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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/29 20060101AFI20220107BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20220107BHJP
   H01F 37/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
H01F37/00 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017031175
(22)【出願日】2017-02-22
(65)【公開番号】P2018137351
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2019-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】石間 雄也
(72)【発明者】
【氏名】松山 靖
(72)【発明者】
【氏名】志賀 悠人
(72)【発明者】
【氏名】青木 俊二
(72)【発明者】
【氏名】近藤 真一
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-175383(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1670184(KR,B1)
【文献】特開2004-200602(JP,A)
【文献】実開昭57-050838(JP,U)
【文献】特開2008-147540(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136843(WO,A1)
【文献】特開2013-038392(JP,A)
【文献】特開2017-073536(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0110236(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/29、37/00
H01G 4/00-4/40
H01C 1/00-1/16、7/00-7/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一凹部が設けられた素体と、
前記第一凹部内に配置された第一導体部分を有する実装用導体と、を備え、
前記第一導体部分は、前記第一凹部の底面と対向する第一面と、前記第一面と対向する第二面と、前記第一面と前記第二面とを接続する第三面と、を有し、
前記第一凹部の底面及び前記第一面の対向方向から見て、前記第三面は前記第二面と重なる領域を有し、
前記領域は、前記素体の内側に向かって凸状となるように全体的に湾曲し
前記第一面は、前記領域を規定する第一外縁を有し、
前記第二面は、前記領域を規定する第二外縁を有し、
前記対向方向における前記第一外縁と前記第二外縁との離間距離をa、前記対向方向及び前記第一外縁に直交する方向における前記第一外縁と前記第二外縁との離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係を満たす、電子部品。
【請求項2】
前記素体は、実装面を有し、
前記第一凹部は、実装面に設けられている、請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記素体は、前記実装面から連続すると共に、第二凹部が設けられた端面を更に有し、
前記第二凹部は、前記第一凹部と一体的に設けられ、
前記実装用導体は、前記第二凹部内に配置された第二導体部分を更に有すると共に、断面L字状を呈している、請求項に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第二導体部分は、前記第二凹部の底面と対向する第四面と、前記第四面と対向する第五面と、前記第四面と前記第五面とを接続する第六面と、を有し、
前記第二凹部の底面及び前記第四面の対向方向から見て、前記第六面は前記第五面と重なる領域を有している、請求項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記素体内でコイルを構成するコイル導体を更に備え、
前記実装用導体は、実装用導体層が積層されてなり、
前記コイルのコイル軸は、前記実装用導体層の積層方向に沿って設けられている、請求項又はに記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
チップと、チップの表面に設けられた実装用導体とを備える電子部品が知られている。この電子部品では、実装用導体がチップの外面に形成されているので、チップのサイズを電子部品の既定サイズよりも一回り小さくする必要がある。したがって、チップの容積を十分に確保できない場合がある。そこで、特許文献1には、素体と、素体に設けられた凹部内に配置された実装用導体と、を備える電子部品が開示されている。この電子部品では、実装用導体が凹部内に配置されているため、素体の容積を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4816971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電子部品では、素体にクラックが生じる場合があった。
【0005】
本発明は、素体におけるクラックの発生が抑制されている電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らの調査研究によれば、電子部品を製造する際の熱処理により生じる実装用導体の構成材料の収縮量が、素体の構成材料の収縮量よりも大きいことに起因して、素体にクラックが生じ易くなることが判明した。したがって、実装用導体の体積を減らせば、実装用導体の構成材料の収縮量を減らすことができる。しかしながら、実装強度を保つために、実装用導体の外面の面積を維持する必要がある。
【0007】
そこで、本発明に係る電子部品は、第一凹部が設けられた素体と、第一凹部内に配置された第一導体部分を有する実装用導体と、を備え、第一導体部分は、第一凹部の底面と対向する第一面と、第一面と対向する第二面と、第一面と第二面とを接続する第三面と、を有し、第一凹部の底面及び第一面の対向方向から見て、第三面は第二面と重なる領域を有している。
【0008】
この電子部品では、底面及び第一面の対向方向から見て、第三面が第二面と重なる領域を有している。したがって、第三面が第二面と重ならないように設けられている場合に比べて、第二面の面積を維持したままで、第一導体部分の体積を減らすことができる。これにより、第一導体部分の構成材料の収縮量を減らすことができるので、クラックが素体に発生することが抑制される。
【0009】
本発明に係る電子部品において、領域は、湾曲していてもよい。例えば、領域が複数の平面により構成され、面取りされたような形状を呈している場合、領域の角部に応力が集中する懼れがある。これに対して、本発明に係る電子部品では、領域が湾曲しているので、応力を緩和することができる。したがって、クラックが素体に発生することが更に抑制される。
【0010】
本発明に係る電子部品において、第一面は、領域を規定する第一外縁を有し、第二面は、領域を規定する第二外縁を有し、対向方向における第一外縁と第二外縁との離間距離をa、対向方向及び第一外縁に直交する方向における第一外縁と第二外縁との離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係を満たしてもよい。この場合、0.75a≦bとすることにより、領域と第一面とのなす角部の角度が十分に大きくなるので、領域と第一面とのなす角部に応力が集中することが抑制される。また、b≦2aとすることにより、第一導体部分の体積を十分に減らすことができるので、第一導体部分の構成材料の収縮量を減らすことができる。したがって、クラックが素体に発生することが一層抑制される。
【0011】
本発明に係る電子部品において、素体は、実装面を有し、第一凹部は、実装面に設けられていてもよい。この場合、電子部品を他の電子機器に実装する際、第一導体部分と他の電子機器との電気的な接続を容易に図ることができる。
【0012】
本発明に係る電子部品において、素体は、実装面から連続すると共に、第二凹部が設けられた端面を更に有し、第二凹部は、第一凹部と一体的に設けられ、実装用導体は、第二凹部内に配置された第二導体部分を更に有すると共に、断面L字状を呈していてもよい。この場合、例えば、はんだ接続により、電子部品を他の電子機器に実装する際、はんだが実装面だけでなく端面にも設けられるので、実装強度を高めることができる。
【0013】
本発明に係る電子部品において、第二導体部分は、第二凹部の底面と対向する第四面と、第四面と対向する第五面と、第四面と第五面とを接続する第六面と、を有し、第二凹部の底面及び第四面の対向方向から見て、第六面は第五面と重なる領域を有していてもよい。したがって、第四面が第五面と重ならないように設けられている場合に比べて、第五面の面積を維持したままで、第二導体部分の体積を減らすことができる。これにより、第二導体部分の構成材料の収縮量を減らすことができるので、クラックが素体に発生することが更に抑制される。
【0014】
本発明に係る電子部品は、素体内でコイルを構成するコイル導体を更に備え、実装用導体は、実装用導体層が積層されてなり、コイルのコイル軸は、実装用導体層の積層方向に沿って設けられていてもよい。この場合、第三面が第二面と重ならないように設けられている場合に比べて、第二面の面積を維持したままで、コイルの外径を大きくし、コイルのQ値(quality factor)を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、素体におけるクラックの発生が抑制されている電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。
図2図1の積層コイル部品の分解斜視図である。
図3図1に示されるコイルと実装用導体との関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1図3を参照して、実施形態に係る積層コイル部品を説明する。図1は、実施形態に係る積層コイル部品の斜視図である。図2は、図1に示される積層コイル部品の分解斜視図である。図3は、図1に示されるコイルと実装用導体との関係を示す平面図である。なお、図3は、積層コイル部品1を側面2e側からみた平面図であり、素体2及び接続導体6,7が破線で示されている。
【0019】
図1図3に示されるように、実施形態に係る積層コイル部品1は、素体2と、実装用導体3,4と、複数のコイル導体5c,5d,5e,5fと、接続導体6,7と、を備えている。
【0020】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、端面2a,2bと、側面2c,2d,2e,2fと、を有している。端面2a,2bは、互いに対向している。側面2c,2dは、互いに対向している。側面2e,2fは、互いに対向している。以下では、端面2a,2bの対向方向を方向D1、側面2c,2dの対向方向を方向D2、及び、側面2e,2fの対向方向を方向D3とする。方向D1、方向D2、及び方向D3は互いに略直交している。
【0021】
端面2a,2bは、側面2c,2dを連結するように方向D2に延在している。端面2a,2bは、側面2e,2fを連結するように方向D3にも延在している。側面2c,2dは、端面2a,2bを連結するように方向D1に延在している。側面2c,2dは、側面2e,2fを連結するように方向D3にも延在している。側面2e,2fは、側面2c,2dを連結するように方向D2に延在している。側面2e,2fは、端面2a,2bを連結するように方向D1にも延在している。
【0022】
側面2cは、実装面であり、例えば積層コイル部品1を図示しない他の電子機器(例えば、回路基材、又は電子部品)に実装する際、他の電子機器と対向する面である。端面2a,2bは、実装面(すなわち側面2c)から連続する面である。
【0023】
素体2の方向D1における長さは、素体2の方向D2における長さ及び素体2の方向D3における長さよりも長い。素体2の方向D2における長さと素体2の方向D3における長さとは、互いに同等である。すなわち、本実施形態では、端面2a,2bは正方形状を呈し、側面2c,2d,2e,2fは、長方形状を呈している。素体2の方向D1における長さは、素体2の方向D2における長さ、及び素体2の方向D3における長さと同等であってもよいし、これらの長さよりも短くてもよい。素体2の方向D2における長さ及び素体2の方向D3における長さは、互いに異なっていてもよい。
【0024】
なお、本実施形態で「同等」とは、等しいことに加えて、予め設定した範囲での微差又は製造誤差などを含んだ値を同等としてもよい。たとえば、複数の値が、当該複数の値の平均値の±5%の範囲内に含まれているのであれば、当該複数の値は同等であると規定する。
【0025】
素体2には、凹部21,22,23,24が設けられている。凹部21,22は、一体的に設けられ、実装用導体3に対応している。凹部23,24は、一体的に設けられ、実装用導体4に対応している。
【0026】
凹部21は、側面2cの端面2a側に設けられ、側面2dに向かって窪んでいる。凹部21は、底面21aを有している。底面21aは、例えば矩形状を呈している。凹部22は、端面2aの側面2c側に設けられ、端面2bに向かって窪んでいる。凹部22は、底面22aを有している。底面22aは、例えば矩形状を呈している。凹部23は、側面2cの端面2b側に設けられ、側面2dに向かって窪んでいる。凹部23は、底面23aを有している。底面23aは、例えば矩形状を呈している。凹部24は、端面2bの側面2c側に設けられ、端面2aに向かって窪んでいる。凹部24は、底面24aを有している。底面24aは、例えば矩形状を呈している。
【0027】
凹部21,22,23,24は、例えば、同形状を呈している。凹部21,22,23,24は、側面2d,2e,2fから離間して設けられている。凹部21と凹部23とは、方向D1において互いに離間して設けられている。
【0028】
素体2は、複数の素体層12a~12fが方向D3において積層されることによって構成されている。具体的な積層構成については後述する。実際の素体2では、複数の素体層12a~12fは、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。素体層12a~12fは、例えば磁性材料(Ni-Cu-Zn系フェライト材料、Ni-Cu-Zn-Mg系フェライト材料、又はNi-Cu系フェライト材料等)により構成されている。素体層12a~12fを構成する磁性材料には、Fe合金等が含まれていてもよい。素体層12a~12fは、非磁性材料(ガラスセラミック材料、誘電体材料等)から構成されていてもよい。
【0029】
実装用導体3は、凹部21,22内に配置されている。実装用導体4は、凹部23,24内に配置されている。実装用導体3,4は、方向D1において互いに離間している。実装用導体3,4は、例えば、同形状を呈している。実装用導体3,4は、例えば、断面L字状を呈している。実装用導体3,4は、例えば、方向D3から見てL字状を呈しているとも言える。実装用導体3,4には、電解めっき又は無電解めっきが施されることにより、その外表面にはめっき層が形成されている。めっき層は、例えばNi、Sn、Au等を含んでいる。
【0030】
実装用導体3は、方向D3から見てL字状を呈する複数の実装用導体層13が、方向D3において積層されることによって構成されている。つまり、実装用導体層13の積層方向は、方向D3である。実際の実装用導体3では、複数の実装用導体層13は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。実装用導体3は、一体的に形成された導体部分31,32を有している。導体部分31,32は、略矩形板状を呈している。導体部分31,32は、例えば、同形状を呈している。
【0031】
導体部分31は、凹部21内に配置されている。特に図3に示されるように、導体部分31は、第一面31aと、第二面31bと、第三面31cと、を有している。第一面31aは、底面21aと方向D2において対向している。第二面31bは、第一面31aと方向D2において対向している。第三面31cは、第一面31aと第二面31bとを接続している。第三面31cは、方向D2から見て、第二面31bと重なる領域R1を有している。領域R1は、全体的に湾曲している。
【0032】
第一面31aは、領域R1を画定する外縁31dを有している。第二面31bは、領域R1を画定する外縁31eを有している。外縁31d,31eは、方向D3に沿って延在し、互いに平行である。方向D2から見て、外縁31dは、外縁31eよりも端面2a側に位置している。方向D2における外縁31dと外縁31eとの離間距離をa、方向D1における外縁31dと外縁31eとの離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係が満たされている。
【0033】
導体部分32は、凹部22内に配置されている。特に図3に示されるように、導体部分32は、第一面32aと、第二面32bと、第三面32cと、を有している。第一面32aは、底面22aと方向D1において対向している。第二面32bは、第一面32aと方向D1において対向している。第三面32cは、第一面32aと第二面32bとを接続している。第三面32cは、方向D1から見て、第二面32bと重なる領域R2を有している。領域R2は、全体的に湾曲している。
【0034】
第一面32aは、領域R2を画定する外縁32dを有している。第二面32bは、領域R2を画定する外縁32eを有している。外縁32d,32eは、方向D3に沿って延在し、互いに平行である。方向D1から見て、外縁32dは、外縁32eよりも側面2c側に位置している。方向D1における外縁32dと外縁32eとの離間距離をa、方向D2における外縁32dと外縁32eとの離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係が満たされている。
【0035】
第一面31a及び第一面32aは、互いに直交すると共に、連続している。第二面31b及び第二面32bは、互いに直交すると共に、連続している。
【0036】
実装用導体4は、方向D3から見てL字状を呈する複数の実装用導体層14が、方向D3において積層されることによって構成されている。つまり、実装用導体層14の積層方向は、方向D3である。実際の実装用導体4では、複数の実装用導体層14は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。実装用導体4は、一体的に形成された導体部分41,42を有している。導体部分41,42は、略矩形板状を呈している。導体部分41,42は、例えば、同形状を呈している。
【0037】
導体部分41は、凹部23内に配置されている。特に図3に示されるように、導体部分41は、第一面41aと、第二面41bと、第三面41cと、を有している。第一面41aは、底面23aと方向D2において対向している。第二面41bは、第一面41aと方向D2において対向している。第三面41cは、第一面41aと第二面41bとを接続している。第三面41cは、方向D2から見て、第二面41bと重なる領域R3を有している。領域R3は、全体的に湾曲している。
【0038】
第一面41aは、領域R3を画定する外縁41dを有している。第二面41bは、領域R3を画定する外縁41eを有している。外縁41d,41eは、方向D3に沿って延在し、互いに平行である。方向D2から見て、外縁41dは、外縁41eよりも端面2b側に位置している。方向D2における外縁41dと外縁41eとの離間距離をa、方向D1における外縁41dと外縁41eとの離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係が満たされている。
【0039】
導体部分42は、凹部24内に配置されている。特に図3に示されるように、導体部分42は、第一面42aと、第二面42bと、第三面42cと、を有している。第一面42aは、底面24aと方向D1において対向している。第二面42bは、第一面42aと方向D1において対向している。第三面42cは、第一面42aと第二面42bとを接続している。第三面42cは、方向D1から見て、第二面42bと重なる領域R4を有している。領域R4は、全体的に湾曲している。
【0040】
第一面42aは、領域R4を画定する外縁42dを有している。第二面42bは、領域R4を画定する外縁42eを有している。外縁42d,42eは、方向D3に沿って延在し、互いに平行である。方向D1から見て、外縁42dは、外縁42eよりも側面2c側に位置している。方向D1における外縁42dと外縁42eとの離間距離をa、方向D2における外縁42dと外縁42eとの離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係が満たされている。
【0041】
第一面41a及び第一面42aは、互いに直交すると共に、連続している。第二面41b及び第二面42bは、互いに直交すると共に、連続している。
【0042】
複数のコイル導体5c,5d,5e,5fは、互いに接続されて、素体2内でコイル10を構成している。コイル10は、第三面31c,32c,41c,42cと対向するように配置されている。コイル10のコイル軸10aは、方向D3に沿って設けられている。コイル導体5c,5d,5e,5fは、方向D3から見て、少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。コイル導体5c,5d,5e,5fは、端面2a,2b及び側面2c,2d,2e,2fから離間して配置されている。
【0043】
コイル10は、特に図3に示されるように、方向D3から見て、六角形状を呈している。コイル10は、部分10b,10c,10d,10e,10f,10gを有している。
【0044】
部分10bは、側面2dに沿って配置されている。部分10bの方向D1における長さは、素体2の方向D1における長さの30%以上98%以下、より好ましくは60%以上98%以下である。部分10bは、素体2の方向D1における中央部に配置されている。すなわち、部分10bと端面2aとの方向D1における離間距離と、部分10bと端面2bとの方向D1における離間距離とは、互いに同等である。部分10bと側面2dとの方向D2における離間距離は、素体2の方向D2における長さの1.5%以上30%以下、より好ましくは1.5%以上10%以下である。
【0045】
部分10cは、側面2cに沿って配置されている。部分10cの方向D1における長さは、素体2の方向D1における長さの5%以上95%以下、より好ましくは60%以上95%以下である。部分10cは、素体2の方向D1における中央部に配置されている。すなわち、部分10cと端面2aとの方向D1における離間距離と、部分10cと端面2bとの方向D1における離間距離とは、互いに同等である。部分10cと側面2cとの方向D2における離間距離は、素体2の方向D2における長さの1.5%以上60%以下、より好ましくは1.5%以上10%以下である。
【0046】
部分10dは、部分10bの端面2a側の端部に接続され、端面2aに沿って配置されている。部分10dの方向D2における長さは、素体2の方向D2における長さの10%以上90%以下、より好ましくは10%以上50%以下である。
【0047】
部分10eは、部分10bの端面2b側の端部に接続され、端面2bに沿って配置されている。部分10eの方向D2における長さは、素体2の方向D2における長さの10%以上90%以下、より好ましくは10%以上50%以下である。部分10eは、例えば、部分10dと同形状を呈している。
【0048】
部分10fは、部分10cの端面2a側の端部と、部分10dの側面2c側の端部とを接続している。部分10gは、部分10cの端面2b側の端部と、部分10eの側面2c側の端部とを接続している。
【0049】
コイル導体5cは、コイル10の一方の端部を構成している。コイル導体5cの一方の端部と接続導体6とは、方向D1において隣り合い、互いに接続されている。コイル導体5cの他方の端部とコイル導体5dの一方の端部とは、方向D3において隣り合い、互いに接続されている。コイル導体5dの他方の端部とコイル導体5eの一方の端部とは、方向D3において隣り合い、互いに接続されている。コイル導体5eの他方の端部と、コイル導体5fの一方の端部とは、方向D3において隣り合い、互いに接続されている。コイル導体5fの他方の端部と接続導体7とは、方向D1において隣り合い、互いに接続されている。
【0050】
コイル導体5c,5d,5e,5fは、複数のコイル導体層15c,15d,15e,15fが、方向D3において積層されることによって構成されている。つまり、複数のコイル導体層15c,15d,15e,15fは、それぞれ方向D3から見て、全部が互いに重なるように配置されている。コイル導体5c,5d,5e,5fは、1つのコイル導体層15c,15d,15e,15fによって構成されていてもよい。なお、図2では、1つのコイル導体層15c,15d,15e,15fのみが示されている。実際のコイル導体5c,5d,5e,5fでは、複数のコイル導体層15c,15d,15e,15fは、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0051】
接続導体6は、方向D1に延在し、コイル10のコイル導体5cと導体部分42とに接続されている。接続導体7は、方向D1に延在し、コイル導体5fと導体部分32とに接続されている。接続導体6,7は、複数の接続導体層16,17が、方向D3において積層されることによって構成されている。なお、図2では、1つの接続導体層16,17のみが示されている。実際の接続導体6,7では、複数の接続導体層16,17は、その層間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0052】
上述の実装用導体層13,14、コイル導体層15c,15d,15e,15f、及び接続導体層16,17は、導電材料(例えば、Ag又はPd)により構成されている。これらの各層は、同じ材料により構成されていてもよいし、異なる材料により構成されていてもよい。これらの各層は、断面略矩形状を呈している。
【0053】
積層コイル部品1は、複数の層La,Lb,Lc,Ld,Le,Lfを備えている。積層コイル部品1は、例えば、側面2f側から順に、2つの層La、1つの層Lb、3つの層Lc、3つの層Ld、3つの層Le、3つの層Lf、1つの層Lb、及び2つの層Laが積層されることにより構成されている。なお、図2では、3つの層Lc、3つの層Ld、3つの層Le、及び3つの層Lfについて、それぞれ1つが図示され、他の2つの図示が省略されている。
【0054】
層Laは、素体層12aにより構成されている。
【0055】
層Lbは、素体層12bと、実装用導体層13,14とが互いに組み合わされることにより構成されている。素体層12bには、実装用導体層13,14の形状に対応する形状を有し、実装用導体層13,14が嵌め込まれる欠損部Rbが設けられている。素体層12bと、実装用導体層13,14の全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0056】
層Lcは、素体層12cと、実装用導体層13,14及びコイル導体層15cとが互いに組み合わされることにより構成されている。素体層12cには、実装用導体層13,14及びコイル導体層15cの形状に対応する形状を有し、実装用導体層13,14、コイル導体層15c及び接続導体層16が嵌め込まれる欠損部Rcが設けられている。素体層12cと、実装用導体層13,14、コイル導体層15c及び接続導体層16の全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0057】
層Ldは、素体層12dと、実装用導体層13,14及びコイル導体層15dとが互いに組み合わされることにより構成されている。素体層12dには、実装用導体層13,14及びコイル導体層15dの形状に対応する形状を有し、実装用導体層13,14及びコイル導体層15dが嵌め込まれる欠損部Rdが設けられている。素体層12dと、実装用導体層13,14及びコイル導体層15dの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0058】
層Leは、素体層12eと、実装用導体層13,14及びコイル導体層15eとが互いに組み合わされることにより構成されている。素体層12eには、実装用導体層13,14及びコイル導体層15eの形状に対応する形状を有し、実装用導体層13,14及びコイル導体層15eが嵌め込まれる欠損部Reが設けられている。素体層12eと、実装用導体層13,14及びコイル導体層15eの全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0059】
層Lfは、素体層12fと、実装用導体層13,14、コイル導体層15f及び接続導体層17とが互いに組み合わされることにより構成されている。素体層12fには、実装用導体層13,14、コイル導体層15f及び接続導体層17の形状に対応する形状を有し、実装用導体層13,14、コイル導体層15f及び接続導体層17が嵌め込まれる欠損部Rfが設けられている。素体層12fと、実装用導体層13,14、コイル導体層15f及び接続導体層17の全体とは、互いに相補的な関係を有している。
【0060】
欠損部Rb,Rc,Rd,Re,Rfは、一体化されて上述の凹部21,22,23,24を構成している。欠損部Rb,Rc,Rd,Re,Rfの幅(以下、欠損部の幅)は、基本的に、実装用導体層13,14、コイル導体層15c,15d,15e,15f、及び接続導体層16,17の幅(以下、導体部の幅)よりも広くなるように設定される。素体層12b,12c,12d,12e,12fと、実装用導体層13,14、コイル導体層15c,15d,15e,15f、及び接続導体層16,17との接着性向上のために、欠損部の幅は、敢えて導体部の幅よりも狭くなるように設定されてもよい。欠損部の幅から導体部の幅を引いた値は、例えば、-3μm以上10μm以下であることが好ましく、0μm以上10μm以下であることがより好ましい。
【0061】
実施形態に係る積層コイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0062】
まず、上述の素体層12a~12fの構成材料及び感光性材料を含む素体ペーストを基材(例えばPETフィルム)上に塗布することにより、素体形成層を形成する。素体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。続いて、例えばCrマスクを用いたフォトリソグラフィ法により素体形成層を露光及び現像し、後述の導体形成層の形状に対応する形状が除去された素体パターンを基材上に形成する。素体パターンは、熱処理後に素体層12b,12c,12d,12e,12fとなる層である。つまり、欠損部Rb,Rc,Rd,Re,Rfとなる欠損部が設けられた素体パターンが形成される。なお、本実施形態の「フォトリソグラフィ法」とは、感光性材料を含む加工対象の層を露光及び現像することにより、所望のパターンに加工するものであればよく、マスクの種類等に限定されない。
【0063】
一方、上述の実装用導体層13,14、コイル導体層15c,15d,15e,15f及び接続導体層16,17の構成材料、及び感光性材料を含む導体ペーストを基材(例えばPETフィルム)上に塗布することにより導体形成層を形成する。導体ペーストに含まれる感光性材料は、ネガ型及びポジ型のどちらであってもよく、公知のものを用いることができる。続いて、例えばCrマスクを用いたフォトリソグラフィ法により導体形成層を露光及び現像し、導体パターンを基材上に形成する。導体パターンは、熱処理後に実装用導体層13,14、コイル導体層15c,15d,15e,15f及び接続導体層16,17となる層である。
【0064】
続いて、素体形成層を基材から支持体上に転写する。本実施形態では、素体形成層の転写工程を2回繰り返すことにより、支持体上に素体形成層を2層積層する。これらの素体形成層は、熱処理後に層Laとなる層である。
【0065】
続いて、導体パターン及び素体パターンを支持体上に繰り返し転写することにより、導体パターン及び素体パターンを方向D3において積層する。具体的には、まず、導体パターンを基材から素体形成層上に転写する。次に、素体パターンを基材から素体形成層上に転写する。素体パターンの欠損部に、導体パターンが組み合わされ、素体形成層上で素体パターン及び導体パターンが同一層となる。更に、導体パターン及び素体パターンの転写工程を繰り返し実施し、導体パターン及び素体パターンを互いに組み合わされた状態で積層する。これにより、熱処理後に層Lb,Lc,Ld,Le,Lfとなる層が積層される。
【0066】
続いて、素体形成層を基材から、導体パターン及び素体パターンの転写工程で積層した層上に転写する。本実施形態では、素体形成層の転写工程を2回繰り返すことにより、当該層上に素体形成層を2層積層する。これらの素体形成層は、熱処理後に層Laとなる層である。
【0067】
以上により、熱処理後に積層コイル部品1を構成する積層体を支持体上に形成する。続いて、得られた積層体を所定の大きさに切断する。その後、切断された積層体に対し、脱バインダ処理を行った後、熱処理を行う。熱処理温度は、例えば850~900℃程度である。続いて、必要に応じて、実装用導体3,4の外表面上にめっき層を形成する。これにより、積層コイル部品1が得られる。
【0068】
以上説明したように、実装用導体3,4の導体部分31,41では、第三面31c,41cは、第二面31b,41bと重なる領域R1,R2を有している。したがって、第三面31c,41cが第二面31b,41bと重ならないように設けられている場合に比べて、第二面31b,41bの面積を維持したままで、導体部分31,41の体積を減らすことができる。これにより、導体部分31,41の構成材料の収縮量を減らすことができるので、クラックが素体2に発生することが抑制される。
【0069】
素体2は、実装面である側面2cを有し、導体部分31,41が配置される凹部21,23は、側面2cに設けられている。このため、積層コイル部品1を他の電子機器に実装する際、導体部分31,41と他の電子機器との電気的な接続を容易に図ることができる。
【0070】
素体2は、側面2cから連続する端面2a,2bを有している。端面2a,2bには、凹部22,24が設けられている。実装用導体3,4は、凹部22,24内に配置された導体部分32,42を有すると共に、断面L字状を呈している。したがって、例えば、はんだ接続により、積層コイル部品1を他の電子機器に実装する際、はんだが側面2cだけでなく端面2a,2bにも設けられるので、実装強度を更に高めることができる。
【0071】
導体部分32,42は第三面32c,42cを有し、第三面32c,42cは、第二面32b,42bと重なる領域R3,R4を有している。したがって、第三面32c,42cが第二面32b,42bと重ならないように設けられている場合に比べて、第二面32b,42bの面積を維持したままで、導体部分32,42の体積を減らすことができる。これにより、導体部分32,42の構成材料の収縮量を減らすことができるので、クラックが素体2に発生することが更に抑制される。
【0072】
本発明者らの調査研究によれば、素体2において、クラックは導体部分31,32,41,42の近傍であって、導体部分31,32,41,42から離間した部分に生じ易い。本実施形態によれば、このようなクラックの発生を抑制することができる。
【0073】
例えば、領域R1~R4が複数の平面により構成され、面取りされたような形状を呈している場合、領域R1~R4の角部に応力が集中する懼れがある。これに対し、積層コイル部品1では、領域R1~R4が湾曲しているので、応力を緩和することができる。したがって、クラックが素体2に発生することが更に抑制される。
【0074】
導体部分31,41では、方向D2における外縁31d,41dと外縁31e,41eとの離間距離をa、方向D1における外縁31d,41dと外縁31e,41eとの離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係が満たされている。導体部分32,42では、方向D1における外縁32d,42dと外縁32e,42eとの離間距離をa、方向D2における外縁32d,42dと外縁32e,42eとの離間距離をbとしたとき、0.75a≦b≦2aなる関係が満たされている。0.75a≦bとすることにより、領域R1と第一面31aとのなす角部の角度、領域R2と第一面32aとのなす角部の角度、領域R3と第一面41aとのなす角部の角度、及び領域R4と第一面42aとのなす角部の角度が十分に大きくなるので、これらの角部に応力が集中することが抑制される。また、b≦2aとすることにより、導体部分31,32,41,42の体積を十分に減らすことができるので、導体部分31,32,41,42の構成材料の収縮量を減らすことができる。したがって、クラックが素体2に発生することが更に抑制される。
【0075】
実装用導体3,4は、実装用導体層13,14が方向D3において積層されてなり、コイル10のコイル軸10aは、方向D3に沿って設けられている。したがって、導体部分31,32,41,42において、第三面31c,32c,41c,42cが第二面31b,32b,41b,42bと重ならないように設けられている場合に比べて、第二面31b,32b,41b,42bの面積を維持したまま、コイル10の外径を大きくし、コイル10のQ値(quality factor)を向上させることができる。また、第三面31c,32c,41c,42cが第二面31b,32b,41b,42bと重ならないように設けられている場合に比べて、コイル10と実装用導体3,4とが互いに接近することが抑制される。この結果、コイル10と実装用導体3,4との間におけるクラックの発生を抑制しながら、コイル10の外径を大きくし、コイル10のQ値を向上させることができる。
【0076】
本発明は上述した実施形態に限らず、様々な変形が可能である。
【0077】
積層コイル部品1は、方向D3から見て、コイル10の内側にコア部を更に備えていてもよい。コア部は中空であってもよい。すなわち、積層コイル部品1は空芯コイルであってもよい。また、コア部は中実であって、例えば、素体2の構成材料とは異なる磁性材料により構成されていてもよい。コア部は、素体2を方向D3において貫通していてもよいし、方向D3の両端部において素体2に覆われていてもよい。また、積層コイル部品1は、方向D3においてコイル導体5c,5d,5e,5f間に配置されるスペーサを更に備え、スペーサは、例えば、素体2の構成材料とは異なる磁性材料又は非磁性材料により構成されていてもよい。
【0078】
積層コイル部品1では、第三面31c,32c,41c,42cの少なくとも1つが、領域R1,R2,R3,R4を有していればよい。凹部21,22,23,24は、必ずしも同形状を呈していなくてもよい。同様に、導体部分31,32,41,42は、必ずしも同形状を呈していなくてもよい。
【0079】
実装用導体3は、導体部分31,32のいずれか一方を有していればよく、素体2には、導体部分31,32と対応して、凹部21,22のいずれか一方が設けられていればよい。実装用導体4は、導体部分41,42のいずれか一方を有していればよく、素体2には、導体部分41,42と対応して、凹部23,24のいずれか一方が設けられていればよい。
【0080】
領域R1,R2,R3,R4は、部分的に平面を含んでいてもよいし、全体が1又は複数の平面により構成されていてもよい。領域R1,R2,R3,R4は、複数の平面により構成され、面取りされたような形状を呈していてもよい。
【0081】
上述した実施形態では、電子部品として積層コイル部品1を例にして説明したが、本発明はこれに限られることなく、積層セラミックコンデンサ、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、又は積層複合部品などの他の電子部品にも適用できる。
【符号の説明】
【0082】
1…積層コイル部品、2…素体、2a,2b…端面、2c…側面、3,4…実装用導体、31,32,41,42…導体部分、5c,5d,5e,5f…コイル導体、10…コイル、10a…コイル軸、13,14…実装用導体層、21,22,23,24…凹部、21a,22a,23a,24a…底面、31a,32a,41a,42a…第一面、31b,32b,41b,42b…第二面、31c,32c,41c,42c…第三面、31d,32d,41d,42d…外縁、31e,32e,41e,42e…外縁、R1,R2,R3,R4…領域。
図1
図2
図3