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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】リキッドインキ組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/102 20140101AFI20220107BHJP
   C09D 11/03 20140101ALI20220107BHJP
   C09D 11/08 20060101ALI20220107BHJP
   B41M 1/30 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C09D11/102
C09D11/03
C09D11/08
B41M1/30 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017227805
(22)【出願日】2017-11-28
(65)【公開番号】P2019099586
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2020-09-24
(73)【特許権者】
【識別番号】310000244
【氏名又は名称】DICグラフィックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(72)【発明者】
【氏名】寺本 秀康
(72)【発明者】
【氏名】寺川 雅之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 敏生
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-094343(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0157020(US,A1)
【文献】特開2002-129082(JP,A)
【文献】特開昭62-066991(JP,A)
【文献】特許第6255123(JP,B1)
【文献】特開2000-265103(JP,A)
【文献】特開平04-283274(JP,A)
【文献】特開昭55-018439(JP,A)
【文献】特開2016-029122(JP,A)
【文献】特開2005-171167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
B41M 1/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、
有機溶剤(C)及び可塑剤(D)を含有し、前記熱可塑性ポリアミド樹脂(A)の配合量がインキ組成物中の全固形分に対して10~70質量%であり、
更に、キレート架橋剤(E)を含有
する事を特徴とするリキッドインキ組成物。
【請求項2】
前記可塑剤(D)が、クエン酸エステル系可塑剤、スルホンアミド系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油、及び脂肪油からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であり、組成物全量の0.01~10.0質量%含有する請求項1に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項3】
更に、着色剤(F)を含有する請求項1又は2に記載のリキッドインキ組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まない請求項1~の何れか1つに記載のリキッドインキ組成物。
【請求項5】
請求項1~の何れか1つに記載のリキッドインキを印刷してなる印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に軟包装材料の表刷り印刷に使用されるリキッドインキ組成物に関するもので、グラビアもしくはフレキソ印刷方式の何れにも使用可能とするものであり、加えてそのリキッドインキを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
主にグラビア印刷方式、もしくはフレキソ印刷方式にて、軟包装材料の表刷印刷に使用されるリキッドインキ組成物は、ポリアミド樹脂が主成分として使用されている。そして近年では、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤の使用が制限されつつある。これに伴い脱トルエン型のリキッドインキには、印刷適性の観点から、溶剤として芳香族、ケトン系溶剤の代わりに酢酸エチルや酢酸プロピルなどの酢酸エステル類、イソプロピルアルコールやノルマルプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルシクロヘキサンなどの非芳香族炭化水素系溶剤又はそれらの混合溶剤が使用される傾向にある。
【0003】
しかし、非芳香族溶剤を使用する場合は、表刷りインキに必要とされる耐摩擦性、耐油性、耐熱性、印刷適性、及び粘度安定性が従来のトルエン系インキよりも劣っており、これらの改善が課題となっている。
一方で、硝化綿/ポリアミド樹脂、もしくは硝化綿/ウレタン樹脂の混合樹脂系を使用したリキッドインキや、前記ポリアミド樹脂がダイマー酸とジアミンの反応による熱可塑性ポリアミド樹脂を使用したインキが開示されており、ダイマー酸の反応原料としてトール油脂肪酸など植物性脂肪酸もしくは合成油脂肪酸が使用されている(例えば、特許文献1及び2)。
しかし、前記ダイマー酸の反応原料として、各種植物性脂肪酸の記載はあるものの、米ぬか脂肪酸を使用することの優位性の記載はない。本発明のリキッドインキ組成物は、ノントルエン系の溶剤組成であっても、耐摩擦性、耐油性、耐熱性、印刷適性、及び粘度安定性を充分保持したインキ組成物を実現するものであり、また、米ぬか脂肪酸を原料に使用する事は、カーボンオフセットや化石資源の節約の観点からもその活用が望まれる。
【0004】
【文献】特開2016-029122号公報
【文献】特開2005-171167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、耐摩擦性、耐油性、耐熱性、印刷適性、及び粘度安定性に優れるグラビアインキ、フレキソインキ向けリキッドインキ組成物を提供することにある。また、該インキ組成物を用いた印刷物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のリキッドインキ組成物は、前記の課題を解決すべく鋭意検討の結果、特定の植物性脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂、繊維素系樹脂、有機溶剤、及び可塑剤を配合する事で、耐摩擦性、耐油性、耐熱性、印刷適性、及び粘度安定性が向上することを見出し、発明を完成させた。
【0007】
すなわち本発明は、米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、有機溶剤(C)及び可塑剤(D)を含有する事を特徴とするリキッドインキ組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、前記可塑剤(D)が、クエン酸エステル系可塑剤、スルホンアミド系可塑剤、燐酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油、及び脂肪油からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であり、組成物全量の0.01~10.0質量%含有するリキッドインキ組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、更にキレート架橋剤(E)を含有するリキッドインキ組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、更に着色剤(F)を含有するリキッドインキ組成物に関する。
【0011】
また、本発明は、前記有機溶剤(C)が芳香族有機溶剤及び/又はケトン系溶剤を含まないリキッドインキ組成物に関する。
【0012】
また、本発明は、該リキッドインキ組成物を印刷してなる印刷物に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐摩擦性、耐油性、耐熱性、印刷適性、及び粘度安定性に優れるグラビアインキ、フレキソインキ向けリキッドインキ組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のリキッドインキ組成物は、米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維素系樹脂(B)、有機溶剤(C)及び可塑剤(D)を含有することを特徴とするものである。
【0015】
本発明のリキッドインキ組成物は、米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)を必須とする。
ポリアミド樹脂は、重合脂肪酸、各種植物性脂肪酸などのポリカルボン酸とポリアミンの重縮合物が一般的である。前記重合脂肪酸としては、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が挙げられる。また各種植物性脂肪酸としては、トール油脂肪酸、パーム油脂肪酸、やし油脂肪酸、大豆油脂肪酸、カカオ脂肪酸、及びこれら天然油脂の混合脂肪酸が挙げられる中で、本発明は米ぬか脂肪酸を反応原料とするものである。
【0016】
前記ポリアミンには、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミンンが挙げられ、脂肪族ポリアミンとしてはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサン、ピペラジン、及びN-アミノエチルピペラジン等が、脂環式ポリアミンとしては、イソフォロジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン等が、芳香族ポリアミンとしてはメタキシレンジアミン等が挙げられる。中でも、溶解性の面から、脂肪族ジアミンあるいは、脂環式ジアミンを使用する事が好ましい。
【0017】
米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)は、本発明のリキッドインキ組成物の高い光沢、耐ブロッキング性を保持する観点から、数平均分子量1000~30,000 酸価15以下、アミン価5以下、軟化点90~150℃、数平均分子量1000~30,000のものが好ましく、より好ましくは、軟化点100~130℃、数平均分子量1000~20,000である。
数平均分子量が1000よりも小さい場合、耐ブロッキング性及び耐熱性が低下する傾向にあり、30,000を超えると低温撓み性が低下する傾向にある。
米ぬか脂肪酸を反応原料する熱可塑性ポリアミド樹脂(A)の配合量は、インキ組成物中の全固形分に対して10~70質量%が好ましい。
【0018】
また、本発明のリキッドインキ組成物は、繊維素系樹脂(B)を必須とする。 前記繊維素系樹脂(B)の代表的なものとしては、硝化綿を挙げる事ができる。硝化綿は顔料の分散性を向上させると共に、後述する金属キレート化合物と反応して印刷インキ塗膜の耐熱性、耐油性を向上させる事ができる。本発明のリキッドインキ組成物に使用する硝化綿としては、窒素含有量が10~13質量%、平均重合度30~500が好ましく、より好ましくは窒素含有量が10~13質量%、平均重合度45~290である。硝化綿の配合量は、インキ組成物中の全固形分に対して1~50質量%が好ましい。
【0019】
本発明のリキッドインキ組成物に使用し得る有機溶剤(C)としては、特に制限はないが、たとえばトルエン、キシレン、ソルベッソ#100、ソルベッソ#150等の芳香族炭化水素系、ヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素系、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルプロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、ギ酸エチル、プロピオン酸ブチル等のエステル系の各種有機溶剤が挙げられる。また水混和性有機溶剤としてメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、シクロハキサノン等のケトン系、エチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、エチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、モノブチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、ジエチレングリコール(モノ,ジ)エチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコール(モノ,ジ)メチルエーテル等のグリコールエーテル系の各種有機溶剤が挙げられる。尚、印刷時の作業衛生性と包装材料の有害性の両面から、トルエン等の芳香族溶剤やメチルエチルケトン等のケトン系溶剤を使用しない事がより好ましい。中でもポリアミド樹脂、硝化綿への溶解性の観点から、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/酢酸ノルマルプロピル/メチルシクロヘキサンの混合液がより好ましい。また、乾燥調整のために組成物全量の10質量%未満であればグリコールエーテル類を添加する事も出来る。
【0020】
更に、本発明のリキッドインキ組成物は、組成物の流動性、接着性、耐摩擦性を高めるべく可塑剤(D)を必須とする。ポリアミド樹脂といった縮重合系高分子の場合、可塑剤(D)を添加する事により、増粘が抑制でき、印刷後のインキ乾燥皮膜の柔軟性及び可とう性が保持できる。
可塑剤(D)としては、ひまし油の様な脂肪油、ジオクチルフタレートの様なフタル酸エステル系、リン酸エステル系、アジピン酸エステル系やセバシン酸エステル系の様な脂肪酸エステル系、ポリエステル系、エポキシ化植物油の様なエポキシ系、アセチルクエン酸トリブチルの様なクエン酸エステル、N-ブチルベンゼンスルフォンアミドやN-エチルトルエンスルフォンアミドの様なスルホン酸アミド系が挙げられる。中でも、クエン酸エステル、エポキシ化植物油、リン酸エステル系及びスルホン酸アミド系が好ましい。
尚、可塑剤(D)の配合量は、組成物全量の0.01~10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.1~5.0質量%であり、0.5~3.0質量%であれば更に好ましい。これら可塑剤(D)は其々単独しても良いし、複数組み合わせて使用してもよい。
【0021】
更に、本発明のリキッドインキ組成物は、キレート架橋剤(E)を添加してもよい。キレート架橋剤(E)は凝集力向上を目的とするものでキレートタイプの金属有機化合物が好ましい。金属キレート化合物としては有機チタン系、有機ジルコニウム系、有機アルミニウム系を使用することが出来る。キレートタイプの金属有機化合物を用いれば、加温せずとも架橋反応が完結する一方で、常温での加水分解も起こり難く安定した架橋反応が得られ、特に分子中にアミンが存在する場合にその効果は大である。
チタンキレートは、1分子中にTi-O-C結合を保有するものであり、このアルコキシ基を有する事によって樹脂の分子間又は分子内架橋結合を強固にする役割を持つ。チタンキレートとしては、チタンアルコキシド、チタンアシレート等が挙げられ。前記チタンアルコキシドとしては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2-エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートの他、トリエタノールアミンチタネート、チタニウムアセチルアセテート、チタニウムエチルアセトアセテート、チタニウムラクテート、オクチレングリコールチタネート、チタンテトラアセチルアセテート、リン酸チタン化合物等を挙げる事ができる。有機チタン系の中でも、リン酸チタン化合物及びチタニウムアセチルアセテートが好ましい。
尚、キレート架橋剤(E)の配合量は、組成物全量の0.1~5.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5~3.0質量%である。
【0022】
発明のリキッドインキ組成物で用いる着色剤(F)としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニン、透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I.Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。
【0023】
例えば、ピグメントC.I.ナンバーとして、Black7、Y12、Y13、Y14、Y17、Y83、Y74、Y-154、Y180、R57:1、R122、R48:1、R48:2、R48:3、R53:1、R146、R-150、R-166、R170、R184、R185、V19、V23、V32、O13、O16、O34、G7、G36、B15:3、B15:4、W6等が挙げられる。
【0024】
無機顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、ベンガラ、アルミニウム、マイカ(雲母)などが挙げられる。白インキには酸化チタン、墨インキにはカーボンブラック、金、銀インキにはアルミニウム、パールインキにはマイカ(雲母)を使用することがコストや着色力の点から好ましい。アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングまたはノンリーフィングを使用するかは輝度感および濃度の点から適宜選択される。着色剤はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ組成物の総質量に対して1~50質量%、インキ組成物中の全固形分に対して1~40質量%の割合で含まれることが好ましい。また、着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0025】
(通常の製造方法)
本発明のリキッドインキ組成物の製造は、例えば、米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)に、例えば事前に有機溶剤に溶かした硝化綿、有機溶剤(C)を加え、必用に応じて可塑剤(D)、キレート架橋剤(E)、着色剤(F)、その他ポリエチレン系ワックス、アマイド系ワックス、体質顔料、帯電防止剤、ブロッキング防止剤などの添加剤、インキ流動性および分散性を改良するための界面活性剤、あるいはポリアミド樹脂と相溶性を有する樹脂を、経時で増粘とゲル化が生じない範囲にて併用し、ボールミル、アトライター、サンドミル、三本ロールなどの通常の印刷インキ製造装置を用いて混練することで作製される。特に、帯電防止剤の添加は、エステル系溶剤、ケトン系溶剤を使用時に発生しやすいヒゲと呼ばれる印刷時の静電気トラブルの抑制に効果的である。
【0026】
前記米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)と併用できる樹脂としては、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化エチレン/プロピレン等の塩素化ポリオレフィン、エチレン/酢酸ビニル共重合体またはその塩素化樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ロジン系樹脂及びその変性物、ケトン樹脂、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの様なセルロース系樹脂、ウレタン変性ケトン樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン尿素樹脂、マレイン酸変性樹脂等が挙げられる。
尚、米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)と、トール油の様な植物性脂肪酸由来のポリアミド樹脂、合成脂肪酸由来のポリアミド樹脂を混合して使用することも可能である。
【0027】
本発明は、前記したリキッドインキの印刷によって得られる印刷物を提供する。
【実施例
【0028】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」及び「%」は、いずれも質量基準によるものとする。
尚、本発明におけるGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による数平均分子量(ポリスチレン換算)Mnの測定は東ソー(株)社製HLC8220システムを用い以下の条件で行った。
分離カラム:東ソー(株)製TSKgelGMHHR-Nを4本使用。カラム温度:40℃。移動層:和光純薬工業(株)製テトラヒドロフラン。流速:1.0ml/分。試料濃度:1.0重量%。試料注入量:100マイクロリットル。検出器:示差屈折計。
【0029】
〔米ぬか脂肪酸を反応原料とするダイマー酸(X)の調製〕
オートクレーブに米ぬか脂肪酸(酸価200、ヨウ素価108)100部、モンモリロナイトクレー6部、水酸化リチウム0.1部、水酸化カルシウム0.1部及び水1部を投入。系内を窒素雰囲気とし密閉後に攪拌しながら圧力0.5MPaに保持して230℃で3時間加熱した。その後、反応物を130℃に冷却し75%リン酸1部を加えて1時間処理した。加圧濾過により固形物を取り除き、租生成物を得た。この租生成物を流下膜式蒸留器に導き、圧力0.1kPa、温度200℃の条件で単量体酸を除いた。
得られたダイマー酸(X)についてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定し、二量体成分が75%である事を確認した。
【0030】
〔米ぬか脂肪酸を反応原料とする熱可塑性ポリアミド樹脂(A)の調製〕
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、上記で得られた米ぬか脂肪酸由来のダイマー酸(X)100部、米ぬか脂肪酸(アシッド100S;ボーソー油脂(株)製)1部、セバシン酸5部、エチレンジアミン10部、ヘキサメチレンジアミン5部、及びトリフェニルホスフィン0.24部を入れ、系内を窒素雰囲気とし、さらに、窒素気流下均一化の攪拌しながら200℃までゆっくりと昇温する。続いて攪拌しながら200℃にて5時間脱水縮合を行うことにより、軟化点125℃、アミン価2、酸価8、数平均分子量11,000の米ぬか脂肪酸由来のダイマー酸変性ポリアミド樹脂組成物を得た。
【0031】
〔トール脂肪酸を反応原料する熱可塑性ポリアミド樹脂(T)の調製〕
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、ダイマー酸(ハリダイマー270S;ハリマ化成(株)製)100部、トール油脂肪酸(ハートールFA-1;ハリマ化成(株)製)1部、セバシン酸5部、エチレンジアミン10部、ヘキサメチレンジアミン5部、及びトリフェニルホスフィン0.24部を入れ、系内を窒素雰囲気とし、さらに、窒素気流下均一化の攪拌しながら200℃までゆっくりと昇温する。続いて攪拌しながら200℃にて5時間脱水縮合を行うことにより、軟化点123℃、アミン価2、酸価8、数平均分子量10,000のトール脂肪酸由来のダイマー酸変性ポリアミド樹脂組成物(T)を得た。
【0032】
〔硝化綿ニス液(S)の作製〕
工業用硝化綿H1/2(ニトロセルロース、不揮発分70%、JIS K-6703により溶液濃度25.0%における粘度9.0~14.9%品 太平化学製品株式会社製)37.5部に、イソプロピルアルコール/酢酸エチル/酢酸ノルマルプロピル/メチルシクロヘキサン(重量比で25/25/13/10の比率)の混合液を62.5部加え、充分混合し硝化綿ニス液(S)を作製した。
【0033】
実施例1~16、比較例1
〔インキの調製法〕
表1及び表2に記載の配合比率で混合した混合物をマイティーミル(株式会社井上製作所製)を用いて混練し、実施例1~16、及び比較例1に記載の藍インキを調製し、各々について以下の評価を実施した。
【0034】
〔粘度測定〕
表1及び表2に記載の藍インキを、其々離合社製ザーンカップNo.4を用いてインキ製造直後に液温25℃にて粘度を測定した。測定値が12秒~18秒である事が好ましい。
【0035】
〔粘度安定性〕
表1及び表2に記載の藍インキを各々ガラス瓶に採取し、50℃で28日間保存を行った。その後、粘度を測定して保存前との粘度変化を評価した。
評価基準3以上であれば実用範囲である。
(評価基準)
5:粘度変化が無い 粘度変化が2秒未満
4:粘度変化が少し 粘度差が2秒以上5秒未満
3:粘度変化がやや多い 粘度差が5秒以上10秒未満
2:粘度変化が多い 粘度差が10秒以上15秒未満
1:粘度変化が非常に多い 粘度差が15秒以上
【0036】
〔耐油性〕
表1及び表2に記載の藍インキを、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOR 厚さ20μm)にバーコーター#10で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。
次いで、この印刷面に大豆白絞油を綿棒にて2cc塗布した後、40℃のオーブンに24時間放置した。その後乾いた面棒で大豆白絞油塗布部分を擦り、印刷面の状態を目視評価した。
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く脱離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから脱離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、40%未満がフィルム
から脱離するが実用範囲である。
2:印刷皮膜の面積比率として、40%以上、60%未満がフィルム
から脱離する。
1:印刷面の面積比率として、60%以上がフィルムから脱離する。
【0037】
〔耐熱性〕
表1及び表2に記載の藍インキを、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOR 厚さ20μm)にバーコーター#10で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。
次いで、この印刷面にアルミニウム箔を重ね合わせ、ヒートシールテスターを用いて温度180℃、荷重2Kg/cm、圧着時間1秒の条件で熱圧着し、室温25℃まで冷却してからアルミニウム箔を引き剥がして、印刷面の状態を目視評価した。
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから剥離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、40%未満がフィルム
から剥離するが実用範囲である。
2:印刷皮膜の面積比率として、40%以上、60%未満がフィルム
から剥離する。
1:印刷面の面積比率として、60%以上がフィルムから剥離する。
【0038】
〔接着性〕
表1及び表2に記載の藍インキを、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOR 厚さ20μm)にバーコーター#10で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。
次いで、この印刷面にセロファンテープ(ニチバン社製)を貼り付けた後、素早くテープを引き剥がし、印刷面の状態を目視評価した。
(評価基準)
5:印刷皮膜がフィルムから全く剥離しない。
4:印刷皮膜の面積比率として、20%未満がフィルムから剥離する。
3:印刷皮膜の面積比率として、20%以上、40%未満がフィルム
から剥離するがが実用範囲である。
2:印刷皮膜の面積比率として、40%以上、60%未満がフィルム
から剥離する。
1:印刷面の面積比率として、60%以上がフィルムから剥離する。
【0039】
〔耐摩擦性〕
表1及び表2に記載の藍インキを、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOR 厚さ20μm)にバーコーター#10で塗布し、24時間放置して印刷物を作成した。
次いで、サザーランド型摩耗試験機を用い、2ポンド荷重にて100回白色上質紙で擦り、藍インキの取られ具合を目視評価した。
(評価基準)
5:擦った白色上質紙に全く色が着かない。
4:擦った白色上質紙に評価「5」と「3」の中程度の極薄く色が着く。
3:擦った白色上質紙に薄く色が着くが実用範囲である。
2:擦った白色上質紙に評価「3」と「1」の中程度に着色する。
1:擦った白色上質紙に濃く色が着く。
【0040】
〔印刷適性試験:カスレ試験〕
表1及び表2に記載の藍インキを、インキ作成に使用した同一比率の混合有機溶剤で希釈し、離合社製ザーンカップNo3で16秒になるように希釈した。それを、版深度25μmを有するレーザーグラビア版を取り付けたMD型グラビア印刷機(富士機械株式会社製)を用いて、片面にコロナ放電処理を施した二軸延伸ポリプロピレンフィルム(フタムラ化学株式会社製 FOR 厚さ20μm)の処理面に印刷を行った。そして、印刷物の印刷部分へのインキの転移度(カスレ度)を評価した。カスレ試験は、グラビア版の円周600mmφで300m/minの印刷速度での評価を行った。
(評価基準)
5:カスレが全くない。
4:ごく僅かにカスレ発生。
3:少しカスレ発生、実用範囲である。
2:カスレが顕著に確認できる。
1:カスレが多発している。
【0041】
〔耐ブロッキング性〕
上記カスレ試験の条件で印刷した時の印刷物の中で評価「5」のカスレのない良好な印刷物の各印刷面と非印刷面を合わせて、永久歪試験器(テスター産業社製)を用い5kg/cmの圧で締め込み、40℃で1日後に手で剥がし、インキの剥離の程度と剥離抵抗の強度から耐ブロキング性を評価した。
評価基準3以上であれば実用範囲である。
(評価基準)
5:印刷皮膜の剥離が全くなく、剥離抵抗も全く感じられない。
4:印刷皮膜の剥離が全くないが、剥離抵抗が若干感じられない。
3:印刷皮膜の剥離が全くないが、剥離抵抗が感じられる。
2:印刷皮膜の剥離が見られ、汚れが顕著に発生している。
1:印刷皮膜が殆ど剥離し、剥離抵抗が強く感じられる。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
尚、表中の原料は以下の通りである。
・硝化綿H1/2(ニトロセルロース、不揮発分70%、JIS K-6703により溶液濃度25.0%における粘度9.0~14.9%品 太平化学製品株式会社製)
・Fastogen Blue 5380(DIC(株)製):C.I.Pig.
No.=B-15:3
・クエン酸エステル系ATBC可塑剤:アセチルクエン酸トリブチル(トリブチル=2-アセトキシ-1,2,3-プロパントリカルボキシラート 旭化成ファインケム(株)社製
・エポキシ化大豆油サンソイザーE-2000H:CAS No.8013-07-8
新日本理化(株)製
・Sibercizer C6可塑剤:N-エチルo/p-トルエンスルホンアミド、Merck社製
・リン酸エステル系TOP可塑剤:トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、大八化学工業(株)製
・チタンTAAキレート剤(BORICA社製):チタニウムアセチルアセトネート
CAS:17927-27-9
【0046】
以上の結果から、本発明のリキッドインキ組成物は、耐摩擦性、耐油性、耐熱性、印刷適性及び粘度安定性を兼備する事ができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のリキッドインキ組成物は、カーボンオフセットや化石資源の節約の観点から環境面に配慮したグラビアインキ、或いはフレキソインキとして、パン、米菓及びおにぎり包装などの食品包材・レトルト食品包材・スナック菓子包材・液体容器、サニタリー・コスメ・電子部品等工業製品向け軟包装用途に幅広く展開され得る。