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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】医療用吸引集液装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20220107BHJP
【FI】
A61M1/00 105
A61M1/00 107
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017208945
(22)【出願日】2017-10-30
(65)【公開番号】P2019080674
(43)【公開日】2019-05-30
【審査請求日】2020-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】工藤 辰也
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 誠
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特公平02-049747(JP,B2)
【文献】国際公開第2004/047886(WO,A1)
【文献】特開2006-271436(JP,A)
【文献】特表2013-521976(JP,A)
【文献】独国実用新案第202007008259(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張可能であって、吸入口から液体を吸引してその中に貯留可能な貯留器と、
前記貯留器内に収容され、前記貯留器を膨張させて前記吸入口から液体を吸引させる拡張機構と、を備え、
前記拡張機構は、
互いに重ねるようにして配置され且つ各々の両端側部分が互いに連結され、前記両端側部分の連結されている部分を基点に開いて各々の中間部分を互いに離すことができる一対のプレートと、
前記一対のプレートの中間部分の各々を離すように付勢すべく、近接する前記中間部分の間に圧縮された状態で介在する付勢部材と、
前記一対のプレートの各々から相手側の前記プレートに向かって突出し、近接する前記中間部分が離れないように互いに係合し且つ係合解除可能な一対の係合部を有する複数のロック機構と、を有し、
前記複数のロック機構は、前記一対の係合部の一方が前記一対のプレートのうち一方に夫々設けられ且つその先端部分を第1方向一方に延在させ、前記一対の係合部の他方が前記一対のプレートのうち他方に設けられ且つその先端部分を第1方向他方に延在させ、前記一対のプレートの前記中間部分を互いに第1方向一方及び他方に夫々ずらすことによって一対の係合部の係合が解除される構成であり、前記複数のロック機構は、第1ロック機構および第2ロック機構を含み、前記第2ロック機構の前記先端部分が、前記第1ロック機構の前記先端部分より前記第1方向において短くなっていることによって、前記第1ロック機構よりも前記第2ロック機構の方が前記一対の係合部が先に解除されるよう構成されている、
医療用吸引集液装置。
【請求項2】
前記複数のロック機構には、前記第1ロック機構であるメインロック機構と、前記第2ロック機構である一対のサブロック機構とを有し、
前記一対のプレートは、前記中間部分及び前記両端側部分が前記第1方向に並び、
前記メインロック機構は、前記一対のプレートにおいて前記一対のプレートの厚み方向及び前記第1方向に直交する第2方向中央に位置するように前記中間部分に設けられ
前記一対のサブロック機構は、それらの間に前記メインロック機構が位置するように前記第2方向に離されて前記中間部分に設けられている、請求項1に記載の医療用吸引集液装置。
【請求項3】
記メインロック機構の各係合部は、前記サブロック機構の各係合部より第2方向に幅広に形成されている、請求項2に記載の医療用吸引集液装置。
【請求項4】
前記一対のプレートの各中間部分には、相手側のプレートに設けられる前記メインロック機構の係合部に対応する位置に前記中間部分を貫通する貫通孔が夫々形成され、
前記一対のプレートのうち一方には、且つ前記貫通孔に架け渡されるように前記貫通孔を前記第1方向に横切るブリッジが設けられ、
前記ブリッジは、前記貫通孔から他方のプレートに向かって突出し、
前記他方のプレートに設けられる前記係合部には、前記ブリッジに対応する位置に前記ブリッジを収められる収容凹部が形成されている、請求項3に記載の医療用吸引集液装置。
【請求項5】
前記ブリッジは、前記第1方向一方から見て先端へ向かって先細りのテーパ状に形成され、
前記収容凹部は、前記ブリッジに対応させて底側に向かって先細りのテーパ状に形成されている、請求項4に記載の医療用吸引集液装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯留器を拡張機構によって膨張させることによって貯留器の中に液体を吸引させる医療用吸引集液装置に関する。
【背景技術】
【0002】
手術中等において血液、膿、及び滲出液等が体外に排出されることがあり、術後にそれらの液体を吸引してどこかに貯留しておく必要がある。そのような機能を有する装置として医療用吸引集液装置があり、その一例としては例えば特許文献1に記載の外科用吸引装置が知られている。
【0003】
特許文献1の外科用吸引装置は、圧縮可能な貯留器内に2つのプレートが配置されている。2つのプレートは、重ね合わせるように配置され、その一端がヒンジ結合されている。また、2つのプレートの間にはスプリングが配置され、2つのプレートは、スプリングによって互いに遠ざけるように付勢されている。また、2つのプレートには、スプリングの付勢力に抗してそれらを近接して配置するべくラッチが設けられている。ラッチは、2つのプレートに夫々設けられるラッチフックを有しており、ラッチフック同士を係合させることで2つのプレートが近接した状態で維持されている。
【0004】
このように構成されている外科用吸引装置では、ラッチフックの係合を解除することによって近接する2つのプレートがスプリングによって遠ざけられる。これにより、貯留器を膨張させて貯留器内を負圧にすることができ、負圧にすることによって貯留器内に液体が吸引される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平2-49747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の外科用吸引装置では、2つのプレートにおいてラッチフックの足元に外科用吸引装置の厚みを抑えるべくキャビティが形成されており、係合させる際に相手のラッチフックをキャビティの中に入れてラッチフック同士を係合させるようになっている。他方、外科用吸引装置では、ラッチフックの足元にキャビティを形成することによって、プレートにおいてラッチフック周辺が変形しやすくなっている。それ故、使用されずに長期保管されていると、スプリングの付勢力に耐え切れずにプレートのラッチフック周辺が変形する。より詳しくは、ラッチフック周辺が持ち上がり、ラッチフックの先端が上を向くようになる。そうすると、ラッチフック同士の係合が解除されやすくなり、術者等が操作することなく(即ち、不所望に)ラッチフック同士の係合が解除される。なお、このような事態は、特許文献1の外科用吸引装置のようにプレートにキャビティが形成されている場合だけでなく、プレートの厚みが薄くて変形しやすい場合にも同様に起こり得る。
【0007】
そこで本発明は、プレートが変形して不所望に係合が解除されること抑制することができる医療用吸引集液装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の医療用吸引集液装置は、膨張可能であって、吸引口から液体を吸引してその中に貯留可能な貯留器と、前記貯留器内に収容され、前記貯留器を膨張させて前記吸引口から液体を吸引させる拡張機構とを備え、前記拡張機構は、互いに重ねるようにして配置され且つ各々の両端側部分が互いに連結され、前記両端側部分の連結されている部分を基点に開いて各々の中間部分を互いに離すことができる一対のプレートと、前記一対のプレートの中間部分の各々を離すように付勢すべく、近接する前記中間部分の間に圧縮された状態で介在する付勢部材と、前記一対のプレートの各々から相手側の前記プレートに向かって突出し、近接する前記中間部分が離れないように互いに係合し且つ係合解除可能な一対の係合部を有する複数のロック機構とを有するものである。
【0009】
本発明に従えば、付勢部材が一対のプレートの中間部分を離そうとしているところを複数のロック機構によって離れないようにしている。それ故、付勢部材による付勢力がロック機構に作用することになるが、その付勢力が1つのロック機構に集中せずに複数のロック機構に分散させることができる。それ故、各ロック機構に作用する荷重を低減することができる。即ち、ロック機構を構成する一対の係合部に作用する荷重を低減することができる。これにより、係合部が付勢力によって変形して一対の係合部における係合が解除されることを抑制することができる。それ故、拡張機構が不所望に作動する、即ち医療用吸引集液装置が不所望に作動することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プレートが変形して不所望に係合が解除されること抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態のドレーンバッグを示す正面図である。
図2図1のドレーンバッグに備わる拡張機構を示す斜視図である。
図3図2の拡張機構を開き且つ幅方向中央に位置する仮想平面で切断して見た斜視断面図である。
図4図2の拡張機構に備わるボトムプレートを示す斜視図である。
図5図2の拡張機構に備わるトッププレートを示す斜視図である。
図6図2の拡張機構を示す断面図であり、(a)は図2の切断線VIA-VIAで切断した断面図であり、(b)は図2の切断線VIB-VIBで切断した断面図である。
図7図2の拡張機構において両側部分を折り曲げた状態を示す断面図であり、(a)は図6(a)に対応する断面図であり、(b)は図6(b)に対応する断面図である。
図8】本発明に係る他の実施形態のドレーンバッグに備わる拡張機構を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態のドレーンバッグ1,1Aについて図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いる方向の概念は、説明する上で便宜上使用するものであって、発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明するドレーンバッグ1,1Aは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
【0013】
<ドレーンバッグ>
術中等において血液、膿、及び滲出液等(以下、「血液等」という)が体外に排出されることがあり、術後に血液等を吸引すべく図1に示すようなドレーンバッグ1が用いられる。ドレーンバッグ1は、それ自体で血液等を吸引し、また吸引した血液等を貯めることができる。このような機能を有するドレーンバッグ1は、バッグ本体2と、拡張機構3とを有している。
【0014】
バッグ本体2は、正面視矩形状の袋体であり、一対のシート11,11によって構成されている。更に詳細に説明すると、一対のシート11,11は、透明又は半透明等の透過性を有する合成樹脂から成り、大略矩形状に形成されている。一対のシート11,11は、略同一形状に形成されており、互いに重ね合わせた状態にて各々外周縁部分が略全周にわたって溶着されている。これにより、その中に貯留空間2aを有する袋状のバッグ本体2が形成される。また、バッグ本体2は、長手方向一端部に取付孔2bを有しており、取付孔2bに図示しないフック等の吊下げ器具を取り付けることによって吊下げ可能に構成されている。また、バッグ本体2の長手方向一端部には、間に取付孔2bを挟むようにして吸入口2c及び排出口2dが幅方向に離して形成されている。また、これら2つの口2c、2dには、2つの管12,13が斜めに挿入されており、一対のシート11は、各口2c,2dに管12,13を夫々挿入させた状態で溶着されている。2つの管12,13は、貯留空間2aとバッグ本体2の外部とを連通しており、それらのうち一方である吸引管12は血液等を貯留空間2aの方に吸引する際に用いられ、また他方である排出管13は、貯留空間2aの血液等を排出する際に用いられる。なお、血液等は、バッグ本体2に対して吸引及び排出する液体の一例であり、吸引及び排出する液体は血液等に限られるものではない。
【0015】
このように構成されているバッグ本体2には、吸引管12に図示しないカテーテルの基端部が繋がれる。使用する際には、カテーテルの先端は体外に排出される血液等に浸けられ、その状態でバッグ本体2は膨張させられて貯留空間2aが負圧にされる。これにより、血液等がカテーテル及び吸引管12を介して貯留空間2aに吸引され、血液等が貯留空間2aに集められる。このようにドレーンバッグ1は、バッグ本体2を膨張させることによって集液を行うことができるようになっており、バッグ本体2を膨張させるべくバッグ本体2内、即ち貯留空間2aには拡張機構3が収容されている。
【0016】
拡張機構3は、初期状態において図2に示すような収縮状態となってバッグ本体2内に収容されており、後述する拡張操作を行うことによって図3に示すような拡張状態となってバッグ本体2を膨張させる。このような機能を有する拡張機構3は、図2及び図3に示すように一対のプレート21,22とコイルばね23とを備えている。一対のプレート21,22のうち一方であるボトムプレート21は、図4に示すように大略矩形状に形成されており、中間部分31と両端側部分32,33とを有している。3つの部分31~33は、ボトムプレート21においてその長手方向に並んでおり、隣接する部分31~33の端部同士が折り曲げ部34L,34Rを介して一体的に繋がっている。折り曲げ部34L,34Rは、各部分31~33より薄く形成されており、両端側部分32,33は、中間部分31に対して折り曲げ部34L,34Rを夫々基点にしてボトムプレート21の厚み方向一方及び他方に折り曲げられる。また、両端側部分32,33は、中間部分31から長手方向に離れるにつれて幅広(即ち、長手方向及び厚み方向に直交する幅方向に大きくなる)に形成されており、正面視で逆テーパ状に形成されている。
【0017】
更に詳細に説明すると、両端側部分32のうちの一方である一端側部分32は、中間部分31の長手方向一方に配置されており、正面視で大略3つ又形状に形成されている。また、一端側部分32は、その先端側において3つ又の中央部32aと両側部32b、32cとの間に補強板32d,32eが架け渡されている。各補強板32d,32eは、一端側部分32の主面(即ち、ボトムプレート21の主面)に対して凹ませるように湾曲している。また、3つ又の中央部32aには、その先端部分に連結孔32fが形成されている。
【0018】
両端側部分32,33のうちの他方である他端側部分33は、中間部分31の長手方向他方に配置されており、先端部(即ち、中間部分31と反対側に位置する端部であり外側の端部)に一対のヒンジピン33a,33aが形成されている。一対のヒンジピン33a,33aは、大略円柱状に形成され、幅方向に離して配置されている。また、他端側部分33は、ヒンジピン33aに隣接する位置に貫通溝33bが形成されている。
【0019】
このように構成されるボトムプレート21は、初期状態においてフラットな状態になっており、その主面に他方のプレート22であるトッププレート22が重ねるように載せられている。また、トッププレート22の外縁形状は、ボトムプレート21の外縁形状と略一致しており、2つのプレート21,22は、重ね合わせた状態においてそれらの両端を互いに連結させている。以下では、このように構成されているトッププレート22について図5を参照しながら説明する。
【0020】
トッププレート22は、前述の通りボトムプレート21と略同形状、即ち大略矩形状に形成されており、中間部分35と両端側部分36,37とを有している。これら3つの部分35~37は、トッププレート22においてその長手方向に並べられており、隣接する部分35~37の端部同士が折り曲げ部38L,38Rを介在させて一体的に繋がっている。また、折り曲げ部38L,38Rは、各部分35~37より薄く形成されており、両端側部分36,37は、中間部分35に対して折り曲げ部38L,38Rを基点にしてトッププレート22の厚み方向一方及び他方に折り曲げられる。また、両端側部分36,37は、中間部分35から長手方向に離れるにつれて幅広(即ち、長手方向及び厚み方向に直交する幅方向に大きくなる)に形成されており、正面視で逆テーパ状に形成されている。
【0021】
更に詳細に説明すると、両端側部分36のうちの一方である一端側部分36は、中間部分35の長手方向他方に配置されており、ボトムプレート21の一端側部分32と略同一形状に形成されている。即ち、一端側部分36は、正面視で大略3つ又形状に形成され、その先端部分において3つ又の中央部分36aと両側部分36b,36cとの間に補強板36d,36eが架け渡されている。各補強板36d,36eは、一端側部分36の主面(即ち、トッププレート22の主面を構成する面)に対して凹ませるように湾曲している。
【0022】
このように形成されている補強板36d,36eは、図2に示すように拡張機構3がフラットな状態において前記ボトムプレート21の補強板32d,32eと対向するように形成されており、対向する補強板32d,32eとの間に挿通孔3a,3bを形成している。挿通孔3a,3bには、2つの管12,13が挿入できるように構成されている。また、3つ又の中央部分36aの先端部分には、ボトムプレート21の連結孔32fに対応する位置に連結孔36fが形成されており、連結孔36fは、図2に示すようにボトムプレート21に重ね合わされている状態において連結孔32fに臨んでいる。これら2つの連結孔32f,36fには図示しない結束バンドが挿通されている。各プレート21,22の一端側部分32,36の先端部は、結束バンドによって結束されて(即ち、連結されて)おり、一端側部分32,36は、結束バンドを基点にして厚み方向一方及び他方に互いに揺動できる。
【0023】
また、両端側部分36,37のうちの他方である他端側部分37は、中間部分31の長手方向他方に配置されており、その先端部に一対のヒンジフック37a,37aが形成されている。一対のヒンジフック37a,37aは、大略半円筒状に形成されており、幅方向に離して配置されている。より詳細に説明すると、一対のヒンジフック37a,37aは、ボトムプレート21における一対のヒンジピン33a,33aに対応させて配置され、それらの凹所37b,37bが厚み方向他方(即ち、補強板36d,36eが凹んでいる方向)に開口している。このように配置されている一対のヒンジフック37a,37aは、図2に示すように拡張機構3がフラットな状態において対応するヒンジピン33aに隣接する貫通溝33bに挿入され、また各凹所37b,37bには、対応するヒンジピン33aを回動可能に嵌っている。これにより、各プレート21,22の他端側部分33,37の先端部も連結され、また他端側部分33,37がヒンジピン33aを基点にして厚み方向一方及び他方に互いに揺動できる。
【0024】
このように構成されている一対のプレート21,22は、正面視で大略矩形状に形成されている中間部分31,35の主面同士を互いに対向させて重ね合わせられ、更に長手方向一端が結束バンドよって連結され、他端がヒンジピン33a,33a及びヒンジフック37a,37aによって連結されている。それ故、一対のプレート21,22は、一端側部分32,36の結束バンドにて連結されている部分、及び他端側部分33,37のヒンジピン33a及びヒンジフック37aにて連結されている部分を基点に開くことができる。これにより、近接する中間部分31,35を図3に示すように離すことができる。また、拡張機構3では、中間部分31,35を離してバッグ本体2を膨張させるべく、中間部分31,35の間にコイルばね23が介在している。
【0025】
コイルばね23は、いわゆる圧縮コイルばねであり、大略円錐台形状に形成されている。更に詳細に説明すると、コイルばね23は、例えば巻き数が3乃至7程度の圧縮コイルばねが用いられている。また、コイルばね23は、その一端部分が他端部分より大径に形成されており、一端部分側から他端部分へと進むにつれて縮径している。また、コイルばね23は、その巻線が正面(即ち、コイルばね23の軸線方向一方又は他方側)から見て互いに重ならないように巻かれており、一端及び他端を近接させるような荷重を作用させると圧縮されてフラットな状態にすることができる。このように構成されているコイルばね23は、前述の通り中間部分31,35の間に介在させられており、中間部分31,35は、それらの間にコイルばね23を介在させるべく以下のように構成されている。
【0026】
ボトムプレート21の中間部分31は、前述の通り正面視で大略矩形に形成され、長手方向の長さに対して幅方向の長さが幅広になっている。また、中間部分31の主面には、凹部31aが形成されており、凹部31aは、正面視で大略円形状に形成されている。また、凹部31aの中心は、中間部分31の中心(即ち、重心)と略一致しており、凹部31aの内径は、コイルばね23の一端部分の外径と略一致している。このような形状を有する凹部31aには、コイルばね23の一端部分が収められている。また、凹部31aの内周面には、半径方向内側に突出する突起片31cが形成されており、コイルばね23の巻線の基端を突起片31cに当ててコイルばね23の回転を防いでいる。
【0027】
また、トッププレート22の中間部分35は、前述の通り正面視で大略矩形に形成され、長手方向の長さに対して幅方向の長さが幅広になっている。また、中間部分35の主面には、凸部35aが形成されており、凸部35aは、正面視で大略円筒状に形成されている。また、凸部35aの中心は、中間部分35の中心(即ち、重心)と略一致しており、凸部35aの外径は、コイルばね23の他端部分の内径と略一致しており、コイルばね23の他端部分が凸部35aに外装されている。
【0028】
このようにコイルばね23は、一対のプレート21,22の中間部分31,35に取り付けられてそれらの間に介在しており、介在することによって一対のプレート21,22の中間部分31,35を互いに離すように付勢している。拡張機構3は、このような付勢力によって図3に示すように中間部分31,35を離間させ、バッグ本体2を膨張させている。他方、拡張機構3は、コイルばね23の付勢力に抗した荷重を作用させる(即ち、収縮操作する)ことによって図2に示すようなフラットな状態に戻すことができる。拡張機構3は、初期状態においてこのようなフラットな状態でバッグ本体2に収容されており、フラットな状態を維持すべくメインロック機構40及び一対のサブロック機構41,41が一対のプレート21,22に渡って形成されている。
【0029】
一対のメインロック機構40は、一対のプレート21,22において中間部分31,35の中心付近に設けられており、中間部分31,35が互いに離れないようにロックすることができる。即ち、一対のメインロック機構40は、ボトム側係合ブロック42及びトップ側係合ブロック43を有している。ボトム側係合ブロック42は、図4に示すようにボトムプレート21における中間部分31の凹部31aに形成されている。更に詳細に説明すると、凹部31aには、その中心に貫通孔31bが形成され、貫通孔31bは、正面視で大略矩形状に形成されている。また、ボトム側係合ブロック42は、貫通孔31bの長手方向他方側に貫通孔31bに隣接するように配置されており、側面視で大略鉤状に形成されている。即ち、ボトム側係合ブロック42は、凹部31aの底面から厚み方向一方に突出し、その先端部分42aが長手方向一方に延在するように曲がっている。また、先端部分42aの主面(図4において上側の面)は、長手方向一方に進むにつれて凹部31aの方に近づくように傾斜している。
【0030】
また、トップ側係合ブロック43は、ボトム側係合ブロック42に対応する位置、即ちトッププレート22の中間部分35であって凸部35a内に形成されている。更に詳細に説明すると、凸部35a内には、その中心に貫通孔35bが形成され、貫通孔35bは、正面視で大略矩形状に形成されている。また、トップ側係合ブロック43は、貫通孔35bの長手方向一方側において貫通孔35bに隣接するように配置されている。更に、トップ側係合ブロック43は、ボトム側係合ブロック42と同様に、中間部分35の主面から厚み方向に突出し、その先端部分43aが長手方向他方に延在するように曲がっている。また、先端部分43aの主面(図5においては上側の面)は、長手方向他方に進むにつれて凸部35aの方に近づくように傾斜している。更に、トップ側係合ブロック43は、トッププレート22の貫通孔35bより幅広に形成されており、その幅方向両端部分43b,43cが凸部35aと一体的に形成されている。
【0031】
このように形成される2つのブロック42,43は、各々の先端部分42a,43a同士を係合させることによって、コイルばね23の付勢力に抗して一対のプレート21,22をロックすることができる。また、ロックする際、2つのブロック42,43の先端部分42a,43aの各々は、相手側のブロック43,42の足元にある貫通孔35b,31bに入るようになっている。これにより、一対のプレート21,22では、フラットな状態において中間部分31,35をより近づけて配置することが可能になっている。他方、中間部分31は、凹部31aによって薄肉となっており、更に貫通孔31bが形成されることによって貫通孔31b周りが更に変形しやすくなっている。そこで、貫通孔31bには、その周辺の剛性を高めるべくブリッジ44が架け渡されている。ブリッジ44は、貫通孔31bにおいてその幅方向中央を横切るように長手方向に延在している、即ち貫通孔31bの内周面において長手方向一方の面から他方の面に延在している。また、ブリッジ44は、貫通孔31bから厚み方向一方にも突き出ている、即ち凹部31aの底面から厚み方向に突出しており、長手方向他方側の端部がボトム側係合ブロック42の先端部分42aと一体的に構成されている。このように形成されているブリッジ44は、中間部分31における貫通孔31b周りの剛性強度を向上させ、その部分が変形することを抑制している。また、ブリッジ44は、その上端が凹部31aより高く位置しており、凹部31aから突出していない場合より剛性を更に向上させることができる。
【0032】
他方、前述の通り、貫通孔31bには、トップ側係合ブロック43が形成されており、そこに位置するブリッジ44に対応させて収容凹部45が形成されている。更に詳細に説明すると、収容凹部45は、トップ側係合ブロック43の幅方向中央部分に形成されており、ブリッジ44を入れられるようになっている。これにより、中間部分31,35を挟んで拡張機構3をフラットな状態にするべく、トップ側係合ブロック43を貫通孔31bに入れ込める。また、ボトム側係合ブロック42もトッププレート22の貫通孔35bに対応させて形成されており、拡張機構3をフラットな状態にすべく貫通孔35bに入れ込めるようになっている。
【0033】
なお、メインロック機構40では、収容凹部45が底側に進むにつれて先細りのテーパ形状になっており、ブリッジ44もまた収容凹部45に対応させて先端に向かってテーパ状に形成されている。それ故、トップ側係合ブロック43を貫通孔31bに入れ込んだ際に、収容凹部45がブリッジ44によって幅方向の位置決めされる。即ち、一対のプレート21,22の幅方向相対位置が位置決めされ、幅方向にずれることを抑制している。また、一対のプレート21,22には、前述の通り、メインロック機構40の他に一対のサブロック機構41,41が形成されている。
【0034】
一対のサブロック機構41,41は、一対のプレート21,22において幅方向に離し、且つ幅方向においてそれらの間にメインロック機構40が位置するように中間部分31,35に設けられている。即ち、3つのロック機構40,41,41は、中間部分31,35において幅方向に並ぶように配置され、一対のサブロック機構41,41がメインロック機構40に対して鏡面対称に配置されている。このように配置されている一対のサブロック機構41,41は、メインロック機構40と同様に、中間部分31,35が互いに離れないようにロックすることができる。更に詳細に説明すると、一対のサブロック機構41,41の各々は、ボトム側係合片51とトップ側係合片52とを有している。一対のボトム側係合片51は、中間部分31の主面であって凹部31aの半径方向外側に夫々形成されており、それらの間にボトム側係合ブロック42が位置している。また、一対のボトム側係合片51,51は、ボトム側係合ブロック42と幅方向に並べて配置されており、側面視でボトム側係合ブロック42と略重なるように配置されている。このように配置されている一対のボトム側係合片51,51は、ボトム側係合ブロック42より幅が狭く形成されているが、側面視でボトム側係合ブロック42の先端部分42aと同じような形状にて形成されている。即ち、一対のボトム側係合片51,51は、中間部分31の主面から厚み方向に突出し且つ長手方向一方に延在するように形成されている。また、一対の係合片51,51の主面(図4において上側の面)は、長手方向一方に進むにつれて中間部分31の主面の方に近づくように傾斜している。更に、一対の係合片51,51は、側面視でボトム側係合ブロック42の先端部分42aより長手方向に短尺に形成されており、長手方向の先端がボトム側係合ブロック42のそれより長手方向他方側に位置している。
【0035】
このように形成される一対のボトム側係合片51,51は、長手方向一方に延在しており、その先端部分51a,51aの足元には、貫通溝31d,31dが夫々形成されている。即ち、一対のボトム側係合片51,51は、足元にある貫通溝31d,31dの長手方向他方側の隣接する位置に設けられている。また、貫通溝31d,31dは、長手方向に縦長に形成されており、その長手方向一方側の端が貫通孔31bのそれと略同じ位置に位置している。また、トッププレート22には、このように形成される一対のボトム側係合片51,51に対応する位置に一対のトップ側係合片52,52が形成されている。
【0036】
一対のトップ側係合片52,52は、一対のボトム側係合片51,51の各々に対応させて中間部分35の主面であって幅方向の外周縁部分に形成され、それらの間にトップ側係合ブロック43が位置している。また、一対のトップ側係合片52,52は、トップ側係合ブロック43と幅方向に並べて配置されており、側面視でトップ側係合ブロック43と略重なるように配置されている。即ち、一対のトップ側係合片52,52は、それらの間にトップ側係合ブロック43が位置している。また、一対のトップ側係合片52,52は、一対のボトム側係合片51,51と同様にトップ側係合ブロック43より幅が狭く、また側面視で大略鉤状に形成されている。即ち、一対のトップ側係合片52,52は、中間部分31の主面から厚み方向に突出し、その先端部分52a,52aが長手方向他方に延在するように曲がっている。また、一対のトップ側係合片52,52の主面(図5において上側の面)は、長手方向他方に進むにつれて中間部分35の主面に近づくように傾斜している。更に、先端部分52a,52aは、側面視でトップ側係合ブロック43の先端部分43aより長手方向に短尺に形成されており、長手方向の先端がトップ側係合ブロック43のそれより長手方向一方側に位置している。
【0037】
このように形成される一対のトップ側係合片52,52の足元には、貫通溝35c,35cが夫々形成されており、一対の係合片52,52は、足元にある貫通溝35c,35cの長手方向一方側の隣接する位置に設けられている。また、貫通溝35c,35cは、長手方向に縦長に形成されており、その長手方向他方側の端が貫通孔35bのそれと略同じ位置に位置している。
【0038】
このように形成される一対のトップ側係合片52,52は、トップ側係合ブロック43と同じくボトムプレート21の貫通溝31d,31dに夫々対応させて形成されている。即ち、一対のトップ側係合片52,52は、中間部分31,35を指で押さえて拡張機構3をフラットな状態にするべく対応する貫通溝31d,31dに夫々入れる。また、一対のボトム側係合片51,51もトッププレート22の貫通溝35c,35cに夫々対応させて形成されており、拡張機構3をフラットな状態にすべく貫通溝35c,35cに夫々入れられるようになっている。
【0039】
このように構成される拡張機構3では、前述の通り中間部分31,35を両手の指等で挟持し、コイルばね23の付勢力に抗した力で押し付ける(即ち、収縮操作する)ことによって中間部分31,35を近づけることができる。近づけることによって、やがて各係合ブロック42,43の先端部分42a,43aの主面同士が当接し、また対応する係合片51,51,52,52の主面同士が当接する。各々の主面は傾斜しており、当接した状態で中間部分31,35を更に押し込むことによって中間部分31,35が先端部分42a,43a同士、及び対応する係合片51,51,52,52同士を離隔させるようにスライドする。更に押し込むことによって、やがて先端部分42a,43aが相手の先端部分43a,42aを越え、対応する貫通孔35b,31bに入る。係合片51,51,52,52の各々もまた、対応する係合片52,52,51,51を越え、対応する貫通孔35b,35b,31b,31bに入る。これにより、2つの先端部分42a,43aの裏面(主面の反対側の面)同士が厚み方向に互いに対向し、また対応する係合片51,51,52,52裏面(主面の反対側の面)同士が厚み方向に対向する。この状態において挟持していた指等を放すと、2つの係合ブロック42,43の先端部分42a,43a、及び対応する係合片51,51,52,52同士が厚み方向において近接するように相対変位し、そして係合する。これによって、一対のプレート21,22、より詳しくはそれらの中間部分31,35がメインロック機構40及び一対のサブロック機構41,41によってロックされる(図6(a)及び(b)参照)。
【0040】
また、メインロック機構40及び一対のサブロック機構41,41に関して、一対のプレート21,22のロックを解除する際には、以下のような手順で行われる。即ち、図6(a)及び(b)に示すような状態にある拡張機構3に関して、拡張機構3の両端側部分3c,3dを厚み方向であって互いに異なる方向に折り曲げる。即ち、拡張機構3の一端側部分3cは、一対のプレート21,22の一端側部分32,36によって構成されており、その一端側部分3cを折り曲げ部34L及び38Lを基点にしてボトムプレート21側に折り曲げられる。また、拡張機構3の他端側部分3dは、一対のプレート21,22の他端側部分33,37によって構成されており、その他端側部分3dを折り曲げ部34R,38Rを基点にしてトッププレート22側に折り曲げる。各プレート21,22において各々の基点の位置が厚み方向にズレているので、折り曲げるだけでボトムプレート21が長手方向他方側にスライドし、且つトッププレート22が長手方向一方側にスライドする。即ち、2つの係合ブロック42,43の先端部分42a,43a、及び対応する係合片51,51,52,52同士が離れる方向に移動する。
【0041】
図7(a)及び(b)に示すような状態まで折り曲げていくと、やがて対向していた2つの係合ブロック42,43が長手方向に離れて対向しなくなる。対応する係合片51,51,52,52同士もまた、同様に離れて対向しなくなる。これにより、一対のプレート21,22のロックが解除される。そうすると、一対のプレート21,21の中間部分31,35がコイルばね23によって離される。拡張機構3では、このような手順により一対のプレート21,22のロックを解除させることができ、解除させることによって拡張機構3を拡張することができる。また、拡張する拡張機構3は、コイルばね23が略伸び切った状態である全開状態まで拡張し、そこで拡張が止まるようになっている。
【0042】
このような機能を有する拡張機構3は、フラットな状態にてバッグ本体2の中に収容されている。更に詳細に説明すると、拡張機構3の長手方向の一端側部分3cには挿通孔3a,3bが形成されており、拡張機構3は、挿通孔3a,3bを吸入口2c及び排出口2dに夫々向けてバッグ本体2内に収容されている。また、挿通孔3a,3bには、管12,13が夫々挿入されており、管12,13は、補強板32d,32e,36e,36dより更に奥側まで延在している。それ故、ドレーンバッグ1では、吸引管12を介して導かれる液体をバッグ本体2内に取り入れやすく且つバッグ本体2内の液体を排出管13によって排出しやすくなっている。
【0043】
なお、拡張機構3では、湾曲する補強板32d,32e,36e,36dによって挿通孔3a,3bが形成されている。それ故、ロックを解除して拡張機構3を拡張すべく一対のプレート21,22の一端側部分32,36が結束バンドを基点にして厚み方向一方及び他方に揺動する際であっても、挿通孔3a,3bは閉じられることがない。それ故、拡張時において2つの管12,13が補強板32d,32e,36e,36dに挟まれて液体が流れにくくなることを防いでいる。
【0044】
このように構成されているドレーンバッグ1は、使用前において拡張機構3がフラットな状態に維持され、また2つの管12,13が図示しない栓によって塞がれている。そして、術中等において体内から体外へと排出された血液等を以下のようにして吸引し、また排出する。即ち、使用者は、排出管13のキャップをそのままの状態にして吸入管12から栓だけを外す。次に、吸入管12にカテーテルを繋ぎ、カテーテルの先端を排出された血液等のたまり場に浸す。更に、両手で拡張機構3の両端側部分3c,3dをバッグ本体2の上から夫々掴み、一端側部分3cをボトムプレート21側に、他端側部分3dをトッププレート22側に折り曲げる。そうすることで、一対のプレート21,22の中間部分31,35が長手方向に互いに相対変位し、係合ブロック42,43及び係合片51,51,52,52の係合が解除され、即ち一対のプレート21,22のロックが解除される。解除されることで拡張機構3が拡張し、それに伴ってバッグ本体2が膨張して貯留空間2aの圧力が負圧(即ち、大気圧以下)になる。これにより、カテーテルの先端から血液等が吸引され、その血液等が貯留空間2aに導かれそこに貯留される。血液等は、拡張機構3が全開状態になるまで吸引され、全開状態となって拡張機構3が止まるとドレーンバッグ1による吸引が一旦終了となる。
【0045】
他方、貯留空間2aに吸引された血液等を排出する際には、カテーテルの先端が血液等のたまり場から離される。その後、排出管13の図示しない栓を外し、ドレーンバッグ1を傾けて排出管13から廃液容器等に排出される。そして、吸引を再び行うべく、一対のプレート21,22の中間部分31,35を両手の指等で挟み、コイルばね23の付勢力に抗して中間部分31,35を互いに近づけるように押し込む。そして、拡張機構3がフラットな状態になるまで押し込まれてその後両手の指等を離すことによって、3つのロック機構40,41,41によって一対のプレート21,22がロックされる。この状態から再度ロックを解除することによって、再度、ドレーンバッグ1に血液等を吸引させることができる。
【0046】
このように構成されているドレーンバッグ1では、使用前において一対のプレート21,22が互いに離れないように、コイルばね23の付勢力に抗して3つのロック機構40,41,41が一対のプレート21,22をロックしている。付勢力によって受ける荷重を3つのロック機構40,41,41に分散させることができる。これにより、メインロック機構40がコイルばね23から受ける付勢力を一対のサブロック機構41,41に分散させることができる。即ち、コイルばね23の付勢力に伴ってメインロック機構40に作用する荷重を低減することができる。これにより、メインロック機構40の周り、具体的にはボトム側係合ブロック42の周りが荷重により変形することを抑制することができる。それ故、ボトム側係合ブロック42とトップ側係合ブロック43との係合が解除されて拡張機構3が不所望に作動する、即ちドレーンバッグ1が不所望に作動することを抑制することができる。
【0047】
これに関して本実施形態では、3つのロック機構40,41,41が拡張機構3の長手方向の略中央に幅方向に並べて配置されているので、ロック時においてボトムプレート21に対してトッププレート22が側面視で大きく傾いて配置されることを抑制することができる。即ち、ロック時においてボトムプレート21に対してトッププレート22が側面視で大きく傾いてサブロック機構41の係合が解除されることを抑制することができる。これにより、解除されることによって誤って拡張機構3が作動する(即ち、拡張する)ことを抑制することができる。なお、拡張機構3における上記の機能は、前述のようにコイルばね23の巻き数が少ない場合に特に好ましいだけであり、巻き数が多いコイルばね23を用いた場合にも同様に達成することができる。
【0048】
また、ドレーンバッグ1では、メインロック機構40の係合ブロック42,43の先端部分42a,43aに対してサブロック機構41の係合片51,52の方が短尺に形成されている。それ故、拡張機構3の両端側部分3c,3dを折り曲げてロックを解除する際、メインロック機構40の係合よりサブロック機構41の係合の方が先に解除されるようになっている。即ち、メインロック機構40の係合が解除され、一対のサブロック機構41だけが係合している状態となることを抑制することができる。というのも、メインロック機構40の係合ブロック42,43が、サブロック機構41の係合片51,52に比べて幅広に形成されており、メインロック機構40はサブロック機構41に比べて強固な係合を実現することができる。それ故、仮に一対のサブロック機構41が先に外れた場合でもメインロック機構40によってロックされた状態を長時間維持することができる。
【0049】
また、ドレーンバッグ1では、貫通孔31bにおいてブリッジ44が架け渡され、更にブリッジ44が貫通孔31bからトッププレート22に向かって突出している。これにより、変形しやすかった中間部分31の貫通孔31b周りの剛性を向上させることができ、貫通孔31b周りの変形を抑えることができる。即ち、従来の外科用吸引装置の場合、凹所付近の剛性が低いため、長期保管されると凹所付近が徐々に変形してラッチフックが上を向くことになる。そうすると、ラッチフック同士の係合が解除されやすくなり、不所望にロックが解除されることがある。これに対して、ドレーンバッグ1では、ブリッジ44によって中間部分31の貫通孔31b周りの変形を抑えることができるので、ボトム側係合ブロック42の先端部分42aが上を向くことを抑制することができる。それ故、ドレーンバッグ1が長期保管された場合であっても、不所望にロックが解除されることを抑制することができる。それ故、ドレーンバッグ1は、従来の外科用吸引装置より使用期間を長くすることができる。
【0050】
また、ドレーンバッグ1では、前述の通りコイルばね23の付勢力に偏りがあるので、両手の指等で中間部分31,35を挟んで押し込む際、対応する係合片51,52がずれることがある。これに関して、拡張機構3では、ブリッジ44及び収容凹部45を互いに対応させてテーパ状に形成されており、それらを嵌め合うことで幅方向の位置決めを行うことができるようになっている。それ故、両手の指等で中間部分31,35を挟んで押し込む際に対応する係合片51,52がずれることを抑制することができ、押し込んだ際に一対のサブロック機構41,41を確実に係合状態にすることができる。
【0051】
また、ドレーンバッグ1では、ブリッジ44を厚み方向に伸ばすことによって伸ばしていない場合に比べてわずかであるが貯留空間2aに貯留できる血液等の量が減少する。他方、トップ側係合ブロック43にブリッジ44に対応する収容凹部45を形成することで貯留空間2aに貯留できる血液等の量を増加させることができる。これらによって増減する貯留量は略等しく、ブリッジ44を厚み方向に伸ばしても収容凹部45を形成することによってそれらの有無による貯留量の増減を略ゼロにすることができる。それ故、ドレーンバッグ1では、ブリッジ44を厚み方向に伸ばしていないものに対してバッグ本体2に貯留可能な貯留量を変えることなく、ボトムプレート21の中間部分31の剛性を向上させることができる。
【0052】
その他、本実施形態のドレーンバッグ1では、拡張機構3においてボトムプレート21の中間部分31の四隅に厚み方向に凹む肉抜き部31eが夫々形成されている。このように肉抜き部31eを形成することに拡張機構3の重量を軽減すると共に貯留空間2aに収容可能な血液等の量の増加させることができる。
【0053】
<その他の実施形態について>
本実施形態のドレーンバッグ1では、メインロック機構40の長手方向両側にサブロック機構41,41が夫々形成されているが、必ずしもサブロック機構41,41が形成されていなくてもよい。即ち、図8に示すように拡張機構3Aがメインロック機構40だけを有するような構成であってもよい。この場合であっても、ブリッジ44によって貫通孔31b周りの剛性が高められているので、貫通孔31b周りの変形を抑えることができる。即ち、ボトム側係合ブロック42の周りが荷重により変形してボトム側係合ブロック42とトップ側係合ブロック43との係合が解除されて、拡張機構3が不所望の作動する、即ちドレーンバッグ1が不所望の作動することを抑制することができる。また、メインロック機構40は複数設けられていてもよい。
【0054】
また、本実施形態のドレーンバッグ1では、ブリッジ44が貫通孔31bからトッププレート22の方へと突き出ているが、必ずしも突き出ている必要はない。即ち、ブリッジ44が貫通孔31bに収まっていてもよい。また、必ずしもブリッジ44は、必要ではなくブリッジ44がなくてもよい。何れの場合でも、複数のロック機構40、41,41によって付勢力を分散させ、係合ブロック42,43に作用する荷重を低減して貫通孔31bの周りの変形を抑えることができる。また、本実施形態では、ブリッジ44の突き出た部分が貫通孔31bの長手方向一方側の周面から他方側の周面にまで略全域に延びているが、必ずしもそのように形成されている必要はない。即ち、ブリッジ44の突き出た部分は、ボトム側係合ブロック42から貫通孔31bの中間付近までしか延在していなくてもよく、ボトム側係合ブロック42側だけ突き出ていてもよい。なお、貫通孔31bの長手方向一方側の周面から他方側の周面にまで略全域に延びているほうが、伸びていない場合よりも、貫通孔31bの周りの変形を抑えることができる。
【0055】
また、ブリッジ44は、厚みを変えるだけでなく幅方向の大きさ、即ち幅を増大させてもよく、そうすることで貫通孔31bの周りの変形を更に抑えることができる。また、貫通孔31bに架け渡される構成は、ブリッジ44に限定されず、ブロック42と貫通孔31bを介してそれに対向するプレートの内縁部分と間を結合させ、且つロック時にブロック42に対してかかるコイルばねの付勢力を緩和するように構成されていればよい。
【0056】
また、本実施形態のドレーンバッグ1では、ボトム側係合片51,51及びトップ側係合片52,52の何れの長手方向の長さが2つの係合ブロック42,43のそれよりも短く形成されているが、必ずしもそのように構成する必要はない。即ち、ボトム側係合片51,51だけが短く形成されてもよく、またトップ側係合片52,52だけが短く形成されてもよい。また、互いに対応しないボトム側係合片51及びトップ側係合片52が夫々短く形成されてもよい。更に、ボトム側係合片51,51、トップ側係合片52,52、及び2つの係合ブロック42,43の全てにおいて長手方向の長さが同じであってもよい。
【0057】
本実施形態のドレーンバッグ1では、バッグ本体2の外周縁形状が正面視大略矩形状であるが、大略円形状又は大略多角形状であってもよい。また、拡張機構3の外周縁形状もまた同様であり、必ずしも正面視大略矩形状である必要はなく大略円形状又は大略多角形状であってもよいまた、バッグ本体2は、その外周縁部を略全周に渡って溶着することによって製造するようになっているが、必ずしもこのような構造である必要なない。即ち、大略円筒状の部材において、両側の開口端を塞ぐようにしてバッグ本体2を形成してもよい。
【0058】
また、以下のような形態であってもよい。即ち、別の実施形態としては、ロック機構40の係合力を強固なものとするために、一対のプレート21,22の少なくとも一方に金属製の補強部材を設けてもよい。例えば、金属製プレートは、ボトムプレート21又はトッププレート22の少なくとも一方に固定される。また、金属プレートには、係合ブロック42,43の対応する部分に孔が開いており、その孔から係合ブロック42,43が突出るようになっている。更に金属プレートの孔の周縁部には、金属ブロックが形成されている。金属ブロックは、係合ブロック42,43の形状に沿うように延びており、孔から突き出た係合ブロック42,43に被せることができるようになっている。これにより、係合時の荷重は、係合ブロック42,43だけでなく金属プレートを介して一対のプレート21,22に伝わることになり、係合ブロック42,43周りが局所的に変形することを抑制することができる。即ち、プレート21,22の係合ブロック42,43周りが局所的に変形して係合が不所望に解除されること抑制することができる。また、他の実施形態としては、係合ブロック42,43に金属を埋め込んでもよい。また、本実施形態のドレーンバッグ1では、係合ブロック42,43がプレート21,22と一体で設けられているが、必ずしもそのように構成されている必要はない。例えば、係合ブロック42,43は、プレート21,22と別の材質(金属やプラスチック等)で構成されて、プレート21,22に固定されていてもよい。なお、同一の材料であってもよい。
【0059】
また、本実施形態のドレーンバッグ1では、ボトムプレート21及びトッププレート22の各々が一枚で構成されているが、ボトムプレート21及びトッププレート22の少なくとも一方が複数部材で構成され、複数部材の各々がボトムプレート21及びトッププレート22の他方に対して独立して解除可能に設けられていてもよい。この場合、前記複数部材の数に応じた個数のコイルばね及びメインロック機構が必要となるが、サブロック機構は必須の構成ではない。
【符号の説明】
【0060】
1,1A ドレーンバッグ
2 バッグ本体
2c 吸入口
3,3A 拡張機構
21 ボトムプレート(他方のプレート)
22 トッププレート(一方のプレート)
23 コイルばね
31 中間部分
31b 貫通孔
32 一端側部分
33 他端側部分
35 中間部分
36 一端側部分
37 他端側部分
40 メインロック機構
41 サブロック機構
42 ボトム側係合ブロック(メインロック機構の一方の係合部)
42a 先端部分
43 トップ側係合ブロック(メインロック機構の他方の係合部)
43a 先端部分
44 ブリッジ
45 収容凹部
51 ボトム側係合片(サブロック機構の一方の係合部)
51a 先端部分
52 トップ側係合片(サブロック機構の他方の係合部)
52a 先端部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8