(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2021-12-20
(45)【発行日】2022-01-17
(54)【発明の名称】農作業支援システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20220107BHJP
A01B 69/00 20060101ALI20220107BHJP
【FI】
G08G1/00 X
A01B69/00 303M
(21)【出願番号】P 2018065826
(22)【出願日】2018-03-29
【審査請求日】2020-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 弘喜
【審査官】上野 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-215742(JP,A)
【文献】国際公開第2015/119266(WO,A1)
【文献】特開2016-093125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
A01B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場を走行可能な作業車両と、
前記作業車両に設けられ該作業車両の位置を測定する測位装置と、
前記測位装置からの測位情報に基づいて前記作業車両を予定走行経路に沿って自動走行させる制御を行う制御装置と
を備え、
前記制御装置は、
前記圃場において前記作業車両が自動走行可能な作業エリアを設定する作業エリア設定モードを設定し、
前記作業エリア設定モードにおいて前記作業エリアが設定されると、前記作業エリアに対応する逸脱防止ラインを設定し、
前記作業車両の外形情報を有し、
前記外形情報に基づいて、前記作業車両の外形が前記逸脱防止ラインに到達した場合に当該作業車両を停止させる制御を行
い、
前記作業車両は、
前記圃場を走行可能な走行車体と、
前記走行車体に装着され前記圃場で作業を行う作業機と
を備え、
前記外形情報は、
前記走行車体の外形情報および前記測位装置の設置位置を示す設置位置情報を含む第1の外形情報と、
前記作業機の外形情報および前記設置位置情報を含む第2の外形情報と
を含み、
前記制御装置は、
前記第1の外形情報および前記第2の外形情報を、前記設置位置情報を基準に足し合わせることで、前記外形情報を作成すること
を特徴とする農作業支援システム。
【請求項2】
前記外形情報は、
前記作業車両を囲む矩形枠であること
を特徴とする請求項
1に記載の農作業支援システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記作業エリア設定モードにおいて、前記作業車両が手動運転により前記圃場を周回走行した場合の走行経路に基づいて前記作業エリアを設定すること
を特徴とする請求項1
または2に記載の農作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動運転で走行する作業車両について、作業エリアの境界に設置された投光器と受光器との間を横切ったことを検出すると進行方向を転換させて作業エリア外への逸脱を防止する技術が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような従来技術は、たとえば、投光器および受光器の検出可能範囲よりも作業エリアの方が広い場合や圃場が矩形以外の多角形状のような作業エリアの境界に投光器および受光器の設置が難しい場合など、作業エリアの条件によっては実施が困難なことがあった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業エリアの条件によらず、自動運転で走行する作業車両の作業エリア外への逸脱を防止することができる農作業支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の農作業支援システム(100)は、圃場(F)を走行可能な作業車両(1)と、前記作業車両(1)に設けられ該作業車両(1)の位置を測定する測位装置(120)と、前記測位装置(120)からの測位情報に基づいて前記作業車両(1)を予定走行経路(300)に沿って自動走行させる制御を行う制御装置(160)とを備え、前記制御装置(160)は、前記圃場(F)において前記作業車両(1)が自動走行可能な作業エリア(202)を設定する作業エリア設定モードを設定し、前記作業エリア設定モードにおいて前記作業エリア(202)が設定されると、前記作業エリア(202)に対応する逸脱防止ライン(203)を設定し、前記作業車両(1)の外形情報(10)を有し、前記外形情報(10)に基づいて、前記作業車両(1)の外形が前記逸脱防止ライン(203)に到達した場合に当該作業車両(1)を停止させる制御を行い、前記作業車両(1)は、圃場(F)を走行可能な走行車体(2)と、前記走行車体(2)に装着され前記圃場(F)で作業を行う作業機(3)とを備え、前記外形情報(10)は、前記走行車体(2)の外形情報(21)および前記測位装置(120)の設置位置を示す設置位置情報(Po)を含む第1の外形情報(20)と、前記作業機(3)の外形情報(31)および前記設置位置情報(Po)を含む第2の外形情報(30)とを含み、前記制御装置(160)は、前記第1の外形情報(20)および前記第2の外形情報(30)を、前記設置位置情報(Po)を基準に足し合わせることで、前記外形情報(10)を作成することを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の農作業支援システム(100)は、請求項1に記載の農作業支援システム(100)において、前記外形情報(10)は、前記作業車両(1)を囲む矩形枠であることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の農作業支援システム(100)は、請求項1または2に記載の農作業支援システム(100)において、前記制御装置(160)は、前記作業エリア設定モードにおいて、前記作業車両(1)が手動運転により前記圃場(F)を周回走行した場合の走行経路に基づいて前記作業エリア(202)を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、作業車両を自動運転で走行させる圃場において作業エリアを設定する場合に、作業車両の作業エリア外への逸脱を防止するための逸脱防止ラインを作業エリアに対応させて別途設定することで、作業エリアの条件によらず、作業車両の作業エリア外への逸脱を防止することができる。ここで、作業車両の外形が逸脱防止ラインに到達した場合に作業車両を停止させるため、実際の作業車両の一部が逸脱防止ラインから飛び出すのを防止することができる。これにより、作業車両の作業エリア外への逸脱を確実に防止することができる。また、作業に応じて作業機を付け替えても、作業車両(走行車体および作業機)に対応する外形情報を得ることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、作業車両の外形情報を、作業車両を囲む矩形枠とすることで、処理する情報量の軽量化を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、作業エリアを容易に設定することができる。また、作業エリアが広大である場合や矩形以外の多角形状である場合においても、作業車両が作業エリア外に出るのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る農作業支援システムの概要を示す説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る農作業支援システムの機能を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、携帯端末装置の概要を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、制御装置の機能を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、圃場における作業エリアを示す説明図である。
【
図6】
図6は、圃場における逸脱防止ラインを示す説明図である。
【
図7C】
図7Cは、作業車両の一例の外形情報を示す平面図である。
【
図8】
図8は、作業車両の外形情報の作成手順を示す説明図である。
【
図9A】
図9Aは、作業車両の他の例を示す概略側面図である。
【
図9B】
図9Bは、作業車両の他の例を示す概略平面図である。
【
図9C】
図9Cは、作業車両の他の例の外形情報を示す平面図である。
【
図10】
図10は、逸脱防止制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態に係る農作業支援システムについて、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、下記の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能なもの、あるいは実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。また、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0016】
まず、
図1~
図4を参照して農作業支援システム100の全体構成について説明する。
図1は、実施形態に係る農作業支援システム100の概要を示す説明図である。
図2は、実施形態に係る農作業支援システム100の機能を示すブロック図である。
図3は、携帯端末装置(タブレット端末)140の概要を示すブロック図である。
図4は、制御装置160の機能を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、農作業支援システム100は、たとえば、作業車両の一例としてのトラクタ1と、トラクタ1の位置を測定する測位装置120と、トラクタ1による作業関連情報を生成可能な制御装置160(
図2参照)と、制御装置160と通信可能な情報処理装置130とを備える。
【0018】
作業車両であるトラクタ1は、農業用トラクタであり、走行車体2と、作業機3とを備える。走行車体2は、圃場F(F-A,F-B,F-C)を走行可能なものである。作業機3は、たとえば、走行車体2の後部や前部に装着され、圃場Fにおいて対地作業を行う。トラクタ1の作業機3としては、たとえば、ロータリ耕耘機などであるが、作業車両が苗移植機であれば苗植付装置などであり、作業車両が施肥機であれば施肥装置である。作業車両がコンバインであれば、刈取装置や脱穀装置などが作業機3である。なお、上記例は一例であり、圃場Fにおいて農作業を行う作業機であればとくに限定されない。
【0019】
また、圃場Fには、トラクタ1の進入口Finおよび退出口Foutが設けられる。なお、圃場Fには、1つの進入口Finまたは退出口Foutが設けられてもよい。この場合、トラクタ1は、1つの進入口Finまたは退出口Foutから圃場F内に出入りする。
【0020】
走行車体2は、エンジンと、動力伝達装置とを備える。エンジンは、走行車体2の動力源であるとともに、作業機3の動力源でもある。エンジンは、ディーゼル機関やガソリン機関などの熱機関である。動力伝達装置は、エンジンの動力を駆動輪および作業機3に伝達する。走行車体2は、農道Rや圃場F内を自由に走行することができる。
【0021】
測位装置120は、上記したように、トラクタ1の位置を測定する。測位装置120は、たとえば、トラクタ1の位置を示す位置情報を取得するGNSS(Global Navigation Satellite System)制御装置である。測位装置であるGNSS制御装置120は、地球上を周回している航法衛星123からの電波を受信してトラクタ1の自己位置を測位可能であり、かつ、計時可能である。
【0022】
制御装置160は、トラクタ1に搭載されたコントローラ150と、トラクタ1に持ち込み可能な情報処理装置である携帯端末装置の一例であるタブレット端末140とにより構成される。なお、制御装置160は、コントローラ150およびタブレット端末140のうち、いずれか一方のみで構成されてもよい。たとえば、制御装置160がコントローラ150のみで構成される場合、以下で説明するタブレット端末140が有する機能もコントローラ150が有することになる。
【0023】
図2に示すように、農作業支援システム100は、複数のトラクタ1が、通信ネットワーク110を介して少なくとも1つの情報処理装置130と互いに接続可能な状態で構築される。各トラクタ1にはそれぞれ、制御装置160が搭載される。農作業支援システム100は、いわゆるクラウドコンピューティング(Cloud Computing)が可能なシステムである。
【0024】
制御装置160は、少なくともトラクタ1が自動走行可能な走行可能エリア情報を含む
図3に示す作業関連情報を生成する。ここで、走行可能エリア情報とは、たとえば、
図1に示すように、所定の圃場F(たとえば、圃場F-A)において、トラクタ1が自動走行により、圃場F-A内における有効な耕地の最外側縁から逸脱することなく、安全に無人走行可能な走行経路(予定走行経路)300を含む情報である。
【0025】
情報処理装置130は、CPU(Central Processing Unit)などの処理装置や、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)などの記憶装置、または、入出力装置が設けられたコンピュータなどである。
【0026】
情報処理装置130としては、たとえば、農作業支援サーバ131やパーソナルコンピュータ132が、通信ネットワーク110を介して制御装置160(コントローラ150およびタブレット端末140)と接続される。なお、情報処理装置130としては、
図1に示すように、農作業支援サーバ131またはパーソナルコンピュータ132からなる1つの情報処理装置130が、複数の圃場F-A,F-B,F-Cを管理する管理舎H内に設置される。
【0027】
情報処理装置130は、複数の圃場F-A,F-B,F-Cについて、それぞれ圃場識別情報200a~200i(
図3参照)に関連付けられた圃場地図情報を記憶する。また、情報処理装置130は、制御装置160により生成された作業関連情報を取得するとともに、取得した作業関連情報を、圃場F-A,F-B,F-Cごとに独立して記憶する。
【0028】
制御装置160のうち、コントローラ150は、上記した情報処理装置130と同様、コンピュータにより構成される。コントローラ150は、エンジンや走行装置などの車両に搭載される各システムを制御するECU(Electronic Control Unit)51(
図4参照)と接続される。
【0029】
コントローラ150は、エンジンなどを制御するECU51と協働することで、トラクタ1を自動走行させる自動走行モードと、作業者が搭乗してマニュアル運転するマニュアル走行モードとに切り替えるとともに、作業機3の昇降動作、動力伝達スイッチの開閉動作、走行駆動装置の動作などを制御する。
【0030】
また、コントローラ150は、測位装置であるGNSS制御装置120からの測位情報に基づいて、トラクタ1を、予め登録された予定走行経路300(
図1参照)に沿って自動走行させる。コントローラ150は、圃場Fにおいてトラクタ1が自動走行可能な後述する作業エリア202(
図5参照)を設定する作業エリア設定モードを設定するとともに、作業エリア設定モードを実行する。
【0031】
図3に示すように、タブレット端末140は、構成的には上記したコンピュータの一種であり、制御部143と、制御部143に接続される記憶部141と、各種情報を表示する表示部および各種入力操作を受け付ける操作部が一体となったタッチパネル142と、GNSSアンテナ121とを備える。
【0032】
記憶部141の圃場関連情報には、圃場識別情報200a~200iが個々に付与された圃場F-A,F-B,F-Cの場所を示す圃場地図情報、圃場地図情報に関連付けられた作業関連情報などがある。たとえば、地区別に区分されたA地区、B地区、C地区のそれぞれに、区画された複数の区画圃場A0~A2,B0~B3,C0~C1に関する作業関連情報が必要情報としてデータベース化されて記憶部141に記憶される。なお、以下では、区別する必要がとくにない場合、各地区における区画圃場A0~A2,B0~B3,C0~C1について圃場F-A,F-B,F-Cと記載する場合があり、圃場F-A,F-B,F-Cについても、圃場Fと記載する場合がある。
【0033】
これらの情報は、通信ネットワーク110を介して情報処理装置130の記憶部に記憶される。
【0034】
農作業支援システム100では、上記構成を備えることで、地図情報により視覚的に識別可能な複数の圃場F-A,F-B,F-Cのそれぞれにおいて、トラクタ1によって取得された作業関連情報を複数の圃場F-A,F-B,F-Cのそれぞれに関連付けて、たとえば、農作業支援サーバ131などで一元的に管理することができる。このため、今後の農作業計画の立案なども容易となり、利便性が向上する。
【0035】
また、タブレット端末140を介して作業関連情報などを農作業支援サーバ131に逐次アップロードすれば、農作業計画についてもクラウドコンピューティングを利用して当該農作業支援サーバ131やパーソナルコンピュータ132で作成することが可能となる。
【0036】
また、自動走行による走行可能エリア情報までも情報処理装置130に記憶可能なため、作業対象となる複数の圃場F-A,F-B,F-Cのうちのいずれにおいても自動走行による農作業が可能となる。
【0037】
また、農作業支援システム100においては、トラクタ1を自動走行させるための予定走行経路300(
図1参照)を含む走行可能エリア情報は、制御装置160によって生成される。トラクタ1を圃場F内で有人走行(マニュアル走行)させた場合に、制御装置160(コントローラ150)は予定走行経路300を取得し、取得した予定走行経路300に基づいて走行可能エリア情報を生成する。
【0038】
ここで、制御装置160は、実際に有人走行したトラクタ1が自動走行可能な第1の自動走行エリアと、有人走行したトラクタ1ではなく、有人走行を行っていない他のトラクタ1についても自動走行可能な範囲である第2の自動走行エリアとを生成する。すなわち、制御装置160には、圃場Fにおいて作業する、自車両および他の車両まで含めたトラクタ1に関し、ホイルベース、トレッド、タイヤ幅、その他各種諸元を含む車両情報が予め記憶される。
【0039】
このように、1台のトラクタ1が有人走行した圃場Fにおいては、有人走行したトラクタ1はもとより、有人走行をしていない他のトラクタ1についても、自動走行による所定の作業を、所定の作業エリアにおいて行うことができる。この場合、有人走行をしていないトラクタ1、すなわち、自動走行するトラクタ1は、圃場Fにおける作業エリア202(
図5参照)から逸脱することなく、安全に走行することができる。
【0040】
ここで、制御装置160について説明する。農作業支援システム100におけるトラクタ1は、電子制御によって各部を制御することが可能である。
図4に示すように、トラクタ1は、コントローラ150を備える。コントローラ150は、走行車体2(
図1参照)に設けられる。また、コントローラ150と共に制御装置160を構成するタブレット端末140は、走行車体2に持ち込み可能、あるいは着脱自在である。タブレット端末140およびコントローラ150は、たとえば、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信規格により接続可能である。なお、タブレット端末140とコントローラ150とは、有線により接続可能に構成されてもよい。
【0041】
コントローラ150には、上記した情報処理装置130などと同様に、CPUなどを有する処理装置や、ROM、RAM、HDDなどの記憶装置、および入出力装置が設けられる。なお、各装置は、互いに接続されて互いに信号の受け渡しが可能である。
【0042】
また、コントローラ150には、ECU51、運転モード選択スイッチ52、作業機ECU53、各種アクチュエータ170、カメラ171、各種センサ172、自動操舵装置180、GNSS制御装置120が接続される。また、コントローラ150には、タブレット端末140と通信を行うための通信部151が接続される。
【0043】
運転モード選択スイッチ52は、トラクタ1を自動運転で走行(自動走行)させる自動運転モードと、作業者によるマニュアル運転で走行(マニュアル走行)させるマニュアル運転モードとに切り替えるためのスイッチであり、たとえば、走行車体2の操縦席付近に設けられる。
【0044】
作業機ECU53は、作業機3(
図1参照)の昇降制御の他、作業機3の各部を統括的に制御する。また、作業機3には、走行車体2に対して電気的に接続されるためのコネクタが設けられる。作業機ECU53は、走行車体2に接続された作業機3との間で、定められた通信規格により双方向の通信を行う。これにより、作業機ECU53は、作業機3の後述する外形情報30を制御装置160のコントローラ150やタブレット端末140に送信することができる。
【0045】
また、各種アクチュエータ170としては、たとえば、作業機3を昇降させる昇降シリンダなどの様々なシリンダや、圃場Fの水深を検出する水深センサなどを回動させるモータ、エンジンの吸気量を調節するスロットルモータなどの電動モータなど、様々なモータがある。
【0046】
また、各種センサ172としては、上記した水深センサ、圃場Fの作土深を検出する作土深センサ、圃場Fの肥料濃度を検出する肥沃度センサ、収穫物である籾などの重さを検出したり苗の重量を検出したりするロードセルなどの重量センサ、後輪の回転数を検出する回転センサ、走行車体2の傾きを検出する傾きセンサ、あるいは作業クラッチセンサや温度センサなど、様々なセンサがある。
【0047】
カメラ171は、走行車体2の適宜箇所に複数設けられる。カメラ171による撮像データは、たとえば、管理舎H(
図1参照)内に設置された情報処理装置130などを介して確認することができる。また、制御装置160は、かかるカメラ171による撮像データから作物の生育状況や作業状況などを判定することも可能である。
【0048】
トラクタ1の自己位置を示す位置情報を取得する測位装置であるGNSS制御装置120は、走行車体2に設けられた受信アンテナ122を備える。また、GNSS制御装置120は、タブレット端末140に設けられたGNSSアンテナ121を備える。GNSS制御装置120は、GNSSアンテナ121や受信アンテナ122によって航法衛星123からの電波を受信し、所定時間ごとにGNSS座標を取得することにより、地球上での位置情報を所定間隔で取得する。
【0049】
制御装置160(タブレット端末140)は、GNSS制御装置120が取得する位置情報と位置ごとの作業関連情報とを圃場F-A,F-B,F-Cの場所を示す圃場地図情報とに互いに関連付けて記録した圃場関連情報を、各圃場F-A,F-B,F-Cごとの独立情報として生成する。生成された独立情報は、通信ネットワーク110(
図2参照)を介して情報処理装置130に送られる。
【0050】
自動操舵装置180は、運転モード選択スイッチ52を介して自動走行モードが選択された場合に、GNSS制御装置120が取得する位置情報に基づきコントローラ150により制御される。すなわち、コントローラ150により、走行車体2に設けられた操縦ハンドルが自動操作され、走行車体2が自動で運転される。
図4に示すように、自動操舵装置180は、任意の回転力を付与して操縦ハンドルを回転させる操舵モータ181と、操縦ハンドルの回転角度を検知するハンドルポテンショメータ182とを備える。
【0051】
なお、図示しないが、農作業支援システム100として、いわゆるドローンと呼ばれる無人飛行体を利用することも可能である。かかる無人飛行体には、たとえば、トラクタ1に設けたカメラ171と同じような撮像装置を搭載するとともに、GNSS制御装置120の一部を構築可能なアンテナを設けておくとよい。
【0052】
この場合、無人飛行体とタブレット端末140とを通信可能に構成し、タッチパネル142により所定の操作を行うことにより、作業者が撮像装置の操作を含め、無人飛行体の全ての動作を遠隔操作することができる。かかるシステムであれば、圃場Fに植付けた作物の生育状態などを上空から撮像し、撮像した位置をGNSS制御装置120により農作業情報と関連付けておけば、作物の生育に関する有益な圃場関連情報とすることができる。
【0053】
タブレット端末140は、上記したように、制御部143と、記憶部141と、タッチパネル142と、GNSSアンテナ121とを備える。また、タブレット端末140は、走行車体2側の通信部151に対応する端末通信部144を備える。
【0054】
タブレット端末140の制御部143は、作業情報取得部1431を備える。作業情報取得部1431は、たとえば、トラクタ1が備える各種センサ172が検出した情報を逐次受信し、受信した情報を圃場自体に関する圃場情報なのか、あるいは作業自体に関するものなのかを判別し、判別結果に応じて、情報を圃場データベース1412、あるいは作業データベース1413に格納する。
【0055】
また、制御部143は、作業経路生成部1432を備える。作業経路生成部1432は、GNSS制御装置120を備えるトラクタ1のコントローラ150と協働して位置情報と圃場関連情報に含まれる作業関連情報とに基づき、トラクタ1が自動走行可能な走行経路情報、すなわち、走行可能エリア情報を自動生成することができる。生成された走行可能エリア情報は、経路データベース1414に、区画圃場A0~A2,B0~B3,C0~C1(
図3参照)にそれぞれ1対1で対応して記憶される。
【0056】
タブレット端末140の記憶部141は、制御部143による制御処理に必要な各種プログラムの他、各種情報が記憶される。このように、記憶部141には、後述する外形情報10、作業機外形情報データベース1411、圃場データベース1412、作業データベース1413、経路データベース1414が格納されるとともに、各種プログラムが格納されたプログラム部1415が生成される。
【0057】
記憶部141には、個々に圃場識別情報200a~200i(
図3参照)が付与された圃場F-A,F-B,F-Cの場所を示す圃場地図情報に関連付けて、作業関連情報が、複数の圃場F-A,F-B,F-Cごとの独立情報である圃場関連情報として記憶される。すなわち、地区別に区分された圃場F-A,F-B,F-Cそれぞれに区画された複数の区画圃場A0~A2,B0~B3,C0~C1(
図3参照)に関する必要情報がデータベース化されて記憶部141に記憶される。作業関連情報としては、圃場F-A,F-B,F-Cに関する圃場関連情報などが含まれる。
【0058】
プログラム部1415には、たとえば、トラクタ1を自動走行させる場合の作業経路情報を生成する作業経路生成プログラムや、生成された作業経路情報にしたがってトラクタ1を自動走行させるための自動操舵プログラムなど、トラクタ1の動作全般を制御するコンピュータプログラムが格納される。なお、作業経路生成プログラムや自動操舵プログラムなどを含む各種コンピュータプログラムは、走行車体2に搭載されたコントローラ150の記憶部に格納されてもよい。
【0059】
作業経路生成プログラムとしては、たとえば、GNSS制御装置120により測位した自己位置を示す情報を取得する自己位置取得工程と、取得した自己位置情報と、予め記憶された圃場地図情報とに基づいて、少なくとも自車両であるトラクタ1が自動走行可能な走行可能エリア情報を含む予定走行経路300(
図1参照)を生成する走行経路生成工程とが含まれる。さらに、予定走行経路300に加えて各種の作業関連情報を生成し、生成した情報を情報処理装置130(
図1参照)へ送信する送信工程が含まれる。
【0060】
また、記憶部141の圃場データベース1412には、圃場関連情報が記憶される。圃場関連情報は、たとえば、圃場F-A,F-B,F-Cを特定する圃場識別情報200a~200i(
図3参照)に、圃場F-A,F-B,F-Cの位置を地図上で示す画像データからなる圃場地図情報、作業関連情報などが紐づけされ、制御装置160により生成される。
【0061】
また、記憶部141には、トラクタ1の後述する外形情報10が記憶される。また、記憶部141には、作業機外形情報データベース1411が格納される。作業機外形情報データベース1411には、作業機3(
図1参照)の種類に応じた各種作業機3の後述する外形情報30(
図7C参照)が記憶される。走行車体2(
図1参照)の後述する外形情報20(
図7C参照)は、走行車体2側のコントローラ150に記憶され、タブレット端末140側においてコントローラ150から取得可能に構成されてもよい。
【0062】
また、タブレット端末140の制御部143において、走行車体2の外形情報20や作業機3の外形情報30を取得する外形情報取得部を備えてもよい。この場合、外形情報取得部は、作業者によるタッチパネル142からの入力操作により、それぞれの外形情報20,30を取得する。また、この場合、タブレット端末140やコントローラ150に記憶されている外形情報20,30を使用するか、作業者により入力された外形情報20,30を使用するかを選択可能に構成してもよい。
【0063】
次に、
図5を参照して制御装置160により設定される圃場Fにおける作業エリア(作業規定エリア)202について説明する。
図5は、圃場Fにおける作業エリア(作業規定エリア)202を示す説明図である。
図5に示すように、圃場Fには、圃場Fの最も外側の端縁(端)となる畦際ライン201の内側に、作業エリアとして最も広範囲に規定した作業規定エリア(精密規定エリアともいう)202が設定される。作業規定エリア202は、上記した作業エリア設定モードにおいて設定される。
【0064】
ここで、上記したように、トラクタ1は、自動走行モードとマニュアル走行モードとを選択する運転モード選択スイッチ52を備える。マニュアル走行モードには、通常運転モードと上記した作業エリア設定モードとがあり、走行可能エリア情報である走行可能エリアを生成する場合は、作業エリア設定モードが選択される。
【0065】
作業エリア設定モードにおいて、トラクタ1(走行車体2)は、圃場Fの最外側となる畦際ライン201の内側を、マニュアル走行で周回(周回走行という)する。制御装置160のコントローラ150は、トラクタ1が周回走行した走行経路を、作業エリアのうちの作業規定エリア202として設定する。なお、制御装置160のタブレット端末140により作業規定エリア202を設定可能に構成してもよい。
【0066】
コントローラ150は、たとえば、多角形の作業規定エリア202の各頂点で頂点登録指示を行い、作業者による登録終了操作により登録した各頂点を登録順に従い結んだエリアを作業規定エリア202として設定する。このように、GNSS制御装置120が搭載されたトラクタ1による一度の周回走行で作業規定エリア202を取得することができるため、取得が容易であるとともに取得した作業規定エリア202の情報を継続して使用することも可能である。
【0067】
なお、コントローラ150は、圃場Fにおける予定走行経路300(
図1参照)を囲むエリアを作業規定エリア202として設定してもよい。また、コントローラ150は、圃場地図情報に基づいて作業規定エリア202を設定してもよい。
【0068】
また、コントローラ150は、畦際ライン201から、作業機3の幅に基づいて算出された作業幅W(
図6参照)に基づいて作業規定エリア202を設定する。
【0069】
次に、
図6を参照して制御装置160(コントローラ150)により設定される圃場Fにおける逸脱防止ライン203について説明する。
図6は、圃場Fにおける逸脱防止ライン203を示す説明図である。なお、
図6には、図中上部の左側に後述するトラクタ1の外形情報10による逸脱防止ライン203内の旋回状態を例示し、図中上部の右側にトラクタ1の外形情報10による逸脱防止ライン203外での旋回状態を例示している。
【0070】
図6に示すように、圃場Fには、作業車両であるトラクタ1の作業規定エリア202外への逸脱を防止するための逸脱防止ライン203が設定される。
【0071】
ここで、コントローラ150は、作業エリア設定モードにおいて作業規定エリア202が設定されると、設定された作業規定エリア202に対応する逸脱防止ライン203を設定する。コントローラ150は、自動走行するトラクタ1が逸脱防止ライン203に到達した場合には、トラクタ1を停止させる制御を行う。なお、コントローラ150による逸脱防止制御の処理手順については、
図10を用いて後述する。
【0072】
かかる構成によれば、トラクタ1を自動走行させる圃場Fにおいて作業規定エリア202を設定する場合に、トラクタ1の作業規定エリア202外への逸脱を防止するための逸脱防止ライン203を作業規定エリア202に対応させて別途設定することで、作業規定エリア202の広さや形状などの条件によらず、トラクタ1の作業規定エリア202外への逸脱を防止することができる。
【0073】
また、作業規定エリア202を容易に設定することができる。また、作業規定エリア202が広大である場合や矩形以外の多角形状である場合においても、トラクタ1が作業規定エリア202外に出るのを防止することができるため、作業規定エリア202の広さや形状などの条件によらず、トラクタ1の作業規定エリア202外への逸脱を防止することができる。
【0074】
また、
図6に示すように、コントローラ150は、逸脱防止ライン203を、作業規定エリア202よりも外側に設定する。かかる構成によれば、逸脱防止ライン203を作業規定エリア202よりも外側に設定することにより、作業規定エリア202の端付近で、たとえば、測位情報の僅かな誤差などでトラクタ1が予定走行経路300からずれても、トラクタ1が逸脱防止ライン203から出ないため、トラクタ1を停止させないで作業を継続することができる。これにより、作業効率の低下を抑えることができる。
【0075】
また、測位装置であるGNSS制御装置120は、走行車体2の左右方向における中央部に設けられる。ここで、コントローラ150は、作業機3の幅に基づいて算出された作業幅Wを取得する。コントローラ150は、作業規定エリア202の端縁(端)から作業幅Wの半分の長さ以内に逸脱防止ライン203を設定する。
【0076】
かかる構成によれば、作業エリア設定モードにおいて走行車体2が走行可能エリアを作業機3の幅にあわせて走行して作業規定エリア202を設定した場合には、測位装置であるGNSS制御装置120が作業幅Wの中央部に位置するため、GNSS制御装置120と作業機3との位置関係により作業規定エリア202の端から作業幅Wの半分の長さだけ外側が走行車体2の走行可能エリアの最も外側となる。このため、走行可能エリアの内側に逸脱防止ライン203を設定することができ、たとえば、逸脱防止ライン203を出たトラクタ1についても、走行可能エリア内で停止するため、安全性を確保することができる。
【0077】
また、逸脱防止ライン203は、上記したように、畦際ライン201に対して所定長さ内側に設定するとともに、作業規定エリア202に対して所定長さ外側に設定されるが、逸脱防止ライン203は、作業規定エリア202に対して、0.5~1.0m程度外側に設定されることが好ましい。また、作業規定エリア202は、畦際ライン201に対して、作業幅Wの半分の長さ以内に設定されることが好ましい。また、作業規定エリア202は、作業幅Wの半分の長さ程度であることがより好ましい。
【0078】
このように、逸脱防止ライン203を、作業規定エリア202から所定長さ外側に設定することで、非常停止などを必要とする圃場F外への飛び出しを防止するライン(すなわち、逸脱防止ライン203)を圃場Fの形状に応じて容易に設定することができる。また、畦際ライン201の内側は、たとえば、水口などが設けられるなど、自動走行において障害となる環境下にあるため、逸脱防止ライン203を畦際ライン201よりも内側に設定することで、水口などの破損を防ぐことができる。
【0079】
ここで、制御装置160は、圃場Fにおけるトラクタ1の外形情報となる矩形枠(以下、外形枠という)10を実際に自動走行しているトラクタ1として認識し、トラクタ1の外形枠10が逸脱防止ライン203に到達した場合に、実際のトラクタ1を停止するように制御する。
【0080】
次に、
図7A~
図7Cを参照して、逸脱防止制御において作業車両であるトラクタ1が逸脱防止ライン203に到達したか否かを判定する場合に対象となるトラクタ1の外形情報(外形枠)10について説明する。
図7Aは、作業車両(トラクタ)1の一例を示す概略側面図である。
図7Bは、作業車両(トラクタ)1の一例を示す概略平面図である。
図7Cは、作業車両(トラクタ)1の外形情報(外形枠)10を示す平面図である。
【0081】
図7Aおよび
図7Bに示すように、逸脱防止制御の対象となるトラクタ1は、走行車体2の後部にロータリ耕耘機などの作業機3が装着されたものである。なお、
図7Aおよび
図7Bを用いた説明において、前後方向とは、トラクタ1の直進時における進行方向であり、進行方向の前方側を「前」、後方側を「後」と規定している。左右方向とは、前後方向に対して水平に直交する方向であり、「前」側へ向けて左右を規定している。上下方向とは、鉛直方向である。
【0082】
また、トラクタ1には、走行車体2のキャビン2aの上部に、上記した測位装置であるGNSS制御装置120の受信アンテナ122が設けられる。
図7Bに示すように、受信アンテナ122は、たとえば、走行車体2の左右方向における中央に設けられる。そして、上記したトラクタ1の外形枠10を作成する場合、
図7Cに示すように、平面視における受信アンテナ122の位置を基準点Poとして、好ましくは基準点Poを含む9つの点Pにより、トラクタ1を囲む矩形の外形枠10が形成される。
【0083】
また、トラクタ1の外形枠10は、後述する第1の外形情報20と、第2の外形情報30とを含む。トラクタ1の外形枠10を作成する場合、第1の外形情報20と第2の外形情報30とを足し合わせることで、トラクタ1の外形枠10が形成される。
【0084】
次に、
図8を参照して作業車両であるトラクタ1の外形情報(外形枠)10の作成手順について説明する。
図8は、作業車両(トラクタ)1の外形情報(外形枠)10の作成手順を示す説明図である。なお、トラクタ1の外形枠10は、制御装置160のうち、タブレット端末140(
図4参照)において作成される。
【0085】
上記したように、トラクタ1の外形枠10は、第1の外形情報20と第2の外形情報30とを足し合わせたものである。
図8に示すように、第1の外形情報20は、走行車体2の外形情報(外形枠)21と、GNSS制御装置120(
図7Aおよび
図7B参照)の受信アンテナ122の走行車体2との相対的な設置位置を示す設置位置情報とを含む。第1の外形情報20は、受信アンテナ122の設置位置情報である基準点Poと、走行車体2の外形枠21である、走行車体2の最外側であり走行車体2を囲む矩形枠を形成する4つの点Paとにより作成される。すなわち、第1の外形情報20は、基準点Poを含む5つの点Pにより作成される。なお、タブレット端末140は、第1の外形情報20や走行車体2の外形枠21を、たとえば、コントローラ150(
図4参照)から取得する。
【0086】
第2の外形情報30は、作業機3の外形情報(外形枠)31と、GNSS制御装置120(
図7Aおよび
図7B参照)の受信アンテナ122の設置位置情報とを含む。第2の外形情報30は、受信アンテナ122の作業機3との相対的な設置位置を示す設置位置情報である基準点Poと、作業機3の外形枠31である、作業機3の最外側であり作業機3を囲む矩形枠を形成する4つの点Pbとにより作成される。すなわち、第2の外形情報30は、基準点Poを含む5つの点Pにより作成される。なお、タブレット端末140は、作業機3の外形枠31を、記憶部141に格納された作業機外形情報データベース1411(
図4参照)から、使用する作業機3と適合するものを読み出して取得する。また、タブレット端末140は、第2の外形情報30が記憶されたデータベースが記憶部141に格納され、かかるデータベースから第2の外形情報30を読み出してもよい。
【0087】
タブレット端末140においては、
図8に示すように、第1の外形情報20と第2の外形情報30とを基準点Poを基準に足し合わせることで、
図7Cに示すようなトラクタ1の外形枠10を作成する。これにより、作業に応じて作業機3を付け替えても、トラクタ1に対応する外形枠10を得ることができる。なお、第1の外形情報20と第2の外形情報30とを足し合わせて作成されたトラクタ1の外形枠10の幅(全幅)は、作業機3の外形枠31の幅、すなわち、第2の外形情報30における幅を採用することが好ましい。
【0088】
また、
図8に示すように、トラクタ1の外形枠10は、トラクタ1を囲む矩形枠である。このため、処理する情報量の軽量化を図ることができる。また、
図7Cに示すように、トラクタ1の外形枠10は、トラクタ1の全長および全幅を形成する矩形枠の4つの点(頂点)Pと全長の中間点P、および基準点Poの9つの点Pで形成されることが好ましい。これにより、情報量の軽量化を図ることができると共に、中間点Pを追加したことで、たとえば、圃場Fの内側に突出しているような畦面がある場合に、巻き込みなどによる畦面との接触を防止することができる。
【0089】
また、タブレット端末140(
図4参照)は、作成したトラクタ1の外形枠10を走行車体2に搭載されたコントローラ150(
図4参照)に送信する。また、コントローラ150は、トラクタ1の外形枠10をECU51に送信するなど、トラクタ1の外形枠10に基づいてトラクタ1を自動走行させる。なお、コントローラ150は、走行車体2に設けられ走行車体2の方位を検出する方位センサにより、トラクタ1の向きにあわせて基準点Poと他の8つの点Pとの相対位置を推定して後述する逸脱判定を行う。
【0090】
また、タブレット端末140は、作業機3に関する第2の外形情報30を、予め記憶部141などに記憶されたリスト(たとえば、作業機外形情報データベース1411)から取得する。また、トラクタ1の外形枠10は、タブレット端末140のタッチパネル142(
図3参照)から手動入力で修正することができる。
【0091】
図9Aは、作業車両の他の例(トラクタ1A)を示す概略側面図である。
図9Bは、作業車両の他の例(トラクタ1A)を示す概略平面図である。
図9Cは、作業車両の他の例(トラクタ1A)の外形情報(外形枠)10Aを示す平面図である。
図9Aおよび
図9Bに示すように、逸脱防止制御の対象となるトラクタの他の例(トラクタ1A)は、走行車体2Aの前部にフロントローダなどの作業機3Aが装着されたものである。なお、
図9Aおよび
図9Bを用いた説明においても、
図7Aおよび
図7Bを用いた説明と同様に前後方向、左右方向および上下方向を規定している。
【0092】
トラクタ1Aにおいても、走行車体2Aのキャビン2Aaの上部に、測位装置であるGNSS制御装置120の受信アンテナ122が設けられる。
図9Bに示すように、受信アンテナ122は、たとえば、走行車体2の左右方向における中央に設けられる。そして、トラクタ1Aの外形枠10Aを作成する場合、
図9Cに示すように、平面視における受信アンテナ122の位置を基準点Poとして、好ましくは基準点Poを含む9つの点Pにより、トラクタ1Aを囲む矩形の外形枠10Aが形成される。
【0093】
また、トラクタ1Aの外形枠10Aは、第1の外形情報20Aと、第2の外形情報30Aとを含む。トラクタ1Aの外形枠10Aを作成する場合、第1の外形情報20Aと第2の外形情報30Aとを足し合わせることで、トラクタ1Aの外形枠10Aが形成される。
【0094】
トラクタ1Aの外形枠10Aは、第1の外形情報20Aと第2の外形情報30Aとを足し合わせたものである。
図9Cに示すように、第1の外形情報20Aは、走行車体2Aの外形情報(外形枠)21Aと、GNSS制御装置120の受信アンテナ122の走行車体2Aとの相対的な設置位置を示す設置位置情報とを含む。第1の外形情報20Aは、受信アンテナ122の設置位置情報である基準点Poと、走行車体2Aの外形枠21Aである、走行車体2Aの最外側であり走行車体2Aを囲む矩形枠を形成する4つの点Pとにより作成される。第1の外形情報20Aは、基準点Poを含む5つの点Pにより作成される。
【0095】
第2の外形情報30Aは、作業機3Aの外形情報(外形枠)31Aと、GNSS制御装置120の受信アンテナ122の設置位置情報とを含む。第2の外形情報30Aは、受信アンテナ122の作業機3Aとの相対的な設置位置を示す設置位置情報である基準点Poと、作業機3Aの外形枠31Aである、作業機3Aの最外側であり作業機3Aを囲む矩形枠を形成する4つの点Pとにより作成される。第2の外形情報30Aは、基準点Poを含む5つの点Pにより作成される。
【0096】
タブレット端末140においては、第1の外形情報20Aと第2の外形情報30Aとを基準点Poを基準に足し合わせることで、
図9Cに示すようなトラクタ1Aの外形枠10Aを作成する。このように、作業機3Aを付け替えても、作業機3Aを付け替えたトラクタ1Aに対応する外形枠10Aを得ることができる。また、
図9Cに示すように、トラクタ1Aの外形枠10Aにおいても、トラクタ1Aの全長および全幅を形成する矩形枠の4つの点(頂点)Pと全長の中間点P、および基準点Poの9つの点Pで形成されることが好ましい。これにより、情報量の軽量化を図ることができると共に、中間点Pを追加したことで、たとえば、圃場Fの内側に突出しているような畦面がある場合に、巻き込みなどによる畦面との接触を防止することができる。
【0097】
次に、
図10を参照して制御装置160(コントローラ150)による逸脱防止制御の処理手順について説明する。
図10は、逸脱防止制御の処理手順を示すフローチャートである。
【0098】
図10に示すように、コントローラ150は、トラクタ1が自動走行モードであるか否かを判定する(ステップS101)。コントローラ150は、トラクタ1が自動走行モードであると判定した場合には(ステップS101:Yes)、作業エリア設定モードを実行する(ステップS102)。コントローラ150は、トラクタ1が自動走行モードでないと判定した場合には(ステップS101:No)、トラクタ1が自動走行モードであると判定するまで処理を繰り返す。
【0099】
次いで、コントローラ150は、作業エリア設定モードが実行されると、圃場Fにおける作業規定エリア202を設定する(ステップS103)。なお、作業規定エリア202については、上記したように、圃場Fを周回走行した場合の走行経路を作業規定エリア202として設定する。次いで、コントローラ150は、作業規定エリア202が設定されると、圃場Fにおける逸脱防止ライン203を設定する(ステップS104)。
【0100】
次いで、コントローラ150は、逸脱防止ライン203が設定されると、トラクタ1の自動走行を開始する(ステップS105)。ここで、コントローラ150は、トラクタ1の外形枠10が逸脱防止ライン203に到達したか否かを判定する(ステップS106)。コントローラ150は、トラクタ1の外形枠10が逸脱防止ライン203に到達したと判定した場合には(ステップS106:Yes)、トラクタ1の走行を停止する(ステップS107)。コントローラ150は、トラクタ1を走行停止する場合、走行クラッチを切るとともに、油圧を制御してブレーキによる制動制御を行う。
【0101】
コントローラ150は、トラクタ1の外形枠10が逸脱防止ライン203に到達していない場合には(ステップS106:No)、トラクタ1の外形枠10が逸脱防止ライン203に到達したと判定するまで処理を繰り返す。
【0102】
上記した農作業支援システム100によれば、作業車両であるトラクタ1を自動運転で走行させる圃場Fにおいて作業規定エリア202を設定する場合に、トラクタ1の作業規定エリア202外への逸脱を防止するための逸脱防止ライン203を作業規定エリア202に対応させて別途設定することで、作業規定エリア202の条件によらず、トラクタ1の作業規定エリア202外への逸脱を防止することができる。
【0103】
ここで、たとえば、トラクタ1において自車両の位置を特定するGNSS制御装置120の受信アンテナ122などが逸脱防止ライン203内に残り、実際のトラクタ1の一部が逸脱防止ライン203から飛び出しているというような場合もあり得る。上記した農作業支援システム100によれば、トラクタ1の外形(外形枠10)が逸脱防止ライン203に到達した場合にトラクタ1を停止させるため、実際のトラクタ1の一部が逸脱防止ライン203から飛び出すのを防止することができる。これにより、トラクタ1の作業規定エリア202外への逸脱を確実に防止することができる。
【0104】
また、上記した農作業支援システム100によれば、作業エリア設定モードにおいて、トラクタ1が手動運転で圃場Fを周回走行した場合の走行経路に基づいて作業規定エリア202を設定するため、作業規定エリア202を容易に設定することができる。また、作業規定エリア202が広大である場合や矩形以外の多角形状である場合においても、トラクタ1が作業規定エリア202外に出るのを防止することができる。
【0105】
なお、上記した農作業支援システム100では、作業エリア設定モードにおいて作業規定エリア202を設定する場合には、圃場Fにおいてトラクタ1が周回走行することで作業規定エリア202を設定しているが、たとえば、上記したように、タブレット端末140において圃場地図情報を取得している場合、すなわち、圃場Fの形状データ(圃場外側データ)を地図データとして取得している場合には、かかる地図データに基づいて手動で設定するように構成してもよい。
【0106】
なお、この場合においても、逸脱防止ライン203を圃場外側データの内側にしか設定できないように構成することが好ましい。また、逸脱防止ライン203を設定する場合には、規定の幅データの入力により作業規定エリア202の端からの距離を設定可能に構成することが好ましい。
【0107】
このように構成しても、上記同様、非常停止などを必要とする圃場F外への飛び出しを防止するための逸脱防止ライン203を圃場Fの形状に応じて容易に設定することができる。また、畦際ライン201の内側は、たとえば、水口などが設けられるなど自動走行において障害となる環境下にあるため、逸脱防止ライン203を畦際ライン201よりも内側に設定することで、水口などの破損を防ぐことができる。
【0108】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 作業車両(トラクタ)
10 外形情報(外形枠)
2 走行車体
20 第1の外形情報
21 外形情報(外形枠)
3 作業機
30 第2の外形情報
31 外形情報(外形枠)
100 農作業支援システム
120 測位装置(GNSS制御装置)
160 制御装置
202 作業エリア(作業規定エリア)
203 逸脱防止ライン
300 予定走行経路
F 圃場
Po 設置位置情報(基準点)