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  • 特許-ヒートシールシート 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】ヒートシールシート
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/10 20060101AFI20220107BHJP
   D21H 19/30 20060101ALI20220107BHJP
   D21H 19/72 20060101ALI20220107BHJP
   D21H 19/82 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
B32B27/10
D21H19/30
D21H19/72
D21H19/82
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017249840
(22)【出願日】2017-12-26
(65)【公開番号】P2019115978
(43)【公開日】2019-07-18
【審査請求日】2020-01-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100106057
【弁理士】
【氏名又は名称】柳井 則子
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 淳
(72)【発明者】
【氏名】萬道 律雄
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/175299(WO,A1)
【文献】特開2008-184203(JP,A)
【文献】特開2009-209202(JP,A)
【文献】特開2000-355681(JP,A)
【文献】特開2017-154812(JP,A)
【文献】特開2004-060124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、前記紙基材の厚さ方向の少なくとも一方の側に積層されたヒートシール層とを備えるヒートシールシートであって、
前記紙基材が、原紙と、前記原紙の前記ヒートシール層側に形成された、ポリアクリルアミド樹脂を含有する下塗り層とを備え、前記紙基材の密度が0.70~1.20g/cmであり、前記紙基材の前記ヒートシール層側の表面のJIS P 8155:2010に準拠して測定される王研式平滑度が50~200秒であり、
前記ヒートシール層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体、又はアクリル酸エステルを含有し、
欧州規格EN-868-5に準拠して、下記積層体Aおよび下記積層体Bの前記ヒートシールシートと被着シートとの界面の剥離強度を測定したとき、積層体Aの剥離強度が積層体Bの剥離強度の50%以上であるヒートシールシート。
積層体A:前記ヒートシールシートと、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート基材の片面に厚さ50μmのポリエチレン層が積層された被着シートとを、前記ヒートシール層と前記ポリエチレン層とが接するように重ね、140℃、0.33kgf/cm、1秒間の条件でヒートシールした積層体。
積層体B:前記ヒートシールシートと、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート基材の片面に厚さ50μmのポリエチレン層が積層された被着シートとを、前記ヒートシール層と前記ポリエチレン層とが接するように重ね、160℃、0.33kgf/cm、1秒間の条件でヒートシールした積層体。
【請求項2】
前記ヒートシール層の坪量が0.5~15.0g/mである請求項1に記載のヒートシールシート。
【請求項3】
JIS P 8117:2009に準拠して測定される王研式透気度が700秒以下である請求項1または2に記載のヒートシールシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
手術や治療等に使用する器具類は、使用前に滅菌する必要がある。病院等では、メスや鉗子等の器具類が滅菌包装体内に入れられて密封された後、ガス滅菌法、高圧蒸気滅菌法、放射線滅菌法等で滅菌される。なかでも、低コストで簡便な点から高圧蒸気滅菌およびガス滅菌が多く用いられている。
【0003】
滅菌後は滅菌包装体を開封し、滅菌包装体内に収容されている器具類を取り出して使用する。病院等では、手術等の手袋をした状態でも滅菌包装体を容易に開封できることが求められる。開封が容易な滅菌包装体としては、ピールオープン方式の滅菌包装体が知られている。たとえば、器具類等を収容する収容部(凹部)を有するフィルムや成形容器(被着体)を、滅菌紙(ヒートシールシート)をヒートシールして密封する滅菌包装体が挙げられる。
【0004】
ヒートシールシートは、剥離時に紙基材の破壊や表面の毛羽立ち、紙片の脱落等が生じて器具類等が再汚染されないように優れたイージーピール性を有することが重要である。また、滅菌後のガス置換を効率的に行う際には充分な透気性を確保することも重要である。特許文献1には、優れたイージーピール性と透気性を兼ね備えたヒートシールシートとして、ポリアクリルアミド樹脂を含む紙基材の片面にヒートシール層が形成されたヒートシールシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-211089号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
器具類等を収容した滅菌包装体の製造においては、通常、加工機の放熱や昇温のバラツキ等の要因により、ヒートシールシートと被着体とのヒートシール温度を常に一定に保つことが難しい。そのため、特許文献1のような従来のヒートシールシートでは、ヒートシールシートと被着体の剥離強度に振れ幅が生じることがある。
【0007】
本発明は、ヒートシール温度が多少変動しても安定した剥離強度を確保できる、ヒートシール温度依存性の低いヒートシールシート、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下の構成を有する。
[1]紙基材と、前記紙基材の厚さ方向の少なくとも一方の側に積層されたヒートシール層とを備えるヒートシールシートであって、前記紙基材の密度が0.70~1.20g/cmであり、
欧州規格EN-868-5に準拠して、下記積層体Aおよび下記積層体Bの前記ヒートシールシートと被着シートとの界面の剥離強度を測定したとき、積層体Aの剥離強度が積層体Bの剥離強度の50%以上であるヒートシールシート。
積層体A:前記ヒートシールシートと、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート基材の片面に厚さ50μmのポリエチレン層が積層された被着シートとを、前記ヒートシール層と前記ポリエチレン層とが接するように重ね、140℃、0.33kgf/cm、1秒間の条件でヒートシールした積層体。
積層体B:前記ヒートシールシートと、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート基材の片面に厚さ50μmのポリエチレン層が積層された被着シートとを、前記ヒートシール層と前記ポリエチレン層とが接するように重ね、160℃、0.33kgf/cm、1秒間の条件でヒートシールした積層体。
[2]前記ヒートシール層の坪量が0.5~15.0g/mである[1]に記載のヒートシールシート。
[3]JIS P 8117:2009に準拠して測定される王研式透気度が700秒以下である[1]または[2]に記載のヒートシールシート。
[4]前記紙基材の前記ヒートシール層側の表面のJIS P 8155:2010に準拠して測定される王研式平滑度が50秒以上である[1]~[3]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[5]前記紙基材が、原紙と、前記原紙の前記ヒートシール層側に形成された、ポリアクリルアミド樹脂を含有する下塗り層とを備える[1]~[4]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[6]前記ヒートシール層の表面のTAPPI No.1:2000に準拠して測定されるワックスピックが20以上である[1]~[5]のいずれかに記載のヒートシールシート。
[7]JIS P 8117:2009に準拠して測定される王研式透気度が700秒以下である紙基材をカレンダー処理し、前記紙基材の厚さ方向の少なくとも一方の表面のJIS P 8155:2010に準拠して測定される王研式平滑度を50秒以上とした後、前記王研式平滑度が50秒以上の表面上にヒートシール剤を塗布してヒートシール層を形成するヒートシールシートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒートシールシートのヒートシール温度依存性が低くなり、ヒートシール温度が多少変動したとしてもヒートシールシートと被着体との安定した剥離強度を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のヒートシールシートの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[ヒートシールシート]
以下、本発明のヒートシールシートについて、図1に例示したヒートシールシート1を例に説明する。図1は、本発明のヒートシールシートの一実施形態を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明において例示される図の寸法等は一例であって、本発明はそれらに必ずしも限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0012】
本実施形態のヒートシールシート1は、紙基材2と、紙基材2の厚さ方向の一方の表面に設けられたヒートシール層3とを備える。
【0013】
(紙基材)
紙基材2としては、原紙と、原紙のヒートシール層3側に形成された、ポリアクリルアミド樹脂を含有する下塗り層とを備える紙基材を例示できる。
【0014】
原紙は、パルプスラリーを含む抄紙原料を抄紙したものである。抄紙原料は、パルプスラリーに内添薬品を添加することで調製される。
パルプスラリーに用いられるパルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ等が挙げられる。木材パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等が挙げられる。非木材パルプとしては、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ等が挙げられる。パルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。パルプ製造における蒸解方法や漂白方法には特に限定されない。パルプスラリーには、パルプ繊維以外の材料を副資材として配合してもよい。パルプ繊維以外の材料としては、レーヨン繊維やナイロン繊維、その他熱融着繊維等が挙げられる。
【0015】
パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。
パルプの叩解方法、叩解装置は特に限定されず、叩解効率が高いダブルディスクリファイナー(DDR)が好適に使用される。
【0016】
パルプの叩解度は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定されるフリーネス(以下、「標準フリーネス」ともいう。)として、250mL以上600mL以下が好ましく、350mL以上500mL以下がより好ましい。標準フリーネスが前記範囲の下限値以上であれば、紙基材の透気性が向上する。標準フリーネスが前記範囲の上限値以下であれば、紙基材の強度が向上し、イージーピール性が向上する。
一般に、叩解をあまり進めない状態では紙力は得られにくい。これは、パルプ繊維同士のからみが弱く、繊維間結合(水素結合)のポイントも少ないためと考えられる。ある程度叩解を進めることで紙力は向上する。一方、叩解を進めると、パルプ繊維同士のからみが増え、繊維間結合のポイントが増えるため、繊維間の空隙が減少して透気性が低下する。パルプの標準フリーネスが前記範囲内であれば、原紙、ひいては紙基材2の透気性を保ったまま紙力を充分に高くして優れたイージーピール性を得ることが容易になる。
【0017】
内添薬品としては、サイズ剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、硫酸バンド、カチオン化デンプン等の各種の定着剤が挙げられる。これらの他、歩留向上剤、消泡剤、填料、着色剤等を配合してもよい。紙力増強剤としては、原紙の強度を効率的に向上させ、優れたイージーピール性を付与できる点から、ポリアクリルアミド樹脂系紙力増強剤が好ましい。内添薬品は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
下塗り層は、ポリアクリルアミド樹脂を含有する。紙基材は、イージーピール性の点から、このように原紙のヒートシール層側にポリアクリルアミド樹脂を含有する下塗り層が形成されたものが好ましい。
ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位を有する重合体である。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの総称である。ポリアクリルアミド樹脂は、アクリルアミド単位およびメタクリルアミド単位のいずれか一方のみを有してもよく、両方を有してもよい。ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位以外の他の単位を有していてもよい。
【0019】
ポリアクリルアミド樹脂としては、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂、両性ポリアクリルアミド樹脂、ノニオン性ポリアクリルアミド樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ、製紙分野における紙力剤等として公知のものを使用でき、たとえば特開2002-317393号公報、特開2004-231901号公報、特開2014-205938号公報等に記載のものが挙げられる。
ポリアクリルアミド樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
ポリアクリルアミド樹脂としては、入手容易性の点では、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂が好ましい。
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂は、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、それらの塩等のアニオン性官能基を有するポリアクリルアミド樹脂である。アニオン性ポリアクリルアミド樹脂として、(メタ)アクリルアミドとアニオン性官能基を有する単量体(アクリル酸等)との共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミドの部分加水分解物等が挙げられる。
【0021】
ポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量(Mw)は、5万~50万が好ましく、5万~30万がより好ましい。Mwが前記範囲の下限値以上であれば、剥離時の紙基材2の表面の毛羽立ちを抑える効果が得られやすい。Mwが前記範囲の上限値以下であれば、下塗り剤中のポリアクリルアミド樹脂の濃度を高くしつつ、下塗り剤を低粘度にしやすいため、下塗り剤の調製および塗布が容易になる。
なお、ポリアクリルアミド樹脂のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリエチレンオキシド換算値である。
【0022】
ポリアクリルアミド樹脂は、分子内のアミド基とセルロースおよびヘミセルロース分子中の水酸基との間や、アミド基同士で水素結合を形成できる。下塗り層が形成されることで原紙の下塗り層側ではパルプ繊維間に作用する水素結合の数が増加し、パルプ繊維のネットワークの結合が強化される。これにより、ヒートシールシート1の剥離時に、紙基材2から剥離したヒートシール層3にパルプ繊維が取られにくくなる。そのため、紙基材2の破壊や表面の毛羽立ち、表面からの紙片の脱落等を抑制する効果が高まる。
【0023】
下塗り層は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアクリルアミド樹脂以外の他の成分を含有してもよい。
他の成分としては、デンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩等の水溶性高分子化合物、スチレン-ブタジエン共重合体エマルション、アクリル酸エステル共重合体エマルション、ウレタン樹脂、尿素樹脂、スチレン-アクリル樹脂エマルション、エチレン-アクリル樹脂エマルション等の水性高分子化合物、表面サイズ剤、離型剤、消泡剤、分散剤、濡れ剤、有色染料、有色顔料、白色顔料等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
下塗り層中のポリアクリルアミド樹脂の割合は、下塗り層の総質量に対し、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の割合が前記範囲の下限値以上であれば、イージーピール性に優れる。
【0025】
下塗り層中のポリアクリルアミド樹脂の含有量は、0.05~15g/mが好ましく、0.1~10g/mがより好ましく、0.2~5g/mがさらに好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、剥離時にはヒートシール層3が剥離しやすく、紙基材2の表面の毛羽立ちや基材破壊が生じにくい。ポリアクリルアミド樹脂の含有量が前記範囲の上限値以下であれば、ヒートシール時の接着ムラが生じにくい。
【0026】
紙基材2は、ポリアクリルアミド樹脂を含有する下塗り層を備えていなくてもよい。
優れたイージーピール性が得られる点では、紙基材が下塗り層を備えない場合でも、原紙にポリアクリルアミド樹脂が含浸されていることが好ましい。原紙中のポリアクリルアミド樹脂の濃度(原紙の厚さ方向における濃度)は、均一でもよく、原紙の表面から内側に向かって濃度が低下していくような濃度勾配を有していてもよい。
下塗り層の有無は、表面と中層部分をかみそり等で削いで熱分解GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析)等で分析することで確認できる。
【0027】
紙基材においては、原紙のヒートシール層側とは反対側の表面に塗膜が形成されていてもよい。
前記塗膜の成分は、特に限定されず、デンプン、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド樹脂、スチレンーブタジエン樹脂等の樹脂や、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン等の顔料が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0028】
紙基材2の坪量は、40g/m以上が好ましく、45g/m以上がより好ましい。紙基材2の坪量が前記下限値以上であれば、イージーピールに耐えうる強度が得られやすく、剥離時の基材破壊が起こりにくい。紙基材2の坪量の上限は特に限定されない。透気性の点では、紙基材2の坪量は、300g/m以下が好ましく、250g/m以下がより好ましく、200g/m以下がさらに好ましい。
紙基材2の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。
【0029】
紙基材2の密度は、0.70~1.20g/cmであり、0.75~1.10g/cmが好ましい。紙基材2の密度が前記範囲の下限値以上であれば、イージーピールに耐えうる強度が得られやすく、剥離時の基材破壊が起こりにくい。紙基材2の密度が前記範囲の上限値以下であれば、透気性を保ちやすい。
紙基材2の密度は、JIS P 8118:1998に準拠して厚さを測定し、厚さと坪量の測定値から計算で求められる。
【0030】
紙基材2のヒートシール層3側の表面のJIS P 8155:2010に準拠して測定される王研式平滑度(以下、単に「平滑度」ともいう。)は、50秒以上が好ましく、50~200秒がより好ましく、100~200秒がさらに好ましい。紙基材2の平滑度が下限値以上であれば、紙基材2上に形成されるヒートシール層3の厚みムラがより小さくなる。これにより、ヒートシールシートをヒートシールした後の剥離強度の温度依存性が低減される。
紙基材2の平滑度は、ヒートシール層を形成する前にカレンダー処理をすることによって高くすることができる。
【0031】
紙基材2は、たとえば以下の方法で製造できる。
パルプスラリーに内添薬品を添加して調製した抄紙原料を抄紙して原紙を得る。ポリアクリルアミド樹脂、および必要に応じて用いる他の成分を含む下塗り剤を原紙表面に塗布し、乾燥して下塗り層を形成する。通常、塗布された下塗り剤の少なくとも一部は原紙に浸み込むため、原紙にはポリアクリルアミド樹脂の一部が含まれる。原紙に浸み込まなかった下塗り剤が乾燥され、ポリアクリルアミド樹脂を含有する下塗り層が形成される。
【0032】
抄紙機の形式は、特に限定されず、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等が挙げられる。
【0033】
下塗り剤は、液体媒体を含むことが好ましい。液体媒体としては、ポリアクリルアミド樹脂を溶解するものが好ましく、たとえば水が挙げられる。
下塗り剤中のポリアクリルアミド樹脂の濃度は、下塗り剤中の総固形分(100質量%)に対し、50~100質量%が好ましく、80~100質量%がより好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の濃度が前記範囲の下限値以上であれば、優れたイージーピール性が得られやすい。なお、総固形分は、下塗り剤の全量から液体媒体を除いた量であり、ポリアクリルアミド樹脂と他の成分との合計である。
【0034】
原紙のヒートシール層3側への下塗り剤の塗布量は、ポリアクリルアミド樹脂の乾燥塗布量に換算して、0.05~15g/mが好ましく、0.1~10g/mがより好ましく、0.2~5g/mがさらに好ましい。塗布量が前記範囲の下限値以上であれば、ヒートシール層3が剥離しやすく、紙基材2の表面の毛羽立ちや基材破壊が生じにくい。塗布量が前記範囲の上限値以下であれば、ヒートシール時の接着ムラが生じにくい。
【0035】
下塗り剤の塗布方法としては、特に限定されず、各種公知の湿式塗布法を利用できる。たとえば抄紙機のオンマシンサイズプレス装置やトランスファーロールコーター(シムサイザー、ゲートロールコーター等)、スプレー装置等を利用できる。オフマシン式の塗布方法としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、シムサイザー、ゲートロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター等を用いる方法が挙げられる。
操業性、生産性を考慮すれば、下塗り剤の塗布および乾燥はオンマシン式で行うことが好ましい。したがって、原紙を抄紙する抄紙機は、オンマシンで塗工機が装備されているものが好ましい。塗工機が装備されている抄紙機の形式は、特に限定されない。
【0036】
原紙のヒートシール層側とは反対側の表面に塗膜を形成する場合、塗膜を形成する塗布液は、水等の液体媒体を含むことが好ましい。
原紙のヒートシール層側とは反対側への塗布液の塗布量は、固形分量に換算して、5g/m以下が好ましく、0.01~3g/mがより好ましく、0.1~2g/mがさらに好ましい。前記塗布量が前記範囲の上限値以下であれば、透気性を保ちやすい。
【0037】
(ヒートシール層)
この例では、紙基材2の一方の表面に一様にヒートシール層3が設けられている。なお、本発明のヒートシールシートでは、紙基材の表面に部分的にヒートシール層が設けられていてもよい。紙基材の表面においてヒートシール層が占める割合は適宜設定できる。
【0038】
ヒートシール層3を構成する材料としては特に限定されず、各種熱接着性を発現する材料が使用でき、熱接着される被着体の材質や熱接着条件に応じて適宜選択される。具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下、「EVA」ともいう。)、アクリル酸エステル重合体、ポリエチレン、ポリエチレン-ポリブテン混合体等が挙げられる。「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の総称である。ヒートシール層3を構成する材料は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ヒートシール層3は、たとえば、上記の材料と液体媒体とを含むヒートシール剤を、紙基材2の一方の面に塗布し乾燥することにより形成できる。
ヒートシール剤は、上記の材料が水に溶解または分散した水系ヒートシール剤でもよく、上記の材料が溶剤に溶解した溶剤系ヒートシール剤でもよい。
水系ヒートシール剤としては、たとえば、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体エマルション、アクリル酸エステル重合体エマルション、ポリエチレンエマルション、ポリエチレン-ポリブテン混合体エマルション等が挙げられる。これらのなかでも、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸エステルエマルション、ポリエチレンエマルションが、安定した剥離力を発現し、かつISO2758に準拠して測定した破裂強度を上昇させることなく紙基材表面の毛羽立ちを抑える効果が高いため、好ましい。
【0040】
ヒートシール層3の坪量(ヒートシール剤の乾燥塗布量)は、ヒートシール層3が接着される被着体の材質やヒートシール条件に応じて適宜選択される。
ヒートシール層3の坪量は、0.5~15.0g/mが好ましく、1.0~8.0g/mがより好ましい。ヒートシール層3の坪量が前記範囲の下限値以上であれば、充分な熱接着力が得られやすい。ヒートシール層3の坪量が前記範囲の上限値以下であれば、剥離時に紙基材2の破壊が発生しにくい。また、ヒートシール層3が曳糸性を発現しにくく、被収容物の汚染が生じにくい。
【0041】
ヒートシール層3の表面強度は、TAPPI No.1:2000に準拠して測定されるワックスピックで、20以上が好ましく、23~32がより好ましく、26~32がさらに好ましい。ワックスピックが前記範囲の下限値以上であれば、ヒートシールシートを剥離した際の紙基材の破壊や、表面の毛羽立ちを防止できる。
【0042】
ヒートシールシート1は、ヒートシールシート1と被着シートとを積層した積層体Aおよび積層体Bについて、欧州規格EN-868-5に準拠して測定したヒートシールシート1と被着シートとの界面の剥離強度が特定の条件を満たす。
【0043】
被着シートは、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート基材の片面に厚さ50μmのポリエチレン層が積層されたシートである。
積層体Aは、ヒートシールシート1と被着シートとを、ヒートシール層3と被着シートのポリエチレン層とが接するように重ね、140℃、0.33kgf/cm、1秒間の条件でヒートシールした積層体である。
積層体Bは、ヒートシールシート1と被着シートとを、ヒートシール層3と被着シートのポリエチレン層とが接するように重ね、160℃、0.33kgf/cm、1秒間の条件でヒートシールした積層体である。
【0044】
積層体Aのヒートシールシート1と被着シートとの界面の剥離強度をN140、積層体Bのヒートシールシート1と被着シートとの界面の剥離強度をN160とする。
ヒートシールシート1のN140は、N160に対して、50%以上であり、55%以上が好ましく、65%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。N160に対するN140の比率が下限値以上であるヒートシールシート1は、ヒートシールした際の剥離強度の温度依存性が小さく、かつイージーピール性に優れる。
【0045】
ヒートシールシート1のJIS P 8117:2009に準拠して測定される王研式透気度(以下、単に「透気度」ともいう。)は、700秒以下が好ましく、500秒以下がより好ましく、300秒以下がさらに好ましい。透気度が前記上限値以下であれば、空気や水蒸気が透過しやすい。ヒートシールシート1の透気度の下限値は、特に限定されず、たとえば5秒とすることができる。
ヒートシールシート1の透気度は、パルプの標準フリーネス、紙基材2の坪量、下塗り剤の塗布量等により調節できる。
【0046】
ヒートシールシート1の用途は特に限定されないが、滅菌包装体に好適に使用できる。たとえば、ヒートシールシート1を包装紙、フィルム、成形容器等の被着体にヒートシールすることで滅菌包装体を形成できる。滅菌包装体は、たとえば互いにヒートシールされたヒートシールシート1と被着体の間において、器具類等の収容物を収容するための空間を有する。
ヒートシールシート1を被着体から剥離する際は、紙基材2とヒートシール層3の間で容易に剥離が生じ、ヒートシール層3が被着体側に残存する。
【0047】
被着体の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル樹脂等が挙げられる。
【0048】
以上説明したように、本発明のヒートシールシートにおいては、N160に対するN140の比率が50%以上に制御されており、ヒートシールした際の剥離強度の温度依存性が小さい。そのため、滅菌包装体等の製造時にヒートシール温度が多少変動しても安定した剥離強度を発現し、かつ優れたイージーピール性を確保できる。また剥離時に紙基材の破壊や毛羽立ち、紙片の発生等を安定して抑制できる。
また、本発明のヒートシールシートでは、充分な透気性を維持することにより、エチレンオキサイドガス(EOG)滅菌後のガス置換を実施する際もガス置換を効率良く行える。
【0049】
なお、本発明のヒートシールシートは、ヒートシールシート1には限定されない。ヒートシールシート1における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、本発明のヒートシールシートは、紙基材の厚さ方向の両側にヒートシール層が積層されていてもよい。
【0050】
本発明のヒートシールシートは、紙基材とヒートシール層との間に他の層を備えていてもよい。他の層としては、水蒸気バリア層、酸素バリア層、印刷層、印刷適性向上層、オーバープリント層、遮光層等が挙げられる。紙基材とヒートシール層との間に設けられる他の層は、1層でもよく、2層以上でもよい。
また、本発明の効果を損なわない範囲で紙基材の両面に印刷層を備えてもよく、また印刷層上にさらにオーバープリント層を備えてもよい。
【0051】
[ヒートシールシートの製造方法]
本発明のヒートシールシートの製造方法の一例として、ヒートシールシート1の製造方法について説明する。ヒートシールシート1は、以下の製造方法で製造できる。
透気度が700秒以下である紙基材2をカレンダー処理し、紙基材2の厚さ方向の少なくとも一方の表面の平滑度を50秒以上とする。次いで、紙基材2の平滑度が50秒以上の表面上にヒートシール剤を塗布してヒートシール層3を形成し、ヒートシールシート1を得る。
【0052】
カレンダー処理により紙基材2の表面の平滑度が50秒以上とされることで、厚さが均一なヒートシール層3を形成できる。そのため、ヒートシールシート1を被着体にヒートシールした際に発現する剥離強度が安定し、温度依存性も低減される。また、ヒートシール温度にかかわらず優れたイージーピール性を確保できる。ヒートシール剤を塗布し、乾燥した後にカレンダー処理を行っても剥離強度の温度依存性の低減効果は充分に得られない。
【0053】
カレンダー処理後の紙基材2のヒートシール層3を形成する側の表面の平滑度は、50秒以上が好ましく、50~200秒がさらに好ましく、100~200秒がより好ましい。平滑度が下限値以上であれば、ヒートシールした際の剥離強度の温度依存性が小さいヒートシールシート1が得られる。
【0054】
カレンダー処理としては、紙基材2の平滑度を高めやすい点から、スーパーカレンダーによる高温多段加圧処理が好ましい。スーパーカレンダーとは、金属ロールまたは樹脂ロールからなるカレンダーロールを交互に並べ、連続的にカレンダー加工する手法をいう。なお、スーパーカレンダーによる高温多段加圧処理以外の公知のカレンダー処理を用いてもよい。
【0055】
ヒートシール剤としては、ヒートシール層3を構成する材料と液体媒体とを含むものが好ましく、前記材料が水に溶解または分散した水系ヒートシール剤でもよく、前記材料が溶剤に溶解した溶剤系ヒートシール剤でもよい。
水系ヒートシール剤としては、たとえば、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体エマルション、アクリル酸エステル重合体エマルション、ポリエチレンエマルション、ポリエチレン-ポリブテン混合体エマルション等が挙げられる。なかでも、エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸エステルエマルション、ポリエチレンエマルションが好ましい。これらは、安定した剥離力を発現し、かつISO2758に準拠して測定した破裂強度を上昇させることなく紙基材表面の毛羽立ちを抑える効果が高い。
【0056】
ヒートシール剤の塗布方法としては、特に限定されず、各種公知の湿式塗布法を利用でき、たとえば下塗り剤の塗布方法と同様の方法が挙げられる。
【0057】
ヒートシール剤の塗布量は、乾燥塗布量として、0.5~15.0g/mが好ましく、1.0~8.0g/mがより好ましい。ヒートシール剤の塗布量が前記範囲の下限値以上であれば、充分な熱接着力が得られやすい。ヒートシール剤の塗布量が前記範囲の上限値以下であれば、剥離時に紙基材2の破壊が発生しにくい。また、ヒートシール層3が曳糸性を発現しにくく、被収容物の汚染が生じにくい。
乾燥は、塗布面と接触しないエアードライヤーや赤外線ヒーター等の乾燥設備による乾燥が好ましい。シリンダードライヤーによる塗布面直接接触方式では、ドライヤーやカンバスが汚染する虞がある。
【0058】
以上説明したように、本発明の製造方法においては、ヒートシールした際の剥離強度の温度依存性が小さいヒートシールシートが得られる。そのため、滅菌包装体等の製造時にヒートシール温度が多少変動しても優れたイージーピール性を確保でき、剥離時に紙基材の破壊や毛羽立ち、紙片の発生等を安定して抑制できる。また、充分な透気性を維持することで、滅菌後のガス置換を実施する際もガス置換を効率良く行える。
【実施例
【0059】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
[実施例1]
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をDDRにて標準フリーネスが400mLになるように叩解し、パルプスラリーを得た。前記パルプスラリーに下記の内添薬品を添加して抄紙原料を得た。なお、内添薬品の各成分の割合は絶乾状態でのパルプ質量に対する割合である。
(内添薬品)
硫酸バンド:0.5%
カチオン化澱粉(ピラー3YK、ピラースターチ社製)で分散させたアルケニルコハク酸サイズ剤(ファイブラン81K、荒川化学工業社製):0.05%
両性ポリアクリルアミド系樹脂紙力増強剤(PAM)(商品名:ポリストロンOFT-3、荒川化学工業社製):0.7%
エピクロル樹脂湿潤紙力増強剤:0.4%
【0060】
前記抄紙原料を長網抄紙機で抄紙して原紙を得た。抄紙機に付設されたゲートロールコーターにて、下記の下塗り剤Xを、原紙の片面に乾燥後の塗布量が0.5g/mとなるように塗布し、乾燥した。次いで、金属ロールと樹脂ロールとを交互に合計で4段並べたスーパーカレンダーによりカレンダー処理を行って紙基材を得た。紙基材の坪量は60g/m、密度は0.75g/cm、下塗り層を形成した側の表面の平滑度は70秒、ワックスピックは26であった。
下塗り剤X:アニオン性ポリアクリルアミド樹脂(質量平均分子量20万)の水溶液(荒川化学工業社製のポリマセット(登録商標)512を水で希釈してアニオン性ポリアクリルアミド樹脂濃度を9質量%に調整したもの)。
【0061】
前記紙基材の下塗り層を形成した側の表面に、エアーナイフコーターを用いて下記のヒートシール剤Yを乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるように塗布し、乾燥してヒートシール層を形成し、ヒートシールシートを得た。
ヒートシール剤Y:エチレン-酢酸ビニル共重合体エマルション系ヒートシール剤(商品名:EA-H700、東洋インキ社製)30質量部、アクリルエマルジョン(商品名:ヨドゾールAD-194、ヘンケルジャパン社製)70質量部、および消泡剤(商品名:SNデフォーマー777、サンノプコ社製)0.05質量部を混合したヒートシール剤。
【0062】
[実施例2]
実施例1の紙基材の製造において、スーパーカレンダーの金属ロールと樹脂ロールの合計を4段とし、プレス圧を上げてカレンダー処理を強化した以外は実施例1と同様にして紙基材を得た。紙基材の坪量は60g/m、密度は0.80g/cm、下塗り層を形成した側の表面の平滑度は130秒であった。この紙基材を用いる以外は、実施例1と同様にしてヒートシールシートを製造した。
【0063】
[実施例3]
実施例1と同様にして紙基材を得た。また、ヒートシール剤Yの乾燥後の塗布量を3.0g/mに変更した以外は、実施例1と同様にしてヒートシールシールを製造した。
【0064】
[実施例4]
パルプスラリーの標準フリーネスを300mLに変更した以外は、実施例1と同様にして紙基材を製造し、ヒートシールシートを製造した。
【0065】
[比較例1]
カレンダー処理を行わない以外は、実施例1と同様にして紙基材を得た。紙基材の坪量は60g/m、密度は0.70g/cm、下塗り層を形成した側の表面の平滑度は20秒であった。この紙基材を用いる以外は、実施例1と同様にしてヒートシールシートを製造した。
【0066】
[透気度]
ヒートシールシートの透気度は、JIS P 8117:2009に準拠して測定した。
【0067】
[平滑度]
紙基材の平滑度は、JIS P 8155:2010に準拠して測定した。
【0068】
[ワックスピック]
紙基材のワックスピックは、TAPPI No.1:2000に準拠して測定した。
【0069】
[剥離強度の測定および剥離強度の温度依存性の評価]
厚さ12μmのPET基材の片面に厚さ50μmのポリエチレン層が積層された被着シートを作製した。ポリエチレン層を形成するポリエチレンとして、ジェイフィルム社製IMX-L-Aを用いた。
各例のヒートシールシートと被着シートとを、ヒートシールシートのヒートシール層と被着シートのポリエチレン層とが接するように重ねた。熱プレス試験機を用い、140℃、0.33kgf/cm、1秒間の条件で被着シートとヒートシールシートとをヒートシールして積層体Aを作製した。ヒートシール条件を160℃、0.33kgf/cm、1秒間に変更した以外は、積層体Aと同様にして積層体Bを作製した。積層体A、Bをそれぞれ断裁して幅15mmの矩形状の測定用サンプルを作製した。
JIS P 8113:2006に準拠した引張試験機としてオリエンテック社製のテンシロンRTC-1250Aを用いた。欧州規格EN-868-5に準拠し、測定用サンプルの被着シート、ヒートシールシートのそれぞれの端部をチャッキングし、剥離速度200mm/分の90°ピール法で剥離強度を測定した。積層体Aの剥離強度をN140、積層体Bの剥離強度をN160とし、N160に対するN140の比率(%)をヒートシールの剥離強度の温度依存性の指標とした。
結果を表1に示す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示すように、実施例1~4のヒートシールシートはN160に対するN140の比率が50%以上であり、前記比率が50%未満の比較例1のヒートシールシートに比べて剥離強度の温度依存性が小さかった。
【符号の説明】
【0072】
1…ヒートシールシート、2…紙基材、3…ヒートシール層。
図1