(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20220128BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20220128BHJP
C01B 3/56 20060101ALI20220128BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20220128BHJP
【FI】
H01M8/04 Z
H01M8/04 N
H01M8/04 J
C01B3/04 B
C01B3/56 Z
H01M8/10 101
(21)【出願番号】P 2017175881
(22)【出願日】2017-09-13
【審査請求日】2020-02-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】松本 祥平
(72)【発明者】
【氏名】久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】森 研二
(72)【発明者】
【氏名】湯本 修士
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-146175(JP,A)
【文献】特開2003-045470(JP,A)
【文献】特表2008-536795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状態のアンモニアを貯蔵するタンクと、
前記タンクから供給された液体状態のアンモニアを気化させる気化器と、
前記気化器により気化されたアンモニアを改質して改質ガスを生成する改質器と、
前記改質ガスを冷却する熱交換器と、
前記熱交換器により冷却された前記改質ガスに含まれる前記アンモニアを吸着する吸着材を有し、燃料ガスを生成する複数の吸着器と、
前記燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、
前記改質器に空気を供給する空気供給部と、
前記アンモニアを吸着した吸着材を再生する再生用ガスを複数の吸着器に供給する再生用ガス供給部と、
前記熱交換器を通過した前記改質ガスの供給先を前記複数の吸着器のうち何れかの吸着器に切り替えると共に、前記再生用ガスの供給先を前記複数の吸着器のうち他の吸着器に切り替える切替弁と、
前記切替弁を制御する制御部と、
を備え、
前記改質器は、
前記気化器により気化されたアンモニアを水素に分解する改質触媒を含む改質層と、
前記空気供給部から前記空気が供給されると共に、前記気化器により気化されたアンモニアを燃焼する燃焼触媒を含む燃焼層と、を有し、
前記改質層と前記燃焼層とは、前記燃焼層で発生する熱が前記改質層に伝熱するように積層され、
前記再生用ガス供給部は、前記改質器の前記燃焼層であり、
前記再生用ガスは、前記燃焼層で発生する熱を熱源とした流体
として、前記燃焼層から排出される窒素、酸素及び水を含む排出ガスであり、
前記制御部は、前記複数の吸着器のうち何れかの吸着器に前記改質ガスが導入されて前記燃料ガスが生成されると共に、前記複数の吸着器のうち他の吸着器に前記再生用ガスが導入されて前記吸着材が再生されるように、前記切替弁を制御する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記熱交換器に冷却水を供給する流路と、
前記熱交換器を通過した冷却水を前記気化器に供給する流路と、を更に備え、
前記熱交換器は、前記改質ガスと冷却水とを熱交換することで前記改質ガスを冷却し、 前記気化器は、
前記熱交換器を通過した冷却水と前記液体状態のアンモニアとを熱交換することで前記液体状態のアンモニアを気化させる、請求項
1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記冷却水を前記燃料電池に供給する流路を更に備える、請求項
2に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の燃料電池システムとして、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の燃料電池システムは、水素含有ガスを燃料ガスとして用いて発電する固体高分子型の燃料電池と、燃料ガスのアンモニアを吸着する吸着器と、アンモニアを改質して燃料ガスを発生する改質装置と、液体状態のアンモニアを貯留する貯留タンクと、貯留タンクと改質装置との間に設けられ、液体状態のアンモニアを改質装置に供給するポンプと、改質装置に空気を供給するポンプと、燃料電池に空気を供給するポンプとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池システムの吸着器は、吸着材に吸着されたアンモニアの量が多くなると性能が低下する。このため、吸着材からアンモニアを除去する(吸着材を再生する)必要がある。特許文献1に記載の燃料電池システムでは、燃料電池から排出されるガスを回収し、このガスに含まれる水素を吸着器内で吸着されたアンモニアに衝突させることにより、吸着器の吸着材を再生する。しかしながら、再生に熱量が必要となる吸着材が用いられる場合、吸着材を再生することが困難となる場合がある。この場合、吸着材を再生するためにヒータ等を用いて吸着材を加熱する必要があるので、システム効率が悪い。
【0005】
本発明は、吸着材の再生に熱量が必要となる場合でも吸着材を再生することができると共に、システム効率の向上を図ることが可能な燃料電池システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る燃料電池システムは、液体状態のアンモニアを貯蔵するタンクと、タンクから供給された液体状態のアンモニアを気化させる気化器と、気化器により気化されたアンモニアを改質して改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを冷却する熱交換器と、熱交換器により冷却された改質ガスに含まれるアンモニアを吸着する吸着材を有し、燃料ガスを生成する複数の吸着器と、燃料ガスを用いて発電する燃料電池と、改質器に空気を供給する空気供給部と、アンモニアを吸着した吸着材を再生する再生用ガスを複数の吸着器に供給する再生用ガス供給部と、熱交換器を通過した改質ガスの供給先を複数の吸着器のうち何れかの吸着器に切り替えると共に、再生用ガスの供給先を複数の吸着器のうち他の吸着器に切り替える切替弁と、切替弁を制御する制御部と、を備え、改質器は、気化器により気化されたアンモニアを水素に分解する改質触媒を含む改質層と、空気供給部から空気が供給されると共に、気化器により気化されたアンモニアを燃焼する燃焼触媒を含む燃焼層と、を有し、改質層と燃焼層とは、燃焼層で発生する熱が改質層に伝熱するように積層され、再生用ガスは、燃焼層で発生する熱を熱源とした流体であり、吸着器は、燃焼層で発生する熱を熱源とした再生用ガスを用いて吸着材を再生し、制御部は、複数の吸着器のうち何れかの吸着器に改質ガスが導入されて燃料ガスが生成されると共に、複数の吸着器のうち他の吸着器に再生用ガスが導入さて吸着材が再生されるように、切替弁を制御する。
【0007】
この燃料電池システムでは、改質器の燃焼層で発生する熱を熱源とした再生用ガスを用いて吸着材を再生する。再生用ガスは、燃焼層におけるアンモニアの燃焼によって加熱されている。このように、加熱された再生用ガスが吸着器に導入されるので、再生に熱量が必要となる吸着材が用いられる場合であっても、吸着材を再生することができる。また、燃焼層におけるアンモニアの燃焼によって発生する熱を利用して吸着材を再生するので、システム効率の向上を図ることができる。
【0008】
再生用ガス供給部は、改質器の燃焼層であり、再生用ガスは、燃焼層から排出される排出ガスであってもよい。この構成によれば、排出ガスが吸着器に導入されるので、再生に熱量が必要となる吸着材が用いられる場合であっても、吸着材を再生することができる。また、排出ガス自体を吸着材の再生に用いるので、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0009】
燃料電池システムは、改質器と吸着器との間に配置された他の熱交換器を更に備え、他の熱交換器は、改質器の燃焼層から排出される排出ガスと空気供給部から供給される空気とを熱交換することで空気を加熱し、再生用ガス供給部は、他の熱交換器であり、再生用ガスは、他の熱交換器を通過した空気であってもよい。この構成によれば、排出ガスによって加熱された空気が吸着器に導入されるので、再生に熱量が必要となる吸着材が用いられる場合であっても、吸着材を再生することができる。また、排出ガスからの廃熱を利用して空気が加熱されるので、システム効率の向上を図ることができる。
【0010】
燃料電池システムは、熱交換器に冷却水を供給する流路と、熱交換器を通過した冷却水を気化器に供給する流路と、を更に備え、熱交換器は、改質ガスと冷却水とを熱交換することで改質ガスを冷却し、気化器は、熱交換器を通過した冷却水と液体状態のアンモニアとを熱交換することで液体状態のアンモニアを気化させてもよい。この構成によれば、熱交換器において改質ガスの熱によって冷却水が加熱される。気化器においては、加熱された冷却水の熱によって、液体状態のアンモニアを気化する。このように、改質ガスからの廃熱を利用してアンモニアが気化されるので、システム効率の更なる向上を図ることができる。
【0011】
燃料電池システムは、冷却水を燃料電池に供給する流路を更に備えてもよい。この構成によれば、燃料電池に冷却水が供給され、冷却水によって燃料電池が冷却される。したがって、燃料電池を冷却するための冷却系を別途設ける必要がないので、燃料電池システムのコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、吸着材の再生に熱量が必要となる場合でも吸着材を再生することができると共に、システム効率の向上を図ることが可能な燃料電池システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る燃料電池システムを示すシステム構成図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】(a)は
図2の改質器の改質層を概略的に示す図であり、(b)は
図2の改質器の燃焼層を概略的に示す図である。
【
図5】
図1の吸着器の構造を概略的に示す図である。
【
図6】
図1の燃料電池システムの変形例を示すシステム構成図である。
【
図7】
図1の燃料電池システムの他の変形例を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る燃料電池システムを示すシステム構成図である。
図1に示される燃料電池システム1は、例えば燃料電池自動車又は家庭用燃料電池に用いられ得る。燃料電池システム1は、アンモニアを貯蔵するタンク10と、アンモニアを気化させる気化器20と、気化されたアンモニアを改質して改質ガスを生成する改質器30と、改質ガスを冷却する熱交換器40と、改質ガスから燃料ガスを生成する複数の吸着器(第1吸着器50A及び第2吸着器50B)と、燃料ガスを用いて発電する燃料電池60と、改質器30に空気を供給する空気供給部70と、複数の吸着器である第1吸着器50A及び第2吸着器50Bをそれぞれ切り替える切替弁80A,80B,80C,80Dと、切替弁80A~80Dを制御する制御部90と、を備えている。
【0016】
タンク10は、アンモニアを液体状態で貯蔵するアンモニアタンクである。タンク10は、例えば常温(20℃~25℃程度)且つ数気圧(8気圧~10気圧程度)でアンモニアを貯蔵する。タンク10では、アンモニアを気体ではなく液体状態で貯蔵するので、アンモニアを効率よく貯蔵することができる。これにより、燃料電池システム1の稼働時間を長くすることができる。また、タンク10へのアンモニアの補充を容易に行うことができる。
【0017】
気化器20は、タンク10の下流に設けられており、アンモニア供給管L1によってタンク10と接続されている。気化器20とタンク10との間には、アンモニアを気化器20内に導入するためのポンプP1が配置されている。気化器20は、例えば液体状態のアンモニアを加熱することにより、液体状態のアンモニアを気化させる。
【0018】
改質器30は、気化器20の下流に設けられており、アンモニアガス供給管L2を介して気化器20と接続されている。アンモニアガス供給管L2は、改質器30側において2つの管部L2a,L2bに分岐している。一方の管部L2aは後述する改質器30の改質層30aに接続され、他方の管部L2bは後述する改質器30の燃焼層30bに接続されている。管部L2a上には、改質層30aに導入されるアンモニアガスの量を調整するインジェクタI1が設けられている。管部L2b上には、燃焼層30bに導入されるアンモニアガスの量を調整するインジェクタI2が設けられている。また、インジェクタI2の下流において、管部L2bは空気供給管L3を介して空気供給部70と接続されている。なお、燃料電池システム1は、インジェクタI1,I2に代えてマスフローコントローラ等を備えてもよい。また、燃料電池システム1はインジェクタI1,I2を備えていなくてもよい。
【0019】
次に、
図2~
図4を参照して、改質器30について説明する。
図2は、
図1の改質器を概略的に示す斜視図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4(a)は、
図2の改質器の改質層を概略的に示す図であり、
図4(b)は、
図2の改質器の燃焼層を概略的に示す図である。
【0020】
改質器30は、熱交換方式の改質器である。改質器30は、気化したアンモニアを改質することで、水素を含有する改質ガスを生成する。
図2~
図4に示されるように、改質器30は、気化器20により気化されたアンモニアを水素に分解する改質触媒を含む複数の改質層30aと、気化器20により気化されたアンモニアを燃焼する燃焼触媒を含む複数の燃焼層30bと、2つのガス導入口32a,32bと、2つのガス排出口33a,33bと、を有している。改質層30aと燃焼層30bとは、燃焼層30bで発生する熱が改質層30aに伝熱するように、仕切り板31を介して交互に積層されている。改質層30aと燃焼層30bとは互いに独立した空間となっており、改質層30aに導入されたガスと燃焼層30bに導入されたガスとは混合しない構成とされている。
【0021】
ガス導入口32a及びガス排出口33aは、複数の改質層30aのそれぞれに連通している。また、ガス導入口32b及びガス排出口33bは、複数の燃焼層30bのそれぞれに連通している。ガス導入口32aはアンモニアガス供給管L2の管部L2a(
図1参照)に接続され、ガス導入口32bはアンモニアガス供給管L2の管部L2b(
図1参照)に接続されている。ガス排出口33aは改質ガス供給管L4(
図1参照)に接続され、ガス排出口33bは排出ガス供給管L5(
図1参照)に接続されている。
【0022】
改質層30aの内部及び燃焼層30bの内部には、例えばフィン構造体34が配置されている。フィン構造体34は、改質層30aの内部及び燃焼層30bの内部を複数の流路に分割している。また、改質層30a内には、改質触媒を担持するペレット状の改質触媒担持体35aが充填されている。燃焼層30b内には、燃焼触媒を担持するペレット状の燃焼触媒担持体35bが充填されている。なお、改質層30a内に改質触媒担持体35aを充填せず、改質層30a内のフィン構造体34に直接改質触媒を塗布してもよい。同様に、燃焼層30b内に燃焼触媒担持体35bを充填せず、燃焼層30b内のフィン構造体34に直接燃焼触媒を塗布してもよい。また、フィン構造体34の形状は特に限定されず、適宜変更可能である。
【0023】
改質層30aには、アンモニアガス供給管L2の管部L2aからアンモニアガスが供給される。アンモニアガスは、ガス導入口32aを通過してそれぞれの改質層30aに導入される。改質層30aに導入されたアンモニアは、燃焼層30bで発生した熱及び改質触媒によって水素及び窒素に分解される。より具体的には、下記の式のように、アンモニアの分解反応が起こり(吸熱反応)、水素がリッチな状態の改質ガスが生成される。なお、改質ガスには少量のアンモニアが含まれていてもよい。改質ガスに含まれる水素の比率は約75%程度である。改質触媒としては、例えばルテニウム(Ru)又はロジウム(Rh)等が用いられ得る。それぞれの改質層30aで生成された改質ガスは、ガス排出口33aを通過して改質ガス供給管L4に供給される。
NH3→3/2H2+1/2N2
【0024】
燃焼層30bには、アンモニアガス供給管L2の管部L2bからアンモニアガス及び空気が供給される。アンモニアガス及び空気は、ガス導入口32bを通過してそれぞれの燃焼層30bに導入される。燃焼層30bでは、アンモニアを酸化させることで熱を発生させる。より具体的には、下記の式のように、一部のアンモニアと空気中の酸素とが化学反応し、そのアンモニアの酸化反応により熱が発生する(発熱反応)。この反応により、窒素、酸素、及び水を含む排出ガスが生成される。燃焼触媒としては、例えば白金(Pt)又はロジウム(Rh)等が用いられ得る。それぞれの燃焼層30bで生成された排出ガスは、ガス排出口33bを通過して排出ガス供給管L5に供給される。
NH3+3/4O2→1/2N2+3/2H2O
【0025】
なお、改質器30は、燃料電池システム1の起動運転時にアンモニアを分解するための熱を発生させるヒータ部を有していてもよい。
【0026】
図1に戻り、熱交換器40は、改質器30の下流に設けられており、改質ガス供給管L4を介して改質器30と接続されている。熱交換器40には、改質器30の改質層30aで生成された改質ガスが導入される。また、熱交換器40には、冷却水が供給される。熱交換器40では、改質ガスと冷却水とを熱交換することにより、改質ガスを冷却する。冷却水は、改質ガスによって加熱される。これにより、熱交換器40を通過した改質ガスは、500℃~600℃程度から30℃~100℃程度まで冷却される。
【0027】
冷却水は、冷却水供給管(流路)L6を介して熱交換器40に導入される。冷却水供給管L6上には、冷却水を冷却するためのラジエータ100及び冷却水を熱交換器40に向けて送り出すポンプP2が配置されている。熱交換器40を通過して加熱された冷却水は、冷却水供給管(流路)L7を介して気化器20に導入される。熱交換器40によって加熱された冷却水の熱は、気化器20において液体状態のアンモニアを効率よく気化させるために利用される。気化器20を通過した冷却水は冷却水供給管L7上のラジエータ100によって冷却され、再び熱交換器40に導入される。すなわち、冷却水は、冷却水供給管L6及び冷却水供給管L7を介して、熱交換器40、気化器20、及びラジエータ100の間を循環している。
【0028】
第1吸着器50Aは、熱交換器40の下流に設けられており、改質ガス供給管L8を介して熱交換器40と接続されている。第1吸着器50Aは、改質ガスに含まれる少量のアンモニアを除去することにより、高純度の水素ガスである燃料ガスを生成する。燃料ガスに含まれる水素ガスの比率は、約75%程度である。第1吸着器50Aで生成された燃料ガスは、燃料ガス供給管L9を介して燃料電池60に導入される。
【0029】
図5に示されるように、第1吸着器50Aは、改質ガスに含まれるアンモニアを吸着するための吸着材51を有している。吸着材51は、例えば多数の細孔を有する多孔体であり、静電相互作用等によってアンモニアを細孔に吸着させる。また、吸着材51は化学的結合によってアンモニアを吸着してもよい。吸着材51としては、例えば活性炭の多孔体、アルミナ、又はゼオライト等が用いられ得る。
【0030】
再び
図1に戻り、第2吸着器50Bは、第1吸着器50Aと同様に熱交換器40の下流に設けられており、改質ガス供給管L8を介して熱交換器40と接続されている。第2吸着器50Bは、第1吸着器50Aに対して並列に配置されている。第2吸着器50Bは、第1吸着器50Aと同様に吸着材51を有しており、改質ガスに含まれるアンモニアを除去することにより、高純度の水素ガスである燃料ガスを生成する。第2吸着器50Bで生成された燃料ガスは、燃料ガス供給管L9を介して燃料電池60に導入される。
【0031】
改質ガス供給管L8上には、切替弁80Aが設けられている。切替弁80Aは、例えば三方弁であり、熱交換器40と第1吸着器50Aとの接続、及び、熱交換器40と第2吸着器50Bとの接続を切り替える。すなわち、切替弁80Aは、熱交換器40から供給される改質ガスが第1吸着器50A又は第2吸着器50Bに導入されるように、改質ガス供給管L8を切り替える。
【0032】
燃料ガス供給管L9上には、切替弁80Bが設けられている。切替弁80Bは、例えば三方弁であり、第1吸着器50Aと燃料電池60との接続、及び、第2吸着器50Bと燃料電池60との接続を切り替える。すなわち、切替弁80Bは、第1吸着器50A又は第2吸着器50Bから供給される燃料ガスが燃料電池60に導入されるように、燃料ガス供給管L9を切り替える。
【0033】
また、第1吸着器50A及び第2吸着器50Bは、排出ガス供給管L5を介して改質器30の燃焼層30bと接続されている。改質器30の燃焼層30bから排出された高温の排出ガスは、排出ガス供給管L5を介して第1吸着器50A又は第2吸着器50Bに供給される。燃焼層30bから排出された排出ガスの温度は、例えば500℃~600℃程度である。第1吸着器50A及び第2吸着器50Bは、吸着材51に吸着されたアンモニアの量が多くなると性能が低下する。このため、吸着材51からアンモニアを除去する(吸着材51を再生する)必要がある。燃料電池システム1では、改質器30の燃焼層30bから排出される排出ガスの熱を用いて第1吸着器50A及び第2吸着器50Bの吸着材51を再生する。すなわち、燃料電池システム1では、燃焼層30bは、アンモニアを吸着した吸着材51を再生する再生用ガスを第1吸着器50A及び第2吸着器50Bに供給する再生用ガス供給部として機能する。第1吸着器50A及び第2吸着器50Bを通過した排出ガスは、排出管L10を介して燃料電池システム1の外部に排出される。なお、再生用ガスは燃焼層30bで発生する熱を熱源とした流体であり、ここでは排出ガスが再生用ガスとして用いられる。
【0034】
排出ガス供給管L5上には、切替弁80Cが設けられている。切替弁80Cは、例えば三方弁であり、改質器30の燃焼層30bと第1吸着器50Aとの接続、及び、改質器30の燃焼層30bと第2吸着器50Bとの接続を切り替える。すなわち、切替弁80Cは、改質器30の燃焼層30bから排出された排出ガスが第1吸着器50A又は第2吸着器50Bに導入されるように、排出ガス供給管L5を切り替える。
【0035】
このように、切替弁80A,80Cは、熱交換器40を通過した改質ガスの供給先を複数の吸着器のうち何れかの吸着器に切り替えると共に、排出ガス(再生用ガス)の供給先を複数の吸着器のうち他の吸着器に切り替える。
【0036】
排出管L10上には、切替弁80Dが設けられている。切替弁80Dは、例えば三方弁であり、第1吸着器50Aと燃料電池システム1の外部との接続、及び、第2吸着器50Bと燃料電池システム1の外部との接続を切り替える。すなわち、切替弁80Dは、第1吸着器50A又は第2吸着器50Bから排ガスが燃料電池システム1の外部に排出されるように、排出管L10を切り替える。
【0037】
切替弁80A~80Dは、制御部90によって制御される。制御部90は、複数の吸着器のうち何れかの吸着器に改質ガスが導入されて燃料ガスが生成されると共に、複数の吸着器のうち他の吸着器に排出ガス(再生用ガス)が導入されて吸着材51が再生されるように、切替弁80A~80Dを制御する。
【0038】
例えば、制御部90は、切替弁80Aによって熱交換器40と第1吸着器50Aとを接続し、改質ガスを第1吸着器50Aに導入して燃料ガスを生成する場合には、切替弁80Cによって改質器30の燃焼層30bと第2吸着器50Bとを接続し、排出ガスを第2吸着器50Bに導入して第2吸着器50Bの吸着材51を再生する。このとき、制御部90は、第1吸着器50Aと燃料電池60とが接続されるように切替弁80Bを制御する。すなわち、制御部90は、第1吸着器50Aで生成された燃料ガスが燃料電池60に導入されるように切替弁80Bを切り替える。また、制御部90は、第2吸着器50Bを通過した排出ガスが外部に排出されるように、切替弁80Dを制御する。
【0039】
反対に、制御部90は、切替弁80Aによって熱交換器40と第2吸着器50Bとを接続し、改質ガスを第2吸着器50Bに導入して燃料ガスを生成する場合には、切替弁80Cによって改質器30の燃焼層30bと第1吸着器50Aとを接続し、排出ガスを第1吸着器50Aに導入して第1吸着器50Aの吸着材51を再生する。このとき、制御部90は、第2吸着器50Bで生成された燃料ガスが燃料電池60に導入されるように切替弁80Bを制御する。また、制御部90は、第1吸着器50Aを通過した排出ガスが外部に排出されるように、切替弁80Dを制御する。このように、制御部90が一方の吸着器で燃料ガスを生成している間に他方の吸着器の吸着材51を再生するように切替弁80A~80Dを制御することにより、燃料電池60に燃料ガスを継続して供給することができる。
【0040】
燃料電池60は、第1吸着器50A及び第2吸着器50Bの下流に設けられており、燃料ガス供給管L9を介して第1吸着器50A及び第2吸着器50Bと接続されている。また、燃料電池60は、空気供給管L11を介して空気供給部70と接続されている。燃料電池60は、第1吸着器50A又は第2吸着器50Bから供給された燃料ガスと、空気供給管L11を介して空気供給部70から供給された空気とを用いて発電を行う。燃料電池60としては、例えば固体高分子形の燃料電池(PEFC:Polymer electrolyte Fuel Cell)が用いられ得る。なお、燃料電池60は固体高分子形に限定されず、固体酸化物形又はアルカリ形の燃料電池等であってもよい。
【0041】
空気供給部70には、空気供給管L3,L11が接続されている。空気供給部70は、空気供給管L3,L11を介して、それぞれ改質器30、燃料電池60に空気を供給する。
【0042】
以上説明したように、燃料電池システム1では、改質器30の燃焼層30bから排出される排出ガスを用いて吸着材51を再生する。排出ガスは、燃焼層30bにおけるアンモニアの燃焼によって加熱されている。このように、加熱された排出ガスが第1吸着器50A又は第2吸着器50Bに導入されるので、再生に熱量が必要となる吸着材51が用いられる場合であっても、吸着材51を再生することができる。また、燃焼層30bにおけるアンモニアの燃焼によって発生する廃熱を利用して吸着材51を再生するので、システム効率の向上を図ることができる。
【0043】
また、燃料電池システム1では、再生用ガス供給部は改質器30の燃焼層30bであり、改質器30の燃焼層30bから排出される排出ガス自体を吸着材51の再生に用いるので、システム構成の簡素化を図ることができる。
【0044】
また、燃料電池システム1は、熱交換器40に冷却水を供給する冷却水供給管(流路)L6と、熱交換器40を通過した冷却水を気化器20に供給する冷却水供給管(流路)L7と、を更に備え、熱交換器40は、改質ガスと冷却水とを熱交換することで改質ガスを冷却し、気化器20は、熱交換器40を通過した冷却水と液体状態のアンモニアとを熱交換することで液体状態のアンモニアを気化させる。この構成によれば、熱交換器40において改質ガスの熱によって冷却水が加熱される。気化器20においては、加熱された冷却水の熱によって、液体状態のアンモニアを気化する。このように、改質ガスからの廃熱を利用してアンモニアが気化されるので、システム効率の更なる向上を図ることができる。
【0045】
また、燃料電池システム1の改質器30は、気化されたアンモニアを水素に分解する改質触媒を含む改質層30aと、気化されたアンモニアを燃焼する燃焼触媒を含む燃焼層30bと、を有しており、改質層30aと燃焼層30bとは互いに独立した空間である。このような改質器30では、燃焼層30bのみにアンモニアを酸化させるための空気が導入され、改質ガスを生成する改質層30aにはアンモニアのみが導入される。したがって、空気中に含まれる窒素及びアルゴン等の不純物が改質ガスに混入することを抑制できる。よって、改質ガス及び燃料ガスに含まれる水素の比率を高めることができる。その結果、燃料電池60の出力を十分に得ることができる。また、アルゴン等の不純物によって燃料電池60の電極等が劣化することを抑制できる。
【0046】
次に、
図6を参照して、変形例に係る燃料電池システム2について説明する。
図6は、
図1の燃料電池システムの変形例を示すシステム構成図である。
図6に示されるように、燃料電池システム2は、燃料電池システム1と同様に、タンク10と、気化器20と、改質器30と、熱交換器40と、第1吸着器50A及び第2吸着器50Bと、燃料電池60と、空気供給部70と、複数の切替弁80A,80B,80C,80Dと、制御部90と、を備えている。
【0047】
燃料電池システム2が燃料電池システム1と相違する点は、熱交換器40に加え、改質器の下流に設けられた他の熱交換器41を更に備える点である。熱交換器41は、排出ガス供給管L5を介して改質器30の燃焼層30bと接続されている。熱交換器41には、改質器30の燃焼層30bから排出される排出ガスが導入される。また、熱交換器41は、空気供給管L12を介して空気供給部70と接続されている。熱交換器41には、空気供給部70から空気が供給される。熱交換器41では、排出ガスと空気とを熱交換することにより、導入された空気を加熱する。加熱された空気は、空気供給管L13を介して第1吸着器50A又は第2吸着器50Bに供給される。改質器30の燃焼層30bから排出される排出ガスにより加熱された空気は、改質器30の燃焼層30bで発生する熱を熱源とした再生用ガスとして用いられる。すなわち、燃料電池システム2では、熱交換器41は、アンモニアを吸着した吸着材51を再生する再生用ガスを第1吸着器50A及び第2吸着器50Bに供給する再生用ガス供給部として機能する。熱交換器41を通過した排出ガスは、排出管L14を介して燃料電池システム2の外部に排出される。
【0048】
以上説明したように、変形例に係る燃料電池システム2では、改質器30の燃焼層30bから排出される排出ガスによって空気を加熱し、加熱された空気によって吸着材51を再生する。このように、燃料電池システム2においては、加熱された空気を用いて吸着材51を再生するので、再生に熱量が必要となる吸着材51が用いられる場合であっても、吸着材51を再生することができる。また、排出ガスからの廃熱を利用して空気が加熱されるので、システム効率の向上を図ることができる。
【0049】
また、排出ガスの熱によって空気を加熱し、加熱された空気によって吸着材51を再生することにより、排出ガスに含まれる水が第1吸着器50A及び第2吸着器50Bに供給されることを抑制できる。したがって、排出ガスに含まれる水によって吸着材51の性能が劣化することを抑制できる。
【0050】
次に、
図7を参照して変形例に係る燃料電池システム3について説明する。
図7は、
図1の燃料電池システム1の他の変形例を示すシステム構成図である。
図7に示されるように、変形例に係る燃料電池システム3は、燃料電池システム1と同様に、タンク10と、気化器20と、改質器30と、熱交換器40と、第1吸着器50A及び第2吸着器50Bと、燃料電池60と、空気供給部70と、複数の切替弁80A,80B,80C,80Dと、制御部90と、を備えている。
【0051】
燃料電池システム3が燃料電池システム1と相違する点は、冷却水を燃料電池60に供給する冷却水供給管(流路)L15を更に備える点である。ラジエータ100及びポンプP2は、冷却水供給管L15上に設けられている。燃料電池60を通過した冷却水は、冷却水供給管L6を介して熱交換器40に導入される。すなわち、冷却水は、冷却水供給管L6,L7,L15を介して、燃料電池60、熱交換器40、気化器20、及びラジエータ100の間を循環している。
【0052】
以上説明したように、変形例に係る燃料電池システム3においても、改質器30の燃焼層30bから排出される排出ガスを用いて吸着材51を再生する。したがって、燃料電池システム3においても、燃料電池システム1と同様の効果を得ることができる。
【0053】
また、燃料電池システム3は、冷却水を燃料電池60に供給する冷却水供給管L15を更に備えている。これにより、燃料電池60に冷却水が供給され、冷却水によって燃料電池60が冷却される。したがって、燃料電池60を冷却するための冷却系を別途設ける必要がないので、燃料電池システム3のコストを低減することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更を行うことができる。例えば、上記の実施形態では、第1吸着器50A及び第2吸着器50Bの2つの吸着器を備える例について説明したが、吸着器の数は3つ以上であってもよい。例えば、燃料電池システムが3つの吸着器を備える場合には、2つの吸着器によって燃料ガスを生成し、他の1つの吸着器の吸着材51を再生してもよい。また、1つの吸着器によって燃料ガスを生成し、他の2つの吸着器の吸着材51を再生してもよい。
【0055】
また、上記の実施形態では、第1吸着器50A及び第2吸着器50Bの切り替えを行うために4つの切替弁80A~80Dを用いる例について説明したが、第1吸着器50A及び第2吸着器50Bの切り替えを行うための切替弁の構成は特に限定されず、適宜変更可能である。また、切替弁80A~80Dは三方弁でなくてもよい。
【0056】
また、上記の実施形態では、燃料電池システム1が冷却水供給管L6,L7、ラジエータ100、及びポンプP2を含む冷却系を備える例について説明したが、燃料電池システム1はこのような冷却系を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,2,3…燃料電池システム、10…タンク、20…気化器、30…改質器、30a…改質層、30b…燃焼層(再生用ガス供給部)、40…熱交換器、41…熱交換器(他の熱交換器、再生用ガス供給部)、50A…第1吸着器(吸着器)、50B…第2吸着器(吸着器)、51…吸着材、60…燃料電池、70…空気供給部、80A,80B,80C,80D…切替弁、90…制御部、L6,L7,L15…冷却水供給管(流路)。