成分は、ビームに集束され、直線経路504に沿ってイオン源120から加速される。
【0065】
図6A~6Dは、例示的なイオン源120、例示的なイオン輸送チャンバ130、及び例示的な四重極質量分析計140(図3Bと同様の視点から描かれている)の断面図を示す。
【0066】
図6Aは、いくつかのトレース602を含み、それぞれが、イオン源120、イオン輸送チャンバ130、及び四重極質量分析器140を通る、m/z比20を有するイオン化サンプル成分のシミュレートされた軌道を表す。ここで、イオン源120内の磁場の影響は、対応する電場によって埋め合わせされない。したがって、正味の力は、磁場によってイオン化されたサンプル成分に付与される。したがって、イオン化されたサンプル成分は、曲がった経路に沿ってイオン源120を出て、イオン輸送チャンバ130及び四重極質量分析器140内に広く散乱される。
【0067】
図6Bは、いくつかのトレース604を含み、それぞれが、イオン源120、イオン輸送チャンバ130、及び四重極質量分析器140を通る、m/z比20を有するイオン化サンプル成分のシミュレートされた軌道を表す。ここで、イオン源120内の磁場の影響は、対応する電場を使用して電場によって埋め合わせされ、その結果、イオン化されたサンプル成分に磁場によって与えられる力は、イオン化されたサンプル成分に電場によって与えられる力によって相殺される。したがって、イオン化されたサンプル成分は、ビームに集束され、比較的直線的な経路に沿ってイオン源120から加速される。したがって、システムの分析性能が向上する。
【0068】
図6Cは、いくつかのトレース606を含み、それぞれが、イオン源120、イオン輸送チャンバ130、及び四重極質量分析器140を通る、m/z比1000を有するイオン化サンプル成分のシミュレートされた軌道を表す。図6Aに関して説明したのと同様の方法で、イオン源120内の磁場の影響は、対応する電場によって埋め合わせされない。したがって、正味の力は、磁場によってイオン化されたサンプル成分に付与される。したがって、イオン化されたサンプル成分は、曲がった経路に沿ってイオン源120を出て、イオン輸送チャンバ130及び四重極質量分析器140内に広く散乱される。
【0069】
図6Dは、いくつかのトレース608を含み、それぞれは、イオン源120、イオン輸送チャンバ130、及び四重極質量分析器140を通る、m/z比100を有するイオン化サンプル成分のシミュレートされた軌道を表す。図6Bに関して説明したのと同様の方法で、イオン源120内の磁場の影響は、対応する電場を使用して電場によって埋め合わせされ、その結果、イオン化されたサンプル成分に磁場によって与えられる力は、イオン化されたサンプル成分に電場によって与えられる力によって相殺される。したがって、イオン化されたサンプル成分は、ビームに集束され、比較的直線的な経路に沿ってイオン源120から加速される。したがって、システムの分析性能が向上する。
【0070】
図7A及び7Bは、本明細書に記載のGC/MSシステムのシミュレートされた性能(例えば、イオン源における磁場の影響を埋め合わせるための電場発生器を備えたイオン源を有する)を、従来のGC/MSシステム(例えば、前述の電場発生器のないイオン源を有する)と比較して示す。特に、図7A及び7Bは、改良されたGC/MSシステム(トレース700a及び700b)と従来のGC/MSシステム(トレース710a及び710b)の、異なる2つのm/z比のスペクトルに関する質量分解サンプル粒子のシミュレーション分布を示す。
【0071】
図7A及び7Bに示すように、分布には2つのピークがあり、第1のピークは約19~10.8m/z(図7Aに示す)、第2のピークは約998.8~1000.4m/z(図7Bに示す)である。図7Aに示すように、分布は改良されたGC/MSシステムでは大幅に集中している(たとえば、トレース700aはトレース710aと比較して低いm/z範囲で約20倍の改善を示し、トレース700bはトレース710bと比較して、より高いm/z範囲で約8倍の改善を示す。)。したがって、改良されたGC/MSシステムは、サンプル粒子の質量分解において非常に効果的であり、GC/MSシステムの性能が向上する。
【0072】
いくつかの実施形態が説明されてきた。それにもかかわらず、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な修正を行うことができることが理解されよう。したがって、他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B