(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】粘着付与樹脂、粘・接着剤、ホットメルト接着剤
(51)【国際特許分類】
C08G 63/48 20060101AFI20220107BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20220107BHJP
C09J 123/08 20060101ALI20220107BHJP
C09J 131/04 20060101ALI20220107BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20220107BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08G63/48
C09J11/08
C09J123/08
C09J131/04
C09J201/00
C08L93/04
(21)【出願番号】P 2016190628
(22)【出願日】2016-09-29
【審査請求日】2019-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2015255861
(32)【優先日】2015-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松浦 泰祐
(72)【発明者】
【氏名】中本 宙
【審査官】三宅 澄也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-040021(JP,A)
【文献】国際公開第2012/141675(WO,A3)
【文献】特開2005-133049(JP,A)
【文献】国際公開第2016/154456(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/065072(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第102965024(CN,A)
【文献】特表2014-517091(JP,A)
【文献】特開昭62-275177(JP,A)
【文献】特開平02-180979(JP,A)
【文献】特開昭60-028476(JP,A)
【文献】特開昭60-020977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00- 64/42
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で示される二塩基性ジテルペンカルボン酸を含むロジン類(a1)、ポリオール(a2)及びα,β不飽和カルボン酸類(a3)を反応成分とするロジンエステル(A)を含有し、
前記ロジン類(a1)における二塩基性ジテルペンカルボン酸、アビエチン酸及びデヒドロアビエチン酸の含有量が、順に
3~
13重量%、
20重量%以上60重量%未満及び
5重量%以上30重量%未満である粘着付与樹脂。
【化1】
【請求項2】
請求項1の粘着付与樹脂とベース樹脂を含有する粘・接着剤。
【請求項3】
請求項1の粘着付与樹脂とベース樹脂を含有するホットメルト接着剤。
【請求項4】
ベース樹脂がエチレンー酢酸ビニル共重合体を含む請求項3のホットメルト接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着付与樹脂、該粘着付与樹脂を含む粘・接着剤、及び該粘着付与樹脂を含むホットメルト接着剤に関する。
【0002】
本明細書において「粘・接着剤」とは粘着剤及び/又は接着剤を、「ホットメルト接着剤」とは、支持体に溶融状態で塗付され冷却固化状態で接着層を形成する接着剤を意味する(以上、JIS K 6800参照)。
【背景技術】
【0003】
ロジンとポリオールの反応物であるロジンエステルは、粘着付与樹脂としてホットメルト接着剤や溶剤型粘・接着剤、エマルジョン型粘・接着剤等において賞用されている(特許文献1~3を参照)。
【0004】
それら粘・接着剤は、高温条件で使用されることがあり、その場合、ロジンエステルとしては高軟化点のものが使用される。そうしたものとしては、例えば、フマル酸等のα,β不飽和カルボン酸をロジンに反応させてなる所謂強化ロジンとポリオールとの反応物(強化ロジンエステル)が知られている(特許文献4及び5を参照)。
【0005】
一方、従来の強化ロジンエステルは、ホットメルト接着剤の粘着付与樹脂として使用する場合、ベース樹脂、特にエチレンー酢酸ビニル共重合体との相溶性が不十分な場合があった。また、該ロジンエステルを含むホットメルト接着剤は、加熱時に濁りや皮張りが生ずるなど加熱安定性が不十分な場合や、溶融粘度が高いため塗工作業性が十分でない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表平6-501515号公報
【文献】特開平9-25371号公報
【文献】特開2010-77429号公報
【文献】特開昭60-28476号公報
【文献】特開昭63-275685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、ホットメルト接着剤の粘着付与樹脂として使用した場合において、ベース樹脂との相溶性が良好であり、かつ、該ホットメルトの溶融粘度を低下させ、かつ、その加熱安定性をも向上させ得る、新規なロジンエステルタイプの粘着付与樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、従来の強化ロジンエステルは、例えば下記構造で示される多塩基樹脂酸を多く含んでおり、これが分岐点となって非常に高分子量化されているため、ホットメルト接着剤のベース樹脂と相溶し難いと考えた。
【0009】
【0010】
強化ロジンエステルの分子量を下げるには、α,β不飽和カルボン酸の使用量を減らし、強化の程度を低くすればよいが、そのような低分子量の強化ロジンエスルはホットメルト剤の溶融粘度を著しく低下させ、加熱安定性も悪化させる。
【0011】
そこで本発明者は、α,β不飽和カルボン酸を使用せずとも高分子量化を達成できる原料ロジンについて検討を重ねた結果、反応性に富む二塩基性樹脂酸を含むロジンを用いることによって、所期の効果を奏する粘着付与樹脂が得られることを見出した。
【0012】
すなわち本発明は、二塩基性ジテルペンカルボン酸を含むロジン類(a1)及びポリオール(a2)を反応成分とするロジンエステル(A)を含有する粘着付与樹脂、並びに該粘着付与樹脂とベース樹脂とを含有する粘・接着剤及びホットメルト接着剤に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の粘着付与樹脂たるロジンエステルは、二塩基性ジテルペンカルボン酸を含むため、α,β不飽和カルボン酸で変性しなくても従来の強化ロジンエステルと同等以上の性能を奏する。
【0014】
具体的には、本発明の粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤用のベース樹脂、特にエチレンー酢酸ビニル共重合体との相溶性が良好であり、均質で透明なホットメルト接着剤を与える。また、本発明に係るホットメルト接着剤は、溶融粘度が相対的に小さいため塗工作業性良好であり、さらに加熱安定性も良好であるため、長時間加熱しても濁りや皮張りが生じ難い。また、当該ホットメルト接着剤は耐熱保持力にも優れる。
【0015】
本発明の粘着付与樹脂は、ホットメルト接着剤用途で好適であるが、溶剤型粘・接着剤やエマルジョン型粘・接着剤等にも好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の粘着付与樹脂(以下、成分ともいう。)は、下記構造式で示される二塩基性ジテルペンカルボン酸を含むロジン類(a1)(以下、(a1)成分ともいう。)、ポリオール(a2)を反応成分とするロジンエステル(A)(以下、(A)成分ともいう。)を含有する組成物である。
【0017】
【0018】
二塩基性ジテルペンカルボン酸は、その立体異性構造により、ジヒドロアガト酸、オリベリ酸、エペルエンジカルボン酸及びピニフォリン酸に分類できる。以下に、ジヒドロアガト酸の非限定的な構造を示す。
【0019】
【0020】
該二塩基性ジテルペンカルボン酸は、一級カルボキシル基が柔軟なアルキル鎖を介して脂環骨格に結合した特異な構造を有する。また、該一級カルボキシル基は反応性が高く、後述の(a2)と容易に反応し、高分子量ポリエステルを容易に形成する。該ポリエステルの非限定的な構造を以下に示す。
【0021】
【0022】
(A)成分は、そうした特徴的な分子骨格のポリエステルを含むため、強化変性されていなくても従来の強化ロジンエステルと同等以上の作用効果を奏するのであろうと推察される。
【0023】
(a1)成分における前記二塩基性ジテルペンカルボン酸の含有量は特に限定されないが、該カルボン酸の含有量が少なすぎると(A)成分の軟化点が低くなって、前記耐熱保持力が低下する傾向にある。また、該カルボン酸の含有量が多すぎると(A)成分の分子量が高くなって、前記相溶性及び加熱安定性が悪化し、前記溶融粘度も相対的に高くなって塗工作業性が悪化する傾向にある。耐熱保持力、相溶性、加熱安定性及び溶融粘度のバランスの観点より、二塩基性ジテルペンカルボン酸の含有量は通常20重量%未満、好ましくは1~15重量%程度、より好ましくは3~13重量%程度であるのがよい。
【0024】
(a1)成分としては、例えば、以下の態様が挙げられる。
【0025】
(ア):二塩基性ジテルペンカルボン酸をもともと含むロジン
(イ):(ア)成分と、二塩基性ジテルペンカルボン酸を含まないロジンとを組み合わせてなるロジン
(ウ):ジヒドロアガト酸を、二塩基性ジテルペンカルボン酸を含まないロジン及び/又は(ア)成分に組み合わせてなるロジン
【0026】
(ア)成分としては、二塩基性ジテルペンカルボン酸を含むロジンであれば、産地及び松種は問わない。例えば、インドネシア産のロジンやベトナム産のロジンには二塩基性ジテルペンカルボン酸が比較的多く含まれている。特に、インドネシア産やベトナム産のメルクシ松(Pinus merkusii)由来のロジン(ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等)には、専らジヒドロアガト酸が含まれる。また、該ロジンの水素化物や不均化物も使用できる。
【0027】
(ア)成分は、各種公知の方法で精製してもよい。具体的には、例えば、蒸留、再結晶及び抽出等の操作が挙げられる。蒸留の条件は特に限定されず、通常、温度が200~300℃程度、及び圧力が130~1300Pa程度である。再結晶は、(ア)成分をベンゼンやトルエン、キシレン、クロロホルム、低級アルコール、アセトン、酢酸エチル等の良溶媒に溶解させた後、該良溶媒を留去して濃厚な溶液となし、該溶液に、n-ヘキサンやn-ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等の貧溶媒を添加すればよい。抽出は、(ア)成分をアルカリ水溶液となし、不溶性の不ケン化物を適当な溶媒を用いて抽出した後、水層を中和すればよい。
【0028】
(イ)成分をなす、二塩基性ジテルペンカルボン酸を含まないロジンとしては、各種公知のものを特に限定無く使用することができる。具体的には、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジンや、天然ロジンを精製して得られる精製ロジン、天然ロジンを水素化反応させて得られる水素化ロジン、天然ロジンを不均化反応させて得られる不均化ロジン等が挙げられる。
【0029】
(ウ)成分をなす二塩基性ジテルペンカルボン酸は、例えば、特開昭51-131899号公報に記載の方法で調成可能である。
【0030】
(a1)成分には、二塩基性ジテルペンカルボン酸以外の樹脂酸として、例えば、アビエチン酸やデヒドロアビエチン酸が含まれる。それらの含有量は特に限定されないが、通常順に60重量%未満及び30重量%未満、好ましくは20~50重量%程度及び5重量%程度である。
【0031】
(a1)成分における樹脂酸の含有量は、各種公知の手段で定量できる。例えば、ガスクロマトグラフィー(GC)を用い、定量目的の樹脂酸に由来するピーク面積を全樹脂酸のピーク面積で除することにより求め得る。
【0032】
(a1)成分の物性は特に限定されないが、通常、軟化点が通常70~90℃程度であり、また、酸価が通常130~200mgKOH/g程度である。
【0033】
(a2)成分としては、各種公知のポリオールを使用できる。具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ダイマージオール及び1,6-ヘキサンジオール等のジオールや、グリセリン、トリメチロールエタン及びトリメチロールプロパン等のトリオール、ペンタエリスリトール等のテトラオール、ジペンタエリスリトール等の5価以上のポリオール等が挙げられ、二種以上を併用できる。これらの中でも、(A)成分とベース樹脂の相溶性や、本発明に係る粘着剤・接着剤の性能を考慮すると、ジオール、トリオール及びテトラオールからなる群より選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0034】
(a2)成分の使用量は特に限定されないが、耐熱保持力等の粘・接着性能を特に考慮すると、(a1)成分の酸価(JIS K 0070。以下、酸価というときは同様。)と(a2)成分中水酸基価(JIS K 0070。以下、水酸価というときは同様。)との比率(OH/COOH)が通常0.5~4程度となる範囲であるのがよい。
【0035】
(A)成分の反応成分には、必要に応じて、各種公知のα,β不飽和カルボン酸類(a3)(以下、(a3)成分ともいう。)をふくめてよい。具体的には、例えば、アクリル酸及びメタクリル酸等のα,β不飽和モノカルボン酸、並びにフマル酸及び(無水)マレイン酸等のα,β不飽和ジカルボン酸等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0036】
(a3)成分の使用量は特に限定されないが、本発明の粘着付与樹脂とベースポリマーとの相溶性等を考慮すると、通常、(a1)成分中のアビエチン酸1モルに対して通常0.005~3モル程度、より好ましくは0.005~0.3モル程度となる範囲である。
【0037】
(A)成分としては、例えば、以下の態様が挙げられる。
【0038】
(A1):(a1)成分及び(a2)成分のエステル化物(ロジンエステル)
(A2):(A1)成分と(a3)成分のディールス・アルダー反応物(強化ロジンエステル)
(A3):(a1)成分及び(a3)成分のディールス・アルダー反応物と、(a2)成分とのエステル化物(強化ロジンエステル)
(A4):(a1)成分、(a2)成分及び(a3)成分の同時反応物(強化ロジンエステル)
【0039】
エステル化反応の条件は特に限定されず、例えば前記反応成分を、溶媒の存在下若しくは不存在下、及びエステル化触媒の存在下又は不存在下に、250~280℃程度及び1~8時間程度の条件で反応させればよい。該エステル化触媒としては、例えば、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒や、水酸化カルシウム等のアルカリ金属の水酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の金属酸化物等が挙げられ、二種以上を併用できる。該エステル化反応は、常圧下、減圧下、加圧下及び窒素パージ下のいずれか又は組み合わせの雰囲気で行えばよい。
【0040】
(A)成分の物性は特に限定されないが、(A)成分とベース樹脂の相溶性や、本発明に係粘・接着剤の加熱安定性、溶融粘度適性及び耐熱保持力のバランス等を考慮すると、重量平均分子量が通常800~4000程度であり、また、軟化点が通常70~180℃程度であり、また、酸価が1~100mgKOH/g程度である。
【0041】
(A)成分には、架橋剤、防滑剤、防腐剤、防錆剤、pH調整剤、消泡剤(シリコン系消泡剤等)、増粘剤、充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤、顔料、染料等の添加剤を含めてもよい。
【0042】
(A)成分は、後述の乳化剤の存在下でエマルジョンとなし、粘着付与樹脂として使用することもできる。
【0043】
本発明の粘・接着剤は、本発明の粘着付与樹脂とベース樹脂とを含有する組成物である。該組成物は、例えば、ホットメルト接着剤、溶剤型粘・接着剤、及びエマルジョン型の粘・接着剤として使用でき、特にホットメルト接着剤として好適である。
【0044】
ベース樹脂としては、各種公知のものを特に制限なく使用できる。具体的には、例えば、エチレン系共重合体、合成ゴム系エラストマー、アクリル系共重合体、アクリル系重合体エマルジョン、ゴム系ラテックス等が挙げられ、本発明の粘・接着剤の前記利用態様に応じて適切なものを選択すればよい。ホットメルト接着剤用途では、エチレン系共重合体及び/又は合成ゴム系エラストマーが好ましい。
【0045】
エチレン系共重合体としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体や、エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体が挙げられる。該アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル等を例示でき、二種以上を併用できる。
【0046】
合成ゴム系エラストマーとしては、例えば、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-水添ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)およびスチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体(SEPS)等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0047】
アクリル系共重合体(前記エチレン-アルキル(メタ)アクリレート共重合体を除く。)としては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルや(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸、フマル酸、(無水)マレイン酸、イタコン酸等の活性水素基含有(メタ)アクリレートと前記アルキル(メタ)アクリレートとの共重合体等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0048】
アクリル系共重合体エマルジョンとしては、前記アクリル系共重合体を乳化剤の存在下で乳化したものが挙げられる。該乳化剤としては、例えば、非反応性乳化剤及び/又は反応性乳化剤を使用できる。
【0049】
非反応性乳化剤としては、例えば、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホコハク酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルスルホコハク酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン性乳化剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン性乳化剤が挙げられる。
【0050】
反応性乳化剤としては、例えば、スルホン酸基、カルボキシル基などの親水基と、アルキル基、フェニル基などの疎水基を有する界面活性剤であって、分子中に炭素-炭素二重結合を有するものが挙げられる。該炭素-炭素二重結合としては、たとえば、(メタ)アリル基、1-プロペニル基、2-メチル-1-プロペニル基、ビニル基、イソプロペニル基、(メタ)アクリロイル基等の官能基が挙げられる。反応性乳化剤の具体例としては、たとえば、前記官能基を分子中に少なくとも1つ有するポリオキシエチレンアルキルエーテル、前記官能基を分子中に少なくとも1つ有するポリオキシエチレンフェニルエーテル、およびそれらのスルホコハク酸エステル塩や硫酸エステル塩が挙げられる。また、前記官能基を分子中に少なくとも1つ有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、およびそのスルホコハク酸エステル塩、その硫酸エステル塩、そのリン酸エステル塩、その脂肪族若しくは芳香族カルボン酸塩が挙げられる。また、酸性リン酸(メタ)アクリル酸エステル系乳化剤、ロジングリシジルエステルアクリレートの酸無水物変性物(特開平4-256429号公報参照)、特開昭63-23725号公報、特開昭63-240931号公報、特開昭62-104802号公報に記載の乳化剤も使用できる。
【0051】
ゴム系ラテックスとしては、例えば、天然ゴムラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0052】
上記したもの以外のベース樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、液状ポリブタジエン、液状ポリイソブチレン、ポリビニルアセタール、ゼラチン、マンナン、デンプン等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0053】
本発明の粘着付与樹脂と前記ベース樹脂の使用量は特に限定されないが、通常、前者100重量部(固形分換算)に対して後者が2~40重量部程度(固形分換算)である。
【0054】
本発明の粘・接着剤には、他の粘着付与樹脂や、各種公知の有機溶剤、ワックス、架橋剤、及び前記添加剤を含めることができる。
【0055】
他の粘着付与樹脂としては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン((a1)成分に該当するものを除く。)や、それらの精製物、水添物、重合物及び強化物等の変性ロジン、並びに該変性ロジンと前記(a2)成分及び/又は(a3)成分との反応物等が挙げられる。他にも、C9系石油樹脂、C5系石油樹脂及びC5/C9系石油樹脂、並びにそれらの水添物等の石油樹脂や、テルペン樹脂及びその水添物等が挙げられる。
【0056】
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、酢酸エチル、クロロホルム及びジメチルホルムアミド等が挙げられ、二種以上を併用できる。
【0057】
ワックスとしては、例えば、蜜蝋、鯨蝋及びセラック蝋等の動物由来、カルナバ蝋、木蝋、米糠蝋及びキャンデリラワックス等の植物由来のワックス、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックス等の石油由来のワックス、並びにモンタンワックス及びオゾケライト等の鉱物由来のワックスが挙げられ、二種以上を併用できる。
【0058】
架橋剤としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、ポリアミン化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等の架橋剤を加えることにより、凝集力、耐熱性を更に向上させることもできる。これら架橋剤のなかでも、特にポリイソシアネート化合物を使用するのが好ましく、その具体例としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等の各種公知のものが挙げられる。更に本発明のアクリル系粘接着剤組成物は必要に応じて充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を適宜使用しうる。また、本発明のアクリル系粘接着剤組成物は、本発明の目的を逸脱しない範囲で各種公知の粘着付与樹脂を併用することもできる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を、実施例及び比較例を通じて詳細に説明するが、それらによって本発明の範囲が制限されないことはもとよりである。
【0060】
各例中、原料ロジン中のジヒドロアガト酸(DHAA)、アビエチン酸(AA)及びデヒドロアビエチン酸(DAA)の含有量は、以下のガスクロマトグラフ質量分析装置で測定した。測定には試料(ロジン類)0.005gをオンカラムメチル化剤(フェニルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド(PTHA)0.2モルメタノール溶液、ジーエルサイエンス(株))0.5gに溶解させ、1μlをガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)に注入し、測定を行った。樹脂酸のメチルエステル体から、各含有量を決定した。使用装置はガスクロマトグラフ質量分析装置(製品名「Agilent6890」、「Agilent5973N」;Agilent technologies製)及び市販カラム(製品名「Advance-DS」、信和化工(株)製)である。
【0061】
各例中、ロジンエステルの重量平均分子量(Mw:ポリスチレン換算値)は以下の条件で求めた。
分析装置:HLC-8220(東ソー(株)製)
カラム:TSKgelSuperHM-L×3本
溶離液:テトラヒドロフラン
注入試料濃度:5mg/mL
流量:0.6mL/min
注入量:100μL
カラム温度:40℃
検出器:RI
【0062】
各例中、ロジンエステルの軟化点(Sp(℃))は、JIS K 2531の環球法により測定した。
【0063】
1.粘着付与樹脂の合成
【0064】
製造例1
インドネシア産ガムロジン100部をキシレン100部に溶解し、室温で48%NaOHaq 5部、水33部を用いて1回抽出した。ついで水層(抽出液)を希塩酸で中和し遊離した樹脂酸をキシレン33部で抽出したのち、キシレンを200℃で留去してジヒドロアガト酸を90重量%含有する樹脂酸組成物(酸価290mgKOH/g)を得た。
【0065】
実施例1
撹拌装置、冷却管、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、インドネシア産のガムロジン(ジヒドロアガト酸10重量%、アビエチン酸35重量%、デヒドロアビエチン酸5重量%、酸価190mgKOH/g、軟化点80℃。以下、IDロジンともいう。)50部と中国産のガムロジン(ジヒドロアガト酸0重量%、アビエチン酸50重量%、デヒドロアビエチン酸5重量%、酸価170mgKOH/g、軟化点75℃。以下、CNロジンともいう。)50部とを仕込み、200℃で溶融させた。次いで、反応系にフマル酸1部を仕込み、200℃で1時間反応させた。次いで、同温度の溶融物に、ペンタエリスリトール15部を仕込み、窒素ガス気流下、280℃で10時間エステル化反応を行った。その後、3時間減圧処理することにより、強化ロジンエステルを合成した。物性を表1に示す。
【0066】
実施例2
実施例1と同様の反応容器に、IDロジン100部を仕込み、200℃で溶融させた。次いで、同温度の溶融物に、ペンタエリスリトール15部を仕込み、窒素ガス気流下280℃で10時間、エステル化反応を行い、次いで3時間減圧処理することによりロジンエステルを合成した。物性を表1に示す。
【0067】
実施例3
実施例1と同様の反応容器に、CNロジン70部とIDロジン30部とを仕込み、200℃で溶融させた。次いで、同温度の溶融物に、ペンタエリスリトール15部を仕込み、窒素ガス気流下に280℃で10時間、エステル化反応を行い、次いで3時間減圧処理することにより、ロジンエステルを合成した。物性を表1に示す。
【0068】
実施例4
実施例1と同様の反応容器に、IDロジン98部と製造例1で得られた樹脂酸組成物 2部とを仕込み、200℃で溶融させた。次いで、同温度の溶融物に、ペンタエリスリトール14部を仕込み、窒素ガス気流下に280℃で12時間、エステル化反応を行い、次いで5時間減圧処理することにより、ロジンエステルを合成した。物性を表1に示す。
【0069】
比較例1
実施例1と同様の反応容器に、CNロジン100部を仕込み、窒素ガス気流下200℃で溶融させた。次いで、反応系にフマル酸1部を仕込み、200℃で1時間反応させた。次いで、同温度の溶融物に、ペンタエリスリトール15部を仕込み、窒素ガス気流下で280℃で10時間、エステル化反応を行った。その後、3時間減圧処理することにより、強化ロジンエステルを合成した。物性を表1に示す。
【0070】
比較例2
実施例1と同様の反応容器に、CNロジン100部を溶融し、フマル酸5部を仕込み、200℃で1時間反応させる。次いでペンタエリスリトール13部を仕込み、窒素ガス気流下280℃まで昇温し同温度で10時間、エステル化反応を行った。その後、3時間減圧処理することにより、強化ロジンエステルを合成した。物性を表1に示す。
【0071】
比較例3
実施例1と同様の反応容器に、CNロジン100部を溶融し、200℃で溶融させた。次いで、同温度の溶融物に、ペンタエリスリトール15部を仕込み、窒素ガス気流下280℃で10時間、エステル化反応を行い、次いで3時間減圧処理することによりロジンエステルを合成した。物性を表1に示す。
【0072】
【表1】
表1中、DHAAはジヒドロアガト酸を、AAはアビエチン酸、DAAはデヒドロアビエチン酸を意味する。
【0073】
2.ホットメルト接着剤の調製
【0074】
実施例1の(A1)成分と、市販のエチレンー酢酸ビニル共重合体(商品名EVA#220、三井・デュポンポリケミカル(株)製)と、マイクロクリスタリンワックス(商品名Hi-Mic-1080、日本精鑞(株)製)部とを、重量比が4/4/2となるように混合し、加熱下に溶融させることによって、ホットメルト接着剤を調製した。
【0075】
<加熱安定性試験>
前記ホットメルト接着剤を25g秤量し、これを180℃の順風乾燥機内で加熱した際の濁り及び皮張りの有無を、24時間目、48時間目及び72時間目のそれぞれにおいて、以下の基準で目視確認した。結果を表2に示す。
○:濁り、皮張りなし
△:濁り、皮張りがやや生じている
×:濁り、皮張りが強く生じている
【0076】
<溶融粘度の測定>
前記ホットメルト接着剤の150℃及び180℃のそれぞれにおける粘度を、市販のB型粘度計(ローター:HM-3、回転速度:3rpm)で測定した。結果を表2に示す。
【0077】
<相溶性>
実施例1の(A1)成分2gと、EVA#220 2gと試験管に入れ、加熱下に混合し、溶融させた後、該溶融物を更に200℃に達するまで加熱してから放冷し、外観に濁りが生じた温度(曇点)を測定した。他の実施例及び比較例のロジンエステルについても同様にして混合物を調製し、その曇点を同様に測定した。結果を表2に示す。
【0078】
<耐熱保持力>
実施例1に係るホットメルト接着剤をアルミ基材に塗工し、縦7.5cm、横2.5
cm幅に切断。これを別のアルミ被着体に圧着させた後、23℃で1日放置した。次いで、市販のクリープ測定装置(製品名:恒温恒湿槽付保持力試験機、テスター産業(株)製)を用い、荷重1kg、温度60℃の条件で、当該荷重物品が落下するまでの時間を測定し、下記基準で耐熱保持力を評価した。
○:2時間以上
△:1.5時間以上2時間未満
×:1.5時間未満
【0079】