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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-02-04
(54)【発明の名称】ビスフェノール化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/20 20060101AFI20220128BHJP
   C07C 37/88 20060101ALI20220128BHJP
   C07C 39/16 20060101ALI20220128BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220128BHJP
【FI】
C07C37/20
C07C37/88
C07C39/16
C07B61/00 300
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018003329
(22)【出願日】2018-01-12
(65)【公開番号】P2018115154
(43)【公開日】2018-07-26
【審査請求日】2020-08-21
(31)【優先権主張番号】P 2017005331
(32)【優先日】2017-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】中村 健史
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼見 芳恵
(72)【発明者】
【氏名】前田 智子
(72)【発明者】
【氏名】住谷 直子
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-097742(JP,A)
【文献】特開昭60-260541(JP,A)
【文献】特開昭62-195009(JP,A)
【文献】特開2007-269711(JP,A)
【文献】特開2015-209490(JP,A)
【文献】特開平05-194294(JP,A)
【文献】特表2015-507630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 37/00
C07C 39/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルデヒド及びフェノール化合物を原料とし、酸触媒を用いるビスフェノール化合物の製造方法において、前記アルデヒドに対して10~5,000質量ppmの酸化防止剤の存在下において前記ビスフェノール化合物を生成させる工程を有するビスフェノール化合物の製造方法であって、該酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、及びアクリレート系酸化防止剤から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする、ビスフェノール化合物の製造方法。
【請求項2】
前記アルデヒドが、炭素数6~12の脂肪族アルデヒドであることを特徴とする、請求項1に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
【請求項3】
前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
【請求項4】
前記酸化防止剤が、α-トコフェロールを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビスフェノール化合物の製造方法に関する。詳しくは、着色の少ないビスフェ
ノール化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つのフェノール構造がメチレン構造にて架橋されたビスフェノール化合物は、ポリカ
ーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリレート樹脂、ポリアリレート樹脂等の熱可塑
性樹脂の原料や、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂等の
熱硬化性樹脂原料、硬化剤、天然ゴム、合成ゴム及び潤滑油などの酸化防止剤、感熱記録
体の顕色剤等のほか、殺菌剤、酸化防止剤、防かび剤、難燃剤等の添加剤として広く使用
されており、化学工業上重要な化合物である。ビスフェノール化合物はその製造原料に由
来する構造の違いによって、ビスフェノールAなどのメチレン架橋部に置換基を2有する
化合物(以下、「ケトン型ビスフェノール化合物」と呼称することがある)群、およびビ
スフェノールFやビスフェノールEなどのメチレン架橋部に置換基を0または1有する化
合物(以下、「アルデヒド型ビスフェノール化合物」と呼称することがある)群に分類で
きる。これらの中でもアルデヒド型ビスフェノール化合物は、メチレン架橋部に水素原子
を有することによる酸化防止特性や、化合物の対称性向上に由来する融点の向上および樹
脂とした際の結晶特性の向上など、ケトン型ビスフェノール化合物にはない種々の特異な
特性の発現が期待されることから、工業的な応用が期待されている化合物である。特に脂
肪族アルデヒドとフェノール化合物から製造されるビスフェノール化合物は、低融点かつ
流動性に優れることが期待され、また、樹脂としたときにアルデヒド由来のアルキル鎖に
よる新規な物性を与えることが予想されることから、特に重要な化合物である。
ビスフェノール化合物の製造は、通常アルデヒド類やケトン類とフェノール化合物を酸
触媒存在下で縮合させることにより行う。脂肪族アルデヒドとフェノール化合物からのビ
スフェノール化合物の製造については、特許文献1に塩酸触媒で実施した例が、非特許文
献1に硫酸触媒で実施した例が、それぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭59-131623号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】工業化学雑誌、1965年(59号)94頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法で得られたビスフェノール化合物において着色性の記
載がなく、さらに発明者らが検討したところ縮合反応後の混合物が黄色に着色する傾向に
あり、透明性が要求されるポリカーボネート樹脂等の樹脂原料としては好ましくないこと
が判明した。また、非特許文献1の方法で得られたビスフェノール化合物は赤褐色である
との記載があり、やはりポリカーボネート樹脂等の樹脂原料としては好ましくない。さら
に、発明者らの検討により、このような反応液の着色傾向は他の酸触媒を用いた場合でも
同様であることが判明した。以上からアルデヒドとフェノール化合物から、着色性の少な
いビスフェノール化合物を製造する方法がないという課題が見出された。
本発明は、上記課題に鑑み、アルデヒドとフェノール化合物からの着色性を低減させた
ビスフェノール化合物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討を重ねた結果、アルデヒドとフェノール化合物を原料としてビス
フェノール化合物を製造する工程において、該製造工程に特定の添加剤を一定量の範囲で
存在させることで、着色性を低減させたビスフェノール化合物を容易に提供できることを
見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[4]に存する。
【0007】
[1] アルデヒド及びフェノール化合物を原料とするビスフェノール化合物の製造方法
において、前記アルデヒドに対して10~5,000質量ppmの酸化防止剤の存在下に
おいて前記ビスフェノール化合物を生成させる工程を有することを特徴とする、ビスフェ
ノール化合物の製造方法。
[2] 前記アルデヒドが、炭素数6~12の脂肪族アルデヒドであることを特徴とする
、[1]に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[3] 前記酸化防止剤が、フェノール系酸化防止剤を含むことを特徴とする、[1]又
は[2]に記載のビスフェノール化合物の製造方法。
[4] 前記酸化防止剤が、α-トコフェロールを含むことを特徴とする、[1]~[3
]のいずれかに記載のビスフェノール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アルデヒドとフェノール化合物を原料とするビスフェノール化合物で
あり、かつ樹脂としたときに悪影響を与える着色性の少ないビスフェノール化合物を容易
に提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本
発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限
定されるものではない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前
後の数値または物性値を含む表現として用いるものとする。
【0010】
<アルデヒド>
本発明で使用するアルデヒドは、脂肪族アルデヒドであることが好ましく、特に、炭素
数2~21の脂肪族アルデヒドであることが好ましい。その具体例としては、直鎖状アル
キルアルデヒド、分岐鎖状アルキルアルデヒド、一部環状構造を含む脂肪族アルデヒドお
よび不飽和結合を含む脂肪族アルデヒド等が挙げられる。
【0011】
直鎖状アルキルアルデヒドの具体例としては、アセトアルデヒド、n-プロパナール、
n-ブタナール、n-ペンタナール、n-ヘキサナール、n-ヘプタナール、n-オクタ
ナール、n-ノナナール、n-デカナール、n-ウンデカナール、n-ドデカナール、n
-トリデカナール、n-テトラデカナール、n-ペンタデカナール、n-ヘキサデカナー
ル、n-ヘプタデカナール、n-オクタデカナール、n-ノナデカナール、n-ノナデシ
ルアルデヒド等が挙げられるが、n-ノナナール、n-デカナール、n-ウンデカナール
、n-ドデカナールがより好ましく、n-ドデカナールが特に好ましい。
【0012】
分岐鎖状アルキルアルデヒドの具体例としては、イソプロピルアルデヒド、メチルプロ
ピルアルデヒド、メチルブチルアルデヒド、メチルペンチルアルデヒド、メチルヘキシル
アルデヒド、メチルヘプチルアルデヒド、メチルオクチルアルデヒド、メチルノニルアル
デヒド、メチルデシルアルデヒド、メチルウンデシルアルデヒド、メチルドデシルアルデ
ヒド、メチルトリデシルアルデヒド、メチルテトラデシルアルデヒド、メチルペンタデシ
ルアルデヒド、メチルヘキサデシルアルデヒド、メチルヘプタデシルアルデヒド、メチル
オクタデシルアルデヒド、メチルノナデシルアルデヒド、
【0013】
t-ブチルアルデヒド、ジメチルプロピルアルデヒド、ジメチルブチルアルデヒド、ジ
メチルペンチルアルデヒド、ジメチルヘキシルアルデヒド、ジメチルヘプチルアルデヒド
、ジメチルオクチルアルデヒド、ジメチルノニルアルデヒド、ジメチルデシルアルデヒド
、ジメチルウンデシルアルデヒド、ジメチルドデシルアルデヒド、ジメチルトリデシルア
ルデヒド、ジメチルテトラデシルアルデヒド、ジメチルペンタデシルアルデヒド、ジメチ
ルヘキサデシルアルデヒド、ジメチルヘプタデシル、ジメチルオクタデシルアルデヒド、
【0014】
トリメチルペンチルアルデヒド、トリメチルヘキシルアルデヒド、トリメチルヘプチル
アルデヒド、トリメチルトリメチルオクチルアルデヒド、トリメチルノニルアルデヒド、
トリメチルデシル、トリメチルウンデシルアルデヒド、トリメチルドデシルアルデヒド、
トリメチルトリデシルアルデヒド、トリメチルテトラデシルアルデヒド、トリメチルペン
1タデシルアルデヒド、トリメチルヘキサデシルアルデヒド、トリメチルヘプタデシルア
ルデヒド、
【0015】
エチルプロピルアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、エチルペンチルアルデヒド、エ
チルヘキシルアルデヒド、エチルヘプチルアルデヒド、エチルオクチルアルデヒド、エチ
ルノニルアルデヒド、エチルデシルアルデヒド、エチルウンデシルアルデヒド、エチルド
デシルアルデヒド、エチルトリデシルアルデヒド、エチルテトラデシルアルデヒド、エチ
ルペンタデシルアルデヒド、エチルヘキサデシルアルデヒド、エチルヘプタデシルアルデ
ヒド、エチルオクタデシルアルデヒド、
【0016】
プロピルブチルアルデヒド、プロピルペンチルアルデヒド、プロピルヘキシルアルデヒ
ド、プロピルヘプチルアルデヒド、プロピルオクチルアルデヒド、プロピルノニルアルデ
ヒド、プロピルデシル、プロピルウンデシルアルデヒド、プロピルドデシルアルデヒド、
プロピルトリデシルアルデヒド、プロピルテトラデシルアルデヒド、プロピルペンタデシ
ルアルデヒド、プロピルヘキサデシルアルデヒド、プロピルヘプタデシルアルデヒド等が
挙げられるが、イソプロピルアルデヒド、メチルプロピルアルデヒド、メチルブチルアル
デヒド、メチルペンチルアルデヒド、メチルヘキシルアルデヒド、メチルヘプチルアルデ
ヒド、エチルプロピルアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、エチルペンチルアルデヒド
、エチルヘキシルアルデヒド、エチルヘプチルアルデヒド、等のメチル基もしくはエチル
基を分岐鎖として有する分岐鎖状アルキルアルデヒドが好ましく、エチルペンチルアルデ
ヒドが特に好ましい。上記分岐状アルキルアルデヒドの例において、分岐の位置は任意で
ある。
【0017】
一部環状構造を有する脂肪族アルデヒドの具体例としては、ホルミルシクロプロパン、
ホルミルシクロブタン、ホルミルシクロペンタン、ホルミルシクロヘキサン、ホルミルシ
クロヘプタン、ホルミルシクロオクタン、ホルミルシクロノナン、ホルミルシクロデカン
、ホルミルシクロウンデカン、ホルミルシクロドデカン、ホルミルメチルシクロペンタン
、ホルミルメチルシクロヘキサン、ホルミルメチルシクロヘプタン、ホルミルメチルシク
ロオクタン、ホルミルメチルシクロデカン、ホルミルメチルシクロウンデカン、ホルミル
メチルシクロドデカン、ホルミルジメチルシクロペンタン、ホルミルジメチルシクロヘキ
サン、ホルミルジメチルシクロヘプタン、ホルミルジメチルシクロオクタン、ホルミルジ
メチルシクロノナン、ホルミルジメチルシクロデカン、ホルミルジメチルシクロウンデカ
ン、ホルミルジメチルシクロドデカン、ホルミルエチルシクロペンタン、ホルミルエチル
シクロヘキサン、ホルミルエチルシクロヘプタン、ホルミエチルシクロオクタン、ホルミ
ルエチルシクロノナン、ホルミルエチルシクロデカン、ホルミルエチルシクロウンデカン
、ホルミルエチルシクロドデカン、ホルミルジエチルシクロヘプタン、ホルミルジエチル
シクロオクタン、ホルミルジエチルシクロノナン、ホルミルジエチルシクロデカン、ホル
ミルジエチルシクロウンデカン、ホルミルジエチルシクロドデカン、ホルミルプロピルシ
クロペンタン、ホルミルプロピルシクロヘキサン、ホルミルプロピルシクロヘプタン、ホ
ルミルプロピルシクロオクタン、ホルミルプロピルシクロノナン、ホルミルプロピルシク
ロデカン、ホルミルプロピルシクロウンデカン、ホルミルプロピルシクロドデカン、ホル
ミルシクロヘキシルシクロヘキサン、5-ノルボルナン-2-カルボキシアルデヒド等が
挙げられるが、ホルミルシクロペンタン、ホルミルシクロヘキサン、ホルミルシクロヘプ
タン、ホルミルシクロオクタン、5-ノルボルナン-2-カルボキシアルデヒド等の炭素
数6~9の環状アルキルアルデヒドが好ましく、ホルミルシクロヘキサンが特に好ましい

なお、上記環状アルキルアルデヒドの例において、ホルミル基の置換位置は任意である
【0018】
不飽和構造を有するアルキルアルデヒドの具体例としては、上記直鎖状アルキルアルデ
ヒド、分岐状アルキルアルデヒド、及び一部環状構造を有するアルキルアルデヒドの構造
中に1つ以上の炭素-炭素二重結合をもつ構造のものであれば特に制限はないが、具体例
としては、n-プロペニルアルデヒド、n-ブテニルアルデヒド、n-ペンテニルアルデ
ヒド、n-ヘキセニルアルデヒド、n-ヘプテニルアルデヒド、n-オクテニルアルデヒ
ド、n-ノネニルアルデヒド、n-デセニルアルデヒド、n-ウンデセニルアルデヒド、
n-ドデセニルアルデヒド、n-トリデセニルアルデヒド、n-テトラデセニルアルデヒ
ド、n-ペンタデセニルアルデヒド、n-ヘキサデセニルアルデヒド、n-ヘプタデセニ
ルアルデヒド、n-オクタデセニルアルデヒド、n-ノナデセニルアルデヒド、5-ノル
ボルネン-2-カルボキシアルデヒド等が挙げられる。
なお、上記不飽和結合を有する脂肪族アルデヒドの例において、不飽和結合の位置は任
意である。
なお、これら脂肪族アルデヒドは単独で用いても、二種以上混合して用いても良い。
【0019】
<フェノール化合物>
フェノール化合物の具体例としては、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、
2,3ージメチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノー
ル、2-エチルフェノール、2-エチル-6-メチルフェノール、2-アリルフェノール
、2-イソプロピルフェノール、2-プロピルフェノール、2,3,6-トリメチルフェ
ノール、5,6,7,8-テトラヒドロー1-ナフトール、2-sec-ブチルフェノー
ル、2-tert-ブチルフェノール、カルバクロール、チモール、2-tert-アミ
ルフェノール、6-tert-ブチル-o-クレゾール、2-フェニルフェノール、2-
シクロヘキシルフェノール、2-アミルー5-メチルフェノール、2,6-ジイソプロピ
ルフェノール、2-ベンジルフェノール、2-シクロヘキシル-5-メチルフェノール等
が挙げられるが、なかでもフェノール、o-クレゾール、2,3-ジメチルフェノール、
2,5-ジメチルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2-エチルフェノール、2
-エチル-6-メチルフェノール、2-イソプロピルフェノール、2-プロピルフェノー
ル、2,3,6-トリメチルフェノール等の炭素数3以下の炭化水素基を有するモノフェ
ノールが好ましく、フェノール、o-クレゾールがより好ましく、フェノールが特に好ま
しい。
【0020】
なお、これらフェノール化合物は単独で用いても、二種以上混合して用いても良い。
本発明のビスフェノール化合物の製造方法で使用される脂肪族アルデヒドとフェノール
化合物の比は、ビスフェノール化合物が生成する条件であれば特に規定されないが、脂肪
族アルデヒドに対してフェノール化合物が、通常1モル倍以上であり、2モル倍以上であ
ることが好ましく、3モル倍以上であることが特に好ましい。フェノール化合物の量が前
記下限値以上であることで、ビスフェノール化合物を効率良く製造できる傾向にあり、好
ましい。一方、通常20モル倍以下、好ましくは15モル倍以下、特に好ましくは10モ
ル倍以下である。フェノール化合物の量が前記上限値以下であることで、本発明のビスフ
ェノール化合物の製造方法において、未反応のフェノール化合物を分離する工程の負荷が
低減する傾向にあり、好ましい。
【0021】
本発明のビスフェノール化合物の製造方法において、脂肪族アルデヒドとフェノール化
合物は全量を混合した状態から製造しても良いし、いずれか片方もしくは両方を連続的も
しくは間歇的に添加しながら製造しても良い。なお、脂肪族アルデヒドを連続的もしくは
間歇的に添加しながら製造することが、ビスフェノール化合物をより効率良く製造しやす
い点で好ましい。
【0022】
<酸触媒>
本発明の脂肪族アルデヒドおよびフェノール化合物からビスフェノール化合物の製造方
法(以下、本発明の製造方法と呼称することがある)に用いられる酸触媒としては、リン
酸、シュウ酸、塩酸、硫酸などの無機酸触媒;酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン
酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸触媒;ダイヤ
イオンSK104などの酸性イオン交換樹脂などが挙げられる。なお、これらの酸触媒の
うち、塩酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ダイヤイオンSK104H(三菱
ケミカル社製)などの塩素系もしくはスルホン酸系の酸触媒を用いることが、本発明のビ
スフェノール化合物を効率よく製造できる傾向にあり好ましく、塩酸もしくはp-トルエ
ンスルホン酸を用いることが特に好ましい。
【0023】
本発明の製造方法に用いる酸触媒の量は、本発明のビスフェノール化合物を効率良く製
造できれば特に規定されないが、本発明のアルデヒドに対して酸触媒の酸量が、通常0.
001モル倍以上であり、好ましくは0.005モル倍以上であり、特に好ましくは0.
01モル倍以上である。酸量が前記下限値以上であることで、ビスフェノール化合物を効
率良く製造できる傾向にあり、好ましい。また、通常10モル倍以下であり、好ましくは
5モル倍以下であり、特に好ましくは1モル倍以下である。酸量が前記上限値以下である
ことで、本発明の製造方法において、使用後の酸触媒を分離する負荷が低減する傾向にあ
り、好ましい。
【0024】
<酸化防止剤>
本発明の製造方法では、酸化防止剤の存在下においてビスフェノール化合物を生成させ
る工程を有することを特徴する。その具体例としては、1,3,5-トリス(3,5-ジ
-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1.3.5-トリアジン-2,4,6
-(1H,3H,5H)-トリオン(ADEKA社製アデカスタブAO-20)、4,4
’,4’’-(1-メチルプロパニル-3-イリデン)トリス(6-tert-ブチル-
m-クレゾール)(ADEKA社製アデカスタブAO-30)、6,6’-ジ-tert
-ブチル-4,4’-ブチリデンジ-m-クレゾール(ADEKA社製アデカスタブAO
-40)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニ
ル)プロピオネート(ADEKA社製アデカスタブAO-50)、ペンタエリスリトール
テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオ
ネート](ADEKA社製アデカスタブAO-60)、3,9-ビス[2-[3-(3-
tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]-1,
1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(
ADEKA社製アデカスタブAO-80)、1,3,5-トリス(3,5-ji-ter
t-ブチル-4-ヒドロキシフェニルメチル)-2,4,6-トリメチルベンゼン(AD
EKA社製アデカスタブAO-330)、ビス[3-(3-tert-ブチル-4-ヒド
ロキシ-5-メチルフェニル)プロピオン酸][エチレンビス(オキシエチレン)](B
ASF社製Irganox245)、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、
4,4’-チオビス(2-tert-ブチル-5-メチルフェノール)(住友化学社製Su
milizerWX-R)、4,4’-ブチリデンビス-(6-t-ブチル-3-メチル
フェノール) (三菱化学社製ヨシノックスBB)、D-α-トコフェロール、DL-α-
トコフェロールなどのフェノール系酸化防止剤、トリフェニルホスフィン、2-エチルヘ
キシルジフェニルホスファイト(ADEKA社製アデカスタブC)、トリス(ノニルフェ
ニル)ホスファイト(ADEKA社製アデカスタブ1178)、テトラ-C12-15
アルキル(プロパン-2,2-ジイルビス(4,1-フェニレン)ビス(ホスファイト)
)(ADEKA社製アデカスタブ1500)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフ
ェニル)ホスファイト(ADEKA社製アデカスタブ2112)、トリイソデシルホスフ
ァイト(ADEKA社製アデカスタブ3010)、3,9-ジオクタデカン-1-イル-
2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(A
DEKA社製アデカスタブPEP-8)、3,9-ビス(2,4-ジ-tert-ブチル
フェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]
ウンデカン(ADEKA社製アデカスタブPEP-24G)、3,9-ビス(2,6-ジ
-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,
9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA社製アデカスタブPEP-36
)、3,9-ビス[2,4-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノキシ]-2
,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(AD
EKA社製アデカスタブPEP-45)2,4,8,10-テトラ-tert-ブチル-
6-[(2-エチルヘキサン-1-イル)オキシ]-12H-ジベンゾ[d,g][1,
3,2]ジオキサホスホシン(ADEKA社製アデカスタブHP-10)、ビス(2,4
-ジ-tert-ブチル-6-メチルフェニル)=エチル=ホスフィット(BASF社製
Irgafos38)、テトラキス〔(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-1,1-ビ
フェニル〕-4-4’ジイルビスホスホナイト(BASF社製IrgafosP-EPQ
)などのリン系酸化防止剤、2,2-ビス({[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オ
キシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート
](ADEKA社製アデカスタブAO-412S)、ビス[2-メチル-4-(3-n-
アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-tert-ブチルフェニル]スルフィド(AD
EKA社製アデカスタブAO-23)、3,3’-チオジプロピオン酸ジステアリル(A
DEKA社製アデカスタブAO-503A)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-6
-メチルフェノール(BASF社製Irganox1520)、ジラウリル-3,3-チ
オジプロピオネート(住友化学社製SumilizerTPL-R)、2,2-ビス({
[3-(ドデシルチオ)プロピオニル]オキシ}メチル)-1,3-プロパンジイル=ビ
ス[3-(ドデシルチオ)プロピオナート](住友化学社製SumilizerTP-D
)、2-メルカプトベンズイミダゾール(住友化学社製SumlizerMB)などの硫
黄系酸化防止剤、3-(3,4-ジメチルフェニル)-5,7-ジ-tert-ブチルベ
ンゾフラン-2(3H)-オン(BASF社製IrganoxHP136)等のラクトン
系酸化防止剤、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベ
ンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製(SumilizerGM)
、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ペンチルフェニル)エチル]-
4,6-ジ-tert-ペンチルフェニル=アクリレート(住友化学社製Sumiliz
erGS)等のアクリレート系酸化防止剤等が挙げられる。これらのうち、アデカスタブ
AO-30、アデカスタブAO-40、Irganox245、Irganox1076
、Irganox1010、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール、ヨシノッ
クスBB、D-α-トコフェロール、DL-α-トコフェロールなどのフェノール系酸化
防止剤を存在させることが、酸化防止剤による着色低減効果をより発揮しやすい点で好ま
しく、DL-α-トコフェロールを存在させることが特に好ましい。
【0025】
なお、前記酸化防止剤は単独で用いても、二種以上を混合させて用いても良い。
酸化防止剤の量は、通常用いる脂肪族アルデヒドに対して10質量ppm以上、好まし
くは50質量ppm以上、特に好ましくは100質量ppm以上である。酸化防止剤の量
が前記下限値以上であることで、酸化防止剤による着色低減効果を効果的に発揮できる傾
向にあり、好ましい。一方、通常5,000質量ppm以下、好ましくは3,000質量
ppm以下、特に好ましくは2,000質量ppm以下である。酸化防止剤の量が前期上
限値以下であることで、酸化防止剤自身に由来する着色を防止できる傾向にあり、好まし
い。
酸化防止剤は、製造工程実施の際に単独で添加しても、脂肪族アルデヒド、フェノール
化合物、後述の第三成分、有機溶媒または添加物のいずれかと混合した状態で用いても良
い。なお、脂肪族アルデヒドと混合した状態で用いることが、酸化防止剤の効果をより発
揮しやすくなる傾向にあり、好ましい。
【0026】
なお、前記酸化防止剤は単独で用いても、二種以上を混合させて用いても良い。
酸化防止剤の量は、通常用いる脂肪族アルデヒドに対して10質量ppm以上、好まし
くは50質量ppm以上、特に好ましくは100質量ppm以上である。酸化防止剤の量
が前記下限値以上であることで、酸化防止剤による着色低減効果を効果的に発揮できる傾
向にあり、好ましい。一方、通常5,000質量ppm以下、好ましくは3,000質量
ppm以下、特に好ましくは2,000質量ppm以下である。酸化防止剤の量が前記上
限値以下であることで、酸化防止剤自身に由来する着色を防止できる傾向にあり、好まし
い。
酸化防止剤は、製造工程実施の際に単独で添加しても、脂肪族アルデヒド、フェノール
化合物、後述の第三成分、有機溶媒または添加物のいずれかと混合した状態で用いても良
い。なお、脂肪族アルデヒドと混合した状態で用いることが、酸化防止剤の効果をより発
揮しやすくなる傾向にあり、好ましい。
【0027】
<第三成分(安定化剤)>
本発明の製造方法においては、本発明のアルデヒドをさらに安定化し本発明のビスフェ
ノール製造時の副反応や着色をより抑制するなどの目的で反応系が第三成分を含んでいて
も良い。その具体例としては、トリエタノールアミン、ベンゾグアナミンのような含窒素
化合物;メルカプトベンズイミダゾールのような含硫黄芳香族化合物;水などが挙げられ
る。これら添加物のうち、含窒素化合物を含むことが、本発明のアルデヒドが着色につな
がる副反応などの劣化を受けることをより抑制できる傾向にあり、好ましい。一方、これ
ら第三成分を含まないことが、本発明のビスフェノール化合物を樹脂とする際の反応性を
妨げない傾向にあり、好ましい。
上記第三成分の量は、本発明のアルデヒドに対して通常1質量ppm以上であり、5質
量ppm以上であることが好ましく、10質量ppm以上であることが特に好ましく、1
00質量ppm以上であることが特段好ましく、300質量ppm以上であることが最も
好ましい。一方通常50,000質量ppm以下であり、30,000質量ppm以下で
あることが好ましく、10,000質量ppm以下であることが特に好ましく、1,00
0質量ppm以下であることが特段好ましく、700質量ppm以下であることが最も好
ましい。第三成分の量が上記範囲内であることで、第三成分の効果をより発揮できる傾向
にあり、好ましい。
これら第三成分は単独で含まれていても、二種以上含まれていても良い。
【0028】
<第四成分(反応促進剤)>
本発明の製造方法においては、縮合反応を活性化するなどの目的で反応系が第四成分を
含んでいても良い。具体的には、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアン
モニウムハイドロサルフェート、テトラブチルアンモニウムクロリドなどの四級アンモニ
ウム塩;メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n-プロピルメルカプタン、2-プ
ロパンチオール、n-ブチルメルカプタン、sec-ブチルメルカプタン、t-ブチルメ
ルカプタン、n-ペンチルメルカプタン、3-メチル-2-ブタンチオール、イソアミル
メルカプタン、n-ヘキシルメルカプタン、シクロヘキサンチオール、n-ヘプチルメル
カプタン、n-オクチルメルカプタン、2-エチル-1-ヘキサンチオール、n-ノニル
メルカプタン、n-デシルメルカプタン、n-ウンデシルメルカプタン、n-ドデシルメ
ルカプタン、n-テトラデシルメルカプタン、tert-テトラデカンチオール、n-ヘ
キサデシルメルカプタン、n-オクタデシルメルカプタン、n-ドコシルメルカプタン、
1,2-エタンジチオール、1,2-プロパンジチオール、1,3-プロパンジチオール
、2,3-ブタンジチオール、1,5-ペンタンジチオール、1,10-デカンジチオー
ル、チオグリコール酸メチル、チオグリコール酸エチル、チオグリコール酸ブチル、チオ
グリコール酸オクチル、チオグリコール酸2-エチルヘキシル、2-メルカプトプロピオ
ン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸メチル、3-メルカプトプロピオン酸エチル、
3-メルカプトプロピオン酸オクタデシル、などの含硫黄脂肪族化合物などが挙げられる
。これらのうち、含硫黄脂肪族化合物を第四成分として用いることが本発明のビスフェノ
ール化合物の製造が容易となる点で好ましい。なお、これら第四成分は、樹脂などに担持
させた状態で用いても良い。
【0029】
本発明の製造方法に用いる第四成分の量は、本発明のビスフェノール化合物を効率良く
製造できれば特に規定されないが、本発明のアルデヒドに対して第四成分の量が、通常0
.001モル倍以上であり、好ましくは0.005モル倍以上であり、特に好ましくは0
.01モル倍以上である。第四成分の量が前記下限値以上であることで、ビスフェノール
化合物を効率良く製造できる傾向にあり、好ましい。また、通常1モル倍以下であり、好
ましくは0.5モル倍以下であり、特に好ましくは0.2モル倍以下である。第四成分の
量が前記上限値以下であることで、ビスフェノール化合物製造の際、使用後の第四成分を
分離する負荷が低減する傾向にあり、好ましい。
【0030】
<溶媒>
本発明の製造方法においては、溶媒を用いて反応しても良い。溶媒の具体例としては、
n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、石油エーテルなどの炭素数
5~18の直鎖状炭化水素溶媒;イソオクタンなどの炭素数5~18の分岐鎖状炭化水素
溶媒;シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサンなどの炭素数5~18の
環状炭化水素溶媒;水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの
アルコール溶媒;アセトニトリルなどのニトリル溶媒;ジブチルエーテルなどのエーテル
溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;酢酸エチル、酢
酸ブチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの含窒
素溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄溶媒;塩化メチレン、クロロホ
ルム、ジクロロエタンなどの含塩素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭
化水素溶媒などが挙げられる。なお、これらの溶媒を用いないか、芳香族炭化水素溶媒を
用いることが本発明のビスフェノール化合物の製造が容易となる点で好ましく、溶媒を用
いないことが特に好ましい。
【0031】
本発明の製造方法(酸化防止剤の存在下においてビスフェノール化合物を生成させる工
程)において用いる溶媒の量は、ビスフェノール化合物を効率良く製造できれば特に規定
されないが、本発明のアルデヒドに対して溶媒の量が、通常0.1質量倍以上であり、好
ましくは0.2質量倍以上であり、特に好ましくは0.5質量倍以上である。溶媒の量が
前記下限値以上であることで、ビスフェノール化合物製造時に溶媒の効果をより効率的に
発揮できる傾向にあり、好ましい。また、通常20質量倍以下であり、好ましくは10質
量倍以下であり、特に好ましくは5質量倍以下である。大溶媒の量が前記上限値以下であ
ることで、ビスフェノール化合物を効率良く製造できる傾向にあり、好ましい。
【0032】
<反応温度>
本発明の製造方法における反応温度は通常0℃以上であり、好ましくは15℃以上であ
り、特に好ましくは30℃以上である。反応温度が前記下限値以上であることで反応混合
物の固化を防止しやすくなる傾向にあり、好ましい。一方、通常150℃以下、好ましく
は120℃以下、特に好ましくは90℃以下である。反応温度が前記上限値以下であるこ
とでビスフェノール化合物を効率的に製造できる傾向にあり、好ましい。
【0033】
<精製>
本発明の製造方法は、用いた酸触媒を除去する工程を含んでいても良い。該除去工程の
具体例としては、塩基による中和工程、溶媒に溶解させることによる除去工程、ろ過によ
る除去工程等が挙げられる。これらのうち、酸触媒に無機酸触媒や有機酸触媒を用いる場
合は塩基による中和工程を含むことが、不均一系触媒を用いる場合はろ過による除去工程
を含むことが、それぞれ効率良く酸触媒を除去することができる傾向にあり、好ましい。
なお、これら除去工程は単独でも、組み合わせて用いても良い。
【0034】
塩基による中和工程に用いられる塩基の具体例としては、炭酸水素ナトリウム、炭酸水
素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリ
ウム、酢酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リ
ン酸一水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化
カルシウム、水素化ナトリウム、ナトリウムアミド等のアルカリ金属原子もしくはアルカ
リ土類金属原子を有する無機塩基;クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク酸ナ
トリウム、コハク酸カリウム、コハク酸カルシウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメ
トキシド、カリウム-tert-ブトキシド等のアルカリ金属原子もしくはアルカリ土類
金属原子を有する有機塩基;ピリジン、アニリン、トリエチルアミン、N,N-ジメチル
アニリン、モルホリン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、ジアザビシク
ロウンデセンなどの含窒素化合物等が挙げられる。これらのうち、炭酸水素ナトリウム、
炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、酢酸ナトリウム、酢
酸カリウム、酢酸セシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸一水素ナトリウ
ム、リン酸一水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、水酸化マグネシウム、
水酸化カルシウム、水素化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、コハク
酸ナトリウム、コハク酸カリウム、等のアルカリ金属原子もしくはアルカリ土類金属原子
を有する塩基を用いることが中和塩の除去が容易となる点で好ましい。また、これら塩基
は単独でも、二種以上を組み合わせて用いても良い。
【0035】
中和工程では、混合物の酸性度を調整する目的で第二成分を添加しても良い。その具体
例としては、酢酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸などの有機酸;リン酸、リン酸二水素
ナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化アンモニウム、クエン酸一ナトリウムなどの酸
素以外のヘテロ原子を含む酸などが挙げられる。第二成分の種類および量は、反応工程に
用いられる酸触媒および中和工程に用いられる塩基の種類および量、および中和後の混合
物の酸性度目標値に応じて種々選択される。
【0036】
中和工程後の混合物は弱酸性もしくは弱塩基性であることが本発明のビスフェノール化
合物の安定性が向上する傾向にあり、好ましい。なお、混合物が弱酸性もしくは弱塩基性
であるとは、混合物中に水を加えて水とそれ以外の成分の質量比を1:3に調整した際に
、水層のpHが通常2以上、好ましくは3以上、特に好ましくは4以上であることを言う
。一方、通常11以下であり、好ましくは10以下であり、特に好ましくは9以下である
。水層のpHが上記範囲内であることで、本発明のビスフェノール化合物の安定性が向上
する傾向にあり、好ましい。
溶媒に溶解させることによる除去工程に用いられる溶媒の具体例としては、水;メタノ
ール、エタノール、プロパノール、ジメチルスルホキシド、ジエチルエーテル、N-メチ
ルピロリドンなどの有機溶媒等が挙げられる。これらのうち、水を用いることが精製工程
を簡略化できる点で好ましい。
【0037】
ろ過による除去工程で用いられるろ過剤としては、活性炭、シリカゲル、活性白土、珪
藻土などの粉状、破砕状もしくは球状等ののろ過剤;ろ紙、ろ布、糸巻きフィルタ等の繊
維状もしくは布状等に成形されたろ過剤等が挙げられる。これらろ過剤は、使用する酸触
媒の性状や、酸触媒の再利用の可能性有無等を踏まえて、種々選択される。
本発明のビスフェノール化合物の製造方法は、本発明のビスフェノール化合物を含む混
合物から本発明のビスフェノール化合物を、少なくとも1種の脂肪族炭化水素溶媒を含む
溶媒から析出させる工程(以下、析出工程と呼称)を含むことが好ましい。脂肪族炭化水
素溶媒の具体例としては、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、
石油エーテルなどの炭素数5~18の直鎖状炭化水素溶媒;イソオクタンなどの炭素数5
~18の分岐鎖状炭化水素溶媒;シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサ
ンなどの炭素数5~18の環状炭化水素溶媒などが挙げられる。これらのうち、本発明の
ビスフェノール化合物から溶媒を除去することが容易となる点より、炭素数6~10の炭
化水素溶媒を用いることが好ましく、炭素数6~8の炭化水素溶媒であることがより好ま
しい。また、これら炭化水素溶媒は、1種でも、2種以上を混合して用いても良い。
【0038】
また、上述の溶媒には、第二溶媒として脂肪族炭化水素溶媒以外の溶媒を含んでいても
良い。その具体例としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノー
ルなどのアルコール溶媒;アセトニトリルなどのニトリル溶媒;ジブチルエーテルなどの
エーテル溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン溶媒;酢酸エ
チル、酢酸ブチルなどのエステル溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドな
どの含窒素溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄溶媒;塩化メチレン、
クロロホルム、ジクロロエタンなどの含塩素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの
芳香族炭化水素溶媒などが挙げられる。これらのうち、本発明のビスフェノール化合物を
効率良く精製できる傾向にある点でアルコール溶媒、芳香族炭化水素溶媒のいずれかを第
二溶媒として含むことが好ましい。また、これら第二溶媒は、1種でも、2種以上を混合
して用いても良い。
【0039】
第二溶媒と、脂肪族炭化水素溶媒の混合比は、本発明のビスフェノール化合物の特性を
損なわない限り特に制限はなく、適宜設定し用いればよいが、全溶媒中の脂肪族炭化水素
溶媒の構成比は、通常10~99質量%である。全溶媒中の脂肪族炭化水素溶媒の構成比
が上記上限値以下とすることで副生物を効率的に除去しやすく好ましい。また上記下限値
以上であることで本発明のビスフェノール化合物が第二溶媒中に選択的に溶解し、除去さ
れてしまうこと、すなわち収率が低下することを抑止できるため、好ましい。このような
観点より、全溶媒中の脂肪族炭化水素溶媒の構成比は、20~98質量%であることがよ
り好ましく、25~97質量%であることがさらに好ましく、30~96質量%であるこ
とが特に好ましい。
【0040】
ビスフェノール化合物を含む混合物と、上述の溶媒との混合比は、効率良く本発明のビ
スフェノール化合物を析出させることができれば特に規定されないが、通常本発明のビス
フェノール化合物を含む混合物に対して全溶媒の質量比が好ましくは0.2倍以上であり
、さらに好ましくは0.5倍以上であり、特に好ましくは1.0倍以上である。一方、好
ましくは100倍以下であり、さらに好ましくは50倍以下であり、特に好ましくは10
倍以下である。全溶媒の質量比が上記下限値以上であることで、本発明のビスフェノール
化合物を含む混合物を優先的に析出させやすくなる傾向にあり、一方上記上限値以下であ
ることで本発明のビスフェノール化合物の製造効率が向上する傾向にあり、好ましい。
【0041】
ビスェノール化合物を主成分とする混合物と上記の少なくとも1種の脂肪族炭化水素溶
媒を含む溶媒を混合する際、脂肪族炭化水素溶媒と第二溶媒はそれぞれ別々に添加しても
、予め混合した状態で混合物と混合しても良い。なお、本発明のビスフェノール化合物の
製造効率を向上させる観点から、溶媒は予め混合しておくことが好ましい。ここで、本発
明のビスフェノール化合物を主成分とする混合物と上記の少なくとも1種の脂肪族炭化水
素溶媒を含む溶媒を混合する際の温度は通常0℃以上、好ましくは20℃以上、特に好ま
しくは40℃以下であり、通常溶媒の沸点以下、好ましくは(溶媒の沸点-5)℃以下、
特に好ましくは(溶媒の沸点-10)℃以下である。上記下限値以上、上限値以下である
ことで本発明のビスフェノール化合物を効率良く溶解させることが可能となり、好ましい
。ここで、溶媒を二種以上混合して用いる場合、上記の溶媒の沸点は、混合後の溶媒の沸
点を表す。
【0042】
上記析出工程の温度は本発明の製造方法で製造されるビスフェノール化合物の特性を損
なわない限り特に制限はなく、適宜設定することが可能だが、通常-20℃以上であり、
-10℃以上であることが好ましく、0℃以上であることが特に好ましい。一方、通常7
0℃以下であり、65℃以下であることが好ましく、60℃以下であることが特に好まし
い。温度が上記範囲内であることで、本発明のビスフェノール化合物を効率良く精製でき
る傾向にあり、好ましい。
【0043】
上記析出工程では、ビスフェノール化合物の析出効率を向上させるためにビスフェノー
ル化合物の種晶を添加しても良い。種晶の量は、ビスフェノール化合物の製造効率を向上
させる点から、ビスフェノール化合物を主成分とする混合物に対して質量比で通常0.0
001~10%であり、0.0005~5%であることが好ましく、0.001~1%で
あることが特に好ましい。
【0044】
上記析出工程の回数は本発明のビスフェノール化合物の精製度合いに応じて種々選択さ
れるが、精製処理を簡略化できる点から、通常3回以下であることが好ましく、2回以下
であることがより好ましく、1回であることが特に好ましい。
上記析出工程後のビスフェノール化合物の粉体を、さらに表面洗浄の目的で溶媒を用い
て洗浄しても良い。使用される溶媒の具体例は、上記炭化水素溶媒および第二成分として
挙げられた溶媒が挙げられる。本洗浄処理の温度は、通常-20℃以上、好ましくは-1
0℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、通常70℃以下、好ましくは60℃以下、特
に好ましくは50℃以下である。温度が上記範囲内であることで、洗浄用の溶媒に本発明
のビスフェノール化合物を過剰に溶解させることを抑制できる傾向にあり、好ましい。
【0045】
上記析出工程および洗浄を経て得られたビスフェノール化合物の粉体を、さらに加熱、
減圧、風乾などにより脱溶媒処理を行い、実質的に溶媒を含まないビスフェノール化合物
を得ても良い。ここで、脱溶媒処理の際の温度は、脱溶媒処理を円滑に進行させるために
通常20℃以上であり、40℃以上であることが好ましい。なお、温度の上限は通常本発
明のフェノール化合物の融点以下であり、75℃以下であることが好ましく、72℃以下
であることが特に好ましい。
【0046】
[特性に優れる理由]
以下、本発明の製造方法により製造されたビスフェノール化合物において着色が抑えら
れる理由について説明する。アルデヒドとフェノール化合物から製造されるビスフェノー
ル化合物は、ビスフェノールAのようなケトンとフェノール化合物からなるビスフェノー
ル化合物とは異なり、その縮合部位に活性な水素原子を有するため、酸化されて着色成分
であるキノンメチド構造となりやすいと考えられる。製造時に適量の酸化防止剤を添加す
ることでビスフェノール化合物の酸化を抑制し、着色を抑えることができると考えられる
。一方、酸化防止剤の添加量が多すぎると、それ自身由来の酸化生成物に由来する着色が
発生する恐れがあるため、適量の添加が有効であると考えられる。
【0047】
[用途]
本発明の製造方法で得られたビスフェノール化合物は、光学材料、記録材料、絶縁材料
、透明材料、電子材料、接着材料、耐熱材料など種々の用途に用いられるポリエーテル樹
脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂
、アクリル樹脂など種々の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フ
ェノール樹脂、ポリベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂など種々の熱硬化性樹脂など
の構成成分、硬化剤、添加剤もしくはそれらの前駆体などとして用いることができる。ま
た、感熱記録材料等の顕色剤や退色防止剤、殺菌剤、防菌防カビ剤等の添加剤としても有
用である。
これらのうち、良好な機械物性を付与できることより、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の
原料(モノマー)として用いることが好ましく、なかでもポリカーボネート樹脂、エポキ
シ樹脂の原料として用いることがより好ましい。また、顕色剤として用いることも好まし
く、特にロイコ染料、変色温度調整剤と組み合わせて用いることがより好ましい。
【実施例
【0048】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、n
-ドデカナールは東京化成工業(株)製n-ドデカナールを蒸留したものを用いた。また
、DL-α-トコフェロールは東京化成工業(株)製のものを、フェノールはナカライテ
スク(株)製のものを、Irganox1076およびIrganox1010はBAS
F(株)製のものを、ヨシノックスBBは三菱化学(株)製のものを、それぞれ用いた。
【0049】
[液色、および着色度評価]
液色は目視で確認した。着色度はハーゼン色数(APHA)分析により実施した。キシ
ダ化学(株)製APHA標準溶液(1,000度)を純水で希釈し、10度、20度、30
度、40度、50度、70度、80度、90度、100度、125度、150度、200
度、250度、300度、400度、500度のAPHA標準溶液をそれぞれ調製した。
サンプル液と標準溶液をそれぞれ50mlスクリュー瓶にいれ、目視にて色調を比較した
。JIS K0071:1998の記載に従い、サンプル液の色調が一番近い標準溶液の
色数をそのサンプルのハーゼン色数とした。2つの標準溶液の中間の色の場合は大きいほ
うの値とした。
なお、サンプル液のAPHAが1,000度を超える場合は、サンプル液の体積が2倍
量となるようトルエンを加えてサンプル希釈液を作成し、該希釈液のAPHAを測定した
。サンプル希釈液のAPHAも1,000度を超える場合、便宜上元のサンプル液のAP
HAを>2,000度とした。
【0050】
<実施例1>
n-ドデカナール(5.0g)、DL-α-トコフェロール(0.50mg)、フェノ
ール(13g)、35質量%塩酸(0.17g)の混合物を窒素雰囲気下、40℃で2時
間加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(0.326
g)で中和した。中和後の反応液は淡黄色であり、ハーゼン色数は125度であった。
【0051】
<実施例2>
n-ドデカナール(5.0g)、DL-α-トコフェロール(2.5mg)、フェノー
ル(13g)、35質量%塩酸(0.17g)の混合物を窒素雰囲気下、40℃で2時間
加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(0.326g
)で中和した。中和後の反応液は淡黄色であり、ハーゼン色数は125度であった。
【0052】
<実施例3>
n-ドデカナール(5.0g)、DL-α-トコフェロール(2.5mg)、フェール
(13g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.0g)の混合物を窒素雰囲気下、5
0℃で4時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(
1.05g)で中和した。中和後の反応液は黄色であり、ハーゼン色数は400度であっ
た。
【0053】
<実施例4>
n-ドデカナール(5.0g)、DL-α-トコフェロール(5.0mg)、フェノー
ル(13g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.0g)の混合物を窒素雰囲気下、
50℃で4時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液
(1.05g)で中和した。中和後の反応液は黄色であり、ハーゼン色数は500度であ
った。
【0054】
<実施例5>
n-ドデカナール(5.0g)、Irganox1076(2.5mg)、フェノール
(13g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.0g)の混合物を窒素雰囲気下、5
0℃で4時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(
1.05g)で中和した。中和後の反応液は黄色であり、ハーゼン色数は1,000度で
あった。
【0055】
<実施例6>
n-ドデカナール(5.0g)、Irganox1010(2.5mg)、フェノール
(13g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.0g)の混合物を窒素雰囲気下、5
0℃で4時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(
1.05g)で中和した。中和後の反応液は黄色であり、ハーゼン色数は1,000度で
あった。
【0056】
<実施例7>
n-ドデカナール(5.0g)、ヨシノックスBB(2.5mg)、フェノール(13
g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1.0g)の混合物を窒素雰囲気下、50℃で
4時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(1.0
5g)で中和した。中和後の反応液は黄色であり、ハーゼン色数は1,000度であった
【0057】
<実施例8>
n-ドデカナール(5.0g)、DL-α-トコフェロール(2.5mg)、ベンゾグ
アナミン(2.5mg)、フェノール(13g)、p-トルエンスルホン酸一水和物(1
.0g)の混合物を窒素雰囲気下、50℃で4時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を
20質量%水酸化ナトリウム水溶液(1.05g)で中和した。中和後の反応液は黄色で
あり、ハーゼン色数は400度であった。
【0058】
<比較例1>
n-ドデカナール(5.0g)、フェノール(13g)、濃塩酸(0.17g)の混合
物を窒素雰囲気下、40℃で2時間加熱撹拌した。得られた反応混合物を20質量%水酸
化ナトリウム水溶液(1.05g)で中和した。中和後の反応液は淡黄色であり、ハーゼ
ン色数は300度であった。
【0059】
<比較例2>
n-ドデカナール(5.0g)、DL-α-トコフェロール(50mg)、フェノール
(13g)、濃塩酸(0.17g)の混合物を窒素雰囲気下、40℃で2時間加熱撹拌し
た。得られた反応混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(1.05g)で中和した
。中和後の反応液は黄色であり、ハーゼン色数は400度であった。
【0060】
<比較例3>
n-ドデカナール(5.0g)、フェノール(13g)、p-トルエンスルホン酸一水
和物(1.0g)の混合物を窒素雰囲気下、50℃で4時間加熱撹拌した。得られた反応
混合物を20質量%水酸化ナトリウム水溶液(1.05g)で中和した。中和後の反応液
は赤褐色であり、ハーゼン色数は>2,000度であった。
【0061】
以下、実施例および比較例の結果を表1にまとめた。実施例1~2と比較例1、および
実施例3~6と比較例3を比較すると、酸触媒の種類に関わらず、酸化防止剤存在下で反
応させた反応液の着色が抑えられていることが明らかである。また、実施例1~2と比較
例2を比較すると、酸化防止剤量が多すぎると反応液の着色がむしろ悪化することも判る
。これは、酸化防止剤自身が反応時に一部分解し着色している影響が強くなるためと考え
られる。
【0062】
【表1】