(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用電解質膜、それを適用したリチウム二次電池用膜-電極構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/0565 20100101AFI20220128BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20220128BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20220128BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20220128BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220128BHJP
C08L 81/06 20060101ALI20220128BHJP
C08L 71/08 20060101ALI20220128BHJP
C08K 5/42 20060101ALI20220128BHJP
C08K 3/32 20060101ALI20220128BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20220128BHJP
C08K 3/11 20180101ALI20220128BHJP
H01M 10/052 20100101ALN20220128BHJP
【FI】
H01M10/0565
H01M10/0568
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01B1/06 A
C08L81/06
C08L71/08
C08K5/42
C08K3/32
C08K3/38
C08K3/11
H01M10/052
(21)【出願番号】P 2020170586
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2020-10-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0035979
(32)【優先日】2020-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】508224890
【氏名又は名称】リサーチ アンド ビジネス ファウンデーション ソンギュングァン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】キム、ドゥク チュン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヘ アン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス キョン
(72)【発明者】
【氏名】ル モン、アン
(72)【発明者】
【氏名】ティエン、チェンチョアン
【審査官】福井 晃三
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-173799(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第111403785(CN,A)
【文献】MONG, A.L., KIM, D.,Solid electrolyte membranes prepared from poly(arylene ether ketone)-g-polyimidazolium copolymer intergrated with ionic liquid for lithium secondary battery,Journal of Power Sources,NL,Elsevier B.V.,2019年,Vol. 422,pp.57-64
【文献】KANG, K., KIM, D.,Toughened polymer electrolyte membranes composed of sulfonated poly(arylene ether ketone) block copolymer and organosiloxane network for fuel cell,Solid State Ionics,NL,Elsevier B.V.,2019年,Vol. 335,pp. 23-31
【文献】ZARRIN, H., WU, J., FLOWER, M., CHEN, Z.,High durable PEK-based anion exchange membrane for elevated temperature alkaline fuel cells,Journal of Membrane Science,NL,Elsevier B.V.,2012年,Vol. 394-395,pp. 193-201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/05-10/0587
H01M 4/00- 4/62
H01B 1/06
C08L 81/06
C08L 71/08
C08K 5/42
C08K 3/32
C08K 3/38
C08K 3/11
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム二次電池用電解質膜であって、
下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物と、および
リチウム塩とを含み、
リチウムイオン移送チャネルが形成され、
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示すことを特徴とする、前記リチウム二次電池用電解質膜。
【化1】
【請求項2】
前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることを特徴とする
請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質膜。
【請求項3】
前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、10%~50%の重量比を有することを特徴とする
請求項1に記載のリチウム二次電池用電解質膜。
【請求項4】
前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、40%~50%の重量比を有することを特徴とする
請求項3に記載のリチウム二次電池用電解質膜。
【請求項5】
リチウム二次電池用バインダーであって、
下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物と、および
リチウム塩とを含み、
リチウムイオン移送チャネルが形成され、
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示すことを特徴とする、前記リチウム二次電池用バインダー。
【化2】
【請求項6】
前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることを特徴とする
請求項5に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【請求項7】
前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、10%~50%の重量比を有することを特徴とする
請求項5に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【請求項8】
前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、40%~50%の重量比を有することを特徴とする
請求項5に記載のリチウム二次電池用バインダー。
【請求項9】
リチウム二次電池用膜-電極構造体であって、
下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物およびリチウム塩を含む電解質膜と、
前記電解質膜と同じ組成物で形成されるバインダーと、および
前記電極バインダーにより前記電解質膜と結合された電極とを含み、
リチウムイオン移送チャネルが形成され、
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示すことを特徴とする、前記リチウム二次電池用膜-電極構造体。
【化3】
【請求項10】
前記電解質膜に対する前記バインダーの界面抵抗が1800~2100Ωであることを特徴とする
請求項9に記載のリチウム二次電池用膜-電極構造体。
【請求項11】
前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF
6、LiBF
4、LiSbF
6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることを特徴とする
請求項10に記載のリチウム二次電池用膜-電極構造体。
【請求項12】
前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用膜-電極構造体に対し、10%~50%の重量比を有することを特徴とする
請求項10に記載のリチウム二次電池用膜-電極構造体。
【請求項13】
前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用膜-電極構造体に対し、40%~50%の重量比を有することを特徴とする
請求項10に記載のリチウム二次電池用膜-電極構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PAESおよびPAEKを主鎖にPEGがグラフティング(grafting)されたり、ブロック共重合体形態の高分子物質を利用して、優れたイオン伝導度と接合性を有するリチウム二次電池用電解質膜、バインダー、膜-電極構造体およびリチウム二次電池用電解質膜とバインダーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、リチウムイオンから分離された電子が陽極と陰極に移動して、充放電される二次電池であり、軽量で高エネルギー密度を持っているので、携帯電話、ノートパソコン、エネルギー貯蔵装置(ESS)、電気自動車など様々な分野に渡って使用されている。リチウム二次電池は、基本的には、陽極、陰極、液体電解質と分離膜で構成されている。しかし、液体電解質は、分解反応による発火、爆発、漏洩などに脆弱な欠点があり、最近では、液体電解質の問題点を解決するための方案として、固体電解質を使用する全固体電池が注目されている。
【0003】
固体電解質を使用する全固体電池は、非常に高い安定性を有し、同時に液体電解質を使用する場合よりも電池のサイズを減らすことができるので、体積当たりのエネルギー密度を高めることができる長所がある。しかし、固体を電解質として使用するので、液体電解質に比べて、リチウムイオン伝導度が低いという欠点があり、電極との接触が円滑ではないので、電池の性能が低下する問題がある。例えば、現在商用化されているリチウム二次電池のバインダー物質であるポリビニリデンフローライド(Poly(vinylidene fluoride、PVDF)の場合には、電気化学的安定性が良く接着力が強い長所があるが、PVDFバインダーで作られた陽極は、固体電解質膜との界面接合性が低下し、高抵抗を持つようになるので、最終的には電池の性能と安定性を低下させる。したがって、高いイオン伝導度と優れた密着性を有する固体電解質膜と陽極用バインダーに適用することができる新しい材料の開発が必要実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一目的は、リチウムイオン移送チャネルを形成するグラフトまたはブロック共重合体をベースとし、高いイオン伝導度を有するリチウム二次電池用電解質膜及びその製造方法を提供するものである。
【0005】
本発明の他の目的は、電解質膜と電極との間の界面抵抗を下げることができるバインダーとその製造方法を提供するものである。
【0006】
本発明のもう一つの目的は、前記リチウム二次電池用電解質膜と同じ材料を利用したバインダーを含んで、高いイオン伝導度と優れた接合性を有する膜-電極構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一目的のためのリチウム二次電池用電解質膜は、下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物と、およびリチウム塩とを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されたことを特徴する。
【0008】
【0009】
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示す
【0010】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0011】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、10%~50%の重量比を有することができる。
【0012】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、40%~50%の重量比を有することができる。
【0013】
本発明の他の目的のためのリチウム二次電池用バインダーは、下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物と、およびリチウム塩とを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されたことを特徴する。
【0014】
【0015】
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示す。
【0016】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0017】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、10%~50%の重量比を有することができる。
【0018】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、40%~50%の重量比を有することができる。
【0019】
本発明のまた他の目的のためのリチウム二次電池用膜-電極構造体は、下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物およびリチウム塩を含む電解質膜と、前記電解質膜と同じ組成物で形成されるバインダーと、および前記電極バインダーにより前記電解質膜と結合された電極とを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されることを特徴する。
【0020】
【0021】
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示す。
【0022】
一実施例において、前記電解質膜における前記バインダーの界面抵抗が1800~2100Ωであることができる。
【0023】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0024】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用膜-電極構造体に対し、10%~50%の重量比を有することができる。
【0025】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用膜-電極構造体に対し、40%~50%の重量比を有することができる。
【0026】
本発明のまた他の目的のためのリチウム二次電池用電解質膜の製造方法は、下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物を準備する第1のステップと、前記化合物とリチウム塩を有機溶媒に溶解させて、混合溶液を製造する第2のステップと、および前記混合溶液を基板に鋳造し、乾燥させる第3のステップとを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されることを特徴する。
【0027】
【0028】
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示す。
【0029】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0030】
一実施例において、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)であることができる。
【0031】
一実施例において、前記第2のステップでは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、10%~50%の重量比を有するように混合されることができる。
【0032】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、40%~50%の重量比を有するように混合されることができる。
【0033】
本発明のまた他の目的のためのリチウム二次電池用バインダーの製造方法は、下記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物を準備する第1のステップと、前記化合物とリチウム塩を有機溶媒に溶解させて、混合溶液を製造する第2のステップと、および前記混合溶液を基板に鋳造し、乾燥させる第3のステップとを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されることを特徴する。
【0034】
【0035】
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示す。
【0036】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6およびLiAsFから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0037】
一実施例において、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)であることができる。
【0038】
一実施例において、前記第2のステップでは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、10%~50%の重量比を有するように混合されることができる。
【0039】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、40%~50%の重量比を有するように混合されることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、本発明では、PAESまたはPAEKにPEGがグラフティングされた高分子またはブロック共重合体とリチウム塩を一緒に導入することにより、リチウムイオン移送チャネルを形成して、優れた機械的強度およびリチウムイオン伝導度を有する電解質膜を提供することができ、リチウムイオン伝導度とリチウム塩の重量比を変えて、容易に制御することができる。また、電解質膜と同じ組成の物質をバインダーとして利用することにより、従来のPVDFバインダーの使用に対し、リチウムイオンを容易に伝導させることができる効果があり、電解質膜とバインダーを同じ物質として使用することにより、電解質膜と電極の高い接着力および電解質膜と電極との間の低い界面抵抗を有する効果を持つことができる。
【0041】
また、本発明で提供される電解質膜とバインダーはアルミホイルとの接着効果も優れて、全体的電池性能と安定性が向上した簡単な形態の全固体電池を簡単な製造方法で実装できる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図2-A】本発明の実験例Aの化合物合成評価結果を示した図であり、PAES-COOHの
1H-NMRスペクトルを示した図である。
【
図2-B】本発明の実験例Aの化合物合成評価結果を示した図であり、PAES-g-PEGの
1H-NMRスペクトルを示した図である。
【
図2-C】本発明の実験例Aの化合物合成評価結果を示した図であり、PAES-g-PEG FT-IRスペクトルを示した図である。
【
図3】本発明の実験例Bの本発明の電解質膜の電気的特性評価の結果を示す図であり、様々な濃度のLiTFSI塩を含むPAES-g-PEG固体電解質膜のNyquist線図を示す図である。
【
図4】本発明の実験例Bの本発明の電解質膜の電気的特性評価の結果を示す図であり、様々な濃度のLiTFSI塩を含むPAES-g-PEG固体電解質膜のリチウムイオン伝導度のグラフを示す図である。
【
図5】本発明の実験例Cの本発明のバインダーが導入された陽極の表面と断面の分析結果を示す図であり、(A)~(D)は、陽極表面SEM画像を示し、(E)と(F)は、陽極断面SEM画像を示す図である。具体的には、(A)は、LiCoO
2/PVDFバインダー、(B)は、LiCoO
2/PAES-g-PEGバインダー、(C)は、LiNiMnCoO
2/PVDFバインダー、(D)は、LiNiMnCoO
2/PAES-g-PEGバインダーの陽極表面SEM画像である。(E)は、LiCoO
2/PAES-g-PEGバインダー、(F)は、LiNiMnCoO
2/PAES-g-PEGバインダーの陽極断面SEM画像である。
【
図6】本発明の実験例Dの本発明のバインダーが導入された陽極物質の元素分析評価結果を示すEDS測定図であり、(A)は、LiCoO
2/PAES-g-PEGバインダー、(B)は、LiNiMnCoO
2/PAES-g-PEGバインダーの元素分析結果を示す。
【
図7】本発明の実験例Eの本発明の電解質膜における本発明のバインダーの界面抵抗分析の結果を示すナイキスト線図であり、PAES-g-PEG固体電解質膜におけるPAES-g-PEGバインダーとPVDFバインダーを使用した全固体電池(LiCoO
2/SE/Li)の界面抵抗を確認することができる。
【
図8】本発明の実験例Fの本発明のバインダーを導入した陽極の柔軟性評価結果を示す図である。
【
図9-A】本発明の実験例Gの本発明のバインダーを導入した陽極の接着力の評価を示す図であり、アルミホイルにおけるPAES-g-PEGバインダーの接着力を示す図である。
【
図9-B】本発明の実験例Gの本発明のバインダーを導入した陽極の接着力の評価を示す図であり、LiCoO
2を用いた陽極におけるPAES-g-PEGバインダーの接着力を示す図である。
【
図9-C】本発明の実験例Gの本発明のバインダーを導入した陽極の接着力の評価を示す図であり、LiNiMnCoO
2を用いた陽極におけるPAES-g-PEGバインダーの接着力を示す図である。
【
図9-D】本発明の実験例Gの本発明のバインダーを導入した陽極の接着力の評価を示す図であり、Sulfur/CNTを用いた陽極におけるPAES-g-PEGバインダーの接着力を示す図である。
【
図10】本発明の実験例Hの本発明のPAES-g-PEG電解質膜におけるPAES-g-PEGバインダーの適合性評価結果を示す電圧電流グラフであり、全固体電池システムでLiCoO
2と様々な濃度のLiTFSI塩を含むPAES-g-PEGバインダーを使用した陽極の電圧電流グラフである。
【
図11】本発明の実験例Hの本発明のPAES-g-PEG電解質膜におけるPAES-g-PEGバインダーの適合性評価結果を示す電圧電流グラフであり、全固体電池システムでLiNiMnCoO
2と様々な濃度のLiTFSI塩を含むPAES-g-PEGバインダーを使用した陽極の電圧電流グラフである。
【
図12】本発明の実験例Hの本発明のPAES-g-PEG電解質膜におけるPAES-g-PEGバインダーの適合性評価結果を示す電圧電流グラフであり、全固体電池システムでSulfurとCNTの割合を変えて測定した電圧電流グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について詳細に説明する。本発明は、様々な変更を加えることができ、様々な形態を持つことができるところ、特定の実施例を図面に例示して本文に詳細に説明する。しかし、それは本発明を特定の開示形態について限定するものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれるすべての変更、均等物ないし代替物を含むものと理解されるべきである。各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素について使用した。
【0044】
本出願で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明らかに別の方法で意味ない限り、複数の表現を含んでいる。本出願では、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。
【0045】
別の方法で定義されない限り、技術的または科学的な用語を含めてここで使用されるすべての用語は、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を持っている。一般的に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上持つ意味と一致する意味を有するものと解釈されるべきであり、本出願で明白に定義しない限り、理想的または過度に形式的な意味に解釈されない。
【0046】
以下、本明細書で記述されているすべての化学式1~化学式4とは、それぞれ以下のような構造を表すものとして定義する。
【0047】
【0048】
前記化学式1~化学式4で、mは、45~90の整数を示し、nは、50~70の整数を示す。
【0049】
本明細書では、本発明の詳細な説明において、説明の便宜のために、化学式1~化学式4の構造の添付を省略して説明することにする。したがって、本明細書で記述されているすべての化学式1~化学式4は、それぞれ上記のような化学式の構造を有するものと理解されるべきである。
【0050】
また、本明細書で記述される化学式1~化学式4のいずれか1つで表示されている化合物は、以下のような特徴を有している。
【0051】
前記化合物はそれぞれ、ポリ(アリーレンエーテルスルホン)(poly(arylene ether sulfone)、以下、PAESと称する)とポリ(アリーレンエーテルケトン)(poly(arylene ether ketone)、以下、PAEKと称する)を主鎖とポリエチレングリコール(Polyethylene glycol、以下、PEGと称する)が結合された構造を含むことができる。
【0052】
具体的には、前記化学式1及び化学式2で表示される化合物は、前記PAESとPAEKそれぞれのCOOHとPEGのOHが反応してグラフティングされた、すなわち、グラフティングされた高分子物質であることができる。前記化学式1で表示される化合物は、PAESにPEGがグラフティングされた共重合体であることができる。前記化学式2で表される化合物は、PAEKにPEGがグラフティングされた共重合体であることができる。
【0053】
前記化学式3および化学式4で表示される化合物は、前記PAESとPAEKとPEGのブロック共重合体の形態の高分子物質であることができる。前記化学式3で表示される化合物は、化合物の構造内の相分離が明確に起こることができる構造を有することができ、PAESとPEGのブロック共重合体であることができる。前記化学式4で表示される化合物は、化合物の構造内の相分離が明確に起こることができる構造を有することができ、PAEKとPEGのブロック共重合体であることができる。
【0054】
前記PAESとPAEKは、優れた熱的、機械的安定性を有する特徴があるので、前記PAESとPAEKが前記リチウム二次電池に導入される場合には、放電の過程で活物質と導電性エージェントの体積変化に耐えることができる機械的強度を有することができる。
【0055】
前記化合物は、前記PEGにより導電性の特性が向上することができる。具体的には、前記PEGは鎖内にエーテル基(Ether group、-O-)を有し、前記エーテル基によってリチウムイオンとの結合が可能で、優れたリチウム塩との相互作用を行うことができる。また、前記PEGの分節運動によってリチウムイオンを伝導させることができる。
【0056】
本明細書では、本発明の詳細な説明において、化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物はそれぞれ、上記のような特徴を有するものと理解されるべきである。
【0057】
リチウム二次電池用電解質膜およびその製造方法
本発明のリチウム二次電池用電解質膜は、前記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物と、およびリチウム塩とを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されたことを特徴とする。
【0058】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において、リチウムイオンを供給する供給源として使用されることができ、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6とLiAsFなどから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0059】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSIであることができる。
【0060】
前記リチウム二次電池用電解質膜では、前記リチウム塩は、前記化合物のPEGは鎖内にエーテル基(Ether group、-O-)と相互作用して、リチウムイオンを伝達することができるチャンネルを形成させることができる。
【0061】
前記リチウム二次電池用電解質膜は、前記電解質膜について前記リチウム塩の重量比を調節することにより、前記電解質膜のリチウムイオン伝導度を制御することができる。前記リチウム塩の重量比が増加するほど、前記PEG鎖の分節運動を介して移動させることができるリチウムイオンの数が増加してリチウムイオン伝導度が向上することができる。
【0062】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、約10%~50%の重量比を有することができる。前記リチウム塩の重量比が約10%未満の場合には、リチウム塩の導入による前記ポリエチレングリコールの分節運動容易さにはほとんど影響がなく、前記リチウム塩の重量比が約50%を超える場合には、過量のリチウム塩が、前記PEG鎖の分節運動を妨げて有効リチウム輸送数が減るため、リチウムイオン伝導度が再び減少するという問題点がある。したがって、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、約10%~50%の重量比を有することができ、好ましくは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、約40%~50%の重量比を有することができる。
【0063】
本発明のリチウム二次電池用電解質膜の製造方法は、前記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物を準備する第1のステップと、前記化合物とリチウム塩を有機溶媒に溶解させて、混合溶液を製造する第2のステップと、および前記混合溶液を基板に鋳造し、乾燥させる第3のステップとを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されることを特徴する。
【0064】
前記第1のステップでは、前記化合物は、PAESとPAEKを主鎖にPEGがグラフティング(grafting)されたり、ブロック共重合体の形態の高分子物質であることができる。
【0065】
前記第2のステップでは、前記有機溶媒は、前記化合物とリチウム塩を溶解することができる溶媒が使用されることができる。例えば、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)であることができる。
【0066】
前記第2のステップでは、前記リチウム塩は、リチウムイオンを供給する供給源として使用することができる物質であることができ、前記リチウム塩は、LiTFSIであることができる。
【0067】
前記第2のステップでは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、10%~50%の重量比を有するように混合されることができる。前記リチウム塩の重量比が約10%未満の場合には、リチウム塩の導入による前記ポリエチレングリコールの分節運動容易さにはほとんど影響がなく、前記リチウム塩の重量比が約50%を超える場合には、過量のリチウム塩が、前記PEG鎖の分節運動を妨げて有効リチウム輸送数が減るため、リチウムイオン伝導度が再び減少するという問題点がある。したがって、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、10%~50%の重量比を有するように混合されることができ、好ましくは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、40%~50%の重量比を有するように混合されることができる。
【0068】
一実施例では、前記リチウム塩としてLiTFSIを利用して電解質膜を製造する場合には、前記LiTFSIと、前記化合物との間に相互作用が起こり、リチウムイオンを伝達することができるチャンネルが形成されることができる。
【0069】
リチウム二次電池用バインダーおよびその製造方法
本発明のリチウム二次電池用バインダーは、前記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物と、およびリチウム塩とを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されたことを特徴する。
【0070】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において、リチウムイオンを供給する供給源として使用されることができ、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6およびLiAsFなどから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0071】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSIであることができる。
【0072】
前記リチウム二次電池用バインダーでは、前記リチウム塩は、前記化合物のPEGは鎖内にエーテル基(Ether group、-O-)と相互作用して、リチウムイオンを伝達することができるチャンネルを形成させることができる。
【0073】
前記リチウム二次電池用バインダーは、前記バインダーについて前記リチウム塩の重量比を調節することにより、前記電解質膜のリチウムイオン伝導度を制御することができる。前記リチウム塩の重量比が増加するほど、前記PEG鎖の分節運動を介して移動させることができるリチウムイオンの数が増加してリチウムイオン伝導度が向上することができる。
【0074】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、約10%~50%の重量比を有することができる。前記リチウム塩の重量比が約10%未満の場合には、リチウム塩の導入による前記ポリエチレングリコールの分節運動容易さにはほとんど影響がなく、前記リチウム塩の重量比が約50%を超える場合には、過量のリチウム塩が、前記PEG鎖の分節運動を妨げて有効リチウム輸送数が減るため、リチウムイオン伝導度が再び減少するという問題点がある。したがって、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、約10%~50%の重量比を有することができ、好ましくは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、約40%~50%の重量比を有することができる。
【0075】
本発明のリチウム二次電池用バインダーの製造方法は、前記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物を準備する第1のステップと、前記化合物とリチウム塩を有機溶媒に溶解させて、混合溶液を製造する第2のステップと、および前記混合溶液を基板に鋳造し、乾燥させる第3のステップとを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されることを特徴する。
【0076】
前記第1のステップでは、前記化合物は、PAESとPAEKを主鎖にPEGがグラフティング(grafting)されたり、ブロック共重合体の形態の高分子物質であることができる。
【0077】
前記第2のステップでは、前記有機溶媒は、前記化合物とリチウム塩を溶解することができる溶媒が使用されることができる。例えば、前記有機溶媒は、テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran、THF)であることができる。
【0078】
前記第2のステップでは、前記リチウム塩は、リチウムイオンを供給する供給源として使用することができる物質であることができ、前記リチウム塩は、LiTFSIであることができる。
【0079】
前記第2のステップでは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、10%~50%の重量比を有するように混合されることができる。前記バインダーの重量比が約10%未満の場合には、リチウム塩の導入による前記ポリエチレングリコールの分節運動容易さにはほとんど影響がなく、前記リチウム塩の重量比が約50%を超える場合には、過量のリチウム塩が、前記PEG鎖の分節運動を妨げて有効リチウム輸送数が減るため、リチウムイオン伝導度が再び減少するという問題点がある。したがって、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、10%~50%の重量比を有するように混合されることができ、好ましくは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用バインダーに対し、40%~50%の重量比を有するように混合されることができる。
【0080】
一実施例では、前記リチウム塩としてLiTFSIを利用してバインダーを製造する場合には、前記LiTFSIと、前記化合物との間に相互作用が起こり、リチウムイオンを伝達することができるチャンネルが形成されることができる。
【0081】
リチウム二次電池用膜-電極構造体
本発明のリチウム二次電池用膜-電極構造体は、前記化学式1~化学式4のいずれか1つで表示される化合物およびリチウム塩を含む電解質膜と、前記電解質膜と同じ組成物で形成されるバインダーと、および前記電極バインダーにより前記電解質膜と結合された電極とを含み、リチウムイオン移送チャネルが形成されたことを特徴する。
【0082】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において、リチウムイオンを供給する供給源として使用されることができ、前記リチウム塩は、LiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))、LiPF6、LiBF4、LiSbF6とLiAsFなどから選択されたいずれかの1つであることができる。
【0083】
一実施例において、前記リチウム塩は、LiTFSIであることができる。
【0084】
前記リチウム二次電池用膜-電極構造体では、前記リチウム塩は、前記化合物のPEGは鎖内にエーテル基(Ether group、-O-)と相互作用して、リチウムイオンを伝達することができるチャンネルを形成させることができる。
【0085】
前記リチウム二次電池用膜-電極構造体は、前記リチウム塩の重量比を調節することにより、前記リチウム二次電池用膜-電極構造体のリチウムイオン伝導度を制御することができる。前記リチウム塩の重量比が増加するほど、前記PEG鎖の分節運動を介して移動させることができるリチウムイオンの数が増加してリチウムイオン伝導度が向上することができる。
【0086】
一実施例において、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、約10%~50%の重量比を有することができる。前記リチウム塩の重量比が約10%未満の場合には、リチウム塩の導入による前記ポリエチレングリコールの分節運動容易さにはほとんど影響がなく、前記リチウム塩の重量比が約50%を超える場合には、過量のリチウム塩が、前記PEG鎖の分節運動を妨げて有効リチウム輸送数が減るため、リチウムイオン伝導度が再び減少するという問題点がある。したがって、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、約10%~50%の重量比を有することができ、好ましくは、前記リチウム塩は、前記リチウム二次電池用電解質膜に対し、約40%~50%の重量比を有することができる。
【0087】
前記リチウム二次電池用膜-電極構造体において、前記電解質膜と前記バインダーを同じ物質として使用することにより、膜-電極界面の接合性を向上させ、前記膜と前記電極との間の界面抵抗を下げることができる。
【0088】
一実施例において、前記電解質膜における前記バインダーの界面抵抗が1800~2100Ωであることができる。好ましくは、前記電解質膜における前記バインダーの界面抵抗が約2000Ωであることができる。
【0089】
本発明によると、高いリチウムイオン伝導度を有する電解質膜およびバインダーを提供することができ、前記電解質膜およびバインダーを利用して、従来のPVDFベースのバインダーに対し、優れたリチウムイオン伝導度および低い界面抵抗に起因する強化された接着力を有する膜-電極構造体を提供することができる。
【0090】
また、さらに、本発明の前記化学式1~化学式4のいずれか一つで表示される化合物は、アルミホイルとの接着効果も優れて、全体的電池性能と安定性が向上した簡単な形態の全固体電池を簡単な製造方法で実装することができる。
【0091】
<実施例1:化合物>
化合物の製造
図1は、本発明の化合物を示した図である。
図1を参照すると、本発明の化合物は、PAESおよびPAEKを主鎖とPEGの反応で形成された、グラフティング(grafting)されたり、ブロック共重合体の形態の高分子物質であることができる。具体的には、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸(4,4-bis(4-hydroxyphenyl)valeric acid、95%)およびビス(4-フルオロフェニル)スルホン(bis(4-fluorophenyl)sulfone、99%)を利用して、ポリアリーレンエーテルスルホンをベースにした高分子の主鎖となるPAES-COOHを合成した。また、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)吉草酸(4,4-bis(4-hydroxyphenyl)valeric acid、95%)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン(4,4’-Difluorobenzophenone、DBP)を利用して、ポリアリーレンエーテルケトンをベースにした高分子の主鎖となるPAEK-COOHを合成した。前記合成されたPAES-COOHとPAEK-COOHにポリエチレングリコールモノエチルエーテル(PEG)をグラフティングさせてPAES-g-PEGとPAEK-g-PEG共重合体を合成した。合成されたPAES-g-PEGとPAEK-g-PEG共重合体はそれぞれ、(a)と(b)で表される構造を有する。
【0092】
PAES-g-PEGとPAEK-g-PEG共重合体のほか、高分子構造内の相分離が明確に起こるようにするために、PAESまたはPAEKとPEGのブロック共重合体の形態でも製造した。製造されたPAES-b-PEGとPAEK-b-PEGブロック共重合体は、それぞれ(c)および(d)で表される構造を有する。
【0093】
<実験例A:化合物合成評価>
本発明の実施例1で製造されたPAES-g-PEGの合成を確認するためには、PAES-COOHと製造されたPAES-g-PEGのそれぞれを核磁気共鳴分析(
1H-NMR)とフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)を利用してデータを得て、それぞれの結果を
図2-A~
図2-Cに示した。
【0094】
図2-A~
図2-Cを参照すると、
図2-AでPAES-COOH主鎖の合成を確認することができ、
図2-BでPAES側鎖にPEG鎖がグラフティングされたPAES-g-PEG共重合体の合成を確認することができる。また、
図2-CもPAES-g-PEG共重合体の合成を確認することができる。
【0095】
<実施例2:電解質膜>
電解質膜の製造
リチウム塩としてLiTFSI(Lithium bis(trifluoromethanesulfonyl))を用いて電解質膜を製造した。前記LiTFSIおよび前記実施例1で製造されたPAES-g-PEGをテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)に溶解させた後、ガラス板に一定の厚さに鋳造した後、乾燥させて固体電解質膜を製造した。このとき、前記LiTFSIの重量比を調節して、様々なLiTFSIの重量比を有する固体電解質膜を製造した。
【0096】
<実験例B:本発明の電解質膜の電気的特性の評価>
本発明の実施例2で製造された固体電解質膜の電気的特性をナイキスト(Nyquist)線図およびリチウムイオン伝導度のグラフで評価した。前記グラフを
図3および
図4に示した。
【0097】
図3および
図4を参照すると、LiTFSIの重量比が10%から50%まで増加するにつれて、リチウムイオン伝導度が向上することを確認することができるが、LiTFSIの重量比が60%からリチウムイオン伝導度が再び減少されることを確認することができる。それはLiTFSIの重量比が増加するほどPEG鎖の分節運動を介して移動させることができるリチウムイオンの数が増加してリチウムイオン伝導度が向上するが、60%LiTFSIの重量比を超える場合には、過量のLiTFSIがPEG鎖の分節運動を妨げて有効リチウム輸送数が減るため、リチウムイオン伝導度が再び減少することが予想できる。
【0098】
<実施例3:本発明のバインダーが導入された電極>
バインダーを導入した陽極の製造
【0099】
(1)LiCoO2陽極
前記実施例2と同じ操作を実行して、さまざまなLiTFSIの重量比を有するバインダーを製造した。陽極用活物質LiCoO2を80%、カーボンブラックを10%、様々なLiTFSIの重量比を有するバインダーを10%をN-メチル-2-ピロリジン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)に溶解させた後、アルミホイルに鋳造し、陽極に製造した。
【0100】
(2)LiNiMnCoO2陽極
前記実施例2と同じ操作を実行して、さまざまなLiTFSIの重量比を有するバインダーを製造した。陽極用活物質LiNiMnCoO2を80%、カーボンブラック10%、様々なLiTFSIの重量比を有するバインダーを10%をN-メチル-2-ピロリジン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)に溶解させた後、アルミホイルに鋳造し、陽極に製造した。
【0101】
<実験例C:本発明のバインダーが導入された陽極の表面と断面分析>
本発明の実施例3にしたがって製造されたバインダーが導入された陽極の表面と断面分析を行った。その比較例として、従来のリチウム二次電池用バインダーとして使用されるPVDFが導入された陽極を使用した。それぞれの陽極の表面と断面画像を走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)を用いて得て、その結果を
図5に示した。
【0102】
図5を参照すると、(B)LiCoO
2/PAES-g-PEG陽極と(D)LiNiMnCoO
2/PAES-g-PEG陽極と(A)LiCoO
2/PVDF陽極と(C)LiNiMnCoO
2/PVDF陽極の表面を比較すると、PAES-g-PEGバインダーを用いた場合に陽極の活物質、カーボンブラック、PAES-g-PEGバインダーが太く粗い(coarse)凝集体を形成せずに均一に分布したことを確認することができる。これにより、PAES-g-PEGバインダーは活物質との互換性が優れていることを予想することができる。また、このような形態は、LiCoO
2/PAES-g-PEG陽極とLiNiMnCoO
2/PAES-g-PEG陽極の断面をそれぞれ示す(E)と(F)からも確認することができる。
【0103】
<実験例D:本発明のバインダーが導入された陽極物質の元素分析>
本発明の実施例3にしたがって製造されたバインダーが導入された陽極物質の元素分析をエネルギー分散型分光分析法(Energy Dispersive Spectrometry、EDS)を用いて行った。その結果を
図6に示した。
【0104】
図6を参照すると、S、O元素のピークを介してPAES-g-PEGのスルホン基が陽極物質に存在することを確認することができ、これは、それぞれの陽極物質にPAES-g-PEGバインダーが接着されたと予想することができる。
【0105】
<実験例E:本発明の電解質膜における本発明のバインダーの界面抵抗分析>
本発明の実施例2に従って製造された電解質膜であるPAES-g-PEG電解質膜におけるPAES-g-PEGバインダーの界面抵抗とその比較例としてPAES-g-PEG電解質膜におけるPVDFバインダーの界面抵抗それぞれをナイキスト線図を通じて分析し、その結果を
図7に示した。
【0106】
図7を参照すると、PAES-g-PEG固体電解質膜におけるPAES-g-PEGバインダーの界面抵抗が2000Ωであるのに対し、PVDFバインダーの界面抵抗が6000Ωであることを確認することができる。これを通じて、PAES-g-PEG共重合体を用いて製造された電解質膜とそれと同じ組成物を使用して製造された陽極用バインダーを含む膜-電極構造体は、電解質膜と陽極表面との間のリチウムイオンの輸送が向上し、従来の技術よりもより低い界面抵抗を有することがわかる。
【0107】
<実験例F:本発明のバインダーを導入した陽極の柔軟性評価>
様々な濃度のLiTFSIを含むPAES-g-PEGバインダーで製造した陽極の柔軟性評価を行った。前記柔軟性の評価は、前記陽極を半分に折ったり、ガラス棒に巻いたとき、表示される形態を肉眼で観察して行った。その結果を
図8に示した。
【0108】
図8を参照すると、陽極を折ったり、半分に折ったり、ガラス棒に巻いたとき、機械的な欠点が発生していないことを確認することができる。これにより、本発明のバインダーで製造した陽極は、優れた柔軟性と機械的強度を有することがわかる。
【0109】
<実験例G:本発明のバインダーを導入した陽極の接着力の評価>
本バインダーを導入した陽極の接着力を評価するために、アルミホイルにおけるPAES-g-PEGバインダーと、活物質として、それぞれLiCoO
2、LiNiMnCoO
2およびSulfur/CNTを用いた陽極におけるPAES-g-PEGバインダーの接着力を分析した。その結果を
図9-A~
図9-Dに示した。
【0110】
図9-A~
図9-Dを参照すると、
図9-AアルミホイルにおけるPAES-g-PEGバインダーの接着力と
図9-B、
図9-C、
図9-Dのそれぞれの3つの活物質を用いた陽極におけるPAES-g-PEGバインダーの接着力は、基準値(それぞれのグラフ上で黄色の線で表示)よりも高いことを確認することができる。
【0111】
<実験例H:本発明のPAES-g-PEG電解質膜におけるPAES-g-PEGバインダーの適合性評価>
本発明の電解質膜とそれと同じ組成物で形成されたバインダーを含む全固体リチウムイオン電池システムでは、それぞれ様々な濃度のLiTFSI塩を含むPAES-g-PEGバインダーと活物質LiCoO
2、LiNiMnCoO
2、Sulfur/CNTで製造した陽極との適合性をテストするために、電圧電流法を用いて、それぞれの充放電サイクルを測定し、その結果を
図10~
図12に示した。
【0112】
図10~
図12を参照すると、充放電サイクルを数回実施した後でも、陽極の酸化、還元電圧のピークと電圧電流曲線の変動がすべて大きくないことを確認することができる。それは陽極にPAES-g-PEGバインダーを使用したときにも、従来に使用されているバインダーであるPVDFと類似に二次電池の性能を安定的に維持することができるということを示す結果である。
【0113】
上記では、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野の熟練した当業者は、下記の特許請求の範囲に記載された本発明の思想および領域から逸脱しない範囲内で、本発明を多様に修正及び変更させることができることを理解できるだろう。