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特許6996284樹脂及びその製造方法、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、硬化物、活性エネルギー線硬化型印刷インキ、並びに印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】樹脂及びその製造方法、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、硬化物、活性エネルギー線硬化型印刷インキ、並びに印刷物
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/14 20060101AFI20220107BHJP
   C08G 63/40 20060101ALI20220107BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20220107BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
C08F8/14
C08G63/40
C09D11/101
C08F2/44 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017247131
(22)【出願日】2017-12-25
(65)【公開番号】P2018109161
(43)【公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2016255679
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 優樹
(72)【発明者】
【氏名】松田 倫幸
(72)【発明者】
【氏名】白石 広大
(72)【発明者】
【氏名】内野 拓耶
(72)【発明者】
【氏名】四方 亀
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-089533(JP,A)
【文献】特開2005-239914(JP,A)
【文献】特開2008-088229(JP,A)
【文献】特開2014-089453(JP,A)
【文献】特開2010-168475(JP,A)
【文献】特公昭48-026952(JP,B1)
【文献】米国特許第06734280(US,B1)
【文献】特開2017-031297(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08F 2/00- 2/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成単位1
【化1】
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化2】
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化3】
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基であり、置換基はアルキル基又はアリールオキシ基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂
並びに反応性希釈剤を含む、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
【請求項2】
前記樹脂鎖が、構成単位2b
【化4】
[Rb1a~Rb1cはそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基であり、
b2a~Rb2cはそれぞれ独立に、
【化5】
であって、Rb2a~Rb2cの少なくとも1つが
【化6】
であり、
{Bは1以上の整数であり、

【化7】
(b1は1以上の整数であり、b2は0以上の整数であり、Rbaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rbbは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。)
である。}
b3a~Rb3cはそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリール基、置換又は非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアルケニル基である]
を含む、請求項1に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
【請求項3】
前記樹脂の酸価が0.1~150mgKOH/gである、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
【請求項4】
前記樹脂の重量平均分子量が1,000~200,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
【請求項5】
前記樹脂の軟化点が40~150℃である、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び顔料を含む、活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
【請求項8】
請求項に記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキの硬化層を含む、印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂及びその製造方法、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物、硬化物、活性エネルギー線硬化型印刷インキ、並びに印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線や電子線等の活性エネルギー線で硬化する樹脂組成物(以下、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物という)は、反応性希釈剤、樹脂、光重合開始剤及び添加剤を含み、省エネルギー型の工業材料としてコーティング剤や塗料、印刷インキ等様々な分野で利用されている。
【0003】
特に活性エネルギー線硬化型印刷インキでは、硬化性や皮膜硬度等が優れていることから、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートやジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等の多官能アクリレートが反応性希釈剤として汎用されている。多官能アクリレートとの相溶性や硬化性に優れているとの理由から、ジアリルフタレート樹脂がバインダー樹脂として広く用いられている(特許文献1の段落[0009]を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5683757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ジアリルフタレート樹脂は、ジアリルフタレートモノマーを重合させたものであり、重合性二重結合を有する一方、ヒドロキシル基やカルボキシル基等の極性官能基を有しないため、利用態様が限られる。また、樹脂中に残存する未反応のジアリルフタレートモノマーが変異原性の高懸念物質である(上記特許文献1の段落[0009]を参照。)ことから、ジアリルフタレート樹脂に代替し得る樹脂が求められている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、活性エネルギー線硬化型インキのバインダーとした場合に、該インキの硬化性、耐溶剤性が良好であり、その結果ジアリルフタレート樹脂に代替し得る新規な樹脂を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は所定の樹脂がカルボキシル基や水酸基を有し、ジアリルフタレート樹脂と同様に反応性希釈剤と良好に相溶し、かつ、上記所定の樹脂を含む印刷インキの硬化性、耐溶剤性、光沢等の性能がジアリルフタレート樹脂を含む印刷インキの当該性能と同等以上であることを見出した。
【0008】
(項目1)
構成単位1
【化8】
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化9】
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化10】
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂。
(項目2)
前記樹脂鎖が、構成単位2b
【化11】
[Rb1a~Rb1cはそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基であり、
b2a~Rb2cはそれぞれ独立に、
【化12】
であって、Rb2a~Rb2cの少なくとも1つが
【化13】
であり、
{Bは1以上の整数であり、

【化14】
(b1は1以上の整数であり、b2は0以上の整数であり、Rbaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rbbは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。)
である。}
b3a~Rb3cはそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリール基、置換又は非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアルケニル基である]
を含む、上記項目に記載の樹脂。
(項目3)
酸価が0.1~150mgKOH/gである、上記項目のいずれか1項に記載の樹脂。
(項目4)
重量平均分子量が1,000~200,000である、上記項目のいずれか1項に記載の樹脂。
(項目5)
軟化点が40~150℃である、上記項目のいずれか1項に記載の樹脂。
(項目6)
カルボキシル基及びアリール基を有する重合体(A)と
エポキシド(B)又はエポキシド(B)及びカルボン酸無水物(C)とを反応させる工程を含む、上記項目のいずれか1項に記載の樹脂の製造方法。
(項目7)
上記項目のいずれか1項に記載の樹脂及び反応性希釈剤を含む、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物。
(項目8)
上記項目に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物。
(項目9)
上記項目に記載の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び顔料を含む、活性エネルギー線硬化型印刷インキ。
(項目10)
上記項目に記載の活性エネルギー線硬化型印刷インキの硬化層を含む、印刷物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の樹脂は、カルボキシル基、水酸基、場合により重合性炭素-炭素二重結合を有するため、各種変性に供することができる。変性は、カルボン酸や水酸基を含有する化合物とのエステル化反応やエポキシドとの付加反応等が例示される。
【0010】
また、該樹脂は、ジアリルフタレート樹脂と同様に各種反応性希釈剤、特にジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能アクリレート類との相溶性が良好である。また、該樹脂は、これをバインダー樹脂とする印刷インキの耐溶剤性を向上させる。
【0011】
本発明の樹脂を含む活性エネルギー線硬化型印刷インキは、ジアリルフタレート樹脂を含むインキと同様に硬化性、光沢に優れる。また、本発明の樹脂の耐溶剤性はジアリルフタレート樹脂の耐溶剤性よりも優れる。そのため、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷インキとして特に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.樹脂)
本開示は、構成単位1
【化15】
(R1aは水素又はアルキル基であり、R1b~R1fはそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
及び、構成単位2
【化16】
[R2aは水素又はアルキル基であり、R2bは、下記構成単位2a
【化17】
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
を含む樹脂鎖である。]
を含む、樹脂を提供する。
【0013】
アルキル基は、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、シクロアルキル基等が例示される。
【0014】
直鎖アルキル基は、-C2n+1(nは1以上の整数)の一般式で表現できる。直鎖アルキル基は、メチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デカメチル基等が例示される。
【0015】
分岐アルキル基は、直鎖アルキル基の少なくとも1つの水素がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキル基は、ジエチルペンチル基、トリメチルブチル基、トリメチルペンチル基、トリメチルヘキシル基(トリメチルヘキサメチル基)等が例示される。
【0016】
シクロアルキル基は、単環シクロアルキル基、架橋環シクロアルキル基、縮合環シクロアルキル基等が例示される。
【0017】
本開示において、単環は、炭素の共有結合により形成された内部に橋かけ構造を有しない環状構造を意味する。また、縮合環は、2つ以上の単環が2個の原子を共有している(すなわち、それぞれの環の辺を互いに1つだけ共有(縮合)している)環状構造を意味する。架橋環は、2つ以上の単環が3個以上の原子を共有している環状構造を意味する。
【0018】
単環シクロアルキル基は、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロデシル基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシル基等が例示される。
【0019】
架橋環シクロアルキル基は、トリシクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基等が例示される。
【0020】
縮合環シクロアルキル基は、ビシクロデシル基等が例示される。
【0021】
アルコキシ基は、-ORAl(RAlはアルキル基である)の一般式で表現できる。上記一般式中のアルキル基は上述のもの等が例示される。
【0022】
アリール基は、単環アリール基、縮合環アリール基等が例示される。 単環アリール基は、フェニル基が例示され、縮合環アリール基は、ナフチル基等が例示される。置換アリール基は、トリル基、キシリル基等が例示される。
【0023】
アリールオキシ基は、-ORAr(RArはアリール基である)の一般式で表現できる。上記一般式中のアリール基は上述のもの等が例示される。
【0024】
アリーレン基は、単環アリーレン基、縮合環アリーレン基等が例示される。 単環アリーレン基は、フェニレン基が例示され、縮合環アリーレン基は、ナフチレン基等が例示される。置換アリーレン基は、トリレン基、キシリレン基等が例示される。
【0025】
アルキレン基は、直鎖アルキレン基、分岐アルキレン基、シクロアルキレン基等が例示される。
【0026】
直鎖アルキレン基は、-(CH-(nは1以上の整数)の一般式で表現できる。直鎖アルキレン基は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、n-ブチレン基、n-ペンチレン基、n-ヘキシレン基、n-ヘプチレン基、n-オクチレン基、n-ノニレン基、n-デカメチレン基等が例示される。
【0027】
分岐アルキレン基は、直鎖アルキレン基の少なくとも1つの水素がアルキル基によって置換された基である。分岐アルキレン基は、ジエチルペンチレン基、トリメチルブチレン基、トリメチルペンチレン基、トリメチルヘキシレン基(トリメチルヘキサメチレン基)等が例示される。
【0028】
シクロアルキレン基は、単環シクロアルキレン基、架橋環シクロアルキレン基、縮合環シクロアルキレン基等が例示される。
【0029】
単環シクロアルキレン基は、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロデシレン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキシレン基等が例示される。
【0030】
架橋環シクロアルキレン基は、トリシクロデシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基等が例示される。
【0031】
縮合環シクロアルキレン基は、ビシクロデシレン基等が例示される。
【0032】
アルケニレン基は、直鎖アルケニレン基、分岐アルケニレン基、シクロアルケニレン基等が例示される。
【0033】
直鎖アルケニレン基は、ビニレン基、プロペニレン基、n-ブテニレン基等が例示される。
【0034】
分岐アルケニレン基は、直鎖アルケニレン基の少なくとも1つの水素がアルキル基によって置換された基であり、1-メチルビニレン基、1-メチルプロペニレン基、1-メチルブテニレン基等が例示される。
【0035】
シクロアルケニレン基は、単環シクロアルケニレン基等が例示される。
【0036】
単環シクロアルケニレン基は、シクロペンテニレン基、シクロヘキセニレン基、シクロヘプテニレン基、シクロデセニレン基、3,5,5-トリメチルシクロヘキセニレン基等が例示される。
【0037】
(構成単位1)
構成単位1は、一般式1
【化18】
(R1a’は水素又はアルキル基であり、R1b’~R1f ’はそれぞれ独立に、水素、アルキル基及びアリール基からなる群から選択される基である。)
で表わされる化合物をモノマーとして用いた場合に樹脂に含まれる構成単位である。
【0038】
一般式1で表わされる化合物は、スチレン、ジメチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等が例示される。
【0039】
樹脂中の構成単位1の比率の上限は、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15質量%等が例示され、下限は、69、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10質量%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性等の観点から、樹脂中の構成単位1の比率は、10~70質量%が好ましい。
【0040】
樹脂中の構成単位1の比率の上限は、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15モル%等が例示され、下限は、69、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10モル%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性等の観点から、樹脂中の構成単位1の比率は、10~70モル%が好ましい。
【0041】
(構成単位2)
構成単位2は、不飽和カルボン酸をモノマーとして用いて、樹脂を合成した後に生じる構成単位2’
【化19】
(R2a’は水素又はアルキル基である。)
に対し、エポキシド(B)と反応させるか、又はエポキシド(B)及びカルボン酸無水物(C)とを反応(重合)させることにより生じる構成単位である。ここで、上記構成単位1及び構成単位2’を含む樹脂は、後述する(A)カルボキシル基とアリール基を有する重合体の1例である。なお、(A)カルボキシル基とアリール基を有する重合体、エポキシド(B)、カルボン酸無水物(C)は、それぞれ独立に2種以上を併用してもよい。
【0042】
樹脂中の構成単位2の比率の上限は、85、80、70、60、50、40、30、25質量%等が例示され、下限は、80、70、60、50、40、30、25、20質量%が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性等の観点から、樹脂中の構成単位2の比率は、20~85質量%が好ましい。
【0043】
樹脂中の構成単位2の比率の上限は、85、80、70、60、50、40、30、25モル%等が例示され、下限は、80、70、60、50、40、30、25、20モル%が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性等の観点から、樹脂中の構成単位2の比率は、20~85モル%が好ましい。
【0044】
(構成単位2a)
構成単位2aは、一般式2a
【化20】
{a1は1以上の整数であり、a2は0以上の整数であり、Raaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rabは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。}
で表わされる基である。
【0045】
構成単位2aは、a2が1以上であるとき、一般式2a-1
【化21】
で表わされ、a2が0であるとき、一般式2a-2
【化22】
で表わされる。一般式2a-1及び一般式2a-2中のa1等の記号は、一般式2a中のものと同じ意味を有する。
【0046】
変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2aの比率の上限は、100、99、98、95、90、85、80、75、70、65質量%等が例示され、下限は、99、98、95、90、85、80、75、70、65、60質量%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性やインキにした際の硬化性等の観点から、変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2aの比率は60~100質量%が好ましい。
【0047】
変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2aの比率の上限は、100、99、98、97、96、95、94、93、92、91モル%等が例示され、下限は、99、98、95、94、93、92、91、90モル%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性やインキにした際の硬化性等の観点から、変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2aの比率は、90~100モル%が好ましい。
【0048】
(構成単位2b)
1つの実施形態において、上記構成単位2中のR2bは、構成単位2aに加え、構成単位2b
【化23】
[Rb1a~Rb1cはそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基であり、
b2a~Rb2cはそれぞれ独立に、
【化24】
であって、Rb2a~Rb2cの少なくとも1つが
【化25】
であり、
{Bは1以上の整数であり、

【化26】
(b1は1以上の整数であり、b2は0以上の整数であり、Rbaは水素原子、置換若しくは非置換のアルキル基、置換若しくは非置換のアリール基、置換若しくは非置換のアルコキシ基、又は置換若しくは非置換のアリールオキシ基であり、Rbbは置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基である。)
である。}
b3a~Rb3cはそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリール基、置換又は非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアルケニル基である]
も含む樹脂鎖である。
【0049】
構成単位2bは、上記構成単位2’に対し、
【化27】
[Rb1a’~Rb1c ’はそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリーレン基、置換若しくは非置換のアルキレン基、又は置換若しくは非置換のアルケニレン基であり、
b2a’~Rb2c ’
【化28】
であり、
b3a’~Rb3c ’はそれぞれ独立に、置換若しくは非置換のアリール基、置換又は非置換のアルキル基、又は置換若しくは非置換のアルケニル基である]
化合物を反応(重合)させることにより生じる構成単位である。
【0050】
上記構造式で表現され、樹脂鎖中に構成単位2bとして組み込まれるモノマーは2種以上を併用してもよい。構成単位2bとして組み込まれるモノマーは、エポキシ化大豆油等が例示される。
【0051】
構成単位2及び2bにおける、置換アリール基、置換アリールオキシ基、置換アリーレン基、置換アルケニレン基の置換基はアルキル基等が例示される。
【0052】
変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2bの比率の上限は、40、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1質量%等が例示され、下限は、39、35、30、25、20、15、10、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0質量%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性やインキにした際の硬化性等の観点から、変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2bの比率は0~40質量%が好ましい。
【0053】
変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2bの比率の上限は、10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1モル%等が例示され、下限は、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0モル%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性やインキにした際の硬化性等の観点から、変性部位(構成単位2のR2b)中の構成単位2bの比率は、0~10モル%が好ましい。
【0054】
(構成単位1でも2でもない構成単位(「その他の構成単位」ともいう))
構成単位1でも2でもない構成単位は、アクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸並びにそれらのハーフエステル等に由来する構成単位等が例示される。
【0055】
樹脂中の構成単位1でも2でもない構成単位の比率の上限は、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1質量%等が例示され、下限は65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0質量%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性等の観点から、樹脂中の構成単位1でも2でもない構成単位の比率は、0~70質量%が好ましい。
【0056】
樹脂中の構成単位1でも2でもない構成単位の比率の上限は、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1モル%等が例示され、下限は65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5、1、0モル%等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性等の観点から、樹脂中の構成単位1でも2でもない構成単位の比率は、0~70モル%が好ましい。
【0057】
(各構成単位間の相対比率)
樹脂中における構成単位1と構成単位2との質量比(構成単位1の質量/構成単位2の質量)の上限は、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.2等が例示され、下限は、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.2、0.1等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中における構成単位1と構成単位2との質量比(構成単位1の質量/構成単位2の質量)は0.1~3.5が好ましい。
【0058】
樹脂中における構成単位1と構成単位2とのモル比(構成単位1の物質量/構成単位2の物質量)の上限は、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.2等が例示され、下限は、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.2、0.1等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中における構成単位1と構成単位2とのモル比(構成単位1の物質量/構成単位2の物質量)は0.1~3.5が好ましい。
【0059】
樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位1との質量比(その他の構成単位の質量/構成単位1の質量)の上限は、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1等が例示され、下限は、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位1との質量比(その他の構成単位の質量/構成単位1の質量)は0~7が好ましい。
【0060】
樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位1とのモル比(その他の構成単位の物質量/構成単位1の物質量)の上限は、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1等が例示され、下限は、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位1とのモル比(その他の構成単位の物質量/構成単位1の物質量)は0~7が好ましい。
【0061】
樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位2との質量比(その他の構成単位の質量/構成単位2の質量)の上限は、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.1等が例示され、下限は、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.1、0等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位2との質量比(その他の構成単位の質量/構成単位2の質量)は0~3.5が好ましい。
【0062】
樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位2とのモル比(その他の構成単位の物質量/構成単位2の物質量)の上限は、3.5、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.1等が例示され、下限は、3、2.5、2、1.5、1、0.5、0.1、0等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中におけるその他の構成単位と構成単位2とのモル比(その他の構成単位の物質量/構成単位2の物質量)は0~3.5が好ましい。
【0063】
樹脂中における構成単位2bと構成単位2aとの質量比(構成単位2bの質量/構成単位2aの質量)の上限は、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1等が例示され、下限は、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中における構成単位2bと構成単位2aとの質量比(構成単位2bの質量/構成単位2aの質量)は0~0.7が好ましい。
【0064】
樹脂中における構成単位2bと構成単位2aとのモル比(構成単位2bの物質量/構成単位2aの物質量)の上限は、0.2、0.15、0.1、0.05、0.01等が例示され、下限は、0.15、0.1、0.05、0.01、0等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂中における構成単位2bと構成単位2aとのモル比(構成単位2bの物質量/構成単位2aの物質量)は0~0.2が好ましい。
【0065】
(樹脂の物性)
上記樹脂の酸価の上限は、150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15.1、10,6、10、9.6、8.2、7.9、5、4.5、1mgKOH/g等が例示され、下限は140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、20、15.1、10,6、10、9.6、8.2、7.9、5、4.5、1、0.1mgKOH/g等が例示される。上記酸価の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性や活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの硬化性の観点から、上記樹脂の酸価は0.1~150mgKOH/g程度が好ましい。
【0066】
上記樹脂の重量平均分子量の上限は、200,000、190,000、180,000、170,000、160,000、150,000、140,000、130,000、120,000、111,000、110,000、104,000、100,000、90,000、80,000、70,000、69,000、60,000、50,000、42,000、40,000、30,000、20,000、19,000、15,000、10,000、5,000等が例示され、下限は、190,000、180,000、170,000、160,000、150,000、140,000、130,000、120,000、111,000、110,000、104,000、100,000、90,000、80,000、70,000、69,000、60,000、50,000、42,000、40,000、30,000、20,000、19,000、15,000、10,000、5,000、1,000等が例示される。上記重量平均分子量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性や活性エネルギー線硬化型樹脂組成物としたときの硬化性の観点から、上記樹脂の重量平均分子量は1,000~200,000程度が好ましい。
【0067】
上記樹脂の数平均分子量の上限は、150,000、140,000、130,000、120,000、110,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000、30,000、20,000、15,000、10,000、5,000、2,500、1,000、750等が例示され、下限は、140,000、130,000、120,000、110,000、100,000、90,000、80,000、70,000、60,000、50,000、40,000、30,000、20,000、15,000、10,000、5,000、2,500、1,000、750、500等が例示される。上記数平均分子量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、上記樹脂の数平均分子量は500~150,000程度が好ましい。
【0068】
重量平均分子量及び数平均分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により適切な溶媒下で測定したポリスチレン換算値として測定され得る。
【0069】
上記樹脂の軟化点の上限は、150、140、130、120、114.0、110、109.5、106.5、105.0、104.5、102.5、100、90、80、70、60、50℃等が例示され、下限は140、130、120、114.0、110、109.5、106.5、105.0、104.5、102.5、100、90、80、70、60、50、40℃等が例示される。上記軟化点の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性希釈剤との相溶性や活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に含めたときの硬化性の観点から、上記樹脂の軟化点は40~150℃程度が好ましい。軟化点は、例えばJIS K5601に準拠する方法で測定され得る。
【0070】
上記樹脂は、ジアリルフタレート樹脂についての従来の用途、例えば、活性エネルギー線硬化型インキ(特にオフセット印刷インキ)や塗料用のバインダー樹脂等に供し得る。すなわち、上記樹脂は、活性エネルギー線硬化型インキ用樹脂、オフセット印刷インキ用樹脂、活性エネルギー線硬化型塗料用バインダー樹脂となり得る。
【0071】
[2.樹脂の製造方法]
本開示は、カルボキシル基及びアリール基を有する重合体(A)と
エポキシド(B)又はエポキシド(B)及びカルボン酸無水物(C)とを反応させる工程を含む、樹脂の製造方法を提供する。
【0072】
(A)カルボキシル基とアリール基を有する重合体((A)成分)
(A)成分は、2種以上を併用できる。(A)成分は、一個以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合及び一個以上のカルボキシル基を有する化合物(a1)((a1)成分ともいう)と一個以上のラジカル重合性炭素-炭素二重結合及び一個以上のアリール基を有する化合物((a2)成分ともいう)をラジカル重合物等が例示される。
【0073】
(a1)成分は、アクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸及びフマル酸並びにそれらのハーフエステル等が例示される。
【0074】
(a2)成分は、スチレン、ジメチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン等が例示される。
【0075】
また、(A)成分の構成成分には、前記(a1)成分でも(a2)成分でもないラジカル重合性炭素-炭素二重結合を少なくとも一つ有する化合物((a3)成分)を構成成分としたものであってもよい。(a3)成分は、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸イソボルニル等の炭素数1~20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル;アクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のアミド基を有するビニルモノマー等が例示される。
【0076】
(A)成分の市販品は、アラスター700、アラスター700S(以上、荒川化学工業(株)製)、ジョンクリル67、ジョンクリル68、ジョンクリルJ680、ジョンクリルJ682(以上、BASFジャパン(株)製)等が例示される。
【0077】
(A)成分の重量平均分子量の上限は、50,000、45,000、40,000、35,000、30,000、25,000、20,000、15,000、10,000、6,000、5,000、2,000等が例示され、下限は45,000、40,000、35,000、30,000、25,000、20,000、15,000、10,000、6,000、5,000、2,000、1,000等が例示される。上記重量平均分子量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、樹脂と反応性希釈剤との相溶性の観点から、(A)成分の重量平均分子量は1,000~50,000程度が好ましい。
【0078】
また(A)成分の酸価の上限は、300、250、200、150、100、50、20mgKOH/g等が例示され、下限は250、200、150、100、50、20、10mgKOH/g等が例示される。上記酸価の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、反応性の観点から(A)成分の酸価は10~300mgKOH/g程度が好ましい。
【0079】
(B)エポキシド((B)成分)
(B)成分は2種以上を併用できる。(B)成分は、重合性二重結合非含有芳香族エポキシド(b1)、重合性二重結合含有芳香族エポキシド(b2)等が例示される。
【0080】
(重合性二重結合非含有芳香族エポキシド(b1))
(b1)成分は、芳香環含有モノグリシジルエーテル、芳香族含有ジグリシジルエーテル、ビスフェノール型エポキシ樹脂等が例示される。
芳香環含有モノグリシジルエーテルは、フェニルグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド等が例示される。
芳香族含有ジグリシジルエーテルは、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が例示される。
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等が例示される。これらの中でも得られる樹脂と後述の反応性希釈剤との相溶性や、本発明のインキの硬化性、及び光沢等の観点から芳香族環含有モノグリシジルエーテルが好ましく、フェニルグリシジルエーテルが特に好ましい。
【0081】
(重合性二重結合含有エポキシド(b2))
(b2)成分は、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、ロジングリシジルエステル等が例示される。
【0082】
((b1)成分でも(b2)成分でもないエポキシド(b3))
(B)成分には、必要に応じて、(b1)成分でも(b2)成分でもないエポキシド(以下、(b3)成分)を含めてもよい。(b3)成分は、グリシジルトリエチルエーテル、ブチレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、ネオデカン酸グリシジルエステル等の脂肪族エポキシド;
1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル等のジエポキシド;
ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、エポキシ化大豆油等のポリエポキシド等が例示される。これらの中でも、得られる樹脂と後述の反応性希釈剤との相溶性、本発明のインキの硬化性、光沢等の観点から特にエポキシ化大豆油が好ましい。
【0083】
(b1)成分と、(b2)成分及び/又は(b3)成分とを併用する場合、それらの使用比率は特に限定されないが、モル比[(b1)成分/{(b2)成分及び/又は(b3)成分}]で1/9~9/1程度が好ましい。
【0084】
(B)成分の使用量は特に限定されないが、反応性希釈剤との相溶性や、インキの硬化性等の観点より、(A)成分100質量部に対し、(B)成分の使用量は10~200質量部程度が好ましく、10~150質量部程度がより好ましい。
【0085】
(C)カルボン酸無水物((C)成分)
(C)成分は、2種以上を併用できる。(C)成分は、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族カルボン酸無水物;
ヘキサヒドロ無水フタル酸及びメチルヘキサヒドロ無水フタル酸等の脂環族カルボン酸無水物;
無水グルタル酸、無水ピロメリット酸、無水アジピン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸及びブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族カルボン酸無水物;
上記酸無水物を原料とする重合体(無水マレイン酸単独重合体、無水マレイン酸-酢酸ビニル重合体、無水マレイン酸-スチレン重合体、無水マレイン酸-アクリロニトリル重合体等)等が例示される。
これらの中でも、得られる樹脂と後述の反応性希釈剤との相溶性や硬化性等の観点より前記芳香族カルボン酸無水物が、特に無水フタル酸が好ましい。
【0086】
(C)成分を使用する場合、(C)成分の使用量は特に限定されないが、反応性希釈剤との相溶性や、インキの硬化性等の観点より、(A)成分100質量部に対し、(C)成分の使用量は10~200質量部程度が好ましく、10~150質量部程度がより好ましい。
【0087】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を反応させる順番や反応条件は特に限定されない。具体的には[1]全成分をワンポットで反応させる方法、[2](A)成分の存在下、(C)成分を反応させた後、更に(B)成分及び(C)成分を反応させる方法が例示される。また、反応条件は、例えば温度が100~210℃程度、反応時間が30分~8時間程度である。また、各成分の反応途中又は反応終了後に反応系を減圧し、残留モノマーを除いても良い。
【0088】
また、前記反応には、各種公知の触媒下で行われ得る。触媒は2種以上を併用できる。触媒は、トリフェニルホスフィン、2-メチルイミダゾール、1-メチルイミダゾール、トリエチルアミン、ジフェニルアミン、ジアザビシクロウンデセン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、酸化亜鉛及びオクチル酸亜鉛等が例示される。触媒の使用量は特に限定されないが、(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部程度が好ましく、0.10~2質量部程度がより好ましい。
【0089】
[3.活性エネルギー線硬化型樹脂組成物]
本開示は、上記樹脂及び反応性希釈剤を含む、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を提供する。
【0090】
上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は複数の本発明の樹脂を含み得る。1つの実施形態において、上記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、樹脂中に構成単位2bを含む樹脂と樹脂中に構成単位2bを含まない樹脂の2種を含む。
【0091】
反応性希釈剤は、モノ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。反応性希釈剤は2種以上を併用できる。
【0092】
本開示において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート及びメタクリレートからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。同様に「(メタ)アクリル」とは「アクリル及びメタクリルからなる群より選択される少なくとも1つ」を意味する。
【0093】
(モノ(メタ)アクリレート)
モノ(メタ)アクリレートは、直鎖アルキルモノ(メタ)アクリレート、分岐アルキルモノ(メタ)アクリレート、シクロアルキルモノ(メタ)アクリレート、置換アルキルモノ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0094】
分岐アルキルモノ(メタ)アクリレートは、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0095】
シクロアルキルモノ(メタ)アクリレートは、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0096】
置換アルキルモノ(メタ)アクリレートは、ベンジル(メタ)アクリレート等が例示される。
【0097】
(ポリ(メタ)アクリレート)
ポリ(メタ)アクリレートは、アルキレンポリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、グリセロールポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0098】
アルキレンポリ(メタ)アクリレートは、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0099】
トリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレートは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0100】
ジトリメチロールプロパンポリ(メタ)アクリレートは、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0101】
ペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートは、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0102】
ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0103】
グリセロールポリ(メタ)アクリレートは、グリセロールトリ(メタ)アクリレート等が例示される。
【0104】
上記以外のポリ(メタ)アクリレートは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリマー(メタ)アクリレート等が例示される。
【0105】
本発明の樹脂と反応性希釈剤の質量比は特に限定されないが、相溶性、硬化性等のバランスを考慮すると、本発明の樹脂と反応性希釈剤の質量比((本発明の樹脂)/(反応性希釈剤))の上限は80/20、70/30、60/40、50/50、40/60、30/70等が例示され、下限は70/30、60/40、50/50、40/60、30/70、20/80等が例示される。上記比率の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、本発明の樹脂と反応性希釈剤の質量比((本発明の樹脂)/(反応性希釈剤))は、20/80~80/20程度が好ましく、20/80~60/40がより好ましい。
【0106】
(光重合開始剤)
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には更に光重合開始剤を含み得る。光重合開始剤は、2種以上を併用できる。光重合開始剤は、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-シクロへキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド、4-メチルベンゾフェノン等が例示される。
【0107】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対する光重合開始剤の含有量の上限は10、9、8、7、6、5、4、3、2質量部等が例示され、下限は9、8、7、6、5、4、3、2、1質量部等が例示される。上記含有量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中の光重合開始剤の含有量は、本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して1~10質量部程度が好ましい。
【0108】
(ラジカル重合禁止剤)
また、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には更にラジカル重合禁止剤を含み得る。ラジカル重合禁止剤は、2種以上を併用できる。ラジカル重合禁止剤は、メトキノン、ヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、ベンゾキノン等のキノン系重合禁止剤、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,4-ジ-t-ブチルフェノール、2-t-ブチル-4,6-ジメチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール等のアルキルフェノール系重合禁止剤、アルキル化ジフェニルアミン、フェノチアジン、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のアミン系重合禁止剤、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩、2,4-ジニトロフェノール、2-メチル-N-ニトロソアニリン等のニトロソアミン系重合禁止剤等が例示される。
【0109】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中のラジカル重合禁止剤の含有量は特に限定されないが、本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して上限は10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05質量部等が例示され、下限は9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01質量部等が例示される。上記含有量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、ラジカル重合禁止剤の含有量は本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して0.01~10質量部程度が好ましい。
【0110】
(添加剤)
本発明の活性エネルギー線硬化型樹脂組成物には、樹脂、反応性希釈剤、光重合開始剤、ラジカル重合禁止剤以外の成分を添加剤として含み得る。添加剤は、着色剤、光増感剤、酸化防止剤、光安定剤、レベリング剤等が例示される。
【0111】
活性エネルギー線硬化型樹脂組成物中の上記添加剤の含有量の上限は本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01質量部等が例示され、下限は0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0質量部等が例示される。上記含有量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、本発明の樹脂及び反応性希釈剤の合計100質量部に対して0~1質量部程度が好ましい。
【0112】
また本発明の樹脂100質量部に対する添加剤の含有量の上限は、1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、0.01質量部等が例示され、下限は0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0質量部等が例示される。上記含有量の範囲は適宜(例えば上記上限及び下限の値から選択して)設定され得る。1つの実施形態において、本発明の樹脂の合計100質量部に対して0~1質量部程度が好ましい。
【0113】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製方法は特に限定されない。上記調製方法は、前記本発明の樹脂及び反応性希釈剤、並びに必要に応じて光重合開始剤、ラジカル重合禁止剤及び添加剤を適当な温度で混合し、均質な溶液となるまで撹拌する方法等が例示される。
【0114】
なお、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、インキを調製しやすい粘度(100~600Pa・s/25℃)に調整するのがよい。粘度調整方法は、本発明の樹脂及び反応性希釈剤の比率を適宜変更する方法等が例示される。
【0115】
上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、相溶性及び硬化性に優れているため、活性エネルギー線硬化型インキ(特にオフセット印刷インキ)や活性エネルギー線硬化型塗料用バインダー樹脂組成物等に使用され得る。すなわち、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物は、活性エネルギー線硬化型インキ用樹脂組成物、オフセット印刷インキ用樹脂組成物、活性エネルギー線硬化型塗料用バインダー樹脂組成物となり得る。
【0116】
[4.硬化物]
本開示は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の硬化物を提供する。上記硬化物は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を基材に塗工し、活性エネルギー線で硬化させたものである。基材、塗工手段、塗工量及び硬化手段は、後述する「印刷物」の項目で述べるものと同様のものが例示される。
【0117】
[5.活性エネルギー線硬化型印刷インキ]
本開示は、上記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物及び顔料を含む、活性エネルギー線硬化型印刷インキを提供する。顔料は、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カドミウムレッド、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン系、キナクリドン系、フタロシアニン系、ペリレン系等の有機顔料等が例示される。インキ調製手段は、特に限定されず、3本ロールミル等が例示される。
【0118】
本発明のインキの組成は特に限定されないが、一例を示すならば、以下の通りである。
本発明の樹脂 10~30質量%程度
反応性希釈剤 40~79.9質量%程度
顔料 10~30質量%程度
(適宜添加可能な成分)
ラジカル重合禁止剤 0.01~1質量%程度
光重合開始剤 0~15質量%程度
添加剤 0~10質量%程度
【0119】
[6.印刷物]
本発明の印刷物は、活性エネルギー線硬化型オフセット印刷インキを基材に印刷し、硬化させたものである。
【0120】
基材は、紙(アート紙、キャストコート紙、フォーム用紙、PPC紙、上質コート紙、クラフト紙、ポリエチレンラミネート紙、グラシン紙等)の他、プラスチック基材(ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリエステル、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ノルボルネン系樹脂等)等が例示される。
【0121】
印刷方法(塗工方法)は、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、バーコーター塗工、メイヤーバー塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工等が例示される。
【0122】
印刷量(塗工量)は特に限定されないが、硬化後の質量が0.1~30g/m程度が好ましく、1~20g/m程度がより好ましい。
【0123】
硬化手段は電子線、紫外線が例示される。紫外線の光源は高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、UV-LED等が例示される。光量や光源配置、搬送速度は特に限定されないが、高圧水銀灯を使用する場合には、80~160W/cm程度の光量を有するランプ1灯に対して、搬送速度が5~50m/分程度が好ましい。
【実施例
【0124】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。但し、上述の好ましい実施形態における説明及び以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供するものではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。また、特に説明がない限り、各実施例及び比較例において、部又は%は質量基準である。
【0125】
<樹脂の合成例>
製造例1
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に酢酸ブチル100部を加え、滴下漏斗にスチレン60部、98%アクリル酸15部、メタクリル酸ブチル25部を仕込み。2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)10部を重合開始剤として添加し、140℃、1.5時間還流・撹拌下滴下重合を行い、1時間保温した。その後、160℃にし、溶媒を留去して酸価100mgKOH/g、重量平均分子量6,000のスチレン-アクリル樹脂(A-1)(以下、(A-1)という)を得た。続いて、撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に(A-1)100部、無水フタル酸100部、フェニルグリシジルエーテル100部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0126】
製造例2
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に酢酸ブチル100部を加え、滴下漏斗にスチレン55部、98%アクリル酸10部、アクリル酸2-エチルへキシル20部、アクリロイルモルホリン15部を仕込み。2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(ABN-E)10部を重合開始剤として添加し、140℃、1.5時間還流・撹拌下滴下重合を行い、1時間保温した。その後、160℃にし、溶媒を留去して酸価75mgKOH/g、重量平均分子量5,000のスチレン-アクリル樹脂(A-2)(以下、(A-2)という)を得た。続いて、撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に(A-2)50部、製造例1で得た(A-1)50部、無水フタル酸80部、フェニルグリシジルエーテル80部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0127】
製造例3
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に製造例1で得た(A-1)100部、無水フタル酸100部、フェニルグリシジルエーテル100部、エポキシ化大豆油(新日本理化(株)製)5部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0128】
製造例4
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に製造例2で得た(A-2)100部、無水フタル酸50部、フェニルグリシジルエーテル50部、エポキシ化大豆油(新日本理化(株)製)5部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0129】
製造例5
撹拌装置、冷却管、窒素導入管を備えた容器に製造例1で得た(A-1)100部、フェニルグリシジルエーテル25部を仕込み、140℃まで昇温した。次いで、トリフェニルホスフィン0.3部を添加した後、160℃で4時間撹拌した。その後、-0.08MPaで減圧し、樹脂を得た。
【0130】
製造例1~5で得られた樹脂について、以下の物性を測定した。
【0131】
<酸価>
JIS K5601に準拠する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0132】
<重量平均分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製、HLC-8320)を用いてポリスチレン検量線により測定した。結果を表1に示す。
【0133】
<軟化点>
JIS K5601に準拠する方法で測定した。結果を表1に示す。
【0134】
【表1】
【0135】
<活性エネルギー線硬化型樹脂組成物の調製>
実施例1
撹拌装置、冷却管を備えた反応容器に製造例1で得た樹脂40.0部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(荒川化学工業(株)製 ビームセット730)60.0部、重合禁止剤としてメトキノン(精工化学(株)製、以下同様)0.1部及びQ-1301(和光純薬工業(株)製、以下同様)0.05部を仕込み、120℃で1時間撹拌し、活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を得た。
【0136】
実施例2~5及び比較例1
樹脂の種類、樹脂とジトリメチロールプロパンテトラアクリレートの使用量をそれぞれ表2に変更したこと以外は実施例1と同様にして活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0137】
実施例1~5及び比較例1で得られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物について、以下の物性を測定した。
【0138】
<E型粘度>
JIS Z8803に準拠する方法で測定した。結果を表2に示す。
【0139】
【表2】
ジアリルフタレート樹脂:ダイソーダップA(大阪ソーダ製)
【0140】
<活性エネルギー線硬化型インキの調製>
墨顔料としてカーボンブラックを15.0部、実施例1で調製した活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を50.0部、ビームセット730を30部、メトキノンを0.1部、及び光重合開始剤としてイルガキュア907(BASF社製)5.0部を仕込み、3本ロールミルで常法により活性エネルギー線硬化型インキを調製した。実施例2~5及び比較例1についても同様に活性エネルギー線硬化型インキを調製した。
【0141】
前記のようにして調製した活性エネルギー線硬化型インキをRIテスター((株)明製作所製)を用いてコート紙に塗布し、紫外線照射機(80W/cm、照射距離25cm、コンベア速度8.0m/分)で紫外線照射し、印刷物を得た。
【0142】
<インキの性能評価>
実施例及び比較例のインキに付いて以下の試験を行った。
【0143】
<インキの硬化速度>
前記、印刷物作製の際に要した照射量を表3に示す。照射量が少なくても硬化しているものが硬化性良好である。
【0144】
<インキの光沢>
前記、印刷物作製により得られた硬化皮膜の光沢値を一体型光沢計HVG-2000(日本電色工業(株)製)で測定した。結果を表3に示す。光沢値が高いほど光沢が良好である。
【0145】
<インキの耐溶剤性>
前記、印刷物作製により得られた硬化皮膜を酢酸エチルを染み込ませた綿棒で40往復擦った後の塗膜表面の状態を目視で確認し、以下の基準に従って耐溶剤性を評価した。結果を表3に示す。
○:ほぼ変化なし
△:擦れ痕が残る
×:インキが消失し、基材が確認できる
【0146】
【表3】