(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 5/00 20060101AFI20220107BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20220107BHJP
H01F 17/02 20060101ALI20220107BHJP
H01F 27/28 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
H01F5/00 M
H01F17/00 B
H01F17/02
H01F27/28 K
(21)【出願番号】P 2017244574
(22)【出願日】2017-12-21
【審査請求日】2020-10-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【氏名又は名称】緒方 和文
(74)【代理人】
【識別番号】100130982
【氏名又は名称】黒瀬 泰之
(72)【発明者】
【氏名】金子 滋
(72)【発明者】
【氏名】大石 太洋
(72)【発明者】
【氏名】森木 朋大
(72)【発明者】
【氏名】友成 寿緒
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-49220(JP,A)
【文献】特開2009-259922(JP,A)
【文献】特開2008-205215(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/110952(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00
H01F 17/00
H01F 17/02
H01F 27/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面及び前記第1の表面の反対側に位置する第2の表面を有する第1の絶縁基板と、
前記第1の絶縁基板の前記第1の表面と向かい合う第3の表面及び前記第3の表面の反対側に位置する第4の表面を有する第2の絶縁基板と、
前記第1の絶縁基板の前記第2の表面と向かい合う第5の表面及び前記第5の表面の反対側に位置する第6の表面を有する第3の絶縁基板と、
前記第1の絶縁基板の前記第1の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第1のコイル部と、
前記第1の絶縁基板の前記第2の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第2のコイル部と、
前記第2の絶縁基板の前記第4の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第3のコイル部と、
前記第3の絶縁基板の前記第6の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第4のコイル部と、
前記第2の絶縁基板の前記第3の表面に形成され、前記第3のコイル部の内周端に接続された第1の接続パターンと、
前記第3の絶縁基板の前記第5の表面に形成され、前記第4のコイル部の内周端に接続された第2の接続パターンと、を備え、
前記第1のコイル部の内周端と前記第2のコイル部の内周端は、前記第1の絶縁基板を貫通して設けられた接続部を介して互いに接続され、
前記第1の接続パターンと前記第2の接続パターンは、前記第1の絶縁基板に設けられた開口部を介して互いに接続されることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1及び第2のコイル部の一方の外周端と前記第3のコイル部の外周端が接続され、前記第1及び第2のコイル部の他方の外周端と前記第4のコイル部の外周端が接続されることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第1乃至第4のコイル部は、いずれもスパイラル状のスリットによって径方向に分離された複数の導体部分を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第1のコイル部を構成する前記複数の導体部分は、第1の導体部分及び前記第1の導体部分よりも内周側に位置する第2の導体部分を含み、
前記第2のコイル部を構成する前記複数の導体部分は、第3の導体部分及び前記第3の導体部分よりも内周側に位置する第4の導体部分を含み、
前記第3のコイル部を構成する前記複数の導体部分は、第5の導体部分及び前記第5の導体部分よりも内周側に位置する第6の導体部分を含み、
前記第4のコイル部を構成する前記複数の導体部分は、第7の導体部分及び前記第7の導体部分よりも内周側に位置する第8の導体部分を含み、
前記第1の導体部分の内周端は、前記第4の導体部分の内周端に接続され、
前記第2の導体部分の内周端は、前記第3の導体部分の内周端に接続され、
前記第5の導体部分の内周端は、前記第8の導体部分の内周端に接続され、
前記第6の導体部分の内周端は、前記第7の導体部分の内周端に接続されることを特徴とする請求項3に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記第1のコイル部のパターン形状と前記第2のコイル部のパターン形状が同一であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第1の絶縁基板は、透明又は半透明であることを特徴とする請求項5に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第3のコイル部のパターン形状と前記第4のコイル部のパターン形状が同一であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコイル部品に関し、特に、スパイラル状の平面導体を有するコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器に用いられるコイル部品としては、磁性コアにワイヤ(被覆導線)を巻回したタイプのコイル部品の他、絶縁層又は絶縁基板の表面にスパイラル状の平面導体を複数ターンに亘って形成したタイプのコイル部品が知られている。例えば、特許文献1には、複数の絶縁層の表面にそれぞれスパイラル状のコイル部を形成し、その内周端同士を接続した構成を有するコイル部品が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載されたコイル部品においては、各絶縁層の一方の表面にコイル部がそれぞれ形成され、各絶縁層の他方の表面にはコイル部が形成されないことから、積層方向に隣接するコイル部同士の接触を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたコイル部品においては、コイル部の数だけ絶縁層が必要であることから、全体の厚みが厚くなるという問題があった。絶縁層又は絶縁基板の数を減らすためには、絶縁層又は絶縁基板の両面にスパイラル状のコイル部を形成すれば良いが、この場合には、積層方向に隣接するコイル部同士が接触してしまうという問題が生じる。
【0006】
したがって、本発明は、スパイラル状の平面導体を複数備えるコイル部品において、積層方向に隣接するコイル部同士の接触を防止しつつ、必要な絶縁基板の数を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコイル部品は、第1の表面及び第1の表面の反対側に位置する第2の表面を有する第1の絶縁基板と、第1の絶縁基板の第1の表面と向かい合う第3の表面及び第3の表面の反対側に位置する第4の表面を有する第2の絶縁基板と、第1の絶縁基板の第2の表面と向かい合う第5の表面及び第5の表面の反対側に位置する第6の表面を有する第3の絶縁基板と、第1の絶縁基板の第1の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第1のコイル部と、第1の絶縁基板の第2の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第2のコイル部と、第2の絶縁基板の第4の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第3のコイル部と、第3の絶縁基板の第6の表面に形成され、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された第4のコイル部と、第2の絶縁基板の第3の表面に形成され、第3のコイル部の内周端に接続された第1の接続パターンと、第3の絶縁基板の第5の表面に形成され、第4のコイル部の内周端に接続された第2の接続パターンと、を備え、第1のコイル部の内周端と第2のコイル部の内周端は、第1の絶縁基板を貫通して設けられた接続部を介して互いに接続され、第1の接続パターンと第2の接続パターンは、第1の絶縁基板に設けられた開口部を介して互いに接続されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、スパイラル状に巻回された4つのコイル部を3つの絶縁基板上に形成していることから、全体の厚みを薄くすることが可能となる。しかも、互いに向かい合う2つの表面の一方にのみコイル部を形成していることから、積層方向に隣接するコイル部同士の接触を防止することが可能となる。
【0009】
本発明において、第1及び第2のコイル部の一方の外周端と第3のコイル部の外周端が接続され、第1及び第2のコイル部の他方の外周端と第4のコイル部の外周端が接続されていても構わない。これによれば、第1及び第2のコイル部と第3及び第4のコイル部を並列接続することが可能となる。
【0010】
本発明において、第1乃至第4のコイル部は、いずれもスパイラル状のスリットによって径方向に分離された複数の導体部分を含んでいても構わない。これによれば、電流密度の偏りが低減されることから、直流抵抗や交流抵抗を低減することが可能となる。
【0011】
本発明において、第1のコイル部を構成する複数の導体部分は、第1の導体部分及び第1の導体部分よりも内周側に位置する第2の導体部分を含み、第2のコイル部を構成する複数の導体部分は、第3の導体部分及び第3の導体部分よりも内周側に位置する第4の導体部分を含み、第3のコイル部を構成する複数の導体部分は、第5の導体部分及び第5の導体部分よりも内周側に位置する第6の導体部分を含み、第4のコイル部を構成する複数の導体部分は、第7の導体部分及び第7の導体部分よりも内周側に位置する第8の導体部分を含み、第1の導体部分の内周端は、第4の導体部分の内周端に接続され、第2の導体部分の内周端は、第3の導体部分の内周端に接続され、第5の導体部分の内周端は、第8の導体部分の内周端に接続され、第6の導体部分の内周端は、第7の導体部分の内周端に接続されていても構わない。これによれば、導体部分の内外周差が低減されることから、直流抵抗や交流抵抗をよりいっそう低減することが可能となる。
【0012】
本発明において、第1のコイル部のパターン形状と第2のコイル部のパターン形状が同一であっても構わない。これによれば、同一のマスクを用いて第1のコイル部と第2のコイル部を作製することが可能となる。しかも、第1の絶縁基板が透明又は半透明であっても、第1のコイル部と第2のコイル部の大部分が重なれば、外観検査が容易となる。さらに、本発明において、第3のコイル部のパターン形状と第4のコイル部のパターン形状が同一であっても構わない。これによれば、同一のマスクを用いて第3のコイル部と第4のコイル部を作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
このように、本発明によれば、スパイラル状の平面導体を複数備えるコイル部品において、積層方向に隣接するコイル部同士の接触を防止しつつ、必要な絶縁基板の数を削減することが可能となる。これにより、厚さの薄いコイル部品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態によるコイル部品の構成を示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1の絶縁基板10の第1の表面11に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【
図3】
図3は、第1のコイル部100の等価回路図である。
【
図4】
図4は、第1の絶縁基板10の第2の表面12に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【
図5】
図5は、第2のコイル部200の等価回路図である。
【
図6】
図6は、第2の絶縁基板20の第4の表面24に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【
図7】
図7は、第3のコイル部300の等価回路図である。
【
図8】
図8は、第2の絶縁基板20の第3の表面23に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【
図9】
図9は、第3の絶縁基板30の第6の表面36に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【
図10】
図10は、第4のコイル部400の等価回路図である。
【
図11】
図11は、第3の絶縁基板30の第5の表面35に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態によるコイル部品の等価回路図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態によるコイル部品に電流を流した場合に生じる磁束φを示す模式図である。
【
図14】
図14は、第1及び第2のコイル部100,200における導体部分の長さと磁界強度の関係を説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、変形例によるコイル部品の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態によるコイル部品の構成を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態によるコイル部品は、第1~第3の絶縁基板10,20,30と、第1の絶縁基板10の第1の表面11に形成された第1のコイル部100と、第1の絶縁基板10の第2の表面12に形成された第2のコイル部200と、第2の絶縁基板20の第4の表面24に形成された第3のコイル部300と、第3の絶縁基板30の第6の表面36に形成された第4のコイル部400を備えている。第2の絶縁基板20の第4の表面24は、第1の絶縁基板10の第1の表面11と向かい合う第3の表面23の反対側に位置し、第3の絶縁基板30の第6の表面36は、第1の絶縁基板10の第2の表面12と向かい合う第5の表面35の反対側に位置する。第3及び第5の表面23,35には、コイル部は形成されていない。
【0018】
詳細については後述するが、第1のコイル部100の内周端と第2のコイル部200の内周端は、第1の絶縁基板10を貫通して設けられた複数の接続部TH11~TH16を介して互いに接続されている。また、第3のコイル部300の内周端は、第2の絶縁基板20を貫通して設けられた複数の接続部TH21~TH26を介して、第2の絶縁基板20の第3の表面23に形成された接続パターンP11~P16に接続されている。さらに、第4のコイル部400の内周端は、第3の絶縁基板30を貫通して設けられた複数の接続部TH31~TH36を介して、第3の絶縁基板30の第5の表面35に形成された接続パターンP21~P26に接続されている。
【0019】
図1に示すように、第1の絶縁基板10には開口部10aが設けられている。開口部10aは、平面視で接続パターンP11~P16、P21~P26と重なる位置に設けられており、これにより、第1~第3の絶縁基板10,20,30を重ねると、破線aで示すように、接続パターンP11~P16と接続パターンP21~P26が開口部10aを介して短絡される。
【0020】
絶縁基板10,20,30の材料については特に限定されないが、PET樹脂などの透明又は半透明なフレキシブル材料を用いることができる。また、絶縁基板10,20,30は、ガラスクロスにエポキシ系樹脂が含浸されたフレキシブル基板であっても構わない。第1の絶縁基板10が透明又は半透明である場合、平面視で第1のコイル部100と第2のコイル部200が重なって見えることから、これらの重なり方によっては検査装置を用いた外観検査が困難となる。詳細については後述するが、本実施形態によるコイル部品は、検査装置を用いた外観検査を正しく実行できるよう、第1のコイル部100と第2のコイル部200の大部分が平面視で重なる位置に配置されている。
【0021】
図2は、第1の絶縁基板10の第1の表面11に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【0022】
図2に示すように、第1の絶縁基板10の第1の表面11には、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された平面導体からなる第1のコイル部100が形成される。
図2に示す例では、第1のコイル部100がターン110~ターン160からなる6ターン構成であり、ターン110が最外周に位置し、ターン160が最内周に位置する。また、各ターン110~160は、スパイラル状の5本のスリットによって径方向に6分割されている。これにより、ターン110~160は、最も外周側に位置する導体部分111~161と、2番目に外周側に位置する導体部分112~162と、3番目に外周側に位置する導体部分113~163と、4番目に外周側に位置する導体部分114~164と、5番目に外周側に位置する導体部分115~165と、最も内周側に位置する導体部分116~166に分離される。
【0023】
最外周に位置するターン110の導体部分111~116は、径方向に延在する引き出しパターン191を介して、端子電極E1aに接続される。一方、最内周に位置するターン160の導体部分161~166の内周端は、それぞれ接続部TH11~TH16に接続される。
【0024】
これにより、
図3に示すように、最も外周側に位置する導体部分111~161は、端子電極E1aと接続部TH11との間に直列に接続された導体部分A1を構成し、2番目に外周側に位置する導体部分112~162は、端子電極E1aと接続部TH12との間に直列に接続された導体部分A2を構成し、3番目に外周側に位置する導体部分113~163は、端子電極E1aと接続部TH13との間に直列に接続された導体部分A3を構成し、4番目に外周側に位置する導体部分114~164は、端子電極E1aと接続部TH14との間に直列に接続された導体部分A4を構成し、5番目に外周側に位置する導体部分115~165は、端子電極E1aと接続部TH15との間に直列に接続された導体部分A5を構成し、最も内周側に位置する導体部分116~166は、端子電極E1aと接続部TH16との間に直列に接続された導体部分A6を構成する。
【0025】
第1のコイル部100を構成する各ターン110~160は、径方向における位置が変化しない円周領域100aと、径方向における位置が遷移する遷移領域100bを有しており、この遷移領域100bを境界としてターン110~ターン160からなる6ターンが定義される。
図2に示すように、本実施形態においては第1のコイル部100の外周端及び内周端がいずれも遷移領域100bに位置している。さらに、第1のコイル部100の中心点c1から放射状に延在する仮想線L1を引いた場合、遷移領域100bは仮想線L1上に位置している。また、接続部TH11と接続部TH13は、仮想線L1を軸として互いに対称となる位置に配置され、接続部TH14と接続部TH16は、仮想線L1を軸として互いに対称となる位置に配置されている。さらに、接続部TH12及び接続部TH15は、仮想線L1上に配置されている。
【0026】
図2には、第1の絶縁基板10に設けられた開口部10aの位置も示されている。
図2に示すように、開口部10aは、接続部TH11~TH16よりも中心点c1に近い位置に設けられている。
【0027】
図4は、第1の絶縁基板10の第2の表面12に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【0028】
図4に示すように、第1の絶縁基板10の第2の表面12に形成された導体パターンの形状は、第1の絶縁基板10の第1の表面11に形成された導体パターンの形状と同一である。したがって、第1の絶縁基板10の表裏に形成する導体パターンは、同一のマスクを用いて作製することが可能であり、これによって製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【0029】
第1の絶縁基板10の第2の表面12に形成された導体パターンは、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された平面導体からなる第2のコイル部200を含む。第2のコイル部200は、ターン210~ターン260からなる6ターン構成であり、ターン210が最外周に位置し、ターン260が最内周に位置する。また、各ターン210~260は、スパイラル状の5本のスリットによって径方向に6分割されている。これにより、ターン210~260は、最も外周側に位置する導体部分211~261と、2番目に外周側に位置する導体部分212~262と、3番目に外周側に位置する導体部分213~263と、4番目に外周側に位置する導体部分214~264と、5番目に外周側に位置する導体部分215~265と、最も内周側に位置する導体部分216~266に分離される。
【0030】
最外周に位置するターン210の導体部分211~216は、径方向に延在する引き出しパターン291を介して、端子電極E2aに接続される。一方、最内周に位置するターン260の導体部分261~266の内周端は、それぞれ接続部TH13,TH12,TH11,TH16,TH15,TH14に接続される。
【0031】
これにより、
図5に示すように、最も外周側に位置する導体部分211~261は、端子電極E2aと接続部TH13との間に直列に接続された導体部分B1を構成し、2番目に外周側に位置する導体部分212~262は、端子電極E2aと接続部TH12との間に直列に接続された導体部分B2を構成し、3番目に外周側に位置する導体部分213~263は、端子電極E2aと接続部TH11との間に直列に接続された導体部分B3を構成し、4番目に外周側に位置する導体部分214~264は、端子電極E2aと接続部TH16との間に直列に接続された導体部分B4を構成し、5番目に外周側に位置する導体部分215~265は、端子電極E2aと接続部TH15との間に直列に接続された導体部分B5を構成し、最も内周側に位置する導体部分216~266は、端子電極E2aと接続部TH14との間に直列に接続された導体部分B6を構成する。
【0032】
第2のコイル部200を構成する各ターン210~260は、径方向における位置が変化しない円周領域200aと、径方向における位置が遷移する遷移領域200bを有している。第1のコイル部100と第2のコイル部200は同一の平面形状を有しているため、仮想線L1は、第1のコイル部100の外周端と第2のコイル部200の外周端の間を通過することになる。
【0033】
このような構成を有する第1のコイル部100と第2のコイル部200は、それぞれの中心点c1が一致し、且つ、端子電極E1aと端子電極E2aが重なるよう、第1の絶縁基板10の表裏に形成される。これにより、第1のコイル部100のターン110~160の円周領域100aと、第2のコイル部200のターン210~260の円周領域200aは、その大部分が平面視で重なることになる。そして、第1のコイル部100を構成する導体部分A1~A6の内周端は、接続部TH11~TH16を介して、第2のコイル部200を構成する導体部分B3,B2,B1,B6,B5,B4の内周端にそれぞれ接続される。
【0034】
図6は、第2の絶縁基板20の第4の表面24に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【0035】
図6に示すように、第2の絶縁基板20の第4の表面24に形成された導体パターンの形状は、内周端の位置を除き、第1の絶縁基板10の表裏に形成される導体パターンと基本的に同じ形状を有している。
【0036】
第2の絶縁基板20の第4の表面24に形成された導体パターンは、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された平面導体からなる第3のコイル部300を含む。第3のコイル部300は、ターン310~ターン360からなる6ターン構成であり、ターン310が最外周に位置し、ターン360が最内周に位置する。また、各ターン310~360は、スパイラル状の5本のスリットによって径方向に6分割されている。これにより、ターン310~360は、最も外周側に位置する導体部分311~361と、2番目に外周側に位置する導体部分312~362と、3番目に外周側に位置する導体部分313~363と、4番目に外周側に位置する導体部分314~364と、5番目に外周側に位置する導体部分315~365と、最も内周側に位置する導体部分316~366に分離される。
【0037】
最外周に位置するターン310の導体部分311~316は、径方向に延在する引き出しパターン391を介して、端子電極E1bに接続される。端子電極E1bは、端子電極E1aを覆う面積及び形状を有している。一方、最内周に位置するターン360の導体部分361~366の内周端は、それぞれ接続部TH21~TH26に接続される。接続部TH21~TH26は、平面視で、第1の絶縁基板10の開口部10aと重なる位置に設けられている。
【0038】
これにより、
図7に示すように、最も外周側に位置する導体部分311~361は、端子電極E1bと接続部TH21との間に直列に接続された導体部分C1を構成し、2番目に外周側に位置する導体部分312~362は、端子電極E1bと接続部TH22との間に直列に接続された導体部分C2を構成し、3番目に外周側に位置する導体部分313~363は、端子電極E1bと接続部TH23との間に直列に接続された導体部分C3を構成し、4番目に外周側に位置する導体部分314~364は、端子電極E1bと接続部TH24との間に直列に接続された導体部分C4を構成し、5番目に外周側に位置する導体部分315~365は、端子電極E1bと接続部TH25との間に直列に接続された導体部分C5を構成し、最も内周側に位置する導体部分316~366は、端子電極E1bと接続部TH26との間に直列に接続された導体部分C6を構成する。
【0039】
第3のコイル部300を構成する各ターン310~360は、径方向における位置が変化しない円周領域300aと、径方向における位置が遷移する遷移領域300bを有しており、この遷移領域300bを境界としてターン310~ターン360からなる6ターンが定義される。
図6に示すように、本実施形態においては第3のコイル部300の外周端及び内周端がいずれも遷移領域300bに位置している。さらに、第3のコイル部300の中心点c2から放射状に延在する仮想線L2を引いた場合、遷移領域300bは仮想線L2上に位置している。また、接続部TH21と接続部TH23は、仮想線L2を軸として互いに対称となる位置に配置され、接続部TH24と接続部TH26は、仮想線L2を軸として互いに対称となる位置に配置されている。さらに、接続部TH22及び接続部TH25は、仮想線L2上に配置されている。
【0040】
図8は、第2の絶縁基板20の第3の表面23に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【0041】
図8に示すように、第2の絶縁基板20の第3の表面23には、6つの接続パターンP11~P16が形成されている。接続パターンP11~P16は、それぞれ接続部TH21~TH26を介して、第3のコイル部300を構成する導体部分C1~C6の内周端に接続される。また、第2の絶縁基板20の第3の表面23には、端子電極E1c及び引き出しパターン392が設けられている。引き出しパターン392は端子電極E1cと一体的であり、第2の絶縁基板20を貫通して設けられた接続部THaを介して、第2の絶縁基板20の第4の表面24に設けられた引き出しパターン391に接続されている。
【0042】
また、端子電極E1cは、平面視で第1の絶縁基板10の第1の表面11に形成された端子電極E1aと重なっており、これにより、第1の絶縁基板10と第2の絶縁基板20を重ねると、端子電極E1aと端子電極E1cが接触する。これら端子電極E1a,E1b,E1cは、一つの端子電極E1を構成する。本実施形態においては、接続部THaを2個設けているが、接続部の個数については特に限定されるものではない。
【0043】
図9は、第3の絶縁基板30の第6の表面36に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【0044】
図9に示すように、第3の絶縁基板30の第6の表面36に形成された導体パターンの形状は、第2の絶縁基板20の第4の表面24に形成された導体パターンの形状と同一である。したがって、第4の表面24と第6の表面36に形成する導体パターンは、同一のマスクを用いて作製することが可能であり、これによって製造コストを大幅に削減することが可能となる。
【0045】
第3の絶縁基板30の第6の表面36に形成された導体パターンは、複数ターンに亘ってスパイラル状に巻回された平面導体からなる第4のコイル部400を含む。第4のコイル部400は、ターン410~ターン460からなる6ターン構成であり、ターン410が最外周に位置し、ターン460が最内周に位置する。また、各ターン410~460は、スパイラル状の5本のスリットによって径方向に6分割されている。これにより、ターン410~460は、最も外周側に位置する導体部分411~461と、2番目に外周側に位置する導体部分412~462と、3番目に外周側に位置する導体部分413~463と、4番目に外周側に位置する導体部分414~464と、5番目に外周側に位置する導体部分415~465と、最も内周側に位置する導体部分416~466に分離される。
【0046】
最外周に位置するターン410の導体部分411~416は、径方向に延在する引き出しパターン491を介して、端子電極E2bに接続される。端子電極E2bは、端子電極E2aを覆う面積及び形状を有している。一方、最内周に位置するターン460の導体部分461~466の内周端は、それぞれ接続部TH31~TH36に接続される。接続部TH31~TH36は、平面視で、第1の絶縁基板10の開口部10aと重なる位置に設けられている。
【0047】
これにより、
図10に示すように、最も外周側に位置する導体部分411~461は、端子電極E2bと接続部TH33との間に直列に接続された導体部分D1を構成し、2番目に外周側に位置する導体部分412~462は、端子電極E2bと接続部TH32との間に直列に接続された導体部分D2を構成し、3番目に外周側に位置する導体部分413~463は、端子電極E2bと接続部TH31との間に直列に接続された導体部分D3を構成し、4番目に外周側に位置する導体部分414~464は、端子電極E2bと接続部TH36との間に直列に接続された導体部分D4を構成し、5番目に外周側に位置する導体部分415~465は、端子電極E2bと接続部TH35との間に直列に接続された導体部分D5を構成し、最も内周側に位置する導体部分416~466は、端子電極E2bと接続部TH34との間に直列に接続された導体部分D6を構成する。
【0048】
第4のコイル部400を構成する各ターン410~460は、径方向における位置が変化しない円周領域400aと、径方向における位置が遷移する遷移領域400bを有している。第4のコイル部400の中心点c3から放射状に延在する仮想線L3を引いた場合、遷移領域400bは仮想線L3上に位置している。また、接続部TH31と接続部TH33は、仮想線L3を軸として互いに対称となる位置に配置され、接続部TH34と接続部TH36は、仮想線L3を軸として互いに対称となる位置に配置されている。さらに、接続部TH32及び接続部TH35は、仮想線L3上に配置されている。
【0049】
図11は、第3の絶縁基板30の第5の表面35に形成された導体パターンの形状を示す平面図である。
【0050】
図11に示すように、第3の絶縁基板30の第5の表面35に形成された導体パターンの形状は、第2の絶縁基板20の第3の表面23に形成された導体パターンの形状と同一である。したがって、第3の表面23と第5の表面35に形成する導体パターンは、同一のマスクを用いて作製することが可能であり、これによって製造コストを大幅に削減することが可能となる。しかも、上述の通り、第2の絶縁基板20の第4の表面24に形成される導体パターンと、第3の絶縁基板30の第6の表面36に形成される導体パターンの形状も同一であることから、第2の絶縁基板20及びその両面に形成された導体パターンと、第3の絶縁基板30及びその両面に形成された導体パターンは、互いに同一の構成を有している。したがって、これらを別々に作り分ける必要はない。
【0051】
図11に示すように、第3の絶縁基板30の第5の表面35には、6つの接続パターンP21~P26が形成されている。接続パターンP21~P26は、それぞれ接続部TH31~TH36を介して、第4のコイル部400を構成する導体部分D1~D6の内周端に接続される。また、第3の絶縁基板30の第5の表面35には、端子電極E2c及び引き出しパターン492が設けられている。引き出しパターン492は端子電極E2cと一体的であり、第3の絶縁基板30を貫通して設けられた接続部THbを介して、第3の絶縁基板30の第6の表面36に設けられた引き出しパターン491に接続されている。
【0052】
また、端子電極E2cは、平面視で第1の絶縁基板10の第2の表面12に形成された端子電極E2aと重なっており、これにより、第1の絶縁基板10と第3の絶縁基板30を重ねると、端子電極E2aと端子電極E2cが接触する。これら端子電極E2a,E2b,E2cは、一つの端子電極E2を構成する。本実施形態においては、接続部THbを2個設けているが、接続部の個数については特に限定されるものではない。
【0053】
以上が各絶縁基板10,20,30に設けられた導体パターンのパターン形状である。そして、中心点c1~c3が重なり、且つ、仮想線L1~L3が重なるよう、第1の絶縁基板10を第2の絶縁基板20と第3の絶縁基板30によって挟み込めば、
図1において破線aで示すように、接続パターンP11,P12,P13,P14,P15,P16と接続パターンP23,P22,P21,P26,P25,P24が開口部10aを介してそれぞれ短絡される。開口部10aを介した接続は、例えば溶接などを用いて実現することが可能である。
【0054】
これにより、第1~第4のコイル部100,200,300,400は、
図12に示すように接続され、合計で12ターンのスパイラルコイルが2つ並列接続された構成が得られる。このように、本実施形態によるコイル部品は、スパイラル状に巻回された4つのコイル部100,200,300,400を備え、これらが3つの絶縁基板10,20,30上に形成されていることから、全体の厚みをより薄くすることが可能となる。しかも、第1のコイル部100と向かい合う第2の絶縁基板20の第3の表面23にはコイル部が形成されておらず、且つ、第2のコイル部200と向かい合う第3の絶縁基板30の第5の表面35にはコイル部が形成されていないことから、積層方向に隣接するコイル部が短絡することもない。
【0055】
しかも、本実施形態によるコイル部品は、各ターンがスパイラル状のスリットによって径方向に6分割されていることから、このようなスリットを設けない場合と比べて、電流密度の偏りが低減される。その結果、直流抵抗や交流抵抗を低減することができる。
【0056】
また、本実施形態においては、
図12に示すように、導体部分A1は接続部TH11を介して導体部分B3に接続され、導体部分A2は接続部TH12を介して導体部分B2に接続され、導体部分A3は接続部TH13を介して導体部分B1に接続され、導体部分A4は接続部TH14を介して導体部分B6に接続され、導体部分A5は接続部TH15を介して導体部分B5に接続され、導体部分A6は接続部TH16を介して導体部分B4に接続される。
【0057】
さらに、導体部分C1は、接続部TH21、接続パターンP11、接続パターンP23及び接続部TH33を介して導体部分D3に接続され、導体部分C2は、接続部TH22、接続パターンP12、接続パターンP22及び接続部TH32を介して導体部分D2に接続され、導体部分C3は、接続部TH23、接続パターンP13、接続パターンP21及び接続部TH31を介して導体部分D1に接続され、導体部分C4は、接続部TH24、接続パターンP14、接続パターンP26及び接続部TH36を介して導体部分D6に接続され、導体部分C5は、接続部TH25、接続パターンP15、接続パターンP25及び接続部TH35を介して導体部分D5に接続され、導体部分C6は、接続部TH26、接続パターンP16、接続パターンP24及び接続部TH34を介して導体部分D4に接続される。
【0058】
このように、本実施形態によるコイル部品は、第1のコイル部100と第2のコイル部200との間で導体部分の径方向位置が入れ替えられ、且つ、第3のコイル部300と第4のコイル部400との間で導体部分の径方向位置が入れ替えられていることから、内外周差が低減される。
【0059】
例えば、導体部分A1と導体部分B1は互いに長さが同じであり、導体部分A3と導体部分B3は互いに長さが同じであり、且つ、導体部分A1,B1は導体部分A3,B3よりも長さが長い。しかしながら、本実施形態においては、導体部分A1と導体部分B3が接続され、且つ、導体部分A3と導体部分B1が接続されることから、両者の合計長さは完全に一致する。この長さは、導体部分A2と導体部分B2の合計長さともほぼ同等である。同様に、導体部分A4と導体部分B4は互いに長さが同じであり、導体部分A6と導体部分B6は互いに長さが同じであり、且つ、導体部分A4,B4は導体部分A6,B6よりも長さが長い。しかしながら、導体部分A4と導体部分B6が接続され、且つ、導体部分A6と導体部分B4が接続されることから、両者の合計長さは完全に一致する。この長さは、導体部分A5と導体部分B6の合計長さともほぼ同等である。これにより、内外周差が緩和されることから、直流抵抗や交流抵抗をより低減することが可能となる。
【0060】
また、本実施形態によるコイル部品に電流を流すと、
図13に示すように磁束φが発生する。磁束φは、第1~第4のコイル部100,200,300,400の内径領域を通過するとともに、第1~第4のコイル部100,200,300,400の外側を周回する。このため、第1~第4のコイル部100,200,300,400のより最内周ターンに近い部分や、第1~第4のコイル部100,200,300,400のより最外周ターンに近い部分は、磁界が強くなり、局所的に交流抵抗が増加する傾向がある。
【0061】
図14は、第1及び第2のコイル部100,200における導体部分の長さと磁界強度の関係を説明するための模式図である。
【0062】
図14に示すように、ターン110を構成する導体部分111~116に着目すると、導体部分111が最も外周側に位置し、導体部分116が最も内周側に位置する。このため、導体部分111~116の長さは、矢印Lで示すように、導体部分111が最も長く、導体部分116が最も短くなる。同様に、ターン160を構成する導体部分161~166に着目すると、導体部分161が最も外周側に位置し、導体部分166が最も内周側に位置する。このため、導体部分161~166の長さは、矢印Lで示すように、導体部分161が最も長く、導体部分166が最も短くなる。要するに、導体部分A1が最も長く、導体部分A6が最も短い。上記の点は、第2のコイル部200においても同様であり、導体部分B1が最も長く、導体部分B6が最も短い。
【0063】
一方、磁界については、上述の通り、より最内周ターンに近い部分やより最外周ターンに近い部分ほど、磁界が強くなる。このため、最外周に位置するターン110においては、矢印Fで示すように、外周側に位置する導体部分111において最も磁界が強く、内周側に位置する導体部分116において最も磁界が弱くなる。逆に、最内周に位置するターン160においては、矢印Fで示すように、内周側に位置する導体部分166において最も磁界が強く、外周側に位置する導体部分161において最も磁界が弱くなる。上記の点は、第2のコイル部200においても同様であり、最外周に位置するターン210においては、矢印Fで示すように、外周側に位置する導体部分211において最も磁界が強く、内周側に位置する導体部分216において最も磁界が弱くなる。逆に、最内周に位置するターン260においては、矢印Fで示すように、内周側に位置する導体部分266において最も磁界が強く、外周側に位置する導体部分261において最も磁界が弱くなる。
【0064】
このため、内外周差が最も小さくなる組み合わせで第1のコイル部100と第2のコイル部200を接続すると、磁界の影響を強く受ける導体部分同士を接続することになり、交流抵抗が増大してしまう。つまり、内外周差を最も小さくするためには、最外周に位置する導体部分A1と最内周に位置する導体部分B6を接続し、最内周に位置する導体部分A6と最外周に位置する導体部分B1を接続すれば良いが、この場合、ターン110において最も磁界の強い導体部分111と、ターン260において最も磁界の強い導体部分266が接続されることから、当該組み合わせにおける交流抵抗が大幅に高くなってしまう。同様に、ターン160において最も磁界の強い導体部分166と、ターン210において最も磁界の強い導体部分211が接続されることから、当該組み合わせにおける交流抵抗が大幅に高くなってしまう。
【0065】
この点を考慮し、本実施形態においては、最外周に位置する導体部分A1と最内周に位置する導体部分B6を接続するのではなく、最外周に位置する導体部分A1と最外周に位置する導体部分B1及び最内周に位置する導体部分B6以外の導体部分(つまり、B2~B5のいずれか)を接続することにより、内外周差を緩和しつつ、磁界の影響を強く受ける組み合わせを避けている。これにより、交流抵抗が特異的に高くなる組み合わせが生じず、磁界の影響がより均一化されることから、結果として交流抵抗が低減され、直流抵抗と交流抵抗の差を縮小することが可能となる。
【0066】
上記の点は、第3のコイル部300と第4のコイル部400の接続関係においても同様である。
【0067】
また、本実施形態においては、遷移領域100b,200bを除き、第1のコイル部100と第2のコイル部200の大部分が平面視で重なることから、第1の絶縁基板10が透明又は半透明である場合であっても、第1のコイル部100と第2のコイル部200の視覚的な干渉を最小限に抑えることができる。つまり、第1のコイル部100を外観検査する際に第2のコイル部200が視覚的な障害とならず、逆に、第2のコイル部200を外観検査する際に第1のコイル部100が視覚的な障害とならない。これにより、検査装置を用いた外観検査を正しく実行することが可能となる。
【0068】
さらに、本実施形態によるコイル部品は、第1~第4のコイル部100,200,300,400の外周端及び内周端を遷移領域100b,200b,300b,400bに配置していることから、円周領域100a,200a,300a,400aの増大によるコイル部の外形の大型化や、コイルの内径領域の減少を防止することも可能となる。
【0069】
図15は、変形例によるコイル部品の構成を示す断面図である。
【0070】
図15に示すコイル部品は、
図1に示したコイル部品に対して、第4の絶縁基板40及び第5の絶縁基板50が追加されている。第4の絶縁基板40の表面41には第5のコイル部500が形成され、第4の絶縁基板40の表面42には第5のコイル部500の内周端に接続された接続パターンP3が形成されている。同様に、第5の絶縁基板50の表面51には第6のコイル部600が形成され、第5の絶縁基板50の表面52には第6のコイル部600の内周端に接続された接続パターンP4が形成されている。また、第4の絶縁基板40の表面42と第2の絶縁基板20の表面24が向かい合っているため、第3のコイル部300と第5のコイル部500が接触することはない。同様に、第5の絶縁基板50の表面52と第3の絶縁基板30の表面36が向かい合っているため、第4のコイル部400と第6のコイル部600が接触することはない。
【0071】
図15に示すように、平面視で接続パターンP3,P4と重なる位置には、第1~第3の絶縁基板10,20,30にそれぞれ開口部10a,20a,30aが形成されている。これにより、第1~第5の絶縁基板10,20,30,40,50を重ねると、破線bで示すように、接続パターンP3と接続パターンP4が短絡される。その他の構成は、
図1に示したコイル部品と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0072】
図16は、
図15に示すコイル部品の等価回路図である。
図16に示すように、
図15に示すコイル部品は、第1及び第2のコイル部100,200と、第3及び第4のコイル部300,400と、第5及び第6のコイル部500,600が並列に接続された構成を有している。これにより、
図1に示したコイル部品に比べて、直流抵抗及び交流抵抗をより低減することが可能となる。
【0073】
図15に示すコイル部品が例示するように、本発明によるコイル部品において使用する絶縁基板の数は3枚に限定されるものではない。さらに、第6及び第7の絶縁基板を追加することによって、コイル部の数をより増加させても構わない。
【0074】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0075】
例えば、上記実施形態においては、各コイル部のパターン形状が互いに同一であるが、本発明においてこの点は必須ではない。
【0076】
また、上記実施形態では、第1~第4のコイル部100,200,300,400の各ターンをスパイラル状のスリットによって径方向に6分割しているが、本発明において、各ターンの分割数については特に限定されない。また、全てのターンがスパイラル状のスリットによって径方向に分離されている必要はない。さらに、各ターンを分割することなく、1本の導体パターンによって各ターンを構成しても構わない。
【0077】
さらに、上記実施形態では、第1のコイル部100の外周端と第3のコイル部300の外周端を互いに接続し、第2のコイル部200の外周端と第4のコイル部400の外周端を互いに接続しているが、外周端の接続関係については特に限定されない。したがって、第1のコイル部100の外周端と第4のコイル部400の外周端を互いに接続し、第2のコイル部200の外周端と第3のコイル部300の外周端を互いに接続しても構わない。さらには、第1~第4のコイル部100,200,300,400を全て直列に接続しても構わない。
【符号の説明】
【0078】
10 第1の絶縁基板
10a,20a,30a 開口部
11 第1の表面
12 第2の表面
20 第2の絶縁基板
23 第3の表面
24 第4の表面
30 第3の絶縁基板
35 第5の表面
36 第6の表面
40 第4の絶縁基板
41,42 表面
50 第5の絶縁基板
51,52 表面
100 第1のコイル部
200 第2のコイル部
300 第3のコイル部
400 第4のコイル部
500 第5のコイル部
600 第6のコイル部
100a,200a,300a,400a 円周領域
100b,200b,300b,400b 遷移領域
110~160,210~260,310~360,410~460 ターン
111~116,121~126,131~136,141~146,151~156,161~166,211~216,221~226,231~236,241~246,251~256,261~266,311~316,321~326,331~336,341~346,351~356,361~366,411~416,421~426,431~436,441~446,451~456,461~466 導体部分
191,291,391,392,491,492 引き出しパターン
A1~A6,B1~B6,C1~C6,D1~D6 導体部分
c1~c3 中心点
E1,E1a,E1b,E1c,E2,E2a,E2b,E2c 端子電極
L1~L3 仮想線
P11~P16,P21~P26,P3,P4 接続パターン
TH11~TH16,TH21~TH26,TH31~TH36 接続部
THa,THb 接続部
φ 磁束