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特許6996209ラドル給湯装置およびラドル給湯制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ラドル給湯装置およびラドル給湯制御方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/30 20060101AFI20220107BHJP
   B22D 17/32 20060101ALI20220107BHJP
   B22D 39/02 20060101ALI20220107BHJP
   B22D 41/05 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B22D17/30 C
B22D17/32 J
B22D39/02 A
B22D41/05
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017195530
(22)【出願日】2017-10-06
(65)【公開番号】P2019069453
(43)【公開日】2019-05-09
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】宇部興産機械株式会社
(72)【発明者】
【氏名】有田 覚也
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-057758(JP,A)
【文献】特開昭52-115743(JP,A)
【文献】実開平06-005758(JP,U)
【文献】特開2011-143424(JP,A)
【文献】特開2017-159306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/30,17/32,35/00-41/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を注湯するラドル給湯装置において、ラドルを取付けている回転軸に、溶湯状態を検出するための計測器の取付具を、設け、前記計測器が温度計であることを特徴とするラドル給湯装置。
【請求項2】
溶湯を注湯するラドル給湯装置において、ラドルを取付けている回転軸に、溶湯状態を検出するための計測器の取付具を、設け、前記計測器が距離計であることを特徴とするラドル給湯装置。
【請求項3】
請求項記載のラドル給湯装置において、前記計測器として、さらに距離計を設けたラドル給湯装置。
【請求項4】
給湯装置用ラドルを取付けている回転軸に、溶湯温度を検出するための温度計の取付具を、設けたラドル給湯装置において、鋳造サイクル毎に、温度計により検出する、ラドル内溶湯温度の実績値と、ラドル内溶湯温度の目標値の差を算出し、その差の値に基づいて、次の工程の動作を制御することを特徴とするラドル給湯制御方法。
【請求項5】
給湯装置用ラドルを取付けている回転軸に、溶湯液面高さを検出するための距離計の取付具を、設けたラドル給湯装置において、鋳造サイクル毎に、設置した距離計により、ラドル内溶湯液面高さを測定して実給湯量を求め、実給湯量と、給湯量の目標値の差を算出し、その差の値に基づいて、給湯量を補正することを特徴とするラドル給湯制御方法。
【請求項6】
請求項記載のラドル給湯制御方法において、さらに、前記計測器として、距離計を設け、鋳造サイクル毎に、ラドル内溶湯液面高さを測定して実給湯量を求め、実給湯量と、給湯量の目標値の差を算出し、その差の値に基づいて、給湯量を補正する制御を設けたことを特徴とするラドル給湯制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラドルの回転動作によって、溶湯を注湯する、ラドル内の溶湯状態を検出することを目的とする計測器の取付具の設置方法に係る、ラドル給湯装置、及び、計測器によって検出した計測値を利用して、ラドル給湯装置の動作を制御するラドル給湯制御方法、に関するものである。
【0002】
さらに詳しくは、計測器の取付具の設置方法による、計測器の検出性と計測器の交換作業、及び、ラドル給湯制御方法による、不良品鋳造の抑制、に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来技術として、鋳物とセラミツクスを用いたラドルの給湯及び注湯の傾きに連動するようにラドルに連続測温用のサーモカップルを支える固定金具を設け、サーモカップルの温接点外の+-を各々磁性管で保護した上で自動給湯機のアームに連動させることを特徴とするラドル内溶湯の連続測温装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0004】
この従来技術の目的は、ダイカスト製品の注湯温度に起因する鋳巣、湯境い、湯廻り、気泡等の不良現象を防止するため、保持炉から注湯までの温度降下の状況を把握することにより、保持炉の温度を測定する装置を提供することにある。
【0005】
この従来技術においては、ラドルの上部中央にサーモカップルの固定金具を設けている。そして、固定金具はサーモカップルとラドルを直接固定するバインダークリップ等の簡便法からラドルに専用の固定金具を設け、測温位置を自由に変える方法を実施例として説明している。
【0006】
この従来技術によれば保持炉から注湯に至るまでのラドル内溶湯温度の状況が把握出来るため、溶湯温度に起因する製品の出来栄えとの関連がわかるので、不良品対策が容易となり、適正溶湯温度の設定が可能となり品質安定化への効果がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開昭62-105747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来技術において、ラドルを、別のサイズ、あるいは、別のタイプ、のラドルに交換する場合には、計測器自体も併せて交換する必要があり、計測器の交換作業が発生し、計測器交換作業時間を要するという課題がある。
【0009】
さらに、上述した従来技術において、計測値を利用した、不良品の鋳造の抑制を目的とする、ラドル給湯制御は行っていない。そのため、鋳造サイクル毎に、計測器により検出したラドル内溶湯状態の計測値を利用して、ラドル給湯装置の動作を制御することにより、不良品の鋳造の抑制を可能とするラドル給湯制御が必要であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項に記載の発明は、溶湯を注湯するラドル給湯装置において、ラドルを取付けている回転軸に、溶湯温度を検出するための温度計の取付具を、設けたことを特徴とするラドル給湯装置である。
【0012】
請求項に記載の発明は、溶湯を注湯するラドル給湯装置において、ラドルを取付けている回転軸に、溶湯液面高さを検出するための距離計の取付具を、設けたことを特徴とするラドル給湯装置である。
【0013】
請求項に記載の発明は、溶湯を注湯するラドル給湯装置にあって、ラドルを取付けている回転軸に、溶湯温度を検出するための温度計の取付具を、設けたことを特徴とするラドル給湯装置において、前記計測器として、さらに距離計を設けたラドル給湯装置である。
【0015】
請求項に記載の発明は、給湯装置用ラドルを取付けている回転軸に、溶湯温度を検出するための温度計の取付具を、設けたことを特徴とするラドル給湯装置において、鋳造サイクル毎に、ラドル内溶湯温度の実績値と、ラドル内溶湯温度の目標値の差を算出し、その差の値に基づいて、次の工程の動作を制御することを特徴とするラドル給湯制御方法である。
【0016】
請求項に記載の発明は、給湯装置用ラドルを取付けている回転軸に、溶湯液面高さを検出するための距離計の取付具を、設けたことを特徴とするラドル給湯装置において、鋳造サイクル毎に、ラドル内溶湯液面高さを測定して実給湯量を求め、実給湯量と、給湯量の目標値の差を算出し、その差の値に基づいて、給湯量を補正することを特徴とするラドル給湯制御方法である。
【0017】
請求項に記載の発明は、給湯装置用ラドルを取付けている回転軸に、溶湯温度を検出するための温度計の取付具を、設けたことを特徴とするラドル給湯装置にあって、鋳造サイクル毎に、ラドル内溶湯温度の実績値と、ラドル内溶湯温度の目標値の差を算出し、その差の値に基づいて、次の工程の動作を制御することを特徴とするラドル給湯制御方法において、さらに、前記計測器として、距離計を設け、鋳造サイクル毎に、ラドル内溶湯液面高さを測定して実給湯量を求め、実給湯量と、給湯量の目標値の差を算出し、その差の値に基づいて、給湯量を補正する制御を設けたラドル給湯制御方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ラドルを、別のサイズ、あるいは、別のタイプ、のラドルに交換する場合でも、計測器自体を交換する必要がなくなり、同じ計測器を継続して使用可能であるため、計測器の交換作業時間が無くなる、という効果がある。
【0019】
さらに、鋳造サイクル毎に、計測器により検出したラドル内溶湯状態の計測値を利用して、ラドル給湯装置の動作を制御することにより、不良品の鋳造の抑制を可能とするラドル給湯制御が行える、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一態様であるダイカストマシンが適用されたラドル給湯装置を説明する図である。
図2】本発明に係るラドル給湯装置における計測器取付具の設置方法及び給湯制御方法を説明する図である。
図3】ラドル内の溶湯状態を検出する計測器を取付けるための取付具をラドルの回転軸に設けた構成を説明する図である。(a)は正面図、(b)は右側面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明をより詳細に説明するために、以下、本発明を実施するための形態を、好適な例を挙げて、適宜図面を用いて説明する。
ここでは、例えばダイカストマシンに、溶湯保温炉を設置した場合の、ラドル給湯装置を備えた一態様について、図1を用いて説明する。
ラドル給湯装置1は、例えば、ゴールドチャンバー式ダイカストマシンに自動的に溶湯23を供給する装置であり、ラドル給湯装置1本体の構成は、
(1)溶湯23を汲み出すラドル2
(2)ラドル2を溶湯保温炉24からダイカストマシン10の注湯位置まで搬送するアーム7(ここでは、例えば、アームは合計2本有り)
(3)ラドル2およびアーム7を駆動するためのモータ(図示せず)、減速機(図示せず)およびチェーン(図示せず)
から成っている。
動作は手動およびダイカストマシン10本体との連動自動運転のいずれも可能となっている。
図1に示すように、鋳造に用いられるダイカストマシン10は、射出スリーブ11を有する射出装置(図示せず)と、この射出装置の射出スリーブ11内に溶湯23を供給するためのラドル2とを備える。射出装置の射出スリーブ11は、金型(図示せず)のキャビティに連通している。
射出スリーブ11の上面部には、ラドル2から溶湯23を射出スリーブ11内に供給するための注湯口12が形成されている。射出スリーブ11は、例えば、円筒状に形成されている。このように構成された射出スリーブ11内に供給された溶湯23は、プランジャチップ14が金型のキャビティ側へ前進することによって、キャビティ内へ射出されて充填される。
射出スリーブ11に供給される溶湯23は、射出スリーブ11から離れた所定位置に設置された溶湯保温炉24内に溶融状態で貯留されている。溶湯保温炉24内に貯留された溶湯23は、アーム7の先端に取り付けられたラドル2により、溶湯保温炉24から汲み出されて射出スリーブ11内に払い出されて供給される。
そして、金型のキャビティ内へ射出されて充填が完了した後、例えば、型締、型開、押出、取出し、冷却、後処理の工程を経て、製品の鋳造が繰り返し行われる。
【0022】
<第1の実施形態>
以下、本発明の第1の実施形態を図に基づいて説明する。
図2および図3に示すように、本発明に係るラドル給湯装置1は、ラドル2自体にラドル回転用の軸穴3を設けており、ラドルの回転機構4により、ラドルを回転させることによって、ダイカストマシン(図示せず)の射出スリーブ11内に、ラドル2内の溶湯21を、注湯口12の箇所において、注湯するものである。
【0023】
図3に示すように、ラドル2は、回転機構4を構成するために、軸穴3に挿入する回転軸5を介してラドル給湯装置1に取付けられており、ラドル2の回転を可能としている。
【0024】
本発明による第1の実施形態は、ラドル2内に存在する溶湯状態を検出することを目的とした計測器31を取付けるために、計測器31を取付けるための取付具6を、回転軸5に設けたことを特徴とするラドル給湯装置1である。
【0025】
なお、計測器を取付けるための取付具6は、取付具6自体の取付部を回転軸5に設けており、その取付部から上向きに立ち上がり、計測器31の取付位置が、計測器31により、ラドル2内に存在する溶湯状態を検出可能な位置になるように、取付具6の形状を変化させて、計測器31の取付位置を適正な位置に導く構成をした構造になっている。
【0026】
計測器31を取付けるための取付具6は、回転軸5およびラドル2、と共に同時に回転動作するため、計測器31の検出部32と、ラドル2の各箇所との距離は、固定値となる。さらに詳しくは、計測器31の検出部32と、ラドル2内の溶湯液面22との距離は、ラドル2内の溶湯量が一定の場合に、固定値となる。したがって、計測器31によりラドル2内に存在する溶湯状態を検出する計測値については、計測精度の安定性が向上する。
【0027】
また、ラドル2を、別のサイズ、あるいは、別のタイプ、のラドルに交換する場合において、計測器31自体を交換する必要がなく、同じ計測器31を継続して使用可能であるため、計測器31の交換作業時間が一切不要になるという構成となっている。つまり、作業工程を省くことによる作業効率の向上という作用効果がある。
【0028】
なお、計測器31には、例えば、各種の、温度計、測長機、振動計、力学量測定器、レベル計など、目的に応じて、使用可能なものを適宜選定して、使用することができる。
【0029】
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態を図に基づいて説明する。
図3に示す第1の実施形態において、本発明によれば、計測器31を取付けるための取付具6に、計測器として、例えば、温度計を使用することができる。前記温度計は、ラドル2内に存在する溶湯温度を検出することを目的とする。
【0030】
好適には、前記温度計として、非接触温度計測が可能な非接触温度計を使用することにより、例えば、
まず、ラドル2内の溶湯による検出部32(接触部)の溶損の発生が無くなることにより、前記非接触温度計の耐久性が向上する、
次に、前記非接触温度計の耐久性の向上により、連続鋳造における常時の計測に優位性を持つ、
更に、検出部32(接触部)へのラドル2内の溶湯の付着により発生する、酸化物の形成が無くなることにより、鋳造品への酸化物の混入が防止されることによる、不良品が鋳造される要因が減少する、
といった、鋳造に対して優れた作用効果がある。
【0031】
<第3の実施形態>
以下、本発明の第3の実施形態を図に基づいて説明する。
また、図3に示す第1の実施形態において、本発明によれば、計測器31を取付けるための取付具6に、計測器として、例えば、距離計を使用することができる。前記距離計は、ラドル2内に存在する溶湯液面22までの距離を検出することを目的とする。
【0032】
前記距離計は、非接触で二点間の距離を測る計測機器であるため、前記非接触温度計の場合と同様に、例えば、
まず、ラドル2内の溶湯による検出部32の溶損の発生が無いため、前記距離計の耐久性が問題なく確保できる、
次に、前記距離計の耐久性の問題のない確保により、連続鋳造における常時の計測に優位性を持つ、
更に、検出部32へのラドル2内の溶湯の付着により発生する、酸化物の形成が無いために、鋳造品への酸化物の混入を阻止できることによる、不良品が鋳造される要因が減少する、
といった、鋳造に対して優れた作用効果がある。
【0033】
<第4の実施形態>
以下、本発明の第4の実施形態を図に基づいて説明する。
さらに、図3に示す第1の実施形態において、本発明によれば、計測器31を取付けるための取付具6に、計測器として、例えば、温度計と共に距離計も併せて使用することができる。前記温度計と前記距離計は、ラドル2内に存在する溶湯温度を検出すること、及び、ラドル2内に存在する溶湯液面22までの距離を検出することを目的とする。
【0034】
好適には、前記温度計および前記距離計は、非接触式を使用することにより、例えば、
まず、ラドル2内の溶湯による検出部32の溶損の発生が無くなることにより、非接触式計測器の耐久性が向上する、
次に、前記非接触式計測器の耐久性の向上により、連続鋳造における常時の計測に優位性を持つ、
更に、検出部32へのラドル2内の溶湯の付着により発生する、酸化物の形成が無くなることにより、鋳造品への酸化物の混入が防止されることによる、不良品が鋳造される要因が減少する、
といった、鋳造に対して優れた作用効果がある。
【0035】
なお、ここでは、計測器31を取付けるための取付具6に、計測器として、温度計と距離計を使用することを例として説明したが、
目的に応じて、計測器の設置個数、および、計測器の種類、規格、仕様、型式は、適宜、自由に変更が可能である。
【0036】
<第5の実施形態>
以下、本発明の第5の実施形態を図に基づいて説明する。
図3に示すように、本発明に係るラドル給湯制御方法は、ダイカストマシン(図示せず)の鋳造サイクル毎に、計測器31によって検出したラドル2内の溶湯状態の計測値を利用して、鋳造サイクル毎にラドル給湯装置1の動作を制御することを特徴とするラドル給湯制御方法である。
【0037】
鋳造サイクル毎のラドル2内の溶湯状態の前記計測値を鋳造サイクル毎の鋳造条件の中に取り込んで、前記計測値を利用することによって、例えば、
【0038】
まず、図2および図3において、不良の鋳造品が鋳造されるか否かを予測して、ダイカストマシン(図示せず)の射出スリーブ11内に、ラドル2内の溶湯21を、注湯口12の箇所において、注湯する動作の工程に進むか否かを判断する、つまり、不良品の鋳造の有無を予測して診断するシステムを構築することにより、注湯の動作の工程を制御し、例えば、
不良の鋳造品が鋳造されることが予測される場合は、注湯する動作の工程を中止し、ラドル2内の溶湯21を、改めて再び汲み直す工程から再開し、良品の鋳造品が鋳造されることが予測される場合は、注湯する動作の工程に進む、
といった、良品鋳造のための装置効率の管理と向上が可能となり、省エネルギーに伴う環境負荷削減を通した環境保護につながる、
【0039】
次に、次回以降の鋳造サイクルの工程に進むにあたり、前回までの鋳造条件を基にして、次回以降の鋳造条件を自動的に変化させるシステムを構築することにより、例えば、
ラドル2内に汲み取る給湯量を補正することを可能として、不良品の鋳造の発生を低減し、鋳造歩留り改善、コスト削減、地球資源および環境の保全に貢献する、
といった、鋳造に対して優れた作用効果がある。
【0040】
なお、計測器31については、例えば、各種の、温度計、測長機、振動計、力学量測定器、レベル計など、目的に応じて、使用可能なものを適宜選定して、使用することができるため、前記計測値を利用して、鋳造サイクル毎にラドル給湯装置1の動作を制御する方法を適宜、自由に決定して、好適なラドル給湯制御方法を構築することが可能である。
【0041】
<第6の実施形態>
以下、本発明の第6の実施形態を図に基づいて説明する。
図2および図3に示す第5の実施形態において、本発明によれば、鋳造サイクル毎のラドル2内の溶湯状態の計測値を鋳造サイクル毎の鋳造条件の中に取り込んで、前記計測値を利用するために、前記計測器として、例えば、温度計を使用することができる。
この場合、鋳造サイクル毎に、ラドル2内の溶湯温度を検出した実績値と、事前に設定して入力したラドル2内の溶湯温度の目標値(以下、第1の目標値と記す)との差を算出し、その差が事前に設定して入力した許容温度範囲内に入るか否かの結果に基づいて、次のラドル給湯装置1の動作の工程を制御することを特徴とするラドル給湯制御方法となる。
【0042】
好適には、ラドル2内の溶湯温度を検出した前記実績値は、ダイカストマシン(図示せず)の射出スリーブ11内に、ラドル2内の溶湯21を、注湯口12の箇所において、注湯する直前の実績値を取り込むことにより、ラドル給湯装置1のラドル2内の溶湯21の搬送の工程での外乱によって生じる温度変化を取り除くことが可能となる。
【0043】
事前に設定して入力した第1の目標値は、不良となった複数の鋳造品の鋳造直後の温度を事前に検出し、この不良となった複数の鋳造品の温度の計測値に基づいて決定する。また、前記許容温度範囲は、不良となった複数の鋳造品の温度の計測値に基づいて決定した第1の目標値を基準として、例えば、第1の目標値の下限温度および上限温度を決定し、前記下限温度から前記上限温度の範囲を許容温度範囲に設定することにより決定することができる。
【0044】
具体的に、例えば、
不良の鋳造品が鋳造されることが予測される場合、つまり、ラドル2内の溶湯21を注湯する直前の実績値が、前記許容温度範囲外の場合は、注湯する動作の工程を中止し、ラドル2内の溶湯21を、改めて再び汲み直す工程から再開し、
良品の鋳造品が鋳造されることが予測される場合、つまり、ラドル2内の溶湯21を注湯する直前の実績値が、前記許容温度範囲内の場合は、注湯する動作の工程に進む、といったことを特徴とするラドル給湯制御方法が可能である。
これは、良品鋳造のための装置効率の管理と向上が可能となり、省エネルギーに伴う環境負荷削減を通した環境保護につながるといった、鋳造に対して優れた作用効果がある。
【0045】
<第7の実施形態>
以下、本発明の第7の実施形態を図に基づいて説明する。
また、図2および図3に示す第5の実施形態において、本発明によれば、鋳造サイクル毎のラドル2内の溶湯状態の計測値を鋳造サイクル毎の鋳造条件の中に取り込んで、前記計測値を利用するために、前記計測器として、例えば、距離計を使用することができる。
【0046】
この場合、鋳造サイクル毎に、ラドル2内の溶湯液面22までの距離を計測し、この計測値に従って、ラドル2の底面から溶湯液面22までの高さを導き出し、これによって求められた実給湯量と、事前に設定して入力した給湯量の目標値(以下、第2の目標値と記す)との差を算出し、その差の値に基づいて、次の鋳造サイクルにおいて、ラドル2内に汲み取る給湯量を補正する制御をすることを特徴とするラドル給湯制御方法となる。
【0047】
好適には、ラドル2内の前記実給湯量は、溶湯液面22の波立ちによる揺れが収まり安定する位置が良く、例えば、図1に示す溶湯保持炉24上のラドル2の待機位置13での実給湯量を取り込むことにより、高精度な実給湯量を把握することが可能となる。
【0048】
事前に設定して入力した第2の目標値は、不良となった複数の鋳造品の実給湯量を事前に検出し、この不良となった複数の鋳造品の実給湯量の計測値に基づいて決定することができる。
【0049】
具体的に、例えば、
ラドル2内の実給湯量が、第2の目標値より少ない場合は、次の鋳造サイクルにおいて、ラドル2内に汲み取る給湯量を増加させ、
ラドル2内の実給湯量が、第2の目標値より多い場合は、次の鋳造サイクルにおいて、ラドル2内に汲み取る給湯量を減少させる、
といったことを特徴とするラドル給湯制御方法が可能である。
【0050】
これは、不良品の鋳造の発生を低減し、鋳造歩留り改善、コスト削減、地球資源および環境の保全に貢献するといった、鋳造に対して優れた作用効果がある。
【0051】
<第8の実施形態>
以下、本発明の第8の実施形態を図に基づいて説明する。
さらに、図2および図3に示す第5の実施形態において、本発明によれば、鋳造サイクル毎のラドル2内の溶湯状態の計測値を鋳造サイクル毎の鋳造条件の中に取り込んで、前記計測値を利用するために、前記計測器として、例えば、温度計と共に距離計も併せて使用することができる。
【0052】
この場合、鋳造サイクル毎に、ラドル2内の溶湯温度を検出した実績値に基づいて、次のラドル給湯装置1の動作の工程を制御すること、
及び、鋳造サイクル毎に、ラドル2内の溶湯液面22までの距離を計測して求められた実給湯量に基づいて、次の鋳造サイクルにおいて、ラドル2内に汲み取る給湯量を補正する制御をすること、
を特徴とするラドル給湯制御方法となる。
【0053】
好適には、ラドル2内の溶湯温度を検出した実績値は、ダイカストマシン(図示せず)の射出スリーブ11内に、ラドル2内の溶湯21を、注湯口12の箇所において、注湯する直前の実績値、
及び、ラドル2内の実給湯量は、溶湯液面22の波立ちによる揺れが収まり安定する位置が良く、例えば、図1に示す溶湯保持炉24上のラドル2の待機位置13での実給湯量、
をそれぞれ取り込むことにより、外乱によって生じる温度変化を取り除き、且つ、高精度な実給湯量を把握することが可能となる。
【0054】
これらは、良品鋳造のための装置効率の管理と向上が可能となり、省エネルギーに伴う環境負荷削減を通した環境保護につながる、
及び、不良品の鋳造の発生を低減し、鋳造歩留り改善、コスト削減、地球資源および環境の保全に貢献する、
といった、鋳造に対して優れた作用効果がある。
【0055】
なお、ここでは、鋳造サイクル毎のラドル2内の溶湯状態の計測値を鋳造サイクル毎の鋳造条件の中に取り込んで、前記計測値を利用するために、前記計測器として、温度計と距離計を使用することを例として説明したが、
目的に応じて、計測器の設置個数、および、計測器の種類、規格、仕様、型式は、適宜、自由に変更が可能であるため、目的に応じて、必要な計測値を選択して利用することが可能であり、鋳造サイクル毎にラドル給湯装置1の動作を制御する方法を適宜、自由に決定して、好適なラドル給湯制御方法を構築することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明によれば、ラドルを、別のサイズ、あるいは、別のタイプ、のラドルに交換する場合でも、計測器自体を交換する必要がなくなり、同じ計測器を継続して使用可能であるため、計測器の交換作業時間が無くなる、というラドル給湯装置における計測器取付具の設置方法を提供することができる。
前記計測器として、例えば、温度計と共に距離計も併せて使用することができ、好適には、前記温度計および前記距離計は、非接触式を使用することにより、例えば、
前記ラドル内溶湯による検出部(接触部)の溶損の発生が無くなることにより、非接触式計測器の耐久性の向上、
前記非接触式計測器の耐久性の向上により、連続鋳造における常時の計測に優位性を持つ、
前記検出部(接触部)への前記ラドル内溶湯の付着により発生する、酸化物の形成が無くなることにより、鋳造品への前記酸化物の混入が防止されることによる、不良品が鋳造される要因の減少、
といった鋳造に対して優れた作用効果がある計測が可能となる。
【0057】
さらに、本発明によれば、鋳造サイクル毎に、計測器により検出したラドル内溶湯状態の計測値を利用して、ラドル給湯装置の動作を制御することにより、不良品の鋳造の抑制を可能とするラドル給湯制御が行える、というラドル給湯装置における給湯制御方法を提供することができる。
前記計測器として、例えば、温度計と共に距離計も併せて使用することができ、好適には、前記ラドル内の前記溶湯温度を検出した実績値は、前記ダイカストマシンの前記射出スリーブ内に、前記ラドル内の前記溶湯を注湯する直前の実績値、
及び、前記ラドル内の前記実給湯量は、前記溶湯液面の波立ちによる揺れが収まり安定する位置が良く、例えば、溶湯保持炉上の前記ラドルの待機位置での実給湯量、
を取り込むことにより、外乱によって生じる温度変化を取り除き、且つ、高精度な実給湯量を把握することが可能となる。
よって、良品鋳造のための装置効率の管理と向上が可能となり、省エネルギーに伴う環境負荷削減を通した環境保護につながる、
及び、不良品の鋳造の発生を低減し、鋳造歩留り改善、コスト削減、地球資源および環境の保全に貢献する、
といった、鋳造に対して優れた作用効果がある給湯制御が可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 ラドル給湯装置
2 ラドル
3 ラドル回転用の軸穴
4 ラドルの回転機構
5 ラドルの回転軸
6 計測器を取付けるための取付具
7 アーム
10 ダイカストマシン
11 射出スリーブ
12 射出スリーブ部の注湯口
13 溶湯保持炉上のラドルの待機位置
14 プランジャチップ
21 ラドル内の溶湯
22 ラドル内の溶湯液面
23 溶湯保温炉内の溶湯
24 溶湯保温炉
31 計測器
32 計測器の検出部
図1
図2
図3