(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】インプラントまたは工具製造の為の丸みが付けられた粒子を用いた造粒製品
(51)【国際特許分類】
B29C 67/04 20170101AFI20220107BHJP
A61F 2/30 20060101ALI20220107BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20220107BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20220107BHJP
B29C 67/20 20060101ALI20220107BHJP
C08J 9/24 20060101ALI20220107BHJP
C08J 3/12 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B29C67/04
A61F2/30
A61L27/16
A61L27/56
B29C67/20 D
C08J9/24 CER
C08J3/12 A CEZ
(21)【出願番号】P 2018563080
(86)(22)【出願日】2017-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2017050894
(87)【国際公開番号】W WO2017211469
(87)【国際公開日】2017-12-14
【審査請求日】2019-12-23
(31)【優先権主張番号】102016110501.5
(32)【優先日】2016-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512242697
【氏名又は名称】カール ライビンガー メディツィンテクニック ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲー
【氏名又は名称原語表記】Karl Leibinger Medizintechnik GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Kolbingerstr. 10 Muhlheim 78570 GERMANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100094318
【氏名又は名称】山田 行一
(74)【代理人】
【識別番号】100165526
【氏名又は名称】阿部 寛
(72)【発明者】
【氏名】アクス, アデム
(72)【発明者】
【氏名】ライナウアー, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフラム, トビアス
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-154308(JP,A)
【文献】特開2008-142379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B29C 67/00-67/08
B29C 67/24-69/02
B29C 73/00-73/34
B29D 1/00-29/10
B29D 33/00,99/00
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック材を含み、外科的使用の為に設けられるインプラント(1)を製作する為の方法であって、前記方法は、少なくとも、
a)プラスチック粉末(2)を準備するステップと、
b)前記プラスチック粉末(2)を加熱および加圧し、少なくとも一つの中間片(3)を形成するステップと、
c)造粒体(4)を形成する為に前記少なくとも一つの中間片を機械的に粉砕するステップと、
d)前記造粒体(4)を接合し、一体化された基体(6)を形成するステップと、
を含
み、
前記ステップ(c)は、前記少なくとも一つの中間片(3)が、単一片を形成するように切断および/または打抜きによって予め粉砕される第1工程(c1)であって、複数の鋭利な縁を持つ単一片が一つの中間片(3)から製作される、第1工程(c1)と、前記単一片が切削によって更に粉砕されて造粒体(4)を形成する第2工程(c2)であって、大きさ及び形状が均一な造粒体(4)を複数の粒子(5)から形成するまで細かく砕かれる、第2工程(c2)とを含む、
方法。
【請求項2】
前記基体(6)は、多孔質構造体を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔質構造体は、開放型セル(open-cell)または密閉型セル(closed-cell)構造体であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラスチック粉末は、20μm~900μmの粒度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの中間片(3)は、プレート形状であり、多孔質材構造体を有し、さらに/または、固定材料で形成されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2工程(c2)を実施した後、前記造粒体(4)を形成する複数の粒子(5)は、20μm~2000μmの粒度を有することを特徴とする、請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(d)は、前記造粒体(4)の多孔質焼結工程および/または選択的レーザ焼結工程(SLS工程)を含むことを特徴とする、請求項
1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記基体(6)に表面処理を実施することを特徴とする、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【説明】
【0001】
本発明は、目標物/器具、特にインプラントまたは外科的工具/補助的手段であって、プラスチック材料、好ましくはプラスチック材料から成り、外科的用途の為に準備されるものに関する。また、本発明は、インプラント、補助的手段および工具に関する。
【0002】
それは、基本的に、インプラントを製作する為のUHMWPE材料(超高分子量ポリエチレン材料)を使用する現状技術から既に知られている。たとえば、US 6 641 617 B1は、基体内部で使用する為の医療用インプラントを開示し、前記インプラントは、前記UHMWPE材料から形成されている。
【0003】
しかしながら、既に知られた方法において、外科手術で用いられる医療用の目標物(たとえば、インプラント)の製造は、しばしば、比較的に複雑であり、これは、欠点であることが分かった。これは、特に、最初のプレスチック材料が特別な形状(粒度、粒径など)を示さなければならず、同時に比較的に高い粘性を示さなければならないという点による。そのため、プラスチック材料のインプラントを製造する為の従来技術において、主に化学処理ステップは、様々な溶媒を使用することによって進行される。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、従来技術から知られた欠点を排除すること、経費が著しく減少するプラスチック材料の医療用目標物を製造する為の方法を利用可能にすることを目的とする。
【0005】
本発明によると、これは、最初の請求項に従う方法によって達成され、これは、プラスチック材料から成る目標物を製造し、外科用途、特に、インプラントまたは(手術用)工具のような外科/医療支援の為に準備され、少なくとも以下のステップが達成される。
【0006】
a)(自由流動性)プラスチック粉末(の特定量(容積または重量))を準備するステップ、
【0007】
b)プラスチック粉末を加熱、加圧し、少なくとも一つの中間片を形成する/少なくとも一つの中間片を形成する為にプラスチック粉末を加熱、加圧するステップ、
【0008】
c)少なくとも一つの中間片を機械的に粉砕し、(好ましくは、所定の粒度および/または粒形状を有する)造粒体を形成するステップ、
【0009】
d)基体を形成するように造粒体を接合するステップ。
【0010】
この目的は、UHMWPE材料を含む少なくとも一つの多孔質基体を有する(好ましくはプレート形状の)インプラントによって更に達成される。
【0011】
前述した方法のステップによって、この目標物は、溶液によるような化学的反応ステップをほとんど伴わず、主に又は完全に機械的および物理的作業ステップによって準備される。プラスチック粉末を加圧して中間片を形成することによって、更に、その後の機械的粉砕によって所定の均一な粒子を造粒体として使用することができるので、好ましい再生可能な製造方法が実現される。特に、製造されるべき目標物、好ましくはインプラントの意図された多孔質は、このように、特に調整可能である。生物学的に複雑な方式で通常分解されるべき反応物が大部分は省かれるので、環境汚染は実質的に低減される。
【0012】
更なる有利な実施形態は、従属形式請求項で請求されるが、以下、詳細に説明する。
【0013】
外科的用途の為に都合良く準備される目標物は、インプラントであり、これは、更に好ましくは、骨接合または骨折修復に役立ち、さらに/または(患者特有の)個人のインプラント形成に役立つ。更なる構成において、外科的用途の為に準備される目標物が、術中に医療用途の為の(手術用)工具のような手術支援の形態で使用される場合も有用である。
【0014】
プラスチック粉末は、一つの単一プラスチック材料から成るのが好ましい。その後、製造方法は、特に容易に再現することができる。
【0015】
したがって、プラスチック粉末が、熱可塑性材料、好ましくは、ポリエチレン(PE)、特に好ましくは、趙高分子ポリエチレン(UHMWPE)、更に好ましくは、高密度プリエチレン(HDPE)、もっと更に好ましくは、ポリプロピレンフマル酸エステル系(PPF)のようなポリプロピレン(PP)、もっと更に好ましくは、ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、特に、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から成る場合、特に都合が良い。これは、目標物、好ましくはインプラントを、それぞれの用途分野に対して、材料を最適に調整するのに役立つ。
【0016】
プラスチック粉末が硬化性樹脂材料、特に好ましくは生物学的に分解可能/生体適合性熱硬化性樹脂材料、好ましくは(熱硬化性)ポリウレタン(PUR),更により好ましくは、ポリアクリラートまたはエポキシ樹脂から成る場合にも好都合である。その場合も、目標物として特に効率的なインプラントを製造できる。
【0017】
さらに、プラスチック粉末が、弾性材料、好ましくは、(弾性の)ポリウレタン(PUR)、更に好ましくは、シリコン材料、特に好ましくは、ポリスルフィドから作製される場合、目標物の為に、工具としてのような補助的手段を製造するのに特に都合が良い。
【0018】
しかしながら、プラスチック粉末が、異なるプラスチック材料、すなわち、異なる熱可塑性、熱硬化性および/または弾性材料から成る場合にも好都合である。ここでは、プラスチック粉末が、HDPE及び/又はPE混和物を含むUHMWPEから成る場合、特に好ましい。そのような粉末混合物は、インプラントのような目標物を製造するのに特に適している。前記UHMWPE-HDPE-PE混合物に対する、PEEK、(弾性及び/又は熱硬化性)PUR、ポリアクリラートおよび/またはエポキシ樹脂のようなPP,PPF,PAEKの他の混和物は、目標物の、より柔軟な用途を必要とする。
【0019】
基体が多孔質構造体を有する場合に更に都合が良い。前記多孔質構造体は、医療用インプラントがそれぞれの哺乳類の体に受け入れられ/成長する形態の目標物に特に有望である。
【0020】
この状況において、多孔質構造体が、開放型セル又は閉鎖型セル/開放型気孔又は閉鎖型気孔構造体である場合、即ち、相互接続および/または非相互接続形態を有する場合に更に有用である。一方、開放型気孔構造体は、哺乳類の体内で目標物の内部成長(ingrowing)を促進するのに役立ち、他方では、閉鎖型気孔構造体は、強度を更に高めるのに役立つ。
【0021】
この状況において、特に有利なことは、基体がそのような多孔質を有し、孔径の範囲が10μmから450μm、更に好ましくは、300μm未満/10μm~300μm、特に好ましくは、200μm~300μmの範囲にあることである。基体が、そのような多孔質を有し、孔径が500μm~850μmの範囲である場合にも都合が良い。このように、目標物は、医療用途の為に更に最適化される。
【0022】
さらに有利なことは、基体が、30~45%、更に好ましくは50~60%、特に好ましくは80%を越える多孔質を有する場合である。これは、基体を特に効率良くさせる。
【0023】
この状況において、(ステップa)またはd)を実施する前に)プラスチック粉末に少なくとも一つの更なる添加剤、好ましくは、プロ骨関節添加剤を追加すると更に好都合である。前記添加剤は、好ましくは、ヒドロキシアパタイト(HAP)、炭酸カルシウム(CaCO3)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、ストロンチウム(Sr)、αまたはβリン酸カルシウム(α/βTCP)、バイオガラス(登録商標)、粒子/生理活性ガラス、プリPDLLA、PLGA、PLA、PGAのようなエステル材料、キトサン繊維、キトサン粒子である。このように、特に、生物学的適合性のある、安定した目標物が製作可能である。
【0024】
基体が更に親水化されると、その目標物は、人体内で用いる為のインプラントとして更に最適化される。
【0025】
さらに、この方法ステップa)-d)が、時間的に連続して実施される場合に都合が良い。これは、当該方法を特に効率良くさせる。
【0026】
プラスチック粉末が、約20μm又は約50μmおよび約900μmの間、好ましくは、約300μmおよび約600μmの間、更に好ましくは、約500μm±100μmの粒径を有する場合、中間片の製造は容易に実現可能である。
【0027】
少なくとも一つの中間片がプレート形状であり、(少なくも部分的に又は完全に)多孔質材料の構造体を有し、さらに/または、(少なくとも部分的に又は完全に)固体材料から形成されるとき、特に好都合である。このように、中間片は、後の粉砕の為の構成に関して、順調に準備される。
【0028】
さらに、ステップc)が第1工程c1)および/または第2工程c2)を含む場合に有用であり、第1工程c1)において、少なくとも一つの中間片を好ましくは機械加工、切断および/または穿孔によって、単一片へと予め粉砕しておき、第2工程c2)において、単一片を、好ましくは切削によって(更に)粉砕し、造粒体/ペレットを形成する。これは、形状および大きさに関して造粒体を特に正確に製作することに役立つ。
【0029】
第2工程c2)において、切削がロータミルによって行われ、ミルのロータおよび/またはスクリーンが、好ましくは、丸穴のような複数の穴を有するコニュール(登録商標)プレート又はプレートとして構成されるときに更に都合が良い。そのため、造粒体の最終的形状は、特に巧みに実現できる。しかしながら、スクリーンまたはロータ内の接着が防止できるので、液体窒素を使用することが勧められる。丸穴スクリーンおよび/またはコニュール(Conidur)スクリーンと組み合わせられたビーター及びターボロータの形態のロータ形状は、特に、それ自体が証明されるが、それらは、スリット穴シートと比較して、むしろ、三角形から半楕円の開口部を有する。
【0030】
この状況において、造粒体の粒子形状が(好ましくは一様に)円、楕円、三角形および/または矩形であるとき、特に好都合である。特に、粒子の各々が丸みが付けられた表面、すなわち、丸みが付けられた縁を有する場合に都合が良い。そのため、目標物は、特に耐久性良く製造される。
【0031】
第2工程c2)に関し、第2工程c2)を実施した後、造粒体の粒子が約20μm~2000μmの粒径を示す場合も有用である。前記粒径は、医療インプラントとして目標物を使用するのに特に適している。
【0032】
ステップd)が造粒体の焼結、好ましくは、多孔質焼結および/または選択的レーザ焼結、すなわち、ステップd)が焼結操作として実施される場合、この目標物は、完全に自動製造が可能である。
【0033】
この場合、焼結操作自体は、窒素および/またはアルゴン雰囲気または真空/真空下で実施されるのが好ましい。また、さらに、焼結中に膜が用いられてもよいので、雰囲気/真空の発生を特に効率良く実現すること、特別な弾性を与えることが可能である。これが、製造方法を、もっと更に効率良くさせる。
【0034】
焼結後または焼結中、異なる材料コンポーネント/基体のプラスチック材料の、更なる加圧または追加の浸出(leaching)も実施できるので、目標物の多孔質を局所的または全体的に変更することができる。この状況において、焼結中に、HAP、CaCO3、α/β/x-TCP等のような生体分解性の材料が、プラスチック材料の造粒体に充填され、適切に架橋される場合にも特に都合が良い。このように、目標物の機械的特性は、特に巧みに調整できる。既に前述したように、粒子は、異なる形状をとってもよく、好ましくは、粒子は、焼結中に最適なエネルギ入力を与えるように丸みが付けられた形状をとる。
【0035】
更に好都合なことは、基体において、好ましくはステップd)に続くステップe)において、基体の滅菌放射が実施され、プラスチック材料が(さらに)架橋する場合である。このように、目標物の安定性は更に改善される。
【0036】
この状況において、特に好都合なことは、好ましくは10-45kGy、更に好ましくは約25kGy(25億ラッドに相当)のガンマ線滅菌放射線、ETOガスを用いた気化/滅菌放射線、電子線滅菌、プラズマ滅菌が行われる場合である。このように、放射線も、自動的に特に効率良く実現できる。
【0037】
さらに、基体が洗浄される場合、好ましくはステップd)及びe)に続いて、或いは、ステップd)およびステップe)の間のステップf)において、目標物/基体の品質が更に改善される。
【0038】
たとえば、凍結したCO2を用いて、特にスノーブラスト処理(snow blasting)によって、基体が洗浄される場合に好都合である。
【0039】
特に都合が良いのは、基体の洗浄が、超音波浴洗浄および/または表面処理(例えば、熱表面仕上げ又はCO2に基づく技術によるスノーブラスト処理のような表面処理)を含む場合である。超音波浴洗浄は、更に好ましくは、エタノールまたはイソプロパノールによって実施される。そのため、特に高度な浄化が得られる。
【0040】
また、好都合なことは、好ましくはステップd)、e)及び/又はf)に続くステップ(好ましくはステップg))において、基体の(好ましくは熱)表面処理が実施される場合である。そのため、基体の全粒子は、特に、恒久的に固定される。
【0041】
表面処理が、プラズマ/(熱仕上げ処理の形態における)低圧プラズマ表面処理を含む場合、良好な内部成長挙動が達成される。UHMWPE、HDPE、PPインプラントの強度増加と表面上の残留粒子の固定とが達成される。
【0042】
表面処理は、プラズマ/低圧プラズマ表面処理に対して追加または代替で、好ましくは熱風ブロワによる高温空気処理を含む場合、熱仕上げ処理及び表面上の残留粒子の固定によるUHMWPE,HDPE,PPインプラントの強度増加が再び達成されるように、熱処理による、その後の術中成形の選択肢が与えられる。
【0043】
好ましくは熱風/高温空気処理に加えて、表面処理は、特定プラスチックシステムなどに爆発バリ取り処理(explosion deburring)を含む場合、熱風ブロワのような熱仕上げ処理と、表面上の残留粒子の固定(即ち、強度増加の相互接続)とによるUHMWPE,HDPE,PPインプラントの強度増加が達成されるように、再び、熱処理による、その後の術中成形の選択肢が与えられる。
【0044】
さらに、追加または代替としての表面処理が、超臨界CO2を用いた基体の表面の処理を含む場合、熱処理による、その後の術中成形の選択肢が提供され、熱仕上げ処理と、表面上の残留粒子の固定と(強度増加の相互接続)によるUHMWPE,HDPE,PPインプラントの強度増加が更に引き出される。
【0045】
追加または代替としての表面処理が、赤外線放射器を用いた基体の表面処理を含む場合、その後の術中成形の他の選択肢が提供され、熱仕上げ処理と、表面上の残留粒子の固定と(即ち、強度増加の相互接続)によるUHMWPE,HDPE,PPインプラントの強度増加が更に引き出される。
【0046】
さらに、表面処理は、追加又は代替で、基体の火炎処理を含み、熱処理による術中成形の更なる選択肢が提供され、熱仕上げ処理と、表面上の残留粒子の固定と(即ち、強度増加の相互接続)によるUHMWPE,HDPE,PPインプラントの強度増加が更に引き出される場合に好都合である。
【0047】
表面処理が、更に又は代替で、加熱炉内の熱処理を含み、熱処理による術中成形の更なる選択肢が提供され、熱仕上げ処理と、表面上の残留粒子の固定と(即ち、強度増加の相互接続)によるUHMWPE,HDPE,PPインプラントの強度増加が更に引き出される場合に好都合である。
【0048】
この状況において、表面処理、特に、熱風処理、火炎処理および/またはプラズマ表面処理がロボットアームによって実施される場合、特に好都合である。これは、熱処理による、その後の術中成形の他の選択肢を提供すること、熱仕上げ処理と、表面上の残留粒子の固定と(即ち、強度増加の相互接続)によるUHMWPE,HDPE,PPインプラントの強度増加を更に引き出すことに役立つ。
【0049】
基本的に、独立形式の請求項1の方法のステップ、即ち、ステップa)-d)を実施した後、基体は、インプラントのような完全な目標物を実現することも言及される。従属形式請求項において追加で実施される当該方法のステップe)~g)は、基体を更に進化させるので、最終的に得られる目標物は、哺乳類の体で使用する為に、もっと更に効率的に改善される。当該方法のステップe)~g)は、ステップa)~d)に加えて、互いに共同して又は独立して実施されてもよい。
【0050】
インプラントとして目標物を構成するとき、基体は、操作中に挿入されるとき、通常の方法で、骨および軟骨の患者特有の幾何学的形状に対して、その形状に従って適合させるが、焼結中(ステップd)に続く直後)に既に最終的な患者特有の形状を呈してもよい。後者の場合において、前記形状は、関係する患者の骨部分の走査処理によって検出され、焼結ステップで構成される。
【0051】
また、本発明は、UHMWPE材料を含む少なくとも一つの基体を備える補助的手段またはインプラントに関する。テンプレートまたは工具は、補助的手段とみなされる。変形例において、基体は、非多孔質/閉じられるが、インプラントとしての変形例において、それは多孔質設計を有する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
以下、例示的構成における図によって、プラスチック/プラスチック材から作成され、外科的用途の為に準備される目標物を製造する為の発明に従う好ましい方法を詳細に説明する。
【
図1】
図1は、本発明に従う例示的構成に示された製造方法の概略図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示された製造方法に従って製造された、インプラントを形成する目標物の完成基体を横切る断面の顕微鏡詳細断面図を示すが、特に、球の形態で使用される造粒体の形状が明らかである。
【
図3】
図3は、第2実施例の構成に示された製造方法に従って製造された、インプラントを形成する目標物の完成基体を横切る断面の顕微鏡詳細断面図を示すが、前記製造方法は、造粒体の多角形粒子の使用によって、
図1及び
図2に従う製造方法とは異なる。
【
図4】
図4は、製造された目標物/インプラントの可能な取付け領域を図示するため、人間の頭蓋骨の斜視図を示す。
【詳細な説明】
【0053】
図は単に概略的であり、本発明の理解の為にのみ役立つ。同一の要素には同一の符号が付される。
【0054】
図1には、第1の例示的実施形態に示される本発明に従う好ましい製造方法が明らかである。外科的用途の為に準備された目標物1、即ち医療インプラントを、この方法で形成する、最終的に完成した基体6を製造するため、当該方法は、矢印によってマークされたステップa)からg)が時間的に連続して実施される。基体6を製造するため、最初に、当該方法のステップa)~d)が実施されなければならない。以下に説明される2つの例示的構成において、目標物1は、インプラントの形態であり、以下、目標物としてのインプラントには、参照符合1が付けられている。インプラント1の製造に対する代替として、更なる構成において、異なる目標物、特に、外科工具のような手術の為の補助的手段は、前記製造方法によって製造される。
【0055】
図1から明らかであるように、最初に、UHMWPE粉末2の形態でプラスチック粉末2が準備され(矢印a)、前記プラスチック粉末2は、300μm未満の粒度/平均粒度を有する。
【0056】
自由流動性プラスチック粉末2は、その後、矢印b)でマークされた焼結のような工程によって、直ちに加圧される。これは、一体の/コヒーレントな中間片3を生じさせる。特に、中間片3は、プラスチック粉末2の同時加熱を伴う加圧によって得られ、中間片3は、最終的に長方形プレートを形成する。前記焼結/中間片3の第1形成の間の、中間片3の温度は、常に使用されるプラスチックの崩壊温度(複数のプラスチック材料では、使用されるプラスチック粉末2の最低溶融材コンポーネントの崩壊温度)未満である。好ましくは、それぞれの中間片3を製作するため、雌型成形品が準備され、ここに、プラスチック粉末2が最初に充填され、これが、後で加熱されて加圧されるが、ぎっしり詰める力が加えられるので、中間片3の形態の固定構造体が形成される。
【0057】
矢印c)に従った中間片3の製造に続き、中間片3の各々は、再び、所定の方法で粉砕される。中間片3は複数の粒子へと粉砕され、同時に造粒体4を形成する。粒子5は実質的に均一形状を有するが、これは、機械的粉砕の具体的な実施によってもたらされる。この例示的構成において、横断面において、球状粒子5の、又は楕円の形態の丸みが付けられた粒子5が製作される。
【0058】
この方法のステップc)は、2つの工程に分けられるが、これらは、明瞭性のため、ここには詳細に示されていない。(第1工程c1)と呼ばれる)第1工程において、少なくとも一つの中間片3が、切断によって予め粉砕され、複数の鋭利な縁を持つ単一片が、一つの中間片3から製作される。あるいは、更なる例示的構成において考慮されることは、切削または旋削のような機械加工によって、さらに/または、切断に加えて、切断によるより打抜きによって、前記単一片を製作することである。
【0059】
第1工程c1)に続いて、(第2工程c2)と呼ばれる)第2工程で、複数の単一片は、機械的に更に粉砕、即ち、細かく砕かれる。単一片は、均一の造粒体4、特に大きさ及び形状が均一なものを複数の粒子5から形成するまで、細かく砕かれる。細かく砕く工程は、ロータミルによって実現されるのが好ましいが、ロータは、ハウジング、即ちスクリーンに対して静止/固定された領域に関して移動し、それらの間に配置された単一片は、機械的剪断力の為に粉砕される。その場合のロータ及びスクリーンは、完成造粒体4の円周の幾何学的形状を既に定める複数の穴を含む。ここで、丸みが付けられた粒子5が形成されることから、穴/貫通穴は、等しく丸い形状をとる。それぞれの単一片を加圧して穴を通過させることによって、丸い形状が粒子5に伝えられる。
【0060】
矢印d)によると、その後、その形態に関して設定された造粒体4の接合が続き、一体型基体6を形成する。この例示的構成において、焼結操作、即ち、選択的レーザ焼結操作が接合に役立つ。しかしながら、代替として、異なる焼結技術を利用することも可能であり、たとえば、多孔質焼結または更に異なる接合技術(例えば、溶着のような接着接合技術)を利用可能である。
【0061】
ステップd)の後、基体6は、UHMWPE形態のコヒーレントに安定したプラスチック材料から成り、これは、粉末形態の前に存在していたものである。矢印d)および矢印e)の間の
図1に従う概略図の部分的表示から明らかであるように、任意の構成の実質的にプレート形状のインプラント1は、既に、前記基体6の形態で、予め成形されている。前記基体6内では、個々に予め自由流動性の造粒体粒子5がしっかりと接着材で接合されている(詳細な表示「I」を参照)。このため、この工程における基体6は、ステップd)を実施した後に、既に製造されるインプラント1の完成形状を実質的に示す。したがって、インプラント1は、通常、骨接合と、それぞれの骨折修復の為のインプラント1として(例えば頭蓋インプラントとして)、構成される。焼結は、インプラント/基体6が多孔質、好ましくは、開放型気孔構造を有するように実施される。あるいは、同様に、密閉型気孔構造を実現してもよい。
【0062】
図1に従う例示的構成において、インプラント1/基体6を完全に構成するのに既に役立つステップa)~d)に加えて、ステップe)~g)が更に実現される。ステップd)に続いて起こるステップe)により、基体6は更に放射線操作、即ち、滅菌用放射線に晒される。前記滅菌用放射線は、UHMWPE材料の更なる架橋結合に役立ち、これは、詳細な切り抜き部分「II」による
図1の矢印e)に続く部分的表示から明らかである。したがって、個々の粒子5は、より密接に互いに寄り添い、それぞれ、それらの相互接触面を拡大する。
【0063】
当該ステップf)に従う滅菌用放射線の後、基体6は洗浄されるが、これは、表面の詳細表示「III」および「IV」による矢印f)の前後の部分的表示に見られる。
【0064】
ステップg)によって表面を洗浄した後、基体6の熱表面仕上げが実施される。最後に、これにより、好ましい例示的構成に従うステップg)に引き続き、インプラント1が完成される。
【0065】
図2において、
図1からの完成インプラント1を横切る断面の顕微鏡詳細表示が、もう一度、詳細に図示されている。ここには、特に、丸みが付けられた/楕円の横断面形状の個々の粒子5が見える。
【0066】
しかしながら、
図3と組み合わせると、基本的に、前記丸みが付けられた形状以外の形状を準備することも可能である。異なるインプラント1の横断面を示す
図3において、粒子5は、多角形形状をとる。その粒子5の、そのような多角形形状設計は、
図1に示された方法に類似する方法によって実現可能であり、ただ、工程c2)に従う細かく砕く操作を適合させなければならない。スクリーン内およびロータ内の丸みが付けられた穴の代わりに、角度が付けられた貫通穴が準備されなければならない。後者も同様に、大きさを変えてもよく、最終的に
図3に従う粒子5が
図2に示される粒子より幾分大きくなるように設計される。
【0067】
完成インプラント1は、
図4から明らかであるように、たとえば、頭蓋骨で、又は、顎の領域で、あるいは、哺乳動物の類似領域で使用されてもよい。また、インプラント1/基体6は、患者の特定の幾何学的データに応じて製造されてもよい。このため、患者特有の雌型成形品として、既に適した焼結成形品を設計することが可能であり、そのため、ステップd)に従うインプラント1の完成形状、対応するステップg)に従うインプラント1の完成形状を製作することができる。これに対する代替として、操作中に直ちに曲げまたは切断することによって、完成基体6の大きさを幾何学的に適合させることも可能である。
【0068】
更なる構成において、PE、PP、HDPEのような選択されたUHMWPE以外の材料から基体6を製造することも可能である。基本的に、他の熱可塑性材料、熱硬化性および/または弾性樹脂は、製造に適している。また、UHMWPE、PP、PEおよび/またはHDPEの混合物のような材料混合物を、製造の為に選択してもよい。
【0069】
【符合の説明】
【0070】
1…目標物/インプラント、2…プラスチック粉末、3…中間片、4…造粒体、5…粒子、6…基体。