(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】タンパク質高含有ドレッシングタイプ調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/60 20160101AFI20220107BHJP
【FI】
A23L27/60 A
(21)【出願番号】P 2018025056
(22)【出願日】2018-02-15
【審査請求日】2020-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】390020189
【氏名又は名称】ユーハ味覚糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 宏祐
(72)【発明者】
【氏名】北中 進介
(72)【発明者】
【氏名】小林 進
(72)【発明者】
【氏名】滝島 康之
(72)【発明者】
【氏名】山田 泰正
【審査官】安孫子 由美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-118150(JP,A)
【文献】特開平07-025838(JP,A)
【文献】特開2003-339337(JP,A)
【文献】特開2010-148453(JP,A)
【文献】特開2017-121198(JP,A)
【文献】NIKKEI STYLE MONO TRENDY フード・フラッシュ 脂質ゼロで高タンパク 味覚糖がドレッシング作る理由,2017年09月12日,https://style.nikkei.com/article/DGXMZO20872640X00C17A9000000/,[検索日2021.07.15]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
日経テレコン
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コラーゲン分解物を20~60重量%、アラニンを3~15重量%、有機酸
である酢酸を0.1~5重量%含有し、糖質の含有量が5重量%未満および脂質の含有量が3重量%未満であるドレッシングタイプ調味料。
【請求項2】
総タンパク質量が30重量%以上である請求項1記載のドレッシングタイプ調味料。
【請求項3】
溶液粘度が50~30000mPa・sである請求項1または2に記載のドレッシングタイプ調味料。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のドレッシングタイプ調味料を製造する方法であって、
アラニン存在下でゼラチンを酵素分解
し、次いで、有機酸である酢酸を混合する工程を特徴とする
、ドレッシングタイプ調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質を高含有し、糖質および脂質が顕著に低減されたドレッシングタイプ調味料、ならびにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
健康に対する意識の高まりから、ノンオイルドレッシングは、ダイエット・健康志向の調味料として、特に食事に気をつかう消費者に人気がある。しかし、ノンオイルドレッシングの課題として、油の代わりに糖質を多く配合していること、従来のサラダドレッシングと比べて味の濃厚さが足りないこと、などが挙げられる。
【0003】
また、糖質の代わりにポリデキストロース、難消化デキストリン、高甘味度甘味料などを用いることで糖質をカットしたドレッシングなどの調味料も存在するが、この調味料を過剰に摂取した場合や摂取する消費者の体質によっては、消費者が下痢を起こす可能性があるなどの課題もある。
したがって、日常的に食するドレッシングなどの調味料には、糖質の代わりにポリデキストロース、難消化デキストリン、高甘味度甘味料などの原料は可能な限り避ける方がよいといえる。
【0004】
一方で、近年の低カロリー志向の高まりに伴い国民のタンパク質の摂取量は減少しているが(厚生労働省の「国民健康・栄養調査」)、このタンパク質の摂取量の減少は、様々な健康問題の原因の一つだといわれている。タンパク質の中でもコラーゲンは真皮や結合組織などの主成分であり、安全性、さらには機能性に優れることから、近年、医療分野や美容分野の面からも注目を集めている。このため、安全性および機能性に優れたコラーゲンを簡便に摂取するために、コラーゲン入り飲食品が開発されている(例えば、特許文献1等)。
【0005】
しかし、コラーゲンは不快臭と不快味を有するため、食品にそのまま配合すると、食品そのものの美味しさや香りを損なう場合があり、消費者の嗜好性に合わないことがある。したがって、飲料などにおいては、このようなコラーゲンの独自の不快味をマスキングする手法の開発が進められている。例えば、特許文献2では、スクラロースおよびステビア抽出物を含有させることでコラーゲン含有飲食品における呈味を改善することが記載されている。また、特許文献3では、コラーゲンペプチドの末端のアミノ酸とマルトースとの間でメイラード反応を生じさせ不快な香り、風味をマスキングできることが記載されている。
【0006】
コラーゲンをベース原料としたドレッシングタイプ調味料に関して言えば、本発明者らも、ペプチド含有コラーゲン分解物の含有量が40重量%以上、糖質の含有量が0.1~5重量%、脂質の含有量が3重量%未満であり、前記ペプチド含有コラーゲン分解物が、ゼリー強度80~220ブルームのゼラチンのプロテアーゼ処理物とカルボニル化合物とのメイラード反応処理物であることを特徴とするドレッシングタイプ調味料を提案している(特許文献4)。前記ドレッシングタイプ調味料については、研究を進めたところ、一般的な消費者に対してはマスキング効果は十分であったが、苦味に敏感な消費者に対してはマスキング効果が十分あるとはいえなかった。また、本発明者らが検討したところ、酢酸を用いたドレッシングタイプ調味料においてコラーゲン分解物を含有すると、コラーゲン分解物に特有の不快臭・不快味が感じやすくなるなどの課題もあることを見出した。
【0007】
一方で、食品にえびやカニなどの水産食品特有の風味を付与したり、塩味や甘味を向上したりするための添加剤としてアラニンが知られている(例えば、特許文献5)。また、アラニンを含有する調味料も公知であり(例えば、特許文献6)、艶出し等の目的でも使用されているが、酢酸などの有機酸とコラーゲン分解物の組み合わせに対する影響についての言及や示唆はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平3-160956号公報
【文献】特開2006-204287号公報
【文献】特許第5283676号
【文献】特開2017-121198号公報
【文献】特開2011-229468号公報
【文献】特開2014-39478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような様々な問題を解決することを目的とするものであり、具体的には、コラーゲンなどのタンパク質を高含有しながらコラーゲンの苦味および不快臭を顕著に低減させ、かつ糖質濃度および脂質濃度を顕著に低減させながら、従来のサラダドレッシングと同様の味の深みや、油脂様特性を有したドレッシングタイプ調味料およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、予想外にも、コラーゲンの苦味および不快臭を低減するために、多種類あるアミノ酸の中でも、特にアラニンの添加が有効であるという本発明に特有の顕著にして有用な新知見を得ることに成功し、本発明を完成させた。
【0011】
したがって、本発明は、
[1]コラーゲン分解物を20~60重量%、アラニンを3~15重量%、有機酸である酢酸を0.1~5重量%含有し、糖質の含有量が5重量%未満および脂質の含有量が3重量%未満であるドレッシングタイプ調味料、
[2]総タンパク質量が30重量%以上である前記[1]記載のドレッシングタイプ調味料、
[3]溶液粘度が50~30000mPa・sである前記[1]または[2]に記載のドレッシングタイプ調味料、
[4]前記[1]~[3]のいずれかに記載のドレッシングタイプ調味料を製造する方法であって、
アラニン存在下でゼラチンを酵素分解し、次いで、有機酸である酢酸を混合する工程を特徴とする、ドレッシングタイプ調味料の製造方法、
に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のドレッシングタイプ調味料は、タンパク質に由来するコラーゲン分解物を高含有すると共に糖質、脂質の含有量が非常に抑えられたものであるため、従来のサラダドレッシングに比べて低カロリーであることに加えて、タンパク質が高含有である点で栄養的に優れている。また、本発明のドレッシングタイプ調味料は、コラーゲン分解物を高含有するにも関わらず、特有の臭いや苦味が低減された嗜好性の高いものである。さらに、本発明のドレッシングタイプ調味料は、食材によく絡み、従来のサラダドレッシングと同様にサラダ表面に艶を与え、外見の嗜好性も向上させるものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施例1および実施例6のドレッシングタイプ調味料の製造工程を示すフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
本発明のドレッシングタイプ調味料は、(a)コラーゲン分解物を20~60重量%、(b)アラニンを3~15重量%、(c)有機酸を0.1~5重量%含有し、(d)糖質の含有量が5重量%未満および(e)脂質の含有量が3重量%未満であることを特徴とする。
【0016】
本発明におけるドレッシングタイプ調味料とは、「ドレッシングおよびドレッシングタイプ調味料品質表示基準(最終改定 平成23年9月30日消費者庁告示第10号)」に定めるドレッシングタイプ調味料に準じたものであり、液状又は半固体状の調味料であって、主としてサラダに使用するもの(食用油脂を原材料として使用していないものに限る。)をいう。
【0017】
(a)コラーゲン分解物
本発明において、コラーゲン分解物としては、ゼラチンをプロテアーゼ(酵素)によって分解したもの、またはコラーゲンをプロテアーゼによって分解したものを使用することができる。ここで、ゼラチンとはコラーゲンを酸あるいはアルカリで前処理してから、熱加水分解して可溶化したものをいう。ゼラチンとしては、例えば、牛骨、牛皮、サメ軟骨、鶏、魚、豚骨、豚皮等の動物由来のコラーゲンから調製したものが挙げられる。また、使用するゼラチンのゼリー強度としては、80~220ブルームの低ブルームであることが好ましい。
【0018】
前記プロテアーゼ処理は、前記ゼラチンまたはコラーゲンを含む材料に加水して粉砕または磨砕により水懸濁液としたものあるいは溶液状にしたものに、プロテアーゼまたはプロテアーゼ水溶液を添加して行うことができる。プロテアーゼとしては、パパイン、ブロメライン、フィシン、サーモリシンなどが挙げられるが、適度な程度のコラーゲン分解物が得られる酵素としてブロメラインを用いることが好ましい。
【0019】
前記コラーゲン分解物は、市販のコラーゲン分解物、いわゆるコラーゲンペプチドを使用してもよい。
【0020】
本発明のドレッシングタイプ調味料において、コラーゲン分解物の含有量は、20~60重量%であり、35~50重量%が好ましい。前記含有量が20重量%未満であればタンパク質を摂取できる量が低減してしまい、ドレッシング特有のコクや艶なども好ましくなくなる。前記含有量が60重量%を超えると流動性が損なわれ、風味などの点でも好ましくない。
なお、上記含有量はコラーゲン分解物の固形分としての含有量である。例えば、ゼラチンをプロテアーゼ処理したものをそのままコラーゲン分解物として使用する場合、ゼラチンの固形分量をコラーゲン分解物の量とする。
【0021】
(b)アラニン
本発明において、アラニンは、ドレッシングタイプ調味料の旨味を向上し、コラーゲン分解物に由来する苦味、不快臭をマスキングするために使用される。アラニンは、CH3CH(NH2)COOHで表されるアミノ酸であり、分子内に不斉炭素を有するため、L体とD体とが存在する。本発明において、アラニンは、L-アラニン、D-アラニン、そのラセミ体であるDL-アラニン、これらの塩、アラニンを含有する天然物などを原料として使用することができる。
本発明のドレッシングタイプ調味料において、前記アラニンの含有量は、3~15重量%であり、4~10重量%が好ましい。
前記アラニンの含有量が3重量%未満であれば、ドレッシングタイプ調味料の旨味が低減し、かつコラーゲン分解物に由来する苦味や不快臭を抑えにくくなる。前記アラニンの含有量が15重量%を超えるとドレッシングタイプ調味料の旨味が強すぎたり、溶けずに沈殿してしまったりする。
【0022】
(c)有機酸
本発明に使用する有機酸は、特に制限はなく、クエン酸、グルコン酸、L-酒石酸、リンゴ酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、酢酸、フマル酸、フィチン酸およびこれらの誘導体やその塩を挙げることができる。これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては嗜好性の点で酢酸およびクエン酸が好ましい。
本発明のドレッシングタイプ調味料において、有機酸の含有量は0.1~5重量%であり、0.2~3重量%が好ましい。
前記有機酸の含有量が0.1重量%未満であると酸味や香り等がドレッシングの嗜好性として不十分なものとなる。前記有機酸の含有量が5重量%を超えると酸味が強くなり、嗜好性が落ちる。
【0023】
(d)糖質
本発明における糖質とは、健康増進法の栄養表示基準に基づく糖質をいう。つまり、糖質は食品の重量から、タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、アルコール分、および水分の各重量を控除した値である。タンパク質、脂質、食物繊維、灰分、および水分の各測定方法は、健康増進法の栄養表示基準に従う。水分は加熱乾燥法、脂質はソックスレー抽出法、タンパク質はケルダール法、灰分は直接灰化法、食物繊維は酵素-重量法を採用して測定することができる。アルコール分は国税庁所定分析法(昭和36国税庁訓令第1号)に定められた方法である振動式密度計を用いる方法で測定することができる。食品重量から、これらの成分の重量の合計を差し引くことにより、糖質濃度を算出することができる(日本食品分析センター:「栄養成分」の「必須表示項目に関連する試験」の項目を参照)。
【0024】
前記糖質には、例えば、ブドウ糖、フルクトース(果糖)、砂糖、乳糖、麦芽糖、果糖ブドウ糖液糖などの糖類、オリゴ糖、デキストリンなどの多糖類、エリスリトール、キシリトースなどの糖アルコール、スクラロースなどの人工甘味料などが含まれる。
本発明のドレッシングタイプ調味料は、健康志向の高いものであるため、前記糖質、中でも、高甘味度甘味料を添加することは消費者イメージからは好ましくはない。
【0025】
本発明のドレッシングタイプ調味料において、糖質の含有量は5重量%未満であり、好ましくは3重量%以下である。一般的なドレッシングタイプ和風調味料((ノンオイルドレッシング)日本食品標準成分表2015年版(七訂)より)の糖質の含有量は15.9重量%付近であることから、従来のドレッシングタイプ調味料に比べると、本発明のドレッシングタイプ調味料の糖質を1.59重量%までに抑えた場合、90%以上カットされたものであると言え、従来のドレッシングタイプ調味料よりも低カロリーであり、消費者の近年の健康志向に応えるものであるため、極めて有用なものである。
【0026】
(e)脂質
本発明における脂質は、健康増進法の栄養表示基準に基づく脂質をいう。
【0027】
本発明のドレッシングタイプ調味料において、脂質の含有量は3重量%未満であり、好ましくは0.5重量%未満である。
前記脂質の含有量が0.5重量%未満の場合には、本発明のドレッシングタイプ調味料を「脂質ゼロ」と表示できる。また、前記脂質の含有量が3重量%未満の場合には、「ノンオイルドレッシング」と表示できる(ドレッシングおよびドレッシングタイプ調味料品食品表示基準に定められている(平成23年9月30日消費者庁告示第10号 第4条参照)。
【0028】
前記のように本発明のドレッシングタイプ調味料は、「糖質カット」、「脂質ゼロ」などと表示することができる点で、糖質や脂質の摂取を控えようとする消費者の近年の健康志向に応えるものであるため、極めて有用なものである。
【0029】
また、本発明のドレッシングタイプ調味料は、一般的なサラダドレッシングと同様に、液体若しくはペースト状である。
【0030】
本発明のドレッシングタイプ調味料は、一般的なサラダドレッシングと同様に、副成分として、野菜・果実の果汁又はペーストあるいはピューレ、食塩、植物性又は動物性の抽出エキス、香辛料、醤油、アミノ酸液、タンパク質系、アミノ酸系、核酸系の各種調味料、増粘剤、酸味料、乳化剤、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、苦味料、酵素、強化剤、製造用剤、香料等の一般の飲食品に用いられる各種添加剤を使用してもよい。
【0031】
なお、前記各種添加剤の含有量としては、特に限定はないが、糖質または脂質を含有する添加剤を使用する場合には、最終的に製造したドレッシングタイプ調味料中の糖質の含有量が5重量%以上、脂質の含有量が3重量%以上にならないようにする。
【0032】
また、本発明のドレッシングタイプ調味料における総タンパク質量は、健康志向の観点から、30重量%以上であることが好ましく、40重量%以上であることがより好ましい。なお、従来の調味料の分野では、総タンパク質量が0~10重量%であることが一般的であることから、本発明のドレッシングタイプ調味料が30重量%以上である場合にはタンパク質を高含有しているといえる。
前記総タンパク質量は、窒素定量換算法によって定量でき、測定法としては、燃焼法、ケルダール法などが挙げられる。
【0033】
本発明のドレッシングタイプ調味料は、コラーゲン分解物、アラニンおよび有機酸ならびに必要に応じて各種添加剤を混合することで製造することができる。前記各成分の混合の順番、混合温度、混合条件などについては、従来の調味料の製造方法に従い設定することが可能である。好ましくは、アラニン存在下でゼラチンを分解した水溶液と、有機酸ならびに必要に応じて各種添加剤とを混合することで、理想的な粘性のドレッシングタイプ調味料を製造することができる。
【0034】
すなわち、例えば、コラーゲン分解物を調製する際に、コラーゲン原料であるゼラチンとアラニンを含有する水溶液中に、ゼラチン分解酵素であるプロテアーゼを添加・混合することが好ましい。アラニン存在下でゼラチンを含有する水溶液を酵素分解することで、酵素反応が進みやすく、得られたアラニン含有コラーゲン分解物水溶液はサラサラな液体になり易い。前記アラニン含有コラーゲン分解物水溶液と、有機酸ならびに必要に応じて各種添加剤とを混合することで、効率的にドレッシングタイプ調味料を製造できるという利点がある。また、アラニン存在下でゼラチンを含有する水溶液を酵素分解して得られたドレッシングタイプ調味料は、冷蔵保存しても物性が維持される点でも利点がある。
【0035】
また、本発明のドレッシングタイプ調味料の溶液粘度は、50~30000mPa・sであることが好ましい。前記溶液粘度が50mPa・s以上であることにより、ドレッシングタイプ調味料が食材と絡みやすくなり、前記溶液粘度が30000mPa・s以下であることにより、食材と混ぜやすくなる。ここで、溶液粘度に関しては、回転数100rpmの条件で、B型粘度計(商品名「VISCOMETER TVB-10」東機産業社製)を用いて、25℃における粘度を測定した。
【0036】
以上のようにして得られる本発明のドレッシングタイプ調味料は、タンパク質含有量が高く、かつ、低糖質および低脂質のものであり、通常のサラダドレッシングと組成が異なるにも関わらず、野菜などの食材にかけると、通常のサラダドレッシングと同様に、食材によく絡み、外観に艶を与え、風味やコクのよいものである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0038】
(実施例1)
精製水40gにゼラチン(商品名:APH-100、新田ゼラチン株式会社製、固形分90%、以下同じ)40g、DL-アラニン(磐田化学工業株式会社製、以下同じ)7.5gを添加して50℃に加温して可溶化させた。その後、ブロメライン(商品名:ブロメラインF、天野エンザイム株式会社製、以下同じ)0.04gを添加し、60℃で15分間プロテアーゼ処理した後、95℃まで加熱してプロテアーゼを失活させ、コラーゲン分解物を調製した。
上記のようにして得られた組成物に、副成分としてオニオンエキス0.5g、濃縮デーツ果汁0.1g、キサンタンガム(増粘剤、商品名:エコーガム、三晶株式会社製、以下同じ)0.04g、グルタミン酸ナトリウム(アミノ酸系調味料)0.3g、醤油1g、食塩2g、酢酸1g、たまねぎ香料0.15gを順次添加した。最後に精製水で全量を100gに調整し、実施例1のドレッシングタイプ調味料を調製した。
【0039】
(実施例2~4、比較例1、2)
各成分の種類および量を表1に記載されているように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~4および比較例1、2のドレッシングタイプ調味料を調製した。
【0040】
(実施例5)
酢酸1gのかわりに、クエン酸2gを添加した以外は、実施例1と同様にして実施例5のドレッシングタイプ調味料を調製した。
【0041】
(比較例3)
実施例1のDL-アラニンの代わりに、甘味料としてアセスルファムカリウム0.04g、スクラロース0.02mgを添加し、最後に精製水で全量を100gに調整し、比較例3のドレッシングタイプ調味料を調製した。
【0042】
(比較例4)
実施例1のDL-アラニンを果糖ブドウ糖液糖(固形分75%、商品名:ハイフラクトM、日本コーンスターチ社製)に置き換え、最後に精製水で全量を100gに調整し、比較例4のドレッシングタイプ調味料を調製した。
【0043】
(比較例5、6、7、8、9)
実施例1のDL-アラニンを他の甘味系アミノ酸(グリシン、スレオニン、プロリン、セリン、グルタミン)に置き換え、最後に精製水で全量を100gに調整して、比較例5~9のドレッシングタイプ調味料を調製した。
【0044】
(比較例10)
実施例1のDL-アラニンの代わりにゼラチン量を48gに増やしてタンパク質含有量を実施例1に合わせ、甘味のために甘味料としてアセスルファムカリウム0.04g、スクラロース0.02mgを添加し、最後に精製水で全量を100gに調整し、比較例10のドレッシングタイプ調味料を調製した。
【0045】
(官能評価試験)
実施例1~5および比較例1~10のドレッシングタイプ調味料について、旨味、苦味、不快臭について評価した。結果を表1に示す(ただし、表中の成分は、主要な成分のみ記載する。)。
評価方法としては、3人のパネラーが所定量の下記評価基準に基づいてドレッシングタイプ調味料を評価した。表中の評価値は、下記基準に基づいて評価した結果の平均値を四捨五入したものである。
各特性の評価基準および合格基準を以下に示す。
【0046】
<旨味>
5:旨味を強く感じる
4:旨味を感じる
3:旨味を少し感じる
2:旨味をあまり感じない
1:旨味を全く感じない
旨味の評価が「5」または「4」であるものを合格品とする。
【0047】
<苦味>
5:苦味を強く感じる
4:苦味を感じる
3:苦味を少し感じる
2:苦味をあまり感じない
1:苦味を全く感じない
苦味の評価が「1」または「2」であるものを合格品とする。
【0048】
<不快臭>
5:不快臭を強く感じる
4:不快臭を感じる
3:不快臭を少し感じる
2:不快臭をあまり感じない
1:不快臭を全く感じない
不快臭の評価が「1」または「2」であるものを合格品とする。
【0049】
(粘性試験)
実施例1~5および比較例1~10のドレッシングタイプ調味料について、粘性を評価した。結果を表1に示す。
評価方法としては、ドレッシングタイプ調味料をボトル容器に詰め、冷蔵庫で24時間保存した後、ボトル容器を傾けて流動性を評価した。表中の評価値は、下記基準に基づく。
○:サラサラしている
×:粘性が高く流れにくい
【0050】
さらに、上記ドレッシングタイプ調味料の物性を調査するために、回転数100rpmの条件で、B型粘度計(商品名:VISCOMETER TVB-10、東機産業社製)を用いて、実施例1のドレッシングタイプ調味料の25℃における溶液粘度を測定した。その結果、溶液粘度は、250mPa・sであることがわかった。実施例2、3、4、5についても溶液粘度は50~30000mPa・sの範囲内であった。
【0051】
また、実施例1において、プロテアーゼ処理に用いる酵素量や処理時間を調整することで、溶液粘度が50~30000mPa・sの範囲のドレッシングタイプ調味料を複数調製することができた。なお、強いプロテアーゼ処理(酵素量を多くする、処理時間を長くするなど)を行うと、前記溶液粘度が低くなり、弱いプロテアーゼ処理(酵素量を少なくする、処理時間を短くするなど)を行うと前記溶液粘度が高くなった。
【0052】
(総タンパク質量計算)
ゼラチン(タンパク質含有量90%)およびDL-アラニン(タンパク質含有量98%)の配合量から計算した総タンパク質量を表1に示す。
【0053】
【0054】
表1に示す結果より、実施例1~5のドレッシングタイプ調味料はいずれも、旨味が強く、苦味や不快臭が軽減されており、かつサラサラしていることがわかる。
【0055】
一方、比較例1、3~10のドレッシングタイプ調味料は、旨味が感じ難く、苦味および不快臭が感じられる点で嗜好性に劣るものとなっていた。比較例2のドレッシングタイプ調味料は、酢酸の含有量が大きすぎて、コラーゲン分解物と合わさって不快臭を強く感じるものとなった。
中でも、比較例3~10に関しては、アラニンを甘味料や糖や別のアミノ酸に置き換えているため、旨味が感じ難く、しかもコラーゲン分解物に特有の苦味、不快臭をマスキングする効果も劣っていた。
【0056】
実施例1~5のドレッシングタイプ調味料を、レタスサラダにかけたところ、従来のサラダドレッシングと同様に、野菜の表面になじみながら、艶も出ているなどの油脂様特性が奏されていることを確認した。
【0057】
(実施例6:アラニンの添加タイミングの検討)
精製水40gにゼラチン40gを添加して50℃に加温して可溶化させた。その後、ブロメライン0.04gを添加し、60℃で15分間プロテアーゼ処理した後、95℃まで加熱してプロテアーゼを失活させ、コラーゲン分解物を調製した。
上記のようにして得られたコラーゲン分解物に、DL-アラニン7.5gを加え、副成分としてオニオンエキス0.5g、濃縮デーツ果汁0.1g、キサンタンガム0.04g、グルタミン酸ナトリウム0.3g、醤油1g、食塩2g、酢酸1g、たまねぎ香料0.15gを順次添加した。最後に精製水で全量を100gに調整し、実施例6のドレッシングタイプ調味料2を調製した。
【0058】
図1に、実施例1の製造工程(図中、(a))および実施例6の製造工程(図中、(b))のフロー図を示す。
実施例6で得られたドレッシングタイプ調味料2を調べたところ、コラーゲンの苦味および不快臭を顕著に低減されたものであり、従来のサラダドレッシングと同様の味の深みや油脂様特性を有していた。また、ドレッシングタイプ調味料2は、冷蔵庫で保存すると粘性が高いものとなったことから、常温保存型のドレッシングタイプ調味料であることがわかった。
一方、実施例1で得られたドレッシングタイプ調味料1は冷蔵庫で保存しても、サラサラとした好ましい粘性を示すことが判明した。したがって、アラニン存在下でゼラチンを酵素分解して得られた実施例1~5のドレッシングタイプ調味料は、常温保存に加えて冷蔵保存も可能なドレッシングタイプ調味料であることがわかる。
以上のように、本発明のドレッシングタイプ調味料を製造するにあたっては、アラニンの添加のタイミングを変えることで、調味料の粘度を所望の程度に調整でき、また常温から冷蔵までの幅広い保存条件に対応したドレッシングタイプ調味料を作製することが可能である。